JP2005017285A - 湿度センサ及び湿度センサの使用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 湿度センサ(1)の感湿素子部(3)の感湿層(13)は、多孔質の層であり、Al2O3−SnO2−TiO2の感湿材料からなる。この感湿材料は、周囲の雰囲気の湿度が変化すると、そのインピーダンスが変化する酸化物である。感湿層(13)は、Al2O3−SnO2−TiO2以外に、ケイ酸塩ガラスからなるガラス成分と、Li2Oからなるアルカリ金属酸化物を含んでおり、前記酸化物の結晶相からなる骨格部の表面がガラス相で覆われた多孔質体である。そして、この湿度センサに対して、制御装置を駆動して、内燃機関の作動中において、湿度の計測を行わない時間帯に、感湿素子部3を500〜800℃の温度範囲で加熱するように、ヒータ(17)に通電する。これにより、感湿素子部(3)に付着した汚れ物質を除去する。
【選択図】 図2
Description
つまり、アイドリングが所定時間経過した時のみにヒータ通電を行っても、加熱温度が低いので、湿度センサに結露した水分の蒸発等には適用できるが、感湿素子に付着した汚れを完全に除去できず、長期に渡り高精度な湿度検出ができないという問題があった。
・ここで、前記感湿素子部及びヒータを備えた湿度センサとしては、感湿素子部に交流電圧を印加して感湿体のインピーダンスを検知する方式や、感湿素子部に直流電圧を印加して感湿体の抵抗を検知する方式のものがあり、本発明では、いずれの方式の湿度センサにも適用できる。この種の湿度センサでは、感湿素子部のインピーダンス(抵抗)の変化に基づいて、湿度(相対湿度及び/又は絶対湿度)を測定する。尚、インピーダンスと抵抗の違いは、印加電圧が交流電圧か直流電圧かの違いだけであるため、以下では、これらをインピーダンスと表現する。
尚、感湿体の表面には、感湿体にデポジット等の汚れ物質が付着することを防止するために、多孔質の保護層を設けることが好適である。
また、湿度の計測は、内燃機関の作動直後から排気ガスの温度が100℃に達するまでの期間、又は、内燃機関の停止後であって、排気ガスの温度が100℃以下になったときに行われる。
(3)請求項3の発明は、前記検知電極は、主成分を白金とした白金電極であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の湿度センサを要旨とする。
また、検知電極としては、例えば感湿体の表面等に設けられた少なくとも1対の電極の構成を採用できる。
本発明は、ガラス相の材料を例示したものである。
つまり、ガラス相の軟化点が800℃以上であれば、ヒータによる加熱クリーニングの際に、ガラス相が軟化する可能性が低いので好適である。一方、ガラス相の軟化点が1200℃(好ましくは1000℃)以下であれば、感湿体を焼成して製造する場合に、十分にガラスの材料を軟化させることができ、よって結晶相(骨格部)の表面を確実にコートすることができるので、好適である。
(6)請求項6の発明は、前記ガラス相の含有量は、前記感湿体に対して、10〜56mol%であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の湿度センサを要旨とする。
本発明では、ガラス相の含有量が10mol%以上であるので、デポジット等による影響を受けにくく、よって、湿度センサのインピーダンスの変化が少なく、耐久性が高いという効果がある。また、ガラス相の含有量が56mol%以下であるので、湿度センサの初期のインピーダンスを低く抑えることができ、よって、回路設計が容易になる。尚、これらの効果の点で、より好ましい範囲は、12.5〜50mol%の範囲である。
本発明は、湿度センサが使用される対象を例示したものである。
(9)請求項9の発明は、前記湿度計測を行わない時間に、前記感湿素子部を常時加熱することを特徴とする前記請求項1〜8のいずれかに記載の湿度センサを要旨とする。
(10)請求項10の発明は、前記内燃機関の停止後に、前記感湿素子部を所定時間加熱することを特徴とする前記請求項7又は8に記載の湿度センサを要旨とする。
本発明は、内燃機関の停止後の加熱温度を例示したものであり、この温度範囲にて加熱することにより、より好適に汚れ物質を除去することができる。
湿度センサに汚れ物質が多く付着している場合には、加熱温度を上げる等の調節が必要である。従って、湿度センサの汚れの程度を、例えば湿度センサのインピーダンスを示す出力の大きさ等の湿度センサの汚れの状態に対応した値(測定値)によって検出し、その検出結果に応じて、加熱する温度や時間(従ってヒータの通電状態)を調節するのである。
(12)請求項12の発明は、抵抗体温度センサ又は前記ヒータを、前記感湿素子部の温度を検出する温度検出手段として用い、当該温度検出手段の抵抗値が所定の抵抗値となるように、前記ヒータを制御することを特徴とする前記請求項1〜11のいずれかに記載の湿度センサを要旨とする。
つまり、ヒータを定電圧印加で制御した場合には、内燃機関の運転状態によって感湿素子部の温度が変動してしまい、仮に(上記の好ましい温度範囲から外れて)低温状態となると、汚れ物質の付着防止の作用が機能しなくなり、逆に、高温状態となると、感湿材料や電極材料の粒成長、偏析、変質等が起こる危険性が高くなる。
例えば温度検出手段の抵抗値が大きくなった場合には、温度が高いのでヒータによる加熱を抑制し、逆に、温度検出手段の抵抗値が小さくなった場合には、温度が低いのでヒータによる加熱を増加させるのである。これにより、常に適切な温度で感湿素子部を加熱することができる。
内燃機関の運転状態によって排気ガスの温度が変化するので、感湿素子部の温度も変化する。従って、例えば吸気圧(負圧)、車速、エンジン回転数のような運転状態によって、ヒータの印加時間や印加電圧などの状態を調節する。これにより、適切な温度範囲で感湿素子部を加熱することができる。
従って、本発明によれば、長期に渡り高精度な湿度検出ができる湿度センサを実現することができる。
(実施例)
a)まず、本実施例における湿度センサの構成について説明する。尚、図1は湿度センサの全体及びその分解した状態を示す斜視図、図2は図1のA−A'断面図である。
つまり、絶縁基板5上には、一対のリード部7、9が配置され、一方のリード部7と接するように下部電極11が配置され、この下部電極11の上に感湿材料からなる感湿層(感湿体)13が配置され、感湿層13の上に他方のリード部9と接触して上部電極15が配置され、更に、上部電極15の上に下部電極11及び感湿層13及び上部電極15の全てを覆うように、保護層16が配置されている。
このうち、前記下部電極11及び上部電極15は、厚膜印刷により形成された膜厚約15μmの層であり、主として白金からなる多孔質の検知電極である。
前記保護層16は、デポジット等が下部電極11及び感湿層13及び上部電極15に付着することを防止するために、厚膜印刷により形成された膜厚約30μmの層であり、主としてMgAl2O4からなる多孔質の保護膜である。
(1)感湿層13の結晶相となる粉末の製造方法
まず、純度99.0重量%以上のブトキシAl、ブトキシTi、ブトキシSnを、所定の配合比(例えば6:2:2の重量比)となる様に秤量する。これを、ブタノールに溶解し、温度120℃以上に加熱する。
つまり、前記アルコキシドの加水分解を行う。
その後、沈殿物を回収し、乾燥した後に仮焼成する。これにより、Al2O3−SnO2−TiO2の混合粉末が得られる。
まず、Al2O3からなる絶縁基板5上に、下部電極11を形成する。具体的には、絶縁基板5上にPt系ペーストを印刷し、120℃にて15分間乾燥し、1200℃で10分間焼成する。
次に、感湿層13の上に、上部電極15を形成する。具体的には、感湿層13の上にPt系ペーストを印刷し、120℃にて15分間乾燥し、1200℃で10分間焼成する。
これにより、焼結体である湿度センサ1が完成する。
図5に湿度を測定するための回路構成を示す様に、湿度センサ1の感湿素子部3は、マイコン21に接続されて、その出力が取り出されるように構成されている。尚、この出力とは、感湿素子部3のインピーダンスに対応した値であり、インピーダンスが増加するとセンサ出力が増加するように設定されている。
本実施例では、上述した湿度センサ1の制御装置を駆動して、内燃機関の作動中において、湿度の計測を行わない時間帯(即ち、内燃機関の作動中であって、且つ、排気ガス温度が100℃を超える時間帯)に、感湿素子部3を500〜800℃の温度範囲で加熱するように、ヒータ17に通電する。また、内燃機関の停止後、感湿素子部に付着した汚れ物質を十分に除去するために、感湿素子部を500〜1200℃の温度範囲で加熱するように、ヒータ17に通電する。
これにより、湿度センサ1(特に感湿素子部3)の温度を適切な範囲に保つことができるので、感湿素子部3に付着したデポジット等の汚れ物質を十分に除去することができる。
(実験例1)
次に、本実施例の効果を確認するために行った実験例について説明する。
具体的には、前記実施例と同様な構造の本発明の範囲の湿度センサ(但し感湿体の結晶相の成分を変えた複数の湿度センサ)を製造し、その実施例サンプルの湿度センサに対して、下記(1)〜(3)の手順で、その感湿特性を調べた。
この分流式評価法を、図7に模式的に示す。ここでは、評価ガスのAirを5L/分供給し、加える水分量を調節して、測定湿度を、20RH%に設定するとともに、測定温度を20℃に設定し、湿度センサのインピーダンスを測定した。
そして、前記走行試験を行った湿度センサに対して、測定前加熱クリーニング(750℃で2分間加熱)を行った後に、前記(1)と同様な分流式評価法を用いて、耐久後の感湿特性を計測した。
一方、前記(1)〜(3)の測定方法と同様にして、本発明の範囲外の比較例の湿度センサ(ガラス成分が入っていないこと以外は、前記実施例1と同様な構造の湿度センサ)を製造し、初期及び走行試験後(耐久後)において、その比較例サンプルの湿度センサの感湿特性を計測した。その結果を、同じく下記表1に示す。
この表1から明らかな様に、比較例の(ガラス成分の入っていない感湿層を備えた試料No.1、3、5)湿度センサの場合には、自動車の排気管内に湿度センサを装着し、約300km走行した後では、試験前のインピーダンスと比べて、大幅なインピーダンスの増加が認められた。
従って、ガラス相の存在が、自動車の排気ガス中での湿度センサのインピーダンスの変化の抑制に大きく寄与していることが分かる。
(実験例2)
次に、実験例2について説明する。
具体的には、下記表2に示す様に、実験例1と結晶相の組成を同じにして、ガラス相の含有量が異なった各種の湿度センサを製造し、前記実験例1と同様にして、「JIS Z 8806 1981年」の規定による分流式評価法を用いて、初期の感湿特性(インピーダンス)を計測した。
この表2から明らかな様に、実施例サンプル4〜10のうち、ガラス相が11.1〜55.6mol%の範囲のもの(試料No.10〜13)は、インピーダンス変化率が小さく(従って耐久性が高く)、好適であることが分かる。
従って、感湿層におけるガラス相の含有量を10〜56mol%とすることにより、自動車の排気ガス中での湿度センサのインピーダンスの変化の抑制に大きく寄与していることが分かる。
(実験例3)
次に、実験例3について説明する。
具体的には、前記実施例サンプル1の湿度センサに対して、前記実験例1と同様な手順で、「JIS Z 8806 1981年」の規定による分流式評価法を用いて、初期及び耐久後の感湿特性(インピーダンス)を計測した。
尚、各測定においては、測定前加熱クリーニングを750℃にて2分間加熱により行った。また、測定においては、測定湿度を、10、20、40、60、80、90RH%に設定した。
このうち、図9に示す比較例(2)は、実車走行中、湿度センサに内蔵された温度センサの温度が一定になるようにして450℃で常時ヒータ制御を行ったものである。同図から明らかな様に、450℃にヒータ制御を行う場合には、湿度が20RH%時の耐久後のインピーダンスを初期値と比較すると、約10倍以上高インピーダンス化しており、好ましくない。
これは、ヒータにより感湿層を加熱することで、ガラス相が軟化し、デポジットのガラス相への固溶、デポジットの感湿層内への拡散を促す効果、及びデポジット成分のセンサへの付着を抑制する効果が作用したものと推定される。
更に、内燃機関の作動中に、感湿層を500〜800℃(例えば、750℃)の範囲で常時加熱し、且つ、内燃機関の停止後に、感湿層を500〜1200℃の範囲で加熱することがより好ましい。内燃機関の作動中に感湿層を常時加熱することで、感湿層表面への汚れ物質の付着を防止することができるとともに、内燃機関の停止後に500〜1200℃の範囲で加熱することで、常時加熱期間に付着してこの期間では取り除くことができなかった汚れ物質を十分に除去することができる。
この様に、本実施例では、上述した構造の感湿層を有する湿度センサをヒータで加熱するとともに、その加熱温度を所定の温度範囲に制御することにより、自動車の排気管内等の非常に過酷な環境に晒された場合であっても、高精度で、長期安定性に優れた性能を発揮することができるという顕著な効果を奏する。
(1)例えば、前記実施例では、ヒータのフィードバック制御を行ったが、(感湿素子部の温度が過度に上昇しない様に実験等で求めた)予め規定された期間又は所定のデューティ比などで、定電圧を印加してもよい。
(3)更に、ヒータの加熱のタイミングとしては、湿度計測を行わない時間に常時加熱する方法が考えられるが、それ以外にも、例えば、内燃機関の停止後に、例えば500〜1200℃にて所定時間加熱する方法も考えられる。
3…感湿素子部
5…絶縁基板
7、9…リード部
11…下部電極
13…感湿層
15…上部電極
16…保護層
17…ヒータ
19…測温抵抗体(温度センサ)
Claims (16)
- 感湿体及び検知電極を有する感湿素子部と、該感湿素子部を加熱するヒータと、を備えた湿度センサであって、
前記感湿体は、酸化物からなる結晶相と、ガラス相と、を有し、
前記ヒータは、湿度の計測を行わない時間に、前記感湿素子部を500〜800℃の温度範囲で所定の期間加熱することを特徴とする湿度センサ。 - 前記感湿体は、前記結晶相と前記ガラス相とからなる多孔質体であって、前記結晶相により前記多孔質体の骨格部が形成され、その骨格部の表面に前記ガラス相がコーティングされた構造を有することを特徴とする前記請求項1に記載の湿度センサ。
- 前記検知電極は、主成分を白金とした白金電極であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の湿度センサ。
- 前記ガラス相のガラス成分は、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、及びホウ酸塩ガラスのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記ガラス相の軟化点は、800〜1200℃であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記ガラス相の含有量は、前記感湿体に対して、10〜56mol%であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記湿度センサは、内燃機関の排気ガス中で用いるものであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記湿度センサは、前記内燃機関の排気ガス浄化用付帯装置の状態を、排気ガスの湿度変化から検出するために用いるものであることを特徴とする前記請求項7に記載の湿度センサ。
- 前記湿度計測を行わない時間に、前記感湿素子部を常時加熱することを特徴とする前記請求項1〜8のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記内燃機関の停止後に、前記感湿素子部を所定時間加熱することを特徴とする前記請求項7又は8に記載の湿度センサ。
- 前記内燃機関の停止後に、前記感湿素子部を、500〜1200℃の温度範囲で加熱することを特徴とする前記請求項10に記載の湿度センサ。
- 抵抗体温度センサ又は前記ヒータを、前記感湿素子部の温度を検出する温度検出手段として用い、当該温度検出手段の抵抗値が所定の抵抗値となるように、前記ヒータを制御することを特徴とする前記請求項1〜11のいずれかに記載の湿度センサ。
- 前記ガラス相は、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくともいずれかを含むガラス成分を主成分とする前記請求項1〜12のいずれかに記載の湿度センサ。
- 感湿体及び検知電極を有する感湿素子部と、該感湿素子部を加熱するヒータと、を備えた湿度センサの使用方法であって、
前記感湿体は、酸化物からなる結晶相と、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくともいずれかを含むガラス成分を主成分とするガラス相と、を有し、
湿度の計測を行わない時間に、前記ヒータにより、前記感湿素子部を所定の期間加熱することを特徴とする湿度センサの使用方法。 - 前記湿度センサは内燃機関の排気ガス中で用いるものであり、
前記内燃機関の作動中において、500〜800℃の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項14に記載の湿度センサの使用方法。 - 前記湿度センサは内燃機関の排気ガス中で用いるものであり、
前記内燃機関の停止後において、500〜1200℃の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項14に記載の湿度センサの使用方法。
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