JP2005016835A - 床暖房制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】建物の構造、室温にかかわらず、運転初期から定常状態まで、快適な床暖房を実現することができる床暖房制御システムを提供する。
【解決手段】建物の床に敷設した温水管路に温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房装置の、室温および/または床温度を制御するための指標として、往き温水温度と戻り温水温度の平均値Aを指標とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房における、床温度と室温を制御する床暖房制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
温水を床暖房パネルへ供給して暖房を行う温水床装置では、リモコンなどの床暖房運転スイッチなどにより運転開始を指示すると、床暖房パネルが設けられた温水回路に温水を循環させる循環ポンプを駆動し、リモコン等の能力設定機で設定された暖房レベルに応じて、床暖房パネルへ供給される温水温度を決定し、決定された暖房レベルに応じてバーナー等で加熱することにより、安定した暖房能力で運転している。
【0003】
運転開始初期には、通常の運転時より高温の温水を循環させることによって運転開始初期の暖房能力を向上させるように、ホットダッシュ動作を行うようにしたものもある。こうしたホットダッシュ動作では、床暖房パネル等へ供給される往き温水の温度は、例えば、運転開始から40分間は80℃、その後、運転開始から60分までの間は65℃、さらに運転開始から60分を経過した以降は47℃というように、あらかじめ決められた時間中には、あらかじめ決められた固定温度に調節されていた。例えば特許文献1には、複数の床暖房パネルが接続されている場合に、各部屋毎にホットダッシュ時間を設定する床暖房制御システムが開示されている。
【特許文献1】
特開平10−30826号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ホットダッシュ動作を有する床暖房制御システムにおいては、暖房が開始される場合には、いつでも決まった温度と時間のホットダッシュ動作によって室内が暖房される。このために、暖房負荷が小さい場合には、ホットダッシュ動作の時間が長すぎることになって過剰な暖房となったり、暖房負荷が大きい場合には、供給される温水の温度が低いなどの理由で立ち上がりが悪いといった具合に、個々の暖房負荷状態に対処できない。さらに、施工などの問題で、同じような部屋でも暖まったり暖まらなかったりすることがある。このように、従来のホットダッシュ動作では、必ずしも快適な状態で床暖房を開始させることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、建物の構造、室温にかかわらず、運転初期から定常状態まで、快適な床暖房を実現する床暖房システムを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
床暖房パネル内が往き温水から戻り温水まで場所的に直線に近いカーブで温度が下がってくる場合、これらを積分して平均値を求めた結果は、往き温水温度と戻り温水温度の平均値に一致する。従来は、往き温水温度だけで床温度、部屋温度が制御できると考えられていたが、本願発明者は、往き温水温度と戻り温水温度の平均値という指標が非常に重要であるという着想を得るに至った。
【0007】
また、床暖房の温水流量は、施工の仕方や温水温度によって刻々と変化している。流量が多ければ、同じ部屋状態でも戻り温水の温度低下は少ないものになるし、流量が少なければ、戻り温水の温度低下は大変大きなものになる。したがって、同じ温水温度を与えても、流量の違う部屋では暖まり方も全く異なる。しかし、普通の床暖房システムは流量計を有していないために、この違いが分からない。しかし、本願発明者は、温水温度の平均値を使用した温度制御であれば、多少流量の違いがあっても、同じように部屋を暖めることができるとの着想を得た。
【0008】
これらの着想を具体的に確認した結果を以下に説明する。すなわち、図1は、室温5℃、8畳の部屋の温水温度を40℃〜80℃(80、55、45、40℃)まで変化させた時の、部屋の奥側、部屋の窓側のkの値の時間変化である。kは、往き温水温度と戻り温水温度の平均値Aact、床温度をEact、部屋温度をCactとした場合の床温度内分点(Eact−Cact)/(Aact−Cact)である。kはある程度の時間が経過して定常状態になると、温水温度にかかわらず、窓側では0.3、壁側でが0.4にそれぞれ落ち着いている。図1では往き温水温度のみを変化させているが、実験により、流量や熱源を変化させても、定常状態になると、同様にkが窓側では0.3、壁側では0.4という一定の値になることが分かった。したがって、往き温水温度と戻り温水温度の平均値を利用した制御方法は普遍性を持っているとの考えに至ったのである。
【0009】
かくして請求項1の発明は、建物の床に敷設した温水管路に温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房システムであって、室温および/または床温度を制御するため、往き温水温度と戻り温水温度との平均温度に関する設定値及び実測値を使用すること特徴とする床暖房制御システムを提供するものである。
【0010】
請求項2の発明は、建物の床に敷設した温水管路に温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房装置の、室温および/または床温度を制御するために、往き温水温度と戻り温水温度との設定平均温度Aを室温および/または床温度の状態から決定して、前記設定平均温度Aを制御により実現することを特徴とする床暖房制御システムを提供するものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の床暖房制御システムにおいて、設定平均温度Aを達成するために、戻り温水温度Bを測定し、往き温水温度Xを操作量として
X=2×A−B
となるようにXを制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の床暖房制御システムにおいて、設定部屋温度Cと測定部屋温度Dから、制御定数aをもとに、次式
A=(C−D)×a+T(C)
(ただしT(C)は、設定部屋温度により定まる定数。)
により前記設定平均温度Aを決定することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の床暖房制御システムにおいて、設定床温度Eから、次式
T(C)=(E−C)/k+C
(ただしkは定数。)
により、前記T(C)の値を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4に記載の床暖房制御システム最終運転動作から学習して、前記T(C)の値を決定することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、実測の往き温水温度と戻り温水温度との平均温度Aactと、前述したkを利用した往き温水温度Xの制御方法を例にとり説明する。図2は、本発明の床暖房制御システムを有する床暖房装置100の概略図である。この床暖房装置100において、熱源101にて昇温された温水は、往き配管102を介して、室内130に設置されたマット104内の配管104aに供給される。室内に放熱後、温度の低下した温水は戻り配管105を通じて熱源101に戻され、再加熱されて再び上記循環に供される。往き配管102には、制御装置110からの命令を受けて往き温水の温度を連続的に変化させる温度制御装置103が設けられている。制御装置110が温度制御装置103にする命令は、室温センサ122と、戻り温水温度センサ121から送られる信号、および床温度設定パネル125から送られる設定床温度Bの情報に基づき決定される。
【0016】
上記構成における具体的動作を以下に説明する。床暖房の運転スイッチがオン状態になると、暖房運転が開始される。設定床温度は、床温度設定パネル125により設定される。また、運転開始時の最初の往き温水温度は予め任意に設定されている。熱源101にて初期設定温度に昇温された温水は、往き配管102を介して、室内130に設置されたマット104内の配管104aに供給される。室内に放熱後、温度の低下した温水は戻り配管105を通じて熱源101に戻されるが、その際、戻り温水温度センサ121によって、戻り温水温度が計測され、その信号が制御装置110に送られる。それと同時に、室温センサ122からも計測された室温の信号が制御装置110に送られる。
【0017】
戻り温水温度センサ121と室温センサ122からの信号をもとに、制御装置110では、X=2A−Bの式を満たすように往き温水温度Xの値が決定される。ここで、Aは、往き温水温度と戻り温水温度との平均温度(設定値)、Bは戻り温水温度であり、戻り温水温度センサ121により計測された値である。
【0018】
平均温度Aの値の設定にあたり、設定部屋温度Cと測定部屋温度Dから、制御定数aをもとに、次式
A=(C−D)×a+T(C)
により前記設定平均温度Aを決定しても良い。ただしT(C)は、設定部屋温度により定まる定数である。またaはいわゆる制御定数であり、適宜その値を定めることができる。
【0019】
上記式においてT(C)は、設定床温度Eから、次式
T(C)=(E−C)/k+C
により決定しても良い。設定床温度Eは、床温度設定パネル125により予め入力され、通常は30℃前後に設定されている。
【0020】
また、kは定数であり、これも予め計算、あるいは実験的に定められている値である。kの値は、床材、配管、部屋の構造等から決定される。計算で出すことも可能であるが、より厳密には、実際に施工した後でチューニングして決定するのが好ましい。また、実験によると、kは約0.2〜0.5の間にあるので、最初のうちはおおよその値で運転しながら、制御装置110に学習機能装置を内蔵させることで、少しづつkの値を補正していくということもできる。
【0021】
B、C、D、E、kの値に基づいて制御装置110内で算出された往き温水温度Xの値は、往き温水温度制御装置103に送られる。これに基づき、往き温水温度制御装置103は、往き温水温度がXとなるように往き温水温度を制御する。これにより往き配管102中の温水温度は変化し、温水は、再び室内130に設置されたマット104内の配管104a、戻り配管105を循環する。その際、戻り温水温度センサ121と室温センサ122により計測された温度が制御装置110に送られ、再び制御装置内でXの値が決定される。これが繰り返されることにより、定常状態となるまで連続的に往き温水温度Xが変化する。
【0022】
室温があまりに低い場合、計算上往き温水温度が高温になりすぎる場合がある。そのような高温の値になる間は、その床暖房制御システムが許容する最も高温の温水で運転すれば良い。図3は、そのような場合の床暖房制御システムの往き温水温度制御の処理を示すフローチャートである。
【0023】
図3の処理においてはまず、戻り温水温度センサと室温センサにより、それぞれの温度計測される(ステップS1)。この計測された値に基づき、ステップS2において往き温水温度が決定されると同時に、この値が、床暖房制御システムが許容する最高温度より高いかどうか判断される。
【0024】
ステップS2において、否定判断された場合、すなわちその床暖房制御システムが許容する最高温度よりXが低い場合、Xの計算値に基づき往き温水温度が制御される(ステップS3)。
【0025】
ステップS2において、肯定判断された場合、すなわちその床暖房制御システムが許容する最高温度よりXが高い場合、Xの値にかかわらずその床暖房制御システムが許容する最高温度で運転する(ステップS4)。
【0026】
その後、停止命令があるまで上記処理は繰り返され、処理はステップS1に戻される(ステップS5)。
【0027】
このように、ステップS2で計算される値が、許容される最高温度より高い間はその温度で運転され、室温が上昇し、Xが制御可能な値になってから、その計算値に基づき徐々に温度が下げられることになる。
このような場合であっても、一定時間一定温度のホットダッシュ運転を行う従来の床暖房制御システムに比べて、効率よく快適な運転をすることができる。
【0028】
【実施例】
実施例として、本発明の往き温水温度と戻り温水温度の平均値を指標とした、床暖房制御システムにより制御した場合の室温等の時間変化を測定した。ここでは、目標とする部屋温度を20℃とし、20℃の室温において定常状態になったときにとるべき、往き温水温度と戻り温水温度の平均値A(設定値)を、
A=(20−実測の部屋温度)×2+44
という式に基づき、往き温水温度の制御を行った。
【0029】
床暖房運転前の室温は5℃、最大往き温水温度は80℃である。結果を図4に示す。それと同時に、比較例として、同じ室温、広さの部屋に、所定時間(30分)80℃温度の往き温水を流し、以降は50℃で運転した結果(図5)、同じく同じ条件の部屋に80℃の行き温水を流し、流量のオン/オフ制御により運転した結果(図6)を示す。なお、図5と図6のグラフの各線は、それぞれ図4のものと対応している。
【0030】
図4に示されるように、本発明の制御システムによる床暖房運転では、床温度、室温共になめらかに上昇し、定常状態になると安定してほぼ横軸と平行になった。一方、図5に示される比較例では、運転初期に床温度のオーバーシュートが見られ、床温度が高温になりすぎて安全性や省エネの点で問題があることが分かる。また、図6に示される比較例では、高温の温水の流量のみで制御しているため、特に室温が定常状態に入っても安定せず、快適性の面で問題があることが分かる。
【0031】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う床暖房制御システムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、往き温水温度を所定の式を満たすように連続的に制御することにより、建物の構造、室温にかかわらず、運転初期における快適な暖房を実現することができる床暖房制御システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】室温5℃、8畳の部屋で温水温度を変化させて床暖房運転した時の、部屋の奥側、窓側のkの値の時間変化を示すグラフである。
【図2】本発明の床暖房制御システムを有する床暖房装置の概略図である。
【図3】床暖房制御システムの往き温水温度制御の処理を示すフローチャートである
【図4】本発明の床暖房制御システムを用いて床暖房運転したときの各温度変化を表すグラフである。
【図5】運転初期に80℃の往き温水を一定時間、一定流量流す床暖房制御システムを用いて床暖房運転したときの各温度変化を表すグラフである。
【図6】80℃の往き温水の流量をオン/オフ制御する床暖房制御システムを用いて床暖房運転したときの各温度変化を表すグラフである。
【符号の説明】
100 床暖房制御システム
101 熱源機
102 往き配管
103 温度制御器
104 マット
104a マット内配管
105 戻り配管
110 制御装置
121、122 温度センサ
125 床温度設定パネル

Claims (6)

  1. 建物の床に敷設した温水管路に温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房システムであって、室温および/または床温度を制御するため、往き温水温度と戻り温水温度との平均温度に関する設定値及び実測値を使用すること特徴とする床暖房制御システム。
  2. 建物の床に敷設した温水管路に温水を循環させて建物内に熱を供給する床暖房装置の、室温および/または床温度を制御するために、往き温水温度と戻り温水温度との設定平均温度Aを室温および/または床温度の状態から決定して、前記設定平均温度Aを制御により実現することを特徴とする床暖房制御システム。
  3. 前記設定平均温度Aを達成するために、戻り温水温度Bを測定し、往き温水温度Xを操作量として
    X=2×A−B
    となるようにXを制御することを特徴とする請求項2に記載の床暖房制御システム。
  4. 設定部屋温度Cと測定部屋温度Dから、制御定数aをもとに、次式
    A=(C−D)×a+T(C)
    (ただしT(C)は、設定部屋温度により定まる定数。)
    により前記設定平均温度Aを決定することを特徴とする請求項3に記載の床暖房制御システム。
  5. 設定床温度Eから、次式
    T(C)=(E−C)/k+C
    (ただしkは定数。)
    により、前記T(C)の値を決定することを特徴とする請求項4に記載の床暖房制御システム。
  6. 最終運転動作から学習して、前記T(C)の値を決定することを特徴とする請求項4に記載の床暖房制御システム。
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