JP2004535936A - 短時間アーク溶接及び短時間アーク溶接システムの方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(技術分野)
本発明は、短時間アーク溶接方法に関し、具体的には、障害を検知するために、溶接行程の少なくとも1つの時間区分において、溶接パラメータ、具体的にはアーク電圧をサンプリングする段階をもったスタッド溶接に関する。
【0002】
さらに、本発明は、要素を部品に対して上昇させ、次に前述の要素を再び降下させる溶接ヘッド装置と、該部品と上昇された要素との間にアークを形成するための電力を与える電源装置と、溶接行程内の少なくとも1つの時間区分において、少なくとも1つの溶接パラメータ、具体的にはアーク電圧をサンプリングする測定装置と、障害を検知するために、該溶接パラメータのサンプリングされた測定値が供給される分析装置とを備える、例えば金属スタッドのような要素を、例えば金属板のような部品に短時間アーク溶接するシステムに関する。
【0003】
(背景技術)
前述の短時間アーク溶接方法又は短時間アーク溶接システムは、一般に知られている。短時間アーク溶接は、多くの場合、スタッド溶接と呼ばれるが、溶接されるのはスタッドではない。
【0004】
工業的使用におけるスタッド溶接の現行のシステムは、1999年9月にEmhart TUCKERにより発表されたパンフレット「Neue TUCKER−Technologie. Bolzenschweissen mit System!」(「新しいTUCKER技術。スタッド溶接システム!」により知られている。
【0005】
スタッド溶接は主として、これに限るものではないが、自動車工業において用いられ、ねじ、ナット、目穴などを備えた又は備えない金属スタッドのような金属要素が車両本体の金属板上に溶接される。金属要素は、後で、例えば内部トリム要素を固定するための固定具又は装着要素として働く。
【0006】
上に挙げられたTUCKERによるスタッド溶接の場合においては、要素は、最初に、溶接ヘッドに置かれる。このことは、自動供給装置を用いて、例えば圧縮空気によって行うことができる。溶接ヘッドは次に、要素を部品上の適切な点に位置させる。次に溶接前電流が導通され、該前電流はスタッド及び部品を通って流れる。要素は次に部品に対して上昇される。アークが形成される。アーク電流は、最初に、汚染物質、表面被覆、亜鉛、ドライフィルム潤滑剤、油などが焼かれて除去されるか又は蒸発されるように選択される。電流は次に、溶接電流に切り換えられる。高い溶接電流の結果として、要素及び部品の互いに対向する端部面が溶融される。要素は次に、相互の溶融部と混合されるように、再び部品まで降下される。溶接電流は、部品に到達しアークが短絡すると、切られる。溶融部は凝固し、溶接接合部が完成する。
【0007】
工業的使用においては、特に、1つ又はそれ以上の溶接パラメータを監視するのが普通である。具体的には、自動車産業においては、高生産性及び大量の物品が生産されることにより、可能な限り100パーセントに近い品質管理がほぼ必須である。しかしながら、原則として、溶接接合部により達成された品質は、該溶接接合部を視覚的に検査することによっては十分な確実性をもって検知することができず、したがって、障害を検知するために、溶接行程内の少なくとも1つの時間区分において、少なくとも1つの溶接パラメータ、例えばアーク電圧をサンプリングするのが普通である。
【0008】
アーク電圧は、最終的に達成される溶接接合部の品質のために、特に重要なパラメータである。さらに、アーク電圧と金属要素の上昇運動とを同期させることは、溶接品質を評価するための重要な判定基準である。
【0009】
従来技術においては、溶接行程を評価するために、アーク電圧、要素の上昇運動及び/又は溶接電流を、上方又は下方許容しきい値と直接比較することは普通である。
【0010】
しかしながら、上述の溶接パラメータの監視は、特定の溶接方法の評価と実際に達成された溶接結果との間に良好な一致を得るには必ずしも十分なものではない。
【0011】
この背景に対して、本発明の目的は、溶接パラメータの監視により、より大きな確実性をもって、それぞれの溶接行程の品質が満足できるものであったかどうかについての検知が可能になる短時間アーク溶接方法又短時間アーク溶接システムを示すことである。
【0012】
この目的は、高周波障害を検知するために、サンプリング行程により求められた測定曲線が滑らかにされ、続いて、前もって調整可能な滑らかにされた測定曲線からの距離を有する少なくとも1つの許容曲線が生成され、しかも、続いて、高周波障害を検知するために、滑らかにされていない測定曲線が該許容曲線と比較されるようにする点で、冒頭に述べられた短時間アーク溶接方法において達成される。
【0013】
冒頭に述べられた短時間アーク溶接システムにおいて、分析装置は、溶接パラメータのサンプリングされた測定値により求められた測定曲線を滑らかにし、続いて、前もって調整可能な滑らかにされた測定曲線からの距離を有する少なくとも1つの許容曲線を生成し、続いて、高周波障害を検知するために、滑らかにされていない測定曲線を該許容曲線と比較するように設計することにより、この目的が達成される。
【0014】
本発明によるアーク溶接方法又はアーク溶接システムにより、溶接パラメータの監視を最適化して、短時間アーク溶接接合部の溶接品質を高めることができる。
【0015】
以下の問題が、特に、アルミニウムスタッドを溶接するときに生じることが見出された。アルミニウム溶融物は低粘度であるために、金属要素は、時折、金属部品上に滴下する。さらに、外部状況のために、アークのガスシールドが乱されることがある。このことにより、アークに空気からの酸素がもたらされることになる。
【0016】
これらの障害は、アーク電圧に影響を及ぼす。アルミニウム溶融物の滴下は、アーク電圧の短期間の降下をもたらす(降下)。ガスシールドの破壊は、アーク電圧の短期間の上昇をもたらす(ピーク)。
【0017】
このような高周波障害は、溶接パラメータを監視するという従来の手法によっては検知することができなかった。
【0018】
本発明による方法又はシステムを用いて、これらのアーク電圧における高周波障害を検知することが可能になる。その結果として、例えば警報を発すること、エラーカウンタなどをインクリメントすることなどのような適当な方法を用いることができるようになる。
【0019】
許容曲線は滑らかにされた曲線に基づくものであるという事実のために、アーク電圧における低周波数の変化は、障害としては評価されない。アーク電圧におけるそのような低周波数変化は、例えば、調整行程の過程で生じることがあり、アーク電圧に影響を及ぼし、結果的には、当面は、障害とは評価されない。
【0020】
一般的に本発明を説明するために、アーク電圧を溶接パラメータとした場合について以下に説明する。アーク電圧は、上述されたように、溶接行程の品質のために特に関連のあるパラメータである。しかしながら、アーク電圧に対するすべての言及は、さらに、代替的に又は追加的に、溶接電流、スタッドの経路などのような他の溶接パラメータも言及するものであることを理解されたい。
【0021】
溶接パラメータがサンプリングされる間の区分は、溶接行程の時間帯全体をカバーするか、又は、その区分だけをカバーするかのいずれかとすることができる。例えば、サンプリング区分は、或る上昇高さに到達して初めて開始することができ、要素を部品上に完全に降下させる前に終了することができる。
その結果、目的が完全に達成される。
【0022】
(発明の開示)
好ましい実施形態においては、許容曲線は、滑らかにされた測定曲線に対して上方に突出する(ピーク)高周波障害を検知するために、この滑らかにされた測定曲線の上に配置される。
【0023】
このことのために、代替的に又は追加的に用いることができるさらに別の実施形態においては、許容曲線は、滑らかにされた測定曲線に対して下方に突出する(降下)高周波障害を検知するために、この滑らかにされた測定曲線の下に配置される。
【0024】
ピークを検知する可能性の結果として、特に、アルミニウムスタッドを溶接する間に、アークのガスシールドにおける短期間の障害を検知することができる。
【0025】
降下を検知する可能性の結果として、特に、アルミニウムを溶接するとき、滴下する溶融物に起因するアークのブリッジングを検知することができる。
【0026】
両方の種類の障害は、品質に関して不完全な溶接結果をもたらすことになる。その結果、ピーク又は降下が検知されたために、エラー信号が発される。これに基づいて、再作動が行われるか、又は溶接行程全体が繰り返されるかのいずれかが行われることになる。
【0027】
全体として、さらに、許容曲線と滑らかにされた測定曲線が、サンプリング区分にわたり一定であることが有利である。
【0028】
一般に、ある期間にわたり距離を変化させることが考えられるが、エラー検知のためには一定の距離で十分であり、さらに比較的容易に、ソフトウェアの条件でプログラムすることができる。
【0029】
さらに好ましい実施形態においては、測定曲線を滑らかにした後、滑らかにされた測定曲線に対して、同じ方向に2つの異なる距離を示す少なくとも2つの許容曲線が生成され、続いて、強さが少ない、及び、強い高周波障害を検知するために、滑らかにされていない測定曲線が該2つの許容曲線と比較される。
【0030】
2つの許容曲線がもたらされることにより、溶接パラメータの強い及び強さの少ない高周波数変動を区別することが可能になる。このことは、例えば、強い高周波障害の検知に用いて、即時のエラー信号を発することができる。対照的に、検知された障害の強さが少ない場合には、換言すると、より近傍の許容曲線を超えるが、より遠くの許容曲線は越えていない場合には、例えば、障害カウンタを歩進させることができる。そのような強さの少ない障害は、特定の数を越えたときのみ、エラー信号が発される。
【0031】
さらに、溶接パラメータは個別にサンプリングされることが有利である。
【0032】
個別の測定は、デジタル信号処理において特に有利に処理することができる。
【0033】
この点で、測定曲線は、個別の測定点からなる測定曲線のデジタル低域濾波を用いて滑らかにされることがさらに有利である。
【0034】
デジタル低域濾波は、さらに、例えば、FIRフィルタ形態のデジタル信号プロセッサにおいて達成することができる。
【0035】
全体として、サンプリング期間は、ほぼ100μsと1,000μsとの間にあり、具体的には、ほぼ200μsと500μsとの間にあることが有利である。
【0036】
高周波障害はピーク及び降下の形態で生じることがあるため、このようなサンプリング期間は、該高周波障害を検知するのに十分であることが示された。
【0037】
さらに、低域濾波は、ほぼ20Hzと400Hzとの間、具体的にはほぼ50Hzと250Hzとの間の限られた周波数内で行われることが特に有利である。
【0038】
全体として、高周波障害発生の周波数が検知されることが有利である。
【0039】
この方法により、ピーク又は降下が生じるような高周波障害の傾向を検知することが可能になる。例えば、溶接システムの継続的な作動寿命期間中に、溶接条件の永久的な変化を生じることがある。このことは、高周波障害発生の周波数を検知することにより検知することができる。
【0040】
さらに好ましい実施形態においては、アークを生成するために用いられる電流が、サンプリング区分において一定の値に調整され、溶接接合部に適用されるエネルギについての値を得るために、アーク電圧がある期間にわたり積分される。
【0041】
本実施形態は、測定曲線の平滑化、許容曲線の生成、及び曲線の比較を用いて高周波障害を検知する本発明による可能性とは独立した別の発明として見なされる。
【0042】
すなわち、溶接接合部の中へのエネルギ入力もまた、該溶接接合部の品質を評価するための重要なパラメータであることが示された。エネルギは、アーク電圧を積分することにより比較的簡単に計算できる。溶接電流は、調整により一定に維持されるため、アーク電圧の積分は、適用されたエネルギと正比例する。
【0043】
ここでは、アーク電圧を積分することにより求められたエネルギが、溶接接合部の品質を評価するために、上方及び/又は下方しきい値と比較されることが特に好ましい。
【0044】
エネルギ入力が下方しきい値より下である場合には、良質な溶接接合部を達成するためには不十分な材料しか溶融されていない可能性がある。
【0045】
対照的に、入力エネルギ量が上方しきい値を超える場合には、多分、過度のエネルギが入力されたために、部品及び/又は要素が損傷を受けた危険性がある。特に、非常に薄い本体パネル上にスタッドを溶接する場合には、このことは、溶接接合部の品質を評価するための重要な判定基準である。
【0046】
本発明による短時間溶接システムにおいては、電源装置が定電流源であることが特に有利である。
【0047】
本実施形態においては、得られた測定値を監視し分析する問題に関して、溶接電流は一定であると仮定することができる。その結果、監視中に、溶接接合部の品質を評価することができるように、特にアーク電圧のような他の溶接パラメータに注意を向けることが可能になる。
【0048】
溶接行程の監視及び分析は、原則として、最初に溶接パラメータ又は複数の溶接パラメータがサンプリング区分全体にわたりサンプリングされるように行われる。続いて、サンプリングされて格納された測定曲線を用いて、行われた溶接行程についての評価がなされる。
【0049】
アークが発生した通常の前電流局面においてのみ、さらに、付加的にリアルタイムの監視を実行し、システム自体では補償することができないエラーが生じた場合に、実際の溶接電流を導通させる前であっても、溶接行程を中止することが可能である。
【0050】
要素及び部品は、前電流によってはまだ溶融されていないため、溶接行程を中止し、必要であれば同じ点で繰り返すことがさらに可能である。
【0051】
上記の挙げられた特徴はさらに、本発明の範囲を超えることなく、それぞれ示された組み合わせにおいてだけでなく、さらに、他の組み合わせ、又は別々に用いることができることが理解される。
【0052】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の実施形態は、図面に示され、以下の説明においてより詳細に述べられる。
図1において、本発明による短時間アーク溶接システムは、全体を10で示される。
溶接システム10は制御及びエネルギユニット12を有する。複数の供給ユニット14を制御及びエネルギユニット12に連結することができ、該供給ユニット14は図1に表わされる。
各々の供給ユニット14に対して1つ又は2つの溶接ヘッド16が連結され、図1における図面には、単一の溶接ヘッド16が示される。
さらに、ユーザインターフェース18が制御及びエネルギユニット12上に設けられ、そのユーザインターフェース18を介して、ユーザは溶接システム10を操作することができる。さらに、システムデータ、アラームなどをユーザインターフェース18のディスプレイ上に表示することができる。
溶接システム10は、金属スタッド20のような金属要素を金属板22のような金属部品に溶接するように働くものである。典型的に用いられる分野は、自動車工業である。ここでは、溶接システム10又は複数のそのような溶接システム10は、ねじ、目穴、ナットなどを備えた又は備えない金属スタッドのような接合要素を、車両本体の部品に溶接するように働くものである。接合要素は、例えば、内部トリムを自動車両に取り付ける固定具として働くものとなる。
【0053】
制御及びエネルギユニット12は、制御装置23及び電源装置24を含む。また制御装置23は分析装置26を含む。
制御装置23は、一般に、溶接システム10を制御するように働くものである。これは、直接、ユーザインターフェースに連結されているため、種々の溶接パラメータ、溶接シーケンスを制御するための基本プログラムなどをロードすることができる。
電源装置24は、設計上、定電流源である。これは、調整された定電流Iをもたらし、該定電流は、供給ユニット14を介して溶接ヘッド16に供給される。溶接電流Iは次に、金属要素20及び金属部品22を通って流れる。
溶接ヘッド16は、溶接されるべき金属要素20を保持するホルダ28を有する。さらに、溶接ヘッド16は、電気リニアモータ30を含み、これを用いて、概略的に32で示されるように、ホルダを金属要素20と併せて上昇及び降下させることができる。
電気リニアモータ30の代わりに、溶接ヘッドはさらに、電磁石及び金属要素20を金属部品22に対して押し付ける対向ばねの組み合わせを含むことができる。
このような溶接システム10は、基本的には従来技術により公知であり、冒頭に述べられたパンフレット「Neue TUCKER−Technologie. Bolzenschweissen mit System!」(「新しいTUCKER技術。スタッド溶接システム!」)に詳細に述べられており、この開示は,引用によりここに組み込まれる。
【0054】
一般に、溶接システム10による溶接行程は、以下のように行われる。最初に、電気接触が生じるように、要素12が部品14上に置かれる。次に、いわゆる前電流が導通される。その後すぐに、要素すなわち金属要素20が、溶接上昇高さに到達するまで、部品すなわち金属部品22に対して上昇される。この時間中、前電流は導通されたままである。部品の上昇中にアークが発生する。前電流アークは、溶接地点の領域にあるあらゆる汚染物質、表面被覆、亜鉛、ドライフィルム潤滑剤、油などを焼いて除去するか又は蒸発させるために十分なエネルギを有する。
溶接上昇高さに到達した後、溶接電流Iが回路に導入される。例えば、おおよそ20Aから1,500Aまでの高い溶接電流Iの結果として発生したアークの領域で、要素20及び部品22が溶融される。アークは、図1において、要素20と部品22との間の複数の矢印により概略的に示される。
溶接行程の中に流れているエネルギEが増加する。続いて降下行程が開始される。要素20は、部品22に当たるまで、所定の速度で降下される。この時点において、アークは短絡され、溶接電流Iは切られるが、降下行程は、金属部品22の溶融表面における要素20の十分な浸漬を保証するために、該金属部品20の基部面の僅かに下まで行われる。
【0055】
要素20及び部品22の溶融部は、エネルギ入力が途切れたことにより、結合し、冷める。要素20は、このようにして部品22に対してしっかりと溶接され、部分を部品14に固定するための固定具として働くことができる。
溶接行程を監視するために、溶接システム10は測定装置34を有し、該測定装置は、溶接行程中に要素20と部品22との間に生じる電気アーク電圧を測定する。
測定装置34は、信号ライン36を介して測定値を制御装置23の分析装置26に伝送する。
分析装置26は、溶接行程中のアーク電圧Uの過程を評価する。分析の結果は、制御装置23のメモリに格納され、及び/又は、ユーザインターフェース18を介して表示される。
分析装置26は、さらに、信号ライン38を介して電源装置24に連結される。少なくとも前電流局面において、信号ラインを介して、電源装置24を指示して、リアルタイムでアーク電圧による障害が検知された場合には、溶接行程を中止することができる。
しかしながら、通常は、測定装置34の測定値は、述べられたように制御装置23(又は分析装置26)に格納され、溶接行程の完了後に分析される。
【0056】
図2は、ある期間にわたるアーク電圧Uのグラフ50を示す。
溶接行程中のアーク電圧Uの過程は52で示され、ここではアーク電圧が最初はゼロであり、これはすなわち金属要素20が金属部品22と直接接触するようになるときである。
金属要素20を金属部品22に対して上昇させることにより、アーク電圧Uは、或るレベルに到達するまで上昇する。このレベルは、溶接区分Tsのほぼ全体にわたって維持され、その後再び落ちる。金属要素20が再び金属部品22と接触するようになる時点で、アーク電圧Uは再びゼロになる。
溶接行程中、アーク電圧Uは、例えば256μsだけ続くことができるサンプリング期間Tpで個別にサンプリングされる。
合計溶接行程は、例えば、ほぼ6から200msの期間だけ続くことができる。
溶接行程中にサンプリングされたアーク電圧Uの測定曲線52を、例えば、予め設定された固定しきい値(図示せず)と比較することができる。さらに、ある期間にわたるアーク電圧Uの平均値を形成することが可能であり、この値は溶接区分Tsに制限することが可能である。続いて、測定曲線52を平均値と比較することにより分析が可能になる。
【0057】
しかしながら、本発明によると、測定曲線52は最初に、例えば低域濾波により滑らかにされる。滑らかにされた測定曲線は、図2に点線で、参照番号54により示される。
低域濾波は、例えば、例えばFIRフィルタのような公知のアルゴリズムを用いて、制御装置23のデジタル信号プロセッサ上のデジタル信号処理により行うことができる。
低域フィルタの限られた周波数は、例えば100ms続く溶接時間Tsについて、125Hzである。これは、測定曲線54が125Hzより大きい周波数をもった周波数成分を含まないことをおおよそ意味する(8msの期間に対応して)。
続いて、上方許容曲線56及び下方許容曲線58が、滑らかにされた測定曲線54に対して計算される。上方許容曲線56は、期間全体にわたって、滑らかにされた測定曲線54から一定の距離60を維持する。同様に、下方許容曲線58は、期間全体にわたって、滑らかにされた測定曲線54から一定の距離62を維持する。
【0058】
分析装置26において、滑らかにされていない測定曲線52が、続いて上方及び下方許容曲線56、58の両方と比較される。
滑らかにされていない測定曲線52は、上方許容曲線56の外側に、上方の外れ値(ピーク)64を有することが示される。同様に、滑らかにされていない測定曲線52は、下方の外れ値(降下)66を有し、ここではアーク電圧Uは下方許容曲線58の下にある。
その一方で、滑らかにされていない測定曲線52は、さらに、複数の他の行き過ぎ量68を有し、該滑らかにされていない測定曲線52は、滑らかにされた曲線54に対して離れるが、それぞれは許容曲線56、58の内側に残る。
分析装置26は、その結果として、ピーク64及び降下66を、アーク電圧Uの高周波障害として検知する。これらの障害は、制御装置23に格納され、及び/又は、ユーザインターフェース18を介して表示される。高周波障害により行われた溶接行程は、不完全で、再作動又は新しい溶接を必要とするということを示すために、任意に、アラームをトリガすることができる。
その一方で、さらに、エラーカウンタを歩進させ、該エラーカウンタの或るしきい値を超えたものにだけアラームを発することにより、このような高周波障害の発生を示すことが可能である。
【0059】
図3は、図2に対応する、ある期間tにわたるアーク電圧Uの図を示す。上のすべての説明は、結果的には図3における実施形態にも関連する。
本実施形態においては、上方許容曲線56の他に、中間許容曲線70が計算される。中間許容曲線70は、滑らかにされた測定曲線54全体に対して一定の距離72を有し、この距離は、距離60より少なく、例えばその半分である。
溶接行程後、滑らかにされていない測定曲線52が、一方では上方及び下方許容曲線56、58と比較される。これら2つの許容曲線56、58の一方が、ピーク64及び降下66の場合のように超えると、大きな高周波障害が存在すると判断される。そのような大きな高周波障害が生じた場合には、本実施形態においては、ユーザインターフェース18を介して、如何なる場合にもアラーム信号が発生され、溶接行程が不完全であり、再作動が必要とされることが示される。
対照的に、図3において74で示されるように、許容曲線56、58の内側には残っているが、中間許容曲線70を超えるような高周波障害が生じた場合には、分析装置26は、このことを強さの少ない高周波障害として解釈する。分析装置26は、結果的には警告信号だけを発し、アラーム信号は発さない。警告信号を用いて、例えば、エラーカウンタを歩進させることができる。
強さの少ない高周波障害に基づくこのような警告の発生が増加する場合には、溶接システム10を点検しなければならないか又は溶接行程に悪影響を及ぼす他の境界条件が恒久的に変化されたことを示しているという傾向を推論することができる。
【0060】
上に示されたピーク64のようなピークは、種々の理由のために、例えばアークの周りのガスシールドが乱されたようなときに特に生じることがある。このことは、酸素をアークにもたらすことになる。電気抵抗及び結果的にはアーク電圧Uが上昇する。
これに対応して、金属要素20又は金属部品22のいずれかによる(相対的な位置に依存する)低粘度溶融物の滴下により、上の降下66のような降下を導き出すことができる。このような短時間の滴下は、電気抵抗の低下をもたらし、結果的には、アーク電圧Uが減少することになる。
このようにして導き出された障害の周波数は、ほぼ250Hzより大きい領域にあることが示された。このような障害は、通常の監視方法、特に、アーク電圧が、例えば上昇高さHを変更することにより調整されていない場合には、求めることができない。
さらに、上に挙げられた障害は、特に、アルミニウムスタッドその他のアルミニウム要素が、アルミニウム上に溶接されるときに生じることがあると判断することができる。
【0061】
図4は、ある期間tにわたる溶接接合部の中へのエネルギ入力Eのグラフを示す。
Eの値は、ある期間にわたり、アーク電圧Uを積分することにより求められる。
その結果として、Eの値は、溶接行程の終わりまで、可変の勾配ではあるが連続的に増加する。対応する曲線は図4における80で表わされる。
その結果として、溶接行程の最後において、エネルギEの最終値に到達し、この値は、図4において86で示される。
図4において、さらに、上方しきい値82及び下方しきい値84が、エネルギEの最終値について示される。上方及び下方しきい値82、84は、前もって入力される。これらの値は、経験に基づいて計算される。エネルギEの最終値86が、下方しきい値84より低い場合には、溶接接合部の中へのエネルギ入力Eは、要素20を恒久的な支持体として用いるようにするには低すぎることになる。対照的に、最終値86が上方しきい値82を超えている場合には、エネルギ入力Eが高すぎたと仮定される。その結果として、溶接接合部近くのゾーンにおいて、さらに、要素20又は部品22が影響を受けた及び/又は望ましくない変形が生じたという危険がある。
対照的に、最終値86が上方及び下方しきい値82、84の間にある場合には、分析装置26は、良好なエネルギ入力が溶接行程に行われたと評価する。
アーク電圧Uを積分してエネルギ入力Eを求めることは、さらに、デジタル信号プロセッサを用いることにより、デジタル手段で行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による短時間アーク溶接システムの概略図である。
【図2】本発明による短時間アーク溶接方法を説明する、ある期間にわたるアーク電圧のグラフを示す。
【図3】本発明による短時間アーク溶接方法のさらに別の実施形態である図2と同様の図を示す。
【図4】本発明のさらに別の態様を示す、ある期間にわたる溶接接合部に対するエネルギ入力のグラフを示す。
Claims (14)
- 障害(64、66)を検知するために、溶接行程の少なくとも1つの時間区分(Ts)において、溶接パラメータ、特にアーク電圧(U)をサンプリングする段階をもった、短時間アーク溶接、特にスタッド溶接の方法であって、
サンプリング行程により求められた測定曲線(52)が滑らかにされ、続いて、前もって調整可能な滑らかにされた測定曲線(54)からの距離(60、62、72)にある少なくとも1つの許容曲線(56、58、56、58、70)が生成され、しかも、続いて、高周波障害(64、66)を検知するために、滑らかにされていない測定曲線(52)が前記許容曲線(56、58、56、58、70)と比較されることを特徴とする方法。 - 前記滑らかにされた測定曲線(54)に対して上方に突出する(ピーク)高周波障害(64)を検知するために、前記許容曲線(56、56、70)が前記滑らかにされた測定曲線(54)の上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記滑らかにされた測定曲線(54)に対して下方に突出する(降下)高周波障害(66)を検知するために、前記許容曲線(58)が前記滑らかにされた測定曲線(54)の下に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
- 前記許容曲線(56、58、56、58、70)と前記滑らかにされた測定曲線(54)との間の前記距離(60、62、72)が、前記サンプリング区分(Ts)にわたり一定であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
- 前記測定曲線(52)の平滑化の後、前記滑らかにされた測定曲線(54)に対して、同じ方向に2つの異なる距離(60、72)を有する少なくとも2つの許容曲線(56、70)が生成され、続いて、強さの少ない(74)及び強い(64)高周波障害を検知するために、前記滑らかにされていない測定曲線(52)が前記2つの許容曲線(56、70)と比較されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
- 前記溶接パラメータ(U)が個別にサンプリングされることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
- 前記測定曲線(52)が、個別の測定点からなる前記測定曲線(52)のデジタル低域濾波により滑らかにされることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記サンプリング期間(Tp)が、ほぼ100μsと1000μsとの間にあり、具体的には、ほぼ200μsと500μsとの間にあることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
- 前記低域濾波が、ほぼ20Hzと400Hzとの間、具体的には、ほぼ50Hzと250Hzとの間の限られた周波数内で行われることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
- 高周波障害(64、66、74)発生の周波数が検知されることを特徴とする請求項1から請求項9に記載の方法。
- アークを生成するために用いられる電流(I)が、前記サンプリング区分(Ts)において一定の値に調整され、しかも、溶接接合部に適用されるエネルギ(E)についての値(86)を得るために、ある期間にわたり前記アーク電圧(U)が積分されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
- 前記溶接接合部の品質を見積もるために、前記アーク電圧(U)を積分することにより求められたエネルギ値(86)が、上方及び下方しきい値(82、84)と比較されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 要素(20)を部品(22)に対して上昇させ、次に前記要素を再び降下させる溶接装置(16)と、
前記部品(22)と上昇された要素(20)との間にアークを形成するための電力を与える電源装置(24)と、
溶接行程の少なくとも1つの時間区分(Ts)において、少なくとも1つの溶接パラメータ(U)、特にアーク電圧(U)をサンプリングする測定装置(34)と、
障害を検知するために、前記溶接パラメータ(U)のサンプリングされた測定値が供給される分析装置(26)と、
を備える、例えば金属スタッド(20)のような要素(20)を、例えば金属板(22)のような部品(22)に短時間アーク溶接するためのシステムであって、
前記分析装置(26)が、前記溶接パラメータ(U)のサンプリングされた測定値により求められた測定曲線(52)を滑らかにし、続いて、前もって調整可能な滑らかにされた測定曲線(54)からの距離(60、62、72)を有する少なくとも1つの許容曲線(56、58、56、58、70)を生成し、さらに続いて、高周波障害(64、66)を検知するために、滑らかにされていない測定曲線(52)を前記許容曲線(56、58、56、58、70)と比較するように設計されたことを特徴とするシステム。 - 前記電源装置(24)が定電流源(24)であることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
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