JP2005005056A - 走査電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】生物試料のカソードルミネッセンス像観察において褪色現象を無くし、2次電子像との同時観察を可能とする。
【解決手段】対物レンズ4の下面に配置されたカソードルミネッセンス検出用集光ミラー10を、低真空雰囲気2次電子増幅用電極と兼用する。
【選択図】 図1
【解決手段】対物レンズ4の下面に配置されたカソードルミネッセンス検出用集光ミラー10を、低真空雰囲気2次電子増幅用電極と兼用する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低真空雰囲気下で生物、特に染色体試料や含水試料のカソードルミネッセンス像と2次電子像を観察できる走査電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
低真空雰囲気型走査電子顕微鏡(以下、低真空雰囲気型SEMという)は、試料室と電子銃室を差動排気方式とし、観察試料を挿入する試料室と電子銃室を別々に排気する専用の排気装置を有し、試料室を低真空化可能な構造としており、電子銃部を高真空状態、試料室内を低真空雰囲気状態として試料の像を観察できる。高真空下での2次電子検出器は試料より発生した2次電子を検出器に取入れるため約10kV程度の後段印加電圧を検出器に印加しているが、試料室が低真空雰囲気(10〜1,000Pa)である場合は、2次電子検出器の後段印加電圧により試料室内で放電現象が発生してしまう。このため、低真空雰囲気SEM用検出器として反射電子検出器が装備されてきたが、試料より発生した反射電子が残留気体分子により散乱を受けてしまうため反射電子検出器では10〜300Pa程度の領域でしか鮮明な画像が得ることができない。
【0003】
しかし、最近、低真空雰囲気の試料室内残留気体分子を利用して2次電子を増幅させ、吸収電流として取り込み、画像を形成する検出器の利用が進んでいる。この原理については、”Secondary Electron Imaging In the Variable Pressure Scanning Electron Microscope”, Scanning 20, 436−441 (1998)に記載されている。この手法を用いることにより300〜1,000Pa程度の領域で鮮明な画像が得られる。この検出器の具体例としては、試料より発生した2次電子を捕集するために、対物レンズ周辺に+数100Vの電圧を印加する電極を設置する。試料より発生した2次電子は電極方向に加速され、残留気体分子と衝突する。2次電子と衝突した残留気体分子はイオン化し、イオン化した2次電子情報を持った(+)イオンは、電極により試料方向にドリフトし、吸収電流として検出される。検出された(+)イオンは2次電子の情報を持っていることから、この吸収電流から得られた画像は2次電子像と等価な画像となる。
【0004】
また、カソードルミネッセンス像は、試料より発生した微弱な光を集光ミラーにより集光した後、オプティカルファイバーなどによって検出器に伝達することにより得られる。一般に集光ミラーは、透過カソードルミネッセンス検出器の場合を除き、試料上方(対物レンズ下)に設置される。従って、カソードルミネッセンス像を観察する場合は、2次電子増幅用の電極と、試料の間に集光ミラーが位置することになる。このため、2次電子増幅用の電極による電界が試料上では弱くなり十分に2次電子が増幅できなくなる。この結果、低真空雰囲気下では鮮明な2次電子像が観察出来なくなる。このため、2次電子像観察時は電界を弱めないように集光ミラーを試料上より移動させて観察していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、カソードルミネッセンスを検出するために集光ミラーにより低真空雰囲気下で2次電子を増幅させるための電界が弱められてしまうためカソードルミネッセンス像と2次電子像を同時に検出できない。このため下記の問題が発生する。
【0006】
カソードルミネッセンス像は試料中の発光の分布を表す像であり、その特性上、試料の形状を表す像ではない。従って、試料中の発光部位を正確に判断するためには、形状を正確に表す2次電子像および、2次電子像と同一視野のカソードルミネッセンス像の併用が不可欠であり、1視野につきカソードルミネッセンス像と2次電子像の2つの像が必要である。しかし、従来技術では、カソードルミネッセンス像と2次電子像を同時に検出できないため、2つの画像取得のために電子線を試料上で少なくとも2回以上走査しなければならない。また、各々の画像取得の際には必ず集光ミラーの移動操作が伴うことになる。
【0007】
このため、電子線照射によるダメージに弱い試料の場合には、画像取得が困難となる問題がある。特に、生体試料等、極端に電子線照射によるダメージに弱い試料の場合には、1回の電子線走査でカソードルミネッセンスが発生しなくなる、あるいは形状が変化する場合があり、従来技術では像を得ることができないという問題がある。
【0008】
また、上記カソードルミネッセンス像と2次電子像は正確に同一視野であることが望ましい。同一視野の像を得るためには、電子線の照射位置ドリフト、試料の位置ドリフトの影響をできるだけ抑える必要があり、高倍率の像になるほどこれらの影響を抑えることが重要となる。しかし、従来技術では1つの視野につき必ず複数回の電子線走査が必要であるため、電子線の位置ドリフトがあると電子線の走査ごとに視野が変ってしまうことになる。
【0009】
また、集光ミラーの有無で電子線照射位置はわずかにずれるため、集光ミラーの移動操作を伴う従来技術では正確に同一視野の画像を得ることはできない。また、チャージアップし易い試料を観察する場合は、チャージアップにより電子線照射位置ずれが発生するため、複数回の電子線走査が必要である従来技術では画面像間で視野ずれが発生し易くなる。試料台への固定が困難で、両面粘着テープなどの不安定な固定方法を採らざるを得ない試料の場合、試料自体の位置が時間経過とともにずれる場合があり、この場合も従来技術では画面像間で視野ずれが発生し易くなる。さらに、従来技術は複数回の電子線走査が必要であるため、画像取得に時間がかかること、必ず集光ミラーの移動操作が伴うことも使い勝手の点から問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を無くし、低真空雰囲気下においてカソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを引出すこと無くカソードルミネッセンス像と2次電子像観察を同時に観察できる装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明では、カソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを2次電子像観察用(2次電子増幅用)の電極と兼用することによって上記目的を達成する。
すなわち、本発明の走査電子顕微鏡は、電子銃と、電子銃から発生された電子線を試料上に走査するための偏向コイルと、低真空雰囲気下で電子線の照射により試料から発生した2次電子を増幅するための電極と、電子線の照射により試料から発生したカソードルミネッセンスを集光するための集光ミラーを備え、2次電子を増幅するための電極が集光ミラーを兼ねることを特徴とする。
【0012】
カソードルミネッセンスに基づく信号と前記2次電子に基づく信号とは、同時にデジタル画像化し表示することができる。また、カソードルミネッセンスに基づいて形成した画像と、2次電子に基づいて形成した画像とをリアルタイムで重ね合わせて表示するのが好ましい。
【0013】
試料の2次電子像は、吸収電流に基づいて形成してもよいし、2次電子を増幅するための電極に入射した2次電子の検出信号に基づいて形成してもよい。試料のカソードルミネッセンス像は、集光ミラーで集光したカソードルミネッセンスを分光器で分光した検出信号に基づいて形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による低真空雰囲気型SEMの一例を示す概略図であり、カソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを反射面を鏡面とした金属製のミラーとし、2次電子増幅用電極を兼用するようにしたものである。図2は、試料と集光ミラーの付近の拡大図である。
【0015】
電子銃1から取り出された電子ビーム2は、収束レンズ3によって収束され、走査電源5に接続された偏向コイル6によって試料7上で走査される。電子線の照射によって試料7からは、2次電子、反射電子、特性X線、光などの信号が発生する。通常、高真空SEMでは観察時には2次電子を2次電子検出器8で検出するが、低真空雰囲気型SEMは試料室圧力を10Pa〜1,000Pa程度と低真空にするために2次電子検出器に用いる後段加速電圧の高電圧が印加できない。このため、検出する信号は残留気体分子を利用した2次電子または、反射電子となる。試料から発生した2次電子9は、電極電源18から+数100Vの電圧が印加されている光検出用の集光ミラー10側に加速される。加速された2次電子9は低真空雰囲気中の残留気体分子11と衝突し、(+)イオン12が発生する。発生した(+)イオン12は反射ミラー(電極)10に印加された+数100Vの電圧により電極とは反対側の試料7方向に加速される。また、2次電子9はさらに電極により電極方向に加速され、残留気体分子11との衝突を繰り返し、階層的に(+)イオン12が発生し、発生した(+)イオン12は試料7の方向に加速される。試料7の方向に加速された(+)イオン12は、最終的に試料7に吸収されて試料電流として検出される。検出された2次電子信号(吸収電流)は吸収電流用電流−電圧変換回路26で電圧に変換され吸収電流信号増幅器13で増幅され、増幅された信号は映像信号選択回路14を通してCRT15の輝度変調端子に入力され、2次電子信号(吸収電流)による走査像が観察できるようになっている。
【0016】
また、反射ミラー10に収集された2次電子は2次電子用電流−電圧変換回路28で電圧に変換され2次電子信号増幅器27で増幅され、増幅された信号は映像信号選択回路14を通してCRT15の輝度変調端子に入力され、2次電子信号による走査像が観察できるようになっている。つまり、試料の2次電子信号に基づく走査像としては、吸収電流による走査像又は反射ミラー(電極)10に入射した2次電子による走査像を映像信号選択回路14で選択してCRT15に表示できるようになっている。
【0017】
また、電子線の照射によって試料7からは光が発生する。この光は対物レンズ4と試料7の間に位置する2次電子増幅用の電極を兼用した集光ミラー10で集光され、集光ミラー10下方に設置したオプティカルファイバー16を介して分光計17に送られる。分光計17からのアナログ信号はアナログ/デジタル変換器20より画像メモリ21を介して画像演算手段22に入力され、表示用メモリ23を介してCRT19にカソードルミネッセンス像が表示される。また、映像信号選択回路14によって選択された低真空雰囲気型SEMの2次電子像、反射電子像等の画像信号は、アナログ/デジタル変換器24より画像メモリ25を介して画像演算手段22に入力され、表示用メモリ23を介してCRT19に表示される。画像演算手段22によりカソードルミネッセンス像と2次電子像をリアルタイムで重ね合わせ、CRT19に表示することができる。
【0018】
図3は、本発明の低真空雰囲気型SEMによる観察像の例を示す図である。図3(a)は試料の2次電子像の例、図3(b)はカソードルミネッセンス像の例、図3(c)は2次電子像とカソードルミネッセンス像の重ね合わせ像の例である。2次電子像は試料の形状情報を有するが、カソードルミネッセンスの情報を含まない。また、カソードルミネッセンス像には試料における発光の分布が表れているが、試料の形状についての情報が欠けている。そして、図3(c)に示すように試料の2次電子像とカソードルミネッセンス像を重ね合わせて表示することにより、試料の形状とカソードルミネッセンスの分布を同時に観察することができ、試料中のどの部位が発光しているかを正確に知ることができる。このように、本発明の低真空雰囲気SEMは、生物、特に染色体試料や含水試料のカソードルミネッセンス像と2次電子像を一度に取得し、2つの像を重ね合わせて表示することができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、検出したカソードルミネッセンスに基づいて形成した像と、2次電子に基づいて形成した像を同時にデジタル画像化し、重ね合わせて表示することができる。さらに、集光ミラーの抜差しすることなくカソードルミネッセンス像と2次電子像を取得できるので、操作性を向上し、観察試料が褪色することなく同じ視野を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による低真空雰囲気型SEMの一例を示す概略図。
【図2】試料と集光ミラーの付近の拡大図。
【図3】本発明の低真空雰囲気型SEMによる観察像の例を示す図。
【符号の説明】
1…電子銃、2…電子ビーム、3…収束レンズ、4…対物レンズ、5…走査電源、6…偏向コイル、7…試料、8…2次電子検出器、9…2次電子、10…集光ミラー、11…残留気体分子、12…(+)イオン、13…吸収電流用信号増幅器、14…映像信号選択回路、15…CRT、16…オプティカルファイバー、17…分光器、18…電極電源、19…CRT、20…アナログ/デジタル変換器、21…画像メモリ、22…画像演算手段、23…表示用メモリ、24…アナログ/デジタル変換器、25…画像メモリ、26…吸収電流用電流−電圧変換回路、27…2次電子用信号増幅器、28…2次電子用電流−電圧変換回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、低真空雰囲気下で生物、特に染色体試料や含水試料のカソードルミネッセンス像と2次電子像を観察できる走査電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
低真空雰囲気型走査電子顕微鏡(以下、低真空雰囲気型SEMという)は、試料室と電子銃室を差動排気方式とし、観察試料を挿入する試料室と電子銃室を別々に排気する専用の排気装置を有し、試料室を低真空化可能な構造としており、電子銃部を高真空状態、試料室内を低真空雰囲気状態として試料の像を観察できる。高真空下での2次電子検出器は試料より発生した2次電子を検出器に取入れるため約10kV程度の後段印加電圧を検出器に印加しているが、試料室が低真空雰囲気(10〜1,000Pa)である場合は、2次電子検出器の後段印加電圧により試料室内で放電現象が発生してしまう。このため、低真空雰囲気SEM用検出器として反射電子検出器が装備されてきたが、試料より発生した反射電子が残留気体分子により散乱を受けてしまうため反射電子検出器では10〜300Pa程度の領域でしか鮮明な画像が得ることができない。
【0003】
しかし、最近、低真空雰囲気の試料室内残留気体分子を利用して2次電子を増幅させ、吸収電流として取り込み、画像を形成する検出器の利用が進んでいる。この原理については、”Secondary Electron Imaging In the Variable Pressure Scanning Electron Microscope”, Scanning 20, 436−441 (1998)に記載されている。この手法を用いることにより300〜1,000Pa程度の領域で鮮明な画像が得られる。この検出器の具体例としては、試料より発生した2次電子を捕集するために、対物レンズ周辺に+数100Vの電圧を印加する電極を設置する。試料より発生した2次電子は電極方向に加速され、残留気体分子と衝突する。2次電子と衝突した残留気体分子はイオン化し、イオン化した2次電子情報を持った(+)イオンは、電極により試料方向にドリフトし、吸収電流として検出される。検出された(+)イオンは2次電子の情報を持っていることから、この吸収電流から得られた画像は2次電子像と等価な画像となる。
【0004】
また、カソードルミネッセンス像は、試料より発生した微弱な光を集光ミラーにより集光した後、オプティカルファイバーなどによって検出器に伝達することにより得られる。一般に集光ミラーは、透過カソードルミネッセンス検出器の場合を除き、試料上方(対物レンズ下)に設置される。従って、カソードルミネッセンス像を観察する場合は、2次電子増幅用の電極と、試料の間に集光ミラーが位置することになる。このため、2次電子増幅用の電極による電界が試料上では弱くなり十分に2次電子が増幅できなくなる。この結果、低真空雰囲気下では鮮明な2次電子像が観察出来なくなる。このため、2次電子像観察時は電界を弱めないように集光ミラーを試料上より移動させて観察していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、カソードルミネッセンスを検出するために集光ミラーにより低真空雰囲気下で2次電子を増幅させるための電界が弱められてしまうためカソードルミネッセンス像と2次電子像を同時に検出できない。このため下記の問題が発生する。
【0006】
カソードルミネッセンス像は試料中の発光の分布を表す像であり、その特性上、試料の形状を表す像ではない。従って、試料中の発光部位を正確に判断するためには、形状を正確に表す2次電子像および、2次電子像と同一視野のカソードルミネッセンス像の併用が不可欠であり、1視野につきカソードルミネッセンス像と2次電子像の2つの像が必要である。しかし、従来技術では、カソードルミネッセンス像と2次電子像を同時に検出できないため、2つの画像取得のために電子線を試料上で少なくとも2回以上走査しなければならない。また、各々の画像取得の際には必ず集光ミラーの移動操作が伴うことになる。
【0007】
このため、電子線照射によるダメージに弱い試料の場合には、画像取得が困難となる問題がある。特に、生体試料等、極端に電子線照射によるダメージに弱い試料の場合には、1回の電子線走査でカソードルミネッセンスが発生しなくなる、あるいは形状が変化する場合があり、従来技術では像を得ることができないという問題がある。
【0008】
また、上記カソードルミネッセンス像と2次電子像は正確に同一視野であることが望ましい。同一視野の像を得るためには、電子線の照射位置ドリフト、試料の位置ドリフトの影響をできるだけ抑える必要があり、高倍率の像になるほどこれらの影響を抑えることが重要となる。しかし、従来技術では1つの視野につき必ず複数回の電子線走査が必要であるため、電子線の位置ドリフトがあると電子線の走査ごとに視野が変ってしまうことになる。
【0009】
また、集光ミラーの有無で電子線照射位置はわずかにずれるため、集光ミラーの移動操作を伴う従来技術では正確に同一視野の画像を得ることはできない。また、チャージアップし易い試料を観察する場合は、チャージアップにより電子線照射位置ずれが発生するため、複数回の電子線走査が必要である従来技術では画面像間で視野ずれが発生し易くなる。試料台への固定が困難で、両面粘着テープなどの不安定な固定方法を採らざるを得ない試料の場合、試料自体の位置が時間経過とともにずれる場合があり、この場合も従来技術では画面像間で視野ずれが発生し易くなる。さらに、従来技術は複数回の電子線走査が必要であるため、画像取得に時間がかかること、必ず集光ミラーの移動操作が伴うことも使い勝手の点から問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を無くし、低真空雰囲気下においてカソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを引出すこと無くカソードルミネッセンス像と2次電子像観察を同時に観察できる装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明では、カソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを2次電子像観察用(2次電子増幅用)の電極と兼用することによって上記目的を達成する。
すなわち、本発明の走査電子顕微鏡は、電子銃と、電子銃から発生された電子線を試料上に走査するための偏向コイルと、低真空雰囲気下で電子線の照射により試料から発生した2次電子を増幅するための電極と、電子線の照射により試料から発生したカソードルミネッセンスを集光するための集光ミラーを備え、2次電子を増幅するための電極が集光ミラーを兼ねることを特徴とする。
【0012】
カソードルミネッセンスに基づく信号と前記2次電子に基づく信号とは、同時にデジタル画像化し表示することができる。また、カソードルミネッセンスに基づいて形成した画像と、2次電子に基づいて形成した画像とをリアルタイムで重ね合わせて表示するのが好ましい。
【0013】
試料の2次電子像は、吸収電流に基づいて形成してもよいし、2次電子を増幅するための電極に入射した2次電子の検出信号に基づいて形成してもよい。試料のカソードルミネッセンス像は、集光ミラーで集光したカソードルミネッセンスを分光器で分光した検出信号に基づいて形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による低真空雰囲気型SEMの一例を示す概略図であり、カソードルミネッセンス検出用の集光ミラーを反射面を鏡面とした金属製のミラーとし、2次電子増幅用電極を兼用するようにしたものである。図2は、試料と集光ミラーの付近の拡大図である。
【0015】
電子銃1から取り出された電子ビーム2は、収束レンズ3によって収束され、走査電源5に接続された偏向コイル6によって試料7上で走査される。電子線の照射によって試料7からは、2次電子、反射電子、特性X線、光などの信号が発生する。通常、高真空SEMでは観察時には2次電子を2次電子検出器8で検出するが、低真空雰囲気型SEMは試料室圧力を10Pa〜1,000Pa程度と低真空にするために2次電子検出器に用いる後段加速電圧の高電圧が印加できない。このため、検出する信号は残留気体分子を利用した2次電子または、反射電子となる。試料から発生した2次電子9は、電極電源18から+数100Vの電圧が印加されている光検出用の集光ミラー10側に加速される。加速された2次電子9は低真空雰囲気中の残留気体分子11と衝突し、(+)イオン12が発生する。発生した(+)イオン12は反射ミラー(電極)10に印加された+数100Vの電圧により電極とは反対側の試料7方向に加速される。また、2次電子9はさらに電極により電極方向に加速され、残留気体分子11との衝突を繰り返し、階層的に(+)イオン12が発生し、発生した(+)イオン12は試料7の方向に加速される。試料7の方向に加速された(+)イオン12は、最終的に試料7に吸収されて試料電流として検出される。検出された2次電子信号(吸収電流)は吸収電流用電流−電圧変換回路26で電圧に変換され吸収電流信号増幅器13で増幅され、増幅された信号は映像信号選択回路14を通してCRT15の輝度変調端子に入力され、2次電子信号(吸収電流)による走査像が観察できるようになっている。
【0016】
また、反射ミラー10に収集された2次電子は2次電子用電流−電圧変換回路28で電圧に変換され2次電子信号増幅器27で増幅され、増幅された信号は映像信号選択回路14を通してCRT15の輝度変調端子に入力され、2次電子信号による走査像が観察できるようになっている。つまり、試料の2次電子信号に基づく走査像としては、吸収電流による走査像又は反射ミラー(電極)10に入射した2次電子による走査像を映像信号選択回路14で選択してCRT15に表示できるようになっている。
【0017】
また、電子線の照射によって試料7からは光が発生する。この光は対物レンズ4と試料7の間に位置する2次電子増幅用の電極を兼用した集光ミラー10で集光され、集光ミラー10下方に設置したオプティカルファイバー16を介して分光計17に送られる。分光計17からのアナログ信号はアナログ/デジタル変換器20より画像メモリ21を介して画像演算手段22に入力され、表示用メモリ23を介してCRT19にカソードルミネッセンス像が表示される。また、映像信号選択回路14によって選択された低真空雰囲気型SEMの2次電子像、反射電子像等の画像信号は、アナログ/デジタル変換器24より画像メモリ25を介して画像演算手段22に入力され、表示用メモリ23を介してCRT19に表示される。画像演算手段22によりカソードルミネッセンス像と2次電子像をリアルタイムで重ね合わせ、CRT19に表示することができる。
【0018】
図3は、本発明の低真空雰囲気型SEMによる観察像の例を示す図である。図3(a)は試料の2次電子像の例、図3(b)はカソードルミネッセンス像の例、図3(c)は2次電子像とカソードルミネッセンス像の重ね合わせ像の例である。2次電子像は試料の形状情報を有するが、カソードルミネッセンスの情報を含まない。また、カソードルミネッセンス像には試料における発光の分布が表れているが、試料の形状についての情報が欠けている。そして、図3(c)に示すように試料の2次電子像とカソードルミネッセンス像を重ね合わせて表示することにより、試料の形状とカソードルミネッセンスの分布を同時に観察することができ、試料中のどの部位が発光しているかを正確に知ることができる。このように、本発明の低真空雰囲気SEMは、生物、特に染色体試料や含水試料のカソードルミネッセンス像と2次電子像を一度に取得し、2つの像を重ね合わせて表示することができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、検出したカソードルミネッセンスに基づいて形成した像と、2次電子に基づいて形成した像を同時にデジタル画像化し、重ね合わせて表示することができる。さらに、集光ミラーの抜差しすることなくカソードルミネッセンス像と2次電子像を取得できるので、操作性を向上し、観察試料が褪色することなく同じ視野を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による低真空雰囲気型SEMの一例を示す概略図。
【図2】試料と集光ミラーの付近の拡大図。
【図3】本発明の低真空雰囲気型SEMによる観察像の例を示す図。
【符号の説明】
1…電子銃、2…電子ビーム、3…収束レンズ、4…対物レンズ、5…走査電源、6…偏向コイル、7…試料、8…2次電子検出器、9…2次電子、10…集光ミラー、11…残留気体分子、12…(+)イオン、13…吸収電流用信号増幅器、14…映像信号選択回路、15…CRT、16…オプティカルファイバー、17…分光器、18…電極電源、19…CRT、20…アナログ/デジタル変換器、21…画像メモリ、22…画像演算手段、23…表示用メモリ、24…アナログ/デジタル変換器、25…画像メモリ、26…吸収電流用電流−電圧変換回路、27…2次電子用信号増幅器、28…2次電子用電流−電圧変換回路
Claims (3)
- 電子銃と、前記電子銃から発生された電子線を試料上に走査するための偏向コイルと、低真空雰囲気下で前記電子線の照射により試料から発生した2次電子を増幅するための電極と、前記電子線の照射により試料から発生したカソードルミネッセンスを集光するための集光ミラーとを備える走査電子顕微鏡において、
前記2次電子を増幅するための電極が前記集光ミラーを兼ねていることを特徴とする走査電子顕微鏡。 - 請求項1記載の走査電子顕微鏡において、前記カソードルミネッセンスに基づく信号と前記2次電子に基づく信号とを同時にデジタル画像化し表示することを特徴とする走査電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査電子顕微鏡において、画像表示装置を備え、前記画像表示装置に、前記カソードルミネッセンスに基づいて形成した画像と、前記2次電子に基づいて形成した画像とをリアルタイムで重ね合わせて表示することを特徴とする走査電子顕微鏡。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003165472A JP2005005056A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 走査電子顕微鏡 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003165472A JP2005005056A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 走査電子顕微鏡 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005005056A true JP2005005056A (ja) | 2005-01-06 |
Family
ID=34091945
Family Applications (1)
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---|---|---|---|---|
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-
2003
- 2003-06-10 JP JP2003165472A patent/JP2005005056A/ja active Pending
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