JP2005007004A - 中空糸型の体液処理器、これに用いる中空糸束およびそれらの製造方法 - Google Patents

中空糸型の体液処理器、これに用いる中空糸束およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】β2ミクログロブリンのような低分子蛋白をよく除去でき、アルブミンのような有用蛋白は除去しない、という分子量分画特性に優れる体液処理器を提供する。
【解決手段】容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側と容器内壁との間に形成される空間とに仕切られている体液処理器であって、束外周部1より束中心部3に向かってPVP-UFRが大きくなり、かつ中空糸束中心部3に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.85以上、アルブミンの篩係数が0.01以下である体液処理器。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空糸型の体液処理器、これに用いる中空糸束およびそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、血液浄化用の中空糸膜として、セルロース系、セルロースアセテート系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスルホン系などのポリマーを主体とする膜素材が使用されてきたが、中でも近年では、生体適合性にすぐれ、分子量分画性にも優れたポリスルホン系の中空糸膜が急速に普及してきた。そして、血液浄化用のポリスルホン系中空糸膜の製造方法については数多くの技術が知られており、例えば、特許文献1〜3に製造方法が記載されている。
一方、近年、長期間透析療法を受けている患者の合併症の原因として、β2ミクログロブリン等の低分子蛋白の体内蓄積が問題視され、これら低分子蛋白を血液中から効率よく除去できる高性能な血液処理器が望まれている。
従来の技術ではβ2ミクログロブリンのような低分子蛋白をよく除去でき、アルブミンのような有用蛋白は除去しない、という血液処理器の分画特性に対する十分な検討がなされておらず、必ずしも満足のいくものではなかった。すなわち、低分子蛋白の除去をよくしようと中空糸膜の透過性能を上げると、アルブミンなどの有用蛋白のリークが問題となるからである。
【0003】
【特許文献1】
特公平2−18695号公報
【特許文献2】
特公平5−54373号公報
【特許文献3】
特開平6−165926号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、分子量分画特性に優れる体液処理器、そのうちでも特にβ2ミクログロブリンのような低分子蛋白をよく除去でき、アルブミンのような有用蛋白は除去しないという分子量分画特性に優れる体液処理器、これに用いる中空糸束およびそれらの製造方法を提供する事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、PVP−UFRを束外周部より束中心部に向かって大きくした体液処理器とすることで、従来に比べて非常に分子量分画特性の優れた血液浄化膜を提供できる事を見出した。
すなわち本発明は、
(1) 容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側−容器内壁間に形成される空間とに仕切られている体液処理器であって、
PVP−UFRが束外周部よりも束中心部の方が大きい事を特徴とする体液処理器。
(2) さらに、中空糸束中心部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.85以上、アルブミンの篩係数が0.01以下である事を特徴とする上記(1)記載の体液処理器。
(3) 束外周部と束中心部におけるPVP−UFRの差が2以上13以下である事を特徴とする上記(1)又は(2)に記載の体液処理器。
(4) PVP−UFRが束外周部から束中心部へ向けて連続的に大きくなっていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の体液処理器。
(5) 容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側−容器内壁間に形成される空間とに仕切られている体液処理器であって、
湿潤状態の中空糸束を、束長手方向前後の差圧が100Pa以上800Pa以下になるように束長手方向に熱風を流して乾燥することにより得られる体液処理器。
(6) 束外周部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.7以上、アルブミンの篩係数が0.003以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の体液処理器。
(7) 体液処理器のβ2ミクログロブリンのクリアランスが25ml/min以上、アルブミンの篩係数が0.05以下である上記(1)〜(6)の何れかに記載の体液処理器。
(8) 中空糸がポリスルホン系ポリマーからなる上記(1)〜(7)のいずれかに記載の体液処理器。
(9) 上記(1)〜(8)の何れかに記載の体液処理器の製造方法であって、
湿潤状態の中空糸束の長手方向前後の差圧が100Pa以上800Pa以下になるように長手方向に熱風を流して乾燥することを特徴とする体液処理器の製造方法。
(10) 熱風を流す前に、マイクロウェーブにより湿潤状態の中空糸束の含水率を10%〜90%にすることを特徴とする上記(9)に記載の製造方法。
【0006】
本発明により、β2ミクログロブリンのような低分子蛋白をよく除去でき、アルブミンのような有用蛋白は除去しない、という体液処理器の分画特性が改善される作用機序については必ずしも明らかになっていない。しかし、本発明者らは、中空糸束の外周部の篩係数を小さめにし、中心部の篩係数を大きくし、PVP−UFRを束外周部より中心部に向かって大きくしたことにより、分画特性が改善されたものと考えている。すなわち、束外周、内周の血液流速分布および透析液流量分布との兼ね合いから、束中心部では積極的な濾過が行なわれ束外周部では積極的な拡散が行なわれるものと考えている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の体液処理器とは、血液透析器、血液濾過透析器のように血液を濾過および/または透析により血液を浄化する為のモジュール(血液浄化器)であり、容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側と容器内壁との間に形成される空間とに仕切られているものをいう。例えば、乾燥した中空糸束を樹脂製の円筒容器に挿入し、ポリウレタン等のポッティング剤を用いて中空糸束端と容器端とを接着し、その後接着端面を切断して中空糸内部を中空糸外部に開口し、ヘッダーを装着することにより得られる。
また、血液の浄化以外に血漿成分の分離器としても使用できる。例えば、血液を一旦血漿成分と血球成分に分離し、この血漿成分を本発明の体液処理器によってさらに分離するものである。この場合、アルブミンの篩係数は高く、イムノグロブリン−Mの篩係数は低いことが望ましいものが一例としてあげられる。
以下、体液処理器の一例として血液浄化器をあげて説明する。
【0008】
本発明においては、束外周部より束中心部に向かってPVP−UFRが大きくなっている必要がある。好ましくはPVP−UFRが連続的に大きくなっていることが望ましい。さらに、必要に応じて所定の物質の篩係数が所定の範囲内であること、PVP−UFRが所定の範囲内であることが望ましい。
本発明で言うPVP−UFRとは、以下に示す方法によって測定できる数値であり、PVP−UFRの大小は中空糸膜の孔径の大小に対応し、またβ2ミクログロブリンの篩係数と正の相関を有しており、中空糸膜の孔径を簡易的に知る指標として有用である。
【0009】
[PVP−UFRの測定方法]
乾燥状態の中空糸を中心部、外周部、または中間部から約200本サンプリングしてミニモジュールを作成し、これに重量平均分子量約4万のポリビニルピロリドン(PVP:K−30:ISP社製)を1/15(mol/L)の燐酸緩衝溶液に3重量%の濃度で溶解した溶液を通液しながら、膜間差圧200mmHgにてフロー法で中空糸内側から外側へ向けて濾過を行った際に得られる限外濾液速度(単位:ml/Hr/m/mmHg)を求め、この値をPVP−UFRとする。
【0010】
また、ここで言う束外周部とは中空糸本数が千本程度になるように束の外周のみから均一に中空糸を採取できる範囲の束の外周部分を言い、束中心部とは束の中心より千本程度中空糸を採取できる範囲の束の中心部分を言う。
束外周部より束中心部に向かってPVP−UFRが大きくなっていることを確認するためには、束外周部と束中心部の他に両者の中間に位置する束中間部のPVP−UFRも測定し、少なくとも3個所の位置のPVP−UFRを比較して確かめることが好ましい。
【0011】
ここで、β2ミクログロブリンを効率良く除去するためには、PVP−UFRが15ml/Hr/m/mmHg以上であることが好ましいが、反対に、PVP−UFRが高すぎると有用蛋白であるアルブミンの漏洩が臨床上問題となるレベルになる恐れがあるため、従来の製膜技術では35ml/Hr/m/mmHg程度が上限であり、15〜35ml/Hr/m/mmHgの間でバランスを取って膜の設計をすることが大切である。
PVP−UFRの外周部と中心部では、中心部の方が大きいことが必要であり、その差は2以上13以下であることが望ましい。さらに好ましくは4以上10以下である。
【0012】
[β2ミクログロブリンおよびアルブミンの篩係数の測定方法]
乾燥状態の中空糸を中心部、外周部、または中間部から約200本サンプリングしてミニモジュールを作成し、これに、生理食塩水を加えて総タンパク濃度を6.5g/dlに調整した人血清にβ2−ミクログロブリン を5mg/Lの濃度になるように添加した溶液を線速0.4cm/秒で通液し、膜間差圧25mmHgをかけて濾液を採取し、濾液中のβ2−ミクログロブリンおよびアルブミンの濃度を測定し、次式(1)から篩係数を算出した。
篩係数=濾液の濃度/元液の濃度 ・・・(1)
β2−ミクログロブリンおよびアルブミンの濃度はそれぞれ酵素免疫分析(EIA)法、ブロムクレゾールグリーン(BCG)法によって求めた。
【0013】
本発明では、中空糸束中心部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.85以上、アルブミンの篩係数が0.01以下である必要がある。
β2ミクログロブリンの篩係数が0.85未満であると血液浄化器としてのβ2ミクログロブリンの除去効率が低くなってしまい、またアルブミンの篩係数が0.01より大きいと血液浄化器からのアルブミンの漏れが増えてしまう。
本発明において、中空糸束中心部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数は0.85以上であることが必要であるが、0.90以上が好ましく、0.95以上がさらに好ましい。またアルブミンの篩係数は0.01以下である必要があるが、0.008以下が好ましく、0.005以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明においては、束外周部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.7以上、アルブミンの篩係数が0.003以下であることが好ましい。本発明においては、束中心部に存在する中空糸に比べて、束外周部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数およびアルブミンの篩係数はどちらも小さい値を示す。これは束外周部より束中心部に向かってPVP−UFRが大きくなっている事に起因する。これによってアルブミンの過剰な損失を抑えることができる。束外周部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数は0.74以上が好ましく、0.79以上がさらに好ましい。またアルブミンの篩係数は0.002以下が好ましく、0.001以下がさらに好ましい。
【0015】
本発明では、中空糸の素材として特に限定されるものではないが、例示するとセルロース系、セルロースアセテート系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスルホン系などのポリマーを主体とする中空糸膜素材を挙げることができる。これらの中でも分子量分画特性の調整の容易さ、膜の安定性、血液適合性の調整のし易さ、等を鑑みると、ポリスルホン系ポリマーからなる中空糸であることが好ましく、特にポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる中空糸が好ましい。
【0016】
[血液浄化器のβ2ミクログロブリンのクリアランスおよびアルブミンの篩係数の測定方法]
乾燥して得られた中空糸束を樹脂製円筒容器に挿入し、ポリウレタン系のポッティング剤を用いて中空糸束端と容器端との接着を行う。この時、膜面積を1.5mとなるように中空糸の本数をそろえる。中空糸は9,000〜10,000本位充填された。接着後、端面を切断し、中空糸を開口させ、ヘッダーを装着して、モジュール化した血液浄化器を得た。
生理食塩水にて総蛋白濃度を6.5±0.5g/dLに調整した牛血漿にβ2ミクログロブリン(栄研化学社製)を1ppmの濃度になるように添加し、流速200ml/minで1時間血液浄化器の血液側を循環させる。1時間後、透析液側に透析液を500ml/minの流速でワンパスで流し、サンプリングを行い、下式(2)によりβ2ミクログロブリンのクリアランスを算出し、下式(3)によりアルブミンの篩係数を算出する。
β2ミクログロブリンクリアランス=(QBin×CBin―QBout×CBout)/CBin (2)
QBin:血液浄化器血液側入口流量
CBin:血液浄化器血液側入口β2ミクログロブリン濃度
QBout:血液浄化器血液側出口流量
CBout:血液浄化血液側出β2ミクログロブリン口濃度
β2ミクログロブリン濃度はβ2LX試薬(栄研化学)にて測定した。
アルブミンの篩係数=濾液のアルブミン濃度/元液のアルブミン濃度
(3)
アルブミンの濃度はレーザーネフェロメーター(栄研化学社製)にて測定した。
【0017】
本発明の血液浄化器は、β2ミクログロブリンのクリアランスが25ml/min以上、アルブミンの篩係数が0.05以下であることが好ましい。
本発明の構成をとることにより、β2ミクログロブリンのクリアランスが25ml/min以上という高い値を示すにも拘らず、アルブミンの篩係数が0.05以下であるという低いアルブミン透過率を達成できる血液浄化器が得られる。これは、本発明の血液浄化器が束外周部より束中心部に向かってPVP−UFRが大きくなる構造になっているため、束外周部向かってβ2ミクログロブリンに比して分子量の大きいアルブミンの篩係数が小さくなる度合いがより大きくなり、アルブミンが殆ど漏出しなくなることによるためと考えられる。
本発明において血液浄化器のβ2ミクログロブリンのクリアランスは35ml/min以上が好ましく、45ml/min以上がさらに好ましい。また血液浄化器のアルブミンの篩係数は0.04以下が好ましく、0.03以下がさらに好ましい。
【0018】
次に、ポリスルホンとポリビニルピロリドンよりなる中空糸を例に挙げ、本発明血液浄化器の主要な製造方法について説明する。
中空糸は、ポリスルホンとポリビニルピロリドンおよび溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を少なくとも含む。
本発明で言うポリスルホンポリマー(以下、PSf)とは、スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり特に限定されるものではないが、例を挙げると
【化1】
Figure 2005007004
または
【化2】
Figure 2005007004
に示される繰り返し単位をもつポリスルホン系ポリマー樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく用いられる。前者の構造を持つポリスルホン樹脂はソルベイ社より「ユーデル」の商標名で、またビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商標名で市販されており、重合度等によっていくつかの種類が存在する。
また、本発明で言うポリビニルピロリドン(以下、PVP)は、N−ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されており、それぞれいくつかの分子量のものがある。
【0019】
中空糸膜の製造方法は、従来一般的に知られている技術である乾湿式製膜技術を利用できる。すなわち、まず、PSfとPVPを両方に共通の溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整する。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の溶媒、あるいは上記溶媒2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられる。なお、孔径制御のため、紡糸原液には水などの添加物を加えても良い。
中空糸を製膜するに際しては、チューブインオリフィス型の紡糸口金を用い、該紡糸口金のオリフィスから紡糸原液を、チューブから該紡糸原液を凝固させる為の中空内液とを同時に空中に吐出させる。
中空内液は水、または水を主体とした凝固液が使用でき、目的とする中空糸の膜性能に応じてその組成等は決めていけば良く一概には決められないが、一般的には紡糸原液に使った溶剤と水との混合溶液が好適に使用される。例えば、0〜60重量%のDMAC水溶液などが用いられる。
紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ導入、浸漬して凝固を完了させ、洗浄工程等を経て、湿潤状態の中空糸膜巻き取り機で巻き取り、中空糸膜の束を得る。
【0020】
次に、この中空糸を乾燥し、容器内に配置するが、本発明でいうPVP−UFRが束外周部より束中心部に向かって大きくなる中空糸束を作成するには、大きく2つの方法がある。
1つには、PVP−UFRの大きさが異なる中空糸を作成してこれらを順に配置する方法である。例えば大、中、小の中空糸を作成しておき、容器の中心部にPVP−UFRが大のものを、外周部に小のものを、その中間に中のものを配することによって作成できる。
また、2つ目の方法としては、湿潤状態の中空糸束の乾燥工程において、束長手方向に熱風が流れるように乾燥機内に設置し、熱風乾燥を行う。これにより、束外周部より束中心部に向かってPVP−UFRが間断なく連続的に大きくなった中空糸束を作成することができる点および作成が簡易である点でより望ましい。そして、この時束前後の差圧を100Pa以上800Pa以下にする事がβ2ミクログロブリン透過性、アルブミン非透過性の点で重要である。
差圧が100Pa以下では乾燥に時間がかかり、また、束外周部から束中心部に向けてのPVP−UFRの変化が小さくなること、また、800Pa以上では束が乱れ、実用的でない事に加え、束内外のPVP−UFRの差がつきすぎて、逆にこれらの分子量分画特性が低下するからである。これは、束中心部のアルブミン篩係数をアルブミンが十分透過できる程大きくしなければ血液浄化器として所定のβ2ミクログロブリンクリアランスを出せなくなるからである。
【0021】
この時、熱風乾燥前の中空糸の含水率を10%〜90%にしておくとより効果的である。通常、熱水洗浄後の中空糸の含水率は300%程度であるが、10%〜90%の含水率にする事で熱風乾燥時における束内外の乾燥速度の勾配を緩やかにする事ができるため、よりPVP−UFRを制御しやすくなる。中空糸の含水率を10%〜90%にする方法はマイクロウェーブの照射、遠赤外線の照射、熱処理等あるが、束内外の含水率を均一に保ちながら含水率を制御することができるマイクロウェーブ照射が好ましい。
ここでいう含水率とは下式(4)で示される。
含水率=100×{(乾燥前束重量)−(乾燥後束重量)}/乾燥後束重量(4)
【0022】
熱風乾燥時の束長手方向の束前後の差圧(熱風の上流側と下流側の差圧)が大きい程、束外周部から束中心部に向けてのPVP−UFRの変化が大きくなるが、これは、束の乾燥が束外周部より起こり、徐々に束中心部に向けて乾燥していく事による、乾燥速度の違いがPVP−UFRに影響するためと考えられる。
ここで、乾燥とはそれ以上乾燥を継続してもその乾燥工程の雰囲気下ではそれ以上重量変化を起こさなくなるまで水分を除去した状態であると定義しておく。また、乾燥時には、束の形状保持のため、シート等で束を覆って支えても構わない。
【0023】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
ポリスルホン樹脂(ソルベイ社製、P−1700)18重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−90)3.6重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)78.4重量部からなる均一な紡糸原液を作成した。中空内液にはDMAC52%水溶液(中空内液濃度は52%となる)を用い、スリット幅50μmの紡糸口金から吐出させた。80cm下方に設けた水を主体とした凝固浴に浸漬し、60.0m/分の速度で巻き取った。尚、膜厚を45μm、内径を200μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調製た。9200フィラメント巻き取ったところで、束を35cmの長さに切り出し、90℃の熱水シャワーで洗浄し、湿潤状態の中空糸束を得た。0.3kWのマイクロウェーブを14min照射し、含水率を測定したところ、11.5%であった。この中空糸束を熱風乾燥器に挿入し、85℃、300Paの束前後の差圧で1時間乾燥し、乾燥束を得た。乾燥束は図1に示すようにサンプリングし、ミニモジュールを作成して、PVP−UFRの測定および、人血清を用いた篩係数の測定を行った。結果を表1に示す。また、同様の方法で作成した束をスチレン樹脂のケースに挿入し、ポリウレタン系のポッティング剤を用いて、遠心接着を行って血液浄化器を得、モジュール評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 2005007004
【0025】
【実施例2】マイクロウェーブ照射時間を11minにした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。この時、マイクロウェーブ照射後の含水率は85%であった。測定結果を表1に示す。
【0026】
【実施例3】マイクロウェーブ照射を行わず、熱風乾燥時間を8時間にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。この時、熱風乾燥前含水率は265%であった。測定結果を表1に示す。
【0027】
【実施例4】熱風乾燥時の束前後の差圧を700Paにした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。測定結果を表1に示す。
【0028】
【実施例5】熱風乾燥時の束前後の差圧を100Paにした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。測定結果を表1に示す。
【0029】
【実施例6】中空内液濃度を50wt%にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。測定結果を表1に示す。
【0030】
【比較例1】熱風乾燥時の束前後の差圧を50Paとした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。測定結果を表1に示す。
【0031】
【比較例2】熱風乾燥時の束前後の差圧を900Paとした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜及び血液浄化器を得た。測定結果を表1に示す。
【0032】
【比較例3】実施例1で巻き取った中空糸を単糸にして85℃で3時間乾燥し、乾燥後再び束としてミニモジュール評価及び血液浄化器のモジュール評価を行った。なお、マイクロウェーブ照射は行っていない。測定結果を表1に示す。
【0033】
【比較例4】DMAC54%水溶液(中空内液濃度は54wt%となる)とした以外は実施例1と同様の方法で巻き取り、巻き取った中空糸を単糸にて85℃で3時間乾燥し、乾燥後再び束としてミニモジュール評価及び血液浄化器のモジュール評価を行った。なお、マイクロウェーブ照射は行っていない。測定結果を表1に示す。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、従来では達成できなかったβ2ミクログロブリンのような低分子蛋白をよく除去でき、アルブミンのような有用蛋白は除去しない、という分子量分画特性に優れる血液浄化器、これに用いる中空糸束、それらの製造方法を提供する事ができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例、比較例における中空糸のサンプリング位置を示す模式図である。
【符号の説明】
1:束外周部
2:束中間部
3:束中心部

Claims (10)

  1. 容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側−容器内壁間に形成される空間とに仕切られている体液処理器であって、
    PVP−UFRが束外周部よりも束中心部の方が大きい事を特徴とする体液処理器。
  2. さらに、中空糸束中心部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.85以上、アルブミンの篩係数が0.01以下である事を特徴とする請求項1に記載の体液処理器。
  3. 束外周部と束中心部におけるPVP−UFRの差が2以上13以下である事を特徴とする請求項1又は2に記載の体液処理器。
  4. PVP−UFRが束外周部から束中心部へ向けて連続的に大きくなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体液処理器。
  5. 容器に中空糸束が装填され、中空糸内側空間と中空糸外側−容器内壁間に形成される空間とに仕切られている体液処理器であって、
    湿潤状態の中空糸束を、束長手方向前後の差圧が100Pa以上800Pa以下になるように束長手方向に熱風を流して乾燥することにより得られる体液処理器。
  6. 束外周部に存在する中空糸のβ2ミクログロブリンの篩係数が0.7以上、アルブミンの篩係数が0.003以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の体液処理器。
  7. 体液処理器のβ2ミクログロブリンのクリアランスが25ml/min以上、アルブミンの篩係数が0.05以下である請求項1〜6の何れかに記載の体液処理器。
  8. 中空糸がポリスルホン系ポリマーからなる請求項1〜7のいずれかに記載の体液処理器。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の体液処理器の製造方法であって、
    湿潤状態の中空糸束の長手方向前後の差圧が100Pa以上800Pa以下になるように長手方向に熱風を流して乾燥することを特徴とする体液処理器の製造方法。
  10. 熱風を流す前に、マイクロウェーブにより湿潤状態の中空糸束の含水率を10%〜90%にすることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
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