JP4013045B2 - 光ファイバケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバケーブルに関し、さらに詳しくは、光ファイバ心線またはテープ型光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、地下の配線ケーブルから引き落とすドロップケーブルとして用いられている光ファイバケーブルを図9に示す。
図9に示すように、従来の光ファイバケーブル100は、光ファイバ心線101の両側に、所望の間隔が設けられた状態で2本の抗張力体102が配置され、これらの周囲に熱可塑性樹脂103が被覆された状態で一体に構成されている。光ファイバ心線101は、コアとクラッドを有するガラス体の光ファイバの外周に、紫外線硬化樹脂及び着色層が被覆されてなっている。抗張力体102は、鋼線や繊維強化プラスチック(FRP)等が用いられる。この光ファイバ心線101と抗張力体102が一括に被覆されていることにより、光ファイバケーブル100に付加される張力等の外力を抗張力体102が受けて、光ファイバ心線101を外力から保護している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ドロップケーブルやインドアケーブルは、曲率半径30mm程度に、小さく曲げて使用できることが要求されている。上記の光ファイバケーブル100は、2本の抗張力体102の間に光ファイバ心線101が配置されていることから、光ファイバケーブル100の外形が大きくなってしまう。また、抗張力体102が設けられていることにより、光ファイバケーブル100の曲げ剛性や捩り剛性が大きくなる。
【0004】
このように、抗張力体を備えたドロップ用あるいはインドア用の光ファイバケーブルは、外形が大きく、曲げ剛性や捩り剛性が大きい。そのため、例えば光接続箱等に光ファイバケーブルを固定する場合に、小径に曲げることが困難であるため、取り扱いにくいという状況にあった。
また、光ファイバケーブルをボビンに巻き取る際や、電柱引留め部あるいは宅内などに敷設する際には、曲げ剛性や捩り剛性の大きな方向に光ファイバケーブルを捩り曲げることがある。その際、光ファイバケーブルを取り扱いにくく、良好な作業性が得にくいという状況にあった。
また、配管内に従来の光ファイバケーブルを敷設する際には、光ファイバケーブルの外形寸法が大きいことにより、敷設本数が制限されていた。
【0005】
したがって、抗張力体を備えた従来の光ファイバケーブルは、外形寸法や曲げ剛性等により、良好な作業性や施工性が得られないことがあるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、良好な作業性及び施工性を得ることができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、当該光ファイバケーブルに含まれる前記光ファイバ心線は1本であり、当該光ファイバケーブルの断面外形が略円形であり、前記ガラス体は、前記熱可塑性樹脂の外径に対して7%以下の直径を有し、かつ、前記光ファイバケーブルを構成する各部材のうち、最も大きいヤング率を有し、前記ガラス体のヤング率Eと断面積Sとの積で表されるES積は、前記熱可塑性樹脂のES積以上であることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線を複数本備え、前記複数本の光ファイバ心線が紫外線硬化樹脂により一体に被覆されたテープ型光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、当該光ファイバケーブルの断面外形が扁平形状であり、前記扁平形状の長軸上に前記テープ型光ファイバ心線の各前記光ファイバ心線が配置されており、前記ガラス体は、前記扁平形状の長軸方向と直交する方向であって前記テープ型光ファイバ心線の厚さ方向における前記熱可塑性樹脂の最大外径に対して7%以下の直径を有し、かつ、前記光ファイバケーブルを構成する各部材のうち、最も大きいヤング率を有し、前記テープ型光ファイバ心線中の複数本の前記ガラス体のヤング率Eと断面積Sとの積で表されるES積の総和は、前記熱可塑性樹脂のES積以上であることを特徴とする。
【0008】
このような構成の光ファイバケーブルによれば、鋼線やFRP等の抗張力体を設けない構成にして、さらにガラス体の直径と光ファイバケーブルの外径との関係を規定している。これにより、光ファイバケーブルの可撓性が向上して小径に曲げやすくなり、さらに、小径に曲げたときでもガラス体に対して即座に断線するほどの曲げ歪みが付加されることを防止できる。
したがって、光ファイバケーブルの取り扱い性が向上して、良好な作業性及び施工性を得ることができる。
【0010】
また、光ファイバ心線の曲げ剛性は、光ファイバケーブルの曲げ剛性の中で10%以上の寄与率を有していることが望ましい。
また、前記テープ型光ファイバ心線をその厚さ方向に曲げた場合の曲げ剛性は、前記光ファイバケーブルを前記扁平形状の長軸を曲げ中心として曲げた場合であって前記テープ型光ファイバ心線の厚さ方向に曲げた場合の曲げ剛性の中で10%以上の寄与率を有していることが望ましい。
【0011】
また、光ファイバ心線またはテープ型光ファイバ心線と、熱可塑性樹脂との間が、非接着の状態であることが望ましい。
【0012】
また、熱可塑性樹脂は充実押出しにより形成されていることが望ましい。
【0013】
また、熱可塑性樹脂は、曲げ剛性が最小となる曲げの径方向にノッチが形成されていることが望ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線、または、複数本の光ファイバ心線が紫外線硬化樹脂により一体に被覆されたテープ型光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、ガラス体のヤング率をEg(Pa)、ガラス体の断面積をSg(m2)、光ファイバ心線が経た引張強度試験のプルーフレベルをaとしたとき、
a×ΣEgSg×0.7≧9.8N
の関係式を満たすことを特徴とする。
なお、Σは光ファイバケーブルが有する光ファイバ心線、すなわちガラス体の本数を表す。
【0015】
このような構成の光ファイバケーブルによれば、従来に比べて光ファイバ心線のプルーフレベルが上がるため、光ファイバ心線の抗張力性が向上する。よって、上記構成の光ファイバケーブルは、鋼線やFRP等の抗張力体を設けずとも、敷設時等に実際に付加される引張力に対して耐え得る機械的強度を備えている。すなわち、抗張力体を設ける必要がない。
抗張力体を設けない構成とすることにより、光ファイバケーブルの可撓性が向上して小径に曲げやすくなる。
したがって、光ファイバケーブルの取り扱い性が向上して、良好な作業性及び施工性を得ることができる。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線、または、複数本の光ファイバ心線が紫外線硬化樹脂により一体に被覆されたテープ型光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、ガラス体は、光ファイバケーブルを構成する各部材のうち、最も大きいヤング率を有しており、かつ、光ファイバケーブルに、熱可塑性樹脂の外径の半分の曲率半径を有する曲げを1分間付加した場合に、ガラス体が破損しないように構成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成の光ファイバケーブルによれば、鋼線やFRP等の抗張力体を設けず、さらに光ファイバケーブルが小径で曲げられた場合でも、ガラス体が破損しない。したがって、小径に曲げやすく、かつ小径曲げに強い光ファイバケーブルとすることができる。
したがって、光ファイバケーブルの取り扱い性が向上して、良好な作業性及び施工性を得ることができる。
【0018】
また、光ファイバ心線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、波長1.3μmにおける波長分散の絶対値が12ps/nm/km以下であり、波長1.55μmにおける波長分散の絶対値が12ps/nm/km以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ心線であることが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光ファイバケーブルの実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。図2は、光ファイバコードを示す図であり、(a)は断面図を示し、(b)は小径曲げの状態を示す長手方向の断面図である。図3は、光ファイバ心線を示す図であり、(a)は断面図を示し、(b)は小径曲げの状態を示す長手方向の断面図である。図4は、図1に示す光ファイバケーブルの被覆除去性を示す概略図である。図5は、充実押出しの様子を示す断面図である。図6は、図1に示す光ファイバ心線の断面図及び屈折率分布を示す図であり、図7は、図1に示す光ファイバ心線の波長分散特性を示すグラフである。図8は、第2実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【0020】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る光ファイバケーブルの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態の光ファイバケーブル1は、1本の光ファイバ心線2の外周に、熱可塑性樹脂9が被覆されて形成されている。
光ファイバ心線2は、コア部とクラッド部とを有する直径125μmのガラス体5の光ファイバの周囲に、紫外線硬化樹脂7が被覆されている。この紫外線硬化樹脂7の外径は、255μmである。
熱可塑性樹脂9は、ポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニル(PVC)が好適に用いられる。本実施形態の熱可塑性樹脂9は、外形がほぼ円形になるように形成されており、その外径は3mmである。
【0021】
この光ファイバケーブル1は、従来の光ファイバケーブルと異なり、ガラス体5よりもヤング率の高い鋼線やFRP等の抗張力体がない。すなわち、光ファイバケーブル1を構成するガラス体5、紫外線硬化樹脂7、熱可塑性樹脂9のうち、ガラス体5が最も高いヤング率を有している。
したがって、光ファイバケーブル1の曲げ剛性が従来に比べて小さくなり、可撓性が向上している。すなわち、光ファイバケーブル1は小径に曲げることが容易であり、作業性が良い。
【0022】
ここで、従来の光ファイバコードや光ファイバ心線(ナイロン心線)を小径に曲げた場合について説明する。
例えば、図2(a)に示すように、光ファイバコード50は、中心に直径0.9mmのナイロン心線60を備え、その周囲に多数本の抗張力繊維(アラミドヤーン)51が設けられている。さらにその外周には、外径3mmのPVC52が被覆されている。ナイロン心線60は、直径125μmのガラス体61の光ファイバの周囲に、外径255μmの紫外線硬化樹脂62が被覆されて光ファイバ心線63となし、さらにその外周に外径0.9mmのナイロン樹脂64が被覆されているものである。
この光ファイバコード50は、光ファイバ心線63の外周に被覆されたPVC52(熱可塑性樹脂)の外径に対して、ガラス体61の直径が13.9%である。
図2(b)に示すように、この光ファイバコード50は小径に曲げることが容易であるが、例えば側圧板70によって2つに折れ曲がるほど小径に曲げたときには、ガラス体61に付加される曲げ歪みが大きくなり、ガラス体61の断線箇所61aが発生してしまう。特に、ナイロン心線60は、抗張力繊維51に保護されているものの、PVC52内でルース状に配置されているため、屈曲しやすい。
【0023】
また、図3に示すように、上述したナイロン心線60を単体で使用した場合においても、小径に曲げることが容易であるが、側圧板70によって2つに折れ曲がるほど小径に曲げたときには、上記の光ファイバコード50と同様にガラス体61に付加される曲げ歪みが大きくなり、ガラス体61の断線箇所61aが発生してしまう。
このように、従来の光ファイバコードや光ファイバ心線(ナイロン心線)は、小径に曲げたときにガラス体が破損しやすかった。
【0024】
これに対し、図1に示すように本実施形態の光ファイバケーブル1の場合、ガラス体5の直径は125μmであり、光ファイバ心線2の外周に被覆された熱可塑性樹脂9の外径は3mmである。したがって、ガラス体5の直径は、熱可塑性樹脂9の外径に対して約4%となっている。このように、熱可塑性樹脂9に対してガラス体5の直径が7%以下になるように構成することによって、光ファイバケーブル1を2つに折れ曲がるほど小径の曲率半径で曲げたときでも、ガラス体5に対しては即座に破断するほどの小径の曲げ歪みが付加されない。
また、光ファイバケーブル1に、熱可塑性樹脂9の外径の半分の曲率半径を有する曲げを1分間付加した場合でも、ガラス体5は破損することがない。
このように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、施工時等の通常の取り扱い条件ではガラス体5を破損させてしまうおそれがなく、作業者が光ファイバケーブル1を扱いやすい。
【0025】
次に、光ファイバケーブル1の伸び剛性について述べる。伸び剛性は、ヤング率Eと断面積Sとの積ES(単位:N)で表される値である。なお、本発明において、ヤング率Eは23℃のときの値を用いる。
ガラス体5は、直径が125μmであり、ヤング率Egが68.6GPaである。したがって、伸び剛性EgSgは、833Nである。
熱可塑性樹脂9は、直径が3mmであり、ヤング率Erが49MPaである。したがって、伸び剛性ErSrは、343Nである。
このように、光ファイバケーブル1は、ガラス体5の伸び剛性EgSgが熱可塑性樹脂9の伸び剛性ErSrに比べて同等以上である。ガラス体5の伸び剛性が熱可塑性樹脂9の伸び剛性以上になるように設定することにより、熱可塑性樹脂9の経時収縮や熱収縮によってガラス体5が受ける圧縮歪みを小さくすることができる。ガラス体5が受ける圧縮歪みを小さくすることで、伝送損失の増加やガラス体5の破損を防止することができる。
【0026】
次に、光ファイバケーブル1の曲げ剛性について述べる。曲げ剛性は、ヤング率Eと断面2次モーメントIとの積EI(単位:Nm2)で表される値である。
光ファイバ心線2の曲げ剛性は、光ファイバケーブル1の全体の曲げ剛性のうち、10%以上の割合を占めるように構成されている。つまり、光ファイバケーブル1を曲げるときに発生する曲げ抵抗力のうち、光ファイバ心線2の曲げ剛性が寄与する割合(寄与率)を大きくしている。光ファイバケーブルを小径に曲げた場合は、熱可塑性樹脂に曲げ皺等の曲げ癖がつくことがあるが、本実施形態の光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線2の曲げ剛性の値を上記のように設定しているため、光ファイバ心線2によって光ファイバケーブル1を直線状に戻す力が作用して、曲げ癖を低減することができる。
【0027】
また、光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線2と熱可塑性樹脂9との間が、非接着の状態である。好適には、光ファイバ心線2と熱可塑性樹脂9との間に、シリコーン系の滑剤が塗布されている。このような構成により、熱可塑性樹脂9と光ファイバ心線2との間の摩擦抵抗を少なくして、光ファイバ心線2から熱可塑性樹脂9を除去する際の被覆除去性が向上する。
光ファイバ心線2と熱可塑性樹脂9との間が接着された状態である場合、光ファイバケーブル1の端部でガラス体5を露出させた際には、図4(a)に示すように熱可塑性樹脂9と紫外線硬化樹脂7(図1参照)が一体に除去される。熱可塑性樹脂9の端面からガラス体5が直接露出していると、ガラス体5に曲げが付加されたときに、被覆の除去開始部分5aに応力が集中してしまうため、ガラス体5が折れやすい。
これに対して、本実施形態の光ファイバケーブル1の場合、図4(b)に示すように熱可塑性樹脂9と紫外線硬化樹脂7とを2段階で除去できる。この場合は、ガラス体5を露出させても、熱可塑性樹脂9の端面においてガラス体5は紫外線硬化樹脂7によって保護されている。そのため、ガラス体5に曲げが付加されても、ガラス体5は露出した紫外線硬化樹脂7とともに撓んで、応力の集中が起こりにくいため、破断しにくい。
したがって、光ファイバケーブル1を融着接続するときなどに、ガラス体5の破損を防ぐことができる。
【0028】
また、光ファイバケーブル1の熱可塑性樹脂9は、充実押出しによって形成されている。充実押出しとは、図5に示すように、押出し機のダイス15の内側で、押出す樹脂を圧縮するように、樹脂に対して加圧しつつ押出しを行う方法である。樹脂はダイス15の内部で圧縮された状態にあるので、ダイスから大気圧環境下に押出されると、徐々に膨張して外形が大きくなる。
この充実押出しを行うことにより、光ファイバ心線2の外周に被覆された熱可塑性樹脂9は、光ファイバ心線2に対して高い密着性を持つことができる。熱可塑性樹脂9が光ファイバ心線2に対して密着していることで、熱可塑性樹脂9が収縮を起こしたときに光ファイバ心線2を熱可塑性樹脂9の内側で蛇行させてしまうことがない。
本実施形態の光ファイバケーブル1は、熱可塑性樹脂9と光ファイバ心線2との間で、密着性と非接着性を双方満足させている。
【0029】
なお、光ファイバケーブル1は、熱可塑性樹脂9の外周にノッチが設けられていても良い。光ファイバ心線2を取り出す際には、そのノッチから熱可塑性樹脂9を切り裂くことができる。
【0030】
次に、光ファイバケーブル1に用いられる光ファイバ心線2について、図6及び図7を用いて説明する。
図6(a)は、光軸に垂直な面で光ファイバ心線2を切断したときの断面図を示し、図6(b)は、光ファイバ心線2の屈折率プロファイルを示す。この光ファイバ心線2は、光軸中心を含む外径d3のコア部分3と、このコア部分3を取り囲む外径d4のクラッド部分4と、このクラッド部分4を取り囲むカーボン層6と、このカーボン層6を取り囲む外径d7の紫外線硬化樹脂7とを備えて構成されている。また、紫外線硬化樹脂7の外周には5μm程度の着色層が被覆されていても良い。
【0031】
コア部分3及びクラッド部分4は、石英ガラス(SiO2)をホスト材料とするガラス体5である。コア部分3及びクラッド部分4の双方または何れか一方には、屈折率調節用の添加物が含有されている。そして、コア部分3の屈折率n1は、クラッド部分4の屈折率n2より高くなっている。好適には、コア部分3は実質的に単峰状の屈折率分布を有して、クラッド部分4は実質的に一定屈折率である。この場合には、屈折率プロファイルが簡易であるので光ファイバ心線2の製造が容易である。
【0032】
なお、「実質的に単峰状」のコア部分3の屈折率分布とは、図6(b)に示されるような理想的なステップ形状を含む他、コア中央部に向けて屈折率が高くなる形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が僅かに高くなっている形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が漸減している形状、等を含む。
【0033】
好適には、例えば、コア部分3は二酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された石英ガラスであり、クラッド部分4はフッ素(F)が添加された石英ガラスである。あるいは、コア部分3はGeO2が添加された石英ガラスであり、クラッド部分4は実質的に純石英ガラスである。コア部分3には他の屈折率上昇剤が含有されていても良いし、クラッド部分4には他の屈折率降下剤が含有されていても良い。このような屈折率調節用の添加物が含有されていることにより、光ファイバ心線2は所望の屈折率プロファイルを得ることができる。
【0034】
カーボン層6は、クラッド部分4の周囲にコーティングされたアモルファスカーボンの被覆膜であり、その厚さは0.04μm程度である。このコーティング方法としては、線引きされたガラス体5の光ファイバ表面に原料ガスを化学反応させて、アモルファスカーボンを析出させるCVD法が、成膜速度及び膜質の点で有利であることが知られている。
このようにしてガラス体の周囲にカーボン層がコーティングされた光ファイバは、カーボンコートファイバ(CCF)と呼ばれ、疲労係数nが100以上、場合によっては200以上となる。そのため、曲げなどの応力付加に対して破断寿命の低下を防止することができる。
【0035】
一般には、光ファイバ心線2のクラッド部分4の外径d4は125μmであり、紫外線硬化樹脂7の外径d7は250μmである。しかし、好適には、クラッド部分4の外径d4は60〜100μmである。この場合には、この光ファイバ心線2は、小径に曲げられたときに、曲げ歪みによる破断の確率が小さくなり、長期信頼性が向上する。
【0036】
また、紫外線硬化樹脂7は、内層7aと外層7bとからなる2層に形成されていても良い。その場合、内層7aのヤング率に比べて、外層7bのヤング率が高くなるように構成することが望ましい。このような構成により、内層7aが側圧に対する緩衝層となって光ファイバ心線2はマイクロベンドが発生しにくくなるため、高い光伝送特性を保つことができる。
【0037】
また、この光ファイバ心線2は、波長1.55μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)が8μm以下である。ここで、Petermann−Iの定義によるモードフィールド径は、
【数1】
なる式で定義される。この式(1)中にある変数rは、光ファイバ心線2の光軸からの径方向の距離である。φ(r)は、径方向の光の電界分布であり、光の波長により異なる。
モードフィールド径を小さくすると、マイクロベンド損失や曲げ損失(マクロベンド損失)を小さくすることができる。したがって、例えば光ファイバケーブル1に側圧が付加されて、ガラス体5に歪が発生しやすい状態となった場合や、光ファイバケーブル1を小さい曲げ直径で曲げて、ガラス体5に小径曲げが付加された場合にも、光ファイバ心線12の伝送損失の増加を抑えることができる。
【0038】
また、この光ファイバ心線2のケーブルカットオフ波長は1.26μm以下である。ケーブルカットオフ波長は、22m長でのLP11モードのカットオフ波長であり、2mカットオフ波長より小さい値である。
【0039】
図7に、光ファイバ心線2の波長分散特性を示す。光ファイバ心線2は、波長1.3μmと波長1.55μmとの間に零分散波長を有しており、波長1.3μmにおける波長分散の絶対値が12ps/nm/km以下であり、波長1.55μmにおける波長分散の絶対値が12ps/nm/km以下である。
【0040】
光ファイバ心線2は、波長1.55μmにおけるモードフィールド径、ケーブルカットオフ波長、波長1.3μmにおける波長分散の絶対値、及び波長1.55μmにおける波長分散の絶対値のそれぞれが上記の範囲の値である。このことにより、光ファイバ心線2は、波長1.3μm帯及び波長1.55μm帯の双方の波長帯域の信号光を高ビットレートで伝送することが可能である。
【0041】
また、光ファイバ心線2は、波長1.3μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径が6μm以上であるのが好適である。この場合は、光ファイバ心線2は、波長1.3μm帯に零分散波長を有する標準的なシングルモード光ファイバと融着接続したときに、接続損失が小さい。また、このような光ファイバ心線2同士を融着接続したときにも、軸ずれによる接続損失が小さい。
【0042】
また、光ファイバ心線2は、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下である。ワイヤメッシュボビン法は、例えば、胴径約400mmのボビンの胴面全体に、外径50μmの針金をピッチ150μmで格子状に編んだ金網を貼り付け、その外周に、光ファイバ心線を張力約0.8Nで1層だけ巻きつけたときの伝送損失の増加量を測定するものである。
これにより、光ファイバケーブル1の敷設環境により光ファイバ心線2にマイクロベンドが発生しやすい状態であっても、伝送損失の増加を抑えることができる。
【0043】
また、光ファイバ心線2として、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ心線を用いることが好ましい。ここでいうプルーフとは、製品化する光ファイバ心線の強度の保証であり、線引きした光ファイバをボビン等に巻き取る手前で、その走行ラインに張力印加区間を設けることで引張強度試験を行うものである。すなわち、張力印加区間に印加する張力を任意の値に設定することにより、光ファイバの伸び率(%)をプルーフレベルとして設定することができる。これにより、所望のプルーフレベルに満たない低強度の光ファイバを破断させて、破断しない部分のみをボビン等に巻き取って製品とすることができる。
【0044】
また、光ファイバ心線の破断強度は、破断強度(N)と累積破断確率(%)を変数とするワイブル分布(図示せず)によって表すことが可能である。1.5%のプルーフレベルを満たす光ファイバ心線は、50Nの張力が付加された場合でも累積破断確率が極めて低い。光ファイバケーブル1の通常の敷設環境において、光ファイバ心線2に付加される張力は50N以下であることが推定されるので、1.5%以上のプルーフレベルを規定した引張強度試験を行うことによって、敷設環境による光ファイバ心線2の機械的強度の低下を防止することができる。
【0045】
本実施形態の光ファイバケーブル1は、ガラス体5のヤング率をEg(Pa)、ガラス体5の断面積をSg(m2)、光ファイバ心線2が経た引張強度試験のプルーフレベルをaとしたとき、
a×ΣEgSg×0.7≧9.8N ・・・(2)
の関係式を満たすプルーフレベルを経た光ファイバ心線2が用いられている。ここで、Σは光ファイバケーブルが有するガラス体の本数を表す。この式(2)により求められるプルーフレベルaを採用することで、引張強度試験の引張荷重を9.8Nとした場合、これに対して70%以下の張力で瞬間的に光ファイバケーブルを引張ったときでも、ガラス体が破損しない強度を保証することができる。
光ファイバケーブル1において、ガラス体5のヤング率Egは68.6GPaであり、ガラス体5の直径は125μmであることから、プルーフレベルaの最小値は1.6%となる。本実施形態の光ファイバ心線2は、プルーフレベルを2%に設定した。これにより、光ファイバケーブル1は、鋼線やFRP等の抗張力体を設けずに、敷設時等に実際に付加される引張力に対して絶え得る機械的強度が得られている。
【0046】
上述したように、本実施形態の光ファイバケーブル1に用いられる光ファイバ心線2は、側圧や曲げ、引っ張り等が付加された場合においても良好な光伝送特性を発揮することができる。例えば、光ファイバケーブル1が、ステップルを壁等に打ち付けることによって直接固定された場合にも、伝送損失の増加量が極めて少ない。そのため、光ファイバケーブル1は、全体構造上の特徴によって作業性及び施工性の向上を図るだけでなく、光ファイバ心線2の特性によって信頼性の高い高品質の光伝送路を効果的に得ることができる。
なお、光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線2の代わりにテープ型光ファイバ心線を配置した構成としても良い。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る光ファイバケーブルの第2実施形態について説明する。
図8に示すように、第2実施形態の光ファイバケーブル20は、テープ型光ファイバ心線21の外周が熱可塑性樹脂23によって被覆された構成である。
テープ型光ファイバ心線21は、4本の光ファイバ心線2を平行に接触させて配置し、その全体を紫外線硬化樹脂22にて被覆してテープ状に形成したものである。
光ファイバ心線2は、上述した第1実施形態の光ファイバ心線2と同一の構成である。
この光ファイバケーブル20は、上述した第1実施形態の光ファイバケーブル1と同様に、ガラス体5よりもヤング率の高い鋼線やFRP等の抗張力体がない。
【0048】
また、熱可塑性樹脂23は、PEもしくはPVCが好適に用いられ、扁平状の外形となるように形成されている。この扁平形状の長軸は、光ファイバ心線2を通るように設定されている。外形を扁平状に形成することにより、光ファイバケーブル20の曲げ剛性は、断面方向に異なる値となり、すなわち異方性を示す。
本実施形態の光ファイバケーブル20の場合、曲げ中心軸Xを扁平形状の長軸と一致させたときに、最小の曲げ剛性を示す。また、曲げ剛性が最小となる曲げを付加したときの曲げの半径方向は、曲げ中心軸Xとほぼ直交する方向である。光ファイバケーブル20の外周には、この曲げ剛性が最小となる曲げの径方向に、ノッチ24が形成されている。光ファイバケーブル20からテープ型光ファイバ心線21を取り出す際には、ノッチ24から熱可塑性樹脂23に裂け目を入れて、その裂け目から熱可塑性樹脂23を引き裂き、テープ型光ファイバ心線21を取り出すことができる。
また、光ファイバケーブル20は、熱可塑性樹脂23の楕円形状とノッチ24によって、曲げ中心軸Xを中心として最小曲げ剛性を示す方向に曲がりやすくなっている。さらに、光ファイバ心線2の中心は曲げ中心軸X上に存在するため、光ファイバ心線2に付加される曲げ歪みを最小に抑えることができる。
【0049】
また、光ファイバケーブル20は、第1実施形態の光ファイバケーブル1と同様に、熱可塑性樹脂23の外径に対してガラス体5の直径が7%以下になるように構成されている。
また、光ファイバケーブル20に、熱可塑性樹脂23の外径の半分の曲率半径を有する曲げを1分間付加した場合でも、ガラス体5は破損することがない。ここで、付加する曲げの方向は、最小曲げ剛性を示す方向、すなわち曲げ中心軸Xを中心として曲げた場合とする。したがって、付加する曲げの曲率半径を決める熱可塑性樹脂23の外径は、曲げ中心軸Xに対して直交する方向の最大幅とする。
【0050】
さらに、光ファイバケーブル20は、ガラス体5の伸び剛性EgSgが熱可塑性樹脂23の伸び剛性ErSrに比べて同等以上となるように構成されている。
また、光ファイバケーブル20の全体の曲げ剛性のうち、テープ型光ファイバ心線21の曲げ剛性が10%以上の寄与率を有するように構成されている。
【0051】
また、光ファイバケーブル20は、テープ型光ファイバ心線21と熱可塑性樹脂23との間が、非接着の状態である。
さらに、熱可塑性樹脂23は、充実押出しによって形成されている。
【0052】
上述したように、光ファイバ心線2は、マクロベンドやマイクロベンドに対して優れた伝送特性を発揮することができ、さらに引張りや曲げ歪みに対しても強い機械的強度を有している。したがって、光ファイバケーブル20は、第1実施形態の光ファイバケーブル1と同様に、従来に比べて作業性や施工性が向上すると同時に、良好な伝送特性を得ることができる。
なお、光ファイバケーブル20は、テープ型光ファイバ心線21の代わりに光ファイバ心線2を配置した構成としても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ファイバケーブルによれば、抗張力体を設けず、良好な作業性及び施工性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバケーブルの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】光ファイバコードを示す図であり、(a)は断面図を示し、(b)は小径曲げの状態を示す長手方向の断面図である。
【図3】光ファイバ心線を示す図であり、(a)は断面図を示し、(b)は小径曲げの状態を示す長手方向の断面図である。
【図4】図1に示す光ファイバケーブルの被覆除去性を示す概略図である。
【図5】熱可塑性樹脂の押出しの様子を示す断面図である。
【図6】図1に示す光ファイバ心線の断面図及び屈折率分布を示す図である。
【図7】図1に示す光ファイバ心線の波長分散特性を示すグラフである。
【図8】本発明に係る光ファイバケーブルの第2実施形態を示す断面図である。
【図9】従来の光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル(第1実施形態)
2 光ファイバ心線
3 コア部分
4 クラッド部分
5 ガラス体
6 カーボン層
7 紫外線硬化樹脂
9 熱可塑性樹脂
20 光ファイバケーブル(第2実施形態)
21 テープ型光ファイバ心線
22 紫外線硬化樹脂
23 熱可塑性樹脂
24 ノッチ
Claims (4)
- コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、
当該光ファイバケーブルに含まれる前記光ファイバ心線は1本であり、
当該光ファイバケーブルの断面外形が略円形であり、
前記ガラス体は、前記熱可塑性樹脂の外径に対して7%以下の直径を有し、かつ、
前記光ファイバケーブルを構成する各部材のうち、最も大きいヤング率を有し、
前記ガラス体のヤング率Eと断面積Sとの積で表されるES積は、前記熱可塑性樹脂のES積以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。 - 請求項1に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ心線の曲げ剛性は、前記光ファイバケーブルの曲げ剛性の中で10%以上の寄与率を有していることを特徴とする光ファイバケーブル。
- コア部とクラッド部とを有するガラス体が紫外線硬化樹脂により被覆された光ファイバ心線を複数本備え、前記複数本の光ファイバ心線が紫外線硬化樹脂により一体に被覆されたテープ型光ファイバ心線の外周が、熱可塑性樹脂により被覆されている光ファイバケーブルであって、
当該光ファイバケーブルの断面外形が扁平形状であり、前記扁平形状の長軸上に前記テープ型光ファイバ心線の各前記光ファイバ心線が配置されており、
前記ガラス体は、前記扁平形状の長軸方向と直交する方向であって前記テープ型光ファイバ心線の厚さ方向における前記熱可塑性樹脂の最大外径に対して7%以下の直径を有し、かつ、
前記光ファイバケーブルを構成する各部材のうち、最も大きいヤング率を有し、
前記テープ型光ファイバ心線中の複数本の前記ガラス体のヤング率Eと断面積Sとの積で表されるES積の総和は、前記熱可塑性樹脂のES積以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。 - 請求項3に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記テープ型光ファイバ心線をその厚さ方向に曲げた場合の曲げ剛性は、前記光ファイバケーブルを前記扁平形状の長軸を曲げ中心として曲げた場合であって前記テープ型光ファイバ心線の厚さ方向に曲げた場合の曲げ剛性の中で10%以上の寄与率を有していることを特徴とする光ファイバケーブル。
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