JP2005007668A - 金属被膜フッ素樹脂基板、その評価方法及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を提供する。フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が35%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
【選択図】 図1
【解決手段】フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が35%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属被膜フッ素樹脂基板、その評価方法及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は傑出した耐薬品性、耐熱性及び表面特性を持つ高分子材料であるため、その特殊性を生かして過酷な条件下で使用しうる工業材料として利用されている。
例えば、電子機器に使用されるフレキシブルプリント配線板の材料として、フッ素樹脂フィルムの表面に銅箔を積層した金属被覆フッ素樹脂基板(以下、本発明では金属被膜フッ素樹脂基板と言う。)が提案されている。近年、電子機器の小型・軽量化に伴い、より高精細な回路パターンを有する、高周波特性の優れたフレキシブルプリント配線板の需要が高まってきた。将来的には、携帯電話や薄型モニタでは、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は15μm以下であることが要求される。フッ素樹脂は高度の撥水性を有し、現在多用されているポリイミドよりも比誘電率が低いため、寸法安定性が高く、シャープな信号波形を与える金属被膜フッ素樹脂基板(ポリイミドよりも高い周波数の信号を伝導可能なフレキシブルプリント配線板)を得ることができる。
【0003】
表面に白金層を形成したフッ素樹脂フィルムは、固体高分子電解質型燃料電池の集電体(MEA(Membrane Electrode Assemblies))用フィルムとして利用されている。今後、エネルギー効率が高く、環境への負荷が小さい燃料電池の需要が伸びるとともに、白金をめっきしたフッ素樹脂フィルムの需要が高まると見られる。
【0004】
フッ素樹脂は金属との密着性に劣るため、このような金属被膜フッ素樹脂基板においては、密着力の高い金属膜を、いかにして効率よく形成するかに大きな問題があった。これまでに、フッ素樹脂と金属との間の密着性を改善する、幾つかの提案がすでになされている。以下、従来の金属被膜フッ素樹脂基板の構成及び製造方法の概略を説明する。
【0005】
特許文献1(特許第3218542号公報)、特許文献2(特許第3073778号公報)に、多孔質フッ素樹脂シートの細孔内と表面に親水性高分子(親水基を有するポリマー)を予め付着結合した後で、金属めっき層を形成する方法が開示されている。この方法によれば、金属層と多孔質フッ素樹脂シートとの間の密着性は改善する。しかし、親水性高分子を多孔質フッ素樹脂シートに付着結合するために、多孔質フッ素樹脂シートを親水性高分子を溶かした溶液に浸漬する工程と、乾燥させる工程とを繰り返す必要があり、加工コスト及び加工時間がかかった。親水性高分子の選択を誤ると、親水性高分子に含まれるイオンが移動するためにショート不良が生じる(イオンマイグレーション)可能性があった。
【0006】
特許文献3(特許第3181329号公報)に、多孔質ふっ素樹脂材料の微細孔内に無機化合物を付着結合させた後に、金属を金属状態で結合させる方法が開示されている。無機化合物と金属膜の密着性が良いために密着性を改善できる。このような構成のものは、特に膜状触媒として用いられる。無機化合物付着する方法として、金属アルコキシドの有機溶媒溶液を材料に含浸させた後、その金属アルコキシドを加水分解し、無機化合物に変換する方法が挙げられている。しかし、加水分解には20分程度の時間がかかり、その後の乾燥には2時間程度の時間が必要であるため、加工コスト及び加工時間がかかった。無機化合物として酸化物を使用する場合には、金属膜が酸化し、剥離強度が徐々に劣化する可能性があった。
特許文献1、特許文献2及び特許文献3による金属被膜フッ素樹脂の製造方法は、フッ素樹脂フィルム表面に予め化学的な処理を行う必要があるため、加工コスト及び加工時間に問題があった。
【0007】
特許文献4(特開平11−222666号公報)に、同一真空系内でフッ素樹脂フィルムにプラズマ放電下で核付金属及び金属蒸着層を形成する方法が開示されている。プラズマを酸素プラズマとし、プラズマ処理強度を1kw/m2から12kw/m2と設定することが望ましいとされている。しかしこのような条件の下では、金属粒子の持つつ運動エネルギーはせいぜい10eVと小さいと考えられ、フッ素樹脂基板への密着力が不足し、エッチング等のプロセス耐性が不十分である可能性があった。酸素プラズマ処理によって、フッ素樹脂と金属薄膜との間に酸素が残留し、金属薄膜が酸化し、密着力が経時的に低下していく可能性があった。
【0008】
特許文献5(特開平5−279841号公報)に、多孔質ふっ素樹脂フィルム表面に、金属又はセラミックスを強固且つ均質に蒸着を行うために、蒸着源の個数、配置又は大きさを最適化する、蒸着方法が開示されている。しかし、蒸着源の個数、配置又は大きさを調整するだけでは、実用に供しうる剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできないことがあった(比較例1及び比較例2参照)。
【0009】
フレキシブルプリント配線板の製造現場においては、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を、製造時間と同じかそれ以下の時間で評価する方法が求められる。従来、フレキシブルプリント配線板の銅薄膜の密着度を評価する方法として、JIS C6471が使用されていた。JIS C6471は、表面に所定の厚さ(18μm)の銅めっきをした所定のサンプルを作成した後、銅薄膜をフィルムから剥離し、剥離強度を測定する方法である。しかし試料を破壊する試験である故、抜き取り検査しか行えなかった。また試験のためのサンプルを作成するのに時間がかかった。そのため、製品を製造後その不良品を発見するまでに時間がかかり、検査を行っている間にも製造工程は稼動している故に、大量の不良品を製造してしまう可能性があった。金属成膜後のフィルムを酸溶液に浸漬する方法及びテープ剥離試験は、短時間で密着度が評価できるものの、サンプルにダメージを与える方法であるため、全数検査を行えず、検査を漏れた不良品を出荷する可能性があった。特許文献1〜特許文献5には金属被膜フッ素樹脂基板の密着度を短時間で、非破壊で評価する方法については述べられていない。
【0010】
【特許文献1】
特許第3218542号公報
【特許文献2】
特許第3073778号公報
【特許文献3】
特許第3181329号公報
【特許文献4】
特開平11−222666号公報
【特許文献5】
特開平5−279841号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
更に、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。請求項1に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が35%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記反射率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.52以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記比が0.40以下であることを特徴とする請求項3に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が30%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記反射率が17%以下であることを特徴とする請求項6に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.50以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記比が0.26以下であることを特徴とする請求項8に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0020】
透明度の高いフッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層とフッ素樹脂基板との界面の反射率と強い相関関係を有する。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有する。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率の、金属層側から入射した光を金属層表面で反射させたときの反射率に対する比が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有する。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記金属層が、前記フッ素樹脂フィルムと接するニッケル、クロム、コバルト又はモリブデンから形成される第1の金属層と、銅又は銅を主成分とする合金から形成される第2の金属層とから形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0022】
請求項10に記載の発明は、前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面が、親水性機能を付与されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0023】
請求項11に記載の発明は、前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に、プラズマ処理によって官能基が形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0024】
請求項12に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0025】
請求項13に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0026】
請求項14に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0027】
請求項15に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が35%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0028】
請求項16に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が20%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0029】
請求項17に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.52以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0030】
請求項18に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.40以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0031】
請求項19に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が30%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0032】
請求項20に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が17%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0033】
請求項21に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.50以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0034】
請求項22に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.26以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0035】
本発明の発明者は、透明度の高いフッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層とフッ素樹脂基板との界面の反射率と強い相関関係を有することを発見した。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率の、金属層側から入射した光を金属層表面で反射させたときの反射率に対する比が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によれば、迅速に非破壊で金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。
【0036】
請求項23に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径の平均値が40nmから200nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0037】
請求項24に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径の平均値が50nmから150nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0038】
フッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し、金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層の表面層を構成する結晶粒の粒径と強い相関関係を有する。金属層の表面層を構成する結晶粒の粒径が所定の範囲内にある時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によれば、迅速に非破壊で金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。
【0039】
請求項25に記載の発明は、減圧下に第1の不活性ガスを導入し、フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第1の不活性ガスをグロー放電させて前記第1の不活性ガスのプラズマを発生し、前記第1の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第1の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムをプラズマ処理するプラズマ処理工程と、引き続き減圧下に第2の不活性ガスを導入し、金属を溶融し、前記フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第2の不活性ガスをグロー放電させて前記第2の不活性ガスのプラズマを発生し、前記金属を活性化させ、前記第2の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第2の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムに前記金属の薄膜を蒸着する成膜工程と、を有することを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0040】
プラズマ処理によって、フッ素樹脂フィルム表面の水分の除去及び不純物の洗浄が行われる。プラズマ処理後に大気開放することなく、金属層を形成するので、フッ素樹脂表面への水分及び不純物の付着を防ぐことができる。従って、製造される金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度のバラツキを抑えることができる。本発明の処理において酸素を使用しないので、その処理後にフッ素樹脂フィルムの表面が酸化し、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度が経時的に劣化する恐れはない。本発明の製造方法は安価であり製造時間が短い。
【0041】
請求項26に記載の発明は、前記プラズマ処理工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第1の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0042】
請求項27に記載の発明は、前記成膜工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第2の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25又は請求項26のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0043】
請求項28に記載の発明は、前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定し、前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを有することを特徴とする、請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0044】
請求項29に記載の発明は、前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率と、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率とを測定し、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0045】
請求項30に記載の発明は、前記金属が白金又は白金を主成分とする合金であり、前記成膜工程の後に、前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定し、前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0046】
本発明において評価工程は非破壊試験で評価を行う故に、全数検査が可能である。又、その評価工程に要する従来例と比較して時間は短い。金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程における成膜工程の後に、剥離強度の評価工程を挿入することにより、常時、成膜工程の管理を行うことができる。形成直後の金属薄膜の剥離強度が許容範囲外になった場合、即、製造を中止することができ、不良品を早い段階で発見することができる。このため、余分なコストが削減され、歩留まりが向上する。
【0047】
本発明は、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を実現できるという作用を有する。
フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を実現できる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施例について、図面とともに記載する。
図1は、本発明に係わる好ましい実施の形態による金属被膜フッ素樹脂基板(フレキシブルプリント配線板である。)の断面構造及び本発明で使用する反射率を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明に係わるフレキシブルプリント配線板は、フッ素樹脂フィルム101の上に金属層102が形成されている。金属層102は、フッ素樹脂フィルム101表面にアンカー効果を利用して、形成されている。
【0049】
金属層102は、金属被膜フッ素樹脂基板の用途に応じて、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、パラジウム、白金、銅、銀、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、アンチモン、ビスマス等の各種金属及びそれらの合金から選択した金属から形成される。
【0050】
フッ素樹脂フィルム101は従来公知のものであり、特にこれらに限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PFEP)、ポリビニルフルオロライド(PVF)、ポリビニリデンフルオロライド(PVDF)を材料とする、市販のフッ素樹脂フィルム及びNafion(登録商標)を使用できる。PTFEフィルム及びPFAフィルムは、テフロン(登録商標)の商品名で市販されている。PTFEフィルムは、デュ・ポン社とジャパンゴアテックス株式会社等が販売している。PFAフィルムは、三井・デュポン・フロロケミカル株式会社等が販売している。典型的には上記のフッ素ポリオレフィンである。
【0051】
フッ素樹脂フィルム101の表面に、公知の方法によって予め親水基を付着し(親水化)使用しても良い。親水基と金属イオンが化学結合することにより、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の密着性を高めることができる。親水化の方法として例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、イミダゾール基、スルホン基、イソシアネート基、リン酸基を有する親水性高分子をフッ素樹脂フィルム101の表面に塗布し付着する方法又は、プラズマ処理によってヒドロキシル基、アミド基、シアノ基又はカルボキシル基を形成する方法が挙げられる。プラズマ処理時に、水蒸気を主成分とするガスを使用することによりヒドロキシル基を生成できる。アンモニアあるいは窒素と水素を主成分とするガスを使用することにより、アミド基を生成できる。窒素を含む混合ガスを使用することにより、シアノ基を生成できる。
【0052】
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金によって形成する場合、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間に、ニッケル、クロム、コバルト又はモリブデンから選択した下地金属の層を形成することにより、密着性を改善できる。
【0053】
固体高分子電解質型燃料電池の集電体用フィルムでは、フッ素樹脂フィルム101として、PTFEフィルム又はNafion(登録商標)を使用し、白金又は白金を主成分とする合金から金属層102を形成することが好ましい。
フレキシブルプリント配線板に使用する金属被膜フッ素樹脂基板では、銅又は銅を主成分とする合金によって金属層102を形成することが望ましい。
【0054】
本発明に係わるフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
発明者は、フッ素樹脂フィルム101に金属層102を成膜するために、安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101に高周波電力を印加できる成膜装置を用いた。
【0055】
フッ素樹脂フィルム101を成膜装置のチャンバ(真空槽)内に入れ、真空排気する。チャンバ内に第1の不活性ガスを導入し、安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極(基板ホルダ)に高周波電力を印加する。高周波電力の印加により、グロー放電が生じ、第1の不活性ガスのプラズマが発生する。フッ素樹脂フィルム101に第1の負のバイアス電圧が誘起され、フッ素樹脂フィルム101がプラズマ処理される。
【0056】
具体的には、アルゴン又は窒素を含む混合ガスを第1の不活性ガスとして、真空度10−3Paから10−1Paの範囲で成膜装置のチャンバ内に導入する。周波数13.56MHzの高周波電力を、フッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に印加する。この状態において、グロー放電が発生し、フッ素樹脂フィルム101近傍には、印加した電力に応じて第1の負のバイアス電圧が誘起される。第1の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する。
【0057】
グロー放電下で第1の不活性ガスは解離し、電子、イオン及び活性励起種(ラジカル)が生成する。フッ素樹脂フィルム101の表面はイオン及び活性励起種に曝され、水分の除去、不純物の洗浄及び表面活性が行われる。更に、微細な凹凸が形成される。前記したように、第1の不活性ガスの種類によっては、プラズマ処理によってフッ素樹脂フィルム101の表面に、親水基を付着できる。第1の負のバイアス電圧が1000Vより大きい場合、フッ素樹脂フィルム101の表面が過度に粗化され、金属被膜フッ素樹脂基板の透明度の低下及び高周波信号の伝播特性が劣化が起きる。第1の負のバイアス電圧が200Vより小さい場合、水分の除去及び不純物の洗浄が十分に行われず、得られる金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は実用に供しうる値に達しない。
【0058】
引き続き減圧下で、チャンバを大気開放することなく、導入するガスを、第2の不活性ガスに変える。安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に高周波電力を印加する。高周波電力の印加により、グロー放電が生じ、第2の不活性ガスのプラズマが発生する。グロー放電を発生させた状態で、金属を溶融させる。金属を溶融させる加熱機構に流れる電流を制御し、金属層102の成膜速度を制御し、金属層102を成膜する。
【0059】
具体的には、アルゴンを主成分とするガスを第2の不活性ガスとして、真空度10−3Paから10−1Paの範囲で成膜装置のチャンバ内に導入し、周波数13.56MHzの高周波電力を、フッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に印加する。この状態において、グロー放電が発生し、フッ素樹脂フィルム101近傍には、印加した電力に応じて第2の負のバイアス電圧が誘起される。第2の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する。
【0060】
プラズマ処理後に大気開放することなく、金属層を形成するので、フッ素樹脂フィルムへの水及び不純物の付着を防ぐことができる。従って、剥離強度のバラツキを抑えることができる。
イオン化した金属は、第2の負のバイアス電圧によって加速され、フッ素樹脂フィルム101の凹凸に機械的に食い込む。このようなアンカー効果によって、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の密着度を向上させることができる。
【0061】
金属層102を成膜する工程において、第2の負のバイアス電圧の大きさに応じて、イオン化した第2の不活性ガスがフッ素樹脂フィルム101の表面をたたくスパッタ効果の寄与と、金属イオンがフッ素樹脂フィルム101表面に食い込むアンカー効果の寄与とのバランスが変化する。その結果、結晶成長のメカニズムが変化する。金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度が、結晶成長のメカニズムに対応して変化することを、発明者はX線回折パターン及び走査電子顕微鏡(SEM)観察により確認している。
【0062】
第2の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する場合、フッ素樹脂フィルム101表面に食い込んだ金属イオンのうち、フッ素樹脂フィルム101との結合力が弱い金属イオンはスパッタ効果により除去される。フッ素樹脂フィルム101に強く結合した金属イオンから非晶質層が形成され、続いて多結晶層が形成される。多結晶層を構成する個々の単結晶は、金属結晶の核となる。多結晶層を構成する個々の単結晶の境界で金属結晶が成長し、金属結晶層が形成され、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板が得られる。
【0063】
第2の負のバイアス電圧が200Vより小さい場合、スパッタ効果の寄与がアンカー効果の寄与に比べて小さい。従って、フッ素樹脂表面に食い込んだ金属のほとんどが除去されないまま(フッ素樹脂フィルム101との結合力が弱く実質的にアンカー効果を奏さない金属イオンが残留したまま)、非晶質層、多結晶層及び金属結晶層が形成される。アンカー効果の寄与が小さいため、金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度は小さい。
【0064】
第2の負のバイアス電圧が1000Vより大きい場合、結晶成長の速度よりも金属がスパッタされる速度の方が大きくなり、フッ素樹脂フィルム101内部の分子構造が破壊される。金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度が悪くなる。
【0065】
本発明に係わる金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法を説明する。
金属層102は、主にアンカー効果によってフッ素樹脂フィルム101に密着している。フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の界面は、金属イオンのフッ素樹脂フィルム101への食い込みの度合いに対応した粗さを有する。つまり、剥離強度が大きいほど、食い込みの度合いが大きく、界面が粗い。界面の粗さは、界面に入射した光の反射率を変化させる。
【0066】
発明者は、金属被膜フッ素樹脂基板にフッ素樹脂フィルム101側及び金属層102側から光学波長800nmの光を入射し、反射率とJISC 6471による剥離強度との関係を調べた。実施例において使用したフッ素樹脂フィルム101の、光学波長800nmの光の透過率は85%以上である。金属層102は、99.9%の銅合金又は、99.9%の白金合金から形成した。
【0067】
以下の条件のうち少なくとも1つを満たす金属被膜フッ素樹脂基板は、実用に供しうる、0.2N/mm以上の剥離強度を有する。0.2N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板のフレキシブルプリント配線板では、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は20μmが実現できる。
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が35%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.52以下。
金属層102を白金又は白金を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が30%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.50以下。
【0068】
以下の条件のうち少なくとも1つを満たす金属被膜フッ素樹脂基板は、0.3N/mm以上の剥離強度を有する。0.2N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板のフレキシブルプリント配線板では、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は将来的に必要とされる、15μmが実現できる。
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が20%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.40以下。
金属層102を白金又は白金を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が17%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.26以下。
【0069】
フッ素樹脂フィルム101の透過率が高いため、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光は界面で反射する。剥離強度が大きい場合、界面は粗く、光はあらゆる方向に反射散乱されるので、反射率は小さい。剥離強度が小さい場合、金属結晶の食い込みが小さく、界面はより平坦である。従って、反射率は大きい。
金属被膜フッ素樹脂基板の、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光及び/又は金属層102側から入射した光の反射率を測定することにより、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法は、非破壊で迅速に剥離強度を評価するものである。
なお、評価に使用する光の光学波長は800nmに限られない。フッ素樹脂フィルムを透過する光について、剥離強度と反射率との間の関係を調べれば良い。
【0070】
発明者は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムに、白金合金の金属層を形成し、金属層の表層のSEM写真を観察し、剥離強度と金属結晶のサイズとの関係を調べた。その結果、結晶サイズ(結晶粒の長い方の粒子径の平均値)が40nmから200nmのとき、金属被膜フッ素樹脂基板は、実用に供しうる、0.2N/mm以上の剥離強度を有することがわかった。結晶サイズが50nmから150nmのとき、金属被膜フッ素樹脂基板は、0.3N/mm以上の剥離強度を有することがわかった。
【0071】
評価対象となる金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法は上記の製造方法に限られないが、金属層はフッ素樹脂フィルムに主にアンカー効果によって形成される必要がある。
フッ素樹脂フィルムに親水性高分子、官能基又は無機化合物を予め付着した後、アンカー効果を利用して金属層を成膜する場合、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を大きくできる。親水性高分子、官能基及び無機化合物はフッ素樹脂フィルムの表面の粗さをほとんど変化させないので、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によって剥離強度を評価できる。
本発明の、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法による、剥離強度の評価工程は、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程に挿入可能である。
フッ素樹脂フィルムの両面に同一条件で金属層を成膜する場合、片面に金属層を成膜した後、もう片方の面に成膜する前に、反射率及び結晶サイズの測定を行い剥離強度の評価を行うと良い。
【0072】
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の、製造方法、剥離強度の測定結果について、以下の実施例1及び実施例2で具体的に説明する。
【0073】
《実施例1》
本発明の実施例1の金属被膜フッ素樹脂基板(実施例においては、フレキシブルプリント配線板である。)の製造方法を説明する。
フッ素樹脂フィルム101として、デュ・ポン社製のPFAフィルムを使用した。使用したPFAフィルムの、光学波長800nmの光の透過率は85%、厚さは25μm、空孔率は1%以下である。
金属層102は99.9%の銅合金から形成した。
【0074】
図3は、実施例1のフレキシブルプリント配線板を製造するために用いた成膜装置の概略構成を示す断面図である。図3において、チャンバ301内には金属の蒸発源となる蒸着源306、陰極電極となる導体電極302及び加熱機構309が所定位置に設けられている。蒸着源306に、蒸着用金属(実施例1では銅合金である。)307を置く。導体電極211は、被蒸着物であるフッ素樹脂フィルム101を保持できるよう構成されている。導体電極211には、安定放電回路(図示しない。)を介して高周波電源303からの高周波電力を入力するための高周波導入ケーブル311が接続されている。高周波導入ケーブル311は、チャンバ301に電気的に絶縁されて保持されている。チャンバ301はガス導入口308とメインバルブ305を有し、チャンバ301内を所定ガスにより所定圧に設定できるよう構成されている。304は排気装置、310は接地部である。蒸着源306としてタングステンボードを使用した。加熱機構309として赤外線ランプを使用した。
【0075】
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分間保持し、脱水処理を行った。次に、フッ素樹脂フィルム101を25℃に冷却した。
【0076】
引き続き、アルゴンガスをガス導入口308から導入した。真空度10−1Paで、フッ素樹脂フィルム101に高周波電源303により周波数13.56MHzの高周波電力を印加した。これによりアルゴンガスをイオン化及び活性化し、5分間グロー放電させた。このとき、フッ素樹脂フィルム101近傍の導体電極302に自己誘起された負の直流電圧が400Vとなるように、高周波電力の大きさを調整した。フッ素樹脂フィルム101の表面がアルゴンイオン及びアルゴン活性励起種によってプラズマ処理された。
【0077】
引き続き大気開放を行うことなく、成膜装置のチャンバ301において、アルゴンガスを排気し、真空度5.0×10−2Paで再度アルゴンガスを導入した。高周波電源303により周波数13.56MHzの高周波電力をフッ素樹脂フィルム101に印加し、グロー放電させた。このとき、フッ素樹脂フィルム101近傍の導体電極302に自己誘起された負の直流電圧が400Vとなるように、高周波電力の大きさを調整した。グロー放電下において蒸着用金属(銅合金)307を溶融させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、金属層(銅合金の層)102を膜厚300nm成膜した。
【0078】
以上のようにして製造されたフレキシブルプリント配線板について、図2に示す光学系を用い、反射率を測定した。図2は、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法で使用する光学系の構成を示す構成図である。光源200から光学波長800nmの光201を放出する。光201を鏡202で反射した入射光110を、フレキシブルプリント配線板のフッ素樹脂フィルム101側に入射する。反射光111を光強度測定器203で測定し、反射率(R1)を測定したところ、11%であった。金属層102の表面に18μ厚銅めっきし、同様に反射率R1を測定したところ、11%であった。フッ素樹脂フィルム101は、光学波長800nmの光を85%透過するので、入射光110はフッ素樹脂フィルム101と金属層102との界面で反射される(フッ素樹脂フィルム101内部又は金属層102内部で反射されたのではない)。
光源220から光学波長800nmの光221を放出する。光221を鏡222で反射した入射光120を、フレキシブルプリント配線板の金属層102側に入射する。反射光121を光強度測定器223で測定し、反射率(R2)を測定する。R1/R2の値は0.32であった。
【0079】
以上のようにして製造されたフレキシブルプリント配線板に、電解めっき法で銅を18μm厚付けし、JIS C6471に準拠して引き剥がし試験を行い、常態剥離強度を測定した。常態剥離強度は0.4N/mmであり、実用に供しうる値であった。
【0080】
金属層102成膜時の高周波電力の大きさを様々に変化させ(導体電極302に自己誘起される負のバイアス電圧を変化させ)た試料を作成し、同様に常態剥離強度、反射率(R1とR2)の測定を行い、常態剥離強度とR1との関係及び常態剥離強度とR1/R2との関係を調べた。具体的には、全ての試料のR1及びR2の測定後、全ての試料を一括して電解めっき法によるめっき処理を行い、JIS C6471に準拠して常態剥離強度を測定した。
【0081】
図4は、反射率(R1)と常態剥離強度との関係を示す線図である。反射率R1が小さいほど、常態剥離強度は大きい。実用上、金属被膜フッ素樹脂基板の常態剥離強度は0.2N/mmであることが望ましい。常態剥離強度が0.2N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、35%以下である。常態剥離強度が0.3N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、20%以下である。
【0082】
図5は、反射率の比(R1/R2)と常態剥離強度との関係を示す線図である。反射率の比が小さいほど、常態剥離強度は大きい。常態剥離強度が0.2N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率の比は、0.52以下である。常態剥離強度が0.3N/mmである金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、0.40以下である。
【0083】
反射率R1は、より詳細にはフッ素樹脂フィルム101の透過率と、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との界面の反射率を掛け合わせた値である。従って、光学波長が800nmの光の透過率が85%より大きいフッ素樹脂フィルムを使用する場合、図4及び図5のグラフは縦軸の正の方向に移動したグラフとなる。光学波長が800nmの光の透過率が85%より小さいフッ素樹脂フィルムを使用する場合、図4及び図5のグラフは縦軸の負の方向に移動したグラフとなる。光学波長が800nmの光の透過率が85%ではないフッ素樹脂フィルムを使用し、実施例1と同様の測定を行うことにより、所定の剥離強度を満たす金属被膜フッ素樹脂基板の反射率(R1)及び反射率の比(R1/R2)を調べることができる。なお、フッ素樹脂フィルム101の透過率は、フィルムの厚さと空孔率によって規定される。
【0084】
図6及び図7は、常態剥離強度が0.4N/mm及び0.12N/mmであるフレキシブルプリント配線板における、銅合金の層の最表層を1万倍で撮影したSEM写真である。SEM写真により、フッ素樹脂フィルム表面に平行な面内の銅結晶のサイズを測定したところ、図6では70nm、図7では30nmであった。ただし、結晶サイズは、SEM写真内に見られるそれぞれの結晶粒の長い方の粒子径の平均値とした。以上の観察結果から、非晶質層がアンカー効果によりフッ素樹脂フィルムに強く付着しているほど(フレキシブルプリント配線板の剥離強度が大きい場合)、その上に形成される金属結晶のサイズが大きいことがわかった。
【0085】
《実施例2》
本発明の実施例2のフレキシブルプリント配線板は、金属層102を99.9%の白金合金から形成した。白金は銅に比べて融点が高いため、成膜工程において、蒸着源306としてカーボン製るつぼを使用し、白金合金を電子ビームで溶融させた。その他の材料及び製造工程は実施例1のフレキシブルプリント配線板と同じである。
金属層102成膜時の高周波電力の大きさを様々に変化させ(導体電極302に自己誘起される負のバイアス電圧を変化させ)た試料を作成し、実施例1と同じ方法で反射率(R1とR2)の測定を行った。
SEM写真により、フッ素樹脂フィルム表面に平行な面内の白金結晶のサイズを測定した。結晶サイズは、SEM写真内に見られるそれぞれの結晶粒の長い方の粒子径の平均値とした。
【0086】
実施例2のフレキシブルプリント配線板の白金表面に、1mm間隔で縦横10本ずつの切り込みを入れ、Scotch クリアテープ(600タイプ)を貼り付け、毎分約50mmの早さでテープを引き剥がす、テープ剥離試験を行った。白金が全く剥離しなかった場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.3N/mm以上に対応する(以下の表では「○」で表す)。白金が剥離した面積が全体の50%以下の場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.2N/mm以上に対応する(以下の表では「△」で表す)。白金が剥離した面積が全体の50%を超える場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.2N/mm未満に対応する(以下の表では「×」で表す)。
【0087】
表1に、成膜時の自己バイアス電圧と、反射率(R1)、反射率の比(R1/R2)、結晶サイズ、剥離試験結果を示す。表に2、成膜時の自己バイアス電圧と、結晶サイズ、剥離試験結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
成膜時の自己バイアス電圧が200Vから1000Vのときに、実用に供しうるフレキシブルプリント配線板を製造することができた。成膜時の自己バイアス電圧が大きいほど、反射率(R1)が小さく、反射率の比(R1/R2)が小さく、結晶サイズが大きい。
常態剥離強度が0.2N/mm以上のフレキシブルプリント配線板では、反射率(R1)が30%以下、反射率の比(R1/R2)が0.50以下、結晶サイズが40nmから200nmであった。常態剥離強度が0.3N/mm以上のフレキシブルプリント配線板では、反射率(R1)が17%以下、反射率の比(R1/R2)が0.26以下、結晶サイズが50nmから150nmであった。
【0091】
《比較例1》
実施例1の成膜装置で、蒸着源(タングステンボード)306の幅をフッ素樹脂フィルムの幅の1/4にし、実施例1と同じフッ素樹脂フィルム及び銅合金を使用して比較例1のフレキシブルプリント配線板を作成した。
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分保持し、脱水処理を行った。
次に、真空度を10−4Pa以下にし、蒸着源306から銅合金を抵抗加熱により蒸発させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、銅合金の層を膜厚300nm成膜した。
【0092】
比較例1のフレキシブルプリント配線板に、電解めっき法で銅を18μm厚付けし、JIS C6471に準拠して引き剥がし試験を行い、常態剥離強度を測定した。常態剥離強度は0.2N/mm程度だった。
特許文献4(特開平5−279841号公報)によれば、蒸着源の長さを多孔質ふっ素樹脂フィルム幅の1/5以上とすることで、フィルムと金属層との間の接着強度を大きくできるとされる。しかし、蒸着源の長さを調整するだけでは、将来的に必要となる、0.3N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできなかった。
【0093】
《比較例2》
比較例1の成膜装置で、直径75mmの蒸着源(カーボン製るつぼ)306を使用し、フッ素樹脂フィルムの幅を300mmにし、実施例2と同じフッ素樹脂フィルム及び白金合金を使用して比較例2のフレキシブルプリント配線板を作成した。
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分保持し、脱水処理を行った。
次に、真空度を10−4Pa以下にし、蒸着源306から銅合金を抵抗加熱により蒸発させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、銅合金の層を膜厚300nm成膜した。
【0094】
実施例2と同様のテープ剥離試験を行ったところ、白金は大部分剥離した。特許文献4(特開平5−279841号公報)によれば、蒸着源の長さを多孔質ふっ素樹脂フィルム幅の1/5以上とすることで、フィルムと金属層との間の接着強度を大きくできるとされる。しかし、蒸着源の長さを調整するだけでは、実用に供しうる剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできなかった。
【0095】
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法と、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法とを合わせたものである。図3の成膜装置を用いる。
最初に、減圧下に第1の不活性ガス(例えばアルゴン又は窒素を含む混合ガス)を導入する。フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加する。第1の不活性ガスをグロー放電させて第1の不活性ガスのプラズマを発生する。第1の不活性ガスのプラズマによりフッ素樹脂フィルムに誘起される第1の負のバイアス電圧により、フッ素樹脂フィルムをプラズマ処理する(プラズマ処理工程)。プラズマ処理工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ第1の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることが好ましい。
【0096】
次ぎに、引き続き減圧下に第2の不活性ガス(例えばアルゴンを主成分とするガス)を導入する。金属を溶融する。フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、第2の不活性ガスをグロー放電させて第2の不活性ガスのプラズマを発生し、金属を活性化させ、第2の不活性ガスのプラズマによりフッ素樹脂フィルムに誘起される第2の負のバイアス電圧により、フッ素樹脂フィルムに金属の薄膜を蒸着する(成膜工程)。成膜工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ第2の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることが好ましい。
【0097】
成膜工程の後に、フッ素樹脂フィルムの金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定し、第1の反射率が所定値以下の場合に金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する(評価工程)。図2の評価装置を使用して、製造された金属被膜フッ素樹脂基板の良否を判定する。製造された金属被膜フッ素樹脂基板をX−Yステージに搭載する。鏡202、222はポリゴンミラーである。光源200、220が出力した光(実施の形態において波長が800nmのレーザ光)は、一定速度で回転するポリゴンミラー202、220で反射され、金属被膜フッ素樹脂基板を所定の幅(X軸方向の幅)で走査する。同時にX−Yステージが金属被膜フッ素樹脂基板を一定速度でY軸方向に移動させる。このようにして、効率良く金属被膜フッ素樹脂基板の全面の第1の反射率を測定できる。
【0098】
金属被膜フッ素樹脂基板のX軸方向の幅がポリゴンミラー202、220によるレーザ光の走査幅より広い場合は、上記の測定が完了した後、X−Yステージが金属被膜フッ素樹脂基板を、ポリゴンミラーによるレーザ光の走査幅だけX軸方向に移動させる。その後再び上記の測定を繰り返す。このようにして、効率良く金属被膜フッ素樹脂基板の全面の第1の反射率を測定できる。
実施の形態において、評価装置をチャンバ301の外部に設けた。評価装置を内部に設けても良い。
【0099】
評価工程において、上記の評価方法に代えて、フッ素樹脂フィルムの金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率と、金属層のフッ素樹脂と接しない面に対する光の第2の反射率とを測定し、第1の反射率の第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定しても良い。
評価工程において、上記の評価方法に代えて、金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径(例えば平均値)を測定し、粒子径が所定の範囲内の場合に基板が良品であると判定しても良い。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を実現することができる。
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板は、携帯電話、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、ノート型パソコン、デジタルスチルカメラ、ITS(インテリジェント・トランスポーテション・システム)、衝突防止レーダ、コンピュータ用メインボード、光ピックアップ用の回路基板及び光通信用の回路基板に使用するフレキシブルプリント配線板及びフッ素樹脂を基板に絶縁膜としてコーティングし、その上に金属配線を形成した基板、バイオセンサ及び化学センサとして有用である。
フッ素樹脂フィルムに白金層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板は、固体高分子電解質型燃料電池の集電体用フィルムとして有用である。
【0101】
更に、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を実現することができる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法は、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程に挿入可能である。従って、常時、金属の薄膜を成膜する成膜工程の管理を行うことができる。形成直後の金属薄膜の剥離強度が許容範囲外になった場合、即、製造を中止することができ、不良品を早い段階で発見することができる。このため、余分なコストが削減され、歩留まりが向上する。また、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程と平行して剥離強度の評価を行い、これを成膜工程に反映することで、常時最適な条件で、特性の良好な金属被膜フッ素樹脂基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の断面構造及び本発明で測定する反射率を模式的に示す断面図
【図2】本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法で使用する光学系の構成を示す構成図
【図3】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2において使用したフレキシブルプリント配線板を製造するために用いた成膜装置の概略構成を示す断面図
【図4】実施例1のフレキシブルプリント配線板の反射率(R1)と常態剥離強度との関係を示す線図
【図5】実施例1のフレキシブルプリント配線板の反射率の比(R1/R2)と常態剥離強度との関係を示す線図
【図6】実施例1の、常態剥離強度が0.4N/mmであるフレキシブルプリント配線板における表面層の銅薄膜を1万倍で撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真
【図7】実施例1の、常態剥離強度が0.12N/mmであるフレキシブルプリント配線板における表面層の銅薄膜を1万倍で撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真
【符号の説明】
101 フッ素樹脂フィルム
102 金属層
110、120 入射光
111、121 反射光
200、220 光源
201、221 光
202、222 鏡
203、223 光強度測定器
301 チャンバ
302 導体電極(基板ホルダ)
303 高周波電源
304 排気装置
305 メインバルブ
306 蒸着源
307 蒸着用金属
308 ガス導入口
309 加熱機構
310 接地部
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属被膜フッ素樹脂基板、その評価方法及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は傑出した耐薬品性、耐熱性及び表面特性を持つ高分子材料であるため、その特殊性を生かして過酷な条件下で使用しうる工業材料として利用されている。
例えば、電子機器に使用されるフレキシブルプリント配線板の材料として、フッ素樹脂フィルムの表面に銅箔を積層した金属被覆フッ素樹脂基板(以下、本発明では金属被膜フッ素樹脂基板と言う。)が提案されている。近年、電子機器の小型・軽量化に伴い、より高精細な回路パターンを有する、高周波特性の優れたフレキシブルプリント配線板の需要が高まってきた。将来的には、携帯電話や薄型モニタでは、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は15μm以下であることが要求される。フッ素樹脂は高度の撥水性を有し、現在多用されているポリイミドよりも比誘電率が低いため、寸法安定性が高く、シャープな信号波形を与える金属被膜フッ素樹脂基板(ポリイミドよりも高い周波数の信号を伝導可能なフレキシブルプリント配線板)を得ることができる。
【0003】
表面に白金層を形成したフッ素樹脂フィルムは、固体高分子電解質型燃料電池の集電体(MEA(Membrane Electrode Assemblies))用フィルムとして利用されている。今後、エネルギー効率が高く、環境への負荷が小さい燃料電池の需要が伸びるとともに、白金をめっきしたフッ素樹脂フィルムの需要が高まると見られる。
【0004】
フッ素樹脂は金属との密着性に劣るため、このような金属被膜フッ素樹脂基板においては、密着力の高い金属膜を、いかにして効率よく形成するかに大きな問題があった。これまでに、フッ素樹脂と金属との間の密着性を改善する、幾つかの提案がすでになされている。以下、従来の金属被膜フッ素樹脂基板の構成及び製造方法の概略を説明する。
【0005】
特許文献1(特許第3218542号公報)、特許文献2(特許第3073778号公報)に、多孔質フッ素樹脂シートの細孔内と表面に親水性高分子(親水基を有するポリマー)を予め付着結合した後で、金属めっき層を形成する方法が開示されている。この方法によれば、金属層と多孔質フッ素樹脂シートとの間の密着性は改善する。しかし、親水性高分子を多孔質フッ素樹脂シートに付着結合するために、多孔質フッ素樹脂シートを親水性高分子を溶かした溶液に浸漬する工程と、乾燥させる工程とを繰り返す必要があり、加工コスト及び加工時間がかかった。親水性高分子の選択を誤ると、親水性高分子に含まれるイオンが移動するためにショート不良が生じる(イオンマイグレーション)可能性があった。
【0006】
特許文献3(特許第3181329号公報)に、多孔質ふっ素樹脂材料の微細孔内に無機化合物を付着結合させた後に、金属を金属状態で結合させる方法が開示されている。無機化合物と金属膜の密着性が良いために密着性を改善できる。このような構成のものは、特に膜状触媒として用いられる。無機化合物付着する方法として、金属アルコキシドの有機溶媒溶液を材料に含浸させた後、その金属アルコキシドを加水分解し、無機化合物に変換する方法が挙げられている。しかし、加水分解には20分程度の時間がかかり、その後の乾燥には2時間程度の時間が必要であるため、加工コスト及び加工時間がかかった。無機化合物として酸化物を使用する場合には、金属膜が酸化し、剥離強度が徐々に劣化する可能性があった。
特許文献1、特許文献2及び特許文献3による金属被膜フッ素樹脂の製造方法は、フッ素樹脂フィルム表面に予め化学的な処理を行う必要があるため、加工コスト及び加工時間に問題があった。
【0007】
特許文献4(特開平11−222666号公報)に、同一真空系内でフッ素樹脂フィルムにプラズマ放電下で核付金属及び金属蒸着層を形成する方法が開示されている。プラズマを酸素プラズマとし、プラズマ処理強度を1kw/m2から12kw/m2と設定することが望ましいとされている。しかしこのような条件の下では、金属粒子の持つつ運動エネルギーはせいぜい10eVと小さいと考えられ、フッ素樹脂基板への密着力が不足し、エッチング等のプロセス耐性が不十分である可能性があった。酸素プラズマ処理によって、フッ素樹脂と金属薄膜との間に酸素が残留し、金属薄膜が酸化し、密着力が経時的に低下していく可能性があった。
【0008】
特許文献5(特開平5−279841号公報)に、多孔質ふっ素樹脂フィルム表面に、金属又はセラミックスを強固且つ均質に蒸着を行うために、蒸着源の個数、配置又は大きさを最適化する、蒸着方法が開示されている。しかし、蒸着源の個数、配置又は大きさを調整するだけでは、実用に供しうる剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできないことがあった(比較例1及び比較例2参照)。
【0009】
フレキシブルプリント配線板の製造現場においては、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を、製造時間と同じかそれ以下の時間で評価する方法が求められる。従来、フレキシブルプリント配線板の銅薄膜の密着度を評価する方法として、JIS C6471が使用されていた。JIS C6471は、表面に所定の厚さ(18μm)の銅めっきをした所定のサンプルを作成した後、銅薄膜をフィルムから剥離し、剥離強度を測定する方法である。しかし試料を破壊する試験である故、抜き取り検査しか行えなかった。また試験のためのサンプルを作成するのに時間がかかった。そのため、製品を製造後その不良品を発見するまでに時間がかかり、検査を行っている間にも製造工程は稼動している故に、大量の不良品を製造してしまう可能性があった。金属成膜後のフィルムを酸溶液に浸漬する方法及びテープ剥離試験は、短時間で密着度が評価できるものの、サンプルにダメージを与える方法であるため、全数検査を行えず、検査を漏れた不良品を出荷する可能性があった。特許文献1〜特許文献5には金属被膜フッ素樹脂基板の密着度を短時間で、非破壊で評価する方法については述べられていない。
【0010】
【特許文献1】
特許第3218542号公報
【特許文献2】
特許第3073778号公報
【特許文献3】
特許第3181329号公報
【特許文献4】
特開平11−222666号公報
【特許文献5】
特開平5−279841号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
更に、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。請求項1に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が35%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記反射率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.52以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記比が0.40以下であることを特徴とする請求項3に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が30%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記反射率が17%以下であることを特徴とする請求項6に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.50以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記比が0.26以下であることを特徴とする請求項8に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
【0020】
透明度の高いフッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層とフッ素樹脂基板との界面の反射率と強い相関関係を有する。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有する。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率の、金属層側から入射した光を金属層表面で反射させたときの反射率に対する比が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有する。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記金属層が、前記フッ素樹脂フィルムと接するニッケル、クロム、コバルト又はモリブデンから形成される第1の金属層と、銅又は銅を主成分とする合金から形成される第2の金属層とから形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0022】
請求項10に記載の発明は、前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面が、親水性機能を付与されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0023】
請求項11に記載の発明は、前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に、プラズマ処理によって官能基が形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板である。
本発明は、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板を実現できるという作用を有する。
【0024】
請求項12に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0025】
請求項13に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0026】
請求項14に記載の発明は、フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0027】
請求項15に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が35%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0028】
請求項16に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が20%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0029】
請求項17に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.52以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0030】
請求項18に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.40以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0031】
請求項19に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が30%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0032】
請求項20に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率が17%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0033】
請求項21に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.50以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0034】
請求項22に記載の発明は、光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.26以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0035】
本発明の発明者は、透明度の高いフッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層とフッ素樹脂基板との界面の反射率と強い相関関係を有することを発見した。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。フッ素樹脂フィルム側から入射した光を界面で反射させたときの反射率の、金属層側から入射した光を金属層表面で反射させたときの反射率に対する比が所定値以下の時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によれば、迅速に非破壊で金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。
【0036】
請求項23に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径の平均値が40nmから200nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0037】
請求項24に記載の発明は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、前記粒子径の平均値が50nmから150nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法である。
【0038】
フッ素樹脂フィルムにアンカー効果を利用し、金属層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は、金属層の表面層を構成する結晶粒の粒径と強い相関関係を有する。金属層の表面層を構成する結晶粒の粒径が所定の範囲内にある時、金属被膜フッ素樹脂基板は実用に供しうる剥離強度を有すると判定できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によれば、迅速に非破壊で金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。
【0039】
請求項25に記載の発明は、減圧下に第1の不活性ガスを導入し、フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第1の不活性ガスをグロー放電させて前記第1の不活性ガスのプラズマを発生し、前記第1の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第1の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムをプラズマ処理するプラズマ処理工程と、引き続き減圧下に第2の不活性ガスを導入し、金属を溶融し、前記フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第2の不活性ガスをグロー放電させて前記第2の不活性ガスのプラズマを発生し、前記金属を活性化させ、前記第2の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第2の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムに前記金属の薄膜を蒸着する成膜工程と、を有することを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0040】
プラズマ処理によって、フッ素樹脂フィルム表面の水分の除去及び不純物の洗浄が行われる。プラズマ処理後に大気開放することなく、金属層を形成するので、フッ素樹脂表面への水分及び不純物の付着を防ぐことができる。従って、製造される金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度のバラツキを抑えることができる。本発明の処理において酸素を使用しないので、その処理後にフッ素樹脂フィルムの表面が酸化し、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度が経時的に劣化する恐れはない。本発明の製造方法は安価であり製造時間が短い。
【0041】
請求項26に記載の発明は、前記プラズマ処理工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第1の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0042】
請求項27に記載の発明は、前記成膜工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第2の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25又は請求項26のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0043】
請求項28に記載の発明は、前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定し、前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを有することを特徴とする、請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0044】
請求項29に記載の発明は、前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率と、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率とを測定し、前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0045】
請求項30に記載の発明は、前記金属が白金又は白金を主成分とする合金であり、前記成膜工程の後に、前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定し、前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法である。
【0046】
本発明において評価工程は非破壊試験で評価を行う故に、全数検査が可能である。又、その評価工程に要する従来例と比較して時間は短い。金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程における成膜工程の後に、剥離強度の評価工程を挿入することにより、常時、成膜工程の管理を行うことができる。形成直後の金属薄膜の剥離強度が許容範囲外になった場合、即、製造を中止することができ、不良品を早い段階で発見することができる。このため、余分なコストが削減され、歩留まりが向上する。
【0047】
本発明は、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を実現できるという作用を有する。
フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を実現できる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施例について、図面とともに記載する。
図1は、本発明に係わる好ましい実施の形態による金属被膜フッ素樹脂基板(フレキシブルプリント配線板である。)の断面構造及び本発明で使用する反射率を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明に係わるフレキシブルプリント配線板は、フッ素樹脂フィルム101の上に金属層102が形成されている。金属層102は、フッ素樹脂フィルム101表面にアンカー効果を利用して、形成されている。
【0049】
金属層102は、金属被膜フッ素樹脂基板の用途に応じて、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、パラジウム、白金、銅、銀、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、アンチモン、ビスマス等の各種金属及びそれらの合金から選択した金属から形成される。
【0050】
フッ素樹脂フィルム101は従来公知のものであり、特にこれらに限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PFEP)、ポリビニルフルオロライド(PVF)、ポリビニリデンフルオロライド(PVDF)を材料とする、市販のフッ素樹脂フィルム及びNafion(登録商標)を使用できる。PTFEフィルム及びPFAフィルムは、テフロン(登録商標)の商品名で市販されている。PTFEフィルムは、デュ・ポン社とジャパンゴアテックス株式会社等が販売している。PFAフィルムは、三井・デュポン・フロロケミカル株式会社等が販売している。典型的には上記のフッ素ポリオレフィンである。
【0051】
フッ素樹脂フィルム101の表面に、公知の方法によって予め親水基を付着し(親水化)使用しても良い。親水基と金属イオンが化学結合することにより、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の密着性を高めることができる。親水化の方法として例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、イミダゾール基、スルホン基、イソシアネート基、リン酸基を有する親水性高分子をフッ素樹脂フィルム101の表面に塗布し付着する方法又は、プラズマ処理によってヒドロキシル基、アミド基、シアノ基又はカルボキシル基を形成する方法が挙げられる。プラズマ処理時に、水蒸気を主成分とするガスを使用することによりヒドロキシル基を生成できる。アンモニアあるいは窒素と水素を主成分とするガスを使用することにより、アミド基を生成できる。窒素を含む混合ガスを使用することにより、シアノ基を生成できる。
【0052】
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金によって形成する場合、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間に、ニッケル、クロム、コバルト又はモリブデンから選択した下地金属の層を形成することにより、密着性を改善できる。
【0053】
固体高分子電解質型燃料電池の集電体用フィルムでは、フッ素樹脂フィルム101として、PTFEフィルム又はNafion(登録商標)を使用し、白金又は白金を主成分とする合金から金属層102を形成することが好ましい。
フレキシブルプリント配線板に使用する金属被膜フッ素樹脂基板では、銅又は銅を主成分とする合金によって金属層102を形成することが望ましい。
【0054】
本発明に係わるフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
発明者は、フッ素樹脂フィルム101に金属層102を成膜するために、安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101に高周波電力を印加できる成膜装置を用いた。
【0055】
フッ素樹脂フィルム101を成膜装置のチャンバ(真空槽)内に入れ、真空排気する。チャンバ内に第1の不活性ガスを導入し、安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極(基板ホルダ)に高周波電力を印加する。高周波電力の印加により、グロー放電が生じ、第1の不活性ガスのプラズマが発生する。フッ素樹脂フィルム101に第1の負のバイアス電圧が誘起され、フッ素樹脂フィルム101がプラズマ処理される。
【0056】
具体的には、アルゴン又は窒素を含む混合ガスを第1の不活性ガスとして、真空度10−3Paから10−1Paの範囲で成膜装置のチャンバ内に導入する。周波数13.56MHzの高周波電力を、フッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に印加する。この状態において、グロー放電が発生し、フッ素樹脂フィルム101近傍には、印加した電力に応じて第1の負のバイアス電圧が誘起される。第1の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する。
【0057】
グロー放電下で第1の不活性ガスは解離し、電子、イオン及び活性励起種(ラジカル)が生成する。フッ素樹脂フィルム101の表面はイオン及び活性励起種に曝され、水分の除去、不純物の洗浄及び表面活性が行われる。更に、微細な凹凸が形成される。前記したように、第1の不活性ガスの種類によっては、プラズマ処理によってフッ素樹脂フィルム101の表面に、親水基を付着できる。第1の負のバイアス電圧が1000Vより大きい場合、フッ素樹脂フィルム101の表面が過度に粗化され、金属被膜フッ素樹脂基板の透明度の低下及び高周波信号の伝播特性が劣化が起きる。第1の負のバイアス電圧が200Vより小さい場合、水分の除去及び不純物の洗浄が十分に行われず、得られる金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度は実用に供しうる値に達しない。
【0058】
引き続き減圧下で、チャンバを大気開放することなく、導入するガスを、第2の不活性ガスに変える。安定放電手段によりフッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に高周波電力を印加する。高周波電力の印加により、グロー放電が生じ、第2の不活性ガスのプラズマが発生する。グロー放電を発生させた状態で、金属を溶融させる。金属を溶融させる加熱機構に流れる電流を制御し、金属層102の成膜速度を制御し、金属層102を成膜する。
【0059】
具体的には、アルゴンを主成分とするガスを第2の不活性ガスとして、真空度10−3Paから10−1Paの範囲で成膜装置のチャンバ内に導入し、周波数13.56MHzの高周波電力を、フッ素樹脂フィルム101を支持する導体電極に印加する。この状態において、グロー放電が発生し、フッ素樹脂フィルム101近傍には、印加した電力に応じて第2の負のバイアス電圧が誘起される。第2の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する。
【0060】
プラズマ処理後に大気開放することなく、金属層を形成するので、フッ素樹脂フィルムへの水及び不純物の付着を防ぐことができる。従って、剥離強度のバラツキを抑えることができる。
イオン化した金属は、第2の負のバイアス電圧によって加速され、フッ素樹脂フィルム101の凹凸に機械的に食い込む。このようなアンカー効果によって、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の密着度を向上させることができる。
【0061】
金属層102を成膜する工程において、第2の負のバイアス電圧の大きさに応じて、イオン化した第2の不活性ガスがフッ素樹脂フィルム101の表面をたたくスパッタ効果の寄与と、金属イオンがフッ素樹脂フィルム101表面に食い込むアンカー効果の寄与とのバランスが変化する。その結果、結晶成長のメカニズムが変化する。金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度が、結晶成長のメカニズムに対応して変化することを、発明者はX線回折パターン及び走査電子顕微鏡(SEM)観察により確認している。
【0062】
第2の負のバイアス電圧が200Vから1000Vの範囲となるように高周波電力の大きさを調節する場合、フッ素樹脂フィルム101表面に食い込んだ金属イオンのうち、フッ素樹脂フィルム101との結合力が弱い金属イオンはスパッタ効果により除去される。フッ素樹脂フィルム101に強く結合した金属イオンから非晶質層が形成され、続いて多結晶層が形成される。多結晶層を構成する個々の単結晶は、金属結晶の核となる。多結晶層を構成する個々の単結晶の境界で金属結晶が成長し、金属結晶層が形成され、剥離強度が大きい金属被膜フッ素樹脂基板が得られる。
【0063】
第2の負のバイアス電圧が200Vより小さい場合、スパッタ効果の寄与がアンカー効果の寄与に比べて小さい。従って、フッ素樹脂表面に食い込んだ金属のほとんどが除去されないまま(フッ素樹脂フィルム101との結合力が弱く実質的にアンカー効果を奏さない金属イオンが残留したまま)、非晶質層、多結晶層及び金属結晶層が形成される。アンカー効果の寄与が小さいため、金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度は小さい。
【0064】
第2の負のバイアス電圧が1000Vより大きい場合、結晶成長の速度よりも金属がスパッタされる速度の方が大きくなり、フッ素樹脂フィルム101内部の分子構造が破壊される。金属層102のフッ素樹脂フィルム101への密着度が悪くなる。
【0065】
本発明に係わる金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法を説明する。
金属層102は、主にアンカー効果によってフッ素樹脂フィルム101に密着している。フッ素樹脂フィルム101と金属層102との間の界面は、金属イオンのフッ素樹脂フィルム101への食い込みの度合いに対応した粗さを有する。つまり、剥離強度が大きいほど、食い込みの度合いが大きく、界面が粗い。界面の粗さは、界面に入射した光の反射率を変化させる。
【0066】
発明者は、金属被膜フッ素樹脂基板にフッ素樹脂フィルム101側及び金属層102側から光学波長800nmの光を入射し、反射率とJISC 6471による剥離強度との関係を調べた。実施例において使用したフッ素樹脂フィルム101の、光学波長800nmの光の透過率は85%以上である。金属層102は、99.9%の銅合金又は、99.9%の白金合金から形成した。
【0067】
以下の条件のうち少なくとも1つを満たす金属被膜フッ素樹脂基板は、実用に供しうる、0.2N/mm以上の剥離強度を有する。0.2N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板のフレキシブルプリント配線板では、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は20μmが実現できる。
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が35%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.52以下。
金属層102を白金又は白金を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が30%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.50以下。
【0068】
以下の条件のうち少なくとも1つを満たす金属被膜フッ素樹脂基板は、0.3N/mm以上の剥離強度を有する。0.2N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板のフレキシブルプリント配線板では、高精細回路パターンのライン幅及びスペース幅は将来的に必要とされる、15μmが実現できる。
金属層102を銅又は銅を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が20%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.40以下。
金属層102を白金又は白金を主成分とする合金から形成する場合、
(1)フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率が17%以下。
(2)金属層102側から入射した光の反射率に対する、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光の反射率の比が0.26以下。
【0069】
フッ素樹脂フィルム101の透過率が高いため、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光は界面で反射する。剥離強度が大きい場合、界面は粗く、光はあらゆる方向に反射散乱されるので、反射率は小さい。剥離強度が小さい場合、金属結晶の食い込みが小さく、界面はより平坦である。従って、反射率は大きい。
金属被膜フッ素樹脂基板の、フッ素樹脂フィルム101側から入射した光及び/又は金属層102側から入射した光の反射率を測定することにより、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を評価できる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法は、非破壊で迅速に剥離強度を評価するものである。
なお、評価に使用する光の光学波長は800nmに限られない。フッ素樹脂フィルムを透過する光について、剥離強度と反射率との間の関係を調べれば良い。
【0070】
発明者は、連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムに、白金合金の金属層を形成し、金属層の表層のSEM写真を観察し、剥離強度と金属結晶のサイズとの関係を調べた。その結果、結晶サイズ(結晶粒の長い方の粒子径の平均値)が40nmから200nmのとき、金属被膜フッ素樹脂基板は、実用に供しうる、0.2N/mm以上の剥離強度を有することがわかった。結晶サイズが50nmから150nmのとき、金属被膜フッ素樹脂基板は、0.3N/mm以上の剥離強度を有することがわかった。
【0071】
評価対象となる金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法は上記の製造方法に限られないが、金属層はフッ素樹脂フィルムに主にアンカー効果によって形成される必要がある。
フッ素樹脂フィルムに親水性高分子、官能基又は無機化合物を予め付着した後、アンカー効果を利用して金属層を成膜する場合、金属被膜フッ素樹脂基板の剥離強度を大きくできる。親水性高分子、官能基及び無機化合物はフッ素樹脂フィルムの表面の粗さをほとんど変化させないので、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法によって剥離強度を評価できる。
本発明の、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法による、剥離強度の評価工程は、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程に挿入可能である。
フッ素樹脂フィルムの両面に同一条件で金属層を成膜する場合、片面に金属層を成膜した後、もう片方の面に成膜する前に、反射率及び結晶サイズの測定を行い剥離強度の評価を行うと良い。
【0072】
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の、製造方法、剥離強度の測定結果について、以下の実施例1及び実施例2で具体的に説明する。
【0073】
《実施例1》
本発明の実施例1の金属被膜フッ素樹脂基板(実施例においては、フレキシブルプリント配線板である。)の製造方法を説明する。
フッ素樹脂フィルム101として、デュ・ポン社製のPFAフィルムを使用した。使用したPFAフィルムの、光学波長800nmの光の透過率は85%、厚さは25μm、空孔率は1%以下である。
金属層102は99.9%の銅合金から形成した。
【0074】
図3は、実施例1のフレキシブルプリント配線板を製造するために用いた成膜装置の概略構成を示す断面図である。図3において、チャンバ301内には金属の蒸発源となる蒸着源306、陰極電極となる導体電極302及び加熱機構309が所定位置に設けられている。蒸着源306に、蒸着用金属(実施例1では銅合金である。)307を置く。導体電極211は、被蒸着物であるフッ素樹脂フィルム101を保持できるよう構成されている。導体電極211には、安定放電回路(図示しない。)を介して高周波電源303からの高周波電力を入力するための高周波導入ケーブル311が接続されている。高周波導入ケーブル311は、チャンバ301に電気的に絶縁されて保持されている。チャンバ301はガス導入口308とメインバルブ305を有し、チャンバ301内を所定ガスにより所定圧に設定できるよう構成されている。304は排気装置、310は接地部である。蒸着源306としてタングステンボードを使用した。加熱機構309として赤外線ランプを使用した。
【0075】
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分間保持し、脱水処理を行った。次に、フッ素樹脂フィルム101を25℃に冷却した。
【0076】
引き続き、アルゴンガスをガス導入口308から導入した。真空度10−1Paで、フッ素樹脂フィルム101に高周波電源303により周波数13.56MHzの高周波電力を印加した。これによりアルゴンガスをイオン化及び活性化し、5分間グロー放電させた。このとき、フッ素樹脂フィルム101近傍の導体電極302に自己誘起された負の直流電圧が400Vとなるように、高周波電力の大きさを調整した。フッ素樹脂フィルム101の表面がアルゴンイオン及びアルゴン活性励起種によってプラズマ処理された。
【0077】
引き続き大気開放を行うことなく、成膜装置のチャンバ301において、アルゴンガスを排気し、真空度5.0×10−2Paで再度アルゴンガスを導入した。高周波電源303により周波数13.56MHzの高周波電力をフッ素樹脂フィルム101に印加し、グロー放電させた。このとき、フッ素樹脂フィルム101近傍の導体電極302に自己誘起された負の直流電圧が400Vとなるように、高周波電力の大きさを調整した。グロー放電下において蒸着用金属(銅合金)307を溶融させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、金属層(銅合金の層)102を膜厚300nm成膜した。
【0078】
以上のようにして製造されたフレキシブルプリント配線板について、図2に示す光学系を用い、反射率を測定した。図2は、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法で使用する光学系の構成を示す構成図である。光源200から光学波長800nmの光201を放出する。光201を鏡202で反射した入射光110を、フレキシブルプリント配線板のフッ素樹脂フィルム101側に入射する。反射光111を光強度測定器203で測定し、反射率(R1)を測定したところ、11%であった。金属層102の表面に18μ厚銅めっきし、同様に反射率R1を測定したところ、11%であった。フッ素樹脂フィルム101は、光学波長800nmの光を85%透過するので、入射光110はフッ素樹脂フィルム101と金属層102との界面で反射される(フッ素樹脂フィルム101内部又は金属層102内部で反射されたのではない)。
光源220から光学波長800nmの光221を放出する。光221を鏡222で反射した入射光120を、フレキシブルプリント配線板の金属層102側に入射する。反射光121を光強度測定器223で測定し、反射率(R2)を測定する。R1/R2の値は0.32であった。
【0079】
以上のようにして製造されたフレキシブルプリント配線板に、電解めっき法で銅を18μm厚付けし、JIS C6471に準拠して引き剥がし試験を行い、常態剥離強度を測定した。常態剥離強度は0.4N/mmであり、実用に供しうる値であった。
【0080】
金属層102成膜時の高周波電力の大きさを様々に変化させ(導体電極302に自己誘起される負のバイアス電圧を変化させ)た試料を作成し、同様に常態剥離強度、反射率(R1とR2)の測定を行い、常態剥離強度とR1との関係及び常態剥離強度とR1/R2との関係を調べた。具体的には、全ての試料のR1及びR2の測定後、全ての試料を一括して電解めっき法によるめっき処理を行い、JIS C6471に準拠して常態剥離強度を測定した。
【0081】
図4は、反射率(R1)と常態剥離強度との関係を示す線図である。反射率R1が小さいほど、常態剥離強度は大きい。実用上、金属被膜フッ素樹脂基板の常態剥離強度は0.2N/mmであることが望ましい。常態剥離強度が0.2N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、35%以下である。常態剥離強度が0.3N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、20%以下である。
【0082】
図5は、反射率の比(R1/R2)と常態剥離強度との関係を示す線図である。反射率の比が小さいほど、常態剥離強度は大きい。常態剥離強度が0.2N/mm以上である金属被膜フッ素樹脂基板の反射率の比は、0.52以下である。常態剥離強度が0.3N/mmである金属被膜フッ素樹脂基板の反射率R1は、0.40以下である。
【0083】
反射率R1は、より詳細にはフッ素樹脂フィルム101の透過率と、フッ素樹脂フィルム101と金属層102との界面の反射率を掛け合わせた値である。従って、光学波長が800nmの光の透過率が85%より大きいフッ素樹脂フィルムを使用する場合、図4及び図5のグラフは縦軸の正の方向に移動したグラフとなる。光学波長が800nmの光の透過率が85%より小さいフッ素樹脂フィルムを使用する場合、図4及び図5のグラフは縦軸の負の方向に移動したグラフとなる。光学波長が800nmの光の透過率が85%ではないフッ素樹脂フィルムを使用し、実施例1と同様の測定を行うことにより、所定の剥離強度を満たす金属被膜フッ素樹脂基板の反射率(R1)及び反射率の比(R1/R2)を調べることができる。なお、フッ素樹脂フィルム101の透過率は、フィルムの厚さと空孔率によって規定される。
【0084】
図6及び図7は、常態剥離強度が0.4N/mm及び0.12N/mmであるフレキシブルプリント配線板における、銅合金の層の最表層を1万倍で撮影したSEM写真である。SEM写真により、フッ素樹脂フィルム表面に平行な面内の銅結晶のサイズを測定したところ、図6では70nm、図7では30nmであった。ただし、結晶サイズは、SEM写真内に見られるそれぞれの結晶粒の長い方の粒子径の平均値とした。以上の観察結果から、非晶質層がアンカー効果によりフッ素樹脂フィルムに強く付着しているほど(フレキシブルプリント配線板の剥離強度が大きい場合)、その上に形成される金属結晶のサイズが大きいことがわかった。
【0085】
《実施例2》
本発明の実施例2のフレキシブルプリント配線板は、金属層102を99.9%の白金合金から形成した。白金は銅に比べて融点が高いため、成膜工程において、蒸着源306としてカーボン製るつぼを使用し、白金合金を電子ビームで溶融させた。その他の材料及び製造工程は実施例1のフレキシブルプリント配線板と同じである。
金属層102成膜時の高周波電力の大きさを様々に変化させ(導体電極302に自己誘起される負のバイアス電圧を変化させ)た試料を作成し、実施例1と同じ方法で反射率(R1とR2)の測定を行った。
SEM写真により、フッ素樹脂フィルム表面に平行な面内の白金結晶のサイズを測定した。結晶サイズは、SEM写真内に見られるそれぞれの結晶粒の長い方の粒子径の平均値とした。
【0086】
実施例2のフレキシブルプリント配線板の白金表面に、1mm間隔で縦横10本ずつの切り込みを入れ、Scotch クリアテープ(600タイプ)を貼り付け、毎分約50mmの早さでテープを引き剥がす、テープ剥離試験を行った。白金が全く剥離しなかった場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.3N/mm以上に対応する(以下の表では「○」で表す)。白金が剥離した面積が全体の50%以下の場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.2N/mm以上に対応する(以下の表では「△」で表す)。白金が剥離した面積が全体の50%を超える場合は、JISC 6471での常態剥離強度が0.2N/mm未満に対応する(以下の表では「×」で表す)。
【0087】
表1に、成膜時の自己バイアス電圧と、反射率(R1)、反射率の比(R1/R2)、結晶サイズ、剥離試験結果を示す。表に2、成膜時の自己バイアス電圧と、結晶サイズ、剥離試験結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
成膜時の自己バイアス電圧が200Vから1000Vのときに、実用に供しうるフレキシブルプリント配線板を製造することができた。成膜時の自己バイアス電圧が大きいほど、反射率(R1)が小さく、反射率の比(R1/R2)が小さく、結晶サイズが大きい。
常態剥離強度が0.2N/mm以上のフレキシブルプリント配線板では、反射率(R1)が30%以下、反射率の比(R1/R2)が0.50以下、結晶サイズが40nmから200nmであった。常態剥離強度が0.3N/mm以上のフレキシブルプリント配線板では、反射率(R1)が17%以下、反射率の比(R1/R2)が0.26以下、結晶サイズが50nmから150nmであった。
【0091】
《比較例1》
実施例1の成膜装置で、蒸着源(タングステンボード)306の幅をフッ素樹脂フィルムの幅の1/4にし、実施例1と同じフッ素樹脂フィルム及び銅合金を使用して比較例1のフレキシブルプリント配線板を作成した。
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分保持し、脱水処理を行った。
次に、真空度を10−4Pa以下にし、蒸着源306から銅合金を抵抗加熱により蒸発させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、銅合金の層を膜厚300nm成膜した。
【0092】
比較例1のフレキシブルプリント配線板に、電解めっき法で銅を18μm厚付けし、JIS C6471に準拠して引き剥がし試験を行い、常態剥離強度を測定した。常態剥離強度は0.2N/mm程度だった。
特許文献4(特開平5−279841号公報)によれば、蒸着源の長さを多孔質ふっ素樹脂フィルム幅の1/5以上とすることで、フィルムと金属層との間の接着強度を大きくできるとされる。しかし、蒸着源の長さを調整するだけでは、将来的に必要となる、0.3N/mm以上の剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできなかった。
【0093】
《比較例2》
比較例1の成膜装置で、直径75mmの蒸着源(カーボン製るつぼ)306を使用し、フッ素樹脂フィルムの幅を300mmにし、実施例2と同じフッ素樹脂フィルム及び白金合金を使用して比較例2のフレキシブルプリント配線板を作成した。
最初に、フッ素樹脂フィルム101を、導体電極211にカプトン(登録商標)テープで固定し、到達真空度10−3Pa以下まで真空排気した。更に、加熱機構(赤外線ランプ)309を用いてフッ素樹脂フィルム101を120℃に加熱し60分保持し、脱水処理を行った。
次に、真空度を10−4Pa以下にし、蒸着源306から銅合金を抵抗加熱により蒸発させた。成膜速度が1nm/秒となるように、蒸着源306に流す電流を制御し、銅合金の層を膜厚300nm成膜した。
【0094】
実施例2と同様のテープ剥離試験を行ったところ、白金は大部分剥離した。特許文献4(特開平5−279841号公報)によれば、蒸着源の長さを多孔質ふっ素樹脂フィルム幅の1/5以上とすることで、フィルムと金属層との間の接着強度を大きくできるとされる。しかし、蒸着源の長さを調整するだけでは、実用に供しうる剥離強度を有する金属被膜フッ素樹脂基板を得ることはできなかった。
【0095】
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法と、本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法とを合わせたものである。図3の成膜装置を用いる。
最初に、減圧下に第1の不活性ガス(例えばアルゴン又は窒素を含む混合ガス)を導入する。フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加する。第1の不活性ガスをグロー放電させて第1の不活性ガスのプラズマを発生する。第1の不活性ガスのプラズマによりフッ素樹脂フィルムに誘起される第1の負のバイアス電圧により、フッ素樹脂フィルムをプラズマ処理する(プラズマ処理工程)。プラズマ処理工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ第1の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることが好ましい。
【0096】
次ぎに、引き続き減圧下に第2の不活性ガス(例えばアルゴンを主成分とするガス)を導入する。金属を溶融する。フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、第2の不活性ガスをグロー放電させて第2の不活性ガスのプラズマを発生し、金属を活性化させ、第2の不活性ガスのプラズマによりフッ素樹脂フィルムに誘起される第2の負のバイアス電圧により、フッ素樹脂フィルムに金属の薄膜を蒸着する(成膜工程)。成膜工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ第2の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることが好ましい。
【0097】
成膜工程の後に、フッ素樹脂フィルムの金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定し、第1の反射率が所定値以下の場合に金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する(評価工程)。図2の評価装置を使用して、製造された金属被膜フッ素樹脂基板の良否を判定する。製造された金属被膜フッ素樹脂基板をX−Yステージに搭載する。鏡202、222はポリゴンミラーである。光源200、220が出力した光(実施の形態において波長が800nmのレーザ光)は、一定速度で回転するポリゴンミラー202、220で反射され、金属被膜フッ素樹脂基板を所定の幅(X軸方向の幅)で走査する。同時にX−Yステージが金属被膜フッ素樹脂基板を一定速度でY軸方向に移動させる。このようにして、効率良く金属被膜フッ素樹脂基板の全面の第1の反射率を測定できる。
【0098】
金属被膜フッ素樹脂基板のX軸方向の幅がポリゴンミラー202、220によるレーザ光の走査幅より広い場合は、上記の測定が完了した後、X−Yステージが金属被膜フッ素樹脂基板を、ポリゴンミラーによるレーザ光の走査幅だけX軸方向に移動させる。その後再び上記の測定を繰り返す。このようにして、効率良く金属被膜フッ素樹脂基板の全面の第1の反射率を測定できる。
実施の形態において、評価装置をチャンバ301の外部に設けた。評価装置を内部に設けても良い。
【0099】
評価工程において、上記の評価方法に代えて、フッ素樹脂フィルムの金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率と、金属層のフッ素樹脂と接しない面に対する光の第2の反射率とを測定し、第1の反射率の第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定しても良い。
評価工程において、上記の評価方法に代えて、金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径(例えば平均値)を測定し、粒子径が所定の範囲内の場合に基板が良品であると判定しても良い。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度が高く、高周波特性に優れた、安価な金属被膜フッ素樹脂基板、及びその製造方法を実現することができる。
本発明の金属被膜フッ素樹脂基板は、携帯電話、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、ノート型パソコン、デジタルスチルカメラ、ITS(インテリジェント・トランスポーテション・システム)、衝突防止レーダ、コンピュータ用メインボード、光ピックアップ用の回路基板及び光通信用の回路基板に使用するフレキシブルプリント配線板及びフッ素樹脂を基板に絶縁膜としてコーティングし、その上に金属配線を形成した基板、バイオセンサ及び化学センサとして有用である。
フッ素樹脂フィルムに白金層を形成した金属被膜フッ素樹脂基板は、固体高分子電解質型燃料電池の集電体用フィルムとして有用である。
【0101】
更に、フッ素樹脂フィルムと金属層との間の密着度を、非破壊で迅速に且つ簡単に行う評価方法を実現することができる。本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法は、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程に挿入可能である。従って、常時、金属の薄膜を成膜する成膜工程の管理を行うことができる。形成直後の金属薄膜の剥離強度が許容範囲外になった場合、即、製造を中止することができ、不良品を早い段階で発見することができる。このため、余分なコストが削減され、歩留まりが向上する。また、金属被膜フッ素樹脂基板の製造工程と平行して剥離強度の評価を行い、これを成膜工程に反映することで、常時最適な条件で、特性の良好な金属被膜フッ素樹脂基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の断面構造及び本発明で測定する反射率を模式的に示す断面図
【図2】本発明の金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法で使用する光学系の構成を示す構成図
【図3】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2において使用したフレキシブルプリント配線板を製造するために用いた成膜装置の概略構成を示す断面図
【図4】実施例1のフレキシブルプリント配線板の反射率(R1)と常態剥離強度との関係を示す線図
【図5】実施例1のフレキシブルプリント配線板の反射率の比(R1/R2)と常態剥離強度との関係を示す線図
【図6】実施例1の、常態剥離強度が0.4N/mmであるフレキシブルプリント配線板における表面層の銅薄膜を1万倍で撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真
【図7】実施例1の、常態剥離強度が0.12N/mmであるフレキシブルプリント配線板における表面層の銅薄膜を1万倍で撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真
【符号の説明】
101 フッ素樹脂フィルム
102 金属層
110、120 入射光
111、121 反射光
200、220 光源
201、221 光
202、222 鏡
203、223 光強度測定器
301 チャンバ
302 導体電極(基板ホルダ)
303 高周波電源
304 排気装置
305 メインバルブ
306 蒸着源
307 蒸着用金属
308 ガス導入口
309 加熱機構
310 接地部
Claims (30)
- フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が35%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記反射率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.52以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記比が0.40以下であることを特徴とする請求項3に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記金属層が、前記フッ素樹脂フィルムと接するニッケル、クロム、コバルト又はモリブデンから形成される第1の金属層と、銅又は銅を主成分とする合金から形成される第2の金属層とから形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- 連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率が30%以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記反射率が17%以下であることを特徴とする請求項6に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- 連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板であって、前記金属層は白金を主成分とする合金によって形成され、前記フッ素樹脂フィルムの光学波長800nmの光の透過率が85%以上であり、前記フッ素樹脂フィルム側から入射した前記光の反射率の、前記金属層側から入射した前記光の反射率に対する比が0.50以下であることを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記比が0.26以下であることを特徴とする請求項8に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面が、親水性機能を付与されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- 前記フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に、プラズマ処理によって官能基が形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板。
- フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定するステップと、
前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、
前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率が35%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率が20%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、
前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.52以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上であるフッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は銅又は銅を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、
前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.40以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率が30%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する前記光の第1の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率が17%以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、
前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.50以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 光学波長800nmの光の透過率が85%以上である連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの一面に1又は複数の金属層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記金属層は白金又は白金を主成分とする合金によって形成され、
前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する光学波長800nmの光の第1の反射率を測定するステップと、
前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率を測定するステップと、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が0.26以下の場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、
前記粒子径の平均値が40nmから200nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 連続した微細孔(透孔)を有する多孔質フッ素樹脂フィルムの少なくとも一面に白金又は白金を主成分とする合金の層をアンカー効果によって直接接合した基板の剥離強度を評価する方法であって、
前記白金層の表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定するステップと、
前記粒子径の平均値が50nmから150nmの場合に前記基板が良品であると判定するステップとを有することを特徴とする、金属被膜フッ素樹脂基板の評価方法。 - 減圧下に第1の不活性ガスを導入し、フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第1の不活性ガスをグロー放電させて前記第1の不活性ガスのプラズマを発生し、
前記第1の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第1の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムをプラズマ処理するプラズマ処理工程と、
引き続き減圧下に第2の不活性ガスを導入し、金属を溶融し、前記フッ素樹脂フィルム近傍に安定放電手段により高周波電力を印加し、前記第2の不活性ガスをグロー放電させて前記第2の不活性ガスのプラズマを発生し、前記金属を活性化させ、前記第2の不活性ガスのプラズマにより前記フッ素樹脂フィルムに誘起される第2の負のバイアス電圧により、前記フッ素樹脂フィルムに前記金属の薄膜を蒸着する成膜工程と、
を有することを特徴とする金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。 - 前記プラズマ処理工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第1の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。
- 前記成膜工程において、圧力は10−3Paから10−1Paの範囲で、且つ前記第2の負のバイアス電圧は200Vから1000Vの範囲であることを特徴とする請求項25又は請求項26のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。
- 前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率を測定し、
前記第1の反射率が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを有することを特徴とする、請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。 - 前記成膜工程の後に、前記フッ素樹脂フィルムの前記金属層と接する面に対する所定の光学波長の光の第1の反射率と、前記金属層の前記フッ素樹脂と接しない面に対する前記光の第2の反射率とを測定し、
前記第1の反射率の前記第2の反射率に対する比が所定値以下の場合に前記金属被膜フッ素樹脂基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。 - 前記金属が白金又は白金を主成分とする合金であり、前記成膜工程の後に、前記金属層表面層を構成する結晶粒の長い方の粒子径を測定し、
前記粒子径が所定の範囲内の場合に前記基板が良品であると判定する評価工程を有することを特徴とする請求項25から請求項27のいずれかの請求項に記載の金属被膜フッ素樹脂基板の製造方法。
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