JP2004536863A - ベンゾフランおよび心房細動の治療におけるそれらの使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、心疾患、特に心房細動の治療のための、他のイオンチャネルに著しい影響を及ぼすことなく、哺乳類の心臓の心房における一定の膜貫通カリウム電流を抑制する新規の化合物、およびそれらの薬学的使用に、ならびに既知の化合物の薬学的使用に関する。本発明は、このような化合物を含む薬学的組成物にも関する。
Description
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、他のイオンチャネルに著しい影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の心房における一定の膜貫通カリウム電流を抑制する新規の化合物に関する。本発明は、心疾患、特に心房細動を治療するための薬剤の調製における、特定の既知の化合物の使用にも関する。本発明はさらに、心疾患、特に心房細動を治療するための組成物であって、他のイオンチャネルに著しい影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の心房における一定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物を含有する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
細胞膜は、イオンに対して不透過性である塩基性脂質二重層構造を有する。イオンが細胞膜を透過するための経路を提供し、それによりカリウム(以下、K)、ナトリウム(以下、Na)またはカルシウム(以下、Ca)のようなイオンに対して膜を透過性にさせる特殊なタンパク質(以下、イオンチャネルと称する)が見出されてきた。イオンチャネルの開閉により、イオンの種類によって膜を透過性にさせたりまたは不透過性にさせ、それにより細胞膜の多くの特性および機能を調節する。イオンチャネルは、細胞に膜電位を生じさせて、そしてこれらの膜電位を変える電流を流れさせて、それにより細胞膜による根本的な電気的シグナル伝達を変えさせる。膜貫通電流(以下、I)は、開放イオンチャネルを通るイオン流である。イオンチャネルは、心臓における異常電気的活動を治療するために用いられる多数の抗不整脈薬の標的である。療法的側面から、K−チャネルを遮断することは、活動電位持続時間(APD)を延長させ、不応期を引き延ばさせ、かつ表面ECGにおけるQ−T延長を生じさせる一古典的な不整脈のメカニズムである(Singh B and Nademanee K, Am Heart J, 1985, 109:421-30)。
【0003】
いくつかの異なる種類のイオンチャネル、例えばNa−、Ca−およびK−イオンチャネルは哺乳類動物の心臓において活性であり、異なるイオン電流(例えばINa、ICaおよびIK)を生じさせる。ほとんどのKチャネルは、電圧活性型、例えば遅延型整流(Delayed Rectifier)Kチャネル(電流IKを生じさせる)、一過性外向き(Transient Outward)Kチャネル(電流Itoを生じる)またはリガンド作動型、例えばATP感受性Kチャネルであって、これは代謝機能障害のとき(ATPの細胞内レベルが低減される場合)に開放され、これが電流IK(ATP)を生じさせる。別のリガンド活性型Kチャネルは、ムスカリン性(Muscarinic)Kチャネルであって、これはアセチルコリンがムスカリン性受容体M2と結合する場合(電流IK(ACh)を生じさせる)、またはアデノシンがアデノシン受容体A1と結合する場合(電流IK(Ado)を生じさせる)に活性化される。
【0004】
抗不整脈薬は、ある種のイオン電流に及ぼすそれらの本質的抑制作用によって分類される:クラスI薬剤は主としてナトリウム電流を抑制し、クラスIII薬剤は主にカリウム電流を抑制する。しかしながら現在用いられている抗不整脈薬は、それらのイオンチャネルの遮断に関して選択的でなく、現在用いられている全ての薬剤がいくつかの電流との相互作用を有する。
【0005】
心臓におけるKチャネル遮断は、これまでに特定された最も効率的な抗不整脈メカニズムのうちの1つであり得る。問題は、再分極を延長させる任意の薬剤が、心室におけるトルサード・ド・ポワント(torsade de points)不整脈を誘導する内因的な関連危険性を有するという点である。しかしながら、再分極に関与するKチャネルは実際には心房と心室で異なるため、心室上部性不整脈に対しては活性であるが、QT間隔を延長せず、したがって催不整脈性でないKチャネルを特定することが可能である。
【0006】
特定リガンド活性型K電流IK(Ado)および/またはIK(ACh)の遮断は、抗不整脈薬により起こることが示されている。このメカニズムが心房細動を治療するための抗不整脈薬の効力を説明する際に重要であり得ることも主張されている(Mori K, et al. Circulation 1995 Jun 1; 91(11): 2834-43; Ohmoto-Sekine Y, et al. Br J Pharmacol 1999 Feb; 126(3): 751-61; Watanabe Y, et al. J Pharmacol Exp Ther 1996 Nov; 279(2): 617-24)。リガンド依存性電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)は、おそらくは、正常条件下で再分極を展開させる(shape)のにおける役割は小さいが、それぞれ細胞外アセチルコリンにより、細胞外アデノシンまたは細胞内ATP濃度の低減により活性化されると、これらの電流は増大され、したがって活動電位持続時間(APD)を実質的に短縮させ得る(Belardinelli L, et al. FASEB J 1995; 9(5): 359-365; Belardinelli L and Isenberg G. Am J Physiol 1983; 244(5): H734-H737; Findlay I and Faivre JF. FEBS Lett 1991; 279(1): 95-97)。抗不整脈薬の治療的作用は、APDを延長し、それにより心房心筋を異常な電気的活性に対してより屈折的(refractive)にすることである。
【0007】
リガンド依存性チャネルIK(Ado)およびIK(ATP)は、正常洞調律よりも心房頻拍性不整脈(すなわち心房細動(AF)および心房粗動)においてより活性であり、一方、IK(ACh)活性化は、迷走神経活性(AChのシナプス前放出)に依存していると予測される。心房のATP消費は心房頻拍性不整脈において増大されて、IKを活性化させるアデノシン(ATPの代謝産物)のレベルを増大させ、そして細胞内ATP濃度の減少をもたらして、それゆえIK(ATP)を活性化する(Ashcroft SJ and Ashcroft FM. Cell Signal 1990; 2(3): 197-214)。
【0008】
心房細動は今日、異常電気的活性を正常化するための抗不整脈薬を用いて治療されることはほとんどない。心房電気的活性を効果的に正常化する薬剤でAF患者を治療することに抵抗がある第一の理由は、利用可能な抗不整脈薬が、心臓において、リガンド依存性チャネルIK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)のほかに、他のイオンチャネルも遮断するからである。したがって、一般に利用可能な抗不整脈薬によりAF患者を治療することは、致命的な催不整脈作用を誘導する(心室におけるトルサード・ド・ポワントのように)という重大な危険を有している。表1で参照される抗不整脈薬が、リガンド依存性電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)に選択的に活性であるというわけではなく、他の膜貫通電流も遮断する(表2で参照)ことを考慮することは重要である。
【0009】
クラスIII作用物質アミオダロンはAFの治療に有効であることが示されており(Roy D, et al., N Engl J Med 2000 Mar 30; 342 (13): 913-20)、事実、アミオダロンはリガンド依存性電流IK(Ado)およびIK(ACh)を遮断する(Watanabe Y, et al.上記)。しかしながら、AFを治療するアミオダロンの効力が証明されているにもかかわらず、当該薬剤の副作用プロフィールは複雑である。肺毒性、眼および皮膚変化、ならびに広範な臨床的有用性を明らかに制限するその他の形態の臓器毒性といった特徴が存在する(Pollak, T.M. Am. J. Cardiol., 1999, 84, 37R-45R; Wiersinga, W.M. Chapter 10, Amiodarone and the Thyroid, In Handbook of Experimental Pharmacology, Weetman A.P., Grossman, A., Eds.; Springer-Verlag.: Berlin, Heidelberg, 1997, Vol 128)。アミオダロンは複雑な薬物動態プロフィールを有し、当該薬剤の排出は非常に遅い(Wiersingha,上記)。AFの治療のための効力が証明されているにもかかわらず、その使用に関連した全ての副作用のために、アミオダロンはあまり治療に用いられない。リガンド活性化電流IK(Ado)/IK(ACh)に及ぼす抑制作用をアミオダロンと共有しつつ、アミオダロンより低い臓器毒性を示す新規の抗不整脈薬は、AFの治療改善を提供する。事実、本発明の化合物または本発明において使用された化合物を用いて実施された毒物学的研究のデータは、アミオダロンと比較した場合、毒性が低減したことを示唆する。アミオダロンの複雑な(extreme)薬物動態的挙動は、その薬剤の投薬を複雑にし、したがってリガンド活性化電流IK(Ado)/IK(ACh)/IK(ATP)に及ぼす抑制作用をアミオダロンと共有しつつ、主流薬物動態を示す薬剤を提供することは大きな臨床的利益を有する。本発明に用いられる化合物に関する血液薬物動態、組織分布および質量平衡研究からのデータは、これらの化合物の臨床的使用がアミオダロンの場合より複雑ではないことを示す。心房細動を治療するための理想的薬剤は、疾患を特徴付ける病理学的条件下で増大される心房電流を選択的に抑制し、他の電流に作用を及ぼさない薬剤である。この理想的薬剤は、IK(Ado)/ATP電流が主として細動心房で活性であり、IK(ACh)が迷走神経誘発性心房細動の誘導に関与する電流であるため、本発明の化合物を用いて達成され得る。他の抗不整脈薬との比較において(表2参照)、本発明の化合物は、他のイオン電流との相互作用を本質的に有さず、したがって心室上部性心不整脈(すなわち心房細動)においては活性増大を示すが、心室及び正常心房における電気的活性を媒介するイオン電流を遮断する能力を伴わずに、K電流(IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP))を選択的に阻害する阻害剤とみなされ得る。
【0010】
本発明の主題である化合物およびアミオダロンはともに、細胞中のトリヨードチロニン(トリヨードサイロニン)(T3)シグナル伝達作用を拮抗することが示されており(準備中の原稿)、したがって、IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)に関して本発明の主題である化合物を用いて観察された抑制作用は、T3拮抗作用によるものでないことに留意すべきである。この説明を支持する2つの知見が存在する:すなわち、a)T3はIK(Ado)またはIK(ACh)に急性作用を及ぼさず、かつb)強力なT3アンタゴニスト(T3受容体媒介性シグナル伝達に関して本発明の主題である化合物より100倍以上強力である)はIK(Ado)またはIK(ACh)に及ぼす同様の急性作用を示さない。
【0011】
[発明の説明]
本発明において、種々の化合物の急性および慢性作用は、心筋細胞培養に適用される電気生理学的技法を用いることにより調査された。ムスカリン性受容体アゴニスト、例えばアセチルコリン(ACh)またはA1アデノシン受容体アゴニスト(例えばアデノシン(Ado))による刺激、及び細胞内ATPの低減による刺激を介して誘導される膜貫通K電流を、特定の化合物が抑制するということを本発明者等は見出した。
【0012】
抑制作用は、ACh、Adoまたはジニトロフェノール(DNPは細胞内ATPを低減する)による電流の誘導後、数秒以内に発生する。本発明の化合物により引き起こされる、心筋組織中におけるこれらのK電流に及ぼされる急性抑制作用は、これまで見出されていなかった。この理由として、これらのリガンド活性化K電流(IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP))が心房心筋細胞において選択的に活性であるという事実があり(Workman AJ et al. Cardiovasc Res 1999 Sep; 43(4): 974-84; Koumi S-IおよびWasserstorm A. American Journal of Physiology 266 [35], H1812-H1821. 1994)、一方、従来の研究は、心室からの組織を用いて行われていたことが挙げられる。さらにIK(Ado)およびIK(ACh)は、任意の抑制が観察され得る前に、M2またはA1受容体(それぞれAChおよびAdoに関して)によって誘導されねばならない。膜の細胞外側に任意のアゴニストを伴わないので、おそらくこれらのリガンド依存性チャネルの、再分極を展開させるのにおける役割は小さいが、細胞外アセチルコリンまたはアデノシンにより活性化されると、それらは心房における活動電位持続時間を実質的に短縮し得る(Tristani-Firouzi M et al. Am J Med 2001 Jan; 110(1): 50-9)。
【0013】
同様の作用(すなわちIK(Ado)またはIK(ACh)の抑制)は、他の抗不整脈薬、例えば:E−4031およびMS−551(Mori等、上記)、アプリニジン(Ohmoto等、上記)、アミオダロン(Watanabe等、上記)およびテリカラント(Brandts B. et al. Pacing Clin Electrophysiol 2000 Nov; 23(11 Pt 2): 1812-5)に関して記載されている(表1参照)。
【0014】
本発明の一態様は、K電流IK(Ado)およびIK(ACh)の一方または両方を遮断しうる化合物が、心房細動および/または心房粗動のための薬理学的治療薬として効果的であるはずであるということである。
【0015】
長期心房細動が、不整脈の持続および/または再発を助長するということは周知である(Wijffels M. et al. Circulation 92, 1954-1968. 1995)。この観察の病理生理学的背景は、心房心筋細胞におけるイオンチャネル発現の変化である(電気的リモデリング(electrical remodeling):Yue L. et al. Circulation Research 81, 512-525. 1997; Yue L. et al. Circ Res 1999; 84(7): 776-784)。心房細動を治療するための方法を調査するにあたっては、電気的リモデリングは不整脈の主因ではないという事実を理解しなければならない。電気的リモデリングは、患者において、ならびに健常心臓において発生する現象である。電気的リモデリング以外の他のメカニズムが、「疾患心房細動」の発症に関与することが示唆されている。これらのメカニズムは、不整脈の初期段階(数分〜数時間)で関連があると考察されている。
【0016】
心房細動の間に心房心筋を高周波数(5Hzより大きい)で活性化させることは、心房酸素消費を著しく増大させ、それによりATPの細胞内損失のために細胞内および細胞間アデノシン濃度を著しく増大させることが示唆されている。これらのメカニズムは、心室細動に関して十分に記載されている(Weiss JN et al. J Physiol 1992; 447: 649-673; Schrader J. et al. Experientia 1990; 46(11-12): 1172-1175; Decking UK et al. Circ Res 1997; 81(2): 154-164; Deussen A. and Schrader J. J Mol Cell Cardiol 1991; 23(4): 495-504)。心房レベルでの方法論的困難性のために(はるかに少ない組織、心房流出物を選択的に収集するための選択肢がない)、間接的観察のみによって、心房細動の間に虚血が発生していることが示唆されている。Daod等は、心房細動が発症した後、洞調律の間に、数十秒後に終わる(abolish)心房有効不応期が低減することを示した(Daoud EG et al. Circ 1996; 94: 1600-1606)。さらにRubart等は、AFの間にカリウム濃度が上昇することを示した(Rubart M. et al. J Cardiovasc Electrophysiol 2000; 11(6): 652-664)。いずれの観察も、心房における心房細動誘導性虚血の仮説と非常によく合致する。心房細動中における心房虚血は、IK(Ado)およびIK(ATP)を活性化する。いずれの電流も、心房有効不応期を顕著に低減させることが周知である。しかしながらこの期間の低減は、心房細動のようなリエントリー(reentry)頻拍の発症に関する主要決定因子の一つであることが既知である。IK(ATP)およびIK(Ado)を抑制することは心房有効不応期の短縮を逆戻りさせ得るため、このような抑制は心房細動の治療における有意の薬理学的価値を有すると予測される。さらに心室組織は、心房細動の間に「正常」速度で活性化されるため、IK(Ado)およびIK(ATP)は活性であると予測されない。従って、IK(Ado)およびIK(ATP)を選択的に抑制する薬剤は、心室電気生理学に影響を及ぼさず、それゆえ危険な催不整脈作用を発揮しない。さらに、上記のように、IK(Ado)の心室心筋細胞中での発生は非常に低い。
【0017】
本発明の別の態様は、IK(ACh)を遮断し得る化合物が、心房細動の病理生理学が十分に規定された規定サブグループの患者のための薬理学的治療薬として効果的であるはずであるという事実である。迷走神経誘導性心房細動は、迷走神経活性増大が、IK(ACh)を活性化させることにより心房有効不応期を低減させる場合に起こる不整脈とみなされる。アデノシンおよびアセチルコリン誘導性内向き整流カリウム電流は、同一イオンチャネル集団の活性化により発生するため(Bunemann M. et al. J Physiol (Lond) 1995; 489(3): 701-707; Bunemann M. et al. EMBO 1996)、アデノシン活性化イオンチャネルの阻害剤は、IK(ACh)の阻害剤としても有効である。IK(ACh)の抑制は、迷走神経誘導性心房細動の治療のための有意の価値を有する。
【0018】
3つの電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)を選択的に遮断する、本発明の主題である化合物は特有の特異性を有する。周知の抗不整脈特性を示すいくつかの化合物は、これら3つの電流のうちの少なくとも1つを抑制することが示されている(表2参照)。しかしながらこれら以外の化合物は全て、他のイオン電流をも同様に抑制することが既知である。表2は、IK(ACh)を抑制することが示された抗不整脈薬を編集したものである。興味深いことに、抗不整脈化合物の異なるクラスからの全ての化合物は、この特定電流に関して同様の作用を示すことが明示されており、そして当該編集は、「第二世代」クラスIII抗不整脈化合物(例えばD−ソタロールおよびテリカラント)を含み、これらは遅延整流K電流(IKr)の急速構成成分(rapid component)の強力な阻害剤である。当該編集は、表2に列挙された電流のほかに、いくつかの膜貫通電流(すなわちCa電流)を抑制することが既知であるクラスIII作用物質アミオダロンおよびドロネダロンも含む。さらにクラスI抗不整脈薬、例えばフレカイニド、キニジン、ジソピラミドおよびアプリニジンが含まれる。これらクラスI化合物の抗不整脈活性の最も卓越したメカニズムは、内向きNa電流の遮断である。
【0019】
IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)以外のその他のイオン電流に関する、本発明の化合物を用いた電圧固定実験からの結果も、表2に示されている。これらの電圧固定実験からのデータは、本発明の化合物が電流IK1、IKs、INaおよびItoのいずれをも適切に抑制しないことを実証する。
【0020】
IK(ACh)、IK(Ado)およびIK(ATP)を選択的に抑制する本発明の主題である化合物に特有の選択性は、それらが心房における病理学的電気活性を正常化するために心房細動および/または心房粗動を治療するのに有効であることを示唆する。その他のイオン電流、例えば内向き整流(IK1)、遅延整流の緩徐構成成分(IKs)、一過性外向きK電流(Ito)または分極Na電流(INa)を抑制しないことから、本発明の化合物が正常心臓組織中の催不整脈性を誘導する危険性が小さいことを予測することができる。今日、一般的に利用可能な薬剤に関連した心室における催不整脈作用の本質的な危険性のために、臨床医は有効抗不整脈薬を用いてAF患者を治療したがらない。本発明の化合物の選択的作用は、心室電気生理学に及ぼす有意の作用を排除して、そのレベルでの催不整脈を防止する。さらに本発明の化合物の薬物動態プロフィールは、心室催不整脈を伴うことなく、全ての種類の心房細動(迷走神経誘導性心房細動を含む)を治療するための特別な価値を有すると予測される。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明に関する化合物が、電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の遮断剤として薬剤アミオダロンと少なくとも同じくらい強力であるということである。この態様は、アミオダロンで観察される安全性プロフィールよりも、本発明の化合物で観察される安全性プロフィールが明らかに非常に良好であることを示唆する安全性に関する文書とあわせて、本発明の化合物がAFの治療のためにアミオダロンと少なくとも同じくらい有効であってかつ副作用がより少ないことを示す。
[発明の詳細な説明]
【0022】
本発明の第一の態様に従って、アセチルコリン(ACh)などのムスカリン性受容体アゴニストまたはアデノシン(Ado)などのA1アデノシン受容体アゴニストによる刺激、ならびに細胞内ATPの低減による刺激を介して誘導される特定の膜貫通K電流を抑制する新規の化合物が提供される。
【0023】
それゆえ、本発明の第1の態様では、一般式Iで表される化合物およびその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体が提供される。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、R1は、C1〜4アルキルであり、
R2は、NHCORa、NHCONHRaまたは水素であり、
R3およびR4は独立して、フッ素、塩素、C1〜6アルキルおよびCF3から選択され、
Raは、CF3、C1〜3アルキルおよび−(4−Rb)C6H4から選択され、
Rbは、C1〜4アルコキシ、ヒドロキシ、フルオロおよびニトロから選択され、
R5は、水素および−CH2−COOHから選択され、
Xは、CH2およびC=Oから選択されるが、ただしR5が水素である場合には、Xは−CH2−である)。
【0026】
好ましくは、R2は水素である。また好ましくは、R2が水素またはNHCORaであり、R3およびR4が独立してC1〜4アルキルであり、より好ましくは、R3およびR4はイソプロピルである。
【0027】
R5が−CH2−COOHである化合物では、R1は好ましくはメチルであり、R2は好ましくは水素であり、R3およびR4は好ましくは独立してC1〜4アルキルであり、R5は好ましくは−CH2−COOHであり、Xは好ましくは−CH2−である。
【0028】
特に好ましい本発明の組成物は、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(E1)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンゾイル)ベンゾフラン(E2)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(E3)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンジル)ベンゾフラン(E4)、
ならびにその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体である。
【0029】
本発明の第2の態様によると、特定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物の薬学的使用であって、心房細動または心房粗動の治療または予防のための薬剤の調製のための、他のイオンチャネルに影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の正常心房よりも疾患心房においてより活発である特定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物の薬学的使用が提供される。好ましくは、前記抑制は、3つのリガンド依存性カリウム電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の1または複数の抑制から得られる。当該化合物により引き起こされる抑制は、より好ましくはT3拮抗作用によるものでない。
【0030】
前記化合物は、一般式IIで表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体により説明される:
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、R6は、C1〜4アルキルであり、
R7は、NHCOR10、NHCONHR10または水素であり、
R8およびR9は独立して、ヨウ素および臭素から選択され、
R10は、CF3、C1〜3アルキルおよび(4−R11)C6H4から選択され、
R11は、C1〜4アルコキシ、ヒドロキシ、フルオロおよびニトロから選択され、
R12は、水素およびCH2−COOHから選択され、
Xは、CH2およびC=Oから選択される)
【0033】
好ましくは、式IIの化合物は、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)ベンゾフラン(E5)、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフラン(E6)、
ならびにその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体から選択される。
【0034】
本発明の別の実施形態は、式Iまたは式IIの少なくとも1つの化合物を、適切な場合には薬学的に許容可能な担体とともに含む、心房細動または心房粗動を治療するための薬学的組成物に関する。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態は、心房細動または心房粗動を治療する方法であって、薬学的有効量の式Iまたは式IIのうちの少なくとも1つの化合物を、その治療を必要とする患者に提供することを含む方法に関する。
【0036】
式IIの化合物の合成および詳細な説明は、WO 96/0510号およびWO 92/20331号に記載されている。
【0037】
式Iおよび式IIの化合物は、心房細動および心房粗動を治療するのに有用なその他の作用物質と組合せて用いられ得る。このような組合せの個々の構成成分は、治療の経過中の異なる時機に別々に、あるいは分割された形態または単一に組合された形態で同時に投与され得る。したがって本発明は、同時治療または交互治療の全てのこのようなレジメンを含むと理解され、「投与する」という用語はそれに応じて解釈される。本発明の化合物と、心房細動および心房粗動を治療するのに有用なその他の作用物質との組合せの範囲は、原則として、心房細動および心房粗動を治療するのに有用な任意の薬学的組成物との任意の組合せを含むと理解される。
【0038】
式Iおよび式IIの化合物は、錠剤、カプセル(これらの各々は、徐放性または時限放出性配合物を含む)、丸剤、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップおよびエマルションのような経口投与形態で投与され得る。同様にそれらは、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、局所(例えばスキンクリームまたは点眼液)、皮下、筋内または経皮(例えばパッチ)形態で、製薬業界の当業者に周知である形態のいずれかを用いて、投与され得る。
【0039】
これらの化合物を利用する投薬レジメンは、種々の因子(例えば患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療される症状の重症度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに用いられる特定の化合物またはその塩の種類)によって選択される。普通の熟練医師、獣医師または臨床医は、症状の進行を防止し、逆行させまたは抑止するために必要な薬剤の有効量を容易に確定し、処方することができる。
【0040】
当該化合物の経口投与量は、示された効果を得るために用いられる場合、約0.01mg/体重1kg/1日(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01mg/体重1kg/1日(mg/kg/日)〜約10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与されるには、当該組成物は、好ましくは、治療される患者への投与量を症状に応じて調整するために0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100および500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供される。医薬剤は、典型的には約0.01mg〜約500mgの活性成分、好ましくは約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。静脈内注射の、最も好ましい投与量は、約0.1〜約10mg/kg/分の範囲の定速注入である。有益には本発明の化合物は、単一日用量で投与され得るし、あるいは総日用量が、1日2、3または4回の分割用量で投与され得る。さらに本発明の好ましい化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用による鼻腔内形態で、あるいは当業者に既知である経皮皮膚パッチの形態を用いた経皮経路により投与され得る。経皮送達系の形態で投与されるために、投与量投与は、もちろん、投薬レジメン全体を通して断続的というよりむしろ継続的である。
【0041】
本明細書中に記載された式Iおよび式IIの特定の化合物は活性成分を構成することができ、典型的には、意図された投与形態(すなわち経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップ等)に関して、及び慣用的薬学的実践と調和するように適切に選択された、適切な製剤希釈剤、賦形剤または担体(これらを総称して本明細書中では「担体」物質と称される)との混合物して投与される。
【0042】
例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与するためには、活性薬剤構成成分は、経口非毒性薬学的に許容可能な不活性担体(例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど)と組み合わされ得るし、液体形態での経口投与のためには、経口薬剤構成成分は、任意の経口非毒性薬学的に許容可能な不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水等)と組み合わされ得る。さらに、所望されるかまたは必要な場合には、適切な結合剤、滑剤、崩壊剤および着色剤も混合物中に混入され得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えばグルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味剤、天然および合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋等が挙げられる。これらの投薬形態に用いられる滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
式Iおよび式IIの化合物は、リポソーム送達系の形態(例えば小型単層小胞、大型単層小胞、および多重層小胞の形態)でも投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質、例えば1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)またはホスファチジルコリン(レシチン)から形成され得る。
【0044】
以下の定義は、特定の場合に限定されない限り、本明細書全体を通して用いられる用語に適用される。
【0045】
「アルキル」という用語は、本明細書中で用いる場合、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素であって、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル等を指す。
【0046】
「アルコキシ」という用語は、本明細書中で用いる場合、正規鎖(normal chain)中に1、2、3または4個の炭素原子を有する、酸素原子と結合された直鎖または分枝鎖ラジカルを指す。このようなアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ等である。
【0047】
式Iおよび式IIの化合物は、塩として、特に薬学的に許容可能な塩として存在し得る。それらが、例えば少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、それらは酸添加塩を形成し得る。これらの塩は、例えば鉱酸などの強無機酸(例えば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)を用いて、無置換または置換された(例えばハロゲンにより)炭素原子数1〜4のアルカンカルボン酸(例えば酢酸)、飽和または不飽和ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、あるいはリシンまたはアルギニン)、または安息香酸などの強有機カルボン酸を用いて、あるいは無置換または置換された(例えばハロゲンにより)(C1〜C4)−アルキルまたはアリール−スルホン酸(例えばメタンまたはp−トルエンスルホン酸)のような有機スルホン酸を用いて生成される。対応する酸添加塩も所望により、付加的に存在する塩基性中心を有していれば生成され得る。少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する式Iおよび式IIの化合物はまた、塩基と塩を生成することができる。塩基との適切な塩は、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの金属塩(例えばナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩)、あるいはアンモニアまたは、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジまたはトリ低級アルキルアミンなどの有機アミン(例えばエチル−、t−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチル−プロピルアミン、あるいはモノ、ジ、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ、ジまたはトリエタノールアミン)との塩である。対応する内部塩がさらに形成され得る。薬学的使用には適さなくとも、例えば遊離化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩を単離または精製するために用いられ得る塩も含まれ得る。
【0048】
塩基性基を有する式Iおよび式IIの化合物の好ましい塩としては、一塩酸塩、水素硫酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩またはマレイン酸塩が挙げられる。酸性基を含む化合物の好ましい塩としては、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩および薬学的に許容可能な有機アミン塩が挙げられる。
【0049】
式Iおよび式IIの化合物は、1または複数のキラル中心を有し、したがって光学異性体として存在し得る。したがって本発明は、光学的不活性ラセミ(rac)混合物(エナンチオマーの1対1の混合物)、光学的に濃縮されたスケールミック(optically enriched scalemic)混合物、ならびに光学的に純粋な個々のエナンチオマーを含む。本発明における化合物は複数のキラル中心を有し、したがってジアステレオマーとして存在することもある。したがって本発明は、複数の立体中心を有する化合物の場合には、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマーの混合物を含む。本発明における化合物は、非環式アルケンまたはオキシムを含有し、したがってE(entgegen)またはZ(zusammen)異性体のいずれかとして存在してもよい。したがって本発明は、化合物が非環状アルケンまたはオキシム官能基を含有する場合には、個々のEまたはZ異性体、ならびにEおよびZ異性体の混合物を含む。本発明の化合物の多形体、水和物および溶媒和物も本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
本発明は、その範囲内に、式Iおよび式IIの化合物のプロドラッグを含む。概して、このようなプロドラッグは、in vivoで必要とされる化合物に容易に変換可能な本発明の化合物の機能性誘導体である。したがって、本発明の治療方法において、「投与する」という用語は、具体的に開示された化合物によるか、または具体的に開示されてはいないが、患者への投与後にin vivoで指定された化合物に変換される化合物による、記載された種々の症状の治療を含む。適切なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための慣用的手法は、例えば「Design of Prodrugs」 ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されている。化合物の代謝物としては、生物学的環境中に本発明の化合物を導入した場合に産生される活性種が挙げられる。
【0051】
式Iで表される新規な化合物は、適切な物質を用いて、以下のスキームおよび非限定的な実施例に従って調製されることができ、さらに以下の非限定的な特定の実施例により例示される。実施例はさらに、式Iの化合物の調製の詳細を示す。以下の調製手法の条件および工程を適宜に変更することで、これらの化合物を調製し得るということが、当業者には容易に理解されよう。
【0052】
式Iの化合物は、スキーム1および2に概略された一般法に従って、そして上記の方法に従って調製される。これらの反応のための試薬および手法の例は、以下および実験の実施例において示す。
【0053】
Xがカルボニル基(C=O)であり、R2が水素であり、かつR1、R3、R4およびR5は変更され得る本発明の式Iの化合物が、以下に略記され、スキーム1(Example1および2)に示された方法を用いて調製され得る。本方法では、ベンゾフラン1は、ルイス触媒、例えば四塩化スズの存在下でアシルクロリド2によりβ位で位置選択的にアシル化されて、標準的なワークアップをされることによりカップリング体3を与える。芳香族化合物をアシル化するための異なる方法は、文献で多数利用可能であり(例えばJerry March in Advanced Organic Chemistry, 4th ed, 1992, John Wiley & Sons, Inc, p 539-542、およびそこに引用された参考文献参照)、そのうちのいくつかが本発明の方法に適用され得る。
【0054】
メチルエーテル官能基は、低温で、不活性溶媒(例えばジクロロメタンまたはベンゼン)中で、1〜2当量の三臭化ホウ素のようなルイス酸により3を処理することにより除去され得る。反応混合物は、標準的なワークアップされ、精製された後に、目的物4を与える。アニソール誘導体の脱メチル化のためのいくつかの代替的方法が文献で利用可能であり、そのいくつかは、3を4に変換するために適用され得る。このような代替的方法の例としては、(i)AlBr3/エタンチオール(Node Manubu et al, Tetrahedron Lett., 1989);(ii)BF3/ジメチルスルフィド(Bindal R.D., Katzenellenbogen J.A., J. Org. Chem., 1987, pp 3181);(iii)HBr/酢酸(Takeshita Hitosh, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1986, pp 1125)等の方法が挙げられる。
【0055】
フェノール4は、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下で適切なハロゲン化合物を用いてO−アルキル化され、さらに塩基で処理されて、カルボキシメトキシ官能基を含有する目的物を与える。フェノールのO−アルキル化およびカルボン酸エステルの加水分解のためのいくつかの代替的方法は、文献に記載されており、そのいくつかが、4を5に変換するために適用され得る。
【0056】
【化3】
【0057】
Xがメチレン基(−CH2−)であり、R2が水素であり、かつR1、R3、R4およびR5を変更することができる、本発明の式Iの化合物が、以下に概略されたスキーム2(Example3および4)に示された方法を用いて調製され得る。本方法では、3のカルボニル基(C=O)は、水素化アルミニウムリチウムと三塩化アルミニウムとの組合せを還元剤として用いることで、メチレン基(−CH2−)に還元される。カルボニル基のメチレン基への還元のための他のいくつかの方法が文献既知であり、好ましい結果が得られる方法が当業者に既知である(例えばJerry March in Advanced Organic Chemistry, 4th ed, 1992, John Wiley & Sons, Inc, p 1209-1211およびそこで引用された参考文献参照)。反応混合物は、標準的なワークアップをされた後に、対応する還元物質7を与え、これをさらに、上記と同一方法を用いて反応させて、カルボキシメトキシ誘導体8を与えうる。
【0058】
【化4】
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の式Iの好ましい化合物を表す。しかしながらそれらは、いかなる点においても本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。下記で用いられている以下の略号、試薬、表現または装置は、以下のように説明される:ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)、電子イオン化(EI);液体クロマトグラフィー質量分分析(LC−MS)、エレクトロスプレー(ES)、酢酸エチル(EtOAc)。
【0060】
実施例1:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(E1)
(a)ジクロロメタン(50mL)中の3,5−ジイソプロピル−4−メトキシ安息香酸(5mmol、1.2g)および五塩化リン(1.3g、6.0mmol)の撹拌混合物を2時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、2−メチルベンゾフラン(0.76g、5mmol)を添加し、その後、四塩化スズ(1.3g、5mmol)を添加した。2時間後、有機溶媒を除去し、残渣をEtOAc中に溶解して、塩酸(2N)、水酸化ナトリウム(1N)で、そして最後に塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。粗製生成物をカラム(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc9:1)上で精製して、1.7g(97%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−メトキシベンゾイル)ベンゾフランを無色オイルとして得た。このオイルは室温で徐々に固化した:1H NMR(CD3COCD3)d1.22(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.50(s,3H,CH3),3.82(s,3H,OCH3),7.24−7.56(m,4H,芳香族),7.65(s,2H,H−2’およびH−6’);MS(ES)m/z351(M−1)。
(b)ジクロロメタン20mL中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−メトキシベンゾイル)ベンゾフラン(1.7g、4.8mmol)の撹拌混合物を窒素下で保持し、−40℃に冷却した。その溶液に三臭化ホウ素(6.0mL、1N、ジクロロメタン溶液)を添加し、室温で一晩放置した。反応混合物を冷塩酸(1N)で処理し、相を分離させて、有機相を水で1回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をカラム(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc8:1)に付して、2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフランを黄白色結晶塊(1.3g、81%)として得た:1H NMR(アセトン−d6)d1.21(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.51(s,3H,CH3),3.41(m,1H,CH),7.57−7.21(m,4H,芳香族),7.64(s,2H,H−2’およびH−6’);GC−MS(EI,70eV)m/z336(M+)。
【0061】
実施例2:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンゾイル)ベンゾフラン(E2)
ドライアセトン(10mL)中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(170mg、0.5mmol)およびK2CO3(138mg、1mmol)の混合物に、a−ブロムエチルアセテート(170mg、1mmol)を5分間かけて添加し、その溶液を室温で一晩撹拌した。酢酸エチルを添加し、溶液を水で洗浄した。有機相を乾固するまでエバポレートさせて、残渣をメタノール(2mL)および水酸化ナトリウム(2mL、1N)の混合溶液中に溶解させた。溶液を室温で一晩撹拌し、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相をエバポレートさせ、これをカラム(シリカゲル、クロロホルム/メタノール/酢酸95:5:1)上で精製して、1.1gの上記化号物を得た:1H NMR(CD3COCD3)d1.21(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.50(s,3H,CH3),3.49(m,1H,CH),4.56(s,2H,CH2),7.21−7.61(m,4H,芳香族),7.66(s,2H,H−2’およびH−6’);LC−MS(ES)m/z393(M+−1)。
【0062】
実施例3:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(E3)
ジエチルエーテル(1.5mL)中の三塩化アルミニウム(120mg、4mmol)を、0℃で20分間かけて、ジエチルエーテル(1mL)中の水素化アルミニウムリチウム(40mg、2mmol)の懸濁液に添加した。エーテル3mL中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(330mg、1mmol)を添加し、さらに混合物を室温で2時間撹拌した。水(1mL)および水酸化ナトリウム(0.1mL)を添加することにより、過剰量の試薬を分解した。酢酸エチル(100mL)を添加し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相をエバポレートさせて、残渣をカラム(石油エーテル/EtOAc9:1)上で精製して、290mg(90%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフランを赤色オイルとして得た:GC−MS(EI、70eV)m/z(%)322(M+)。
【0063】
実施例4:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンジル)ベンゾフラン(E4)
上記化合物を、実施例2に記載した手法を用いて、2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(290mg、1mmol)およびa−ブロムエチルアセテート(230mg、1.5mmol)から調製した。粗製生成物をカラム(クロロホルム/メタノール/酢酸95:5:1)上で精製して、300mg(79%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフランを白色結晶塊として得た:1H NMR(CD3COCD3)d1.15(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.46(s,3H,CH3),3.34(m,1H,CH),3.97(s,2H,CH2),4.37(s,2H,CH2),7.05−7.45(m,4H,芳香族),7.10(s,2H,H−2’およびH−6’);LC−MS(ES)m/z379(M+−1)。
【0064】
以下の表1は、アデノシンまたはアセチルコリン(またはカルバコール)により刺激された後の膜貫通電流(IK(Ado)およびIK(ACh))を抑制する他の抗不整脈薬と比較した場合の、式Iおよび式IIの化合物の効力(IC50値)を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
説明
Yes: 化合物が特定の電流を抑制することが証明された(括弧内参照)。
No: 化合物が特定の電流を抑制しないことが証明された(括弧内参照)。
U: 化合物と特定の電流との相互作用に関するデータが文献中に見出されなかった。
IK(Ado): アデノシン活性化K電流
IK(ACh): アセチルコリン活性化K電流
IK(ATP): ATP感受性K電流
IK1: 内向き整流K電流
IKs: 遅延整流K電流の緩徐構成成分
Ito: 一過性外向きK電流
INa: 脱分極Na電流
【0068】
【表3】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、他のイオンチャネルに著しい影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の心房における一定の膜貫通カリウム電流を抑制する新規の化合物に関する。本発明は、心疾患、特に心房細動を治療するための薬剤の調製における、特定の既知の化合物の使用にも関する。本発明はさらに、心疾患、特に心房細動を治療するための組成物であって、他のイオンチャネルに著しい影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の心房における一定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物を含有する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
細胞膜は、イオンに対して不透過性である塩基性脂質二重層構造を有する。イオンが細胞膜を透過するための経路を提供し、それによりカリウム(以下、K)、ナトリウム(以下、Na)またはカルシウム(以下、Ca)のようなイオンに対して膜を透過性にさせる特殊なタンパク質(以下、イオンチャネルと称する)が見出されてきた。イオンチャネルの開閉により、イオンの種類によって膜を透過性にさせたりまたは不透過性にさせ、それにより細胞膜の多くの特性および機能を調節する。イオンチャネルは、細胞に膜電位を生じさせて、そしてこれらの膜電位を変える電流を流れさせて、それにより細胞膜による根本的な電気的シグナル伝達を変えさせる。膜貫通電流(以下、I)は、開放イオンチャネルを通るイオン流である。イオンチャネルは、心臓における異常電気的活動を治療するために用いられる多数の抗不整脈薬の標的である。療法的側面から、K−チャネルを遮断することは、活動電位持続時間(APD)を延長させ、不応期を引き延ばさせ、かつ表面ECGにおけるQ−T延長を生じさせる一古典的な不整脈のメカニズムである(Singh B and Nademanee K, Am Heart J, 1985, 109:421-30)。
【0003】
いくつかの異なる種類のイオンチャネル、例えばNa−、Ca−およびK−イオンチャネルは哺乳類動物の心臓において活性であり、異なるイオン電流(例えばINa、ICaおよびIK)を生じさせる。ほとんどのKチャネルは、電圧活性型、例えば遅延型整流(Delayed Rectifier)Kチャネル(電流IKを生じさせる)、一過性外向き(Transient Outward)Kチャネル(電流Itoを生じる)またはリガンド作動型、例えばATP感受性Kチャネルであって、これは代謝機能障害のとき(ATPの細胞内レベルが低減される場合)に開放され、これが電流IK(ATP)を生じさせる。別のリガンド活性型Kチャネルは、ムスカリン性(Muscarinic)Kチャネルであって、これはアセチルコリンがムスカリン性受容体M2と結合する場合(電流IK(ACh)を生じさせる)、またはアデノシンがアデノシン受容体A1と結合する場合(電流IK(Ado)を生じさせる)に活性化される。
【0004】
抗不整脈薬は、ある種のイオン電流に及ぼすそれらの本質的抑制作用によって分類される:クラスI薬剤は主としてナトリウム電流を抑制し、クラスIII薬剤は主にカリウム電流を抑制する。しかしながら現在用いられている抗不整脈薬は、それらのイオンチャネルの遮断に関して選択的でなく、現在用いられている全ての薬剤がいくつかの電流との相互作用を有する。
【0005】
心臓におけるKチャネル遮断は、これまでに特定された最も効率的な抗不整脈メカニズムのうちの1つであり得る。問題は、再分極を延長させる任意の薬剤が、心室におけるトルサード・ド・ポワント(torsade de points)不整脈を誘導する内因的な関連危険性を有するという点である。しかしながら、再分極に関与するKチャネルは実際には心房と心室で異なるため、心室上部性不整脈に対しては活性であるが、QT間隔を延長せず、したがって催不整脈性でないKチャネルを特定することが可能である。
【0006】
特定リガンド活性型K電流IK(Ado)および/またはIK(ACh)の遮断は、抗不整脈薬により起こることが示されている。このメカニズムが心房細動を治療するための抗不整脈薬の効力を説明する際に重要であり得ることも主張されている(Mori K, et al. Circulation 1995 Jun 1; 91(11): 2834-43; Ohmoto-Sekine Y, et al. Br J Pharmacol 1999 Feb; 126(3): 751-61; Watanabe Y, et al. J Pharmacol Exp Ther 1996 Nov; 279(2): 617-24)。リガンド依存性電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)は、おそらくは、正常条件下で再分極を展開させる(shape)のにおける役割は小さいが、それぞれ細胞外アセチルコリンにより、細胞外アデノシンまたは細胞内ATP濃度の低減により活性化されると、これらの電流は増大され、したがって活動電位持続時間(APD)を実質的に短縮させ得る(Belardinelli L, et al. FASEB J 1995; 9(5): 359-365; Belardinelli L and Isenberg G. Am J Physiol 1983; 244(5): H734-H737; Findlay I and Faivre JF. FEBS Lett 1991; 279(1): 95-97)。抗不整脈薬の治療的作用は、APDを延長し、それにより心房心筋を異常な電気的活性に対してより屈折的(refractive)にすることである。
【0007】
リガンド依存性チャネルIK(Ado)およびIK(ATP)は、正常洞調律よりも心房頻拍性不整脈(すなわち心房細動(AF)および心房粗動)においてより活性であり、一方、IK(ACh)活性化は、迷走神経活性(AChのシナプス前放出)に依存していると予測される。心房のATP消費は心房頻拍性不整脈において増大されて、IKを活性化させるアデノシン(ATPの代謝産物)のレベルを増大させ、そして細胞内ATP濃度の減少をもたらして、それゆえIK(ATP)を活性化する(Ashcroft SJ and Ashcroft FM. Cell Signal 1990; 2(3): 197-214)。
【0008】
心房細動は今日、異常電気的活性を正常化するための抗不整脈薬を用いて治療されることはほとんどない。心房電気的活性を効果的に正常化する薬剤でAF患者を治療することに抵抗がある第一の理由は、利用可能な抗不整脈薬が、心臓において、リガンド依存性チャネルIK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)のほかに、他のイオンチャネルも遮断するからである。したがって、一般に利用可能な抗不整脈薬によりAF患者を治療することは、致命的な催不整脈作用を誘導する(心室におけるトルサード・ド・ポワントのように)という重大な危険を有している。表1で参照される抗不整脈薬が、リガンド依存性電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)に選択的に活性であるというわけではなく、他の膜貫通電流も遮断する(表2で参照)ことを考慮することは重要である。
【0009】
クラスIII作用物質アミオダロンはAFの治療に有効であることが示されており(Roy D, et al., N Engl J Med 2000 Mar 30; 342 (13): 913-20)、事実、アミオダロンはリガンド依存性電流IK(Ado)およびIK(ACh)を遮断する(Watanabe Y, et al.上記)。しかしながら、AFを治療するアミオダロンの効力が証明されているにもかかわらず、当該薬剤の副作用プロフィールは複雑である。肺毒性、眼および皮膚変化、ならびに広範な臨床的有用性を明らかに制限するその他の形態の臓器毒性といった特徴が存在する(Pollak, T.M. Am. J. Cardiol., 1999, 84, 37R-45R; Wiersinga, W.M. Chapter 10, Amiodarone and the Thyroid, In Handbook of Experimental Pharmacology, Weetman A.P., Grossman, A., Eds.; Springer-Verlag.: Berlin, Heidelberg, 1997, Vol 128)。アミオダロンは複雑な薬物動態プロフィールを有し、当該薬剤の排出は非常に遅い(Wiersingha,上記)。AFの治療のための効力が証明されているにもかかわらず、その使用に関連した全ての副作用のために、アミオダロンはあまり治療に用いられない。リガンド活性化電流IK(Ado)/IK(ACh)に及ぼす抑制作用をアミオダロンと共有しつつ、アミオダロンより低い臓器毒性を示す新規の抗不整脈薬は、AFの治療改善を提供する。事実、本発明の化合物または本発明において使用された化合物を用いて実施された毒物学的研究のデータは、アミオダロンと比較した場合、毒性が低減したことを示唆する。アミオダロンの複雑な(extreme)薬物動態的挙動は、その薬剤の投薬を複雑にし、したがってリガンド活性化電流IK(Ado)/IK(ACh)/IK(ATP)に及ぼす抑制作用をアミオダロンと共有しつつ、主流薬物動態を示す薬剤を提供することは大きな臨床的利益を有する。本発明に用いられる化合物に関する血液薬物動態、組織分布および質量平衡研究からのデータは、これらの化合物の臨床的使用がアミオダロンの場合より複雑ではないことを示す。心房細動を治療するための理想的薬剤は、疾患を特徴付ける病理学的条件下で増大される心房電流を選択的に抑制し、他の電流に作用を及ぼさない薬剤である。この理想的薬剤は、IK(Ado)/ATP電流が主として細動心房で活性であり、IK(ACh)が迷走神経誘発性心房細動の誘導に関与する電流であるため、本発明の化合物を用いて達成され得る。他の抗不整脈薬との比較において(表2参照)、本発明の化合物は、他のイオン電流との相互作用を本質的に有さず、したがって心室上部性心不整脈(すなわち心房細動)においては活性増大を示すが、心室及び正常心房における電気的活性を媒介するイオン電流を遮断する能力を伴わずに、K電流(IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP))を選択的に阻害する阻害剤とみなされ得る。
【0010】
本発明の主題である化合物およびアミオダロンはともに、細胞中のトリヨードチロニン(トリヨードサイロニン)(T3)シグナル伝達作用を拮抗することが示されており(準備中の原稿)、したがって、IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)に関して本発明の主題である化合物を用いて観察された抑制作用は、T3拮抗作用によるものでないことに留意すべきである。この説明を支持する2つの知見が存在する:すなわち、a)T3はIK(Ado)またはIK(ACh)に急性作用を及ぼさず、かつb)強力なT3アンタゴニスト(T3受容体媒介性シグナル伝達に関して本発明の主題である化合物より100倍以上強力である)はIK(Ado)またはIK(ACh)に及ぼす同様の急性作用を示さない。
【0011】
[発明の説明]
本発明において、種々の化合物の急性および慢性作用は、心筋細胞培養に適用される電気生理学的技法を用いることにより調査された。ムスカリン性受容体アゴニスト、例えばアセチルコリン(ACh)またはA1アデノシン受容体アゴニスト(例えばアデノシン(Ado))による刺激、及び細胞内ATPの低減による刺激を介して誘導される膜貫通K電流を、特定の化合物が抑制するということを本発明者等は見出した。
【0012】
抑制作用は、ACh、Adoまたはジニトロフェノール(DNPは細胞内ATPを低減する)による電流の誘導後、数秒以内に発生する。本発明の化合物により引き起こされる、心筋組織中におけるこれらのK電流に及ぼされる急性抑制作用は、これまで見出されていなかった。この理由として、これらのリガンド活性化K電流(IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP))が心房心筋細胞において選択的に活性であるという事実があり(Workman AJ et al. Cardiovasc Res 1999 Sep; 43(4): 974-84; Koumi S-IおよびWasserstorm A. American Journal of Physiology 266 [35], H1812-H1821. 1994)、一方、従来の研究は、心室からの組織を用いて行われていたことが挙げられる。さらにIK(Ado)およびIK(ACh)は、任意の抑制が観察され得る前に、M2またはA1受容体(それぞれAChおよびAdoに関して)によって誘導されねばならない。膜の細胞外側に任意のアゴニストを伴わないので、おそらくこれらのリガンド依存性チャネルの、再分極を展開させるのにおける役割は小さいが、細胞外アセチルコリンまたはアデノシンにより活性化されると、それらは心房における活動電位持続時間を実質的に短縮し得る(Tristani-Firouzi M et al. Am J Med 2001 Jan; 110(1): 50-9)。
【0013】
同様の作用(すなわちIK(Ado)またはIK(ACh)の抑制)は、他の抗不整脈薬、例えば:E−4031およびMS−551(Mori等、上記)、アプリニジン(Ohmoto等、上記)、アミオダロン(Watanabe等、上記)およびテリカラント(Brandts B. et al. Pacing Clin Electrophysiol 2000 Nov; 23(11 Pt 2): 1812-5)に関して記載されている(表1参照)。
【0014】
本発明の一態様は、K電流IK(Ado)およびIK(ACh)の一方または両方を遮断しうる化合物が、心房細動および/または心房粗動のための薬理学的治療薬として効果的であるはずであるということである。
【0015】
長期心房細動が、不整脈の持続および/または再発を助長するということは周知である(Wijffels M. et al. Circulation 92, 1954-1968. 1995)。この観察の病理生理学的背景は、心房心筋細胞におけるイオンチャネル発現の変化である(電気的リモデリング(electrical remodeling):Yue L. et al. Circulation Research 81, 512-525. 1997; Yue L. et al. Circ Res 1999; 84(7): 776-784)。心房細動を治療するための方法を調査するにあたっては、電気的リモデリングは不整脈の主因ではないという事実を理解しなければならない。電気的リモデリングは、患者において、ならびに健常心臓において発生する現象である。電気的リモデリング以外の他のメカニズムが、「疾患心房細動」の発症に関与することが示唆されている。これらのメカニズムは、不整脈の初期段階(数分〜数時間)で関連があると考察されている。
【0016】
心房細動の間に心房心筋を高周波数(5Hzより大きい)で活性化させることは、心房酸素消費を著しく増大させ、それによりATPの細胞内損失のために細胞内および細胞間アデノシン濃度を著しく増大させることが示唆されている。これらのメカニズムは、心室細動に関して十分に記載されている(Weiss JN et al. J Physiol 1992; 447: 649-673; Schrader J. et al. Experientia 1990; 46(11-12): 1172-1175; Decking UK et al. Circ Res 1997; 81(2): 154-164; Deussen A. and Schrader J. J Mol Cell Cardiol 1991; 23(4): 495-504)。心房レベルでの方法論的困難性のために(はるかに少ない組織、心房流出物を選択的に収集するための選択肢がない)、間接的観察のみによって、心房細動の間に虚血が発生していることが示唆されている。Daod等は、心房細動が発症した後、洞調律の間に、数十秒後に終わる(abolish)心房有効不応期が低減することを示した(Daoud EG et al. Circ 1996; 94: 1600-1606)。さらにRubart等は、AFの間にカリウム濃度が上昇することを示した(Rubart M. et al. J Cardiovasc Electrophysiol 2000; 11(6): 652-664)。いずれの観察も、心房における心房細動誘導性虚血の仮説と非常によく合致する。心房細動中における心房虚血は、IK(Ado)およびIK(ATP)を活性化する。いずれの電流も、心房有効不応期を顕著に低減させることが周知である。しかしながらこの期間の低減は、心房細動のようなリエントリー(reentry)頻拍の発症に関する主要決定因子の一つであることが既知である。IK(ATP)およびIK(Ado)を抑制することは心房有効不応期の短縮を逆戻りさせ得るため、このような抑制は心房細動の治療における有意の薬理学的価値を有すると予測される。さらに心室組織は、心房細動の間に「正常」速度で活性化されるため、IK(Ado)およびIK(ATP)は活性であると予測されない。従って、IK(Ado)およびIK(ATP)を選択的に抑制する薬剤は、心室電気生理学に影響を及ぼさず、それゆえ危険な催不整脈作用を発揮しない。さらに、上記のように、IK(Ado)の心室心筋細胞中での発生は非常に低い。
【0017】
本発明の別の態様は、IK(ACh)を遮断し得る化合物が、心房細動の病理生理学が十分に規定された規定サブグループの患者のための薬理学的治療薬として効果的であるはずであるという事実である。迷走神経誘導性心房細動は、迷走神経活性増大が、IK(ACh)を活性化させることにより心房有効不応期を低減させる場合に起こる不整脈とみなされる。アデノシンおよびアセチルコリン誘導性内向き整流カリウム電流は、同一イオンチャネル集団の活性化により発生するため(Bunemann M. et al. J Physiol (Lond) 1995; 489(3): 701-707; Bunemann M. et al. EMBO 1996)、アデノシン活性化イオンチャネルの阻害剤は、IK(ACh)の阻害剤としても有効である。IK(ACh)の抑制は、迷走神経誘導性心房細動の治療のための有意の価値を有する。
【0018】
3つの電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)を選択的に遮断する、本発明の主題である化合物は特有の特異性を有する。周知の抗不整脈特性を示すいくつかの化合物は、これら3つの電流のうちの少なくとも1つを抑制することが示されている(表2参照)。しかしながらこれら以外の化合物は全て、他のイオン電流をも同様に抑制することが既知である。表2は、IK(ACh)を抑制することが示された抗不整脈薬を編集したものである。興味深いことに、抗不整脈化合物の異なるクラスからの全ての化合物は、この特定電流に関して同様の作用を示すことが明示されており、そして当該編集は、「第二世代」クラスIII抗不整脈化合物(例えばD−ソタロールおよびテリカラント)を含み、これらは遅延整流K電流(IKr)の急速構成成分(rapid component)の強力な阻害剤である。当該編集は、表2に列挙された電流のほかに、いくつかの膜貫通電流(すなわちCa電流)を抑制することが既知であるクラスIII作用物質アミオダロンおよびドロネダロンも含む。さらにクラスI抗不整脈薬、例えばフレカイニド、キニジン、ジソピラミドおよびアプリニジンが含まれる。これらクラスI化合物の抗不整脈活性の最も卓越したメカニズムは、内向きNa電流の遮断である。
【0019】
IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)以外のその他のイオン電流に関する、本発明の化合物を用いた電圧固定実験からの結果も、表2に示されている。これらの電圧固定実験からのデータは、本発明の化合物が電流IK1、IKs、INaおよびItoのいずれをも適切に抑制しないことを実証する。
【0020】
IK(ACh)、IK(Ado)およびIK(ATP)を選択的に抑制する本発明の主題である化合物に特有の選択性は、それらが心房における病理学的電気活性を正常化するために心房細動および/または心房粗動を治療するのに有効であることを示唆する。その他のイオン電流、例えば内向き整流(IK1)、遅延整流の緩徐構成成分(IKs)、一過性外向きK電流(Ito)または分極Na電流(INa)を抑制しないことから、本発明の化合物が正常心臓組織中の催不整脈性を誘導する危険性が小さいことを予測することができる。今日、一般的に利用可能な薬剤に関連した心室における催不整脈作用の本質的な危険性のために、臨床医は有効抗不整脈薬を用いてAF患者を治療したがらない。本発明の化合物の選択的作用は、心室電気生理学に及ぼす有意の作用を排除して、そのレベルでの催不整脈を防止する。さらに本発明の化合物の薬物動態プロフィールは、心室催不整脈を伴うことなく、全ての種類の心房細動(迷走神経誘導性心房細動を含む)を治療するための特別な価値を有すると予測される。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明に関する化合物が、電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の遮断剤として薬剤アミオダロンと少なくとも同じくらい強力であるということである。この態様は、アミオダロンで観察される安全性プロフィールよりも、本発明の化合物で観察される安全性プロフィールが明らかに非常に良好であることを示唆する安全性に関する文書とあわせて、本発明の化合物がAFの治療のためにアミオダロンと少なくとも同じくらい有効であってかつ副作用がより少ないことを示す。
[発明の詳細な説明]
【0022】
本発明の第一の態様に従って、アセチルコリン(ACh)などのムスカリン性受容体アゴニストまたはアデノシン(Ado)などのA1アデノシン受容体アゴニストによる刺激、ならびに細胞内ATPの低減による刺激を介して誘導される特定の膜貫通K電流を抑制する新規の化合物が提供される。
【0023】
それゆえ、本発明の第1の態様では、一般式Iで表される化合物およびその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体が提供される。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、R1は、C1〜4アルキルであり、
R2は、NHCORa、NHCONHRaまたは水素であり、
R3およびR4は独立して、フッ素、塩素、C1〜6アルキルおよびCF3から選択され、
Raは、CF3、C1〜3アルキルおよび−(4−Rb)C6H4から選択され、
Rbは、C1〜4アルコキシ、ヒドロキシ、フルオロおよびニトロから選択され、
R5は、水素および−CH2−COOHから選択され、
Xは、CH2およびC=Oから選択されるが、ただしR5が水素である場合には、Xは−CH2−である)。
【0026】
好ましくは、R2は水素である。また好ましくは、R2が水素またはNHCORaであり、R3およびR4が独立してC1〜4アルキルであり、より好ましくは、R3およびR4はイソプロピルである。
【0027】
R5が−CH2−COOHである化合物では、R1は好ましくはメチルであり、R2は好ましくは水素であり、R3およびR4は好ましくは独立してC1〜4アルキルであり、R5は好ましくは−CH2−COOHであり、Xは好ましくは−CH2−である。
【0028】
特に好ましい本発明の組成物は、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(E1)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンゾイル)ベンゾフラン(E2)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(E3)、
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンジル)ベンゾフラン(E4)、
ならびにその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体である。
【0029】
本発明の第2の態様によると、特定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物の薬学的使用であって、心房細動または心房粗動の治療または予防のための薬剤の調製のための、他のイオンチャネルに影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の正常心房よりも疾患心房においてより活発である特定の膜貫通カリウム電流を抑制する化合物の薬学的使用が提供される。好ましくは、前記抑制は、3つのリガンド依存性カリウム電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の1または複数の抑制から得られる。当該化合物により引き起こされる抑制は、より好ましくはT3拮抗作用によるものでない。
【0030】
前記化合物は、一般式IIで表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体により説明される:
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、R6は、C1〜4アルキルであり、
R7は、NHCOR10、NHCONHR10または水素であり、
R8およびR9は独立して、ヨウ素および臭素から選択され、
R10は、CF3、C1〜3アルキルおよび(4−R11)C6H4から選択され、
R11は、C1〜4アルコキシ、ヒドロキシ、フルオロおよびニトロから選択され、
R12は、水素およびCH2−COOHから選択され、
Xは、CH2およびC=Oから選択される)
【0033】
好ましくは、式IIの化合物は、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)ベンゾフラン(E5)、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフラン(E6)、
ならびにその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体から選択される。
【0034】
本発明の別の実施形態は、式Iまたは式IIの少なくとも1つの化合物を、適切な場合には薬学的に許容可能な担体とともに含む、心房細動または心房粗動を治療するための薬学的組成物に関する。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態は、心房細動または心房粗動を治療する方法であって、薬学的有効量の式Iまたは式IIのうちの少なくとも1つの化合物を、その治療を必要とする患者に提供することを含む方法に関する。
【0036】
式IIの化合物の合成および詳細な説明は、WO 96/0510号およびWO 92/20331号に記載されている。
【0037】
式Iおよび式IIの化合物は、心房細動および心房粗動を治療するのに有用なその他の作用物質と組合せて用いられ得る。このような組合せの個々の構成成分は、治療の経過中の異なる時機に別々に、あるいは分割された形態または単一に組合された形態で同時に投与され得る。したがって本発明は、同時治療または交互治療の全てのこのようなレジメンを含むと理解され、「投与する」という用語はそれに応じて解釈される。本発明の化合物と、心房細動および心房粗動を治療するのに有用なその他の作用物質との組合せの範囲は、原則として、心房細動および心房粗動を治療するのに有用な任意の薬学的組成物との任意の組合せを含むと理解される。
【0038】
式Iおよび式IIの化合物は、錠剤、カプセル(これらの各々は、徐放性または時限放出性配合物を含む)、丸剤、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップおよびエマルションのような経口投与形態で投与され得る。同様にそれらは、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、局所(例えばスキンクリームまたは点眼液)、皮下、筋内または経皮(例えばパッチ)形態で、製薬業界の当業者に周知である形態のいずれかを用いて、投与され得る。
【0039】
これらの化合物を利用する投薬レジメンは、種々の因子(例えば患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療される症状の重症度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに用いられる特定の化合物またはその塩の種類)によって選択される。普通の熟練医師、獣医師または臨床医は、症状の進行を防止し、逆行させまたは抑止するために必要な薬剤の有効量を容易に確定し、処方することができる。
【0040】
当該化合物の経口投与量は、示された効果を得るために用いられる場合、約0.01mg/体重1kg/1日(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01mg/体重1kg/1日(mg/kg/日)〜約10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与されるには、当該組成物は、好ましくは、治療される患者への投与量を症状に応じて調整するために0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100および500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供される。医薬剤は、典型的には約0.01mg〜約500mgの活性成分、好ましくは約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。静脈内注射の、最も好ましい投与量は、約0.1〜約10mg/kg/分の範囲の定速注入である。有益には本発明の化合物は、単一日用量で投与され得るし、あるいは総日用量が、1日2、3または4回の分割用量で投与され得る。さらに本発明の好ましい化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用による鼻腔内形態で、あるいは当業者に既知である経皮皮膚パッチの形態を用いた経皮経路により投与され得る。経皮送達系の形態で投与されるために、投与量投与は、もちろん、投薬レジメン全体を通して断続的というよりむしろ継続的である。
【0041】
本明細書中に記載された式Iおよび式IIの特定の化合物は活性成分を構成することができ、典型的には、意図された投与形態(すなわち経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップ等)に関して、及び慣用的薬学的実践と調和するように適切に選択された、適切な製剤希釈剤、賦形剤または担体(これらを総称して本明細書中では「担体」物質と称される)との混合物して投与される。
【0042】
例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与するためには、活性薬剤構成成分は、経口非毒性薬学的に許容可能な不活性担体(例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど)と組み合わされ得るし、液体形態での経口投与のためには、経口薬剤構成成分は、任意の経口非毒性薬学的に許容可能な不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水等)と組み合わされ得る。さらに、所望されるかまたは必要な場合には、適切な結合剤、滑剤、崩壊剤および着色剤も混合物中に混入され得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えばグルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味剤、天然および合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋等が挙げられる。これらの投薬形態に用いられる滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
式Iおよび式IIの化合物は、リポソーム送達系の形態(例えば小型単層小胞、大型単層小胞、および多重層小胞の形態)でも投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質、例えば1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)またはホスファチジルコリン(レシチン)から形成され得る。
【0044】
以下の定義は、特定の場合に限定されない限り、本明細書全体を通して用いられる用語に適用される。
【0045】
「アルキル」という用語は、本明細書中で用いる場合、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素であって、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル等を指す。
【0046】
「アルコキシ」という用語は、本明細書中で用いる場合、正規鎖(normal chain)中に1、2、3または4個の炭素原子を有する、酸素原子と結合された直鎖または分枝鎖ラジカルを指す。このようなアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ等である。
【0047】
式Iおよび式IIの化合物は、塩として、特に薬学的に許容可能な塩として存在し得る。それらが、例えば少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、それらは酸添加塩を形成し得る。これらの塩は、例えば鉱酸などの強無機酸(例えば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)を用いて、無置換または置換された(例えばハロゲンにより)炭素原子数1〜4のアルカンカルボン酸(例えば酢酸)、飽和または不飽和ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、あるいはリシンまたはアルギニン)、または安息香酸などの強有機カルボン酸を用いて、あるいは無置換または置換された(例えばハロゲンにより)(C1〜C4)−アルキルまたはアリール−スルホン酸(例えばメタンまたはp−トルエンスルホン酸)のような有機スルホン酸を用いて生成される。対応する酸添加塩も所望により、付加的に存在する塩基性中心を有していれば生成され得る。少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する式Iおよび式IIの化合物はまた、塩基と塩を生成することができる。塩基との適切な塩は、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの金属塩(例えばナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩)、あるいはアンモニアまたは、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジまたはトリ低級アルキルアミンなどの有機アミン(例えばエチル−、t−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチル−プロピルアミン、あるいはモノ、ジ、またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ、ジまたはトリエタノールアミン)との塩である。対応する内部塩がさらに形成され得る。薬学的使用には適さなくとも、例えば遊離化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩を単離または精製するために用いられ得る塩も含まれ得る。
【0048】
塩基性基を有する式Iおよび式IIの化合物の好ましい塩としては、一塩酸塩、水素硫酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩またはマレイン酸塩が挙げられる。酸性基を含む化合物の好ましい塩としては、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩および薬学的に許容可能な有機アミン塩が挙げられる。
【0049】
式Iおよび式IIの化合物は、1または複数のキラル中心を有し、したがって光学異性体として存在し得る。したがって本発明は、光学的不活性ラセミ(rac)混合物(エナンチオマーの1対1の混合物)、光学的に濃縮されたスケールミック(optically enriched scalemic)混合物、ならびに光学的に純粋な個々のエナンチオマーを含む。本発明における化合物は複数のキラル中心を有し、したがってジアステレオマーとして存在することもある。したがって本発明は、複数の立体中心を有する化合物の場合には、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマーの混合物を含む。本発明における化合物は、非環式アルケンまたはオキシムを含有し、したがってE(entgegen)またはZ(zusammen)異性体のいずれかとして存在してもよい。したがって本発明は、化合物が非環状アルケンまたはオキシム官能基を含有する場合には、個々のEまたはZ異性体、ならびにEおよびZ異性体の混合物を含む。本発明の化合物の多形体、水和物および溶媒和物も本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
本発明は、その範囲内に、式Iおよび式IIの化合物のプロドラッグを含む。概して、このようなプロドラッグは、in vivoで必要とされる化合物に容易に変換可能な本発明の化合物の機能性誘導体である。したがって、本発明の治療方法において、「投与する」という用語は、具体的に開示された化合物によるか、または具体的に開示されてはいないが、患者への投与後にin vivoで指定された化合物に変換される化合物による、記載された種々の症状の治療を含む。適切なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための慣用的手法は、例えば「Design of Prodrugs」 ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されている。化合物の代謝物としては、生物学的環境中に本発明の化合物を導入した場合に産生される活性種が挙げられる。
【0051】
式Iで表される新規な化合物は、適切な物質を用いて、以下のスキームおよび非限定的な実施例に従って調製されることができ、さらに以下の非限定的な特定の実施例により例示される。実施例はさらに、式Iの化合物の調製の詳細を示す。以下の調製手法の条件および工程を適宜に変更することで、これらの化合物を調製し得るということが、当業者には容易に理解されよう。
【0052】
式Iの化合物は、スキーム1および2に概略された一般法に従って、そして上記の方法に従って調製される。これらの反応のための試薬および手法の例は、以下および実験の実施例において示す。
【0053】
Xがカルボニル基(C=O)であり、R2が水素であり、かつR1、R3、R4およびR5は変更され得る本発明の式Iの化合物が、以下に略記され、スキーム1(Example1および2)に示された方法を用いて調製され得る。本方法では、ベンゾフラン1は、ルイス触媒、例えば四塩化スズの存在下でアシルクロリド2によりβ位で位置選択的にアシル化されて、標準的なワークアップをされることによりカップリング体3を与える。芳香族化合物をアシル化するための異なる方法は、文献で多数利用可能であり(例えばJerry March in Advanced Organic Chemistry, 4th ed, 1992, John Wiley & Sons, Inc, p 539-542、およびそこに引用された参考文献参照)、そのうちのいくつかが本発明の方法に適用され得る。
【0054】
メチルエーテル官能基は、低温で、不活性溶媒(例えばジクロロメタンまたはベンゼン)中で、1〜2当量の三臭化ホウ素のようなルイス酸により3を処理することにより除去され得る。反応混合物は、標準的なワークアップされ、精製された後に、目的物4を与える。アニソール誘導体の脱メチル化のためのいくつかの代替的方法が文献で利用可能であり、そのいくつかは、3を4に変換するために適用され得る。このような代替的方法の例としては、(i)AlBr3/エタンチオール(Node Manubu et al, Tetrahedron Lett., 1989);(ii)BF3/ジメチルスルフィド(Bindal R.D., Katzenellenbogen J.A., J. Org. Chem., 1987, pp 3181);(iii)HBr/酢酸(Takeshita Hitosh, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1986, pp 1125)等の方法が挙げられる。
【0055】
フェノール4は、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下で適切なハロゲン化合物を用いてO−アルキル化され、さらに塩基で処理されて、カルボキシメトキシ官能基を含有する目的物を与える。フェノールのO−アルキル化およびカルボン酸エステルの加水分解のためのいくつかの代替的方法は、文献に記載されており、そのいくつかが、4を5に変換するために適用され得る。
【0056】
【化3】
【0057】
Xがメチレン基(−CH2−)であり、R2が水素であり、かつR1、R3、R4およびR5を変更することができる、本発明の式Iの化合物が、以下に概略されたスキーム2(Example3および4)に示された方法を用いて調製され得る。本方法では、3のカルボニル基(C=O)は、水素化アルミニウムリチウムと三塩化アルミニウムとの組合せを還元剤として用いることで、メチレン基(−CH2−)に還元される。カルボニル基のメチレン基への還元のための他のいくつかの方法が文献既知であり、好ましい結果が得られる方法が当業者に既知である(例えばJerry March in Advanced Organic Chemistry, 4th ed, 1992, John Wiley & Sons, Inc, p 1209-1211およびそこで引用された参考文献参照)。反応混合物は、標準的なワークアップをされた後に、対応する還元物質7を与え、これをさらに、上記と同一方法を用いて反応させて、カルボキシメトキシ誘導体8を与えうる。
【0058】
【化4】
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の式Iの好ましい化合物を表す。しかしながらそれらは、いかなる点においても本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。下記で用いられている以下の略号、試薬、表現または装置は、以下のように説明される:ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)、電子イオン化(EI);液体クロマトグラフィー質量分分析(LC−MS)、エレクトロスプレー(ES)、酢酸エチル(EtOAc)。
【0060】
実施例1:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(E1)
(a)ジクロロメタン(50mL)中の3,5−ジイソプロピル−4−メトキシ安息香酸(5mmol、1.2g)および五塩化リン(1.3g、6.0mmol)の撹拌混合物を2時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、2−メチルベンゾフラン(0.76g、5mmol)を添加し、その後、四塩化スズ(1.3g、5mmol)を添加した。2時間後、有機溶媒を除去し、残渣をEtOAc中に溶解して、塩酸(2N)、水酸化ナトリウム(1N)で、そして最後に塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。粗製生成物をカラム(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc9:1)上で精製して、1.7g(97%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−メトキシベンゾイル)ベンゾフランを無色オイルとして得た。このオイルは室温で徐々に固化した:1H NMR(CD3COCD3)d1.22(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.50(s,3H,CH3),3.82(s,3H,OCH3),7.24−7.56(m,4H,芳香族),7.65(s,2H,H−2’およびH−6’);MS(ES)m/z351(M−1)。
(b)ジクロロメタン20mL中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−メトキシベンゾイル)ベンゾフラン(1.7g、4.8mmol)の撹拌混合物を窒素下で保持し、−40℃に冷却した。その溶液に三臭化ホウ素(6.0mL、1N、ジクロロメタン溶液)を添加し、室温で一晩放置した。反応混合物を冷塩酸(1N)で処理し、相を分離させて、有機相を水で1回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をカラム(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc8:1)に付して、2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフランを黄白色結晶塊(1.3g、81%)として得た:1H NMR(アセトン−d6)d1.21(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.51(s,3H,CH3),3.41(m,1H,CH),7.57−7.21(m,4H,芳香族),7.64(s,2H,H−2’およびH−6’);GC−MS(EI,70eV)m/z336(M+)。
【0061】
実施例2:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンゾイル)ベンゾフラン(E2)
ドライアセトン(10mL)中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(170mg、0.5mmol)およびK2CO3(138mg、1mmol)の混合物に、a−ブロムエチルアセテート(170mg、1mmol)を5分間かけて添加し、その溶液を室温で一晩撹拌した。酢酸エチルを添加し、溶液を水で洗浄した。有機相を乾固するまでエバポレートさせて、残渣をメタノール(2mL)および水酸化ナトリウム(2mL、1N)の混合溶液中に溶解させた。溶液を室温で一晩撹拌し、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相をエバポレートさせ、これをカラム(シリカゲル、クロロホルム/メタノール/酢酸95:5:1)上で精製して、1.1gの上記化号物を得た:1H NMR(CD3COCD3)d1.21(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.50(s,3H,CH3),3.49(m,1H,CH),4.56(s,2H,CH2),7.21−7.61(m,4H,芳香族),7.66(s,2H,H−2’およびH−6’);LC−MS(ES)m/z393(M+−1)。
【0062】
実施例3:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(E3)
ジエチルエーテル(1.5mL)中の三塩化アルミニウム(120mg、4mmol)を、0℃で20分間かけて、ジエチルエーテル(1mL)中の水素化アルミニウムリチウム(40mg、2mmol)の懸濁液に添加した。エーテル3mL中の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(330mg、1mmol)を添加し、さらに混合物を室温で2時間撹拌した。水(1mL)および水酸化ナトリウム(0.1mL)を添加することにより、過剰量の試薬を分解した。酢酸エチル(100mL)を添加し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相をエバポレートさせて、残渣をカラム(石油エーテル/EtOAc9:1)上で精製して、290mg(90%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフランを赤色オイルとして得た:GC−MS(EI、70eV)m/z(%)322(M+)。
【0063】
実施例4:2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンジル)ベンゾフラン(E4)
上記化合物を、実施例2に記載した手法を用いて、2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(290mg、1mmol)およびa−ブロムエチルアセテート(230mg、1.5mmol)から調製した。粗製生成物をカラム(クロロホルム/メタノール/酢酸95:5:1)上で精製して、300mg(79%)の2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフランを白色結晶塊として得た:1H NMR(CD3COCD3)d1.15(d,12H,CHCH3,J=6.9),2.46(s,3H,CH3),3.34(m,1H,CH),3.97(s,2H,CH2),4.37(s,2H,CH2),7.05−7.45(m,4H,芳香族),7.10(s,2H,H−2’およびH−6’);LC−MS(ES)m/z379(M+−1)。
【0064】
以下の表1は、アデノシンまたはアセチルコリン(またはカルバコール)により刺激された後の膜貫通電流(IK(Ado)およびIK(ACh))を抑制する他の抗不整脈薬と比較した場合の、式Iおよび式IIの化合物の効力(IC50値)を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
説明
Yes: 化合物が特定の電流を抑制することが証明された(括弧内参照)。
No: 化合物が特定の電流を抑制しないことが証明された(括弧内参照)。
U: 化合物と特定の電流との相互作用に関するデータが文献中に見出されなかった。
IK(Ado): アデノシン活性化K電流
IK(ACh): アセチルコリン活性化K電流
IK(ATP): ATP感受性K電流
IK1: 内向き整流K電流
IKs: 遅延整流K電流の緩徐構成成分
Ito: 一過性外向きK電流
INa: 脱分極Na電流
【0068】
【表3】
Claims (25)
- R2が水素またはNHCORaであり、R3およびR4がそれぞれ独立してC1〜4アルキルである請求項1に記載の化合物。
- R3およびR4がイソプロピルである請求項2に記載の化合物。
- R2がHもしくはNHCORaである請求項1に記載の化合物、またはR5が−CH2−COOHである請求項2もしくは3に記載の化合物。
- R1がメチルであり、R2が水素であり、R3およびR4がC1〜4アルキルであり、R5が−CH2−COOHであり、Xが−CH2−である請求項1に記載の化合物。
- 2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾフラン(E1)、または
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンゾイル)ベンゾフラン(E2)、または
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾフラン(E3)、または
2−メチル−3−(3,5−ジイソプロピル−4−カルボキシメトキシベンジル)ベンゾフラン(E4)、
ならびにその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体。 - 医学療法において使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を、薬学的に許容可能な担体とともに含む薬学的組成物。
- 心房細動または心房粗動を治療する方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬学的有効量の化合物を、その治療を必要とする患者に提供することを含む方法。
- 心房細動または心房粗動を治療または予防するための薬剤の調製における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
- 心房細動または心房粗動を治療または予防するための薬剤の調製のための、他のイオンチャネルに影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の正常心房よりも疾患心房においてより活発である膜貫通カリウム電流を抑制する化合物の薬学的使用。
- 前記抑制は、3つのリガンド依存性カリウム電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の1または複数を抑制することにより得られる、請求項11に記載の使用。
- 前記化合物により引き起こされる前記抑制はT3拮抗作用によるものではない、請求項11または12に記載の使用。
- 前記化合物は、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)ベンゾフラン(E5)、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフラン(E6)、
またはその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用。 - 他のイオンチャネルに影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の正常心房よりも疾患心房においてより活発である膜貫通カリウム電流を抑制する少なくとも1つの化合物を含む、心房細動または心房粗動を治療するための薬学的組成物。
- 前記抑制は、3つのリガンド依存性カリウム電流IK(Ado)、IK(ACh)およびIK(ATP)の1または複数を抑制することにより得られる、請求項16に記載の組成物。
- 前記化合物により引き起こされる前記抑制はT3拮抗作用によるものではない、請求項16または17に記載の薬学的組成物。
- 前記化合物は、請求項14により定義される式IIで表される化合物である、請求項16〜18のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- 前記化合物は、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)ベンゾフラン(E5)、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフラン(E6)、
またはその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体である、請求項19に記載の薬学的組成物。 - 心房細動または心房粗動を治療する方法であって、他のイオンチャネルに影響を及ぼすことなく、哺乳類動物の心臓の正常心房よりも疾患心房においてより活発である膜貫通カリウム電流を抑制する、薬学的有効量の少なくとも1つの化合物を、その治療を必要とする患者に提供することを含む方法。
- 前記抑制は、3つのリガンド依存性カリウム電流IK(Ado)、IK(ACh)および (ATP)の1または複数を抑制することにより得られる、請求項21に記載の方法。
- 前記化合物により引き起こされる前記抑制はT3拮抗作用によるものではない、請求項21または22に記載の方法。
- 前記化合物は、請求項14により定義される式IIで表される化合物である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
- 前記化合物は、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)ベンゾフラン(E5)、
2−メチル−3−(3,5−ジヨード−4−カルボキシメトキシ−ベンジル)ベンゾフラン(E6)、
またはその薬学的に許容可能な塩、エステルおよび異性体である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
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