JP2005013005A - ダッタンそば粉の製造方法、ダッタンそばの製造方法及びそば粉加工食品 - Google Patents

ダッタンそば粉の製造方法、ダッタンそばの製造方法及びそば粉加工食品 Download PDF

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Abstract

【課題】ダッタン種そば原料からルチン分解酵素をよりよく失活させることができる、タッダンそば粉の製造方法を提供する。さらに、ルチン分解酵素がよりよく失活しているダッタンそばの製造方法、及びダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品を提供する。
【解決手段】ダッタン種そば原料に加圧水蒸気処理を施す工程を含むことを特徴とする、ダッタンそば粉の製造方法;ダッタン種そば種子に加圧水蒸気処理を施し、その種子から製粉することを特徴とするダッタンそば粉の製造方法;加圧水蒸気処理を施すダッタン種そば種子が玄そば又は抜きそば実である、上記ダッタンそば粉の製造方法;ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施すことを特徴とするダッタンそば粉の製造方法;上記方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製麺することを特徴とするダッタンそばの製造方法;上記方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダッタンそば粉の製造方法、ダッタンそばの製造方法及びダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
そば種子には、タンパク質、脂質、炭水化物、灰分、ビタミン類などの栄養成分に加えて、穀物の中では特異的な成分であるルチンが含まれている。
ところで、世界で食用として利用されているそばとして、普通種そばとダッタン種そばの二種類が知られている。ダッタン種のそば種子から製粉したダッタンそば粉には、普通種のそば種子から製粉したそば粉と比較して、およそ100倍ほどのルチンが含まれていることが報告されている。
ルチンは、ビタミンの1種で、毛細血管強化作用、血圧降下作用、膵臓機能の活性化作用などを持ち、高血圧や糖尿病などの疾病に有効であるといわれている。よって、このルチンの含有量が普通種のそばに比べて非常に高いダッタン種のそばが注目されてきている。
【0003】
ダッタン種そばからのそば粉が普通種そばからのそば粉と比較して多量のルチンを含む反面、ルチンを分解してしまうルチン分解酵素の活性も強く、普通種そばからのそば粉の約600倍存在するともいわれている。従って、通常の製麺工程で製造したダッタンそば麺にルチンがほとんど含まれていない、といった現象も見出されている。より詳しくは、多量のルチンを含んでいるダッタンそば粉においては、該そば粉への加水と同時に急速にルチンの分解が起こり、多量のケルセチンの生成が起こる。
ルチンのアグリコンであるケルセチンは、最も多く植物に分布するフラボノイドで、苦そばとして知られるダッタンそばの苦味の主成分としても明らかにされている。
このようなルチンの分解現象は、ダッタンそば粉を利用したダッタンそばを始めとする加工食品において、栄養的価値のあるルチンの含有量及び食味という観点から大きな問題である。
【0004】
そこで、ルチン含有量の高いダッタンそば粉を得るために、ダッタン種そば原料に対してルチン分解酵素を失活させる技術が提案されてきている。例えば、ダッタン種そば原料(ダッタン種そば種子又はそば粉)に熱処理を施して、そばに含まれるルチン分解酵素を失活させて、そば粉を得ることが提案されている(特許文献1参照。)。また、ダッタン種のそば種子に水蒸気を用いた湿熱処理を施し、該そば種子中に含まれているルチン分解酵素を失活させた後、そば種子を製粉する、ダッタンそば粉の製造方法が提案され、ここでは大気圧下で湿熱処理を施すことが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、近年、ダッタンそばへの注目が集まる中、ダッタン種そば原料からルチン分解酵素をよりよく失活させる手段が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特公平5−63133号公報
【特許文献2】
特許第2766259号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ダッタン種そば原料からルチン分解酵素をよりよく失活させることができる、タッダンそば粉の製造方法を提供することである。本発明はさらに、ルチン分解酵素がよりよく失活しているダッタンそばの製造方法、及びダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ダッタン種そば原料(ダッタン種そば種子及びそば粉を包含する。)に加圧水蒸気処理を施すことによって、ルチン分解酵素をよりよく失活できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、ダッタン種そば原料に加圧水蒸気処理を施す工程を含むことを特徴とする、ダッタンそば粉の製造方法である。本発明は具体的に、ダッタン種そば種子に加圧水蒸気処理を施し、その種子から製粉することを特徴とするダッタンそば粉の製造方法である。ここで、加圧水蒸気処理を施すダッタン種そば種子は、いわゆる玄そばの状態であっても、抜きそば実の状態であってもよい。本発明はまた、ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施すことを特徴とするダッタンそば粉の製造方法である。
本発明はさらに、上記方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製麺することを特徴とするダッタンそばの製造方法に向けられている。本発明はさらにまた、上記の方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品に向けられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、ダッタンそば粉の原料となるダッタン種(Fagopyrum tataricum)そば種子は、その産地などが特に制限されるものではなく、シベリア、中国東北区および南部、モンゴル、インド、ネパール、ブータン、韓国、北朝鮮、カナダ、アメリカ北部などの各地で栽培されているものを包含する。
本発明の一実施態様として、ダッタン種そば種子に加圧水蒸気処理を施し、その種子から製粉することを特徴とするダッタンそば粉の製造方法がある。
そば粉は一般的に、玄そばと称されるそば殻のついたそば粒を精選し、その玄そばからそば殻などの非胚乳部分を分離除去して胚乳部分から主としてなるそば実(抜きそば実と称する。)を得て、該抜きそば実を粉砕してそば粉を製造する製粉工程を経て、製造される。
本発明の上記態様において、加圧水蒸気処理を施すダッタン種そば種子は、玄そばであっても、抜きそば実であってもよい。玄そば及び抜きそば実は従来の方法で得たものでよい。
【0009】
本発明で採用する加圧水蒸気処理の条件は、加圧条件は0.01〜0.30MPaが適当であり、好ましくは0.03〜0.18MPaである。
また、加熱温度は101〜150℃が適当であり、好ましくは115〜135℃である。
処理時間は一般に1秒〜40秒、好ましくは8秒〜15秒である。
上記の加圧水蒸気処理を実施するための装置として、例えば流動型蒸気殺菌装置があり、該装置にダッタン種そば種子を供給して加圧水蒸気処理を実施することができる。そのような流動型蒸気殺菌装置の具体例として、カワサキ機工製の加圧殺菌装置(商品名 HTST−A600)がある。
【0010】
加圧水蒸気処理を終えた玄そばあるいは抜きそば実は、玄そばであれば脱殻し抜きそば実とし、これら抜きそば実を必要に応じて乾燥してから、常法により製粉してそば粉を製造する。製粉法及び製粉装置は特に制限されず、そばの製粉において通常採用されている製粉法及び製粉装置を使用することができる。製粉装置の例としては、ロール製粉機、石臼、衝撃式粉砕機などがある。
【0011】
本発明の別の実施態様として、ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施すことを特徴とするダッタンそば粉の製造方法がある。
ここでダッタン種そば種子からそば粉を得るための製粉工程は、常法に則ったものでよく、例えば玄そばを精選し、該玄そばを脱殻し、得られた抜きそば実を用いて、上記のように常法に従って製粉することができる。
こうして得られたそば粉を加圧水蒸気処置に施す。この加圧水蒸気処理の実施にあたって、上記で説明したダッタン種そば種子に施す処理と同様の条件で、また、同様の装置を使用することができる。
【0012】
本発明に従って、ダッタン種そば種子への加圧水蒸気処理、あるいはそば粉への加圧水蒸気処理を経て得られたダッタンそば粉は、そばの製麺工程を経てダッタンそばとすることができる。ダッタンそばは、生麺、半生麺、乾麺、油揚げ麺、押し出し麺などのいずれの形態にすることもできる。
製麺工程は特に制限されるものでなく、例えば、得られたダッタンそば粉に、必要に応じて普通そば粉、小麦粉、食塩、バイタルグルテン、天然ガム等を配合し、これらの原料の合計100質量部に対して、30〜60質量部の水を加えて混練し、常法に従ってロール機又は手打ち方法で麺帯を形成し、圧延した後、切り刃、包丁などで麺線とする。
【0013】
本発明の製造方法によって得られたダッタンそば粉はまた、ダッタンそばの他、各種のそば粉加工食品の製造に使用することができる。本発明の製造方法によって得られたダッタンそば粉を用いて製造されるそば粉加工食品の例としては、そば類、パン類、ケーキ類、ビスケット、和菓子類、そば掻き、そば粥、そばクレープ、そばすいとん、ピロシキ及びそばプディングなどがある。
このようなそば粉加工食品は、常法に従って製造することができる。例えばそばクレープであれば、そば粉と必要に応じて小麦粉を配合し、卵、水、牛乳などと混ぜ合わせ、フライパンなどで良く焼き上げて作ることができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明のダッタンそば粉の製造方法によれば、ルチン分解酵素の失活率が高いそば粉を得ることができ、且つ該そば粉の色調もダッタンそば粉特有のきれいな黄緑色がよく保持されている。本発明の方法により得られたそば粉に加水したとき、多くのルチン成分を保持することができ、また、ケルセチン成分の生成も適量に抑えることになる。
よって、このようなそば粉から得られた、ダッタンそばを始めとするそば粉加工食品は、ルチン成分の含有量が高く栄養的価値が高いものであり、その食味も良好なものである。
【0015】
【実施例】
[実施例1]
ダッタン種そばの玄そばに加圧水蒸気処理を施し、この玄そばをレッチミルで粉砕し、ダッタンそば全粒粉を得て、ルチン含有量などを試験した。
まず、コントロールとして、加圧水蒸気処理を施さない玄そばをレッチミルで粉砕し、得られた全粒粉のルチン初期含有値(mg%)を測定した。また、この全粒粉の一般生菌数(個/g)、大腸菌群(個/g)、耐熱菌(個/g)を測定した。
各測定法は次のとおりである。
一般生菌数(個/g)の測定法:標準寒天平板培地法
大腸菌群(個/g)の測定法:デスオキシコレート寒天培地法
耐熱菌(個/g)の測定法:加熱後標準寒天培地法
ルチンの測定法:全粒粉を一定量メタノールでソックスレー抽出(70℃、60分)し、高速液体クロマトグラフィーで定量分析を行った。
高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下のとおりである。
ディテクター:紫外吸収
波長:350nm
ガラム:C18、5×180mm
【0016】
一方、全粒粉においてルチン分解酵素を働かせるため、水中に該全粒粉を拡散して30℃にて1時間放置した後、該全粒粉を−20℃で急速凍結、真空凍結乾燥しサンプルとした。
該サンプルのルチン含有量を測定し、水中放置後のルチン含有量(mg%)を測定した。なお、このルチン含有量の測定法は上記と同様である。
【0017】
また、コントロールに採用したのと同様の玄そばを、流動型蒸気殺菌装置(カワサキ機工製の加圧殺菌装置(商品名 HTST−A600))を用いて、本発明の方法により以下の条件にて加圧水蒸気処理した。
例▲1▼(加圧条件:0.05MPa、加熱温度:120℃、処理時間:約10秒)、及び例▲2▼(加圧条件:0.15MPa、加熱温度:130℃、処理時間:約10秒)。
こうして処理した玄そばを上記のコントロールと同様に粉砕し、得られた全粒粉のルチン初期含有値(mg%)、一般生菌数(個/g)、大腸菌群(個/g)、耐熱菌(個/g)を、コントロールと同様に測定した。
さらに、全粒粉においてルチン分解酵素を働かせるため、コントロールと同様に、水中に該全粒粉を拡散して30℃にて1時間放置した後、該全粒粉を急速凍結、凍結乾燥しサンプルとし、該サンプルのルチン含有量を測定し、水中放置後のルチン含有量(mg%)を測定した。
【0018】
得られた結果を以下の表1に示す。
【表1】
Figure 2005013005
Figure 2005013005
(水中放置後ルチン含有量/ルチン初期含有量)×100
【0019】
[実施例2]
ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施し、ダッタンそば粉を得た。
まず、コントロールとして、ダッタン種そば種子から常法にて製粉して得られたそば粉のルチン初期含有値(mg%)を測定した。また、このそば粉の一般生菌数(個/g)、大腸菌群(個/g)、耐熱菌(個/g)を測定した。各測定法は実施例1と同様である。
また、色差計(NIPPON DENSHOKU社製、商品名 ZE 2000)を使用して、このそば粉の色調を調べた。
【0020】
一方、そば粉においてルチン分解酵素を働かせるため、実施例1と同様に、水中に該そば粉を拡散して30℃にて1時間放置した後、該そば粉を急速凍結、凍結乾燥しサンプルとした。実施例1と同様に、該サンプルのルチン含有量を測定し、水中放置後のルチン含有量(mg%)を測定した。
【0021】
また、上記の流動型蒸気殺菌装置を用いて、上記コントロールに採用したダッタン種そば種子からのそば粉と同様のそば粉を、本発明の方法により以下の条件にて加圧水蒸気処理した。
例▲3▼(加圧条件:0.05MPa、加熱温度:120℃、処理時間:約10秒)、及び例▲4▼(加圧条件:0.15MPa、加熱温度:130℃、処理時間:約10秒)。
こうして処理したそば粉のルチン初期含有値(mg%)、一般生菌数(個/g)、大腸菌群(個/g)、耐熱菌(個/g)を、コントロールと同様に測定した。また、上記の色差計を使用して、このそば粉の色調を調べた。
さらに、そば粉においてルチン分解酵素を働かせるため、コントロールと同様に、水中に該そば粉を拡散して30℃にて1時間放置した後、該そば粉を急速凍結、凍結乾燥しサンプルとし、該サンプルのルチン含有量を測定し、水中放置後のルチン含有量(mg%)を測定した。
結果を表2及び表3(そば粉の色調)に示す。
【0022】
[比較例]
上記実施例2で採用したのと同様のダッタン種そば種子を、蒸し器で大気圧下、湿り飽和蒸気を2分間ほど当てた後、室温まで冷却、乾燥し、その後、脱殻、製粉してダッタンそば粉を得た。
このダッタンそば粉の色調を、上記の色差計にて調べた。結果を表3に示す。
【0023】
【表2】
ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施して得た
そば粉
Figure 2005013005
(水中放置後ルチン含有量/ルチン初期含有量)×100
【0024】
【表3】
Figure 2005013005
Figure 2005013005
R53とは530nmの波長の光を酸化マグネシウムの受板にあて、反射したときの値を100として表したもの。この値が大きいほど白いことを示している。
L(明るさ)は数値が大きいほど、色調が明るいことを意味する。
a(+赤 −緑)は、プラスの方向に赤味が増し、マイナスの方向に緑味が増すことを意味する。b(+黄 −青)は、プラスの方向に黄味が増し、マイナスの方向に青味が増すことを意味する。
【0025】
[実施例3]
そばの製造
上記実施例2の例▲4▼で得られたダッタンそば粉を用いて、以下のの組成と操作により、機械製麺と手打ち製麺によりそばを製造した。
Figure 2005013005
機械製麺:上記配合に水を32質量部加え、ミキサーにて攪拌、混捏を行い、得られた混捏物を常法に従ってロール機で麺帯を作成し、圧延後切り刃にて麺線を作成した。
手打ち製麺:上記配合に水を45質量部加え、手で攪拌、混捏を行い、得られた混捏物を常法に従って麺棒で圧延し、麺帯を作成し、圧延後包丁にて麺線とした。
【0026】
[実施例4]
そば以外のそば粉加工食品の製造例:そばクレープの製造
原料:薄力小麦粉 50g、例▲4▼で得られたダッタンそば粉 30g、卵 2個、牛乳 1カップ、砂糖 30g、バター 15g。
手順:
1.ふるった小麦粉とそば粉をボウルに入れてよくかき混ぜた。
2.牛乳に卵を入れ泡立て器でよくかき混ぜ、粉に3回くらいに分けて混ぜた。
3.砂糖に溶かしたバターを上記2.へ加え、生地だねを作った。
4.フライパンにバターを少量溶かして、たねを20cmくらいに薄くのばして焼いた。

Claims (6)

  1. ダッタン種そば原料に加圧水蒸気処理を施す工程を含むことを特徴とする、ダッタンそば粉の製造方法。
  2. ダッタン種そば種子に加圧水蒸気処理を施し、その種子から製粉することを特徴とするダッタンそば粉の製造方法。
  3. 加圧水蒸気処理を施すダッタン種そば種子が玄そば又は抜きそば実である、請求項2記載のダッタンそば粉の製造方法。
  4. ダッタン種そば種子から製粉して得られたそば粉に加圧水蒸気処理を施すことを特徴とするダッタンそば粉の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製麺することを特徴とするダッタンそばの製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項記載の方法で製造されたダッタンそば粉を用いて製造されたそば粉加工食品。
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