JP2005010355A - 導波路型光デバイスの製造方法及び導波路型光デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリマー導波路の作用部への電界強度を高めるためにポリマーコア層の膜厚が薄い導波路をドライエッチングで形成する場合でも、ポリマーコア層のエッチング終了時にエッチング残渣などを生じることなく、良好なドライエッチングを行うことが可能な導波路型光デバイスの製造方法の提供、及びこの製造方法により得られる、EO効果の高い導波路型光デバイスの提供である。
【解決手段】ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であって、各工程に用いられる第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であって、各工程に用いられる第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波路型光デバイスの製造方法等に関し、より詳細には、ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングする導波路型光デバイスの製造方法、及び該製造方法により製造される導波路型光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気光学(Electro−optic、以下「EO」と略す)効果で導波光を制御する導波路型光デバイスの開発が盛んに行われるようになってきた。導波路型光デバイスでは、様々なタイプの導波路構造が検討されており、それと同様に様々な導波路形成の方法が報告されている。
【0003】
従来、上記導波路型光デバイスの光導波路の材料としては、大きなEO効果を示すニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ランタン添加のチタン酸ジルコン酸鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3、「PLZT」と略す)などの無機系材料が広く用いられている。しかしながら、これらの材料は、高誘電率のため応答速度が遅く、そのため適用できる周波数帯域が限定されていた。
【0004】
一方、ポリマーは無機系材料に比べ誘電率が低く、マイクロ波との速度不整合の問題を大幅に改善できるため、光導波路材料として注目を集めている。このポリマーを光導波路とするための導波路形成方法としては、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が簡便であり、高精度の加工が可能なことから広く用いられている。
【0005】
酸素ガスを用いたRIEでは、ノボラック樹脂系レジストを用いた場合には、導波路とするポリマーとのエッチング選択比が小さいため、酸素プラズマに耐性のあるシリコン含有レジストを用いる方法が一般的である。しかしながら、フォトレジストを直接ポリマーコア層表面に塗布する方法は、フォトリソグラフィー工程で用いられる溶剤、例えばフォトレジスト溶剤や現像液などの薬液、とポリマーコア層との間でインターミキシングが発生し、クラックなどが発生しやすいという問題が生じていた。
【0006】
以上の課題を解決する方法として、ポリマーコア層と薬液とが直接反応しないようにするため、無機材料などのエッチングマスクを用いる方法が検討されている。この方法は、ポリマーコア層表面にスパッタリングなどによって、無機材料からなるエッチングマスク層を形成し、それをパターニングしたエッチングマスクをマスクとしてポリマーコア層をエッチングするものである。そして、ポリマーコア層をエッチングした後、不要となったエッチングマスクは溶剤を用いて除去される。
【0007】
上記エッチングマスクを用いてエッチングする方法に関して、そのエッチング工程を簡略化する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、同一チャンバ内で、ハードマスクのエッチング、ポリマーコア層のエッチング、及びエッチングマスクの除去を行うことを特徴としており、さらに、エッチングマスクをパターニングするためのフォトレジストを、ポリマーコア層と同時に除去することを特徴としている。
【0008】
以上の方法においては、フォトレジストの膜厚に対して、ポリマーコア層の段差を充分高くするようにエッチングするため、ポリマーコア層のエッチング時にフォトレジストを完全に除去することが可能であった。しかしながら一方、ポリマーに電気光学(EO)特性を持たせて機能性光デバイスを作製する場合には、デバイス性能を向上させるために、ポリマー導波路の作用部の電界強度を高める必要があり、そのためポリマーコア層の膜厚を可能な限り薄くすることが望まれている。
【0009】
本発明者等が検討した結果、前記の方法で、薄いポリマーコア層をエッチング加工した場合、ポリマーコア層のエッチング終了時点では、フォトレジストを完全に除去することが不可能であることが分かった。これは、ポリマーコア層エッチング時におけるフォトレジストとポリマーコア層とのエッチング選択比の関係から、フォトレジストの消滅前にポリマーコア層が所望の段差に到達してしまうためである。
【0010】
エッチング終了後に残ったポリマーコア層表面のフォトレジストやエッチングマスクは、コアポリマー層に溶剤に対する耐性があれば、レジスト剥離液や酸などで除去することも可能であるが、試した溶剤では、コア層が溶解してしまうか、ポリマーコア層の下部(基板側)に形成された下部クラッド層から剥離してしまった。また、溶剤との接触により、コアを構成するポリマーのEO特性に影響を与える可能性があるため、溶剤は極力用いないほうが好ましい。
【0011】
以上のように、ハードマスクを用いてポリマーコア層をエッチング加工する場合、ポリマーコア層のエッチング終了時点で、フォトレジストを完全に除去しておく必要がある。その理由は、フォトレジストの除去が完全でないと、エッチング終了後にエッチングマスクの除去が不可能となるためである。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−231161号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、ポリマー導波路の作用部への電界強度を高めるためにポリマーコア層の膜厚が薄い導波路をドライエッチングで形成する場合でも、ポリマーコア層のエッチング終了時にエッチング残渣などを生じることなく、良好なドライエッチングを行うことが可能な導波路型光デバイスの製造方法の提供を目的とする。また、この製造方法により得られる、EO効果の高い導波路型光デバイスの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討した結果、コアポリマー層のエッチング終了時点で、フォトレジストが完全に除去されるようにするためには、レジストを除去する工程をポリマーコア層のエッチング工程だけではなく、エッチングマスク層のエッチング工程でも行われるようにすれば良いことが見出された。
【0015】
エッチングマスク層エッチング時におけるエッチング選択比は、エッチングするときのエッチングガスの組成比を制御することで調整することが可能である。そのため、エッチングマスク層のエッチング工程で、通常用いられるエッチングガスにフォトレジストをエッチングするようなエッチングガスを添加すればよい。
【0016】
前述の方法では、エッチングマスク層のパターニング工程とエッチングマスクの除去工程とでは、同じ組成のガスが用いられていた。この方法で、ポリマーにEO特性を持たせ機能性デバイスを作製すると、コアポリマー層のエッチング終了時点でエッチングマスクのパターニング用フォトレジストを完全に除去することが不可能である。
【0017】
本発明では、エッチングマスクをパターニングするエッチングガスに酸素ガスを添加することで、エッチングマスクのエッチング工程においてフォトレジストのエッチングを行えば、ポリマーコア層のエッチング終了時点で不要なフォトレジストを完全に除去できることを見出した。
【0018】
すなわち本発明は、
<1> ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であって、
前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程と、該エッチングマスク層表面にフォトレジストパターンを形成する工程と、第1のエッチングガスで前記エッチングマスク層をパターニングしてエッチングマスクとする工程と、該パターニングしたエッチングマスクをマスクとして第2のエッチングガスでコア層をパターニングし光導波路とする工程と、第3のエッチングガスで該光導波路表面のエッチングマスクを除去する工程、とを有し、
前記第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法である。
【0019】
<2> 前記コア層が、非線形光学ポリマーで形成されていることを特徴とする<1>に記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0020】
<3> 前記第1のエッチングガスが、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスからなることを特徴とする<1>または<2>に記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0021】
<4> 前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程において、エッチングマスク層を形成する前に、プラズマで表面処理することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0022】
<5> 基板表面に、少なくとも下部クラッド層とコア層をパターニングした光導波路とを有する導波路型光デバイスであって、
<1>〜<4>のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法により製造されることを特徴とする導波路型光デバイスである。
【0023】
<6> 前記コア層の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする<5>に記載の導波路型光デバイスである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導波路型光デバイスの製造方法は、ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であり、前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程と、該エッチングマスク層表面にフォトレジストパターンを形成する工程と、第1のエッチングガスで前記エッチングマスク層をパターニングしてエッチングマスクとする工程と、該パターニングしたエッチングマスクをマスクとして第2のエッチングガスでコア層をパターニングし光導波路とする工程と、第3のエッチングガスで該光導波路表面のエッチングマスクを除去する工程、とを有し、前記第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする。
【0025】
導波路型光デバイスにおける光導波路が、上記製造方法により形成されることで、ドライエッチング法でコア層に微小段差の導波路部を形成する場合であっても、コア層のエッチング終了時点でフォトレジストを完全に除去することができ、光透過性、光制御性に優れた導波路型光デバイスを得ることができる。
【0026】
本発明の導波路型光デバイスの製造方法により作製される導波路型光デバイスの構成としては、特に制限されず、種々の構成を採ることができるが、本発明においては、基板表面に、少なくとも下部クラッド層とコア層をパターニングした光導波路とを有する構成であることが必要である。
【0027】
図1は、本発明の導波路型光デバイスの構成を示す概略断面図である。
図1に示す導波路型光デバイスでは、基板10の表面に下部電極20が設けられ、その表面に下部クラッド層30、コア層40、及び上部クラッド層50が形成され、さらに上部クラッド層50の表面に上部電極60が設けられている。
【0028】
上記導波路型光デバイスの製造は、まず基板10の表面に、必要に応じて下部電極20として金属材料を堆積する。
上記基板10としては、各種金属基板(アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、ステンレスなど)、各種半導体基板(シリコン、酸化シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム−ヒ素など)、ガラス基板、プラスチック基板(PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドなど)、等を用いることができる。
【0029】
これらの基板10は厚く剛直でもよいし、薄く柔軟でもよい。半導体基板、ガラス基板、プラスチック基板の表面には、前記のように下部電極20が形成される。下部電極20の材料としては、Au、Ti、TiN、Pt、Ir、Cu、Al、Al−Cu、Al−Si−Cu、W、Moなどの各種金属、各種酸化物(NESA(酸化スズ)、酸化インジウム、ITO(酸化スズ−酸化インジウム複合酸化物)や、各種有機導電体(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン)などが用いられる。これらの導電膜は、蒸着、スパッタリング、塗布や電解析出法などにより形成され、必要に応じてパターンが形成されていてもよい。
【0030】
なお、基板10が金属基板の場合には下部電極20を設ける必要はなく、このような導電性の基板10、及び前記下部電極20は、後述する非線形光学ポリマーに電界を印加する場合の電極として使用することができる。また、前記上部クラッド層50の表面に必要により形成される上部電極60も、同様の材料により構成される。
【0031】
基板10あるいは下部電極20と後述する下部クラッド層30との間、および上部クラッド層50と上部電極60との間には、必要に応じて他の層が形成されていてもよく、接着性を向上させるための接着層、表面の凹凸を平滑化するための下引層、あるいはこれらの機能を一括して提供する何らかの中間層、が形成されていてもよい。
【0032】
このような層を形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、メタクリル、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、フェノール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0033】
前記コア層40と上下クラッド層の間には余計な層はなるべくない方がよいが、デバイス特性に影響のでない程度に、前記のような層をごく薄く形成してもよい。あるいは、下部クラッド層表面、コア層表面に、市販の界面活性剤などを処理することにより、上層との接着性、コーティング時のぬれ性、成膜性などを改善できる場合がある。
【0034】
本発明の導波路型光デバイスにおいては、本来有する電気光学特性の機能に加えて、導波路であるコア層としての機能を兼有させるため、図1に示す各構成のように、コア層40と基板10との間に下部クラッド層30が形成される。
【0035】
上記下部クラッド層30としては、コア層40よりも屈折率の低い材料を堆積する。下部クラッド層30に用いられる材料としては、コア層40の形成時にインターミキシングを起こさない材料が好ましく、一般的に知られている熱硬化型の架橋樹脂、紫外線硬化型の架橋樹脂、無機材料、導電性高分子、フッ素化ポリマーなどを用いることができる。
【0036】
前記熱硬化型の架橋樹脂としては、例えばポリイミド、ポリウレタン、ポリベンゾシクロロブテン、ポリアミドなどが挙げられ、前記紫外線硬化型の架橋樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0037】
下部クラッド層30を形成する手段としては、高分子材料であれば、スピンコート法、ディップ法などの一般的な溶液塗布方法が用いられる。また、無機材料であれば、電子ビーム蒸着法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RF(高周波)−マグネトロン・スパッタリング法、DC(直流)−マグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE(分子線エピタキシャル法)、CVD(気相成長法)、プラズマCVD、MOCVD(有機気相成長法)などより選ばれる気相成長法、またはゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって作製が可能であるが、これらに限られるわけではない。
【0038】
なお、下部クラッド層30の膜厚は、利用する光の波長やモードなど、導波路設計指針に依存するが、1〜20μm程度の範囲が好ましく、1.5〜8.0μm程度の範囲とすることがより好ましい。
下部クラッド層30の膜厚が厚い場合には、コア層40にかかる実効電圧が低くなるため、充分なEO効果が得られず、また、薄い場合には、下部電極20による光吸収が増加するため、光損失が大きくなるという問題が生じる場合がある。
【0039】
下部クラッド層30を形成した後、非線形効果を付与したポリマー(非線形光学ポリマー)を積層しコア層40とし、本発明におけるドライエッチング法でリッジを形成する。
ここで、非線形光学ポリマーとは、高分子マトリックス中に非線形光学特性を有する有機化合物を添加した有機非線形光学ポリマーや、高分子の主鎖あるいは側鎖に、非線形光学特性を有する構造(以下、「クロモフォア構造」という場合がある)を導入した主鎖型有機非線形光学ポリマーあるいは側鎖型有機非線形光学ポリマーなどをいう。
【0040】
コア層40の材料としては、光導波路が形成可能なものであり、下部クラッド層30よりも屈折率の高い材料であれば、本発明の意図を損なうものではないが、前記非線形光学ポリマーを用いることが好ましく、前記のように、高分子の側鎖または主鎖に、ポリマーに非線形性を付与する目的でクロモフォア構造を導入したものを用いることができる。
【0041】
上記高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシラン、ポリベンゾシクロブテンなどを用いることができる。
【0042】
前記クロモフォア構造は、公知のものであれば特に限定されないが、下記の構造式(1)で表されるものが好ましい。
D−P−A ・・・ 構造式(1)
【0043】
構造式(1)中、Dは、電子供与性を有する原子団、Pは結合部、Aは電子吸引性を有する原子団、を表す。
【0044】
構造式(1)において、「D」で表される電子供与性を有する原子団としては、電子供与性を有するものであれば公知のものを用いることができるが、電子供与性置換基を有する、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせからなるものであることが好ましい。
前記電子供与性置換基としては、電子供与性を有するものであれば特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、などが望ましい。なお、前記アルキル基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、前記アルコキシ基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、また、前記アミノ基の一部がアルキル基やアルコキシ基、あるいはフェニル基で置換されてもよい。
【0045】
一方、「A」で表される電子吸引性を有する原子団としては、電子吸引性を有するものであれば公知のものいずれでも良いが、電子吸引性置換基を導入した、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせ、などの構造が望ましい。
前記電子吸引性置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン置換されたアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、などが望ましい。
【0046】
また、「P」で表される結合部は、「D」と「A」とを共有結合で結ぶものであれば如何なるものであっても良いが、電子を非局在化しうる共役結合を持つものが望ましく、例えばπ共役系で「D」と「A」とを結びつけるような構造を有するものが望ましい。具体的には、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらが互いに結合したものなどが望ましい。
【0047】
構造式(1)の具体例としては、下式(1−1)〜(1−4)で表されるDisperse Red類やDisperse Orange類、下式(1−5)〜(1−11)で表されるスチルベン化合物、あるいは、下式(1−12)〜(1−17)に示される構造を有する化合物などが挙げられる。なお、下式(1−16)における「Bu」はブチル基を意味し、「Me」はメチル基を意味する。
【0048】
【化1】
【0049】
【化2】
【0050】
【化3】
【0051】
コア層40の形成は、前記クロモフォア構造を有する高分子材料、あるいはクロモフォア構造を有する有機化合物と高分子材料とを混合したものを、これらを溶解する溶剤に溶解しコーティング液を作製し、このコーティング液を前記下部クラッド層30等の表面にコートすることにより行う。
【0052】
コア層40のコーティングは、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、ディップコート、など公知の方法を用いて行うことができる。溶剤の除去は、送風乾燥機などで加熱乾燥しても良いし、減圧(真空)乾燥機などで乾燥してもよい。
【0053】
コア層40の膜厚としては、ポリマー導波路の作用部に電界を効果的にかけるために、コア層40の膜厚は薄いほうが好ましく、5.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。膜厚が5.0μmより厚いと、ポリマー導波路の作用部への電界印加が大きくなり、目的の低駆動電圧を達成することが不可能となる場合がある。なお、コア層40の膜厚の下限は1.0μm程度である。
【0054】
コア層40を加工することにより、図1に示すようなリッジ型の光導波路を形成する。そして、上記光導波路の加工にはドライエッチングが用いられる。
【0055】
光導波路のリッジパターンとしては、直線型、S字型、Y分岐型、X交差型、あるいはそれらの組み合わせの導波路パターンが挙げられる。リッジ幅とリッジ高さは、導波路の屈折率と膜厚との組み合わせにより異なるが、リッジ高さ(段差)は一般的には50〜2000nmの範囲が好ましく、500〜1200nmの範囲がより好ましい。段差が50nmに満たないと、十分な屈折率差が得られず光の閉じ込めができなくなる場合がある。2000nmを越えると、マルチモードとなって目的とする素子の機能を十分に発揮できなくなる場合がある。
また、リッジ幅としては、1〜10μmの範囲が好ましく、3〜7μmの範囲がより好ましい。
【0056】
リッジを形成した後、上部クラッド層50として、コア層40よりも屈折率の低い材料で、コア層40を覆う。上部クラッド層50に用いられる材料としては、上部クラッド層50形成時に、コア層40とインターミキシングを起こさない材料が好ましく、前記下部クラッド層30に用いた材料等を用いることができる。また、上部クラッド層50を形成する手段としても、前記下部クラッド層30の形成に用いた手段を同様に使用することができる。
なお、上部クラッド層50の膜厚としては、1〜10μmの範囲が好ましく、1.5〜8.0μmの範囲がより好ましい。
【0057】
本発明のような導波路型光デバイスの場合には、通常、前記コア層40の屈折率に比べ、クラッド層の屈折率を小さくする必要がある。コア層40とクラッド層との屈折率の差は、どのような素子として用いるかによって異なるが、例えば、シングルモードの導波路として用いる場合には、上記コア層40とクラッド層との屈折率の差は、0.01〜3%の範囲であることが好ましい。
【0058】
次いで、上部クラッド層50の表面に、上部電極60として金属材料を形成し、導波路型光デバイスを形成する。上部電極の材料としては、前述の下部電極20に用いた材料が同様に使用できる。
【0059】
これらの制御用電極(下部電極、上部電極)は、公知の方法、例えば、DCマグネトロン・スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、電解メッキ法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RFマグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE法、CVD法、プラズマCVD、MOCVD法などより選ばれる気相成長法、またはゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって、オーバークラッド層表面から薄膜成長を行うことができる。
【0060】
上部電極60を形成した後、ポーリング処理を行う。ここで該ポーリング処理とは、成膜した後に、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱した状態で電場を印加して配向処理することにより、前記非線形光学ポリマーの分極方向、あるいは、前記クロモフォアを有する非線形光学ポリマーのクロモフォア部分の分極方向、に配向させ、これを維持した状態で、Tg以下に温度を下げた後に電場を取り除く処理をいう。
【0061】
このようなポーリング処理としては、電場の印加方法として、非線形光学ポリマーを2つ以上の電極で直接挟み込んで電場を印加する方法、非線形光学ポリマーと電極との間に液体などの媒体を介して電場を印加する方法、あるいは、コロナ放電により間接的な方法で非線形光学ポリマーに対して電場を印加する方法などが公知である。
【0062】
ポーリング温度は、ガラス転移温度以上が好ましく、具体的には100〜200℃の範囲内に1〜10時間程度保持することが望ましい。ポーリング温度を室温から最終的な温度まで段階的に上昇させる場合、各ステップの上昇温度は5〜50℃程度の範囲、各ステップの時間は10〜120分間程度が望ましく、それらは終始同じでも異なってもよい。連続的に上昇させる場合の昇温速度は、0.1〜20℃/分程度とすることが望ましく、前記の段階的に温度を上昇させるステップと組み合わせてもよい。
【0063】
前記コロナ放電法では、電極、グリッド、サンプル表面の位置関係はこの順であれば任意であるが、電極とサンプル表面との最短距離は5〜100mm程度の範囲、グリッドとサンプル表面との最短距離は1〜30mm程度の範囲とすることが好ましい。グリッドを使用することにより放電を安定化できる場合があり、さらにサンプル表面に必要以上のイオン流が流れ込むのを防止することができるため、表面へのダメージを低減する効果もあると考えられる。
【0064】
ポーリングの際に電極やグリッドに印加する電圧は一定でもよいし、連続的あるいは段階的に変化させてもよく、温度上昇や下降のタイミングに合わせても合わせなくてもよい。例えば、コロナ電極に印加する電圧は1〜20kV程度の範囲、グリッドを使用する場合のグリッド電圧は0.1〜2kV程度の範囲とするのが好ましい。
【0065】
また、電極法の電極に印加する電圧としては、0.1〜2kV程度の範囲とするのが好ましい。電極の極性は正負どちらでもよいが、コロナ放電法の場合には、正電圧にした方がオゾンや窒素酸化物などの発生量が少なく、サンプルへのダメージを小さくすることが可能である。
なお、温度を下げる工程まで含んだポーリングの総時間は、24時間以内程度とすることが好ましい。また、上記ポーリング処理は、コア層形成後に実施することも可能である。
【0066】
次に、本発明の導波路型光デバイスの製造方法におけるエッチングプロセスについて、図2を用いて説明する。図2は、コア層形成からリッジ型光導波路が形成されるまでのプロセスを模式的に示したものである。
【0067】
(エッチングマスク層を形成する工程)
まず、図2(A)に示す基板10に形成されたコア層40の表面に、(B)に示すように、エッチングマスク層70を形成する。エッチングマスク層70としては、コア層40のエッチングレートに対して、低いエッチングレートの材料が好ましく、シリコン、SiOx、SiNx、SiOxNy(xは1〜2の整数、yは1〜2の整数を表す)といったシリカ系材料、アルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料等を用いることができる。
【0068】
上記エッチングマスク層70の厚さは、50〜500nmの範囲程度が好ましいが、本発明においては、コア層40のパターニング時のみではなく、エッチングマスク層70のパターニング時にもフォトレジストの除去を行うため、前記リッジ高さHrとエッチングマスク層70の厚さHeとの比Hr/Heは2.0〜20.0の範囲が好ましく、5.0〜10.0の範囲がより好ましい。
【0069】
(フォトレジストパターンを形成する工程)
次いで、図2(C)に示すように、エッチングマスク層70の表面にフォトレジスト80をコーティングする。フォトレジスト80としてはノボラック樹脂系のレジストを用いることができ、コーティング膜厚は、700〜3000nmの範囲程度が好ましい。また、コア層40のパターニング終了時にフォトレジスト80が完全に除去されることを考慮すると、フォトレジスト層80の厚さHfとエッチングマスク層70の厚さHeとの比Hf/Heは1.0〜30.0の範囲が好ましく、5.0〜15.0の範囲がより好ましい。さらに、フォトレジスト層80の厚さHfとリッジ高さHrとの比Hf/Hrは0.5〜10.0の範囲が好ましく、1.0〜5.0の範囲がより好ましい。
【0070】
続いて、図2(D)のように、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト80を導波路パターン81に形成する。この時、エッチングマスク層70を形成する前に、同一のスパッタ装置内で、プラズマ処理を行うことにより、エッチングマスク層70とポリマーのコア層40との密着性が大幅に向上し、フォトリソグラフィー工程でのエッチングマスクのクラック発生を防止することが可能となる。プラズマ処理に用いられるガスとしては、アルゴンに代表される不活性ガスや、酸素ガス、窒素ガスを用いることができる。
【0071】
(エッチングマスク層をパターニングする工程)
次に、図2(E)に示すように、エッチングマスク層70表面に塗布された導波路パターン81をマスクとして、第1のエッチングガス91でエッチングマスク層70を導波路パターン形状のエッチングマスク71にエッチング加工する。
【0072】
このとき、第1のエッチングガス91としては特に制限はないが、例えばエッチングマスク層70をエッチングするハロゲン系ガスに、フォトレジスト80のエッチングレートを増加させる酸素ガスを混合させたものなどを用いることができる。上記ハロゲン系ガスとしては、エッチングマスク層70がシリコン、SiOx、SiNx、SiOxNyといったシリカ系材料であれば、フッ素系のガス、例えばCF4、CHF3、C2F6、C3F8、SF6などを用いることができる。また、エッチングマスクがアルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料であれば、塩素系のガス、例えば、Cl2、BCl3、SiCl4などを用いることができる。
【0073】
エッチング時におけるエッチングマスク層のエッチング速度aと、フォトレジスト80のエッチング速度bとのエッチング選択比a/bは0.05〜1.0の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.7の範囲とすることがより好ましい。
【0074】
また、エッチング選択比を上記好ましい範囲とするためには、ハロゲン系ガスと酸素との混合比(ハロゲン系ガス/酸素)は、25/2.5sccm〜25/15sccmの範囲とすることが好ましく、25/5sccm〜25/10sccmの範囲とすることがより好ましい。
【0075】
続いて、このエッチングマスク71をマスクとして、図2(F)に示すように、第2のエッチングガス92を用いてポリマーコア層40のエッチングを行う。このときのエッチングガスとしては、酸素ガスが好ましいが、非線形効果を付与する材料によってはハロゲン系ガスの添加なども行われるが、特にこれらに限定されるわけではない。ただし、上記ハロゲン系ガスの添加が行われた場合でも、そのガス組成は酸素ガスが主であり、前記第1のエッチングガスと同一組成となることはない。
【0076】
また、このエッチング時におけるコア層40のエッチング速度cと、フォトレジスト80のエッチング速度bとのエッチング選択比c/bは、0.5〜1.2の範囲とすることが好ましく、0.7〜1.0の範囲とすることがより好ましい。
【0077】
最後に、図2(G)に示すように、第3のエッチングガス93でエッチングマスク71の除去を行い、ポリマーコア層40にリッジ形状の転写が完了する。第3のエッチングガス93としては、特に制限はないが、ポリマーコア層40にダメージを与えずに、エッチングマスク71の除去が可能であるエッチングガスを用いることができる。
【0078】
例えばエッチングマスク71がシリコン、SiOx、SiNx、SiOxNyといったシリカ系材料であれば、フッ素系のガス、例えばCF4、CHF3、C2F6、C3F8、SF6などを用いることができる。また、エッチングマスク71がアルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料であれば、塩素系のガス、例えば、Cl2、BCl3、SiCl4などを用いることができる。
【0079】
このように本発明においては、第1、第2、及び第3のエッチングガスが各々異なる組成のものを用いてエッチングを行うことを特徴とし、各エッチングガスの組成を異なるものとすることで、コア層40に薄いリッジ型導波路を形成する場合でも、エッチング終了時にフォトレジスト80を完全に除去することができる。
【0080】
また、第1、第2、及び第3のエッチングガスとしては、前記のように、第3のエッチングガスとして用いるガス(例えばハロゲン系ガス)に、第2のエッチングガスとして用いるガス(例えば酸素ガス)を混合して第1のエッチングガスとする構成が、製造の効率化、製造コストの低減などの観点から好ましい。
【0081】
ドライエッチング方法は、光導波路を形成するための一般的な装置、エッチングガスを用いることが可能である。例えば、装置としては、ダウンフローエッチング、平行平板型の反応性イオンエッチングやマグネトロン反応性イオンエッチグ、ICP(誘導結合型プラズマ)エッチング、ECR(電子サイクロトロン共鳴)エッチング、イオンビームエッチング、スパッタエッチングなどが可能である。
【0082】
これらの中では、プラズマエッチング法が好ましく、被加工層を高速及び平滑にエッチングできる観点から、ICPエッチングで特に好ましい。
また、一連のドライエッチングは、同一のドライエッチング装置で行ってもよいし、異なるドライエッチング装置を用いて行っても、何ら問題はない。
【0083】
以上説明したような本発明の導波路型光デバイスの製造方法により作製される導波路型光デバイスは、非線形光学特性を利用する如何なる素子にも利用することが可能で、波長変換素子などにも適用できる。また、光導波路のコア層のように、非線形光学特性以外その他の特性を利用して、素子を構成する材料として用いてもよい。特にデバイスを意識した応用例として、非線形光学材料を基材表面に形成し、入力シグナル用の電極対で挟み込む構造を有する非線形光学素子として利用することが好ましい。
【0084】
そして、例えば、チャネル型導波路を形成する際、導波路の形成方法によって、直線型、Y分岐型、カップリング型、Mach−Zehnder型など公知のデバイス構造を構成することができ、光スイッチ(分岐、混合)、光変調素子、波面変換素子、など公知の各種光デバイスへの適用が可能である。
【0085】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例>
(導波路型光デバイスの作製)
シリコン基板(直径:50.8mm、厚さ:0.5mm)表面に、DCマグネトロンスパッタ法により下部電極として厚さ0.3μmの金電極を形成した。次に、この下部電極表面に、屈折率1.544のエポキシ樹脂NOA72(ノーランド社製)をスピンコート法により堆積し、UV照射により硬化を行い、厚さが5.0μmの下部クラッド層とした。
【0086】
次いで、ポリマーコア層の材料として、下記一般式で表されるポリカーボネート樹脂を、THF1質量部とシクロヘキサノン4質量部とを混合した溶媒中に溶解し、15質量%の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液中に非線形光学特性を示す材料として、前記式(1−1)に示す有機非線形材料を固形分比として10質量%となる量だけ添加して溶解し、塗布液とした。なお、下記一般式において、n、mは1以上の整数であり、同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
【化4】
【0088】
この溶液をスピンコート法により、前記下部クラッド層表面に堆積し、120℃に設定されたオーブン内で60分間乾燥させ、厚さ2.5μmの非線形光学ポリマーからなるコア層を形成した。このコア層の屈折率は1.560であった。
【0089】
−エッチングマスク層形成工程−
上記ポリマーコア層まで形成されている基板表面に、DCマグネトロンスパッタ法によりエッチングマスク層として、シリコン薄膜を約120nm堆積した。なお、このシリコン薄膜形成前に、同一のチャンバー内でコア層に表面処理を行った。表面処理方法としては、アルゴンガスを20sccm供給し、RF投入電力を100Wとし、約300秒間、プラズマ雰囲気中にポリマーコア層をさらした。その結果、ポリマーコア層と前記シリコン薄膜との密着性が大幅に向上していた。
【0090】
−フォトレジストパターン形成工程−
次いで、前記エッチングマスク層の表面に、ノボラック樹脂系のフォトレジストを塗布し、露光機とフォトマスクを組み合わせ、導波路パターンを形成した。なお、上記フォトレジストの膜厚を0.8μmとした。これ以下の膜厚にすると、フォトレジストにはピンホールなどが発生しやすくなり、これ以上膜厚を減らすことはできなかった。
【0091】
また、前記のようにプラズマによりコア層の表面処理を実施しているため、フォトリソグラフィー工程でのシリコン薄膜の剥離やクラック発生などは見られなった。比較として、プラズマ処理を行わなかった場合には、フォトリソグラフィー終了後には、シリコン薄膜に無数のクラックや一部剥離が生じており、導波路パターンを形成することは不可能であった。
【0092】
−エッチングマスク層パターニング工程−
上記導波路パターンのフォトレジストをマスクとして、第1のエッチングガスとして、CF4ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたプラズマにより前記エッチングマスク層をエッチングし、シリコン薄膜に導波路パターンを転写した。ドライエッチングは、誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガス供給量を、CF4/酸素ガスの比率で25sccm/5sccm(エッチング選択比a/b:0.2)とし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を100W、基板へのイオン引き込みRF電力を15W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約360秒として行った。
【0093】
−コア層パターニング工程−
ポリマーコア層のエッチングは、このパターニングされたシリコン薄膜をエッチングマスクとし、第2のエッチングガスとして酸素ガス(エッチング選択比c/b:0.9)を用い、プラズマエッチングにより行った。コア層に形成する段差は、波長1.55μmでシングルモードオペレーションさせるために、約0.8μm程度にした。ドライエッチングは、前記誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガスである酸素ガスの供給量を15sccmとし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を150W、基板へのイオン引き込みRF電力を5W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約150秒として行った。
【0094】
ポリマーコア層のエッチングが終了した時点で、顕微鏡でパターン観察を行ったところ、エッチングマスク表面のフォトレジスト(導波路パターン)は完全に除去されていることが確認された。
【0095】
−エッチングマスク除去工程−
最後に、第3のエッチングガスとして、CF4ガスを用いたプラズマによりエッチングマスクのシリコン薄膜を除去した。この除去は、誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガスであるCF4ガスの供給量を25sccmとし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を100W、基板へのイオン引き込みRF電力を5W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約300秒として行った。
【0096】
エッチング終了後、ポリマーコア層の観察を行ったところ、エッチングマスクが完全に除去されていることが確認された。また、垂直な導波路形状が得られ、また導波損失に大きな影響を与える導波路側壁の荒れも無視できる程度のものであった。
【0097】
以上のようにしてリッジ形状の光導波路が形成されたポリマーコア層の表面に、ポリマーコア層よりも屈折率の低い紫外線硬化型樹脂NOA72(ノーランド社製、屈折率:1.544)をスピンコート法により堆積し、厚さが約3μmの上部クラッド層を形成した。
【0098】
最後に、上部クラッド層の表面に上部電極として厚さ約1.0μm金電極を形成し、導波路型光デバイスを得た。この導波路型光デバイスは、必要により下部電極、上部電極を作用電極として加熱、電圧印加してポーリングを行い、素子として使用される。
【0099】
(導波路型光デバイスの評価)
次に、本発明の導波路型光デバイスの電気光学的な応答特性を評価した。該評価を行うため、前記と同様の導波路型光デバイスの製造方法により、マッハツェンダー変調器(MZM:Mach Zehnder Modulator)型導波路を作製した。
【0100】
MZM素子の作製は、前記導波路型光デバイスの作製において、導波路作製プロセスは全く同様にして、導波路パターンのみを変更することによって行い、図3に示すような、基板10の表面にY分岐型導波路を組み合わせた、約1.0μmの段差を有するリッジ型導波路を形成した。なお、このリッジ型導波路の大きさは、図3に示した通りであり、分岐後のアーム間の間隔は20μmであった。
【0101】
上記導波路表面に同様に上部クラッド層を形成した後、図3のCに示すように、作用部アーム上にリフトオフ法により長さ3500μmの金の作用電極を作製した。その後、150℃で、1時間700Vの電圧を印加しポーリング処理を行い素子を作製した。
【0102】
このようにして作製された素子に対して、図3における光入出力用のファイバのA側を、波長1.55μmの半導体レーザ光源に接続し、B側を光出力測定用の光パワーメータに接続して、前記作用電極に40Vの電圧を印加した時のMZMの光出力強度特性を測定した。
【0103】
上記光出力強度特性より半波長電圧Vπは17.5Vであり、これより求めたの電気光学係数r33は5.0pm/Vであり、良好なEO特性を示すことがわかった。
【0104】
<比較例>
実施例の導波路型光デバイスの作製において、第1のエッチングガスをCF4ガスのみ(第3のエッチングガスと同一組成)とした以外は実施例と同様にして、実施例と同一材料、同一条件で同一形状のMZM素子を作製した。なお、このMZM素子作製において、ポリマーコア層のエッチング終了時点で顕微鏡によりパターン観察を行ったところ、エッチングマスク表面にはフォトレジストが残っていた。
【0105】
上記MZM素子について、実施例と同様にして光出力強度特性を測定したところ、エッチングマスク層による光損失の増大が見られ、挿入損失が25dBと非常に大きいものであった。また、電気光学係数r33も2.0pm/Vとなり、所望の十分なEO特性を得ることができなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリマーで構成される導波路の作用部への電界強度を高めるため、ポリマーコア層に形成される導波路の膜厚を薄くした場合であっても、エッチング残渣などを生じることなく、良好なドライエッチングを行うことが可能となる。このため、本発明の導波路型光デバイスの製造方法により、EO効果の高い導波路型光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導波路型光デバイスの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導波路型光デバイスの製造方法の各プロセスを示す模式図である。
【図3】本発明の導波路型光デバイスの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
10 基板
20 下部電極
30 下部クラッド層
40 コア層
50 上部クラッド層
60 上部電極
70 エッチングマスク層
71 エッチングマスク
80 フォトレジスト
81 導波路パターン
91 第1のエッチングガス
92 第2のエッチングガス
93 第3のエッチングガス
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波路型光デバイスの製造方法等に関し、より詳細には、ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングする導波路型光デバイスの製造方法、及び該製造方法により製造される導波路型光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気光学(Electro−optic、以下「EO」と略す)効果で導波光を制御する導波路型光デバイスの開発が盛んに行われるようになってきた。導波路型光デバイスでは、様々なタイプの導波路構造が検討されており、それと同様に様々な導波路形成の方法が報告されている。
【0003】
従来、上記導波路型光デバイスの光導波路の材料としては、大きなEO効果を示すニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ランタン添加のチタン酸ジルコン酸鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3、「PLZT」と略す)などの無機系材料が広く用いられている。しかしながら、これらの材料は、高誘電率のため応答速度が遅く、そのため適用できる周波数帯域が限定されていた。
【0004】
一方、ポリマーは無機系材料に比べ誘電率が低く、マイクロ波との速度不整合の問題を大幅に改善できるため、光導波路材料として注目を集めている。このポリマーを光導波路とするための導波路形成方法としては、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が簡便であり、高精度の加工が可能なことから広く用いられている。
【0005】
酸素ガスを用いたRIEでは、ノボラック樹脂系レジストを用いた場合には、導波路とするポリマーとのエッチング選択比が小さいため、酸素プラズマに耐性のあるシリコン含有レジストを用いる方法が一般的である。しかしながら、フォトレジストを直接ポリマーコア層表面に塗布する方法は、フォトリソグラフィー工程で用いられる溶剤、例えばフォトレジスト溶剤や現像液などの薬液、とポリマーコア層との間でインターミキシングが発生し、クラックなどが発生しやすいという問題が生じていた。
【0006】
以上の課題を解決する方法として、ポリマーコア層と薬液とが直接反応しないようにするため、無機材料などのエッチングマスクを用いる方法が検討されている。この方法は、ポリマーコア層表面にスパッタリングなどによって、無機材料からなるエッチングマスク層を形成し、それをパターニングしたエッチングマスクをマスクとしてポリマーコア層をエッチングするものである。そして、ポリマーコア層をエッチングした後、不要となったエッチングマスクは溶剤を用いて除去される。
【0007】
上記エッチングマスクを用いてエッチングする方法に関して、そのエッチング工程を簡略化する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、同一チャンバ内で、ハードマスクのエッチング、ポリマーコア層のエッチング、及びエッチングマスクの除去を行うことを特徴としており、さらに、エッチングマスクをパターニングするためのフォトレジストを、ポリマーコア層と同時に除去することを特徴としている。
【0008】
以上の方法においては、フォトレジストの膜厚に対して、ポリマーコア層の段差を充分高くするようにエッチングするため、ポリマーコア層のエッチング時にフォトレジストを完全に除去することが可能であった。しかしながら一方、ポリマーに電気光学(EO)特性を持たせて機能性光デバイスを作製する場合には、デバイス性能を向上させるために、ポリマー導波路の作用部の電界強度を高める必要があり、そのためポリマーコア層の膜厚を可能な限り薄くすることが望まれている。
【0009】
本発明者等が検討した結果、前記の方法で、薄いポリマーコア層をエッチング加工した場合、ポリマーコア層のエッチング終了時点では、フォトレジストを完全に除去することが不可能であることが分かった。これは、ポリマーコア層エッチング時におけるフォトレジストとポリマーコア層とのエッチング選択比の関係から、フォトレジストの消滅前にポリマーコア層が所望の段差に到達してしまうためである。
【0010】
エッチング終了後に残ったポリマーコア層表面のフォトレジストやエッチングマスクは、コアポリマー層に溶剤に対する耐性があれば、レジスト剥離液や酸などで除去することも可能であるが、試した溶剤では、コア層が溶解してしまうか、ポリマーコア層の下部(基板側)に形成された下部クラッド層から剥離してしまった。また、溶剤との接触により、コアを構成するポリマーのEO特性に影響を与える可能性があるため、溶剤は極力用いないほうが好ましい。
【0011】
以上のように、ハードマスクを用いてポリマーコア層をエッチング加工する場合、ポリマーコア層のエッチング終了時点で、フォトレジストを完全に除去しておく必要がある。その理由は、フォトレジストの除去が完全でないと、エッチング終了後にエッチングマスクの除去が不可能となるためである。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−231161号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、ポリマー導波路の作用部への電界強度を高めるためにポリマーコア層の膜厚が薄い導波路をドライエッチングで形成する場合でも、ポリマーコア層のエッチング終了時にエッチング残渣などを生じることなく、良好なドライエッチングを行うことが可能な導波路型光デバイスの製造方法の提供を目的とする。また、この製造方法により得られる、EO効果の高い導波路型光デバイスの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討した結果、コアポリマー層のエッチング終了時点で、フォトレジストが完全に除去されるようにするためには、レジストを除去する工程をポリマーコア層のエッチング工程だけではなく、エッチングマスク層のエッチング工程でも行われるようにすれば良いことが見出された。
【0015】
エッチングマスク層エッチング時におけるエッチング選択比は、エッチングするときのエッチングガスの組成比を制御することで調整することが可能である。そのため、エッチングマスク層のエッチング工程で、通常用いられるエッチングガスにフォトレジストをエッチングするようなエッチングガスを添加すればよい。
【0016】
前述の方法では、エッチングマスク層のパターニング工程とエッチングマスクの除去工程とでは、同じ組成のガスが用いられていた。この方法で、ポリマーにEO特性を持たせ機能性デバイスを作製すると、コアポリマー層のエッチング終了時点でエッチングマスクのパターニング用フォトレジストを完全に除去することが不可能である。
【0017】
本発明では、エッチングマスクをパターニングするエッチングガスに酸素ガスを添加することで、エッチングマスクのエッチング工程においてフォトレジストのエッチングを行えば、ポリマーコア層のエッチング終了時点で不要なフォトレジストを完全に除去できることを見出した。
【0018】
すなわち本発明は、
<1> ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であって、
前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程と、該エッチングマスク層表面にフォトレジストパターンを形成する工程と、第1のエッチングガスで前記エッチングマスク層をパターニングしてエッチングマスクとする工程と、該パターニングしたエッチングマスクをマスクとして第2のエッチングガスでコア層をパターニングし光導波路とする工程と、第3のエッチングガスで該光導波路表面のエッチングマスクを除去する工程、とを有し、
前記第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法である。
【0019】
<2> 前記コア層が、非線形光学ポリマーで形成されていることを特徴とする<1>に記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0020】
<3> 前記第1のエッチングガスが、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスからなることを特徴とする<1>または<2>に記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0021】
<4> 前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程において、エッチングマスク層を形成する前に、プラズマで表面処理することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法である。
【0022】
<5> 基板表面に、少なくとも下部クラッド層とコア層をパターニングした光導波路とを有する導波路型光デバイスであって、
<1>〜<4>のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法により製造されることを特徴とする導波路型光デバイスである。
【0023】
<6> 前記コア層の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする<5>に記載の導波路型光デバイスである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導波路型光デバイスの製造方法は、ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であり、前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程と、該エッチングマスク層表面にフォトレジストパターンを形成する工程と、第1のエッチングガスで前記エッチングマスク層をパターニングしてエッチングマスクとする工程と、該パターニングしたエッチングマスクをマスクとして第2のエッチングガスでコア層をパターニングし光導波路とする工程と、第3のエッチングガスで該光導波路表面のエッチングマスクを除去する工程、とを有し、前記第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする。
【0025】
導波路型光デバイスにおける光導波路が、上記製造方法により形成されることで、ドライエッチング法でコア層に微小段差の導波路部を形成する場合であっても、コア層のエッチング終了時点でフォトレジストを完全に除去することができ、光透過性、光制御性に優れた導波路型光デバイスを得ることができる。
【0026】
本発明の導波路型光デバイスの製造方法により作製される導波路型光デバイスの構成としては、特に制限されず、種々の構成を採ることができるが、本発明においては、基板表面に、少なくとも下部クラッド層とコア層をパターニングした光導波路とを有する構成であることが必要である。
【0027】
図1は、本発明の導波路型光デバイスの構成を示す概略断面図である。
図1に示す導波路型光デバイスでは、基板10の表面に下部電極20が設けられ、その表面に下部クラッド層30、コア層40、及び上部クラッド層50が形成され、さらに上部クラッド層50の表面に上部電極60が設けられている。
【0028】
上記導波路型光デバイスの製造は、まず基板10の表面に、必要に応じて下部電極20として金属材料を堆積する。
上記基板10としては、各種金属基板(アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、ステンレスなど)、各種半導体基板(シリコン、酸化シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム−ヒ素など)、ガラス基板、プラスチック基板(PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドなど)、等を用いることができる。
【0029】
これらの基板10は厚く剛直でもよいし、薄く柔軟でもよい。半導体基板、ガラス基板、プラスチック基板の表面には、前記のように下部電極20が形成される。下部電極20の材料としては、Au、Ti、TiN、Pt、Ir、Cu、Al、Al−Cu、Al−Si−Cu、W、Moなどの各種金属、各種酸化物(NESA(酸化スズ)、酸化インジウム、ITO(酸化スズ−酸化インジウム複合酸化物)や、各種有機導電体(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン)などが用いられる。これらの導電膜は、蒸着、スパッタリング、塗布や電解析出法などにより形成され、必要に応じてパターンが形成されていてもよい。
【0030】
なお、基板10が金属基板の場合には下部電極20を設ける必要はなく、このような導電性の基板10、及び前記下部電極20は、後述する非線形光学ポリマーに電界を印加する場合の電極として使用することができる。また、前記上部クラッド層50の表面に必要により形成される上部電極60も、同様の材料により構成される。
【0031】
基板10あるいは下部電極20と後述する下部クラッド層30との間、および上部クラッド層50と上部電極60との間には、必要に応じて他の層が形成されていてもよく、接着性を向上させるための接着層、表面の凹凸を平滑化するための下引層、あるいはこれらの機能を一括して提供する何らかの中間層、が形成されていてもよい。
【0032】
このような層を形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、メタクリル、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、フェノール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0033】
前記コア層40と上下クラッド層の間には余計な層はなるべくない方がよいが、デバイス特性に影響のでない程度に、前記のような層をごく薄く形成してもよい。あるいは、下部クラッド層表面、コア層表面に、市販の界面活性剤などを処理することにより、上層との接着性、コーティング時のぬれ性、成膜性などを改善できる場合がある。
【0034】
本発明の導波路型光デバイスにおいては、本来有する電気光学特性の機能に加えて、導波路であるコア層としての機能を兼有させるため、図1に示す各構成のように、コア層40と基板10との間に下部クラッド層30が形成される。
【0035】
上記下部クラッド層30としては、コア層40よりも屈折率の低い材料を堆積する。下部クラッド層30に用いられる材料としては、コア層40の形成時にインターミキシングを起こさない材料が好ましく、一般的に知られている熱硬化型の架橋樹脂、紫外線硬化型の架橋樹脂、無機材料、導電性高分子、フッ素化ポリマーなどを用いることができる。
【0036】
前記熱硬化型の架橋樹脂としては、例えばポリイミド、ポリウレタン、ポリベンゾシクロロブテン、ポリアミドなどが挙げられ、前記紫外線硬化型の架橋樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0037】
下部クラッド層30を形成する手段としては、高分子材料であれば、スピンコート法、ディップ法などの一般的な溶液塗布方法が用いられる。また、無機材料であれば、電子ビーム蒸着法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RF(高周波)−マグネトロン・スパッタリング法、DC(直流)−マグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE(分子線エピタキシャル法)、CVD(気相成長法)、プラズマCVD、MOCVD(有機気相成長法)などより選ばれる気相成長法、またはゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって作製が可能であるが、これらに限られるわけではない。
【0038】
なお、下部クラッド層30の膜厚は、利用する光の波長やモードなど、導波路設計指針に依存するが、1〜20μm程度の範囲が好ましく、1.5〜8.0μm程度の範囲とすることがより好ましい。
下部クラッド層30の膜厚が厚い場合には、コア層40にかかる実効電圧が低くなるため、充分なEO効果が得られず、また、薄い場合には、下部電極20による光吸収が増加するため、光損失が大きくなるという問題が生じる場合がある。
【0039】
下部クラッド層30を形成した後、非線形効果を付与したポリマー(非線形光学ポリマー)を積層しコア層40とし、本発明におけるドライエッチング法でリッジを形成する。
ここで、非線形光学ポリマーとは、高分子マトリックス中に非線形光学特性を有する有機化合物を添加した有機非線形光学ポリマーや、高分子の主鎖あるいは側鎖に、非線形光学特性を有する構造(以下、「クロモフォア構造」という場合がある)を導入した主鎖型有機非線形光学ポリマーあるいは側鎖型有機非線形光学ポリマーなどをいう。
【0040】
コア層40の材料としては、光導波路が形成可能なものであり、下部クラッド層30よりも屈折率の高い材料であれば、本発明の意図を損なうものではないが、前記非線形光学ポリマーを用いることが好ましく、前記のように、高分子の側鎖または主鎖に、ポリマーに非線形性を付与する目的でクロモフォア構造を導入したものを用いることができる。
【0041】
上記高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシラン、ポリベンゾシクロブテンなどを用いることができる。
【0042】
前記クロモフォア構造は、公知のものであれば特に限定されないが、下記の構造式(1)で表されるものが好ましい。
D−P−A ・・・ 構造式(1)
【0043】
構造式(1)中、Dは、電子供与性を有する原子団、Pは結合部、Aは電子吸引性を有する原子団、を表す。
【0044】
構造式(1)において、「D」で表される電子供与性を有する原子団としては、電子供与性を有するものであれば公知のものを用いることができるが、電子供与性置換基を有する、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせからなるものであることが好ましい。
前記電子供与性置換基としては、電子供与性を有するものであれば特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、などが望ましい。なお、前記アルキル基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、前記アルコキシ基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、また、前記アミノ基の一部がアルキル基やアルコキシ基、あるいはフェニル基で置換されてもよい。
【0045】
一方、「A」で表される電子吸引性を有する原子団としては、電子吸引性を有するものであれば公知のものいずれでも良いが、電子吸引性置換基を導入した、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせ、などの構造が望ましい。
前記電子吸引性置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン置換されたアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、などが望ましい。
【0046】
また、「P」で表される結合部は、「D」と「A」とを共有結合で結ぶものであれば如何なるものであっても良いが、電子を非局在化しうる共役結合を持つものが望ましく、例えばπ共役系で「D」と「A」とを結びつけるような構造を有するものが望ましい。具体的には、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらが互いに結合したものなどが望ましい。
【0047】
構造式(1)の具体例としては、下式(1−1)〜(1−4)で表されるDisperse Red類やDisperse Orange類、下式(1−5)〜(1−11)で表されるスチルベン化合物、あるいは、下式(1−12)〜(1−17)に示される構造を有する化合物などが挙げられる。なお、下式(1−16)における「Bu」はブチル基を意味し、「Me」はメチル基を意味する。
【0048】
【化1】
【0049】
【化2】
【0050】
【化3】
【0051】
コア層40の形成は、前記クロモフォア構造を有する高分子材料、あるいはクロモフォア構造を有する有機化合物と高分子材料とを混合したものを、これらを溶解する溶剤に溶解しコーティング液を作製し、このコーティング液を前記下部クラッド層30等の表面にコートすることにより行う。
【0052】
コア層40のコーティングは、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、ディップコート、など公知の方法を用いて行うことができる。溶剤の除去は、送風乾燥機などで加熱乾燥しても良いし、減圧(真空)乾燥機などで乾燥してもよい。
【0053】
コア層40の膜厚としては、ポリマー導波路の作用部に電界を効果的にかけるために、コア層40の膜厚は薄いほうが好ましく、5.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。膜厚が5.0μmより厚いと、ポリマー導波路の作用部への電界印加が大きくなり、目的の低駆動電圧を達成することが不可能となる場合がある。なお、コア層40の膜厚の下限は1.0μm程度である。
【0054】
コア層40を加工することにより、図1に示すようなリッジ型の光導波路を形成する。そして、上記光導波路の加工にはドライエッチングが用いられる。
【0055】
光導波路のリッジパターンとしては、直線型、S字型、Y分岐型、X交差型、あるいはそれらの組み合わせの導波路パターンが挙げられる。リッジ幅とリッジ高さは、導波路の屈折率と膜厚との組み合わせにより異なるが、リッジ高さ(段差)は一般的には50〜2000nmの範囲が好ましく、500〜1200nmの範囲がより好ましい。段差が50nmに満たないと、十分な屈折率差が得られず光の閉じ込めができなくなる場合がある。2000nmを越えると、マルチモードとなって目的とする素子の機能を十分に発揮できなくなる場合がある。
また、リッジ幅としては、1〜10μmの範囲が好ましく、3〜7μmの範囲がより好ましい。
【0056】
リッジを形成した後、上部クラッド層50として、コア層40よりも屈折率の低い材料で、コア層40を覆う。上部クラッド層50に用いられる材料としては、上部クラッド層50形成時に、コア層40とインターミキシングを起こさない材料が好ましく、前記下部クラッド層30に用いた材料等を用いることができる。また、上部クラッド層50を形成する手段としても、前記下部クラッド層30の形成に用いた手段を同様に使用することができる。
なお、上部クラッド層50の膜厚としては、1〜10μmの範囲が好ましく、1.5〜8.0μmの範囲がより好ましい。
【0057】
本発明のような導波路型光デバイスの場合には、通常、前記コア層40の屈折率に比べ、クラッド層の屈折率を小さくする必要がある。コア層40とクラッド層との屈折率の差は、どのような素子として用いるかによって異なるが、例えば、シングルモードの導波路として用いる場合には、上記コア層40とクラッド層との屈折率の差は、0.01〜3%の範囲であることが好ましい。
【0058】
次いで、上部クラッド層50の表面に、上部電極60として金属材料を形成し、導波路型光デバイスを形成する。上部電極の材料としては、前述の下部電極20に用いた材料が同様に使用できる。
【0059】
これらの制御用電極(下部電極、上部電極)は、公知の方法、例えば、DCマグネトロン・スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、電解メッキ法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RFマグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE法、CVD法、プラズマCVD、MOCVD法などより選ばれる気相成長法、またはゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって、オーバークラッド層表面から薄膜成長を行うことができる。
【0060】
上部電極60を形成した後、ポーリング処理を行う。ここで該ポーリング処理とは、成膜した後に、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱した状態で電場を印加して配向処理することにより、前記非線形光学ポリマーの分極方向、あるいは、前記クロモフォアを有する非線形光学ポリマーのクロモフォア部分の分極方向、に配向させ、これを維持した状態で、Tg以下に温度を下げた後に電場を取り除く処理をいう。
【0061】
このようなポーリング処理としては、電場の印加方法として、非線形光学ポリマーを2つ以上の電極で直接挟み込んで電場を印加する方法、非線形光学ポリマーと電極との間に液体などの媒体を介して電場を印加する方法、あるいは、コロナ放電により間接的な方法で非線形光学ポリマーに対して電場を印加する方法などが公知である。
【0062】
ポーリング温度は、ガラス転移温度以上が好ましく、具体的には100〜200℃の範囲内に1〜10時間程度保持することが望ましい。ポーリング温度を室温から最終的な温度まで段階的に上昇させる場合、各ステップの上昇温度は5〜50℃程度の範囲、各ステップの時間は10〜120分間程度が望ましく、それらは終始同じでも異なってもよい。連続的に上昇させる場合の昇温速度は、0.1〜20℃/分程度とすることが望ましく、前記の段階的に温度を上昇させるステップと組み合わせてもよい。
【0063】
前記コロナ放電法では、電極、グリッド、サンプル表面の位置関係はこの順であれば任意であるが、電極とサンプル表面との最短距離は5〜100mm程度の範囲、グリッドとサンプル表面との最短距離は1〜30mm程度の範囲とすることが好ましい。グリッドを使用することにより放電を安定化できる場合があり、さらにサンプル表面に必要以上のイオン流が流れ込むのを防止することができるため、表面へのダメージを低減する効果もあると考えられる。
【0064】
ポーリングの際に電極やグリッドに印加する電圧は一定でもよいし、連続的あるいは段階的に変化させてもよく、温度上昇や下降のタイミングに合わせても合わせなくてもよい。例えば、コロナ電極に印加する電圧は1〜20kV程度の範囲、グリッドを使用する場合のグリッド電圧は0.1〜2kV程度の範囲とするのが好ましい。
【0065】
また、電極法の電極に印加する電圧としては、0.1〜2kV程度の範囲とするのが好ましい。電極の極性は正負どちらでもよいが、コロナ放電法の場合には、正電圧にした方がオゾンや窒素酸化物などの発生量が少なく、サンプルへのダメージを小さくすることが可能である。
なお、温度を下げる工程まで含んだポーリングの総時間は、24時間以内程度とすることが好ましい。また、上記ポーリング処理は、コア層形成後に実施することも可能である。
【0066】
次に、本発明の導波路型光デバイスの製造方法におけるエッチングプロセスについて、図2を用いて説明する。図2は、コア層形成からリッジ型光導波路が形成されるまでのプロセスを模式的に示したものである。
【0067】
(エッチングマスク層を形成する工程)
まず、図2(A)に示す基板10に形成されたコア層40の表面に、(B)に示すように、エッチングマスク層70を形成する。エッチングマスク層70としては、コア層40のエッチングレートに対して、低いエッチングレートの材料が好ましく、シリコン、SiOx、SiNx、SiOxNy(xは1〜2の整数、yは1〜2の整数を表す)といったシリカ系材料、アルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料等を用いることができる。
【0068】
上記エッチングマスク層70の厚さは、50〜500nmの範囲程度が好ましいが、本発明においては、コア層40のパターニング時のみではなく、エッチングマスク層70のパターニング時にもフォトレジストの除去を行うため、前記リッジ高さHrとエッチングマスク層70の厚さHeとの比Hr/Heは2.0〜20.0の範囲が好ましく、5.0〜10.0の範囲がより好ましい。
【0069】
(フォトレジストパターンを形成する工程)
次いで、図2(C)に示すように、エッチングマスク層70の表面にフォトレジスト80をコーティングする。フォトレジスト80としてはノボラック樹脂系のレジストを用いることができ、コーティング膜厚は、700〜3000nmの範囲程度が好ましい。また、コア層40のパターニング終了時にフォトレジスト80が完全に除去されることを考慮すると、フォトレジスト層80の厚さHfとエッチングマスク層70の厚さHeとの比Hf/Heは1.0〜30.0の範囲が好ましく、5.0〜15.0の範囲がより好ましい。さらに、フォトレジスト層80の厚さHfとリッジ高さHrとの比Hf/Hrは0.5〜10.0の範囲が好ましく、1.0〜5.0の範囲がより好ましい。
【0070】
続いて、図2(D)のように、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト80を導波路パターン81に形成する。この時、エッチングマスク層70を形成する前に、同一のスパッタ装置内で、プラズマ処理を行うことにより、エッチングマスク層70とポリマーのコア層40との密着性が大幅に向上し、フォトリソグラフィー工程でのエッチングマスクのクラック発生を防止することが可能となる。プラズマ処理に用いられるガスとしては、アルゴンに代表される不活性ガスや、酸素ガス、窒素ガスを用いることができる。
【0071】
(エッチングマスク層をパターニングする工程)
次に、図2(E)に示すように、エッチングマスク層70表面に塗布された導波路パターン81をマスクとして、第1のエッチングガス91でエッチングマスク層70を導波路パターン形状のエッチングマスク71にエッチング加工する。
【0072】
このとき、第1のエッチングガス91としては特に制限はないが、例えばエッチングマスク層70をエッチングするハロゲン系ガスに、フォトレジスト80のエッチングレートを増加させる酸素ガスを混合させたものなどを用いることができる。上記ハロゲン系ガスとしては、エッチングマスク層70がシリコン、SiOx、SiNx、SiOxNyといったシリカ系材料であれば、フッ素系のガス、例えばCF4、CHF3、C2F6、C3F8、SF6などを用いることができる。また、エッチングマスクがアルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料であれば、塩素系のガス、例えば、Cl2、BCl3、SiCl4などを用いることができる。
【0073】
エッチング時におけるエッチングマスク層のエッチング速度aと、フォトレジスト80のエッチング速度bとのエッチング選択比a/bは0.05〜1.0の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.7の範囲とすることがより好ましい。
【0074】
また、エッチング選択比を上記好ましい範囲とするためには、ハロゲン系ガスと酸素との混合比(ハロゲン系ガス/酸素)は、25/2.5sccm〜25/15sccmの範囲とすることが好ましく、25/5sccm〜25/10sccmの範囲とすることがより好ましい。
【0075】
続いて、このエッチングマスク71をマスクとして、図2(F)に示すように、第2のエッチングガス92を用いてポリマーコア層40のエッチングを行う。このときのエッチングガスとしては、酸素ガスが好ましいが、非線形効果を付与する材料によってはハロゲン系ガスの添加なども行われるが、特にこれらに限定されるわけではない。ただし、上記ハロゲン系ガスの添加が行われた場合でも、そのガス組成は酸素ガスが主であり、前記第1のエッチングガスと同一組成となることはない。
【0076】
また、このエッチング時におけるコア層40のエッチング速度cと、フォトレジスト80のエッチング速度bとのエッチング選択比c/bは、0.5〜1.2の範囲とすることが好ましく、0.7〜1.0の範囲とすることがより好ましい。
【0077】
最後に、図2(G)に示すように、第3のエッチングガス93でエッチングマスク71の除去を行い、ポリマーコア層40にリッジ形状の転写が完了する。第3のエッチングガス93としては、特に制限はないが、ポリマーコア層40にダメージを与えずに、エッチングマスク71の除去が可能であるエッチングガスを用いることができる。
【0078】
例えばエッチングマスク71がシリコン、SiOx、SiNx、SiOxNyといったシリカ系材料であれば、フッ素系のガス、例えばCF4、CHF3、C2F6、C3F8、SF6などを用いることができる。また、エッチングマスク71がアルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、ニッケル、銅などの金属材料であれば、塩素系のガス、例えば、Cl2、BCl3、SiCl4などを用いることができる。
【0079】
このように本発明においては、第1、第2、及び第3のエッチングガスが各々異なる組成のものを用いてエッチングを行うことを特徴とし、各エッチングガスの組成を異なるものとすることで、コア層40に薄いリッジ型導波路を形成する場合でも、エッチング終了時にフォトレジスト80を完全に除去することができる。
【0080】
また、第1、第2、及び第3のエッチングガスとしては、前記のように、第3のエッチングガスとして用いるガス(例えばハロゲン系ガス)に、第2のエッチングガスとして用いるガス(例えば酸素ガス)を混合して第1のエッチングガスとする構成が、製造の効率化、製造コストの低減などの観点から好ましい。
【0081】
ドライエッチング方法は、光導波路を形成するための一般的な装置、エッチングガスを用いることが可能である。例えば、装置としては、ダウンフローエッチング、平行平板型の反応性イオンエッチングやマグネトロン反応性イオンエッチグ、ICP(誘導結合型プラズマ)エッチング、ECR(電子サイクロトロン共鳴)エッチング、イオンビームエッチング、スパッタエッチングなどが可能である。
【0082】
これらの中では、プラズマエッチング法が好ましく、被加工層を高速及び平滑にエッチングできる観点から、ICPエッチングで特に好ましい。
また、一連のドライエッチングは、同一のドライエッチング装置で行ってもよいし、異なるドライエッチング装置を用いて行っても、何ら問題はない。
【0083】
以上説明したような本発明の導波路型光デバイスの製造方法により作製される導波路型光デバイスは、非線形光学特性を利用する如何なる素子にも利用することが可能で、波長変換素子などにも適用できる。また、光導波路のコア層のように、非線形光学特性以外その他の特性を利用して、素子を構成する材料として用いてもよい。特にデバイスを意識した応用例として、非線形光学材料を基材表面に形成し、入力シグナル用の電極対で挟み込む構造を有する非線形光学素子として利用することが好ましい。
【0084】
そして、例えば、チャネル型導波路を形成する際、導波路の形成方法によって、直線型、Y分岐型、カップリング型、Mach−Zehnder型など公知のデバイス構造を構成することができ、光スイッチ(分岐、混合)、光変調素子、波面変換素子、など公知の各種光デバイスへの適用が可能である。
【0085】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例>
(導波路型光デバイスの作製)
シリコン基板(直径:50.8mm、厚さ:0.5mm)表面に、DCマグネトロンスパッタ法により下部電極として厚さ0.3μmの金電極を形成した。次に、この下部電極表面に、屈折率1.544のエポキシ樹脂NOA72(ノーランド社製)をスピンコート法により堆積し、UV照射により硬化を行い、厚さが5.0μmの下部クラッド層とした。
【0086】
次いで、ポリマーコア層の材料として、下記一般式で表されるポリカーボネート樹脂を、THF1質量部とシクロヘキサノン4質量部とを混合した溶媒中に溶解し、15質量%の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液中に非線形光学特性を示す材料として、前記式(1−1)に示す有機非線形材料を固形分比として10質量%となる量だけ添加して溶解し、塗布液とした。なお、下記一般式において、n、mは1以上の整数であり、同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
【化4】
【0088】
この溶液をスピンコート法により、前記下部クラッド層表面に堆積し、120℃に設定されたオーブン内で60分間乾燥させ、厚さ2.5μmの非線形光学ポリマーからなるコア層を形成した。このコア層の屈折率は1.560であった。
【0089】
−エッチングマスク層形成工程−
上記ポリマーコア層まで形成されている基板表面に、DCマグネトロンスパッタ法によりエッチングマスク層として、シリコン薄膜を約120nm堆積した。なお、このシリコン薄膜形成前に、同一のチャンバー内でコア層に表面処理を行った。表面処理方法としては、アルゴンガスを20sccm供給し、RF投入電力を100Wとし、約300秒間、プラズマ雰囲気中にポリマーコア層をさらした。その結果、ポリマーコア層と前記シリコン薄膜との密着性が大幅に向上していた。
【0090】
−フォトレジストパターン形成工程−
次いで、前記エッチングマスク層の表面に、ノボラック樹脂系のフォトレジストを塗布し、露光機とフォトマスクを組み合わせ、導波路パターンを形成した。なお、上記フォトレジストの膜厚を0.8μmとした。これ以下の膜厚にすると、フォトレジストにはピンホールなどが発生しやすくなり、これ以上膜厚を減らすことはできなかった。
【0091】
また、前記のようにプラズマによりコア層の表面処理を実施しているため、フォトリソグラフィー工程でのシリコン薄膜の剥離やクラック発生などは見られなった。比較として、プラズマ処理を行わなかった場合には、フォトリソグラフィー終了後には、シリコン薄膜に無数のクラックや一部剥離が生じており、導波路パターンを形成することは不可能であった。
【0092】
−エッチングマスク層パターニング工程−
上記導波路パターンのフォトレジストをマスクとして、第1のエッチングガスとして、CF4ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたプラズマにより前記エッチングマスク層をエッチングし、シリコン薄膜に導波路パターンを転写した。ドライエッチングは、誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガス供給量を、CF4/酸素ガスの比率で25sccm/5sccm(エッチング選択比a/b:0.2)とし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を100W、基板へのイオン引き込みRF電力を15W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約360秒として行った。
【0093】
−コア層パターニング工程−
ポリマーコア層のエッチングは、このパターニングされたシリコン薄膜をエッチングマスクとし、第2のエッチングガスとして酸素ガス(エッチング選択比c/b:0.9)を用い、プラズマエッチングにより行った。コア層に形成する段差は、波長1.55μmでシングルモードオペレーションさせるために、約0.8μm程度にした。ドライエッチングは、前記誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガスである酸素ガスの供給量を15sccmとし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を150W、基板へのイオン引き込みRF電力を5W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約150秒として行った。
【0094】
ポリマーコア層のエッチングが終了した時点で、顕微鏡でパターン観察を行ったところ、エッチングマスク表面のフォトレジスト(導波路パターン)は完全に除去されていることが確認された。
【0095】
−エッチングマスク除去工程−
最後に、第3のエッチングガスとして、CF4ガスを用いたプラズマによりエッチングマスクのシリコン薄膜を除去した。この除去は、誘導結合型プラズマエッチング装置を用い、エッチングガスであるCF4ガスの供給量を25sccmとし、ステージ温度を20℃、プラズマ生成用RF電力を100W、基板へのイオン引き込みRF電力を5W、エッチング圧力を0.6Pa、エッチング時間を約300秒として行った。
【0096】
エッチング終了後、ポリマーコア層の観察を行ったところ、エッチングマスクが完全に除去されていることが確認された。また、垂直な導波路形状が得られ、また導波損失に大きな影響を与える導波路側壁の荒れも無視できる程度のものであった。
【0097】
以上のようにしてリッジ形状の光導波路が形成されたポリマーコア層の表面に、ポリマーコア層よりも屈折率の低い紫外線硬化型樹脂NOA72(ノーランド社製、屈折率:1.544)をスピンコート法により堆積し、厚さが約3μmの上部クラッド層を形成した。
【0098】
最後に、上部クラッド層の表面に上部電極として厚さ約1.0μm金電極を形成し、導波路型光デバイスを得た。この導波路型光デバイスは、必要により下部電極、上部電極を作用電極として加熱、電圧印加してポーリングを行い、素子として使用される。
【0099】
(導波路型光デバイスの評価)
次に、本発明の導波路型光デバイスの電気光学的な応答特性を評価した。該評価を行うため、前記と同様の導波路型光デバイスの製造方法により、マッハツェンダー変調器(MZM:Mach Zehnder Modulator)型導波路を作製した。
【0100】
MZM素子の作製は、前記導波路型光デバイスの作製において、導波路作製プロセスは全く同様にして、導波路パターンのみを変更することによって行い、図3に示すような、基板10の表面にY分岐型導波路を組み合わせた、約1.0μmの段差を有するリッジ型導波路を形成した。なお、このリッジ型導波路の大きさは、図3に示した通りであり、分岐後のアーム間の間隔は20μmであった。
【0101】
上記導波路表面に同様に上部クラッド層を形成した後、図3のCに示すように、作用部アーム上にリフトオフ法により長さ3500μmの金の作用電極を作製した。その後、150℃で、1時間700Vの電圧を印加しポーリング処理を行い素子を作製した。
【0102】
このようにして作製された素子に対して、図3における光入出力用のファイバのA側を、波長1.55μmの半導体レーザ光源に接続し、B側を光出力測定用の光パワーメータに接続して、前記作用電極に40Vの電圧を印加した時のMZMの光出力強度特性を測定した。
【0103】
上記光出力強度特性より半波長電圧Vπは17.5Vであり、これより求めたの電気光学係数r33は5.0pm/Vであり、良好なEO特性を示すことがわかった。
【0104】
<比較例>
実施例の導波路型光デバイスの作製において、第1のエッチングガスをCF4ガスのみ(第3のエッチングガスと同一組成)とした以外は実施例と同様にして、実施例と同一材料、同一条件で同一形状のMZM素子を作製した。なお、このMZM素子作製において、ポリマーコア層のエッチング終了時点で顕微鏡によりパターン観察を行ったところ、エッチングマスク表面にはフォトレジストが残っていた。
【0105】
上記MZM素子について、実施例と同様にして光出力強度特性を測定したところ、エッチングマスク層による光損失の増大が見られ、挿入損失が25dBと非常に大きいものであった。また、電気光学係数r33も2.0pm/Vとなり、所望の十分なEO特性を得ることができなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリマーで構成される導波路の作用部への電界強度を高めるため、ポリマーコア層に形成される導波路の膜厚を薄くした場合であっても、エッチング残渣などを生じることなく、良好なドライエッチングを行うことが可能となる。このため、本発明の導波路型光デバイスの製造方法により、EO効果の高い導波路型光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導波路型光デバイスの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導波路型光デバイスの製造方法の各プロセスを示す模式図である。
【図3】本発明の導波路型光デバイスの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
10 基板
20 下部電極
30 下部クラッド層
40 コア層
50 上部クラッド層
60 上部電極
70 エッチングマスク層
71 エッチングマスク
80 フォトレジスト
81 導波路パターン
91 第1のエッチングガス
92 第2のエッチングガス
93 第3のエッチングガス
Claims (6)
- ポリマーからなるコア層を、ドライエッチングによってパターニングし光導波路とする導波路型光デバイスの製造方法であって、
前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程と、該エッチングマスク層表面にフォトレジストパターンを形成する工程と、第1のエッチングガスで前記エッチングマスク層をパターニングしてエッチングマスクとする工程と、該パターニングしたエッチングマスクをマスクとして第2のエッチングガスでコア層をパターニングし光導波路とする工程と、第3のエッチングガスで該光導波路表面のエッチングマスクを除去する工程、とを有し、
前記第1、第2、及び第3のエッチングガスが、それぞれ異なる組成であることを特徴とする導波路型光デバイスの製造方法。 - 前記コア層が、非線形光学ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
- 前記第1のエッチングガスが、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の導波路型光デバイスの製造方法。
- 前記コア層の表面にエッチングマスク層を形成する工程において、エッチングマスク層を形成する前に、プラズマで表面処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法。
- 基板表面に、少なくとも下部クラッド層とコア層をパターニングした光導波路とを有する導波路型光デバイスであって、
請求項1〜4のいずれかに記載の導波路型光デバイスの製造方法により製造されることを特徴とする導波路型光デバイス。 - 前記コア層の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の導波路型光デバイス。
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- 2003-06-18 JP JP2003173269A patent/JP2005010355A/ja active Pending
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