JP2005009627A - 防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸直角方向の荷重入力時におけるストッパー用ゴムの歪みを均一化して亀裂等の発生を防止しながら、広幅面同士の当接にかかわらず、優れたクッション性を発揮させて異常音や不測振動の発生を抑制できるようにする。
【解決手段】第1取付部材1とその同軸上に配置された第2取付部材2との間にゴム状弾性体からなる防振基体3が介在されているとともに、第2取付部材2から軸直角方向に突設されたストッパー用フランジ4の車両前後方向の当接部4Xを第1取付部材1の内周面と略同一の曲率半径とするとともに、ストッパー用ゴム6における車両前後方向側のゴム部分6Xを左右方向のゴム部分6Yよりも厚くし、この厚いゴム部分6Xに周方向に複数の貫通孔7を形成している。
【選択図】 図3
【解決手段】第1取付部材1とその同軸上に配置された第2取付部材2との間にゴム状弾性体からなる防振基体3が介在されているとともに、第2取付部材2から軸直角方向に突設されたストッパー用フランジ4の車両前後方向の当接部4Xを第1取付部材1の内周面と略同一の曲率半径とするとともに、ストッパー用ゴム6における車両前後方向側のゴム部分6Xを左右方向のゴム部分6Yよりも厚くし、この厚いゴム部分6Xに周方向に複数の貫通孔7を形成している。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車用エンジンから車体への振動の伝達を低減するためにエンジンと車体との間に介装して用いられるエンジンマウントに代表されるところの防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の防振装置の代表例であるエンジンマウントとして、従来、図5,図6に示すような構造のものが提案されている。このエンジンマウント100は、車体側に取付けられる円筒状の第1取付部材101と、この第1取付部材101と同軸上に配置されてエンジン側に取付けられる第2取付部材102と、これら第1、第2取付部材101,102間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体103と、前記第2取付部材102からそれの軸方向に対して直角方向に突設された略円盤状のストッパーゴム部104とを備え、軸直角方向の荷重入力に伴いストッパーゴム部104が前記第1取付部材101の内周面に当接することにより、エンジン側の第2取付部材102が過大に変位することを制限するものである。
【0003】
ここで、前記ストッパーゴム部104は、軸直角方向の一方向、具体的には車両の前後方向X側の当接部104Xの外周縁が、これに対向する車体側の第1取付部材101に最初から広幅で当接するように、その当接部104Xの外周縁の曲率半径を第1取付部材101の内周面の曲率半径と略同一に設定されているとともに、この当接部104Xにおけるゴム厚T0が周方向に一定に形成されており、これにより、軸直角方向で車両の前後方向X側の荷重入力時におけるストッパーゴム部104の歪みの均一化を図り、ストッパーゴム部104のうちの一部分の歪みが大きくてその部分に荷重が繰り返し入力されることによる亀裂等の発生を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−248948号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような構成の従来のエンジンマウント100では、車両の前後方向のように、軸直角方向から衝撃荷重が入力されたとき、ストッパーゴム部104における当接部104Xが第1取付部材101の内周面に対し広幅の面同士で当接することになり、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴム部の歪みの均一化が図れるものの、広幅面同士の当接であるため、歪みに対する応力の立ち上がりが激しい。したがって、例えば車両の加速時においてストッパーゴム部の一方向側、詳しくは前方側からの荷重入力にともない当接部104Xと車体側の第1取付部材101との当接により異常音や不測の振動を発生する可能性がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、軸直角方向の荷重入力時におけるストッパー用ゴムの歪みを均一化して亀裂等の発生を防止しながら、広幅面同士の当接にかかわらず、優れたクッション性を発揮させて異常音や不測振動の発生を抑制することができる防振装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る防振装置は、円筒状の第1取付部材と、この第1取付部材と同軸上に配置された第2取付部材と、これら第1、第2取付部材間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記第2取付部材からそれの軸方向に対して直角方向に突設されたストッパー用フランジと、このストッパー用フランジの外周部との間に軸直角方向の環状隙間を形成するように前記第1取付部材の内周面全域に設けられたストッパー用ゴムとを備えている防振装置において、前記ストッパー用フランジは、前記軸直角方向のうち軸心を挟んで直径方向に対向する二つの一方向側の当接部の曲率半径が第1取付部材の内周面の曲率半径以下に設定され、前記ストッパー用ゴムは、ストッパー用フランジにおける前記二つの一方向側の当接部に対向する部分のゴム厚がストッパー用フランジにおける二つの他方向側の当接部に対向する部分のゴム厚よりも厚く設定され、このゴム厚が厚い二つの一方向側のゴム部分のうち、少なくとも一方のゴム部分には周方向に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記構成の本発明によれば、ストッパー用フランジの軸直角方向のうち軸心を挟んで直径方向に対向する二つの一方向側の当接部の曲率半径を第1取付部材の内周面の曲率半径以下に設定することにより、ストッパー用フランジとストッパー用ゴムとの周方向における当接面範囲が広くなり、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴムの歪みの均一化が図れ、悪路走行等によって荷重が繰り返し入力されたとしてもストッパー用ゴムに亀裂等を発生することが防止される。また、ストッパー用ゴムの前記ストッパー用フランジにおける二つの一方向側の当接部に対応する部分のゴム厚を厚くし、そのうち、少なくとも一方のゴム厚の厚い部分に周方向に複数の貫通孔を形成することにより、このゴム厚の厚い部分のばね定数を小さくすることが可能となる。これによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴムの一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジが当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑えることができる。
【0009】
本発明に係る防振装置において、請求項2に記載のように、前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分の内周面の曲率半径を、ストッパー用フランジにおける二つの一方向側の当接部の曲率半径と略同一に設定することにより、ストッパー用フランジにおける一方向側の当接部をストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い部分の全域で同時に受けることが可能で、ゴム歪みを一層均一化することができる。
【0010】
また、本発明に係る防振装置において、前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分それぞれのクッション性を高めるために、これら両ゴム部分にそれぞれ周方向に複数の貫通孔を形成してもよいが、請求項3に記載のように、両ゴム部分のうち、軸直角方向の入力荷重の主入力方向のゴム部分には、周方向に複数の貫通孔が形成され、もう一方のゴム部分は、貫通孔が無しでその内周面が前記ストッパー用フランジのもう一方の当接部の曲率半径と略同一の曲率半径を有する湾曲面状に形成されてもよい。
【0011】
特に、請求項4に記載のように、周方向に複数の貫通孔が形成されている側のゴム厚の厚いゴム部分を、周方向に複数の凸部と凹部を交互に有する凹凸状に形成することによって、ストッパー用ゴムの歪みをより均一化できると共に、厚いゴム部分のばね定数をさらに小さくして、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが一層緩やかになり、例えば車両の加速時等における異常音や不測の振動の発生を確実十分に抑えることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る防振装置の代表例である液体封入式の自動車用エンジンマウントの縦断面図(図2のA−A線に沿った縦断面図)、図2は図1のD−D線に沿った横断面図、図3は図1のC−C線に沿った横断面図である。
【0013】
このエンジンマウント50は、車体側に取付けられる円筒状の第1取付部材1と、この第1取付部材1と同軸上に配置されてボルト41を介してエンジン42側に取付けられる略円柱状の第2取付部材2と、これら第1、第2取付部材1,2間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体3と、前記第2取付部材2の軸方向中央部付近からそれの軸方向に対して直角方向に突設された略円盤状のストッパー用フランジ4と、このストッパー用フランジ4の外周部との間に軸直角方向の環状隙間5を形成するように前記第1取付部材1の内周面全域に設けられたストッパー用ゴム6とを備えている。
【0014】
前記第1取付部材1は、円筒状の本体金具11と、この本体金具11を収容するカップ状金具12と、本体金具11の上端にかしめ固定された円筒状のストッパー金具13とからなり、そのストッパー金具13の上端部側には内向きに折曲げ形成されたフランジ部14が有し、このフランジ部14の内周縁によって形成される第1取付部材1の上面開口部15の中央部に前記第2取付部材2が貫通されている。
【0015】
この第1取付部材1の本体金具11には、防振基体3に対向させてゴム膜からなるダイヤフラム16が取付けられ、このダイヤフラム16と防振基体3との間に液封入室17が形成されている。この液封入室17は、弾性膜18aを有する仕切板18によって上下に仕切られており、上下両室は仕切板18の外周に設けられたオリフィス19を介して互いに連通されている。
【0016】
前記ストッパー用フランジ4は、車両の前後方向X側が短径で、車両の左右方向Y側が少し長径となる略楕円形状で、前後方向の二つの当接部4Xと左右方向の二つの当接部4Yとが形成されており、前後方向の二つの当接部4Xの曲率半径R1が、第1取付部材1におけるストッパー金具13の内周面の曲率半径R以下、詳しくは、R1≒Rに設定されている。
【0017】
一方、前記ストッパー用ゴム6は、図3に明示されているように、前記ストッパー用フランジ4における前後方向の二つの当接部4Xに対向するゴム部分6Xのゴム厚が、前記ストッパー用フランジ4における左右方向の二つの当接部4Yに対向するゴム部分6Yのゴム厚よりも厚く設定されている。このゴム厚の厚い前後方向二つのゴム部分6Xのうち、車両前方側のゴム部分6Xには、その周方向に一定の間隔をおいて複数の貫通孔7が形成され、車両後方側のゴム部分6Xは、貫通孔無しでその内周面の曲率半径R2がストッパー用フランジ4の車両前方側の当接部4Xの曲率半径R1と略同一の湾曲面状に形成されている。
【0018】
また、このストッパー用ゴム6の上部には、前記第1取付部材1におけるストッパー金具13のフランジ部14の上下両面及び内周縁を被覆するフランジ被覆ゴム部分6Aが一体形成されており、このフランジ被覆ゴム部分6Aから内方へ向けて前記上面開口部15を閉じるリップ状の環状ゴム膜6Bが一体に延設され、この環状ゴム膜6Bの内周端縁を第2取付部材2の外周面に弾接させることにより、第1取付部材1のストッパー金具13と第2取付部材2との間に、上面開口部15を通して水や砂利等が第1取付部材1におけるストッパー金具13内に侵入することを防止するシール構造が構成されている。
【0019】
なお、前記ストッパー用ゴム6は、前記ストッパー金具13に対して一体に加硫成形されたものであっても、また、単独に加硫成形した後に、第1取付部材1におけるストッパー金具13にはめ込み式に取付けられるものであってもよい。
【0020】
上記のように構成されたエンジンマウント50においては、自動車の走行等に伴い車両の前後方向X、特に車両の前方側から衝撃荷重が入力されたとき、ストッパー用フランジ4の前方側の当接部4Xがストッパー用ゴム6のゴム厚の厚いゴム部分6Xに周方向に広い範囲で当接して受け止められることになり、ストッパー用ゴム6の局部的な歪みを無くして車両の長時間に亘る悪路走行等に伴う振動によって軸直角方向の衝撃荷重が繰り返し入力されても、ストッパー用ゴム6に亀裂等の損傷が生じることを抑制し、それゆえに、車両の加速時等における前方側からの衝撃荷重入力に対しても、ストッパー用フランジ4と第1取付部材1の内周面との当接に伴う異常音や振動の発生を抑えることが可能である。
【0021】
また、ストッパー用ゴム6の前記ストッパー用フランジ4における前後方向の二つの当接部4Xに対応するゴム部分6Xのゴム厚を厚くし、そのうち、車両前方側のゴム厚の厚い部分6Xには周方向に複数の貫通孔7を形成して、このゴム厚の厚いゴム部分6Xのばね定数を小さくすることによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴム6の一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジ4が当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑えることができる。
【0022】
なお、上記実施の形態では、前記ストッパー用ゴム6におけるゴム厚の厚い前後方向に二つのゴム部分6Xのうち、車両前方側のゴム部分6Xにのみその周方向に一定の間隔おきに複数の貫通孔7が形成したもので示したが、車両後方側のゴム部分6Xにも周方向に複数の貫通孔を形成してもよい。
【0023】
また、図4に示すように、周方向に複数の貫通孔7が形成されている車両前方側のゴム厚の厚いゴム部分6Xを、周方向に複数の凸部8と凹部9を交互に有する凹凸状に形成することによって、ストッパー用ゴム6の歪みをより均一化できると共に、厚いゴム部分6Xのばね定数をさらに小さくして、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが一層緩やかになり、例えば車両の加速時等における異常音や不測の振動の発生を確実十分に抑えることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上要するに、本発明によれば、ストッパー用フランジとストッパー用ゴムとの周方向における当接面範囲を広くすることで、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴムの歪みを均一化することができる。これによって、悪路走行等によって荷重が繰り返し入力されたとしてもストッパー用ゴムに亀裂等が発生することを抑制することができる。しかも、ストッパー用ゴムのうち、ゴム厚を厚くしたゴム部分に周方向に複数の貫通孔を形成することにより、このゴム厚の厚い部分のばね定数を小さくすることができ、これによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴムの一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジが当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防振装置の代表例である液体封入式の自動車用エンジンマウントの縦断面図である。
【図2】図1のD−D線に沿った横断面図である。
【図3】図1のC−C線に沿った横断面図である。
【図4】別の実施の形態のエンジンマウントであって、図1のC−C線に沿った箇所での横断面図である。
【図5】従来の自動車用エンジンマウントの構成を示す縦断面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【符号の説明】
1 第1取付部材
2 第2取付部材
3 防振基体
4 ストッパー用フランジ
4X 車両前後方向の当接部
4Y 車両左右方向の当接部
5 環状隙間
6 ストッパー用ゴム
6X 車両前後方向のゴム厚の厚いゴム部分
6Y 車両左右方向の薄いゴム部分
7 貫通孔
8 凸部
9 凹部
50 エンジンマウント
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車用エンジンから車体への振動の伝達を低減するためにエンジンと車体との間に介装して用いられるエンジンマウントに代表されるところの防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の防振装置の代表例であるエンジンマウントとして、従来、図5,図6に示すような構造のものが提案されている。このエンジンマウント100は、車体側に取付けられる円筒状の第1取付部材101と、この第1取付部材101と同軸上に配置されてエンジン側に取付けられる第2取付部材102と、これら第1、第2取付部材101,102間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体103と、前記第2取付部材102からそれの軸方向に対して直角方向に突設された略円盤状のストッパーゴム部104とを備え、軸直角方向の荷重入力に伴いストッパーゴム部104が前記第1取付部材101の内周面に当接することにより、エンジン側の第2取付部材102が過大に変位することを制限するものである。
【0003】
ここで、前記ストッパーゴム部104は、軸直角方向の一方向、具体的には車両の前後方向X側の当接部104Xの外周縁が、これに対向する車体側の第1取付部材101に最初から広幅で当接するように、その当接部104Xの外周縁の曲率半径を第1取付部材101の内周面の曲率半径と略同一に設定されているとともに、この当接部104Xにおけるゴム厚T0が周方向に一定に形成されており、これにより、軸直角方向で車両の前後方向X側の荷重入力時におけるストッパーゴム部104の歪みの均一化を図り、ストッパーゴム部104のうちの一部分の歪みが大きくてその部分に荷重が繰り返し入力されることによる亀裂等の発生を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−248948号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような構成の従来のエンジンマウント100では、車両の前後方向のように、軸直角方向から衝撃荷重が入力されたとき、ストッパーゴム部104における当接部104Xが第1取付部材101の内周面に対し広幅の面同士で当接することになり、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴム部の歪みの均一化が図れるものの、広幅面同士の当接であるため、歪みに対する応力の立ち上がりが激しい。したがって、例えば車両の加速時においてストッパーゴム部の一方向側、詳しくは前方側からの荷重入力にともない当接部104Xと車体側の第1取付部材101との当接により異常音や不測の振動を発生する可能性がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、軸直角方向の荷重入力時におけるストッパー用ゴムの歪みを均一化して亀裂等の発生を防止しながら、広幅面同士の当接にかかわらず、優れたクッション性を発揮させて異常音や不測振動の発生を抑制することができる防振装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る防振装置は、円筒状の第1取付部材と、この第1取付部材と同軸上に配置された第2取付部材と、これら第1、第2取付部材間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記第2取付部材からそれの軸方向に対して直角方向に突設されたストッパー用フランジと、このストッパー用フランジの外周部との間に軸直角方向の環状隙間を形成するように前記第1取付部材の内周面全域に設けられたストッパー用ゴムとを備えている防振装置において、前記ストッパー用フランジは、前記軸直角方向のうち軸心を挟んで直径方向に対向する二つの一方向側の当接部の曲率半径が第1取付部材の内周面の曲率半径以下に設定され、前記ストッパー用ゴムは、ストッパー用フランジにおける前記二つの一方向側の当接部に対向する部分のゴム厚がストッパー用フランジにおける二つの他方向側の当接部に対向する部分のゴム厚よりも厚く設定され、このゴム厚が厚い二つの一方向側のゴム部分のうち、少なくとも一方のゴム部分には周方向に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記構成の本発明によれば、ストッパー用フランジの軸直角方向のうち軸心を挟んで直径方向に対向する二つの一方向側の当接部の曲率半径を第1取付部材の内周面の曲率半径以下に設定することにより、ストッパー用フランジとストッパー用ゴムとの周方向における当接面範囲が広くなり、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴムの歪みの均一化が図れ、悪路走行等によって荷重が繰り返し入力されたとしてもストッパー用ゴムに亀裂等を発生することが防止される。また、ストッパー用ゴムの前記ストッパー用フランジにおける二つの一方向側の当接部に対応する部分のゴム厚を厚くし、そのうち、少なくとも一方のゴム厚の厚い部分に周方向に複数の貫通孔を形成することにより、このゴム厚の厚い部分のばね定数を小さくすることが可能となる。これによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴムの一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジが当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑えることができる。
【0009】
本発明に係る防振装置において、請求項2に記載のように、前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分の内周面の曲率半径を、ストッパー用フランジにおける二つの一方向側の当接部の曲率半径と略同一に設定することにより、ストッパー用フランジにおける一方向側の当接部をストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い部分の全域で同時に受けることが可能で、ゴム歪みを一層均一化することができる。
【0010】
また、本発明に係る防振装置において、前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分それぞれのクッション性を高めるために、これら両ゴム部分にそれぞれ周方向に複数の貫通孔を形成してもよいが、請求項3に記載のように、両ゴム部分のうち、軸直角方向の入力荷重の主入力方向のゴム部分には、周方向に複数の貫通孔が形成され、もう一方のゴム部分は、貫通孔が無しでその内周面が前記ストッパー用フランジのもう一方の当接部の曲率半径と略同一の曲率半径を有する湾曲面状に形成されてもよい。
【0011】
特に、請求項4に記載のように、周方向に複数の貫通孔が形成されている側のゴム厚の厚いゴム部分を、周方向に複数の凸部と凹部を交互に有する凹凸状に形成することによって、ストッパー用ゴムの歪みをより均一化できると共に、厚いゴム部分のばね定数をさらに小さくして、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが一層緩やかになり、例えば車両の加速時等における異常音や不測の振動の発生を確実十分に抑えることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る防振装置の代表例である液体封入式の自動車用エンジンマウントの縦断面図(図2のA−A線に沿った縦断面図)、図2は図1のD−D線に沿った横断面図、図3は図1のC−C線に沿った横断面図である。
【0013】
このエンジンマウント50は、車体側に取付けられる円筒状の第1取付部材1と、この第1取付部材1と同軸上に配置されてボルト41を介してエンジン42側に取付けられる略円柱状の第2取付部材2と、これら第1、第2取付部材1,2間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体3と、前記第2取付部材2の軸方向中央部付近からそれの軸方向に対して直角方向に突設された略円盤状のストッパー用フランジ4と、このストッパー用フランジ4の外周部との間に軸直角方向の環状隙間5を形成するように前記第1取付部材1の内周面全域に設けられたストッパー用ゴム6とを備えている。
【0014】
前記第1取付部材1は、円筒状の本体金具11と、この本体金具11を収容するカップ状金具12と、本体金具11の上端にかしめ固定された円筒状のストッパー金具13とからなり、そのストッパー金具13の上端部側には内向きに折曲げ形成されたフランジ部14が有し、このフランジ部14の内周縁によって形成される第1取付部材1の上面開口部15の中央部に前記第2取付部材2が貫通されている。
【0015】
この第1取付部材1の本体金具11には、防振基体3に対向させてゴム膜からなるダイヤフラム16が取付けられ、このダイヤフラム16と防振基体3との間に液封入室17が形成されている。この液封入室17は、弾性膜18aを有する仕切板18によって上下に仕切られており、上下両室は仕切板18の外周に設けられたオリフィス19を介して互いに連通されている。
【0016】
前記ストッパー用フランジ4は、車両の前後方向X側が短径で、車両の左右方向Y側が少し長径となる略楕円形状で、前後方向の二つの当接部4Xと左右方向の二つの当接部4Yとが形成されており、前後方向の二つの当接部4Xの曲率半径R1が、第1取付部材1におけるストッパー金具13の内周面の曲率半径R以下、詳しくは、R1≒Rに設定されている。
【0017】
一方、前記ストッパー用ゴム6は、図3に明示されているように、前記ストッパー用フランジ4における前後方向の二つの当接部4Xに対向するゴム部分6Xのゴム厚が、前記ストッパー用フランジ4における左右方向の二つの当接部4Yに対向するゴム部分6Yのゴム厚よりも厚く設定されている。このゴム厚の厚い前後方向二つのゴム部分6Xのうち、車両前方側のゴム部分6Xには、その周方向に一定の間隔をおいて複数の貫通孔7が形成され、車両後方側のゴム部分6Xは、貫通孔無しでその内周面の曲率半径R2がストッパー用フランジ4の車両前方側の当接部4Xの曲率半径R1と略同一の湾曲面状に形成されている。
【0018】
また、このストッパー用ゴム6の上部には、前記第1取付部材1におけるストッパー金具13のフランジ部14の上下両面及び内周縁を被覆するフランジ被覆ゴム部分6Aが一体形成されており、このフランジ被覆ゴム部分6Aから内方へ向けて前記上面開口部15を閉じるリップ状の環状ゴム膜6Bが一体に延設され、この環状ゴム膜6Bの内周端縁を第2取付部材2の外周面に弾接させることにより、第1取付部材1のストッパー金具13と第2取付部材2との間に、上面開口部15を通して水や砂利等が第1取付部材1におけるストッパー金具13内に侵入することを防止するシール構造が構成されている。
【0019】
なお、前記ストッパー用ゴム6は、前記ストッパー金具13に対して一体に加硫成形されたものであっても、また、単独に加硫成形した後に、第1取付部材1におけるストッパー金具13にはめ込み式に取付けられるものであってもよい。
【0020】
上記のように構成されたエンジンマウント50においては、自動車の走行等に伴い車両の前後方向X、特に車両の前方側から衝撃荷重が入力されたとき、ストッパー用フランジ4の前方側の当接部4Xがストッパー用ゴム6のゴム厚の厚いゴム部分6Xに周方向に広い範囲で当接して受け止められることになり、ストッパー用ゴム6の局部的な歪みを無くして車両の長時間に亘る悪路走行等に伴う振動によって軸直角方向の衝撃荷重が繰り返し入力されても、ストッパー用ゴム6に亀裂等の損傷が生じることを抑制し、それゆえに、車両の加速時等における前方側からの衝撃荷重入力に対しても、ストッパー用フランジ4と第1取付部材1の内周面との当接に伴う異常音や振動の発生を抑えることが可能である。
【0021】
また、ストッパー用ゴム6の前記ストッパー用フランジ4における前後方向の二つの当接部4Xに対応するゴム部分6Xのゴム厚を厚くし、そのうち、車両前方側のゴム厚の厚い部分6Xには周方向に複数の貫通孔7を形成して、このゴム厚の厚いゴム部分6Xのばね定数を小さくすることによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴム6の一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジ4が当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑えることができる。
【0022】
なお、上記実施の形態では、前記ストッパー用ゴム6におけるゴム厚の厚い前後方向に二つのゴム部分6Xのうち、車両前方側のゴム部分6Xにのみその周方向に一定の間隔おきに複数の貫通孔7が形成したもので示したが、車両後方側のゴム部分6Xにも周方向に複数の貫通孔を形成してもよい。
【0023】
また、図4に示すように、周方向に複数の貫通孔7が形成されている車両前方側のゴム厚の厚いゴム部分6Xを、周方向に複数の凸部8と凹部9を交互に有する凹凸状に形成することによって、ストッパー用ゴム6の歪みをより均一化できると共に、厚いゴム部分6Xのばね定数をさらに小さくして、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが一層緩やかになり、例えば車両の加速時等における異常音や不測の振動の発生を確実十分に抑えることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上要するに、本発明によれば、ストッパー用フランジとストッパー用ゴムとの周方向における当接面範囲を広くすることで、局部的に大きな歪みを生じることがなく、ゴムの歪みを均一化することができる。これによって、悪路走行等によって荷重が繰り返し入力されたとしてもストッパー用ゴムに亀裂等が発生することを抑制することができる。しかも、ストッパー用ゴムのうち、ゴム厚を厚くしたゴム部分に周方向に複数の貫通孔を形成することにより、このゴム厚の厚い部分のばね定数を小さくすることができ、これによって、広幅面での当接にかかわらず、歪みに対する応力の立ち上がりが緩やかになり、例えば車両の加速時等においてストッパー用ゴムの一方向側、詳しくは、車両の前方側からの荷重入力に伴いストッパー用フランジが当接した時のクッション性を高めて異常音や不測の振動の発生を十分に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防振装置の代表例である液体封入式の自動車用エンジンマウントの縦断面図である。
【図2】図1のD−D線に沿った横断面図である。
【図3】図1のC−C線に沿った横断面図である。
【図4】別の実施の形態のエンジンマウントであって、図1のC−C線に沿った箇所での横断面図である。
【図5】従来の自動車用エンジンマウントの構成を示す縦断面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【符号の説明】
1 第1取付部材
2 第2取付部材
3 防振基体
4 ストッパー用フランジ
4X 車両前後方向の当接部
4Y 車両左右方向の当接部
5 環状隙間
6 ストッパー用ゴム
6X 車両前後方向のゴム厚の厚いゴム部分
6Y 車両左右方向の薄いゴム部分
7 貫通孔
8 凸部
9 凹部
50 エンジンマウント
Claims (4)
- 円筒状の第1取付部材と、この第1取付部材と同軸上に配置された第2取付部材と、これら第1、第2取付部材間に介在されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記第2取付部材からそれの軸方向に対して直角方向に突設されたストッパー用フランジと、このストッパー用フランジの外周部との間に軸直角方向の環状隙間を形成するように前記第1取付部材の内周面全域に設けられたストッパー用ゴムとを備えている防振装置において、
前記ストッパー用フランジは、前記軸直角方向のうち軸心を挟んで直径方向に対向する二つの一方向側の当接部の曲率半径が第1取付部材の内周面の曲率半径以下に設定され、
前記ストッパー用ゴムは、ストッパー用フランジにおける前記二つの一方向側の当接部に対向する部分のゴム厚がストッパー用フランジにおける二つの他方向側の当接部に対向する部分のゴム厚よりも厚く設定され、
このゴム厚が厚い二つの一方向側のゴム部分のうち、少なくとも一方のゴム部分には周方向に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする防振装置。 - 前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分は、その内周面の曲率半径が、ストッパー用フランジにおける前記二つの一方向側の当接部の曲率半径と略同一に設定されている請求項1に記載の防振装置。
- 前記ストッパー用ゴムにおけるゴム厚の厚い二つの一方向側のゴム部分のうち、軸直角方向の入力荷重の主入力方向のゴム部分には、周方向に複数の貫通孔が形成され、もう一方のゴム部分は、貫通孔が無しでその内周面が前記ストッパー用フランジのもう一方の当接部の曲率半径と略同一の曲率半径を有する湾曲面状に形成されている請求項1に記載の防振装置。
- 前記複数の貫通孔が形成されている側のゴム厚の厚いゴム部分は、周方向に複数の凸部と凹部を交互に有する凹凸状に形成されている請求項1または2に記載の防振装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003176305A JP2005009627A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 防振装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009002478A (ja) * | 2007-06-25 | 2009-01-08 | Kurashiki Kako Co Ltd | 液体封入式防振支持装置 |
JP2010265958A (ja) * | 2009-05-13 | 2010-11-25 | Bridgestone Corp | 防振装置 |
CN101960165B (zh) * | 2008-02-28 | 2013-06-12 | 株式会社普利司通 | 隔振装置 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003176305A patent/JP2005009627A/ja not_active Withdrawn
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CN101960165B (zh) * | 2008-02-28 | 2013-06-12 | 株式会社普利司通 | 隔振装置 |
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