JP2005009358A - コモンレール及びその製造方法 - Google Patents
コモンレール及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005009358A JP2005009358A JP2003172442A JP2003172442A JP2005009358A JP 2005009358 A JP2005009358 A JP 2005009358A JP 2003172442 A JP2003172442 A JP 2003172442A JP 2003172442 A JP2003172442 A JP 2003172442A JP 2005009358 A JP2005009358 A JP 2005009358A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- rail
- hole
- branch
- casting
- metal material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度の向上を図りながらも、レール孔内に供給される加圧燃料が漏洩することのない耐久性及び気密性に優れたコモンレールと、その製造方法とを提供する。
【解決手段】コモンレールは、長手方向に延びるレール孔11及びその直交方向に延びる分岐孔12を有するレール本体部10と、分岐孔12と燃料配管41とをつなぐ連通路21を提供する分岐部20と、レール本体部10を鋳ぐるむようにその周囲に鋳造された鋳物部30とを備える。高圧燃料供給に起因してレール孔11の内圧が高まった場合でも、鋳物部30がレール本体部10の膨張に抵抗しその反作用として相対圧縮力をレール本体部10に及ぼすため、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部における内圧疲労強度が向上する。
【選択図】 図3
【解決手段】コモンレールは、長手方向に延びるレール孔11及びその直交方向に延びる分岐孔12を有するレール本体部10と、分岐孔12と燃料配管41とをつなぐ連通路21を提供する分岐部20と、レール本体部10を鋳ぐるむようにその周囲に鋳造された鋳物部30とを備える。高圧燃料供給に起因してレール孔11の内圧が高まった場合でも、鋳物部30がレール本体部10の膨張に抵抗しその反作用として相対圧縮力をレール本体部10に及ぼすため、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部における内圧疲労強度が向上する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン等に採用されている蓄圧式燃料噴射システムで用いられるコモンレールと、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にコモンレールは長尺な円筒状をなし、その内部には長手方向に延びるレール孔が形成されると共に、該レール孔を区画する壁部には、レール孔に対し直交する方向に延びる分岐孔が複数形成されている。コモンレールでは、加圧燃料によるレール孔内圧の高まりに起因して、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部で疲労破壊を生じ易い。このため、内圧疲労強度の向上を図るための対策が種々提案されている。
【0003】
特許文献1のコモンレールでは、レール本体部を構成する筒状部材と、分岐部を構成するためのリング状部材とを別体化すると共に、組立時に筒状部材の外周における各分岐孔との対応位置にリング部材をそれぞれ外嵌し、各リング部材から筒状部材への縮径方向への締付力に基づいて、レール孔内壁における各分岐孔の開口周辺部に圧縮残留応力を付与し、もって分岐孔の開口周辺部の内圧疲労強度を向上させている。
【0004】
特許文献2のコモンレールでは、レール本体部を構成する本管レールの分岐孔位置付近の外周面に対し、外部より径方向にプレス方式にて押圧力を付与して、分岐孔の本管レール流通路の開口端部周辺に圧縮残留応力を発生させ(つまり加工硬化による残留応力付与)、もって分岐孔の開口周辺部の内圧疲労強度を向上させている。
【0005】
尚、特許文献2の本文(第0027段落参照)及び要約選択図(本件の図10として掲載)によれば、「枝管2は、分岐枝管あるいは分岐金具からなるものであって、その内部に本管レール1の流通路1−1に通ずる流路2−1を有してその端部に例えば先細円錐状の座屈成形による拡径した接続頭部2−2のなす押圧座面2−3を設けてなるもので、その接続構造は、図に示すごとく従来と同様、分岐管2側の接続頭部2−2のなす押圧座面2−3を本管レール1側の受圧座面1−3に当接係合せしめ、予め枝管側にスリーブワッシャー5を介して組込んだ締付け用ナット4を、別体の継手金具3の螺子壁3−1に螺合することにより、前記接続頭部2−2首下での締付け用ナット4の押圧に伴って締着して接続構成するものである。」とのことである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−221126号公報(要約、図2〜図4、第0013,0014段落参照)
【特許文献2】特開平10−318083号公報(要約、図1、図8(要約選択図)、第0012〜0014段落および第0027段落参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献の技術にも以下のような欠点がある。
【0008】
特許文献1のように筒状部材にリング部材を外嵌する構造では、筒状部材の外周面とリング部材の内周面との密着性確保にも一定の限界がある。即ち、特許文献1中に述べられているように、リング部材が筒状部材を縮径方向に締め付ける力等によって筒状部材の外周面とリング部材の内周面との間で拡散接合が行われるとしても、そのような拡散接合が全周にわたって均一に生じる保証はなく、両者間でのシール性確保に完全を期し難い。このため、レール孔内圧が高まると、筒状部材とリング部材との接合界面から加圧燃料が漏洩する虞れがある。
【0009】
特許文献2によれば、レール孔1−1が予め形成された本管レール1に対してプレス方式による局部的な硬化加工を施した後、分岐孔1−2を形成し、その後にリング状の継手金具3を本管レール1に外嵌している。即ち、レール孔形成→プレスによる硬化加工→分岐孔形成→継手金具の外嵌という複雑な手順をとっており工程数も多い。また、プレス加工時における本管レールの保形(変形防止)を如何に行うかが加工技術上のボトルネックとなり、それを理想的に解決しようとすると、非常にコスト高な製造手法となってしまう。
【0010】
尚、前述のように特許文献2では、ナット4の締付力を燃料配管としての枝管2の接続頭部2−2首下に伝達することで、継手金具3への枝管2の装着と、本管レールの受圧座面1−3に対する枝管接続頭部の押圧座面2−3の当接係合とを同時に実現している。つまり特許文献2では、ナット4の締付力は、枝管2を継手金具3に装着するための力(即ち枝管を継手金具の螺子壁内に保持固定するための力)と、押圧座面2−3を受圧座面1−3に当接させるための力とに分散消費される。それに加えて特許文献2の設計は、スリーブワッシャー5による押圧によって枝管の接続頭部2−2が座屈しながら受圧座面1−3に密接されること、換言すれば、受圧座面1−3とワッシャー5との間で接続頭部2−2を多少潰しながらシール性を確保することを意図した設計である。それ故、押圧座面2−3の受圧座面1−3に対する押圧力は、両座面間のシール性を確保できる程度の大きさでしかなく、ましてや本管レールの分岐孔1−2付近に圧縮残留応力を追加的に付与し得る性質のものではない。本発明は、以上のような様々な事情に鑑みてなされたものである。
【0011】
本発明の目的は、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度の向上を図りながらも、レール孔内に供給される加圧燃料が分岐孔以外から漏洩することのない耐久性及び気密性に優れたコモンレールを提供することにある。又、上記のような耐久性及び気密性に優れたコモンレールを比較的簡素な工程で比較的安価に製造可能なコモンレールの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を有するレール本体部と、前記分岐孔と燃料配管とをつなぐ連通路を提供すべく前記レール本体部から分岐するように設けられた分岐部と、少なくとも前記レール本体部を鋳ぐるむようにレール本体部の周囲に鋳造された鋳物部とを備えることを特徴とするコモンレールである。
【0013】
請求項1のコモンレールによれば、高圧燃料供給時のレール孔内圧の高まりに起因して、レール本体部を膨張させようとする力が作用した場合でも、レール本体部の周囲にあってレール本体部を鋳ぐるんでいる鋳物部が、その膨張作用に抵抗しその反作用として相対圧縮力をレール本体部に及ぼす。それ故、レール孔内が高圧化したときでも、絶えずレール本体部はその周囲の鋳物部から均一な相対圧縮を受けることになり、その結果、分岐孔の開口周辺部にも一定の圧縮力が付与される。従って、レール孔側に開口した分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度が大幅に向上する。また、レール本体部の強度向上の副次的効果としてレール本体部の気密性が向上し、レール孔内に供給された加圧燃料が漏洩するという事態を未然防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコモンレールにおいて、前記鋳物部は、レール本体部の構成金属よりも伸び率の小さい金属で鋳造されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2によれば、鋳物部の構成金属の伸び率がレール本体部の構成金属の伸び率よりも小さいことで、レール孔内圧が高まった場合に鋳物部がレール本体部を相対圧縮する力が十分に作用し、分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度が確実に高められる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のコモンレールにおいて、前記分岐部は、孔形成前のレール本体部の外周面に対し溶接により連結された金属製棒材から構成されており、その溶接連結されたレール本体部及び分岐部の一体物の周囲に前記鋳物部を鋳造した後、前記レール本体部のレール孔及び分岐孔並びに前記分岐部の連通路を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3によれば、孔形成前のレール本体部の外周面に対し溶接連結された金属製棒材(即ち分岐部)は、レール本体部にレール孔を回転式機械刃具で穿孔する際、機械刃具の回転に追従してレール本体部が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する回動防止部として機能し得る。それ故、鋳物部の鋳造完了後に回転式機械刃具の回転トルクに起因してレール本体部と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の穿孔を円滑に行うことができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のコモンレールにおいて、前記レール本体部には、鋳物部に対するレール本体部の相対回動を防止するための回動防止部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4によれば、孔形成前のレール本体部に形成された回動防止部は、レール本体部にレール孔を回転式機械刃具で穿孔する際、機械刃具の回転に追従してレール本体部が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する。それ故、鋳物部の鋳造完了後に、回転式機械刃具の回転トルクに起因してレール本体部と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の穿孔を円滑に行うことができる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1,2又は4に記載のコモンレールにおいて、前記レール本体部には、その分岐孔の外端側においてすり鉢状の受圧凹部が形成され、前記鋳物部には、雌ネジ部を有すると共に前記受圧凹部を露出させるネジ孔が形成され、前記分岐部は、前記レール本体部及び鋳物部とは別体のボルト状与圧体として構成され、そのボルト状与圧体は、略円錐状に形成された高剛性の先端部と、当該与圧体の先端と後端とをつなぐように貫通形成された連通路と、当該与圧体の前半部外周に形成された前記鋳物部ネジ孔の雌ネジ部に対応する雄ネジ部と、当該与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部とを有しており、前記鋳物部のネジ孔に対し前記ボルト状与圧体の雄ネジ部を螺着することにより、前記レール本体部のすり鉢状受圧凹部をボルト状与圧体の略円錐状先端部で押圧しながら、ボルト状与圧体をレール本体部及び鋳物部に対し連結固定したことを特徴とする。
【0021】
請求項5によれば、分岐部は、レール本体部及び鋳物部とは別体のボルト状与圧体として構成され、レール本体部の分岐孔と燃料配管とはそのボルト状与圧体(の連通路)を介して連絡される。ボルト状与圧体に、鋳物部のネジ孔(雌ネジ部)に螺着するための雄ネジ部と、燃料配管との連結に関与する連結部とを別々に設けたことで、ボルト状与圧体の鋳物部ネジ孔への装着及びレール本体部受圧凹部への与圧(押圧力付与)と、ボルト状与圧体への燃料配管の連結とが、雄ネジ部及び連結部にそれぞれ機能分担される。つまり、ボルト状与圧体の先端部で受圧凹部を押圧しながら鋳物部ネジ孔にボルト状与圧体を締結するのに要する力と、連結部においてボルト状与圧体に燃料配管を連結するのに要する力とは、相互依存関係のないそれぞれに独立した力学的作用となる。加えて、ボルト状与圧体の先端部は、座屈の可能性のない高剛性の略円錐状先端部として構成されている。従って、ボルト状与圧体の雄ネジ部を鋳物部ネジ孔に螺着するときの締付力は、そのまま略円錐状先端部がすり鉢状受圧凹部を強く押す力として作用し、その結果、分岐孔の開口周辺部には十分な圧縮残留応力が付与される。そして、このボルト状与圧体によるレール本体部の分岐孔周辺への圧縮残留応力付与と、鋳物部がレール本体部を鋳ぐるんでいることによる相対圧縮作用との相乗効果により、レール孔側に開口した分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5に記載のコモンレールにおいて、前記ボルト状与圧体の先端部の径方向断面内におけるテーパ角(θb)は、前記レール本体部の受圧凹部の径方向断面内における開き角(θa)よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6によれば、θb<θaの構成を採用することで、ボルト状与圧体の略円錐状先端部をレール本体部の受圧凹部に進入させ、略円錐状先端部の少なくとも一部を受圧凹部の内周面に対して全周接触させることが可能となり、分岐孔と連通路との接続部位におけるシール性を十分に確保可能となる(詳しくは後記第2実施形態及び図8参照)。尚、前記ボルト状与圧体先端部のテーパ角(θb)と前記受圧凹部14の開き角θaとの角度差(θa−θb)が1度(°)以内であることは好ましく、その場合には、ボルト状与圧体の略円錐状先端部によるすり鉢状受圧凹部内周面の面的な押圧と、両者間におけるシール性の確保とを見事に両立させることができる(詳しくは後記第2実施形態及び図8参照)。
【0024】
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載のコモンレールにおいて、前記ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部は、燃料配管の先端部を前記連通路の後端に連結するために用いるナットを螺着するための第2の雄ネジ部を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項7によれば、ボルト状与圧体の前半部外周に形成された(第1の)雄ネジ部は、ボルト状与圧体の鋳物部ネジ孔への装着及びレール本体部受圧凹部への与圧を機能担保する。他方、ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部が具備する第2の雄ネジ部は、ナットと協働して燃料配管の先端部を連通路の後端に連結することを機能担保する。このように第1及び第2の雄ネジ部はそれぞれに割り当てられた機能をそれぞれに分担するので、レール本体部への十分な圧縮残留応力付与と、燃料配管の確実な連結固定とを見事に両立させることができる。
【0026】
請求項8の発明は、請求項1〜7のコモンレールを製造する方法であって、長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する準備工程と、前記中実金属材を鋳型の成形室内に配置しその成形室内に金属溶湯を注湯し、その後、当該金属溶湯を凝固させることにより、前記中実金属材が鋳物部によって鋳ぐるまれた中間製品を得る鋳造工程と、前記中間製品の中実金属材の内部に、その長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を形成する機械加工工程とを備えることを特徴とするコモンレールの製造方法である。
【0027】
請求項8の製造方法によれば、レール本体部を鋳物部で鋳ぐるむことで耐久性及び気密性に優れたコモンレールを、比較的簡素な工程で比較的安価に製造することができる。特にこの方法では、レール本体部の構成材として中実な金属材を準備し、その中実金属材が鋳物部によって鋳ぐるまれた中間製品を得た後に当該中実金属材に対してレール孔等を形成するという手順をとっている。即ち、鋳造時には中実金属材が中実体のままであるため、金属溶湯がもたらす熱で中実金属材が歪む等の熱変形を極力回避でき、その後の機械加工によって、コモンレールに必要な直線性を具備したレール孔を確実に形成することができる(後記第1及び第2実施形態参照)。更には、準備工程において予め中実金属材に対し他の金属材が溶接されるような場合(即ち溶接箇所が溶接時の熱によって焼入れ状態にあるような場合)に、鋳造工程において中実金属材を包むように金属溶湯を鋳型の成形室内に行き渡らせその後放冷することは、中実金属材と他の金属材との溶接箇所を焼きなまし、その金属組織を安定な状態に復元するという効果をもたらす。このため、当該当接箇所に対して分岐孔等を機械加工する際に、分岐孔等の機械加工がし易くなる(後記第1実施形態参照)。
【0028】
請求項9の発明は、請求項8に記載のコモンレールの製造方法において、前記準備工程では、長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する共に、その中実金属材に対して回動防止部を付加又は形成し、前記機械加工工程では、回転式機械刃具を用いて前記中間製品の中実金属材の内部にレール孔を形成することを特徴とする。
【0029】
請求項9によれば、前記準備工程で中実金属材に対し付加又は形成された回動防止部は、前記機械加工工程において回転式機械刃具を用いて中実金属材にレール孔を形成する際、機械刃具の回転に追従して中実金属材が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する。それ故、鋳物部の鋳造完了後に、回転式機械刃具の回転トルクに起因して中実金属材と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の形成を円滑に行うことができる。
【0030】
なお、以下に説明する第1実施形態は、請求項1,2,3,8及び9に関連し、第2実施形態は、請求項1,2,4,5,6,7,8及び9に関連する。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。図2及び図3は第1実施形態のコモンレール(完成品)を示す。特に図3に示すように、コモンレールは、その中心に設けられた長尺な円筒状のレール本体部10と、レール本体部10からその長手方向に対して直交方向に分岐する複数の円筒状分岐部20と、レール本体部10の周囲及び各分岐部20の根元の周囲に設けられた鋳物部30とを備えている。レール本体部10の内部には、その中心において長手方向に延びるレール孔11と、そのレール孔11に対して直交する方向に延びる複数の分岐孔12とが形成されている。各分岐部20は各分岐孔12に対応する位置においてレール本体部10に連結されており、各分岐部20の内部には、分岐部20と燃料配管としてのチューブ状の枝管41とをつなぐべく分岐部20の中心軸線に沿って延びる連通路21が形成されている。
【0032】
図1(A)〜(C)は第1実施形態のコモンレールの製造手順の概略を示す。
先ず図1(A)に示すように、長尺なストレート円柱形状をなす中実金属材10M及び複数の金属製棒材20M(一つのみ図示)を準備する。中実金属材10Mはレール本体部10を構成するための基材となり、各金属製棒材20Mは分岐部20を構成するための基材となる。中実金属材10M及び金属製棒材20Mの構成金属は、例えば引張強度が440MPa、伸び率が27%の冷間引抜き鋼材である。各金属製棒材20Mの一端部を中実金属材10Mの外周面形状に合致するように湾曲加工し、その湾曲加工した端部を中実金属材10Mの外周面の所定位置に接合した状態でその接合部位に溶接を施し、各金属製棒材を中実金属材10Mに対して一体連結する。
【0033】
次に図1(B)に示すように、複数の金属製棒材20Mが一体連結された中実金属材10Mを鋳型の成形室7内に配置する。鋳型の成形室7はコモンレールの最終的な外形状に対応した内形状を有する。そして鋳型の成形室7内に高温(例えば1300℃)の金属溶湯を注湯する。その際に使用する金属は、例えば引張強度が490MPa、伸び率が8%の鋳鉄である。注湯完了後、自然放冷して金属溶湯を凝固させてから型外しすることにより、図1(C)に示すように、前記中実金属材10Mのほぼ全体及び各金属製棒材20Mの根元部が鋳鉄からなる鋳物部30で鋳ぐるまれた中間製品が得られる。
【0034】
続いて図1(C)の中間製品に対し、例えばドリルのような機械刃具を用いて機械加工を施すことにより、図2及び図3に示すような完成品となる。機械加工はおよそ次の手順による。最初に中間製品のストレート円柱状中実金属材10M部分に対し、そのストレート円柱の一端から他端に向けて真っ直ぐに貫通するレール孔11を穿孔する。次に中間製品の金属製棒材20M部分に対し、その外端部端面側から中実金属材10Mの外周壁付近に達する連通孔21を穿孔する。そして中実金属材10Mの外周壁に対し、前記連通孔21とレール孔11とをつなぐ比較的小径の分岐孔12を貫通形成する。このようにレール孔11、分岐孔12及び連通路21を形成することで、中実金属材10M及び金属製棒材20Mがそれぞれレール本体部10及び分岐部20としての実質を備えるにいたる。
【0035】
尚、連通孔21の外端部付近にすり鉢状に開口した着座部22を形成すると共に、各分岐部20の外端(鋳物部30で鋳ぐるまれていない部分)の外周に雄ネジ部23を形成して当該部位を雄ネジ化する。図3に仮想線(二点鎖線)で示すように、前記すり鉢状着座部22には、燃料配管としてのチューブ状枝管41の先端スプール部42が着座又は当接係合される。枝管の先端スプール部42は枝管41の本体径よりも拡大形成されており、先端スプール部42の後方首下位置には、枝管41の本体径に相当する通し孔を持った枝管締付け用ナット43が装着される。そして、ナット43の雌ネジ部を分岐部20の雄ネジ部23に螺合することで、枝管の先端スプール部42を前記着座部22に連結固定する。尚、ナット43の螺合時、ナット43の底壁部と分岐部20の外端部との間に先端スプール部42の拡径部位を締め付ける力によって、そのスプール部42が部分的に座屈しながら前記着座部22の内周面に密接され、分岐部20と枝管41との間のシール性が確保される。
【0036】
以下、第1実施形態の特徴や製法上の利点等について述べる。
中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとは溶接で相互連結されるため、それらの溶接箇所は溶接熱によって焼入れを受けたに等しい状況にあり、金属組織が硬い組織に変化している可能性がある。この点、第1実施形態では溶接後の鋳ぐるみ鋳造段階において、中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとの連結部の周囲に金属溶湯が行き渡るため、その金属溶湯の熱で当該連結部が均等に加熱される。そして、鋳型の成形室7に満たされた金属溶湯は自然放冷により徐々に冷却される。この一連の均等加熱及び徐冷により、中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとの溶接箇所はいわゆる焼なましを受け、硬い組織から本来の安定な金属組織へと復元する。それ故、機械加工時に分岐孔12等の穿孔が行い易くなる。
このように本実施形態の鋳造工程には、中実金属材10Mを鋳ぐるみながら鋳物部30を鋳造するという本来の目的の他に、中実金属材10Mと金属製棒材20Mとの溶接部位を焼なますという副次的意義がある。
【0037】
ストレート円柱状中実金属材10Mの周囲に鋳物部30を鋳造した後にレール孔11を穿孔してパイプ化するという手順を採用したのには意味がある。即ち、予めレール孔11が形成されたパイプ状レール本体部に対して鋳物部30を鋳造するという逆手順をとると、鋳型の成形室7に注いだ金属溶湯の熱でレール本体部が変形し、直線性に乏しい歪んだ形状のパイプになってしまうことが試作実験(失敗例)で確認されている。これに対し、レール孔11を加工する前の中実体10Mならば、鋳造時に加熱されてもほとんど変形せず鋳造後も高い直線性を保持することができる。また、レール孔11の加工が後になることでレール孔11の直線性を確実に確保できるという利点がある。
【0038】
第1実施形態では、中実金属材10M(レール本体部10)に対し溶接連結された金属製棒材20M(分岐部20)は、鋳ぐるみ後の中実金属材10Mにレール孔11を穿孔する際に、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止すべく中実金属材10Mに付加された回動防止部としても機能する。
【0039】
この意味を理解するために、何も付加されていないストレート円柱状中実金属材10Mの周囲に前記と同様に鋳物部30を鋳造した仮想事例を考える。回転式機械刃具を用いて中実金属材10Mの中心にレール孔11を空けるとき、機械刃具の回転トルクが円柱状の中実金属材10Mに伝達され、そのトルクに起因して中実金属材10M外周域と鋳物部30との界面に亀裂が生じ、その亀裂が中実金属材10Mの外周域全体に波及して界面剥離を生じる虞れがある。特に、前記鋳造工程では、常温の中実金属材10Mを鋳型の成形室7の中心に配置すると共にそこへ非常に高温の金属溶湯を注ぐという手順をとっているため、溶湯の界面組織のチル化等により、中実金属材10Mと鋳物部30との界面組織は他部位に比べて不安定で合金化し難い脆弱な組織になり易い。また、成形室7の中心部と周辺部との間の熱履歴の違い(主に伝熱の時間差)に基づく中実金属材10Mと鋳物部30との間の膨張及び収縮の差等による影響で、前記脆弱な界面組織には中実金属材10Mの半径方向への引っ張り応力が働き、組織が破壊され亀裂を生み易いという本件製造方法に固有の事情が存在する。そして、前述のような亀裂又は界面剥離が中実金属材10Mと鋳物部30との界面全体に及ぶと、鋳物部30によって中実金属材10Mを保持固定できなくなり、中実金属材10Mが機械刃具に供回りすることになって、機械刃具によるレール孔11の形成が事実上不可能となる(仮想事例の場合)。
【0040】
この点、第1実施形態によれば、ストレート円柱状中実金属材10Mに対して直交する金属製棒材20Mが鋳物部30の中に食い込むように存在し、機械刃具の回転トルクを金属製棒材20Mを介して鋳物部30(特に金属製棒材20Mの根元付近を包囲している鋳物部)に伝達できるため、機械刃具の回転トルクが専ら中実金属材10Mと鋳物部30との界面剥離に費やされることがない。故に、金属製棒材20M(分岐部20)は鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止する回動防止部として機能し、回転式機械刃具による中実金属材10Mへのレール孔11の穿孔作業が極めて円滑化する。そして、機械刃具と一緒に中実金属材10Mが供回りする心配がないため、結果的に機械加工のための設備及び製造コストを低減することができる。
【0041】
第1実施形態のコモンレールによれば、高圧燃料供給時にレール孔11の内圧が高まった場合でも、レール本体部10を鋳ぐるんでいる鋳物部30がレール本体部10の膨張に抵抗し、その反作用として相対圧縮力をレール本体部10に及ぼすことができる。その結果、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部にも一定の圧縮力が付与され、分岐孔12の開口周辺部の内圧疲労強度を大幅に向上させることができる。また、レール本体部10の強度向上の副次的効果として、レール本体部10の気密性を向上させることができ、加圧燃料の漏洩を未然防止することができる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図4〜図8を参照して説明する。図7は第2実施形態のコモンレール(完成品)を示し、図4〜図6は半完成品及び部品を示す。図7に示すように、コモンレールは、レール本体部10と、鋳物部30と、分岐部としての複数のボルト状与圧体50とを備えている。
【0043】
図4並びに図5(A)及び(B)に示すように、ボルト状与圧体50を装着する前のコモンレール半完成品は、その中心に設けられた長尺な円筒状のレール本体部10と、そのレール本体部10の周囲に設けられた鋳物部30とを備えている。この半完成品の製造手順は前記第1実施形態の製造手順にほぼ準拠する。即ち、長尺なストレート円柱形状をなす中実金属材10Mを準備し、その中実金属材10Mを鋳型の成形室内に配置しその成形室内に金属溶湯を注湯し、その後、当該金属溶湯を凝固させることにより、前記中実金属材10Mが鋳物部30によって鋳ぐるまれた中間製品を得ている。中実金属材10Mの構成金属は、例えば引張強度が440MPa、伸び率が27%の冷間引抜き鋼材であり、鋳物部30の構成金属は、例えば引張強度が490MPa、伸び率が8%の鋳鉄である。
【0044】
なお、出発材料となるストレート円柱状中実金属材10Mの外周部には、その長手方向中央域の距離Lの範囲にわたって、横断面形状が蒲鉾型の切り欠き部13が予め形成されている。切り欠き部13は平坦な係合面13aを有する。当然この切り欠き部13内には鋳造時に金属溶湯が流れ込んで固化するため、前記切り欠き部平坦係合面13aは、切り欠き部13内に進入した鋳物部30側の係止面31に接触する。また、鋳物部30の外周面の複数箇所には、分岐部としてのボルト状与圧体50を支持固定するための鋳物首部32が盛り上げ形成されている。この鋳物首部32は、中実金属材10Mの中心軸線を挟んで切り欠き部平坦係合面13aとほぼ180度(°)反対側に位置する。
【0045】
続いて、中実金属材10Mを鋳物部30で鋳ぐるんだ中間製品に対し、例えばドリルのような回転式機械刃具を用いて機械加工を施すことにより、図4及び図5に示すような半完成品が得られる。具体的には先ず最初に中間製品のストレート円柱状中実金属材10M部分に対し、そのストレート円柱の一端から他端に向けて真っ直ぐに貫通するレール孔11を穿孔する。その際、機械刃具の回転トルクの影響が中実金属材10Mに波及して中実金属材10Mを自転させようとする力が働くが、その力は切り欠き部平坦係合面13aを介して前記鋳物部の係止面31に受け止められる。つまり、前記第1実施形態の金属製棒材20M(分岐部20)と同様、切り欠き部平坦係合面13aは、鋳ぐるみ後の中実金属材10Mにレール孔11を穿孔する際に、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止すべく中実金属材10Mに形成された回動防止部として機能する。それ故、機械刃具の回転トルクが専ら中実金属材10Mと鋳物部30との界面剥離に費やされることがなく、中実金属材10Mが機械刃具に供回りしないため、機械刃具による中実金属材10Mへのレール孔11の穿孔作業が円滑化する。
【0046】
次に中間製品の各鋳物首部32に対しその外端面側からネジ孔33を穿孔し、中実金属材10Mの外周面を露出させる。ネジ孔33の内周面には、後記ボルト状与圧体の第1雄ネジ部52と対応する雌ネジ部33aを形成する。続いて、前記ネジ孔33を介して露出した中実金属材10Mに対し、略すり鉢形状(即ち径方向断面がテーパ形状)の受圧凹部14を形成する。各受圧凹部14の径方向断面内における開き角θaは60度(°)に設定されている。
【0047】
更に、中実金属材10Mに対し各受圧凹部14の最奧(すり鉢の先端)からレール孔11に向けて比較的小径の分岐孔12を貫通形成する。各分岐孔12はレール孔11に対し直交方向に延び、対応する受圧凹部14とレール孔11とを連通させる。このように、中実金属材10Mの中心において長手方向に延びるレール孔11、そのレール孔11に対して直交する方向に延びる複数の分岐孔12、各分岐孔12に対応する受圧凹部14及びネジ孔33を形成することにより、中実金属材10M及び鋳物部30は、レール本体部10及び鋳物部30が一体形成されたコモンレール半完成品としての実質を備えるにいたる。
【0048】
コモンレール半完成品の各ネジ孔33には、例えば合金鋼やチタン合金等の高剛性金属からなる別部品として構成されたボルト状与圧体50が装着される。このボルト状与圧体50は、レール本体部10に対して直交方向に分岐する分岐部として位置付けられる。
【0049】
図6及び図7に示すように、ボルト状与圧体50の先端部51は円錐状に形成されている。その円錐状先端部51の径方向断面内におけるテーパ角θbは59度(°)に設定されている。テーパ角θbは、前記受圧凹部14の開き角θaよりも僅かに小さい。ボルト状与圧体50の前半部(円錐状先端部51を除く前半部)外周には、鋳物部30との連結に関与する第1雄ネジ部52が形成されている。また、ボルト状与圧体50の前半部よりも大径な後半部の外周には、燃料配管としての枝管41との連結に関与する第2雄ネジ部53が形成されている。
【0050】
ボルト状与圧体50の内部には、その中心軸線に沿って当該与圧体の先端と後端とをつなぐように連通路54が貫通形成されている。この連通路54は、円錐状先端部51と対応する範囲にあっては前記分岐孔12とほぼ同じ内径を有し、その他の部分では分岐孔12よりも大きな内径を有する。更にボルト状与圧体50の後端部であって連通路54の外端付近には、すり鉢状に開口した着座部55が形成されている。すり鉢状着座部55には、チューブ状枝管41の先端スプール部42が着座又は当接係合される。
【0051】
図7に示すように、鋳物部30のネジ孔33に対してボルト状与圧体50の第1雄ネジ部52を螺合することで、ボルト状与圧体50がレール本体部10及び鋳物部30に連結固定されると共に、ボルト状与圧体の円錐状先端部51がレール本体部のすり鉢状受圧凹部14を押圧する。そして、枝管41の先端スプール部42の後方首下位置に、枝管41の本体径に相当する通し孔を持った枝管締付け用ナット43を装着すると共に、ナット43をボルト状与圧体の第2雄ネジ部53に螺着することで、枝管の先端スプール部42が前記着座部55に連結固定される。ナット43の螺合時、ナット43の底壁部とボルト状与圧体50の後端部との間に先端スプール部42の拡径部位を締め付ける力によって、そのスプール部42が部分的に座屈しながら前記着座部55の内周面に密接され、与圧体50と枝管41との間のシール性が確保される。このように第2雄ネジ部53及び着座部55は、ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部を構成する。
【0052】
図8は、ボルト状与圧体の円錐状先端部51をレール本体部の受圧凹部14内に進入させた後、円錐状先端部51の円形端面周縁51bが受圧凹部14の内周面に当接するまでネジ孔33に対しボルト状与圧体50を螺進させたときの状態を示す。図8の状態では、円錐状先端部51はその円形端面周縁51bにおいてのみ受圧凹部14の内周面に全周接触しているが、図8の状態からボルト状与圧体50を更に螺進させることで、円錐状先端部51の外周面が受圧凹部14の内周面に面接触する。
【0053】
以下、第2実施形態の特徴や製法上の利点等について述べる。
分岐部としてのボルト状与圧体50をレール本体部10及び鋳物部30とは別体の組付け部品として構成し、ボルト状与圧体50に、鋳物部のネジ孔33に螺着するための第1雄ネジ部52と、枝管41との連結に関与する第2雄ネジ部53とを別々に設けている。このため、第1雄ネジ部52には、ボルト状与圧体の円錐状先端部51で受圧凹部14を押圧しながら鋳物部ネジ孔33にボルト状与圧体50を締結するという機能を分担させる一方、第2雄ネジ部53には、ナット43を用いて枝管41をボルト状与圧体50に連結させるという機能を分担させることができる。それ故、ボルト状与圧体の第1雄ネジ部52を鋳物部ネジ孔33に螺着するときの締付力は、そのまま円錐状先端部51がすり鉢状受圧凹部14を強く押す力として作用し、その結果、分岐孔12の開口周辺部に十分な圧縮残留応力を付与することができる。従って、第2実施形態によれば、ボルト状与圧体50によるレール本体部10の分岐孔12周辺への圧縮残留応力付与と、鋳物部30がレール本体部10を鋳ぐるんでいることによる相対圧縮作用(第1実施形態の説明参照)との相乗効果により、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部における内圧疲労強度を飛躍的に向上させることができる。
【0054】
第2実施形態では図8に示すように、レール本体部の分岐孔12の内径と、ボルト状与圧体の円錐状先端部51における連通路54の内径とがほぼ等しい状況下で、ボルト状与圧体の円錐状先端部51のテーパ角θbを受圧凹部14の開き角θaよりも小さく設定している。このため、円錐状先端部51の円形端面51aの直径が多少変化しても、その円形端面51aの周縁51bを受圧凹部14の内周面に対して常に全周接触させることができ、その結果、分岐孔12と連通路54との接続部位におけるシール性を十分に確保できる。
【0055】
また、円錐状先端部51のテーパ角θbと受圧凹部14の開き角θaとの間に1度の角度差(より好ましくは1度以内の角度差)を設けたことで、ボルト状与圧体50をネジ孔33に螺着した際、円錐状先端部51の外周面上の各押圧点が受圧凹部14の内周面のそれぞれ対応する被押圧点を押圧する力の大きさは、次のようになる。即ち、円形端面周縁51bが受圧凹部14の内周面を押圧する力が最大となり、円形端面周縁51bの位置から後方に向かうに従い、円錐状先端部51の外周面の各押圧点が受圧凹部14の内周面の対応する被押圧点を押圧する力が徐々に低下する。換言すれば、ボルト状与圧体の円錐状先端部51が受圧凹部14を押す力に関しては、円形端面周縁51bに近いほど押圧力が増大するような押圧力分布となる。それ故、ボルト状与圧体の円錐状先端部51による受圧凹部14の面的な押圧と、両者間におけるシール性の確保とを両立させることが可能となる。
【0056】
(変更例)本発明の実施形態を以下のように変更してもよい。
上記第2実施形態では、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止するための回動防止部として、切り欠き部平坦係合面13aを中実金属材10M(レール本体部10)に形成したが、回動防止部を図9に示すように構成してもよい。即ち図9(A)のように、レール本体部10(中実金属材10M)の外周部においてその長手方向に延びる溝15として回動防止部を構成してもよい。
あるいは図9(B)に示すように、レール本体部(中実金属材10M)の外周部においてその長手方向に延びる突条16として回動防止部を構成してもよい。前記溝15とその溝15内に進入している鋳物部30の一部との係合により、あるいは、前記突条16が鋳物部30内に進入しているという係合関係により、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止できる。
【0057】
【発明の効果】
請求項1〜7のコモンレールによれば、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度の向上を図りながらも、レール孔内に供給される加圧燃料が分岐孔以外から漏洩することのない耐久性及び気密性に優れたコモンレールとすることができる。また、請求項8及び9のコモンレールの製造方法によれば、上記のような耐久性及び気密性に優れたコモンレールを比較的簡素な工程で比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のコモンレールの製造手順の概略を示す図。
【図2】第1実施形態のコモンレールの一部を示す平面図。
【図3】図2のA−A線での拡大断面図。
【図4】第2実施形態のコモンレール半完成品を示す平面図。
【図5】(A)は図4のB1−B1線での断面図、(B)は図4のB2−B2線での断面図。
【図6】ボルト状与圧体の断面図。
【図7】第2実施形態のコモンレール完成品の断面図。
【図8】ボルト状与圧体と受圧凹部との関係を示す一部拡大断面図。
【図9】(A)及び(B)は回動防止部の変更例を示す断面図。
【図10】特許文献2の要約選択図に相当する断面図。
【符号の説明】
7…鋳型の成形室、10M…中実金属材、10…レール本体部、11…レール孔、12…分岐孔、13a…切り欠き部の平坦係合面(回動防止部)、14…受圧凹部、15…溝(回動防止部)、16…突条(回動防止部)、20M…金属製棒材(回動防止部)、20…分岐部、21…連通路、30…鋳物部、33…ネジ孔、33a…雌ネジ部、41…枝管(燃料配管)、42…枝管の先端スプール部、43…枝管締付け用ナット、50…ボルト状与圧体(分岐部)、51…円錐状先端部、52…第1雄ネジ部、53…第2雄ネジ部、54…連通路、55…着座部(53及び55は燃料配管との連結部を構成する)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン等に採用されている蓄圧式燃料噴射システムで用いられるコモンレールと、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にコモンレールは長尺な円筒状をなし、その内部には長手方向に延びるレール孔が形成されると共に、該レール孔を区画する壁部には、レール孔に対し直交する方向に延びる分岐孔が複数形成されている。コモンレールでは、加圧燃料によるレール孔内圧の高まりに起因して、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部で疲労破壊を生じ易い。このため、内圧疲労強度の向上を図るための対策が種々提案されている。
【0003】
特許文献1のコモンレールでは、レール本体部を構成する筒状部材と、分岐部を構成するためのリング状部材とを別体化すると共に、組立時に筒状部材の外周における各分岐孔との対応位置にリング部材をそれぞれ外嵌し、各リング部材から筒状部材への縮径方向への締付力に基づいて、レール孔内壁における各分岐孔の開口周辺部に圧縮残留応力を付与し、もって分岐孔の開口周辺部の内圧疲労強度を向上させている。
【0004】
特許文献2のコモンレールでは、レール本体部を構成する本管レールの分岐孔位置付近の外周面に対し、外部より径方向にプレス方式にて押圧力を付与して、分岐孔の本管レール流通路の開口端部周辺に圧縮残留応力を発生させ(つまり加工硬化による残留応力付与)、もって分岐孔の開口周辺部の内圧疲労強度を向上させている。
【0005】
尚、特許文献2の本文(第0027段落参照)及び要約選択図(本件の図10として掲載)によれば、「枝管2は、分岐枝管あるいは分岐金具からなるものであって、その内部に本管レール1の流通路1−1に通ずる流路2−1を有してその端部に例えば先細円錐状の座屈成形による拡径した接続頭部2−2のなす押圧座面2−3を設けてなるもので、その接続構造は、図に示すごとく従来と同様、分岐管2側の接続頭部2−2のなす押圧座面2−3を本管レール1側の受圧座面1−3に当接係合せしめ、予め枝管側にスリーブワッシャー5を介して組込んだ締付け用ナット4を、別体の継手金具3の螺子壁3−1に螺合することにより、前記接続頭部2−2首下での締付け用ナット4の押圧に伴って締着して接続構成するものである。」とのことである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−221126号公報(要約、図2〜図4、第0013,0014段落参照)
【特許文献2】特開平10−318083号公報(要約、図1、図8(要約選択図)、第0012〜0014段落および第0027段落参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献の技術にも以下のような欠点がある。
【0008】
特許文献1のように筒状部材にリング部材を外嵌する構造では、筒状部材の外周面とリング部材の内周面との密着性確保にも一定の限界がある。即ち、特許文献1中に述べられているように、リング部材が筒状部材を縮径方向に締め付ける力等によって筒状部材の外周面とリング部材の内周面との間で拡散接合が行われるとしても、そのような拡散接合が全周にわたって均一に生じる保証はなく、両者間でのシール性確保に完全を期し難い。このため、レール孔内圧が高まると、筒状部材とリング部材との接合界面から加圧燃料が漏洩する虞れがある。
【0009】
特許文献2によれば、レール孔1−1が予め形成された本管レール1に対してプレス方式による局部的な硬化加工を施した後、分岐孔1−2を形成し、その後にリング状の継手金具3を本管レール1に外嵌している。即ち、レール孔形成→プレスによる硬化加工→分岐孔形成→継手金具の外嵌という複雑な手順をとっており工程数も多い。また、プレス加工時における本管レールの保形(変形防止)を如何に行うかが加工技術上のボトルネックとなり、それを理想的に解決しようとすると、非常にコスト高な製造手法となってしまう。
【0010】
尚、前述のように特許文献2では、ナット4の締付力を燃料配管としての枝管2の接続頭部2−2首下に伝達することで、継手金具3への枝管2の装着と、本管レールの受圧座面1−3に対する枝管接続頭部の押圧座面2−3の当接係合とを同時に実現している。つまり特許文献2では、ナット4の締付力は、枝管2を継手金具3に装着するための力(即ち枝管を継手金具の螺子壁内に保持固定するための力)と、押圧座面2−3を受圧座面1−3に当接させるための力とに分散消費される。それに加えて特許文献2の設計は、スリーブワッシャー5による押圧によって枝管の接続頭部2−2が座屈しながら受圧座面1−3に密接されること、換言すれば、受圧座面1−3とワッシャー5との間で接続頭部2−2を多少潰しながらシール性を確保することを意図した設計である。それ故、押圧座面2−3の受圧座面1−3に対する押圧力は、両座面間のシール性を確保できる程度の大きさでしかなく、ましてや本管レールの分岐孔1−2付近に圧縮残留応力を追加的に付与し得る性質のものではない。本発明は、以上のような様々な事情に鑑みてなされたものである。
【0011】
本発明の目的は、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度の向上を図りながらも、レール孔内に供給される加圧燃料が分岐孔以外から漏洩することのない耐久性及び気密性に優れたコモンレールを提供することにある。又、上記のような耐久性及び気密性に優れたコモンレールを比較的簡素な工程で比較的安価に製造可能なコモンレールの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を有するレール本体部と、前記分岐孔と燃料配管とをつなぐ連通路を提供すべく前記レール本体部から分岐するように設けられた分岐部と、少なくとも前記レール本体部を鋳ぐるむようにレール本体部の周囲に鋳造された鋳物部とを備えることを特徴とするコモンレールである。
【0013】
請求項1のコモンレールによれば、高圧燃料供給時のレール孔内圧の高まりに起因して、レール本体部を膨張させようとする力が作用した場合でも、レール本体部の周囲にあってレール本体部を鋳ぐるんでいる鋳物部が、その膨張作用に抵抗しその反作用として相対圧縮力をレール本体部に及ぼす。それ故、レール孔内が高圧化したときでも、絶えずレール本体部はその周囲の鋳物部から均一な相対圧縮を受けることになり、その結果、分岐孔の開口周辺部にも一定の圧縮力が付与される。従って、レール孔側に開口した分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度が大幅に向上する。また、レール本体部の強度向上の副次的効果としてレール本体部の気密性が向上し、レール孔内に供給された加圧燃料が漏洩するという事態を未然防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコモンレールにおいて、前記鋳物部は、レール本体部の構成金属よりも伸び率の小さい金属で鋳造されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2によれば、鋳物部の構成金属の伸び率がレール本体部の構成金属の伸び率よりも小さいことで、レール孔内圧が高まった場合に鋳物部がレール本体部を相対圧縮する力が十分に作用し、分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度が確実に高められる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のコモンレールにおいて、前記分岐部は、孔形成前のレール本体部の外周面に対し溶接により連結された金属製棒材から構成されており、その溶接連結されたレール本体部及び分岐部の一体物の周囲に前記鋳物部を鋳造した後、前記レール本体部のレール孔及び分岐孔並びに前記分岐部の連通路を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3によれば、孔形成前のレール本体部の外周面に対し溶接連結された金属製棒材(即ち分岐部)は、レール本体部にレール孔を回転式機械刃具で穿孔する際、機械刃具の回転に追従してレール本体部が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する回動防止部として機能し得る。それ故、鋳物部の鋳造完了後に回転式機械刃具の回転トルクに起因してレール本体部と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の穿孔を円滑に行うことができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のコモンレールにおいて、前記レール本体部には、鋳物部に対するレール本体部の相対回動を防止するための回動防止部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4によれば、孔形成前のレール本体部に形成された回動防止部は、レール本体部にレール孔を回転式機械刃具で穿孔する際、機械刃具の回転に追従してレール本体部が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する。それ故、鋳物部の鋳造完了後に、回転式機械刃具の回転トルクに起因してレール本体部と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の穿孔を円滑に行うことができる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1,2又は4に記載のコモンレールにおいて、前記レール本体部には、その分岐孔の外端側においてすり鉢状の受圧凹部が形成され、前記鋳物部には、雌ネジ部を有すると共に前記受圧凹部を露出させるネジ孔が形成され、前記分岐部は、前記レール本体部及び鋳物部とは別体のボルト状与圧体として構成され、そのボルト状与圧体は、略円錐状に形成された高剛性の先端部と、当該与圧体の先端と後端とをつなぐように貫通形成された連通路と、当該与圧体の前半部外周に形成された前記鋳物部ネジ孔の雌ネジ部に対応する雄ネジ部と、当該与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部とを有しており、前記鋳物部のネジ孔に対し前記ボルト状与圧体の雄ネジ部を螺着することにより、前記レール本体部のすり鉢状受圧凹部をボルト状与圧体の略円錐状先端部で押圧しながら、ボルト状与圧体をレール本体部及び鋳物部に対し連結固定したことを特徴とする。
【0021】
請求項5によれば、分岐部は、レール本体部及び鋳物部とは別体のボルト状与圧体として構成され、レール本体部の分岐孔と燃料配管とはそのボルト状与圧体(の連通路)を介して連絡される。ボルト状与圧体に、鋳物部のネジ孔(雌ネジ部)に螺着するための雄ネジ部と、燃料配管との連結に関与する連結部とを別々に設けたことで、ボルト状与圧体の鋳物部ネジ孔への装着及びレール本体部受圧凹部への与圧(押圧力付与)と、ボルト状与圧体への燃料配管の連結とが、雄ネジ部及び連結部にそれぞれ機能分担される。つまり、ボルト状与圧体の先端部で受圧凹部を押圧しながら鋳物部ネジ孔にボルト状与圧体を締結するのに要する力と、連結部においてボルト状与圧体に燃料配管を連結するのに要する力とは、相互依存関係のないそれぞれに独立した力学的作用となる。加えて、ボルト状与圧体の先端部は、座屈の可能性のない高剛性の略円錐状先端部として構成されている。従って、ボルト状与圧体の雄ネジ部を鋳物部ネジ孔に螺着するときの締付力は、そのまま略円錐状先端部がすり鉢状受圧凹部を強く押す力として作用し、その結果、分岐孔の開口周辺部には十分な圧縮残留応力が付与される。そして、このボルト状与圧体によるレール本体部の分岐孔周辺への圧縮残留応力付与と、鋳物部がレール本体部を鋳ぐるんでいることによる相対圧縮作用との相乗効果により、レール孔側に開口した分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5に記載のコモンレールにおいて、前記ボルト状与圧体の先端部の径方向断面内におけるテーパ角(θb)は、前記レール本体部の受圧凹部の径方向断面内における開き角(θa)よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6によれば、θb<θaの構成を採用することで、ボルト状与圧体の略円錐状先端部をレール本体部の受圧凹部に進入させ、略円錐状先端部の少なくとも一部を受圧凹部の内周面に対して全周接触させることが可能となり、分岐孔と連通路との接続部位におけるシール性を十分に確保可能となる(詳しくは後記第2実施形態及び図8参照)。尚、前記ボルト状与圧体先端部のテーパ角(θb)と前記受圧凹部14の開き角θaとの角度差(θa−θb)が1度(°)以内であることは好ましく、その場合には、ボルト状与圧体の略円錐状先端部によるすり鉢状受圧凹部内周面の面的な押圧と、両者間におけるシール性の確保とを見事に両立させることができる(詳しくは後記第2実施形態及び図8参照)。
【0024】
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載のコモンレールにおいて、前記ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部は、燃料配管の先端部を前記連通路の後端に連結するために用いるナットを螺着するための第2の雄ネジ部を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項7によれば、ボルト状与圧体の前半部外周に形成された(第1の)雄ネジ部は、ボルト状与圧体の鋳物部ネジ孔への装着及びレール本体部受圧凹部への与圧を機能担保する。他方、ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部が具備する第2の雄ネジ部は、ナットと協働して燃料配管の先端部を連通路の後端に連結することを機能担保する。このように第1及び第2の雄ネジ部はそれぞれに割り当てられた機能をそれぞれに分担するので、レール本体部への十分な圧縮残留応力付与と、燃料配管の確実な連結固定とを見事に両立させることができる。
【0026】
請求項8の発明は、請求項1〜7のコモンレールを製造する方法であって、長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する準備工程と、前記中実金属材を鋳型の成形室内に配置しその成形室内に金属溶湯を注湯し、その後、当該金属溶湯を凝固させることにより、前記中実金属材が鋳物部によって鋳ぐるまれた中間製品を得る鋳造工程と、前記中間製品の中実金属材の内部に、その長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を形成する機械加工工程とを備えることを特徴とするコモンレールの製造方法である。
【0027】
請求項8の製造方法によれば、レール本体部を鋳物部で鋳ぐるむことで耐久性及び気密性に優れたコモンレールを、比較的簡素な工程で比較的安価に製造することができる。特にこの方法では、レール本体部の構成材として中実な金属材を準備し、その中実金属材が鋳物部によって鋳ぐるまれた中間製品を得た後に当該中実金属材に対してレール孔等を形成するという手順をとっている。即ち、鋳造時には中実金属材が中実体のままであるため、金属溶湯がもたらす熱で中実金属材が歪む等の熱変形を極力回避でき、その後の機械加工によって、コモンレールに必要な直線性を具備したレール孔を確実に形成することができる(後記第1及び第2実施形態参照)。更には、準備工程において予め中実金属材に対し他の金属材が溶接されるような場合(即ち溶接箇所が溶接時の熱によって焼入れ状態にあるような場合)に、鋳造工程において中実金属材を包むように金属溶湯を鋳型の成形室内に行き渡らせその後放冷することは、中実金属材と他の金属材との溶接箇所を焼きなまし、その金属組織を安定な状態に復元するという効果をもたらす。このため、当該当接箇所に対して分岐孔等を機械加工する際に、分岐孔等の機械加工がし易くなる(後記第1実施形態参照)。
【0028】
請求項9の発明は、請求項8に記載のコモンレールの製造方法において、前記準備工程では、長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する共に、その中実金属材に対して回動防止部を付加又は形成し、前記機械加工工程では、回転式機械刃具を用いて前記中間製品の中実金属材の内部にレール孔を形成することを特徴とする。
【0029】
請求項9によれば、前記準備工程で中実金属材に対し付加又は形成された回動防止部は、前記機械加工工程において回転式機械刃具を用いて中実金属材にレール孔を形成する際、機械刃具の回転に追従して中実金属材が鋳物部に対し相対回動しようとするのを防止する。それ故、鋳物部の鋳造完了後に、回転式機械刃具の回転トルクに起因して中実金属材と鋳物部との境界で界面剥離が発生するのを回避しつつ、レール孔の形成を円滑に行うことができる。
【0030】
なお、以下に説明する第1実施形態は、請求項1,2,3,8及び9に関連し、第2実施形態は、請求項1,2,4,5,6,7,8及び9に関連する。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。図2及び図3は第1実施形態のコモンレール(完成品)を示す。特に図3に示すように、コモンレールは、その中心に設けられた長尺な円筒状のレール本体部10と、レール本体部10からその長手方向に対して直交方向に分岐する複数の円筒状分岐部20と、レール本体部10の周囲及び各分岐部20の根元の周囲に設けられた鋳物部30とを備えている。レール本体部10の内部には、その中心において長手方向に延びるレール孔11と、そのレール孔11に対して直交する方向に延びる複数の分岐孔12とが形成されている。各分岐部20は各分岐孔12に対応する位置においてレール本体部10に連結されており、各分岐部20の内部には、分岐部20と燃料配管としてのチューブ状の枝管41とをつなぐべく分岐部20の中心軸線に沿って延びる連通路21が形成されている。
【0032】
図1(A)〜(C)は第1実施形態のコモンレールの製造手順の概略を示す。
先ず図1(A)に示すように、長尺なストレート円柱形状をなす中実金属材10M及び複数の金属製棒材20M(一つのみ図示)を準備する。中実金属材10Mはレール本体部10を構成するための基材となり、各金属製棒材20Mは分岐部20を構成するための基材となる。中実金属材10M及び金属製棒材20Mの構成金属は、例えば引張強度が440MPa、伸び率が27%の冷間引抜き鋼材である。各金属製棒材20Mの一端部を中実金属材10Mの外周面形状に合致するように湾曲加工し、その湾曲加工した端部を中実金属材10Mの外周面の所定位置に接合した状態でその接合部位に溶接を施し、各金属製棒材を中実金属材10Mに対して一体連結する。
【0033】
次に図1(B)に示すように、複数の金属製棒材20Mが一体連結された中実金属材10Mを鋳型の成形室7内に配置する。鋳型の成形室7はコモンレールの最終的な外形状に対応した内形状を有する。そして鋳型の成形室7内に高温(例えば1300℃)の金属溶湯を注湯する。その際に使用する金属は、例えば引張強度が490MPa、伸び率が8%の鋳鉄である。注湯完了後、自然放冷して金属溶湯を凝固させてから型外しすることにより、図1(C)に示すように、前記中実金属材10Mのほぼ全体及び各金属製棒材20Mの根元部が鋳鉄からなる鋳物部30で鋳ぐるまれた中間製品が得られる。
【0034】
続いて図1(C)の中間製品に対し、例えばドリルのような機械刃具を用いて機械加工を施すことにより、図2及び図3に示すような完成品となる。機械加工はおよそ次の手順による。最初に中間製品のストレート円柱状中実金属材10M部分に対し、そのストレート円柱の一端から他端に向けて真っ直ぐに貫通するレール孔11を穿孔する。次に中間製品の金属製棒材20M部分に対し、その外端部端面側から中実金属材10Mの外周壁付近に達する連通孔21を穿孔する。そして中実金属材10Mの外周壁に対し、前記連通孔21とレール孔11とをつなぐ比較的小径の分岐孔12を貫通形成する。このようにレール孔11、分岐孔12及び連通路21を形成することで、中実金属材10M及び金属製棒材20Mがそれぞれレール本体部10及び分岐部20としての実質を備えるにいたる。
【0035】
尚、連通孔21の外端部付近にすり鉢状に開口した着座部22を形成すると共に、各分岐部20の外端(鋳物部30で鋳ぐるまれていない部分)の外周に雄ネジ部23を形成して当該部位を雄ネジ化する。図3に仮想線(二点鎖線)で示すように、前記すり鉢状着座部22には、燃料配管としてのチューブ状枝管41の先端スプール部42が着座又は当接係合される。枝管の先端スプール部42は枝管41の本体径よりも拡大形成されており、先端スプール部42の後方首下位置には、枝管41の本体径に相当する通し孔を持った枝管締付け用ナット43が装着される。そして、ナット43の雌ネジ部を分岐部20の雄ネジ部23に螺合することで、枝管の先端スプール部42を前記着座部22に連結固定する。尚、ナット43の螺合時、ナット43の底壁部と分岐部20の外端部との間に先端スプール部42の拡径部位を締め付ける力によって、そのスプール部42が部分的に座屈しながら前記着座部22の内周面に密接され、分岐部20と枝管41との間のシール性が確保される。
【0036】
以下、第1実施形態の特徴や製法上の利点等について述べる。
中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとは溶接で相互連結されるため、それらの溶接箇所は溶接熱によって焼入れを受けたに等しい状況にあり、金属組織が硬い組織に変化している可能性がある。この点、第1実施形態では溶接後の鋳ぐるみ鋳造段階において、中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとの連結部の周囲に金属溶湯が行き渡るため、その金属溶湯の熱で当該連結部が均等に加熱される。そして、鋳型の成形室7に満たされた金属溶湯は自然放冷により徐々に冷却される。この一連の均等加熱及び徐冷により、中実金属材10Mと各金属製棒材20Mとの溶接箇所はいわゆる焼なましを受け、硬い組織から本来の安定な金属組織へと復元する。それ故、機械加工時に分岐孔12等の穿孔が行い易くなる。
このように本実施形態の鋳造工程には、中実金属材10Mを鋳ぐるみながら鋳物部30を鋳造するという本来の目的の他に、中実金属材10Mと金属製棒材20Mとの溶接部位を焼なますという副次的意義がある。
【0037】
ストレート円柱状中実金属材10Mの周囲に鋳物部30を鋳造した後にレール孔11を穿孔してパイプ化するという手順を採用したのには意味がある。即ち、予めレール孔11が形成されたパイプ状レール本体部に対して鋳物部30を鋳造するという逆手順をとると、鋳型の成形室7に注いだ金属溶湯の熱でレール本体部が変形し、直線性に乏しい歪んだ形状のパイプになってしまうことが試作実験(失敗例)で確認されている。これに対し、レール孔11を加工する前の中実体10Mならば、鋳造時に加熱されてもほとんど変形せず鋳造後も高い直線性を保持することができる。また、レール孔11の加工が後になることでレール孔11の直線性を確実に確保できるという利点がある。
【0038】
第1実施形態では、中実金属材10M(レール本体部10)に対し溶接連結された金属製棒材20M(分岐部20)は、鋳ぐるみ後の中実金属材10Mにレール孔11を穿孔する際に、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止すべく中実金属材10Mに付加された回動防止部としても機能する。
【0039】
この意味を理解するために、何も付加されていないストレート円柱状中実金属材10Mの周囲に前記と同様に鋳物部30を鋳造した仮想事例を考える。回転式機械刃具を用いて中実金属材10Mの中心にレール孔11を空けるとき、機械刃具の回転トルクが円柱状の中実金属材10Mに伝達され、そのトルクに起因して中実金属材10M外周域と鋳物部30との界面に亀裂が生じ、その亀裂が中実金属材10Mの外周域全体に波及して界面剥離を生じる虞れがある。特に、前記鋳造工程では、常温の中実金属材10Mを鋳型の成形室7の中心に配置すると共にそこへ非常に高温の金属溶湯を注ぐという手順をとっているため、溶湯の界面組織のチル化等により、中実金属材10Mと鋳物部30との界面組織は他部位に比べて不安定で合金化し難い脆弱な組織になり易い。また、成形室7の中心部と周辺部との間の熱履歴の違い(主に伝熱の時間差)に基づく中実金属材10Mと鋳物部30との間の膨張及び収縮の差等による影響で、前記脆弱な界面組織には中実金属材10Mの半径方向への引っ張り応力が働き、組織が破壊され亀裂を生み易いという本件製造方法に固有の事情が存在する。そして、前述のような亀裂又は界面剥離が中実金属材10Mと鋳物部30との界面全体に及ぶと、鋳物部30によって中実金属材10Mを保持固定できなくなり、中実金属材10Mが機械刃具に供回りすることになって、機械刃具によるレール孔11の形成が事実上不可能となる(仮想事例の場合)。
【0040】
この点、第1実施形態によれば、ストレート円柱状中実金属材10Mに対して直交する金属製棒材20Mが鋳物部30の中に食い込むように存在し、機械刃具の回転トルクを金属製棒材20Mを介して鋳物部30(特に金属製棒材20Mの根元付近を包囲している鋳物部)に伝達できるため、機械刃具の回転トルクが専ら中実金属材10Mと鋳物部30との界面剥離に費やされることがない。故に、金属製棒材20M(分岐部20)は鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止する回動防止部として機能し、回転式機械刃具による中実金属材10Mへのレール孔11の穿孔作業が極めて円滑化する。そして、機械刃具と一緒に中実金属材10Mが供回りする心配がないため、結果的に機械加工のための設備及び製造コストを低減することができる。
【0041】
第1実施形態のコモンレールによれば、高圧燃料供給時にレール孔11の内圧が高まった場合でも、レール本体部10を鋳ぐるんでいる鋳物部30がレール本体部10の膨張に抵抗し、その反作用として相対圧縮力をレール本体部10に及ぼすことができる。その結果、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部にも一定の圧縮力が付与され、分岐孔12の開口周辺部の内圧疲労強度を大幅に向上させることができる。また、レール本体部10の強度向上の副次的効果として、レール本体部10の気密性を向上させることができ、加圧燃料の漏洩を未然防止することができる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図4〜図8を参照して説明する。図7は第2実施形態のコモンレール(完成品)を示し、図4〜図6は半完成品及び部品を示す。図7に示すように、コモンレールは、レール本体部10と、鋳物部30と、分岐部としての複数のボルト状与圧体50とを備えている。
【0043】
図4並びに図5(A)及び(B)に示すように、ボルト状与圧体50を装着する前のコモンレール半完成品は、その中心に設けられた長尺な円筒状のレール本体部10と、そのレール本体部10の周囲に設けられた鋳物部30とを備えている。この半完成品の製造手順は前記第1実施形態の製造手順にほぼ準拠する。即ち、長尺なストレート円柱形状をなす中実金属材10Mを準備し、その中実金属材10Mを鋳型の成形室内に配置しその成形室内に金属溶湯を注湯し、その後、当該金属溶湯を凝固させることにより、前記中実金属材10Mが鋳物部30によって鋳ぐるまれた中間製品を得ている。中実金属材10Mの構成金属は、例えば引張強度が440MPa、伸び率が27%の冷間引抜き鋼材であり、鋳物部30の構成金属は、例えば引張強度が490MPa、伸び率が8%の鋳鉄である。
【0044】
なお、出発材料となるストレート円柱状中実金属材10Mの外周部には、その長手方向中央域の距離Lの範囲にわたって、横断面形状が蒲鉾型の切り欠き部13が予め形成されている。切り欠き部13は平坦な係合面13aを有する。当然この切り欠き部13内には鋳造時に金属溶湯が流れ込んで固化するため、前記切り欠き部平坦係合面13aは、切り欠き部13内に進入した鋳物部30側の係止面31に接触する。また、鋳物部30の外周面の複数箇所には、分岐部としてのボルト状与圧体50を支持固定するための鋳物首部32が盛り上げ形成されている。この鋳物首部32は、中実金属材10Mの中心軸線を挟んで切り欠き部平坦係合面13aとほぼ180度(°)反対側に位置する。
【0045】
続いて、中実金属材10Mを鋳物部30で鋳ぐるんだ中間製品に対し、例えばドリルのような回転式機械刃具を用いて機械加工を施すことにより、図4及び図5に示すような半完成品が得られる。具体的には先ず最初に中間製品のストレート円柱状中実金属材10M部分に対し、そのストレート円柱の一端から他端に向けて真っ直ぐに貫通するレール孔11を穿孔する。その際、機械刃具の回転トルクの影響が中実金属材10Mに波及して中実金属材10Mを自転させようとする力が働くが、その力は切り欠き部平坦係合面13aを介して前記鋳物部の係止面31に受け止められる。つまり、前記第1実施形態の金属製棒材20M(分岐部20)と同様、切り欠き部平坦係合面13aは、鋳ぐるみ後の中実金属材10Mにレール孔11を穿孔する際に、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止すべく中実金属材10Mに形成された回動防止部として機能する。それ故、機械刃具の回転トルクが専ら中実金属材10Mと鋳物部30との界面剥離に費やされることがなく、中実金属材10Mが機械刃具に供回りしないため、機械刃具による中実金属材10Mへのレール孔11の穿孔作業が円滑化する。
【0046】
次に中間製品の各鋳物首部32に対しその外端面側からネジ孔33を穿孔し、中実金属材10Mの外周面を露出させる。ネジ孔33の内周面には、後記ボルト状与圧体の第1雄ネジ部52と対応する雌ネジ部33aを形成する。続いて、前記ネジ孔33を介して露出した中実金属材10Mに対し、略すり鉢形状(即ち径方向断面がテーパ形状)の受圧凹部14を形成する。各受圧凹部14の径方向断面内における開き角θaは60度(°)に設定されている。
【0047】
更に、中実金属材10Mに対し各受圧凹部14の最奧(すり鉢の先端)からレール孔11に向けて比較的小径の分岐孔12を貫通形成する。各分岐孔12はレール孔11に対し直交方向に延び、対応する受圧凹部14とレール孔11とを連通させる。このように、中実金属材10Mの中心において長手方向に延びるレール孔11、そのレール孔11に対して直交する方向に延びる複数の分岐孔12、各分岐孔12に対応する受圧凹部14及びネジ孔33を形成することにより、中実金属材10M及び鋳物部30は、レール本体部10及び鋳物部30が一体形成されたコモンレール半完成品としての実質を備えるにいたる。
【0048】
コモンレール半完成品の各ネジ孔33には、例えば合金鋼やチタン合金等の高剛性金属からなる別部品として構成されたボルト状与圧体50が装着される。このボルト状与圧体50は、レール本体部10に対して直交方向に分岐する分岐部として位置付けられる。
【0049】
図6及び図7に示すように、ボルト状与圧体50の先端部51は円錐状に形成されている。その円錐状先端部51の径方向断面内におけるテーパ角θbは59度(°)に設定されている。テーパ角θbは、前記受圧凹部14の開き角θaよりも僅かに小さい。ボルト状与圧体50の前半部(円錐状先端部51を除く前半部)外周には、鋳物部30との連結に関与する第1雄ネジ部52が形成されている。また、ボルト状与圧体50の前半部よりも大径な後半部の外周には、燃料配管としての枝管41との連結に関与する第2雄ネジ部53が形成されている。
【0050】
ボルト状与圧体50の内部には、その中心軸線に沿って当該与圧体の先端と後端とをつなぐように連通路54が貫通形成されている。この連通路54は、円錐状先端部51と対応する範囲にあっては前記分岐孔12とほぼ同じ内径を有し、その他の部分では分岐孔12よりも大きな内径を有する。更にボルト状与圧体50の後端部であって連通路54の外端付近には、すり鉢状に開口した着座部55が形成されている。すり鉢状着座部55には、チューブ状枝管41の先端スプール部42が着座又は当接係合される。
【0051】
図7に示すように、鋳物部30のネジ孔33に対してボルト状与圧体50の第1雄ネジ部52を螺合することで、ボルト状与圧体50がレール本体部10及び鋳物部30に連結固定されると共に、ボルト状与圧体の円錐状先端部51がレール本体部のすり鉢状受圧凹部14を押圧する。そして、枝管41の先端スプール部42の後方首下位置に、枝管41の本体径に相当する通し孔を持った枝管締付け用ナット43を装着すると共に、ナット43をボルト状与圧体の第2雄ネジ部53に螺着することで、枝管の先端スプール部42が前記着座部55に連結固定される。ナット43の螺合時、ナット43の底壁部とボルト状与圧体50の後端部との間に先端スプール部42の拡径部位を締め付ける力によって、そのスプール部42が部分的に座屈しながら前記着座部55の内周面に密接され、与圧体50と枝管41との間のシール性が確保される。このように第2雄ネジ部53及び着座部55は、ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部を構成する。
【0052】
図8は、ボルト状与圧体の円錐状先端部51をレール本体部の受圧凹部14内に進入させた後、円錐状先端部51の円形端面周縁51bが受圧凹部14の内周面に当接するまでネジ孔33に対しボルト状与圧体50を螺進させたときの状態を示す。図8の状態では、円錐状先端部51はその円形端面周縁51bにおいてのみ受圧凹部14の内周面に全周接触しているが、図8の状態からボルト状与圧体50を更に螺進させることで、円錐状先端部51の外周面が受圧凹部14の内周面に面接触する。
【0053】
以下、第2実施形態の特徴や製法上の利点等について述べる。
分岐部としてのボルト状与圧体50をレール本体部10及び鋳物部30とは別体の組付け部品として構成し、ボルト状与圧体50に、鋳物部のネジ孔33に螺着するための第1雄ネジ部52と、枝管41との連結に関与する第2雄ネジ部53とを別々に設けている。このため、第1雄ネジ部52には、ボルト状与圧体の円錐状先端部51で受圧凹部14を押圧しながら鋳物部ネジ孔33にボルト状与圧体50を締結するという機能を分担させる一方、第2雄ネジ部53には、ナット43を用いて枝管41をボルト状与圧体50に連結させるという機能を分担させることができる。それ故、ボルト状与圧体の第1雄ネジ部52を鋳物部ネジ孔33に螺着するときの締付力は、そのまま円錐状先端部51がすり鉢状受圧凹部14を強く押す力として作用し、その結果、分岐孔12の開口周辺部に十分な圧縮残留応力を付与することができる。従って、第2実施形態によれば、ボルト状与圧体50によるレール本体部10の分岐孔12周辺への圧縮残留応力付与と、鋳物部30がレール本体部10を鋳ぐるんでいることによる相対圧縮作用(第1実施形態の説明参照)との相乗効果により、レール孔11側に開口した分岐孔12の開口周辺部における内圧疲労強度を飛躍的に向上させることができる。
【0054】
第2実施形態では図8に示すように、レール本体部の分岐孔12の内径と、ボルト状与圧体の円錐状先端部51における連通路54の内径とがほぼ等しい状況下で、ボルト状与圧体の円錐状先端部51のテーパ角θbを受圧凹部14の開き角θaよりも小さく設定している。このため、円錐状先端部51の円形端面51aの直径が多少変化しても、その円形端面51aの周縁51bを受圧凹部14の内周面に対して常に全周接触させることができ、その結果、分岐孔12と連通路54との接続部位におけるシール性を十分に確保できる。
【0055】
また、円錐状先端部51のテーパ角θbと受圧凹部14の開き角θaとの間に1度の角度差(より好ましくは1度以内の角度差)を設けたことで、ボルト状与圧体50をネジ孔33に螺着した際、円錐状先端部51の外周面上の各押圧点が受圧凹部14の内周面のそれぞれ対応する被押圧点を押圧する力の大きさは、次のようになる。即ち、円形端面周縁51bが受圧凹部14の内周面を押圧する力が最大となり、円形端面周縁51bの位置から後方に向かうに従い、円錐状先端部51の外周面の各押圧点が受圧凹部14の内周面の対応する被押圧点を押圧する力が徐々に低下する。換言すれば、ボルト状与圧体の円錐状先端部51が受圧凹部14を押す力に関しては、円形端面周縁51bに近いほど押圧力が増大するような押圧力分布となる。それ故、ボルト状与圧体の円錐状先端部51による受圧凹部14の面的な押圧と、両者間におけるシール性の確保とを両立させることが可能となる。
【0056】
(変更例)本発明の実施形態を以下のように変更してもよい。
上記第2実施形態では、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止するための回動防止部として、切り欠き部平坦係合面13aを中実金属材10M(レール本体部10)に形成したが、回動防止部を図9に示すように構成してもよい。即ち図9(A)のように、レール本体部10(中実金属材10M)の外周部においてその長手方向に延びる溝15として回動防止部を構成してもよい。
あるいは図9(B)に示すように、レール本体部(中実金属材10M)の外周部においてその長手方向に延びる突条16として回動防止部を構成してもよい。前記溝15とその溝15内に進入している鋳物部30の一部との係合により、あるいは、前記突条16が鋳物部30内に進入しているという係合関係により、鋳物部30に対する中実金属材10Mの相対回動を防止できる。
【0057】
【発明の効果】
請求項1〜7のコモンレールによれば、レール孔内壁における分岐孔の開口周辺部における内圧疲労強度の向上を図りながらも、レール孔内に供給される加圧燃料が分岐孔以外から漏洩することのない耐久性及び気密性に優れたコモンレールとすることができる。また、請求項8及び9のコモンレールの製造方法によれば、上記のような耐久性及び気密性に優れたコモンレールを比較的簡素な工程で比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のコモンレールの製造手順の概略を示す図。
【図2】第1実施形態のコモンレールの一部を示す平面図。
【図3】図2のA−A線での拡大断面図。
【図4】第2実施形態のコモンレール半完成品を示す平面図。
【図5】(A)は図4のB1−B1線での断面図、(B)は図4のB2−B2線での断面図。
【図6】ボルト状与圧体の断面図。
【図7】第2実施形態のコモンレール完成品の断面図。
【図8】ボルト状与圧体と受圧凹部との関係を示す一部拡大断面図。
【図9】(A)及び(B)は回動防止部の変更例を示す断面図。
【図10】特許文献2の要約選択図に相当する断面図。
【符号の説明】
7…鋳型の成形室、10M…中実金属材、10…レール本体部、11…レール孔、12…分岐孔、13a…切り欠き部の平坦係合面(回動防止部)、14…受圧凹部、15…溝(回動防止部)、16…突条(回動防止部)、20M…金属製棒材(回動防止部)、20…分岐部、21…連通路、30…鋳物部、33…ネジ孔、33a…雌ネジ部、41…枝管(燃料配管)、42…枝管の先端スプール部、43…枝管締付け用ナット、50…ボルト状与圧体(分岐部)、51…円錐状先端部、52…第1雄ネジ部、53…第2雄ネジ部、54…連通路、55…着座部(53及び55は燃料配管との連結部を構成する)。
Claims (9)
- 長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を有するレール本体部と、
前記分岐孔と燃料配管とをつなぐ連通路を提供すべく前記レール本体部から分岐するように設けられた分岐部と、
少なくとも前記レール本体部を鋳ぐるむようにレール本体部の周囲に鋳造された鋳物部とを備えることを特徴とするコモンレール。 - 前記鋳物部は、レール本体部の構成金属よりも伸び率の小さい金属で鋳造されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンレール。
- 前記分岐部は、孔形成前のレール本体部の外周面に対し溶接により連結された金属製棒材から構成されており、その溶接連結されたレール本体部及び分岐部の一体物の周囲に前記鋳物部を鋳造した後、前記レール本体部のレール孔及び分岐孔並びに前記分岐部の連通路を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のコモンレール。
- 前記レール本体部には、鋳物部に対するレール本体部の相対回動を防止するための回動防止部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコモンレール。
- 前記レール本体部には、その分岐孔の外端側においてすり鉢状の受圧凹部が形成され、
前記鋳物部には、雌ネジ部を有すると共に前記受圧凹部を露出させるネジ孔が形成され、
前記分岐部は、前記レール本体部及び鋳物部とは別体のボルト状与圧体として構成され、そのボルト状与圧体は、略円錐状に形成された高剛性の先端部と、当該与圧体の先端と後端とをつなぐように貫通形成された連通路と、当該与圧体の前半部外周に形成された前記鋳物部ネジ孔の雌ネジ部に対応する雄ネジ部と、当該与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部とを有しており、
前記鋳物部のネジ孔に対し前記ボルト状与圧体の雄ネジ部を螺着することにより、前記レール本体部のすり鉢状受圧凹部をボルト状与圧体の略円錐状先端部で押圧しながら、ボルト状与圧体をレール本体部及び鋳物部に対し連結固定したことを特徴とする請求項1,2又は4に記載のコモンレール。 - 前記ボルト状与圧体の先端部の径方向断面内におけるテーパ角(θb)は、前記レール本体部の受圧凹部の径方向断面内における開き角(θa)よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項5に記載のコモンレール。
- 前記ボルト状与圧体の後端寄り位置に設けられた燃料配管との連結部は、燃料配管の先端部を前記連通路の後端に連結するために用いるナットを螺着するための第2の雄ネジ部を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のコモンレール。
- 請求項1〜7のコモンレールを製造する方法であって、
長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する準備工程と、
前記中実金属材を鋳型の成形室内に配置しその成形室内に金属溶湯を注湯し、その後、当該金属溶湯を凝固させることにより、前記中実金属材が鋳物部によって鋳ぐるまれた中間製品を得る鋳造工程と、
前記中間製品の中実金属材の内部に、その長手方向に延びるレール孔及びそのレール孔に対して交差する方向に延びる分岐孔を形成する機械加工工程とを備えることを特徴とするコモンレールの製造方法。 - 前記準備工程では、長尺な円柱形状をなす中実金属材を準備する共に、その中実金属材に対して回動防止部を付加又は形成し、前記機械加工工程では、回転式機械刃具を用いて前記中間製品の中実金属材の内部にレール孔を形成することを特徴とする請求項8に記載のコモンレールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003172442A JP2005009358A (ja) | 2003-06-17 | 2003-06-17 | コモンレール及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003172442A JP2005009358A (ja) | 2003-06-17 | 2003-06-17 | コモンレール及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005009358A true JP2005009358A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34096596
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003172442A Pending JP2005009358A (ja) | 2003-06-17 | 2003-06-17 | コモンレール及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005009358A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007056816A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Usui Kokusai Sangyo Kaisha Ltd | 分岐接続管の接続構造 |
JP2009533591A (ja) * | 2006-04-13 | 2009-09-17 | ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング | 高圧管路を蓄圧器部材に接続するための装置 |
CN102022239A (zh) * | 2010-12-29 | 2011-04-20 | 龙口龙泵燃油喷射有限公司 | 一种高压共轨系统的分体式轨 |
CN102052218A (zh) * | 2009-10-28 | 2011-05-11 | 本特勒尔汽车技术有限公司 | 燃料分配器 |
JP2014047678A (ja) * | 2012-08-30 | 2014-03-17 | Maruyasu Industries Co Ltd | 直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプ |
-
2003
- 2003-06-17 JP JP2003172442A patent/JP2005009358A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007056816A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Usui Kokusai Sangyo Kaisha Ltd | 分岐接続管の接続構造 |
JP2009533591A (ja) * | 2006-04-13 | 2009-09-17 | ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング | 高圧管路を蓄圧器部材に接続するための装置 |
CN102052218A (zh) * | 2009-10-28 | 2011-05-11 | 本特勒尔汽车技术有限公司 | 燃料分配器 |
CN102022239A (zh) * | 2010-12-29 | 2011-04-20 | 龙口龙泵燃油喷射有限公司 | 一种高压共轨系统的分体式轨 |
JP2014047678A (ja) * | 2012-08-30 | 2014-03-17 | Maruyasu Industries Co Ltd | 直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプ |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8186724B2 (en) | Connecting head structure for high-pressure fuel injection pipes | |
US4900180A (en) | Structure for connecting branch pipe in high-pressure fuel manifold | |
US6886537B2 (en) | Accumulation type fuel injection system for engine | |
JP2007016775A (ja) | 内燃機関用の燃料レール及びインジェクタ間の接続装置 | |
JP5094083B2 (ja) | 成形接続ヘッド付き圧力管 | |
US20020005642A1 (en) | High-pressure metal pipe with connection head, method of forming the head and connection washer for the connection head | |
US4953896A (en) | Structure for connecting branch pipe in high-pressure fuel manifold | |
JPH01210683A (ja) | 圧力流体ライン用の複合連結部材 | |
JP2000320424A (ja) | ディーゼル機関用高圧燃料噴射管 | |
KR20040020843A (ko) | 디젤 엔진용 커먼 레일 | |
JP2005009358A (ja) | コモンレール及びその製造方法 | |
WO2016063640A1 (ja) | 燃料レール | |
JP4107629B2 (ja) | コモンレールの製造方法 | |
JP2005009394A (ja) | コモンレール用分岐接続体の接続構造 | |
JP2013018052A (ja) | 通水機構及びその製造方法並びにブッシュ装置 | |
JP4020503B2 (ja) | コモンレール用噴射管 | |
RU2391552C1 (ru) | Конструкция соединительной головки труб высокого давления для впрыска топлива | |
JP2001059464A (ja) | コモンレール | |
CN211599834U (zh) | 一种管道连接用旋转法兰 | |
JPH07174269A (ja) | フレア継手 | |
RU2386888C1 (ru) | Соединение трубопроводов | |
JP2000161179A (ja) | 樹脂製燃料デリバリパイプ | |
JP3749012B2 (ja) | コモンレールおよびその製造方法 | |
JP2000304188A (ja) | コモンレールおよびその製造方法 | |
JP3842222B2 (ja) | コモンレールの製造方法 |