以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は本発明の画像形成装置に係る第1実施形態を示す概略構成図である。図1に示した画像形成装置100は電子写真感光体12を備えるもので、電子写真感光体12は駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。詳細は後述するが、電子写真感光体12はドラム状の導電性基体の外周面に感光層を備えるものであり、その感光層における電荷輸送層の静電潜像形成領域に対応する部分においてガラス転移点の最大値と最小値との差が5℃以下のものである。
電子写真感光体12の略上方には、電子写真感光体12の外周面を帯電させる帯電器14が設けられている。
また、帯電器14の略上方には露光装置(光ビーム走査装置)16が配置されている。詳細は後述するが、露光装置16は、面発光レーザアレイを用いた光源から射出される3本以上のレーザビームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、帯電器14により帯電した電子写真感光体12の外周面上を電子写真感光体12の軸線と平行に走査させる。
電子写真感光体12の側方には現像装置18が配置されている。現像装置18は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器18Y,18M,18C,18Kが設けられている。現像器18Y,18M,18C,18Kは各々現像ローラ20を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナーを貯留している。
また、電子写真感光体12の略下方には無端の中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24はローラ26,28,30に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体12の外周面に接触するように配置されている。ローラ26〜30はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト24を矢印Bの向きに回転させる。
中間転写ベルト24を挟んで電子写真感光体12の反対側には転写器32が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像は転写器32によって中間転写ベルト24の画像形成面に転写される。
中間転写ベルト24よりも下方側にはトレイ34が配置されており、トレイ34内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。図1におけるトレイ34の左斜め上方には取り出しローラ36が配置されており、取り出しローラ36による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対38、ローラ40が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ36が回転されることによりトレイ34から取り出され、ローラ対38、ローラ40によって搬送される。
また、中間転写ベルト24を挟んでローラ30の反対側には転写器42が配置されている。ローラ対38、ローラ40によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト24と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト24の画像形成面に形成されたトナー像が転写器42によって転写される。転写器42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器44によって溶融定着された後に画像形成装置100の機体外へ排出され、図示しない排紙トレイ上に載置される。
また電子写真感光体12を挟んで現像装置18の反対側には、電子写真感光体12の外周面を除電する機能及び外周面上に残留している不要トナーを除去する機能を備えた除電・清掃器22が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト24に転写されると、電子写真感光体12の外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域は、除電・清掃器22によって清掃される。
これにより、電子写真感光体12が1回転する毎に、電子写真感光体12の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、電子写真感光体12が4回転した時点で電子写真感光体12の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
次に、図2を参照し、露光装置16の好ましい例について詳述する。露光装置16はm本(mは少なくとも3以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ50を備えている。なお、図2では、簡略化のためにレーザビームを3本のみ示しているが、面発光レーザをアレイ化して成る面発光レーザアレイ50は、数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列(面発光レーザアレイ50から射出されるレーザビームの配列)についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
面発光レーザアレイ50のレーザビーム射出側には、コリメートレンズ52、ハーフミラー54が順に配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、コリメートレンズ52によって略平行光束とされた後にハーフミラー54に入射され、ハーフミラー54によって一部が分離・反射される。ハーフミラー54のレーザビーム反射側にはレンズ56、光量センサ58が順に配置されており、ハーフミラー54によって主レーザビーム(露光に用いるレーザビーム)から分離・反射された一部のレーザビームは、レンズ56を透過して光量センサ58へ入射され、光量センサ58によって光量が検出される。
なお、面発光レーザは、露光に用いるレーザビームが射出される側と反対側からはレーザビームが射出されない(端面発光レーザでは両側から射出される)ため、レーザビームの光量を検出・制御するためには、上記のように露光に用いるレーザビームの一部を分離して光量検出に供することが必要になる。
ハーフミラー54の主レーザビーム射出側にはアパーチャ60、副走査方向にのみパワーを有するシリンダレンズ62、折り返しミラー64が順に配置されており、ハーフミラー54から射出された主レーザビームは、アパーチャ60によって整形された後に、回転多面鏡66の反射面近傍で主走査方向に長い線状に結像するようにシリンダレンズ62によって屈折され、折り返しミラー64によって回転多面鏡66側へ反射される。なお、アパーチャ60は複数本のレーザビームを均等に整形するために、コリメートレンズ52の焦点位置近傍に配置することが望ましい。
回転多面鏡66は、図示しないモータの駆動力が伝達されて図2中の矢印C方向に回転され、折り返しミラー64によって反射されて入射されたレーザビームを主走査方向に沿って偏向・反射する。回転多面鏡66のレーザビーム射出側には主走査方向にのみパワーを有するFθレンズ68,70が配置されており、回転多面鏡66によって偏向・反射されたレーザビームは、電子写真感光体12の外周面上を略等速で移動し、且つ主走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面上に一致するようにFθレンズ68,70によって屈折される。
Fθレンズ68,70のレーザビーム射出側には、副走査方向にのみパワーを有するシリンダミラー72,74が順に配置されており、Fθレンズ68,70を透過したレーザビームは、副走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面に一致するようにシリンダミラー72,74によって反射され、感光体ドラム12の外周面上に照射される。なお、シリンダミラー72,74は回転多面鏡66と電子写真感光体12の外周面を副走査方向において共役にする面倒れ補正機能も有している。
また、シリンダミラー72のレーザビーム射出側には、レーザビームの走査範囲のうち走査開始側の端部(SOS:Start Of Scan)に相当する位置にピックアップミラー76が配置されており、ピックアップミラー76のレーザビーム射出側にはビーム位置検出センサ78が配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、回転多面鏡66の各反射面のうちのレーザビームを反射している面が、入射ビームをSOSに相当する方向へ反射する向きとなったときに、ピックアップミラー76で反射されてビーム位置検出センサ78に入射される(図2の想像線も参照)。
ビーム位置検出センサ78から出力された信号は、回転多面鏡66の回転に伴って電子写真感光体12の外周面上を走査されるレーザビームを変調して静電潜像を形成するにあたり、各回の主走査における変調開始タイミングの同期をとるために用いられる。
また、本実施形態に係る露光装置16では、コリメートレンズ52とシリンダレンズ62、2枚のシリンダミラー72,74が各々副走査方向においてアフォーカルになる様に配置されている。これは、複数本のレーザビームの走査線湾曲(BOW)の差と複数本のレーザビームによる走査線間隔の変動を抑制するためである。
続いて、画像形成装置100の制御装置のうち、露光装置16の面発光レーザアレイ50からのレーザビームの射出を制御する部分(以下、この部分を制御部80と称する)の構成について、図3を参照して説明する。制御装置は、画像形成装置100によって形成すべき画像を表す画像データを記憶するための記憶部82を内蔵しており、記憶部82に記憶された画像データは、画像形成装置100によって画像が形成される際に制御部80の変調信号生成手段84に入力される。
図示は省略するが、変調信号生成手段84にはビーム位置検出センサ78が接続されている。変調信号生成手段84は、記憶部82から入力された画像データを、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの何れかに各々対応するm個の画像データに分解し、分解したm個の画像データに基づき、ビーム位置検出センサ78から入力された信号によって検知されるSOSのタイミングを基準として、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの各々をオンオフさせるタイミングを規定するm個の変調信号を生成し、レーザ駆動回路(LDD)86に出力する。
LDD86には駆動量制御手段88が接続されており、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームを、変調信号生成手段84から入力された変調信号に応じたタイミングでオンオフすると共に、オン時のレーザビームの光量を、駆動量制御手段88から入力される駆動量設定信号に対応する光量にするためのm個の駆動電流を生成し、面発光レーザアレイ50のm個の面発光レーザに各々供給する。
これにより、面発光レーザアレイ50からは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされると共に、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたm本のレーザビームが射出され、このm本のレーザビームが電子写真感光体12の外周面上を各々走査・露光されることで、電子写真感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置18によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器32,42による転写を経て用紙Pに転写され、定着器44によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
一方、画像形成装置100は、電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像、中間転写ベルト24の外周面上に転写されたトナー像、及び用紙Pに記録された画像の何れかの濃度を検出する濃度センサ(図示省略)を備えており、この濃度センサは制御部80に接続されている。なお、本実施形態のように多数本(m本)のレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で同時に走査・露光して画像(詳しくは静電潜像)を形成する場合、各回の主走査におけるm本のレーザビームによる走査領域の境界付近ではレーザビームが2回照射(露光)される。
次に、電子写真感光体12の好ましい例について詳述する。図4〜7はそれぞれ電子写真感光体12の好適な一例を示す模式断面図であり、図4〜7に示す電子写真感光体は、電荷発生物質を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送物質を含有する層(電荷輸送層6)とに機能が分離された感光層3を備えるものである。
図4に示す電子写真感光体12は、導電性基体2上に電荷発生層5、電荷輸送層6が順次積層された構造を有するものである。また、図5に示す電子写真感光体12は、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6が順次積層された構造を有するものである。また、図6に示す電子写真感光体12は、導電性基体2上に電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図7に示す電子写真感光体12は、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
次に、電子写真感光体12の各要素について詳述する。
導電性基体2としては、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック又はガラス等の基体上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;上記基体上に酸化インジウム、酸化錫等の導電性金属化合物を蒸着したもの;上記基体上に金属箔をラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、上記基体上に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。導電性基体2の形状としては、ドラム状の他、シート状、プレート状等のいずれであってもよい。
導電性基体2として金属パイプ基材を用いる場合、当該基材の表面は、素管のままであってもよく、また、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を施してもよい。基材表面を粗面化することにより可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
下引き層4は、積層構造からなる感光層3の帯電の際に、基体2から感光層3への電荷の注入を阻止すると共に、感光層3を基体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引き層4は、場合により、基体2の光の反射防止作用等を示す。
下引き層4の材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば電荷発生層5)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。さらに、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない等性能上優れている。上記有機金属化合物、シランカップリング剤、必要に応じて結着樹脂を混合して用いる場合は、それぞれ1種でもよく、あるいは2種以上混合して用いてもよい。また、有機金属化合物に対するシランカップリング剤の量は、5〜95重量%の範囲で任意に設定することができる。また、結着樹脂を含有させる場合、有機金属化合物とシランカップリング剤の合計量に対する結着樹脂の量は、5〜25重量%の範囲で設定することが好ましい。結着樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等が用いられる。溶剤としては、公知のものであるならば如何なるものでも使用できる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。このようなシリコン化合物の中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が特に好ましく用いられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
下引き層4中には、感光体特性向上のために、導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。
これらの金属酸化物には表面処理を施すことができ、これにより抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は1種を単独であるいは複数の化合物の混合物または重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少なく、画質特性に優れる等性能上優れている。
また、シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物としては、前述した物質と同じ物質が挙げられる。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法または湿式法を用いることができる。乾式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させたシランカップリング剤を滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスと共に噴霧させることによって均一に処理される。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は、溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。滴下及び噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる。
このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法により表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌により又は超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールし難いため、好ましくない。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物微粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
下引き層4中の金属酸化物微粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引き層4中に用いられる金属酸化物微粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
下引き層4中には、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機または無機微粉末を混合することができる。かかる微粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やテフロン(登録商標)樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。これらの微粉末の粒径は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがより好ましい。微粉末は必要に応じて添加されるが、添加される場合には下引き層4に含まれる固形分に対して、重量比で10〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましい。
また、下引き層形成用塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。
下引き層形成用塗布液を調製するに際し、前述した導電性物質や光散乱物質等の微粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に微粉末を添加して分散処理を行うことが好ましい。微粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。下引き層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
下引き層4の厚みは0.01〜50μmが好ましく、0.05〜30μmがより好ましい。
電荷発生層5は、電荷発生物質及び結着樹脂を含んで構成される。かかる電荷発生物質としては、金属フタロシアニン(より好ましくは、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン及びオキシチタニルフタロシアニンから選ばれる少なくとも1種)が好ましい。
上記金属フタロシアニンとしては、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、少なくとも7.4°,16.6°,25.5°及び28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン及び少なくとも27.3°の位置に回折ピークを有するオキシチタニルフタロシアニンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
電荷発生物質の製造方法としては、公知の方法で製造される顔料結晶(ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料及びオキシチタニルフタロシアニン顔料等)を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕する方法や、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行う方法等が挙げられる。
上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、ハロゲン系炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、上記溶剤の2種以上の混合溶剤、上記溶剤と水との混合溶剤が挙げられる。溶剤の使用量は、顔料結晶1重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。処理温度は、0℃〜溶剤の沸点の範囲、好ましくは10〜60℃の範囲である。
また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤の使用量は、顔料結晶に対する重量比で0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍である。
また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティング又はアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕或いは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度70〜100%のものがより好ましく、濃度95〜100%のもの更に好ましく使用される。溶解温度は、−20〜100℃、好ましくは0〜60℃である。硫酸の量は、顔料結晶に対する重量比で、1〜100倍、好ましくは3〜50倍である。硫酸に溶解した顔料結晶を析出させる溶剤としては、水、又は水と有機溶剤との混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
なお、クロロガリウムフタロシアニンは、上記と同様の方法で製造可能であり詳しくは特開平5−98181に開示している。また、ヒドロキシガリウムフタロシアニンも、溶剤処理温度が0〜150℃、好ましくは室温〜100℃であること以外は、上記と同様の方法で製造可能であり詳しくは特開平5−263007及び特開平5−279591に開示している。
また、オキシチタニルフタロシアニンも、溶剤処理における溶剤の使用量が顔料結晶1重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部であり、処理温度が室温〜100℃、好ましくは50〜100℃であること以外は、上記と同様の方法で製造可能であり詳しくは特開平4−189873及び特開平5−43813に開示している。
電荷発生物質には、電気特性の安定性向上、画質欠陥防止等のために表面処理を施すことができる。表面処理剤としては、カップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等を用いることができる。
カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらのなかでも特に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
電荷発生層5に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中で特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。電荷発生物質と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
電荷発生層5は、例えば、上記特定の電荷発生物質及び結着樹脂を所定溶媒に加えた塗布液を用いて形成される。電荷発生層形成用塗布液を調製する際には、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の分散方法を用いることができる。この分散の際、粒子を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
また、分散後に分散時に混入した異物、分散不良な粗大粒子等を除去し、良好な電子写真感光体を得るために遠心分離処理やフィルタリング処理を実施することができる。遠心分離処理やフィルタリング処理は所望の電子写真感光体特性が得られる条件であれば、いかなる条件でも実施することができるが、必要な電荷発生物質を除去してしまわないように注意する必要がある。
さらに、この電荷発生層5を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
さらに、この電荷発生層用塗布液には電気特性向上、画質向上等のために種々の添加剤を添加することもできる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。
電荷輸送層6は、電荷輸送物質及び結着樹脂を含んで構成され、電荷輸送層の静電潜像形成領域に対応する部分においてガラス転移点(Tg)の最大値と最小値との差が5℃以下のものである。ここで、静電潜像形成領域とは、電子写真感光体における露光により静電潜像が形成され、トナー像が担持される領域である。Tgは、感光体の電荷輸送層を剥がし、当該電荷輸送層の任意の複数のポイントから試料を採取して測定される。
電荷輸送物質としては、一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び一般式(III)で示されるアリールアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。以下、各化合物について説明する。
式(I)中、R1はアルキル基(好ましい炭素数は1〜5)又はアルコキシ基(好ましい炭素数は1〜5)を表し、kは0〜2の整数を表し、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基又は芳香族性複素環基(好ましくはチオフェン残基)を表す。
上記アリール基が置換基を有する場合、かかる置換基は、ハロゲン原子、アルキル基(好ましい炭素数は1〜5)、アルコキシ基(好ましい炭素数は1〜5)、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基(好ましい炭素数は1〜5)、及びジアルキルアミノ基のうちのいずれかである。また、アリール基が多環式芳香族化合物であり、いくつかのベンゼン環が結合するビフェニルやテルフェニルである場合、かかるアリール基の置換基としてはアルキレン基(好ましい炭素数は1〜5)でもよい。
式(II)中、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましい炭素数は1〜5)又はアルコキシ基(好ましい炭素数は1〜5)を表し、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましい炭素数は1〜5)又はジアルキルアミノ基(アルキル基の好ましい炭素数は1〜5)を表し、m及びnは1又は2を表す。
なお、上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物のR1、Ar1及びAr2の組合せとしては、下記表1〜6に示される組合せが挙げられる。なお、表1〜6中の「H」は、上記一般式(I)におけるkが0であることを示す。また、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物のR2、R3、R4、R5、R6及びR7の組合せとしては、下記表7及び8に示される組合せが挙げられる。
次に、一般式(III)で示されるアリールアミン化合物、並びに当該化合物として特に好適な下記一般式(IV)で示されるアリールアミン化合物について説明する。
上記両化合物において、
Ar11は、−R15−COO−R16で表される基で置換されたフェニル基(但し、R15は炭素数1〜4のアルキレン基、R16は炭素数1〜4のアルキル基。)、置換若しくは未置換の1価多環芳香族炭化水素基又は置換若しくは未置換の1価ヘテロ環基、
Ar12は、置換若しくは未置換のアリーレン基、
R11は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換若しくは未置換のアルキル基、
R12は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基、
R13及びR14は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基(但し、R13及びR14の少なくとも一方は置換若しくは未置換のアリール基を表し、R13及びR14は単結合又は2価の基により結合して環を形成してもよい。)、
R17は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換若しくは未置換のアルキル基、
rは0〜4の整数、をそれぞれ表す。
上記一般式(III)で示されるアリールアミン化合物、並びに当該化合物として特に好適な上記一般式(IV)で示されるアリールアミン化合物は、電荷輸送物質として用いることができ、電子写真感光体に適用したときに、高い感度と結着樹脂との優れた相溶性を発揮するスチリル基含有アリールアミン化合物である。また、かかるアリールアミン化合物を含有する電荷輸送層6は、塗布膜が均一で、繰返し使用による残留電位変動も低く、優れた環境維持性を発揮するようになる。
また、電荷輸送物質としての性能及び相溶性や成膜性の観点から、上記化合物の官能基等は以下の態様が好適である。
(1)化合物(III)における置換若しくは未置換の1価多環芳香族炭化水素基(Ar11):
(a)置換若しくは未置換の1価縮合多環式炭化水素基、又は、
(b)置換若しくは未置換のフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいビフェニル基。
(2)化合物(III)における置換若しくは未置換の1価ヘテロ環基(Ar11):
(a)置換若しくは未置換の1価縮合へテロ環基、又は、
(b)3〜6員のヘテロ環の少なくとも1つとベンゼン環の少なくとも1つが単結合又は2価の基により結合したヘテロ環状化合物からなる1価基。
(3)化合物(III)及び化合物(IV)における置換若しくは未置換のアリーレン基(Ar12):
(a)置換若しくは未置換のフェニレン基、
(b)置換若しくは未置換の2価縮合多環式炭化水素基、
(c)置換若しくは未置換の2価縮合複素環基、又は、
(d)置換若しくは未置換のフェニル基の2つが単結合又は2価の基により結合してなる2価基。
(4)R13及びR14が、単結合又は2価の基により結合して環を形成する場合における、当該2価の基:
(a)炭素数1〜3のアルキレン基、又は
(b)炭素数1〜3のアルケニレン基。
さらに、一般式(III)のアリールアミン化合物におけるAr11で表される基の好適な実施形態は以下のとおりである。
−R15−COO−R16で表される基で置換されたフェニル基は、以下の一般式(Ar1−1)で表される。一般式(Ar1−1)において、R15は炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく炭素数の1〜2のアルキレン基がより好ましい。R16は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数の1〜2のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
置換若しくは未置換の1価多環芳香族炭化水素基として好適な、置換若しくは未置換の1価縮合多環式炭化水素基は、2〜3個のベンゼン環を有するものがよく、以下の一般式(Ar1−2)、(Ar1−3)、(Ar1−4)で表される基が特に好適である。なお、以下の一般式におけるR19、R20及びR21は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
置換若しくは未置換の1価多環芳香族炭化水素基として好適な、置換若しくは未置換のフェニル基で置換されたビフェニル基としては、以下の一般式(Ar1−5)で表される基が挙げられ;炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されてもよいビフェニル基としては、以下の一般式(Ar1−6)で表される基が挙げられる。なお、以下の一般式におけるR17は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換若しくは未置換のアルキル基であり、このR17は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
置換若しくは未置換の1価ヘテロ環基として好適な、置換若しくは未置換の1価縮合へテロ環基としては、以下の一般式(Ar1−7)で表される基が特に好ましい。また、3〜6員のヘテロ環の少なくとも1つとベンゼン環の少なくとも1つが単結合又は2価の基(炭素数1〜3のアルキレン基、炭素数1〜3のアルケニレン基、−O−、−CO−、−COO−等)により結合したヘテロ環状化合物からなる1価基としては、ヘテロ原子がイオウ原子であるものがよく、このような基としては、以下の一般式(Ar1−8)、(Ar1−9)で表される基が挙げられる。なお、R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基又はハロゲン原子を表す。
上述した基(Ar11)の中では、一般式(Ar1−6)で表される基(ビフェニル骨格を有する基)又は一般式(Ar1−4)で表される基(フルオレン骨格を有する基)が、上記化合物を電荷輸送物質として用いたときの移動度の高さから特に好ましい。
一般式(III)及び(IV)のアリールアミン化合物における、Ar12で表される基の好適な実施形態は以下のとおりである。
Ar12として好適な、置換若しくは未置換のフェニレン基としては、以下の一般式(Ar2−1)で表される基が挙げられ;置換若しくは未置換の2価縮合多環式炭化水素基としては、以下の一般式(Ar2−2)、(Ar2−3)、(Ar2−4)で表される基が好適である。なお、以下の一般式におけるR23、R25、R26、R30は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコシキ基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基又はハロゲン原子を意味する。
Ar12として好適な、置換若しくは未置換の2価縮合複素環基としては、以下の一般式
(Ar2−6)で表される基が挙げられ;置換若しくは未置換のフェニル基の2つが単結合又は2価の基により結合してなる2価基としては、以下の一般式(Ar2−7)で表される基が好適である。なお、以下の一般式におけるR24、R27、R28、R29は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコシキ基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(Ar2−7)におけるcは0又は1を表し、cが0である場合は単結合を意味する。また、cが1である場合のVは、以下の(V−1)〜(V−11)のいずれかを表す。なお、以下の一般式におけるdは1〜10の整数、eは1〜3の整数である。
上述した基(Ar12)の中では、一般式(Ar2−7)で表される基においてcが0である基(ビフェニル骨格を有する基)が、上記化合物を電荷輸送物質として用いたときの移動度の高さから特に好ましい。
一般式(III)及び(IV)のアリールアミン化合物における、R11、R12、R13及びR14の好適な実施形態は以下のとおりである。
R11としては、水素原子、ハロゲン原子(例えば塩素、フッ素)、炭素数1〜4のアル
コキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)又は炭素数1〜4の置換若しくは未置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)が好ましい。
R12としては、水素原子、炭素数1〜4の置換若しくは未置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)又は炭素数6〜12のアリール基(例えば、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル)が好ましく、これらの中では水素原子が特に好ましい。
R13及びR14としては、各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)又はアリール基が好ましい。ここで、R13及びR14の少なくとも一方は、置換若しくは未置換のアリール基(例えば、フェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、3−t−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3−n−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基)である。
R13及びR14は、単結合又は2価の基により結合して環を形成してもよく、当該2価の基としては、炭素数1〜3のアルキレン基又は炭素数1〜3のアルケニレン基が好ましい。R13及びR14が単結合又は2価の基により結合して環を形成した構造(構造(a)〜(e))を以下に示す。なお、以下の構造ではR13及びR14が結合している炭素−炭素二重結合も同時に示してある。
一般式(III)又は一般式(IV)で表されるアリールアミン化合物では、R12、R13及びR14で置換されたビニル基が2つ存在するが、当該ビニル基のベンゼン環における置換位置は互いに同一であることが好ましい。すなわち、当該2つのビニル基はベンゼン環の窒素結合位を基準として、共にo位、m位又はp位であることが好ましい。
同様にR11も2つ存在するが、R11のベンゼン環における置換位置は互いに同一であることが好ましい。すなわち、2つのR11はベンゼン環の窒素結合位を基準として、共にo位、m位又はp位であることが好ましい。
R12、R13及びR14で置換されたビニル基の好適な置換位置はp位であり、R11の好適な置換位置はm位である。
一般式(III)又は一般式(IV)で表されるアリールアミン化合物の具体例((III−1)〜(III−64))を以下に示す。なお、表中「ビニル基の位置」とは、R12、R13及びR14で置換されたビニル基の置換位置を意味する。
一般式(III)又は一般式(IV)で表わされるアリールアミン系化合物は、公知の方法を用いて製造できる。例えば、公知のアリールアミン原料化合物をとして用いて、公知なカルボニル導入反応を行い(アシル化工程)、次いで、Wittig反応を行う(炭素−炭素二重結合導入工程)ことにより、目的の化合物を得る方法である。
以下の式は、アリールアミン原料化合物(III−a)にカルボニル基を導入して、アシル化アリールアミン(III−b)を得るアシル化工程を示すものである。なお、アリールアミン原料化合物(III−a)中のAr11、Ar12、R11及びr、並びにアシル化アリールアミン(III−b)のAr11、Ar12、R11、R12及びrは、一般式(III)におけるのと同義である。
アシル化工程においては、導入するアシル基がホルミル基(R12が水素原子の場合)である場合と、ホルミル基以外のアシル基(R12が水素原子以外の場合)である場合とで、例えば、以下のように反応条件を変えることが好ましい。
R12が水素原子の場合:
アリールアミン原料化合物(III−a)をオキシ塩化リンの存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させることで、アシル化アリールアミン(III−b)(ビスホルミル体)が得られる。この場合、ホルミル化剤を過剰に用いて、反応溶媒を兼ねることもできるが、o−ジクロロベンゼン、ベンゼン、塩化メチレン等の反応に不活性な溶媒を用いることもできる。反応温度は0℃から用いる溶媒の沸点の範囲で任意に設定可能である。好ましくは室温から、150℃以下である。
R12が水素原子以外の場合:
アリールアミン原料化合物(III−a)を塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸存在下、ニトロベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素等の溶媒中、一般式Cl−CO−R12で表わされる酸塩化物と反応させることにより、いずれでもアシル化アリールアミン(III−b)(ケトン体)が得られる。この場合の反応温度は、0℃から用いる溶媒の沸点の範囲で任意に設定可能である。好ましくは室温から、150℃以下である。
次に、炭素−炭素二重結合導入工程を実施するが、本工程では、上記アルデヒド体又はケトン体の化合物と下記亜燐酸ジアルキルエステル化合物(III−c)を塩基の存在下で室温から100℃程度の温度でWittig−Horner反応させて、目的化合物の一般式(III)で表されるアリールアミン化合物を得る。なお、亜燐酸ジアルキルエステル化合物(III−c)中のR13、R14は一般式(III)におけるのと同義であり、R31はメチル、エチル等の低級アルキル基を示す。
炭素−炭素二重結合導入工程において用いられる塩基としては、水素化ナトリウム;水酸化ナトリウム;ナトリウムアミド;ナトリウムメトキシド;ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシドが使われる。溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール;1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の炭化水素;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;又はこれら混合物を用いることができる。
反応後、一般式(III)のアリールアミン化合物は公知の方法で精製することが可能であり、精製には、例えば、シリカゲル、アルミナ、活性白土等の吸着を用いることができる。活性白土の場合、トルエン等の非極性溶媒中で100℃以上で吸着処理することが好ましく、これにより高純度の目的物質が得やすくなる。
電荷輸送物質として、一般式(III)で示されるアリールアミン系化合物、一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物及び一般式(II)で示されるベンジジン系化合物を併せて用いる場合、その混合割合は、重量比でアリールアミン系化合物:(トリアリールアミン系化合物とベンジジン系化合物との合計)が5:95〜95:5の範囲であることが望ましい。また、トリアリールアミン系化合物とベンジジン系化合物との混合割合は、重量比で5:95〜95:5の範囲であることが望ましい。上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物以外のものが併用される場合には、上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物の比率が全トリアリールアミン系化合物を基準として、10重量%以上であることが好ましい。
電荷輸送層6に用いられる結着樹脂としては特に制限されないが、電気絶縁性を示しフィルム形成可能な樹脂が好ましい。このような結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。また、これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が、電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れており、好ましく用いられる。
また、下記式(1)〜(5)で示される構造単位からなるポリカーボネート樹脂若しくはそれらの樹脂を構成する構造単位を共重合させたポリカーボネート樹脂を1種を単独で又は2種以上混合して用いることがさらに好ましい。この場合、電荷輸送物質等との相溶性がよく、均一な膜が得られ、特に良好な特性を示す。ポリカーボネート樹脂の分子量としては、粘度平均分子量で好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000である。なお、下記式(1)〜(5)におけるpは、それぞれ独立に上記平均分子量の範囲を満たす整数である。
結着樹脂の含有量は任意に設定可能であるが、電気特性低下、膜強度低下を抑制する点から、結着樹脂と電荷輸送物質との合計量100重量部に対して、好ましくは30〜70重量部、より好ましくは40〜70重量部、さらに好ましくは40〜65重量部、特に好ましくは45〜65重量部、最も好ましくは50〜60重量部である。
電荷輸送層6は、電荷輸送物質及び結着樹脂を所定溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層5上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶剤としては、特にテトラヒドロフランが主成分であることが好ましい。
なお、電荷輸送層を形成させる際、基体が100℃以上の状態であるときに、乾燥炉内を熱風循環させ感光体の少なくとも静電潜像形成領域の温度の最大値と最小値との差が5℃以下である状態が15分以上である乾燥処理を施すことが好ましい。
電荷輸送物質の偏析状態を面内で均一にするためには、電荷輸送物質を過剰に添加したり、強制乾燥条件を高温・長時間化し偏析を飽和状態にすることも考えられる。しかしながら、電荷輸送物質を過剰に添加すると、電荷輸送層の機械的・化学的耐性の劣化を伴う場合があり、強制乾燥条件の高温・長時間化は電荷輸送物質が電荷輸送層表面へ偏析し、電荷発生層・電荷輸送層界面の電荷の受け渡し障害を引き起こす場合もある。従って、電荷輸送層を形成する際には、上記のような乾燥処理が有効である。
また、電荷輸送層6には電子写真装置中で発生するオゾンやNOx等の酸化性ガス、又は光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’,−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
有機硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系及び有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系等の誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
その他の化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチルジチオカルバメート等がある。
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。本実施形態の電子写真感光体に使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等をあげる事ができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
また、電荷輸送層形成用塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを電荷輸送層に含まれる全固形分に対して、0.5ppm〜50ppmの範囲で微量添加することもできる。シリコーンオイルとしては、より具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。
電荷輸送層6の膜厚は、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜40μmであり、さらに好ましくは24〜35μmである。
更に、電荷輸送層表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。微粒子の一例として、ケイ素含有微粒子を挙げることができる。ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径1〜100nm、好ましくは10〜30nmの酸性若しくはアルカリ性の水分散液、又はアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。電荷輸送層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から電荷輸送層の全固形分中の0.1〜50重量%の範囲、好ましくは0.1〜30重量%の範囲で用いられる。
ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で平均粒子径1〜1000nm、好ましくは10〜500nmの、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子である。即ち、電荷輸送層表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。本実施形態の電子写真感光体における電荷輸送層中のシリコーン微粒子の含有量は、電荷輸送層(最表面層)の全固形分中の0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜15重量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子、“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集p89”に示される様なフッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物からなる微粒子を挙げることができる。
4弗化エチレン微粒子においては平均粒子径0.05〜3μm、好ましくは0.1〜0.7μmから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。また、分散助剤として分散液の分散安定性を向上させるため、フッ素系クシ型グラフトポリマーを用いることもできる。フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が好ましい。4弗化エチレン微粒子は、化学的に不活性で、電荷輸送層中に分散性されることで、電荷輸送層表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。本実施形態の電子写真感光体における電荷輸送層中の4弗化エチレン微粒子の含有量は、電荷輸送層(最表面層)の全固形分中の0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜15重量%の範囲である。
保護層7は、導電性材料及び結着樹脂を含んで構成される。この保護層は、帯電時の電荷輸送層6の化学的変化を防止したり、感光層3の機械的強度をさらに向上させる。
導電性材料としては、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン若しくは酸化アンチモンとの固溶体の担体、又はこれらの混合物、或いは単一粒子中にこれらの金属酸化物を混合したもの又は被覆したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられ、これらは必要に応じて架橋して使用することもできる。さらに、電荷輸送性を有し、架橋構造を有するシロキサン系樹脂を使用することもできる。電荷輸送性化合物を含むシロキサン樹脂硬化膜の場合、電荷輸送性化合物としては公知の材料であればいかなるものでも使用可能である。上記電荷輸送性化合物としては、例えば特開平10−95787号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−32716号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−236391号公報に開示された化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
電荷輸送性を有し、架橋構造を有するシロキサン系樹脂は、優れた機械強度を有する上に光電特性も十分であるため、ガラス転移点の最大値と最小値との差を調整し積層型感光体の電荷輸送層として用いることもできる。その場合、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なっても良いし、複数回重ね塗布した後でも良い。
保護層7(表面架橋硬化膜)には、帯電器で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高めることにより感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになる。従って、従来のものより強い酸化耐性が要求される。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20重量%以下が望ましく、10重量%以下がさらに望ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長等の目的でアルコール系溶剤に溶解する樹脂を加えることもできる。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、電気特性上ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。上記樹脂の分子量は2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。分子量が2000より小さいと所望の効果が得られなくなる傾向があり、他方、100000より大きいと溶解度が低くなり添加量が限られてしまったり、塗布時に製膜不良の原因になったりする傾向がある。添加量は、1〜40%が好ましく、1〜30%がさらに好ましく、5〜20%が最も好ましい。1%よりも少ない場合は所望の効果が得られにくくなる傾向があり、他方、40%よりも多くなると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる傾向がある。
更に、保護層7(電子写真感光体表面)の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、併用してもよい。微粒子の一例として、ケイ素含有微粒子を挙げることができる。ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径1〜100nm、好ましくは10〜30nmの酸性若しくはアルカリ性の水分散液、又はアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。最表面層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から最表面層の全固形分中の0.1〜50重量%の範囲、好ましくは0.1〜30重量%の範囲で用いられる。
ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で平均粒子径1〜500nm、好ましくは10〜100nmの、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子である。さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。本実施形態の電子写真感光体における最表面層中のシリコーン微粒子の含有量は、最表面層の全固形分中の0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子、“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集p89”に示される様なフッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物からなる微粒子を挙げることができる。
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。
また、これらとともに、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
以上説明したように第1実施形態の画像形成装置においては、キャビティーの容積が小さく、アパーチャーを使用するために発光量が少ないマルチビーム方式の露光装置14を用いた場合であっても、ガラス転移点の最大値と最小値との差が特定条件を満たす電子写真感光体12を用いることによって、画像形成プロセスの高速化と画質の向上との双方が実現可能となる。
また、第1実施形態の画像形成装置には、一成分系、二成分系の正規現像剤又は反転現像剤とも合わせて用いることができ、帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式、及び中間転写体を用いた転写方式においても、良好な電子写真特性、画質特性を得ることができる。
次に本発明の第2実施形態について説明する。図8は本発明の画像形成装置の第2実施形態を示す概略構成図である。図8に示す画像形成装置200は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれドラム状の導電性基体の外周面に感光層を備えるものであり、電荷輸送層におけるガラス転移点の最大値と最小値との差が特定条件を満たすものである。
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
さらに、ハウジング400内の所定の位置には面発光レーザアレイを光源に用いた露光装置403が配置されており、露光装置403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。
2…導電性支持体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、100…画像形成装置、12…電子写真感光体、14…帯電器、16…露光装置、18…現像装置、24…中間転写ベルト、32,42…転写器、44…定着器、50…面発光レーザアレイ、51…発光点、52…コリメートレンズ、54…ハーフミラー、56…レンズ、58…光量センサ、60…アパーチャ、62…シリンダレンズ、64…折り返しミラー、66…回転多面鏡、68,70…Fθレンズ、72,74…シリンダミラー、76…ピックアップミラー、78…ビーム位置検出センサ、80…制御部、82…記憶部、84…変調信号生成手段、88…駆動量制御手段、92…レベル変更手段、94…光量差設定手段、200…画像形成装置、400…ハウジング、402a〜402d…帯電ロール、403…露光装置、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、415a〜415d…クリーニングブレード、416…クリーニングブレード、500…被転写体。