JP2005001347A - 液体吐出ヘッド及びその製造方法 - Google Patents

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Koichi Igarashi
浩一 五十嵐
Shogo Ono
章吾 小野
Osamu Tateishi
修 立石
Manabu Tomita
学 冨田
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Abstract

【課題】基板と感光性樹脂層とが剥離しないヘッドを提供し、また、架橋成分が残留した感光性樹脂層を含む基板をダイシングしても、基板と感光性樹脂層とが剥離しない製造方法とする。
【解決手段】発熱抵抗体13を配した基板14上に、架橋した感光性樹脂からなる密着性向上層15を設け、密着性向上層15上に、インク液室12をパターニング形成した樹脂からなるバリア層16を設け、バリア層16上に、ノズル18を複数形成したノズルシート17を設置する。密着性向上層15は、バリア層16の前に形成しておくとともに、少なくとも基板14をダイシングする前に十分に架橋しておく。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法に関する。詳しくは、基板上に、液室をパターニング形成したバリア層を設ける際に、基板とバリア層との間に密着性向上層を介在させることによって、バリア層の剥がれを防止した液体吐出ヘッド及びその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体吐出装置の1つであるインクジェットプリンタにおいては、通常、ノズルが直線状に並べられたインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)を備えている。そして、このヘッドの各ノズルから、ノズル面に対向して配置された印画紙等の被記録媒体に向けて微小なインクの液滴を順次吐出することにより、略円形のドットを縦横に形成し、点画として画像や文字を表現している。
【0003】
ここで、インクの吐出方式の1つとして、熱エネルギーを用いてインクを吐出させるサーマル方式が知られている。
このサーマル方式のインク吐出装置は、液体としてのインクを収容するインク液室と、インク液室内に設けられたエネルギー発生素子としての発熱抵抗体と、インクを液滴として吐出するノズルとを備えている。そして、インクを発熱抵抗体で急速に加熱し、発熱抵抗体上のインクに気泡を発生させ、気泡発生時のエネルギーによって、インクの液滴をノズルから吐出させている。
【0004】
また、インクの吐出方式として、静電吐出方式も知られている。
静電吐出方式は、エネルギー発生素子として、サーマル方式の発熱抵抗体に代えて、振動板と、この振動板の下側に、空気層を介した2つの電極を設けたものである。そして、両電極間に電圧を印加し、振動板を下側にたわませ、その後、電圧を0Vにして静電気力を開放する。このとき、振動板が元の状態に戻るので、その際の弾性力を利用することで、インクの液滴を吐出させている。
【0005】
さらに、インクの吐出方式として、ピエゾ方式も知られている。
ピエゾ方式のエネルギー発生素子は、両面に電極を有するピエゾ素子と振動板との積層体を用いたものである。そして、ピエゾ素子の両面の電極に電圧を印加すると、圧電効果により振動板に曲げモーメントが発生し、その結果振動板がたわみ、変形する。したがって、この変形を利用することで、インクの液滴を吐出させている。
【0006】
一方、ヘッド構造の観点からは、ヘッドを被記録媒体の幅方向に移動させて印画を行うシリアル方式と、多数のヘッドを被記録媒体の幅方向に並べて配置し、印画幅分のラインヘッドを形成したライン方式とが挙げられる。
【0007】
ライン方式においては、被記録媒体の全幅にわたるヘッドを、シリコンウエハやガラス等で一体に形成することは、製造方法、歩留まり問題、発熱問題、コスト問題等、様々な問題があって、現実的ではない。
このため、小さなヘッド(これにも様々な制約があり、大きくてもノズルの並び方向の長さが1インチ以下程度が実用的な限界である。)を、端部同士が繋がるように複数並設して、それぞれのヘッドに適当な信号処理を行うことにより、被記録媒体に印画する段階で、被記録媒体の全幅にわたる記録を行うようにしている。
【0008】
ところで、前述したような各種のインク吐出方式で、ライン方式やシリアル方式のヘッドを製造するには、主に、以下のような工程が必要とされる。
すなわち、最初に、エネルギー発生素子を、半導体や電子デバイス製造技術用の微細加工技術を使用しながら、Si・ガラス・セラミックス等の基板上に形成する第1工程、
次に、インク液室を、エネルギー発生素子を囲むように、感光性樹脂を利用して基板上に形成する第2工程、
液室が形成された基板を、ダイシング装置によって適当な大きさに切り分ける第3工程、
ダイシングされた基板の液室上に、ノズルを形成したシートを、ノズルとエネルギー発生素子との位置が合うように貼り合わせる第4工程
等である。
そして、このようにして製造されたヘッドを、必要に応じて外部の基板と配線したり、別の筐体に組み付けたりして、インクジェットプリンタを完成させるのである。
【0009】
ここで、第2工程におけるインク液室の形成は、基板上の感光性樹脂層の一部を露光し、その後、未露光部分を除去することにより行い、第4工程では、残った感光性樹脂層の露光表面に、液室上に蓋をするがごとくシートを貼り付けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
そして、ノズルを形成したシートの貼り付けについてさらに詳述すると、シートは、熱・光・電子線・超音波等によって、感光性樹脂層と接着させる。この接着は、感光性樹脂層を液室が形成されるようにパターニングした後、多少の架橋成分が残った状態にしておいて、ダイシング等の方法により基板を切り出し、シートとの貼り合わせ時に、この残った架橋成分を用いる。すなわち、熱・光・電子線・超音波等によって架橋すると同時に、架橋により発生する界面接着力によって強固な接着を行うのである。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−338798号公報 (第2−3頁、図1)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の製造方法では、以下の問題点があった。
すなわち、この製造方法においては、感光性樹脂層に残留架橋成分がある状態で基板をダイシングする必要が生じる。
ダイシング工程では通常、ダイサーと呼ばれる専用の設備が使用され、その設備に装着された非常に薄いダイヤモンドブレード(ダイシングブレード)を高速で回転させ、被切削物(エネルギー発生素子を配し、感光性樹脂層で液室を形成した基板)を、基板とダイヤモンドブレードとの間に切削水を流しながら所定の速度にて切削する。なお、水と被切削物との摩擦による帯電を防止し、帯電による被切削物の表面へのゴミの付着等を防止するため、多くの場合、切削水は、炭酸ガスを含浸させたイオン交換水や純水を使用する。
【0013】
このため、被切削物はその表面が大量の水で曝されることとなるが、基板上の感光性樹脂層には、ダイシング工程の時点において、多少の架橋成分が残留していることから、切削水によって未架橋な感光性樹脂が加水分解を起こしたり、架橋のために使用される硬化剤が溶出したり、未架橋部分に水が浸入して膨潤したりするという問題がある。
【0014】
そして、前述した問題が生じた感光性樹脂層であると、基板からの剥がれが生じやすいものとなってしまう。
また、このようなヘッドのノズルからインクを吐出し、写真や文字等を印画・印刷すると、インク漏れが発生して、インクジェットプリンタが本来持つ美麗な印字・印画能力が極端に低下してしまう。
【0015】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、基板と感光性樹脂層とが剥離しないヘッドを提供し、このヘッドを、例えばインクジェットプリンタに使用することで、美麗な印字・印画能力を最大限に引き出し、かつ、長期にわたり高い信頼性を得ることができるようにすることである。
また、架橋成分が残留した感光性樹脂層を含む基板をダイシングしても、基板と感光性樹脂層とが剥離しない製造方法とすることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1に記載の発明は、吐出すべき液体を収容する液室と、前記液室中の液体にエネルギーを付与するエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を液滴として吐出するノズルとを備える液体吐出ヘッドであって、前記エネルギー発生素子を配した基板上に、架橋した感光性樹脂からなる密着性向上層を設け、前記密着性向上層上に、液室をパターニング形成した樹脂からなるバリア層を設け、前記バリア層上に、前記ノズルを複数形成したシートを設置したことを特徴とする。
【0017】
上記の発明においては、基板とバリア層との間に、架橋した感光性樹脂からなる密着性向上層を介在させている。
したがって、バリア層は、同じ樹脂材料(バリア層を感光性樹脂とした場合は特に、感光性樹脂同士となる)からなる密着性向上層の上に設けられることとなり、たとえダイシング時に水と接しても、基板に対して直接設ける場合に比べ、剥離に対する強度が大きくなる。また、基板上に設けられる密着性向上層は、すでに架橋されているのでダイシング時の水の影響を受けず、剥離の問題を回避できる。
【0018】
なお、本発明における「パターニング形成される液室」とは、必ずしも液室の全体を指すものではなく、少なくとも液室の一部を構成する部分を指すものである。下記の実施形態において、液室の実施形態に対応するインク液室12では、基板14及び発熱抵抗体13がインク液室12の底壁を構成し、密着性向上層15及びバリア層16がインク液室12の側壁を構成し、ノズルシート17がインク液室12の天壁を構成している。そして、密着性向上層15とバリア層16(インク液室12の側壁を構成する部分)がパターニング形成されるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本発明における液体吐出ヘッドは、下記実施形態のインクジェットプリンタ用のヘッド11又はラインヘッド10に相当し、液体吐出装置はインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に相当する。また、液体としてインクを使用し、インクを収容する液室がインク液室12で、ノズル18から吐出される微少量(例えば数ピコリットル)のインクがインク液滴である。
さらにまた、エネルギー発生素子として発熱抵抗体13を使用しており、この発熱抵抗体13はインク液室12の一面(底壁部分)をも構成している。そして、発熱抵抗体13によってインク液室12中のインクが急速に加熱され、気泡が発生し、インク液滴を吐出する。
【0020】
さらに、本明細書において、1つの液室と、この液室内に配置されたエネルギー発生素子と、このエネルギー発生素子の上部に配置されて液滴の吐出口となるノズルとを含む部分を、「液体吐出部」と称する。すなわち、液体吐出ヘッドは、複数の液体吐出部を並設したものといえる。
なお、本発明に係る液体吐出ヘッドは、下記実施形態に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0021】
図1は、本発明の方法により製造されたヘッド11を示す部分斜視図である。
図1に示すヘッド11において、基板14は、シリコン等からなる半導体基板であって、その一方の面には、半導体プロセスを用いて析出形成された微細な発熱抵抗体13を備えている。この発熱抵抗体13は、基板14上に形成された導体部(図示せず)を介して外部回路と電気的に接続されている。
【0022】
また、密着性向上層15は、基板14の発熱抵抗体13が形成された側の面に設けられたものである。この密着性向上層15は、基板14の上面全体に感光性樹脂を積層し、この感光性樹脂層の一部(発熱抵抗体13が存在しない部分)を露光した後、未露光部分を除去することによりパターニング形成され、その後、加熱や活性エネルギー線の照射により架橋されている。
【0023】
さらに、バリア層16は、密着性向上層15の上に設けられたものである。このバリア層16も、密着性向上層15の上面全体に感光性樹脂を積層し、この感光性樹脂層の一部(密着性向上層15が存在する部分)を露光した後、未露光部分を除去することによりパターニング形成されている。
【0024】
さらにまた、ノズルシート17は、複数のノズル18が設けられたものであり、例えばニッケルによる電鋳技術により形成されている。そして、ノズル18の位置が発熱抵抗体13の位置と合うように、すなわちノズル18が発熱抵抗体13に対向するように精密に位置決めがなされ、バリア層16の上に貼り合わされている。
【0025】
インク液室12は、発熱抵抗体13を囲むように、基板14、密着性向上層15、バリア層16及びノズルシート17から構成されている。すなわち、基板14及び発熱抵抗体13は、図1中、インク液室12の底壁を構成し、密着性向上層15及びバリア層16は、インク液室12の側壁を構成し、ノズルシート17は、インク液室12の天壁を構成する。これにより、インク液室12は、図1中、左下方面に開口領域を有することとなり、この開口領域とインク流路(図示せず)とが連通される。
【0026】
上記の1個のヘッド11には、通常、100個単位の規模で、インク液室12と、各インク液室12内にそれぞれ配置された発熱抵抗体13と、各発熱抵抗体13上に位置するノズル18とから構成される液体吐出部が複数並設される。そして、プリンタの制御部からの指令によってこれら発熱抵抗体13のそれぞれを一意に選択することで、発熱抵抗体13に対応するインク液室12内のインクを、そのインク液室12に対向するノズル18からインク液滴として吐出させることができる。
【0027】
すなわち、ヘッド11と結合されたインクタンク(図示せず)からインクが供給され、インク液室12にインクが満たされる。そして、発熱抵抗体13に短時間、例えば1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、発熱抵抗体13が急速に加熱され、その結果、発熱抵抗体13と接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のインクが押しのけられる(インクが沸騰する)。これによって、ノズル18に接する部分の上記押しのけられたインクと同等の体積のインクが、インク液滴としてノズル18から吐出され、被記録媒体である印画紙上に着弾し、ドットが形成される。
【0028】
さらに、本実施形態では、複数のヘッド11を被記録媒体の幅方向に並べて、ラインヘッドを形成している。
図2は、ラインヘッド10の一実施形態を示す平面図である。図2では、4つのヘッド11(「N−1」、「N」、「N+1」及び「N+2」)のみを図示している。
ラインヘッド10を形成する場合には、図1中、ヘッド11からノズルシート17を除く部分(ヘッドチップ)を複数並設する。そして、これらのヘッドチップの上部であって、全てのヘッドチップの各インク液室12に対応する位置に、ノズル18が形成された1枚のノズルシート17を貼り合わせることにより、ラインヘッド10を形成する。
【0029】
ここで、各ヘッド11の配置は、隣接するヘッド11の各端部にあるノズル18同士のピッチ、すなわち、図2中のA部詳細図における、N番目のヘッド11の右端部にあるノズル18と、N+1番目のヘッド11の左端部にあるノズル18との間の間隔が、ヘッド11のノズル18間の間隔に等しくなるようにしてある。
また、このようなラインヘッド10を必要数だけノズル18の並び方向と直交する方向に並べてヘッド列を構成し、ヘッド列ごとに異なる色のインクを供給することで、カラー印画に対応させることもできる。
【0030】
このようなラインヘッド10を備えるプリンタでは、シリアル方式のものに対し、ラインヘッド10を被記録媒体の幅方向に移動させる走査機構が不要となるので、走査時間が必要なくなり、印画時間の短縮化に大きく寄与するので、このラインヘッド10を搭載したプリンタの付加価値を大きく高めるものとなる。
【0031】
なお、多数の液体吐出部を並設する場合には、液体吐出部の吐出特性、例えばインク液滴の吐出方向が液体吐出部ごとに不揃いとなる場合がある。また、ラインヘッド10のように複数のヘッド11を並設する場合には、ヘッド11ごとの液体吐出部の吐出特性が不揃いとなる場合がある。このような場合には、インク液滴の着弾位置ずれとなって表れる。そこで、既に本件出願人によって提案されている技術(例えば、特願2003−55236)のように、1つのインク液室12内に複数の発熱抵抗体13を設け、複数の発熱抵抗体13へのエネルギーの供給の仕方を変えることによって、インク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とすることで、インク液滴の着弾位置を調整することが可能である。
【0032】
次に、上記ヘッドを製造する方法の一実施形態について説明する。
図3から図5は、ヘッドの製造方法を工程ごとに順序立てて説明したものであり、図3に示す工程1では、まず、発熱抵抗体13が作り込まれた基板14を準備する。
この発熱抵抗体13は、先にも説明した通り、エネルギー発生素子であってインクに気泡を生じさせるものであり、シリコン、ガラス、セラミックス等の基板14の上に、半導体や電子デバイス製造技術用の微細加工技術を使用しながら作り込まれている。
【0033】
続く工程2では、基板14上に、図1に記載された密着性向上層15を構成する感光性樹脂を塗布し、厚さ1μm以下の薄い感光性樹脂層21を形成する。
この感光性樹脂としては、半導体・ディスプレイ製造用に多種上市されているフォトレジストや、感光性層間絶縁材料、メッキ用マスクとして上市されているドライフィルムレジスト、プリント基板用途等に上市されている各種の感光性材料、印刷用製版等に用いられる感光性材料等の様々な種類のものの中から、最適なものを選定することが可能である。一例としては、カチオン重合系エネルギー線硬化樹脂組成成分(適正な分子量、シランカップリング剤等の適正な添加剤、光重合に寄与する適正な活性触媒、適正な量の溶媒等を最適な分量で配合したもの)からなる光硬化性のエポキシ樹脂等があげられる。
【0034】
また、感光性樹脂の基板14への塗布方法としては、使用する基板14の形状によって様々な可能性が考えられるが、スピンコート、バーコート、カーテンコート、メニスカスコート、スプレイコート等の中から最適なものを選択すればよい。この場合、感光性樹脂を液体状態として供給する必要があることは言うまでもない。なお、感光性樹脂の塗布後に、樹脂溶液中に含まれる溶剤を、しかるべき加熱(ベーキング)方式にて基板14を加熱することにより、揮散させる工程を導入しても差し支えない。
【0035】
工程3では、感光性樹脂層21に、しかるべき形状のパターンを描いたフォトマスク31を介して、感光性樹脂を感光するに最適な波長帯の放射光32を持った露光機(図示せず)による露光を行う。
露光機には、マスクと形成されるパターンとが1:1になるコンタクトアライナーやミラープロジェクションアライナー等を用いても良いし、マスクが実際に形成されるパターンよりも大きく、同じパターンを基板上に複数回繰り返し露光(ステップ&リピート露光)するステッパー等を用いても良い。なお、露光後に露光された部分のパターニング特性を向上させたり、感光性樹脂が酸発生剤を利用してパターニングしたりするものである場合には、露光後に、ベークする工程を追加しても差し支えない。
【0036】
工程4では、工程3にて露光した感光性樹脂層21を所定の現像液で現像し、未露光部分を除去することによって基板14上に密着性向上層15を形成する。すなわち、工程3及び工程4により、インク液室12の一部を構成している密着性向上層15がパターニング形成される。
現像液は、使用する感光性樹脂によって異なるが、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)やモノエタノールアミン等の水溶液、各種有機溶剤等が一般的に使用される。
【0037】
また、現像後には、必要に応じ、残留現像液の置換や表面洗浄を目的として、所定のリンス液や水(純水やイオン交換水)でリンスすることも可能である。さらにその後、基板14の表面に残った水分や溶媒を揮散させるための加熱や、スピンナーを使用した振り切り乾燥、真空チャンバーによる真空乾燥、大気中や窒素雰囲気中での自然放置を行っても良い。
【0038】
工程5では、工程4にて形成された密着性向上層15を加熱源33によって加熱し、十分に架橋する。
ここで、加熱源は特に限定されないが、例えば、ホットプレートによるダイレクト加熱、クリーンオーブンやランプ加熱炉等による雰囲気加熱、高周波を使用した誘導加熱等が使用可能であり、好適には、ホットプレートやクリーンオーブンが使用される。
【0039】
また、上記の加熱源の代わりに、活性エネルギー線を照射して、密着性向上層15を十分に架橋することもできる。
活性エネルギー線としては、例えば、各種波長の紫外線や赤外線、低加速の電子線等が挙げられるが、密着性向上層15の原材料となった感光性樹脂に含まれる感光剤が活性化し、架橋反応を十分に進められるものであれば何でも良い。なお、加熱源や活性エネルギー線は、各々単独で使用しても良いし、必要な種類を必要なタイミングで併用しても全く問題ない。また、活性エネルギー線照射の雰囲気は、使用した感光性樹脂の種類によって適宜選択する必要があるが、大気雰囲気、窒素雰囲気(又は酸素遮断雰囲気)、真空雰囲気のいずれを選択しても良い。
【0040】
この工程5を経ることにより、基板14と強い密着性を持ち、インク等の液体によっても犯されることの無い、十分に架橋された密着性向上層15が形成されることとなる。そのため、後述する工程9にてダイシングされた際に、水の影響を受けることがなくなる。
【0041】
ここで、「十分な架橋」とは、ダイシング時の水や、吐出に使用する液体(インク等)に対して耐性を有することを意味する。具体的には、形成された密着性向上層15の架橋前の重量に対し、ダイシング時の水や使用する液体に、24時間浸漬した後の重量減少率が0.3%以下であるか、浸漬後の表面を光学顕微鏡で観察した際に、溶出跡と見られる干渉縞が観察されない程度をいう。
そして、このような十分な架橋が得られるように、密着性向上層15の厚さ等によって、加熱時間や活性エネルギー線の照射時間等を調整する。
【0042】
図4に示す工程6では、工程5にて形成した密着性向上層15上に、別途、樹脂材料を塗布する。工程6で使用する樹脂材料は、バリア層を形成できるものであれば特に限定されないが、感光性樹脂が好適であり、本実施形態では、感光性樹脂を塗布し、感光性樹脂層22を形成している。
この感光性樹脂としては、前述した工程2と同様に、様々な種類の感光性樹脂の中から最適なものを選定することが可能であるが、一例としては、環化イソプレンを主成分とし、これに感光剤や各種添加物(レベリング剤、シランカップリング剤等)を同時に適正量含有させ、これをまた適正量の溶媒等で希釈した、ネガレジスト等の感光性樹脂が挙げられる。
【0043】
また、塗布方法も、工程2に準じて、スピンコート、バーコート、カーテンコート、メニスカスコート、スプレイコート等の中から最適なものを選択すればよい。さらに、工程2と同様、塗布後に加熱して、樹脂溶液中の溶剤を揮散させても良い。
【0044】
工程7では、これも工程3と同様、感光性樹脂層22に、しかるべき形状のパターンを描いたフォトマスク34を介して、感光性樹脂を感光するに最適な波長帯の放射光35を持った露光機(図示せず)による露光を行う。露光範囲は、下層の密着性向上層15に積層された部分であって、密着性向上層15と50%以上が重なるようにする。なお、具体的な露光機の種類、露光方法、及び露光後のベークの必要性等は、工程3に準じる。
【0045】
工程8では、工程7にて露光した感光性樹脂層22を所定の現像液で現像し、未露光部分を除去することによって密着性向上層15上にバリア層16を形成する。すなわち、工程7及び工程8により、インク液室12の一部を構成しているバリア層16がパターニング形成される。なお、現像液や、現像後に必要な処理等は工程4に準じるが、感光性樹脂として、上記の環化イソプレンを主成分とするものを用いた場合には、キシレン含有溶剤やイソパラフィン系炭化水素等の溶剤が現像液に使用される。
【0046】
このように、工程1〜8にて基板14上に密着性向上層15及びバリア層16が形成される(以下、これらを「基板14」で代表させる。)が、この基板14は、後述する工程9にてダイシングされ、適当な大きさに切り分けられる。
すなわち、図5に示す工程9では、工程8を経た基板14をダイサー(図示せず)のステージ上にセットし、切削水42を適宜流しながら、ダイヤモンドブレード(ダイシングブレード)41を高速で回転させ、チップ61のカットラインに沿って基板14を切断する。
【0047】
この際、密着性向上層15は十分に架橋されていることから、切削水42によって基板14と密着性向上層15とが剥離してしまうことはない。また、バリア層16を構成する感光性樹脂は、後述する工程10にてノズルシートを貼り付けたりする最終キュア前の状態であるが、密着性向上層15と感光性樹脂同士の関係にあるので、バリア層16が剥がれてしまうことも無い。
そのため、本実施形態の方法により製造したヘッドを使用したプリンタは、このヘッドが本来持つ美麗な印字・印画能力を維持したものとなる。
【0048】
工程10では、工程9にてダイシングされた基板14のバリア層16の上に、ノズルシート17を貼り付ける。
ノズルシート17の貼り付けには、熱・光・電子線・超音波及びこれらの1つ以上とプレス等の手段とを併用する。この貼り付けプロセスでは、基板14上の発熱抵抗体13と、ノズルシート17のノズル18とを正確に位置合わせした上で行う。この位置合わせが不正確であると、このヘッドをプリンタに使用した場合、インクの吐出角度が不正確になったりインクの吐出に不具合が生じることがあり、プリンタ本来の美麗な印字・印画能力が最大限に引き出せなくなる。
また、ノズルシート17の貼り付けと同時に、バリア層16を構成する感光性樹脂を強固にするための最終キュアを行うこともできる。
【0049】
したがって、前述した工程1〜10により、最終的に図1に示すヘッド11が製造されることとなり、このヘッド11を被記録媒体の幅方向に複数並べれば、図2に示すラインヘッド10が形成される。
【0050】
なお、本実施形態では、サーマル方式の吐出構造として発熱抵抗体13を設けたものを例に挙げたが、エネルギー発生素子は発熱抵抗体に限らず、他の発熱素子(抵抗以外のもの)であっても良く、さらに、静電吐出方式やピエゾ方式のものについても適用可能である。
【0051】
また、ライン方式だけでなくシリアル方式にも適用でき、しかも、プリンタのみならず、種々の液体吐出装置に適用できるものであり、例を示せば、染め物に対する染料の吐出や、生体試料を検出するためのDNA含有溶液を吐出するための装置等に適用することも可能である。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、基板とバリア層との間に、架橋した感光性樹脂からなる密着性向上層を介在させたので、バリア層の剥がれが防止され、耐久性が向上し、長期間にわたり高い信頼性を得ることができる。特に、本発明の液体吐出ヘッドをインクジェットプリンタのヘッドに適用した場合には、その性能を十分に発揮することができ、インクジェットプリンタが本来持つ美麗な印字・印画能力を最大限に引き出せるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドを示す部分斜視図である。
【図2】ラインヘッドの実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの製造工程(工程1〜工程5まで)を示す図である。
【図4】本発明の液体吐出ヘッドの製造工程(工程6〜工程8まで)を示す図である。
【図5】本発明の液体吐出ヘッドの製造工程(工程9〜工程10まで)を示す図である。
【符号の説明】
10 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
11 ヘッド(液体吐出ヘッド)
12 インク液室(液室)
13 発熱抵抗体(エネルギー発生素子)
14 基板
15 密着性向上層
16 バリア層
17 ノズルシート(シート)
18 ノズル
21 感光性樹脂層
22 感光性樹脂層
31 フォトマスク
32 放射光
33 加熱源
34 フォトマスク
35 放射光
41 ダイヤモンドブレード(ダイシングブレード)
42 切削水
61 チップ

Claims (4)

  1. 吐出すべき液体を収容する液室と、
    前記液室中の液体にエネルギーを付与するエネルギー発生素子と、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を液滴として吐出するノズルとを備える液体吐出ヘッドであって、
    前記エネルギー発生素子を配した基板上に、架橋した感光性樹脂からなる密着性向上層を設け、
    前記密着性向上層上に、液室をパターニング形成した樹脂からなるバリア層を設け、
    前記バリア層上に、前記ノズルを複数形成したシートを設置した
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記バリア層が、感光性樹脂からなる
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  3. 吐出すべき液体を収容する液室と、
    前記液室中の液体にエネルギーを付与するエネルギー発生素子と、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を液滴として吐出するノズルとを備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記エネルギー発生素子を配した基板上に、感光性樹脂からなるバリア層を形成する工程と、
    前記バリア層の一部を露光した後、未露光部分を除去することにより、前記液室をパターニング形成する工程と、
    前記液室がパターニング形成された前記基板を、ダイシングによって切り出す工程と、
    切り出された前記基板上の前記バリア層の露光表面に、前記ノズルを形成したシートを貼り付ける工程とを有し、
    前記バリア層を形成する前に、前記基板上に、感光性樹脂からなる密着性向上層を形成しておき、
    少なくとも前記基板をダイシングする前に、前記密着性向上層を架橋しておく
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 請求項3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記密着性向上層の架橋が、熱又は活性エネルギー線照射によるものである
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
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