JP2005016232A - 固化工法による液状化対策工法 - Google Patents

固化工法による液状化対策工法 Download PDF

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眞一郎 今村
Toshiyuki Hagiwara
敏行 萩原
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Abstract

【課題】少ない改良範囲で有効な液状化対策を行うことができ、鉄道・道路のような盛土構造物においても低コストで行うことができる固化工法による液状化対策工法を提供する。
【解決手段】鉄道・道路用の盛土構造物1における液状化対策工法は、盛土構造物1の法尻部から地盤G内に、盛土構造物1の略中央に向けて斜めに薬液を注入することによって軸方向に複数の改良体2,…を、その径が地盤Gの深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道・道路用の盛土構造物における固化工法による液状化対策工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
既設の盛土構造物における地震時の液状化対策としては、例えば、地盤を締め固めて密度を増大させる締め固め工法、薬液注入工法や浸透固化工法等の固化工法、グラベル柱やドレーンパイプ等を打設して地震時の過剰間隙水圧の上昇を抑制する排水工法(ドレーン工法)、鋼矢板壁などにより構造物を囲い込んだり、締め切るなどして液状化地盤の変形や流動を抑制する鋼矢板工法等が既に提案されている。
中でも、固化工法は、地盤内の液状化の発生を防止するとともに、既設の盛土構造物の変形が小さく対策工としての有効性は大きいとされている。このような固化工法は、具体的には、予め地盤を所定深度まで掘削して挿入孔を形成し、その挿入孔内に注入管を挿入し、注入管に薬液を注入して軸方向に間隔を隔てて複数の改良体を地盤内に造成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−80640号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、固化工法により造成された上記特許文献1に記載の改良体は、地盤に対して略垂直となるように、軸方向に複数造成されている。そのため、例えば、地盤上に既設の盛土構造物がある場合、盛土構造物の法尻部における地盤を高強度に改良することはできるが、盛土構造物の略中央における地盤の強度を改良することができず、地震時の液状化による盛土構造物の変形や沈下を確実に阻止することが難しい。
また、地盤に近い浅層部に造成された改良体と深層部に造成された改良体とはともに等しい大きさであり、例えば直径が約5m程度と大きい。そのため、上載圧の小さい浅層部に、深層部に造成する改良体と同様の大きな径の改良体を造成していることから、薬液注入による盛土構造物への影響が大きい。また、このように浅層部の改良体の径が大きいため、浅層部における改良密度が高く、改良体と未改良箇所との間で大きな不同沈下が生じ易い。
さらに、上述のように地盤内の改良範囲が広くなると、固化工法は材料費が高価であるため、コスト高も問題となる。特に、既設タンクや建築物とは異なり、鉄道や道路、河川堤防などのような既設の線状構造物においては、液状化対策を必要とする距離が非常に大きいので、対策費用の観点から実施が困難な状況とされている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、少ない改良範囲で有効な液状化対策を行うことができ、鉄道・道路のような盛土構造物においても低コストで行うことができる固化工法による液状化対策工法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、例えば、図1(a)、(b)に示すように、鉄道・道路用の盛土構造物1における固化工法による液状化対策工法であって、
前記盛土構造物の法尻部から地盤G内に、盛土構造物の略中央に向けて斜めに薬液を注入することによって、軸方向に複数の改良体2,…を、その径が前記地盤の深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成することを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、盛土構造物の法尻部から地盤内に、盛土構造物の略中央に向けて斜めに薬液を注入することによって、軸方向に複数の改良体を、その径が地盤の深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成するので、これら複数の改良体により、盛土構造物の法尻部の直下の地盤のみでなく、盛土構造物中央における地盤も固化して、地盤全域の液状化強度を大きくすることができる。また、地震時に近似的に盛土構造物と改良体とが一体として挙動することで盛土構造物の沈下、破壊や盛土直下地盤の側方流動を小さく抑えることが可能となる。
さらに、複数の改良体を、その径が地盤の深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成し、地盤の浅層部における改良体の径を小さくするので、薬液注入による盛土構造物の隆起など、盛土構造物への影響を小さく抑えることができる。また、このように地盤の表面に近い浅層部の改良密度が低いことから、改良体と未改良箇所との間に大きな不同沈下が生じることを阻止できる。以上のように、改良密度を深さによって変えることで、少ない改良範囲で有効な液状化対策を行うことができる。しかも、コストの高い注入固化工法を低コストで行うことが可能となり、鉄道・道路のような液状化対策を必要とする距離が長い盛土構造物や、河川堤防など線状構造物においても有効に適用することができる。
また、比較的小型かつ軽量の機械で施行することができ、敷地余裕のない既設盛土構造物にも適用することが可能となる。
【0008】
請求項2の発明は、例えば、図1(a)、(b)に示すように、請求項1に記載の固化工法による液状化対策工法において、
前記地盤内には、前記薬液を注入する注入管(例えば、注入外管3)が埋め殺しにされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、地盤内には薬液を注入する注入管が埋め殺しにされているので、注入管によって改良体の変形抑制効果を大きくすることができ、よって盛土構造物の沈下を抑制する効果が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明に係る固化工法による液状化対策工法が施された盛土構造物の正断面図、図1(b)は、盛土構造物の上断面図である(なお、図1(b)中、符号Aは盛土構造物の斜面を表している)。
本発明に係る固化工法による液状化対策工法について図1(a)、(b)に基づいて説明する。本発明の液状化対策工法は、鉄道・道路用の既設の線状盛土構造物に好適に施されるものであり、本実施の形態では二重管ダブルパッカー法により薬液を地盤内に注入する場合について説明する。
【0011】
まず、ボーリング機械によって、上述の盛土構造物1に対して、その法尻部から地盤G内に盛土構造物1の略中央に向けて斜めに削孔していき、盛土構造物1の幅方向の両側に、それぞれ長手方向に沿って複数の挿入孔を形成する。
【0012】
次いで、軸方向に所定間隔を介して注入孔を有する注入外管3を挿入孔内に設置する。そして、先端部に薬液噴出孔を有し、該薬液噴出孔の軸方向上下にパッカーが設けられたダブルパッカー付き注入内管を注入外管3内に挿入し、注入内管を軸方向に移動させることによって注入内管の噴出孔を注入外管の注入孔に一致させて、下端部の注入孔から順次上方の注入孔へと薬液を注入していく。
薬液を注入する際には、造成すべき複数の改良体2,…の径が、地盤Gの深層部から浅層部において漸次小さくなるように注入量や注入圧を調整し、時間差で薬液を注入していく。
【0013】
このようにして注入された薬液は、地盤G内に浸透し固化することによって、図中に示すように複数の改良体2,…が、正断面視略V字状に配置され、互いに隣接する改良体2,…の外周が接する接円式に造成されている。また、複数の改良体2,…は、その径が地盤Gの深層部から浅層部において漸次小さくなっている。
【0014】
ここで、盛土構造物1の幅を例えば約16mとした場合には、浅層部の改良体2の径は約1〜2m、深層部の改良体2の径は約3〜4mが好ましく、これら改良体2,…の径は盛土構造物1の幅や液状化層厚に応じて適宜変更するものとする。また、改良体2の形状は、図中に示すように断面楕円形状をなしていても良いし、図示しないが円形状であっても良い。
さらに、改良体2の強度も動的数値解析により盛土構造物1に応じて必要な支持力が得られるように、低強度〜高強度に適宜変更するものとする。
【0015】
薬液としては、例えば、恒久性や耐久性、浸透性に優れ、ゲルタイムの長い溶液型の超微粒子シリカ系薬液や活性シリカ系薬液、水ガラス系薬液、懸濁型のセメント系薬液等を使用することができ、用途に応じて適宜選択する。
【0016】
また、地盤Gの挿入孔に挿入された注入外管3は、地盤G内に埋め殺しの状態で施工を終了する。注入外管3は、例えば、鉄製のパイプ等が好適に使用できる。
【0017】
以上、本発明の実施の形態の固化工法による液状化対策工法によれば、盛土構造物1の法尻部から地盤G内に、盛土構造物1の略中央に向けて斜めに薬液を注入することによって、軸方向に複数の改良体2,…を、その径が地盤Gの深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成するので、これら複数の改良体2,…により、地盤G全域の液状化強度を大きくすることができる。また、地震時に盛土構造物1と改良体2,…とが一体として挙動することで盛土構造物1の沈下、破壊や盛土直下地盤の側方流動を小さく抑えることが可能となる。
さらに、複数の改良体2,…を、その径が地盤Gの深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成することから、浸透注入による地盤G上の盛土構造物1への影響を小さく抑えることができる。また、改良体2,…と未改良箇所との間に大きな不同沈下が生じることを阻止できる。以上のように、改良密度を深さによって変えることで、少ない改良範囲で有効な液状化対策を行うことができる。しかも、低コストで注入固化工法を行うことが可能となり、鉄道・道路のような液状化対策を必要とする距離が長い盛土構造物1や、河川堤防など線状構造物においても有効に適用することができる。
また、比較的小型かつ軽量の機械で施行することができ、敷地余裕のない既設盛土構造物1にも適用することが可能となる。
また、地盤G内には注入外管3が埋め殺しにされているので、注入管3によって改良体2の変形抑制効果を大きくすることができ、よって盛土構造物1の沈下を抑制する効果が得られる。
【0018】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態における複数の改良体2,…は、正断面視略V字状となるように設けられていたが、これに限らず、盛土構造物1の片側ずつに交互に設けても良い。
また、上記実施の形態における改良体2の数は、上述した場合に限らず、盛土構造物1の規模や液状化層厚によって、その数を増やしたり、より密に設けるようにしても良い。
さらに、上記実施の形態における改良体2は接円式により造成されていたが、例えば隣接する改良体2の外周がオーバーラップするラップ式により造成しても良い。
【0019】
さらに、本実施の形態では、二重管ダブルパッカー注入法により薬液を注入する場合について説明したが、その他に例えば、周知の単管ロッド注入法や二重管ストレーナ注入法等を適用しても良い。
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、複数の改良体により、地盤全域の液状化強度を大きくすることができる。また、地震時に盛土構造物と改良体とが一体として挙動することで盛土構造物の沈下、破壊や盛土直下地盤の側方流動を小さく抑えることが可能となる。
さらに、複数の改良体を、その径が地盤の深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成することから、浸透注入による地盤上の盛土構造物への影響を小さく抑えることができる。また、改良体と未改良箇所との間に大きな不同沈下が生じることを阻止できる。以上のように、改良密度を深さによって変えることで、少ない改良範囲で有効な液状化対策を行うことができる。しかも、低コストで注入固化工法を行うことが可能となり、鉄道・道路のような液状化対策を必要とする距離が長い盛土構造物や、河川堤防など線状構造物においても有効に適用することができる。
また、比較的小型かつ軽量の機械で施行することができ、敷地余裕のない既設盛土構造物にも適用することが可能となる。
【0020】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、注入管によって改良体の変形抑制効果を大きくすることができ、よって盛土構造物の沈下を抑制する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る固化工法による液状化対策工法が施された盛土構造物の正断面図、(b)は、盛土構造物の上断面図である。
【符号の説明】
1 盛土構造物
2 改良体
3 注入外管(注入管)
G 地盤

Claims (2)

  1. 鉄道・道路用の盛土構造物における固化工法による液状化対策工法であって、
    前記盛土構造物の法尻部から地盤内に、盛土構造物の略中央に向けて斜めに薬液を注入することによって、軸方向に複数の改良体を、その径が前記地盤の深層部から浅層部において漸次小さくなるように造成することを特徴とする固化工法による液状化対策工法。
  2. 前記地盤内には、前記薬液を注入する注入管が埋め殺しにされていることを特徴とする請求項1に記載の固化工法による液状化対策工法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008291437A (ja) * 2007-05-22 2008-12-04 Sanshin Corp 地盤改良工法、地盤改良工法に用いられる外管及び注入管
JP2020133327A (ja) * 2019-02-22 2020-08-31 株式会社竹中工務店 遮水壁
JP2021179148A (ja) * 2020-05-15 2021-11-18 鹿島建設株式会社 地盤改良工法

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