JP2005000825A - 導電性部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、表面欠陥の無い被覆層を形成するとともに、感光体と電気抵抗の低いゴム或いは発泡体で形成したローラー端部の間において火花放電しないような被覆層の端部形状を有する製造方法を提供することである。
【解決手段】導電性支持体と、その外周に形成された被覆層を有してなる導電性部材の製造方法において、塗工液を調製する工程、マスキング用キャップを該導電性支持体の露出部に装着する前に、予め加熱しておき、温度の高いまま、少なくとも一方の該導電性支持体の露出部に装着し、該塗工液を該導電性支持体の外周面上に塗布する工程、該導電性支持体の外周面上に塗布された塗工液を乾燥する工程、を経由して、該導電性支持体の外周面上に被覆層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性支持体と、その外周に形成された被覆層を有してなる導電性部材の製造方法において、塗工液を調製する工程、マスキング用キャップを該導電性支持体の露出部に装着する前に、予め加熱しておき、温度の高いまま、少なくとも一方の該導電性支持体の露出部に装着し、該塗工液を該導電性支持体の外周面上に塗布する工程、該導電性支持体の外周面上に塗布された塗工液を乾燥する工程、を経由して、該導電性支持体の外周面上に被覆層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における帯電、現像、転写、クリーニング、除電等に用いる導電性部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真プロセスにおける帯電プロセスは、金属ワイヤーに高電圧(直流電圧6〜8kV)を印加して発生するコロナシャワーにより被帯電体である電子写真感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるコロナ帯電器が広く利用されていた。しかし、高圧電源を必要とする、比較的多量のオゾンが発生する等の問題があった。
【0003】
これに対して導電性部材を感光体に接触させながら電圧を印加して、感光体表面を帯電させる接触帯電方式が実用化されている。これは、感光体に、ローラー型、ブレード型、ブラシ型及び磁気ブラシ型等の電荷供給部材としての導電性部材(帯電部材)を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるものである。
【0004】
この帯電方式は、電源の低電圧化とオゾンの発生量が少ないという利点を有している。この中でも特に接触帯電部材として導電性ローラーを用いたローラー帯電方式が、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。しかしながら、帯電の均一性に関してはコロナ帯電器と比較してやや不利であった。
【0005】
従来、帯電均一性を改善するために、所望の被帯電体表面電位Vdに相当する直流電圧に帯電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流電圧成分(AC電圧成分)を重畳した電圧(脈流電圧;時間と共に電圧値が周期的に変化する電圧)を接触帯電部材に印加する「AC帯電方式」が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0006】
これは、AC電圧による電位の均し効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、環境等の外乱には影響されることはなく、接触帯電方式として優れた方法である。
【0007】
しかしながら、直流電圧印加時における放電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く。更には、交流電流を多量に消費することにより、帯電ローラー及び感光体の耐久性が低下し易いという問題点があった。
【0008】
これらの問題点は、帯電ローラーに直流電圧のみを印加して帯電を行うことにより解消されるものの、帯電ローラーに直流電圧のみを印加すると、帯電部材被覆層表面の欠陥がAC帯電方式に比べ、画像不良として現れ易い傾向にある。
【0009】
一般に被覆層の形成方法として、ディップ塗工やロールコート法等があり、数μm〜数十μmの膜が形成されることが多い。この被覆層により、帯電ムラを防止する効果があるが、塗工液を用いて被覆層を形成するため、欠陥が生じ易い。
【0010】
従来、塗工液を用いて被覆層を形成する場合は、被覆層表面欠陥及びローラー端部の塗工ムラ、導電性支持体への塗工液付着等を防止するため、導電性支持体にチューブ形状やキャップ形状のマスキングを装着するのが一般的な方法となっている。
【0011】
従来の導電ローラーのマスキングは、前記問題を解決するため、導電性支持体にマスキングチューブを被着するとある。これによると、塗布中或いは乾燥中に、マスキングチューブとシャフトとの間、或いは、マスキングチューブとローラー端部との間に、わずかに存在する空気が、ローラー端部部分の被覆に染み出して泡を生じ、この部分にピンホールを発生し易く、また被覆層が切れ易いという問題も解決するとある(例えば、特許文献1)。
【0012】
しかし、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ塗工で、チューブ形状のマスキング用キャップを用いると、被覆層表面に欠陥を生じさせてしまう。詳しくは、チューブ形状のマスキング用キャップが装着されたローラーを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、最初はチューブ中央の空洞部分に塗工液が入らず空気が溜まる。更に、ローラーが降下していき時間が経過すると、チューブ中央に溜まった空気中に溶剤のガスも加わり、体積膨張し最終的に気泡が発生する。また別な気泡の発生の仕方としては、マスキングチューブとシャフトとの間、或いはマスキングチューブとローラー端部との間に隙間があるとローラーを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、隙間にわずかに存在する空気が、液圧に負けて染み出して気泡を発生する。
【0013】
上記のようなかたちで発生した気泡は、塗工液面まで上昇するが、ローラーと液面の表面張力の関係でローラー側に付着する。更に、ローラーは降下・上昇するため、気泡は液面でローラー表面を擦るようなかたちになり、この跡が乾燥後もローラーの長手方向に筋状の凹欠陥となって残ってしまう。
【0014】
この防止策として、マスキング用キャップの液面突入速度を遅くする方法や塗工液中にシリコーンオイル等の消泡剤を添加する方法等が考えられるが、塗工時間が長くなったり、シリコーンオイルの種類によっては感光体を汚染してしまう等の弊害も多く、満足する結果は得られない。
【0015】
また、マスキング用キャップに縦断面略π字形状(例えば、特許文献2)を用いて、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で塗工した場合においても、マスキング用キャップの先端が平らで液面に対して平行であるため、液面突入時の液面の乱れが大きいため、気泡が発生し易く、被覆層表面に欠陥を生じさせてしまう。
【0016】
以上のように電子写真技術においては近年の市場の高画質化の要求により、トナーが小粒径化し、微粉トナーの割合も増加し、それに伴い導電性部材の汚染の度合いも増加してきた。
【0017】
また、長寿命化やカラー化等の要求により、導電性部材及び感光ドラムを含むユニットの目標耐久寿命値が伸びており(カラー化により1枚の出力を得るための動作時間は長くなる)、それにより付着物の堆積量が大きくなり、以前の耐久枚数では発生しなかった僅かな被覆層の欠陥を原因とする小さな画像不良も耐久後半で顕在化してくるようになった。
【0018】
従って、塗工時の気泡発生による塗工面の欠陥は、極微小なものでも高画質の要求に耐えられないものであり、特に、塗工時において装着の外形上問題の無いマスキング用キャップの使用であっても、其のままでは気泡の完全遮断が困難であったため、更なる工夫を必要とした。
【0019】
【特許文献1】
特開平10−177290号公報(5頁)
【特許文献2】
特開2001−179144号公報(図1)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、表面欠陥の無い被覆層を形成するとともに、感光体と電気抵抗の低いゴム或いは発泡体で形成したローラー端部の間において火花放電しないような被覆層の端部形状を有する製造方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体と、その外周に形成された被覆層を有してなる導電性部材の製造方法において、塗工液を調製する工程、マスキング用キャップを該導電性支持体の露出部に装着する前に、予め加熱しておき、温度の高いまま、少なくとも一方の該導電性支持体の露出部に装着し、該塗工液を該導電性支持体の外周面上に塗布する工程、該導電性支持体の外周面上に塗布された塗工液を乾燥する工程、を経由して、該導電性支持体の外周面上に被覆層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
なお、以下では、ローラー形状の帯電部材の表面被覆層の形成に関して詳述するが、帯電部材以外の、現像剤担持部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性部材において、被覆層を形成する場合も、同様の考え方が適用されうる。また、更には、従来の技術で上述したAC帯電よりも使用可能条件が厳しいと考えられるDC帯電の帯電ローラーに対して、適合するものであり、AC帯電への使用可能性が高いのはいうまでも無い。
【0024】
(1)マスキング用キャップ
従来の技術においては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、導電性支持体の露出部にマスキング用チューブやマスキング用キャップを取り付けることで、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止している。このとき、マスキング用チューブやマスキング用キャップの形状を工夫することで、塗工時に発生する気泡を防止し、表面欠陥の無い被覆層を形成することができ、非常に有効な手段となる。
【0025】
しかし、マスキング用キャップの形状を工夫し、塗工時に発生する気泡を防止できたとしても、マスキング用キャップの成型方法等によっては、希に成型不良による寸法が狂ったものやバリのあるものもできてしまうことがある。例えば、マスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部の内径が通常使用時のものより、僅かに大きいものであった場合、マスキング用キャップを導電性支持体の露出部に装着し、マスキング用キャップが下側になるようにすると、マスキング用キャップは外れてしまう。ここで本発明の装着方法を利用すれば、マスキング用キャップは導電性支持体の露出部に密着し外れない。
【0026】
また、従来技術においては、本発明のようにマスキング用キャップの装着方法については、特に限定したものは無く、本発明の装着方法を利用すれば、これまで塗工時に気泡が発生していた形状のマスキング用キャップであっても、気泡発生の抑制効果は高い。具体的には以下の様な作用で効果があると考えている。
【0027】
樹脂でできたマスキング用キャップを予め加熱しておき、温度の高いまま導電性支持体の露出部に装着する。するとマスキング用キャップは、室温に保持されていた導電性支持体や弾性層端部に熱を奪われ、急激に冷やされる。と同時にマスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にある僅かな隙間(空間)の空気も体積収縮し、減圧状態となりマスキング用キャップが導電性支持体や弾性層端部に良く密着する。一度、装着されると、マスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にある僅かな隙間(空間)の減圧状態は長く継続するため、マスキング用キャップが装着されたローラー形状の帯電部材においてマスキング用キャップが下側になるように、ローラー形状の帯電部材を吊しておいてもマスキング用キャップは外れることはない。
【0028】
また、樹脂でできたマスキング用キャップは加熱により体積膨張するため、導電性支持体露出部にマスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部を挿入することがスムーズになる。更には、装着されたマスキング用キャップは、接触する導電性支持体や弾性層端部に冷やされ、体積収縮するため、しっかりと導電性支持体の露出部に装着される。
【0029】
ここで用いることのできるマスキング用キャップの材質は、塗工液を汚染しないものであれば、特に限定されないが、塗工液が付着しても寸法精度を維持できる材質であるものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂等が挙げられる。以上の樹脂系の熱膨張係数は、その殆どが10−4〜10−5/Kであり、導電性支持体の金属系素材に比べ一桁程度大きく、前述のマスキング用キャップが冷却されて、導電性支持体露出部への密着性が高くなるのは言うまでもない。
【0030】
導電性支持体の表面温度と予め加熱しておいた前記マスキング用キャップの表面温度の差は10℃以上〜60℃未満であることが好ましいが、通常、導電性支持体の表面温度が室温と考えた場合、マスキング用キャップの表面温度は、25〜90℃の範囲であることが好ましい。更に好ましい温度範囲としては、40〜70℃である。但し、マスキング用キャップの軟化温度以下の範囲とする。
【0031】
導電性支持体の表面温度とマスキング用キャップの表面温度の差が10℃未満の時は、温度差が小さいためマスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にあるわずかな隙間(空間)の空気の体積収縮も小さく、導電性支持体や弾性層端部へのマスキング用キャップの密着性向上があまり期待できない。また導電性支持体の表面温度とマスキング用キャップの表面温度の差が60℃以上の時は、マスキング用キャップの熱量が極めて大きいため導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを取り付けると、導電性支持体が温まってしまう可能性がある。このような場合、マスキング用キャップを装着後、時間をおけば密着性は向上するが、時間を要してしまう。
【0032】
導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを装着し、マスキング用キャップの表面温度と塗工液の液温度の差は10℃以内であることが好ましいが、更に好ましい温度範囲としては、5℃以内である。
【0033】
マスキング用キャップの表面温度と塗工液の液温度の差が10℃を超えると、塗布する工程において、マスキング用キャップは塗工液中で熱を奪われ液温まで冷やされるが、これは塗工液の一部が局在的に温められているため、導電性部材の表面被覆層に塗工欠陥(膜厚ムラ)が生じ易くなる。
【0034】
本発明で効果のあるマスキング用キャップの形状としては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、導電性支持体の露出部に設けるマスキング用キャップであって、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止できるものであれば特に限定されるものではないが、本発明の方法を用いなくても、塗工時に発生する気泡を防止し、表面欠陥の無い被覆層を形成することのできる形状のマスキング用キャップが好ましい。
【0035】
具体的には、マスキング用キャップの外径が弾性層端部の外径以下であり、また、マスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部の径が前記導電性支持体の露出部に対して略嵌合の外径であり、マスキング用キャップの弾性層端部と対面する側の逆の先端が流線形状であり、かつ流線形状先端には、穴が無い形状が好ましい。更には、マスキング用キャップ端部と流線形状先端との間の外径が、マスキング用キャップ端部の外径より大きな径となってもよい形状で、マスキング用キャップの中央部に設けられた筒状空洞部中に導電性支持体の長手方向と平行な導電性支持体保持用突起構造(ゲート)を3ヶ所以上設けてもよい形状であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
マスキング用キャップの中央部には、導電性支持体を挿入するための、筒状空洞部が設けられているが、その径は前記導電性支持体の露出部に対して略嵌合の外径であることが好ましい。具体的には、導電性支持体の外径に対し、マスキング用キャップ中央部の筒状空洞部の径の差は±0.05mmの範囲内であることが好ましいが、更には±0.02mmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
(2)導電性部材
例えば、導電性部材は図1に示すようにローラー形状であり、導電性支持体2aと被覆層として、その外周に一体に形成された弾性層2bから構成されている。
【0038】
本発明の導電性部材の他の構成を図2に示す。図2に示すように導電性部材は、被覆層が弾性層2bと表面層2cからなる2層であってもよいし、弾性層2b及び抵抗層2dと表面層2cからなる3層及び、抵抗層2dと表面層2cの間に第2の抵抗層2eを設けた、4層以上を導電性支持体2aの上に形成した構成としてもよい。
【0039】
本発明に用いられる導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0040】
弾性層2bの導電性は、ゴム等の弾性材料中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宜添加することにより1010Ω・cm未満に調整されるのが好ましい。弾性層2bの具体的弾性材料としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコンーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。
【0041】
直流電圧のみを印加して、被帯電体の帯電処理を行う帯電部材においては、帯電均一性を達成するために、特に中抵抗の極性ゴム(例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、CR及びウレタンゴム等)やポリウレタン樹脂を弾性材料として用いるのが好ましい。これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂は、ゴムや樹脂中の水分や不純物がキャリアとなり、僅かではあるが導電性をもつと考えられ、これらの導電機構はイオン伝導であると考えられる。但し、これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂に導電剤を全く添加しないで弾性層を作製し、得られた帯電部材は低温低湿環境(L/L)において、抵抗値が高くなり1010Ω・cm以上となってしまうものもあるため帯電部材に高電圧を印加しなければならなくなる。
【0042】
そこで、L/L環境で帯電部材の抵抗値が1010Ω・cm未満になるように、前述した電子導電機構を有する導電剤やイオン導電機構を有する導電剤を適宜添加して調整するのが好ましい。イオン導電機構を有する導電剤の方が、抵抗調整がし易く製法上好ましい。しかしながら、イオン導電機構を有する導電剤は抵抗値を低くする効果が小さく、特にL/L環境でその効果が小さい。そのため、イオン導電機構を有する導電剤の添加と併せて電子導電機構を有する導電剤を補助的に添加して抵抗調整を行ってもよい。また、弾性層2bはこれらの弾性材料を発泡成型した発泡体であってもよい。
【0043】
抵抗層2d(e)は、弾性層に接した位置に形成されるため弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電部材表面へのブリードアウトを防止する目的で設けたり、帯電部材全体の電気抵抗を調整する目的で設ける。
【0044】
被覆層が複数層(抵抗層、表面層)であるときに、抵抗層2d(e)を構成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は、単独又は2種類以上を混合してもよく、共重合体であってもよい。
【0045】
抵抗層2d(e)は、導電性もしくは半導電性を有している必要がある。導電性、半導電性の発現のためには、各種電子伝導機構を有する導電剤(導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩)を適宜用いることができる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。抵抗層2d(e)には、表面処理された無機微粒子及び導電剤を含有することが特に好ましく、表面層が抵抗層を兼ねる場合には、表面処理された無機微粒子及び導電剤であることが好ましい。
【0046】
また、被覆層が複数層(抵抗層、表面層)であるときの表面層2cは、帯電部材の表面を構成し、被帯電体である感光体と接触するため感光体を汚染してしまう材料構成であってはならない。
【0047】
表面層2cの結着樹脂材料としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が挙げられ、特にはフッ素樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等の滑り性や離型性に優れたものが好ましい。
【0048】
これらの結着樹脂に静摩擦係数を小さくする目的で、グラファイト、雲母、二硫化モリブテン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑剤、或いはフッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等を添加してもよい。
【0049】
表面層には、各種導電剤(導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性酸化チタン等)を適宜用いる。本発明においては、所望の電気抵抗を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。導電剤の粒径は平均粒径で1.0μm未満であることが好ましい。平均粒径が1.0μmを超えると感光ドラム上にピンホールが存在した場合、ピンホールリークが発生し易くなるため好ましくない。また、導電剤粒子の比重が重い場合は平均粒径が1.0μmを超えると塗料分散安定性が悪くなり、塗料中で沈降し易いので好ましくない。
【0050】
ここでいう平均粒径とは、10万倍の透過電子顕微鏡像から任意の一次粒子400個の粒子径を実測し、個数平均径を算出したものである。粒子径としては、粒子の長軸を測定し、長軸/短軸比が2以上の場合にはその平均値をもって測定値とし、これらの値から算出する。
【0051】
また、導電剤と結着樹脂の割合は質量比で0.1:1.0〜2.0:1.0であることが好ましい。導電剤が0.1に満たないと導電剤を含有させたことによる効果を得難くなり、2.0を超えると表面層の機械的強度が低下し、層が脆くなったり、硬度が上がって柔軟性がなくなり易い。
【0052】
被覆層に含有される無機微粒子としては、絶縁性無機微粒子が好ましく、例えは、酸化物、複酸化物、金属酸化物、金属、炭素、炭素化合物、フラーレン、ホウ素化合物、炭化物、窒化物、セラミックス及びカルコゲン化合物が挙げられる。本発明においては、前記各種無機微粒子を2種以上併用してもよい。また、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性無機微粒子を用いることが好ましい。
【0053】
導電剤の表面は、チタンカップリング剤或いはアルコキシシランカップリング剤等のカップリング剤及びフルオロアルキルアルコキシシランカップリング剤等のカップリング剤(珪素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の中心金属は特に選ばない)、又はオイル、ワニス、有機化合物等で処理されていてもよい。
【0054】
(表面層の塗工について)
表面層2cの作製方法としては、前記した各材料を2成分以上の有機溶剤中に添加し塗工液を作製する。この塗工液の粘度は1〜250mPasの範囲内にあるのが好ましいが、粘度により膜厚が変化するため、特には5〜25mPasであることが好ましく、このとき得られる表面層2cの厚みは10〜30μmである。
【0055】
本発明に用いることのできる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンのケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0056】
塗工液の作製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミル又は振動ミル等を用いる。
【0057】
塗工に先立ち、予め所定温度に加熱しておいた本発明のマスキング用キャップを装着する。
【0058】
塗工方法としては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法等の公知の塗工方法が利用可能である。
【0059】
次に、上記のような塗工方法で作製したウエット状態の被覆層2cを乾燥機に移す。乾燥機では、塗工液中の含有溶剤に対して、60質量%以上含まれる溶剤の沸点より40℃低い温度から60質量%以上含有する溶剤の沸点以下の温度の範囲で所定時間乾燥して溶剤成分を蒸発させる。次に、前記塗工液中の有機溶剤のうち含有溶剤に対して10質量%以上含有する溶剤の中で最高沸点を有する溶剤の沸点以上の温度で所定時間乾燥して溶剤成分を蒸発させることにより、被覆層2cが形成される。
【0060】
2種類の温度での乾燥工程は、一つの乾燥機において温度設定を切り替えて行う方法、また2種類の温度に設定された2つの乾燥機を用いる方法等がある。一つの乾燥機を用いる場合、乾燥機内に導電性部材を静置するバッチ式、導電性部材をこれらの乾燥機中を通過させる連続式等を採用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に、具体的な実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
【0062】
(実施例1)
下記の要領で本発明の帯電部材としての帯電ローラーを作製した。
【0063】
エピクロルヒドリンゴム 100部
四級アンモニウム塩 2部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 5部
【0064】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1部及びノクセラーTS0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、φ6mmステンレス製支持体の周囲にローラー状になるように押出成型機にて成型し、加熱加硫成型した後、外径φ12mmになるように研磨処理して弾性層を得た。
【0065】
次に、前記弾性層上に以下に示すような表面層を被覆形成した。表面層2cの材料として、
アクリルポリオール溶液 100部
(有効成分70質量%、希釈溶剤としてキシレン30質量%を含有)
イソシアネートA(IPDI) 40部
(有効成分60質量%、希釈溶剤としてn−酢酸ブチルを15質量%、
キシレン25質量%を含有)
イソシアネートB(HDI) 30部
(有効成分80質量%、希釈溶剤として酢酸エチル20質量%を含有)
表面処理した導電性酸化錫 90部
(処理剤;フルオロアルキルアルコキシシラン)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子 35部
メチルイソブチルケトン 340部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を作製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理(処理速度500ml/min)を行い、ディッピング用塗料を作製した。なお、この塗工液の粘度は9.0mPasであり、液温は23±2℃になるように管理した。
【0066】
次に、予めホットプレート上でポリアセタール製のマスキング用キャップ3の表面温度が46℃になるように加熱し、冷めないように直ちに図3に示すようにステンレス製支持体2aの一方に被せ、マスキング用キャップ3の表面温度が25℃になるまで室温で自然冷却する。その後、もう一方のステンレス製支持体2aを前記塗工液の表面に対して垂直状態に保持して、塗工液中に浸漬し、(図4参照)引き上げて10分間の風乾をした後、マスキング用キャップを取り外し、熱風乾燥機にて、80℃で1時間乾燥させた後、更に160℃で1時間乾燥させ、表面層を被覆形成したローラー形状の帯電部材を得た。なお、マスキング用キャップ3の中央部に設けられた筒状空洞部の直径は、通常、ステンレス製支持体φ6mmに対し略嵌合の外径であるが、ここでは、選択的に筒状空洞部の直径が、成型不良で、通常のものより+0.03〜+0.06mm大きいマスキング用キャップを選び出して用いた。
【0067】
次に、以上の様にして得られた帯電部材の表面を目視にて観察し、気泡によってできた筋状凹欠陥を同様の方法で作製した帯電部材50本について発生数を調べ、その結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、マスキング用キャップ3を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図5に示されるマスキング用キャップ5にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
実施例2において、マスキング用キャップ5を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例2と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図6に示されるマスキング用キャップ6にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
実施例3において、マスキング用キャップ6を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例3と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図7に示されるマスキング用キャップ7にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
実施例4において、マスキング用キャッ7を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例4と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例5)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図8に示されるマスキング用キャップ8にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
(比較例5)
実施例5において、マスキング用キャッ8を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例5と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図9に示されるマスキング用チューブ9にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0078】
(比較例6)
実施例6において、マスキング用チューブ9を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例6と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜5は、マスキング用キャップを加熱し、導電性支持体の露出部に装着することで、気泡による凹欠陥は発生しなかった。これに対し、比較例1〜5は、実施例と同じ形状のマスキング用キャップを用い、加熱せずそのまま導電性支持体の露出部に装着した結果、気泡による凹欠陥が数多く発生した。
【0081】
実施例6、比較例6は、チューブ形状のマスキングを用いて、加熱の有無による効果を確認したものであるが、マスキング用チューブを加熱し導電性支持体の露出部に装着することで、加熱しないものより、凹欠陥の発生数が低減した。しかし、マスキングの形状が気泡発生に対して適当でないため、凹欠陥の発生は完全には抑制できていない。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、マスキング用キャップを予め加熱しておき、温度の高いまま導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを装着することで、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止するだけでなく、塗工時の気泡発生を防止するため、表面欠陥の無い被覆層を形成すると共に、感光体と電気抵抗の低いゴム或いは発泡体で形成したローラー端部の間において火花放電しないような被覆層の端部形状を有する導電性部材の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】帯電ローラーの概略図である。
【図2】別の帯電ローラーの概略図である。
【図3】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図4】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の製造方法を示す断面図である。
【図5】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図6】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図7】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図8】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図9】マスキング用チューブを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
3、5、6、7、8 マスキング用キャップ
4 塗工液
9 マスキング用チューブ
10 空間部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における帯電、現像、転写、クリーニング、除電等に用いる導電性部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真プロセスにおける帯電プロセスは、金属ワイヤーに高電圧(直流電圧6〜8kV)を印加して発生するコロナシャワーにより被帯電体である電子写真感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるコロナ帯電器が広く利用されていた。しかし、高圧電源を必要とする、比較的多量のオゾンが発生する等の問題があった。
【0003】
これに対して導電性部材を感光体に接触させながら電圧を印加して、感光体表面を帯電させる接触帯電方式が実用化されている。これは、感光体に、ローラー型、ブレード型、ブラシ型及び磁気ブラシ型等の電荷供給部材としての導電性部材(帯電部材)を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に一様帯電させるものである。
【0004】
この帯電方式は、電源の低電圧化とオゾンの発生量が少ないという利点を有している。この中でも特に接触帯電部材として導電性ローラーを用いたローラー帯電方式が、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。しかしながら、帯電の均一性に関してはコロナ帯電器と比較してやや不利であった。
【0005】
従来、帯電均一性を改善するために、所望の被帯電体表面電位Vdに相当する直流電圧に帯電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流電圧成分(AC電圧成分)を重畳した電圧(脈流電圧;時間と共に電圧値が周期的に変化する電圧)を接触帯電部材に印加する「AC帯電方式」が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0006】
これは、AC電圧による電位の均し効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、環境等の外乱には影響されることはなく、接触帯電方式として優れた方法である。
【0007】
しかしながら、直流電圧印加時における放電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く。更には、交流電流を多量に消費することにより、帯電ローラー及び感光体の耐久性が低下し易いという問題点があった。
【0008】
これらの問題点は、帯電ローラーに直流電圧のみを印加して帯電を行うことにより解消されるものの、帯電ローラーに直流電圧のみを印加すると、帯電部材被覆層表面の欠陥がAC帯電方式に比べ、画像不良として現れ易い傾向にある。
【0009】
一般に被覆層の形成方法として、ディップ塗工やロールコート法等があり、数μm〜数十μmの膜が形成されることが多い。この被覆層により、帯電ムラを防止する効果があるが、塗工液を用いて被覆層を形成するため、欠陥が生じ易い。
【0010】
従来、塗工液を用いて被覆層を形成する場合は、被覆層表面欠陥及びローラー端部の塗工ムラ、導電性支持体への塗工液付着等を防止するため、導電性支持体にチューブ形状やキャップ形状のマスキングを装着するのが一般的な方法となっている。
【0011】
従来の導電ローラーのマスキングは、前記問題を解決するため、導電性支持体にマスキングチューブを被着するとある。これによると、塗布中或いは乾燥中に、マスキングチューブとシャフトとの間、或いは、マスキングチューブとローラー端部との間に、わずかに存在する空気が、ローラー端部部分の被覆に染み出して泡を生じ、この部分にピンホールを発生し易く、また被覆層が切れ易いという問題も解決するとある(例えば、特許文献1)。
【0012】
しかし、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ塗工で、チューブ形状のマスキング用キャップを用いると、被覆層表面に欠陥を生じさせてしまう。詳しくは、チューブ形状のマスキング用キャップが装着されたローラーを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、最初はチューブ中央の空洞部分に塗工液が入らず空気が溜まる。更に、ローラーが降下していき時間が経過すると、チューブ中央に溜まった空気中に溶剤のガスも加わり、体積膨張し最終的に気泡が発生する。また別な気泡の発生の仕方としては、マスキングチューブとシャフトとの間、或いはマスキングチューブとローラー端部との間に隙間があるとローラーを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、隙間にわずかに存在する空気が、液圧に負けて染み出して気泡を発生する。
【0013】
上記のようなかたちで発生した気泡は、塗工液面まで上昇するが、ローラーと液面の表面張力の関係でローラー側に付着する。更に、ローラーは降下・上昇するため、気泡は液面でローラー表面を擦るようなかたちになり、この跡が乾燥後もローラーの長手方向に筋状の凹欠陥となって残ってしまう。
【0014】
この防止策として、マスキング用キャップの液面突入速度を遅くする方法や塗工液中にシリコーンオイル等の消泡剤を添加する方法等が考えられるが、塗工時間が長くなったり、シリコーンオイルの種類によっては感光体を汚染してしまう等の弊害も多く、満足する結果は得られない。
【0015】
また、マスキング用キャップに縦断面略π字形状(例えば、特許文献2)を用いて、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で塗工した場合においても、マスキング用キャップの先端が平らで液面に対して平行であるため、液面突入時の液面の乱れが大きいため、気泡が発生し易く、被覆層表面に欠陥を生じさせてしまう。
【0016】
以上のように電子写真技術においては近年の市場の高画質化の要求により、トナーが小粒径化し、微粉トナーの割合も増加し、それに伴い導電性部材の汚染の度合いも増加してきた。
【0017】
また、長寿命化やカラー化等の要求により、導電性部材及び感光ドラムを含むユニットの目標耐久寿命値が伸びており(カラー化により1枚の出力を得るための動作時間は長くなる)、それにより付着物の堆積量が大きくなり、以前の耐久枚数では発生しなかった僅かな被覆層の欠陥を原因とする小さな画像不良も耐久後半で顕在化してくるようになった。
【0018】
従って、塗工時の気泡発生による塗工面の欠陥は、極微小なものでも高画質の要求に耐えられないものであり、特に、塗工時において装着の外形上問題の無いマスキング用キャップの使用であっても、其のままでは気泡の完全遮断が困難であったため、更なる工夫を必要とした。
【0019】
【特許文献1】
特開平10−177290号公報(5頁)
【特許文献2】
特開2001−179144号公報(図1)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、表面欠陥の無い被覆層を形成するとともに、感光体と電気抵抗の低いゴム或いは発泡体で形成したローラー端部の間において火花放電しないような被覆層の端部形状を有する製造方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体と、その外周に形成された被覆層を有してなる導電性部材の製造方法において、塗工液を調製する工程、マスキング用キャップを該導電性支持体の露出部に装着する前に、予め加熱しておき、温度の高いまま、少なくとも一方の該導電性支持体の露出部に装着し、該塗工液を該導電性支持体の外周面上に塗布する工程、該導電性支持体の外周面上に塗布された塗工液を乾燥する工程、を経由して、該導電性支持体の外周面上に被覆層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
なお、以下では、ローラー形状の帯電部材の表面被覆層の形成に関して詳述するが、帯電部材以外の、現像剤担持部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性部材において、被覆層を形成する場合も、同様の考え方が適用されうる。また、更には、従来の技術で上述したAC帯電よりも使用可能条件が厳しいと考えられるDC帯電の帯電ローラーに対して、適合するものであり、AC帯電への使用可能性が高いのはいうまでも無い。
【0024】
(1)マスキング用キャップ
従来の技術においては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、導電性支持体の露出部にマスキング用チューブやマスキング用キャップを取り付けることで、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止している。このとき、マスキング用チューブやマスキング用キャップの形状を工夫することで、塗工時に発生する気泡を防止し、表面欠陥の無い被覆層を形成することができ、非常に有効な手段となる。
【0025】
しかし、マスキング用キャップの形状を工夫し、塗工時に発生する気泡を防止できたとしても、マスキング用キャップの成型方法等によっては、希に成型不良による寸法が狂ったものやバリのあるものもできてしまうことがある。例えば、マスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部の内径が通常使用時のものより、僅かに大きいものであった場合、マスキング用キャップを導電性支持体の露出部に装着し、マスキング用キャップが下側になるようにすると、マスキング用キャップは外れてしまう。ここで本発明の装着方法を利用すれば、マスキング用キャップは導電性支持体の露出部に密着し外れない。
【0026】
また、従来技術においては、本発明のようにマスキング用キャップの装着方法については、特に限定したものは無く、本発明の装着方法を利用すれば、これまで塗工時に気泡が発生していた形状のマスキング用キャップであっても、気泡発生の抑制効果は高い。具体的には以下の様な作用で効果があると考えている。
【0027】
樹脂でできたマスキング用キャップを予め加熱しておき、温度の高いまま導電性支持体の露出部に装着する。するとマスキング用キャップは、室温に保持されていた導電性支持体や弾性層端部に熱を奪われ、急激に冷やされる。と同時にマスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にある僅かな隙間(空間)の空気も体積収縮し、減圧状態となりマスキング用キャップが導電性支持体や弾性層端部に良く密着する。一度、装着されると、マスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にある僅かな隙間(空間)の減圧状態は長く継続するため、マスキング用キャップが装着されたローラー形状の帯電部材においてマスキング用キャップが下側になるように、ローラー形状の帯電部材を吊しておいてもマスキング用キャップは外れることはない。
【0028】
また、樹脂でできたマスキング用キャップは加熱により体積膨張するため、導電性支持体露出部にマスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部を挿入することがスムーズになる。更には、装着されたマスキング用キャップは、接触する導電性支持体や弾性層端部に冷やされ、体積収縮するため、しっかりと導電性支持体の露出部に装着される。
【0029】
ここで用いることのできるマスキング用キャップの材質は、塗工液を汚染しないものであれば、特に限定されないが、塗工液が付着しても寸法精度を維持できる材質であるものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂等が挙げられる。以上の樹脂系の熱膨張係数は、その殆どが10−4〜10−5/Kであり、導電性支持体の金属系素材に比べ一桁程度大きく、前述のマスキング用キャップが冷却されて、導電性支持体露出部への密着性が高くなるのは言うまでもない。
【0030】
導電性支持体の表面温度と予め加熱しておいた前記マスキング用キャップの表面温度の差は10℃以上〜60℃未満であることが好ましいが、通常、導電性支持体の表面温度が室温と考えた場合、マスキング用キャップの表面温度は、25〜90℃の範囲であることが好ましい。更に好ましい温度範囲としては、40〜70℃である。但し、マスキング用キャップの軟化温度以下の範囲とする。
【0031】
導電性支持体の表面温度とマスキング用キャップの表面温度の差が10℃未満の時は、温度差が小さいためマスキング用キャップと導電性支持体や弾性層端部との間にあるわずかな隙間(空間)の空気の体積収縮も小さく、導電性支持体や弾性層端部へのマスキング用キャップの密着性向上があまり期待できない。また導電性支持体の表面温度とマスキング用キャップの表面温度の差が60℃以上の時は、マスキング用キャップの熱量が極めて大きいため導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを取り付けると、導電性支持体が温まってしまう可能性がある。このような場合、マスキング用キャップを装着後、時間をおけば密着性は向上するが、時間を要してしまう。
【0032】
導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを装着し、マスキング用キャップの表面温度と塗工液の液温度の差は10℃以内であることが好ましいが、更に好ましい温度範囲としては、5℃以内である。
【0033】
マスキング用キャップの表面温度と塗工液の液温度の差が10℃を超えると、塗布する工程において、マスキング用キャップは塗工液中で熱を奪われ液温まで冷やされるが、これは塗工液の一部が局在的に温められているため、導電性部材の表面被覆層に塗工欠陥(膜厚ムラ)が生じ易くなる。
【0034】
本発明で効果のあるマスキング用キャップの形状としては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、導電性支持体の露出部に設けるマスキング用キャップであって、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止できるものであれば特に限定されるものではないが、本発明の方法を用いなくても、塗工時に発生する気泡を防止し、表面欠陥の無い被覆層を形成することのできる形状のマスキング用キャップが好ましい。
【0035】
具体的には、マスキング用キャップの外径が弾性層端部の外径以下であり、また、マスキング用キャップ中央部に設けられた筒状空洞部の径が前記導電性支持体の露出部に対して略嵌合の外径であり、マスキング用キャップの弾性層端部と対面する側の逆の先端が流線形状であり、かつ流線形状先端には、穴が無い形状が好ましい。更には、マスキング用キャップ端部と流線形状先端との間の外径が、マスキング用キャップ端部の外径より大きな径となってもよい形状で、マスキング用キャップの中央部に設けられた筒状空洞部中に導電性支持体の長手方向と平行な導電性支持体保持用突起構造(ゲート)を3ヶ所以上設けてもよい形状であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
マスキング用キャップの中央部には、導電性支持体を挿入するための、筒状空洞部が設けられているが、その径は前記導電性支持体の露出部に対して略嵌合の外径であることが好ましい。具体的には、導電性支持体の外径に対し、マスキング用キャップ中央部の筒状空洞部の径の差は±0.05mmの範囲内であることが好ましいが、更には±0.02mmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
(2)導電性部材
例えば、導電性部材は図1に示すようにローラー形状であり、導電性支持体2aと被覆層として、その外周に一体に形成された弾性層2bから構成されている。
【0038】
本発明の導電性部材の他の構成を図2に示す。図2に示すように導電性部材は、被覆層が弾性層2bと表面層2cからなる2層であってもよいし、弾性層2b及び抵抗層2dと表面層2cからなる3層及び、抵抗層2dと表面層2cの間に第2の抵抗層2eを設けた、4層以上を導電性支持体2aの上に形成した構成としてもよい。
【0039】
本発明に用いられる導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0040】
弾性層2bの導電性は、ゴム等の弾性材料中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宜添加することにより1010Ω・cm未満に調整されるのが好ましい。弾性層2bの具体的弾性材料としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコンーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。
【0041】
直流電圧のみを印加して、被帯電体の帯電処理を行う帯電部材においては、帯電均一性を達成するために、特に中抵抗の極性ゴム(例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、CR及びウレタンゴム等)やポリウレタン樹脂を弾性材料として用いるのが好ましい。これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂は、ゴムや樹脂中の水分や不純物がキャリアとなり、僅かではあるが導電性をもつと考えられ、これらの導電機構はイオン伝導であると考えられる。但し、これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂に導電剤を全く添加しないで弾性層を作製し、得られた帯電部材は低温低湿環境(L/L)において、抵抗値が高くなり1010Ω・cm以上となってしまうものもあるため帯電部材に高電圧を印加しなければならなくなる。
【0042】
そこで、L/L環境で帯電部材の抵抗値が1010Ω・cm未満になるように、前述した電子導電機構を有する導電剤やイオン導電機構を有する導電剤を適宜添加して調整するのが好ましい。イオン導電機構を有する導電剤の方が、抵抗調整がし易く製法上好ましい。しかしながら、イオン導電機構を有する導電剤は抵抗値を低くする効果が小さく、特にL/L環境でその効果が小さい。そのため、イオン導電機構を有する導電剤の添加と併せて電子導電機構を有する導電剤を補助的に添加して抵抗調整を行ってもよい。また、弾性層2bはこれらの弾性材料を発泡成型した発泡体であってもよい。
【0043】
抵抗層2d(e)は、弾性層に接した位置に形成されるため弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電部材表面へのブリードアウトを防止する目的で設けたり、帯電部材全体の電気抵抗を調整する目的で設ける。
【0044】
被覆層が複数層(抵抗層、表面層)であるときに、抵抗層2d(e)を構成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は、単独又は2種類以上を混合してもよく、共重合体であってもよい。
【0045】
抵抗層2d(e)は、導電性もしくは半導電性を有している必要がある。導電性、半導電性の発現のためには、各種電子伝導機構を有する導電剤(導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩)を適宜用いることができる。この場合、所望の電気抵抗を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。抵抗層2d(e)には、表面処理された無機微粒子及び導電剤を含有することが特に好ましく、表面層が抵抗層を兼ねる場合には、表面処理された無機微粒子及び導電剤であることが好ましい。
【0046】
また、被覆層が複数層(抵抗層、表面層)であるときの表面層2cは、帯電部材の表面を構成し、被帯電体である感光体と接触するため感光体を汚染してしまう材料構成であってはならない。
【0047】
表面層2cの結着樹脂材料としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が挙げられ、特にはフッ素樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等の滑り性や離型性に優れたものが好ましい。
【0048】
これらの結着樹脂に静摩擦係数を小さくする目的で、グラファイト、雲母、二硫化モリブテン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑剤、或いはフッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等を添加してもよい。
【0049】
表面層には、各種導電剤(導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性酸化チタン等)を適宜用いる。本発明においては、所望の電気抵抗を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。導電剤の粒径は平均粒径で1.0μm未満であることが好ましい。平均粒径が1.0μmを超えると感光ドラム上にピンホールが存在した場合、ピンホールリークが発生し易くなるため好ましくない。また、導電剤粒子の比重が重い場合は平均粒径が1.0μmを超えると塗料分散安定性が悪くなり、塗料中で沈降し易いので好ましくない。
【0050】
ここでいう平均粒径とは、10万倍の透過電子顕微鏡像から任意の一次粒子400個の粒子径を実測し、個数平均径を算出したものである。粒子径としては、粒子の長軸を測定し、長軸/短軸比が2以上の場合にはその平均値をもって測定値とし、これらの値から算出する。
【0051】
また、導電剤と結着樹脂の割合は質量比で0.1:1.0〜2.0:1.0であることが好ましい。導電剤が0.1に満たないと導電剤を含有させたことによる効果を得難くなり、2.0を超えると表面層の機械的強度が低下し、層が脆くなったり、硬度が上がって柔軟性がなくなり易い。
【0052】
被覆層に含有される無機微粒子としては、絶縁性無機微粒子が好ましく、例えは、酸化物、複酸化物、金属酸化物、金属、炭素、炭素化合物、フラーレン、ホウ素化合物、炭化物、窒化物、セラミックス及びカルコゲン化合物が挙げられる。本発明においては、前記各種無機微粒子を2種以上併用してもよい。また、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性無機微粒子を用いることが好ましい。
【0053】
導電剤の表面は、チタンカップリング剤或いはアルコキシシランカップリング剤等のカップリング剤及びフルオロアルキルアルコキシシランカップリング剤等のカップリング剤(珪素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の中心金属は特に選ばない)、又はオイル、ワニス、有機化合物等で処理されていてもよい。
【0054】
(表面層の塗工について)
表面層2cの作製方法としては、前記した各材料を2成分以上の有機溶剤中に添加し塗工液を作製する。この塗工液の粘度は1〜250mPasの範囲内にあるのが好ましいが、粘度により膜厚が変化するため、特には5〜25mPasであることが好ましく、このとき得られる表面層2cの厚みは10〜30μmである。
【0055】
本発明に用いることのできる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンのケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0056】
塗工液の作製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミル又は振動ミル等を用いる。
【0057】
塗工に先立ち、予め所定温度に加熱しておいた本発明のマスキング用キャップを装着する。
【0058】
塗工方法としては、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法等の公知の塗工方法が利用可能である。
【0059】
次に、上記のような塗工方法で作製したウエット状態の被覆層2cを乾燥機に移す。乾燥機では、塗工液中の含有溶剤に対して、60質量%以上含まれる溶剤の沸点より40℃低い温度から60質量%以上含有する溶剤の沸点以下の温度の範囲で所定時間乾燥して溶剤成分を蒸発させる。次に、前記塗工液中の有機溶剤のうち含有溶剤に対して10質量%以上含有する溶剤の中で最高沸点を有する溶剤の沸点以上の温度で所定時間乾燥して溶剤成分を蒸発させることにより、被覆層2cが形成される。
【0060】
2種類の温度での乾燥工程は、一つの乾燥機において温度設定を切り替えて行う方法、また2種類の温度に設定された2つの乾燥機を用いる方法等がある。一つの乾燥機を用いる場合、乾燥機内に導電性部材を静置するバッチ式、導電性部材をこれらの乾燥機中を通過させる連続式等を採用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に、具体的な実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
【0062】
(実施例1)
下記の要領で本発明の帯電部材としての帯電ローラーを作製した。
【0063】
エピクロルヒドリンゴム 100部
四級アンモニウム塩 2部
炭酸カルシウム 30部
酸化亜鉛 5部
脂肪酸 5部
【0064】
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1部及びノクセラーTS0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、φ6mmステンレス製支持体の周囲にローラー状になるように押出成型機にて成型し、加熱加硫成型した後、外径φ12mmになるように研磨処理して弾性層を得た。
【0065】
次に、前記弾性層上に以下に示すような表面層を被覆形成した。表面層2cの材料として、
アクリルポリオール溶液 100部
(有効成分70質量%、希釈溶剤としてキシレン30質量%を含有)
イソシアネートA(IPDI) 40部
(有効成分60質量%、希釈溶剤としてn−酢酸ブチルを15質量%、
キシレン25質量%を含有)
イソシアネートB(HDI) 30部
(有効成分80質量%、希釈溶剤として酢酸エチル20質量%を含有)
表面処理した導電性酸化錫 90部
(処理剤;フルオロアルキルアルコキシシラン)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子 35部
メチルイソブチルケトン 340部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を作製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理(処理速度500ml/min)を行い、ディッピング用塗料を作製した。なお、この塗工液の粘度は9.0mPasであり、液温は23±2℃になるように管理した。
【0066】
次に、予めホットプレート上でポリアセタール製のマスキング用キャップ3の表面温度が46℃になるように加熱し、冷めないように直ちに図3に示すようにステンレス製支持体2aの一方に被せ、マスキング用キャップ3の表面温度が25℃になるまで室温で自然冷却する。その後、もう一方のステンレス製支持体2aを前記塗工液の表面に対して垂直状態に保持して、塗工液中に浸漬し、(図4参照)引き上げて10分間の風乾をした後、マスキング用キャップを取り外し、熱風乾燥機にて、80℃で1時間乾燥させた後、更に160℃で1時間乾燥させ、表面層を被覆形成したローラー形状の帯電部材を得た。なお、マスキング用キャップ3の中央部に設けられた筒状空洞部の直径は、通常、ステンレス製支持体φ6mmに対し略嵌合の外径であるが、ここでは、選択的に筒状空洞部の直径が、成型不良で、通常のものより+0.03〜+0.06mm大きいマスキング用キャップを選び出して用いた。
【0067】
次に、以上の様にして得られた帯電部材の表面を目視にて観察し、気泡によってできた筋状凹欠陥を同様の方法で作製した帯電部材50本について発生数を調べ、その結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、マスキング用キャップ3を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図5に示されるマスキング用キャップ5にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
実施例2において、マスキング用キャップ5を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例2と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図6に示されるマスキング用キャップ6にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
実施例3において、マスキング用キャップ6を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例3と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図7に示されるマスキング用キャップ7にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
実施例4において、マスキング用キャッ7を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例4と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例5)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図8に示されるマスキング用キャップ8にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0076】
(比較例5)
実施例5において、マスキング用キャッ8を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例5と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
実施例1においてマスキング用キャップ3を図9に示されるマスキング用チューブ9にする以外、他は実施例1と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0078】
(比較例6)
実施例6において、マスキング用チューブ9を加熱せず、室温でそのままステンレス製支持体2aの一方に被せた以外、他は実施例6と同様にして帯電部材を作製した。この帯電部材について実施例1と同様にして目視での観察を行い、その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜5は、マスキング用キャップを加熱し、導電性支持体の露出部に装着することで、気泡による凹欠陥は発生しなかった。これに対し、比較例1〜5は、実施例と同じ形状のマスキング用キャップを用い、加熱せずそのまま導電性支持体の露出部に装着した結果、気泡による凹欠陥が数多く発生した。
【0081】
実施例6、比較例6は、チューブ形状のマスキングを用いて、加熱の有無による効果を確認したものであるが、マスキング用チューブを加熱し導電性支持体の露出部に装着することで、加熱しないものより、凹欠陥の発生数が低減した。しかし、マスキングの形状が気泡発生に対して適当でないため、凹欠陥の発生は完全には抑制できていない。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ローラーを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で導電性部材の表面被覆層を形成する際、マスキング用キャップを予め加熱しておき、温度の高いまま導電性支持体の露出部にマスキング用キャップを装着することで、導電性支持体の露出部への塗工液の付着を阻止するだけでなく、塗工時の気泡発生を防止するため、表面欠陥の無い被覆層を形成すると共に、感光体と電気抵抗の低いゴム或いは発泡体で形成したローラー端部の間において火花放電しないような被覆層の端部形状を有する導電性部材の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】帯電ローラーの概略図である。
【図2】別の帯電ローラーの概略図である。
【図3】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図4】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の製造方法を示す断面図である。
【図5】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図6】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図7】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図8】マスキング用キャップを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【図9】マスキング用チューブを導電性部材に被せた時の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
3、5、6、7、8 マスキング用キャップ
4 塗工液
9 マスキング用チューブ
10 空間部分
Claims (8)
- 導電性支持体と、その外周に形成された被覆層を有してなる導電性部材の製造方法において、
塗工液を調製する工程、
マスキング用キャップを該導電性支持体の露出部に装着する前に、予め加熱しておき、温度の高いまま、少なくとも一方の該導電性支持体の露出部に装着し、該塗工液を該導電性支持体の外周面上に塗布する工程、
該導電性支持体の外周面上に塗布された塗工液を乾燥する工程、
を経由して、該導電性支持体の外周面上に被覆層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。 - 前記導電性支持体の表面温度と予め加熱しておいた前記マスキング用キャップの表面温度の差が10℃以上〜60℃未満である請求項1に記載の導電性部材の製造方法。
- 前記導電性支持体の露出部に前記マスキング用キャップを装着し、前記導電性部材の被覆層を塗工液で塗工し形成する場合、前記マスキング用キャップの表面温度と塗工液の液温度の差が10℃以内である請求項1又は2に記載の導電性部材の製造方法。
- 前記被覆層が二層以上の積層構成からなる請求項1〜3のいずれかに記載の導電性部材の製造方法。
- 前記導電性支持体上に形成された層が弾性層である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性部材の製造方法。
- 前記導電性部材が一次帯電部材である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性部材の製造方法。
- 前記導電性部材がローラー形状である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性部材の製造方法。
- 前記導電性部材が直流電圧を印加される請求項1〜7のいずれかに記載の導電性部材の製造方法。
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-
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- 2003-06-12 JP JP2003167917A patent/JP2005000825A/ja active Pending
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