JP4311845B2 - 医療用導入具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体内の管腔、例えば血管、消化管、泌尿器管などにカテーテルあるいはチューブを経皮的に挿入する場合に用いられる医療用導入具(イントロデューサーシースともいう)に係り、さらに詳しくは、その鞘管と、鞘管の外表面に形成され血液、体液または水系溶液などによる湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、輸液用カテーテル、血管造影用カテーテルなどを血管等の管腔内に挿入する場合、管腔への挿入経路を確保するための器具として、経皮的に管腔に留置される医療用導入具が使用されている。このような医療用導入具の一例として、例えば実開平5−56153号公報に開示された考案があり、図1および図2にそれを示す。
【0003】
図において、1は医療用導入具で、先端部側に開口した先端部と連通する内腔3aを有する鞘管3を備え、側壁に分岐管4が設けられて、基端部にその開口部2aを封止するゴムの如き弾性体からなる弁体5が設けられた合成樹脂材料からなるほぼ筒状のシースハブ2と、先端部側にシースハブ2の基端部に嵌合される有蓋円筒状の嵌合部7を有し、基部側が嵌合部7内のほぼ中央部に接続され開口した先端部と連通する内腔8aを有して鞘管3の内腔3aに挿通される管状の拡張器8を備えた合成樹脂材料からなる把持部6とによって構成されている。
【0004】
そして、このように構成された医療用導入具1を用いてカテーテルを血管に挿入する場合、セルジンガー法と呼ばれる血管刺入方法を用いる。つまり、内針(図示せず)を挿通した中空針(図示せず)を皮下組織11を介して血管10内に挿入し、内針を抜去した中空針内にガイドワイヤー12を挿通して中空針を抜去し、ガイドワイヤー12のみを残留させる。ついで、図3に示すように、シースハブ2の鞘管3の内腔3aに拡張器8を挿通し、シースハブ2に把持部6の嵌合部7を嵌合した医療用導入具1をガイドワイヤー12を案内として血管10内に挿入し、鞘管3を血管10内に挿入した状態で、図4に示すように、拡張器8を抜去する。そして、カテーテル(図示せず)をその内腔内にガイドワイヤー12を挿通させて沿わせながら鞘管3内を介して血管10内に挿入し、目的の部位まで導入した後、ガイドワイヤー12を抜去する。その後、必要に応じてシースハブ2の分岐管4に接続された三方活栓13を作動し、シースハブ2およびその鞘管3に薬液などを補給する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような医療用導入具1は、カテーテルを血管10に挿入する場合の挿入経路を確保するために、その鞘管3により皮膚、皮下組織および血管壁等を押し広げながら挿入される。このとき、鞘管3は挿入抵抗を受けるため、抵抗による鞘管壁のめくれや挫屈を生じないだけの剛性を有し、かつ生体組織に対しての滑りをよくするために、構成材料としてフッ素系樹脂、主に四フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFEという)が多用されている。
【0006】
しかしながら、このような樹脂によって構成された鞘管3は硬く、特に橈骨動脈等の細い血管に挿入しようとする場合、手技中に鞘管3が血管壁に物理的刺激を与え、スパズム(血管痙攣=アンギオスパズム、ヴァソスパズム)を誘発しやすい。この欠点を克服するために、ETFEより柔軟な四フッ化エチレン・六フッ化ポリエチレン共重合体(FEPという)や四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFAという)が用いられる場合もあるが、十分な効果をあげているとはいえない。
【0007】
また、これらの柔軟なフッ素系樹脂の場合には、挿入(刺入)時の抵抗により鞘管壁がめくれたり挫屈を生じさせないために、抵抗を減じる目的でポリシロキサンの潤滑油あるいは反応性官能基を有するポリシロキサン重合体(いわゆる反応性ワニス・タイプ・シリコン)がその外表面に塗布される。しかしながら、鞘管3の構成材料がフッ素系樹脂のため、これらシリコン系潤滑剤は鞘管3の外表面との結合が弱く、生体組織と鞘管3の摺動により簡単に鞘管3の外表面から脱離してしまうという問題があった。さらに、フッ素系樹脂は、体内に挿入する器材に不可欠な放射線造影性を付与するための造影剤の混練が困難で、十分な造影性能を有するだけの量を配合することができないという問題もあった。
【0008】
また、橈骨動脈等の細径血管で挿入操作を行った際にスパズムが発生した場合には、血管の収縮で鞘管3全体が血管壁に把持されて血管内壁と鞘管3との間隙がなくなり、その血管の血流が遮断されてしまうため、速やかに鞘管3を抜去する必要がある。このような場合には生体組織との滑りがよいとされるフッ素系樹脂材料を用いた鞘管3でも抜去することができない場合もある。このような問題を解決するために、あらかじめ鞘管壁に1つあるいは複数の側孔をあけておき、スパズムを生じてもこの側孔により血流を確保するように構成されたものがある。しかしながら、鞘管壁に側孔を設けることにより挿入時の抵抗が大きくなったり、側孔縁で生体組織を傷つける等の弊害を生じるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、柔軟な鞘管とその外表面に形成された湿潤潤滑性被膜とにより、管腔への挿入時の抵抗および管腔への物理的刺激を低減し、スパズムの発生を減少させるとともに、スパズムが発生した場合でも速やかに管腔から鞘管を抜去できる操作性のよい医療用導入具を提供することを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る医療用導入具は、先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有する鞘管が設けられたほぼ筒状のシースハブと、先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有し鞘管の内腔に挿通される管状の拡張器が設けられたほぼ筒状の把持部とを備えてなり、鞘管の外表面に形成され、湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜を有し、鞘管を、ポリアミド、ポリアミド系ブロックコポリマー・エラストマーまたはこれらのいずれかの樹脂に放射線不透過物質を混練した混合物により構成するとともに、被膜を、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物を水酸化ナトリウム水溶液で処理したものにより構成したものである。
【0017】
本発明に係る医療用導入具は、放射線不透過物質を、硫酸バリウム、炭酸ビスマスまたはタングステンとしたものである。
【0018】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の外表面の少なくとも先端部分に形成されたものである。
【0019】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の外表面で操作時に把持される手元側を除く部分に形成されたものである。
【0020】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の内腔に挿通して該鞘管から突出した拡張器の外表面の少なくとも先端部分に形成されたものである。
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0022】
本発明に係る医療用導入具の全体構造は、図1および図2に示した従来のものと同じであるが、この例に限定されるものではなく、同等もしくは類似の機能を有するものであればよい。
【0023】
本発明に係る医療用導入具の鞘管の構成材料としては、フッ素系樹脂より柔軟なポリアミド、ポリアミド系ブロックコポリマー・エラストマー、またはこれらのいずれかの樹脂に放射線不透過物質を混練した混合物である。これは、鞘管の外表面に形成される被膜が確実にコーティング処理されるような材料であり、容易に高い密着力が得られるもので、かつ柔軟性を有する。また、放射線不透過物質との混練性もよい。
【0024】
本発明に係る医療用導入具の鞘管の外表面に形成される被膜の構成材料としては、鞘管の構成材料に強固に結合し、湿潤時には表面潤滑性を発現するメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物である。これは、鞘管の外表面を滑りやすくするものであり、血管等の管腔に挿入する場合の挿入抵抗を少なくし、血管壁等に対する物理的刺激を緩和してスパズムの発生頻度を減少させるとともに、スパズムが発生しても速やかに鞘管を抜去できる。そして、この被膜は、鞘管の外表面の少なくとも先端部分、あるいは、鞘管の外表面で操作時に把持される手元側を除く部分に形成されるとともに、鞘管の内腔に挿通され鞘管から突出した拡張器の外表面の少なくとも先端部分に形成される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
実施例1,2
<医療用導入具の作成>
ポリアミドエラストマー(商品名:ペバックス7033、東レ株式会社製)に、放射線不透過物質である硫酸バリウムを25%混合した材料と、ポリウレタンエラストマー(商品名:テコセンTT1075D、サーメデックス社製)に、放射線不透過物質である硫酸バリウムを25%混合した材料とによって、外径5フレンチおよび6フレンチの鞘管を有する医療用導入具をそれぞれ作成し、実施例1,2とした(図1および図2参照)。なお、実施例1,2は鞘管の外表面に被膜が形成されていないため厳密には本発明に含まれないが、本発明に係る医療用導入具を作成する中間生成物に該当するからここではあえて実施例として挙げてある。
また、ETFEに放射線不透過物質である炭酸ビスマスを10%含む材料により作成された外径5フレンチおよび6フレンチの鞘管を有する市販の医療用導入具を比較例1とし、FEPに放射線不透過物質である硫酸バリウムを10%含む材料により作成された外径5フレンチおよび6フレンチの鞘管を有する市販の医療用導入具を比較例2とした。
【0027】
<剛性試験>
次に、実施例1,2および比較例1,2の各医療用導入具の外径5フレンチ、6フレンチのそれぞれの鞘管において、それぞれの鞘管から試料長100mmをとり、支点間距離50mmの両持ち梁の中央部を毎分200mmの速度で押して曲げを与え、挫屈を生じる荷重を計測して曲げ剛性を比較した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、実施例1,2の外径5、6フレンチの鞘管は、比較例1,2の各サイズの鞘管の挫屈を生じる荷重に比べて小さい。これにより、実施例1,2の各鞘管の曲げ剛性は小さく柔軟性を有することがわかる。
【0030】
実施例3,4
<医療用導入具の作成>
上記実施例1,2の外径5フレンチのそれぞれの鞘管の外表面に、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(商品名:ガントレッツAN−169、ISP社製)の2%溶液にポリエーテルブロックアミド(商品名:ペバックス6533、東レ株式会社製)を約1重量%溶解した混合溶液をディッピング塗布した後、鞘管を0.1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、鞘管の外表面に形成された被膜を有する実施例3および実施例4の医療用導入具を作成した。
【0031】
<潤滑性試験>
そして、実施例3,4の各鞘管を水に浸し、その潤滑性を観察した。
その結果、実施例3,4の各鞘管は、水に浸すと直ちに潤滑性を発現し、摩擦を加えても剥がれることがなかった。また、24時間蒸留水中に浸漬放置しても潤滑性は低下しなかった。これにより、血管等の管腔に挿入する場合の挿入抵抗が少く、長時間潤滑性を維持できることがわかる。
【0032】
<疑似血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例3,4および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管を、人間の血管を想定した内径が1.5mm、外径が3.0mmのシリコーンゴムチューブを内径が1.5mm、外径が3.0mmのシリコーンチューブの側面全長に切り込みを入れたもので覆った2層管(以後、疑似血管という)に通し、疑似血管を外部から強い力で締めた状態で各鞘管を引き抜く引き抜き抵抗試験を行った。なお、鞘管の長さを100mm、疑似血管の長さを50mmとし、それぞれの鞘管を生理食塩水に濡らした状態で疑似血管に通して、疑似血管の端面から25mmの部分の外径が2.5mmになるようにクランプにて締め、疑似血管から鞘管を毎分100mmの等速度で引き抜き、そのときの抵抗値(荷重)を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例3,4を疑似血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/10に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物からなる被膜を有する鞘管によって、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0035】
<ウサギ大動脈血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例3,4および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管を、内径が1.3mm、外径が1.4mmのウサギ大動脈血管を内径が1.5mm、外径が3.0mmのシリコーンチューブの側面全長に切り込みを入れたもので覆った2層管(以後、試験血管という)に通し、試験血管を外部から強い力で締めた状態で各鞘管を引き抜く引き抜き抵抗試験を行った。なお、鞘管の長さは100mm、試験血管の長さは50mmとし、それぞれの鞘管を生理食塩水に濡らした状態で内層管のウサギ大動脈血管に通して、外層管のシリコーンチューブの端面から25mmの部分の外径が2.5mmになるようにクランプにて締め、ウサギ大動脈血管(試験血管)から鞘管を毎分100mmの等速度で引き抜き、そのときの抵抗値(荷重)を測定した。その結果を表2に示す。
【0036】
表2から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例3,4をウサギ大動脈血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/3に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物からなる被膜を有する鞘管によって、血管壁等に対する物理的刺激を緩和してスパズムの発生頻度を減少させるとともに、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0037】
実施例5,6
<医療用導入具の作成>
上記実施例1,2の外径5フレンチのそれぞれの鞘管の外表面に、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(商品名:ガントレッツAN−169、ISP社製)の2%溶液にブロックイソシアネート水溶液(商品名:エラストランH−38、第一工業製薬社製)を3重量%溶解した反応溶液をディッピング塗布した後、鞘管を0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬し、鞘管の外表面に形成された被膜を有する実施例5および実施例6の医療用導入具を作成した。
【0038】
<潤滑性試験>
そして、実施例5,6の各鞘管を水に浸し、その潤滑性を観察した。
その結果、実施例5,6の各鞘管は、水に浸すと直ちに潤滑性を発現し、摩擦を加えても剥がれることがなかった。また、24時間蒸留水中に浸漬放置しても潤滑性は低下しなかった。これにより、血管等の管腔に挿入する場合の挿入抵抗が少く、長時間潤滑性を維持できることがわかる。
【0039】
<疑似血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例5,6および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管において、上記実施例3,4の疑似血管による引き抜き抵抗試験の内容と同様の方法で疑似血管に対する引き抜き抵抗試験を行い、疑似血管から鞘管を引く抜くときの抵抗値を測定した。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表3から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例5,6を疑似血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/8に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とブロックイソシアナートとの反応物からなる被膜を有する鞘管によって、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0042】
<ウサギ大動脈血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例5,6および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管において、上記実施例3,4のウサギ大動脈血管による引き抜き抵抗試験の内容と同様の方法でウサギ大動脈血管に対する引き抜き抵抗試験を行い、ウサギ大動脈血管から鞘管を引く抜くときの抵抗値を測定した。その結果を表3に示す。
【0043】
表3から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例5,6をウサギ大動脈血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/3に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とブロックイソシアナートとの反応物からなる被膜を有する鞘管によって、血管壁等に対する物理的刺激を緩和してスパズムの発生頻度を減少させるとともに、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0044】
実施例7,8
<医療用導入具の作成>
上記実施例1,2の外径5フレンチのそれぞれの鞘管の外表面に、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(商品名:ガントレッツAN−169、ISP社製)の2%溶液に含フッ素・アクリル・ウレタン・シリコーン樹脂を20重量%混合した混合溶液をディッピング塗布した後、鞘管を0.4N水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬し、鞘管の外表面に形成された被膜を有する実施例7および実施例8の医療用導入具を作成した。
【0045】
<潤滑性試験>
そして、実施例7,8の各鞘管を水に浸し、その潤滑性を観察した。
その結果、実施例7,8の各鞘管は、水に浸すと直ちに潤滑性を発現し、摩擦を加えても剥がれることがなかった。また、24時間蒸留水中に浸漬放置しても潤滑性は低下しなかった。これにより、血管等の管腔に挿入する場合の挿入抵抗が少く、長時間潤滑性を維持できることがわかる。
【0046】
<疑似血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例7,8および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管において、上記実施例3,4の疑似血管による引き抜き抵抗試験の内容と同様の方法で疑似血管に対する引き抜き抵抗試験を行い、疑似血管から鞘管を引く抜くときの抵抗値を測定した。その結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例7,8を疑似血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/8に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体と含フッ素・アクリル・ウレタン・シリコーン樹脂との混合物からなる被膜を有する鞘管によって、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0049】
<ウサギ大動脈血管による引き抜き抵抗試験>
上記実施例7,8および比較例1の外径5フレンチのそれぞれの鞘管において、上記実施例3,4のウサギ大動脈血管による引き抜き抵抗試験の内容と同様の方法でウサギ大動脈血管に対する引き抜き抵抗試験を行い、ウサギ大動脈血管から鞘管を引く抜くときの抵抗値を測定した。その結果を表4に示す。
【0050】
表4から明らかなように、外表面に被膜を有する鞘管を備えた実施例7,8をウサギ大動脈血管から引き抜くときの抵抗値は、外表面に被膜を有しない鞘管を備えた比較例1の値より約1/3に低下した。これにより、ポリアミドエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物およびポリウレタンエラストマーに放射線不透過物質である硫酸バリウムを混合した混合物によって構成され、外表面にメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体と含フッ素・アクリル・ウレタン・シリコーン樹脂との混合物からなる被膜を有する鞘管によって、血管壁等に対する物理的刺激を緩和してスパズムの発生頻度を減少させるとともに、スパズムが発生した場合でも速やかに鞘管を抜去できることがわかる。
【0051】
なお、上述の実施例3〜8では放射線不透過物質を硫酸バリウムとした場合を示したが、炭酸ビスマスまたはタングステンでもよく、これらの場合も同様の効果を奏する。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る医療用導入具は、先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有する鞘管が設けられたほぼ筒状のシースハブと、先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有し鞘管の内腔に挿通される管状の拡張器が設けられたほぼ筒状の把持部とを備えてなり、鞘管の外表面に形成され、湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜を有し、鞘管を、ポリアミド、ポリアミド系ブロックコポリマー・エラストマーまたはこれらのいずれかの樹脂に放射線不透過物質を混練した混合物により構成するとともに、被膜を、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物を水酸化ナトリウム水溶液で処理したものにより構成したので、血管等の管腔に医療用導入具の鞘管を挿入する場合、少ない挿入抵抗で目的部位に挿入することができ、かつ細い血管等に挿入した場合でも鞘管の外表面に形成された湿潤潤滑性被膜によって、血管壁に対する物理的刺激を緩和することができ、スパズムの発生を減少させることができる。また、スパズムが発生した場合でも速やかに血管等の管腔から鞘管を抜去でき、操作性のよい医療用導入具を得ることができる。
【0053】
また、柔軟な鞘管と、その鞘管と強固に結合される湿潤潤滑性被膜を得ることができ、管腔への挿入時の抵抗および管腔への物理的刺激を低減し、スパズムの発生を減少できる医療用導入具を得ることができる。
【0054】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の外表面の少なくとも先端部分に形成されたので、鞘管を管腔へ挿入する場合および管腔から抜去する場合、円滑に操作することができるとともに、挿入後は鞘管を安定した状態で留置することができ、操作性のよい医療用導入具を得ることができる。
【0055】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の外表面で操作時に把持される手元側を除く部分に形成されたので、鞘管を管腔へ挿入する場合および管腔から抜去する場合、円滑に操作することができるとともに、操作時において手元が滑ったりすることがなく安定性および操作性のよい医療用導入具を得ることができる。
【0056】
本発明に係る医療用導入具は、被膜が、鞘管の内腔に挿通して鞘管から突出した拡張器の外表面の少なくとも先端部分に形成されたので、拡張器の管腔への挿入時の抵抗および管腔への物理的刺激を低減できるとともに、スパズムが発生した場合でも拡張器を速やかに管腔から抜去できる操作性のよい医療用導入具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】医療用導入具の一例の構成を示す断面図である。
【図2】図1の医療用導入具の斜視図である。
【図3】図1の医療用導入具の作用説明図である。
【図4】図1の医療用導入具の作用説明図である。
【符号の説明】
1 医療用導入具
2 シースハブ
3 鞘管
3a 鞘管の内腔
6 把持部
8 拡張器
8a 拡張器の内腔
Claims (5)
- 先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有する鞘管が設けられたほぼ筒状のシースハブと、先端部側に開口した先端部と連通する内腔を有し前記鞘管の内腔に挿通される管状の拡張器が設けられたほぼ筒状の把持部とを備えてなり、
前記鞘管の外表面に形成され、湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜を有し、
前記鞘管を、ポリアミド、ポリアミド系ブロックコポリマー・エラストマーまたはこれらのいずれかの樹脂に放射線不透過物質を混練した混合物により構成するとともに、
前記被膜を、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体とポリエーテルブロックアミドとの混合物を水酸化ナトリウム水溶液で処理したものにより構成したことを特徴とする医療用導入具。 - 放射線不透過物質を、硫酸バリウム、炭酸ビスマスまたはタングステンとしたことを特徴とする請求項1記載の医療用導入具。
- 被膜は、鞘管の外表面の少なくとも先端部分に形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療用導入具。
- 被膜は、鞘管の外表面で操作時に把持される手元側を除く部分に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の医療用導入具。
- 被膜は、鞘管の内腔に挿通して該鞘管から突出した拡張器の外表面の少なくとも先端部分に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の医療用導入具。
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