JP2005016690A - 自動変速機のセレクトアシスト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】セレクトレバーとレンジ位置切り換え装置の機械的連結により信頼性を確保しつつ、セレクトレバーの小型化によるレイアウト自由度の拡大を図ることができ、しかも要求に応じたセレクトレバー操作力特性を得ることができる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供する。
【解決手段】レンジ位置を変更する際におけるモータ駆動制御ブロック45から電動モータ15に出力されるアシスト電流値が予め定められた電流値の範囲からはずれると異常と判断する異常判断ブロック50を設けた。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機を備えた車両において、ドライバのセレクトレバー操作力を補助する自動変速機のセレクトアシスト装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動変速機のセレクトレバーは、ロッドやケーブル等の操作力伝達手段を介して自動変速機のマニュアルバルブと機械的に連結されている。セレクトレバーに入力されるドライバの操作力は、操作力伝達手段を介してマニュアルバルブに伝達され、操作量に応じてレンジ位置が切り換えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、セレクトレバーとマニュアルバルブとが電気的に接続された、いわゆるシフトバイワイヤ技術を用いたものが知られている。この従来技術は、マニュアルバルブを作動するアクチュエータを設け、セレクトレバーの回動操作を電気信号に変化してアクチュエータを駆動することにより、レンジ位置を切り換えるものである(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−323559号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2003−97694号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
セレクトレバーの操作時には、操作力伝達手段のフリクション、ディテントの抵抗等、機械的な操作反力が発生するため、大きな操作力が要求される。よって、ドライバの必要操作力を小さくするために、セレクトレバーの長さを十分な梃子力が得られる長さに設定する必要がある。
【0007】
したがって、上記従来技術のうち前者にあっては、セレクトレバーの長さに起因して形状が大きくなるため、設置場所に制約が多く、車室内におけるレイアウト自由度が低いという問題があった。
【0008】
一方、後者では、アクチュエータの採用によってセレクトレバーを短く設計でき、前者と比較してレイアウト自由度は高くなる。ところが、セレクトレバーとマニュアルバルブとが機械的に連結していないため、フェール時にレンジ切り換えが不能となる。よって、信頼性や安全性の点で問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、セレクトレバーとレンジ位置切り換え装置の機械的連結により信頼性を確保しつつ、セレクトレバーの小型化によるレイアウト自由度の拡大を図ることができ、しかも要求に応じたセレクトレバー操作力特性を得ることができる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置では、自動変速機のレンジ位置切り換え装置と連結されたセレクトレバーへの入力操作力を検出する入力操作力検出手段と、前記セレクトレバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記セレクトレバーにドライバの操作力を補助するアシスト力を出力する電動のアシストアクチュエータと、検出された入力操作力と操作位置に基づいて、アシストアクチュエータに対しアシスト力を変化させる制御指令を出力するアシスト力制御手段と、を有する自動変速機のセレクトアシスト装置であって、レンジ位置を変更する際におけるアシスト力制御手段からアシストアクチュエータに出力されるアシスト電流値が予め定められた電流値の範囲からはずれると異常と判断する異常判断手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記異常判断手段が、判断に用いるアシスト電流値の範囲をセレクトレバーの操作速度により変更することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記異常判断手段が、異常と判断すると、前記アシスト制御手段によるアシストアクチュエータの制御を停止させる制御停止指令を出力するようにしたことを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明では、セレクトレバーとレンジ位置切り換え装置の機械的連結を保持しつつ、ドライバのレバー操作力をアシストアクチュエータで補助することにより、信頼性の確保と、セレクトレバーの小型化によるレイアウト自由度の拡大を共に達成できる。
また、レンジ位置を変更する際におけるアシスト力制御手段からアシストアクチュエータに出力されるアシスト電流値が予め定められた電流値の範囲からはずれると異常と判断するため、アシスト力が過小になるアシスト力不足やアシスト力が過大になる誤作動を防止できる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、判断に用いるアシスト電流値の範囲をセレクトレバーの操作速度により変更するため、遅い操作速度で操作することにより小さなアシスト力となるのに対応し、また、早い速度で操作することにより大きなアシスト力となるのに対応して判断に用いるアシスト電流値の範囲を変更して、操作速度に応じた判断を行って、より確実に異常を検知して誤動作の発生を防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、異常と判断すると、アシスト制御手段によるアシストアクチュエータの制御を停止させる制御停止指令を出力するので、セレクトレバーの操作は重くなるが、誤動作を確実に防止して安全性を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置を実現する実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【0017】
(実施例)
まず、構成を説明する。
図1は実施例の自動変速装置の構成を示す側面図、図2はアシストアクチュエータの細部構造を示す要部斜視図である。
【0018】
実施例の自動変速装置は、セレクト機構部1と、コントロールケーブル8と、アシストアクチュエータ9と、コントロールケーブル18と、自動変速機19と、コントロールユニット(アシスト力制御手段)22とを主要な構成としている。
【0019】
前記セレクト機構部1は、ドライバにより操作されるセレクトレバー2を有し、例えば、運転席脇のセンタクラスタ3に設けられている。セレクトレバー2の上端には、セレクト操作時にドライバが把持するためのセレクトノブ4が付設されている。セレクトレバー2は、支点軸5を中心として回動操作され、従来の一般的なセレクトレバーよりも250mm短い100mmに設定されている。
【0020】
前記セレクトレバー2の下端部には、セレクトレバージョイント7を介してプッシュプル式のコントロールケーブル8が接続されている。コントロールケーブル8は、入力レバージョイント11を介してアシストアクチュエータ9の入力レバー10と回動自在に接続されている。すなわち、セレクトレバー2の回転運動が直線運動に変換され、セレクトレバー2の操作により発生した操作力が入力レバー10に伝達される。
【0021】
前記入力レバー10は、回動可能に設けられた出力軸12を介して出力レバー13と連結されている。出力軸12には、ウォームギア14が設けられており、このウォームギア14は、減速機構を備えた電動モータ15のモータ出力軸16と噛み合っている。
【0022】
前記出力レバー13には、出力レバージョイント17を介してプッシュプル式のコントロールケーブル18が接続されている。コントロールケーブル18は、自動変速機19の制御アーム20と接続されている。すなわち、コントロールケーブル18により出力レバー13の回転運動が直線運動に変換され、ドライバの操作力と電動モータ15の駆動力との合成力が自動変速機19の制御アーム20に伝達される。
【0023】
前記出力軸12には、入力レバー10とウォームギア14との間に生じるゆがみ(ねじれ)を検出するトルクセンサ(入力操作力検出手段)21が設けられている。このトルクセンサ21により検出された操作力信号は、図外の増幅アンプにより信号増幅され、コントロールユニット22にワイヤハーネス23を介して伝達される。トルクセンサ21の検出信号により、セレクトレバー操作における操作力が推定可能となる。
【0024】
前記ウォームギア14には、位置検出のための接触子24が取り付け固定されている。この接触子24がウォームギア14と一体に回動し、図示しない基板に印刷されたカーボン抵抗と電気的に接触することにより、セレクトレバー2のストローク角度に応じた電圧信号をコントロールユニット22に出力する。この接触子24とカーボン抵抗とからポテンショメータ(操作位置検出手段)25が構成されている。
【0025】
このポテンショメータ25は、セレクトレバー2がPレンジ位置で停止しているときの角度を基点角度として、セレクトレバー2のストローク角度を随時検出する。
【0026】
前記コントロールユニット22は、検出されたセレクトレバー2のストローク角度と、ドライバの操作力とに基づいて目標アシスト力を設定し、電動モータ15の出力デューティ比をPWM制御する。
【0027】
図3に、コントロールユニット22の制御ブロック図を示す。
前記セレクト機構部1において、レンジ切り換え操作されたセレクトレバー2のストローク変化は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のポテンショメータ25へ入力される。ポテンショメータ25では、セレクトレバー2の操作量に応じたストローク角度が検出され、ストローク角度信号としてコントロールユニット22へ出力される。
【0028】
また、セレクトレバー2の操作力は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のトルクセンサ21へ入力される。トルクセンサ21では、セレクトレバー2の操作力が検出され、操作力信号としてコントロールユニット22へ出力される。
【0029】
微分器51では、ストローク角度信号を微分して操作速度を算出し、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33に出力する。
【0030】
ポジション・操作開始・方向判別ブロック33では、ストローク角度信号に基づいて、現在のセレクトレバー2のストローク角度を判定する。また、ストローク角度信号とストローク角度信号の微分値および操作力信号から、セレクトレバー2の操作開始、操作方向、操作速度および操作加速度を判別し、判別結果をFF補償テーブル43と目標テーブルブロック34とモータ駆動制御ブロック45へ出力する。
【0031】
異常判断ブロック50では、加算器41からモータ駆動制御45に入力されるFF+FB制御の結果として、モータ駆動制御ブロック45から電動モータ15に出力されるアシスト電流値と、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33から得るセレクトレバー2の操作速度から、異常かどうかを判断して異常の場合にはアシスト制御ブロック45にアシスト制御停止信号を出力する。
また、異常の場合には警報装置に警報信号を出力する。
【0032】
警報装置52では、異常判断ブロック50で異常と判断したことをドライバに音や表示等により警報する。
【0033】
目標テーブルブロック34では、ストローク角度信号と、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33によって求められたセレクトレバー2の操作方向等から、セレクトレバー2のストローク角度に応じた目標操作反力が算出され、加算器35へ出力される。
【0034】
ここで、セレクトレバー2のストローク角度によって、目標操作反力は異なるため、目標テーブルブロック34には、ストローク角度毎の目標操作反力がテーブル化して格納されている。
【0035】
加算器35は、操作力信号と目標操作反力の偏差を算出し、算出結果をFB制御部36へ出力する。
【0036】
FB制御部36は、乗算器37と、加算器38と、乗算器39と、積分器40とから構成されている。乗算器37は、操作力信号と目標操作反力の偏差に比例ゲインを乗じた値を加算器38へ出力する(比例出力)。乗算器39は、操作力信号と目標操作反力の偏差に積分ゲインを乗じた値を積分器40へ出力する。積分器40では、乗算器39の出力を積分演算して加算器38へ出力する(積分出力)。加算器38では、比例出力と積分出力の和であるフィードバックアシスト力を加算器41に出力する。
【0037】
FF制御部42は、FF補償テーブルブロック43と乗算器44とから構成されている。FF補償テーブルブロック43は、ストローク角度信号、操作速度および操作加速度に対応して予め設定された値を、乗算器44へ出力する。乗算器44では、FFアシスト力にFFゲインを乗じた値、すなわちフィードフォワードアシスト力を加算器41へ出力する。
【0038】
加算器41では、FB制御部36とFF制御部42の出力和(フィードバックアシスト力+フィードフォワードアシスト力)、すなわち目標アシスト力をモータ駆動制御ブロック45へ出力する。
【0039】
モータ駆動制御ブロック(アシスト力制御部に相当)45は、目標アシスト力に基づいて、電動モータ15を駆動する。
【0040】
次に、自動変速機19のディテントの構造について説明する。
図4は、自動変速機19のディテントの構造を示す斜視図である。
制御アーム20には回転シャフト26が設けられ、この回転シャフト26にディテントプレート27が支持されている。ディテントプレート27の上端には、カム山27aの間に5つのレンジ(P・R・N・D・L)に対応した谷部27bが形成されている。そして、この谷部27bにバネ板28の先端に形成されたディテントピン29を係合させ、選択されたレンジ位置を保持することにより、車両の振動等に起因する意図しないレンジセレクトを防止している。
【0041】
すなわち、セレクトレバー2の操作力により回転シャフト26が回動し、この回動に応じてディテントプレート27がディテントピン29に対して相対移動する。このとき、ディテントピン29がカム山27aを乗り越えて隣のレンジに対応した谷部27bと係合し、係合状態がバネ板28の弾性力により保持される。この弾性力が、セレクトレバー2を操作する際の主要な負荷力となる。
【0042】
なお、ディテントプレート27には、パーキングポール30の一端が回動自在に連結されている。このパーキングポール30は、セレクトレバー2をPレンジに移動させたとき、カム状プレート31を介してパーキングギア32の回転を阻止し、図外の駆動輪をロックするものである。これにより、勾配路上にPレンジで車両を駐車したとき、勾配に応じて駆動輪をロックするように車重負荷が加わり、パーキングポール30を咬む力として作用する。
【0043】
次に、作用を説明する。
[セレクトレバーのアシスト制御処理]
図5は、コントロールユニット22で実行されるセレクトレバー2のアシスト制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
ステップS1では、トルクセンサ21の操作力信号から操作力を読み込み、ステップS2へ移行する。
【0045】
ステップS2では、ポテンショメータ25のストローク角度信号からストローク角度を読み込み、ステップS3へ移行する。
【0046】
ステップS3では、セレクトレバー2のストローク角度と前回の制御周期において読み込んだストローク角度の増減差分から、セレクトレバー2の操作方向を演算し、ステップS4へ移行する。
【0047】
ステップS4では、セレクトレバー2のストローク角度と前回の制御周期において読み込んだストローク角度の変化率から、セレクトレバー2の操作速度を演算するとともに、操作速度の微分値からセレクトレバー2の操作加速度を演算し、ステップS5へ移行する。
【0048】
ステップS5では、FF補償テーブル読み込み処理を実施し、ステップS6へ移行する。FF補償テーブルは、予め設定された複数のテーブルの中から、ストローク角度、操作速度および操作加速度に応じて最適なものを選択する。
【0049】
ステップS6では、目標テーブル読み込み処理を実施し、ステップS7へ移行する。
【0050】
ステップS7では、読み込んだFF補償テーブルからFFアシスト力を設定し、ステップS8へ移行する。
【0051】
ステップS8では、読み込んだ目標テーブルからFBアシスト力を設定し、ステップS9へ移行する。
【0052】
ステップS9では、設定したFFアシスト力とFBアシスト力との和から目標アシスト力を設定し、ステップS10へ移行する。
【0053】
ステップS10では、目標アシスト力となるように電動モータ15の出力デューティ比を制御し、本制御を終了する。
【0054】
ステップS11では、アシスト電流値が所定の範囲からはずれているかどうかを検出し、はずれている場合にはアシスト制御を停止させる処理を行う。
【0055】
[自動変速機の操作反力特性]
図6は、P→Rレンジ方向におけるセレクトレバー2、正確には、ドライバの把持するセレクトノブ4に発生する操作反力を示す特性図である。この操作反力特性は、電動モータ15を駆動していない状態で、ドライバがP→Rレンジ方向にセレクトレバー2を操作したとき、アシストアクチュエータ9の出力軸12において操作反力として検出された軸トルクを、セレクトノブ4に発生する操作反力Fm[N]として換算し、ポテンショメータ25により取得されるストローク角度と対比させたものである。
【0056】
この操作反力は、上述した自動変速機19のディテントで発生する負荷力に、コントロールケーブル8,18の摩擦力、電動モータ15のイナーシャ等を合成したものである。すなわち、電動モータ15によるアシスト力がない状態でレンジ切り換えを行うには、この操作反力Fm以上の手動操作力が必要となる。
【0057】
図6に示すように、セレクトレバー2をP→Rレンジ方向に操作したときに発生する操作反力Fmは、各レンジ間において、初めにセレクトレバー2の操作方向と逆方向(D→Nレンジ方向)に発生し、ピーク後に向きを変えて操作方向と同一方向(P→Rレンジ方向)に発生し、レンジ切り換え位置(停止位置)付近でゼロに収束した状態となる。この特性は、ディテントピン29がディテントプレート27のカム山27aを乗り越える際に発生する負荷力に起因している。すなわち、ディテントピン29がカム山27aを乗り越えるまでは、バネ板28の付勢力により抵抗力が発生し、ディテントピン29がカム山27aを乗り越えた後は、ディテントピン29が次のカム山27aの溝に落ち込んで引き込み力(慣性力)が発生するためである。
【0058】
[目標操作反力特性]
図7は、P→Rレンジ方向におけるセレクトレバー2の目標操作反力を示す特性図である。この目標操作反力特性は、ドライバにとって節度感のある良好な操作特性が得られる目標操作反力Ft[N]を、セレクトレバー2のストローク角度に応じて予め設定したものである。
【0059】
[FF制御アシスト力マップ]
図8は、FF制御におけるP→Rレンジ方向におけるアシスト力マップである。このアシスト力マップでは、セレクトレバー2のストローク角度に応じて、図6のディテント操作反力の約1/2の操作力がFF制御でアシストされるように設定されている。
【0060】
[FF制御+FB制御]
実施例では、アシスト力を、ディテント操作反力の約1/2の操作力となるように設定したフィードフォワードアシスト力Fff[N]と、実際の操作力と目標操作反力Ftとの偏差に基づいて設定したフィードバックアシスト力FFb[N]との2つの成分とすることにより、急峻で大きなトルク偏差を伴うセレクトレバーのアシスト制御において、応答性と外乱抑制性を高いレベルで両立でき、良好な操作特性を実現できる。
【0061】
[アシスト電流について]
ここで、アシスト電流値について述べる。
実施例のセレクトアシスト装置では、アシスト制御によりモータ駆動制御ブロック45からアシスト電流が出力されて電動モータ15が駆動される。なんらかの原因により、トルクセンサの故障やシステム故障が発生し、出力されるアシスト電流値が過大になったり、過小になったりすると、アシスト力が不足したり、アシスト力が過剰になって、セレクトレバー2が、操作がないのに移動する誤作動等を引き起こすこととなる。
このため、本実施例では異常判断ブロック50を設けている。
【0062】
[異常判断判定・処理]
図9に示すのは、コントロールユニット22で実行される図5のステップS11の異常判断判定・処理を示すフローチャート図である。
【0063】
ステップS101では、アシスト電流の最大値が閾値上限となるImax+δを超えているかどうかを判断し、Imax+δを超えているならばステップS104に移行し、Imax+δを超えないならばステップS102に移行する。
【0064】
ステップS102では、アシスト電流値の最大値が閾値下限となるImax−δより小さいかどうかを判断し、Imax−δより小さいならばステップS104に移行し、Imax−δ以上であるならばステップS103に移行する。
【0065】
ステップS103では、正常と判断して通常のアシスト処理を行うように処理を終了する。
【0066】
ステップS104では、システム異常と判断して、異常判断手段50からモータ駆動制御ブロック45にアシスト制御停止信号を出力するとともに、異常判断手段50から警報装置52に警報信号を出力して処理を終了する。
【0067】
[異常判断判定・処理の閾値変更処理]
図10に示すのは、コントロールユニット22で実行される異常判断判定・処理の閾値の変更処理を示すフローチャート図である。
【0068】
ステップS201では、ポテンショメータ25からのストローク角度信号を時間に対応して微分器51に入力する。
【0069】
ステップS202では、微分器51によりセレクトレバー2の位置の変位ΔX/変位時間ΔTを計算して、セレクトレバー2の操作速度Vを算出する。
【0070】
ステップS203では、閾値の基準値であるImaxoと、比例乗数k、ステップS202で算出した操作速度Vから、Imax=Imaxo−k・|V|の計算を行い、Imaxを算出する。
【0071】
ステップS204では、算出したImaxを異常判定に用いるように変更する。
【0072】
[システム異常検知・処理]
▲1▼正常処理
正常な状態でセレクトレバー2が操作された場合には、FF+FB制御によるアシスト制御の結果がモータ駆動制御ブロック45から電動モータ15にアシスト電流として出力される。このアシスト電流は、予め設定した正常な電流値の範囲内にあることとなるので、ステップS101でImax+δ以下と判断され、ステップS102でImax−δ以上と判断され、正常な処理と判断されるので、通常のアシスト処理が維持される。
▲2▼異常処理
トルクセンサ21やシステムの異常によりアシスト電流値が過小になったり、過大になり、予め設定した範囲であるImax+δ以下で、Imax−δ以上の範囲からはずれると、このことがステップS101又はステップS102で判断されて、ステップS104の処理によりモータ駆動制御ブロック45にアシスト制御停止信号が出力され、アシスト制御が停止される。また、警報装置52に警報信号が出力され、警報装置52から音や表示によりドライバに警報される。
これにより、アシスト力が過剰に供給されてドライバの操作に関わらずセレクトレバー2が移動する等の誤動作を防止することができる。この状態では、セレクトレバー2の操作は重くなるが手動で操作可能であり、運転走行に支障をきたさないようにできる。
【0073】
[操作速度の考慮]
セレクトレバー2の操作速度が遅い場合には、必要な操作力の変位が小さくなるために、これに対応してアシスト力も小さくなる。このような場合であっても、異常なアシスト電流値かどうかを判定するために本実施例では、セレクトレバー2の操作速度を算出して、操作速度の絶対値(|V|)に比例乗数(k)を乗算したものを基準とした電流値(Imaxo)から減算するようにして判定に用いる電流値の範囲を電流値の小さい側にシフトさせる(ステップS201〜ステップS204)。これにより操作速度が小さくなっても、アシスト電流値の異常を確実に検知する。
【0074】
次に効果を説明する。
本実施の形態の自動変速機のセレクトアシスト装置にあっては、次に列挙する効果を得ることができる。
【0075】
(1)セレクトレバー2は従来のセレクトレバーよりも車室内空間への突出量が150mm程度少なく、さらに、セレクトレバー2と制御アーム20はコントロールケーブル8,18を介して連結されているため、従来品よりも車室内レイアウトの自由度が大きく、インストルメントパネル等、車室内の任意箇所にセレクトレバー2を設定できる。
また、セレクトレバー2と制御アーム20がコントロールケーブル8,18によって機械的に連結されているため、アシストアクチュエータ9やコントロールユニット22がフェールした場合でも、ドライバは手動でレンジ位置を切り換えることができ、安全性を確保できる。
また、レンジ位置を変更する際におけるモータ駆動制御ブロック45から電動モータ15に出力されるアシスト電流値が予め定められた電流値の範囲からはずれると異常と判断する異常判断ブロック50を設けたため、アシスト力が過小になるアシスト力不足やアシスト力が過大になる誤作動を防止できる。
【0076】
(2)異常判断ブロック50が、判断に用いるアシスト電流値の範囲をセレクトレバー2の操作速度により変更するため、遅い操作速度で操作することにより小さなアシスト力となるのに対応し、また、早い速度で操作することにより大きなアシスト力となるのに対応して判断に用いるアシスト電流値の範囲を変更して、操作速度に応じた判断を行って、より確実に異常を検知して誤動作の発生を防止できる。
【0077】
(3)異常判断ブロック50が、異常と判断すると、モータ駆動制御ブロック45による電動モータ15の制御を停止させる制御停止指令を出力するようにしたため、セレクトレバーの操作は重くなるが、誤動作を確実に防止して安全性を向上させることができる。
【0078】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0079】
例えば、実施例では、セレクトレバー2の入力操作力を検出する入力操作力検出手段としてトルクセンサ21を用いたが、電動モータ15への供給電流値や電動モータ15の回転数等から入力操作力を推定する構成としてもよい。
【0080】
実施例では、セレクトレバー2と自動変速機19の制御アーム20をコントロールケーブル8,18で連結する構成を示したが、セレクトレバー2の操作力を制御アーム20に伝える操作力伝達手段は任意であり、ロッドやリンケージを用いた構成としてもよい。
【0081】
セレクトレバー2の形状や大きさは任意であり、指先で操作可能なスイッチ形状としてもよい。また、目標操作反力特性も、セレクトレバー2の形状に応じて良好な操作特性が得られる特性に変更する。
【0082】
目標アシスト力に対するFFアシスト力FffとFBアシスト力Ffbの配分比率は、目標操作特性に応じて自由に設定できる。
アシスト電流値の範囲は、上限、下限のみを閾値とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の自動変速機の構成を示す側面図である。
【図2】アシストアクチュエータの細部構造を示す要部斜視図である。
【図3】コントロールユニットの制御ブロック図である。
【図4】自動変速機のディテントの構造を示す斜視図である。
【図5】コントロールユニットで実行されるセレクトレバーのアシスト制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】P→Rレンジ方向においてセレクトレバーに発生する操作反力を示す特性図である。
【図7】P→Rレンジ方向におけるセレクトレバーの目標操作反力を示す特性図である。
【図8】P→Rレンジ方向におけるFFアシスト力マップである。
【図9】コントロールユニットで実行される異常判断・処理の流れを示すフローチャート図である。
【図10】コントロールユニットで実行される異常判断・処理における操作速度による閾値の処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
1 セレクト機構部
2 セレクトレバー
3 センタクラスタ
4 セレクトノブ
5 支点軸
7 セレクトレバージョイント
8 コントロールケーブル
9 アシストアクチュエータ
10 入力レバー
11 入力レバージョイント
12 出力軸
13 出力レバー
14 ウォームギア
15 電動モータ
16 モータ出力軸
17 出力レバージョイント
18 コントロールケーブル
19 自動変速機
20 制御アーム
21 トルクセンサ
22 コントロールユニット
23 ワイヤハーネス
24 接触子
25 ポテンショメータ
26 回転シャフト
27 ディテントプレート
27a カム山
27b 谷部
28 バネ板
29 ディテントピン
30 パーキングポール
31 カム状プレート
32 パーキングギア
33 方向判別ブロック
34 目標テーブルブロック
35 加算器
36 FB制御部
37 乗算器
38 加算器
39 乗算器
40 積分器
41 加算器
42 FF制御部
43 FF補償テーブルブロック
44 乗算器
45 モータ駆動制御ブロック
50 異常判断ブロック
51 微分器
52 警報装置
221 主制御器

Claims (3)

  1. 自動変速機のレンジ位置切り換え装置と連結されたセレクトレバーへの入力操作力を検出する入力操作力検出手段と、
    前記セレクトレバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、
    前記セレクトレバーにドライバの操作力を補助するアシスト力を出力する電動のアシストアクチュエータと、
    検出された入力操作力と操作位置に基づいて、アシストアクチュエータに対しアシスト力を変化させる制御指令を出力するアシスト力制御手段と、
    を有する自動変速機のセレクトアシスト装置であって、
    レンジ位置を変更する際におけるアシスト力制御手段からアシストアクチュエータに出力されるアシスト電流値が予め定められた電流値の範囲からはずれると異常と判断する異常判断手段を設けたことを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  2. 請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記異常判断手段が、判断に用いるアシスト電流値の範囲をセレクトレバーの操作速度により変更することを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  3. 請求項1又は2記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記異常判断手段が、異常と判断すると、前記アシスト制御手段によるアシストアクチュエータの制御を停止させる制御停止指令を出力するようにしたことを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
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