JP2005022026A - 内歯車のバリ取り方法および装置 - Google Patents

内歯車のバリ取り方法および装置 Download PDF

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正蔵 佐藤
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和佐 副島
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Abstract

【課題】複数の内歯車部を備える複合内歯車に生じたバリを除去する内歯車用バリ取り装置を提供する。
【解決手段】回転可能なカッタ軸66に摺動可能に嵌合した2つのスリーブ80,82に、バリ取り工具76,78をそれぞれ互いに背中合わせの状態で取り付ける。2つのスリーブの間に圧縮コイルスプリング94を配設して互いに離間する向きに付勢する。内歯車26を回転させ、バリ取り工具76の一方をバリ124の生じている内側端面130に押し付ける。この押し付け力の調節は、カッタ軸66の軸方向位置の調節により、スプリングの弾性力を調節して行う。バリ取り工具が内歯車26につれ回りしつつバリ124を除去する。他方のバリ126が生じている内側端面132にバリ取り工具78を押し付ける場合にも共通のスプリング94を利用する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内歯車の端面と歯面との交線に存在するバリを除去する方法および装置に関するものであり、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車のバリ取りに特に好適な方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内歯車はブローチ盤,ギヤシェーパ等で歯切り加工される。その際、内歯車の端面(側面)と歯面との交線にバリが発生することが多い。特に、ギヤシェーパによる場合にバリが発生し易い。このバリは従来、金属ブラシ等を用いて手動で除去されていた。外歯車のバリを除去する装置は、例えば、下記特許文献1等によって既に知られているが、内歯車のバリを除去する装置は未だ知られておらず、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車の内歯車部の内側端面と歯面との交線に存在するバリを除去することは特に困難であった。
【0003】
【特許文献1】
特公平1−41459号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景として、内歯車の歯面と端面との交線に生じたバリを除去し得る方法および装置を提供することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の内歯車のバリ取り方法および装置が得られる。
各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】
なお、以下の各項において、 (1)項が請求項1に相当し、 (2)項が請求項2に、 (3)項が請求項3に、 (4)項が請求項4にそれぞれ相当し、 (6)項, (8)項および (9)項の特徴を合わせたものが請求項5に相当する。
【0006】
(1)外周面と端面との交線を切刃とし、外径が内歯車の歯先曲面の内径より小さいディスク状のバリ取り工具の端面の外周部を、内歯車の端面の内周部に弾性的に押し付けた状態で、内歯車を回転させ、バリ取り工具を内歯車につれ回りさせつつ、内歯車の端面と歯面との交線に存在するバリを除去することを特徴とする内歯車のバリ取り方法。
外径が内歯車の歯先曲面の内径より小さいディスク状のバリ取り工具の端面の外周部を、内歯車の端面の内周部に弾性的に押し付けた状態で、内歯車を回転させれば、バリ取り工具が内歯車につれ回る。その際、バリ取り工具の外周縁に形成された切刃の直径が、内歯車の歯先曲面の内径より小さいため、切刃は内歯車の端面に対して、内歯車の内周側から外周側へ滑りつつ内歯車の周方向にも相対移動することとなり、バリが効果的にシェービングされる。
(2)前記内歯車が、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車であり、それら内歯車部の内側端面の1つ以上と歯面との交線に存在するバリを除去することを特徴とする (1)項に記載のバリ取り方法。
本発明に係るバリ取り方法は、単独の内歯車部を備えた内歯車のバリ取りにも適用可能であるが、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた内歯車の内側端面のバリは、従来の方法では特に除去が困難であったため、本項の態様で採用する場合に特に大きな効果が得られる。複合内歯車においては、複数の内歯車部間に円環状の逃げ溝が形成されることが多く、その逃げ溝の両側面が互いに隣接する内歯車部の内側端面となる。従来は、この内側端面と歯面との交線に発生するバリの除去が困難であったが、本発明に係る方法によれば、容易に除去することができる。複数の内歯車部の歯先曲面の内径は互いに同一であっても異なってもよい。
(3)内歯車を保持し、その内歯車の中心軸線まわりに回転させる歯車回転装置と、
外周面と端面との交線を切刃とするディスク状のバリ取り工具を、それの中心線が前記内歯車の中心線と平行な姿勢で、そのバリ取り工具の中心線のまわりに回転自在に保持する工具保持装置と、
その工具保持装置と前記歯車回転装置とを、前記バリ取り工具が前記内歯車の内側端面に接触する作用位置と、内側端面から離れた離間位置とに相対移動させる相対移動装置とを含む内歯車用バリ取り装置。
工具保持装置にバリ取り工具を保持させ、そのバリ取り工具の外周縁により形成される切刃を相対移動装置により内歯車の歯部の端面に接触させ、その状態で内歯車を歯車回転装置により回転させれば、バリ取り工具が内歯車につれ回る。それによって、前記 (1)項の方法に関して説明した原理でバリが除去される。
(4)前記内歯車が、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車であり、前記工具保持装置が、前記バリ取り工具を、それら複数の内歯車部の内側端面の1つ以上と歯面との交線に存在するバリを除去する1つ以上のバリ取り工具を保持するものである (3)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
前述のように、本発明は複合内歯車の内側端面のバリ取りに適用して特に好適なものである。しかし、内歯車部を1つのみ備えた歯車であっても、その内歯車部の少なくとも一方の端面が、歯車の軸方向の中間に位置する場合には、その端面のバリ取りを行うことが困難であり、特に、その端面に対向する内向きフランジ等を有する内歯車では、複数の内歯車部を備えた複合歯車の内側端面のバリ取りと同様に困難であって、本発明が特に有効である。
(5)前記相対移動装置が、
前記バリ取り工具と前記内歯車とを内歯車の軸方向に相対移動させる軸方向移動装置と、
前記バリ取り工具と前記内歯車とを内歯車の半径方向に相対移動させる半径方向移動装置とを含む (3)項または (4)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
相対移動装置を本項の態様とすれば、バリ取り工具を内歯車の所定の部位に接触離間させることが特に容易となる。
(6)前記工具保持装置が、前記バリ取り工具を軸方向に間隔を隔てて複数保持するものである (3)項ないし (5)項のいずれかに記載の内歯車用バリ取り装置。工具保持装置は、複数のバリ取り工具を、軸方向に関して互いに同じ向きに保持するものとすることも、少なくとも一部のバリ取り工具を残りのバリ取り工具とは逆向きに保持するものとすることも可能である。切削加工の場合には、バリが1つの内歯車部の一方の端面のみに発生するのが普通である。歯面を切削した切削刃具が歯車素材から抜け出す側の端面にバリが発生するのである。そのため、工具保持装置を、2つのバリ取り工具を互いに背中合わせの向きで保持するものとすれば、1つの内歯車のいずれの側の端面にバリが生じている場合でも、支障なくバリ取りを行うことができる。また、複数の内歯車部を備えた内歯車においては、切削加工の方法によって、互いに隣接する内歯車部の互いに対向する2つの端面にバリが生じる場合と、互いに同じ向きの端面にバリが生じる場合とがある。前者の場合には、工具保持装置を、2つのバリ取り工具を互いに背中合わせの向きで保持するものとすれば、2つのバリ取り工具に、2つの内歯車部の互いに対向する端面の各々のバリ取りを行わせることができ、後者の場合には、工具保持装置を、2つのバリ取り工具を互いに同じ向きで保持するものとすればよい。
(7)前記複数のバリ取り工具のうち、2つ以上のものの軸方向における間隔を変更する間隔変更装置を含む (6)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
間隔変更装置の一例は後述の接近・離間装置であるが、これに限定されるわけではない。複数のバリ取り工具の軸方向の間隔を、複数の内歯車部の各端面の間隔に合わせて変更し得るようにすることも可能なのである。この場合には、間隔変更装置を、互いに螺合された雄ねじおよび雌ねじと、それらの一方を回転させる回転駆動装置と、雄ねじと雌ねじとのうち軸方向に移動するものと共に移動する可動部材とを含むものとし、可動部材にバリ取り刃具を保持させることが望ましい。また、バリ取り工具を可動部材に対して軸方向に相対移動可能とし、可動部材とバリ取り工具との間に弾性部材等の付勢装置を配設して、その付勢装置の付勢力によりバリ取り工具を内歯車の端面に押し付け得るようにすることが望ましい。
(8)前記工具保持装置が、前記複数のバリ取り工具のうち、少なくとも2つを軸方向に関して互いに背中合わせの向きで保持するものである (6)項または (7)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
この形態のバリ取り装置を使用すれば、複合内歯車の互いに対向する内側端面のバリ取りを容易に行うことができる。
(9)前記工具保持装置が、前記背中合わせで保持した2つのバリ取り工具を、軸方向において互いに接近・離間させる接近・離間装置を備えた (8)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
接近・離間装置としては、複動の流体圧シリンダ、特に気体圧シリンダが好適である。この複動流体圧シリンダは、伸長時も収縮時も流体圧で作動するものでも、伸長時と収縮時との一方は弾性部材の弾性力で作動するものでもよい。そして、接近・離間装置を、2つのバリ取り工具を流体圧により互いに離間する向きに移動させるものとすれば、流体圧の制御によりバリ取り工具の内歯車端面への押付力を任意の大きさに制御することが可能となる。
(10)前記工具保持装置が、前記2つのバリ取り工具を互いに背中合わせの向きで保持するものであり、かつ、前記接近・離間装置が、前記軸方向に関して互いに逆向きの2つのバリ取り工具を常時、軸方向において互いに離間する向きに付勢する付勢装置を含む (9)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
付勢装置の付勢力によりバリ取り工具を内歯車の端面に安定して押し付けることができ、バリ取りを良好に行うことができる。
(11)前記付勢装置が前記相反する向きの2つのバリ取り工具に共通の弾性部材を含む(10)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
互いに相反する向きの2つのバリ取り工具をそれぞれ専用の弾性部材で付勢してもよいが、1つの弾性部材を相反する向きの2つのバリ取り工具に共通とすれば、構成を単純化し得る。弾性部材としては、圧縮コイルスプリングが特に好適である。
(12)前記接近・離間装置が、前記互いに逆向きの2つのバリ取り工具を、前記付勢装置の付勢力に抗して互いに接近させる接近駆動装置を含む(10)項または(11)項に記載の内歯車用バリ取り装置。
接近駆動装置を備えたバリ取り装置によれば、逆向きの2つのバリ取り工具を互いに接近させた状態で、複合内歯車の互いに対向する内側端面の間に進入させ、その後、2つのバリ取り工具を互いに離間させることにより、互いに対向する2つの内側端面に接触させ、2つの内側端面のバリ取りを並行して行うことが可能となる。
【発明の実施の形態】
【0007】
本発明の一実施形態であるバリ取り装置8を図1に示す。図において10はベースである。ベース10上に内歯車を保持してそれの中心軸線周りに回転させる歯車回転装置12と、バリ取り工具を回転可能に保持して内歯車に対して相対移動させる工具保持移動装置14とが設けられている。
【0008】
歯車回転装置12は、主軸台20を備え、その主軸台20に主軸22が水平な姿勢でそれの軸線周りに回転可能に保持されている。主軸22の先端部に、チャック24が設けられており、そのチャック24により内歯車26が保持され、主軸22と一体的に回転させられる。図1においては、チャック24として、3つの爪28により内歯車26を外周面において保持する三つ爪チャックが図示されているが、コレットチャック等任意の形式のチャックを採用可能である。主軸22は、駆動源たる主軸回転用モータ30に接続されており、それの回転が伝達装置たるプーリ32およびベルト34により主軸22に伝達されて、主軸22が軸線まわり回転させられる。
【0009】
工具保持移動装置14は、内歯車26の軸線に平行な軸方向に移動する軸方向移動装置32と、その軸方向移動装置32上に設けられ、内歯車26の半径方向(図示の例では鉛直方向)に移動する半径方向移動装置34とを備える。半径方向移動装置34に工具保持ユニット36が保持されており、バリ取り工具が、それの軸線が内歯車26の軸線に平行な姿勢で、軸線まわりに回転可能に保持されるようになっている。この部分については後述する。
【0010】
軸方向移動装置32は、ベース10上を軸方向に移動可能な軸方向移動部材38を備える。軸方向移動部材38は、駆動源たる軸方向移動用モータ40の回転が、伝達装置たる一対のプーリとそれらに巻回されたベルトとによりボールねじ42に伝達されることによって、案内部材たるガイドレール43に案内されて移動させられる。一対のプーリは鉛直方向に並んで配設されている。軸方向移動部材38上に半径方向移動装置34が設けられている。半径方向移動装置34は、軸方向移動部材38に対して鉛直方向に相対移動可能な昇降部材44を備え、駆動源たる昇降用モータ46の回転が図示を省略する駆動力伝達手段により伝達されて移動させられる。昇降部材44は案内部材たるガイドレール48により案内されて昇降する。
【0011】
その昇降部材44にブラケット50により前記工具保持ユニット36が相対移動不能に取り付けられている。工具保持ユニット36は、図2に示すように、ブラケット50に保持された保持部材60を備える。その保持部材60内に軸受62を介して回転軸64が軸線まわりに回転可能に保持されている。その回転軸64の内歯車26側の端部に、カッタ軸66が同軸にかつ着脱可能に取り付けられている。回転軸64の保持部材60から突出した部分がカッタ軸66を保持する保持部68を構成している。保持部68は、軸受62に保持された部分より径が大きく形成され、それのカッタ軸66側の端面である前端面の中央部に、カッタ軸66の半径方向の位置決めを行う位置決め凹部70が形成されている。回転軸64およびカッタ軸66の軸線は内歯車26の軸線と平行とされており、以下、内歯車26側を軸方向前方、反対側を軸方向後方と称する。
【0012】
カッタ軸66は段付円柱状に形成され、本体部71と、本体部71より軸方向後方において直径方向外向きに突出するフランジ部72と、そのフランジ部72から軸方向後方に突出する位置決め突部74とを備える。フランジ部72は上記回転軸64の保持部68とほぼ同径に形成されている。位置決め突部74が位置決め凹部70内に精度良く嵌合する形状寸法とされており、それら位置決め凹部70と位置決め突部74との嵌合により、回転軸64とカッタ軸66との軸線が一致させられ、その状態で保持部68とフランジ部72とが複数本のボルト76により締め付けられて、カッタ軸66が回転軸64に固定される。カッタ軸66の本体部71に2つのバリ取り工具76,78をそれぞれ保持するスリーブ80,82が摺動可能に嵌合されている。
【0013】
それらスリーブ80,82のうちの一方である第一スリーブ80は、比較的大径の円筒状に形成され、カッタ軸66の本体部71に対して隙間を有して嵌合されている。第一スリーブ80の後端部においてそれの内周面から本体部71の外周面に向かって突出するフランジ部84が形成され、そのフランジ部84において本体部71に摺動可能に嵌合されている。第一スリーブ80の後端部の外周にカバー86が嵌合され、シール部材88が配設されることにより、第一スリーブ80内に異物が侵入することが防止されている。第一スリーブ80の前端部に半径方向外向きに突出してバリ取り工具78を保持する工具保持部90が形成され、複数本のボルトにより円盤状のバリ取り工具78が着脱可能に固定可能とされている。
【0014】
他方のスリーブである第二スリーブ82は、第一スリーブ80より軸方向前方においてカッタ軸66の本体部71に摺動可能に嵌合され、それの後側の部分が第一スリーブ80と本体部71との間の隙間に進入させられている。第一スリーブ80と第二スリーブ82とも摺動可能に嵌合さており、シール部材92が配設されてそれらの間に異物が侵入することが防止されている。それら第二スリーブ82と第一スリーブ80のフランジ部84との間に弾性部材たる圧縮コイルスプリング94(以下、単にスプリングと称する)が配設され、両者を離間する向きに付勢している。それに対して、第一スリーブ80に雌ねじ穴96が形成され、第二スリーブ82のそれに対向する部位に軸方向に延びる長穴98が形成され、さらに本体部71の外周に溝100が形成されており、雌ねじ穴96に雄ねじ部が螺合されたピン102が長穴98および溝100に嵌入させられることにより、第一スリーブ80および第二スリーブ82のカッタ軸66に対する軸方向移動を許容しつつ、軸線まわりの相対回転を防止している。
【0015】
第二スリーブ82の先端部近傍にも半径方向外向きに突出してバリ取り工具76を保持する工具保持部104が形成され、バリ取り工具76が着脱可能に固定されている。さらに、第二スリーブ82の工具保持部104より前方においてカッタ軸66との嵌合部より大径の大径穴106が形成され、その大径穴106内において抜け止め部材108がカッタ軸66に固定されている。抜け止め部材108はボルト等の締結手段によりカッタ軸66に固定されている。抜け止め部材108と大径穴106との間にもシール部材110が配設されて、異物の侵入が防止されている。第一スリーブ80の後端がフランジ部84に当接する一方、第二スリーブ82の肩面が抜け止め部材108に当接しており、それによって、第一スリーブ80と第二スリーブ82との離間限度が規定されるとともに、両スリーブ80,82のカッタ軸66に対する軸方向の原位置が規定されている。フランジ部84と抜け止め部材108とが両スリーブ80,82の位置規定部を構成しているのである。
【0016】
以上の構成のバリ取り装置8による内歯車26のバリ取り作業について説明する。本実施形態においては、図2に示すように、加工すべき内歯車26が軸方向に互いに直列に並んだ2つの内歯車部120,122を備えた複合内歯車である場合について説明する。特に、各内歯車部120,122の端面のうち互いに対向する内側端面130,132と歯面との交線に存在するバリ124,126を除去する作業について説明する。
【0017】
まず、各内歯車部120,122のバリ124,126を除去するためのバリ取り工具76,78が各スリーブ80,82に取り付けられる。各バリ取り工具76,78は、バリ124および126とそれぞれ対向する端面134,136と外周面138,140との交線が切刃142,144となるように互いに背中合わせで取り付けられる。次に、カッタ軸66と内歯車26とが同軸となる状態で対向させられ、軸方向移動装置32により、バリ取り工具76,78が内歯車26内に進入させられ、図に示すように、バリ取り工具76,78が2つの内歯車部120,122の間に位置決めされる。次に、半径方向移動装置34により工具保持ユニット36が上昇(または下降)させられて、一方のバリ取り工具、例えば第二スリーブ82に保持されたバリ取り工具76がバリ124に対向させられる。2つのバリ取り工具76,78の軸方向間隔は、2つの内歯車部120,122の内側端面130,132間の間隔よりも小さくされており、いずれのバリ取り工具76,78も内歯車部120,122に接触しない状態でバリ124,126と対向する位置に移動することができる。
【0018】
次に、歯車回転装置12により内歯車26が回転させられるとともに、軸方向移動装置32により工具保持ユニット36がバリ124に接近する向きに移動させられてバリ取り工具76がバリ124に接触させられ、さらに前進させられてそのバリ124が生じている内側端面130に押し付けられる。前述のスプリング94の付勢力によりバリ取り工具76が内側端面130に弾性的に押し付けられるのであるが、その押付力はスプリング94の弾性変形量、すなわち工具保持ユニット36の軸方向移動量により調節することができる。
【0019】
バリ取り工具76がバリ124あるいは内側端面130に接触すれば、つれ回りが生じ、バリ124が除去される。バリ取り工具76は外径が内歯車部120の歯先曲面の内径より小さいため、バリ取り工具76の外周縁に形成された切刃は内側端面130に対して、内歯車部120の内周側から外周側へ滑りつつ内歯車部120の周方向にも相対移動することとなり、バリがシェービングされる。このバリ取り作業が終了すれば、軸方向移動装置32によりバリ取り工具76が内歯車部120から離間させられて他方のバリ取り工具78が他方のバリ126および内側端面132に押し付けられる。第一スリーブ80と第二スリーブ82との間に配設されているスプリング94により第一スリーブ80がカッタ軸66の基端部に向かって移動する方向に付勢されるため、バリ取り工具78がバリ126に弾性的に押し付けられる。いずれのバリ取り工具76,78についても、バリ124,126に押し付ける押付力が共通のスプリング94によって付与されるのである。
【0020】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、軸方向移動装置32と半径方向移動装置34とが互いに共同して相対移動装置を構成している。
【0021】
本発明の別の実施形態であるバリ取り装置200を図3に基づいて説明する。本実施形態においては、工具保持ユニットの構成が前述の実施形態と異なるが、他の構成についてはほぼ共通しているので、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0022】
本バリ取り装置200においても、回転可能に保持されたカッタ軸202に2つのスリーブ204,206が嵌合されている。カッタ軸202の軸方向前方部において、それら2つのスリーブのうちの一方である第一スリーブ204が嵌合されている。第一スリーブ204はバリ取り工具208を保持する補助部材210と、カッタ軸202に嵌合される主部材212とを備える。補助部材210は円盤状に形成され、複数のボルト214により主部材212固定されており、バリ取り工具208が図示を省略する複数のボルトにより着脱可能に取り付けられる。
【0023】
主部材212は略円筒状に形成され、カッタ軸202に摺動可能に嵌合されている。主部材212の周壁を貫通して軸方向に延びる長穴216が形成され、カッタ軸202に立設されたピン218に係合させられることにより、カッタ軸202に対する軸方向移動が制限されるとともに、カッタ軸202に対して相対回転不能とされている。主部材212の基端部近傍に半径方向外向きに突出してピストン220が形成されている。
【0024】
他方のスリーブである第二スリーブ206も、2つの部材から構成され、バリ取り工具230を保持する主部材232と、その主部材232の基端側に固定された補助部材234とを備える。主部材232は第一スリーブ204の外側に摺動可能に嵌合され、補助部材234はカッタ軸202に摺動可能に嵌合されている。その補助部材234に軸方向に延びる長穴236が形成され、カッタ軸202に立設されたピン238に係合させられており、第二スリーブ206の軸方向移動が制限されるとともに、カッタ軸202に対する回転が防止されている。補助部材234の後端部に半径方向外向きに突出するフランジ部240が形成されている。
【0025】
そのフランジ部240が主部材232に複数のボルト242により固定されている。主部材232は、略円筒状であって、それの外径がフランジ部240の外径とほぼ一致する形状に形成され、その主部材232の内側に第一スリーブ204のピストン220が摺動可能に嵌合されている。主部材232は、それの前端部において半径方向内向きに突出する内向きフランジ部244が形成され、その内向きフランジ部244の内周面と第一スリーブ204の主部材212の外周面とが摺動可能に嵌合されている。それらピストン220と第二スリーブ206の主部材232との間、および内向きフランジ部244と第一スリーブ204の主部材212との間のそれぞれにシール部材246が配設され、それらの間に形成された空間が気密に保たれている。以下、この空間を圧力室248と称する。主部材232の前端部には、さらに、半径方向外向きに突出してバリ取り工具230を保持する工具保持部250が形成されている。一方、ピストン220と第二スリーブ206の補助部材234との間に弾性部材としての圧縮コイルスプリング252(以下スプリング252と称する。)が配設されており、第一スリーブ204と第二スリーブ206とを、工具保持部250と工具保持部としての補助部材210とが互いに離間する向きに付勢している。
【0026】
カッタ軸202内に、上記圧力室248に圧縮空気を送るための空気通路254が形成されている。また、第一スリーブ204の主部材212の圧力室248に対応する部分にそれを貫通する連通路256が形成され、圧力室248へ圧縮空気を供給することが可能とされている。図示を省略する高圧源から圧縮空気が供給されれば、ピストン220がスプリング252の付勢力に抗して第二スリーブ206の補助部材234に接近する向きに移動させられ、2つのバリ取り工具208,230が互いに接近させられる。本実施形態においては、ピストン220とスプリング252とにより2つのバリ取り工具208,230の間隔が変更される。
【0027】
次に、作動を説明する。2つのバリ取り工具208,230それぞれがスリーブ204,206を介してカッタ軸202に取り付けられる。そして、圧力室248に圧縮空気が送り込まれ、ピストン220と主部材232とが軸方向に相対移動させられて、2つのバリ取り工具208、230の間隔が小さくされる。その状態で内歯車26が回転させられるとともに、工具保持ユニット36が内歯車26内に進入させられ、バリ取り工具208,230が軸方向においてバリ124,126を除去すべき内側端面130,132の間に位置決めされ、次に工具保持ユニット36が内歯車26に対して半径方向に移動させられて、2つのバリ取り工具208,230がそれぞれ除去すべきバリ124,126に対向させられる。ここで、前述のように、2つのバリ取り工具208,230の間隔が内歯車部120,122の内側端面130,132の間隔より小さくされているので、2つのバリ取り工具208,230は、それら内側端面130,132に接触することなく、対向する位置に位置決めすることができる。その状態で、空気通路254が大気に連通させられて圧力室248内の空気が解放されれば、スプリング252の付勢力により、第一スリーブ204と第二スリーブ206とが相対移動させられ、2つのバリ取り工具208,230がそれぞれ内側端面130,132に押し付けられる。その結果、バリ取り工具208,230が内歯車26につれ回りしつつバリ124,126を除去する。
【0028】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第一スリーブ204,第二スリーブ206,圧力室248およびスプリング252が互いに共同して接近・離間装置を構成している。
【0029】
本実施形態においては、2つのバリ取り工具208,230によりバリ取りを並行して実施することができる。
なお、本実施形態においては、バリ取り工具208,230を接近させるために空気圧を利用し、バリ取り工具208,230を互いに離間させて内側端面130,132に押し付けるためにスプリング252が利用されているが、それ以外の態様であってもよい。例えば、スプリングによりバリ取り工具同士を接近させる一方、空気圧により離間させてもよいし、互いに独立した圧力室を2つ形成して、空気圧により接近・離間の両方を行わせるようにしてもよい。
【0030】
以上、本発明の2つの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である内歯車用バリ取り装置を示す平面図である。
【図2】上記バリ取り装置の工具保持ユニットを示す平面断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態であるバリ取り装置の工具保持ユニットを示す平面断面図である。
【符号の説明】
8:バリ取り装置 10:ベース 12:歯車回転装置 14:工具保持移動装置 26:内歯車 32:軸方向移動装置 34:半径方向移動装置 36:工具保持ユニット 66:カッタ軸 76,78:バリ取り工具 80:第一スリーブ 82:第二スリーブ 94:圧縮コイルスプリング 120,122:内歯車部 124,126:バリ 132,132:内側端面 134,136:端面 138,1140:外周面 200:バリ取り装置 202:カッタ軸 204:第一スリーブ 206:第二スリーブ 208:バリ取り工具 220:ピストン 230:バリ取り工具 248:圧力室 252:圧縮コイルスプリング

Claims (5)

  1. 外周面と端面との交線を切刃とし、外径が内歯車の歯先曲面の内径より小さいディスク状のバリ取り工具の端面の外周部を、内歯車の端面の内周部に弾性的に押し付けた状態で、内歯車を回転させ、バリ取り工具を内歯車につれ回りさせつつ、内歯車の端面と歯面との交線に存在するバリを除去することを特徴とする内歯車のバリ取り方法。
  2. 前記内歯車が、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車であり、それら内歯車部の内側端面の1つ以上と歯面との交線に存在するバリを除去することを特徴とする請求項1に記載のバリ取り方法。
  3. 内歯車を保持し、その内歯車の中心軸線まわりに回転させる歯車回転装置と、
    外周面と端面との交線を切刃とするディスク状のバリ取り工具を、それの中心線が前記内歯車の中心線と平行な姿勢で、そのバリ取り工具の中心線のまわりに回転自在に保持する工具保持装置と、
    その工具保持装置と前記歯車回転装置とを、前記バリ取り工具が前記内歯車の内側端面に接触する作用位置と、内側端面から離れた離間位置とに相対移動させる相対移動装置とを含む内歯車用バリ取り装置。
  4. 前記内歯車が、軸方向に互いに直列に並んだ複数の内歯車部を備えた複合内歯車であり、前記工具保持装置が、前記バリ取り工具を、それら複数の内歯車部の内側端面の1つ以上と歯面との交線に存在するバリを除去する1つ以上のバリ取り工具を保持するものである請求項3に記載の内歯車用バリ取り装置。
  5. 前記工具保持装置が、前記バリ取り工具を複数、少なくともそれら複数のバリ取り工具のうちの2つを軸方向に関して互いに背中合わせで保持するものであるとともに、それら背中合わせに保持した2つのバリ取り工具を、軸方向において互いに接近・離間させる接近・離間装置を備えた請求項4に記載の内歯車用バリ取り装置。
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