JP3984556B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電、露光、現像、転写等を含む電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成装置において、帯電した電子写真感光体に静電潜像を形成させる方法として、複数本の光ビームを電子写真感光体上に走査させる方法(以下、「マルチビーム方式」という)が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−303997号公報
【特許文献2】
特開2001−311898号公報
【特許文献3】
特開平05−294005号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなマルチビーム方式の画像形成装置は画像形成プロセスの高速化に有効であると考えられているが、画質の点では必ずしも十分ではなく、特に、レーザーの本数を数多くできる面発光レーザアレイを用いた場合に問題となる。すなわち、電子写真感光体上に形成される静電潜像の中に露光終了までの光ビームの走査回数(照射回数)が異なる領域が混在し、各領域間での照射回数の相違が画像上に筋状の濃度ムラとして視認されることがある。
【0005】
図11は、スポット径50μmの30本のレーザビームを電子写真感光体上に各々走査させて1回の主走査で30本の走査線(走査線密度2600dpi)の走査を同時に行うと共に、主走査を1回行う毎に電子写真感光体を移動させて走査線を30本分ずつシフトさせた場合の、電子写真感光体の移動方向(副走査方向)に沿った露光エネルギーの分布を示すグラフである。
【0006】
図示の通り、各回の主走査における露光エネルギー分布は略台形状となる。各回の主走査により電子写真感光体に与えられる露光エネルギーの分布のうち、台形の頂部に相当するエネルギー分布の平坦な部分は、1回の露光で全露光エネルギーが加えられる領域(一重露光領域)であり、他方、台形の裾部に相当する部分は2回の露光により全露光エネルギーが加えられる領域(多重露光領域)である。
【0007】
本発明者らの検討によれば、多重露光領域の全露光エネルギーが一重露光領域の全露光エネルギーと等しい場合であっても、実際に得られる画像においては一重露光領域よりも多重露光領域の方が画像濃度が高くなり、筋状の濃度ムラが発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レーザの本数を数多くできる面発光レーザアレイを用いた場合であっても筋状の濃度ムラの発生を十分に抑制することができ、画質の向上と画像形成速度の高速化との双方を実現可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、導電性基体及び該基体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電した電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置であって、露光装置は、面発光レーザアレイを有し、8本以上の光ビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、電子写真感光体は、帯電電位の絶対値が500Vとなるように電子写真感光体を帯電させた後、光ビームと同一波長の単色光を前記電子写真感光体に照射して帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの量子効率が0.3以上であるであることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置によれば、面発光レーザアレイを有し、8本以上の光ビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置と共に、量子効率が上記特定条件を満たす電子写真感光体を用いることによって、静電潜像の濃度がより高水準で均一化され、静電潜像中に光ビームの照射回数が異なる領域があってもその濃度が十分に均一化されるため、筋状の濃度ムラの発生を十分に抑制することができ、画像形成プロセスの高速化と画質の向上との双方が実現可能となる。なお、本発明でいう量子効率とは、電子写真感光体に照射される光量子1個に対する、光励起により発生したキャリアーが移動して中和した電子写真感光体表面の電荷の個数(ゼログラフィックゲイン)を意味する。当該量子効率は、下記式(B):
η=(C・h・ν/e)・(dV/dE) (B)
[式中、Cは電子写真感光体の静電容量を表し、hはプランク定数を表し、νは露光光の振動数を表し、eは電子の電荷を表し、dV/dEは電子写真感光体の帯電電位(絶対値)が500Vから250Vまで減衰するときの照射光量当たりの電位減衰率を表す]
で表すことができる。ここで、式(B)中のdV/dEは電子写真感光体の帯電電位(絶対値)が500Vから250Vまで減衰するときの照射光量当たりの電位減衰率である。また、式(B)中のCは、電子写真感光体を回転させながら帯電、露光を行い、電子写真感光体への流入電流(I)と電位減衰量とを測定し、プロセス速度、露光幅より単位面積当たりの流入電荷量(Q)を求め、電位減衰量(V)と単位面積当たりの流入電荷量(Q)との傾きから、C=dQ/dVとして求められる。
【0011】
本発明においては、電子写真感光体の感光層にヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン及びトリスアゾ顔料から選ばれる少なくとも1種の電荷発生材料を含有せしめることが好ましい。上記特定の電荷発生材料を用いることによって、電子写真感光体の感度がより高められるため、画像形成速度の高速化及び画質の向上がより高水準で実現可能となる。
【0012】
本発明においては、電子写真感光体の感光層が、
CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、
CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、下記一般式(1)〜(4)のうちのいずれかで表されるトリスアゾ系顔料
から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。かかる電荷発生材料を用いることによって、異なる環境下での電子写真感光体の感度の変化が十分に抑制されるため、端面発光レーザと比較して発光量の制御範囲が狭くなる面発光レーザアレイの場合には、露光装置への負荷が少なくなり好ましく適用できる。
【0013】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
[式(1)〜(4)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はシアノ基を表し、Arはカップラー残基を表す。]
【0014】
また、本発明においては、画像形成装置の解像度が1200dpi以上であることが好ましく、2400dpi以上であることがより好ましい。解像度が1200dpi以上である場合、面発光レーザにより1回の操作で多数ドット幅を一度に走査できるため、走査回数を減らすことができ、露光装置への負荷が少なくなる。
【0015】
また、本発明においては、露光装置が有する面発光レーザアレイの発光点が2次元的に配列されていることが好ましい。これにより、電子写真感光体上に走査させる光ビームの数を容易に増加させることができ、画像形成速度をより有効に高速化できる。
【0017】
また、本発明においては、帯電電位の絶対値が500Vとなるように電子写真感光体を帯電させた後、光ビームと同一波長の単色光を電子写真感光体に照射して帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの半減露光量が、下記式(A);
EL/EM≦1.15 (A)
[式中、ELは10℃、15%RHにおける半減露光量を表し、EMは22℃、50%RHにおける半減露光量を表す]
で表される条件を満たすものであることが好ましい。当該半減露光量が上記の条件を満たすことにより、出力制御の幅が小さい面発光レーザへの負荷を少なくすることができ、筋状のムラの発生をより確実に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は本発明の画像形成装置に係る第1実施形態を示す概略構成図である。図1に示した画像形成装置10は電子写真電子写真感光体12を備えるもので、電子写真感光体12は駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。詳細は後述するが、電子写真感光体12はドラム状の導電性基体の外周面に感光層を備えるものであり、量子効率が特定条件を満たすものである。すなわち、電子写真感光体12は、帯電電位の絶対値が500Vとなるように電子写真感光体12を帯電させた後、後述する露光装置14の光ビームと同一波長の単色光を電子写真感光体12に照射して帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの量子効率が0.3以上のものである。この量子効率は、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。
【0020】
電子写真感光体12の略上方には、電子写真感光体12の外周面を帯電させる帯電器14が設けられている。
【0021】
また、帯電器14の略上方には露光装置(光ビーム走査装置)16が配置されている。詳細は後述するが、露光装置16は、面発光レーザアレイを用いた光源から射出される8本以上のレーザビームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、帯電器14により帯電した電子写真感光体12の外周面上を電子写真感光体12の軸線と平行に走査させる。
【0022】
電子写真感光体12の側方には現像装置18が配置されている。現像装置18は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器18Y,18M,18C,18Kが設けられている。現像器18Y,18M,18C,18Kは各々現像ローラ20を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナーを貯留している。
【0023】
また、電子写真感光体12の略下方には無端の中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24はローラ26,28,30に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体12の外周面に接触するように配置されている。ローラ26〜30はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト24を矢印Bの向きに回転させる。
【0024】
中間転写ベルト24を挟んで電子写真感光体12の反対側には転写器32が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像は転写器32によって中間転写ベルト24の画像形成面に転写される。
【0025】
中間転写ベルト24よりも下方側にはトレイ34が配置されており、トレイ34内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。図3におけるトレイ34の左斜め上方には取り出しローラ36が配置されており、取り出しローラ36による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対38、ローラ40が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ36が回転されることによりトレイ34から取り出され、ローラ対38、ローラ40によって搬送される。
【0026】
また、中間転写ベルト24を挟んでローラ30の反対側には転写器42が配置されている。ローラ対38、ローラ40によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト24と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト24の画像形成面に形成されたトナー像が転写器42によって転写される。転写器42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器44によって溶融定着された後に画像形成装置10の機体外へ排出され、図示しない排紙トレイ上に載置される。定着器44は請求項1に記載の定着手段に対応している。
【0027】
また電子写真感光体12を挟んで現像装置18の反対側には、電子写真感光体12の外周面を除電する機能及び外周面上に残留している不要トナーを除去する機能を備えた除電・清掃器22が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト24に転写されると、電子写真感光体12の外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域は、除電・清掃器22によって清掃される。
【0028】
図1に示した画像形成装置10では、電子写真感光体12が4回転する回転過程においてフルカラー画像の形成が行われる。すなわち、電子写真感光体12が4回転する間、帯電器14は電子写真感光体12の外周面の帯電、除電・清掃器22は外周面の除電を継続し、露光装置16は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で走査させることを、電子写真感光体12が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また現像装置18は、現像器18Y,18M,18C,18Kの何れかの現像ローラ20が電子写真感光体12の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、電子写真感光体12の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、電子写真感光体12の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、電子写真感光体12が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。
【0029】
これにより、電子写真感光体12が1回転する毎に、電子写真感光体12の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、電子写真感光体12が4回転した時点で電子写真感光体12の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0030】
このように、複数本の光ビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置14と共に、半減露光量が上記特定条件を満たす電子写真感光体12を用いることによって、静電潜像中に光ビームの照射回数が異なる領域があってもその濃度が十分に均一化されるので、筋状の濃度ムラの発生を十分に抑制することができ、画像形成プロセスの高速化と画質の向上との双方が実現可能となる。
【0031】
次に、電子写真感光体12及び露光装置16の好ましい例について詳述する。
【0032】
図2〜6はそれぞれ電子写真感光体12の好適な一例を示す模式断面図であり、導電性基体2と感光層3との積層方向に沿って電子写真感光体12を切断したときの部分断面図である。
【0033】
図2〜4に示す電子写真感光体は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層6)とに機能が分離された感光層3を備えるものである。
【0034】
図2に示す電子写真感光体12は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6が順次積層された構造を有するものである。
【0035】
図3に示す電子写真感光体12は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0036】
図4に示す電子写真感光体12は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0037】
一方、図5〜6に示す電子写真感光体は電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。
【0038】
図5に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、単層型感光層8が順次積層された構造を有するものである。
【0039】
図6に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、単層型感光層8、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0040】
次に、電子写真感光体12の各要素について詳述する。
【0041】
導電性基体2としては、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケルなどの金属ドラム;シート、紙、プラスチック又はガラス等の基体上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;上記基体上に酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したもの;上記基体上に金属箔をラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、上記基体上に塗布することによって導電処理したものなどが挙げられる。導電性基体2の形状としては、ドラム状の他、シート状、プレート状などのいずれであってもよい。
【0042】
導電性基体2として金属パイプ基材を用いる場合、当該基材の表面は、素管のままであってもよく、また、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を施してもよい。基材表面を粗面化することにより可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0043】
下引き層4は、積層構造からなる感光層3の帯電の際に、基体2から感光層3への電荷の注入を阻止すると共に、感光層3を基体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引き層4は、場合により、基体2の光の反射防止作用等を示す。
【0044】
下引き層4の材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば電荷発生層5)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。さらに、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0045】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0046】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0047】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0048】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0049】
下引き層4中には、感光体特性向上のために、導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。
【0050】
これらの金属酸化物には表面処理を施すことができる。表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。
【0051】
シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物の例としては前述した例と同じ物質があげられる。
【0052】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
【0053】
乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、シランカップリング剤を直接又は有機溶媒に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスと共に噴霧させることによって、均一な表面処理が行われる。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる。
【0054】
このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散した後、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールしにくいため、好ましくない。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物微粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
【0055】
下引き層4中の金属酸化物微粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引き層4中に用いられる金像酸化物微粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
【0056】
下引き層4中には、光散乱性の向上などの目的により、各種の有機もしくは無機微粉末を混合することができる。かかる微粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機顔料やテフロン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子などが挙げられる。これらの微粉末の粒径は0.01〜2μmであることが好ましい。微粉末は必要に応じて添加される成分であるが、その添加量は、下引き層4に含まれる固形分に対して、重量比で10〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることが好ましい。
【0057】
また、下引き層4の形成に用いられる塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。
【0058】
下引き層形成用塗布液を調製するに際し、前述の導電性物質や光散乱物質などの微粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に微粉末を添加して分散処理を行うことが好ましい。微粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。
【0059】
また、下引き層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0060】
下引き層4の膜厚は、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.05〜30μmである。
【0061】
電荷発生層5は、電荷発生材料及び結着樹脂を含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン及びトリスアゾ系顔料から選ばれる少なくとも1種である。これらの電荷発生物質を用いることにより、電子写真感光体12の感度及びその環境安定性が十分に高められるため、静電潜像中に光ビームの照射回数が異なる領域があってもその濃度を十分に均一化することができる。これらの電荷発生材料の中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、及びトリスアゾ系顔料から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、以下に示す電荷発生材料を用いることが特に好ましい。
【0062】
(i)CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、
(ii)CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、
(iii)一般式(1)で表されるトリスアゾ顔料、
(iv)一般式(2)で表されるトリスアゾ顔料、
(v)一般式(3)で表されるトリスアゾ顔料、
(vi)一般式(4)で表されるトリスアゾ顔料。
【0063】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はシアノ基を表す。
【0064】
また、Arはカップラー残基を表す。カップラー残基の好ましい例としては、下記一般式(5)〜(11)で表される基が挙げられる。
【0065】
【化13】
[上記式(5)中、X1は−OH、−N(R2)(R3)又は−NHSO2−R4を表し(R2及びR3は水素原子、アシル基又は置換若しくは未置換のアルキル基を表し、R4は置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を表す)、Y1は水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、ベンズイミダゾリル基、置換若しくは未置換のスルファモイル基、置換若しくは未置換のアロファノイル基又はーCON(R5)(Y2)を表し(R5は水素原子、アルキル基若しくはその置換対又はフェニル基若しくはその置換体を表し、Y2は炭化水素環基若しくはその置換体、複素環基若しくはその置換体又は−N=C(R6)(R7)を表し(R6は炭化水素環基若しくはその置換体、複素環基若しくはその置換体又はスチリル基若しくはその置換体を表し、R7は水素原子、アルキル基若しくはその置換体又はフェニル基若しくはその置換体を表すか、あるいはR6及びR7はそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい)、Zは炭化水素環基若しくはその置換体又は複素環基若しくはその置換体を表す。]
【0066】
【化14】
[式中、R8は置換又は未置換の炭化水素基を表す。]
【0067】
【化15】
[式中、R9は置換又は未置換の炭化水素基を表す。]
【0068】
【化16】
[式中、R10はアルキル基、カルバモイル基、カルボキシル基又はそのエステルを表し、Ar2は置換又は未置換の芳香族炭化水素基を表す。]
【0069】
【化17】
[式中、X2は2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表す。]
【0070】
【化18】
[式中、X3は2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表す。]
【0071】
【化19】
[式中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、R13は水素原子又はハロゲン原子を表す。]
【0072】
本発明に用いる電荷発生材料の製造方法としては、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕する方法や、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行う方法などが挙げられる。
【0073】
上記の処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、上記溶剤の2種以上の混合溶剤、上記溶剤と水との混合溶剤などが挙げられる。溶剤の使用量は、顔料結晶1重量部に対して、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。処理温度は、好ましくは0℃〜溶剤の沸点の範囲、より好ましくは10〜60℃の範囲である。
【0074】
また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤の使用量は、顔料結晶に対する重量比で、好ましくは0.5〜20倍、より好ましくは1〜10倍である。
【0075】
また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用される。溶解温度は、好ましくは−20〜100 ℃、より好ましくは0〜60℃である。硫酸の量は、顔料結晶に対する重量比で、好ましくは1〜100倍、より好ましくは3〜50倍である。硫酸に溶解した顔料結晶を析出させる溶剤としては、水、又は水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。かかる溶剤の使用量は任意である。また、顔料結晶を析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0076】
電荷発生材料には、電気特性の安定性向上、画質欠陥防止などのために表面処理を施すことができる。表面処理剤としてはカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物などを用いることができる。
【0077】
カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも特に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0078】
また、有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどの有機ジルコニウム化合物も用いることができる。
【0079】
また、有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0080】
また、有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0081】
電荷発生層5に用いられる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸との重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中で特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。電荷発生物質と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0082】
電荷発生層5は、例えば、上記特定の電荷発生材料及び結着樹脂を所定溶剤に加えた塗布液を用いて形成される。電荷発生層用塗布液を調製する際には、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の分散方法を用いることができる。この分散の際、電荷発生材料の平均粒径を、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0083】
また、分散後に分散時に混入した異物、分散不良な粗大粒子などを除去し、良好な電子写真感光体を得るために、遠心分離処理やフィルタリング処理を実施することができる。
【0084】
遠心分離処理やフィルタリング処理は所望の電子写真感光体特性が得られる条件であれば、いかなる条件でも実施することができるが、必要な電荷発生材料を除去してしまわないように注意する必要がある。
さらにこの電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
さらに、電荷発生層の電気特性の向上、画質の向上などのために、電荷発生層形成用塗布液に種々の添加剤を添加することもできる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0086】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0087】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0088】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0089】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0090】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0091】
電荷輸送層6は、例えば電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される。電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニルピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4,4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル]−(1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリルキナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質;クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質;あるいは上記化合物と同様の構造を有する基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0092】
電荷輸送層6に用いられる結着樹脂としては特に制限されないが、電気絶縁性を示しフィルム形成可能な樹脂が好ましい。このような結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が、電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れており、好ましく用いられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(重量比)は任意に設定可能であるが、好ましくは70:30〜40:60である。
【0093】
電荷輸送層6は、電荷輸送物質及び結着樹脂を所定溶剤に加えた塗布液を、電荷発生層5上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0094】
電荷輸送層6の膜厚は、電気特性低下、膜強度低下の抑制の点から、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜35μmである。
【0095】
電荷輸送層6の電荷移動度は、高速での使用及び筋状濃度ムラの抑制の点から、好ましくは1.0×10-6cm2/V・s以上、より好ましくは5.0×10-6cm2/V・s以上、さらに好ましくは1.0×10-5cm2/V・s以上である。
【0096】
さらに、本発明の電子写真感光体には電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光 ・ 熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加することができる。
【0097】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0098】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’,−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0099】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル-3-オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。
【0100】
有機硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0101】
有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフィートなどが挙げられる。
【0102】
有機硫黄系及び有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0103】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0104】
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0105】
ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0106】
その他の化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチルジチオカルバメートなどがある。
【0107】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。本発明の電子写真感光体に使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などをあげる事ができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
【0108】
また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0109】
本発明の電子写真感光体には、必要に応じて、保護層7を設けることもできる。保護層7を設けることにより、積層構造からなる電子写真感光体では帯電時の電荷輸送層6の化学的変化を防止したり、感光層2の機械的強度をさらに改善したりすることができる。この保護層7は、例えば導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて構成される。
【0110】
保護層7に用いる導電性材料としては、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモンあるいは酸化アンチモンとの固溶体の担体またはこれらの混合物、あるいは単一粒子中にこれらの金属酸化物を混合したもの、あるいは被覆したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
保護層7に用いる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられ、これらは必要に応じて架橋して使用することも出来る。さらに電荷輸送性を有し、架橋構造を有するシロキサン系樹脂を保護層として使用することもできる。電荷輸送性化合物を含むシロキサン樹脂硬化膜の場合、電荷輸送性化合物として公知の材料であればいかなるものでも使用可能であるが、例えば特開平10−95787号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−32716号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−236391号公報に示された化合物等が挙げられるがこれに限定されるものではない。電荷輸送性化合物を含むシロキサン樹脂硬化膜の具体例としては一般式(I)として表すことができる。
【0112】
F−[D−SiR14 3-a(OR15)a]b (I)
[一般式(I)中、Fは光機能性化合物から誘導される有機基を表し、Dは2価の基を表し、R14は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を表し、R15は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは1〜4の整数を表す。]
【0113】
一般式(I)中、Fは、光電特性、より具体的には光キャリア輸送特性を有する有機基であり、従来、電荷輸送物質として知られている光機能性化合物の構造をそのまま用いることができる。Fで表される有機基としては、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、などの正孔輸送性を有する化合物骨格、及びキノン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物、などの電子輸送性を有する化合物骨格等が挙げられる。
【0114】
一般式(I)中、−SiR14 3-a(OR15)aで表される基は、互いに架橋反応することにより、3次元的な Si−O−Si結合、すなわち無機ガラス質ネットワークを形成するためのものである。
【0115】
一般式(I)中、Dで表される2価の基は、電荷輸送性を付与するためのFを、3次元的な無機ガラス質ネットワークに直接結合で結びつけるためのものである。また、堅さの反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与し、膜としての強度を向上させるという働きもある。具体的には、−CnH2n−、−CnH2n-2−、−CnH2n-4−で表される2価の炭化水素基(nは好ましくは2〜15である)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=H−、−C6H4−C6H4−、およびこれらの組み合わせや置換基を導入したものなどが挙げられる。
【0116】
Fで表される有機基の好ましい例としては、下記一般式(II)で表される基が挙げられる。Fが一般式(II)で表される基であると、特に優れた光電特性と機械特性を示す。
【0117】
【化20】
[一般式(II) 中、Ar3〜Ar6は、それぞれ独立に置換あるいは未置換のアリール基を表し、Ar7は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、kは0又は1を表し、Ar3〜Ar7のうちb個は−D−SiR14 3-a(OR15)aで表される基に結合する結合手を有する。]
【0118】
上記一般式(II)中のAr3〜Ar6としては、下記式(II−1)〜(I−7)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0119】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
−Ar−Z’s−Ar−Xm (II−7)
[式中、R16は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R17〜R19はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Xは一般式(I)中の−D−SiR14 3-a(OR15)aを表し、tは1〜3の整数を表す。]
【0120】
ここで、式(II−7)中のArとしては、下記式(II−8)又は(II−9)で表されるものが好ましい。
【0121】
【化27】
【化28】
[式中、R10及びR11はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1〜3の整数を表す。]
【0122】
また、式(II−7)中のZ’としては、下記式(II−10)〜(II−17)のうちのいずれかで表されるものが好ましい。
−(CH2)q− (II−10)
−(CH2CH2O)r− (II−11)
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
[式中、R22及びR23はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tはそれぞれ1〜3の整数を表す。]
【0123】
上記式(II−16)、(II−17)中のWとしては、下記(II−18)〜(II−26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
−CH2− (II−18)
−C(CH3)2− (II−19)
−O− (II−20)
−S− (II−21)
−C(CF3)2− (II−22)
−Si(CH3)2− (II−23)
【化35】
【化36】
【化37】
[式中、uは0〜3の整数を表す]
【0124】
また、一般式(II)中、Ar5は、kが0のときはAr1〜Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である。
【0125】
一般式(I)中、Dで表される2価の基は、光電特性を付与するFと3次元的な無機ガラス質ネットワークに直接結合するAとを結びつける働きを担い、且つ、堅さの反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与し、膜としての強靱さを向上させるという役割を担うものである。Dで表される2価の基としては、具体的には、−CnH2n−、−CnH2n-2−、−CnH2n-4−で表わされる2価の炭化水素基(nは1〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−C6H4−C6H4−、及びこれらを組み合わせたものや置換基を導入したもの等が挙げられる。
【0126】
一般式(I)中、bは2以上であることが好ましい。bが2以上であると、一般式(I)で表される光機能性有機ケイ素化合物がSi原子を2個以上有することになり、無機ガラス質ネットワークの形成が容易となり、機械的強度が向上する傾向にある。
【0127】
一般式(I)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
また、一般式(I)で表される化合物と共に、硬化膜の機械的強度をさらに向上させる目的で、下記一般式(III)で表される化合物を併用してもよい。
【0129】
B(−SiR14 3-a(OR15)a)n (III)
[一般式(III)中、R14、R15、aは一般式(I)中のR14、R15、aと同一の定義内容を表す。Bは、n価の炭化水素基及び−NH−から選ばれる1種又はこれらの2種以上の組み合わせから構成されるn価の基を表し、nは2以上の整数を表す。]
【0130】
一般式(III)中のBは、前述の通り、n価の炭化水素基及び−NH−から選ばれる基又はこれらの2種以上の組み合わせから構成されるn価の基を表す。Bがn価の炭化水素基である場合又は当該炭化水素基を含んで構成される場合、当該炭化水素基は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基のいずれであってもよい。また、当該炭化水素基が有するアルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。さらに、当該炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0131】
一般式(III)で表される化合物は、−SiR14 3-a(OR15)aで表される加水分解性基を有する置換ケイ素基を有している化合物である。一般式 (III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物との反応又は一般式(III)で表される化合物同士の反応により、Si−O−Si結合を形成して3次元的な架橋硬化膜を与える。一般式(III)で表される化合物と一般式(I)で表される化合物とを併用すると、硬化膜の架橋構造が3次元的になり易く、また、硬化膜に適度な可とう性が付与されるため、より強い機械強度が得られる。一般式(III)で表される化合物の好ましい例を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
一般式(I)で示される化合物は単独で使用しても良いし、膜の成膜性、可とう性を調整するなどの目的から、一般式(III)で示される化合物や、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤を用いることができる。
【0134】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等を用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP-85、X-40-9740、X-40-2239 (以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)などを用いることができる。また、撥水製などの付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシランなどの含フッ素化合物を加えてもよい。シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して重量で0.25以下とすることが望ましい。これを越えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0135】
これらのコーティング液の調整は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が使用できるが、好ましくは沸点が100℃以下のものであり、任意に混合しての使用もできる。溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると一般式(I)で示される化合物が析出しやすくなるため、一般式(I)で示される化合物1重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは、1〜20重量部で使用される。反応温度および時間は原料の種類によっても異なるが、通常、0〜100℃、好ましくは10〜70℃、特に好ましくは、10〜50℃の温度で行うことが好ましい。反応時間に特に制限はないが、反応時間が長くなるとゲル化を生じ易くなるため、10分〜100時間の範囲で行うことが好ましい。
【0136】
コーティング液調整のために、系に不溶な固体触媒として以下のような触媒を用い、あらかじめ加水分解することができる。
陽イオン交換樹脂:アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)など
陰イオン交換樹脂:アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)など
プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体:Zr(O3 PCH2 CH2 SO3 H)2 ,Th(O3 PCH2 CH2 COOH)2 など
プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン:スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなど
ヘテロポリ酸:コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸など
イソポリ酸:ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸など
単元系金属酸化物:シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなど
複合系金属酸化物:シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類など
粘土鉱物:酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなど
金属硫酸塩:LiSO4 ,MgSO4 など
金属リン酸塩:リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなど
金属硝酸塩:LiNO3 ,Mn(NO3 )2 など
アミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体:シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体など
アミノ基を含有するポリオルガノシロキサン:アミノ変性シリコーン樹脂など。
【0137】
これらの触媒のうち、少なくとも1種を用いて加水分解縮合反応を行わせる。これらの触媒は、固定床中に設置し反応を流通式に行うこともできるし、バッチ式に行うこともできる。触媒の使用量は、特に限定されないが、加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の合計量に対して0.1〜20重量%が好ましい。
【0138】
加水分解縮合させる際の水の添加量は特に限定されないが、生成物の保存安定性やさらに重合に供する際のゲル化抑制に影響するため、好ましくは一般式(I)で示される化合物の加水分解性基をすべて加水分解するに必要な理論量に対して30〜500%、さらに好ましくは50〜300%の範囲の割合で使用することが好ましい。水の量が500%よりも多い場合、生成物の保存安定性が悪くなったり、析出しやすくなる。一方、水の量が30%より少ない場合、未反応の化合物が増大してコーティング液を塗布、硬化時に相分離を起こしたり、強度低下を起こしやすい。
【0139】
さらに、硬化触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などのプロトン酸、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどの有機アルミニウム化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、保存安定性の点で金属化合物が好ましく、さらに、金属のアセチルアセトナート、あるいは、アセチルアセテートが好ましく、特にアルミニウムトリアセチルアセトナートが好ましい。硬化触媒の使用量は任意に設定できるが、保存安定性、特性、強度などの点で加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の合計量に対して0.1〜20重量%が好ましく、0.3〜10重量%がより好ましい。硬化温度は、任意に設定できるが、所望の強度を得るためには60℃以上、より好ましくは80℃以上に設定される。硬化時間は、必要に応じて任意に設定できるが、10分〜5時間が好ましい。また、硬化反応を行ったのち、高湿度状態に保ち、特性の安定化を図ることも有効である。さらに、用途によっては、ヘキサメチルジシラザンや、トリメチルクロロシランなどを用いて表面処理を行い、疎水化することもできる。
【0140】
電子写真感光体の表面架橋硬化膜には、帯電器で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。電子写真感光体の表面の機械的強度を高めてその寿命を長くすると、電子写真感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来よりも強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20重量%以下が好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0141】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0142】
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えることもできる。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(例えば積水化学社製エスレックB、Kなど)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。特に、電気特性上ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。上記樹脂の平均分子量は2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。平均分子量が2,000未満であると所望の効果が得られにくい傾向にある。また、平均分子量が100,000を超えると、溶解度が低くなり添加量が限られてしまったり、塗布時に製膜不良の原因になったりする。樹脂の添加量は1〜40重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。樹脂の添加量が1重量%未満の場合は所望の効果が得られにくい傾向にあり、また、40重量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる傾向にある。
【0143】
また、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、各種微粒子を添加することもできる。微粒子は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。微粒子の一例として、ケイ素含有微粒子を挙げることができる。ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径1〜100nm、好ましくは10〜30nmの酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。最表面層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、最表面層の全固形分を基準として0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の範囲で用いられる。
【0144】
ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、平均粒子径1〜500nm、好ましくは10〜100nmの、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。本発明の電子写真感光体における最表面層中のシリコーン微粒子の含有量は、最表面層の全固形分中の0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
【0145】
また、その他の微粒子としては、四弗化エチレン、三弗化エチレン、六弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される様な、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーとを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサンなどのヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサンなどのビニル基含有シクロシロキサン類、等の環状のシロキサン等が挙げられる。
【0146】
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
【0147】
電荷輸送性を有し、架橋構造を有するシロキサン系樹脂は、優れた機械強度を有する上に光電特性も十分であるため、これをそのまま積層型感光体の電荷輸送層として用いることもできる。その場合、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、 1 回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行う場合、加熱処理は塗布の度に行なっても良いし、複数回重ね塗布した後でも良い。
【0148】
単層型感光層8は、電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して構成される。結着樹脂としては、前記電荷発生層および電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生物質の含有量は、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは20〜50重量%である。単層型感光層8には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送物質や高分子電荷輸送物質を添加してもよい。その添加量は5〜50重量%とすることが好ましい。また、一般式(I)で示される化合物を加えてもよい。塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記と同様のものを用いることができる。膜厚は5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとするのがさらに好ましい。
【0149】
本発明の電子写真感光体の半減露光量は、帯電電位の絶対値が500Vとなるように電子写真感光体を帯電させた後、光ビームと同一波長の単色光を電子写真感光体に照射して帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの半減露光量が上記式(A)で表される条件を満たすことが好ましい。当該半減露光量が式(A)で表される条件を満たすことにより、筋状の濃度ムラの発生をより確実に防止することができ、さらに、発光量の制御範囲が狭くなる面発光レーザアレイの場合には露光装置への負荷を低減することができる。
【0150】
次に、図7を参照し、露光装置16について説明する。露光装置16はm本(mは少なくとも8以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ50を備えている。なお、図7では、簡略化のためにレーザビームを3本のみ示しているが、面発光レーザをアレイ化して成る面発光レーザアレイ50は、例えば数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列(面発光レーザアレイ50から射出されるレーザビームの配列)についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
【0151】
図8は、発光点が2次元的に配列されたレーザアレイ50を示す平面図である。図示の通り、レーザアレイ50には、所定の間隔で、主走査方向に4個、副走査方向に4個の計16個の発光点51が2次元的に配置されている。また、主走査方向に並んだ発光点51は、副走査方向に隣り合う発光点51との距離を4等分した距離を1ステップとし、副走査方向に1ステップずつ段階的にずれるように配置されている。すなわち、副走査方向に限ってみれば、1ステップ毎に発光点51が配置されていることになる。このように副走査方向に段階的にずらして発光点51を配置することにより、全ての発光点54が異なる走査線を走査することができるようになっている。これにより、レーザアレイ50は16本の走査線を同時に走査する。
【0152】
図7に戻り、面発光レーザアレイ50のレーザビーム射出側には、コリメートレンズ52、ハーフミラー54が順に配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、コリメートレンズ52によって略平行光束とされた後にハーフミラー54に入射され、ハーフミラー54によって一部が分離・反射される。ハーフミラー54のレーザビーム反射側にはレンズ56、光量センサ58が順に配置されており、ハーフミラー54によって主レーザビーム(露光に用いるレーザビーム)から分離・反射された一部のレーザビームは、レンズ56を透過して光量センサ58へ入射され、光量センサ58によって光量が検出される。
【0153】
なお、面発光レーザは、露光に用いるレーザビームが射出される側と反対側からはレーザビームが射出されない(端面発光レーザでは両側から射出される)ため、レーザビームの光量を検出・制御するためには、上記のように露光に用いるレーザビームの一部を分離して光量検出に供することが必要になる。
【0154】
ハーフミラー54の主レーザビーム射出側にはアパーチャ60、副走査方向にのみパワーを有するシリンダレンズ62、折り返しミラー64が順に配置されており、ハーフミラー54から射出された主レーザビームは、アパーチャ60によって整形された後に、回転多面鏡66の反射面近傍で主走査方向に長い線状に結像するようにシリンダレンズ62によって屈折され、折り返しミラー64によって回転多面鏡66側へ反射される。なお、アパーチャ60は複数本のレーザビームを均等に整形するために、コリメートレンズ52の焦点位置近傍に配置することが望ましい。
【0155】
回転多面鏡66は、図示しないモータの駆動力が伝達されて図7中の矢印C方向に回転され、折り返しミラー64によって反射されて入射されたレーザビームを主走査方向に沿って偏向・反射する。回転多面鏡66のレーザビーム射出側には主走査方向にのみパワーを有するFθレンズ68,70が配置されており、回転多面鏡66によって偏向・反射されたレーザビームは、電子写真感光体12の外周面上を略等速で移動し、且つ主走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面上に一致するようにFθレンズ68,70によって屈折される。
【0156】
Fθレンズ68,70のレーザビーム射出側には、副走査方向にのみパワーを有するシリンダミラー72,74が順に配置されており、Fθレンズ68,70を透過したレーザビームは、副走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面に一致するようにシリンダミラー72,74によって反射され、感光体ドラム12の外周面上に照射される。なお、シリンダミラー72,74は回転多面鏡66と電子写真感光体12の外周面を副走査方向において共役にする面倒れ補正機能も有している。
【0157】
また、シリンダミラー72のレーザビーム射出側には、レーザビームの走査範囲のうち走査開始側の端部(SOS:Start Of Scan)に相当する位置にピックアップミラー76が配置されており、ピックアップミラー76のレーザビーム射出側にはビーム位置検出センサ78が配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、回転多面鏡66の各反射面のうちのレーザビームを反射している面が、入射ビームをSOSに相当する方向へ反射する向きとなったときに、ピックアップミラー76で反射されてビーム位置検出センサ78に入射される(図7の想像線も参照)。
【0158】
ビーム位置検出センサ78から出力された信号は、回転多面鏡66の回転に伴って電子写真感光体12の外周面上を走査されるレーザビームを変調して静電潜像を形成するにあたり、各回の主走査における変調開始タイミングの同期をとるために用いられる。
【0159】
また、本実施形態に係る露光装置16では、コリメートレンズ52とシリンダレンズ62、2枚のシリンダミラー72,74が各々副走査方向においてアフォーカルになる様に配置されている。これは、複数本のレーザビームの走査線湾曲(BOW)の差と複数本のレーザビームによる走査線間隔の変動を抑制
するためである。
【0160】
続いて、画像形成装置10の制御装置のうち、露光装置16の面発光レーザアレイ50からのレーザビームの射出を制御する部分(以下、この部分を制御部80と称する)の構成について、図9を参照して説明する。制御装置は、画像形成装置10によって形成すべき画像を表す画像データを記憶するための記憶部82を内蔵しており、記憶部82に記憶された画像データは、画像形成装置10によって画像が形成される際に制御部80の変調信号生成手段84に入力される。
【0161】
図示は省略するが、変調信号生成手段84にはビーム位置検出センサ78が接続されている。変調信号生成手段84は、記憶部82から入力された画像データを、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの何れかに各々対応するm個の画像データに分解し、分解したm個の画像データに基づき、ビーム位置検出センサ78から入力された信号によって検知されるSOSのタイミングを基準として、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの各々をオンオフさせるタイミングを規定するm個の変調信号を生成し、レーザ駆動回路(LDD)86に出力する。
【0162】
LDD86には駆動量制御手段88(詳細は後述)が接続されており、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームを、変調信号生成手段84から入力された変調信号に応じたタイミングでオンオフすると共に、オン時のレーザビームの光量を、駆動量制御手段88から入力される駆動量設定信号に対応する光量にするためのm個の駆動電流を生成し、面発光レーザアレイ50のm個の面発光レーザに各々供給する。
【0163】
これにより、面発光レーザアレイ50からは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされると共に、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたm本のレーザビームが射出され、このm本のレーザビームが電子写真感光体12の外周面上を各々走査・露光されることで、電子写真感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置18によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器32,42による転写を経て用紙Pに転写され、定着器44によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
【0164】
一方、画像形成装置10は、電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像、中間転写ベルト24の外周面上に転写されたトナー像、及び用紙Pに記録された画像の何れかの濃度を検出する濃度センサ(図示省略)を備えており、この濃度センサは制御部80に接続されている。なお、本実施形態のように多数本(m本)のレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で同時に走査・露光して画像(詳しくは静電潜像)を形成する場合、各回の主走査におけるm本のレーザビームによる走査領域の境界付近ではレーザビームが2回照射(露光)される。
【0165】
なお、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図1には帯電装置としてスコロトロンを用いた例を示したが、帯電ローラや帯電ブラシを備える接触帯電方式の帯電装置を用いてもよい。
【0166】
また、本発明の画像形成装置で用いられる現像剤は、一成分系、二成分系のいずれであってもよく、また、正規現像剤、反転現像剤のいずれであってもよい。
【0167】
また、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに被転写媒体に転写する中間転写方式のものであってもよい。
【0168】
また、本発明の画像形成装置は、図1に示したものの他、白黒画像用の画像形成装置やタンデム式のカラー画像形成装置としてもよい。
【0169】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0170】
[実施例1]
ED管アルミニウム基体の外周面をD50が30μmの球状のアルミナ微粉末を用いて液体ホーニング処理し、中心線平均粗さRaが0.18μmに粗面化された30mmφの導電性基体を得た。
【0171】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4重量部を溶解したn−ブチルアルコール溶液170重量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30重量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)3重量部を添加し、混合攪拌して下引き層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、浸漬塗布装置を用いて上記基体の外周面に塗布し、室温で5分間風乾を行った後、基体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。さらに、処理後の基体を熱風乾燥機に入れて、170℃で10分間乾燥を行い、膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
【0172】
次に、下記式(12)で表され、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン4重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1重量部、n−酢酸ブチル120重量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0173】
【化38】
【0174】
次に、電荷輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン5重量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)5重量部、テトラヒドロフラン80重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、120℃で40分の乾燥を行うことにより膜厚28μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0175】
このようにして得られた電子写真感光体を用いて、図1に示す構成を有する画像形成装置を作製した。なお、露光装置としては、面発光レーザアレイの発光点が6×6に二次元に配列され、レーザービーム数mが32本、光レーザの波長が780nm、走査線数が2400dpiのものを用いた。
【0176】
[実施例2]
電荷発生物質として、実施例1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、下記式(13)で表され、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0177】
【化39】
【0178】
[実施例3]
電荷発生物質として、実施例1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、下記式(14)で表されるトリスアゾ系顔料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0179】
【化40】
【0180】
[実施例4]
電荷発生物質として、実施例1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、下記式(15)で表されるトリスアゾ系顔料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0181】
【化41】
【0182】
[実施例5]
電荷発生物質として、実施例1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも27.3°の位置に回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0183】
[比較例1]
電荷発生物質として、実施例1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりにx型無金属フタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0184】
[実施例6]
先ず、直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基体を用意した。
【0185】
次に、酸化亜鉛(平均粒子径70nm、テイカ社製試作品)100重量部及びトルエン500重量部の混合物を攪拌し、シランカップリング剤(KBM603、信越化学社製)1.5重量部を添加してさらに2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0186】
このようにして表面処理が施された酸化亜鉛60重量部を、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)15重量部及びブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)15重量部と共にメチルエチルケトン85重量部に溶解して溶液とした。この溶液38重量部をメチルエチルケトン25重量部と混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散処理を行い、分散液を得た。得られた分散液に、平均粒径4.5μmのシリコーン樹脂ボール(GEシリコーン(株)製、トスパール145)3.5重量部と、触媒としてのジオクチルスズジラウレート0.005重量部とを添加し、撹拌して、下引き層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて上記基体上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引き層を得た。
【0187】
次に、上記式(12)で表され、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン4重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1重量部、n−酢酸ブチル120重量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0188】
次に、電荷輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン5重量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)5重量部、テトラヒドロフラン80重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、120℃で40分の乾燥を行うことにより膜厚28μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0189】
[実施例7]
電荷発生物質として、実施例6におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、上記式(13)で表され、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンを用いたこと以外は実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0190】
[実施例8]
電荷発生物質として、実施例6におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、上記式(14)で表されるトリスアゾ系顔料を用いたこと以外は実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0191】
[実施例9]
電荷発生物質として、実施例6におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、下記式(15)で表されるトリスアゾ系顔料を用いたこと以外は実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0192】
[実施例10]
電荷発生物質として、実施例6におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも27.3°の位置に回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いたこと以外は実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0193】
[比較例2]
電荷発生物質として、実施例6におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりにx型無金属フタロシアニンを用いたこと以外は実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製し、さらに画像形成装置を作製した。
【0194】
(半減露光量E1/2の測定)
次に、実施例1〜10及び比較例1〜2で得られた各電子写真感光体について、以下の手順で半減露光量E1/2を測定した。
【0195】
図10は半減露光量の測定に用いた装置を示す説明図である。図中、電子写真感光体12は円筒の中心軸を中心として一定速度で回転可能となっている。電子写真感光体12の周囲には、その回転方向に沿って帯電装置(スコロトロン)14、露光装置101、電位測定装置102、除電用露光装置103が順次配置されている。露光装置101において、白色光源104から出射された光は、バンドパスフィルター105により単色化されて電子写真感光体12に入射する。この入射光の光量は、複数のNDフィルターと不透過板とを組み合わせた光量調整装置106により調整される。露光装置101は、電子写真感光体12の中心軸と帯電装置14とを結ぶ線に対する入射光の角度が45°となるように配置されている。また、電位測定装置102及び除電用露光装置103はそれぞれ、電子写真感光体12の中心軸を中心とし、帯電装置14を基準として90°及び270°の位置に配置されている。
【0196】
上記装置を用い、電子写真感光体を、露光量が0のときの電位を基準として帯電電位が−500Vとなるように帯電させた後、露光装置101から電子写真感光体12に波長780nmの単色光を入射させた。このとき、露光量を変化させながら、電位測定装置102で測定される電位(露光後電位)を測定して露光量に対する電位減衰曲線を描き、露光後電位が帯電電位の1/2(−250V)となる露光量(半減露光量)及び量子効率を求めた。10℃、15%RHで測定された半減露光量EL、22℃、50%RHで測定された半減露光量EM及び両者の比EL/E M を表2に示す。なお、除電用露光装置103の露光波長は650nmとした。
【0197】
(画質の評価)
実施例1〜10及び比較例1〜2の各画像形成装置について、22℃、50%RHの2条件でプリント試験を行い、筋状濃度ムラの発生の有無を調べた。得られた結果を表2に示す。表2中、Aは筋状濃度ムラの発生が全くないか極軽微なもの、Bは筋状濃度ムラの発生が軽微なもの、Cは筋状濃度ムラの発生が顕著なものを意味する。
【0198】
(電荷移動度の評価)
電子写真感光体に形成された電荷輸送層の電荷移動度をXTOF法にて測定した。実施例1〜10に共通して形成された電荷輸送層の電界20V/μmにおける電荷移動度は1.04×10-5cm2/V・sであった。
【0199】
【表2】
【0200】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の画像形成装置によれば、レーザの本数を数多くできる面発光レーザアレイを用いた場合であっても筋状の濃度ムラの発生を十分に抑制することができ、画像形成速度の高速化と画質の向上との双方が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明にかかる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明にかかる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明にかかる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明にかかる電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図7】本発明にかかる露光装置(光走査装置)の一例を示す概略構成図である。
【図8】発光点が2次元的に配列されたレーザアレイを示す平面図である。
【図9】本発明にかかる制御装置の一例を示す概略構成図である。
【図10】半減露光量の測定装置を示す概略構成図である。
【図11】電子写真感光体の移動方向(副走査方向)に沿った露光エネルギーの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
2…導電性支持体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、10…画像形成装置、12…感光体ドラム、14…帯電器、16…露光装置、18…現像装置、24…中間転写ベルト、32、42…転写器、44…定着器、50…面発光レーザアレイ、51…発光点、52…コリメートレンズ、54…ハーフミラー、56…レンズ、58…光量センサ、60…アパーチャ、62…シリンダレンズ、64…折り返しミラー、66…回転多面鏡、68、70…Fθレンズ、72、74…シリンダミラー、76…ピックアップミラー、78…ビーム位置検出センサ、80…制御部、82…記憶部、84…変調信号生成手段、88…駆動量制御手段、92…レベル変更手段、94…光量差設定手段。
Claims (5)
- 導電性基体及び該基体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置であって、
前記露光装置は、面発光レーザアレイを有し、8本以上の光ビームを前記電子写真感光体上に同時に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、
前記電子写真感光体は、帯電電位の絶対値が500Vとなるように前記電子写真感光体を帯電させた後、前記光ビームと同一波長の単色光を前記電子写真感光体に照射して前記帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの量子効率が0.3以上であり、
前記感光層が、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン及びトリスアゾ顔料から選ばれる少なくとも1種の電荷発生材料を含有する
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記感光層が、
CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°及び28.2°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、
CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、並びに
下記一般式(1)〜(4)のうちのいずれかで表されるトリスアゾ系顔料
から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記画像形成装置の解像度が1200dpi以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
- 前記面発光レーザアレイの発光点が2次元的に配列していることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 帯電電位の絶対値が500Vとなるように前記電子写真感光体を帯電させた後、前記光ビームと同一波長の単色光を前記電子写真感光体に照射して前記帯電電位の絶対値を250Vまで減衰させたときの半減露光量が、下記式(A);
E L /E M ≦1.15 (A)
[式中、E L は10℃、15%RHにおける半減露光量を表し、E M は22℃、50%RHにおける半減露光量を表す]
で表される条件を満たすものであることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
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