JP2005022453A - エアバッグカバー、エアバッグモジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エアバッグカバー100に、当該エアバッグカバー100の板厚の範囲内における深さの孔105aが断続的に延在する線状のレーザーカット溝部105と、当該レーザーカット溝部105の終端領域において板厚方向に関し減肉された凹部106とを設ける。凹部106は、レーザーカット溝部105の終端から当該レーザーカット溝部105の延長線Lに沿う方向に延在し、板厚方向に関する凹み深さ(減肉深さ)が端部107bに近づくにつれて徐減された第1凹部107を備える。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーの構築技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に装着されるエアバッグ装置において、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーが設けられている。この種のエアバッグカバーとして、例えばエバッグカバーの内壁面に、いわゆるテアラインと称呼される線状の溝部が設けられた構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照。)。このエアバッグカバーは、車両衝突時にこのテアラインから開裂することによって展開し、エアバッグカバー外部への車両用エアバッグの展開膨張を許容するようになっている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−80442号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記構成において、車両用エアバッグの展開膨張時にエアバッグカバーをテアラインにしたがって円滑に開裂させるのに有効な更なる技術を構築する要請が高い。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーの合理的な構築技術、およびその関連技術を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、自動車をはじめ、電車、オートバイ(鞍乗型車両)、航空機、船舶等の各種の車両において適用され得る技術である。
【0006】
(請求項1に記載の発明)
請求項1に記載の発明は、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーの構成に関する。本発明のエアバッグカバーには、溝部および減肉部が設けられている。
溝部は、エアバッグカバーの板厚の範囲内における孔が断続的に延在することで線状に形成される。成形体に対しレーザーカットによる後加工(レーザー加工設備による加工)によって形成された線状の溝部が本発明の溝部の典型的な例である。レーザーカットによる溝部は、点状の孔が断続的に形成された構成となる。この溝部は、エアバッグカバーの各部位において相対的に板厚の小さい部位であり、エアバッグカバーは車両用エアバッグの展開膨張時に当該溝部において開裂し、エアバッグカバーの展開ドアが展開する。この溝部は、いわゆるテアラインと称呼される。
減肉部は、溝部の終端領域(終端およびその近傍の領域)においてエアバッグカバーが板厚方向に関し減肉された構成を有する。従って、エアバッグカバーが溝部において開裂する(溝部にしたがって破断して展開する)とき、溝部に作用する力は当該溝部に連接する減肉部に作用することとなる。この減肉部は、例えばエアバッグカバーの成形時に形成させることができる。
【0007】
本発明では、特に減肉部に延在部を設けている。この延在部は、溝部の終端領域から当該溝部の延長線に沿う方向に延在する。また、この延在部は、板厚方向に関する減肉深さが徐変とされた(徐々に変化する)構成を有する。なお、本明細書中でいう「徐変」とは、板厚方向に関する減肉深さが徐々に減少ないし増加する態様を広く含む主旨であり、徐変の度合いは問わない。従って、減肉深さが一定の比率で連続的に変化する態様のみならず、当該比率が場所によって変化する態様や、減肉深さが段階的に変化する態様であっても本発明の「徐変」の範疇に含まれる。
【0008】
本発明のこのような構成では、エアバッグカバーの開裂時において断続的に延在する溝部が終端まで全て開裂状態になると、当該開裂による力が溝部の終端領域に集中し易い。このような場合には、溝部の終端領域の延長線上の部位に当該延長線に沿って、いわゆるテアオーバーと称呼される開裂現象が発生するおそれがある。そこで、本発明では、この溝部に加え、更に延在部を有する減肉部を設けている。これにより、溝部の終端領域に作用する力を減肉部の延在部において当該溝部の延長線に沿う方向に徐々に分散させることができ、開裂による力が溝部の終端領域に集中するのを極力回避することができる。
従って、請求項1に記載の発明によれば、車両用エアバッグの展開膨張時においてエアバッグカバーの開裂動作を好適に制御可能とするエアバッグカバーの合理的な構築技術を提供することができる。
【0009】
(請求項2に記載の発明)
ここで、請求項1に記載の延在部の減肉深さは、請求項2に記載のように、溝部の終端から離反するにつれて徐減される(徐々に減少する)構成であるのが好ましい。これにより、溝部の終端から延長線に沿って開裂しようとする力が、当該溝部の終端から離反するにつれて減少することとなるため合理的である。
【0010】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の減肉部が、更に第2の延在部を有する構成となっている。この第2の延在部は、延在部が溝部の延長線に沿う方向と交差する方向に延長された構成であり、当該第2の延在部の板厚方向に関する減肉深さが延在方向に沿って徐変とされている。ここでいう「交差」とは、直交する態様をはじめ溝部の延長線と第2の延在部とが交わることが可能な態様を広く含む主旨であり、交差角度は問わない。
本発明のこのような構成によれば、エアバッグカバーの開裂時に溝部の終端領域に作用する力を、延在部において溝部の延長線に沿う方向に徐々に分散させたうえで、さらに当該力を第2の延在部を介して溝部の延長線とは異なる方向へと分散させることができるため、開裂による力の分散効果がより確実である。
【0011】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の構成において、更に減肉部の平面視における幅が、延在部から第2の延在部へ向かうにつれて縮小されるようになっている。これにより、エアバッグカバーの開裂時に溝部の終端領域に作用する力は、減肉部の深さ方向のみならず幅方向に関しても分散されることとなり、開裂による力の分散効果が更に確実なものとなる。
【0012】
(請求項5に記載の発明)
ここで、請求項3または4に記載の第2の延在部の減肉深さは、請求項5に記載のように、延在部から離反するにつれて徐減される(徐々に減少する)構成であるのが好ましい。これにより、延在部から第2の延在部へと分散された力が、延在部から離反するにつれて減少することとなるため合理的である。
【0013】
(請求項6に記載の発明)
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の構成において、更に、延在部または第2の延在部が延在する延長線上に厚肉部を備えている。この厚肉部は、エアバッグカバーの板厚を拡張させた構成を有する。この厚肉部は、例えばエアバッグカバーの成形時に形成させることができる。これにより、延在部または第2の延在部において分散された力を、厚肉部によって受けることができ、厚肉部を挟んで延在部または第2の延在部の反対側に開裂部分が形成されるのを厚肉部によって阻止することが可能となる。
【0014】
(請求項7に記載の発明)
請求項7に記載の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載の構成において、延在部または第2の延在部がヒンジ部に向かう方向へ延在するようになっている。ヒンジ部は、車両用エアバッグの展開膨張時にエアバッグカバーが溝部において開裂する際、展開ドアの展開動作を許容する構成を有する。本発明のこのような構成は、展開ドアの展開のし易さを向上せるのに特に有効である。
【0015】
(請求項8に記載の発明)
請求項8に記載の発明は、エアバッグモジュールの構成に関する。このエアバッグモジュールは、車両用エアバッグ、車両用エアバッグを収容する収容体、車両用エアバッグに膨張ガスを供給するガス供給手段、請求項1に記載と実質的に同一のエアバッグカバー等を備えており、当該エアバッグモジュールごと車両に搭載される。なお、エアバッグカバーが配置される部材、いわゆるインストルメントパネルと称呼されるパネルを含めて、本発明のエアバッグモジュールとすることもできる。
従って、請求項8に記載の発明によれば、車両用エアバッグの展開膨張時においてエアバッグカバーの開裂動作を好適に制御可能とするエアバッグモジュールの合理的な構築技術を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本実施の形態を図面を参照しながら説明する。まず、図1〜図5に基づいて本実施の形態のエアバッグカバー100の構成を説明する。ここで、図1は本実施の形態のエアバッグカバー100をカバー裏面101からみた状態を示す斜視図である。図2は図1中のテアライン102近傍の箇所を平面視で示す図である。図3は図2中のA部の拡大図である。図4は図3中のB−B線における断面構造を示す図である。図5は図3中のC−C線における断面構造を示す図である。
【0017】
本実施の形態では、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバー100のカバー裏面101に、テアライン102が設けられている。エアバッグカバー100は、PP(ポリプロピレン)材料やTPO(オレフィン系エラストマー)材料等の樹脂材料によって三次元的(立体的)に成形された板状のものである。このエアバッグカバー100のカバー裏面101は、当該エアバッグカバー100が設置された状態において乗員に対向する側を表面とした場合の裏側の面として規定される。
【0018】
テアライン102は、車両用エアバッグの展開膨張時にエアバッグカバー100の展開を許容するために設けられた減肉部分であり、本実施の形態ではエアバッグカバー100のカバー裏面101に形成された線状の溝部によって構成される。このテアライン102は、エアバッグカバー100の各部位の板厚のうち相対的に板厚が小さい線状の減肉部分として規定される。このテアライン102が、本発明における「溝部」に相当する。
本実施の形態では、エアバッグカバー100は、車両用エアバッグの展開膨張時にテアライン102において開裂し、一対の展開ドア100aがカバー表面側へ向けて両開き状態(観音開き状態)となるように展開、すなわちテアライン102にしたがって破断して展開する構成になっている。
【0019】
図2に示すように、テアライン102は、1本の第1の線状溝103と、2本の第2の線状溝104とを組み合わせて構成され、全体として平面視が略H字形状状となっている。第1の線状溝103は、図2中の左右方向に直線的に延在し、第2の線状溝104は、第1の線状溝103の両端において図2中の上下方向(第1の線状溝103に直交する方向)に直線的に延在する。
【0020】
また、2本の第2の線状溝104が対向する位置において第1の線状溝103の両側には、当該第1の線状溝103に平行に延在するヒンジ部120が設けられている。このヒンジ部120は、エアバッグカバー100の各部位の板厚のうち相対的に板厚が小さい減肉部分(肉ぬすみがなされた部分)であり、カバー裏面101から表面側へ向けて凹んだ構成になっている。このヒンジ部120は、エアバッグカバー100がテアライン102において開裂し展開する際のヒンジ機構として作用するようになっている。このヒンジ部120が、本発明における「ヒンジ部」に対応している。
【0021】
また、ヒンジ部120の外側には当該ヒンジ部120が延在する方向に沿って接合リブ130が設けられている。この接合リブ130は、特に図示しないものの、車両用エアバッグを収容する収容体を例えば溶着によってカバー裏面101に接合する際の被接合部として用いられる。
【0022】
ここで、エアバッグカバー100のうち図2中のA部分の詳細な構成を図3〜図5を参照しながら説明する。なお、このA部分は、第2の線状溝104の両端部の領域、すなわちエアライン102の4箇所(四隅)に形成されている。
図3に示すように、第2の線状溝104の端部領域には、レーザーカット溝部105が形成されている。このレーザーカット溝部105は、レーザーカットによって形成された点状の孔105a(孔深さH)が断続的に延在する構成になっている。すなわち、レーザーカット溝部105が延在する方向において、孔105aによる凹凸が交互に繰り返される構成になっている。この孔105aが、本発明における「エアバッグカバーの板厚の範囲内における深さの孔」に相当する。
【0023】
また、図3に示すように、レーザーカット溝部105の終端105の領域(第2の線状溝104の終端領域)において、更にレーザーカット溝部105の延長線上に凹部106が形成されている。すなわち、レーザーカット溝部105の終端105の領域には、レーザーカット溝部105と凹部106とが組み合わせられた(ハイブリッド化された)構成が設けられている。この凹部106は、第1凹部107と、第2凹部108とを有する。なお、レーザーカット溝部105の終端105の領域(第2の線状溝104の終端領域)が本発明における「終端領域」に対応している。
【0024】
第1凹部107は、レーザーカット溝部105の終端105bの領域から当該レーザーカット溝部105の延長線Lに沿う方向(図3中の矢印10方向)に延在する構成を有する。この第1凹部107が本発明における「延在部」に対応し、延長線Lが本発明における「延長線」に対応している。
また、第2凹部108は、第1凹部107がレーザーカット溝部105の延長線Lに沿う方向と交差する方向(ストッパーリブ110およびヒンジ部120へと向かう方向)に延長された構成を有する。この第2凹部108が本発明における「第2の延在部」に対応している。
【0025】
図4に示すように、第1凹部107は、レーザーカット溝部105における孔105aの孔深さHと同様の凹み深さHを有し、その端部107b側に傾斜部107aを有する。この傾斜部107aの板厚方向に関する凹み深さ(減肉深さ)は、レーザーカット溝部105側から端部107bに近づくにつれて(レーザーカット溝部105の終端105bから離反するにつれて)一定の比率で徐々に減少する(徐減する)ようになっている。この第1凹部107が、本発明における「延在部」に対応している。
【0026】
一方、図5に示すように、第2凹部108は、レーザーカット溝部105における孔105aの孔深さHと同様の凹み深さHを有し、更に傾斜部108aを有する。この傾斜部108aの板厚方向に関する凹み深さ(減肉深さ)は、第1凹部107側から端部108bに近づくにつれて(傾斜部107aから離反するにつれて)一定の比率で徐々に減少する(徐減する)ようになっている。この第2凹部108が、本発明における「第2の延在部」に対応している。
また、平面視における第2凹部108の溝幅は端部108bへ向かうにつれて徐々に縮小される構成になっている。この態様が、本発明における「減肉部の平面視における幅が、延在部から第2の延在部へ向かうにつれて縮小される。」との態様に相当する。なお、第2凹部108の溝幅が端部108bへ向かうにつれて段階的に縮小される構成とすることもできる。
【0027】
なお、本実施の形態では、第1凹部107から第2凹部108へ向かう延長線上にストッパーリブ110が設けられている。このストッパーリブ110は、エアバッグカバー100の板厚を拡張させた構成のリブであり、本発明における「厚肉部」に対応している。また、このストッパーリブ110は、平面視で第2凹部108の端部108b側が凹んだ形状になっており、端部108bを囲むように構成されている。
【0028】
ここで、上記構成のエアバッグカバー100を製造する場合は、まずテアライン102が形成されていない成形体、例えば三次元的に成形された板状の成形体を製造する。この成形体の成形時に、前記の凹部106、ストッパーリブ110、ヒンジ部120、接合リブ130をあわせて形成する。そして、この成形体に対し後加工(本実施の形態ではレーザー加工設備によるレーザーカット)によってテアライン102を設ける。レーザーカットを用いてテアライン102を後加工によって設けることにより、いわゆるヒケの問題を解消することができ見栄えが向上する。
【0029】
次に、上記構成のエアバッグカバー100の作用を図3および図6を参照しつつ説明する。ここで、図6はエアバッグモジュールの構成を示す断面図であって、エアバッグカバー100の開裂時の様子を示す。
図6に示すように、上記構成のエアバッグカバー100、エアバッグカバー100が配置されるインストルメントパネル140、車両用エアバッグ150、車両用エアバッグ150が折り畳まれた状態で収容される収容体(リテーナー)142、収容体142に内蔵され車両用エアバッグ150に膨張ガスを供給するガス供給手段(インフレータ)144等によってエアバッグモジュールが構成される。このエアバッグモジュールが本発明における「エアバッグモジュール」に対応している。
【0030】
車両の前方衝突の際、ガス供給手段144が作動し当該ガス供給手段144から供給された膨張ガスによって車両用エアバッグ150が展開していく。エアバッグカバー100は、車両エアバッグ150の展開膨張時に略H字状のテアライン102において開裂し、一対の展開ドア100aがカバー表面側に向けて両開き状態(観音開き状態)となるように展開しようとする。
このとき、第2の線状溝104は、図3に示すようにレーザーカット溝部105において図中の矢印10方向へ開裂していく。ここで、レーザーカット溝部105は、孔105aが断続的に延在し、当該孔105aによる凹凸が交互に繰り返される構成ゆえ、当該レーザーカット溝部105が終端105bまで全て開裂状態になると、その終端105bの領域の延長線L上の部位に当該延長線に沿って直線的に開裂しようとする力が集中し易い。このような場合には、レーザーカット溝部105の終端105bの延長線L上の部位に当該延長線Lに沿って、いわゆるテアオーバーと称呼される開裂現象が発生するおそれがある。
【0031】
そこで、本実施の形態では、図3に示すように、レーザーカット溝部105に加え、更に当該レーザーカット溝部105の延長線上に凹部106を設けている。この凹部106は、レーザーカット溝部105の延長線Lに沿ってテアオーバーを発生させようとする力を徐々に分散させ、開裂による力がレーザーカット溝部105の終端105bの領域に集中するのを極力回避するのに有効である。すなわち、エアバッグカバー100の開裂時にレーザーカット溝部105の終端105bの領域に作用する力は、第1凹部107の傾斜部107aにおいて徐々に分散(吸収)されることとなり、端部107b近づくにつれて弱められる。これにより、エアバッグカバー100の開裂動作を好適に制御することができる。
【0032】
しかも、本実施の形態では、凹部106に第1凹部107からストッパーリブ110へと向かう第2凹部108を設けている。このため、レーザーカット溝部105の延長線Lに沿う部位を直線的に開裂させようとする力を、第1凹部107において分散させたうえで、さらに当該力を第2凹部108を介してレーザーカット溝部105の延長線Lとは異なる方向(図3中の矢印20方向)へと分散させることができる。特に、本実施の形態では、第2凹部108の凹み深さ(減肉深さ)および平面視における溝幅が、端部108bへ向かうにつれて徐々に縮小される構成になっているため、エアバッグカバー100の開裂時にレーザーカット溝部105の終端105bの領域に作用する力が、深さ方向のみならず幅方向に関しても分散されることとなり、力の分散効果が更に確実なものとなる。従って、エアバッグカバー100のうちレーザーカット溝部105の延長線L上の部位にテアオーバーが発生するのを、効果的に回避することが可能となる。
【0033】
更に、本実施の形態では、第2凹部108によってストッパーリブ110に向かう方向へと分散された力を当該ストッパーリブ110によって受けることができる。これにより、第1凹部107から第2凹部108へと開裂が形成された場合であっても、ストッパーリブ110を挟んで凹部106の反対側に開裂部分が形成されるのを当該ストッパーリブ110によって阻止することができる。
【0034】
かくして、エアバッグカバー100の一対の展開ドア100aは、カバー表面側に向けて展開した状態となる。このとき、各展開ドア100aの両側における開裂部分(第2の線状溝104の終端領域)は、上記構成の凹部106の作用効果によって当該展開ドア100aの両側から内方へ向けて延在することとなる。このような構成は、各展開ドア100aの展開のし易さを向上せるのに特に有効である。
なお、車両用エアバッグ150は、図6に示すように、展開状態の展開ドア100aを通じてエアバッグカバー100の外部へと展開し、乗員の前方側に形成される乗員保護領域160に向かって突出しつつ展開膨張することとなる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、車両用エアバッグの展開膨張時においてエアバッグカバーの開裂動作を好適に制御可能とするエアバッグカバー、およびエアバッグモジュールの合理的な構築技術を提供することができる。すなわち、エアバッグカバー100の開裂時において、開裂による力がレーザーカット溝部105の終端105bの領域に集中するのを凹部106によって極力回避することができる。これにより、レーザーカット溝部105の延長線に沿ってテアオーバーが発生するのを防止することが可能となる。
特に、レーザーカット溝部105の終端105bに作用する力を、第1凹部107においてレーザーカット溝部105の延長線に沿う方向に徐々に分散させたうえで、さらに当該力を第2凹部108を介してレーザーカット溝部105とは異なる方向へと分散させることができるためより確実である。
更に、第2凹部108において分散された力を、ストッパーリブ110によって受けることができるため、当該ストッパーリブ110を挟んで第2凹部108の反対側に開裂部分が形成されるのを阻止するのに効果的である。
また、第2凹部108をヒンジ部120に向かう方向に延在させることによって、エアバッグカバー100の開裂時における展開ドア100aの展開のし易さを向上せるのに特に有効である。
【0036】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0037】
上記実施の形態では、凹部106は、第1凹部107の傾斜部107a、および第2凹部108の傾斜部108aにおいて板厚方向に関する深さが一定の比率で徐々に変化する場合について記載したが、本発明では傾斜部107a,108aにおいて板厚方向に関する深さが徐変する態様であれば足りる。ここで、本実施の形態以外の徐変の態様を図7および図8を参照しながら説明する。なお、これらの図において、図4に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付すものとし、当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0038】
図7に示すエアバッグカバー200では、第1凹部107と同様の位置に第1凹部207が設けられている。この第1凹部207の傾斜部207aの板厚方向に関する凹み深さ(減肉深さ)は、レーザーカット溝部105側から端部207bに近づくにつれて(レーザーカット溝部105の終端105bから離反するにつれて)段階的に減少するようになっている。
また、図8に示すエアバッグカバー300では、第1凹部107と同様の位置に第1凹部307が設けられている。この第1凹部307の傾斜部307aの板厚方向に関する凹み深さ(減肉深さ)は、レーザーカット溝部105側から端部207bに近づくにつれて(レーザーカット溝部105の終端105bから離反するにつれて)一旦一定の比率で徐々に増加したのち、一定の比率で徐々に減少するようになっている。
【0039】
図7に示す第1凹部207、および図8に示す第1凹部307の構成によっても、本実施の形態の第1凹部107と同様に、エアバッグカバー100の開裂時にレーザーカット溝部105の終端105bの領域に作用する力を徐々に分散(吸収)させることができるという作用効果を奏する。なお、図7および図8では、第1凹部107の傾斜部107aにおける徐変の態様を説明したが、当該徐変の態様を第2凹部108の傾斜部108aの構成に適用することもできる。
【0040】
また、上記実施の形態では、凹部106が第1凹部107から第2凹部108へと向かう延長線上にストッパーリブ110を設ける構成について記載したが、このストッパーリブ110は、エアバッグカバー100の開裂時に第2凹部108に作用する力の度合い等によっては省略することもできる。
【0041】
また、上記実施の形態では、凹部106の第2凹部108をヒンジ部120に向かう方向に延在させる構成について記載したが、第2凹部108を延在させる方向はヒンジ部120に向かう方向に限定されるものではなく必要に応じて種々変更可能である。
【0042】
また、上記実施の形態では、凹部106に第1凹部107および第2凹部108を設ける構成について記載したが、本発明では、凹部106が少なくとも第1凹部107を備えた構成であれば足りる。この場合、第1凹部107の延長線上にストッパーリブ110と同様の厚肉部を設けるのが好ましい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーの合理的な構築技術、およびその関連技術が実現されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のエアバッグカバー100をカバー裏面101からみた状態を示す斜視図である。
【図2】図1中のテアライン102近傍の箇所を平面視で示す図である。
【図3】図2中のA部の拡大図である。
【図4】図3中のB−B線における断面構造を示す図である。
【図5】図3中のC−C線における断面構造を示す図である。
【図6】エアバッグモジュールの構成を示す断面図であって、エアバッグカバー100の開裂時の様子を示す。
【図7】別の実施の形態のエアバッグカバー200につき、図4と同様の箇所における断面構造を示す図である。
【図8】別の実施の形態のエアバッグカバー300につき、図4と同様の箇所における断面構造を示す図である。
【符号の説明】
100…エアバッグカバー
100a…展開ドア
101…カバー裏面
102…テアライン
103…第1の線状溝
104…第2の線状溝
105…レーザーカット溝部
105a…孔
105b…終端
106…凹部
107…第1凹部
107a,108a…傾斜部
108…第2凹部
110…ストッパーリブ
120…ヒンジ部
130…接合リブ
140…インストルメントパネル
142…収容体(リテーナー)
144…ガス供給手段(インフレータ)
150…車両用エアバッグ
160…乗員保護領域
L…延長線
Claims (8)
- 車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーであって、
当該エアバッグカバーの板厚の範囲内における深さの孔が断続的に延在する線状の溝部と、前記溝部の終端領域において板厚方向に関し減肉された減肉部とを備え、前記車両用エアバッグの展開膨張時に前記溝部において開裂する構成であり、
前記減肉部には、前記溝部の終端領域から当該溝部の延長線に沿う方向に延在し、板厚方向に関する減肉深さが徐変とされた延在部が設けられていることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項1に記載したエアバッグカバーであって、
前記延在部の減肉深さは、前記溝部の終端から離反するにつれて徐減されていることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項1または2に記載したエアバッグカバーであって、
前記減肉部は、更に、前記延在部が前記溝部の延長線に沿う方向と交差する方向に延長された第2の延在部を有し、当該第2の延在部の板厚方向に関する減肉深さがその延在方向に沿って徐変とされていることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項3に記載したエアバッグカバーであって、
前記減肉部の平面視における幅が、前記延在部から前記第2の延在部へ向かうにつれて縮小される構成であることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項3または4に記載したエアバッグカバーであって、
前記第2の延在部の減肉深さは、前記延在部から離反するにつれて徐減されていることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項1〜5のいずれかに記載したエアバッグカバーであって、
更に、前記延在部または第2の延在部が延在する延長線上に、当該エアバッグカバーの板厚を拡張させた厚肉部を備えていることを特徴とするエアバッグカバー。 - 請求項1〜6のいずれかに記載したエアバッグカバーであって、
当該エアバッグカバーが前記溝部において開裂する際の展開動作を許容するヒンジ部を備え、当該ヒンジ部に向かう方向へ前記延在部または第2の延在部が延在する構成であることを特徴とするエアバッグカバー。 - 車両用エアバッグと、当該車両用エアバッグを被覆するエアバッグカバーと、前記車両用エアバッグを収容する収容体と、前記車両用エアバッグが前記収容体から展開膨張するように膨張ガスを供給するガス供給手段とを備え、
車両の前方衝突の際、前記ガス供給手段から供給された膨張ガスによって前記車両用エアバッグが展開することで、前記エアバッグカバーが当該エアバッグカバーに形成された線状の溝部において開裂し、乗員の前方側に形成される乗員保護領域に前記車両用エアバッグが展開膨張する構成のエアバッグモジュールであって、
前記溝部は、前記エアバッグカバーの板厚の範囲内における深さの孔が断続的に延在する構成であり、前記溝部の終端領域において板厚方向に関し減肉された減肉部には、前記溝部の終端領域から当該溝部の延長線に沿う方向に延在し、板厚方向に関する減肉深さが徐変とされた延在部が設けられていることを特徴とするエアバッグモジュール。
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