JP2005001946A - 有機化マイカの製造方法 - Google Patents

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俊一 太田
Kiyoshi Umeyama
潔 梅山
Takeyoshi Hayashi
剛芳 林
Shinzo Higuchi
信三 樋口
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Abstract

【課題】反応生成物中にハロゲン化物等を含まず、洗浄工程が不要な有機化マイカの製造方法を提供する。
【解決手段】膨潤性マイカの水懸濁液を非ハロゲン系の酸によりpH4以下、好ましくは3以下とし、これに一級〜三級アルキルアミン、好ましくは三級アルキルアミンを添加して、該アルキルアミンがカチオン化したアンモニウムイオンを該膨潤性マイカの層間に導入する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化マイカの製造方法、特に反応生成物中にハロゲン化物等を含まず、洗浄工程が不要な有機化マイカの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂の物理的強度や耐熱性等の機能を向上させるために、樹脂中に層状ケイ酸塩を分散させたクレー・ポリマーナノコンポジットと称される樹脂組成物がある。層状ケイ酸塩による樹脂の機能性向上には、層状ケイ酸塩を樹脂中に良好に分散させることが非常に重要であると考えられているが、層状ケイ酸塩は極性が高いため、一般に樹脂との親和性に乏しく、良好に分散させることは難しい。そこで、このような層状ケイ酸塩の樹脂との相溶性、分散性を改善するために、有機変性層状ケイ酸塩が用いられている。
【0003】
ナノコンポジット用有機変性層状ケイ酸塩は、オニウム塩、特に四級アンモニウム塩を用いて、水中で膨潤性層状ケイ酸塩の層間にイオン交換反応により挿入することが一般に行われている。四級アンモニウム塩が用いられるのは、ナノコンポジット化する樹脂マトリックスとの相溶性を高めるのに適当なものを選択することができるためである。また、アンモニウム塩の対イオンとしては、ハロゲンイオン、特に塩素イオンが最も汎用されているが、それは水に対する溶解性が高く、また安価なためである。
また、粘土鉱物の層間にイオン化した有機化合物を効果的に導入するため、反応液のpHをイオン化し得る有機化合物のpKaより低くなるようにpHを制御する方法も報告されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−297917号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハロゲンイオンを対イオンとする四級アンモニウム塩を有機変性剤として用いた場合には、四級アンモニウムイオンが層状ケイ酸塩の層間イオンとのイオン交換によって層間に挿入され、ハロゲンを含む塩類が副生する。ハロゲン化物は、これを配合する製品において悪影響を及ぼすことがあり、例えば、樹脂製品においてはその耐候性を阻害することがある。
【0006】
従って、ナノコンポジット材料への使用に際しては、水で繰り返し洗浄して副生した塩類を除去する洗浄工程が一般的に行われているが、これがコストや生産性を著しく悪化させていた。また、除去される塩のコストは原料コストに含まれるので、割高で無駄があった。さらに、洗浄排水が大量に排出され、環境負荷も大きかった。対イオンとして酢酸イオン等の有機性アニオンを含むオニウム塩も市販されているが、これらはコスト的に割高であった。
有機変性層状ケイ酸塩の生産性やコストは、これを用いた製品にも跳ね返るので、反応生成物中に有害なハロゲン化物を含まずに、効率的に有機変性層状ケイ酸塩を製造することが望まれていた。
【0007】
一方、上記特許文献1の方法は、用いる粘土鉱物からの無機イオン溶出を避けるため、イオン化し得る有機化合物を予め無機酸で処理し、これをアルカリ性の粘土鉱物分散液Aと混合するものであるが、この方法では混合時に急激なpH変化を生じ、場合によってはアミンの凝集を引き起こすことがあった。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ハロゲン化物を副生せず、層間に有機イオンを簡便且つ効率的に導入することができる有機変性層状ケイ酸塩の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、ホストとなる膨潤性層状ケイ酸塩としてマイカを、有機変性剤として四級アンモニウム塩等の代わりに一級〜三級アルキルアミンを用い、マイカ懸濁液のpHを非ハロゲン系の酸によりpH4以下に調整してから、該アルキルアミンを添加すれば、カチオン化したアルキルアミンがマイカ層間に効率的に挿入され、ハロゲン化物の副生もないことを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明にかかる有機化マイカの製造方法は、膨潤性マイカの水懸濁液を非ハロゲン系の酸によりpH4以下とし、これに一級〜三級アルキルアミンを添加して、該アルキルアミンがカチオン化したアンモニウムイオンを該膨潤性マイカの層間に導入することを特徴とする。
本発明において、前記アルキルアミンが三級アルキルアミンであることが好適である。
また、本発明において、膨潤性マイカ水懸濁液をpH3以下とすることが好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる製造方法では、膨潤性マイカ懸濁液のpHを非ハロゲン系の酸により4以下とし、これに一級〜三級アルキルアミンを添加・混合することにより有機化マイカが得られる。
具体的に一例を挙げて説明すると、膨潤性マイカを水中に分散させ、攪拌しながら十分に膨潤させ、マイカ懸濁液を調製する。膨潤には6時間以上攪拌あるいは放置することが好適である。また、膨潤の際には懸濁液を加温(100℃以下)すると膨潤が促進されるので好ましい。
マイカ懸濁液は、通常アルカリ性を示すが、本発明ではこれに非ハロゲン系の酸を添加し、pHが4以下、好ましくは3以下の酸性懸濁液とする。
【0011】
この酸性懸濁液を攪拌しながら、アルキルアミンを添加し、反応させる。該アルキルアミンは、酸性懸濁液に添加するとカチオン化してアルキルアンモニウムイオンとなる。これが、マイカの層間陽イオンとのイオン交換反応によって、マイカ層間に導入される。
アルキルアミンが室温で固体の場合には、加温して溶解させるか、あるいは水可溶性の場合には水に溶解してから添加しても構わない。アルキルアミンの添加混合時には、反応液を加温(60〜90℃)するとより反応が速やかに行われる。アルキルアミンの添加方法は、一度に添加しても、時間をかけて少しずつ添加しても構わない。反応時間としては、通常1〜8時間である。
【0012】
次いで反応液を常法により固液分離、乾燥して、目的とする有機化マイカを得る。固液分離方法としては、沈降法、吸引濾過、フィルタープレス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、原料中にハロゲンを含まない。よって、反応生成物中にハロゲン化物が副生せず、洗浄工程が不要である。
なお、以上の方法は、本発明の製造方法の代表的な例の概略であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明において使用する膨潤性マイカは、層間陽イオンにNa、Li等のイオン半径の小さなアルカリイオンを有するマイカ族の粘土鉱物である。これらは天然、合成であるを問わないが、その陽イオン交換能が80meq/100g以上の高純度のものであることが好ましい。合成粘土鉱物は高純度のものを得やすいという点で有利である。合成マイカとしては、合成ナトリウムテトラシリシックマイカ、合成リチウムテニオライト、合成ナトリウムテニオライト等があるが、特にこれらに限定されるものではない。本発明においては、1種以上の膨潤性マイカを用いてもよい。
マイカ属粘土鉱物は、他の粘土鉱物に比して交換性陽イオンの含有率が高く、スメクタイト属粘土鉱物に比べると交換性陽イオンが約3倍含まれている。このため、結晶層間の結合力が高く、耐酸性に優れている。よって、懸濁液のpHを4以下、あるいは3以下としても影響がない。
【0014】
本発明において用いるアルキルアミンは、炭素数1〜30のアルキル基を1〜3個有する一級〜三級アルキルアミンが挙げられる。これらは乳化剤や繊維柔軟剤として市販されているアルキルアミンから選択することが可能である。本発明において、特に好ましくは三級アルキルアミンである。例えば、炭素数14以上の長鎖アルキル基を少なくとも一つ又は二つ有し、残りのアルキル基がメチル基であるような三級アルキルアミンが好適である。
なお、本発明においては、1種以上のアルキルアミンを用いてもよい。
アルキルアミンの添加量は、用いるマイカの陽イオン交換容量の通常0.5〜1.5倍、好ましくは0.8〜1.2倍当量である。
【0015】
本発明で用いる非ハロゲン系の酸としては、ハロゲンを含まず、且つマイカ懸濁液のpHを所望の範囲に制御可能なものであれば特に限定されず、硝酸、硫酸等の無機酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸の何れも用いることができる。酸無水物も使用可能である。
本発明においては、四級アンモニウムハロゲン化物や、予め一級〜三級アミンをカチオン化した塩などのアンモニウムイオン化合物(アンモニウム塩)を用いるのではなく、アルキルアミンを用い、これをマイカ酸性懸濁液中でカチオン化させ、アンモニウムイオンなして層間に挿入する。従って、ハロゲンの副生やアミンの凝集がない。
本発明で得られた有機化マイカは、樹脂組成物の他、有機化マイカが通常適用可能なあらゆる分野において用いることができる。例えば、レオロジー調整剤や電子材料、医療材料、エネルギー関連材料、環境関連材料、合成用触媒等が挙げられる。
【0016】
【実施例】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。CECは陽イオン交換容量(層状ケイ酸塩100g当たりの陽イオン交換容量)を表す。
【0017】
実施例1
合成ナトリウム四ケイ素雲母(CEC85meq/100g)50gを950gの蒸留水に加え、湯煎で80℃に加温して、プロペラモーターで攪拌しながら10時間放置し、十分に膨潤させた。その後、無水マレイン酸5gを50mlの蒸留水に溶かした水溶液を懸濁液に加え十分に攪拌した。その時のpHは2.3であった。
上記懸濁液をプロペラモーターで攪拌しながら、用いた合成ナトリウム四ケイ素雲母の陽イオン交換量に対して1.1倍当量相当量(26.6g)の市販ステアリルジメチルアミンを添加し、そのまま4時間攪拌して十分に反応を進行させた。反応液をブフナーロートで吸引濾過して固液分離した。回収した固型物を乾燥機中110℃×12時間乾燥後、ジューサーミキサーで解砕して試料を得た。
【0018】
実施例2
マイカを合成ナトリウムテニオライトに代えた他は、実施例1と同様にして試料を得た。
実施例3
有機化剤をジステアリルメチルアミンに代えた他は、実施例1と同様にして試料を得た。
実施例4
無水マレイン酸水溶液の代わりに、1N硝酸5ccを用いてpH2.7に調整した他は、実施例1と同様にして試料を得た。
【0019】
比較例1〜3
実施例1〜3において、無水マレイン酸水溶液の代わりに蒸留水を添加した他は、それぞれ実施例1〜3と同様にして試料を得た。
比較例1〜3では、無水マレイン酸によるpH調整を行わなかったため、ステアリルジメチルアミン添加後の反応液のpHはそれぞれ9.8、10.5、及び9.8であった。
【0020】
比較例4
実施例1において、無水マレイン酸1gを50mlの蒸留水に溶かした水溶液を無水マレイン酸水溶液として用いた他は、実施例1と同様にして試料を得た。酸水溶液添加後の反応液のpHは4.8であった。
【0021】
比較例5
マイカ懸濁液に対して酸によるpH調整を行わず、四級アンモニウムハロゲン化物を用いて有機マイカを調製した。
具体的には、実施例1と同様にして合成ナトリウム四ケイ素雲母水懸濁液を調製した。懸濁液のpHは9.8であった。
この懸濁液をプロペラモーターで攪拌しながら、用いた合成ナトリウム四ケイ素雲母の陽イオン交換量に対して1.1倍当量相当量(30.2g)の市販ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを添加し、そのまま4時間攪拌して十分に反応を進行させた。この反応液を、実施例1と同様に、固液分離、乾燥、解砕して試料を得た。
【0022】
比較例6
比較例5の反応液を遠心分離(700G)により固液分離し、回収固形物を500mlの蒸留水で再分散させて洗浄を行い、上澄み液の電気伝導度が200μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、実施例1と同様に固液分離、乾燥、解砕して試料を得た。
【0023】
比較例7
マイカ懸濁液に対して酸によるpH調整を行わず、四級アンモニウムハロゲン化物を用いて有機マイカを調製した。
具体的には、実施例1と同様にして合成ナトリウム四ケイ素雲母水懸濁液を調製した。懸濁液のpHは9.8であった。
この懸濁液をプロペラモーターで攪拌しながら、用いた合成ナトリウム四ケイ素雲母の陽イオン交換量に対して1.1倍当量相当量(30.2g)の市販ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドを添加し、そのまま4時間攪拌して十分に反応を進行させた。この反応液を、比較例6と同様に、固液分離、洗浄、固液分離、乾燥、解砕して試料を得た。
【0024】
得られた各試料について粉末X線回折装置により測定を行い、底面反射からマイカの層間距離を調べた。また、イオンクロマト法により、Clの残存量を測定した。各実施例、比較例の反応条件ならびに結果を表1に示す。
表1から、本発明の製造方法で得られた実施例1〜4の有機化マイカは、層間距離が拡大し、分子量の大きい有機物がマイカ層間に導入されていることが確認された。
これに対して、酸によるpH調整を行わなかった比較例1〜3では、有機化反応が進行しなかった。また、比較例4のようにpHを4.8に調整した場合では有機化反応が一部のマイカにしか起こっていないことが確認され、これはアルキルアミンのカチオン化が不十分であったためと考えられた。従って、有機化反応を十分に進行させるためには、マイカ懸濁液のpHは4以下、好ましくは3以下であることが示唆された。
【0025】
また、本発明にかかる実施例1〜4では、残存Clが確認されなかったのに対し、比較例5〜7のように、従来の四級アンモニウムハロゲン化物を用いた場合には、反応生成物中にハロゲンが多く残存し、比較例6〜7のように反応後に洗浄を繰り返しても、これを完全に除去することは困難であった。
【0026】
【表1】
Figure 2005001946
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の有機化マイカの製造方法によれば、反応生成物中にハロゲンを含まずに、有機化マイカを簡便かつ効率的に製造することができ、洗浄工程が不要である。本発明の方法により生産性が向上するので、特に工業的製造において非常に有用である。

Claims (3)

  1. 膨潤性マイカの水懸濁液を非ハロゲン系の酸によりpH4以下とし、これに一級〜三級アルキルアミンを添加して、該アルキルアミンがカチオン化したアンモニウムイオンを該膨潤性マイカの層間に導入することを特徴とする、有機化マイカの製造方法。
  2. 請求項1記載の方法において、前記アルキルアミンが三級アルキルアミンであることを特徴とする有機化マイカの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の方法において、膨潤性マイカ水懸濁液をpH3以下とすることを特徴とする有機化マイカの製造方法。
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