JP2005008603A - N−アシルタウリン化合物の製造方法 - Google Patents
N−アシルタウリン化合物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005008603A JP2005008603A JP2003177442A JP2003177442A JP2005008603A JP 2005008603 A JP2005008603 A JP 2005008603A JP 2003177442 A JP2003177442 A JP 2003177442A JP 2003177442 A JP2003177442 A JP 2003177442A JP 2005008603 A JP2005008603 A JP 2005008603A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- taurine
- nitrogen gas
- compound
- fatty acid
- reaction
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Cosmetics (AREA)
- Detergent Compositions (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Abstract
【目的】身体用洗浄化合物として、皮膚、毛髪に対し低刺激性でマイルドとされるN−アシルタウリン化合物の、経済的かつ高純度品質での製造方法を提供することを目的とする。
【構成】一般式(1)R1NHCH2CH2SO3M(式中R1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)で表されるタウリン塩を、チッ素ガス吹き込み状況下の一般式(2)R2COOH(式中R2はC8〜C18の直鎖のアルキル基または不飽和炭化水素基を示す)で表される脂肪酸と直接反応させることによる、N−アシルタウリン化合物の製造方法。この時、チッ素ガスの吹き込みに関して、水分量1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込むことを条件とする。
【構成】一般式(1)R1NHCH2CH2SO3M(式中R1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)で表されるタウリン塩を、チッ素ガス吹き込み状況下の一般式(2)R2COOH(式中R2はC8〜C18の直鎖のアルキル基または不飽和炭化水素基を示す)で表される脂肪酸と直接反応させることによる、N−アシルタウリン化合物の製造方法。この時、チッ素ガスの吹き込みに関して、水分量1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込むことを条件とする。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は洗浄剤成分として有用なN−アシルタウリン化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
身体用洗浄化合物として、皮膚、毛髪に対し低刺激性でマイルドとされるN−アシルタウリン化合物は、構成成分が人体に存在し、有用な生理作用する化合物から成り立っている。特にタウリンの有用な薬理作用は良く知られている極めて安全な化合物である。
【0003】N−アシルタウリン化合物の製造方法としては、対応するタウリン化合物をNaOH水溶液中で脂肪酸ハライドと反応させる、いわゆるショッテンバウマン法(米国特許第1,932,180、米国特許第4,352,759)が知られている。この方法は反応が温和条件下で比較的短時間に進行するという点で有用であるが、原料である脂肪酸ハライドが高価であること、副生物のセッケンが比較的多く生成すること、及び大量の塩(NaCl)が副生するためそれが製品に混入するといった欠点がある。
【0004】一方、タウリンと脂肪酸を直接反応させてN−アシルタウリンを製造する方法としていくつかの実例が知られているが、いずれも下記反応式(1)に示したように、タウリンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩と脂肪酸とを反応させる方法である。ソーダー塩で例示するが、それぞれ、問題点が多い。
例えば、米国特許第2,880,219では反応温度が220℃〜320℃と高い事、製品が着色する事、脂肪酸の酸化分解臭がする事などの欠点がある。
【0005】これらの欠点を改良するために、反応促進剤、触媒を加えて、反応温度を下げた例として、米国特許第3,232,968ではヒポリン酸、米国特許第5,496,959では硼酸、米国特許第5,434,276ではソディゥムボロンハイドレート、日本国特開平6−192211では酸化亜鉛及び他の反応促進剤をいれ、10mmHg以下の減圧反応を行った例が知られている。しかし、これらの方法のいずれもタウリン金属塩を原料とするため、基本的に脱水反応であるにもかかわらず、タウリン水溶液を用いざるを得ないため、反応に多大のエネルギーを要する事、タウリン金属塩を使うため、いずれもやはり反応温度が160〜250℃と高い事、反応促進剤を除去するのに手間がかかり、いずれの実例も反応促進剤を含んだまま製品化せざるを得ず、これはシャンプー等人体に直接触れる活性剤としては、好ましいとは言えない事等の欠点を有している。また、本発明者は特願2003−109716にてタウリン化合物と脂肪酸を窒素ガス吹き込み下、直接反応させる方法を発明したが、脂肪酸に対するタウリン化合物の溶解度が小さいため、反応に長時間を要する欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記欠点を改良し、高純度のN−アシルタウリン化合物を経済的に製造する方法を提供するものである。本発明の直接反応は下記反応式(2)に従って反応するが、この方法の実例は知られていない。
この理由はR1NHCH2CH2SO3Mのタウリン塩は、NH基とSO3M基の間で閉環化合物を作って安定化し、脂肪酸(R2COOH)と反応しないためと言われていた。
【0007】
【解決のための手段】
この様な状況において、脂肪酸を出発原料とし、タウリン塩と直接反応させてN−アシルタウリン化合物を製造するべく、本発明者は鋭意検討した。その結果、タウリン塩が閉環化合物をつくるPHは6前後であり、これより低いPHで極性を持つ溶媒中では、PHが下がるに従って酸との間で開環した付加塩を作る事が判明した。脂肪酸も極性を持っており、脂肪酸が液体となる融点以上ではタウリン塩の一部は下記一般式(3)の直鎖状脂肪酸付加塩を形成する事が判明した。
一般式(3) R2COOH・HNR1CH2CH2SO3M
脂肪酸の融点の一例を挙げれば、ラウリン酸は44℃、ミリスチン酸は56℃、パルミチン酸は63℃、ステアリン酸は70℃、やし油は約55℃である。本発明者の検討によれば、融点以上の温度においては、脂肪酸に添加した1モルのタウリン塩の内、約0.05モルが一般式(3)の付加塩になる事が判明している。一般式(3)の化合物は80℃以上に加熱すれば、脱水して本発明のN−アシルタウリン化合物になるが、発生した水と脂肪酸とが平衡組成物となり、水は反応系内に残存し反応式(2)の平衡を保つので、このままでは反応は進まない事が判明した。脂肪酸の沸点以上に加熱しないと水は系外に出ないが、一般式(2)の脂肪酸の沸点は300℃以上であり、タウリン塩は300℃で分解するので、加熱するだけでは目的物を得る事が出来ない。
【0008】すなわち本発明者は、極性を持っている脂肪酸を反応物かつ溶媒としてこれにタウリン塩を溶かし込み、直接反応させることにより、また、その際生じる水を効果的に150℃以下の低温で系外に排出することにより、N−アシルタウリン化合物を高純度且つ経済的に製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】本発明者は、一般式(2)R2COOH(式中R2はC8〜C18の直鎖のアルキル基または不飽和炭化水素基を示す)で表される脂肪酸を反応物かつ溶媒とし、これにチッ素ガス吹き込み状況下、一般式(1)R1NHCH2CH2SO3M(式中R1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)で表されるタウリン塩を溶かし込み、直接反応させることにより、N−アシルタウリン化合物を高純度且つ経済的に短時間で製造できることを見出した。この時吹き込むチッ素ガスに関しては、水分量1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む必要がある。
【0010】本発明で使用される一般式(1) R1NHCH2CH2SO3Mで示されるタウリン塩としては、タウリン、N−メチルタウリン、N−プロピルタウリン、N−イソプロピルタウリン、N−ブチルタウリン、N−ペンチルタウリン、N−イソペンチルタウリン、N−へキシルタウリン、N−シクロへキシルタウリンのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられるが、中でもナトリウム塩またカリウム塩が好ましい。
【0011】本発明で使用される一般式(2) R2COOHで示される脂肪酸は、R2がC8〜C18の直鎖のアルキル基(オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基)または直鎖の不飽和炭化水素基(オクタデセニル基、オクタデセジエル基等)1種または2種以上の混合体として用いる事が出来る。具体的には、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等を用いる事が出来る。
【0012】本発明の製造に用いられる脂肪酸及びタウリン塩の割合は特に制限されないが、モル比として1:1〜4:1、好ましくは1.5:1〜3:1の範囲を挙げることができる。1:1より脂肪酸が少ないと未反応のタウリン塩が残り、4:1より脂肪酸が多いと未反応脂肪酸の回収に手間を要することとなる。
【0013】上記反応によるN−アシルタウリン化合物の製造方法は、前述する脂肪酸とタウリン塩をチッ素吹き込み下で、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度条件下で、通常5〜15時間、好ましくは7〜10時間反応させることによって実施することができる。
【0014】チッ素吹き込みに関しては、本反応は以下の反応式(2)に従って進むため、反応する脂肪酸と等モルの水が生成するので、効果的な反応を行うため、これを系外に排出すべく行う。
このチッ素吹き込みは正確にコントロールする必要があり、使用するチッ素ガスは水分量が1,000ppm以下のものを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モル、好ましくは1/2〜1.5倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む必要がある。チッ素ガスの水分量が1,000ppmより多いと発生した水分を取り込むことが出来ず、系外に排出する効果が著しく低下する。吹き込み量が発生する水分の1/5倍モルより少ないと水分を系外に排出する効果が見られず、また、発生する水分の2倍モルを超えるチッ素ガスを吹き込んでも効果の向上は見られない。
【0015】反応生成物に水を加え、トルエン抽出を行い、水相からN−アシルタウリン化合物を取り出すことが出来る。また、トルエン層から未反応の脂肪酸を回収し、再使用することが出来る。
以下、実例を持って示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】実施例1
タウリン31.3g(0.25モル)と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をラウリル酸75.1g(0.375モル)に加え、100℃で10時間加熱する。その際、液体チッ素から発生した水分1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを減圧弁で流量が1.2cc/min(全吹き込み量0.05モル)になるようにコントロールし、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む。室温まで冷却後100ccの水を加え、100ccのトルエンで2回抽出を行う。水相を濾別、水洗、乾燥し74.3g(収率90.3%)のN−ラウリルタウリンナトリウムの無色結晶を得た。
【0017】実施例2
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを3.1cc/min(全吹き込み量0.125モル)に変えて行った。70.4gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率85.6%)。
【0018】実施例3
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを6.2cc/min(全吹き込み量0.25モル)に変えて行った。78.4gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率95.3%)。
【0019】実施例4
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを12.4cc/min(全吹き込み量0.50モル)に変えて行った。81.5gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率99.1%)。
【0020】実施例5
タウリン31.3g(0.25モル) と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をやし油脂肪酸121g(0.5モル)に加え、120℃で9時間加熱する。その際、液体チッ素ボンベから発生した水分1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを減圧弁で流量が7.7cc/min(全吹き込み量0.25モル)になるようにコントロールし、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む。反応後、以下実施例1と同じ操作を行う事により、88.1g(収率95.1%)のN−ココイルタウリンナトリウムの無色結晶を得た。
【0021】実施例6
実施例5においてタウリンの代わりに、メチルタウリン34.8g(0.25モル)を用い、実施例5と同じ操作を行う事により、N−ココイルメチルタウリンナトリウム88.4g(収率92.1%)の白色固形物を得た。
【0022】実施例7
実施例1において、加熱時間のみを5時間に変えて行った。71.0gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率86.3%)。
【0023】比較例1
タウリン31.3g(0.25モル) と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をラウリル酸75.1g(0.375モル)に加え、チッ素ガスを吹き込まずに100℃で10時間加熱したが、反応は殆ど進行せず、目的物のN−ラウリルタウリンナトリウムは得られなかった。
【0024】比較例2
タウリン31.3g(0.25モル)gと99%NaOH 10.2g(0.25モル)をやし油脂肪酸121g(0.5モル)に加え、10mmHgの減圧の下で120℃の反応温度で9時間反応させた。反応により生成した水を、メタノール/ドライアイスで冷却した水の捕集装置で捕集し、生成した水の量より反応率を計算した。その結果、反応率は5.4%にすぎなかった。
【0025】比較例3
実施例1において、加熱時間のみを2時間に変えて行った。25.3gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率30.8%)。
【0026】試験例
実施例1、実施例5、実施例6でそれぞれ得られたN−ラウリルタウリンナトリウム、N−ココイルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウムを次に記した気泡力の試験法に基づいて、市販のH社製のN−ラウリルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウムとの気泡力の比較試験を行い、活性剤としての性能比較を行った。下表に示した様に本発明の製品と市販の製品との性能は同じであった。
【0027】起泡力の試験法
JIS K 3362:1998[合成洗剤試験法]に基づき、それぞれ25℃、10w/w%の試料水溶液200mlを、900mmの高さから直径50mmの円筒管に落下させた時に生ずる泡の高さを測定して比較した。
【発明の効果】
タウリン塩と脂肪酸をチッ素吹き込み条件下、直接反応させ、N−アシルタウリン化合物を製造することにより、経済的に高純度のN−アシルタウリン化合物を提供することが可能となった。
【産業上の利用分野】
本発明は洗浄剤成分として有用なN−アシルタウリン化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
身体用洗浄化合物として、皮膚、毛髪に対し低刺激性でマイルドとされるN−アシルタウリン化合物は、構成成分が人体に存在し、有用な生理作用する化合物から成り立っている。特にタウリンの有用な薬理作用は良く知られている極めて安全な化合物である。
【0003】N−アシルタウリン化合物の製造方法としては、対応するタウリン化合物をNaOH水溶液中で脂肪酸ハライドと反応させる、いわゆるショッテンバウマン法(米国特許第1,932,180、米国特許第4,352,759)が知られている。この方法は反応が温和条件下で比較的短時間に進行するという点で有用であるが、原料である脂肪酸ハライドが高価であること、副生物のセッケンが比較的多く生成すること、及び大量の塩(NaCl)が副生するためそれが製品に混入するといった欠点がある。
【0004】一方、タウリンと脂肪酸を直接反応させてN−アシルタウリンを製造する方法としていくつかの実例が知られているが、いずれも下記反応式(1)に示したように、タウリンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩と脂肪酸とを反応させる方法である。ソーダー塩で例示するが、それぞれ、問題点が多い。
例えば、米国特許第2,880,219では反応温度が220℃〜320℃と高い事、製品が着色する事、脂肪酸の酸化分解臭がする事などの欠点がある。
【0005】これらの欠点を改良するために、反応促進剤、触媒を加えて、反応温度を下げた例として、米国特許第3,232,968ではヒポリン酸、米国特許第5,496,959では硼酸、米国特許第5,434,276ではソディゥムボロンハイドレート、日本国特開平6−192211では酸化亜鉛及び他の反応促進剤をいれ、10mmHg以下の減圧反応を行った例が知られている。しかし、これらの方法のいずれもタウリン金属塩を原料とするため、基本的に脱水反応であるにもかかわらず、タウリン水溶液を用いざるを得ないため、反応に多大のエネルギーを要する事、タウリン金属塩を使うため、いずれもやはり反応温度が160〜250℃と高い事、反応促進剤を除去するのに手間がかかり、いずれの実例も反応促進剤を含んだまま製品化せざるを得ず、これはシャンプー等人体に直接触れる活性剤としては、好ましいとは言えない事等の欠点を有している。また、本発明者は特願2003−109716にてタウリン化合物と脂肪酸を窒素ガス吹き込み下、直接反応させる方法を発明したが、脂肪酸に対するタウリン化合物の溶解度が小さいため、反応に長時間を要する欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記欠点を改良し、高純度のN−アシルタウリン化合物を経済的に製造する方法を提供するものである。本発明の直接反応は下記反応式(2)に従って反応するが、この方法の実例は知られていない。
この理由はR1NHCH2CH2SO3Mのタウリン塩は、NH基とSO3M基の間で閉環化合物を作って安定化し、脂肪酸(R2COOH)と反応しないためと言われていた。
【0007】
【解決のための手段】
この様な状況において、脂肪酸を出発原料とし、タウリン塩と直接反応させてN−アシルタウリン化合物を製造するべく、本発明者は鋭意検討した。その結果、タウリン塩が閉環化合物をつくるPHは6前後であり、これより低いPHで極性を持つ溶媒中では、PHが下がるに従って酸との間で開環した付加塩を作る事が判明した。脂肪酸も極性を持っており、脂肪酸が液体となる融点以上ではタウリン塩の一部は下記一般式(3)の直鎖状脂肪酸付加塩を形成する事が判明した。
一般式(3) R2COOH・HNR1CH2CH2SO3M
脂肪酸の融点の一例を挙げれば、ラウリン酸は44℃、ミリスチン酸は56℃、パルミチン酸は63℃、ステアリン酸は70℃、やし油は約55℃である。本発明者の検討によれば、融点以上の温度においては、脂肪酸に添加した1モルのタウリン塩の内、約0.05モルが一般式(3)の付加塩になる事が判明している。一般式(3)の化合物は80℃以上に加熱すれば、脱水して本発明のN−アシルタウリン化合物になるが、発生した水と脂肪酸とが平衡組成物となり、水は反応系内に残存し反応式(2)の平衡を保つので、このままでは反応は進まない事が判明した。脂肪酸の沸点以上に加熱しないと水は系外に出ないが、一般式(2)の脂肪酸の沸点は300℃以上であり、タウリン塩は300℃で分解するので、加熱するだけでは目的物を得る事が出来ない。
【0008】すなわち本発明者は、極性を持っている脂肪酸を反応物かつ溶媒としてこれにタウリン塩を溶かし込み、直接反応させることにより、また、その際生じる水を効果的に150℃以下の低温で系外に排出することにより、N−アシルタウリン化合物を高純度且つ経済的に製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】本発明者は、一般式(2)R2COOH(式中R2はC8〜C18の直鎖のアルキル基または不飽和炭化水素基を示す)で表される脂肪酸を反応物かつ溶媒とし、これにチッ素ガス吹き込み状況下、一般式(1)R1NHCH2CH2SO3M(式中R1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)で表されるタウリン塩を溶かし込み、直接反応させることにより、N−アシルタウリン化合物を高純度且つ経済的に短時間で製造できることを見出した。この時吹き込むチッ素ガスに関しては、水分量1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む必要がある。
【0010】本発明で使用される一般式(1) R1NHCH2CH2SO3Mで示されるタウリン塩としては、タウリン、N−メチルタウリン、N−プロピルタウリン、N−イソプロピルタウリン、N−ブチルタウリン、N−ペンチルタウリン、N−イソペンチルタウリン、N−へキシルタウリン、N−シクロへキシルタウリンのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられるが、中でもナトリウム塩またカリウム塩が好ましい。
【0011】本発明で使用される一般式(2) R2COOHで示される脂肪酸は、R2がC8〜C18の直鎖のアルキル基(オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基)または直鎖の不飽和炭化水素基(オクタデセニル基、オクタデセジエル基等)1種または2種以上の混合体として用いる事が出来る。具体的には、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等を用いる事が出来る。
【0012】本発明の製造に用いられる脂肪酸及びタウリン塩の割合は特に制限されないが、モル比として1:1〜4:1、好ましくは1.5:1〜3:1の範囲を挙げることができる。1:1より脂肪酸が少ないと未反応のタウリン塩が残り、4:1より脂肪酸が多いと未反応脂肪酸の回収に手間を要することとなる。
【0013】上記反応によるN−アシルタウリン化合物の製造方法は、前述する脂肪酸とタウリン塩をチッ素吹き込み下で、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度条件下で、通常5〜15時間、好ましくは7〜10時間反応させることによって実施することができる。
【0014】チッ素吹き込みに関しては、本反応は以下の反応式(2)に従って進むため、反応する脂肪酸と等モルの水が生成するので、効果的な反応を行うため、これを系外に排出すべく行う。
このチッ素吹き込みは正確にコントロールする必要があり、使用するチッ素ガスは水分量が1,000ppm以下のものを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モル、好ましくは1/2〜1.5倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む必要がある。チッ素ガスの水分量が1,000ppmより多いと発生した水分を取り込むことが出来ず、系外に排出する効果が著しく低下する。吹き込み量が発生する水分の1/5倍モルより少ないと水分を系外に排出する効果が見られず、また、発生する水分の2倍モルを超えるチッ素ガスを吹き込んでも効果の向上は見られない。
【0015】反応生成物に水を加え、トルエン抽出を行い、水相からN−アシルタウリン化合物を取り出すことが出来る。また、トルエン層から未反応の脂肪酸を回収し、再使用することが出来る。
以下、実例を持って示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】実施例1
タウリン31.3g(0.25モル)と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をラウリル酸75.1g(0.375モル)に加え、100℃で10時間加熱する。その際、液体チッ素から発生した水分1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを減圧弁で流量が1.2cc/min(全吹き込み量0.05モル)になるようにコントロールし、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む。室温まで冷却後100ccの水を加え、100ccのトルエンで2回抽出を行う。水相を濾別、水洗、乾燥し74.3g(収率90.3%)のN−ラウリルタウリンナトリウムの無色結晶を得た。
【0017】実施例2
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを3.1cc/min(全吹き込み量0.125モル)に変えて行った。70.4gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率85.6%)。
【0018】実施例3
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを6.2cc/min(全吹き込み量0.25モル)に変えて行った。78.4gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率95.3%)。
【0019】実施例4
実施例1において、チッ素吹き込み量のみを12.4cc/min(全吹き込み量0.50モル)に変えて行った。81.5gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率99.1%)。
【0020】実施例5
タウリン31.3g(0.25モル) と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をやし油脂肪酸121g(0.5モル)に加え、120℃で9時間加熱する。その際、液体チッ素ボンベから発生した水分1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを減圧弁で流量が7.7cc/min(全吹き込み量0.25モル)になるようにコントロールし、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込む。反応後、以下実施例1と同じ操作を行う事により、88.1g(収率95.1%)のN−ココイルタウリンナトリウムの無色結晶を得た。
【0021】実施例6
実施例5においてタウリンの代わりに、メチルタウリン34.8g(0.25モル)を用い、実施例5と同じ操作を行う事により、N−ココイルメチルタウリンナトリウム88.4g(収率92.1%)の白色固形物を得た。
【0022】実施例7
実施例1において、加熱時間のみを5時間に変えて行った。71.0gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率86.3%)。
【0023】比較例1
タウリン31.3g(0.25モル) と99%NaOH 10.2g(0.25モル)をラウリル酸75.1g(0.375モル)に加え、チッ素ガスを吹き込まずに100℃で10時間加熱したが、反応は殆ど進行せず、目的物のN−ラウリルタウリンナトリウムは得られなかった。
【0024】比較例2
タウリン31.3g(0.25モル)gと99%NaOH 10.2g(0.25モル)をやし油脂肪酸121g(0.5モル)に加え、10mmHgの減圧の下で120℃の反応温度で9時間反応させた。反応により生成した水を、メタノール/ドライアイスで冷却した水の捕集装置で捕集し、生成した水の量より反応率を計算した。その結果、反応率は5.4%にすぎなかった。
【0025】比較例3
実施例1において、加熱時間のみを2時間に変えて行った。25.3gのN−ラウリルタウリンナトリウム無色結晶を得た(収率30.8%)。
【0026】試験例
実施例1、実施例5、実施例6でそれぞれ得られたN−ラウリルタウリンナトリウム、N−ココイルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウムを次に記した気泡力の試験法に基づいて、市販のH社製のN−ラウリルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウムとの気泡力の比較試験を行い、活性剤としての性能比較を行った。下表に示した様に本発明の製品と市販の製品との性能は同じであった。
【0027】起泡力の試験法
JIS K 3362:1998[合成洗剤試験法]に基づき、それぞれ25℃、10w/w%の試料水溶液200mlを、900mmの高さから直径50mmの円筒管に落下させた時に生ずる泡の高さを測定して比較した。
【発明の効果】
タウリン塩と脂肪酸をチッ素吹き込み条件下、直接反応させ、N−アシルタウリン化合物を製造することにより、経済的に高純度のN−アシルタウリン化合物を提供することが可能となった。
Claims (2)
- 一般式(1)R1NHCH2CH2SO3M(式中R1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)で表されるタウリン塩を、チッ素ガス吹き込み状況下の一般式(2)R2COOH(式中R2はC8〜C18の直鎖のアルキル基または不飽和炭化水素基を示す)で表される脂肪酸と直接反応させることによる、N−アシルタウリン化合物の製造方法。
- 請求項1に於けるチッ素ガスの吹き込みに関して、水分量1,000ppm以下の乾燥チッ素ガスを用い、吹き込み量が発生する水分の1/5〜2倍モルで、吹き出し口に多孔質ガラスを取り付けた吹き込み管より吹き込むこと。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003177442A JP2005008603A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | N−アシルタウリン化合物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003177442A JP2005008603A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | N−アシルタウリン化合物の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005008603A true JP2005008603A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34099997
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003177442A Pending JP2005008603A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | N−アシルタウリン化合物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005008603A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021520341A (ja) * | 2018-04-24 | 2021-08-19 | ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ | リン酸触媒を用いたタウリンのアルキルタウレートアミドへの変換の向上 |
WO2023093677A1 (zh) * | 2021-11-25 | 2023-06-01 | 张家港格瑞特化学有限公司 | 一种脂肪酰基牛磺酸盐的合成工艺 |
-
2003
- 2003-06-23 JP JP2003177442A patent/JP2005008603A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021520341A (ja) * | 2018-04-24 | 2021-08-19 | ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ | リン酸触媒を用いたタウリンのアルキルタウレートアミドへの変換の向上 |
JP7358379B2 (ja) | 2018-04-24 | 2023-10-10 | ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ | リン酸触媒を用いたタウリンのアルキルタウレートアミドへの変換の向上 |
US11999680B2 (en) | 2018-04-24 | 2024-06-04 | Conopco, Inc. | Enhanced conversion of taurine to alkyl taurate amide using phosphoric acid catalysts |
WO2023093677A1 (zh) * | 2021-11-25 | 2023-06-01 | 张家港格瑞特化学有限公司 | 一种脂肪酰基牛磺酸盐的合成工艺 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2015526460A (ja) | 触媒としてn−アシルアミノ酸界面活性剤またはその対応する無水物を使用するn−アシルアミノ酸界面活性剤を製造する方法 | |
WO2015183343A1 (en) | Cyclic process for the production of taurine from ethylene oxide | |
JP4338524B2 (ja) | メチオニンの製造方法 | |
CN111004156A (zh) | 一种直接法合成脂肪酰基氨基酸表面活性剂的方法 | |
JPH01268671A (ja) | 高純度フルオルアルキルスルホン酸塩の製造方法 | |
KR100974608B1 (ko) | 3-o-알킬-5,6-o-(1-메틸에틸리덴)-l-아스코르빈산의제조방법 및 5,6-o-(1-메틸에틸리덴)-l-아스코르빈산의제조방법 | |
KR101056461B1 (ko) | 복소환식 메르캅토 화합물의 제조 방법 | |
JP2005008603A (ja) | N−アシルタウリン化合物の製造方法 | |
CN110981758A (zh) | 一种脂肪酰基氨基酸表面活性剂的合成方法 | |
JPH04210953A (ja) | β−置換スルホン酸および/またはスルホネートの製造方法 | |
CN109574893A (zh) | 一种硫代碳酸钠合成巯基乙胺盐酸盐的方法 | |
ES2335924T3 (es) | Procedimiento para la preparacion de acido 3,4-dicloro-isotiazolcarboxilico. | |
JP2004315398A (ja) | N−アシルタウリン化合物の製造方法 | |
TWI666199B (zh) | 哌啶-4-硫代甲醯胺之製備 | |
KR100695577B1 (ko) | 술포닐이미드계 음이온 계면활성제 | |
US7405322B2 (en) | Manufacture of oxalic acid dihydrate | |
US6313342B1 (en) | Synthesis of esters of mercaptocarboxylic acids | |
RU2135463C1 (ru) | Способ получения трифторметансульфокислоты | |
JPS60224661A (ja) | α−アミノ酸の製造方法 | |
TW200302821A (en) | Process for production of optically active 2-halogeno-carboxylic acids | |
JPS6316375B2 (ja) | ||
JPS6155914B2 (ja) | ||
CN111909044A (zh) | 2-(烷基氨基)乙基苯甲酸酯类化合物的合成方法 | |
ES2849298T3 (es) | Recuperación del ácido carboxílico a partir de sus sales de magnesio por precipitación con ácido clorhídrico, útil para la elaboración de caldos de fermentación | |
EP4242173A1 (en) | Purification of hydrogen bis(fluorosulfonyl)imide |