JP2009098197A - 光導波路素子及びその製造方法 - Google Patents

光導波路素子及びその製造方法 Download PDF

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滋年 中村
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タプリヤ ローシャン
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Abstract

【課題】静電破壊や放電を抑制しつつより高い電圧でポーリング処理を行うことが可能であり、より高い有機非線形光学材料の電気光学効果が引き出された光導波路素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基板10上に、少なくとも、下部電極層12と、下部クラッド層14と、有機非線形光学材料を含み電気光学効果を有すると共に光の伝搬を行う導波路を有する導波路層16と、上部クラッド層18と、上部電極層20と、を順次備え、2つの光の入出力端面と、該入出力端面と交わる2つの側端面とを有し、当該各面における下部電極層12の一部又は全部が下部クラッド層で覆われている光導波路素子である。そして、この下部電極層12を形成する際、素子状に切断する際の切断面と交わる領域の一部又は全部を下部電極層非形成領域12Aとなるように設けて、下部電極層12を形成する。
【選択図】図4

Description

本発明は、光導波路素子及びその製造方法に関する。
情報化社会の進展は著しく、特に最近では動画をはじめとする大容量の情報が企業間だけでなく個人の間でも頻繁にやり取りされるようになり、更なる大容量の高速通信手段が求められている。
大容量高速通信を支える技術の一つに、光通信技術がある。光通信に用いられる素子としては、光ファイバをはじめとして、光スイッチ素子、光変調器やルーターなどの様々な光導波路素子がある。
近年、電気光学(Electro-optic、以下「EO」と略す)効果で導波光を制御する導波路型光素子の開発が盛んに行われるようになってきた。光導波路素子では、様々なタイプの導波路構造が検討されており、それと同様に様々な導波路形成の方法が報告されている。
従来、上記光導波路素子の光導波路の材料としては、大きなEO効果を示すニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ランタン添加のチタン酸ジルコン酸鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3、「PLZT」と略す)などの無機系材料が広く用いられている。
一方、ポリマーは無機系材料に比べ誘電率が低く、マイクロ波との速度不整合の問題を大幅に改善できることに加えて、スピンコート法などにより容易に薄膜形成が可能であり、サイズの制限も受けない。また、微細加工、成型加工等の加工性にも優れることから、極めて安価に素子化ができるという大きな利点を有するため、光導波路材料として注目を集めている(例えば、非特許文献1参照)。
このような高分子光導波路素子は、下部クラッド層、導波路層、上部クラッド層となる高分子材料あるいは高分子前駆体化合物を、シリコン等からなる基板上に溶融又は溶解させた状態で順次塗布、硬化させた後に、切断や研磨によって導波路端面を鏡面化することで作製される。また、導波路の形成は、フォトリソグラフィやエッチング等、周知の技術を組み合わせて行われる。特に、電気光学効果を始めとする非線形光学効果を利用するデバイスを作製する場合には、基板上や上部クラッド層の上に電極を配する。クラッド材料としては光あるいは熱硬化性の接着剤が、導波路層材料としては高分子化合物を有機溶剤に溶かした溶液が一般に用いられている。
このような有機材料の有する電気光学効果を用いて光を制御する上記光導波路素子においては、ポーリング処理と呼ばれる電界の印加による、分子の配向を一定の方向にそろえてやるための工程が不可欠である(例えば、特許文献1)。
特開2003−84323号公報 APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 77, NUMBER 1, PAGE 1
従来、光導波路素子に形成される電極は、加工性の容易さから、下部電極として、基板全面に形成し、有機層を製膜後に、制御用の電極を素子の上部に形成された電極層に対してフォトマスクを用いてパターンニングを行った後、リフトオフあるいはエッチングにより形成される。しかる後、素子状に切断加工を行い、ポーリング処理を行わることが一般的であった。
このポーリング処理においては、例えば、80℃以上150℃以下の温度において、数100Vの電圧を印加することにより行われるが、高温高電圧の条件では、素子の静電破壊が起こりやすくなるとともに、素子表面を流れる放電が生じやすくなることにより、制御用の電極が破壊されるという問題があった。このため、非線形光学分子の電気化学効果をより高く引き出すためには、より高い電圧によりポーリング処理を行うことが好ましいが、上限電圧が、制限されてしまい、素子の性能を十分に引き出すことができないという問題があった。
本発明の課題は、静電破壊や放電を抑制しつつより高い電圧でポーリング処理を行うことが可能であり、より高い有機非線形光学材料の電気光学効果が引き出された光導波路素子及びその製造方法を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
基板上に、下部電極層を形成する工程と、
前記下部電極層上に下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層上に、有機非線形光学材料を含み電気光学効果を有する導波路層を形成する工程と、
前記導波路層に光の伝搬を行う導波路を形成する工程と、
前記導波路層の上部に上部クラッド層を形成する工程と、
前記上部クラッド層上に、上部電極層を形成する工程と、
2つの光の入出力端面と該入出力端面と交わる2つの側端面とが切断面となるように素子状に切断する工程と、
を有し、
下部電極層を形成する工程が、前記切断面と交わる領域の一部又は全部を前記下部電極層の非形成領域となるように、前記下部電極層を形成する工程である、
ことを特徴とする光導波路素子の製造方法である。
請求項2に係る発明は、
前記導波路層を形成した後、パターンニングを行い、リッジ型の構造に加工することを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子の製造方法である。
請求項3に係る発明は、
下部クラッド層を形成した後、パターンニングを行い、該下部クラッド層を加工してトレンチを形成する工程と、この上に、導波路層を形成することにより、逆リッジ型の構造を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路素子の製造方法である。
請求項4に係る発明は、
基板上に、少なくとも、下部電極層と、下部クラッド層と、有機非線形光学材料を含み電気光学効果を有すると共に光の伝搬を行う導波路を有する導波路層と、上部クラッド層と、上部電極層と、を順次備え、
2つの光の入出力端面と、該入出力端面と交わる2つの側端面とを有し、当該各面における前記下部電極層の一部又は全部が下部クラッド層で覆われていることを特徴とする光導波路素子である。
請求項5に係る発明は、
前記導波路層の導波路の構造が、リッジ型、あるいは逆リッジ型の構造であることを特徴とする請求項4に記載の光導波路素子である。
請求項1に係る発明によれば、放電や静電破壊を抑制しつつより高い電圧でポーリング処理を行うことが可能であり、より高い有機非線形光学材料の電気光学効果が引き出される、という効果を奏する。
請求項2に係る発明によれば、光導波路における電極層による光吸収損失が抑制され、光導波路素子の実効電界が強められ、駆動電圧の低減化が図れる、という効果を奏する。
請求項3に係る発明によれば、光導波路における電極層による光吸収損失が抑制され、光導波路素子の実効電界が強められ、駆動電圧の低減化が図れる、という効果を奏する。
請求項4に係る発明によれば、放電や静電破壊を抑制しつつより高い電圧でポーリング処理を行うことが可能であり、より高い有機非線形光学材料の電気光学効果が引き出される、という効果を奏する。
請求項5に係る発明によれば、光導波路における電極層による光吸収損失が抑制され、光導波路素子の実効電界が強められ、駆動電圧の低減化が図れる、という効果を奏する。
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能・作用を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
図1は、実施形態に係る光導波路素子の斜視図を示す。図2は、実施形態に係る光導波路素子の断面図を示し、図1のA−A断面図である。図3は、他の実施形態に係る光導波路素子の断面図であり、図1のA−A断面図に相当する。
本実施形態に係る光導波路素子100は、図1及び図2に示すように、基板10上に、下部電極層12、下部クラッド層14、光を伝播する導波路16Aを有する導波路層16、上部クラッド層18、及び上部電極層20が順次備える。そして、実施形態に係る光導波路素子100は、下部電極層12は、2つの光の入出力端面X1、X2と、該入出力端面X1、X2と交わる2つの側端面Y1、Y2とを有しており、当該各面における下部電極層12の全部が下部クラッド層14で覆われている。即ち、下部電極層12が下部クラッド層14により完全に覆われて、下部クラッド層14内に埋設されている。但し、図示しないが、ポーリング処理や駆動のために、接地を図る目的で、端面から一部、下部電極層12が露出していることがよい。
但し、なお、本実施形態では、各端面において、下部電極層12の全部が下部クラッド層14で覆われている形態を説明しているが、これに限られず、下部電極層12の一部が下部クラッド層14で覆われている形態、即ち端面に一部、下部電極層12が露出している形態(例えば、断続的に下部電極層12が露出した形態)、また、各端面ごとに下部電極層12が露出する程度(下部クラッド層14に覆われる程度)が異なる形態(例えば入出力端面では下部電極層12が露出しており、側端面では下部クラッド層14に覆われた形態)であってもよい。
以下、本実施形態に係る光導波路素子100を、その製造方法に従って際に説明する。図4及び図5は、実施形態に係る光導波路素子の製造方法を示す工程図である。
まず、本実施形態に係る光導波路素子100の製造方法では、基板10を準備し、図4(A)に示すように、当該基板10上の全面に下部電極層12を形成する。
基板10としては、各種金属基板(アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、ステンレスなど)、各種半導体基板(シリコン、酸化シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム−ヒ素など)、ガラス基板、プラスチック基板(PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドなど)、等を用いることができる。これらの基板は厚く剛直でもよいし、薄く柔軟でもよい。
下部電極層12を構成する材料としては、Au、Ti、TiN、Pt、Ir、Cu、Al、Al−Cu、Al−Si−Cu、W、Moなどの各種金属、各種酸化物(NESA(酸化スズ)、酸化インジウム、ITO(酸化スズ−酸化インジウム複合酸化物)や、各種有機導電体(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン)などが用いられる。
下部電極層12は、例えば、公知の方法、例えば、DCマグネトロン・スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、電解メッキ法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RFマグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE法、CVD法、プラズマCVD、MOCVD法などより選ばれる気相成長法、又はゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって、オーバークラッド層表面から薄膜成長を行うことができる。
次に、図4(B)に示すように、あらかじめ決められた素子の形状にしたがって、後述する切断工程(図5(H)参照)による切断により形成される切断面と交わる領域における下部電極層12の全部を除去して、下部電極層非形成領域12Aを設ける。具体的には、図6に示すように、素子の形状枠(切断線:点線)に沿って下部電極層非形成領域12Aを設けて、下部電極層12を形成している。但し、図示しないが、ポーリング処理や駆動のための接地を図る目的で、切断面から下部電極層12を露出させるため、切断面と交わる領域の一部の下部電極層12を除去しないことがよい。
ここで、切断面と交わる領域は、下部電極層12の上方(厚み方向)から見た場合、下部電極層12表面と各切断面とが交差する仮想線となる(以下、この仮想線を切断線と呼び、図中、点線で示す)を含み、当該切断線に沿った所定幅の領域である。そして、切断線を含む領域を、下部電極層12を加工することにより除去して、下部電極層非形成領域12Aを設ける。この加工には、例えばドライエッチングが用いられる。エッチングの深さは、下部電極層12の膜厚と同等か、あるいは下部電極層12よりも深く加工することにより、下部電極層12をその厚み方向において完全に除去することができる。その際、基板10の一部を除去することになってもよい。除去する幅、即ち下部電極層非形成領域12Aの幅は切断線の幅よりも太くすることが好ましく、具体的には、切断線より両側に50μm以上2500μm以下の範囲で除去することがより好ましい。
なお、本実施形態では、当該領域における下部電極層12の全部を除去する形態を説明するが、当該領域における下部電極層12の一部を除去する形態であってもよい。また、本実施形態では、下部電極層12を形成した後、該当領域を除去することで、下部電極層非形成領域12Aを設ける形態を説明するが、リフトオフ法などを利用して、予め所定領域のみにパターン状に下部電極層12を形成することで、下部電極層非形成領域12Aを設ける形態であってもよい。
次に、図4(C)に示すように、下部電極層12が形成された基板10上に下部クラッド層14を形成する。これにより、下部電極層12上と共に基板10上の下部電極層非形成領域12A上にも形成され、下部クラッド層14により下部電極層が表面及び側面共に覆われる。
下部クラッド層14としては、導波路層よりも屈折率の低い材料を選択することがよい。下部クラッド層を構成する材料としては、導波路層の形成時にインターミキシングを起こさない材料が好ましく、一般的に知られている熱硬化型の架橋樹脂、紫外線硬化型の架橋樹脂、無機材料、導電性高分子、フッ素化ポリマーなどを用いることができる。
熱硬化型の架橋樹脂としては、例えばポリイミド、ポリウレタン、ポリベンゾシクロロブテン、ポリアミドなどが挙げられ、前記紫外線硬化型の架橋樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
下部クラッド層14を形成する手段としては、高分子材料であれば、スピンコート法、ディップ法などの一般的な溶液塗布方法が用いられる。また、無機材料であれば、電子ビーム蒸着法、フラッシュ蒸着法、イオン・プレーティング法、RF(高周波)−マグネトロン・スパッタリング法、DC(直流)−マグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビーム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、MBE(分子線エピタキシャル法)、CVD(気相成長法)、プラズマCVD、MOCVD(有機気相成長法)などより選ばれる気相成長法、又はゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスによって作製が可能であるが、これらに限られるわけではない。
なお、下部クラッド層14の膜厚は、利用する光の波長やモードなど、導波路設計指針に依存するが、1μm以上20μm以下程度の範囲が好ましく、1.5μm以上10.0μm以下程度の範囲とすることがより好ましい。下部クラッド層14の膜厚が厚い場合には、導波路層にかかる実効電圧が低くなるため、充分な電気光学効果が得られず、また、薄い場合には、下部電極層12による光吸収が増加するため、光損失が大きくなるという問題が生じる場合がある。
次に、図4(D)に示すように、下部クラッド層14上に、有機非線形光学材料(非線形効果を付与したポリマー)を含む導波路層16を形成する。
ここで、有機非線形光学材料(非線形光学ポリマー)とは、高分子マトリックス中に非線形光学特性を有する有機化合物を添加した有機非線形光学ポリマーや、高分子の主鎖あるいは側鎖に、非線形光学特性を有する構造(以下、「クロモフォア構造」という場合がある)を導入した主鎖型有機非線形光学ポリマーあるいは側鎖型有機非線形光学ポリマーなどをいう。
導波路層16を構成する材料としては、光導波路が形成可能なものであり、下部クラッド層14よりも屈折率の高い材料である有機非線形光学材料(非線形光学ポリマー)を用いることが好ましく、前記のように、高分子の側鎖又は主鎖に、ポリマーに非線形性を付与する目的でクロモフォア構造を導入したものを用いることができる。
上記高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシラン、ポリベンゾシクロブテンなどを用いることができる。
前記クロモフォア構造は、公知のものであれば特に限定されないが、下記の構造式(1)で表されるものが好ましい。
D−P−A ・・・ 構造式(1)
構造式(1)中、Dは、電子供与性を有する原子団、Pは結合部、Aは電子吸引性を有する原子団、を表す。構造式(1)において、「D」で表される電子供与性を有する原子団としては、電子供与性を有するものであれば公知のものを用いることができるが、電子供与性置換基を有する、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせからなるものであることが好ましい。前記電子供与性置換基としては、電子供与性を有するものであれば特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、などが望ましい。なお、前記アルキル基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、前記アルコキシ基の一部がアルコキシ基やフェニル基で置換されてもよく、また、前記アミノ基の一部がアルキル基やアルコキシ基、あるいはフェニル基で置換されてもよい。
一方、「A」で表される電子吸引性を有する原子団としては、電子吸引性を有するものであれば公知のものいずれでも良いが、電子吸引性置換基を導入した、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらの組み合わせ、などの構造が望ましい。
電子吸引性置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン置換されたアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、などが望ましい。
また、「P」で表される結合部は、「D」と「A」とを共有結合で結ぶものであれば如何なるものであっても良いが、電子を非局在化しうる共役結合を持つものが望ましく、例えばπ共役系で「D」と「A」とを結びつけるような構造を有するものが望ましい。具体的には、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環、及びそれらが互いに結合したものなどが望ましい。
導波路層16の形成は、前記クロモフォア構造を有する高分子材料、あるいはクロモフォア構造を有する有機化合物と高分子材料とを混合したものを、これらを溶解する溶剤に溶解しコーティング液を作製し、このコーティング液を前記下部クラッド層等の表面にコートすることにより行う。
導波路層のコーティングは、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、ディップコート、など公知の方法を用いて行うことができる。溶剤の除去は、送風乾燥機などで加熱乾燥しても良いし、減圧(真空)乾燥機などで乾燥してもよい。
導波路層16の膜厚としては、ポリマー導波路の作用部に電界を効果的にかけるために、導波路層16の膜厚は薄いほうが好ましく、5.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。膜厚が5.0μmより厚いと、ポリマー導波路の作用部への電界印加が大きくなり、目的の低駆動電圧を達成することが不可能となる場合がある。なお、導波路層の膜厚の下限は1.0μm程度である。
次に、図4(E)に示すように、例えば、ドライエッチング法により導波路層16に加工を施し、リッジ型(導波路16Aが上部クラッド層18側へ凸状に突出した形状)の導波路16Aを形成する。
導波路16Aのリッジパターンとしては、直線型を示しているが、これに限られず、S字型、Y分岐型、X交差型、あるいはそれらの組み合わせの導波路パターンが挙げられる。リッジ幅とリッジ高さは、導波路の屈折率と膜厚との組み合わせにより異なるが、リッジ高さ(段差)は一般的には50〜3000nmの範囲が好ましく、500〜2000nmの範囲がより好ましい。段差が50nmに満たないと、十分な屈折率差が得られず光の閉じ込めができなくなる場合がある。3000nmを越えると、マルチモードとなって目的とする素子の機能を十分に発揮できなくなる場合がある。 また、リッジ幅としては、1〜15μmの範囲が好ましく、3〜10μmの範囲がより好ましい。
なお、導波路層16の導波路16Aの構造は、リッジ型に限られず、例えば、予め、下部クラッド層14を、反応性イオンエッチング(RIE)、湿式エッチング、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の半導体プロセス技術を用いた公知の方法によりパターニングしておき、その上に導波路層16を形成して、逆リッジ型の導波路16Aの構造としてもよい(図3参照)。
導波路層16の導波路16Aの構造が、リッジ型、又は逆リッジ型の構造をとることにより、上下クラッド層との屈折率差を大きく取ることが可能となる。従って、電極による吸収損失を抑制し、かつ素子の実効電界を強めることが可能となることから、駆動電圧の低減をはかることが可能となる。
次に、図5(F)に示すように、導波路16Aが形成された導波路層16上に、上部クラッド層18を形成する。上部クラッド層18を構成する材料としては、導波路層16よりも屈折率の低い材料であり、上部クラッド層18形成時に、導波路層とインターミキシングを起こさない材料が好ましく、下部クラッド層14に用いた材料等を用いることができる。また、上部クラッド層18を形成する手段としても、下部クラッド層14の形成に用いた手段を同様に使用することができる。なお、上部クラッド層18の膜厚としては、1μm以上20μm以下の範囲が好ましく、1.5μm以上10.0μm以下の範囲がより好ましい。
ここで、通常、導波路層16の屈折率に比べ、クラッド層(下部クラッド層14、上部クラッド層18)の屈折率を小さくする必要がある。導波路層16とクラッド層との屈折率の差は、どのような素子として用いるかによって異なるが、例えば、シングルモードの導波路素子として用いる場合には、上記導波路層16とクラッド層との屈折率の差は、0.01%以上10%以下の範囲であることが好ましい。
次に、図5(G)に示すように、上部クラッド層18の表面に、上部電極層20を形成する。上部電極層20は、例えば、下部電極層12との間に電界が形成されたときに、その形成された電界内に位置する導波路16Aの領域を伝播する光の位相を変化させるとともに、導波路16Aに入射した光の強度が変調されて出射されるような位置に設けられる。
ここで、下部電極層12と下部クラッド層14との間、及び上部クラッド層18と上部電極層20との間には、必要に応じて他の層が形成されていてもよく、接着性を向上させるための接着層、表面の凹凸を平滑化するための下引層、あるいはこれらの機能を一括して提供する何らかの中間層、が形成されていてもよい。
このような層を構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、メタクリル、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、フェノール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
また、導波路層16と上下クラッド層(下部クラッド層14、上部クラッド層18)との間には余計な層はなるべく形成しない方がよいが、素子の特性に影響のでない程度に、前記のような層をごく薄く形成してもよい。あるいは、下部クラッド層14表面、導波路層16表面に、市販の界面活性剤などを処理することにより、上層との接着性、コーティング時のぬれ性、成膜性などを改善できる場合がある。
次に、図5(H)に示すように、上記の工程により作製された光導波路素子基板(積層体)を、素子状に切断し、素子を完成する。この切断により切断面として、2つの光の入出力端面X1、X2と該入出力端面X1、X2と交わる2つの側端面Y1、Y2とが形成される。切断にはダイサーなどが用いられる。なお、素子状とは、一般的には矩形状のことを指すが、光入出力端面での戻り光を低減することを目的として、菱形状、あるいは台形状に加工する場合も含まれる。さらに、モジュール化のためにパッケージングなどの都合により、羽根状の突起部分、あるいは窪み部分を設けたりすることも含む。
ここで、上記光導波路素子100の導波路16Aに、非線形光学効果(電気光学効果)を発現させるためには、ポーリング処理により分子の配向を揃える必要がある。
上部電極を形成した後、必要に応じてポーリング処理を行う。ここで該ポーリング処理とは、成膜した後に、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱した状態で電場を印加して配向処理することにより、導波路16A(導波路層16)を構成する上記有機非線形材料の分極方向、あるいは、前記クロモフォアを有する有機非線形材料のクロモフォア部分の分極方向、に配向させ、これを維持した状態で、Tg以下に温度を下げた後に電界を取り除く処理をいう。
このようなポーリング処理としては、電場の印加方法として、非線形光学ポリマーを2つ以上の電極で直接挟み込んで電場を印加する方法、非線形光学ポリマーと電極との間に液体などの媒体を介して電場を印加する方法、あるいは、コロナ放電により間接的な方法で非線形光学ポリマーに対して電場を印加する方法などが公知である。
ポーリング温度は、ガラス転移温度以上が好ましく、具体的には100〜200℃の範囲内に0.5〜10時間程度保持することが望ましい。ポーリング温度を室温から最終的な温度まで段階的に上昇させる場合、各ステップの上昇温度は5〜50℃程度の範囲、各ステップの時間は10〜120分間程度が望ましく、それらは終始同じでも異なってもよい。連続的に上昇させる場合の昇温速度は、0.1〜20℃/分程度とすることが望ましく、前記の段階的に温度を上昇させるステップと組み合わせてもよい。
コロナ放電法では、電極、グリッド、サンプル表面の位置関係はこの順であれば任意であるが、電極とサンプル表面との最短距離は5mm以上100mm以下程度の範囲、グリッドとサンプル表面との最短距離は1mm以上30mm以下程度の範囲とすることが好ましい。グリッドを使用することにより放電を安定化できる場合があり、さらにサンプル表面に必要以上のイオン流が流れ込むのを防止することができるため、表面へのダメージを低減する効果もあると考えられる。
ポーリングの際に電極やグリッドに印加する電圧は一定でもよいし、連続的あるいは段階的に変化させてもよく、温度上昇や下降のタイミングに合わせても合わせなくてもよい。例えば、コロナ電極に印加する電圧は1〜20kV程度の範囲、グリッドを使用する場合のグリッド電圧は0.1kV以上2kV以下程度の範囲とするのが好ましい。
このように構成された光導波路素子100は、光の変調を行う光変調素子や、スイッチングを行う光スイッチとして用いられる。
以上説明した本実施の形態の光導波路素子100では、素子作製時に、素子状に切削するときの切断面と交わる領域の一部又は全部に下部電極層非形成領域12Aを設けて下部電極層12することで、素子端面において、下部電極層12の全部(又は一部)が下部クラッド層14により覆われている、即ち、下部クラッド層14により下部電極層12が埋設された構造となっている。このため、ポーリング処理の際、下部電極層12が素子端面に全て露出している場合に比べ、電圧の印加による電極の放電や静電破壊が抑制されつつ、高い電圧の印加によるポーリング処理が実現される。その結果、有機非線形光学材料の配向度が向上し、より高い有機非線形光学材料の電気光学効果が引き出される。
以下、発明の詳細を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。言うまでもなく、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
導波路層の材料として、下記構造式で表されるポリカーボネート樹脂(式中m:0.63n:(1−0.63))を、THF(テトラヒドロフラン)1質量部とシクロヘキサノン4質量部とを混合した溶媒中に溶解し、15質量%の樹脂溶液を調製した。次いで、この樹脂溶液中に、Dispers Red 1を固形分比として20質量%となる量だけ添加して溶解し、導波路層用塗布液とした。
Figure 2009098197
石英基板(直径:50.8mm、厚さ:0.5mm)表面に、レジストを塗布した後、フォトリソグラフィーを用いて下部電極層のパターンを形成し、スパッタ法によりAuを厚さ0.3μm成膜し、リフトオフ法により下部電極層を形成した。この下部電極層は、素子状に切断する際の切断線に沿った幅500μmの領域が下部電極層非形成領域となるように、下部電極層のパターンを所定形状にして形成した。但し、切断線を含む領域の一部には下部電極層を形成するようにした。
次いで、この下部電極表面に、フッ素化ポリイミド原料(日立化成製、OPI−N3405)を、スピンコート法により塗布した後、加熱によりイミド化しフッ素化ポリイミド膜として下部クラッド層(屈折率1.51)を形成した。該下部クラッド層の膜厚は5.0μmであった。
次いで、下部クラッド層の表面に、先に作製した導波路層用塗布液を滴下し、スピンコートにより製膜し、溶媒を乾燥して導波路層(屈折率1.58)とした。該導波路層の膜厚は、2.4μmであった。この導波路層に、フォトリソグラフィーを用いて、導波路パターンを作製した後、ドライエッチングにより、導波路として幅が4.1μmで、0.8μmの段差を有するリッジ型の直線状チャネル導波路を作製した。
さらに、導波路を形成した導波路層の表面に、エポキシ樹脂をスピンコートにより塗布して上部クラッド層(屈折率1.51)を形成した。該上部クラッド層の膜厚は4.9μmであった。
次いで、上部クラッド層上に、この上部クラッド層上に、レジストを塗布した後、フォトリソグラフィにより上部電極のパターンを形成し、金をスパッタ、リフトオフすることで、リッジ型の導波路と対向する部分に対して厚い0.3μmの上部電極を形成した。
このようにして各層を積層した積層体を、ダイサーにより、5mm×20mmに切断して切り出して、その切断面が2つの光の入出力端面と該入出力端面と交わる2つの側端面となるチップを得た。得られたチップの端面を見たところ、下部電極層は一部を除いて露出していなかった。
得られたチップを、130℃に加熱されたホットプレート上に固定し、130℃に保持した状態で、電圧印加手段(ポーリング装置)より上部電極層と下部電極層との間に600Vの直流電圧を印加し、30分間保持した。その後、電圧を印加した状態で温度を室温(25℃)まで下げた。このようにしてポーリング処理を施すことで、光導波路素子を得た。
なお、ポーリング処理の際、下部電極層と上部電極層との間で放電も生じることもなく上部電極の破損も見られなかった。また、素子が静電破壊することもなく、正常な処理を施すことができた。
得られた光導波路素子について、光導波路の光入射側から光入出力用の光ファイバ(を介して波長1.55μmのレーザ光を1mWの強度で入射させると共に、25℃、の環境下で、この光導波路素子の2つの上部電極の一方の電極と下部電極との間に、周波数が10Hzであり、最大値が+10V、及び最小値が−10Vの三角波を印加して、素子の変調特性を評価したところ、半波長電圧(Vπ)は4Vの結果が得られ、光変調素子モジュールとして機能することが確認された。
なお、変調特性(半波長電圧)は、次のようにして評価した。出射光を光ファイバを介して、光パワーメーター(アンリツ社製、MT9812B+MU931241A)により計測し、印加電圧対出射光強度の関係から、変調特性曲線を求め、最大光出力電圧と最小光出力電圧の差から半波長電圧:Vπを求めた。
[比較例1]
下部電極層を形成する際、下部電極層非形成領域を設けなった以外は、実施例1と同様に光導波路素子を作製しようとしたところ、ポーリング処理を行う際、上部電極層と下部電極層との間に電圧を印加した瞬間に、上部電極層と下部電極層(素子端面)との間に放電が発生し、上部電極層が破損してしまい、ポーリング処理を施すことができなかった。
本実施形態に係る光導波路素子を示す斜視図である。 本実施形態に係る光導波路素子を示す断面図である。 他の実施形態に係る光導波路素子を示す断面図である。 本実施形態に係る光導波路素子の製造方法を示す工程図である。 本実施形態に係る光導波路素子の製造方法を示す工程図である。 図4(B)における、下部電極層を示す平面図である。
符号の説明
10 基板
12 下部電極層
12A 下部電極層非形成領域
14 下部クラッド層
16 導波路層
16A 導波路
18 上部クラッド層
20 上部電極層
100 光導波路素子

Claims (5)

  1. 基板上に、下部電極層を形成する工程と、
    前記下部電極層上に下部クラッド層を形成する工程と、
    前記下部クラッド層上に、有機非線形光学材料を含み電気光学効果を有する導波路層を形成する工程と、
    前記導波路層に光の伝搬を行う導波路を形成する工程と、
    前記導波路層の上部に上部クラッド層を形成する工程と、
    前記上部クラッド層上に、上部電極層を形成する工程と、
    2つの光の入出力端面と該入出力端面と交わる2つの側端面とが切断面となるように素子状に切断する工程と、
    を有し、
    下部電極層を形成する工程が、前記切断面と交わる領域の一部又は全部を前記下部電極層の非形成領域となるように、前記下部電極層を形成する工程である、
    ことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
  2. 前記導波路層を形成した後、パターンニングを行い、リッジ型の構造に加工することを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子の製造方法。
  3. 下部クラッド層を形成した後、パターンニングを行い、該下部クラッド層を加工してトレンチを形成する工程と、この上に、導波路層を形成することにより、逆リッジ型の構造を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路素子の製造方法。
  4. 基板上に、少なくとも、下部電極層と、下部クラッド層と、有機非線形光学材料を含み電気光学効果を有すると共に光の伝搬を行う導波路を有する導波路層と、上部クラッド層と、上部電極層と、を順次備え、
    2つの光の入出力端面と、該入出力端面と交わる2つの側端面とを有し、当該各面における前記下部電極層の一部又は全部が下部クラッド層で覆われていることを特徴とする光導波路素子。
  5. 前記導波路層の導波路の構造が、リッジ型、あるいは逆リッジ型の構造であることを特徴とする請求項4に記載の光導波路素子。
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JP2015197499A (ja) * 2014-03-31 2015-11-09 住友大阪セメント株式会社 光導波路素子およびその製造方法
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