JP4312069B2 - セラミックスヒーターの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックスヒーター、詳しくは、表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体をヒーターの基体とするセラミックスヒーターに関する。
窒化アルミニウム等の窒化物セラミックス成形体からなる基体上に金属発熱体を設けたセラミックスヒーターは、単位面積当たりの発熱量を高く取れるという点で優れており、小型、軽量化ができ、耐熱性も高いため、家庭電化製品、各種製造装置等に広く利用されている。
ところが、こうしたセラミックスヒーターは、誤って水がかかったり、湿度の高い環境で使用される等して、窒化物セラミックス成形体からなる基体の表面に水分が接触すると加水分解が起こり、その機械的強度が著しく低下するという問題があった。たとえば、窒化物セラミックス成形体として窒化アルミニウム成形体を用いた場合には、水との接触により表面に水酸化アルミニウムが形成されるとともにアンモニアが生成される。窒化アルミニウム成形体の表面に形成された水酸化アルミニウムは加水分解を抑制するが、アンモニアの生成によるpHの上昇によって、この水酸化アルミニウムは溶解され、さらに被覆層の種類によっては被覆層も溶解されてしまう場合があり、結果として再び窒化アルミニウム成形体に水分が接触するため、このような過程を繰り返し、窒化アルミニウム成形体の加水分解が進行してしまう。
また、窒化物セラミックス成形体からなる基体上において、金属発熱体は層状に積層して設けることが多いが、窒化物セラミックスの金属に対する密着性は一般に低いため、この両者の密着強度が十分ではなく、使用時に強い外力を受けたり、ヒーターを長期間使用して激しい熱変化が繰り返されると該金属発熱体層が基体から剥離してしまうことがあった。
これに対して、窒化物セラミックス成形体において、耐水性を向上させ、さらには、表面に設ける金属層との間の密着性を向上させるために、成形体の表面に酸化物層を形成することが行なわれている。たとえば、窒化アルミニウム成形体については、成形体を大気中等の酸化性雰囲気中で加熱して表面に酸化アルミニウム層を形成する技術が知られている(特許文献1〜3及び非特許文献1参照)。また、窒化珪素においては、窒化珪素焼結体からなる部材の高強度化のためにその表面を酸化してクリストバライトを含む層を形成する技術が知られている(特許文献4参照)。
特開平10−152384号公報 特開平6−116071号公報 特開昭62−123071号公報 特開昭62−252388号公報 ペトラ クルーグ−ウェイス等,「パワーハイブリッド用窒化アルミニウム基板の直接接合銅メタライゼーション」,マテリアルズリサーチ学会シンポジウムプロシーディング,1985年,第40巻,p.399−404(Petra Kluge-Weiss and Jens Gobrecht, " DIRECTRY BONDED COPPER METALLIZATION OF AlN SUBSTRATES FOR POWER HYBRIDS", Materials Research Society,Symp. Proc., vol.40, p.399-404, 1985)
しかしながら、例えば代表的な窒化物セラミックスである窒化アルミニウムの成形体表面に従来の方法で酸化物層を形成した場合、形成された酸化物層には比較的幅が広く枝分かれの多いクラックが数多く発生し、酸化物層形成による耐水性の向上効果及び金属層との密着性の向上効果は十分に実現されていないことが判明した。したがって、この技術を、そのまま前記セラミックスヒーターの製造に応用しても、得られるヒーターは、前記性状において十分に満足できないものであった。
以上から、本発明は、このようなクラックを発生させることなく窒化物セラミックス成形体の表面に緻密な酸化物層を形成する方法を提供し、これをヒーターの基体として用いて、耐水性、および表面に金属発熱体層を設けた場合には、該層との密着強度に優れるセラミックスヒーターを提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究を続けてきた。その結果、窒化物セラミックスの特異な酸化機構を解明することに成功すると共に、従来の表面改質法では得られないような緻密な酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、金属または半金属の窒化物セラミックスからなる成形体の少なくとも一面に、上記金属または半金属原子と同一の原子の酸化物からなる酸化物層が形成されている、表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体をヒーターの基体とするセラミックスヒーターの製造方法であって、
該酸化物層が、窒化物セラミックス成形体を不活性ガス雰囲気下、或いは真空雰囲気下で当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱した後に、加熱された当該成形体の所望の面を酸素ガスと接触させ、当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より高い温度に保持して当該成形体の表面を酸化することにより形成されることを特徴とするセラミックスヒーターの製造方法である。
また、本発明は、前記方法において、窒化物セラミックス成形体を不活性ガス雰囲気下で当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱する前に、
窒化物セラミックス成形体を導入した炉内を真空脱気してから不活性ガスを導入することを特徴とするセラミックスヒーターの製造方法である。
本発明の方法により得られるセラミックスヒーターは、基体部分が、窒化アルミニウム等の窒化物セラミックス成形体であるにも関わらず、その少なくとも一面には、緻密性が高い酸化物層が形成されており、該酸化物層の表面には、耐水性を低下させるような、幅が広く枝分かれの多いクラックは実質的に形成されていない。したがって、かかる面は、耐水性に極めて優れ、ヒーターとしての使用時に該表面に水分が接触しても劣化が生じ難い。また、同様に耐薬品性にも優れる。
しかも、この酸化物層は、金属との密着性にも優れるため、ヒーターが、この酸化物層を設けた表面上に金属発熱体層を積層する形態である場合には、両者の密着強度も極めて強固なものにすることができる。したがって、ヒーターの使用中において、強い外力が加わったり、ヒーターを長期間使用して激しい熱変化が繰り返されても、該金属発熱体層は剥離し難く、しかも、上記酸化物層は、耐水性にも優れるため雰囲気の湿分等によって劣化し難く、ヒーターを安定的に使用することが可能である。
このような本発明の方法により得られるセラミックスヒーターは、半導体・液晶製造装置を始とした各種製造装置や家庭電化製品等に使用されるヒーターとして広く利用される。
本発明において、酸化物層が形成される窒化物セラミックス成形体の素材は、金属又は半金属の窒化物で融点若しくは分解温度が後述する酸化開始温度以上のものであれば特に限定されず、公知の窒化物を使用することができる。本発明で好適に使用できる窒化物セラミックス素材を具体的に例示すれば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等を挙げることができる。これらの中でも熱伝導率が高いという理由から窒化アルミニウムを使用するのが好適である。具体的には、成形体の熱伝導度が160W/m・K(室温)以上になる窒化アルミニウムが好適である。
なお、本発明で使用する窒化物セラミックス素材は、単結晶或いは多結晶等の結晶性のもの、アモルファス、又は結晶相とアモルファス層が混在するもの、さらには焼結助剤および必要に応じて他の添加剤を添加して窒化物セラミックス粉末を焼結した焼結体等が使用できる。本発明においては、有用性が高く、安価で入手も容易で、本発明の効果も大きいという理由から、窒化物セラミックス素材としては、予め任意の所定の形状に成形された窒化アルミニウム又は窒化珪素の焼結体からなる成形体を使用するのが好適である。
たとえば、窒化物セラミックス素材が窒化アルミニウム焼結体であるある場合には、窒化アルミニウム粉末にイットリア、カルシア、硝酸カルシウム及び炭酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して定法により所定の形状に成形した後に焼結したもの及びこれを更に加工したものが好適に使用できる。また、窒化物セラミックスが窒化珪素焼結体である場合には、窒化珪素粉末に酸化マグネシウム、酸化第二クロム、アルミナ、イットリア、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化珪素、ホウ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して定法により所定の形状に成形した後に焼結したもの及びこれを更に加工したものが好適に使用できる。
なお、後述するようにセラミックスヒーターが金属発熱体を設けない態様のものである場合、上記窒化物セラミックス素材は、導電性付与材を配合して成形し、基体そのものを抵抗発熱体として機能させても良い。
上記窒化物セラミックス成形体において、その少なくとも一面に形成される酸化物層は、その緻密性を低下させて耐水性、金属との密着性を低下させるような特定クラック、即ち、「分岐を有するクラックであって、当該分岐を有するクラックを互いに隣り合った分岐点間のクラックユニット及び端部からその直近の分岐点までのクラックユニットに分割した場合において、各クラックユニットの長さ及び最大幅を夫々l(nm)及びw(nm)としたときに、wが20nm以上でありlが500nm以上であり且つw/lが0.02以上となるクラックユニットを有する分岐を有するクラック」が実質的に存在しないという特徴を有する。
上記特定クラックについて図を用いて更に詳しく説明すると、例えば分岐を有するクラック1が図1に示される様な形状を有する場合、2a〜2eが各クラックユニットとなる。そして各クラックユニットについてl、w及びw/lを求めたとき、wが20nm以上でありlが500nm以上であり且つw/lが0.02以上、好ましくは0.01以上となるクラックユニットが1つでも存在する場合には、この分岐を有するクラック1は特定クラックとなる。また、w/lが0.02以上、好ましくは0.01以上のクラックユニットが全く存在しない場合にはその分岐を有するクラック1は特定クラックとはならない。
このような特定クラックが存在しないことは酸化物層の表面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。なお、特定クラックが実質的に存在しないとは、一つの試料について任意の視野(半径30000nmの視野)10箇所、好ましくは50箇所を観察したときに観察される特定クラックの数が、1視野当たりの平均で0.2以下、好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下であることを意味する。但し、下地の窒化物セラミックスの形状を反映し、或いは酸化膜の成長の仕方によって酸化物層の表面に凹凸ができることはしばしばあるが、このような場合に観測される凹部はクラックではなく、本発明に言うクラックとは、酸化物層の少なくとも表層部を不連続に切断する割れを意味する。
この表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体は、上記したような良好な酸化物層を有するため、酸化物層を形成することにより期待される効果を十分に発揮することが可能であり、これをセラミックスヒーターの基体として使用した場合には、優れた耐水性を有するものになる。また、セラミックスヒーターが、酸化物層の表面に金属発熱体層を設ける形態である場合には、該基体と金属発熱体層との間の密着強度に優れたものになる。
上記したような特定クラックを有さない緻密な酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体は、如何なる方法により製造しても良いが、通常は、次のような新規な製造方法により製造することができる。すなわち、昇温中に酸素を実質的に固溶させることなく窒化物セラミックス成形体を当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱する工程(以下、この工程を単に「昇温工程」ともいう)、及び該工程で当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度に加熱された前記窒化物セラミックス成形体の所望の面に酸素ガスを接触させた後、当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より高い温度に保持して当該窒化物セラミックスの表面を酸化して酸化物層を形成する工程(以下、この工程を単に「酸化工程」ともいう)を含む方法により製造することができる。
かかる新酸化法により、上記したような特定クラックを有さない緻密な酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体が得られる理由は、まず、従来の酸化法では昇温工程で雰囲気中の酸素が窒化物セラミックス成形体中に固溶し、該成形体の温度が酸化反応の反応開始温度に達すると固溶していた酸素が一気に反応するため下地と酸化物層との格子定数の違い等に起因する急激な応力発生によって酸化物層に前記したような特定クラックが発生してしまうことによると推定される。これに対して、新酸化法では、昇温は、雰囲気から酸素が窒化物セラミックス成形体中に実質的に固溶しない状態で行われるため、成形体の酸化反応は反応開始温度に達し酸素ガスと接触してから始まり、酸素の拡散律速で徐々に進行するため上記のような特定クラックが発生しないものと考えられる。
なお、この新酸化法で酸化物層を形成した場合、形成される酸化物層の厚みが厚くなるとクラックが発生することもあるが、このときに発生するクラックは、幅が小さく枝分かれも少ないものであり、その数(単位面積当たりのクラック数)も従来法における特定クラックのそれと比べてはるかに少ない。しかも、こうしたクラックは、特定クラックと比較すると、耐水性の低下等を引き起こす程度もはるかに小さい。
このような作用機構の正当性は、以下に説明する窒化アルミニウムを酸素ガス雰囲気中で加熱して酸化したときの酸化挙動からも支持される。即ち、図2は、窒化アルミニウムを酸素雰囲気中で75℃/分の昇温速度で加熱したときの反応率の経時変化を示したものであり、上段のグラフでは横軸に時間(秒)を、縦軸に熱重量分析による反応率(%)及び昇温パターンに対応する温度(K)をとっており、下段のグラフでは横軸に時間(秒)を、縦軸に示差熱分析により測定された発熱量を示すDTA(ΔE/mV)及び昇温パターンに対応する温度(K)をとっている。図2に示されるように、窒化アルミニウムを加熱していくと、室温から1100℃(1373K)までは、酸素を固溶するだけで、酸化は殆ど生じないが(I期)、温度が約1100℃に達すると、固溶していた酸素が一気に反応してAl(α−アルミナ)に変化することにより、急激な重量の増加をもたらすと共に、大きな発熱が生じる(II期)。そして、このような急激な反応が収まるとその後の反応は緩やかに進行する(III期)。これに対し新酸化法では、I期に相当する酸素の固溶過程がないため、II期の急激な反応が起こらず始からIII期の穏やかな反応が起こる。なお、このような酸化機構は、窒化アルミニウムに限らず、その他の窒化物セラミックスにおいても適用される。
なお、本発明において酸化開始温度とは、酸化性ガス雰囲気下で窒化物セラミックスを加熱した場合に急激な酸化反応が開始される温度を意味し、本発明では、反応圧力下に酸素雰囲気で窒化物セラミックスを1〜100℃/分、好ましくは75℃/分の昇温速度で加熱したとき、窒化物セラミックスの酸化反応率が臨界的(critical)に変化する温度をいう。該酸化開始温度は上記条件で窒化物セラミックスを加熱する際の熱重量分析結果において急激な重量変化を開始する温度又は示差熱分析結果において急激な発熱を開始する温度として容易に特定することができる。例えば窒化アルミニウムの大気圧下における酸化開始温度は、図2に示される様に1100℃である。
上記製造方法では、先ず、昇温工程として、窒化物セラミックス成形体を、昇温中に酸素を固溶させることなく、当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱する。この処理に先立って、上記窒化物セラミックス成形体は、目的とするセラミックスヒーターの基体の形状に加工しておくのが好適であるが、本発明では、加工前のブロック体或いは半加工品として前記製造方法に供して、表面に前記性状の酸化物層を形成した後、所望の形状の上記基体に加工しても良い。
また、窒化物セラミックス成形体は、前記製造方法を実施するに先立ち、表面の粗面化や研磨等の前処理を行っていてもよい。粗面化処理としてはアルカリ性水溶液によるエッチング、サンドブラスト等が挙げられる。また研磨処理としては砥粒を用いた研磨、電解インプロセスドレッシング研削法等を挙げることができる。また、形成される酸化物層を構成する酸化物(例えばアルミニウム酸化物や珪素酸化物)の焼結助剤となるような物質或いはその前駆体物質を予め窒化物セラミックスの表面に付着させておいてもよい。このような物質としてはSiO、MgO、CaO、B、LiO等を挙げることができる。
ここで、酸素が窒化物セラミックス成形体に固溶した状態とは、窒化物セラミックスの副格子位置に酸素原子がランダムに存在する状態を指す。また、昇温中に酸素を実質的に固溶させないとは、酸化工程において形成される酸化物層に特定クラックを発生させるような急激な酸化反応が起こるような酸素の固溶を防止するという意味であり、雰囲気中に極微量存在し得る酸素の固溶や窒化物セラミックス成形体中に不純物や微量成分として含まれる酸化物中の酸素や昇温前に窒化物セラミックス成形体を大気中に放置することによって収着した酸素が昇温中に拡散して固溶するといった、特定クラックの発生に実質的に影響を与えない程度の酸素の固溶は上記の「実質的な酸素の固溶」には含まれない。
酸素を実質的に固溶させることなく昇温するには、内部の雰囲気を制御することができる炉を用い、酸素ガスを実質的に含有しない雰囲気中で窒化物セラミックス成形体を加熱すればよい。窒化物セラミックス成形体が酸素を固溶するために必要な時間は短いものと考えられる。従って、昇温速度を速くすることにより、酸素の固溶を回避しようとしても効果がない。例えば、酸素ガス中で窒化物セラミックス成形体を1300℃/分という高速度で昇温させても、特定クラックの生成抑制効果は十分なものではなかった。このため、加熱速度を上げることにより、酸素の固溶を防止しようとすることは、短時間で酸素が固溶するため、有効ではない。
前記昇温工程においては、窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度までは、窒化アルミニウム成形体中に酸素が固溶しないような雰囲気、即ち酸素ガスを実質的に含有しない雰囲気に窒化アルミニウム成形体をおけば良い。このような雰囲気は特に限定されず、例えば不活性ガス雰囲気或いは真空雰囲気が挙げられるが、加熱炉の構造が簡単であるという理由から不活性ガス雰囲気を採用するのが好適である。不活性ガスとしては窒素ガス、Arガス等が使用できるが、入手の容易さ及び同一純度の不活性ガスであっても窒素ガスの方が酸素を固溶させない効果が高いという理由から窒素ガスを使用するのが好適である。これら不活性ガスは、純度99.999%以上、より好ましくは99.9999%以上、最も好ましくは99.99995%以上の高純度不活性ガスを用いるのが好ましい。
この昇温工程において、得られる表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体の耐水性および金属との密着性をより向上させるためには、炉内の実際の雰囲気を、昇温・加熱時に炉壁や被処理物となる窒化物セラミックス成形体から放出されるガスの影響までをも可及的に排除して加熱するのが好ましい。すなわち、上記の如くに昇温工程における雰囲気を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気とすることにより、酸化工程時に上記特定クラックの発生を効果的に抑止することができるが、それだけでは、より高度な耐水性や金属との密着性が求められる場合には十分ではなく、こうした場合には、該放出ガスに含まれる酸素分子、さらには酸素ガスと同様に上記物性の低下を引き起こす原因となる水分子等を可及的に少なくするのが好ましい。
具体的には、1mに含まれる昇温時の雰囲気ガスの組成を、酸化性ガスの合計モル数が0.5mmol(0.00112vol.%)以下にするのが好ましい。ここで、酸化性ガスとは酸素ガス、水蒸気、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス等の窒化物セラミックスを酸化する能力を有するガスを意味する。効果の観点から、昇温時の雰囲気中に含まれる酸化性ガスの合計濃度、特に酸素及び水蒸気の合計濃度は0.1mmol/m以下、特に0.01mmol/m以下であるのが好適である。昇温時の雰囲気ガスの組成は炉から流出したガスを分析することにより確認することができる。
なお、上記昇温工程において、加熱開始してから窒化物セラミックス成形体の温度がさほど高くならない間は雰囲気制御を厳密に行なう必要はないが、少なくとも窒化物セラミックス成形体の温度が100℃以上、より好ましくは200℃以上となる加熱過程における雰囲気は、酸化性ガスの合計濃度が上記した範囲となるように管理するのが好ましい。
このようにして昇温する際の雰囲気中に含まれる酸化性ガスの濃度を高度に制御した場合には、得られる表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体は、前記したような特定クラックが見られないというマクロ構造的な特徴を有することに加えて、酸化物層における窒化物セラミックス基材との界面近傍の領域に空隙が全く見られないというミクロ構造的な特徴を有する。すなわち、かかる窒化物セラミックス成形体は、通常は0.1〜100μmの厚さである酸化物層における前記窒化物セラミックスと前記酸化物層の界面から少なくとも20nmの厚さの領域に空隙が実質的に存在しないという特徴を有する。このような窒化物セラミックス成形体は、窒化物セラミックス基材と酸化物層との密着強度が非常に高く、これに起因して、金属との密着強度、さらには耐水性も大きく改善される。
この酸化物層の窒化物セラミックス基材との界面近傍における空隙若しくは気泡が実質的に存在しない領域(以下、空隙非存在領域ともいう。)は、界面からある厚さをもって酸化物層の全面に広がる層状の領域であり、その厚さは酸化物層全体の層厚によらず、20〜100nmの厚さである。ここで空隙若しくは気泡が実質的に存在しないとは、上記空隙非存在領域における空隙率(該領域の全体積に占める空隙の体積の割合)が5%以下、好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であることを意味する。上記空隙非存在領域以外の酸化物層領域、特に表層近傍を除く領域には径が50〜100nm程度の大きさの空隙が多く見られるのに対し、該空隙非存在領域ではそのような空隙が殆ど見られず、空隙があったとしてもその径が5nm以下、好ましくは1nm以下のものが殆どである。なお、酸化物層の表層部分については、酸化物層の厚さが厚くなると、空隙が減少し、径が大きくなる傾向が見られる。
空隙非存在領域の存在は、試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察することにより確認することができる。この場合、空隙は、TEM写真において白い若しくは薄い色のゆがんだ楕円状(場合によっては多角形の形状に見えることもある)の模様として観察されるが、観察試料の厚さが不均一である場合には判別が困難である。このため、TEM観察を行なう場合の試料の厚さは50〜100nmの範囲で均一な厚さとする必要がある。このような試料の作成は、次のようにして行なうことができる。
即ち、TEM観察用の試料作製に広く用いられている集束イオンビーム(FIB)装置において、加速したガリウムイオンで試料の研削を行い、試料表面から見て横幅10〜20μm、縦50〜100nmの領域を残すように周囲を研削する。研削領域の確認は、ガリウムイオンを照射した際に試料から発生する二次電子を検出して像を取得する走査型イオン顕微鏡(SIM)により可能である。一般的にSIMはFIB装置に付随しており、このSIM観察によって正確に研削領域を確認することができ、TEM観察を行なう場合の試料の厚さを50〜100nmの範囲で均一な厚さとすることが可能になる。
上記の如く雰囲気中に含まれる酸化性ガスの濃度を制御する方法は、特に制限されるものではないが、加熱処理前に窒化物セラミックス成形体を導入した炉内を真空脱気するというディーガス(degas)処理をしてから超高純度不活性ガスを導入して加熱を開始する方法が好ましい。このようなディーガス(degas)処理を行なわない場合には昇温・加熱時に炉壁や窒化物セラミックス成形体から酸素や水蒸気が放出されるので不活性ガス純度は低下し、加熱時の雰囲気ガスの組成は導入したガスの組成とは同じにはならない。
ディーガス(degas)処理を行なった後に炉内を純度99.999%以上、より好ましくは99.9999%以上、最も好ましくは99.99995%以上の高純度不活性ガスで十分に置換してから当該不活性ガスの流通下で加熱するか又は加熱時の炉内の圧力を常に100Pa以下、好ましくは40Pa以下、最も好ましくは20Pa以下の圧力に保って加熱するのが好適である。ディーガス(degas)処理の方法は、表面に吸着している若しくは内部に吸収されているガスを脱離させることができる方法であれば特に限定されず、室温〜100℃の範囲で、ガスの脱離がなくなるまで減圧下で脱気するのが好適である。脱気時の減圧度(炉内の圧力)は特に限定されないが、100Pa以下、特に40Pa以下であるのが好適であり、20Pa以下とするのが最も好ましい。
上記製法においては、窒化物セラミックス成形体の酸化が開始されるまでは該素材中に酸素を実質的に拡散させないことが重要である。このためには酸化反応開始温度までは上記のような雰囲気中で加熱するのが好ましいが、少なくとも素材である窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度に加熱した場合には、系内(炉内)に酸素ガスを導入しても昇温速度を制御することにより(実用的に制御可能な昇温速度の範囲、例えば10〜80℃/分、好ましくは30〜50℃/分で昇温しても)問題となるような酸素の拡散を起さず、且つ窒化物セラミックス成形体に大きなダメージを与えることなく酸化開始温度まで昇温することが可能である。
昇温工程を窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃を超えて低い温度まで昇温された状態で終え酸化工程に移った場合、該酸化工程において、酸化物層の形成に悪影響を及ぼす酸素の拡散が生じるようになり、その場合、窒化物セラミックス成形体にクラックが発生するという問題が生じるおそれがある。用いる炉の性能や窒化物セラミックス成形体の形状にもよるが、窒化物セラミックス成形体は前記雰囲気中で窒化物セラミックスの酸化開始温度より100℃低い温度以上、特に窒化物セラミックスの酸化開始温度以上に加熱するのが好適である。
以上の昇温工程に続いて、酸化工程では、上記のようにして昇温中に酸素を実質的に固溶させることなく窒化物セラミックス成形体を当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱された窒化物セラミックス成形体を、酸素ガスと接触させる。この操作により、当該窒化物セラミックス成形体の表面を酸化して酸化物層を形成する。
ここで、所定の温度に加熱された窒化物セラミックス成形体を酸素ガスと接触させる方法は特に限定されず、該窒化物セラミックス素材の温度をモニターし、その温度が所定の温度に達したことを確認した後に炉内に酸素ガス又は酸素ガスを含むガスを導入し、これらガスの存在下で窒化物セラミックス成形体を酸化開始温度以上の温度に保持すればよい。窒化物セラミックス成形体と酸素ガスとの接触を開始する温度は窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度であれば、良好な酸化物層を形成することができるが、より確実に良好な酸化物層が得られるという理由から、窒化物セラミックスの酸化開始温度より100℃低い温度以上、特に窒化物セラミックスの酸化開始温度以上であるのが好適である。
上記酸化工程で窒化物セラミックス成形体を酸化するために使用する酸素ガス又は酸素ガスを含むガス(以下酸化用ガスともいう。)としては、得られる酸化物層に欠陥が少ないという観点から露点が−50℃以下のガスを使用するのが好適であり、−70℃以下の露点を有するものを使用するのが最も好ましい。たとえば、超高純度酸素ガス、超高純度酸素ガスを超高純度不活性ガスで希釈した混合ガス、脱水処理した空気等が好適に使用できる。酸化用ガス中の酸素ガス濃度は、酸化物層の形成速度に影響を与え、一般に酸素濃度が高いほど酸化物層の形成速度は速くなる。このため、効率の観点から酸化用ガスとしては酸素濃度が50vol.%以上、特に99vol.%以上のものを用いるのが好適である。
酸化工程においては、窒化物セラミックス成形体を酸化開始温度以上の温度で酸化用ガスと接触させる必要があるが、酸化温度が高すぎる場合にはエネルギーコストが高くなるばかりでなく酸化物層の厚さの制御が困難となるので酸化開始温度より500℃高い温度以下、特に酸化開始温度より300℃高い温度以下とするのが好適である。また、酸化時間は、使用する酸化用ガスの酸素濃度、酸化温度及び得ようとする酸化物層の厚さに応じて適宜決定すればよい。例えば厚さ1000〜3000nmのα−アルミナ層を有する窒化アルミニウムを得るためには、通常0.5〜5時間酸化開始温度より高い温度で保持すればよい。なお、酸化工程で形成される酸化物層は窒化物セラミックスの構成成分である金属又は半金属の酸化物からなるが、該酸化物層には窒化物セラミックスの種類に応じて窒素等が固溶していてもよい。
上記酸化処理終了後は、酸化処理された窒化物セラミックス素材を冷却して炉内から取り出せばよい。また、冷却時に窒化物セラミックスや酸化物層が損傷しないように徐冷するのが好適である。
斯様な方法により、特定クラックを有さない緻密な酸化物層を表面に有する窒化物セラミックス成形体が効率的に製造できる。
本発明のセラミックスヒーターは、このようにして製造された表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体をヒーターの基体として使用する限り、公知の如何なる構造のものであっても良い。ヒーターの基体とは、ヒーターの本体部であり、通常は金属発熱体を設ける支持体として機能する。場合によっては、このような金属発熱体は設けずに、窒化物セラミックス成形体の組成に導電性付与材を配合して、該基体そのものを抵抗発熱体として機能させても良い。
基体の形状としては、特に制限されるものではないが、いずれかの表面に金属発熱体を層状に設ける場合には表面が平坦な形状であるのが好ましい。具体的には、板状が一般的であるが、円柱状や角柱状等であっても良い。また、基体は、上記表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体同士、或いは該積層体と酸化物層を設けていない他の窒化物セラミックス成形体とを積層した積層物の形態で用いても良い。
具体的なヒーターの構造としては、該窒化物セラミックス成形体からなる基体のいずれか一方の表面や内部に、金属発熱体を設けた形態であるのが一般的である。このような形態のセラミックスヒーターの基本的形態を図11の平面図及び図12の断面図により説明する。すなわち、図11及び図12において、窒化物セラミックス成形体3からなる基体の上面には、図11に示すような形状で金属発熱体4が形成されており、その両端には、導電部5を介して一対の電極6が結合されている。このセラミックスヒーターでは、電源7から電極6に通電することにより、金属発熱体4が発熱しヒーターとして機能する。
ここで、金属発熱体は、タングステン線やモリブデン線等の金属線であっても良いが、銀・パラジウム合金や銀・白金合金等からなる金属導電層を成形体表面に積層した形態であるのが好ましい。これらの金属導電層は、合金の各構成金属粉を有機ビヒクルと共に混練・分散してペーストを作成し、該ペーストを基体の所望する表面にスクリーン印刷等の方法で塗布した後、乾燥、焼成する方法により形成させることができる。こうした金属導電層の厚みは、パターンの幅、組成、印加電圧等に応じて適宜決定すればよい。
こうした構造のセラミックスヒーターにおいて、前記窒化物セラミックス成形体からなる基体は、特定クラックが実質的に存在しない酸化物層が形成された面を、耐水性が求められる側に適宜配して使用すればよい。例えば、ヒーターの設置面からの水濡れ等による基体の劣化を防止するためには、ヒーター底面側を該酸化物層の形成面とすれば良い。他方、雰囲気に含まれる湿分等による劣化を防止するためには、ヒーターの上面側を該酸化物層の形成面とすれば良い。
特に、上記酸化物層は、金属との密着性に優れるため、この酸化物層を設けた表面上に、金属発熱体層を積層するのが好ましい。すなわち、このような態様においては、酸化物層と金属発熱体層との密着強度を極めて強固なものにすることができ、ヒーターの使用中において強い外力が加ったり、さらには、ヒーターを長期間使用しても、この金属発熱体層の剥離が生じ難く好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH15)を内径75mm、長さ1100mmのムライトセラミックスを炉心管とする高温雰囲気炉(株式外会社モトヤマ製スーパーバーン改造型)内に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて50Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99995%、露点−80℃)で復圧置換し、流速2(l/分)の窒素流通下で1200℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1200℃に達したのを確認してから窒素ガスの流通を停止し、代わりに酸素ガス(純度99.999%、露点−80℃)を流速1(l/分)で流通させ、そのまま1時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した。酸化終了後室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム基板を得た(降温速度3.3℃/分)。
上記の製造工程において昇温開始と同時に炉から排出されるガスをガスクロマトグラフ(島津製作所製パーソナルガスクロマトグラフGC−8A、検出器:TCD、カラム:ジーエルサイエンス株式会社製SUS3φ×2m、充填剤モレキュラーシーブ13X−S 60/80)に導入し、ガス成分を経時的に分析した。その結果昇温時にはいずれの温度領域においても窒素以外の成分は検出されなかった。酸素を流通させ始めてから10分経過したところで排ガスを分析したところ、流通ガスである酸素の他、反応過程で生成したと考えられる窒素が検出された。窒素のピークは酸素流通開始後が最も高く、温度保持時間が経過するにつれてやや減少した。
得られた表面酸化窒化アルミニウム基板の一部を分析用試料(試料1)とし、その酸化物層について、XRD分析、SEMによる表面観察及びTEMによる断面観察を行った。また、水酸化ナトリウム水溶液による耐水・耐薬品性評価を行った。これらの分析および評価テストの具体的方法及び結果を以下に示す。
〔XRD分析〕
試料1についてX線回折装置(理学電機株式会社製X線回折装置RINT1200)を用いてXRD測定を行ったところ、その回折パターンから該試料の酸化物層はα−アルミナであることが確認された。なお測定は、入射X線Cu−Kα線、管電圧40kV、管電流40mA、受光スリット0.15mm、モノクロ受光スリット0.60mmの測定条件で行った。
〔SEM観察〕
試料1をダイヤモンドカッターにて5mm×5mmに切断した後、酸化物層面を上にして観察用試料台にカーボンテープを用いて固定した。これをイオンスパッタリング装置(日本電子株式会社製マグネトロンスパッタリング装置JUC−5000)を用いてPtコーティングし、FE−SEM(日本電子株式会社製フィールドエミッション走査電子顕微鏡JSM−6400)にて該試料の酸化物層表面の観察を行った。観察は加速電圧15kV、プローブ電流5×10−11A、エミッション電流8μA、倍率10,000倍で行い、任意の視野(半径30000nmの視野)を50視野観察し、同箇所を写真撮影した。典型的な写真を図3に、そのイラストを図4に示す。図3に示される様に、酸化物層の表面には隆起による筋状の模様は観察されたがクラックは観察されなかった。なお、他の何れの視野においても特定クラックは観測されなかった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚さは平均で900nmであった。
〔TEM観察〕
まず観察用試料を下記方法で作製した。すなわち株式会社ディスコ製ダイシング装置(DAD320)を用いて試料1を試料表面から見て横1mm、縦50μmの直方体の形状に切断し、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製集束イオンビーム装置(SMI2200)にて、断面観察のための加工を行った。加速電圧は全て30kVで行った。走査型イオン顕微鏡(SIM)で直方体状の試料表面を観察しながら、縦50μmを70nmになるまで周囲を研削した。研削する横幅は任意であるが、今回は20μmとした。研削する深さは、試料断面のSIM観察で酸化物層全体と窒化物セラミックの一部(約1μm)が観察できる深さに設定した。
次にFEI社製電界放射型透過型電子顕微鏡(TECNAI F20)にて、加速電圧200kV、スポットサイズ1、Gun Lens1、対物絞り100μmで観察した。観察倍率は50000倍にて酸化物層と窒化物セラミックの界面付近の観察を行い、同箇所を写真撮影した。試料の典型的な写真を図5に、そのイラストを図6に示す。図5に示されるように、酸化物層には楕円状の気泡(若しくは空隙)が観測されたが、酸化物層の下地との界面近傍には平均厚さ48nmの気泡が実質的に存在しない領域(層)が確認された。
〔耐水・耐薬品性評価〕
試料1を酸化物層の一部が露出するようにフッ素樹脂製のシールテープで覆い(露出面積S=3mm×5mm=15mm=1.5×10−5)、露出部分以外は液に触れないようにして30℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬した。浸漬前後の乾燥重量の差と露出面積Sから計算される、“浸漬による単位面積当たりの乾燥重量の減少量”(以下、重量減少と記す)は10(g/m)であった。なお、参考実験として表面酸化処理を施していない窒化アルミニウム基板について同様の試験を行ったところ、重量減少は113(g/m)であった。
次に、上記性状の表面酸化窒化アルミニウム基板を基体に用いて、セラミックスヒーターを作成した。
まず、平均粒径1.0μmの銀粉末85重量部と平均粒径2.0μmのパラジウム粉末15重量部を有機ビヒクルと共に、3本ロール機にて混錬・分散を行ってペーストを得た。
このペーストを、表面酸化窒化アルミニウム基板の酸化物層が形成されてなる表面に図11に示すパターンでスクリーン印刷した。印刷後、100℃、30分間乾燥した後、大気中850℃、30分焼成し、前記基板表面に金属発熱体層を形成した。形成された発熱体の総長さは290mmで、巾は250μm、厚みは14μmである。この基板について以下の方法により、金属発熱体層の酸化物層への密着強度を測定した。
〔金属発熱体層の酸化物層への密着強度〕
金属発熱体層が形成された表面酸化窒化アルミニウム基板について、−65℃×30分〜125℃×30分の条件でヒートサイクルテストを行った。テスト終了後、3mm幅のニッケルリードをロウ付けし、90度ピールテストを行い、金属発熱体層の表面酸化窒化アルミニウム基板表面への密着強度を測定し、7.5(kgf)の値を得た。なお、参考実験として表面酸化処理を施していない窒化アルミニウム基板について、同様の試験を行ったところ、密着強度は6.2(kgf)であった。
上記の金属発熱体層が形成された表面酸化窒化アルミニウム基板について、その金属発熱体層の両端に、導電部を介して一対の電極を結合させ、図11および図12に示されるような構造のセラミックスヒーターを製造した。このセラミックスヒーターが、耐水性、耐薬品性、および表面に形成された金属発熱体層の密着強度に優れることは、上記に示す各種評価結果から明らかである。

実施例2
窒化アルミニウム基板を高温雰囲気炉で酸化処理する際に、加熱前に窒素置換−真空脱気処理を行なわずに単に窒素置換だけとする以外は、実施例1と同じ方法によって表面酸化窒化アルミニウム基板(試料2)を得た。
実施例1と同様に、昇温開始と同時に炉から排出されるガスをガスクロマトグラフに導入し、ガス成分を経時的に分析した。その結果昇温時には窒素の他、微量の酸素及び水が検出された。別途作成した検量線を用いて、基板温度が300℃に達したときに排出されたガス中の酸素及び水の量を定量したところ酸素及び水の濃度は、酸素が1.2mmol/m(0.0027vol.%)であり、水が1.0mmol/m(0.0022vol.%)であった。両方の和が0.5mmol/mを超えているので酸化物層の下地との界面近傍に気泡(若しくは空隙)が発生すると考えられた。また、酸素を流通させ始めてから10分経過したところで排ガスを分析したところ、流通ガスである酸素の他、反応過程で生成したと考えられる窒素が検出された。窒素のピークは酸素流通開始後が最も高く、温度保持時間が経過するにつれてやや減少した。
試料2の一部を分析用試料とし、それらの酸化物層について、実施例1と同様にX線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて分析を行った。その結果、XRD測定の回折パターンから何れの試料の酸化物層ともα−アルミナであることが確認された。また、試料表面SEM観察を行ったところ、任意の50視野において特定クラックは存在せず、極めて緻密な酸化物層であることが判明した。SEM観察により測定された酸化物層の厚みは930nmであった。さらに酸化物層の断面TEM観察を行ったところ、酸化物層全体(酸化物層の下地との界面近傍を含む)にわたり空隙若しくは気泡が存在することが確認された。
次に、試料2について、実施例1と同じ方法で、30℃、5%水酸化ナトリウム水溶液への耐水・耐薬品性を調べた。重量減少は20(g/m)であった。
また、前記酸化処理した窒化アルミニウム基板について、実施例1と同じ方法で、表面に形成した金属発熱体層の密着強度を測定したところ、7.2(kgf)であった。
この表面酸化窒化アルミニウム基板を基体に用いて、実施例1と同様に図11および図12に示すようなセラミックスヒーターを作製した。このセラミックスヒーターが、耐水性、耐薬品性、および表面に形成された金属発熱体層との密着強度に優れることは、上記に示す各種評価結果から明らかである。

比較例1
窒化アルミニウム基板を高温雰囲気炉で酸化処理する際に、炉内を窒素置換せずに空気流通下で加熱、1200℃まで昇温し、同じく空気流通下に1200℃で1時間保持する以外は実施例1と同様にして表面酸化窒化アルミニウム基板(試料3)を得た。得られた試料について実施例1で得られた基板と同様の分析、評価を行なった。その結果、酸化物層はα−アルミナであることが確認された。
また、試料3についてのSEM観察結果を図7及び8に、TEM観察結果を図9及び10に示す。図7及び8に示される様に、酸化物層表面には特定クラックが観測された。因みに、SEM写真に基づいて、試料3の酸化物層表面に存在するクラックについて最も大きなw/lを示すクラックユニットにおけるw、l及びw/lを測定したところ、w=120nm、l=880nm、w/l=0.14であった。また、任意の視野(半径30000nmの視野)50箇所について同様の観察をしたところ、合計35個の特定クラックが観測された。
図9及び10に示される様に、酸化物層と窒化アルミニウム基材との界面には多数の気泡が見られた。更に、耐水・耐薬品評価における重量減少は82(g/m)であった。
また、実施例1と同じ方法により、この酸化処理した窒化アルミニウム基板の表面に形成した金属発熱体層の密着強度を測定したところ、6.6(kgf)であった。
この性状から明らかなように、この表面酸化窒化アルミニウム基板は、セラミックスヒーターの基体として用いても、得られるヒーターは、耐水性、耐薬品性、および表面に設ける金属発熱体層との密着強度において、十分満足できるものにはならないものであった。
本図は、特定クラックを説明するための図である。 本図は、酸素ガス雰囲気中で窒化アルミニウム素材を加熱したときの反応率及びDTAの変化パターンを示すグラフである。 本図は、実施例1で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化物層の表面のSEM写真である。 本図は、図3のSEM写真のスケッチである。 本図は、実施例1で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化物層の断面のTEM写真である。 本図は、図5のTEM写真のスケッチである。 本図は、比較例1で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化物層の表面のSEM写真である。 本図は、図7のSEM写真のスケッチである。 本図は、比較例1で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化物層の断面のTEM写真である。 本図は、図9のTEM写真のスケッチである。 本図は、本発明の代表的な態様のセラミックスヒーターの平面図である。 本図は、本発明の代表的な態様のセラミックスヒーターの断面図である。
符号の説明
1・・・分岐を有するクラック
2a〜2e・・・クラックユニット
〜l・・・各クラックユニットの長さ
〜w・・・各クラックユニットの最大幅
3・・・本発明の表面酸化窒化アルミニウム基板
4・・・金属発熱体
5・・・通電部
6・・・電極
7・・・電源

Claims (4)

  1. 金属または半金属の窒化物セラミックスからなる成形体の少なくとも一面に、上記金属または半金属原子と同一の原子の酸化物からなる酸化物層が形成されている、表面に酸化物層を有する窒化物セラミックス成形体をヒーターの基体とするセラミックスヒーターの製造方法であって
    該酸化物層が、窒化物セラミックス成形体を不活性ガス雰囲気下、或いは真空雰囲気下で当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱した後に加熱された当該成形体の所望の面を酸素ガスと接触させ、当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より高い温度に保持して当該成形体の表面を酸化することにより形成されることを特徴とするセラミックスヒーターの製造方法。
  2. 窒化物セラミックス成形体を不活性ガス雰囲気下で当該窒化物セラミックスの酸化開始温度より300℃低い温度以上の温度に加熱する前に、
    窒化物セラミックス成形体を導入した炉内を真空脱気してから不活性ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒーターの製造方法。
  3. 前記窒化物セラミックスが窒化アルミニウムであり、酸化物層が酸化アルミニウム層である請求項1または2に記載のセラミックスヒーターの製造方法。
  4. 前記窒化物セラミックス成形体における、酸化物層が形成されている表面上に金属発熱体層を積層する請求項1〜3の何れかに記載のセラミックスヒーターの製造方法。
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