JP2005024632A - ハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法 - Google Patents
ハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明の目的は、長期保存時の保存安定性に優れ、長期間にわたり安定な写真性能を供するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法を提供する。
【解決手段】少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤とそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法に関し、詳しくは保存安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤とそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
露光あるいは撮影が施されたハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は、露光後、現像、脱銀、洗浄、安定化等の各工程を経て処理され、銀画像あるいは色画像が形成される。この処理は、通常自動現像機(以下、自現機とも称す。)を用いて行われ、その場合、補充液による補充方式が広く採用されていて、処理槽内の処理液の活性度を一定に保つ様にコントロールされている。補充液補充方式の場合、感光材料からの溶出物の希釈、蒸発量の補正及び消費成分の補充を目的としており、通常はこの補充液は液体で供給される関係から、オーバーフロー液が多量に排出されている。
【0003】
近年、写真用処理剤の廃液の海洋投棄に関する規制やプラスチック材料の廃棄に対する規制が世界的に強化されてきており、写真廃液をゼロにし、しかも液剤用ポリボトルを使用しない新しいシステムの開発が求められている。又、液体危険物の輸送に関する安全性確保のために包材に対する安全規制が強化されコストの上昇を招いている。更に、最近広く用いられているミニラボ店においては、低コスト化と人手不足から未熟な作業者による作業が多くなり、補充液の溶解或いは希釈準備作業の難しさ故に、誤溶解に起因する事故がしばしば発生し、補充システムに対する苦情が多く出される様になってきた。
【0004】
従って、当写真業界においては、写真廃液がほとんどなく、ボトルも使用せず、しかも溶解作業が全く不要となる固体ケミカルの補充システムの開発が強く求められている。
【0005】
この要望に応える方法として、特開平5−119454号公報には、ほとんど全ての処理成分を固体化し、直接処理槽に投入する方法が開示されている。
【0006】
ところで処理剤は、製造後ユーザーの手に渡るまでの間、及び手に渡った後、使用されるまでに様々な環境下で保存される。例えば、国内でも、冬場の低温低湿雰囲気下や、逆に梅雨時の高温高湿雰囲気下で保存されたり、あるいは東南アジアの一部においては、自動現像機には、除湿、冷房機能の備わっていない場所に設置される場合が多く、また使い勝手から、処理剤は自現機の近辺に保存されることが多く、雨季等においては、この処理剤保存場所付近の雰囲気が気温30〜45℃で相対湿度70〜80%などと高温多湿になる場合がある。他方、処理剤は、寒冷地の冬等においては、輸送の過程で−10〜−30℃などの極低温に晒される場合もあり、保存環境による処理剤の劣化が懸念され、これらの諸環境に影響を受けない安定な処理剤の開発が望まれている。更に、写真用処理剤は、輸送及び市場において使用されるまでの期間は、長ければ数年滞留することが一般的に知られており、経時における保存性の向上が求められている。
【0007】
その中でも、発色現像固体処理剤は、従来の液剤処理剤に比べて多種類の成分を様々な量で含有せしめるので、見かけの濃縮度が飛躍的に高くなるため、処理剤の経時による保存安定性等の劣化をより受けやすくなることが判明した。
【0008】
本発明者らが、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬を含有する発色現像固体処理剤について種々検討した結果、大気中で長期間保存されると、水分等を吸収して固体処理剤の形状が崩れたり、発色現像主薬となる化合物が分解して減少したり、固体処理剤同士が付着してブロッキングを生じることが分かった。更に保存後の輸送での振動等により割れ欠け、ひび割れ等を生じて、固体処理剤の形状(顆粒や錠剤状)を保てず、自動現像機で使用する際に、投入不良と言った問題等を生じることが判った。これらの対策として非常に硬い固体処理剤とすると、溶解に時間がかかり実用に供し得ず、さらにこれらを自動現像機に使用する際には固着を生じることもあり、処理に支障をきたすことも判明した。
【0009】
破壊強度の減少は、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬が存在する固体処理剤は吸湿性や潮解性のあるアルカリ剤等を含有している為、その潮解性により経時において含水率が高くなってしまい、含水率が低いときに保っていた処理剤の結合力が減少していくことによるものと推測される。更に、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬は結合力が乏しく、低補充、迅速化を行うに際して発色現像主薬の固体処理剤全体に占める成分比率を上昇させた際には、更に悪化してしまう。
【0010】
一方、発色現像固体処理剤用のアルカリ剤としては、従来より炭酸塩としてカリウム塩を単独で使用していた。しかしながら炭酸カリウム単独でアルカリ剤を構成した場合には、上記の様な長期保存性に課題を有しており、具体的には、発色現像主薬が炭酸塩との反応により酸化を受けると共に、その反応やアルカリ剤の潮解性に伴い固体処理剤が膨張を起こし、崩壊に繋がる結果となる。また、上述の様にして劣化した固体処理剤を用いて現像処理を行うと、発色現像主薬の酸化による発色濃度の低下や、現像処理中にタール等が発生しやすくなり、発生したタールの感光材料表面への付着により、現像故障を招く結果となる。
【0011】
上記課題に対し、アルカリ剤として特定の構造を有する化合物を用いて、発色現像固体処理剤の溶解性、保存安定性、性能安定性を改良する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、近年の低補充化に伴う発色現像主薬を高濃度で含有する発色現像固体処理剤においては、特に長期保存性に対する改良効果が十分であるとは言えず、更なる改良が求められている。また、アルカリ剤として、異なる炭酸塩を併せて用いることによる効果に関しては、一切言及がなされていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−59399号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、長期保存時の保存安定性に優れ、長期間にわたり安定な写真性能を供するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0015】
1.少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0016】
2.前記パラフェニレンジアミン発色現像主薬の含有率が、16質量%以上であることを特徴とする前記1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0017】
3.含水率が5%以下であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0018】
4.前記一般式〔A〕で表される化合物を含有することを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0019】
5.前記一般式〔A〕で表される化合物が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする前記4項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0020】
6.前記一般式〔H〕で表される化合物を含有することを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0021】
7.前記一般式〔H〕で表される化合物が、ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムであることを特徴とする前記6項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0022】
8.前記1〜7項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を用いて、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を処理することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
【0023】
本発明者は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を過酷な環境下で保存した際の安定性について鋭意検討を進めた結果、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有し、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であるハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤により、保存安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。また、更に驚くべきことに、カートリッジ(モジュール)への崩壊した粉体等の付着性が大幅に低減し、固体処理剤等のカートリッジ内での詰まりによる作動不良をも低減できたものである。
【0024】
更に、上記構成に加えて、パラフェニレンジアミン発色現像主薬の含有率を16質量%以上とすること、含水率を5%以下とすること、ポリアルキレングリコールとして前記一般式〔A〕で表される化合物、更に好ましくはポリエチレングリコールを含有すること、ヒドロキシルアミン誘導体として前記一般式〔H〕で表される化合物、更に好ましくはビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムを含有することにより、本発明の目的効果がより発揮されることを見出したものである。
【0025】
本発明の構成からなるハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、保存性が飛躍的に改良されるメカニズムに関しては、未だ定かではないが、以下の様に推測している。
【0026】
本来、炭酸カリウムは、吸湿性を有する化合物であり、炭酸カリウム単独で造られた発色現像固体処理剤は外部から侵入してくる水分を吸収しやすく、この吸湿した水分により、炭酸塩と現像主薬との中和反応を引き起こす。その結果、発色現像固体処理剤は、膨張して崩壊を起こしたり、あるいはカートリッジ内で詰まってしまうというトラブルが発生する。
【0027】
これに対し、炭酸ナトリウムの吸湿性は炭酸カリウムに比較すると低いため、炭酸カリウム単独で造られた固体処理剤に比べると、外部から侵入する水分に対しては比較的吸湿しにくい性質を有している。
【0028】
このため、本発明の構成である炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを併用することにより、外部から侵入する湿度に対する耐性が向上するものである。
【0029】
一方、内部における中和反応で生成する水に対する保存性への影響については、以下の様に考えている。
【0030】
すなわち、固体処理剤は、元々含んでいるごく微少な水分によって、発色現像主薬(硫酸塩)と炭酸塩との間で、内部中和反応が引き起こされる。この内部中和反応により、水と炭酸ガスとフリーベースの現像主薬が生成したのち、フリーベースの主薬が水分等により酸化劣化を引き起こすものと考えられる。これに対し、アルカリ剤として炭酸カリウムで形成された発色現像固体処理剤では、炭酸カリウムが速やかに中和反応で生成した水を吸湿し、保湿剤として機能することで、より一層中和反応を起こりにくくしている。
【0031】
反面、炭酸ナトリウムで形成された固体処理剤では、内部反応で発生した水分を炭酸ナトリウムが十分吸収できないため、更なる中和反応が加速度的に進行して、発色現像主薬の酸化をより進行させるものと推測している。
【0032】
これに対し、炭酸塩のカリウム塩とナトリウム塩とを併用すると、外部の湿気から吸湿するのを押さえると共に、内部中和反応で発生する水分を保湿する効果の両方がバランス良く発揮され、結果として、長期保存での劣化が各々単独で使用する時に比べ著しく改善されるものである。
【0033】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤(以下、単に本発明の発色現像固体処理剤ともいう)では、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有し、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる炭酸カリウムのmol数(A)と炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることが特徴であり、より好ましくは0.4以上、4.5以下であり、更に好ましくは1.0以上、2.5以下である。比率(A/B)が0.1以上であれば、炭酸カリウムの好ましい特性を十分に発揮することができ、また、9.0以下であれば炭酸ナトリウムの好ましい特性を十分に発揮できる。
【0034】
本発明の発色現像固体処理剤では、アルカリ剤として本発明に係る炭酸カリウムと炭酸ナトリウムの他に、本発明の目的効果を損なわない範囲において、公知のアルカリ剤を更に併せて用いることもでき、それらのアルカリ剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸三カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二カリウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、四硼酸ナトリウム、四硼酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の発色現像固体処理剤では、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬を含有することが特徴の1つであり、含有率は好ましくは全固形分量に対し、16質量%以上であることが好ましく、より好ましくは16〜30質量%である。
【0036】
本発明に用いられるパラフェニレンジアミン系発色現像主薬としては、アミノ基またはベンゼン環上に親水性基を少なくとも1つ有するものが、感光材料の汚染がなく、かつ皮膚に対する刺激が少ない長所を有し、好ましく用いられる。
【0037】
具体的な親水性基としては、
−(CH2)n−CH2OH
−(CH2)−NHSO2−(CH2)n−CH3
−(CH2)m−O−(CH2)n−CH3
−(CH2CH2O)nCmH2m+1
−(CH2)m−CON(CmH2m+1)2
(m及びnはそれぞれ0以上の整数を表わす。)
−COOH
−SO3H
等が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
本発明に好ましく用いられる発色現像剤の具体的例示化合物として、以下のものが挙げられる。
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
【化8】
【0043】
このうち好ましいものは(D−1)、(D−3)、(D−17)、(D−18)であり、より好ましくは(D−1)、(D−3)である。尚、これらの化合物は含水塩であっても無水塩であってもよい。
【0044】
本発明の発色現像固体処理剤においては、含水率が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。
【0045】
なお、本発明でいう含水率とは、発色現像固体処理剤が含有する付着水(自由水)と結晶水の総質量和の総固形分質量に対する質量比率(%)を指す。含水率は、例えば、市販の赤外水分計などを用いて測定することができる。
【0046】
本発明の発色現像固体処理剤において、含水率をコントロール手段としては、特に制限はなく、例えば、溶媒の添加量、乾燥温度、乾燥時間などにより、適宜調整が可能であるが、乾燥温度を50℃を超え、かつ100℃未満状態で乾燥させることが局部的に発生しうる含水率のバラツキを最小限に抑制する観点から好ましい。
【0047】
次いで、本発明の発色現像固体処理剤の上記説明した以外の構成要素について説明する。
【0048】
本発明の発色現像用固体錠剤中には、経時保存性を更に改良する観点から糖類用いることができる。本発明でいう糖類とは、単糖類とこれが複数個互いにグリコシド結合した多糖類とをいう。
【0049】
単糖類とは、単一のポリヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシケトン及びこれらの還元誘導体、酸化誘導体、デオキシ誘導体、アミノ誘導体、チオ誘導体など広い範囲の誘導体の総称である。多くの糖は、一般式CnH2nOnで表されるが、この一般式で表される糖骨格から誘導される化合物も含めて、本発明では単糖類と定義する。これらの単糖類のうちで好ましいものは、糖のアルデヒド基及びケトン基を還元して各々第一、第二アルコール基とした糖アルコールであり、特に好ましくは、炭素数が6のヘキシットである。
【0050】
多糖類には、セルロース類、デンプン類、グリコーゲン類などが含まれ、セルロース類には、水酸基の一部又は全部がエーテル化されたセルロースエーテル等の誘導体を含み、デンプン類には加水分解して麦芽糖に至るまでの種々の分解生成物であるデキストリン類等を含む。セルロース類は溶解性の観点からアルカリ金属塩の形でもかまわない。これら多糖類で好ましく用いられるものは、セルロース類とデキストリン類であり、より好ましくはデキストリン類である。
【0051】
本発明で用いることのできる単糖類の具体的化合物例を以下に示す。
〔例示化合物〕
B−(1) グリセリン
B−(2) D−トレイット
B−(3) L−トレイット
B−(4) meso−エリトレット
B−(5) D−アラビット
B−(6) L−アラビット
B−(7) アドニット
B−(8) キシリット
B−(9) D−ソルビット
B−(10) L−ソルビット
B−(11) D−マンニット
B−(12) L−マンニット
B−(13) D−イジット
B−(14) L−イジット
B−(15) D−タリット
B−(16) L−タリット
B−(17) ズルシット
B−(18) アロズルシット
次いで、多糖類の具体的化合物例を、以下に示す。
【0052】
C−(1) α−デキストリン
C−(2) β−デキストリン
C−(3) γ−デキストリン
C−(4) δ−デキストリン
C−(5) ε−デキストリン
C−(6) α−限界デキストリン
C−(7) β−限界デキストリン
C−(8) ホスホリラーゼ限界デキストリン
C−(9) 可溶性デンプン
C−(10) 薄手ノリデンプン
C−(11) 白色デキストリン
C−(12) 黄色デキストリン
C−(13) ブリテッシュガム
C−(14) パインフロー (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(15) パインデックス100 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(16) パインデックス 1 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(17) パインデックス 2 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(18) パインデックス 3 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(19) パインデックス 4 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(20) パインデックス 6 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(21) フードテックス (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(22) マックス 1000(商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(23) グリスターP (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(24) TK−16 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(25) MPD (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(26) H−PDX (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(27) スタコデックス (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(28) マビット (商品名、林原商事株式会社製)
C−(29) プルラン (商品名、林原商事株式会社製)
C−(30) メチルセルロース
C−(31) ジメチルセルロース
C−(32) トリメチルセルロース
C−(33) エチルセルロース
C−(34) ジエチルセルロース
C−(35) トリエチルセルロース
C−(36) カルボキシメチルセルロース
C−(37) カルボキシエチルセルロース
C−(38) アミノエチルセルロース
C−(39) ヒドロキシメチルセルロース
C−(40) ヒドロキシエチルメチルセルロース
C−(41) ヒドロキシプロピルセルロース
C−(42) ヒドロキシプロピルメチルセルロース
C−(43) ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
C−(44) カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース
これら糖類の含有量は、固体発色現像処理剤の単位質量当り5〜15質量%含有させることができる。
【0053】
これら糖類は、広く天然に存在しており、市販品を簡単に入手できる。また種々の誘導体についても酸化、還元あるいは脱水反応などを行うことによって容易に合成できる。
【0054】
また、本発明の発色現像固体処理剤には、ポリアルキレングリコールを用いることができ、ポリアルキレングリコールが、前記一般式〔A〕で示される化合物であることが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールである。
【0055】
本発明に係る前記一般式〔A〕で示されるポリアルキレングリコール中のエチレンオキサイドの含有率は、溶解性と強度の減少の防止から60質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。尚、本発明における平均分子量は、水酸基価により算出したものを言う。
【0056】
以下にポリアルキレングリコールの具体的例示化合物を示す。
【0057】
【化9】
【0058】
本発明の発色現像固体処理剤中には、固体の保恒剤を共存させることが好ましく、更に、現像主薬を含む造粒物が、現像主薬と保恒剤を混合し、造粒したものであるのが好ましい。保恒剤としては、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等)、重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等)、メタ重亜硫酸塩(メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)、ヒドロキシルアミン誘導体等が挙げられる。
【0059】
本発明の発色現像固体処理剤においては、保恒剤として、下記一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体を含有することが好ましく、更に好ましくは前記一般式〔H〕で表される化合物が、ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムである
前記一般式〔H〕において、R13、R14は、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、R15CO基又は水素原子を表し、R13、R14は互いに結合して窒素を含むヘテロ環基を形成するものであってもよい。R15は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基を表す。
【0060】
R13、R14で表される置換されていてもよいアルキル基は炭素原子数1〜3のものが好ましく、同一でも異なっていてもよい。置換基としては、水酸基、スルホ基、ホスホン基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基等が挙げられる。
【0061】
次に一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体の好ましい例を示す。
なお、化合物H−12〜H−20及びH−27はアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)の形で用いることができる。
【0062】
【化10】
【0063】
これらの化合物は、通常、遊離のアミン、塩酸塩、硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、蓚酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の形で用いられ、固体であることが好ましい。
【0064】
中でも特に好ましい化合物は、H−1、H−6、H−17、H−18及びH−25であり、その塩としての具体例を以下に示す。
【0065】
【化11】
【0066】
本発明の発色現像用固体処理剤には、現像促進剤として、特公昭37−16088号、同37−5987号、同38−7826号、同44−12380号、同45−9019号及び米国特許第3,813,247号等に代表されるチオエーテル系化合物、特公昭44−30074号、特開昭50−137726号、同56−156826号及び同52−43429号等に代表される4級アンモニウム塩類、米国特許2,610,122号及び同4,119,462号記載のp−アミノフェノール類、米国特許2,494,903号、同3,128,182号、同4,230,796号、同3,253,919号、特公昭41−11431号、米国特許2,482,546号、同2,596,926号及び同3,582,346号等に記載のアミン系化合物、その他1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、イオン型化合物、イミダゾール類等を必要に応じて含有させることができる。
【0067】
本発明において、カブリ防止等の目的で塩素イオン、臭素イオン及び沃素イオンを放出する化合物を発色現像用固体処理剤中に添加できる。
【0068】
また、本発明の発色現像用固体処理剤には、特開平4−118649号公報第19頁から第20頁に記載の一般式〔K〕で示されるキレート剤を添加することが好ましい。更に又、発色現像用固体処理剤には、アニオン、カチオン、両性、ノニオンの各界面活性剤を含有させることができる。
【0069】
写真処理剤を固体化するには、濃厚液又は微粉ないし粒子状写真処理剤と水溶性結着剤を混練し成型化するか、仮成型した写真処理剤の表面に水溶性結着剤を噴霧したりすることで被覆層を形成する等、任意の手段が採用できる(特開平4−29136号、同4−85535号、同4−85536号、同4−85533号、同4−85534号、同4−172341号参照)。
【0070】
本発明の発色現像固体処理剤は、粉末状、顆粒状、錠剤状のいずれでもよいが、固体処理剤を溶解槽または直接処理層に添加する際の投入精度の点で、顆粒状あるいは錠剤状であることが好ましく、さらに好ましくは錠剤状である。ここでいう顆粒とは、粉末を造粒して得た粒径が50〜5000μmの粒状物のことを言い、錠剤とは、粉末または顆粒を一定の形状に圧縮成形したものを言う。
【0071】
好ましい錠剤の製造方法としては、粉末処理剤を造粒した後打錠工程を行い圧縮成型する方法である。単に粉末処理剤を混合して打錠工程により形成された錠剤に比べ溶解性や保存性が改良され結果として写真処理性能も安定になるという利点がある。
【0072】
写真処理剤を固体化する方法は、特開平4−29136号、同4−85535号、同4−85536号、同4−85533号、同4−85534号、同4−172341号、同2−109042号、同2−109043号、同3−39735号、同3−39739号、特開昭51−61837号、同54−155038号、同52−88025号、英国特許第1,213,808号等の各公報に記載の方法、すなわち、顆粒を作製するための造粒方法としては、例えば、転動造粒、押し出し造粒、圧縮造粒、撹拌造粒、流動層造粒、転動流動層造粒等、錠剤を作製する圧縮成形には、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンを用いることができる。
【0073】
圧縮成形した固体処理剤は、任意の形状を取ることが可能であるが、生産性、取扱い性の観点からまたはユーザーサイドで使用する場合の粉塵の問題から円筒型、いわゆる錠剤が好ましい。
【0074】
本発明の発色現像固体処理剤は、顆粒の場合は顆粒の粒子の60質量%以上が平均粒径±100〜150μmの偏差内に入ることが、投入精度の上から好ましい。
【0075】
本発明の発色現像固体処理剤が錠剤である場合には、圧縮成形に用いる造粒物の平均粒径は、造粒物を混合し、圧縮成形する際、成分の不均一化、いわゆる偏析を起こりにくくするという点で100〜800μmのものを用いることが好ましく、より好ましくは200〜700μmである。さらに造粒物粒子の粒度分布は、60質量%以上が平均粒径±100〜150μmの偏差内にあるものが投入精度の点で好ましい。
【0076】
本発明で用いられるポリアルキレングリコールを添加する形態としては、粉末状、顆粒状、水溶液、フレーク状のいずれでもよく、ポリアルキレングリコールが固体の場合、造粒時に添加することが好ましく、錠剤状に圧縮整形する際には造粒時に添加しても、ポリアルキレングリコールを含有しない造粒物に添加して混合しても両者を併用してもよいが、造粒時に添加することが好ましい。ポリアルキレングリコールが液体の場合には、造粒時に液体として添加することが好ましい。
【0077】
また、造粒時に添加する際、圧縮成形に用いる顆粒を分別造粒する場合は、発色現像主薬を含有する造粒物、アルカリ剤を含有する造粒物、保恒剤を含有する造粒物のどのパートに含有させても、複数のパートに分けて添加してもよいが、造粒後の造粒物の乾燥性の点からアルカリ剤を含有するパートに添加することが特に好ましい。
【0078】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法においては、本発明の発色現像用固体処理剤を用いて、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を処理することが特徴である。
【0079】
本発明の発色現像固体処理剤を適用できるハロゲン化銀カラー写真感光材料としては、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有していれば特に制限はなく、多種多様の写真要素、例えば、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーペーパー、並びにカラー映画フィルム等を挙げることができ、例えば、下記のリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)にその詳細が記載されており、参考にすることができる。
【0080】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料では、ハロゲン化銀感光性層を構成するハロゲン化銀としては、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤である。
【0081】
ハロゲン化銀乳剤は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)No.17643、22〜23頁(1979年12月)の「1.乳剤製造法(Emulsion preparation and types)」、及びRDNo.18716、648頁、グラキデ著「写真の物理と化学」ポールモンテル社刊(P.Glkides,Chimie et Physique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Dauffin,Photographic Emulsion Chemistry Focal Press 1966)、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman etal,Making and coating Photographic Emulsion, FocalPress 1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。乳剤は、米国特許3,574,628号、同3,665,394号及び英国特許1,413,748号などに記載された単分散乳剤も好ましい。
【0082】
ハロゲン化銀乳剤には物理熟成、化学熟成及び分光増感を行うことができる。このような工程で使用される添加剤は、RDNo.17643、RDNo.18716及びRDNo.308119(それぞれ、以下、RD17643、RD18716及びRD308119と略す。)に記載されている。下記にその記載箇所を示す。なお、下記に記載の各数値は、記載されている頁を表す。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に使用できる公知の写真用添加剤も、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
本発明に係る感光性層には、種々のカプラーを使用することが出来、その具体例は、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
【0083】
上記各添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することが出来る。
【0084】
本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることも出来る。
【0085】
本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることが出来る。
【0086】
像様露光されたハロゲン化銀カラー写真感光材料は、本発明の発色現像固体処理剤により調製された発色現像液を用いて現像処理を行い、好適な時間及び温度条件下、好適な処理装置内で、所望の銀画像及び色画像を生成する。その後、当該技術分野で公知の処理工程、例えば、現像停止工程、漂白工程、定着工程、漂白/定着工程、洗浄(もしくは、リンス)工程、安定化工程及び乾燥工程(これらに限定されない)を含む各処理工程を経て、現像処理を行うことができる。
【0087】
例えば、カラーネガフィルムの処理ではプロセスC−41処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCNK−4処理(コニカ社製)、カラーペーパーを処理するプロセスRA−4処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCPK−2処理(コニカ社製)、及びカラーリバーサルフィルムを処理するプロセスE−6処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCRK−2処理(コニカ社製)を含む種々の処理工程を挙げることができる。
【0088】
本発明に係る各処理工程における処理時間及び温度は、一般的に、当該技術分野で適用されている時間及び温度であり、例えば、発色現像は、一般的に、20〜60℃の温度で行われる。発色現像の好ましい時間は15〜250秒である。
【0089】
【実施例】
以下、実施例を示し本発明の構成及び効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
《発色現像固体処理剤の調製》
〔顆粒1〜11の調製〕
下記の各原材料を、レーディゲミキサーM−20(マツボー製)に順次投入し、ウォータージャケットに70℃の温水を循環しながら、ショベル回転数230rpmで、内容物の温度が56℃になるまで撹拌を行った。その結果、ポリエチレングリコール#4000が溶融し、液状の結合剤となることで粉体原材料同士が付着凝集し造粒された。こうして炭酸塩の異なる組成からなるアルカリ剤の顆粒1〜11を調製した。
【0091】
炭酸塩 表1に記載の種類と添加量
DSEHA(*1 例示化合物H−31) 1575g
パラトルエンスルホン酸ナトリウム 1395g
水酸化リチウム一水和物 878g
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩 900g
無水亜硫酸ソーダ 30g
ポリエチレングリコール#4000(例示化合物 A−(6))1200g
*1)DSEHA:ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム
〔発色現像固体処理剤1〜11の調製〕
上記調製した各顆粒と、CD−3・3/2硫酸塩(*2)、ハンマーミルAP−1(ホソカワミクロン製)で微粉砕したアラノンAMP(川研ファインケミカル社製)を、表1に記載の質量比率でクロスロータリー混合機で10分間混合した。こうして、炭酸塩の組成が異なる種々の混合済顆粒を調製した。この混合済顆粒の含水率を、赤外水分計FD−100(Kett製)を用いて、温度115℃で20分間の乾燥条件で測定したところ、炭酸塩の組成が異なるいずれの混合済顆粒も4質量%であった。
【0092】
*2)CD−3・3/2硫酸塩:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)アニリン・3/2硫酸塩
上記で得られた各混合済顆粒を、ロータリー打錠機タブコレクト18HU(菊水製作所製)を用いて、打錠圧9.8×102MPaで圧縮成型し、表1に記載の1錠あたりの質量比からなる、直径30mm、厚み10mmの錠剤である発色現像固体処理剤1〜11を得た。
【0093】
《発色現像固体処理剤の評価》
〔高温保存性の評価:現像主薬残存率の測定〕
上記調製した発色現像固体処理剤1〜11を、23℃、55RHの環境下で各々アルミラミネートフィルムを用いて密封した後、50℃の恒温槽内で3ヶ月間保存した後、発色現像主薬(CD−3)の量を常法に従い定量し、未処理の発色現像主薬量(CD基準)に対する高温保存処理後の発色現像主薬量(CD処理)を求め、下式に従って現像主薬残存率を求めた。
【0094】
現像主薬残存率(%)=CD処理/CD基準×100
〔写真性能の評価〕
コニカフォトイメージング(株)製のデジタルプリンター プロセッサーR1superを用いて、上記50℃の環境下で3ヶ月間保存した後の発色現像固体処理剤を発色現像補充剤として用い、そのほかは基準条件にて、標準シーンを露光したコニカカラーペーパータイプAD(コニカフォトイメージング(株)製 デジタル専用カラーペーパー)を用いて、発色現像タンク液の更新率が1ラウンドとなるまでランニング処理を行った。なお、ここでいう1ラウンドとは、発色現像処理槽の容積と同容積の発色現像補充液を添加した時点をいう。
【0095】
(現像処理工程)
上記で用いた処理工程を、以下に示す。
【0096】
処理工程 処理温度 処理時間 補充量
発色現像 39.8℃ 22秒 50ml/m2
漂白定着 37.5℃ 22秒 38ml/m2
安定化1 38℃ 22秒 120ml/m2
安定化2 38℃ 22秒
安定化3 38℃ 22秒
(濃度測定)
以上の様にして1ラウンドのランニング処理が終了した後、コニカカラーペーパータイプAD(前出)に、光学楔を介してステップワイズに露光量を変化させて露光を施した露光済みカラーペーパーを用いて、上記装置にて同様の現像処理を行い、この現像処理済みカラーペーパーの最大露光部のイエロー画像濃度(Y)の反射濃度(Dmax)を、X−rite濃度計を用いて測定した。
【0097】
以上により得られた各測定結果を、表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1の結果より明らかなように、炭酸塩として炭酸カリウム、あるいは炭酸ナトリウムを単独に用いた比較例に対し、アルカリ剤として炭酸カリウムと炭酸ナトリウムを特定の比率で併用して形成した本発明の発色現像固体処理剤は、高温で長期間保存された後の発色現像主薬の残存率、あるいはそれを用いて現像処理を行って得られた写真性能共に著しく改善されていることが分かる。
【0100】
実施例2
実施例1に記載の発色現像固体処理剤1、6、11の調製において、各々CD−3・3/2硫酸塩の添加量を表2に記載の様に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤21〜31を調製し、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
表2の結果より明らかなように、比較例である炭酸塩として炭酸カリウム、あるいは炭酸ナトリウムを単独に用いた水準では、発色現像固体処理剤中の現像主薬の質量比率を増やしていくと、主薬残存率が著しく劣化していくのに対し、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤では、現像主薬の質量比率を増やしていっても、高い主薬残存率を示しており、本発明の効果をより良好に奏することが分かる。
【0103】
実施例3
実施例1に記載の発色現像固体処理剤1、6、11の調製において、各々表3に記載の含水率となる様に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤41〜58を調製し、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。なお、含水率の調整は、含水率を上昇させる手段としては、あらかじめ25℃、60%RHに調湿された部屋で、一定時間原材料を開放放置して吸湿させることで調整した。また、含水率を下げる手段としては、あらかじめ原材料を100℃のドライオーブンの中で一定時間加熱、脱水して調整した。
【0104】
【表3】
【0105】
表3の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、更に含水率をコントロールすることにより高温時の発色現像主薬の残存率が飛躍的に向上していることが分かる。
【0106】
実施例4
実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、造粒時に添加した保恒剤(DSEHA 例示化合物H−31 造粒時添加量:1575g)を、表4に記載の保恒剤及び添加量に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤59〜65を調製した。また、実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、保恒剤(DSEHA 例示化合物H−31 造粒時添加量:1575g)を除いた以外は同様にして発色現像固体処理剤66を調製した。
【0107】
上記調製した発色現像固体処理剤59〜66と実施例2で調製した発色現像固体処理剤28について、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、保恒剤として一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体、更に好ましくはビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム(例示化合物H−31)を含有することにより、高温時の発色現像主薬の残存率が更に向上していることが分かる。
【0110】
実施例5
実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、造粒時に添加したポリエチレングリコール#4000(例示化合物A−(6) 造粒時添加量:1200g)を、表5に記載の様にポリエチレングリコールの平均分子量及び添加量を変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤67〜74を調製した。また、実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、ポリエチレングリコール#4000(例示化合物A−(6))を除いた以外は同様にして発色現像固体処理剤75を調製した。
【0111】
上記調製した発色現像固体処理剤67〜75と実施例2で調製した発色現像固体処理剤28について、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
表5の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、一般式〔A〕で表されるポリエチレングリコールを含有することにより、高温時の発色現像主薬の残存率が更に向上していることが分かる。
【0114】
実施例6
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製》
〔試料1の作製〕
坪量160g/m2の紙パルプの両面をポリエチレンでラミネートし、紙支持体を作製した。ただし、ハロゲン化銀乳剤層を塗布する面側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを12質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートし、反射支持体を作製した。この反射支持体表面をコロナ放電した後、ゼラチン下塗層を設け、後記の表6及び表7に示す構成の各層を、特開昭49−35447号公報に記載されているような自由落下カーテン膜方式カーテン塗布方式で、350m/分の塗布速度で塗布をして、各色感性層が塩化銀含有率が99.5モル%の塩臭化銀を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料1を作製した。
【0115】
なお、表6、7に記載の各ハロゲン化銀乳剤の添加量は、銀に換算して表示した。また、各層に適宜F−1を添加した。
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
DBP:ジブチルフタレート
DNP:ジノニルフタレート
DOP:ジオクチルフタレート
DIDP:ジ−i−デシルフタレート
PVP:ポリビニルピロリドン
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−5:2,5−ジ〔(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル〕ハイドロキノン
画像安定剤A:P−t−オクチルフェノール
【0119】
【化12】
【0120】
【化13】
【0121】
【化14】
【0122】
【化15】
【0123】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
〈青感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)を、pAgを7.3、pHを3.0に制御しつつ、30分かけて同時添加した。続いて、下記(C液)及び(D液)を、pAgを8.0、pHを5.5に制御しつつ、180分かけて同時添加した。この時、pAgの制御は、特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0124】
上記各溶液の添加を終了した後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して、平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1を調製した。
【0125】
次に、上記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、(C液)と(D液)の添加時間を、それぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1Bを調製した。
【0126】
次いで、上記調製したEMP−1に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、EMP−1Bに対しても同様に化学増感を施した後、増感されたEMP−1とEMP−1Bを銀量で1:1の比率で混合して青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)を調製した。
【0127】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2、及び平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−2Bを調製した。
【0128】
上記EMP−2に対し、下記化合物を用い55℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−2Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−2とEMP−2Bを銀量で1:1の比率で混合し、緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)を調製した。
【0129】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10−4モル/モルAgX
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3、及び平均粒径0.38μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−3Bを調製した。
【0130】
上記EMP−3に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−3Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−3とEMP−3Bを銀量で1:1の比率で混合し、赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)を調製した。
【0131】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
安定剤:SS−1 2.0×10−3モル/モルAgX
【0132】
【化16】
【0133】
〔試料2〜5の作製〕
上記試料1の作製において、各色感性層で用いるハロゲン化銀乳剤を、ハロゲン化銀乳剤調製時のハライドイオンの使用比率(塩化ナトリウムと臭化カリウム)を適宜調整して、塩化銀含有率がそれぞれ95モル%、90モル%、85モル%、80モル%であるハロゲン化銀乳剤を用いた以外は同様にして、試料2〜5を作製した。
【0134】
《写真性能の評価》
50℃の環境下で3ヶ月間保存した後の発色現像固体処理剤28を発色現像補充剤として用い、上記作製した試料1〜5について、実施例1に記載の写真性能の評価と同様にしてランニング処理を行い、現像処理済みの各試料の最大露光部のイエロー画像濃度(Y)の反射濃度(Dmax)を、X−rite濃度計を用いて測定し、得られた各結果を、表8に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
表8の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤を用いた処理方法において、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いることにより、高い発色濃度が得られ写真性能が著しく改善されていることが分かる。
【0137】
【発明の効果】
本発明により、長期保存時の保存安定性に優れ、長期間にわたり安定な写真性能を供するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤とそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法に関し、詳しくは保存安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤とそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
露光あるいは撮影が施されたハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は、露光後、現像、脱銀、洗浄、安定化等の各工程を経て処理され、銀画像あるいは色画像が形成される。この処理は、通常自動現像機(以下、自現機とも称す。)を用いて行われ、その場合、補充液による補充方式が広く採用されていて、処理槽内の処理液の活性度を一定に保つ様にコントロールされている。補充液補充方式の場合、感光材料からの溶出物の希釈、蒸発量の補正及び消費成分の補充を目的としており、通常はこの補充液は液体で供給される関係から、オーバーフロー液が多量に排出されている。
【0003】
近年、写真用処理剤の廃液の海洋投棄に関する規制やプラスチック材料の廃棄に対する規制が世界的に強化されてきており、写真廃液をゼロにし、しかも液剤用ポリボトルを使用しない新しいシステムの開発が求められている。又、液体危険物の輸送に関する安全性確保のために包材に対する安全規制が強化されコストの上昇を招いている。更に、最近広く用いられているミニラボ店においては、低コスト化と人手不足から未熟な作業者による作業が多くなり、補充液の溶解或いは希釈準備作業の難しさ故に、誤溶解に起因する事故がしばしば発生し、補充システムに対する苦情が多く出される様になってきた。
【0004】
従って、当写真業界においては、写真廃液がほとんどなく、ボトルも使用せず、しかも溶解作業が全く不要となる固体ケミカルの補充システムの開発が強く求められている。
【0005】
この要望に応える方法として、特開平5−119454号公報には、ほとんど全ての処理成分を固体化し、直接処理槽に投入する方法が開示されている。
【0006】
ところで処理剤は、製造後ユーザーの手に渡るまでの間、及び手に渡った後、使用されるまでに様々な環境下で保存される。例えば、国内でも、冬場の低温低湿雰囲気下や、逆に梅雨時の高温高湿雰囲気下で保存されたり、あるいは東南アジアの一部においては、自動現像機には、除湿、冷房機能の備わっていない場所に設置される場合が多く、また使い勝手から、処理剤は自現機の近辺に保存されることが多く、雨季等においては、この処理剤保存場所付近の雰囲気が気温30〜45℃で相対湿度70〜80%などと高温多湿になる場合がある。他方、処理剤は、寒冷地の冬等においては、輸送の過程で−10〜−30℃などの極低温に晒される場合もあり、保存環境による処理剤の劣化が懸念され、これらの諸環境に影響を受けない安定な処理剤の開発が望まれている。更に、写真用処理剤は、輸送及び市場において使用されるまでの期間は、長ければ数年滞留することが一般的に知られており、経時における保存性の向上が求められている。
【0007】
その中でも、発色現像固体処理剤は、従来の液剤処理剤に比べて多種類の成分を様々な量で含有せしめるので、見かけの濃縮度が飛躍的に高くなるため、処理剤の経時による保存安定性等の劣化をより受けやすくなることが判明した。
【0008】
本発明者らが、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬を含有する発色現像固体処理剤について種々検討した結果、大気中で長期間保存されると、水分等を吸収して固体処理剤の形状が崩れたり、発色現像主薬となる化合物が分解して減少したり、固体処理剤同士が付着してブロッキングを生じることが分かった。更に保存後の輸送での振動等により割れ欠け、ひび割れ等を生じて、固体処理剤の形状(顆粒や錠剤状)を保てず、自動現像機で使用する際に、投入不良と言った問題等を生じることが判った。これらの対策として非常に硬い固体処理剤とすると、溶解に時間がかかり実用に供し得ず、さらにこれらを自動現像機に使用する際には固着を生じることもあり、処理に支障をきたすことも判明した。
【0009】
破壊強度の減少は、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬が存在する固体処理剤は吸湿性や潮解性のあるアルカリ剤等を含有している為、その潮解性により経時において含水率が高くなってしまい、含水率が低いときに保っていた処理剤の結合力が減少していくことによるものと推測される。更に、パラフェニレンジアミン系発色現像主薬は結合力が乏しく、低補充、迅速化を行うに際して発色現像主薬の固体処理剤全体に占める成分比率を上昇させた際には、更に悪化してしまう。
【0010】
一方、発色現像固体処理剤用のアルカリ剤としては、従来より炭酸塩としてカリウム塩を単独で使用していた。しかしながら炭酸カリウム単独でアルカリ剤を構成した場合には、上記の様な長期保存性に課題を有しており、具体的には、発色現像主薬が炭酸塩との反応により酸化を受けると共に、その反応やアルカリ剤の潮解性に伴い固体処理剤が膨張を起こし、崩壊に繋がる結果となる。また、上述の様にして劣化した固体処理剤を用いて現像処理を行うと、発色現像主薬の酸化による発色濃度の低下や、現像処理中にタール等が発生しやすくなり、発生したタールの感光材料表面への付着により、現像故障を招く結果となる。
【0011】
上記課題に対し、アルカリ剤として特定の構造を有する化合物を用いて、発色現像固体処理剤の溶解性、保存安定性、性能安定性を改良する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、近年の低補充化に伴う発色現像主薬を高濃度で含有する発色現像固体処理剤においては、特に長期保存性に対する改良効果が十分であるとは言えず、更なる改良が求められている。また、アルカリ剤として、異なる炭酸塩を併せて用いることによる効果に関しては、一切言及がなされていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−59399号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、長期保存時の保存安定性に優れ、長期間にわたり安定な写真性能を供するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0015】
1.少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0016】
2.前記パラフェニレンジアミン発色現像主薬の含有率が、16質量%以上であることを特徴とする前記1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0017】
3.含水率が5%以下であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0018】
4.前記一般式〔A〕で表される化合物を含有することを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0019】
5.前記一般式〔A〕で表される化合物が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする前記4項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0020】
6.前記一般式〔H〕で表される化合物を含有することを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0021】
7.前記一般式〔H〕で表される化合物が、ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムであることを特徴とする前記6項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
【0022】
8.前記1〜7項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を用いて、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を処理することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
【0023】
本発明者は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を過酷な環境下で保存した際の安定性について鋭意検討を進めた結果、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有し、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であるハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤により、保存安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。また、更に驚くべきことに、カートリッジ(モジュール)への崩壊した粉体等の付着性が大幅に低減し、固体処理剤等のカートリッジ内での詰まりによる作動不良をも低減できたものである。
【0024】
更に、上記構成に加えて、パラフェニレンジアミン発色現像主薬の含有率を16質量%以上とすること、含水率を5%以下とすること、ポリアルキレングリコールとして前記一般式〔A〕で表される化合物、更に好ましくはポリエチレングリコールを含有すること、ヒドロキシルアミン誘導体として前記一般式〔H〕で表される化合物、更に好ましくはビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムを含有することにより、本発明の目的効果がより発揮されることを見出したものである。
【0025】
本発明の構成からなるハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、保存性が飛躍的に改良されるメカニズムに関しては、未だ定かではないが、以下の様に推測している。
【0026】
本来、炭酸カリウムは、吸湿性を有する化合物であり、炭酸カリウム単独で造られた発色現像固体処理剤は外部から侵入してくる水分を吸収しやすく、この吸湿した水分により、炭酸塩と現像主薬との中和反応を引き起こす。その結果、発色現像固体処理剤は、膨張して崩壊を起こしたり、あるいはカートリッジ内で詰まってしまうというトラブルが発生する。
【0027】
これに対し、炭酸ナトリウムの吸湿性は炭酸カリウムに比較すると低いため、炭酸カリウム単独で造られた固体処理剤に比べると、外部から侵入する水分に対しては比較的吸湿しにくい性質を有している。
【0028】
このため、本発明の構成である炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを併用することにより、外部から侵入する湿度に対する耐性が向上するものである。
【0029】
一方、内部における中和反応で生成する水に対する保存性への影響については、以下の様に考えている。
【0030】
すなわち、固体処理剤は、元々含んでいるごく微少な水分によって、発色現像主薬(硫酸塩)と炭酸塩との間で、内部中和反応が引き起こされる。この内部中和反応により、水と炭酸ガスとフリーベースの現像主薬が生成したのち、フリーベースの主薬が水分等により酸化劣化を引き起こすものと考えられる。これに対し、アルカリ剤として炭酸カリウムで形成された発色現像固体処理剤では、炭酸カリウムが速やかに中和反応で生成した水を吸湿し、保湿剤として機能することで、より一層中和反応を起こりにくくしている。
【0031】
反面、炭酸ナトリウムで形成された固体処理剤では、内部反応で発生した水分を炭酸ナトリウムが十分吸収できないため、更なる中和反応が加速度的に進行して、発色現像主薬の酸化をより進行させるものと推測している。
【0032】
これに対し、炭酸塩のカリウム塩とナトリウム塩とを併用すると、外部の湿気から吸湿するのを押さえると共に、内部中和反応で発生する水分を保湿する効果の両方がバランス良く発揮され、結果として、長期保存での劣化が各々単独で使用する時に比べ著しく改善されるものである。
【0033】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤(以下、単に本発明の発色現像固体処理剤ともいう)では、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有し、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる炭酸カリウムのmol数(A)と炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることが特徴であり、より好ましくは0.4以上、4.5以下であり、更に好ましくは1.0以上、2.5以下である。比率(A/B)が0.1以上であれば、炭酸カリウムの好ましい特性を十分に発揮することができ、また、9.0以下であれば炭酸ナトリウムの好ましい特性を十分に発揮できる。
【0034】
本発明の発色現像固体処理剤では、アルカリ剤として本発明に係る炭酸カリウムと炭酸ナトリウムの他に、本発明の目的効果を損なわない範囲において、公知のアルカリ剤を更に併せて用いることもでき、それらのアルカリ剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸三カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二カリウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、四硼酸ナトリウム、四硼酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の発色現像固体処理剤では、少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬を含有することが特徴の1つであり、含有率は好ましくは全固形分量に対し、16質量%以上であることが好ましく、より好ましくは16〜30質量%である。
【0036】
本発明に用いられるパラフェニレンジアミン系発色現像主薬としては、アミノ基またはベンゼン環上に親水性基を少なくとも1つ有するものが、感光材料の汚染がなく、かつ皮膚に対する刺激が少ない長所を有し、好ましく用いられる。
【0037】
具体的な親水性基としては、
−(CH2)n−CH2OH
−(CH2)−NHSO2−(CH2)n−CH3
−(CH2)m−O−(CH2)n−CH3
−(CH2CH2O)nCmH2m+1
−(CH2)m−CON(CmH2m+1)2
(m及びnはそれぞれ0以上の整数を表わす。)
−COOH
−SO3H
等が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
本発明に好ましく用いられる発色現像剤の具体的例示化合物として、以下のものが挙げられる。
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
【化8】
【0043】
このうち好ましいものは(D−1)、(D−3)、(D−17)、(D−18)であり、より好ましくは(D−1)、(D−3)である。尚、これらの化合物は含水塩であっても無水塩であってもよい。
【0044】
本発明の発色現像固体処理剤においては、含水率が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。
【0045】
なお、本発明でいう含水率とは、発色現像固体処理剤が含有する付着水(自由水)と結晶水の総質量和の総固形分質量に対する質量比率(%)を指す。含水率は、例えば、市販の赤外水分計などを用いて測定することができる。
【0046】
本発明の発色現像固体処理剤において、含水率をコントロール手段としては、特に制限はなく、例えば、溶媒の添加量、乾燥温度、乾燥時間などにより、適宜調整が可能であるが、乾燥温度を50℃を超え、かつ100℃未満状態で乾燥させることが局部的に発生しうる含水率のバラツキを最小限に抑制する観点から好ましい。
【0047】
次いで、本発明の発色現像固体処理剤の上記説明した以外の構成要素について説明する。
【0048】
本発明の発色現像用固体錠剤中には、経時保存性を更に改良する観点から糖類用いることができる。本発明でいう糖類とは、単糖類とこれが複数個互いにグリコシド結合した多糖類とをいう。
【0049】
単糖類とは、単一のポリヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシケトン及びこれらの還元誘導体、酸化誘導体、デオキシ誘導体、アミノ誘導体、チオ誘導体など広い範囲の誘導体の総称である。多くの糖は、一般式CnH2nOnで表されるが、この一般式で表される糖骨格から誘導される化合物も含めて、本発明では単糖類と定義する。これらの単糖類のうちで好ましいものは、糖のアルデヒド基及びケトン基を還元して各々第一、第二アルコール基とした糖アルコールであり、特に好ましくは、炭素数が6のヘキシットである。
【0050】
多糖類には、セルロース類、デンプン類、グリコーゲン類などが含まれ、セルロース類には、水酸基の一部又は全部がエーテル化されたセルロースエーテル等の誘導体を含み、デンプン類には加水分解して麦芽糖に至るまでの種々の分解生成物であるデキストリン類等を含む。セルロース類は溶解性の観点からアルカリ金属塩の形でもかまわない。これら多糖類で好ましく用いられるものは、セルロース類とデキストリン類であり、より好ましくはデキストリン類である。
【0051】
本発明で用いることのできる単糖類の具体的化合物例を以下に示す。
〔例示化合物〕
B−(1) グリセリン
B−(2) D−トレイット
B−(3) L−トレイット
B−(4) meso−エリトレット
B−(5) D−アラビット
B−(6) L−アラビット
B−(7) アドニット
B−(8) キシリット
B−(9) D−ソルビット
B−(10) L−ソルビット
B−(11) D−マンニット
B−(12) L−マンニット
B−(13) D−イジット
B−(14) L−イジット
B−(15) D−タリット
B−(16) L−タリット
B−(17) ズルシット
B−(18) アロズルシット
次いで、多糖類の具体的化合物例を、以下に示す。
【0052】
C−(1) α−デキストリン
C−(2) β−デキストリン
C−(3) γ−デキストリン
C−(4) δ−デキストリン
C−(5) ε−デキストリン
C−(6) α−限界デキストリン
C−(7) β−限界デキストリン
C−(8) ホスホリラーゼ限界デキストリン
C−(9) 可溶性デンプン
C−(10) 薄手ノリデンプン
C−(11) 白色デキストリン
C−(12) 黄色デキストリン
C−(13) ブリテッシュガム
C−(14) パインフロー (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(15) パインデックス100 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(16) パインデックス 1 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(17) パインデックス 2 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(18) パインデックス 3 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(19) パインデックス 4 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(20) パインデックス 6 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(21) フードテックス (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(22) マックス 1000(商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(23) グリスターP (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(24) TK−16 (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(25) MPD (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(26) H−PDX (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(27) スタコデックス (商品名、松谷化学工業株式会社製)
C−(28) マビット (商品名、林原商事株式会社製)
C−(29) プルラン (商品名、林原商事株式会社製)
C−(30) メチルセルロース
C−(31) ジメチルセルロース
C−(32) トリメチルセルロース
C−(33) エチルセルロース
C−(34) ジエチルセルロース
C−(35) トリエチルセルロース
C−(36) カルボキシメチルセルロース
C−(37) カルボキシエチルセルロース
C−(38) アミノエチルセルロース
C−(39) ヒドロキシメチルセルロース
C−(40) ヒドロキシエチルメチルセルロース
C−(41) ヒドロキシプロピルセルロース
C−(42) ヒドロキシプロピルメチルセルロース
C−(43) ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
C−(44) カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース
これら糖類の含有量は、固体発色現像処理剤の単位質量当り5〜15質量%含有させることができる。
【0053】
これら糖類は、広く天然に存在しており、市販品を簡単に入手できる。また種々の誘導体についても酸化、還元あるいは脱水反応などを行うことによって容易に合成できる。
【0054】
また、本発明の発色現像固体処理剤には、ポリアルキレングリコールを用いることができ、ポリアルキレングリコールが、前記一般式〔A〕で示される化合物であることが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールである。
【0055】
本発明に係る前記一般式〔A〕で示されるポリアルキレングリコール中のエチレンオキサイドの含有率は、溶解性と強度の減少の防止から60質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。尚、本発明における平均分子量は、水酸基価により算出したものを言う。
【0056】
以下にポリアルキレングリコールの具体的例示化合物を示す。
【0057】
【化9】
【0058】
本発明の発色現像固体処理剤中には、固体の保恒剤を共存させることが好ましく、更に、現像主薬を含む造粒物が、現像主薬と保恒剤を混合し、造粒したものであるのが好ましい。保恒剤としては、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等)、重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等)、メタ重亜硫酸塩(メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)、ヒドロキシルアミン誘導体等が挙げられる。
【0059】
本発明の発色現像固体処理剤においては、保恒剤として、下記一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体を含有することが好ましく、更に好ましくは前記一般式〔H〕で表される化合物が、ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムである
前記一般式〔H〕において、R13、R14は、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、R15CO基又は水素原子を表し、R13、R14は互いに結合して窒素を含むヘテロ環基を形成するものであってもよい。R15は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基を表す。
【0060】
R13、R14で表される置換されていてもよいアルキル基は炭素原子数1〜3のものが好ましく、同一でも異なっていてもよい。置換基としては、水酸基、スルホ基、ホスホン基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基等が挙げられる。
【0061】
次に一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体の好ましい例を示す。
なお、化合物H−12〜H−20及びH−27はアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)の形で用いることができる。
【0062】
【化10】
【0063】
これらの化合物は、通常、遊離のアミン、塩酸塩、硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、蓚酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の形で用いられ、固体であることが好ましい。
【0064】
中でも特に好ましい化合物は、H−1、H−6、H−17、H−18及びH−25であり、その塩としての具体例を以下に示す。
【0065】
【化11】
【0066】
本発明の発色現像用固体処理剤には、現像促進剤として、特公昭37−16088号、同37−5987号、同38−7826号、同44−12380号、同45−9019号及び米国特許第3,813,247号等に代表されるチオエーテル系化合物、特公昭44−30074号、特開昭50−137726号、同56−156826号及び同52−43429号等に代表される4級アンモニウム塩類、米国特許2,610,122号及び同4,119,462号記載のp−アミノフェノール類、米国特許2,494,903号、同3,128,182号、同4,230,796号、同3,253,919号、特公昭41−11431号、米国特許2,482,546号、同2,596,926号及び同3,582,346号等に記載のアミン系化合物、その他1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、イオン型化合物、イミダゾール類等を必要に応じて含有させることができる。
【0067】
本発明において、カブリ防止等の目的で塩素イオン、臭素イオン及び沃素イオンを放出する化合物を発色現像用固体処理剤中に添加できる。
【0068】
また、本発明の発色現像用固体処理剤には、特開平4−118649号公報第19頁から第20頁に記載の一般式〔K〕で示されるキレート剤を添加することが好ましい。更に又、発色現像用固体処理剤には、アニオン、カチオン、両性、ノニオンの各界面活性剤を含有させることができる。
【0069】
写真処理剤を固体化するには、濃厚液又は微粉ないし粒子状写真処理剤と水溶性結着剤を混練し成型化するか、仮成型した写真処理剤の表面に水溶性結着剤を噴霧したりすることで被覆層を形成する等、任意の手段が採用できる(特開平4−29136号、同4−85535号、同4−85536号、同4−85533号、同4−85534号、同4−172341号参照)。
【0070】
本発明の発色現像固体処理剤は、粉末状、顆粒状、錠剤状のいずれでもよいが、固体処理剤を溶解槽または直接処理層に添加する際の投入精度の点で、顆粒状あるいは錠剤状であることが好ましく、さらに好ましくは錠剤状である。ここでいう顆粒とは、粉末を造粒して得た粒径が50〜5000μmの粒状物のことを言い、錠剤とは、粉末または顆粒を一定の形状に圧縮成形したものを言う。
【0071】
好ましい錠剤の製造方法としては、粉末処理剤を造粒した後打錠工程を行い圧縮成型する方法である。単に粉末処理剤を混合して打錠工程により形成された錠剤に比べ溶解性や保存性が改良され結果として写真処理性能も安定になるという利点がある。
【0072】
写真処理剤を固体化する方法は、特開平4−29136号、同4−85535号、同4−85536号、同4−85533号、同4−85534号、同4−172341号、同2−109042号、同2−109043号、同3−39735号、同3−39739号、特開昭51−61837号、同54−155038号、同52−88025号、英国特許第1,213,808号等の各公報に記載の方法、すなわち、顆粒を作製するための造粒方法としては、例えば、転動造粒、押し出し造粒、圧縮造粒、撹拌造粒、流動層造粒、転動流動層造粒等、錠剤を作製する圧縮成形には、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンを用いることができる。
【0073】
圧縮成形した固体処理剤は、任意の形状を取ることが可能であるが、生産性、取扱い性の観点からまたはユーザーサイドで使用する場合の粉塵の問題から円筒型、いわゆる錠剤が好ましい。
【0074】
本発明の発色現像固体処理剤は、顆粒の場合は顆粒の粒子の60質量%以上が平均粒径±100〜150μmの偏差内に入ることが、投入精度の上から好ましい。
【0075】
本発明の発色現像固体処理剤が錠剤である場合には、圧縮成形に用いる造粒物の平均粒径は、造粒物を混合し、圧縮成形する際、成分の不均一化、いわゆる偏析を起こりにくくするという点で100〜800μmのものを用いることが好ましく、より好ましくは200〜700μmである。さらに造粒物粒子の粒度分布は、60質量%以上が平均粒径±100〜150μmの偏差内にあるものが投入精度の点で好ましい。
【0076】
本発明で用いられるポリアルキレングリコールを添加する形態としては、粉末状、顆粒状、水溶液、フレーク状のいずれでもよく、ポリアルキレングリコールが固体の場合、造粒時に添加することが好ましく、錠剤状に圧縮整形する際には造粒時に添加しても、ポリアルキレングリコールを含有しない造粒物に添加して混合しても両者を併用してもよいが、造粒時に添加することが好ましい。ポリアルキレングリコールが液体の場合には、造粒時に液体として添加することが好ましい。
【0077】
また、造粒時に添加する際、圧縮成形に用いる顆粒を分別造粒する場合は、発色現像主薬を含有する造粒物、アルカリ剤を含有する造粒物、保恒剤を含有する造粒物のどのパートに含有させても、複数のパートに分けて添加してもよいが、造粒後の造粒物の乾燥性の点からアルカリ剤を含有するパートに添加することが特に好ましい。
【0078】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法においては、本発明の発色現像用固体処理剤を用いて、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を処理することが特徴である。
【0079】
本発明の発色現像固体処理剤を適用できるハロゲン化銀カラー写真感光材料としては、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有していれば特に制限はなく、多種多様の写真要素、例えば、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーペーパー、並びにカラー映画フィルム等を挙げることができ、例えば、下記のリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)にその詳細が記載されており、参考にすることができる。
【0080】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料では、ハロゲン化銀感光性層を構成するハロゲン化銀としては、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤である。
【0081】
ハロゲン化銀乳剤は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)No.17643、22〜23頁(1979年12月)の「1.乳剤製造法(Emulsion preparation and types)」、及びRDNo.18716、648頁、グラキデ著「写真の物理と化学」ポールモンテル社刊(P.Glkides,Chimie et Physique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Dauffin,Photographic Emulsion Chemistry Focal Press 1966)、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman etal,Making and coating Photographic Emulsion, FocalPress 1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。乳剤は、米国特許3,574,628号、同3,665,394号及び英国特許1,413,748号などに記載された単分散乳剤も好ましい。
【0082】
ハロゲン化銀乳剤には物理熟成、化学熟成及び分光増感を行うことができる。このような工程で使用される添加剤は、RDNo.17643、RDNo.18716及びRDNo.308119(それぞれ、以下、RD17643、RD18716及びRD308119と略す。)に記載されている。下記にその記載箇所を示す。なお、下記に記載の各数値は、記載されている頁を表す。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に使用できる公知の写真用添加剤も、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
本発明に係る感光性層には、種々のカプラーを使用することが出来、その具体例は、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
【0083】
上記各添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することが出来る。
【0084】
本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることも出来る。
【0085】
本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることが出来る。
【0086】
像様露光されたハロゲン化銀カラー写真感光材料は、本発明の発色現像固体処理剤により調製された発色現像液を用いて現像処理を行い、好適な時間及び温度条件下、好適な処理装置内で、所望の銀画像及び色画像を生成する。その後、当該技術分野で公知の処理工程、例えば、現像停止工程、漂白工程、定着工程、漂白/定着工程、洗浄(もしくは、リンス)工程、安定化工程及び乾燥工程(これらに限定されない)を含む各処理工程を経て、現像処理を行うことができる。
【0087】
例えば、カラーネガフィルムの処理ではプロセスC−41処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCNK−4処理(コニカ社製)、カラーペーパーを処理するプロセスRA−4処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCPK−2処理(コニカ社製)、及びカラーリバーサルフィルムを処理するプロセスE−6処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCRK−2処理(コニカ社製)を含む種々の処理工程を挙げることができる。
【0088】
本発明に係る各処理工程における処理時間及び温度は、一般的に、当該技術分野で適用されている時間及び温度であり、例えば、発色現像は、一般的に、20〜60℃の温度で行われる。発色現像の好ましい時間は15〜250秒である。
【0089】
【実施例】
以下、実施例を示し本発明の構成及び効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
《発色現像固体処理剤の調製》
〔顆粒1〜11の調製〕
下記の各原材料を、レーディゲミキサーM−20(マツボー製)に順次投入し、ウォータージャケットに70℃の温水を循環しながら、ショベル回転数230rpmで、内容物の温度が56℃になるまで撹拌を行った。その結果、ポリエチレングリコール#4000が溶融し、液状の結合剤となることで粉体原材料同士が付着凝集し造粒された。こうして炭酸塩の異なる組成からなるアルカリ剤の顆粒1〜11を調製した。
【0091】
炭酸塩 表1に記載の種類と添加量
DSEHA(*1 例示化合物H−31) 1575g
パラトルエンスルホン酸ナトリウム 1395g
水酸化リチウム一水和物 878g
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩 900g
無水亜硫酸ソーダ 30g
ポリエチレングリコール#4000(例示化合物 A−(6))1200g
*1)DSEHA:ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム
〔発色現像固体処理剤1〜11の調製〕
上記調製した各顆粒と、CD−3・3/2硫酸塩(*2)、ハンマーミルAP−1(ホソカワミクロン製)で微粉砕したアラノンAMP(川研ファインケミカル社製)を、表1に記載の質量比率でクロスロータリー混合機で10分間混合した。こうして、炭酸塩の組成が異なる種々の混合済顆粒を調製した。この混合済顆粒の含水率を、赤外水分計FD−100(Kett製)を用いて、温度115℃で20分間の乾燥条件で測定したところ、炭酸塩の組成が異なるいずれの混合済顆粒も4質量%であった。
【0092】
*2)CD−3・3/2硫酸塩:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)アニリン・3/2硫酸塩
上記で得られた各混合済顆粒を、ロータリー打錠機タブコレクト18HU(菊水製作所製)を用いて、打錠圧9.8×102MPaで圧縮成型し、表1に記載の1錠あたりの質量比からなる、直径30mm、厚み10mmの錠剤である発色現像固体処理剤1〜11を得た。
【0093】
《発色現像固体処理剤の評価》
〔高温保存性の評価:現像主薬残存率の測定〕
上記調製した発色現像固体処理剤1〜11を、23℃、55RHの環境下で各々アルミラミネートフィルムを用いて密封した後、50℃の恒温槽内で3ヶ月間保存した後、発色現像主薬(CD−3)の量を常法に従い定量し、未処理の発色現像主薬量(CD基準)に対する高温保存処理後の発色現像主薬量(CD処理)を求め、下式に従って現像主薬残存率を求めた。
【0094】
現像主薬残存率(%)=CD処理/CD基準×100
〔写真性能の評価〕
コニカフォトイメージング(株)製のデジタルプリンター プロセッサーR1superを用いて、上記50℃の環境下で3ヶ月間保存した後の発色現像固体処理剤を発色現像補充剤として用い、そのほかは基準条件にて、標準シーンを露光したコニカカラーペーパータイプAD(コニカフォトイメージング(株)製 デジタル専用カラーペーパー)を用いて、発色現像タンク液の更新率が1ラウンドとなるまでランニング処理を行った。なお、ここでいう1ラウンドとは、発色現像処理槽の容積と同容積の発色現像補充液を添加した時点をいう。
【0095】
(現像処理工程)
上記で用いた処理工程を、以下に示す。
【0096】
処理工程 処理温度 処理時間 補充量
発色現像 39.8℃ 22秒 50ml/m2
漂白定着 37.5℃ 22秒 38ml/m2
安定化1 38℃ 22秒 120ml/m2
安定化2 38℃ 22秒
安定化3 38℃ 22秒
(濃度測定)
以上の様にして1ラウンドのランニング処理が終了した後、コニカカラーペーパータイプAD(前出)に、光学楔を介してステップワイズに露光量を変化させて露光を施した露光済みカラーペーパーを用いて、上記装置にて同様の現像処理を行い、この現像処理済みカラーペーパーの最大露光部のイエロー画像濃度(Y)の反射濃度(Dmax)を、X−rite濃度計を用いて測定した。
【0097】
以上により得られた各測定結果を、表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1の結果より明らかなように、炭酸塩として炭酸カリウム、あるいは炭酸ナトリウムを単独に用いた比較例に対し、アルカリ剤として炭酸カリウムと炭酸ナトリウムを特定の比率で併用して形成した本発明の発色現像固体処理剤は、高温で長期間保存された後の発色現像主薬の残存率、あるいはそれを用いて現像処理を行って得られた写真性能共に著しく改善されていることが分かる。
【0100】
実施例2
実施例1に記載の発色現像固体処理剤1、6、11の調製において、各々CD−3・3/2硫酸塩の添加量を表2に記載の様に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤21〜31を調製し、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
表2の結果より明らかなように、比較例である炭酸塩として炭酸カリウム、あるいは炭酸ナトリウムを単独に用いた水準では、発色現像固体処理剤中の現像主薬の質量比率を増やしていくと、主薬残存率が著しく劣化していくのに対し、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤では、現像主薬の質量比率を増やしていっても、高い主薬残存率を示しており、本発明の効果をより良好に奏することが分かる。
【0103】
実施例3
実施例1に記載の発色現像固体処理剤1、6、11の調製において、各々表3に記載の含水率となる様に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤41〜58を調製し、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。なお、含水率の調整は、含水率を上昇させる手段としては、あらかじめ25℃、60%RHに調湿された部屋で、一定時間原材料を開放放置して吸湿させることで調整した。また、含水率を下げる手段としては、あらかじめ原材料を100℃のドライオーブンの中で一定時間加熱、脱水して調整した。
【0104】
【表3】
【0105】
表3の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、更に含水率をコントロールすることにより高温時の発色現像主薬の残存率が飛躍的に向上していることが分かる。
【0106】
実施例4
実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、造粒時に添加した保恒剤(DSEHA 例示化合物H−31 造粒時添加量:1575g)を、表4に記載の保恒剤及び添加量に変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤59〜65を調製した。また、実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、保恒剤(DSEHA 例示化合物H−31 造粒時添加量:1575g)を除いた以外は同様にして発色現像固体処理剤66を調製した。
【0107】
上記調製した発色現像固体処理剤59〜66と実施例2で調製した発色現像固体処理剤28について、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、保恒剤として一般式〔H〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体、更に好ましくはビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム(例示化合物H−31)を含有することにより、高温時の発色現像主薬の残存率が更に向上していることが分かる。
【0110】
実施例5
実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、造粒時に添加したポリエチレングリコール#4000(例示化合物A−(6) 造粒時添加量:1200g)を、表5に記載の様にポリエチレングリコールの平均分子量及び添加量を変更した以外は同様にして、発色現像固体処理剤67〜74を調製した。また、実施例2に記載の発色現像固体処理剤28の調製において、ポリエチレングリコール#4000(例示化合物A−(6))を除いた以外は同様にして発色現像固体処理剤75を調製した。
【0111】
上記調製した発色現像固体処理剤67〜75と実施例2で調製した発色現像固体処理剤28について、実施例1に記載の方法と同様にして高温保存性の評価を行い、得られた結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
表5の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤において、一般式〔A〕で表されるポリエチレングリコールを含有することにより、高温時の発色現像主薬の残存率が更に向上していることが分かる。
【0114】
実施例6
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製》
〔試料1の作製〕
坪量160g/m2の紙パルプの両面をポリエチレンでラミネートし、紙支持体を作製した。ただし、ハロゲン化銀乳剤層を塗布する面側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを12質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートし、反射支持体を作製した。この反射支持体表面をコロナ放電した後、ゼラチン下塗層を設け、後記の表6及び表7に示す構成の各層を、特開昭49−35447号公報に記載されているような自由落下カーテン膜方式カーテン塗布方式で、350m/分の塗布速度で塗布をして、各色感性層が塩化銀含有率が99.5モル%の塩臭化銀を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料1を作製した。
【0115】
なお、表6、7に記載の各ハロゲン化銀乳剤の添加量は、銀に換算して表示した。また、各層に適宜F−1を添加した。
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
DBP:ジブチルフタレート
DNP:ジノニルフタレート
DOP:ジオクチルフタレート
DIDP:ジ−i−デシルフタレート
PVP:ポリビニルピロリドン
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−5:2,5−ジ〔(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル〕ハイドロキノン
画像安定剤A:P−t−オクチルフェノール
【0119】
【化12】
【0120】
【化13】
【0121】
【化14】
【0122】
【化15】
【0123】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
〈青感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)を、pAgを7.3、pHを3.0に制御しつつ、30分かけて同時添加した。続いて、下記(C液)及び(D液)を、pAgを8.0、pHを5.5に制御しつつ、180分かけて同時添加した。この時、pAgの制御は、特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0124】
上記各溶液の添加を終了した後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して、平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1を調製した。
【0125】
次に、上記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、(C液)と(D液)の添加時間を、それぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1Bを調製した。
【0126】
次いで、上記調製したEMP−1に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、EMP−1Bに対しても同様に化学増感を施した後、増感されたEMP−1とEMP−1Bを銀量で1:1の比率で混合して青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)を調製した。
【0127】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2、及び平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−2Bを調製した。
【0128】
上記EMP−2に対し、下記化合物を用い55℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−2Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−2とEMP−2Bを銀量で1:1の比率で混合し、緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)を調製した。
【0129】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10−4モル/モルAgX
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3、及び平均粒径0.38μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−3Bを調製した。
【0130】
上記EMP−3に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−3Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−3とEMP−3Bを銀量で1:1の比率で混合し、赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)を調製した。
【0131】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
安定剤:SS−1 2.0×10−3モル/モルAgX
【0132】
【化16】
【0133】
〔試料2〜5の作製〕
上記試料1の作製において、各色感性層で用いるハロゲン化銀乳剤を、ハロゲン化銀乳剤調製時のハライドイオンの使用比率(塩化ナトリウムと臭化カリウム)を適宜調整して、塩化銀含有率がそれぞれ95モル%、90モル%、85モル%、80モル%であるハロゲン化銀乳剤を用いた以外は同様にして、試料2〜5を作製した。
【0134】
《写真性能の評価》
50℃の環境下で3ヶ月間保存した後の発色現像固体処理剤28を発色現像補充剤として用い、上記作製した試料1〜5について、実施例1に記載の写真性能の評価と同様にしてランニング処理を行い、現像処理済みの各試料の最大露光部のイエロー画像濃度(Y)の反射濃度(Dmax)を、X−rite濃度計を用いて測定し、得られた各結果を、表8に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
表8の結果から明らかな様に、本発明の炭酸カリウムと炭酸ナトリウムとを特定の比率で併用した発色現像固体処理剤を用いた処理方法において、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いることにより、高い発色濃度が得られ写真性能が著しく改善されていることが分かる。
【0137】
【発明の効果】
本発明により、長期保存時の保存安定性に優れ、長期間にわたり安定な写真性能を供するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法を提供することができた。
Claims (8)
- 少なくともパラフェニレンジアミン発色現像主薬及び炭酸塩を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤において、該炭酸塩が炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであり、かつ単位質量当たりに含まれる該炭酸カリウムのmol数(A)と該炭酸ナトリウムのmol数(B)との比率(A/B)が、0.1以上、9.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
- 前記パラフェニレンジアミン発色現像主薬の含有率が、16質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
- 含水率が5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
- 前記一般式〔A〕で表される化合物が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項4に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
- 前記一般式〔H〕で表される化合物が、ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウムであることを特徴とする請求項6に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤を用いて、支持体上にハロゲン化銀感光性層を有し、該ハロゲン化銀感光性層の少なくとも1層に、塩化銀含有率が90モル%以上の塩臭化銀または塩化銀乳剤を含有しているハロゲン化銀カラー写真感光材料を処理することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法。
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JP2003186992A JP2005024632A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | ハロゲン化銀カラー写真感光材料用発色現像固体処理剤及びハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法 |
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