JP2005024851A - 光ファイバカールコード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光ファイバコード2を螺旋状に曲げ、長手方向に伸縮性をもつカール構造を有する光ファイバカールコード1において、長手方向の伸びに制限を加える伸縮長規制部材21を備えたものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石英系光ファイバによる光ファイバコードに係り、特に、光ファイバカールコードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタル芯線によるカールコードは伸縮性があり、収縮時の収納性に優れることから、旧来型の電話機(受話器が有線で本体と接続されているもの)のコードを始めとして広く使用されている。
【0003】
光ファイバによるカールコードも、以前から実施されている。
【0004】
従来、光ファイバは、短波長帯用のマルチモードファイバが主流であった(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0005】
カールコードの製造方法は、巻き芯に光ファイバコードを巻き付けた状態で高温加熱して、加熱変形によりカール形状を保持するものである。石英系光ファイバにおいては、光ファイバ被覆及びコード被覆に加熱変形を与え、プラスチックファイバにおいては、光ファイバ自身も含めて変形を与えることにより、カール形状を保持している。
【0006】
コード芯線をメタルから光ファイバに置き換えるにあたり問題となるのが、光ファイバを曲げたり、捩った場合に発生する光伝送損失の増加であるが、最近曲げ損失に関して従来の光ファイバ以上に耐性を持った光ファイバが報告されている。
【0007】
例えば、ホーリーファイバ(以下、HFと称する)は、コアの周辺に複数の空孔を持ち、光ファイバの実効的な屈折率を下げることで、光の閉じ込め効果を増強し、従来の光ファイバよりも小さな曲げ径で曲げても光の損失が少ない。例として、直径10mmで曲げても光損失が0.001dBのものもある。そのため、HFを光ファイバカールコード用の光ファイバとして使用すれば、小さい曲げが螺旋状に連なるカールコード形状にしても、光の損失の増加はほとんど生じない(非特許文献3参照)。
【0008】
カールコードの目的は、コードが繋ぐ2点間の間隔を自由に設定したり、変化させることである。小さく曲げても損失が増加しないHFを用いた光ファイバカールコードを使用すれば、そのコードを伸縮させても損失変動が発生しないことを意味し、伸縮に対して損失特性が非常に安定した光ファイバカールコードを得ることができる。
【0009】
【非特許文献1】
昭和60年度電子情報通信学会総合全国大会、2116、「光カールコードの開発」、太宰他、p.9−106
【非特許文献2】
昭和60年度電子情報通信学会総合全国大会、2117、「光カールコードの試作検討」、小林他、p.9−107
【非特許文献3】
2003年度電子情報通信学会、C−3−90、「ホーリーファイバの実用化に関する一検討」、姚兵他
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カールコードはその特長である伸縮性を保つために、コードの端末間の距離を可変できるが、可変の際にコードを完全に伸ばしきる(曲げがなく直線状になる)ところまで伸ばしてしまう恐れがある。
【0011】
通常、光ファイバコードの両端末部は機械的な接続が可能なように光コネクタが装着されている。光ファイバは、石英製のものが多く使用されているが、その直径は通常125μmと非常に細い。そのため、光コネクタに光ファイバを実装固定する際の光ファイバ保持力は大きくなく、光コネクタと光ファイバコードとをあまり強い力で引っ張ることはできない。JIS C 6821(光ファイバ機械特性試験方法)には、引っ張り試験の規格があり、カールコードを引っ張ることで光コネクタにかかる力は5kg以下と規定されている。カールコードを引っ張る力が規定の5kgよりも小さく、カールコードの伸びに充分な余裕がある範囲でのコードの伸びは問題ない。
【0012】
しかしながら、光ファイバカールコードの場合、光コネクタ間の間隔を自由に設定する条件下で使用される機会が多く、規定(5kg以下)よりも強い力で引っ張られカールコードが伸びきった状態が度重なると、光ファイバカールコードの破損が生じたり、光コネクタに過剰な引っ張り荷重が掛かり破損する。このように、光コネクタ間の間隔を変更する際に5kgを超える過剰な力が光ファイバコードと光コネクタ間に掛かる可能性は充分に考えられる。
【0013】
即ち、光ファイバカールコードでは通常の光ファイバコード以上の頻度で、光ファイバコードから光コネクタに引っ張り荷重を受ける機会が多いと予想され、最悪の場合、光コネクタと光ファイバコードが破損してしまう恐れがある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、伸びを制限する機構を備える光ファイバカールコードを引張った際に、光コネクタと光ファイバカールコードに損傷を与えない光ファイバカールコードを提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、光ファイバコードを螺旋状に曲げ、長手方向に伸縮性をもつカール構造を有する光ファイバカールコードにおいて、長手方向の伸びに制限を加える伸縮長規制部材を備えたものである。
【0016】
請求項2の発明は、両端に接続用の光ファイバコネクタを実装し、該両コネクタに伸縮長規制部材を連結して、該両コネクタの間隔が一定距離以上にならないようにするものである。
【0017】
請求項3の発明は、上記伸縮長規制部材は、伸縮性部材と、その伸縮性部材の伸縮に追従して伸張すると共に所定長さでその伸縮性部材の伸張を規制するボールチェーンなどの長さ規制部材とからなるものである。
【0018】
請求項4の発明は、上記伸縮長規制部材を、螺旋状のカールコードの螺旋の内側に挿通して設けるものである。
【0019】
請求項5の発明は、コードに内蔵する光ファイバが、コアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本発明の好適実施の形態で用いる光ファイバコード2の断面構造図を示す。
【0022】
図示した光ファイバコード2は、0.25mmUV被覆のHF6にナイロン被覆7を施し、d=0.9mmのナイロン芯線7とした。更に、ナイロン芯線7を合計約4000デニールのケブラー繊維8で囲繞して、外径d=2.0mm/内径d=1.5mmの難燃剤入りハイトレル(東レ・デュポン社製)のコード外被9で被覆した。本光ファイバコード2は、宅内で使用されることを前提としたもので、無機リン系の難燃剤を重量比で約25%配合し、60°傾斜難燃試験をクリアした。
【0023】
次に光ファイバコード2に使用するHF6について説明する。
【0024】
図2は、光ファイバコード2に使用するHF6の断面図である。HF6は、光を伝送するコア10と、コア10よりも屈折率の低いクラッド12と、コア10の周囲に設けられた空孔11とを備えて構成される。HF6のクラッド12の直径は、d=125μm、中心のコア10は、通常のシングルモードファイバ(以下、SMFと称する)同様にゲルマニウムが添加されている。
【0025】
コア10の直径は、約9μm、周囲の純粋石英クラッド12に対する比屈折率差は0.35%である。コア10の周囲には内径d=8μmの6個の空孔11が円周方向に等間隔に光ファイバ全長にわたって形成されている。
【0026】
HF6の特徴は、コア10周囲に設けられた空孔11周辺部の実効的な屈折率が石英クラッド12よりも低くなるので、コア10とクラッド12との間の実効的な比屈折率が通常のSMFよりはるかに大きくなり、その結果コア10への光閉じ込め効果が高くなり、曲げ特性が格段に向上することになる。
【0027】
光ファイバカールコード1に使用したHF6の曲げ特性をSMFの曲げ特性と比較したものを、図3に示す。
【0028】
光ファイバの曲げ損失特性は、コアの比屈折率差、コア径、屈折率分布の形状によって異なる。数種類の通常SMFの曲げ特性の実測値を図示する。
【0029】
図3は、横軸を曲げ直径(mm)とし、縦軸を曲げ損失(dB/m、@1.55μm)とし、通常SMFを、直径15、20、25、30mmのマンドレル(図示せず)に1m巻き付けた際に発生した1.55μm帯での損失を示したものである。
【0030】
この図中のSMF曲げ特性において、曲げ損失が最低のSMF(黒ひし形印60で示した折れ線)でも、直径25mm曲げにおいて、1mあたり0.35dBの損失が発生している。
【0031】
従って、10mのカールコードでは約3.5dBの損失が発生することになり、光ファイバコードの実用上の伝送損失を1〜2dBとすると、それを超えてしまう。
【0032】
これに対して図中に示すように、HF6の曲げ特性(白ひし形印61で示した折れ線)は、曲げ直径25mmで、ほとんど損失増加はなく、曲げ直径20mmで、0.003dB/m、曲げ直径15mmで、0.02dB/mであり、通常SMFより格段に損失増加がないのが分かった。通常SMFに比べてHF6の曲げ損失は小さく、HF6においては曲げ径25mm以上では、光損失の増加量は零となっている。
【0033】
図4に示す光ファイバカールコード1の成形は例えば、長さ10mの上記光ファイバコード2を、直径10mm、長さ600mmのステンレス製丸棒(図示せず)に、螺旋状に巻き付けた後、両端末部を固定し、さらにこれを、100℃のオーブンに30分間投入して、熱処理を行い、光ファイバコード2のパーマネント加工を施した。
【0034】
その後、丸棒から光ファイバコード2を取り外して図に示すような光ファイバカールコード1を得た。
【0035】
この光ファイバカールコード1は、コード外径dは2mmであり、丸棒に巻き付け時の外径は12mmであるが、丸棒から取り外した後の外径は16mmに拡大した。なお、光ファイバカールコード1のコード中心での巻き直径Dは、光ファイバカールコード1の外径Dtから光ファイバコード2の外径dを差し引いた値であり、本実施形態における光ファイバカールコード1を構成する光ファイバコード2の中心での巻き直径Dは18mm−2mm=16mmである。
【0036】
この図示した状態での光ファイバカールコード1の波長1.55μmの伝送損失をカットバック法によって測定したところ、測定誤差も含め0.01dB以下であった。
【0037】
次に、図5に示すように上記光ファイバカールコード1の両端に光コネクタ20を取り付けた。光コネクタ20の形状は使用目的に応じて選択するが、本実施の形態では広く使用されているSC型コネクタを実装した光ファイバカールコード1の例を図示した。
【0038】
光コネクタ20の筐体には、光ファイバカールコード1の伸びを抑制する紐などからなる伸縮長規制部材21を固定するための治具22が設けられている。伸縮長規制部材21は光ファイバカールコード1の螺旋の内側に挿通して設けられている。伸縮長規制部材21はそれ自身が柔軟で、伸縮性があり、引っ張り時の剛性が高いものが望ましい。
【0039】
光ファイバカールコード1の伸びを規制する伸縮長規制部材21をカール螺旋を形成するカールの内側に位置させるのは、伸縮長規制部材21(例えば、紐状、チェーン状のもの)の長さは、光ファイバカールコード1の収縮時の長さよりも長くなることが多く、このため伸縮長規制部材21がカール螺旋の外側に存在すると、伸縮長規制部材21が光ファイバカールコード1以外の障害物から拘束を受け、光ファイバカールコード1の想定した伸縮規制長さが充分得られなくなる可能性が生じ、更に美観上の観点からも伸縮長規制部材21はカール螺旋の内側に存在することが望ましいからである。
【0040】
光ファイバカールコード1を伸縮させると、光ファイバコード2全体に捻れが発生するが、捻れによる損失変動は全く観測されず、また、捻れにより発生する応力が光ファイバ2の信頼性に与える影響は、殆どないことを確認している。
【0041】
光ファイバカールコード1の伸びを抑制する伸縮長規制部材21の一例を、図6(a)、図6(b)に示す。図6(a)は、伸縮長規制部材21の伸び時の状態を示し、図6(b)は、伸縮長規制部材21の縮み時の状態(定常時の状態)を示す。
【0042】
図示したように伸縮長規制部材21は、長さ規制部材としての金属製のボールチェーン23に伸縮性部材としてのゴムシース24を被せてある。ボールチェーン23は、中空のボールにパイプ(若しくは、棒)が抜けないように挿し込まれており、ボールチェーン23が縮んだ状態では、パイプがボール内に隠れ、伸びた状態ではパイプがボールから露出する。ゴムシース24は、ボールチェーン23が最も縮んだ状態のときに被せたものである。
【0043】
この伸縮長規制部材21は引っ張られることにより引っ張り力に応じて伸びる。引っ張り力が増して行くと、ボールチェーン23の最大伸び時の抗力で伸縮長規制部材21の伸びが制限されるまで伸びる。最大伸び以上には伸縮長規制部材21は伸びず、伸縮長規制部材21の最大伸び長は、光ファイバカールコード1の許容される伸びの長さより短く設定されている。
【0044】
伸縮長規制部材21と共に引っ張られているカールコード1はそれ以上に伸びず、従来のような光ファイバカールコードの過剰な伸びを生じることはない。最大伸びに達しない場合では、ボールチェーン23外周に設けられたゴムシース24による収縮力と引っ張り力との均衡が保たれた状態の長さとなり、光ファイバカールコード1自体の収縮力と相俟って、光ファイバカールコード1の伸びは光ファイバコード2に過剰な荷重を与えない充分な余裕をもった状態となっている。
【0045】
この伸縮長規制部材21は、光ファイバカールコード1の伸びを制限する。伸縮長規制部材21が備えられていない光ファイバカールコードでは、光ファイバカールコードは使用時に引っ張られただけ伸びるのに対して、伸縮長規制部材21があることにより、伸縮長規制部材21の最大伸び長以上には伸びないことから、伸縮長規制部材21と共に伸びる光ファイバカールコード1の引き伸ばしも制限される効果がある。
【0046】
また、伸縮長規制部材21の最大伸び長まで伸びた状態では、光ファイバカールコード1が引っ張られる力は、伸縮長規制部材21とコネクタ20とで受け、光ファイバカールコード1を構成する光ファイバコード2に過剰な力が加わらない。このため、光ファイバカールコード1や光コネクタ20を引き伸ばし過ぎによる破損から守ることができる優れた効果を得られる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、光ファイバカールコードにおいて、その伸びを制限する機構を備え、光ファイバカールコードを引っ張った際に光コネクタと光ファイバカールコードに損傷を与えないという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に用いる光ファイバカールコードの断面図である。
【図2】クラッド径125μmの6穴タイプホーリー光ファイバの断面図である。
【図3】ホーリー光ファイバ及び通常シングルモードファイバの曲げ特性を示す特性図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す光ファイバカールコードの外観図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す伸縮長規制部材を備えた光ファイバカールコードの断面図である。
【図6】図6(a)は、光ファイバカールコードに用いる伸縮長規制部材の伸び時の状態を示す説明図である。
図6(b)は、光ファイバカールコードに用いる伸縮長規制部材の縮み時の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 光ファイバカールコード
2 光ファイバコード
6 ホーリー光ファイバ
7 φ0.9ナイロン芯線
8 ケブラー繊維
9 コード外被(難燃ハイトレル)
Claims (5)
- 光ファイバコードを螺旋状に曲げ、長手方向に伸縮性をもつカール構造を有する光ファイバカールコードにおいて、長手方向の伸びに制限を加える伸縮長規制部材を備えたことを特徴とする光ファイバカールコード。
- 両端に接続用の光ファイバコネクタを実装し、該両コネクタに伸縮長規制部材を連結して、該両コネクタの間隔が一定距離以上にならないようにする請求項1記載の光ファイバカールコード。
- 上記伸縮長規制部材は、伸縮性部材と、その伸縮性部材の伸縮に追従して伸張すると共に所定長さでその伸縮性部材の伸張を規制するボールチェーンなどの長さ規制部材とからなる請求項1または2記載の光ファイバカールコード。
- 上記伸縮長規制部材を、螺旋状のカールコードの螺旋の内側に挿通して設ける請求項1〜3のいずれか記載の光ファイバカールコード。
- コードに内蔵する光ファイバが、コアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバである請求項1〜4いずれか記載の光ファイバカールコード。
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