JP2005006689A - 電気洗濯機 - Google Patents

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Shunichi Ishikawa
俊一 石川
Tomohiro Okawa
友弘 大川
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Abstract

【課題】洗濯物の傷みや絡みや洗いむらを軽減する電気洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯兼脱水槽4の内壁に縦長形状の突条4bを設け、洗濯兼脱水槽の中央部に設置した羽根6を静止させた状態で洗濯兼脱水槽を往復回転させて洗濯し、羽根を回転自由な状態にして洗濯兼脱水槽を高速回転させて遠心脱水するように構成した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の電気洗濯機は、洗濯兼脱水槽の中央部に位置させて設置した撹拌翼を左右に往復するように繰り返し回転さて洗濯物に機械力を与えて洗濯を行う構成である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような電気洗濯機は、撹拌翼の回転によって洗濯物が絡み易く、また、洗濯物に部分的に機械力が加わって傷みが発生したり、洗いむらが発生する問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、撹拌翼の径を大きくして該撹拌翼の回転速度を低くし、更に、回転時間を短くするように工夫しているが、撹拌翼を回転させて洗濯物に機械力を作用させていることから、洗濯物の傷みや絡みや洗いむら等を大幅に改善することは困難である。
【0005】
本発明の1つの目的は、洗濯物の傷みや絡みや洗いむらを大幅に低減することができる電気洗濯機を提案することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、このような電気洗濯機を実現するために望ましい構成手段を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、洗濯兼脱水槽と該洗濯兼脱水槽の中央部に位置させて設置した羽根を備え、前記洗濯兼脱水槽に入れた洗濯物を洗い,濯ぎ,脱水する工程を自動的に実行する電気洗濯機において、前記洗濯兼脱水槽の内壁に縦状の複数の突条を設け、前記羽根を固定とした状態で前記洗濯兼脱水槽を右回転−休止−左回転を繰り返すように駆動して洗い,濯ぎを実行することを特徴とする。
【0008】
具体的には、前記洗濯兼脱水槽の内径寸法をDφ,高さ寸法をHとしたときのH/Dφの関係を0.6〜0.8とすると共に、羽根の高さ寸法をhとしたときのh/Hの関係を1.15〜0.25としたことを特徴とする。
【0009】
また、羽根の外径寸法dφとしたときのdφ/Dφの関係を0.6〜0.96とすると共に、洗濯兼脱水槽の内周面に突出させた突条と羽根の外周の間の間隙寸法Wを35〜80mmとしたことを特徴とする。
【0010】
また、洗濯兼脱水槽の回動角度は、洗濯物の量や質によって設定し、30〜150度位の角度で10〜60回往復/毎分するように回転駆動することを特徴とする。
【0011】
また、前記洗濯兼脱水槽は、インバータモータの中空回転軸に結合して回転駆動するように構成し、前記羽根は、前記中空回転軸内を貫通させるように該中空回転軸に支持させた羽根軸の内端に取り付けて設置し、この羽根軸の外端部分に該羽根軸を回転自由/回転不能にする係止機構を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、循環ポンプを設け、洗いおよび濯ぎ中は、洗い水および濯ぎ水を強制循環させることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態を示す全自動電気洗濯機の縦断面図、図2は、この全自動電気洗濯機における洗濯兼脱水槽と羽根の関係を示す縦断側面図、図3および図4は、洗濯(洗い,濯ぎ)工程における洗濯兼脱水槽の回転と洗濯物の挙動の関係を示す平面図、図5および図6は、電動駆動装置の内部機構を示す縦断側面図、図7は、制御系のブロック図、図8は、全自動で行う洗濯および脱水工程のタイムチャート、図9は、洗濯兼脱水槽内壁の突条と羽根の間の間隙と洗浄効果の関係を示す特性図、図10は、洗濯兼脱水槽内壁の突条と羽根の間の間隙と布傷みおよび布絡みの関係を示す特性図である。
【0015】
外槽1は、外枠2の上部の4隅から防振支持装置3によって懸垂支持するように該外枠2内に設置する。この外槽1内に回転可能に設置する洗濯兼脱水槽4は、上縁部に流体バランサー5を備え、内部の中央部に位置させて羽根6が設置され、周壁には多数の脱水穴4aと内側に縦長形状に突出した複数の突条4bを備える。外槽1の底部の外側には、駆動電動機と洗濯脱水の切換機構を内蔵した電動駆動装置7を鋼板製の取り付けベース8を介して取り付け、前記羽根6を静止させた状態で前記洗濯兼脱水槽4を右回転−休止−左回転を繰り返すように駆動し、羽根6を回転自由にした状態で洗濯兼脱水槽4を一方向に連続的に回転させるように駆動する。
【0016】
衣類投入9aを形成した上カバー9は、前記衣類投入口9aを洗濯兼脱水槽4の上方に位置させて、枠体2の上部開口を覆うように該開口の端縁に嵌め込み、フロントパネル10およびバックパネル11と共に取り付けねじ(図示省略)により外枠2に取り付けて設置する。
【0017】
上カバー9の前縁部で、前記フロントパネル10の下側に形成されるフロントパネルボックス12は、電源スイッチと操作スイッチ群と表示素子群を備えた操作パネル13と外槽1内に給水される洗濯水量に応じた水位検出信号を発生する水位センサ14と制御装置15を内蔵する。
【0018】
上カバー9の後縁部で、バックパネル11の下側に形成されるバックパネルボックス16には、給水栓から給水ホース(何れも図示省略)を介して受水する受水口17と注水口18に接続した給水電磁弁19を内蔵する。注水口18は、洗濯兼脱水槽4の開口に向けて放水するように設ける。また、バックパネルボックス16には、更に、必要に応じて、風呂の残り湯を洗濯兼脱水槽4に給水するための風呂水給水ポンプや水道水軟水化装置や洗剤投入装置(何れも図示省略)を設ける。
【0019】
上カバー9に形成した衣類投入口9aは、外蓋20によって開閉自在に覆う。
【0020】
外槽1の底部内側には、洗剤検出センサ21を設置し、この底部に形成した排水口1aは、排水電磁弁22を介して排水ホース23に接続する。また、外槽1の下部にはエアートラップ1bを設け、このエアートラップ1bは、エアーチューブ24を介して前記水位センサ14に接続する。
【0021】
水位センサ14は、給水量(外槽1内の水位)に応じた空気圧により水位を表わす水位検出信号を発生して制御装置15に入力する。
【0022】
また、外槽1の底部には、洗濯中に外槽1内の洗濯水を強制循環する循環ポンプ25を設け、この循環ポンプ25を運転することにより外槽1の底部の洗濯水を吸い出して循環ホース26を介して洗濯兼脱水槽2内へ上側から放水するようにして循環させる。
【0023】
外枠2の下方には、四隅に脚27を取り付けた合成樹脂製のベース28が装着されている。
【0024】
この全自動電気洗濯機は、洗濯工程においては、図3および図4に示すように、羽根6を回転不能に係止して静止させた状態で洗濯兼脱水槽4を左右方向に往復させるように繰り返し回転させる構成である。
【0025】
すなわち、洗濯物29は、図3に示すように、洗濯兼脱水槽4内において該洗濯兼脱水槽4と羽根6の間に位置するように投入する。
【0026】
そして、洗濯工程では、所定の洗濯水位まで給水した後に、図4に示すように、羽根6を回転不能に係止して静止させた状態で洗濯兼脱水槽4を右回転−休止−左回転するように駆動する。
【0027】
洗濯兼脱水槽4が左右方向に往復するように繰り返し回転すると、洗濯兼脱水槽4の内周に突出する突条4bが洗濯物29に該洗濯物29の外周側の広い範囲に回転方向の機械力を作用させる。羽根6は、この洗濯物29の中心(内)側に位置して該洗濯物29の回転を阻止するように作用しているので、洗濯物29には、揉み洗いのような機械力が作用する。
【0028】
このときの洗濯兼脱水槽4の回動角度は、洗濯物26の量や質(種類)によって設定することが望ましく、例えば、軽く洗う衣類については、30〜60度位の角度で10〜30回往復/毎分するように回転させ、木綿類などの肌着類など標準的に洗う衣類については、90度位の角度で20〜50回往復/毎分するように回転させ、ジーンズや作業服などのように汚れが比較的強く付着し、生地的にも強い素材の衣類については、90〜150度位の角度で40〜60回往復/毎分するように駆動するようにすることが望ましい。
【0029】
このように、洗濯兼脱水槽4の回転角度および往復回数を洗濯物29の種類に応じて設定することにより、洗濯物29の広い範囲に揉み洗いするような機械力を作用させて該洗濯物29を洗濯することができ、洗濯物29の傷みや絡みや洗いむらの発生を軽減することができる。また、このように揉み洗いのような機械力を洗濯物29に作用させるためには、洗濯水量は、5リットル/kg(洗濯物重量)程度とすることが望ましく、この洗濯水量は、撹拌翼を回転させることにより発生する水流で洗濯する従来の電気洗濯機に比べて半分程度の少ない量である。
【0030】
しかも、この洗濯工程では、循環ポンプ25を運転して外槽1内の洗濯水を強制循環させることにより、洗濯水も満遍なく洗濯物29に作用させて有効に活用することができ、洗濯水の使用量を半減することができる。
【0031】
洗濯工程を終了した後は、洗濯兼脱水槽1の回転と循環ポンプ25の運転を停止し、排水電磁弁22を開放することにより、洗濯水を排水ホース23を介して機外へ排水する。
【0032】
そして、排水が終了した後は、羽根6を回転可能な状態として洗濯兼脱水槽1を一方向に高速で回転させることにより洗濯物29を回転させ、洗濯物29に含まれる水分を遠心力によって脱水穴4aを通して外槽1内に排出する。
【0033】
このような洗濯および脱水工程を実現するために好適な電動駆動装置7の構成を図5,図6を参照して説明する。
【0034】
この電動駆動装置7は、駆動電動機71として、大きな駆動トルクを出力することができるインバータモータを使用する。この駆動電動機71は、ケース71aの内側に固定子コイル71bを巻装した固定子鉄心71cを嵌着し、外周に磁極用のマグネット71dを設けた回転子鉄心71eを嵌着した中空回転軸71fは、軸受71g,71hによって前記ケース71aに回転可能に取り付けた構成である。
【0035】
中空回転軸71f内には、羽根軸72を貫通させて軸受73a,73bによって回転可能に支持し、内端部分における中空回転軸71fと羽根軸72の間はシール74によって水密状態にする。
【0036】
このように構成した駆動電動機71は、中空回転軸71fおよび羽根軸72の内端部分を外槽1の底を貫通させて該外槽1内に突出させるように取り付けベース8を介して外槽1の底部の外側にねじ止めして取り付け、外槽1と中空回転軸71の間は、シール75によって水密状態にする。
【0037】
中空回転軸71fの内端部には、洗濯兼脱水槽4を嵌着してナット76によって締め付け固定する。また、羽根軸72の内端には、前記洗濯兼脱水槽4内の中央部に位置して底部から起立するように前記羽根6を取り付ける。
【0038】
中空回転軸71fを貫通する羽根軸72の外端部分は、ケース71aを貫通させて駆動電動機71の外側に導出する。そして、この導出部分を作用して、羽根6を回転不能状態とするように羽根軸72を係止し、または、羽根6を回転可能な状態とするように羽根軸72を解放する係止機構77を設置する。
【0039】
羽根軸72には、駆動電動機71の外側への導出部分のケース71aに近い内側部分にセレーション(セレーション軸部)72aを形成し、駆動電動機71のケース71aには、羽根軸72を回転不能に係止するための係止穴71iを形成する。
【0040】
係止機構77は、羽根軸72の導出部分に摺動可能に嵌合させて設けたスライダー77aと、支持部77bによってケース71aに転角可能に取り付けられて前記スライダー77aを羽根軸72の導出部分に沿って摺動させるように操作する操作アーム77cと、この操作アーム77cを駆動して転角させる切り換え駆動装置77dを備える。
【0041】
スライダー77aは、羽根軸72のセレーション軸部72aと対向する位置に摺動したときに該セレーション軸部72aと噛み合うセレーション(セレーション穴部)77eと、前記ケース71aの係止穴71iに嵌入して回り止めする係止突起77fを備える。
【0042】
このように構成した電動駆動装置7は、洗濯工程においては、図5に示すように、スライダー77aのセレーション穴部77eを羽根軸72のセレーション軸部72aに噛み合わせる共に係止突起77fをケース71aの係止穴71iに嵌入して回り止めする位置に摺動させることにより、羽根6を回転不能状態に係止することができる。また、脱水工程においては、図6に示すように、スライダー77aのセレーション穴部77eが羽根軸72のセレーション軸部72aから離れて噛み合いを解く位置に摺動させることにより、羽根6を回転可能状態として洗濯兼脱水槽4と一体的に回転させることができる。
【0043】
この全自動電気洗濯機の制御系を図7を参照して説明する。
【0044】
制御装置15は、マイクロコンピュータと駆動回路を主体にして構成し、操作パネル13に設けた電源スイッチ131を投入することによって動作状態となり、操作スイッチ群132からの指示入力によって設定された洗濯,脱水コースに従って自動洗濯,脱水制御プログラムを実行することにより、水位センサ19からの水位検出信号を参照しながら給水電磁弁19を制御して洗濯水を給水し、洗剤検出センサ21からの洗剤検出信号を参照して洗剤濃度を確認し、電動駆動装置7における係止機構77(切り換え駆動装置77d)を制御することにより羽根6を静止状態/回転可能状態に制御し、駆動電動機71を制御することによって洗濯兼脱水槽4を左右方向に往復回転させ(洗濯工程)、一方向に高速回転させ(脱水工程)、排水電磁弁25を制御して洗濯水を排水し、その進行状態を操作パネル13の表示素子止群133によって表示するように接続する。
【0045】
このように構成した全自動電気洗濯機は、制御装置15による制御処理によって、図8に示すようなは、全自動洗濯および脱水工程を実行する。
【0046】
ステップS101
操作パネル13に設けられた電源スイッチ131が投入され、操作スイッチ群132によって洗濯,脱水コースが設定され、スタートスイッチが押されると、検出工程を実行する。この検出工程では、羽根軸72を係止して羽根6を静止状態とするように係止機構77を制御し、洗濯兼脱水槽4を規定の角度で往復回転させるように駆動電動機71を制御し、そのときの回転負荷を計測して洗濯物29の量を検出(推定)する。そして、検出した洗濯物29の量に応じて該洗濯部29の洗濯に望ましい洗濯水の量〔5リットル/kg(洗濯物重量)程度〕を設定する。
【0047】
ステップS102
給水工程を実行する。この給水工程では、給水電磁弁19を開いて水道水(洗い水)を注水口18から洗濯兼脱水槽4内へ給水する。この給水制御は、水位センサ14から出力される水位検出信号を参照しながら行い、設定量になると給水電磁弁19を閉じる。この給水の途中でも洗濯兼脱水槽4を規定の角度で往復回転させるように駆動電動機71を制御し、そのときの回転負荷を計測して、既に検出している洗濯物29の量を参照して洗濯物29の質を検出(推定)し、洗濯に望ましい洗濯兼脱水槽4の回転角度と往復回数/毎分を設定する。
【0048】
ステップS103
洗い工程を実行する。この洗い工程は、羽根軸72を係止して羽根6を静止状態とするように係止機構77を制御した状態で、洗濯兼脱水槽4を設定された角度で往復回転させるように駆動電動機71を制御する。また、循環ポンプ25を運転して洗い水を循環させる。
【0049】
ステップS104
排水工程へ移行する。排水工程では、排水電磁弁22を開放して外槽1内の洗い水を排水ホース23を通して洗濯機外へ排水する。この排水制御は、排水開始からの時間制御や洗い水の変化を水位センサ14による検出信号の変化を検知して行う。
【0050】
ステップS105
排水が終了すると、洗濯物29に含まれている洗い水を遠心脱水する脱水工程を実行する。この脱水工程では、羽根軸72を解放して羽根4を回転可能状態とするように係止機構77を制御し、洗濯兼脱水槽4を一方向に高速回転させるように駆動電動機71を制御する。このように制御することにより、洗濯兼脱水槽4は、高速回転して洗濯物29を高速回転させ、羽根4も洗濯物29の回転に連れて回転する。
【0051】
ステップS106
濯ぎ水の給水工程を実行する。この給水制御は、洗い水の給水と同様にして行う。
【0052】
ステップS107
濯ぎ工程を実行する。この濯ぎ工程は、基本的には、ステップS103の洗い工程と同様に制御する。
【0053】
ステップS108
濯ぎ水を排水する排水工程を実行する。この排水工程の制御は、ステップS104の排水工程と同様に行う。
【0054】
ステップS109
洗濯物29に含まれている濯ぎ水を遠心脱水する脱水工程を実行する。この脱水工程の制御は、ステップS105の脱水工程と同様に行う。
【0055】
ステップS110
濯ぎ水の給水工程を実行する。この給水工程は、ステップS102の給水工程と同様に制御する。
【0056】
ステップS111
濯ぎ工程を実行する。この濯ぎ工程は、ステップS107の濯ぎ工程と同様に制御する。
【0057】
ステップS112
濯ぎ水を排水する排水工程を実行する。この排水工程は、ステップS104の排水工程と同様に制御する。
【0058】
ステップS113
最終脱水工程を実行する。この最終脱水工程は、洗濯物29に含まれる水分をできるだけ多く脱水するように、前述した脱水工程よりも長い時間をかけて遠心脱水するように制御する。
【0059】
ステップS114
全自動洗濯,脱水工程が終了したことを報知するように操作パネル13の表示素子群133を制御し、終了ブザー(図示省略)を鳴動させる。
【0060】
このような洗濯および脱水において、洗濯物29に付着した汚れを落すための電気洗濯機としての大きな役目は、洗濯物29に有効に機械力を作用させることである。洗濯性能として評価されるものは、洗濯物29が絡まず、傷まず、むらなく良く洗えることの3要素である。しかし、機械力を提供する電気洗濯機においては、良く洗えるようにするためには、大きな機械力を洗濯物29に作用させて該洗濯物29に付着した汚れをむらなく落すことであるが、洗濯物29に大きな機械力を作用させることは、洗濯物29の布傷みや絡みが増大することにもなる。
【0061】
洗濯物29を絡ませず、傷ませず、むらなく良く洗えるようにするために、この実施の形態における全自動電気洗濯機は、洗濯兼脱水槽4と羽根6を好ましい形状に設定し、洗濯兼脱水槽4の往復回転角度や回転周期を制御するように構成している。
【0062】
図2に示すように、洗濯兼脱水槽4の内径寸法Dφと高さ寸法Hの関係も重要な要素である。現在の一般的な電気洗濯機においては、このH/Dφの関係を0.6〜0.8としている。この関係から外れると、洗いむらが発生したり、布傷みや絡みの発生が増大してしまう。
【0063】
しかしながら、この実施の形態では、洗濯兼脱水槽4のH/Dφの関係は、従来の電気洗濯機における値(0.6〜0.8)の範囲を維持しつつ、羽根6の外径寸法dφと高さ寸法hを工夫してh/Hの関係および洗濯兼脱水槽4の内周面に突出させた突条4bと羽根6の外周の間の間隙寸法Wを設定することにより、洗濯物29の布傷みや絡みの発生を抑制しつつ洗いむらがなく良く洗えるように構成した。
【0064】
H/Dφを0.6〜0.8に設定する条件において、洗濯兼脱水槽4の高さ寸法Hと羽根6のh寸法の関係は、h/Hの値が1.15〜0.25の範囲となるようにすることが望ましい。h/Hの値が1.15を越えると、洗濯兼脱水槽4へ洗濯物29を出し入れするときに羽根6が邪魔になって取り扱い性が低下する。また、0.25未満になると、羽根6が低くなって該羽根6から洗濯物29に作用させる静止力が減少して洗濯物29に作用する機械力が低下することにより該洗濯物29の汚れを落す機械的な洗濯機能が低下する。
【0065】
また、洗濯兼脱水槽4の内径寸法Dφと羽根6の外形寸法dφの関係は、dφ/Dφの値が0.6〜0.96であることが望ましいが、羽根6を静止させた状態で洗濯兼脱水槽4を往復回転させ、この洗濯兼脱水槽4の内周側壁に設けた縦長形状の突条4bによって洗濯物29の外側から該洗濯物29に揉み洗いのような機械力を作用させる全自動電気洗濯機においては、突条4bと羽根6の間の間隙の寸法Wが重要である。
【0066】
この間隙寸法Wと洗濯性能の関係を図9と図10に示す試験結果を参照して説明する。
【0067】
図9は、洗濯物29を洗濯したときに、洗濯物29に付着した汚れを落す効果を表わした特性図である。ここで、洗濯物29に付着した汚れを落す性能評価を説明すると、JISに規定されている基準洗濯機で規定の汚れの試料(洗濯物)を洗浄した結果に対し、試験用洗濯機で規定の汚れの試料(洗濯物)を洗ったときの結果を割合で評価するものであり、洗浄比として表わしている。すなわち、洗浄比は、JIS規定の基準洗濯機で規定の汚れの洗濯物を洗ったときの汚れ落ちを分母とし、試験用洗濯機で同じように洗ったときの汚れ落ちを分子として計算された値であって、試験用洗濯機の洗浄力を評価するものである。
【0068】
この洗浄比は、一般的には、0.8以上の値であれば、洗濯物29に付着した汚れを支障無い程度に落すことができる電気洗濯機と評価することができる値である。また、この洗浄比は、1.0以上と高い程汚れ落ちが良くなり電気洗濯機の洗浄性能としての満足度が高くなるが、撹拌翼を回転させて洗濯する従来のパルセータ方式の電気洗濯機では、撹拌翼から洗濯物29に作用させる機械力を大きくしなければならないことから、洗濯物29の傷みが大きくなる傾向にある。
【0069】
この実施の形態における全自動電気洗濯機では、間隙寸法Wを35〜80mmとすることにより、0.8以上の洗浄比を得ることができる。35mm未満や80mmを越えた間隙寸法では、洗浄力が悪くなる傾向にある。
【0070】
これは、35mm未満では、洗濯物29が大きな抵抗となって洗濯時に該洗濯物29の動きが悪くなることから、洗濯物29を揉み洗いするように作用する機械力が低下して洗浄力が悪くなるものである。また、間隙寸法Wが80mm以上になると、洗濯物29が過度に動き易くなって突条4bと羽根6から逃げ易くなることから、洗濯物29を揉み洗いするように作用する機械力が低下して洗浄力が悪くなるものである。
【0071】
図10は、布傷みと布絡みを表わした特性図である。布傷みは、間隙寸法Wが35mm未満になると大きくなる。これは、洗濯物29が突条4bと羽根6の間に強く挟まれるようになることが原因である。特に、間隙寸法Wが25mm以下になると、布の破れが発生する現象が見られる程に急激に大きくなる。布絡みは、洗濯兼脱水槽4の回転に連れて洗濯物29が回転することにより発生する現象であり、間隙寸法Wの増加に連れて徐々に増大するような略比例関係にあることから、洗浄力および布傷みの関係を考慮すると、間隙寸法Wは、35mm〜80mmとすることが望ましい。
【0072】
【発明の効果】
本発明の電気洗濯機は、洗濯兼脱水槽の中央部に位置させて設置した羽根を静止させた状態で洗濯兼脱水槽を往復回転させて洗濯物を洗濯するようにしたので、洗濯物の傷みや絡みや洗いむらを大幅に低減することができる。
【0073】
また、このような電気洗濯機を実現するために好ましい洗濯兼脱水槽,羽根,電動駆動装置,制御装置を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す全自動電気洗濯機の縦断面図である。
【図2】この全自動電気洗濯機における洗濯兼脱水槽と羽根の関係を示す縦断側面図である。
【図3】洗濯(洗い,濯ぎ)工程における洗濯兼脱水槽の回転と洗濯物の挙動の関係を示す平面図であり、洗濯兼脱水槽が静止した状態を示している。
【図4】洗濯(洗い,濯ぎ)工程における洗濯兼脱水槽の回転と洗濯物の挙動の関係を示す平面図であり、洗濯兼脱水槽が回転した状態を示している。
【図5】電動駆動装置の内部機構を示す縦断側面図であり、洗濯工程にある状態を示している。
【図6】電動駆動装置の内部機構を示す縦断側面図であり、脱水工程にある状態を示している。
【図7】制御系のブロック図である。
【図8】全自動で行う洗濯および脱水工程のタイムチャートである。
【図9】洗濯兼脱水槽内壁の突条と羽根の間の間隙と洗浄効果の関係を示す特性図である。
【図10】洗濯兼脱水槽内壁の突条と羽根の間の間隙と布傷みおよび布絡みの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
4…洗濯兼脱水槽、4b…突条、6…羽根、7…電動駆動装置、15…制御装置、25…循環ポンプ、71…駆動電動機、72…係止機構。

Claims (7)

  1. 洗濯兼脱水槽と該洗濯兼脱水槽の中央部に位置させて設置した羽根を備え、前記洗濯兼脱水槽に入れた洗濯物を洗い,濯ぎ,脱水する工程を自動的に実行する電気洗濯機において、
    前記洗濯兼脱水槽の内壁に縦状の複数の突条を設け、前記羽根を固定とした状態で前記洗濯兼脱水槽を右回転−休止−左回転を繰り返すように駆動して洗い,濯ぎを実行することを特徴とする電気洗濯機。
  2. 請求項1において、前記洗濯兼脱水槽の内径寸法をDφ,高さ寸法をHとしたときのH/Dφの関係を0.6〜0.8とすると共に、羽根の高さ寸法をhとしたときのh/Hの関係を1.15〜0.25としたことを特徴とする電気洗濯機。
  3. 請求項2において、羽根の外径寸法dφとしたときのdφ/Dφの関係を0.6〜0.96とすると共に、洗濯兼脱水槽の内周面に突出させた突条と羽根の外周の間の間隙寸法Wを35〜80mmとしたことを特徴とする電気洗濯機。
  4. 請求項1〜3の1項において、洗濯兼脱水槽の回動角度は、洗濯物の量や質によって設定することを特徴とする電気洗濯機。
  5. 請求項4において、洗濯兼脱水槽は、30〜150度位の角度で10〜60回往復/毎分するように回転駆動することを特徴とする電気洗濯機。
  6. 請求項1〜5の1項において、前記洗濯兼脱水槽は、インバータモータの中空回転軸に結合して回転駆動するように構成し、前記羽根は、前記中空回転軸内を貫通させるように該中空回転軸に支持させた羽根軸の内端に取り付けて設置し、この羽根軸の外端部分に該羽根軸を回転自由/回転不能にする係止機構を設けたことを特徴とする電気洗濯機。
  7. 請求項1〜6の1項において、循環ポンプを設け、洗いおよび濯ぎ中は、洗い水および濯ぎ水を強制循環させることを特徴とする電気洗濯機。
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