JP2004535233A - 全体又は部分的にポリマーコーティングを有する医療装置及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

患者又は患蓄の体内に挿入するための医療装置（１０）を提供する。この装置は、ａ）外面を有する作業要素（１２）（例えば、ワイヤ、ガイドワイヤ、チューブ、カテーテル、カニューレ、スコープ（例えば、硬質の又は可撓性の内視鏡、腹腔鏡、Ｓ状結腸鏡、膀胱鏡など）、プローブ、体内位置から情報を収集するための装置（例えば、電極、センサ、カメラ、スコープ、試料回収装置、生検材料又は組織サンプリング装置など）と、ｂ）作業要素の外面上の連続した、又は非連続のコーティング（２０）とを有する。作業要素（１２）の外面は、コーティング（２０）と作業要素（１２）との機械的又は摩擦係合を促進する面形状を形成するように準備される。幾つかの実施形態において、コーティングは潤滑性コーティング（２０）、例えば、フルオロカーボンコーティング、又は、液体との接触時に潤滑性になるヒドロゲルである。幾つかの実施形態において、コーティング（２０）は膨張又は膨潤し得る。また、このような装置の製造方法も開示する。

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、生物医学的装置、及び、生物医学的装置を製造するための方法一般に関する。より詳細には、全体、又は部分的なポリマーコーティングを有する生物医学的装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
医療用器具は、滑動摩擦を低減し（例えば潤滑性により）、また他の性能改良特性をもたらすために、種々のポリマーによりコーティングされることが多い。ポリマーコーティングを器具の基材に対して適切に付着させることが、多くの場合に、特にヒドロゲルを金属基材にコーティングする場合の課題である。
【０００３】
種々の親水性及び疎水性ポリマーコーティング及びその付与方法が、米国特許第４，２６３，３７２号「多孔質基材のコーティング及び／又は含浸と、それにより得られた製品」（エモンズら）、４，４３５，４７６号「固体基材上に耐摩耗コーティングを施す方法、及びそれにより製造される物品」（フィリップスら）、４，５０４，５２８号「多孔質基材に水性フルオロポリマーコーティングを施すための方法」（ツッカーら）、４，５４１，９８０号「プラスチックコーティングされた金属部材を製造する方法」（キルサルスキーら）、４，７０５，５８４号「基材へのポリマー材料の付与」（ローケノーア）、４，７２９，９１４号「親水性コーティング及び親水性コーティングが施された基材」（クリメントら）、４，７８４，１５９号「プラズマスプレイを施した金属多孔質面を有する移植可能な装置の製造方法」（スジラギー）、５，０９５，９１５号「柔軟な末端を有するガイドワイヤ」（エンゲルソン）、５，１２９，８９０号「親水性コーティングが施された柔軟なワイヤガイド」（ベーツら）、５，２３５，９６４号「柔軟なプローブ装置」（アベナイム）、５，２９０，５８５号「潤滑性ヒドロゲルコーティング（エルトン）、３，９６９，５５２号「多孔質の物品を含浸させる方法」（マロフスキーら）、４，１４７，８２１号「多孔質物品の含浸」（ヤング）、４，５５６，７０１号「多孔質基材のための含浸組成物」（シンドラーら）、５，３３３，６２０号「高性能プラスチックがコーティングされた医療用ガイドワイヤ」（モウタフィスら）、５，４４１，４８８号「湿潤状態で潤滑な面を有する医療用器具及びその製造方法」（シムラら）、５，４４３，４５５号「ガイドワイヤ及び次なるポリマーコーティングのための金属面の予備処理方法」（ハーゲンロザーら）、５，４４３，９０７号「医療用挿入ガイドのためのコーティング」（スライクら）、５，４３７，２８８号「柔軟なカテーテルガイドワイヤ（シュワルツら）、５，５７３，５２０号「医療に用いられる柔軟な管状装置（シュワルツら）、５，７４９，９６８号「基材へのゲルの付着性を改善するためのプライミングのための装置」（メランソーら）、５，７５０，２０６号「次なるポリマーコーティングのための金属面の予備処理方法」（ハーゲンロザーら）、５，８３３，６３２号「中空ガイドワイヤ装置カテーテル（ヤコブセンら）、５，７００，５５９号「耐久性の親水性面コーティング（シューら）、６，０８０，４８８号「滑り易い強粘着性の親水性ポリウレタンヒドロゲルコーティングの調製方法…医療装置」（ホステットラーら）、６，１４９，９７８号「多孔質の疎水性基材の熱可塑性フルオロポリマーによるコーティング」（ブレーデルら）、６，１６２，３１０号「多孔質のスポンジ状金属の製造方法（ツェング）；６，１７６，８４９号「疎水性トップコートを含む医療装置のための親水性潤滑性コーティング（ヤンら）、５，８４０，０４６号「親水性コーティングを有するガイドワイヤ（ディーム）、５，９８４，８７８号「ステレンス鋼ガイドワイヤの多層コーティング」（エンゲルソン）、ならびに、ＰＣＴ国際特許公開ＷＯ９２／１１８７７「生体適合性の耐摩耗コーティングを施された基材」（ファンら）及びＷＯ００／６５１４３「有孔基材をコーティングするための方法」（ムンロら）に記載されており、これらの全てを明白に援用して本文の記載の一部とする。
【０００４】
挿入可能な医療装置にポリマーコーティングを付与する理由の１つは、潤滑性を与え、又は、装置外面の摩擦係数を低減することである。これらのポリマーコーティングの幾つか、例えば、フルオロカーボンコーティング（例えば、ポリテトラフルオロエチレン）は潤滑性疎水性面を提供する一方、他のポリマーコーティング、例えば、膨張可能なヒドロゲルは親水性であり、液体（例えば、血液又は他の体液）との接触後に潤滑性になる。
【０００５】
例えば、米国特許第５，５７３，５２０号（シュワルツら）は、ガイドワイヤ、カテーテル又は誘導器具として用いられる可撓性管状部材を記載し、これはヒドロゲルを含有する液密なポリマー被覆によって包まれている。しかし、ポリマー被覆は、内面もしくは外面の、開口部での液密シールを目的とした、又は潤滑性をもたらすための被覆として記載されているに過ぎない。上記したように、コーティングによるこれらの利点は当分野で公知である。しかし、シュワルツらはコーティングが装置の壁と一体的であること、及び何らかの種類のインターロック或いは他の改良された取り付け具は記載していない。
【０００６】
また、米国特許第５，８４０，０４６号（ディーム）は、親水性コーティング、例えば、親水性多糖体（例えば、ヒアルロン酸又は硫酸コンドロイチン）を有するガイドワイヤを記載している。ガイドワイヤは、コア部材の周りに螺旋状に巻かれたワイヤから形成される。ワイヤの隣接したコイル間の空間は、コーティングがコイルに沿って湾曲すべく十分に広い一方で、巻回されたワイヤと内部コア部材との間にある環状空間にコーティングが侵入することを防止すべく十分に狭い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、ガイドワイヤ、カテーテル、カニューレ、内視鏡、及び、体内に挿入するための他の器具などの、ポリマーコーティング済み医療器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明によると、患者又は患蓄の体内に挿入可能な医療装置が提供される。このような装置の各々が、ａ）外面を有する作業要素と、ｂ）作業要素の外面の少なくとも一部に設けられたポリマーコーティングとからなり、作業要素の外面は、外面を覆うコーティングの長手方向のずれを防止し、及び／又は、コーティングと作業要素との間で幾らかの機械的係合又は噛合をもたらす表面機能体を特徴とする形状を有する。このため、作業要素の外面には１つ以上の中空部が形成され得る。これらの中空部の少なくとも幾つかは側壁を有し、この側壁は作業要素の長手方向軸に対して（又は、これらの側壁に隣接した作業要素外面に対して）７５度以上の角度をもって設けられる。ポリマーコーティングの少なくとも一部は中空部の少なくとも幾つかの内部に、ポリマーコーティングが作業要素からの分離を防止するために延在する。このようにして、本発明は、粘着性コーティング又は化学的粘着層、例えば、米国特許第５，７４９，８３７号（パレルモ）に記載されている「結合層」に代わって用いられるコーティングを提供し得る。パレルモの特許を明白に援用して本文の記載の一部とする。
【０００９】
さらに、本発明によると、作業要素の外面に形成された中空部としては、穴、溝、連続している螺旋状若しくは湾曲状の溝、スロット、細孔、開口部、又は他の外面機能体が含まれ、ポリマーコーティングの付着を実質的に改良する。コーティングは、中空部の少なくとも幾つかに充填されて作業要素との機械的結合又は噛合を形成する。機械的結合又は噛合を達成するために、中空部は、好適には約０．００２５４ｃｍ（０．００１インチ）の深さを有し、また、作業要素内を完全に通って貫通穴又はスロットを形成し得る。少なくとも幾つかの実施形態において、ポリマーコーティングは、装置のその部分に設けられたポリマーコーティングの全厚さの少なくとも約２５％、より好適には少なくとも約５０％の深さまで、外面よりも入りこんでいることが好適である。したがって、例えば、ポリマーコーティングの全厚が０．２５４ｃｍ（１００ミル）である領域においては、コーティングが中空部内に、外面よりも少なくとも約０．００６３ｃｍ（約２５ミル）、より好適には外面よりも約０．１２７ｃｍ（約５０ミル）下方に入り込んでいることが好適である。コーティングは、潤滑性をもたらすためのものである必要はないが、潤滑性の付与は本発明の目的の１つである。実際、コーティングは任意の目的を満たし、例えば、生体適合性バリアを形成して、患者又は患蓄の身体から、装置の表面下又は装置内部の有害な伝染性又は非生体適合性の物質を絶縁する。
【００１０】
さらに本発明によると、作業要素としては、身体内に挿入可能な任意の装置又は器具が含まれ得る。これらは、ワイヤ、ガイドワイヤ、チューブ、カテーテル、カニューレ、スコープ（例えば、硬質の又は可撓性の内視鏡、腹腔鏡、Ｓ状結腸鏡、膀胱鏡など）、プローブ、体内位置から情報を収集するための装置（例えば、電極、センサ、カメラ、スコープ、試料回収装置、生検材料又は組織サンプリング装置など）を含むが、これらの装置に限定されない。作業要素の外面は、放射線不透過性、かつ生体適合性の金属、例えば、白金、金、タングステン、ニチノール、エルジロイ（ｅｌｇｉｌｏｙ）、ステレンス鋼、又はタンタルから形成され得る。Ｘ線下で目視可能であるように、当分野で知られている種々の手段により含浸又は修正されたポリマーからつくられることもできる。あるいは、作業要素の外面はプラスチック又はポリマー材料から形成可能であり、このような材料は、少なくとも幾つかの実施形態において、超音波、磁気共鳴作像、Ｘ線撮影作像、又は当分野で知られている他の医療用視覚化方法により視覚化され得る。
【００１１】
さらに本発明によると、ポリマーコーティングとしては、潤滑性の、又は摩擦係数の低い材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン（例えばテフロン）が含まれ得、液体（例えば、血液又は他の体液）への露出後に潤滑性の面を形成する親水性ポリマー（すなわち、ヒドロゲル）が含まれ得る。ヒドロゲルは好適にはエチレン性不飽和モノマーからポリマー化される。幾つかの例において、環境応答性ヒドロゲルが用いられ得る。これは、例えば、「環境の変化に反応して容積的膨張をうけるヒドロゲルならびにその製造及び使用方法」と題された同時係属中の米国特許出願第０９／８０４，９３５号に記載されている。使用され得るヒドロゲルの特定の例は、米国特許第４，７２９，９１４号（クリメント）、５，２９０，５８５号（エルトン）、５，３３１，０２７号（ホイットブーメ）、６，０８０，４８８号、（ホステットラーら）、６，１７６，８４９号（ヤンら）、及び、「環境の変化に反応して容積的膨張をうけるヒドロゲルならびにその製造及び使用方法」と題された係属中の米国特許出願第０９／８０４，９３５号に記載されているヒドロゲルの例を含み、上記特許及び特許出願の各々を明白に援用して本文の記載の一部とする。本発明の幾つかの実施形態において、ポリマーは、作業要素の外面周囲に非連続的に（例えば、不連続のリッジ、隆起部又は領域として）形成可能であるか、或いは、このようなポリマーコーティングは、ほぼ平坦な連続ポリマーコーティング面を形成するように配置され得る。幾つかの実施形態において、ポリマーコーティングは放射線不透過性であってもよい。
【００１２】
本発明のさらなる態様は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明を読めば当業者に明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下に、本発明を、添付図面に示された幾つかの実施例又は実施形態に関して記載する。これらの実施例又は実施形態は限定的なものでなく、本発明が実行され得る方法の幾つかの例に過ぎない。
【００１４】
図１〜４は、本発明に従うポリマーコーティングを有するガイドワイヤ１０の例を示す。図示されているように、ガイドワイヤ１０は長尺で可撓性を有する本体１２を有し、本体１２の末端には、先端の丸い末端部材１８が配置されている。ガイドワイヤ本体１２は、ワイヤ１４から形成された、きつく巻かれた連続螺旋状コイルを有する。中実又は管状のコア部材１６が、螺旋状に巻かれたワイヤ１４内に随意に配置され得る。螺旋状に巻かれたワイヤ１４の少なくとも外面に細孔２２が形成されている。図示されているように、ポリマーコーティング２０がガイドワイヤ本体１２の外面に配置されている。図４から理解されるように、このようなポリマーコーティングの一部がワイヤ１４の面の細孔２２の幾つかの内部に延伸している。ワイヤ１４は多孔質材料からつくられ、又は、多孔質面を有するように処理される。多孔質材料が使用される場合には、ワイヤ１４の２次的な切断、又は表面処理を、省略又は減少し得る。微多孔性金属を、焼結プロセス、プラズマスプレー（米国特許第４，７８４，１５９号）、又は、当分野で知られている他の手段により形成することができる。生体適合性の多孔質の焼結金属の１つが、ニュージャージー州、アレンデールのインプレックス・コーポレーション（Ｉｍｐｅｘ Ｃｏｒｐ．）から商品名「ヘドロセル（Ｈｅｄｒｏｃｅｌ）（商標）」の下で市販されている。図１〜４に示された装置において、コーティング２０は、ワイヤ１４の細孔２２に含浸されて機械的結合を形成している。使用可能なコーティングの一例はフルオロポリマーコーティングであり、米国特許第６，１４９，９７８号にブレーデルらにより記載された方法により付与される。使用可能なコーティングの別の例は、膨潤可能なヒドロゲルである。コーティングは随意に変更可能であり、様々な薬物又は生物活性物質（例えば、化学物質、薬品、プロテイン、ペプチド、又は生長因子）に含浸され、又は結合されて、抗感染性、抗血栓性、又は、人体との他の望ましい相互作用をもたらし得る。
【００１５】
図１〜４に示されている例はガイドワイヤ１０であるが、コーティング２０が付与される作業要素は、カテーテル、カニューレ、プローブ、スコープ、電極、他のワイヤ、センサなどを限定的でなく含む任意の挿入可能な医療装置を含み得る。
【００１６】
図２，４に示されているように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態（例えば、ガイドワイヤ、スコープ、カテーテル、身体に挿入可能及び身体から抜去可能な他の長尺状装置）において医療装置が長手方向の軸ＬＡを有することがさらに理解されよう。この軸に沿って装置は一般に前進及び抜去される。図示されているように、その内部にポリマーが堆積される中空部２０（例えば、スロット、細孔、溝、開口又は他の開口部又は凹み）壁面の一部に相対して、壁軸ＷＡは、平行、長手方向軸に対して垂直、ほぼ垂直、又は非平行であってもよい。好適には、長手方向軸ＬＡと壁軸ＷＡとの角度Ａは少なくとも７５度であり、好適には、少なくとも９０度である。角度Ａが９０度を超える場合にはアンダーカットが形成されることになり、このようなアンダーカットは、コーティング２０と作業要素（例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、スコープ、プローブ、ワイヤ、電極、センサなどの本体１２）の面との堅固な機械的噛合を形成する。これらの実施形態において、ポリマーコーティング２０が装置１０からずらし、又は分離させる場合には、ポリマーコーティング２０を、軸ＷＡに沿って外向きに移動させて、コーティング２０が堆積された中空部２２から抜去する必要がある。この壁軸ＷＡは装置の長手方向軸に対して平行でないため、装置を長手方向軸に沿って通常の方式で前進させ、また抜去しても、壁軸の方向におけるポリマーの不都合なずれ及び分離が容易に生じることはないであろう。また、コーティング２０が中空部２２内に入り込み、又は拡張することにより、装置１０が患者の体内で通常の方式で前進され、又は身体から抜去されるときに、ポリマーコーティング２０が装置１０から不都合に長手方向にずれ、又は分離を生じる可能性が低減されるであろう。
【００１７】
作業要素の変形例、及び／又は作業要素の面に形成される中空部の種類の変形例が図５〜８に示されている。詳細には、図５は、別のガイドワイヤ３０の断面を示す。ガイドワイヤ３０は、相対的に非孔質のスチールワイヤ３２が螺旋状に巻かれたコイルを含み、コイルの外面３８にポリマーコーティング３４が配置されている。管状コア部材３６がコイルワイヤ３２内に随意に配置される。ワイヤ３２の外面３８は、機械的摩耗プロセス、又は、酸もしくは他の化学薬品による化学的エッチングにより処理される。これにより、図示されているように外面の微細組織がもたらされる。この微細組織を有する外面３８に、中空部３９（例えば、くぼみ、ピット（縦孔）、凹み、溝、単一螺旋又は湾曲状の溝など）が形成されている。コーティング３４は中空部３９の幾つか又は全てに入り込んでおり、それにより、装置３０の外面３８とコーティング３４との機械的噛合を形成している。
【００１８】
図６は、実質的に中実の部材４２、例えばプローブ又はスコープが、部材の外面４７から内部に形成されたほぼ矩形のスロット４６の性質を有する中空部を有する様子を示す。ポリマーコーティング４４が中実部材４２の外面４７を覆って連続的に配置されている。長手方向軸ＬＡが中実部材４２を通って延在可能である。壁軸ＷＡが各スロット４６の側壁４８に沿って延在可能である。スロット４６の少なくとも幾つかに関し、壁軸ＷＡは長手方向軸ＬＡに対してほぼ垂直であり、したがって、角度Ａは、図６に示されているように約９０度となる。幾つかの実施形態において、少なくとも幾つかのスロット４６の側壁４８が、スロット４６の底部Ｂが上部Ｔよりも広いように傾斜し、又は角度付けされることが理解されるであろう。これにより、コーティング４４を中実部材４２にさらに機械的にロックし、又は摩擦係合させるアンダーカットを形成することができる
図７は、本発明のさらに別の例を示す。図７の例において、装置の作業要素は、管状カテーテル又はカニューレ５０を含む。スロット又は穴５８が内部に形成された金属チューブ５３が、カテーテル又はカニューレ５０のための主幹として用いられる。マンドレル又は他の空間占有部材（図示せず）が管腔５６の領域内に配置され、ポリマーコーティング５４が、スロット５８内に浸透してマンドレル又は他の空間占有部材と接触するように付与される。コーティングが凝固した後、マンドレル又は他の空間占有部材が除去されて管腔が形成される。こうして、ポリマーコーティング５４は、管状カテーテル又はカニューレ５０の連続した側壁を、ポリマーコーティングのための主幹、骨組み又は土台を形成するスロット付き金属チューブ５２に形成する。
【００１９】
図８は、本発明のさらに別の例を示す。図８の例において、装置６０の作業要素はプラスチック材料から形成された管状カテーテル本体６２を有し、本体６２は、その内部を長手方向に延在する管腔６６を有する。非貫通内腔、スロット又は溝の性質を有する中空部６８がカテーテル本体６２の外面６９から下向きに延在しているが、管腔６６内には貫通していない。或る量のコーティング６４が各中空部６２内に堆積され、カテーテル６９の外面を超えて上方に突出している。或る量のコーティング６４は、図８に示されているように離散し、互いに連結されておらず、それにより、隆起瘤、隆起部、リッジなどのシステムを含む非連続コーティングを形成し得る。コーティング６４は、中空部６８内部に、コーティング６４のメニスカス又は堆積が各中空部６８の上部から突出するように堆積され得る。あるいは、コーティング６４は膨潤可能な、又は膨張可能なコーティング、例えば、親水性材料（例えばヒドロゲル）であり得る。このようなコーティング６４は、最初は、各中空部６２内に、コーティング６４の上面がカテーテル本体６２の隣接する外面６９と面一に、又はその下に位置するように堆積されてよく、次いで膨潤又は膨張し、隣接する外面６９を超えて所望のように上向きに突出し得る。幾つかの実施形態において、このような膨潤又は膨張は、コーティング６４が液体又は体液と、コーティング６４を望ましく膨潤又は膨張させるための十分な時間接触したときに生じ得る。
【００２０】
図９Ａ〜９Ｄは、ポリマーコーティングの非連続的な堆積を有する装置、例えば図８の装置６０を製造する方法を段階的に示す。この方法において、作業要素、例えば、ワイヤ、ガイドワイヤ、チューブ、カテーテル、カニューレ、スコープ（例えば、硬質の又は柔軟な内視鏡、腹腔鏡、Ｓ状結腸鏡、膀胱鏡など）、プローブ、金属又はプラスチックなどの任意の適切な材料から形成された、体内位置からの情報収集装置（例えば、電極、センサ、カメラ、スコープ、試料引出装置、生検材料又は組織サンプリング装置など）を最初に、図９Ａに示されているように設ける。複数の中空部６６、例えば、非貫通内腔、スロット、くぼみ、凹み、カット、溝などを作業要素６２の外面６２に形成する。これは、当分野で知られた任意の技術、例えば、機械的穿孔、孔あけ、レーザエッチング、カッティング、ＥＤＭ（放電加工）、光化学エッチングなどにより達成され得る。図９Ｂに示されているように、中空部６６の少なくとも幾つかの側壁６５の少なくとも一部に対して平行に延びる壁軸ＷＡが、好ましくは、作業要素の長手方向軸ＬＡに対して、又は作業要素の外面６３の長手方向軸に対して角度Ａを形成し、この角度は、好ましくは７５度よりも大きく、より好ましくは９０度よりも大きい。幾つかの実施形態において、図９Ｂ（ＡＬＴ）に示されているように、中空部６６ａの側壁６５ａは、中空部６６ａの底部Ｂが上部Ｔよりも広くなるように角度付けられ、又は湾曲され得る。これにより角度Ａは９０度より大きく形成され、アンダーカットを形成し、それにより、後に付与されるコーティング６４（図９Ｃ〜９Ｄ）が、中空部６６ａの側壁６５ａにより、機械的又は摩擦により噛み合い、又は係合される。
【００２１】
中空部６６又は６６ａを作業要素６５に形成した後、ポリマーコーティング６４を中空部６６又は６６ａ内に堆積させる。幾つかの実施形態、例えば、図９ｃ〜９ｄに示された特定の例において、コーティング６４は、体液ＢＦ（例えば血液、又は他の液体、例えば食塩水又は滅菌水）との接触後に膨潤又は膨張する膨潤可能又は膨張可能なコーティング６４である。コーティング６４は、最初に作業要素６２の外面全体を覆って付与されてよく、次いで、外面に堆積されたコーティング層を拭い去り、掻き取り、又は他の方法で除去して、不連続のコーティング６４の堆積を中空部６６内に、コーティング６４の各塊の上面６４ｕｓが外面６６の高さと実質的に面一であり、又は外面６６の高さよりも僅かに低いように残す。
【００２２】
その後、作業要素６２が、血液又は他の体液ＢＦに浸漬されるとき、又は、作業要素６２が液体（食塩水など）に浸漬され、もしくは接触すると、ポリマーコーティング６４の堆積物は膨潤又は膨張して、コーティング堆積物６４の各々の上面ＵＳが作業要素６２の上面６６より上に突出する。あるいは、ポリマーコーティングは、置かれた環境の変化、例えば、ｐＨ値の変化に反応して膨張し得る。このようにして、ポリマーコーティングの膨張により、ポリマーコーティング６４の非連続の隆起瘤、隆起部、リッジなどを作業要素６２の外面６６上に含む非連続のコーティングシステムが形成される。このようなコーティング６４が潤滑性を与え、又は滑り易い物質を形成して、作業要素６２を人間又は動物の患者の身体にて、望ましく挿入、位置決め、移動及び／又は引き出すことを容易にし得る。
【００２３】
本発明を、幾つかの例及び実施形態のみを参照しつつ記載してきた。本発明の可能な例及び実施形態の全てを余すところなく記載する努力は払われていない。実際、当業者は、様々な追加、削除、修正及び変更を上記の例及び実施形態に、特許請求の範囲に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱せずに行うことができる。例えば、任意の特定の実施形態の特定の要素及び属性又は例を、他の任意の実施形態の要素又は属性と組み合わせることができ、又は他の任意の実施形態の要素又は属性の代わりに用いることができる。これは、このような追加及び代用が、得られる装置を、意図される用途に対して無効又は不適切にしない場合にはいつでも可能である。特定のタイプのコーティングに関して本文に記載したが、他の多くのタイプの潤滑性、非潤滑性、親水性及び／又は疎水性のコーティングを本発明の装置に用い得る。したがって、このような追加、削除、修正及びその他の変更は特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明によるポリマーコーティングが配置されたガイドワイヤの斜視図。
【図２】図１のガイドワイヤの部分２の拡大破断図。
【図３】図２の部分３の拡大図。
【図４】図３の部分４の拡大図。
【図５】本発明に従うポリマーコーティングが配置された別のガイドワイヤの一部の長手方向断面図。
【図６】本発明に従うポリマーコーティングが配置された中実の細長いプローブの一部の長手方向断面図。
【図７】本発明に従うポリマーコーティングが配置された細長い管状装置、例えば、カテーテル、スコープ、カニューレ、シースなどの一部の長手方向断面図。
【図８】本発明に従う別のポリマーコーティングが配置された細長い装置の一部の長手方向断面図。
【図９Ａ】図８に示した方法でポリマーコーティングが設けられた装置の製造方法を段階的に示す断面図。
【図９Ｂ】図８に示した方法でポリマーコーティングが設けられた装置の製造方法を段階的に示す断面図。
【図９Ｂ（ＡＬＴ）】図８に示した方法でポリマーコーティングが設けられた装置の製造方法を段階的に示す断面図。
【図９Ｃ】図８に示した方法でポリマーコーティングが設けられた装置の製造方法を段階的に示す断面図。
【図９Ｄ】図８に示した方法でポリマーコーティングが設けられた装置の製造方法を段階的に示す断面図。

Claims (44)

1. 患者又は患畜の体内に挿入可能な医療装置において、
   外面を有する作業要素と、
   前記作業要素の外面の少なくとも一部に設けられたポリマーコーティングとを有し、
   前記作業要素の外面は、該外面内に形成された中空部を有し、前記中空部の少なくとも幾つかが側壁を有し、該側壁は、この側壁に隣接した作業要素の前記外面に対して約７５度以上の角度をもって設けられ、
   前記ポリマーコーティングの前記作業要素からの分離を防止するために、前記ポリマーコーティングの少なくとも一部は前記中空部内に延在する医療装置。
2. 前記作業要素としてはカテーテル又はカニューレが含まれる請求項１に記載の装置。
3. 前記作業要素としてはガイドワイヤが含まれる請求項１に記載の装置。
4. 前記作業要素としてはスコープが含まれる請求項１に記載の装置。
5. 前記作業要素としては患者の身体内の位置から情報を得るための装置が含まれる請求項１に記載の装置。
6. 前記ポリマーコーティングは潤滑性である請求項１に記載の装置。
7. 前記ポリマーコーティングは液体との接触時に潤滑性を備える請求項１に記載の装置。
8. 前記ポリマーコーティングはヒドロゲルからなる請求項１に記載の装置。
9. 前記ポリマーコーティングは多孔質ヒドロゲルからなる請求項１に記載の装置。
10. 前記ポリマーコーティングは液体の存在下で膨張する請求項１に記載の装置。
11. 前記作業要素の外面に形成された中空部には細孔が含まれる請求項１に記載の装置。
12. 前記作業要素の外面に形成された中空部には溝が含まれる請求項１に記載の装置。
13. 前記作業要素の外面に形成された中空部には凹みが含まれる請求項１に記載の装置。
14. 前記作業要素の外面に形成された中空部にはくぼみが含まれる請求項１に記載の装置。
15. 前記作業要素の外面に形成された中空部には穴が含まれる請求項１に記載の装置。
16. 前記作業要素の外面に形成された中空部にはスロットが含まれる請求項１に記載の装置。
17. 前記作業要素の外面に形成された中空部が作業要素内部に部分的にのみ延在する請求項１に記載の装置。
18. 前記作業要素の外面に形成された中空部が作業要素内に延在する請求項１に記載の装置。
19. 前記ポリマーコーティングの有孔率が少なくとも約５０％である請求項１に記載の装置。
20. 前記ポリマーコーティングが前記中空部内に、前記外面よりも少なくとも０．００２５４ｃｍ（０．００１インチ）下方まで延在する請求項１に記載の装置。
21. 前記ポリマーコーティングが中空部内に延在し、同ポリマーコーティングが延在する深さが、その位置のポリマーコーティングの全厚さの少なくとも約２５％だけ前記外面よりも下方にある請求項１に記載の装置。
22. 前記ポリマーコーティングの有孔率が、ポリマーコーティングが完全に膨張したときに約５０％〜約９５％である請求項２１に記載の装置。
23. 最初に前記ポリマーコーティングのほぼ全部が中空部内に収容され、次いでこれらのポリマーコーティングが膨張するよって、前記ポリマーコーティングの一部が前記中空部から突出する請求項１に記載の装置。
24. 最初に前記ポリマーコーティングのほぼ全部が前記外面下の中空部内に収容され、次いでこれらのポリマーコーティングが膨張することによって、前記ポリマーコーティングの一部が中空部から前記外面より上に突出する請求項１に記載の装置。
25. 前記ポリマーコーティングはフルオロカーボンからなる請求項１に記載の装置。
26. 前記ポリマーコーティングはポリテトラフルオロエチレンからなる請求項１に記載の装置。
27. 前記角度が少なくとも９０度である請求項１に記載の装置。
28. 前記角度が９０度より大きく、それによりアンダーカット面を形成する請求項１に記載の装置。
29. 前記ポリマーコーティングが液体と接触したときに膨張する請求項１に記載の装置。
30. 前記ポリマーコーティングが、液体との接触時に膨張するヒドロゲルを含む請求項１に記載の装置。
31. 外面及び長手方向軸を有するとともに患者又は患蓄の体内に挿入可能な作業部分を有した、コーティング済み医療装置を製造するための方法において、
    （Ａ）中空部を有した表面形状を形成するために外面の少なくとも一部を処理するステップと、
    （Ｂ）ポリマーコーティングを外面に、前記面形状がコーティングの外面からの分離を防止するように設けるステップとを有する方法。
32. 前記ステップＡは、中空部を外面内に少なくとも０．００２５４ｃｍ（０．００１インチ）形成することを含む請求項３１に記載の方法。
33. 前記ステップＡが連続した凹みを外面に形成することを含む請求項３１に記載の方法。
34. 前記連続した凹みが螺旋状の溝を含む請求項３３に記載の方法。
35. 前記ステップＡがアンダーカット中空部を外面に形成することを含む請求項３２に記載
    の方法。
36. 前記ステップＢが潤滑性コーティングを設ける工程を有する請求項３１に記載の方法。
37. 前記ステップＢが非潤滑性コーティングを設ける工程を有する請求項３１に記載の方法。
38. ステップＢが膨張可能なコーティングを設ける工程を有する請求項３１に記載の方法。
39. 前記ステップＢが、液体と接触したときに膨張するコーティングを設ける工程を有する請求項３８に記載の方法。
40. 前記ステップＢが、環境の変化に反応して膨張するコーティングを設ける工程を有する請求項３１に記載の方法。
41. 前記ステップＢが、環境のｐＨ値の変化に反応して膨張するコーティングを設ける工程を有する請求項４０に記載の方法。
42. 前記ステップＡが中空部を外面に形成する工程を有する請求項３１に記載の方法。
43. 前記ステップＢが、ポリマーコーティングを、コーティングが中空部内に外面下の或る深さまで延在するように設ける工程を有し、前記深さが装置上のその位置のポリマーコーティングの全厚さの少なくとも約２５％である請求項４１に記載の装置。
44. 前記ステップＢが、ポリマーコーティングを、ポリマーコーティングが外面の面より下に少なくとも０．００２５４ｃｍ（０．００１インチ）の深さまで延在するように付与することを含む請求項３１に記載の装置。