JP2005015397A - 1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法及びその固形物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶剤洗浄あるいは再結晶法の問題となる、溶剤回収工程を無くし、溶剤回収時に発生する廃棄物を削減し、高収率、高品質の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンに安定的に精製する精製方法、及び、該精製方法で得られる精製物を用いた、粉塵問題の解決にもつながる製品の製造方法を提供する。
【解決手段】ジクロルエタンとm−クレゾールとを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの反応生成物を不純物2.0%以下まで蒸留することを特徴とする、高純度1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法、及び、該精製方法で得られる精製物を用いた、粒状またはフレーク状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ジクロルエタンとm−クレゾールとを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの反応生成物を不純物2.0%以下まで蒸留することを特徴とする、高純度1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法、及び、該精製方法で得られる精製物を用いた、粒状またはフレーク状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は工業的に有利でしかも高度に精製された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを製造し、その形態を目的物の粒状物またはフレーク状物として得るための製造方法に関する。本発明に係わる1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、感熱記録材料の増感剤として広く一般に使用されている。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料の増感剤として広く使用されている1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法としては、従来より種々の方法が提案されているが、その精製工程においては、溶剤による洗浄、或るいは再結晶が一般的で、それ以外の精製方法は、見出されていない。
【0003】
例えば、パラクレゾールを溶媒として、ジトリルオキシエタンと反応させ1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンを製造し、トルエンによって再結晶する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、アリルオキシアルカノールのスルホン酸エステルと芳香族アルコール類を反応させ、ジ(アリールオキシ)アルカンを製造し、水中に排出し結晶を析出させ、メタノール−水で洗浄する方法がある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、ハロゲン化アルカンとフェノール類とを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し、ジ(アリールオキシ)アルカンを製造し、イソプロパノールによって再結晶する方法がある(例えば特許文献3参照)。
【0006】
しかし、溶剤洗浄あるいは再結晶法には溶剤を必要とするため、溶剤回収作業等工程が多くなり、また、廃溶剤の処理作業等が必要とされ、製造コストを大きくする要因になり、更に大気汚染等が問題になっていた。
【0007】
特許文献3には、その他の精製方法として、真空蒸留の記載があるが、具体的な記載や実施例は全くない。
【0008】
また、上記関連文献中には、蒸留精製後の製品形態についての記載はなかった。他の文献についても同様の記載はない。
【0009】
また、従来のジ(アリールオキシ)アルカンは、上記特許中において、その製造方法から、粉体として取り扱われており、取り扱いの際の粉塵問題など、解決すべき問題が残されていた。
【0010】
【特許文献1】
特公昭51−33542号公報
【特許文献2】
特公昭61−260036号公報
【特許文献3】
特公平6−21083号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、溶剤洗浄あるいは再結晶法の問題となる、溶剤回収工程を無くし、溶剤回収時に発生する廃棄物を削減し、高収率、高品質に精製された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを安定的に製造する方法を提供することにある。
【0012】
更に製品形態においても、扱いやすく、粉塵問題の解決にもつながる製品を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特許文献3に記載の方法より合成された反応粗製物1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの真空蒸留を詳しく検討した結果、特定の蒸留条件においては、再結晶法と同等の高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを得られることを見出した。
【0014】
すなわち本発明は、ジクロルエタンとm−クレゾールとを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの反応生成物を不純物2.0%以下まで蒸留することを特徴とする、高純度1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法である。
【0015】
また本発明は、上記溶融状で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを冷却することにより、フレーク状または造粒状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンとすることを特徴とする、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法である。
【0016】
好ましくは、蒸留段数2段以上、真空度5mmHg以下、還流比2以上で塔頂温度150℃以上175℃以下で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、不純物が2.0%以下のものであり、感熱記録紙の増感剤として再結晶法と同等の性能を持つことを確認した。更に精留条件を変えることにより、具体的には、蒸留段数4段以上、真空度3mmHg以下、還流比4以上で塔頂温度140℃以上175℃以下で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、不純物が1.0%以下であることを見出した。本蒸留精製法により、再結晶法時に必要であった、再結晶溶剤の回収工程をなくし、溶剤回収時に発生する等の廃棄物を著しく低減することが出来、収率においても、5%以上アップし、前述のように、純度においても、再結晶品と同等の製品を得ることに成功し、本発明に至った。
【0017】
また好ましくは、特定の条件において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを溶融させ、その溶融液を穴のあいたプレート中から噴出させ、冷却した空間を通し粒状物とすることが出来ることを見出した。また溶融液を冷却した回転するプレート上に付着させるか、回転するプレート上に流し固着させ、冷却することによりフレーク状物とすることが出来ることを見出した。本固形物製造方法により、粉体の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン取り扱いの際に発生していた粉塵問題をなくすことに成功し、本発明に至った。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の化学物質である1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、従来の技術記載したように、各種の方法があり、どの方法をとっても本発明の精製方法に適用出来る。
【0019】
しかし、特許文献3に記載されている、ジハロゲン化エタンとクレゾール類とを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを製造する方法が一番簡単で収率、廃棄物等の点で優れている。
【0020】
従って、本発明においては例えば、ジクロルエタンとm−クレゾールとを、水中で水酸化ナトリウムの存在下に加熱縮合せしめ1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを合成し、反応終了後生成した塩を濾去、もしくは反応混合物に水を追加して塩濃度を希釈し、水層を分離し、得られた油層を反応粗成物とする。
【0021】
この反応粗製物から、真空度25〜40mmHgの範囲で、塔頂温度140℃以下まで単蒸留により未反応の低沸点物を除いた後、更に理論段数2段以上、真空度5mmHg以下、更に還流比2以上の真空蒸留条件下、塔頂温度が150℃〜175℃に達する間の留分を分取する。この留分をガスクロマトグラフィーで測定すると、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの純度は98.0%以上の精製物が得られる。
【0022】
更に好ましくは、理論段数4段以上、真空度3mmHg以下、更に還流比4以上の蒸留条件において、塔頂温度140から175℃に達する間の留分を分取する。この留分の純度はおおよそ99.0%以上の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製物が得られる。
【0023】
上記蒸留条件を外れた条件、例えば、真空度10mmHg、還流比1で蒸留された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは不純物を3%以上含んでおり、再結晶法によって得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンに比べ融点が低く、感熱記録紙の増感剤としての性能を比較すると、初期値における地肌かぶれが目立ち、耐湿性及び耐熱性における地肌及び記録像(印字)の保存性においても、劣っていることを確認した。
【0024】
また、この蒸留条件では、釜温度が250℃程度以上になり、本発明の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンが分解を引き起こしはじめ望ましくない。
【0025】
ここで得られた低沸点物及び初留は、反応原料として再利用することも可能である。
【0026】
上記精製方法はバッチプロセスによっても、連続精製蒸留によっても実施可能であり、同様の高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物を得ることが出来る。
【0027】
上記方法で得られた高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物の融点は98.5℃であり、常温では固体状の化学物質である。従来の、有機溶剤を使用する溶剤洗浄あるいは再結晶法では1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物は微粉状で得られる。
【0028】
本願発明で得られた高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、融点以上に加熱された貯槽タンクで溶融液の状態で保管して、必要な時に取り出してよい。しかし、融点以上の高温で保管しておくのは、酸化される可能性があり、窒素シール等の必要がある。
【0029】
望ましくは、上記蒸留精製工程で取り出した留分を直接固形化工程に移行することが品質上好ましい。
【0030】
精製された高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液の造粒方法は、いろいろな方法があるが、溶融状態の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンに圧を掛けて液滴に噴出させる噴出型造粒方法や冷却したドラム上で固化させるフレーカー型方法で固形状態にさせることが出来る。
【0031】
噴出型造粒方法では1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液を200℃以下、好ましくは100℃〜150℃、更に好ましくは120℃〜140℃の溶融状態で窒素圧5.0kg/cm2 以下、好ましくは1.5〜3kg/cm2 をかけて穴のあいたディスクを通して噴射し、液滴となった溶融物を冷却した窒素または空気の空間中を落下させながら冷却し粒状物とするものである。
【0032】
得られる粒状物の粒径はディスクの穴径、窒素圧等で異なるが、平均粒径5mm以下、好ましくは1〜2mmに調整するのがよい。
【0033】
フレーカー型の場合1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液を200℃以下、好ましくは100℃〜150℃、更に好ましくは120℃〜140℃の溶融状態で直接フレーカーへ送りフレーク製品を得る。
【0034】
このフレーカーはベルトフレーカーやドラムフレーカー等の通常のフレーカーを用いることができる。一般的には、液状物をベルトやドラムの表面で固化させて、これをナイフエッジで掻き取ることによりフレーク化する。
【0035】
フレークの大きさ及び厚さは、使用するベルトやドラムの回転速度により異なるが、フレークの大きさは、5cm四方以下、好ましくは0.5〜1cm四方。フレークの厚さは、2cm以下、好ましくは0.1〜0.5cmに調整するのがよい。
【0036】
更に得られた粒状物及びフレークはそのまま一般的な粉砕機を通して粉砕し、使用することができる。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[合成例]
エチレンジクロリド95g(0.96モル)、m−クレゾール200g(1.85モル)及び水35mlを反応機に仕込み、窒素ガス雰囲気下撹拌しながら49%(重量基準)水酸化ナトリウム水溶液106gを20分間で滴下した。次いでゆるやかな還流下3時間加熱した後、49%水酸化ナトリウム水溶液77gを8時間で滴下した。その後還流冷却器を油水分離器付流出冷却器に切り換えて、凝縮液の水層は系外に除き、油層は反応機に戻して縮合反応を続けた。4時間後流出水量は95mlとなり、反応機内温度は120℃に達した。その後水185mlを添加し、100℃で撹拌、静置後水層を分離し、再び水35mlを加えて撹拌、静置、分液した。
【0039】
[実施例1]
得られた油層を真空度25mmHgの条件で単蒸留すると、塔頂温度が50℃になった時点で未反応の低沸点物が留出を始め、130℃まで低沸点物の留出除去を続けた。
【0040】
次に、理論段数5段、真空度2mmHg、還流比4の蒸留条件において、塔頂温度が140℃になるまで初留の除去を続け、初留9gを除き、同様の条件で、塔頂温度140℃から主留の捕集を始め、170℃になるまで留出させ、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン174.6gを得た。収率78.0%(対m−クレゾール)、純度99.6%(ガスクロマトグラフィーによる、以下同じ)、融点98.5℃。
【0041】
1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタンの分析
ガスクロマトグラフ装置:島津GC−14B(FID検出装置)
カラム:内径3mm×1.1mm ガラスカラム
充填剤:シリコーンOV−17 3%/ユニポートHP(60−80メッシュ)(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:70→280℃(12℃/min昇温)
【0042】
[実施例2]
更に得られた蒸留物を、圧力容器中で120℃に溶融し、窒素圧2.0kg/cm2 かけた状態に維持しながら口径1mmの穴のあいたディスクを通して噴射し、10℃の空気中で15m落下させ、平均粒径3mmの1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を得た。
【0043】
[実施例3]
また別に蒸留物を120℃に溶融した状態で、40℃以下に冷却したプレート上に薄膜を形成するように溶融物を流しフレーク化を行い、ナイフエッジで掻き取ったところ、大きさ1cm四方、厚さ1mmの1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンのフレークを得た。
【0044】
[比較例1]
比較のため、実施例1と同様の操作で、油層から単蒸留により未反応の低沸点物を除いた後、理論段数1段、真空度10mmHg、還流比1の蒸留条件において、塔頂温度140℃以下で初留を除き、塔頂温度140℃〜175℃で、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを留出させたところ、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン158.9gを得た。
【0045】
収率71%(対m−クレゾール)、純度97.0%、融点97℃。
【0046】
[比較例2]
比較のため、実施例1で得られた蒸留物を、圧力容器中で200℃に溶融し、窒素圧6.0kg/cm2 かけた状態に維持しながら口径1mmの穴のあいたディスクを通して噴射したところ、噴出速度が速く、粒状物の固化が遅くなり、粒状物の再凝集が起こり、粒径1cm以上のばらついた粒状物が得られた。
【0047】
[比較例3]
比較のため、実施例1で得られた蒸留物を、210℃に溶融した状態で、40℃以下に冷却したプレート上に薄膜を形成するように溶融物を流しフレーク化を行ったところ、溶融物の固化が遅く、フレークにならなかった。更に溶融物の昇華も見られた。
【0048】
[比較例4]
合成例により得られた油層にイソプロパノール580mlを加えて85℃〜90℃で溶解し、熱濾過、冷却、晶析、濾過、イソプロパノール洗浄、乾燥して、無色板状結晶の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン163gを得た。
【0049】
収率72.8%(対m−クレゾール)、純度99.6%、融点98.5℃。
【0050】
以上の実施例及び比較例から明らかなように本発明を用いれば、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを再結晶法と同等の品質で、高収率に得ることが出来る。またその蒸留物を扱いやすい一定の大きさの固形物とすることも出来る。
【0051】
引き続き、実施例2及び3において得られた本発明の粒状物またはフレークを増感剤とする感熱記録体の製造について試験した。
【0052】
[実施例4](増感剤分散体の製造)
(1)実施例2で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を、粉砕機(日本精機製作所社製、ZM1型)により金網(金網穴:一辺1.5mm)を用いて予備粉砕した。
【0053】
次に篩(IIDASEISAKUSHO社製、TESTING SIEVE(目開0.85mm))により篩分処理し、パスした粉状のサンプルを次の粉砕に用いた。
【0054】
(2)粉砕は、三段羽根型粉砕機(イガラシ機械製造社製、TSG4H型)を用い、以下の条件で行った。
【0055】
300ml容量のジャケット付きポットに、篩い分けした粉状のサンプル33.4g、5%メトローズ(信越化学工業社製、分散剤、60SH−03)27.5g、消泡剤(サンノプコ社製、ノプコ1407−K、5%水溶液)0.2g、ペレックス(KAO社製、分散剤、ペレックスTR)0.4g及び分散用水22.0gを仕込み、スパチュラで上記粉状組成物を分散用水によく浸透させた後、1時間放置した。
【0056】
上記粉砕機に粉砕媒体ビーズ(アズワン社製ビーズ、品番BZ−1、ビーズ径1mm)200gを仕込み、三段羽根の回転数1000rpmにて、ポットジャケットに20〜25℃の水を循環させながら、粉砕を開始した。
【0057】
粉砕工程中に随時サンプル組成物を採取し、粒子径を、粒径測定装置(島津製作所社製、島津SALD−2000J)により、経時的に測定し、平均粒子径が1μmになるまで実行し、目的物の増感剤分散体を得た。
【0058】
[実施例5]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を実施例3で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンのフレークに変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0059】
[比較例5]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を比較例4で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの再結晶品に変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0060】
[比較例6]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を比較例1で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの蒸留品に変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0061】
[実施例6](感熱記録体の製造)
<下塗り層用塗布液の調整>
焼成カオリン(EC社製、商品名:アンシレックス)80g、炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名:ユニバー70)20g、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−117、5%水溶液)140g、スチレン−ブタジエン系ラテックス(48%エマルジョン)15g、ポリアクリル酸ナトリウム(20%水溶液)2g、及び水30gを混合撹拌して下塗り層用塗布液を得た。
【0062】
<感熱記録層用塗布液の調整>
(顕色剤分散液の調整)
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホン30gを濃度5%のメチルセルロース水溶液70g中で、サンドグラインダーを用いて粉砕し、平均粒子径1.0μmの顕色剤の水性分散液を調整した。
【0063】
(染料分散液の調整)
3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30gを、濃度5%のポリビニルアルコール(PVA−117)水溶液70g中で、サンドグラインダーを用いて粉砕し、平均粒子径1.0μmの染料の水性分散液を調整した。
【0064】
(増感剤分散液の調整)
実施例4で得られた増感剤分散体40gに、水13.3gを添加し、30%の水性分散液を調整した。
【0065】
(顔料分散液の調整)
炭酸カルシウム(ユニバー70)を30g、水69g及び40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液1.0gを、ホモジナイザー(特殊機化社製、TKホモディスパーL型)で回転数5000rpmにて5分間撹拌し、顔料分散液を調整した。
【0066】
(感熱記録層用塗布液の調整)
以上のようにして調整した、顕色剤分散液7.2g、染料分散液3.6g、増感剤分散液7.2g、顔料分散液7.2g、滑剤分散液としてのステアリン酸亜鉛30%エマルジョン(中京油脂社製、商品名:ハイドリンZ−7)1.8g、及び更にポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−117、5%水溶液)21.6gを混合して感熱記録層用塗布液を得た。
【0067】
<感熱記録体の作製>
64g/m2 の上質の中性紙の片面に、下塗り層用塗布液及び感熱記録層用塗布液を、乾燥後の塗布量がそれぞれ10g/m2 、3g/m2 となるように、順次塗布・乾燥して感熱記録体を得た。なお、下塗り層及び感熱記録層を形成した後、スーパーカレンダー掛けして平滑化処理した。
【0068】
[実施例7]
実施例6において、増感剤分散体を実施例5で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0069】
[比較例7]
実施例6において、増感剤分散体を比較例5で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0070】
[比較例8]
実施例6において、増感剤分散体を比較例6で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0071】
<性能比較試験>
実施例6及び7、比較例7及び8で得られた感熱記録紙を感熱紙発色試験装置(大倉電気社製、TH−PMD)により、感熱ヘッド(KYOSERA社製、TYPE KJT−256−8MGFI−ASH)1653Ωを用い、印字電圧24V、印字周期(加熱時間)0.7msec、1.4msecで印字テストを行い、以下の項目につき、性能試験を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(1)地肌及び印字濃度
マクベス濃度計(マクベス社製、RD−948型)を用いて測定した。
【0073】
(2)耐湿性試験
印字した後の当該感熱記録紙を、温度45℃、湿度85%の雰囲気下に24時間放置した後の地肌のかぶり及び印字濃度をマクベス濃度計で測定した。なお、「地肌」とは、記録紙の印字してない部分の白さを云う。
【0074】
(3)耐熱性試験
温度60℃で24時間放置した後の地肌のかぶり及び印字濃度を上記と同様にマクベス濃度計で測定した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1より、本発明の感熱記録体は、実施例6、7と比較例7から明らかなように、その初期値における地肌かぶれ及び発色性において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの再結晶品と何ら遜色が無く、耐湿性及び耐熱性における、地肌及び記録像(印字)の保存性においても何ら遜色は無い。また、実施例6、7と比較例8から明らかなように、本発明を外れた蒸留条件で蒸留された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、感熱記録紙体としての性能において、その初期値における地肌かぶれが目立ち、耐湿性及び耐熱性における、地肌及び記録像(印字)の保存性において、劣っていることがわかる。すなわち、本発明の蒸留法によって得られ、固形物とされた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、従来の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの有する増感剤としての優れた特性を何ら損なうことなく、有していることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
本発明の方法に従えば、感熱記録材料の増感剤として有用な1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製物を少ない工程数で、且つ高収率、高品質に工業的有利に得ることが出来る。また、製品形態においても、粒状物またはフレーク状物であるため、扱いやすく、粉塵のない製品を得ることが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は工業的に有利でしかも高度に精製された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを製造し、その形態を目的物の粒状物またはフレーク状物として得るための製造方法に関する。本発明に係わる1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、感熱記録材料の増感剤として広く一般に使用されている。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料の増感剤として広く使用されている1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法としては、従来より種々の方法が提案されているが、その精製工程においては、溶剤による洗浄、或るいは再結晶が一般的で、それ以外の精製方法は、見出されていない。
【0003】
例えば、パラクレゾールを溶媒として、ジトリルオキシエタンと反応させ1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンを製造し、トルエンによって再結晶する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、アリルオキシアルカノールのスルホン酸エステルと芳香族アルコール類を反応させ、ジ(アリールオキシ)アルカンを製造し、水中に排出し結晶を析出させ、メタノール−水で洗浄する方法がある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、ハロゲン化アルカンとフェノール類とを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し、ジ(アリールオキシ)アルカンを製造し、イソプロパノールによって再結晶する方法がある(例えば特許文献3参照)。
【0006】
しかし、溶剤洗浄あるいは再結晶法には溶剤を必要とするため、溶剤回収作業等工程が多くなり、また、廃溶剤の処理作業等が必要とされ、製造コストを大きくする要因になり、更に大気汚染等が問題になっていた。
【0007】
特許文献3には、その他の精製方法として、真空蒸留の記載があるが、具体的な記載や実施例は全くない。
【0008】
また、上記関連文献中には、蒸留精製後の製品形態についての記載はなかった。他の文献についても同様の記載はない。
【0009】
また、従来のジ(アリールオキシ)アルカンは、上記特許中において、その製造方法から、粉体として取り扱われており、取り扱いの際の粉塵問題など、解決すべき問題が残されていた。
【0010】
【特許文献1】
特公昭51−33542号公報
【特許文献2】
特公昭61−260036号公報
【特許文献3】
特公平6−21083号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、溶剤洗浄あるいは再結晶法の問題となる、溶剤回収工程を無くし、溶剤回収時に発生する廃棄物を削減し、高収率、高品質に精製された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを安定的に製造する方法を提供することにある。
【0012】
更に製品形態においても、扱いやすく、粉塵問題の解決にもつながる製品を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特許文献3に記載の方法より合成された反応粗製物1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの真空蒸留を詳しく検討した結果、特定の蒸留条件においては、再結晶法と同等の高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを得られることを見出した。
【0014】
すなわち本発明は、ジクロルエタンとm−クレゾールとを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの反応生成物を不純物2.0%以下まで蒸留することを特徴とする、高純度1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法である。
【0015】
また本発明は、上記溶融状で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを冷却することにより、フレーク状または造粒状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンとすることを特徴とする、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法である。
【0016】
好ましくは、蒸留段数2段以上、真空度5mmHg以下、還流比2以上で塔頂温度150℃以上175℃以下で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、不純物が2.0%以下のものであり、感熱記録紙の増感剤として再結晶法と同等の性能を持つことを確認した。更に精留条件を変えることにより、具体的には、蒸留段数4段以上、真空度3mmHg以下、還流比4以上で塔頂温度140℃以上175℃以下で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、不純物が1.0%以下であることを見出した。本蒸留精製法により、再結晶法時に必要であった、再結晶溶剤の回収工程をなくし、溶剤回収時に発生する等の廃棄物を著しく低減することが出来、収率においても、5%以上アップし、前述のように、純度においても、再結晶品と同等の製品を得ることに成功し、本発明に至った。
【0017】
また好ましくは、特定の条件において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを溶融させ、その溶融液を穴のあいたプレート中から噴出させ、冷却した空間を通し粒状物とすることが出来ることを見出した。また溶融液を冷却した回転するプレート上に付着させるか、回転するプレート上に流し固着させ、冷却することによりフレーク状物とすることが出来ることを見出した。本固形物製造方法により、粉体の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン取り扱いの際に発生していた粉塵問題をなくすことに成功し、本発明に至った。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の化学物質である1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、従来の技術記載したように、各種の方法があり、どの方法をとっても本発明の精製方法に適用出来る。
【0019】
しかし、特許文献3に記載されている、ジハロゲン化エタンとクレゾール類とを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを製造する方法が一番簡単で収率、廃棄物等の点で優れている。
【0020】
従って、本発明においては例えば、ジクロルエタンとm−クレゾールとを、水中で水酸化ナトリウムの存在下に加熱縮合せしめ1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを合成し、反応終了後生成した塩を濾去、もしくは反応混合物に水を追加して塩濃度を希釈し、水層を分離し、得られた油層を反応粗成物とする。
【0021】
この反応粗製物から、真空度25〜40mmHgの範囲で、塔頂温度140℃以下まで単蒸留により未反応の低沸点物を除いた後、更に理論段数2段以上、真空度5mmHg以下、更に還流比2以上の真空蒸留条件下、塔頂温度が150℃〜175℃に達する間の留分を分取する。この留分をガスクロマトグラフィーで測定すると、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの純度は98.0%以上の精製物が得られる。
【0022】
更に好ましくは、理論段数4段以上、真空度3mmHg以下、更に還流比4以上の蒸留条件において、塔頂温度140から175℃に達する間の留分を分取する。この留分の純度はおおよそ99.0%以上の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製物が得られる。
【0023】
上記蒸留条件を外れた条件、例えば、真空度10mmHg、還流比1で蒸留された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは不純物を3%以上含んでおり、再結晶法によって得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンに比べ融点が低く、感熱記録紙の増感剤としての性能を比較すると、初期値における地肌かぶれが目立ち、耐湿性及び耐熱性における地肌及び記録像(印字)の保存性においても、劣っていることを確認した。
【0024】
また、この蒸留条件では、釜温度が250℃程度以上になり、本発明の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンが分解を引き起こしはじめ望ましくない。
【0025】
ここで得られた低沸点物及び初留は、反応原料として再利用することも可能である。
【0026】
上記精製方法はバッチプロセスによっても、連続精製蒸留によっても実施可能であり、同様の高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物を得ることが出来る。
【0027】
上記方法で得られた高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物の融点は98.5℃であり、常温では固体状の化学物質である。従来の、有機溶剤を使用する溶剤洗浄あるいは再結晶法では1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン精製物は微粉状で得られる。
【0028】
本願発明で得られた高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、融点以上に加熱された貯槽タンクで溶融液の状態で保管して、必要な時に取り出してよい。しかし、融点以上の高温で保管しておくのは、酸化される可能性があり、窒素シール等の必要がある。
【0029】
望ましくは、上記蒸留精製工程で取り出した留分を直接固形化工程に移行することが品質上好ましい。
【0030】
精製された高純度の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液の造粒方法は、いろいろな方法があるが、溶融状態の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンに圧を掛けて液滴に噴出させる噴出型造粒方法や冷却したドラム上で固化させるフレーカー型方法で固形状態にさせることが出来る。
【0031】
噴出型造粒方法では1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液を200℃以下、好ましくは100℃〜150℃、更に好ましくは120℃〜140℃の溶融状態で窒素圧5.0kg/cm2 以下、好ましくは1.5〜3kg/cm2 をかけて穴のあいたディスクを通して噴射し、液滴となった溶融物を冷却した窒素または空気の空間中を落下させながら冷却し粒状物とするものである。
【0032】
得られる粒状物の粒径はディスクの穴径、窒素圧等で異なるが、平均粒径5mm以下、好ましくは1〜2mmに調整するのがよい。
【0033】
フレーカー型の場合1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの溶融液を200℃以下、好ましくは100℃〜150℃、更に好ましくは120℃〜140℃の溶融状態で直接フレーカーへ送りフレーク製品を得る。
【0034】
このフレーカーはベルトフレーカーやドラムフレーカー等の通常のフレーカーを用いることができる。一般的には、液状物をベルトやドラムの表面で固化させて、これをナイフエッジで掻き取ることによりフレーク化する。
【0035】
フレークの大きさ及び厚さは、使用するベルトやドラムの回転速度により異なるが、フレークの大きさは、5cm四方以下、好ましくは0.5〜1cm四方。フレークの厚さは、2cm以下、好ましくは0.1〜0.5cmに調整するのがよい。
【0036】
更に得られた粒状物及びフレークはそのまま一般的な粉砕機を通して粉砕し、使用することができる。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[合成例]
エチレンジクロリド95g(0.96モル)、m−クレゾール200g(1.85モル)及び水35mlを反応機に仕込み、窒素ガス雰囲気下撹拌しながら49%(重量基準)水酸化ナトリウム水溶液106gを20分間で滴下した。次いでゆるやかな還流下3時間加熱した後、49%水酸化ナトリウム水溶液77gを8時間で滴下した。その後還流冷却器を油水分離器付流出冷却器に切り換えて、凝縮液の水層は系外に除き、油層は反応機に戻して縮合反応を続けた。4時間後流出水量は95mlとなり、反応機内温度は120℃に達した。その後水185mlを添加し、100℃で撹拌、静置後水層を分離し、再び水35mlを加えて撹拌、静置、分液した。
【0039】
[実施例1]
得られた油層を真空度25mmHgの条件で単蒸留すると、塔頂温度が50℃になった時点で未反応の低沸点物が留出を始め、130℃まで低沸点物の留出除去を続けた。
【0040】
次に、理論段数5段、真空度2mmHg、還流比4の蒸留条件において、塔頂温度が140℃になるまで初留の除去を続け、初留9gを除き、同様の条件で、塔頂温度140℃から主留の捕集を始め、170℃になるまで留出させ、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン174.6gを得た。収率78.0%(対m−クレゾール)、純度99.6%(ガスクロマトグラフィーによる、以下同じ)、融点98.5℃。
【0041】
1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタンの分析
ガスクロマトグラフ装置:島津GC−14B(FID検出装置)
カラム:内径3mm×1.1mm ガラスカラム
充填剤:シリコーンOV−17 3%/ユニポートHP(60−80メッシュ)(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:70→280℃(12℃/min昇温)
【0042】
[実施例2]
更に得られた蒸留物を、圧力容器中で120℃に溶融し、窒素圧2.0kg/cm2 かけた状態に維持しながら口径1mmの穴のあいたディスクを通して噴射し、10℃の空気中で15m落下させ、平均粒径3mmの1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を得た。
【0043】
[実施例3]
また別に蒸留物を120℃に溶融した状態で、40℃以下に冷却したプレート上に薄膜を形成するように溶融物を流しフレーク化を行い、ナイフエッジで掻き取ったところ、大きさ1cm四方、厚さ1mmの1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンのフレークを得た。
【0044】
[比較例1]
比較のため、実施例1と同様の操作で、油層から単蒸留により未反応の低沸点物を除いた後、理論段数1段、真空度10mmHg、還流比1の蒸留条件において、塔頂温度140℃以下で初留を除き、塔頂温度140℃〜175℃で、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを留出させたところ、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン158.9gを得た。
【0045】
収率71%(対m−クレゾール)、純度97.0%、融点97℃。
【0046】
[比較例2]
比較のため、実施例1で得られた蒸留物を、圧力容器中で200℃に溶融し、窒素圧6.0kg/cm2 かけた状態に維持しながら口径1mmの穴のあいたディスクを通して噴射したところ、噴出速度が速く、粒状物の固化が遅くなり、粒状物の再凝集が起こり、粒径1cm以上のばらついた粒状物が得られた。
【0047】
[比較例3]
比較のため、実施例1で得られた蒸留物を、210℃に溶融した状態で、40℃以下に冷却したプレート上に薄膜を形成するように溶融物を流しフレーク化を行ったところ、溶融物の固化が遅く、フレークにならなかった。更に溶融物の昇華も見られた。
【0048】
[比較例4]
合成例により得られた油層にイソプロパノール580mlを加えて85℃〜90℃で溶解し、熱濾過、冷却、晶析、濾過、イソプロパノール洗浄、乾燥して、無色板状結晶の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン163gを得た。
【0049】
収率72.8%(対m−クレゾール)、純度99.6%、融点98.5℃。
【0050】
以上の実施例及び比較例から明らかなように本発明を用いれば、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを再結晶法と同等の品質で、高収率に得ることが出来る。またその蒸留物を扱いやすい一定の大きさの固形物とすることも出来る。
【0051】
引き続き、実施例2及び3において得られた本発明の粒状物またはフレークを増感剤とする感熱記録体の製造について試験した。
【0052】
[実施例4](増感剤分散体の製造)
(1)実施例2で得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を、粉砕機(日本精機製作所社製、ZM1型)により金網(金網穴:一辺1.5mm)を用いて予備粉砕した。
【0053】
次に篩(IIDASEISAKUSHO社製、TESTING SIEVE(目開0.85mm))により篩分処理し、パスした粉状のサンプルを次の粉砕に用いた。
【0054】
(2)粉砕は、三段羽根型粉砕機(イガラシ機械製造社製、TSG4H型)を用い、以下の条件で行った。
【0055】
300ml容量のジャケット付きポットに、篩い分けした粉状のサンプル33.4g、5%メトローズ(信越化学工業社製、分散剤、60SH−03)27.5g、消泡剤(サンノプコ社製、ノプコ1407−K、5%水溶液)0.2g、ペレックス(KAO社製、分散剤、ペレックスTR)0.4g及び分散用水22.0gを仕込み、スパチュラで上記粉状組成物を分散用水によく浸透させた後、1時間放置した。
【0056】
上記粉砕機に粉砕媒体ビーズ(アズワン社製ビーズ、品番BZ−1、ビーズ径1mm)200gを仕込み、三段羽根の回転数1000rpmにて、ポットジャケットに20〜25℃の水を循環させながら、粉砕を開始した。
【0057】
粉砕工程中に随時サンプル組成物を採取し、粒子径を、粒径測定装置(島津製作所社製、島津SALD−2000J)により、経時的に測定し、平均粒子径が1μmになるまで実行し、目的物の増感剤分散体を得た。
【0058】
[実施例5]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を実施例3で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンのフレークに変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0059】
[比較例5]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を比較例4で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの再結晶品に変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0060】
[比較例6]
実施例4における、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの粒状物を比較例1で得られた、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの蒸留品に変更したことを除いては、実施例4と同様の実験を行い、目的物の増感剤分散体を得た。
【0061】
[実施例6](感熱記録体の製造)
<下塗り層用塗布液の調整>
焼成カオリン(EC社製、商品名:アンシレックス)80g、炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名:ユニバー70)20g、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−117、5%水溶液)140g、スチレン−ブタジエン系ラテックス(48%エマルジョン)15g、ポリアクリル酸ナトリウム(20%水溶液)2g、及び水30gを混合撹拌して下塗り層用塗布液を得た。
【0062】
<感熱記録層用塗布液の調整>
(顕色剤分散液の調整)
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシ−ジフェニルスルホン30gを濃度5%のメチルセルロース水溶液70g中で、サンドグラインダーを用いて粉砕し、平均粒子径1.0μmの顕色剤の水性分散液を調整した。
【0063】
(染料分散液の調整)
3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30gを、濃度5%のポリビニルアルコール(PVA−117)水溶液70g中で、サンドグラインダーを用いて粉砕し、平均粒子径1.0μmの染料の水性分散液を調整した。
【0064】
(増感剤分散液の調整)
実施例4で得られた増感剤分散体40gに、水13.3gを添加し、30%の水性分散液を調整した。
【0065】
(顔料分散液の調整)
炭酸カルシウム(ユニバー70)を30g、水69g及び40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液1.0gを、ホモジナイザー(特殊機化社製、TKホモディスパーL型)で回転数5000rpmにて5分間撹拌し、顔料分散液を調整した。
【0066】
(感熱記録層用塗布液の調整)
以上のようにして調整した、顕色剤分散液7.2g、染料分散液3.6g、増感剤分散液7.2g、顔料分散液7.2g、滑剤分散液としてのステアリン酸亜鉛30%エマルジョン(中京油脂社製、商品名:ハイドリンZ−7)1.8g、及び更にポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−117、5%水溶液)21.6gを混合して感熱記録層用塗布液を得た。
【0067】
<感熱記録体の作製>
64g/m2 の上質の中性紙の片面に、下塗り層用塗布液及び感熱記録層用塗布液を、乾燥後の塗布量がそれぞれ10g/m2 、3g/m2 となるように、順次塗布・乾燥して感熱記録体を得た。なお、下塗り層及び感熱記録層を形成した後、スーパーカレンダー掛けして平滑化処理した。
【0068】
[実施例7]
実施例6において、増感剤分散体を実施例5で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0069】
[比較例7]
実施例6において、増感剤分散体を比較例5で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0070】
[比較例8]
実施例6において、増感剤分散体を比較例6で得られたものに変更した他は、実施例6と同様の操作を行い、感熱記録体を作製した。
【0071】
<性能比較試験>
実施例6及び7、比較例7及び8で得られた感熱記録紙を感熱紙発色試験装置(大倉電気社製、TH−PMD)により、感熱ヘッド(KYOSERA社製、TYPE KJT−256−8MGFI−ASH)1653Ωを用い、印字電圧24V、印字周期(加熱時間)0.7msec、1.4msecで印字テストを行い、以下の項目につき、性能試験を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(1)地肌及び印字濃度
マクベス濃度計(マクベス社製、RD−948型)を用いて測定した。
【0073】
(2)耐湿性試験
印字した後の当該感熱記録紙を、温度45℃、湿度85%の雰囲気下に24時間放置した後の地肌のかぶり及び印字濃度をマクベス濃度計で測定した。なお、「地肌」とは、記録紙の印字してない部分の白さを云う。
【0074】
(3)耐熱性試験
温度60℃で24時間放置した後の地肌のかぶり及び印字濃度を上記と同様にマクベス濃度計で測定した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1より、本発明の感熱記録体は、実施例6、7と比較例7から明らかなように、その初期値における地肌かぶれ及び発色性において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの再結晶品と何ら遜色が無く、耐湿性及び耐熱性における、地肌及び記録像(印字)の保存性においても何ら遜色は無い。また、実施例6、7と比較例8から明らかなように、本発明を外れた蒸留条件で蒸留された1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、感熱記録紙体としての性能において、その初期値における地肌かぶれが目立ち、耐湿性及び耐熱性における、地肌及び記録像(印字)の保存性において、劣っていることがわかる。すなわち、本発明の蒸留法によって得られ、固形物とされた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、従来の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの有する増感剤としての優れた特性を何ら損なうことなく、有していることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
本発明の方法に従えば、感熱記録材料の増感剤として有用な1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製物を少ない工程数で、且つ高収率、高品質に工業的有利に得ることが出来る。また、製品形態においても、粒状物またはフレーク状物であるため、扱いやすく、粉塵のない製品を得ることが出来る。
Claims (6)
- ジクロルエタンとm−クレゾールとを水性媒体中でアルカリの存在下に加熱縮合し得られた1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの反応生成物を不純物2.0%以下まで蒸留することを特徴とする、高純度1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法。
- 蒸留の条件が蒸留段数2段以上、真空度5mmHg以下、還流比2以上で塔頂温度150℃以上175℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法。
- 蒸留の条件が蒸留段数4段以上、真空度3mmHg以下、還流比4以上で塔頂温度140℃以上175℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの精製方法。
- 請求項1、2または3記載の精製方法で得られる溶融状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを冷却することにより、平均粒径5mm以下の粒状または大きさ5cm四方以下、厚さ2cm以下のフレーク状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンとすることを特徴とする、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法。
- 請求項1、2または3記載の精製方法で得られる溶融状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを、200℃以下の溶融状態で5.0kg/cm2 以下の窒素雰囲気下で穴のあいたディスクを通して噴射し、液滴となった溶融物を冷却した窒素または空気の空間中を落下させながら冷却し粒状物とすることを特徴とする、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法。
- 請求項1、2または3記載の精製方法で得られる溶融状の1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンを、200℃以下の溶融状態でフレーカーにより、フレーク状物とすることを特徴とする、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンの製造方法。
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CN103183588A (zh) * | 2013-03-15 | 2013-07-03 | 张家港威胜生物医药有限公司 | 一种藜芦醚的制备方法 |
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2003
- 2003-06-26 JP JP2003182891A patent/JP2005015397A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103183588A (zh) * | 2013-03-15 | 2013-07-03 | 张家港威胜生物医药有限公司 | 一种藜芦醚的制备方法 |
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