JP2005026829A - 電圧制御型発振器、クロック変換器及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】劣化したジッタの多いクロック信号に対して、一定の制御電圧の範囲で広範囲に渡り周波数制御を行うことのできる電圧制御型発振器を得る。
【解決手段】本発明の電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するWAVE電極型SAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続したコルピッツ型の発振回路を備え、共振特性の改善が図られたWAVE電極型のSAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するWAVE電極型SAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続したコルピッツ型の発振回路を備え、共振特性の改善が図られたWAVE電極型のSAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧制御型発振器、クロック変換器及び電子機器に関し、さらに、詳しくは、高周波数で共振する圧電振動子、例えば、共振特性を改善したWAVE電極型SAW共振子を用いた、周波数可変範囲が広くとれる電圧制御型発振器とクロック変換器及び電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信ネットワークのブロードバンド化が進み、市場の要求が1GHzを超えた高周波帯に移り、この帯域おいてデータの送受信が高速で行われるようになっている。具体的には、ギガビット帯を使用したイーサネット(登録商標)やファイバーチャンネル等の高速ネットワークの市場が急成長を見せている。
【0003】
又、近年の通信機器を始めとする電子機器においては、通信速度の高速化に伴ない、高周波発振器に対して、高周波帯域で周波数安定度が高いこと、そして、発振器から出力されるクロック信号のジッタを軽減することが望まれている。
【0004】
図10は、ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Cristal Oscillator)の構成を示すブロック図である。この電圧制御型水晶発振器(VCXO)1Bは、数MHz〜数10MHzの帯域で安定して共振する特性を有するATカット型水晶振動子Xを用いた発振回路80と、この発振出力を数100MHzの高周波信号として生成するための逓倍回路81と、さらに、1つの入力信号から出力信号として差動信号が取り出せる差動変換回路82から構成されている。発振回路80は、インバータ型発振回路が使用され、外部からの制御電圧Vcを入力し、一定の範囲で発振周波数を可変できるようになっている。
【0005】
図11に示すインバータ型発振回路80は、水晶振動子Xと、これに直列に接続される伸張コイルLvと、水晶振動子Xを動作させるための帰還増幅回路(インバータINV1,帰還抵抗Ra)と、帰還増幅回路の両端に接続されるコンデンサC1,C2、そして、可変容量ダイオードCvから構成される。可変容量ダイオードCvでは、外部からの制御電圧Vcによりそのリアクタンスが可変し、この結果、インバータ発振回路80の発振周波数を変化させて、所望の発振周波数が得られる。インバータ型発振回路を使用した圧電制御型発振器として、特許文献1が、又、コルピッツ型発振器を使用したものとして、特許文献2がある。
【0006】
高周波用の発振器としては、数100MHz〜数GHzで発振するSAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)がある。このSAW共振子は、図12に示すように、圧電基板1上に、すだれ状電極からなる入力電極2及び出力電極3と、入力電極2及び出力電極3を挟んで両側に位置する反射器4,4とを形成したものである。そして、励振電極で励振された表面波を反射器で反射させることで定在波を発生させ、共振子として機能させるものである。
【0007】
上記で説明した電圧制御型発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)を応用した、低周波のクロック信号を高周波のクロック信号に変換するクロック変換器が知られている。そして、近年、上記した高速ネットワークの市場においては、外部から入力されるジッタを多く含んだクロック信号に対しても同期がとれるように、周波数可変範囲に対し広い可変範囲のクロック変換器が求められている。 具体的には、クロック変換器を構成する電圧制御型水晶発振器(VCXO)や電圧制御型SAW発振器(VCSO:Voltage Controlled SAW Oscillator)に対して要求される。例えば、低速のネットワークシステムと10ギガビットの光ネットワークシステムとを接続するような場合、低速のネットワークシステムの周波数精度が当初、規定の仕様(以下、システム精度と呼ぶ):±20ppm以内で、その後、伝送路における損失等の要因で50ppm程度に劣化したとする。米国のSONET(Synchronous Optical NETwork)方式においては、その劣化した入力信号の周波数変動50ppmに対して規定された±20ppm以内に抑えて、同期がとれることが要求されている。
【特許文献1】
特開平11−308050号公報 (段落[0009],第1図)
【特許文献2】
特開2003―37439号公報 (段落[0019],第1図)
【発明が解決しようとする課題】
上記で説明した電圧制御型水晶発振器(VCXO)や電圧制御型SAW発振器(VCSO)には次のような問題点(課題)があった。
【0008】
図10に示したATカット型水晶振動子には、主振動以外に副振動が励起されて、所定の共振点以外にも数多く共振点が存在するためスプリアスやノイズが発生し、主振動以外に副振動が近接して存在すると、温度条件が変わったときにさらに近接して主振動と結合しやすい。
【0009】
又、逓倍回路81はATカット型水晶振動子のもつ主振動を基にして高調波を発生させ、必要な高調波のみを高周波信号として得る方式を採用している。このため、逓倍回路81において、ATカット型水晶振動子Xの主振動を基に発生させた高周波信号以外の不要な高調波も、雑音となる。又、ATカット型水晶振動子Xの主振動と副振動の結合やその振動に起因する不要なスプリアスも雑音となり、それらの雑音が発生要因となってジッタを増大させるという課題があった。
【0010】
図13は、等価回路で示されたSAW共振子、伸長コイル、可変容量ダイオードとが直列に接続された場合の回路図である。又、図14は、伸長コイルLvと電極容量C0を除くSAW共振子Xの等価回路で形成される直列共振回路による共振周波数fs0、及び、伸長コイルLvと電極容量C0で形成される直列共振回路による共振周波数fs1、それぞれの存在を示した図である。
【0011】
図13に示したSAW共振子Xと伸長コイルLvとの直列共振回路による共振周波数fs0の可変範囲を広範囲に確保しようとすると、伸長コイルLvのインダクタンスを上げてQを下げることが必要になる。しかしながら、伸長コイルLvのインダクタンスを上げると、図14の矢印で示したように2つの共振周波数fs0,fs1の差を縮小させることになる。この結果、2つの共振が重なり合って異常発振を起し易くなる為、伸長コイルLvのインダクタンスを上げることは容易でないという課題があった。特許文献1に示す電圧制御型圧電発振器で使用している複数の伸張コイルにより、上記の2つの共振周波数fs0,fs1の差を縮小させる虞が生じる。又、特許文献2に示す高周波用の電圧制御型圧電発振器の場合、直列型の伸張コイル11では、十分大きなインダクタンスがとれないため、LC同調回路18を設けている。このため、このコイル16により周波数可変範囲の調整機能をもたせる結果、発振器の小型化、低価格化を阻害する要因となっている。
【0012】
又、近年の低消費電力化に呼応して、電圧制御型発振器に供給される電源電圧の低電圧化が進み、現在の電源電圧は3.3Vが主流であるが、今後、さらに低い電源電圧(例えば、2.5V)への動きが強まっている。このように電源電圧が低電圧化すると、クロック信号の周波数を可変させるための制御電圧を広く変化させることができないため、必要な周波数可変範囲が狭くなり、システム精度の仕様を満足させることができなくなるという虞があった。
【0013】
又、電圧制御型水晶発振器(VCXO)は、数百MHzの高周波のクロック信号を得るための逓倍回路や差動変換回路を必要とする。このため、発振回路用の集積回路の規模が大きく、かつ、コスト高となり、近年の市場からの電圧制御型発振器の小型化、低価格化の要請に反するという課題があった。
【0014】
さらに、上記した従来のSAW共振子は、次のような問題を有していた。
【0015】
即ち、SAW共振子の圧電基板は、通常、水晶からなり、一般にインピーダンスが高く、例えば、測定用ケーブルの出力インピーダンス:50Ωに整合させるためには出来るだけ低い負荷インピーダンスが要求される。このために、図12に示す入力電極2及び出力電極3の交差幅(電極指の対向する長さ)aを大きくすることが、一般的に、行われる。しかし、入力電極2及び出力電極3の交差幅aを大きくすると、弾性表面波の伝搬方向と垂直にエネルギーが分布する横モードの共振が生じ、この横モードの共振により共振特性にスプリアスが発生する。
【0016】
即ち、図12に示すような構造では、入出力電極2,3の交差幅aの方向に、図12の波形で示した1次の横モードのみならず、2次以上の横モードの振動エネルギーが閉じ込められる。1次の横モードは主応答となるのに対し2次以上はスプリアスとなる。そして、高次横モードの中で2次横モードにおける電荷は、入出力電極2、3内で相殺されるが、3次横モードによる電荷は相殺されることがなく、SAW共振子の共振特性にスプリアスが発生する。つまり、偶数次の横モードは相殺され、奇数次の横モードはスプリアスとして残存するという課題があった。
【0017】
図15は、入出力電極2、3の交差幅aと、SAW共振子Xがもつ横モードによるスプリアスの位置(中心周波数からのスプリアスの位置)との関係の一例を示す図である。図15によれば、交差幅aを大きくするほど、中心周波数に近接してスプリアスが発生することが判る。このスプリアスの発生を防ぐために、入力電極2及び出力電極3を重み付けして交差幅に変化を付けることが行われている。しかし、この交差幅に変化を与える方法は、交差幅が小さくなるので、負荷インピーダンスが大きくなるという問題がある。
【0018】
(目的)
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ネットワーク内で伝送路の損失等の要因で劣化したジッタの多いクロック信号に対して、一定の制御電圧の範囲で広範囲に渡り周波数制御を行うことのできる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0019】
併せて、近年の電源電圧の低電圧化による制御電圧の範囲が広く取れない場合においても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路を追加することなく、簡易に周波数の制御範囲を維持・拡大できる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0020】
又、ATカット型水晶振動子や逓倍回路、差動変換回路を使用することなく、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0021】
又、本発明は、低インピーダンス化を可能とし、高次の横モードの共振により発生するスプリアスの影響の少ないSAW共振子を用いた電圧制御型発振器を提供することを目的とする。
【0022】
そして、本発明は、狭い制御電圧の範囲であっても、仕様に定められた所定の周波数可変範囲を確保することのできる電圧制御型発振器を備えたクロック変換器を得ることを目的とする。
【0023】
さらに、本発明は、一定の制御電圧の範囲で広範囲に渡り周波数制御を行うことができる、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られたクロック変換器を用いた電子機器、例えば、光ネットワーク通信機器を得ることも目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明による電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路を備え、前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とする。
【0025】
本発明の構成によれば、伸長コイルを並列接続するSAW共振子を用いることにより、伸長コイルを直列に接続した場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴う制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果がある。
【0026】
本発明による電圧制御型発振器は、前記SAW共振子において、圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする。
【0027】
本発明の構成によれば、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いることにより、従来のSAW共振子を使用した場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴い制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果がある。
【0028】
本発明によるクロック変換器は、少なくとも、供給される制御電圧により周波数が変化し、帰還ループ用出力信号を出力する電圧制御型発振器と、前記電圧制御型発振器からの前記帰還ループ用出力信号と外部からの入力信号それぞれの位相を比較し、位相差信号を出力する位相比較部と、前記位相差信号を平滑化し前記制御電圧を生成するループフィルタとにより帰還ループを形成し構成されるクロック変換器であって、前記電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路とを備え、前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とする。
【0029】
本発明の構成によれば、伸張コイルを並列接続したSAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果がある。
【0030】
本発明によるクロック変換器は、前記SAW共振子において、圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする。
【0031】
本発明の構成によれば、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果がある。
【0032】
本発明の電子機器は、上記のいずれかに記載のクロック変換器を備えたことを特徴とする。
【0033】
本発明の構成によれば、本発明に係る可変範囲の広い電圧制御型SAW発振器(VCSO)を適用したクロック変換器を光トランシーバ用モジュールに用いて、ジッタの多く含んだクロック信号を入力する。そして、クロック変換器は非常にジッタの少ない高周波数のクロック信号を生成するので、多重化する送信データとクロック信号との間におけるタイミングマージンが確保される結果、送信データの誤動作を防止することができるという効果がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
(1)第1の実施形態
(1−1) 第1の実施形態の構成
<発振回路の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を構成するコルピッツ型発振回路の構成を示す回路図である。このコルピッツ型発振回路2は、図示していないが、通常、出力端子OUTに外部とインターフェースするための出力回路、例えば、図10に示した差動変換回路が接続されて、電圧制御型発振器1Aは構成される。
【0035】
このコルピッツ型発振回路2は、一般的に良く知られた回路であり、バイポーラトランジスタTrのエミッタが抵抗R3を介して接地され、抵抗R3に並列にコンデンサC2が接続され、エミッタが出力端子OUTとして用いられる。所定の電源電圧Vccと接地間に抵抗R1と抵抗R2が直列に接続され、抵抗R1と抵抗R2の接続点はバイポーラトランジスタTrのベースと接続される。これらの抵抗R1,R2,R3は、バイポーラトランジスタTrにバイアス電圧を供給する。又、バイポーラトランジスタTrのベースには、SAW共振子Xが接続される。そして、SAW共振子Xの他端は可変容量ダイオード(可変容量素子)Cvのカソードが接続され、この接続点は抵抗Rvを介して制御電圧用端子Vtと接続される。
【0036】
本構成において、特徴とする点は、伸張コイルLvをSAW共振子Xに並列に接続した点にある。このように構成し周波数可変範囲が広くとれる理由については、(1−2)第1の実施形態の原理で詳述する。
【0037】
(1−2) 第1の実施形態の原理
次に、図2乃至図4に基づいて、第1の実施形態の原理について説明する。
【0038】
第1の実施形態の特徴とは、図1に示した発振回路1Aで形成される正帰還発振ループにおいて、SAW共振子Xと伸長コイルLvが並列に接続されるという点である。即ち、このような構成を採用する発振器1Aにより、狭い制御電圧可変範囲であっても、周波数可変範囲が広い範囲で確保されるという知見によるものである。
【0039】
上記の知見を説明する前に、SAW共振子Xの等価回路について説明する。図2は、可変容量ダイオードCvと、伸張コイルLvを並列に接続したSAW共振子Xとによる等価回路図である。図2において、SAW共振子Xの等価回路は、2つの直列回路を組み合わせた並列回路から成り、その一つは直列に接続される直列抵抗R、直列容量C及び直列インダクタンスLとで構成される。もう一つは、SAW共振子Xが2枚の電極の間に置かれることから、振動とは無関係な、そのSAW共振子と並列に接続される並列容量(主に、電極間の静電容量)C0である。それら2つの直列回路を組み合わせた並列回路に、さらに伸張コイルLvが並列接続される。
【0040】
次に、図3,図4を参照して、SAW共振子Xに並列された伸長コイルLv、可変容量ダイオードCvとで構成された場合、直列に伸張コイルが接続された場合に比べ、広い周波数可変範囲が確保される点について説明する。
【0041】
図3は、等価回路で表したSAW共振子Xと伸張コイルLvと可変容量ダイオードCvと構成したときの回路のリアクタンス特性を計算により求めた特性図である。図3において、実線で示した特性(a)は、図2で示した伸張コイルLvを並列接続させたSAW共振子Xと可変容量ダイオードCvを直列に接続したときの回路のリアクタンス特性を示す。又、点線で示した特性(b)は、図13で示したSAW共振子Xと伸張コイルLvと可変容量ダイオードCvとを直列に接続したときの回路のリアクタンス特性を示す。
【0042】
ここで、それぞれの場合の周波数可変範囲を算定する際、リアクタンスの可変範囲を10〜100Ωとしている。又、リアクタンス特性を計算により求める場合、直列インダクタンスLと並列容量C0による基本の共振周波数は、623MHz近傍の周波数とし、使用する伸張コイルLvのインダクタンスは同一のものを使用する。そして、図2に示した可変容量ダイオードCvは、図示しないが外部から制御電圧Vcによりその容量値が可変されるものとする。この場合、外部からの制御電圧Vcの制御範囲は、同一範囲とする。
【0043】
まず、伸張コイルLvを並列に接続した場合について説明する。図3の特性(a)が示すように、(c)に相当する部分が周波数可変範囲となり、ほぼ500KHz:800ppmの周波数可変範囲が得られるのが判る。この範囲よりも広く得ようとする場合は、図示しないが、伸張コイルLvのインダクタンスの値を小さくすればよい。
【0044】
そして、伸張コイルLvを直列に接続した場合については、図3の特性(b)が示すように、(d)に相当する部分が周波数可変範囲ととなり、ほぼ280KHz:450ppmの周波数可変範囲が得られるのが判る。この範囲よりも広く得ようとする場合は、図示しないが、伸張コイルLvのインダクタンスの値を大きくすればよい。
【0045】
従って、以上の得られた結果を比較すると、伸張コイルLvを並列に接続した場合のほうが、直列にした場合よりも2倍近く広くとれることが判る。
【0046】
次に、制御電圧との関係を示す周波数対制御電圧特性について、説明する。
【0047】
図4は、周波数対制御電圧特性を示す特性図である。図4の特性(a)は、伸張コイルLvを直列に接続した場合、特性(b)は、伸張コイルLvを並列に接続した場合のそれぞれの特性図である。
【0048】
図4によれば、特性(a)の場合、周波数可変範囲は、特性(a)との交点(c)、例えば、622.8MHzとしてこの共振周波数を中心に±225ppmである。又、SAW共振子Xと並列に伸長コイルLvを接続した場合の周波数可変範囲は、特性(a)との交点(c)623.25MHzとしてこの共振周波数を中心にほぼ±400ppmである。これらの周波数可変範囲を電源電圧3.3Vの範囲で制御される。図4の特性図から、この電源電圧がさらに2.4Vに低下しても、並列に接続した場合は、周波数可変範囲を十分確保することができることが判る。
【0049】
(1−3) WAVE電極型SAW共振子
SAW共振子Xは、圧電基板上にすだれ状の励振電極と梯子状の反射器を配置し、励振電極で励振された表面波を反射器で反射させることで定在波を発生させ、共振子として機能するものである。そして、振動エネルギーがSAW共振子表面に局在し主振動以外の副振動と結合しにくいため、ATカット型水晶振動子と比較すると、所定の周波数以外には共振点が少ないという大きな利点を有する。SAW共振子は、その共振周波数が数100MHz〜数GHzで、高周波発振回路に用いられる。
【0050】
ここで、共振特性が改善されたSAW共振子、いわゆるWAVE電極型SAW共振子について、図5乃至図7を参照して説明する。
【0051】
A.実施例1
WAVE電極型SAW共振子の実施例1について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第1実施形態におけるWAVE電極型SAW共振子の構成を示す図である。
【0052】
この実施例1の特徴は、図5に示したすだれ電極32において、それぞれの電極指321,322が2つの直線部321a,321b 又は、322a,322bで構成された点である。
【0053】
WAVE電極型SAW共振子は、図5に示すように、圧電基板31と、この圧電基板31上に形成されるすだれ状電極32と、このすだれ状電極32を挟んで両側に位置する反射器33、33とから構成される。
【0054】
圧電基板31は、例えば、水晶からなる矩形板状に形成される。すだれ状電極32及び反射器33は、圧電基板31の表面に導体金属を蒸着又はスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等により形成される。
【0055】
すだれ状電極32は、互いにかみ合う一対の櫛歯状の電極指321,322とからなり、電極指321、322は、これの長手方向の一端側がそれぞれ共通接続される。
【0056】
電極指321は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に分割して配置される直線部321a,321bと、その両者を接続する傾斜状の接続部321cとから構成される。その直線部321a,321bは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1=λ/2(λ:弾性表面波の波長)だけ離れた位置に配置される。電極指322は、同様に、直線部322a、322bと、この両者を接続する傾斜状の接続部322cとから構成される。
【0057】
従って、電極指321と電極指322との交差幅aは、直線部321aと直線部322bとが対向する部分における交差幅c1と、直線部321bと直線部322aとが対向する部分における交差幅c2とを加算したものである。
【0058】
反射器33は、複数の電極指331が弾性表面波の伝搬方向に所定の間隔で配置され、それぞれの電極指331は長手方向の両端部を短絡するように形成される。
【0059】
電極指331は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に分割して配置される直線部331a、331bと、その両者を接続する傾斜状の接続部331cとから構成される。その直線部331aと直線部331bとは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2=λ/2だけ離れた位置に配置されている。
【0060】
次に、実施例1の動作について、図5を参照して説明する。
【0061】
いま、高周波電圧がすだれ状電極32に供給されると、圧電効果により弾性表面波に変換される。この弾性表面波は、すだれ状電極32の電極指321、322の長手方向に対して直交する方向に、すだれ状電極32の両側に放射され、放射された弾性表面波は、さらに、反射器33,33により反射されてすだれ状電極32に戻される。
【0062】
すだれ状電極32を構成する電極指321が備える直線部321a、321bは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1=λ/2だけ離れた位置に配置される。このため、すだれ状電極32において、電極指321の直線部321aと電極指322の直線部322aとは、図5に示すように弾性表面波の伝搬方向と直交する方向で同一直線上に位置し、電極指321と電極指322には異なる正負の電圧が印加されることになる。
【0063】
従って、上記した動作では、弾性表面波の伝搬方向と垂直にエネルギーが分布する横モードについて、各直線部の1次横モードは主応答となるのに対し、2次横モード以上はスプリアスとなる。各直線部の2次横モードにおける電荷は、すだれ状電極32内で相殺されるが、各直線部の3次横モードによる電荷は相殺されず、共振特性にスプリアスとして現われる。しかしながら、このスプリアスは共振周波数の近傍から遠ざけられる結果、この不要なスプリアスによる影響は軽減することができる。この点について、さらに、後述する試作品により詳細に説明する。
【0064】
B.実施例2
次に、本発明による実施例2について、図6を参照して説明する。
【0065】
図6は、本発明の実施例2における構成を示す平面図である。
【0066】
実施例2としてのWAVE電極型SAW共振子は、図6に示すように、圧電基板31と、すだれ状電極42と、反射器43、43とを備えて構成させることは実施例1と同じである。従って、実施例1と異なる点について説明する。
【0067】
図5に示したすだれ状電極32の電極指321、322の場合は、それぞれの直線部を2つで構成したものである。一方、図6に示すように、すだれ状電極42の電極指421、422の場合は、それぞれの直線部を5つで構成した点が異なる。従って、電極指421と電極指422との全体の交差幅aは、それぞれの交差幅c1〜c5を総和したものとなる。
【0068】
ここで、全体の交差幅aと交差幅c1〜c5の具体的な数値の一例をあげると、全体の交差幅aは100λであり、分割された部分の各交差幅c1〜c5はそれぞれ15λ〜20λである。
【0069】
又、図5に示す反射器33の電極指331と同様に構成されるが、図6に示すように、反射器43の電極指431は、その直線部を5つで構成した点が異なる。
【0070】
C.得られる効果
次に、実施例1,2から得られる効果について説明する。
【0071】
まず、本発明のWAVE電極型SAW共振子を実際に試作して得られた結果について説明する。即ち、上記で説明した実施例1と従来例について、図5の構造を基本にして試作を行った。
【0072】
この実施例1は、図5において、すだれ状電極32の電極指を構成する直線部(トラック)の個数を2とし、その各トラックの弾性表面波の伝搬方向における配置間隔Lは、L=λ/2としたものである。そして、すだれ状電極32の全体の交差幅aを40λとし、各直線部の交差幅をそれぞれ20λとし、使用周波数は約600MHzである。又、従来例は、実施例1とその基本構成を同一にし、上記の直線部間の配置間隔Lだけを、L=0に変更したものである。
【0073】
図7は、本発明によるWAVE電極型SAW共振子と従来におけるSAW共振子それぞれの共振特性を示し、(A)は本発明の実施例1によるもの、(B)は従来例による共振特性である。
【0074】
従来例では、図7(B)に示すようにスプリアスが認められるが、実施例1によれば、(A)に示すように共振周波数の近傍からそのスプリアスを遠ざけることができ、そのスプリアスの影響を軽減できることが判る。
【0075】
ところで、本発明のWAVE電極型SAW共振子では、実施例1としてL=λ/2について試作したものである。本発明のWAVE電極型SAW共振子は、電極指の直線部間の配置間隔Lが異なっても、同様のふるまいをするので、L=3λ/8,5λ/8の場合にも、実施例1と同様にスプリアスの影響を軽減できると考えられる。
【0076】
以上の結果から、本発明のWAVE電極型SAW共振子では、すだれ状電極や反射器の電極指を構成する各直線部の弾性表面波の伝搬方向に対して、互いに距離Lで配置され、L=λ/2が最良であるが、3λ/8≦L≦5λ/8を満たせば、実用上差し支えないといえる。
【0077】
上記で説明したように、すだれ状電極32の電極指を複数の直線部から構成し、交差幅の小さい複数の直線部を総和することにより、その全体の大きな交差幅が得られる結果、共振時のインピーダンスを小さくすることができるという効果が得られる。
【0078】
又、すだれ状電極32の交差幅を小さくすることにより、横モードにより発生するスプリアスを共振周波数の近傍から遠ざけられる結果、不要なスプリアスの影響を軽減できるという効果が得られる。
【0079】
(1−4) 第1の実施形態から得られる効果
本発明の第1の実施形態から得られる効果は、次のような効果を得ることができる。
【0080】
上記したように、伸長コイルを並列接続するWAVE電極型SAW共振子を用いることにより、伸長コイルを直列に接続した従来のSAW共振子の場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴う制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果を得られる。
【0081】
又、数100MHz以上の高周波で共振し、副振動が存在することのないWAVE電極型SAW共振子Xを用いることで、従来の逓倍回路を省略することができるという効果が得られる。
【0082】
又、WAVE電極型SAW共振子は、「発明が解決しようとする課題」で説明したような、ATカット型水晶振動子が有する主振動と副振動の結合や不要なスプリアスがなく、又、逓倍回路を必要としないので不要な高調波を生成することがなくなる。この結果、主振動と副振動の結合、不要なスプリアスや高調波に起因して発生するジッタのない電圧制御型発振器を得ることができるという効果が得られる。
【0083】
さらに、上記したように、従来の逓倍回路を必要としなくなること、又、周波数可変範囲を拡張するための専用回路を追加することなく小型化や低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることができるという効果が得られる。
【0084】
(2)第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(2−1) 第2の実施形態の構成及び動作
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態に係る電圧制御型発振器1Aを適用したクロック変換器20について詳細に説明する。
【0085】
図8は、クロック変換器20の構成を示すブロック図である。図8に示すように、第1の実施形態に係る電圧制御型発振器1Aは、クロック変換器20の一構成要素、即ち、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23として用いられる。
【0086】
図8において、クロック変換器20は、少なくとも、供給される制御電圧Vcにより周波数が変化し、帰還ループ用出力信号を出力する電圧制御型SAW発振器(VCSO)23と、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23からの帰還ループ用出力信号S1と外部からの入力信号F1との位相を比較し、位相差信号を出力する位相比較部21と、その位相差信号を平滑化し制御電圧Vcを生成するループフィルタ22とにより帰還ループを形成し構成される。尚、図8に示すように、位相比較部21の入力段及び電圧制御型SAW発振器(VCSO)23の出力段それぞれに分周回路24,25を設けて、低周波化を図ることもできる。
【0087】
クロック変換器20では、その電圧制御型SAW発振器(VCSO)23をPLL回路の一構成として適用し、クロック周波数の変換やジッタ低減のために用いられる。このクロック変換器20は、一般的にジッタ低減回路とも呼ばれ、デジッタ回路、ジッタクリーンアップ回路、クロックスムージング回路のように、いろいろな呼び方がされている。
【0088】
次に、図8に基づいて、クロック変換器20の動作を説明する。
【0089】
位相比較部21の一方の入力端子に外部からジッタのある、例えば、155.52MHzのクロック信号F1を分周回路24によりM分周して入力する。又、他方の入力端子に電圧制御型SAW発振器(VCSO)23で生成された、例えば、622.08MHzのクロック信号F2を帰還ループ用出力信号として分周回路25でN分周して入力し、前述のM分周したクロック信号と位相比較を行う。そして、ループフィルタ22において、この位相比較結果に応じた所定の制御電圧Vcを生成し、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23に出力する。電圧制御型SAW発振器(VCSO)23では、所定の制御電圧Vcに応じた、所望の高周波数のクロック信号F2が得られる。そして、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23から出力されたクロック信号F2は、図示しない負荷回路とインピーダンス整合が図られたバッファ回路26を介して、出力される。
【0090】
(2−2)第2の実施形態から得られる効果
本発明の第2の実施形態から得られる効果について説明する。
【0091】
本発明のクロック変換器は、伸張コイルを並列接続し、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果が得られる。
【0092】
又、狭い制御電圧幅で電圧制御型SAW発振器(VCSO)の周波数可変範囲を制御できるので、この制御電圧を生成するループフィルタの構成を簡易にできる。併せて、狭い制御電圧幅で周波数を制御できる結果、電源電圧が低電圧化されても必要な周波数可変範囲を容易に補償でき、かつ、変換されたクロック信号の周波数偏差を高精度に維持できるという効果が得られる。
【0093】
又、ジッタが大幅に低減され、かつ、周波数可変のための専用の回路を不要とする電圧制御型SAW発振器を使用しているので、自己に起因するジッタの少ない小型化、低価格化が図られたクロック変換器を実現できるという効果が得られる。
【0094】
(3)第3の実施形態
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0095】
この第3の実施形態は、第2の実施形態で説明したクロック変換器を応用した光トランシーバ用モジュールに関するものである。
【0096】
図9は、以上説明した第1の実施形態に係る電圧制御型SAW発振器1Aを適用したクロック変換器20を用いた、10.3125ギガビット光ネットワーク向けの光トランシーバ用モジュール30の概略構成を示す図である。
【0097】
この光トランシーバ用モジュール30は、例えば、サーバ用コンピュータと光ネットワークとの間で、光/電気変換及び電気/光変換と多重化及び多重分離のためのインターフェース機能を実現するものである。
【0098】
図9に示すように、例えば、多重分離化部34で抽出されたジッタの多い低周波クロック信号RLCKが、外部からの制御信号CONTにより選択部36で選択される。選択されたこのジッタの多い低周波クロック信号RLCKは、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)23を適用したクロック変換器20において、ジッタが低減された高周波のクロック信号RHCKに変換される。そして、このクロック信号RHCKは、多重化部31において、N個の送信データTxDATAを1つの送信データとして多重化するための基準クロック信号として用いられる。
【0099】
ここで、光トランシーバ用モジュール30の動作について、図9を参照して説明する。
【0100】
本発明に係る可変範囲の広い電圧制御型SAW発振器(VCSO)23を適用したクロック変換器20は、選択部36により選択された低周波数の外部クロック信号(TxREF)を高周波数のクロック信号に変換する。例えば、選択部36が64KHz〜155.52MHzの低周波数の外部クロック信号(TxREF)を選択して、クロック変換器20へ供給する。そして、クロック変換器20は、600MHz帯の622.08MHzの高周波数のクロック信号に変換して多重化部31へ供給する。これにより、電気/光変換部32では10GHz帯(OC−192)の光信号が光伝送路へ送出される。
【0101】
又、多重分離化部34は、CDR(Clock and Data Recovery)機能により、光/電気変換部35において受信した光信号(OPIN)のデータから高周波数のクロック信号を抽出する。選択部36が、クロック信号RCLKを選択した場合は、クロック変換器20からジッタの少ない高周波数のクロック信号が多重化部31へ供給される。
【0102】
つまり、本発明に係る可変範囲の広い発振器、即ち、電圧制御型SAW発振器(VCSO)を適用したクロック変換器を光トランシーバ用モジュールに用いて、ジッタの多く含んだクロック信号を入力する。クロック変換器は非常にジッタの少ない高周波数のクロック信号を生成して多重化部へ供給する。これにより、多重化部において多重化する送信データ(TxDATA×N)とクロック信号との間におけるタイミングマージンが確保されるので、多重化部の送信データの誤動作を防止することができるという効果が得られる。
【0103】
又、動画像のような大量のデータが伝送できる10ギガビットに代表される高速なネットワークシステムにおいて、安定した動作を容易に確保することができるという効果が得られる。
【0104】
(4)変形例
本願発明は、上述した実施形態に限らず種々の態様で実施することができる。例えば、以下のような変形実施が可能である。
【0105】
(第1変形例)
上記した実施形態の増幅器は、バイポーラトランジスタを使用して構成した実施例を示し説明したが、トランジスタの種類が異なるMOSトランジスタにより構成してもよい。
【0106】
(第2変形例)
又、発振回路をネットワーク用の光トランシーバ用モジュールに用いる場合について説明したが、発振回路、特に高周波発振回路を必要とする携帯電話などの無線通信機器など各種電子機器に適用することが可能である。
【0107】
(第3変形例)
水晶振動子、セラミック振動子やSAW共振子等の圧電振動子を構成する圧電材料について、水晶の他、他の圧電材料としてランガサイトや四ほう酸リチウムを用いた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器が備えるコルピッツ型発振回路の構成を示す回路図である。
【図2】可変容量ダイオードと、伸長コイルを並列接続させたSAW共振子による等価回路図である。
【図3】等価回路で表したSAW共振子と伸張コイルと可変容量ダイオードとにより構成したときの回路のリアクタンス特性を計算により求めた図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器の周波数対制御電
圧特性を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態で用いたWAVE電極型SAW共振子の実施例1の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態で用いたWAVE電極型SAW共振子の実施例2の構成を示す平面図である。
【図7】WAVE電極型SAW共振子及び従来のSAW共振子それぞれの共振周波数特性を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を適用したクロック変換器の構成を示すブロック図である。
【図9】第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を適用したクロック変換器を用いた、光ネットワーク向けの光トランシーバ用モジュールの概略構成を示す図である。
【図10】ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型水晶発振器の構成を示すブロック図である。
【図11】電圧制御型水晶発振器の発振回路として用いるインバータ型発振回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来のSAW共振子の構成を示す平面図である。
【図13】等価回路で示されたSAW共振子、伸長コイル、可変容量ダイオードとが直列に接続された場合の回路図である。
【図14】伸長コイルとSAW共振子の等価回路で形成される直列共振回路、及び、伸長コイルと電極容量で形成される直列共振回路による共振周波数特性を示す図である。
【図15】入出力電極の交差幅とSAW共振子がもつスプリアスの位置との関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
1A・・・電圧制御型SAW発振器
1B・・・電圧制御型水晶発振器
2・・・コルピッツ型発振回路
X・・・SAW共振子
31,41・・・圧電基板
32,42・・・すだれ状電極
33,43・・・反射器
321,322,331,421,422・・・電極指
L・・・直列インダクタンス
C・・・直列コンデンサ
R・・・直列抵抗
C0・・・電極間静電容量
Cv・・・可変容量ダイオード
Lv・・・伸張コイル
R1,R2,R3,Ra,Rb・・・抵抗
C1,C2,C3,C4,C5・・・コンデンサ
Tr・・・バイポーラトランジスタ
30・・・光トランシーバモジュール
31・・・多重化部
32・・・電気/光変換部
20・・・クロック変換器
21・・・位相比較部
22・・・ループフィルタ
23・・・電圧制御型SAW発振器
24,25・・・分周回路
26・・・バッファ回路
34・・・多重分離化部
35・・・光/電気変換部
36・・・選択部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧制御型発振器、クロック変換器及び電子機器に関し、さらに、詳しくは、高周波数で共振する圧電振動子、例えば、共振特性を改善したWAVE電極型SAW共振子を用いた、周波数可変範囲が広くとれる電圧制御型発振器とクロック変換器及び電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信ネットワークのブロードバンド化が進み、市場の要求が1GHzを超えた高周波帯に移り、この帯域おいてデータの送受信が高速で行われるようになっている。具体的には、ギガビット帯を使用したイーサネット(登録商標)やファイバーチャンネル等の高速ネットワークの市場が急成長を見せている。
【0003】
又、近年の通信機器を始めとする電子機器においては、通信速度の高速化に伴ない、高周波発振器に対して、高周波帯域で周波数安定度が高いこと、そして、発振器から出力されるクロック信号のジッタを軽減することが望まれている。
【0004】
図10は、ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Cristal Oscillator)の構成を示すブロック図である。この電圧制御型水晶発振器(VCXO)1Bは、数MHz〜数10MHzの帯域で安定して共振する特性を有するATカット型水晶振動子Xを用いた発振回路80と、この発振出力を数100MHzの高周波信号として生成するための逓倍回路81と、さらに、1つの入力信号から出力信号として差動信号が取り出せる差動変換回路82から構成されている。発振回路80は、インバータ型発振回路が使用され、外部からの制御電圧Vcを入力し、一定の範囲で発振周波数を可変できるようになっている。
【0005】
図11に示すインバータ型発振回路80は、水晶振動子Xと、これに直列に接続される伸張コイルLvと、水晶振動子Xを動作させるための帰還増幅回路(インバータINV1,帰還抵抗Ra)と、帰還増幅回路の両端に接続されるコンデンサC1,C2、そして、可変容量ダイオードCvから構成される。可変容量ダイオードCvでは、外部からの制御電圧Vcによりそのリアクタンスが可変し、この結果、インバータ発振回路80の発振周波数を変化させて、所望の発振周波数が得られる。インバータ型発振回路を使用した圧電制御型発振器として、特許文献1が、又、コルピッツ型発振器を使用したものとして、特許文献2がある。
【0006】
高周波用の発振器としては、数100MHz〜数GHzで発振するSAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)がある。このSAW共振子は、図12に示すように、圧電基板1上に、すだれ状電極からなる入力電極2及び出力電極3と、入力電極2及び出力電極3を挟んで両側に位置する反射器4,4とを形成したものである。そして、励振電極で励振された表面波を反射器で反射させることで定在波を発生させ、共振子として機能させるものである。
【0007】
上記で説明した電圧制御型発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)を応用した、低周波のクロック信号を高周波のクロック信号に変換するクロック変換器が知られている。そして、近年、上記した高速ネットワークの市場においては、外部から入力されるジッタを多く含んだクロック信号に対しても同期がとれるように、周波数可変範囲に対し広い可変範囲のクロック変換器が求められている。 具体的には、クロック変換器を構成する電圧制御型水晶発振器(VCXO)や電圧制御型SAW発振器(VCSO:Voltage Controlled SAW Oscillator)に対して要求される。例えば、低速のネットワークシステムと10ギガビットの光ネットワークシステムとを接続するような場合、低速のネットワークシステムの周波数精度が当初、規定の仕様(以下、システム精度と呼ぶ):±20ppm以内で、その後、伝送路における損失等の要因で50ppm程度に劣化したとする。米国のSONET(Synchronous Optical NETwork)方式においては、その劣化した入力信号の周波数変動50ppmに対して規定された±20ppm以内に抑えて、同期がとれることが要求されている。
【特許文献1】
特開平11−308050号公報 (段落[0009],第1図)
【特許文献2】
特開2003―37439号公報 (段落[0019],第1図)
【発明が解決しようとする課題】
上記で説明した電圧制御型水晶発振器(VCXO)や電圧制御型SAW発振器(VCSO)には次のような問題点(課題)があった。
【0008】
図10に示したATカット型水晶振動子には、主振動以外に副振動が励起されて、所定の共振点以外にも数多く共振点が存在するためスプリアスやノイズが発生し、主振動以外に副振動が近接して存在すると、温度条件が変わったときにさらに近接して主振動と結合しやすい。
【0009】
又、逓倍回路81はATカット型水晶振動子のもつ主振動を基にして高調波を発生させ、必要な高調波のみを高周波信号として得る方式を採用している。このため、逓倍回路81において、ATカット型水晶振動子Xの主振動を基に発生させた高周波信号以外の不要な高調波も、雑音となる。又、ATカット型水晶振動子Xの主振動と副振動の結合やその振動に起因する不要なスプリアスも雑音となり、それらの雑音が発生要因となってジッタを増大させるという課題があった。
【0010】
図13は、等価回路で示されたSAW共振子、伸長コイル、可変容量ダイオードとが直列に接続された場合の回路図である。又、図14は、伸長コイルLvと電極容量C0を除くSAW共振子Xの等価回路で形成される直列共振回路による共振周波数fs0、及び、伸長コイルLvと電極容量C0で形成される直列共振回路による共振周波数fs1、それぞれの存在を示した図である。
【0011】
図13に示したSAW共振子Xと伸長コイルLvとの直列共振回路による共振周波数fs0の可変範囲を広範囲に確保しようとすると、伸長コイルLvのインダクタンスを上げてQを下げることが必要になる。しかしながら、伸長コイルLvのインダクタンスを上げると、図14の矢印で示したように2つの共振周波数fs0,fs1の差を縮小させることになる。この結果、2つの共振が重なり合って異常発振を起し易くなる為、伸長コイルLvのインダクタンスを上げることは容易でないという課題があった。特許文献1に示す電圧制御型圧電発振器で使用している複数の伸張コイルにより、上記の2つの共振周波数fs0,fs1の差を縮小させる虞が生じる。又、特許文献2に示す高周波用の電圧制御型圧電発振器の場合、直列型の伸張コイル11では、十分大きなインダクタンスがとれないため、LC同調回路18を設けている。このため、このコイル16により周波数可変範囲の調整機能をもたせる結果、発振器の小型化、低価格化を阻害する要因となっている。
【0012】
又、近年の低消費電力化に呼応して、電圧制御型発振器に供給される電源電圧の低電圧化が進み、現在の電源電圧は3.3Vが主流であるが、今後、さらに低い電源電圧(例えば、2.5V)への動きが強まっている。このように電源電圧が低電圧化すると、クロック信号の周波数を可変させるための制御電圧を広く変化させることができないため、必要な周波数可変範囲が狭くなり、システム精度の仕様を満足させることができなくなるという虞があった。
【0013】
又、電圧制御型水晶発振器(VCXO)は、数百MHzの高周波のクロック信号を得るための逓倍回路や差動変換回路を必要とする。このため、発振回路用の集積回路の規模が大きく、かつ、コスト高となり、近年の市場からの電圧制御型発振器の小型化、低価格化の要請に反するという課題があった。
【0014】
さらに、上記した従来のSAW共振子は、次のような問題を有していた。
【0015】
即ち、SAW共振子の圧電基板は、通常、水晶からなり、一般にインピーダンスが高く、例えば、測定用ケーブルの出力インピーダンス:50Ωに整合させるためには出来るだけ低い負荷インピーダンスが要求される。このために、図12に示す入力電極2及び出力電極3の交差幅(電極指の対向する長さ)aを大きくすることが、一般的に、行われる。しかし、入力電極2及び出力電極3の交差幅aを大きくすると、弾性表面波の伝搬方向と垂直にエネルギーが分布する横モードの共振が生じ、この横モードの共振により共振特性にスプリアスが発生する。
【0016】
即ち、図12に示すような構造では、入出力電極2,3の交差幅aの方向に、図12の波形で示した1次の横モードのみならず、2次以上の横モードの振動エネルギーが閉じ込められる。1次の横モードは主応答となるのに対し2次以上はスプリアスとなる。そして、高次横モードの中で2次横モードにおける電荷は、入出力電極2、3内で相殺されるが、3次横モードによる電荷は相殺されることがなく、SAW共振子の共振特性にスプリアスが発生する。つまり、偶数次の横モードは相殺され、奇数次の横モードはスプリアスとして残存するという課題があった。
【0017】
図15は、入出力電極2、3の交差幅aと、SAW共振子Xがもつ横モードによるスプリアスの位置(中心周波数からのスプリアスの位置)との関係の一例を示す図である。図15によれば、交差幅aを大きくするほど、中心周波数に近接してスプリアスが発生することが判る。このスプリアスの発生を防ぐために、入力電極2及び出力電極3を重み付けして交差幅に変化を付けることが行われている。しかし、この交差幅に変化を与える方法は、交差幅が小さくなるので、負荷インピーダンスが大きくなるという問題がある。
【0018】
(目的)
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ネットワーク内で伝送路の損失等の要因で劣化したジッタの多いクロック信号に対して、一定の制御電圧の範囲で広範囲に渡り周波数制御を行うことのできる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0019】
併せて、近年の電源電圧の低電圧化による制御電圧の範囲が広く取れない場合においても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路を追加することなく、簡易に周波数の制御範囲を維持・拡大できる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0020】
又、ATカット型水晶振動子や逓倍回路、差動変換回路を使用することなく、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0021】
又、本発明は、低インピーダンス化を可能とし、高次の横モードの共振により発生するスプリアスの影響の少ないSAW共振子を用いた電圧制御型発振器を提供することを目的とする。
【0022】
そして、本発明は、狭い制御電圧の範囲であっても、仕様に定められた所定の周波数可変範囲を確保することのできる電圧制御型発振器を備えたクロック変換器を得ることを目的とする。
【0023】
さらに、本発明は、一定の制御電圧の範囲で広範囲に渡り周波数制御を行うことができる、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られたクロック変換器を用いた電子機器、例えば、光ネットワーク通信機器を得ることも目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明による電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路を備え、前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とする。
【0025】
本発明の構成によれば、伸長コイルを並列接続するSAW共振子を用いることにより、伸長コイルを直列に接続した場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴う制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果がある。
【0026】
本発明による電圧制御型発振器は、前記SAW共振子において、圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする。
【0027】
本発明の構成によれば、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いることにより、従来のSAW共振子を使用した場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴い制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果がある。
【0028】
本発明によるクロック変換器は、少なくとも、供給される制御電圧により周波数が変化し、帰還ループ用出力信号を出力する電圧制御型発振器と、前記電圧制御型発振器からの前記帰還ループ用出力信号と外部からの入力信号それぞれの位相を比較し、位相差信号を出力する位相比較部と、前記位相差信号を平滑化し前記制御電圧を生成するループフィルタとにより帰還ループを形成し構成されるクロック変換器であって、前記電圧制御型発振器は、所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路とを備え、前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とする。
【0029】
本発明の構成によれば、伸張コイルを並列接続したSAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果がある。
【0030】
本発明によるクロック変換器は、前記SAW共振子において、圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする。
【0031】
本発明の構成によれば、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果がある。
【0032】
本発明の電子機器は、上記のいずれかに記載のクロック変換器を備えたことを特徴とする。
【0033】
本発明の構成によれば、本発明に係る可変範囲の広い電圧制御型SAW発振器(VCSO)を適用したクロック変換器を光トランシーバ用モジュールに用いて、ジッタの多く含んだクロック信号を入力する。そして、クロック変換器は非常にジッタの少ない高周波数のクロック信号を生成するので、多重化する送信データとクロック信号との間におけるタイミングマージンが確保される結果、送信データの誤動作を防止することができるという効果がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
(1)第1の実施形態
(1−1) 第1の実施形態の構成
<発振回路の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を構成するコルピッツ型発振回路の構成を示す回路図である。このコルピッツ型発振回路2は、図示していないが、通常、出力端子OUTに外部とインターフェースするための出力回路、例えば、図10に示した差動変換回路が接続されて、電圧制御型発振器1Aは構成される。
【0035】
このコルピッツ型発振回路2は、一般的に良く知られた回路であり、バイポーラトランジスタTrのエミッタが抵抗R3を介して接地され、抵抗R3に並列にコンデンサC2が接続され、エミッタが出力端子OUTとして用いられる。所定の電源電圧Vccと接地間に抵抗R1と抵抗R2が直列に接続され、抵抗R1と抵抗R2の接続点はバイポーラトランジスタTrのベースと接続される。これらの抵抗R1,R2,R3は、バイポーラトランジスタTrにバイアス電圧を供給する。又、バイポーラトランジスタTrのベースには、SAW共振子Xが接続される。そして、SAW共振子Xの他端は可変容量ダイオード(可変容量素子)Cvのカソードが接続され、この接続点は抵抗Rvを介して制御電圧用端子Vtと接続される。
【0036】
本構成において、特徴とする点は、伸張コイルLvをSAW共振子Xに並列に接続した点にある。このように構成し周波数可変範囲が広くとれる理由については、(1−2)第1の実施形態の原理で詳述する。
【0037】
(1−2) 第1の実施形態の原理
次に、図2乃至図4に基づいて、第1の実施形態の原理について説明する。
【0038】
第1の実施形態の特徴とは、図1に示した発振回路1Aで形成される正帰還発振ループにおいて、SAW共振子Xと伸長コイルLvが並列に接続されるという点である。即ち、このような構成を採用する発振器1Aにより、狭い制御電圧可変範囲であっても、周波数可変範囲が広い範囲で確保されるという知見によるものである。
【0039】
上記の知見を説明する前に、SAW共振子Xの等価回路について説明する。図2は、可変容量ダイオードCvと、伸張コイルLvを並列に接続したSAW共振子Xとによる等価回路図である。図2において、SAW共振子Xの等価回路は、2つの直列回路を組み合わせた並列回路から成り、その一つは直列に接続される直列抵抗R、直列容量C及び直列インダクタンスLとで構成される。もう一つは、SAW共振子Xが2枚の電極の間に置かれることから、振動とは無関係な、そのSAW共振子と並列に接続される並列容量(主に、電極間の静電容量)C0である。それら2つの直列回路を組み合わせた並列回路に、さらに伸張コイルLvが並列接続される。
【0040】
次に、図3,図4を参照して、SAW共振子Xに並列された伸長コイルLv、可変容量ダイオードCvとで構成された場合、直列に伸張コイルが接続された場合に比べ、広い周波数可変範囲が確保される点について説明する。
【0041】
図3は、等価回路で表したSAW共振子Xと伸張コイルLvと可変容量ダイオードCvと構成したときの回路のリアクタンス特性を計算により求めた特性図である。図3において、実線で示した特性(a)は、図2で示した伸張コイルLvを並列接続させたSAW共振子Xと可変容量ダイオードCvを直列に接続したときの回路のリアクタンス特性を示す。又、点線で示した特性(b)は、図13で示したSAW共振子Xと伸張コイルLvと可変容量ダイオードCvとを直列に接続したときの回路のリアクタンス特性を示す。
【0042】
ここで、それぞれの場合の周波数可変範囲を算定する際、リアクタンスの可変範囲を10〜100Ωとしている。又、リアクタンス特性を計算により求める場合、直列インダクタンスLと並列容量C0による基本の共振周波数は、623MHz近傍の周波数とし、使用する伸張コイルLvのインダクタンスは同一のものを使用する。そして、図2に示した可変容量ダイオードCvは、図示しないが外部から制御電圧Vcによりその容量値が可変されるものとする。この場合、外部からの制御電圧Vcの制御範囲は、同一範囲とする。
【0043】
まず、伸張コイルLvを並列に接続した場合について説明する。図3の特性(a)が示すように、(c)に相当する部分が周波数可変範囲となり、ほぼ500KHz:800ppmの周波数可変範囲が得られるのが判る。この範囲よりも広く得ようとする場合は、図示しないが、伸張コイルLvのインダクタンスの値を小さくすればよい。
【0044】
そして、伸張コイルLvを直列に接続した場合については、図3の特性(b)が示すように、(d)に相当する部分が周波数可変範囲ととなり、ほぼ280KHz:450ppmの周波数可変範囲が得られるのが判る。この範囲よりも広く得ようとする場合は、図示しないが、伸張コイルLvのインダクタンスの値を大きくすればよい。
【0045】
従って、以上の得られた結果を比較すると、伸張コイルLvを並列に接続した場合のほうが、直列にした場合よりも2倍近く広くとれることが判る。
【0046】
次に、制御電圧との関係を示す周波数対制御電圧特性について、説明する。
【0047】
図4は、周波数対制御電圧特性を示す特性図である。図4の特性(a)は、伸張コイルLvを直列に接続した場合、特性(b)は、伸張コイルLvを並列に接続した場合のそれぞれの特性図である。
【0048】
図4によれば、特性(a)の場合、周波数可変範囲は、特性(a)との交点(c)、例えば、622.8MHzとしてこの共振周波数を中心に±225ppmである。又、SAW共振子Xと並列に伸長コイルLvを接続した場合の周波数可変範囲は、特性(a)との交点(c)623.25MHzとしてこの共振周波数を中心にほぼ±400ppmである。これらの周波数可変範囲を電源電圧3.3Vの範囲で制御される。図4の特性図から、この電源電圧がさらに2.4Vに低下しても、並列に接続した場合は、周波数可変範囲を十分確保することができることが判る。
【0049】
(1−3) WAVE電極型SAW共振子
SAW共振子Xは、圧電基板上にすだれ状の励振電極と梯子状の反射器を配置し、励振電極で励振された表面波を反射器で反射させることで定在波を発生させ、共振子として機能するものである。そして、振動エネルギーがSAW共振子表面に局在し主振動以外の副振動と結合しにくいため、ATカット型水晶振動子と比較すると、所定の周波数以外には共振点が少ないという大きな利点を有する。SAW共振子は、その共振周波数が数100MHz〜数GHzで、高周波発振回路に用いられる。
【0050】
ここで、共振特性が改善されたSAW共振子、いわゆるWAVE電極型SAW共振子について、図5乃至図7を参照して説明する。
【0051】
A.実施例1
WAVE電極型SAW共振子の実施例1について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第1実施形態におけるWAVE電極型SAW共振子の構成を示す図である。
【0052】
この実施例1の特徴は、図5に示したすだれ電極32において、それぞれの電極指321,322が2つの直線部321a,321b 又は、322a,322bで構成された点である。
【0053】
WAVE電極型SAW共振子は、図5に示すように、圧電基板31と、この圧電基板31上に形成されるすだれ状電極32と、このすだれ状電極32を挟んで両側に位置する反射器33、33とから構成される。
【0054】
圧電基板31は、例えば、水晶からなる矩形板状に形成される。すだれ状電極32及び反射器33は、圧電基板31の表面に導体金属を蒸着又はスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等により形成される。
【0055】
すだれ状電極32は、互いにかみ合う一対の櫛歯状の電極指321,322とからなり、電極指321、322は、これの長手方向の一端側がそれぞれ共通接続される。
【0056】
電極指321は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に分割して配置される直線部321a,321bと、その両者を接続する傾斜状の接続部321cとから構成される。その直線部321a,321bは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1=λ/2(λ:弾性表面波の波長)だけ離れた位置に配置される。電極指322は、同様に、直線部322a、322bと、この両者を接続する傾斜状の接続部322cとから構成される。
【0057】
従って、電極指321と電極指322との交差幅aは、直線部321aと直線部322bとが対向する部分における交差幅c1と、直線部321bと直線部322aとが対向する部分における交差幅c2とを加算したものである。
【0058】
反射器33は、複数の電極指331が弾性表面波の伝搬方向に所定の間隔で配置され、それぞれの電極指331は長手方向の両端部を短絡するように形成される。
【0059】
電極指331は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に分割して配置される直線部331a、331bと、その両者を接続する傾斜状の接続部331cとから構成される。その直線部331aと直線部331bとは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2=λ/2だけ離れた位置に配置されている。
【0060】
次に、実施例1の動作について、図5を参照して説明する。
【0061】
いま、高周波電圧がすだれ状電極32に供給されると、圧電効果により弾性表面波に変換される。この弾性表面波は、すだれ状電極32の電極指321、322の長手方向に対して直交する方向に、すだれ状電極32の両側に放射され、放射された弾性表面波は、さらに、反射器33,33により反射されてすだれ状電極32に戻される。
【0062】
すだれ状電極32を構成する電極指321が備える直線部321a、321bは、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1=λ/2だけ離れた位置に配置される。このため、すだれ状電極32において、電極指321の直線部321aと電極指322の直線部322aとは、図5に示すように弾性表面波の伝搬方向と直交する方向で同一直線上に位置し、電極指321と電極指322には異なる正負の電圧が印加されることになる。
【0063】
従って、上記した動作では、弾性表面波の伝搬方向と垂直にエネルギーが分布する横モードについて、各直線部の1次横モードは主応答となるのに対し、2次横モード以上はスプリアスとなる。各直線部の2次横モードにおける電荷は、すだれ状電極32内で相殺されるが、各直線部の3次横モードによる電荷は相殺されず、共振特性にスプリアスとして現われる。しかしながら、このスプリアスは共振周波数の近傍から遠ざけられる結果、この不要なスプリアスによる影響は軽減することができる。この点について、さらに、後述する試作品により詳細に説明する。
【0064】
B.実施例2
次に、本発明による実施例2について、図6を参照して説明する。
【0065】
図6は、本発明の実施例2における構成を示す平面図である。
【0066】
実施例2としてのWAVE電極型SAW共振子は、図6に示すように、圧電基板31と、すだれ状電極42と、反射器43、43とを備えて構成させることは実施例1と同じである。従って、実施例1と異なる点について説明する。
【0067】
図5に示したすだれ状電極32の電極指321、322の場合は、それぞれの直線部を2つで構成したものである。一方、図6に示すように、すだれ状電極42の電極指421、422の場合は、それぞれの直線部を5つで構成した点が異なる。従って、電極指421と電極指422との全体の交差幅aは、それぞれの交差幅c1〜c5を総和したものとなる。
【0068】
ここで、全体の交差幅aと交差幅c1〜c5の具体的な数値の一例をあげると、全体の交差幅aは100λであり、分割された部分の各交差幅c1〜c5はそれぞれ15λ〜20λである。
【0069】
又、図5に示す反射器33の電極指331と同様に構成されるが、図6に示すように、反射器43の電極指431は、その直線部を5つで構成した点が異なる。
【0070】
C.得られる効果
次に、実施例1,2から得られる効果について説明する。
【0071】
まず、本発明のWAVE電極型SAW共振子を実際に試作して得られた結果について説明する。即ち、上記で説明した実施例1と従来例について、図5の構造を基本にして試作を行った。
【0072】
この実施例1は、図5において、すだれ状電極32の電極指を構成する直線部(トラック)の個数を2とし、その各トラックの弾性表面波の伝搬方向における配置間隔Lは、L=λ/2としたものである。そして、すだれ状電極32の全体の交差幅aを40λとし、各直線部の交差幅をそれぞれ20λとし、使用周波数は約600MHzである。又、従来例は、実施例1とその基本構成を同一にし、上記の直線部間の配置間隔Lだけを、L=0に変更したものである。
【0073】
図7は、本発明によるWAVE電極型SAW共振子と従来におけるSAW共振子それぞれの共振特性を示し、(A)は本発明の実施例1によるもの、(B)は従来例による共振特性である。
【0074】
従来例では、図7(B)に示すようにスプリアスが認められるが、実施例1によれば、(A)に示すように共振周波数の近傍からそのスプリアスを遠ざけることができ、そのスプリアスの影響を軽減できることが判る。
【0075】
ところで、本発明のWAVE電極型SAW共振子では、実施例1としてL=λ/2について試作したものである。本発明のWAVE電極型SAW共振子は、電極指の直線部間の配置間隔Lが異なっても、同様のふるまいをするので、L=3λ/8,5λ/8の場合にも、実施例1と同様にスプリアスの影響を軽減できると考えられる。
【0076】
以上の結果から、本発明のWAVE電極型SAW共振子では、すだれ状電極や反射器の電極指を構成する各直線部の弾性表面波の伝搬方向に対して、互いに距離Lで配置され、L=λ/2が最良であるが、3λ/8≦L≦5λ/8を満たせば、実用上差し支えないといえる。
【0077】
上記で説明したように、すだれ状電極32の電極指を複数の直線部から構成し、交差幅の小さい複数の直線部を総和することにより、その全体の大きな交差幅が得られる結果、共振時のインピーダンスを小さくすることができるという効果が得られる。
【0078】
又、すだれ状電極32の交差幅を小さくすることにより、横モードにより発生するスプリアスを共振周波数の近傍から遠ざけられる結果、不要なスプリアスの影響を軽減できるという効果が得られる。
【0079】
(1−4) 第1の実施形態から得られる効果
本発明の第1の実施形態から得られる効果は、次のような効果を得ることができる。
【0080】
上記したように、伸長コイルを並列接続するWAVE電極型SAW共振子を用いることにより、伸長コイルを直列に接続した従来のSAW共振子の場合に比べて、周波数可変範囲を拡大できるという効果が得られる。併せて、近年の電源電圧の低電圧化に伴う制御電圧可変範囲が低下しても、周波数可変範囲を拡張するための専用回路や部品を追加することなく、簡易に周波数可変範囲を維持・拡大できるという効果を得られる。
【0081】
又、数100MHz以上の高周波で共振し、副振動が存在することのないWAVE電極型SAW共振子Xを用いることで、従来の逓倍回路を省略することができるという効果が得られる。
【0082】
又、WAVE電極型SAW共振子は、「発明が解決しようとする課題」で説明したような、ATカット型水晶振動子が有する主振動と副振動の結合や不要なスプリアスがなく、又、逓倍回路を必要としないので不要な高調波を生成することがなくなる。この結果、主振動と副振動の結合、不要なスプリアスや高調波に起因して発生するジッタのない電圧制御型発振器を得ることができるという効果が得られる。
【0083】
さらに、上記したように、従来の逓倍回路を必要としなくなること、又、周波数可変範囲を拡張するための専用回路を追加することなく小型化や低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることができるという効果が得られる。
【0084】
(2)第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(2−1) 第2の実施形態の構成及び動作
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態に係る電圧制御型発振器1Aを適用したクロック変換器20について詳細に説明する。
【0085】
図8は、クロック変換器20の構成を示すブロック図である。図8に示すように、第1の実施形態に係る電圧制御型発振器1Aは、クロック変換器20の一構成要素、即ち、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23として用いられる。
【0086】
図8において、クロック変換器20は、少なくとも、供給される制御電圧Vcにより周波数が変化し、帰還ループ用出力信号を出力する電圧制御型SAW発振器(VCSO)23と、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23からの帰還ループ用出力信号S1と外部からの入力信号F1との位相を比較し、位相差信号を出力する位相比較部21と、その位相差信号を平滑化し制御電圧Vcを生成するループフィルタ22とにより帰還ループを形成し構成される。尚、図8に示すように、位相比較部21の入力段及び電圧制御型SAW発振器(VCSO)23の出力段それぞれに分周回路24,25を設けて、低周波化を図ることもできる。
【0087】
クロック変換器20では、その電圧制御型SAW発振器(VCSO)23をPLL回路の一構成として適用し、クロック周波数の変換やジッタ低減のために用いられる。このクロック変換器20は、一般的にジッタ低減回路とも呼ばれ、デジッタ回路、ジッタクリーンアップ回路、クロックスムージング回路のように、いろいろな呼び方がされている。
【0088】
次に、図8に基づいて、クロック変換器20の動作を説明する。
【0089】
位相比較部21の一方の入力端子に外部からジッタのある、例えば、155.52MHzのクロック信号F1を分周回路24によりM分周して入力する。又、他方の入力端子に電圧制御型SAW発振器(VCSO)23で生成された、例えば、622.08MHzのクロック信号F2を帰還ループ用出力信号として分周回路25でN分周して入力し、前述のM分周したクロック信号と位相比較を行う。そして、ループフィルタ22において、この位相比較結果に応じた所定の制御電圧Vcを生成し、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23に出力する。電圧制御型SAW発振器(VCSO)23では、所定の制御電圧Vcに応じた、所望の高周波数のクロック信号F2が得られる。そして、電圧制御型SAW発振器(VCSO)23から出力されたクロック信号F2は、図示しない負荷回路とインピーダンス整合が図られたバッファ回路26を介して、出力される。
【0090】
(2−2)第2の実施形態から得られる効果
本発明の第2の実施形態から得られる効果について説明する。
【0091】
本発明のクロック変換器は、伸張コイルを並列接続し、共振特性が改善されたWAVE電極型SAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)を備えている。この結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)に対する狭い制御電圧幅であっても、市場から要求されているシステム精度を満足させることができるという効果が得られる。
【0092】
又、狭い制御電圧幅で電圧制御型SAW発振器(VCSO)の周波数可変範囲を制御できるので、この制御電圧を生成するループフィルタの構成を簡易にできる。併せて、狭い制御電圧幅で周波数を制御できる結果、電源電圧が低電圧化されても必要な周波数可変範囲を容易に補償でき、かつ、変換されたクロック信号の周波数偏差を高精度に維持できるという効果が得られる。
【0093】
又、ジッタが大幅に低減され、かつ、周波数可変のための専用の回路を不要とする電圧制御型SAW発振器を使用しているので、自己に起因するジッタの少ない小型化、低価格化が図られたクロック変換器を実現できるという効果が得られる。
【0094】
(3)第3の実施形態
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0095】
この第3の実施形態は、第2の実施形態で説明したクロック変換器を応用した光トランシーバ用モジュールに関するものである。
【0096】
図9は、以上説明した第1の実施形態に係る電圧制御型SAW発振器1Aを適用したクロック変換器20を用いた、10.3125ギガビット光ネットワーク向けの光トランシーバ用モジュール30の概略構成を示す図である。
【0097】
この光トランシーバ用モジュール30は、例えば、サーバ用コンピュータと光ネットワークとの間で、光/電気変換及び電気/光変換と多重化及び多重分離のためのインターフェース機能を実現するものである。
【0098】
図9に示すように、例えば、多重分離化部34で抽出されたジッタの多い低周波クロック信号RLCKが、外部からの制御信号CONTにより選択部36で選択される。選択されたこのジッタの多い低周波クロック信号RLCKは、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)23を適用したクロック変換器20において、ジッタが低減された高周波のクロック信号RHCKに変換される。そして、このクロック信号RHCKは、多重化部31において、N個の送信データTxDATAを1つの送信データとして多重化するための基準クロック信号として用いられる。
【0099】
ここで、光トランシーバ用モジュール30の動作について、図9を参照して説明する。
【0100】
本発明に係る可変範囲の広い電圧制御型SAW発振器(VCSO)23を適用したクロック変換器20は、選択部36により選択された低周波数の外部クロック信号(TxREF)を高周波数のクロック信号に変換する。例えば、選択部36が64KHz〜155.52MHzの低周波数の外部クロック信号(TxREF)を選択して、クロック変換器20へ供給する。そして、クロック変換器20は、600MHz帯の622.08MHzの高周波数のクロック信号に変換して多重化部31へ供給する。これにより、電気/光変換部32では10GHz帯(OC−192)の光信号が光伝送路へ送出される。
【0101】
又、多重分離化部34は、CDR(Clock and Data Recovery)機能により、光/電気変換部35において受信した光信号(OPIN)のデータから高周波数のクロック信号を抽出する。選択部36が、クロック信号RCLKを選択した場合は、クロック変換器20からジッタの少ない高周波数のクロック信号が多重化部31へ供給される。
【0102】
つまり、本発明に係る可変範囲の広い発振器、即ち、電圧制御型SAW発振器(VCSO)を適用したクロック変換器を光トランシーバ用モジュールに用いて、ジッタの多く含んだクロック信号を入力する。クロック変換器は非常にジッタの少ない高周波数のクロック信号を生成して多重化部へ供給する。これにより、多重化部において多重化する送信データ(TxDATA×N)とクロック信号との間におけるタイミングマージンが確保されるので、多重化部の送信データの誤動作を防止することができるという効果が得られる。
【0103】
又、動画像のような大量のデータが伝送できる10ギガビットに代表される高速なネットワークシステムにおいて、安定した動作を容易に確保することができるという効果が得られる。
【0104】
(4)変形例
本願発明は、上述した実施形態に限らず種々の態様で実施することができる。例えば、以下のような変形実施が可能である。
【0105】
(第1変形例)
上記した実施形態の増幅器は、バイポーラトランジスタを使用して構成した実施例を示し説明したが、トランジスタの種類が異なるMOSトランジスタにより構成してもよい。
【0106】
(第2変形例)
又、発振回路をネットワーク用の光トランシーバ用モジュールに用いる場合について説明したが、発振回路、特に高周波発振回路を必要とする携帯電話などの無線通信機器など各種電子機器に適用することが可能である。
【0107】
(第3変形例)
水晶振動子、セラミック振動子やSAW共振子等の圧電振動子を構成する圧電材料について、水晶の他、他の圧電材料としてランガサイトや四ほう酸リチウムを用いた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器が備えるコルピッツ型発振回路の構成を示す回路図である。
【図2】可変容量ダイオードと、伸長コイルを並列接続させたSAW共振子による等価回路図である。
【図3】等価回路で表したSAW共振子と伸張コイルと可変容量ダイオードとにより構成したときの回路のリアクタンス特性を計算により求めた図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電圧制御型発振器の周波数対制御電
圧特性を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態で用いたWAVE電極型SAW共振子の実施例1の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態で用いたWAVE電極型SAW共振子の実施例2の構成を示す平面図である。
【図7】WAVE電極型SAW共振子及び従来のSAW共振子それぞれの共振周波数特性を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を適用したクロック変換器の構成を示すブロック図である。
【図9】第1の実施形態に係る電圧制御型発振器を適用したクロック変換器を用いた、光ネットワーク向けの光トランシーバ用モジュールの概略構成を示す図である。
【図10】ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型水晶発振器の構成を示すブロック図である。
【図11】電圧制御型水晶発振器の発振回路として用いるインバータ型発振回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来のSAW共振子の構成を示す平面図である。
【図13】等価回路で示されたSAW共振子、伸長コイル、可変容量ダイオードとが直列に接続された場合の回路図である。
【図14】伸長コイルとSAW共振子の等価回路で形成される直列共振回路、及び、伸長コイルと電極容量で形成される直列共振回路による共振周波数特性を示す図である。
【図15】入出力電極の交差幅とSAW共振子がもつスプリアスの位置との関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
1A・・・電圧制御型SAW発振器
1B・・・電圧制御型水晶発振器
2・・・コルピッツ型発振回路
X・・・SAW共振子
31,41・・・圧電基板
32,42・・・すだれ状電極
33,43・・・反射器
321,322,331,421,422・・・電極指
L・・・直列インダクタンス
C・・・直列コンデンサ
R・・・直列抵抗
C0・・・電極間静電容量
Cv・・・可変容量ダイオード
Lv・・・伸張コイル
R1,R2,R3,Ra,Rb・・・抵抗
C1,C2,C3,C4,C5・・・コンデンサ
Tr・・・バイポーラトランジスタ
30・・・光トランシーバモジュール
31・・・多重化部
32・・・電気/光変換部
20・・・クロック変換器
21・・・位相比較部
22・・・ループフィルタ
23・・・電圧制御型SAW発振器
24,25・・・分周回路
26・・・バッファ回路
34・・・多重分離化部
35・・・光/電気変換部
36・・・選択部
Claims (5)
- 所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路を備え、
前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とする電圧制御型発振器。 - 前記SAW共振子は、
圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、
前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、
前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電圧制御型発振器。 - 少なくとも、供給される制御電圧により周波数が変化し、帰還ループ用出力信号を出力する電圧制御型発振器と、前記電圧制御型発振器からの前記帰還ループ用出力信号と外部からの入力信号それぞれの位相を比較し、位相差信号を出力する位相比較部と、前記位相差信号を平滑化し前記制御電圧を生成するループフィルタとにより帰還ループを形成し構成されるクロック変換器であって、
前記電圧制御型発振器は、
所定の周波数で共振するSAW共振子と外部からの前記制御電圧に基づいて前記所定の周波数を制御する可変容量素子との直列回路と、伸張コイルとをそれぞれトランジスタに接続するコルピッツ型の発振回路を備え、
前記SAW共振子と並列に前記伸張コイルを接続することを特徴とするクロック変換器。 - 前記SAW共振子は、
圧電基板と、この圧電基板上に形成されたすだれ状電極と、前記圧電基板上に形成されて前記すだれ状電極を挟んで両側に位置する反射器とを備え、
前記すだれ状電極の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L1だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、
前記反射器の電極指は、その一部が斜めに折り曲げられ、弾性表面波の伝搬方向に対して互いに距離L2だけ離れた少なくとも2つの直線部を有し、かつ、前記距離L1は、3λ/8≦L1≦5λ/8を満たし、前記距離L2は、3λ/8≦L2≦5λ/8を満たすようにしたことを特徴とする請求項3に記載のクロック変換器。 - 請求項3及び請求項4のいずれかに記載のクロック変換器を備えたことを特徴とする電子機器。
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