JP2004534855A - 第vii因子ポリペプチドおよび第xi因子ポリペプチドを含んでなる医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる組成物、ならびに出血症状を処置するためのその使用に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物に関する。本発明はまた、出血症状に苦しむ被験体の処置またはその予防のための薬剤を製造するための、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの組合せの使用に関する。本発明はまた、被験体における出血症状の処置のための方法および被験体における血塊形成を増進させるための方法に関する。本発明はまた、これらの化合物を含んでなるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
止血は、血管壁に対する損傷後に循環血液に曝露される組織因子(TF)と、全FVIIタンパク質質量の約1 %に相当する量で循環に存在するFVIIaとの間の複合体の形成によって開始する。この複合体はTF担持細胞に固着され、その細胞表面上でFXをFXaへ、さらにFIXをFIXaへと活性化する。FXaはプロトロンビンをトロンビンへと活性化し、これがFVIII、FV、FXIおよびFXIIIへと活性化する。さらに、止血のこの開始段階で形成される限定された量のトロンビンは血小板をも活性化する。血小板に対するトロンビンの作用の後、これらは形状を変化させ、荷電したリン脂質をそれらの表面に露出させる。この活性化した血小板の表面は、さらなるFXの活性化および十分なトロンビンの産生のための鋳型を形成する。活性化した血小板の表面上でのさらなるFX活性化は、活性化した血小板の表面上で形成されたFIXa-FVIIIa複合体を介して起こり、FXaは続いて表面上に残っている間プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは続いてフィブリノーゲンを、不溶性で且つ初期の血小板血栓を安定化するフィブリンへと変換する。このプロセスはTFの発現または露出部位に区分化または限局され、これにより凝固系が全身的に活性化される危険性を最小化している。さらに、塞栓を形成する不溶性フィブリンがフィブリン繊維のFXIII触媒による架橋によって安定化する。
【0003】
FVIIaは一本鎖チモーゲンとして主に血漿中に存在しており、FXaによって二本鎖の活性型FVIIaへと開裂される。組換え活性型第VIIa因子(rFVIIa)は、止血剤の前駆物質として開発されてきた。rFVIIaの投与は抗体形成を原因として凝固因子産物で処置され得ない、出血している血友病患者における迅速でかつ非常に有効な止血前応答を提供する。また、出血している第VII因子欠損被験体または正常な凝固系を有しているが、過度の出血を起こしている被験体もFVIIaにより首尾よく処置されうる。これらの研究において、rFVIIaの好ましくない副作用(特に血栓塞栓症の発生)にも遭遇しなかった。
【0004】
追加的に体外から投与されたFVIIaは、活性化した血小板の表面上でのトロンビンの形成を増大させる。これは、FIXまたはFVIIIを欠損しているために十分なトロンビン形成のための最も有力な経路を失っている血友病患者において起こる。また、より低量の血小板または機能障害を有する血小板の存在下でも、追加したFVIIaがトロンビン形成を増大させる。
【0005】
組換えヒトFVIIaの市販用調製物はNovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)として販売されている。Novoseven(登録商標)は血友病AおよびB患者における出血症状の処置に用いられる。Novosevenは出血症状の有効かつ確実な処置のための、市場で入手可能な唯一の組換えFVIIaである。
【0006】
FXIは内因系凝固経路の一構成要素である。FXIの欠損は特に局所フィブリン溶解活性の高い組織の軽度〜中度の出血性疾患に関係している。それとは対照的に、高レベルのFXIは静脈血栓症の危険因子であると考えられている。FXIはFXIIa、トロンビンおよびFXIaによって活性化されるトリプシン様セリンプロテアーゼのチモーゲンである。活性化されたFXI(FXIa)はFIXの活性化に加わり、このFIXが続いて(FVIIIとともに)FXをさらに活性化してトロンビンの生成を誘導する。
【0007】
外科処置または大きな外傷に伴い過剰に出血し、輸血を必要としている被験体が、全く出血を経験していない人よりも合併症を引き起こしやすいことは周知である。しかしながら、ヒト血液または血液製剤(血小板、白血球、血液凝固異常症の処置のための血漿由来の濃縮物等)の投与を必要とする中度出血もまた、ヒトウイルス(肝炎、HIV、パルボウイルス、および他の、現時点では未知のウイルス)を運ぶ危険性を伴う合併症をもたらすことがある。大量の輸血を必要とする甚大な出血は肺および腎臓の機能障害をはじめとする多臓器不全の発症をもたらすことがある。一たび被験体がこれらの重度の合併症を発症すると、多数のサイトカインが関与する一連の事象および炎症反応が開始して処置が極めて困難となり、残念なことに不成功に終わることが多くある。そのため、外科処置、ならびに大きな組織損傷の処置における主要な目標は出血を回避しまたは最小化することにある。かかる出血を回避し、または最小化するためにはフィブリン溶解酵素によって容易に溶解されない安定かつ固体の止血栓の形成を保証することが重要である。さらに、かかる塞栓または血塊の迅速かつ有効な形成を保証することも重要である。
【0008】
現在において、外傷被害者をはじめとする出血症状を起こしている被験体および外科処置に伴い出血している被験体は、半減期の短いFVIIa(2.5時間)ではある程度の止血能力を維持するには複数回の投与を必要とすることから、FVIIaの数回の注射または注入によって処置されることが多い。より迅速な出血の停止がかかる被験体にとって重要な利益をもたらすと思われる。そのため、投与数の減少には出血を停止し、さらに止血を維持することが必要であると思われる。
【0009】
日本特許出願番号59-116213A号は、血液凝固剤を活性成分として含有する組織接着剤用のエアゾール組成物に関する。血液凝固剤は血液凝固因子I、II、III、IV、V、VII、VIII、IX、X、XI、XIIおよびXIII、プレカリクレイン、高分子キニノーゲンならびにトロンビンから選択されうる。FXIIIとトロンビンとの組合せが好ましい。
【0010】
欧州特許第225,160号(Novo Nordisk)は、FVIIaの組成物および凝固因子の欠損または凝固因子インヒビターが原因ではない出血性疾患の処置のための方法に関する。
【0011】
欧州特許第82,182号(Baxter Travenol Lab.)は、被験体における血液凝固因子の欠損または血液凝固因子に対するインヒビターの効果の相殺に用いる第VIIa因子の組成物に関する。
【0012】
国際特許公開番号WO93/06855(Novo Nordisk)は、FVIIaの局所適用に関する。
【0013】
米国特許第5,252,217号は、治療的使用を目的とするヒト第XI因子濃縮物の製造方法に関する。
【0014】
出血症状が外科処置、外傷、または他の組織損傷形態;大量の輸血を受けた被験体における凝固障害をはじめとする誘発性凝固障害;肝機能の低下(「肝疾患」)をはじめとする先天性もしくは後天性凝固障害または出血性疾患;血小板機能障害もしくは血小板数の減少;必須の凝固「化合物」の欠損もしくは異常(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質);フィブリン溶解現象の増加;抗凝固療法もしくは血栓溶解療法;または幹細胞移植に起因するものである被験体を含む出血症状を起こしている被験体の改良された処置についての当技術分野における要求がなお存在する。
【0015】
被験体、特にトロンビン生成障害を有する被験体における凝固を増強する、安定した止血栓の形成を増強し、もしくは保証する、または処置される被験体にとっての利便性を高める、あるいは十分な止血を達成する、改良され、信頼性があり、かつ広範に適用可能な方法についての当技術分野における要求もなお存在する。また、十分な止血を達成するために必要なFVIIaの量が減少される方法および出血の停止までの時間が短縮される方法についての必要性も存在する。
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの目的は、出血症状および凝固障害の処置または予防において有効に使用されうる組成物を提供することである。
【0017】
本発明の第2の目的は、出血症状の処置または予防において、または凝血原として有効に使用されうる、一単位剤形の組成物を提供することである。本発明のもう1つの目的は、相乗効果を示す組成物、処置方法またはキットを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、実質的な副作用、例えば凝固系の高レベルの全身作用を示さない組成物、処置方法またはキットを提供することである。
【0019】
本発明のその他の目的は、本明細書を読むことにより明らかとなるだろう。
【0020】
第1の態様において、本発明は第VII因子または第VII因子関連ポリペプチド、および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0021】
第2の態様において、本発明は出血症状の処置を含むキット形式であって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、ならびに
h)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット形式を提供する。
【0022】
もう1つの実施形態では、キットが有効量のTFPI阻害剤および/または第VIII因子をさらに含み、TFPI阻害剤または第VIII因子(もしくはその2種の組合せ)が別個の単位剤形中に存在してもよいし、第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチド、または第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかを含む単位剤形のうちの1つに存在してもよい。
【0023】
第3の態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドと組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの使用を提供する。さらなる態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物の使用を提供する。
【0024】
その別の実施形態では、薬剤が凝固時間を短縮させる、血塊溶解時間を延長する、および凝固力を増強するためのものである。
【0025】
もう1つの実施形態では、薬剤が静脈内投与、好ましくは注射または注入、特に注射用に製造される。
【0026】
1つの実施形態では、薬剤が一単位剤形に製造され、もう1つの実施形態では第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として製造される。
【0027】
別の実施形態では、薬剤が外科処置、外傷、または他の組織損傷形態;大量の輸血を受けた被験体における凝固障害をはじめとする凝固障害;肝機能の低下(「肝疾患」)をはじめとする先天性もしくは後天性凝固障害または出血性疾患;血小板機能障害もしくは血小板数の減少;必須の凝固「化合物」の欠損もしくは異常(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質);フィブリン溶解現象の増加;抗凝固療法もしくは血栓溶解療法;幹細胞移植に起因する出血症状を起こしている被験体を処置するためのものである。一連の実施形態では、出血が脳、内耳領域、眼、肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管などの器官で起こり、別の一連の実施形態では、それが出血性胃炎および大量の子宮出血などのびまん性出血である。別の一連の実施形態では、出血症状が急性関節血症(関節における出血)、慢性血友病性関節症、血腫(例えば、筋肉、腹膜後、舌下および咽頭後)を有する被験体における外科処置または外傷に伴う出血、その他の組織における出血、血尿(腎管からの出血)、脳出血、外科処置(例えば、肝切除術)、抜歯、および消化管出血(例えば、UGI 出血)である。1つの実施形態では、薬剤が被験体における外傷、または外科処置、あるいは血小板の数もしくは活性の低下に起因する出血症状を処置するためのものである。
【0028】
さらなる態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法を提供する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は被験体における凝固時間を短縮させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固時間を短縮させるのに効である)、方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は被験体における止血を促進するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも止血を促進するのに有効である)、方法を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は被験体における血塊溶解時間を延長するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも血塊溶解時間を延長するのに有効である)、方法を提供する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は被験体における凝固力を増強するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固力を増強するのに有効である)、方法を提供する。
【0033】
この方法についての一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが一単位剤形で投与される。
【0034】
別の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として投与される。その一連の実施形態では、第1の単位剤形および第2の単位剤形が15分以内に投与される。
【0035】
さらなる態様において、本発明は出血症状の処置を含むキットであって、
d)一単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチド、ならびに医薬上許容される担体、さらに
e)前記一単位剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キットを提供する。
【0036】
本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである。本発明の一連の実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子アミノ酸配列変異体である。1つの実施形態では、本明細書に記載の「in vitroにおける加水分解アッセイ」において試験した際に第VII因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25である。
【0037】
本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子である。1つの実施形態では、第VII因子がヒト第VII因子である。1つの実施形態では、第VII因子がウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ネズミまたはサケ第VII因子である。もう1つの実施形態では、第VII因子が組換えにより作製される。もう1つの実施形態では、第VII因子が血漿由来のものである。好ましい実施形態では、第VII因子が組換えヒト第VII因子である。本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその活性型である。本発明の1つの好ましい実施形態では、第VII因子が組換えヒト第VIIa因子である。
【0038】
一連の実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子関連ポリペプチドである。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子アミノ酸配列変異体である。1つの実施形態では、本明細書に記載の「FXI発色アッセイ」において試験した際に第XI因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト血漿第XI因子(野生型FXI)の活性との比率が少なくとも約1.25である。1つの実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子ポリペプチドである。1つの実施形態では、第XI因子がヒト第XI因子である。1つの実施形態では、第XI因子がウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ネズミまたはサケ第XI因子である。好ましい実施形態では、第XI因子が組換えにより作製される。もう1つの実施形態では、第XI因子が血漿由来のものである。もう1つの実施形態では、第XI因子が血小板由来の第XI因子である。好ましい実施形態では、第XI因子が組換えヒト血漿第XI因子である。本発明の一連の実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドがその活性型である。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子の断片である。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドがハイブリッド第XI因子ポリペプチド、例えばブタ/ヒトハイブリッドである。1つの実施形態では、第XI因子がヒト血漿活性型第XI因子(FXIa)である。
【0039】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する。
【0040】
1つの実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが野生型第VII因子と比較して、わずかに20個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているアミノ酸配列変異体(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)であり、もう1つの実施形態では、第VII因子変異体がわずかに15個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているものであり、他の実施形態では、第VII因子変異体が野生型第VII因子と比較して、わずかに10個のアミノ酸、例えば8、6、5または3個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているものである。1つの実施形態では、第VII因子変異体がL305V-FVIIa、L305V/M306D/D309S-FVIIa、L305I-FVIIa、L305T-FVIIa、F374P-FVIIa、V158T/M298Q-FVIIa、V158D/E296V/M298Q-FVIIa、K337A-FVIIa、M298Q-FVIIa、V158D/M298Q-FVIIa、L305V/K337A-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVIIa、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、およびS336G-FVIIのリストから選択される。
【0041】
さらなる実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが天然ヒト凝固第VIIa因子と比較して組織因子に非依存的な活性が増強されている。もう1つの実施形態では、活性の増強に基質特異性の変化を伴わない。本発明のもう1つの実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドと組織因子との結合は損なわれず、組織因子と結合すると第VII因子関連ポリペプチドは少なくとも野生型第VIIa因子の活性を有する。
【0042】
好ましい実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト血漿第XI因子または組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト血漿第XIa因子である。
【0043】
1つの実施形態では、哺乳類血液の凝固時間が短縮される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の止血が促進される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の血塊溶解時間が延長される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の凝固力が増強される。1つの実施形態では、哺乳類血液がヒト血液である。もう1つの実施形態では、哺乳類血液が正常なヒト血液であり、1つの実施形態では、血液がトロンビン生成障害を有する被験体の血液である。1つの実施形態では、血液が1種以上の凝固因子欠損のある被験体の血液であり、もう1つの実施形態では、血液が1種以上の凝固因子に対するインヒビターを有する被験体の血液であり、1つの実施形態では、血液がフィブリノーゲン濃度が低下している被験体の血液であり、1つの実施形態では、血液が第XI因子欠損のヒト血液である。一連の実施形態では、血液が血漿である。
【0044】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける血塊溶解時間を延長する。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける最大凝固強度血塊溶解時間を増強する。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける凝固時間を短縮する。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組成物に含められる単独の止血剤である。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組成物に含められる単独の活性止血剤である。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが被験体に投与される単独の凝固因子である。本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが患者に投与される単独の活性剤である。1つの実施形態では、組成物がプロトロンビンを実質的に含まず、もう1つの実施形態では、組成物がFXを実質的に含まず、もう1つの実施形態では、組成物がFXaを実質的に含まない。
【0046】
もう1つの実施形態では、医薬組成物が静脈内投与、好ましくは注射または注入、特に注射用に製造される。1つの実施形態では、組成物が少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤または担体を含む。
【0047】
本発明の1つの実施形態では、組成物が両方の凝固因子を含む一単位剤形である。本発明の1つの実施形態では、組成物が第1の単位剤形として第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、および第2の単位剤形として第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなり、さらに前記第1および第2の単位剤形を収容するための容器手段を含んでなるキット形式である。1つの実施形態では、組成物またはキットが規定どおりに組成物または各成分それぞれの投与についての説明書をさらに含む。
【0048】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが単一剤形で投与される。本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として投与される。
【0049】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが同時に投与される。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが逐次投与される。1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分以内に投与される。1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが最大2時間、好ましくは1〜2時間、より好ましくは最大1時間、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは最大30分、より好ましくは15〜30分の間隔をおいて投与される。
【0050】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの有効量が約0.05mg/日〜約500mg/日(70kgの被験体)である。1つの実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の有効量が約0.01mg/日〜約500mg/日(70kgの被験体)である。
【0051】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、医薬組成物が単一剤形であり、本質的に第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物、さらに医薬上許容される賦形剤または担体、安定化剤、界面活性剤、中性塩、酸化防止剤、保存剤、およびプロテアーゼ阻害剤のリストから選択される1種以上の成分からなる。
【0053】
さらなる実施形態では、被験体がヒトであり、もう1つの実施形態では、被験体がトロンビン生成障害を有しており、1つの実施形態では、被験体がフィブリノーゲンの血漿濃度が低下しており(例えば、大量の輸血を受けた被験体)、1つの実施形態では、被験体が第VIII因子の血漿濃度が低下している。
【0054】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における止血を、被験体を単独の凝固タンパク質として第VII因子で処置した場合に比べて促進するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも止血を促進するのに有効である)、方法に関する。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は被験体におけるトロンビンの形成を増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれもトロンビンの形成を増進させるのに有効である)、方法に関する。
【0056】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体におけるトロンビンの形成を、被験体を単独の凝固タンパク質として第VII因子で処置した場合に比べて増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれもトロンビンの形成を増進させるのに有効である)、方法に関する。
【0057】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における止血を達成するのに必要な凝固因子タンパク質の投与数を、単独の凝固因子タンパク質として第VII因子を被験体に投与する場合に必要な投与数に比べて減少させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固因子タンパク質の投与数を減少させるのに有効である)、方法に関する。
【0058】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における出血を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法に関する。
【0059】
1つの実施形態では、第VII因子がヒト組換え第VIIa因子(rFVIIa)である。もう1つの実施形態では、rFVIIaがNovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)である。
【0060】
1つの実施形態では、医薬組成物が静脈内投与用に製造される。1つの実施形態では、組成物が、限定されるものではないが、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸またはトラネキサム酸をはじめとするフィブリン溶解系の阻害剤をさらに含んでなる。1つの実施形態では、組成物が TFPI阻害剤および/またはFVIIIをさらに含む。
【0061】
1つの実施形態では、組成物が第VIII因子をさらに含む。1つの実施形態では、第VIII因子が活性型第VIII因子(第VIIIa因子)である。さらなる実施形態では、第VIII因子が組換え第VIIIa因子である。さらなる実施形態では、第VIII因子が組換えヒト第VIIIa因子である。
【0062】
もう1つの態様において、本発明は哺乳類血漿のフィブリン血塊形成を増進させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用に関する。
【0063】
もう1つの態様において、本発明は被験体におけるフィブリン血塊形成を増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法に関する。
【0064】
本発明の1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる。
【0065】
本発明のもう1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤、ならびにTFPI阻害剤からなる。
【0066】
本発明のもう1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤、ならびに第VIII因子、ならびに、所望により、TFPI阻害剤からなる。
【0067】
もう1つの実施形態では、医薬組成物(キット形式をとる場合)が本質的に第VIIa因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第1の単位剤形と、本質的に第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第2の単位剤形とからなる。
【0068】
もう1つの実施形態では、医薬組成物(キット形式をとる場合)が本質的に第VIIa因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩 ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第1の単位剤形と、本質的に第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第2の単位剤形とからなる(なおここで、第1の単位剤形または第2の単位剤形のいずれか、あるいは前記剤形のいずれもが第VIII因子および/またはTFPI阻害剤をさらに
含む)。
【0069】
外科処置または大外傷に伴い過剰に出血し、そのために輸血を必要としている被験体は全く出血を経験していない人よりも合併症を引き起こしやすい。しかしながら、中度出血でも、ヒト血液または血液製剤(血小板、白血球、血液凝固異常症の処置のための血漿由来の濃縮物等)の投与を必要とする場合にはこれがヒトウイルス(例えば肝炎、HIV、パルボウイルス、または他の、現時点では未知のウイルス)、ならびに非ウイルス病原体を運ぶ危険性を伴うことから合併症をもたらすことがある。大量の輸血を必要とする甚大な出血は肺および腎臓の機能障害をはじめとする多臓器不全の発症をもたらすことがある。一たび被験体がこれらの重度の合併症を発症すると、多数のサイトカインが関与する一連の事象および炎症反応が開始して処置が極めて困難となり、残念なことに不成功に終わることが多くある。大量失血を起こしている患者は臨床的に不安定になる。かかる患者は心房細動を引き起こす危険な状態にあり、これは心臓活動の致命的な停止;腎機能の低下;または肺内での液体漏出(いわゆる「水腫肺」またはARDS)に至ることがある。そのため、外科処置、ならびに大きな組織損傷の処置における主要な目標は出血を回避しまたは最小化することにある。かかる望ましくない出血を回避し、または最小化するためにはフィブリン溶解酵素によって容易に溶解されない安定かつ固体の止血栓の形成を保証することが重要である。さらに、かかる塞栓または血塊の迅速かつ有効な形成を保証することも重要である。
【0070】
また、血小板減少症(血小板数または活性の低下)を有する被験体はトロンビン生成障害だけでなく、フィブリン塞栓の安定化不全も有しているため、これが早期溶解を起こしやすい止血栓をもたらす。さらに、大外傷または臓器損傷を受け、かつ、その結果として、頻回の輸血を受けた被験体は血小板数が減少しているだけでなく、フィブリノーゲン、第VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルも低下していることが多くある。これらの被験体はトロンビン生成障害(またはその低下)を起こしている。そのため、これらの被験体の止血は不完全、または効率が悪く、これが広範な外傷および臓器損傷を特徴とする状況において広範囲にわたり放出されるタンパク質分解酵素によって容易かつ早期に溶解されるフィブリン塞栓の形成を導く。
【0071】
また、組織内での出血は血腫の形成をもたらすこともある。(特に頭蓋内および背髄の)血腫の大きさは神経機能の損傷程度、リハビリテーション難易度、ならびに/またはリハビリテーション後の神経機能の永久的な障害の重篤度および程度と密接な相関関係がある。血腫の最も重篤な影響は血腫が脳内に存在する場合に見られ、この場合には患者の死さえももたらすことがある。
【0072】
このように、出血の処置における主たる目的は最小限の時間内に止血を得、その結果として失血を最小限にとどめることである。
【0073】
よって、本発明はかかる処置を必要とする被験体における出血症状の処置のための、有益な組成物、使用および処置方法を提供する。組成物、使用および方法は、止血が得られるまでの失血が少ない、外科処置中に必要な血液が少ない、止血が得られるまで血圧が許容レベルに維持される、血圧の安定が迅速である、処置した患者の回復時間が短い、処置した患者のリハビリテーション時間が短い、脳内の血腫をはじめとする血腫形成が減少するまたは血腫形成が小型化する、出血の停止が迅速である、出血を停止させ、止血を維持するのに必要な投与数が減少するなどの有益な効果を及ぼしうる。
【0074】
第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物と組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、例えば、第VIIa因子の投与は、第VIIa因子または第XI因子のいずれかを単独で投与した場合の凝固時間、血塊堅固性および耐性に比べて、凝固時間をより短縮し、血塊をより堅固にし、およびフィブリン溶解に対する耐性をより増強する。
【0075】
また、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物と組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、例えば、第VIIa因子の投与は、第VIIa因子または第XI因子のいずれかを単独で投与した場合の状況に比べて、出血の停止を得るための時間をより短縮し、止血を維持するための投与数もより減少させる。本発明は第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物および第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物の同時または逐次投与の有益な効果を提供する。本発明の医薬組成物は単一組成物形態にあってもよく、またはそれが多成分キット(キット形式)形態にあってもよい。本発明の組成物は治療用および予防用の凝血原として霊長類、例えばヒト、をはじめとする哺乳類において有用である。
【0076】
本発明はさらにヒトをはじめとする被験体における出血症状を処置する(予防的に処置するまたは予防することを含む)ための方法を提供する。
【0077】
第1または第2または第3単位剤形等が本明細書を通じて言及される場合、これは好ましい投与順序を示すものではなく、単に便宜上の言及である。
【0078】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物との組合せは短い凝固時間、止血栓の迅速な形成、および安定した止血栓の形成を保証する有利な産物である。本発明者によって、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドと第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドとの組合せが固体の安定した、かつ迅速に形成される止血栓の形成を保証する有利な産物であることが判明した。
【0079】
本発明者らは第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿の凝固時間を短縮することができることを示した。また、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に血塊の堅固性を増強しうることも示した。血塊堅固性のさらなる増強が観察されない濃度の第VIIa因子と、同様に血塊堅固性のさらなる増強が観察されない濃度の第XI因子とを組み合わせることによって、予想外にも、血塊堅固性のさらなる増強が得られることが分かった。また、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿のin vitroにおける血塊溶解時間を延長することができることも示した。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿の血塊溶解による半減時間を延長することができることも示した。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿のフィブリン溶解、特にtPAによるフィブリン溶解から血塊を防御することができることも示した。
【0080】
このように、凝固を増強することによって被験体における出血のより効果的な処置を得ることができる。
【0081】
理論に縛られるつもりはないが、十分なトロンビンの生成が固体の、安定した止血栓の形成に、それゆえ止血の維持にも必要であると考えられている。かかる塞栓のフィブリン構造は形成されるトロンビンの量と初期のトロンビン生成速度のいずれもに依存する。トロンビン生成障害が起こっている場合には高透過性である多孔質のフィブリン栓が形成される。通常フィブリンの表面に存在するフィブリン溶解酵素はかかるフィブリン栓を容易に溶解する。安定したフィブリン栓の形成はまた、トロンビンによって活性化される第XIIIa因子の存在に依存し、それゆえに十分なトロンビンの生成にも依存する。さらに、最近報告されたトロンビン活性化フィブリン溶解阻害剤、TAFIはその活性化のために、かなり多くの量のトロンビンを必要とする。適当なトロンビンの形成が十分に起こっていない場合、TAFIはその結果として活性化されず、正常なフィブリン溶解活性によって通常溶解されるよりも容易に溶解される止血栓が形成されることがある。血小板数が減少している状況、血小板減少症においては、体外からの追加的な第VIIa因子の投与によってより迅速にトロンビンの生成を開始させる。しかしながら、第VIIa因子が高濃度である場合でさえもトロンビン生成は完全には正常化されない。
【0082】
フィブリノーゲンの血漿濃度が低下している被験体(多数の外傷または広範囲な外科処置の結果として大量に輸血された被験体)では、十分なトロンビンの活性化が起こらない。よって、より効果的な止血は第VII因子と第XI因子との組合せの投与によって得られる。
【0083】
血小板減少症を有する被験体はトロンビン生成障害だけでなく、フィブリン栓の安定化不全も起こしているため、これが早期溶解を起こしやすい止血栓をもたらす。さらに、大外傷または臓器損傷を受け、かつ、その結果として、頻回の輸血を受けた被験体は血小板数が減少しているだけでなく、フィブリノーゲン、第VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルも低下していることが多くある。これらの被験体はトロンビン生成障害(またはその低下)を起こしている。さらに、それらのフィブリノーゲンレベルの低下が第XIII因子の活性化をマイナス方向へと妨害する。そのため、これらの被験体の止血は不完全、または効率が悪く、これが広範な外傷および臓器損傷を特徴とする状況において広範囲にわたり放出されるタンパク質分解酵素によって容易かつ早期に溶解されるフィブリン栓の形成を導く。
【0084】
被験体において止血を維持する十分な能力を有する十分に安定化した栓の形成を容易にするために本発明の組成物が投与される。この組成物は血小板数が減少している被験体およびフィブリノーゲンおよび/またはその他の凝固タンパク質の血漿レベルが低下している被験体において特に有益である。
【0085】
第XI因子の存在下では、十分な止血を保証するのに、より低濃度の第VIIa因子で十分であると思われる。
【0086】
第 VII 因子ポリペプチド:
本発明の実施においては、出血を予防するまたは処置するのに有効である第VII因子ポリペプチドが用いられうる。これは血液もしくは血漿由来の第VII因子ポリペプチド、または組換え手段によって作製したものも含む。
【0087】
本発明は、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するもの(野生型ヒト第VII因子)などの第V II因子ポリペプチドを包含する。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されたように、ヒト第VIIa因子(野生型第VII因子)である。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%を示すポリペプチドを含む。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約120%、より好ましくは少なくとも約140%、および最も好ましくは少なくとも約160%を示すポリペプチドを含む。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが米国特許第4,784,950号に開示された野生型第VII因子の配列と少なくとも約70 %、好ましくは少なくとも約80 %、より好ましくは少なくとも約90 %、および最も好ましくは少なくとも約95 %の同一性を示すポリペプチドを含む。
【0088】
本明細書において「第VII因子ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、第VII因子、ならびに第VII因子関連ポリペプチドを包含する。「第VII因子」とは、限定されるものではないが、野生型ヒト第VII因子のアミノ酸配列1〜406番を有するポリペプチド(米国特許第4,784,950号に開示されたもの)、ならびに、例えば、ウシ、ブタ、イヌ、ネズミおよびサケ第VII因子などのその他の種由来の野生型第VII因子(前記第VII因子は血液もしくは血漿由来のものでも、または組換え手段によって作製したものでもよい)を包含することを意味する。さらに個体間に存在し、また生じうる第VII因子の自然対立遺伝子変異体も包含する。また、グリコシル化の程度および位置または他の翻訳後修飾は選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質によっても変化することがある。また、「第VII因子」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型の第VII因子ポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、第VIIa因子とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。一般には、第VII因子は残基152番と153番との間で開裂されて第VIIa因子を生じる。
【0089】
「第VII因子関連ポリペプチド」としては、限定されるものではないが、ヒト第VII因子に対して化学修飾がなされたおよび/またはヒト第VII因子に対して1つ以上のアミノ酸配列変化を含む(すなわち、第VII因子変異体)、および/またはヒト第VII因子に対して末端切断型アミノ酸配列を含む(すなわち、第VII因子断片)第VII因子ポリペプチドを含む。かかる第VII因子関連ポリペプチドはヒト第VII因子と比較して、安定性、リン脂質結合、特異的活性の変化等をはじめとする異なる特性を示しうる。「第VII因子関連ポリペプチド」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型のかかるポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、「第VIIa因子関連ポリペプチド」または「活性型第VII因子関連ポリペプチド」とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0090】
本明細書において「第VII因子関連ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、野生型ヒト第VII因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を示すポリペプチド、ならびに第VIIa因子生物活性が野生型ヒト第VIIa因子の活性と比較して実質的に改変されているまたは低下しているポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドとしては、限定されるものではないが、化学修飾がなされた第VII因子または第VIIa因子およびポリペプチドの生物活性を改変するまたは破壊する特定のアミノ酸配列変化が導入された第VII因子変異体を含む。
【0091】
さらにわずかに修飾がなされたアミノ酸配列を有するポリペプチド、例えば、N末端アミノ酸欠失または付加をはじめとする修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒト第VIIa因子に対して化学修飾がなされたポリペプチドも包含する。
【0092】
第VII因子の変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドとしては、野生型第VII因子と実質的に同じまたはより優れた生物活性を示すか、あるいは野生型第VII因子と比較して実質的に改変されているまたは低下している生物活性を示すかどうかにかかわらず、限定されるものではないが、野生型第VII因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0093】
変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、または少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0094】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を有する、変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、および最も好ましくは少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0095】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に低下している生物活性を有する、変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満を示すものである。野生型第VII因子と比較して実質的に改変されている生物活性を有する第VII因子変異体としては、限定されるものではないが、TFに非依存的な第X因子タンパク質分解活性を示す第VII因子変異体およびTFとは結合するが第X因子を開裂しないものを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチド、特に変異体(この際、「in vitroにおける加水分解アッセイ」(下記の「アッセイ」を参照)において試験した際に前記第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0である)である。本発明のいくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチド、特に変異体(この際、「in vitroにおけるタンパク質分解アッセイ」(下記の「アッセイ」を参照)において試験した際に前記第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約8.0である)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されているように、ヒト第VII因子(野生型第VII因子)である。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子である。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%を示す第VII因子関連ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが野生型第VII因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有する。
【0098】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に同じまたはより優れた生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、限定されるものではないが、デンマーク国特許出願番号PA 2000 00734およびPA 2000 01360(WO01/83725に該当する)、ならびにPA 2000 01361(WO02/22776に該当する)に記載のものを含む。野生型第VII因子と実質的に同じまたはより高い生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、S52A-FVII、560A-FVII(lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、およびS336G-FVII;米国特許第5,580,560号に開示されたように増強されたタンパク質分解安定性を示すFVIIa変異体;タンパク質分解により残基290番と291番との間または残基315番と316番との間で開裂された第VIIa因子(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48: 501-505, 1995);ならびに酸化型第VIIa因子(Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363: 43-54, 1999)を含む。野生型第VII因子と比較して実質的に低下しているまたは改変されている生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、R152E-FVIIa(Wildgoose et al., Biochem 29: 3413-3420, 1990)、S344A-FVIIa(Kazama et al., J. Biol. Chem. 270: 66-72, 1995)、FFR-FVIIa(Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15: 515-520, 1998)、ならびにGlaドメインを欠いた第VIIa因子(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317: 245-Z49, 1993)を含む。化学修飾された第VII因子ポリペプチドおよび配列変異体の非限定的な例については、例えば、米国特許第5,997,864号に記載されている。
【0099】
血液凝固における第VIIa因子の生物活性が、(i)組織因子(TF)と結合し、および(ii)第IX因子または第X因子のタンパク質分解性開裂に触媒作用を及ぼして活性型第IX因子または第X因子(各々第IXa因子または第Xa因子)を生ずるその能力を誘導する。
【0100】
本発明の目的では、第VII因子ポリペプチドの生物活性(「第VII因子生物活性」)が、例えば、米国特許第5,997,864号に記載されるように、第VII因子欠損血漿およびトロンボプラスチンを用いて調製物の血液凝固を促進する能力を測定することによって定量されうる。このアッセイでは、生物活性が対照サンプルと比較した凝固時間の短縮として示され、1単位/ml 第VII因子活性を有するプールされたヒト血清標準との比較により「第VII因子単位」へと変換される。あるいは、第VIIa因子生物活性が
(i)脂質膜に組み込まれたTFおよび第X因子を含んでなる系における第VIIa因子または第VIIa因子関連ポリペプチドの活性型第X因子(第Xa因子)を生成する能力の測定(Persson et al., J. Biol. Chem. 272: 19919-19924, 1997)、
(ii)水性系における第X因子加水分解の測定(下記の「in vitroにおけるタンパク質分解アッセイ」を参照)、
(iii)表面プラズモン共鳴に基づく装置を用いた第VIIa因子または第VIIa因子関連ポリペプチドとTFとの物理的結合の測定(Persson, FEBS Letts. 413: 359-363, 1997)、および
(iv)第VIIa因子および/または第VIIa因子関連ポリペプチドによる合成基質の加水分解の測定(「in vitroにおける加水分解アッセイ」、下記を参照)、さらに
(v)TFに非依存的なin vitro系におけるトロンビン生成の測定
によって定量されうる。
【0101】
「第VII因子生物活性」または「第VII因子活性」とは、トロンビンを生成する能力を含むことを意味し、さらにこの用語は組織因子の不在下での活性化した血小板表面上でトロンビンを生成する能力も含む。
【0102】
本発明に従って使用されうる第VIIa因子調製物は、限定されるものではないが、NovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)である。
【0103】
第 XI 因子ポリペプチド:
本発明の実施においては、出血を予防するまたは処置するのに有効である第XI因子ポリペプチドが用いられうる。これは血液もしくは血漿由来の第XI因子ポリペプチド、または組換え手段によって作製したものも含む。さらに、血小板はFXIの構造的に異なる型(FXI遺伝子の選択的スプライシングによって起こりうる)も含みうる。血小板第XI因子については、Lipscomb, M. S. & Walsh, P. N. (1979), Journal of Clinical Investigation, 63, 1006-1014に記載されている。
【0104】
本明細書において「第XI因子ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、第XI因子、ならびに第XI因子関連ポリペプチドを包含する。「第XI因子」とは、限定されるものではないが、Sun, Y. & Gailani, D. (1996), J. Biol. Chem. 271: 29023-29028に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(野生型ヒト第XI因子、血漿)、ならびに、例えば、ウシ、ブタ、イヌ、ネズミおよびサケ第XI因子などのその他の種由来の野生型第XI因子を包含することを意味する。いくつかの実施形態では、第XI因子ポリペプチドが、例えば、Sun, Y. & Gailani, D. (1996), J. Biol. Chem. 271: 29023-29028に開示されたように、野生型ヒト第XI因子である。
【0105】
さらに個体間に存在し、また生じうる第XI因子の自然対立遺伝子変異体も包含する。また、グリコシル化の程度および位置または他の翻訳後修飾は選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質によっても変化することがある。また、「第XI因子」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型の第XI因子ポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、第XIa因子とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0106】
「第XI因子関連ポリペプチド」としては、限定されるものではないが、ヒト第XI因子に対して化学修飾がなされたおよび/またはヒト第XI因子に対して1つ以上のアミノ酸配列変化を含む(すなわち、第XI因子変異体)、および/またはヒト第XI因子に対して末端切断型アミノ酸配列を含む(すなわち、第XI因子断片)第XI因子ポリペプチドを含む。かかる第XI因子関連ポリペプチドはヒト第XI因子と比較して、安定性、リン脂質結合、特異的活性の変化等をはじめとする異なる特性を示しうる。
【0107】
「第XI因子関連ポリペプチド」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型のかかるポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、「第XIa因子関連ポリペプチド」または「活性型第XI因子関連ポリペプチド」とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0108】
本明細書において「第XI因子関連ポリペプチド」は、限定されるものではないが、野生型ヒト第XI因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を示すポリペプチド、ならびに第XI因子生物活性が野生型ヒト第XI因子の活性と比較して実質的に改変されているまたは低下しているポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドとしては、限定されるものではないが、化学修飾がなされた第XI因子または第XIa因子およびポリペプチドの生物活性を改変するまたは破壊する特定のアミノ酸配列変化が導入された第XI因子変異体を含む。
【0109】
さらにわずかに修飾がなされたアミノ酸配列を有するポリペプチド、例えば、N末端アミノ酸欠失または付加をはじめとする修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒト第XI因子に対して化学修飾がなされたポリペプチドも包含する。
【0110】
第XI因子の変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドとしては、野生型第XI因子と実質的に同じまたはより優れた生物活性を示すか、あるいは野生型第XI因子と比較して実質的に改変されているまたは低下している生物活性を示すかどうかにかかわらず、限定されるものではないが、野生型第XI因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0111】
変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、本明細書に記載の第XI因子活性アッセイで試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第XI因子の比活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、および少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0112】
野生型第XI因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を有する、変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、記載の特定の第XI因子活性アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型ヒト第XI因子の特異的な生物活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、および最も好ましくは少なくとも約130%を示すものを包含する。本発明の目的では、第XI因子生物活性が本明細書において後に記載するように定量されうる(「アッセイの部分」)。
【0113】
野生型第XI因子と比較して実質的に低下している生物活性を有する、変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、上述の特定の第XI因子活性アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第XI因子の比活性の約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1 %未満を示すものである。
【0114】
第XI因子ポリペプチドの非限定的な例としては、例えば、Gailani & Broze (1993), Blood Coagul. Fibrinolysis, 4: 15-20、またはKerbiriou & Griffin (1979), J. Biol. Chem. , 254: 12020-12207に記載されたように血漿由来のヒト第XI因子を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、第XI因子が第XI因子関連ポリペプチド(この際、「FXI発色アッセイ(下記を参照))において試験した際に前記第XI因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第XI因子(野生型第XI因子)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0である)である。
【0116】
また、第XI因子関連ポリペプチドとしては、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドのそれらの特徴である止血関連活性を保持する断片も含む。第XI因子ポリペプチドの止血関連活性は、例えば、本明細書に記載の第XI因子活性アッセイを用いて測定されうる。
【0117】
好ましい実施形態では、第XI因子がヒト血漿第XI因子または活性型ヒト血漿第XIa因子である。1つの実施形態では、FXIが血小板第XI因子である。もう1つの実施形態では、FXIが組換えにより作製される。
【0118】
定義:
本明細書において、アミノ酸の3文字または1文字表記は表1に示すそれらの常用の意味で使用されている。特に断りのない限り、本発明で言及したアミノ酸はL-アミノ酸である。例えば、K337では最初の文字が野生型第VII因子の指定の位置に天然に存在するアミノ酸を表すこと、さらに、例えば、[K337A]-FVIIaが、指定の位置において天然に存在する、一文字コードKによって表されるアミノ酸が一文字コードAによって表されるアミノ酸によって置換されているFVII変異体を表すことが分かるであろう。
【表1】
【0119】
用語「第VIIa因子」または「FVIIa」は互換的に用いてもよい。「第VIIa因子」としては、チモーゲンである第VII因子(一本鎖の第VII因子)を含む。用語「第XI因子」または「FXI」は互換的に用いてもよい。用語「第VIII因子」または「FVIII」は交換可能に使用されうる。用語「第VIII因子」または「FVIII」としては、活性型第VIII因子(FVIIIa)、変異体およびその特徴であるFVIII関連の止血活性を保持する末端切断形を含み、この用語は組換えにより作製したFVIIIおよび血漿由来のFVIIIを含む。ヒトFVIIIおよびヒト組換えFVIIIが好ましい。
【0120】
本明細書において、「トロンビン生成障害を有する被験体」とは、活性化した血小板の表面上で十分なトロンビンの群発を生み出すことができない被験体を意味し、正常な量および機能の凝固因子、血小板およびフィブリノーゲンをはじめとする(例えば、プールされた正常なヒト血漿の場合)十分に機能する正常な止血系を有する被験体におけるトロンビン生成よりもトロンビン生成の少ない被験体を含み、さらに、限定されるものではないが、第VIII因子が欠損している被験体、血小板数が減少しているまたは血小板が機能障害を有する被験体(例えば、血小板減少症またはグランツマン血小板無力症、あるいは過剰に出血している被験体)、プロトロンビン、FXまたはFVIIのレベルが低下している被験体、いくつかの凝固因子のレベルが低下している被験体(例えば、外傷または広範囲な外科処置の結果としての過剰出血による)、およびフィブリノーゲンの血漿レベルが低下している被験体(例えば、大量の輸血を受けた被験体)を含む。
【0121】
「トロンビン生成のレベル」または「正常なトロンビン生成」とは、健康な被験体におけるレベルと比較した患者のトロンビン生成レベルを意味する。このレベルは正常なレベルに対する割合として表される。これらの用語は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0122】
「止血系の増強」とは、トロンビンを生成する能力の増強を意味する。「止血の促進」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定したトロンビン生成が、同じトロンビン生成アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々のトロンビン生成と比較して延長される状況を包含することを意味する。トロンビンの生成は本明細書のトロンビン生成アッセイに記載するようにアッセイしうる(「アッセイの部分」を参照)。
【0123】
本明細書において「単独の」薬剤または因子とは、一緒に合わせられた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが、医薬組成物またはキットに含められる唯一の止血剤、または活性止血剤、または凝固因子である、あるいは、例えば、特殊な出血症状などの特定の処置に際して患者に投与される唯一の止血剤、または活性止血剤、または凝固因子である状況をいう。これらの状況が適用可能な他の止血剤または凝固因子が1つ以上の凝固パラメーターに大きな影響を及ぼすのに十分な量または活性で存在していない状況も包含することは分かるであろう。
【0124】
血塊溶解時間、凝固力、フィブリン血塊形成、および凝固時間が患者の止血系の状況をアッセイするのに用いられる臨床的指標である。患者から好適な間隔をおいて血液サンプルを採取し、1つ以上のパラメーターを、例えば、Meh et al., Blood Coagulation & Fibrinolysis 2001; 12: 627- 637;Vig et al., Hematology, Vol. 6 (3) pp. 205-213 (2001);Vig et al., Blood Coagulation & Fibrinolysis, Vol. 12 (7) pp. 555-561 (2001) Oct;Glidden et al., Clinical and applied thrombosis/hemostasis, Vol. 6 (4) pp. 226-233 (2000) Oct;McKenzie et al., Cardiology, Vol. 92 (4) pp. 240-247 (1999) Apr;またはDavis et al., Journal of the American Society of Nephrology, Vol. 6 (4) pp.1250-1255 (1995)によって記載されるように、例えば、トロンボエラストグラフィーによってアッセイする。
【0125】
「血塊溶解時間の延長」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した血塊溶解時間が、同じ血塊溶解アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の血塊溶解時間と比較して延長される状況を包含することを意味する。血塊溶解時間は上述のようにアッセイしうる。
【0126】
「凝固力の増強」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した凝固力、例えば、機械的強度が、同じ凝固力アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の血塊溶解時間と比較して増強される状況を包含することを意味する。凝固力は、例えば、Carr et al, 1991(Carr ME, Zekert SL. Measurement of platelet-mediated force development during plasma clot formation. AM J MED SCI 1991; 302: 13-8)に記載されたように、またはトロンボエラストグラフィーによる上述のようにアッセイしうる。
【0127】
「フィブリン血塊形成の増進」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定したフィブリン血塊形成速度または程度が、同じ凝固アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々のフィブリン血塊形成速度または程度と比較して高められる状況を包含することを意味する。フィブリン血塊形成は上述のようにアッセイしうる。
【0128】
「凝固時間の短縮」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した血塊形成時間(凝固時間)が、同じ凝固アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の凝固時間と比較して増大される状況を包含することを意味する。凝固時間は当業者には公知の標準PTまたはaPTTアッセイによってアッセイしうる。
【0129】
「血小板数または活性の低下」とは、被験体の血漿に存在する小板(血小板)数およびかかる血小板の生物学的凝固関連活性をいう。数の減少は、例えば、血小板破壊の増大、血小板生成の減少、および脾臓における血小板の正常値を超える割合での貯留によって起こりうる。血小板減少症は、例えば、血小板数、マイクロリットル当たり150,000未満の血小板として定義される。一般に、正常な血小板数の上限はマイクロリットル当たり350,000〜450,000間の血小板であると考えられる。血小板数は自動血小板計数装置により測定されうる。これは当業者には周知の方法である。血小板数の減少が原因の症候群としては、限定されるものではないが、血小板減少症、凝固障害が挙げられる。「活性」としては、限定されるものではないが、血小板の凝集、接着、および凝固剤活性が挙げられる。活性の低下は、例えば、糖タンパク質異常、異常な膜細胞骨格相互作用、血小板顆粒の異常、血小板凝固剤活性の異常、シグナル伝達および分泌の異常によって起こりうる。凝集、接着、および凝固剤活性をはじめとする血小板活性は当業者に公知の標準方法によって測定される、例えば、Platelets. A Practical Approach, Ed. S. P. Watson & K. S. Authi: Clinical Aspects of Platelet Disorders (K. J. Clemetson) 15: 299-318,1996, Oxford University Press; Williams Hematology, Sixth Edition, Eds. Beutler, Lichtman, Coller, Kipps & Seligsohn, 2001, McGraw-Hillを参照。血小板活性の低下が原因の症候群としては、限定されるものではないが、グランツマン血小板無力症、バーナード・スーリエ症候群、抗凝固剤治療および血栓溶解治療が挙げられる。「低下した」とは、試験血漿サンプルの数または活性について、同じアッセイで測定した際のプールされた正常血漿のサンプルの数または活性と比較していう。
【0130】
本明細書において「出血性疾患」とは、出血症状を呈する、細胞または分子起源の先天性、後天性または誘発性の障害を意味する。出血性疾患の例としては、限定されるものではないが、凝固因子欠損症(例えば、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIの欠損症)、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が挙げられる。
【0131】
出血とは、循環系の構成要素からの血液溢出をいう。「出血症状」とは、外科処置、外傷、または他の組織損傷形態に関連する、不所望の、制御されない、多くの場合において過度の出血、ならびに出血性疾患を有する被験体における不所望の出血を含むことを意味する。出血症状は基本的には正常な凝固系を有しているが、(一過性)凝固障害を引き起こしている被験体、ならびに先天性もしくは後天性凝固または出血性疾患を有する被験体において起こりうる。血小板機能障害を有する被験体において、出血が血友病によって生じる出血に例えられるのは、止血系が、血友病の場合のように欠損しているか、または異常な必須凝固「化合物」(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質)を有しているためである。例えば、外科処置または大きな外傷に関連する広範な組織損傷を起こしている被験体では、正常な止血機構が迅速な止血の要求に圧倒されることがあり、基本的には(外傷前または外科処置前の)正常な止血機構に関係なく、過度の出血を引き起こすことがある。さらに多くの場合には大量の輸血を受けたかかる被験体は出血および/または輸血の結果として(一過性)凝固障害(すなわち、出血および/または輸血に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少)を引き起こす。出血は脳、内耳領域および眼などの器官でも起こりうるが、これらは外科的な止血の可能性に限定される部位であるため、満足の行く止血の達成には問題である。同様の問題は種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)の生検を行う過程において、ならびに腹腔鏡による手術および恥骨後式前立腺全摘出術において起こることがある。これら全ての状況にとって共通することは外科的な技術(縫合、クリップ等)によって止血を提供することが困難であることであり、これは出血が拡散する場合(例えば、出血性胃炎および大量の子宮出血)にも同様である。出血は、その治療によって止血障害が誘導される抗凝固治療を受けている被験体においても起こることがある。これらの出血は多くの場合、急性でかつ大量である。抗凝固治療は血栓塞栓症を防ぐためにしばしば与えられる。かかる治療は、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリンまたは他の形態のビタミンKアンタゴニスト、ならびにアスピリンおよび、例えば、抗体またはGP IIb/IIa活性の他の阻害剤などの他の血小板凝集阻害剤を含むことがある。また、出血が抗血小板薬(例えば、アセチルサリチル酸)、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)、およびフィブリン溶解剤(例えば、組織プラスミノゲンアクチベーター、tPA)との併用治療を含む、いわゆる血栓溶解療法が原因であることがある。また、出血症状とは、限定されるものではないが、急性関節血症(関節における出血)、慢性血友病性関節症、血腫(例えば、筋肉、腹膜後、舌下および咽頭後)を有する被験体における外科処置または外傷、その他の組織における出血、血尿(腎管からの出血)、脳出血、外科処置(例えば、肝切除術)、抜歯、および消化管出血(例えば、UGI 出血)に伴う、制御されないかつ過度の出血を含むことも意味する。出血症状は第VIII因子に対するインヒビター、血友病A 、インヒビターによる血友病A 、血友病B、第VII因子の欠損症、第XI因子の欠損症、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド因子の欠損症(フォン・ヴィレブランド病)、重度な組織損傷、重度な外傷、外科処置、腹腔鏡による手術、出血性胃炎、生検の実施、抗凝固治療、上部消化管出血(UGI)、または幹細胞移植に関連していることがある。出血症状が大量な子宮出血であることがあるし、機械的な止血の可能性に限定される器官、脳、内耳領域、または眼で起こることもある。「出血症状」および「出血」は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0132】
本明細書において「処置」とは、出血を阻害し、または最小化するための、例えば、外科処置において予測される出血の防止、および、例えば外傷において既に起こっている出血の制御の両方を含むことを意味する。前記の「予測される出血」は特定の組織または器官で起こると予測される出血であることも、または、詳細不明の出血であることもある。第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の予防的投与も、従って「処置」に含まれる。
【0133】
本明細書において「被験体」とは、動物、特にヒトなどの哺乳類を意味することを意図し、適当であれば「患者」と互換的に用いてもよい。
【0134】
本明細書において定義するように、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは同時または逐次投与されうる。それらの因子は両方の凝固因子を含む単一剤形で、または第1の単位剤形として第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を、さらに第2の単位剤形として第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなるキット形式で供給されうる。第1または第2または第3単位剤形等が本明細書を通じて言及される場合、このことは好ましい投与順序を示すものではなく、単に便宜上の言及である。
【0135】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の「同時」投与とは、単一剤形での凝固因子タンパク質の投与、または第1の凝固因子タンパク質の投与に続いて、15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分以内での第2の凝固因子タンパク質の投与を意味する。いずれの因子を最初に投与してもよい。
【0136】
「逐次」投与とは、第1の凝固因子タンパク質の投与に続いて、最大2時間、好ましくは1〜2時間、より好ましくは最大1時間、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは最大30分、より好ましくは15〜30分の間隔をおいての第2の凝固因子タンパク質の投与を意味する。2つの単位剤形、または凝固因子タンパク質のうちいずれを最初に投与してもよい。好ましくは、両製剤を同じ静脈内経路により注射する。
【0137】
「第XI因子のレベル」または「第XI因子レベル」とは、健康な被験体におけるレベルと比較した患者の凝固第XI因子の活性レベルを意味する。このレベルは正常なレベルに対する割合として表される。これらの用語は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0138】
「第XI因子のレベルの低下」または「第XI因子レベルの低下」とは、凝固第XI因子欠損または凝固第XI因子に対するインヒビターを有していない被験体集団の平均第XI因子レベルと比較した血流中の第XI因子の存在または活性の低下を意味する。循環している第XI因子のレベルは凝固剤または免疫学的アッセイのいずれかによって測定できる。第XI因子の凝血原活性は患者の血漿の第XI因子欠損血漿の凝固時間を補正する能力によって調べられる(例えば、APTTアッセイ、下記を参照;本明細書の「アッセイの部分」も参照)。
【0139】
1単位の第XI因子は正常な(プールされた)ヒト血漿(第XI因子レベル100%に相当する)の1ミリリットル中に存在する第XI因子の量と定義されている。
【0140】
1単位の第VII因子は正常な血漿の1ml中に存在する第VII因子の量と定義され、約0.5μgタンパク質に相当する。活性化後の50単位は約1μgタンパク質に相当する。
【0141】
「欠損症」とは、正常な健康個体のものと比較した、例えば、血漿中の第XI因子の存在または活性を意味する。これらの用語は、適当であれば「第XI因子レベルの低下」と互換的に用いてもよい。
【0142】
「APTT」または「aPTT」とは、活性部分トロンボプラスチン時間を意味する(例えば、Proctor RR, Rapaport SI: The partial thromboplastin time with kaolin; a simple screening test for first-stage plasma clotting factor deficiencies. Am J Clin Pathol 36: 212, 1961により記載される)。
【0143】
「第XI因子反応性症候群」とは、それを必要とする被験体に投与される外因性第XI因子によって、症候群を原因とした、予測される、または存在する徴候、症状または疾病が予防、治療または緩和されうる症候群を意味する。限定されるものではないが、第XI因子のレベルの低下によって起こる症候群、例えば、第XI因子のインヒビターが原因の出血性疾患が含まれる。また、第XI因子反応性症候群は 本発明の組成物でも治療されうる。
【0144】
「第VII因子反応性症候群」とは、それを必要とする被験体に投与される外因性第VII因子、好ましくは第VIIa因子によって、症候群を原因とした、予測される、または存在する徴候、症状または疾病が予防、治療または緩和されうる症候群を意味する。限定されるものではないが、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIのレベルの低下、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が原因の症候群が含まれる。
【0145】
「半減期」とは、第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドの血漿濃度が特定の値からその値の半分まで低下するのに必要な時間をいう。
【0146】
「一次止血」とは、FXaおよびTF:第VIIa因子によるトロンビンの初期生成、その後の血小板の活性化、さらにフィブリン、最終的には架橋フィブリンによってまだ安定化されていない、活性化し、付着した血小板の初期のゆるい塞栓の形成を意味する。止血プロセスの第2段階で形成されるフィブリンによって安定化されない(止血が維持されない)場合には、その塞栓はフィブリン溶解系によって容易に溶解される。
【0147】
「二次止血」または「止血の維持」とは、活性化した血小板の表面上で起こる、第VIIIa因子および第VIIIa因子が触媒する二次的な、十分な、大量のトロンビンの群発または生成、その後のフィブリンの形成、さらに初期の血小板血栓の安定化を意味する。フィブリンによる塞栓の安定化によって十分な止血がもたらされる。
【0148】
「十分な止血」とは、効果的に出血を停止し、かつフィブリン溶解系によって容易に溶解されない損傷部位での安定でかつ固体のフィブリン血塊または血栓の形成を意味する。
【0149】
本明細書において「止血」とは、上述するような十分な止血を表すのに用いられる。
【0150】
調製物中の全タンパク質量は一般的に知られる方法、例えば、光学濃度の測定によって測定されうる。第XI因子凝固または第VII因子タンパク質(「抗原」)の量は標準ELISA免疫学的検定などの一般的に知られる方法によって測定されうる。一般的にいえば、かかるアッセイは、例えば、第XI因子タンパク質含有調製物の溶液をELISA用プレート上に固定化した抗FXI抗体と接触させ、続いて、固定化抗体-第XI因子複合体を二次抗FXI抗体担持マーカーと接触させ、その量を第3工程で測定することによって行われる。各凝固因子の量は好適な抗体を用いて同様に測定されうる。調製物中に存在する全凝固因子タンパク質量は各凝固因子タンパク質の量を合計することによって求められる。1つの実施形態では、調製物が単離された凝固因子を含んでなる。もう1つの実施形態では、調製物が凝固因子IIおよび凝固因子IIa(プロトロンビンおよびトロンビン)ならびに/または第X因子もしくは第Xa因子を含まない。
【0151】
本明細書において「単離された」とは、凝固因子、例えば、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが、それらが合成された細胞またはそれらが天然において見られる培地(例えば、血漿または血液)から分離されることをいう。ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。ポリペプチドのそれらが天然に存在する培地からの分離は、限定されるものではないが、例えば、抗第VII因子または抗第XI因子抗体カラム各々などでのアフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。
【0152】
「TFPI阻害剤」とは、TFPI(組織因子系インヒビター)の抗凝固活性を阻害する化合物を意味する。この用語は欧州特許第558 529号、WO96/28153およびUS5,622,988に開示されたもののような化合物を含む。「TFPI」および「EPI」(外因系インヒビター)も互換的に用いてもよい。
【0153】
本発明において、第VII因子ポリペプチドおよび第XI因子ポリペプチドの「有効量」は、出血または失血を予防し、または減少させて、前記疾患およびその合併症を治療し、緩和し、または部分的に抑えるのに十分な、第VII因子ポリペプチド、例えば、FVIIaおよび第XI因子ポリペプチドの量として定義される。
【0154】
「第VIIa因子の活性」または「第VIIa因子活性」としては、トロンビンを生成する能力を含み、さらにこの用語は組織因子の不在下での活性化した血小板表面上でトロンビンを生成する能力も含む。
【0155】
本発明の組成物はTFPIインヒビターをさらに含んでなってもよい。本発明の組成物は第VIII因子をさらに含んでなってもよい。かかる組成物は、好ましくは第VIII因子に対するインヒビターを有さない被験体に投与されるべきである。
【0156】
略語
TF 組織因子
FVII 一本鎖の不活性型第VII因子
FVIIa 活性型第VII因子
rFVIIa 活性型組換え第VII因子
FXI チモーゲンの不活性型第XI因子
FXIa 活性型第XI因子
rFXI 組換えFXI
rFXIa 組換えFXIa
FVIII チモーゲンの不活性型第VIII因子
rFVIII 組換えFVIII
FVIIIa 活性型第VIII因子
rFVIIIa 組換えFVIIIa
TFPI 組織因子系インヒビター。
【0157】
化合物の調製:
本発明における使用に好適なヒト精製第VIIa因子は、好ましくはDNA組換え技術によって、例えばHagen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 2412-2416, 1986に記載のように、または欧州特許第200.421号(ZymoGenetics, Inc.)に記載のように作製される。
【0158】
第VII因子はさらに、Broze and Majerus, J. Biol. Chem. 255 (4): 1242-1247, 1980およびHedner and Kisiel, J.Clin. lnvest. 71: 1836-1841, 1983に記載されている方法によっても作製されうる。これらの方法では検出可能な量の他の血液凝固因子なしに第VII因子が得られる。またさらに精製した第VII因子調製物は、最終的な精製段階としてさらなるゲル濾過を含めることによって得ることができる。次に、第VII因子は周知の手段により、例えばいくつかの異なる血漿タンパク質、例えば第XIIa因子、第IXa因子または第Xa因子により活性型第VIIa因子に変換される。あるいは、Bjoern et al.(Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)により記載されるように、第VII因子は、それをイオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)等に通すことにより活性化することができる。
【0159】
第VII因子関連ポリペプチドは野生型第VII因子の修飾によってまたは組換え技術によって作製されうる。野生型第VII因子に対してアミノ酸配列が変化している第VII因子関連ポリペプチドは、野生型第VII因子をコードする核酸配列を修飾することによって、周知の手段による、例えば、部位特異的突然変異誘発による、天然第VII因子をコードする核酸におけるアミノ酸コドンの変化またはアミノ酸コドンのいくつかの除去によって作製されうる。
【0160】
置換は第VIIa因子または第XI因子分子の機能にとって極めて重要な領域外で起こすことができ、それでもなお結果として活性ポリペプチドをもたらすことは当業者には分かるであろう。第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドの活性に必須であり、それゆえに、好ましくは置換の対象とはならないアミノ酸残基は、当技術分野で知られている手順、例えば、部位指定突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発(例えば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照)に従って同定されうる。後者の技術において、突然変異は分子内の正荷電残基ごとに導入され、生じた変異体分子は分子の活性に必須のアミノ酸残基を同定するために、凝固剤、各々の架橋活性について試験される。基質−酵素の相互作用部位も、核磁気共鳴解析、結晶学または光親和性標識のような技術による三次元構造の解析によって決定されうる(例えば、de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312; Smith et al., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Letters 309:59-64を参照)。
【0161】
あるヌクレオチドを別のヌクレオチドと交換するための、核酸配列内への変異の導入は、当技術分野で知られている方法のいずれかを用いる部位指定突然変異誘発によって達成されうる。特に有用なのは、目的のインサートを有するスーパーコイル二本鎖DNAベクターおよび所望の変異を含む2つの合成プライマーを利用する手順である。当該ベクターの反対の鎖にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによる温度サイクリングの間伸長する。当該プライマーの取り込み時に、ねじれ型のニックを含む変異プラスミドが産生する。温度サイクリングの後、当該産物は、親のDNA鋳型を消化し、変異含有合成DNAを選択するために、メチル化DNAおよびヘミメチル化DNAに特異的なDpnIで処理される。変異体を生成し、同定し、そして単離するための当技術分野で知られている他の手順、例えば遺伝子シャッフリングまたはファージディスプレイ技術なども使用されることがある。
【0162】
ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。
【0163】
所望により、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドはさらに精製してもよい。精製は、限定されるものではないが、例えば、抗第VII因子抗体カラムなどでのアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261: 11097, 1986;およびThim et al., Biochem. 27: 7785, 1988を参照) 、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。一般的には、Scopes, Protein Purfication, Springer-Verlag, New York, 1982;およびProtein Purification, J. C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照。精製後、調製物は宿主細胞由来の非第VII因子または非第VII因子関連ポリペプチドを好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満含有する。
【0164】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドは、第XIIa因子または、例えば、第IXa因子、カリレイン(kallirein)、第Xa因子、およびトロンビンなどのトリプシン様の特異性を有する他のプロテアーゼを用いるタンパク質分解性開裂によって活性化することができる。例えば、Osterud et al., Biochem. 11: 2853 (1972);Thomas, 米国特許第4,456,591号;およびHedner et al., J. Clin. Invest. 71: 1836 (1983)を参照。あるいは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドはそれをイオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)等に通すことによっても活性化することができる。得られた活性型の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその後、下記のように調製され、投与されうる。
【0165】
本発明において使用する第XI因子は、引用することにより本明細書の一部とされる、Koide et al.(Biochemistry 16: 2279-2286, 1977)およびBouma et al.(J. Biol. Chem. 252: 6432-6437, 1977)により開示されたもののような周知の方法により血漿から作製することができる。しかしながら、疾病伝播の危険性を抱えている血液または組織由来の製剤の使用を回避するためには組換え第XI因子を使用することが好ましい。組換え第XI因子の作製方法は当技術分野では知られている。例えば、全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Kemball-Cook et al.(Gene 139 (2): 275-279, 1994)、Fujikawa et al.(Biochemistry 25: 2417-2424, 1986)、Meijers et al.(Blood 79 (6): 1435-1440, 1992)を参照。
【0166】
第XI因子関連ポリペプチドは野生型第XI因子の修飾によってまたは組換え技術によって作製されうる。野生型第XI因子に対してアミノ酸配列が変化している第XI因子関連ポリペプチドは上文でより詳細に記載しているように、野生型第XI因子をコードする核酸配列を修飾することによって、周知の手段による、例えば、部位特異的突然変異誘発による、天然第XI因子をコードする核酸におけるアミノ酸コドンの変化またはアミノ酸コドンのいくつかの除去によって作製されうる。ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。所望により、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドはさらに精製してもよい。精製は上文でより詳細に記載しているように、限定されるものではないが、例えば、抗第XI因子抗体カラムなどでのアフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。精製後、調製物は宿主細胞由来の非第XI因子または非第XI因子関連ポリペプチドを好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満含有する。得られた活性型の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドがその後、下記のように調製され、投与されうる。
【0167】
免疫応答を誘導する危険性を軽減するために、被験体と同系の第XI因子および第VIIa因子タンパク質を使用することが好ましいことは当業者ならば分かるであろう。非ヒト第XI因子の調製物および特性決定については、例えば、Gailani(Blood 90 (3): 1055-1064, 1997)によって開示されている。本発明はまた、獣医学的な手順におけるかかる第XI因子および第VIIa因子タンパク質の使用を包含する。
【0168】
医薬組成物および使用方法
本発明の調製物は、例えば、限定されるものではないが、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIのレベルの低下、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が原因の症候群をはじめとする出血性疾患などの第VII因子反応性症候群の治療に用いられうる。
【0169】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる本発明の医薬組成物は、本来、予防的および/または治療的処置のための非経口投与用のものである。好ましくは、医薬組成物は非経口的に、すなわち、静脈内、皮下、または筋肉内から投与され、最も好ましくは静脈内からである。これらはまた、持続または脈動注入によっても投与されうる。
【0170】
本発明の医薬組成物または製剤は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを、一単位剤形か、またはキット形式のいずれかとして調製し、好ましくは医薬上許容される担体、好ましくは水性担体または希釈剤に溶解して含んでなる。要するに、本発明に従う使用に好適な医薬組成物は、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子、または第XI因子、またはVIIa因子を、好ましくは精製形態で、好適なアジュバントおよび好適な担体または希釈剤と混合することにより作製される。種々の水性担体が使用されることがあり、例えば水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等である。本発明の調製物はまた、非水性担体を用いて、例えば、ゲル形態にまたは損傷の部位への送達または標的化のためのリポソーム調製物としてなど、製造されうる。リポソーム調製物は一般的に、例えば、米国特許第4,837,028号、同第4,501,728号、および同第4,975,282号に記載される。組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されうる。生じた水溶液は、使用のためにパッケージングし、または無菌条件下で濾過し、さらに凍結乾燥してもよく、この凍結乾燥した調製物を投与前に滅菌水溶液と合わせる。
【0171】
組成物は、限定されるものではないが、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等などのpH調整剤および緩衝剤ならびに/または張度調整剤をはじめとする医薬上許容される補助物質またはアジュバントを含んでもよい。
【0172】
製剤は、さらに1つ以上の希釈剤、乳化剤、保存剤、バッファー、賦形剤等を含んでもよく、液体、粉末、エマルション、放出制御などの形態で提供されることもある。当業者は、本発明の組成物を適切な方法で、かつ慣習、例えば、Remington's Pharmaceutical Science,Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に開示されているものに従って製造しうる。従って、静脈内注入のための典型的な医薬組成物は、250mlの滅菌リンガー溶液および10mgの調製物を含むように製造されうる。
【0173】
本発明の調製物を含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与されうる。治療的な適用において、組成物は上述のような疾病を既に患っている被験体に対し、当該疾病およびその合併症の臨床症状を治療し、緩和し、または部分的に抑えるのに十分な量で投与される。これを達成するのに適当な量は、「治療上有効な量」として定義される。各々の目的に有効な量は、疾病または損傷の重篤度、ならびに患者の体重および全身状態に依存する。好適な量の決定は、評価のマトリックスを作製し、そのマトリックスの異なる効果を調べることによる通常の試験を用いて達成されうることが分かるであろう。
【0174】
本発明の調製物の局所送達、例えば、局所適用などは、例えば、噴霧、潅流、二重バルーンカテーテル、血管移植片またはステント中に組込まれるステント、バルーンカテーテルをコーティングするために使用されるヒドロゲル、または他の十分に確立された方法により実施されうる。いずれにせよ、医薬組成物は、症状を効果的に処置するのに十分な量の調製物を提供するべきである。
【0175】
これらの製剤中での第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチド、第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチド、または第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドと組み合わせた第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドの濃度は、非常に広範に、すなわち、約0.5重量%未満、通常約1重量%または少なくとも約1 重量%から、15または20重量%程度にまで及ぶことがあり、選択した特定の投与形態に従い、主に、液量、粘度等によって選択される。注射または注入、特に注射による投与が好ましい。従って、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、静脈内投与に好適な形態、例えば、1つの剤形中の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの両方を含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤、または1つの剤形中の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドを含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤ともう1つの剤形中の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤のいずれかである調製物に調製される。
【0176】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量がともに、出血症状を処置するための凝集に有効な量を含むことは分かるであろう。
【0177】
本発明の材料が、一般的に、重度の疾病または損傷状態、すなわち、生命にかかわるまたは生命にかかわる可能性のある状況において使用されうることに留意しなければならない。そのような場合、異物の最少化およびヒトにおける第VIIa因子および第XI因子の免疫性の一般的な欠損の観点においては、実質的に過剰量のこれらの組成物を投与することが可能であり、さらにそのことが治療者に望ましく感じられると思われる。
【0178】
予防的適用において、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む組成物は、患者自身の凝固能力を増強するために、病状または損傷に影響を受けやすい、あるいはその危険性のある被験体に投与される。かかる量は、「予防的有効用量」であると定義される。第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量がともに、出血症状を予防するための凝集に有効な量を含むことは分かるであろう。
【0179】
当該組成物の1回または複数回の投与は、処置する医師によって選択される投与量のレベルおよびパターンで実施されうる。当該組成物は1日または1週間当たり1回以上投与されうる。かかる医薬組成物の有効量は出血症状に対して臨床的に有意な効果を提供する量である。かかる量は、被験体の処置される症状、年齢、体重、および全身の健康、ならびに当業者にとって明らかな他の要因にある程度依存する。
【0180】
本発明の組成物は、予測される出血の前、または出血開始時に、1回の単回投与量で通常投与される。しかしながら、繰り返し(複数回投与量で)、好ましくは施与される投与量および被験体の症状によって、2-4-6-12時間の間隔で施与してもよい。
【0181】
計画的な介入に関連した処置では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、一般に介入を実施する前の約24時間以内に投与され、その後、7日間以上投与される。凝固剤としての投与は、本明細書に記載のような種々の経路によって実施されうる。
【0182】
当該組成物は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の両方を好適な濃度で含んでなる単一の調製物の形態(単一剤形)であってもよい。当該組成物は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる第1の単位剤形および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる第2の単位剤形からなるキット形式であってもよい。この場合、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、順次、好ましくは互いに約15分以内に、例えば互いに10分以内に、または好ましくは5分以内に、またはより好ましくは互いに2分以内に投与されるべきである。2つの単位剤形のうちいずれかが最初に投与される。
【0183】
当該キットは、少なくとも2つの異なる医薬組成物を含む。当該キットは、異なる組成物を収容するための容器手段、例えば分かれたボトルまたは分かれたホイルパケットを含む。一般に、当該キットは、異なる成分の投与のための説明書を含む。当該キットの形態は、異なる成分が好ましくは異なる剤形で投与され、さらに異なる投与間隔で投与される場合に、または前記組合せのうちの個々の成分の力価が処方する医師によって所望とされる場合に、特に有利である。
【0184】
本発明に従って投与される第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量は、約1:100〜約100:1(w/w)間の比率で変化しうる。従って、第VII因子の第XI因子に対する比率は、例えば、約1:100、または1:90、または1:80、または1:70、または1:60、または1:50、または1:40、または1:30、または1:20、または1:10、または1:5、または1:2、または1:1、または2:1、または5:1、または10:1、または20:1、または30.1、または40:1、または50:1、または60:1、または70:1、または80:1、または90:1、または100:1、あるいは約1:90〜約1:1の間、または約1:80〜約1:2の間、または約1:70〜約1:5の間、または約1:60〜約1:10の間、または約1:50〜約1:25の間、または約1:40〜約1:30の間、または約90:1〜約1:1の間、または約80:1〜約2:1の間、または約70:1〜約5:1の間、または約60:1〜約10:1の間、または約50:1〜約25:1の間、または約40:1〜約30:1の間でありうる。
【0185】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの投与量は、被験体の体重、症状および症状の重篤度によって、70kgの患者の場合、負荷量および維持量として、野生型第VII因子の約0.05mg〜約500mg/日に相当する量、例えば、約1mg〜約200mg/日、または例えば、約5mg〜約175mg/日に及ぶ。
【0186】
第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの投与量は、被験体の体重、症状および症状の重篤度によって、70kgの患者の場合、負荷量および維持量として、野生型第XI因子の約0.05mg〜約500mg/日に相当する量、例えば、約1mg〜約200mg/日、または例えば、約1mg〜約175mg/日に及ぶ。
【0187】
第VIIa因子と第XI因子との組合せは、in vitroにおける血塊堅固性およびフィブリン溶解時間アッセイにおいて相乗効果を示す。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せは、安定したフィブリン血塊の形成、血塊溶解による半減時間の延長、凝固力の増強およびフィブリン溶解に対する耐性の増強において相乗効果を示す。
【0188】
当該組成物は、第VIIa因子および第XI因子の両方を好適な濃度で含んでなる単一の調製物の形態であってもよい。当該組成物は、第VIIa因子を含んでなる第1の単位剤形および第XI因子を含んでなる第2の単位剤形、ならびに、所望により、第VIII因子および/またはTFPI阻害剤を含んでなる1つ以上のさらなる単位剤形からなるキット形式であってもよい。この場合、第VIIa因子および第XI因子は、逐次的に、好ましくは互いに約1〜2時間以内に、例えば互いに30分以内に、または好ましくは10分以内に、またはより好ましくは互いに5分以内に投与されるべきである。2つの単位剤形のうちいずれかが最初に投与される。
【0189】
本発明は、別々に投与されうる活性成分の組合せを用いる処置での出血症状の予防または処置、あるいは凝固処置に関するものであるので、本発明はまた、キット形式で異なる医薬組成物を組み合わせることに関する。当該キットは、少なくとも2つの異なる医薬組成物を含む。当該キットは、異なる組成物を収容するための容器手段、例えば分かれたボトルまたは分かれたホイルパケットを含む。一般に、当該キットは、異なる成分の投与のための説明書を含む。当該キットの形態は、異なる成分が好ましくは異なる剤形で投与され、さらに異なる投与間隔で投与される場合に、または前記組合せのうちの個々の成分の力価が処方する医師によって所望とされる場合に、特に有利である。
【0190】
アッセイ:
第 VIIa 因子活性についての試験:
第VIIa因子活性について試験し、それによって好適な第VIIa因子変異体を選択するのに好適なアッセイが単純な予備的in vitro試験として実施しうる。
【0191】
in vitro における加水分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、ともに「第VIIa因子」という)は比活性についてアッセイしうる。また、それらをアッセイし、同時にそれらの比活性を直接比較してもよい。当該アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施する。発色基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)を最終濃度1mMで、0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、50mM Hepes、pH7.4中の第VIIa因子(最終濃度100nM)に添加する。405nmでの吸光度をSpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。20分のインキュベーションの間に現れた吸光度は、酵素を含まないブランクウェルの吸光度を引いた後、変異体と野生型第VIIa因子との活性の比率の算出に使用する。
【0192】
比率=(第VIIa因子変異体のA405nm)/(第VIIa因子の野生型のA405nm)
この結果より、天然第VIIa因子と同等以上の活性を有する第VIIa因子変異体、例えば、変異体の活性と天然第VII因子(野生型FVII)の活性との比率が約1.0超の比率である変異体などが同定されうる。
【0193】
また、第VIIa因子または第VIIa因子変異体の活性は、生理学的な基質、例えば第X因子を用いても、好適には100〜1000nMの濃度で測定しうる(この際、産生した第Xa因子は好適な発色基質(例えば、S-2765)の添加後に測定される)。なお、当該活性アッセイは生理学的温度で実施されうる。
【0194】
in vitro における タンパク質分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、ともに「第VIIa因子」という)をアッセイし、同時にそれらの比活性を直接比較する。当該アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施する。0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、100μlの50mM Hepes、pH7.4中の第VIIa因子(10nM)および第X因子(0.8μM) を15分間インキュベートする。次いで、0.1M NaCl、20mM EDTAおよび1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、50μlの50mM Hepes、pH7.4の添加により第X因子開裂を停止させる。産生した第Xa因子の量を、発色基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Sweden)を最終濃度0.5mMで添加することにより測定する。405nmでの吸光度をSpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。10分間に現れた吸光度は、FVIIaを含まないブランクウェルの吸光度を引いた後、変異体と野生型第VIIa因子とのタンパク質分解活性の比率の算出に使用する。
【0195】
比率=(第VIIa因子変異体のA405nm)/(第VIIa因子の野生型のA405nm)
この結果より、天然第VIIa因子と同等以上の活性を有する第VIIa因子変異体、例えば、変異体の活性と天然第VII因子(野生型FVII)の活性との比率が約1.0超の比率である変異体などが同定されうる。
【0196】
トロンビン生成アッセイ:
第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチド(例えば、変異体)のトロンビンを生成する能力も、生理学的濃度の全ての関連する凝固因子およびインヒビター、ならびに活性化した血小板を含んでなるアッセイにおいて測定しうる(引用することにより本明細書の一部とされる、Monroe et al.(1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547のP.543に記載される)。
【0197】
第 XI 因子活性についての試験:
第XI因子アミド分解活性について試験し、それによって好適な第XI因子変異体を選択するのに好適なアッセイが、例えば、Gailani et al.(Blood 97 (10): 3117-3122, 2001)に記載されるような、発色基質を用いた単純なin vitro試験として実施しうる(「FXI発色アッセイ」)。
【0198】
また、第XI因子生物活性は、例えば、Gailani et al.(Blood 97 (10): 3117-3122, 2001)に記載されるような、第IX因子〜第IXa因子の活性化を測定する単純なin vitro試験としても実施しうる。
【0199】
第 VIII 因子についての試験:
第VIII 因子活性について試験し、それによって本発明において使用する好適な第VIII 因子変異体を選択するための手段を提供する好適なアッセイは、例えば、Kirkwood TBL, Rizza CR, Snape TJ, Rhymes IL, Austen DEG. Identification of sources of interlaboratory variation in factor VIII assay. B J Haematol 1981; 37; 559-68;またはKessels et al., British Journal of Haematology, Vol. 76(Suppl. 1) pp.16 (1990))に記載されるような、単純なin vitro試験として実施しうる。また、第VIII因子活性は産生したFXaのアミド分解活性に基づく二段階発色アッセイ(Wagenvoord et al, 1989, Haemostasis, 19 (4):196-204)によっても測定しうる。
【0200】
また、第VIII因子生物活性は、例えば、Nilsson et al., 1959.(Nilsson IM, Blombaeck M, Thilen A, von Francken I., Carriers of haemophilia A-A laboratory study, Acta Med Scan 1959; 165: 357)に記載されるように、調製物の第VIII 因子欠損血漿の凝固時間を補正する能力を測定することによって定量することもできる。このアッセイでは、生物活性が単位/ml 血漿(1単位は正常なプールされた血漿に存在するFVIIIの量に相当する)として示される。
【0201】
本発明の態様:
態様1:第VII因子または第VII因子関連ポリペプチド、および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物。
【0202】
実施形態2:第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである、態様1に記載の組成物。
【0203】
実施形態3:第VIIa因子がヒト第VIIa因子である、態様1に記載の組成物。
【0204】
実施形態4:第VIIa因子および第XI因子が組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト第XI因子である、態様1または態様3に記載の組成物。
【0205】
実施形態5:第XI因子が血小板第XI因子である、態様1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【0206】
実施形態6:第XI因子が活性型第XI因子である、態様1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【0207】
実施形態7:TFPI阻害剤をさらに含む、態様1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【0208】
実施形態8:第VIII因子をさらに含む、態様1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【0209】
態様2:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、ならびに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0210】
実施形態10:
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、
c)第3の単位剤形中に、有効量のTFPI阻害剤および医薬上許容される担体、ならびに
d)前記第1、第2および第3の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、態様2に記載の組成物。
【0211】
態様3:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子およびTFPI阻害剤、ならびに医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、さらに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0212】
態様4:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子およびTFPI阻害剤、ならびに医薬上許容される担体、さらに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0213】
実施形態9:第VIII因子を、別個の単位剤形に調製するか、または第VIIa因子、第XI因子またはTFPI阻害剤のリストから選択される1つ以上の化合物も含む一単位剤形内に含めてさらに含む、実施形態2〜4のいずれか1つに記載のキット。
【0214】
態様6:被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0215】
態様7:被験体における凝固時間を短縮させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0216】
態様8:正常な哺乳類の血漿の血塊溶解時間を延長するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0217】
態様9:正常な哺乳類の血漿の凝固力を増強するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0218】
態様10:正常なヒト血漿のフィブリン血塊形成を増進させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0219】
態様11:被験体におけるフィブリン血塊形成を増進させるための方法であって、被験体に有効量の第VIIa因子を有効量の第XI因子と組み合わせて投与することを含んでなる、方法。
【0220】
態様12:被験体における出血症状を処置するための方法であって、被験体に有効量の第VIIa因子を有効量の第XI因子と組み合わせて投与することを含んでなる、方法。
【0221】
実施形態10:第VIIa因子および第XI因子が単一剤形で投与される、態様19または20に記載の方法。
【0222】
実施形態11:第VIIa因子および第XI因子が逐次投与される、態様19または20に記載の方法。
【0223】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、これらは保護の範囲を限定するものではない。前述の説明および後述の実施例に開示される特徴は、個々に、かつそれらの任意の組合せで、それらの異なる形態で本発明を実現するための材料でありうる。
【実施例】
【0224】
実施例1
凝固因子 VIIa および XI を組み合わせることによる止血作用のある血塊の安定性の向上
方法:
血塊溶解アッセイ:インノビン(Dade Behring, 2000倍希釈したもの)、rFVIIa( (Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark;各種濃度)およびt-PA(American Diagnostics、8nM)を含むバッファー(20mM HEPES、150mM NaCl、5mM CaCl、pH7.4)で10倍希釈した正常なヒト血漿を96ウェルELISAプレートに添加し、時間を置いて650nmでの濁度を室温で測定した。示されている場合には、精製ヒトFXI(Haematologic Technologies、各種濃度)も含めた。
【0225】
ローテーショナルトロンボエラストグラフィー(roTEG):測定は5 nM t-PAを添加した正常ヒトクエン酸加血漿で実施し、1nM FVIIa単独でまたは30nM FXI(Haematologic Technologies)と組み合わせての添加の効果を分析した。インノビン(最終濃度 2000倍希釈、Dade Behring # 526945)および20mM HEPES、150mM NaCl、pH 7.4バッファー中のカルシウム(最終濃度 15 mM)の添加により凝固を開始させた。
【0226】
結果:
血塊溶解アッセイ:FVIIaの添加が血塊溶解時間の用量依存的な延長をもたらす(図1)。この効果は10nM FVIIaにおいて至適であった。10nM FVIIaの存在下では、FXIの添加が血塊溶解時間のさらなる延長をもたらした(図2)。この効果は用量依存的であり、30nM FXIにおいて至適であった。
【0227】
トロンボエラストグラフィー:roTEG測定により、FVIIaおよびFXIの最大血塊堅固度(Maximal Clot Firmness)(MCF)、ならびにt-PAによる溶解に対する血塊の耐性に及ぼす影響を分析した。FVIIa/FXIの添加前、MCFは25mmであり、血塊溶解による半減に要する時間は12.3分であった(図3)。FXI (30nM)の添加ではMCFは変わらなかったが、血塊溶解による半減時間は16.1分に延長された(図3)。同様に、FVIIa(1nM)の添加でもMCF への影響はなかったが、t-PAによるフィブリン溶解からの血塊の防御がなされた(血塊溶解による半減時間;16.7分)(図3)。しかしながら、FVIIa (1nM)をFXI (30nM)と一緒に添加すると血塊溶解による半減時間(24.2分、図3)だけでなくMCF(29mm)も増大する。
【0228】
結論:
これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果により血塊の機械的強度およびt-PAによるフィブリン溶解に対する耐性を向上させることを示す。
【0229】
実施例2
凝固因子 VIIa および XI を組み合わせることによる正常なヒト血漿における凝固時間の短縮
方法:
凝固アッセイ:アリコート(55μl)の、50mM Pipes、100mM NaCl、2mM EDTA、1%BSA、pH7.2中のrFVIIa(1μg/ml)単独、FXI(25nM)単独、またはrFVIIaおよびFXIを、同じバッファー中の100μM PC/PSベシクルおよび50mM CaCl2を含有する55μlアリコートとともに5分間インキュベートした。次いで、55μlアリコートの正常ヒト血漿(NHP)を添加し、その後、標準APTTプログラムを用いるACL凝固装置で凝固を400秒間行った。
【0230】
結果:
凝固アッセイ:rFVIIaまたはFXIの添加前では、NHPは400秒の監視時間内では凝固しなかった。FXI(25nM)の添加後でも、凝固時間はなお400秒よりも長かった。FVIIa(1μg/ml) の添加では凝固時間が159.4±1.4秒に短縮された(図4)。FVIIa (1μg/ml)とFXI(25nM)との両方を添加すると凝固時間が95.0±1.4秒に短縮された(図4)。
【0231】
結論:
これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果によりNHPの凝固時間を短縮したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】FVIIaの添加が血塊溶解時間の用量依存的な延長をもたらすことを示す。この効果は10nM FVIIaにおいて至適であった。
【図2】10nM FVIIaの存在下では、FXIの添加が血塊溶解時間のさらなる延長をもたらしたことを示す。この効果は用量依存的であり、30nM FXIにおいて至適であった。
【図3】トロンボエラストグラフィー(roTEG)測定による、FVIIaおよびFXIの最大血塊堅固度(MCF)、ならびにt-PAによる溶解に対する血塊の耐性に及ぼす影響の分析を示す。
【図4】これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果によりNHPの凝固時間を短縮したことを示す。
【0001】
本発明は第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物に関する。本発明はまた、出血症状に苦しむ被験体の処置またはその予防のための薬剤を製造するための、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの組合せの使用に関する。本発明はまた、被験体における出血症状の処置のための方法および被験体における血塊形成を増進させるための方法に関する。本発明はまた、これらの化合物を含んでなるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
止血は、血管壁に対する損傷後に循環血液に曝露される組織因子(TF)と、全FVIIタンパク質質量の約1 %に相当する量で循環に存在するFVIIaとの間の複合体の形成によって開始する。この複合体はTF担持細胞に固着され、その細胞表面上でFXをFXaへ、さらにFIXをFIXaへと活性化する。FXaはプロトロンビンをトロンビンへと活性化し、これがFVIII、FV、FXIおよびFXIIIへと活性化する。さらに、止血のこの開始段階で形成される限定された量のトロンビンは血小板をも活性化する。血小板に対するトロンビンの作用の後、これらは形状を変化させ、荷電したリン脂質をそれらの表面に露出させる。この活性化した血小板の表面は、さらなるFXの活性化および十分なトロンビンの産生のための鋳型を形成する。活性化した血小板の表面上でのさらなるFX活性化は、活性化した血小板の表面上で形成されたFIXa-FVIIIa複合体を介して起こり、FXaは続いて表面上に残っている間プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは続いてフィブリノーゲンを、不溶性で且つ初期の血小板血栓を安定化するフィブリンへと変換する。このプロセスはTFの発現または露出部位に区分化または限局され、これにより凝固系が全身的に活性化される危険性を最小化している。さらに、塞栓を形成する不溶性フィブリンがフィブリン繊維のFXIII触媒による架橋によって安定化する。
【0003】
FVIIaは一本鎖チモーゲンとして主に血漿中に存在しており、FXaによって二本鎖の活性型FVIIaへと開裂される。組換え活性型第VIIa因子(rFVIIa)は、止血剤の前駆物質として開発されてきた。rFVIIaの投与は抗体形成を原因として凝固因子産物で処置され得ない、出血している血友病患者における迅速でかつ非常に有効な止血前応答を提供する。また、出血している第VII因子欠損被験体または正常な凝固系を有しているが、過度の出血を起こしている被験体もFVIIaにより首尾よく処置されうる。これらの研究において、rFVIIaの好ましくない副作用(特に血栓塞栓症の発生)にも遭遇しなかった。
【0004】
追加的に体外から投与されたFVIIaは、活性化した血小板の表面上でのトロンビンの形成を増大させる。これは、FIXまたはFVIIIを欠損しているために十分なトロンビン形成のための最も有力な経路を失っている血友病患者において起こる。また、より低量の血小板または機能障害を有する血小板の存在下でも、追加したFVIIaがトロンビン形成を増大させる。
【0005】
組換えヒトFVIIaの市販用調製物はNovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)として販売されている。Novoseven(登録商標)は血友病AおよびB患者における出血症状の処置に用いられる。Novosevenは出血症状の有効かつ確実な処置のための、市場で入手可能な唯一の組換えFVIIaである。
【0006】
FXIは内因系凝固経路の一構成要素である。FXIの欠損は特に局所フィブリン溶解活性の高い組織の軽度〜中度の出血性疾患に関係している。それとは対照的に、高レベルのFXIは静脈血栓症の危険因子であると考えられている。FXIはFXIIa、トロンビンおよびFXIaによって活性化されるトリプシン様セリンプロテアーゼのチモーゲンである。活性化されたFXI(FXIa)はFIXの活性化に加わり、このFIXが続いて(FVIIIとともに)FXをさらに活性化してトロンビンの生成を誘導する。
【0007】
外科処置または大きな外傷に伴い過剰に出血し、輸血を必要としている被験体が、全く出血を経験していない人よりも合併症を引き起こしやすいことは周知である。しかしながら、ヒト血液または血液製剤(血小板、白血球、血液凝固異常症の処置のための血漿由来の濃縮物等)の投与を必要とする中度出血もまた、ヒトウイルス(肝炎、HIV、パルボウイルス、および他の、現時点では未知のウイルス)を運ぶ危険性を伴う合併症をもたらすことがある。大量の輸血を必要とする甚大な出血は肺および腎臓の機能障害をはじめとする多臓器不全の発症をもたらすことがある。一たび被験体がこれらの重度の合併症を発症すると、多数のサイトカインが関与する一連の事象および炎症反応が開始して処置が極めて困難となり、残念なことに不成功に終わることが多くある。そのため、外科処置、ならびに大きな組織損傷の処置における主要な目標は出血を回避しまたは最小化することにある。かかる出血を回避し、または最小化するためにはフィブリン溶解酵素によって容易に溶解されない安定かつ固体の止血栓の形成を保証することが重要である。さらに、かかる塞栓または血塊の迅速かつ有効な形成を保証することも重要である。
【0008】
現在において、外傷被害者をはじめとする出血症状を起こしている被験体および外科処置に伴い出血している被験体は、半減期の短いFVIIa(2.5時間)ではある程度の止血能力を維持するには複数回の投与を必要とすることから、FVIIaの数回の注射または注入によって処置されることが多い。より迅速な出血の停止がかかる被験体にとって重要な利益をもたらすと思われる。そのため、投与数の減少には出血を停止し、さらに止血を維持することが必要であると思われる。
【0009】
日本特許出願番号59-116213A号は、血液凝固剤を活性成分として含有する組織接着剤用のエアゾール組成物に関する。血液凝固剤は血液凝固因子I、II、III、IV、V、VII、VIII、IX、X、XI、XIIおよびXIII、プレカリクレイン、高分子キニノーゲンならびにトロンビンから選択されうる。FXIIIとトロンビンとの組合せが好ましい。
【0010】
欧州特許第225,160号(Novo Nordisk)は、FVIIaの組成物および凝固因子の欠損または凝固因子インヒビターが原因ではない出血性疾患の処置のための方法に関する。
【0011】
欧州特許第82,182号(Baxter Travenol Lab.)は、被験体における血液凝固因子の欠損または血液凝固因子に対するインヒビターの効果の相殺に用いる第VIIa因子の組成物に関する。
【0012】
国際特許公開番号WO93/06855(Novo Nordisk)は、FVIIaの局所適用に関する。
【0013】
米国特許第5,252,217号は、治療的使用を目的とするヒト第XI因子濃縮物の製造方法に関する。
【0014】
出血症状が外科処置、外傷、または他の組織損傷形態;大量の輸血を受けた被験体における凝固障害をはじめとする誘発性凝固障害;肝機能の低下(「肝疾患」)をはじめとする先天性もしくは後天性凝固障害または出血性疾患;血小板機能障害もしくは血小板数の減少;必須の凝固「化合物」の欠損もしくは異常(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質);フィブリン溶解現象の増加;抗凝固療法もしくは血栓溶解療法;または幹細胞移植に起因するものである被験体を含む出血症状を起こしている被験体の改良された処置についての当技術分野における要求がなお存在する。
【0015】
被験体、特にトロンビン生成障害を有する被験体における凝固を増強する、安定した止血栓の形成を増強し、もしくは保証する、または処置される被験体にとっての利便性を高める、あるいは十分な止血を達成する、改良され、信頼性があり、かつ広範に適用可能な方法についての当技術分野における要求もなお存在する。また、十分な止血を達成するために必要なFVIIaの量が減少される方法および出血の停止までの時間が短縮される方法についての必要性も存在する。
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの目的は、出血症状および凝固障害の処置または予防において有効に使用されうる組成物を提供することである。
【0017】
本発明の第2の目的は、出血症状の処置または予防において、または凝血原として有効に使用されうる、一単位剤形の組成物を提供することである。本発明のもう1つの目的は、相乗効果を示す組成物、処置方法またはキットを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、実質的な副作用、例えば凝固系の高レベルの全身作用を示さない組成物、処置方法またはキットを提供することである。
【0019】
本発明のその他の目的は、本明細書を読むことにより明らかとなるだろう。
【0020】
第1の態様において、本発明は第VII因子または第VII因子関連ポリペプチド、および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0021】
第2の態様において、本発明は出血症状の処置を含むキット形式であって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、ならびに
h)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット形式を提供する。
【0022】
もう1つの実施形態では、キットが有効量のTFPI阻害剤および/または第VIII因子をさらに含み、TFPI阻害剤または第VIII因子(もしくはその2種の組合せ)が別個の単位剤形中に存在してもよいし、第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチド、または第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかを含む単位剤形のうちの1つに存在してもよい。
【0023】
第3の態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドと組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの使用を提供する。さらなる態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物の使用を提供する。
【0024】
その別の実施形態では、薬剤が凝固時間を短縮させる、血塊溶解時間を延長する、および凝固力を増強するためのものである。
【0025】
もう1つの実施形態では、薬剤が静脈内投与、好ましくは注射または注入、特に注射用に製造される。
【0026】
1つの実施形態では、薬剤が一単位剤形に製造され、もう1つの実施形態では第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として製造される。
【0027】
別の実施形態では、薬剤が外科処置、外傷、または他の組織損傷形態;大量の輸血を受けた被験体における凝固障害をはじめとする凝固障害;肝機能の低下(「肝疾患」)をはじめとする先天性もしくは後天性凝固障害または出血性疾患;血小板機能障害もしくは血小板数の減少;必須の凝固「化合物」の欠損もしくは異常(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質);フィブリン溶解現象の増加;抗凝固療法もしくは血栓溶解療法;幹細胞移植に起因する出血症状を起こしている被験体を処置するためのものである。一連の実施形態では、出血が脳、内耳領域、眼、肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管などの器官で起こり、別の一連の実施形態では、それが出血性胃炎および大量の子宮出血などのびまん性出血である。別の一連の実施形態では、出血症状が急性関節血症(関節における出血)、慢性血友病性関節症、血腫(例えば、筋肉、腹膜後、舌下および咽頭後)を有する被験体における外科処置または外傷に伴う出血、その他の組織における出血、血尿(腎管からの出血)、脳出血、外科処置(例えば、肝切除術)、抜歯、および消化管出血(例えば、UGI 出血)である。1つの実施形態では、薬剤が被験体における外傷、または外科処置、あるいは血小板の数もしくは活性の低下に起因する出血症状を処置するためのものである。
【0028】
さらなる態様において、本発明は被験体における出血症状を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法を提供する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は被験体における凝固時間を短縮させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固時間を短縮させるのに効である)、方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は被験体における止血を促進するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも止血を促進するのに有効である)、方法を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は被験体における血塊溶解時間を延長するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも血塊溶解時間を延長するのに有効である)、方法を提供する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は被験体における凝固力を増強するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固力を増強するのに有効である)、方法を提供する。
【0033】
この方法についての一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが一単位剤形で投与される。
【0034】
別の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として投与される。その一連の実施形態では、第1の単位剤形および第2の単位剤形が15分以内に投与される。
【0035】
さらなる態様において、本発明は出血症状の処置を含むキットであって、
d)一単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチド、ならびに医薬上許容される担体、さらに
e)前記一単位剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キットを提供する。
【0036】
本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである。本発明の一連の実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子アミノ酸配列変異体である。1つの実施形態では、本明細書に記載の「in vitroにおける加水分解アッセイ」において試験した際に第VII因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25である。
【0037】
本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子である。1つの実施形態では、第VII因子がヒト第VII因子である。1つの実施形態では、第VII因子がウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ネズミまたはサケ第VII因子である。もう1つの実施形態では、第VII因子が組換えにより作製される。もう1つの実施形態では、第VII因子が血漿由来のものである。好ましい実施形態では、第VII因子が組換えヒト第VII因子である。本発明の一連の実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその活性型である。本発明の1つの好ましい実施形態では、第VII因子が組換えヒト第VIIa因子である。
【0038】
一連の実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子関連ポリペプチドである。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子アミノ酸配列変異体である。1つの実施形態では、本明細書に記載の「FXI発色アッセイ」において試験した際に第XI因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト血漿第XI因子(野生型FXI)の活性との比率が少なくとも約1.25である。1つの実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子ポリペプチドである。1つの実施形態では、第XI因子がヒト第XI因子である。1つの実施形態では、第XI因子がウシ、ブタ、イヌ、ウマ、ネズミまたはサケ第XI因子である。好ましい実施形態では、第XI因子が組換えにより作製される。もう1つの実施形態では、第XI因子が血漿由来のものである。もう1つの実施形態では、第XI因子が血小板由来の第XI因子である。好ましい実施形態では、第XI因子が組換えヒト血漿第XI因子である。本発明の一連の実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドがその活性型である。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子の断片である。1つの実施形態では、第XI因子関連ポリペプチドがハイブリッド第XI因子ポリペプチド、例えばブタ/ヒトハイブリッドである。1つの実施形態では、第XI因子がヒト血漿活性型第XI因子(FXIa)である。
【0039】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する。
【0040】
1つの実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが野生型第VII因子と比較して、わずかに20個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているアミノ酸配列変異体(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)であり、もう1つの実施形態では、第VII因子変異体がわずかに15個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているものであり、他の実施形態では、第VII因子変異体が野生型第VII因子と比較して、わずかに10個のアミノ酸、例えば8、6、5または3個のアミノ酸が置換され、欠失されまたは挿入されているものである。1つの実施形態では、第VII因子変異体がL305V-FVIIa、L305V/M306D/D309S-FVIIa、L305I-FVIIa、L305T-FVIIa、F374P-FVIIa、V158T/M298Q-FVIIa、V158D/E296V/M298Q-FVIIa、K337A-FVIIa、M298Q-FVIIa、V158D/M298Q-FVIIa、L305V/K337A-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVIIa、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVIIa、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、およびS336G-FVIIのリストから選択される。
【0041】
さらなる実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドが天然ヒト凝固第VIIa因子と比較して組織因子に非依存的な活性が増強されている。もう1つの実施形態では、活性の増強に基質特異性の変化を伴わない。本発明のもう1つの実施形態では、第VII因子関連ポリペプチドと組織因子との結合は損なわれず、組織因子と結合すると第VII因子関連ポリペプチドは少なくとも野生型第VIIa因子の活性を有する。
【0042】
好ましい実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト血漿第XI因子または組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト血漿第XIa因子である。
【0043】
1つの実施形態では、哺乳類血液の凝固時間が短縮される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の止血が促進される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の血塊溶解時間が延長される。もう1つの実施形態では、哺乳類血液の凝固力が増強される。1つの実施形態では、哺乳類血液がヒト血液である。もう1つの実施形態では、哺乳類血液が正常なヒト血液であり、1つの実施形態では、血液がトロンビン生成障害を有する被験体の血液である。1つの実施形態では、血液が1種以上の凝固因子欠損のある被験体の血液であり、もう1つの実施形態では、血液が1種以上の凝固因子に対するインヒビターを有する被験体の血液であり、1つの実施形態では、血液がフィブリノーゲン濃度が低下している被験体の血液であり、1つの実施形態では、血液が第XI因子欠損のヒト血液である。一連の実施形態では、血液が血漿である。
【0044】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける血塊溶解時間を延長する。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける最大凝固強度血塊溶解時間を増強する。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが正常なヒト血漿のin vitroにおける凝固時間を短縮する。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組成物に含められる単独の止血剤である。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが組成物に含められる単独の活性止血剤である。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが被験体に投与される単独の凝固因子である。本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが患者に投与される単独の活性剤である。1つの実施形態では、組成物がプロトロンビンを実質的に含まず、もう1つの実施形態では、組成物がFXを実質的に含まず、もう1つの実施形態では、組成物がFXaを実質的に含まない。
【0046】
もう1つの実施形態では、医薬組成物が静脈内投与、好ましくは注射または注入、特に注射用に製造される。1つの実施形態では、組成物が少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤または担体を含む。
【0047】
本発明の1つの実施形態では、組成物が両方の凝固因子を含む一単位剤形である。本発明の1つの実施形態では、組成物が第1の単位剤形として第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、および第2の単位剤形として第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなり、さらに前記第1および第2の単位剤形を収容するための容器手段を含んでなるキット形式である。1つの実施形態では、組成物またはキットが規定どおりに組成物または各成分それぞれの投与についての説明書をさらに含む。
【0048】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが単一剤形で投与される。本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として投与される。
【0049】
本発明の1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが同時に投与される。もう1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが逐次投与される。1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分以内に投与される。1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが最大2時間、好ましくは1〜2時間、より好ましくは最大1時間、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは最大30分、より好ましくは15〜30分の間隔をおいて投与される。
【0050】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの有効量が約0.05mg/日〜約500mg/日(70kgの被験体)である。1つの実施形態では、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の有効量が約0.01mg/日〜約500mg/日(70kgの被験体)である。
【0051】
1つの実施形態では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、医薬組成物が単一剤形であり、本質的に第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物、さらに医薬上許容される賦形剤または担体、安定化剤、界面活性剤、中性塩、酸化防止剤、保存剤、およびプロテアーゼ阻害剤のリストから選択される1種以上の成分からなる。
【0053】
さらなる実施形態では、被験体がヒトであり、もう1つの実施形態では、被験体がトロンビン生成障害を有しており、1つの実施形態では、被験体がフィブリノーゲンの血漿濃度が低下しており(例えば、大量の輸血を受けた被験体)、1つの実施形態では、被験体が第VIII因子の血漿濃度が低下している。
【0054】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における止血を、被験体を単独の凝固タンパク質として第VII因子で処置した場合に比べて促進するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも止血を促進するのに有効である)、方法に関する。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は被験体におけるトロンビンの形成を増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれもトロンビンの形成を増進させるのに有効である)、方法に関する。
【0056】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体におけるトロンビンの形成を、被験体を単独の凝固タンパク質として第VII因子で処置した場合に比べて増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれもトロンビンの形成を増進させるのに有効である)、方法に関する。
【0057】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における止血を達成するのに必要な凝固因子タンパク質の投与数を、単独の凝固因子タンパク質として第VII因子を被験体に投与する場合に必要な投与数に比べて減少させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固因子タンパク質の投与数を減少させるのに有効である)、方法に関する。
【0058】
もう1つの態様において、本発明は第VII因子反応性症候群に苦しむ被験体における出血を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法に関する。
【0059】
1つの実施形態では、第VII因子がヒト組換え第VIIa因子(rFVIIa)である。もう1つの実施形態では、rFVIIaがNovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)である。
【0060】
1つの実施形態では、医薬組成物が静脈内投与用に製造される。1つの実施形態では、組成物が、限定されるものではないが、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸またはトラネキサム酸をはじめとするフィブリン溶解系の阻害剤をさらに含んでなる。1つの実施形態では、組成物が TFPI阻害剤および/またはFVIIIをさらに含む。
【0061】
1つの実施形態では、組成物が第VIII因子をさらに含む。1つの実施形態では、第VIII因子が活性型第VIII因子(第VIIIa因子)である。さらなる実施形態では、第VIII因子が組換え第VIIIa因子である。さらなる実施形態では、第VIII因子が組換えヒト第VIIIa因子である。
【0062】
もう1つの態様において、本発明は哺乳類血漿のフィブリン血塊形成を増進させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用に関する。
【0063】
もう1つの態様において、本発明は被験体におけるフィブリン血塊形成を増進させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法に関する。
【0064】
本発明の1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる。
【0065】
本発明のもう1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤、ならびにTFPI阻害剤からなる。
【0066】
本発明のもう1つの実施形態では、医薬組成物(単一剤形とする場合)が本質的に第VIIa因子および第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤、ならびに第VIII因子、ならびに、所望により、TFPI阻害剤からなる。
【0067】
もう1つの実施形態では、医薬組成物(キット形式をとる場合)が本質的に第VIIa因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第1の単位剤形と、本質的に第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第2の単位剤形とからなる。
【0068】
もう1つの実施形態では、医薬組成物(キット形式をとる場合)が本質的に第VIIa因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩 ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第1の単位剤形と、本質的に第XI因子、ならびに、所望により、医薬上許容される賦形剤または担体、ならびに、所望により、安定化剤、ならびに、所望により、界面活性剤、ならびに、所望により、中性塩、ならびに、所望により、酸化防止剤、ならびに、所望により、保存剤、ならびに、所望により、プロテアーゼ阻害剤からなる第2の単位剤形とからなる(なおここで、第1の単位剤形または第2の単位剤形のいずれか、あるいは前記剤形のいずれもが第VIII因子および/またはTFPI阻害剤をさらに
含む)。
【0069】
外科処置または大外傷に伴い過剰に出血し、そのために輸血を必要としている被験体は全く出血を経験していない人よりも合併症を引き起こしやすい。しかしながら、中度出血でも、ヒト血液または血液製剤(血小板、白血球、血液凝固異常症の処置のための血漿由来の濃縮物等)の投与を必要とする場合にはこれがヒトウイルス(例えば肝炎、HIV、パルボウイルス、または他の、現時点では未知のウイルス)、ならびに非ウイルス病原体を運ぶ危険性を伴うことから合併症をもたらすことがある。大量の輸血を必要とする甚大な出血は肺および腎臓の機能障害をはじめとする多臓器不全の発症をもたらすことがある。一たび被験体がこれらの重度の合併症を発症すると、多数のサイトカインが関与する一連の事象および炎症反応が開始して処置が極めて困難となり、残念なことに不成功に終わることが多くある。大量失血を起こしている患者は臨床的に不安定になる。かかる患者は心房細動を引き起こす危険な状態にあり、これは心臓活動の致命的な停止;腎機能の低下;または肺内での液体漏出(いわゆる「水腫肺」またはARDS)に至ることがある。そのため、外科処置、ならびに大きな組織損傷の処置における主要な目標は出血を回避しまたは最小化することにある。かかる望ましくない出血を回避し、または最小化するためにはフィブリン溶解酵素によって容易に溶解されない安定かつ固体の止血栓の形成を保証することが重要である。さらに、かかる塞栓または血塊の迅速かつ有効な形成を保証することも重要である。
【0070】
また、血小板減少症(血小板数または活性の低下)を有する被験体はトロンビン生成障害だけでなく、フィブリン塞栓の安定化不全も有しているため、これが早期溶解を起こしやすい止血栓をもたらす。さらに、大外傷または臓器損傷を受け、かつ、その結果として、頻回の輸血を受けた被験体は血小板数が減少しているだけでなく、フィブリノーゲン、第VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルも低下していることが多くある。これらの被験体はトロンビン生成障害(またはその低下)を起こしている。そのため、これらの被験体の止血は不完全、または効率が悪く、これが広範な外傷および臓器損傷を特徴とする状況において広範囲にわたり放出されるタンパク質分解酵素によって容易かつ早期に溶解されるフィブリン塞栓の形成を導く。
【0071】
また、組織内での出血は血腫の形成をもたらすこともある。(特に頭蓋内および背髄の)血腫の大きさは神経機能の損傷程度、リハビリテーション難易度、ならびに/またはリハビリテーション後の神経機能の永久的な障害の重篤度および程度と密接な相関関係がある。血腫の最も重篤な影響は血腫が脳内に存在する場合に見られ、この場合には患者の死さえももたらすことがある。
【0072】
このように、出血の処置における主たる目的は最小限の時間内に止血を得、その結果として失血を最小限にとどめることである。
【0073】
よって、本発明はかかる処置を必要とする被験体における出血症状の処置のための、有益な組成物、使用および処置方法を提供する。組成物、使用および方法は、止血が得られるまでの失血が少ない、外科処置中に必要な血液が少ない、止血が得られるまで血圧が許容レベルに維持される、血圧の安定が迅速である、処置した患者の回復時間が短い、処置した患者のリハビリテーション時間が短い、脳内の血腫をはじめとする血腫形成が減少するまたは血腫形成が小型化する、出血の停止が迅速である、出血を停止させ、止血を維持するのに必要な投与数が減少するなどの有益な効果を及ぼしうる。
【0074】
第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物と組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、例えば、第VIIa因子の投与は、第VIIa因子または第XI因子のいずれかを単独で投与した場合の凝固時間、血塊堅固性および耐性に比べて、凝固時間をより短縮し、血塊をより堅固にし、およびフィブリン溶解に対する耐性をより増強する。
【0075】
また、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物と組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物、例えば、第VIIa因子の投与は、第VIIa因子または第XI因子のいずれかを単独で投与した場合の状況に比べて、出血の停止を得るための時間をより短縮し、止血を維持するための投与数もより減少させる。本発明は第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物および第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物の同時または逐次投与の有益な効果を提供する。本発明の医薬組成物は単一組成物形態にあってもよく、またはそれが多成分キット(キット形式)形態にあってもよい。本発明の組成物は治療用および予防用の凝血原として霊長類、例えばヒト、をはじめとする哺乳類において有用である。
【0076】
本発明はさらにヒトをはじめとする被験体における出血症状を処置する(予防的に処置するまたは予防することを含む)ための方法を提供する。
【0077】
第1または第2または第3単位剤形等が本明細書を通じて言及される場合、これは好ましい投与順序を示すものではなく、単に便宜上の言及である。
【0078】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物との組合せは短い凝固時間、止血栓の迅速な形成、および安定した止血栓の形成を保証する有利な産物である。本発明者によって、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドと第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドとの組合せが固体の安定した、かつ迅速に形成される止血栓の形成を保証する有利な産物であることが判明した。
【0079】
本発明者らは第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿の凝固時間を短縮することができることを示した。また、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に血塊の堅固性を増強しうることも示した。血塊堅固性のさらなる増強が観察されない濃度の第VIIa因子と、同様に血塊堅固性のさらなる増強が観察されない濃度の第XI因子とを組み合わせることによって、予想外にも、血塊堅固性のさらなる増強が得られることが分かった。また、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿のin vitroにおける血塊溶解時間を延長することができることも示した。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿の血塊溶解による半減時間を延長することができることも示した。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せによって第VIIa因子または第XI因子のいずれかの単独の場合よりも効果的に正常なヒト血漿のフィブリン溶解、特にtPAによるフィブリン溶解から血塊を防御することができることも示した。
【0080】
このように、凝固を増強することによって被験体における出血のより効果的な処置を得ることができる。
【0081】
理論に縛られるつもりはないが、十分なトロンビンの生成が固体の、安定した止血栓の形成に、それゆえ止血の維持にも必要であると考えられている。かかる塞栓のフィブリン構造は形成されるトロンビンの量と初期のトロンビン生成速度のいずれもに依存する。トロンビン生成障害が起こっている場合には高透過性である多孔質のフィブリン栓が形成される。通常フィブリンの表面に存在するフィブリン溶解酵素はかかるフィブリン栓を容易に溶解する。安定したフィブリン栓の形成はまた、トロンビンによって活性化される第XIIIa因子の存在に依存し、それゆえに十分なトロンビンの生成にも依存する。さらに、最近報告されたトロンビン活性化フィブリン溶解阻害剤、TAFIはその活性化のために、かなり多くの量のトロンビンを必要とする。適当なトロンビンの形成が十分に起こっていない場合、TAFIはその結果として活性化されず、正常なフィブリン溶解活性によって通常溶解されるよりも容易に溶解される止血栓が形成されることがある。血小板数が減少している状況、血小板減少症においては、体外からの追加的な第VIIa因子の投与によってより迅速にトロンビンの生成を開始させる。しかしながら、第VIIa因子が高濃度である場合でさえもトロンビン生成は完全には正常化されない。
【0082】
フィブリノーゲンの血漿濃度が低下している被験体(多数の外傷または広範囲な外科処置の結果として大量に輸血された被験体)では、十分なトロンビンの活性化が起こらない。よって、より効果的な止血は第VII因子と第XI因子との組合せの投与によって得られる。
【0083】
血小板減少症を有する被験体はトロンビン生成障害だけでなく、フィブリン栓の安定化不全も起こしているため、これが早期溶解を起こしやすい止血栓をもたらす。さらに、大外傷または臓器損傷を受け、かつ、その結果として、頻回の輸血を受けた被験体は血小板数が減少しているだけでなく、フィブリノーゲン、第VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルも低下していることが多くある。これらの被験体はトロンビン生成障害(またはその低下)を起こしている。さらに、それらのフィブリノーゲンレベルの低下が第XIII因子の活性化をマイナス方向へと妨害する。そのため、これらの被験体の止血は不完全、または効率が悪く、これが広範な外傷および臓器損傷を特徴とする状況において広範囲にわたり放出されるタンパク質分解酵素によって容易かつ早期に溶解されるフィブリン栓の形成を導く。
【0084】
被験体において止血を維持する十分な能力を有する十分に安定化した栓の形成を容易にするために本発明の組成物が投与される。この組成物は血小板数が減少している被験体およびフィブリノーゲンおよび/またはその他の凝固タンパク質の血漿レベルが低下している被験体において特に有益である。
【0085】
第XI因子の存在下では、十分な止血を保証するのに、より低濃度の第VIIa因子で十分であると思われる。
【0086】
第 VII 因子ポリペプチド:
本発明の実施においては、出血を予防するまたは処置するのに有効である第VII因子ポリペプチドが用いられうる。これは血液もしくは血漿由来の第VII因子ポリペプチド、または組換え手段によって作製したものも含む。
【0087】
本発明は、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するもの(野生型ヒト第VII因子)などの第V II因子ポリペプチドを包含する。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されたように、ヒト第VIIa因子(野生型第VII因子)である。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%を示すポリペプチドを含む。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約120%、より好ましくは少なくとも約140%、および最も好ましくは少なくとも約160%を示すポリペプチドを含む。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが米国特許第4,784,950号に開示された野生型第VII因子の配列と少なくとも約70 %、好ましくは少なくとも約80 %、より好ましくは少なくとも約90 %、および最も好ましくは少なくとも約95 %の同一性を示すポリペプチドを含む。
【0088】
本明細書において「第VII因子ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、第VII因子、ならびに第VII因子関連ポリペプチドを包含する。「第VII因子」とは、限定されるものではないが、野生型ヒト第VII因子のアミノ酸配列1〜406番を有するポリペプチド(米国特許第4,784,950号に開示されたもの)、ならびに、例えば、ウシ、ブタ、イヌ、ネズミおよびサケ第VII因子などのその他の種由来の野生型第VII因子(前記第VII因子は血液もしくは血漿由来のものでも、または組換え手段によって作製したものでもよい)を包含することを意味する。さらに個体間に存在し、また生じうる第VII因子の自然対立遺伝子変異体も包含する。また、グリコシル化の程度および位置または他の翻訳後修飾は選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質によっても変化することがある。また、「第VII因子」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型の第VII因子ポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、第VIIa因子とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。一般には、第VII因子は残基152番と153番との間で開裂されて第VIIa因子を生じる。
【0089】
「第VII因子関連ポリペプチド」としては、限定されるものではないが、ヒト第VII因子に対して化学修飾がなされたおよび/またはヒト第VII因子に対して1つ以上のアミノ酸配列変化を含む(すなわち、第VII因子変異体)、および/またはヒト第VII因子に対して末端切断型アミノ酸配列を含む(すなわち、第VII因子断片)第VII因子ポリペプチドを含む。かかる第VII因子関連ポリペプチドはヒト第VII因子と比較して、安定性、リン脂質結合、特異的活性の変化等をはじめとする異なる特性を示しうる。「第VII因子関連ポリペプチド」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型のかかるポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、「第VIIa因子関連ポリペプチド」または「活性型第VII因子関連ポリペプチド」とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0090】
本明細書において「第VII因子関連ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、野生型ヒト第VII因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を示すポリペプチド、ならびに第VIIa因子生物活性が野生型ヒト第VIIa因子の活性と比較して実質的に改変されているまたは低下しているポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドとしては、限定されるものではないが、化学修飾がなされた第VII因子または第VIIa因子およびポリペプチドの生物活性を改変するまたは破壊する特定のアミノ酸配列変化が導入された第VII因子変異体を含む。
【0091】
さらにわずかに修飾がなされたアミノ酸配列を有するポリペプチド、例えば、N末端アミノ酸欠失または付加をはじめとする修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒト第VIIa因子に対して化学修飾がなされたポリペプチドも包含する。
【0092】
第VII因子の変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドとしては、野生型第VII因子と実質的に同じまたはより優れた生物活性を示すか、あるいは野生型第VII因子と比較して実質的に改変されているまたは低下している生物活性を示すかどうかにかかわらず、限定されるものではないが、野生型第VII因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0093】
変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、または少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0094】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を有する、変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、および最も好ましくは少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0095】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に低下している生物活性を有する、変異体を含む第VII因子関連ポリペプチドは、上述の凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第VIIa因子の比活性の約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満を示すものである。野生型第VII因子と比較して実質的に改変されている生物活性を有する第VII因子変異体としては、限定されるものではないが、TFに非依存的な第X因子タンパク質分解活性を示す第VII因子変異体およびTFとは結合するが第X因子を開裂しないものを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチド、特に変異体(この際、「in vitroにおける加水分解アッセイ」(下記の「アッセイ」を参照)において試験した際に前記第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0である)である。本発明のいくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチド、特に変異体(この際、「in vitroにおけるタンパク質分解アッセイ」(下記の「アッセイ」を参照)において試験した際に前記第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約8.0である)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、例えば、米国特許第4,784,950号に開示されているように、ヒト第VII因子(野生型第VII因子)である。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子である。一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子の特異的な生物活性の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%を示す第VII因子関連ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第VII因子ポリペプチドが野生型第VII因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有する。
【0098】
野生型第VIIa因子と比較して実質的に同じまたはより優れた生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、限定されるものではないが、デンマーク国特許出願番号PA 2000 00734およびPA 2000 01360(WO01/83725に該当する)、ならびにPA 2000 01361(WO02/22776に該当する)に記載のものを含む。野生型第VII因子と実質的に同じまたはより高い生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、S52A-FVII、560A-FVII(lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、およびS336G-FVII;米国特許第5,580,560号に開示されたように増強されたタンパク質分解安定性を示すFVIIa変異体;タンパク質分解により残基290番と291番との間または残基315番と316番との間で開裂された第VIIa因子(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48: 501-505, 1995);ならびに酸化型第VIIa因子(Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363: 43-54, 1999)を含む。野生型第VII因子と比較して実質的に低下しているまたは改変されている生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的な例としては、R152E-FVIIa(Wildgoose et al., Biochem 29: 3413-3420, 1990)、S344A-FVIIa(Kazama et al., J. Biol. Chem. 270: 66-72, 1995)、FFR-FVIIa(Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15: 515-520, 1998)、ならびにGlaドメインを欠いた第VIIa因子(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317: 245-Z49, 1993)を含む。化学修飾された第VII因子ポリペプチドおよび配列変異体の非限定的な例については、例えば、米国特許第5,997,864号に記載されている。
【0099】
血液凝固における第VIIa因子の生物活性が、(i)組織因子(TF)と結合し、および(ii)第IX因子または第X因子のタンパク質分解性開裂に触媒作用を及ぼして活性型第IX因子または第X因子(各々第IXa因子または第Xa因子)を生ずるその能力を誘導する。
【0100】
本発明の目的では、第VII因子ポリペプチドの生物活性(「第VII因子生物活性」)が、例えば、米国特許第5,997,864号に記載されるように、第VII因子欠損血漿およびトロンボプラスチンを用いて調製物の血液凝固を促進する能力を測定することによって定量されうる。このアッセイでは、生物活性が対照サンプルと比較した凝固時間の短縮として示され、1単位/ml 第VII因子活性を有するプールされたヒト血清標準との比較により「第VII因子単位」へと変換される。あるいは、第VIIa因子生物活性が
(i)脂質膜に組み込まれたTFおよび第X因子を含んでなる系における第VIIa因子または第VIIa因子関連ポリペプチドの活性型第X因子(第Xa因子)を生成する能力の測定(Persson et al., J. Biol. Chem. 272: 19919-19924, 1997)、
(ii)水性系における第X因子加水分解の測定(下記の「in vitroにおけるタンパク質分解アッセイ」を参照)、
(iii)表面プラズモン共鳴に基づく装置を用いた第VIIa因子または第VIIa因子関連ポリペプチドとTFとの物理的結合の測定(Persson, FEBS Letts. 413: 359-363, 1997)、および
(iv)第VIIa因子および/または第VIIa因子関連ポリペプチドによる合成基質の加水分解の測定(「in vitroにおける加水分解アッセイ」、下記を参照)、さらに
(v)TFに非依存的なin vitro系におけるトロンビン生成の測定
によって定量されうる。
【0101】
「第VII因子生物活性」または「第VII因子活性」とは、トロンビンを生成する能力を含むことを意味し、さらにこの用語は組織因子の不在下での活性化した血小板表面上でトロンビンを生成する能力も含む。
【0102】
本発明に従って使用されうる第VIIa因子調製物は、限定されるものではないが、NovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)である。
【0103】
第 XI 因子ポリペプチド:
本発明の実施においては、出血を予防するまたは処置するのに有効である第XI因子ポリペプチドが用いられうる。これは血液もしくは血漿由来の第XI因子ポリペプチド、または組換え手段によって作製したものも含む。さらに、血小板はFXIの構造的に異なる型(FXI遺伝子の選択的スプライシングによって起こりうる)も含みうる。血小板第XI因子については、Lipscomb, M. S. & Walsh, P. N. (1979), Journal of Clinical Investigation, 63, 1006-1014に記載されている。
【0104】
本明細書において「第XI因子ポリペプチド」とは、限定されるものではないが、第XI因子、ならびに第XI因子関連ポリペプチドを包含する。「第XI因子」とは、限定されるものではないが、Sun, Y. & Gailani, D. (1996), J. Biol. Chem. 271: 29023-29028に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(野生型ヒト第XI因子、血漿)、ならびに、例えば、ウシ、ブタ、イヌ、ネズミおよびサケ第XI因子などのその他の種由来の野生型第XI因子を包含することを意味する。いくつかの実施形態では、第XI因子ポリペプチドが、例えば、Sun, Y. & Gailani, D. (1996), J. Biol. Chem. 271: 29023-29028に開示されたように、野生型ヒト第XI因子である。
【0105】
さらに個体間に存在し、また生じうる第XI因子の自然対立遺伝子変異体も包含する。また、グリコシル化の程度および位置または他の翻訳後修飾は選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質によっても変化することがある。また、「第XI因子」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型の第XI因子ポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、第XIa因子とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0106】
「第XI因子関連ポリペプチド」としては、限定されるものではないが、ヒト第XI因子に対して化学修飾がなされたおよび/またはヒト第XI因子に対して1つ以上のアミノ酸配列変化を含む(すなわち、第XI因子変異体)、および/またはヒト第XI因子に対して末端切断型アミノ酸配列を含む(すなわち、第XI因子断片)第XI因子ポリペプチドを含む。かかる第XI因子関連ポリペプチドはヒト第XI因子と比較して、安定性、リン脂質結合、特異的活性の変化等をはじめとする異なる特性を示しうる。
【0107】
「第XI因子関連ポリペプチド」とは、それらの非開裂(チモーゲン)型のかかるポリペプチド、ならびにタンパク質分解的プロセシングを受けて、「第XIa因子関連ポリペプチド」または「活性型第XI因子関連ポリペプチド」とも呼ばれるそれらの対応する生物活性型を生じるものも包含することを意味する。
【0108】
本明細書において「第XI因子関連ポリペプチド」は、限定されるものではないが、野生型ヒト第XI因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を示すポリペプチド、ならびに第XI因子生物活性が野生型ヒト第XI因子の活性と比較して実質的に改変されているまたは低下しているポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドとしては、限定されるものではないが、化学修飾がなされた第XI因子または第XIa因子およびポリペプチドの生物活性を改変するまたは破壊する特定のアミノ酸配列変化が導入された第XI因子変異体を含む。
【0109】
さらにわずかに修飾がなされたアミノ酸配列を有するポリペプチド、例えば、N末端アミノ酸欠失または付加をはじめとする修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒト第XI因子に対して化学修飾がなされたポリペプチドも包含する。
【0110】
第XI因子の変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドとしては、野生型第XI因子と実質的に同じまたはより優れた生物活性を示すか、あるいは野生型第XI因子と比較して実質的に改変されているまたは低下している生物活性を示すかどうかにかかわらず、限定されるものではないが、野生型第XI因子の配列とは 1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0111】
変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、本明細書に記載の第XI因子活性アッセイで試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第XI因子の比活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、および少なくとも約130%を示すものを包含する。
【0112】
野生型第XI因子と比較して実質的に同じまたはより高い生物活性を有する、変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、記載の特定の第XI因子活性アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型ヒト第XI因子の特異的な生物活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、および最も好ましくは少なくとも約130%を示すものを包含する。本発明の目的では、第XI因子生物活性が本明細書において後に記載するように定量されうる(「アッセイの部分」)。
【0113】
野生型第XI因子と比較して実質的に低下している生物活性を有する、変異体を含む第XI因子関連ポリペプチドは、上述の特定の第XI因子活性アッセイのうち1種類以上のもので試験した際に、同一細胞種で生成された野生型第XI因子の比活性の約25%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1 %未満を示すものである。
【0114】
第XI因子ポリペプチドの非限定的な例としては、例えば、Gailani & Broze (1993), Blood Coagul. Fibrinolysis, 4: 15-20、またはKerbiriou & Griffin (1979), J. Biol. Chem. , 254: 12020-12207に記載されたように血漿由来のヒト第XI因子を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、第XI因子が第XI因子関連ポリペプチド(この際、「FXI発色アッセイ(下記を参照))において試験した際に前記第XI因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第XI因子(野生型第XI因子)の活性との比率が少なくとも約1.25であり、他の実施形態では、その比率が少なくとも約2.0であり、さらなる実施形態では、その比率が少なくとも約4.0である)である。
【0116】
また、第XI因子関連ポリペプチドとしては、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドのそれらの特徴である止血関連活性を保持する断片も含む。第XI因子ポリペプチドの止血関連活性は、例えば、本明細書に記載の第XI因子活性アッセイを用いて測定されうる。
【0117】
好ましい実施形態では、第XI因子がヒト血漿第XI因子または活性型ヒト血漿第XIa因子である。1つの実施形態では、FXIが血小板第XI因子である。もう1つの実施形態では、FXIが組換えにより作製される。
【0118】
定義:
本明細書において、アミノ酸の3文字または1文字表記は表1に示すそれらの常用の意味で使用されている。特に断りのない限り、本発明で言及したアミノ酸はL-アミノ酸である。例えば、K337では最初の文字が野生型第VII因子の指定の位置に天然に存在するアミノ酸を表すこと、さらに、例えば、[K337A]-FVIIaが、指定の位置において天然に存在する、一文字コードKによって表されるアミノ酸が一文字コードAによって表されるアミノ酸によって置換されているFVII変異体を表すことが分かるであろう。
【表1】
【0119】
用語「第VIIa因子」または「FVIIa」は互換的に用いてもよい。「第VIIa因子」としては、チモーゲンである第VII因子(一本鎖の第VII因子)を含む。用語「第XI因子」または「FXI」は互換的に用いてもよい。用語「第VIII因子」または「FVIII」は交換可能に使用されうる。用語「第VIII因子」または「FVIII」としては、活性型第VIII因子(FVIIIa)、変異体およびその特徴であるFVIII関連の止血活性を保持する末端切断形を含み、この用語は組換えにより作製したFVIIIおよび血漿由来のFVIIIを含む。ヒトFVIIIおよびヒト組換えFVIIIが好ましい。
【0120】
本明細書において、「トロンビン生成障害を有する被験体」とは、活性化した血小板の表面上で十分なトロンビンの群発を生み出すことができない被験体を意味し、正常な量および機能の凝固因子、血小板およびフィブリノーゲンをはじめとする(例えば、プールされた正常なヒト血漿の場合)十分に機能する正常な止血系を有する被験体におけるトロンビン生成よりもトロンビン生成の少ない被験体を含み、さらに、限定されるものではないが、第VIII因子が欠損している被験体、血小板数が減少しているまたは血小板が機能障害を有する被験体(例えば、血小板減少症またはグランツマン血小板無力症、あるいは過剰に出血している被験体)、プロトロンビン、FXまたはFVIIのレベルが低下している被験体、いくつかの凝固因子のレベルが低下している被験体(例えば、外傷または広範囲な外科処置の結果としての過剰出血による)、およびフィブリノーゲンの血漿レベルが低下している被験体(例えば、大量の輸血を受けた被験体)を含む。
【0121】
「トロンビン生成のレベル」または「正常なトロンビン生成」とは、健康な被験体におけるレベルと比較した患者のトロンビン生成レベルを意味する。このレベルは正常なレベルに対する割合として表される。これらの用語は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0122】
「止血系の増強」とは、トロンビンを生成する能力の増強を意味する。「止血の促進」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定したトロンビン生成が、同じトロンビン生成アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々のトロンビン生成と比較して延長される状況を包含することを意味する。トロンビンの生成は本明細書のトロンビン生成アッセイに記載するようにアッセイしうる(「アッセイの部分」を参照)。
【0123】
本明細書において「単独の」薬剤または因子とは、一緒に合わせられた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが、医薬組成物またはキットに含められる唯一の止血剤、または活性止血剤、または凝固因子である、あるいは、例えば、特殊な出血症状などの特定の処置に際して患者に投与される唯一の止血剤、または活性止血剤、または凝固因子である状況をいう。これらの状況が適用可能な他の止血剤または凝固因子が1つ以上の凝固パラメーターに大きな影響を及ぼすのに十分な量または活性で存在していない状況も包含することは分かるであろう。
【0124】
血塊溶解時間、凝固力、フィブリン血塊形成、および凝固時間が患者の止血系の状況をアッセイするのに用いられる臨床的指標である。患者から好適な間隔をおいて血液サンプルを採取し、1つ以上のパラメーターを、例えば、Meh et al., Blood Coagulation & Fibrinolysis 2001; 12: 627- 637;Vig et al., Hematology, Vol. 6 (3) pp. 205-213 (2001);Vig et al., Blood Coagulation & Fibrinolysis, Vol. 12 (7) pp. 555-561 (2001) Oct;Glidden et al., Clinical and applied thrombosis/hemostasis, Vol. 6 (4) pp. 226-233 (2000) Oct;McKenzie et al., Cardiology, Vol. 92 (4) pp. 240-247 (1999) Apr;またはDavis et al., Journal of the American Society of Nephrology, Vol. 6 (4) pp.1250-1255 (1995)によって記載されるように、例えば、トロンボエラストグラフィーによってアッセイする。
【0125】
「血塊溶解時間の延長」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した血塊溶解時間が、同じ血塊溶解アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の血塊溶解時間と比較して延長される状況を包含することを意味する。血塊溶解時間は上述のようにアッセイしうる。
【0126】
「凝固力の増強」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した凝固力、例えば、機械的強度が、同じ凝固力アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の血塊溶解時間と比較して増強される状況を包含することを意味する。凝固力は、例えば、Carr et al, 1991(Carr ME, Zekert SL. Measurement of platelet-mediated force development during plasma clot formation. AM J MED SCI 1991; 302: 13-8)に記載されたように、またはトロンボエラストグラフィーによる上述のようにアッセイしうる。
【0127】
「フィブリン血塊形成の増進」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定したフィブリン血塊形成速度または程度が、同じ凝固アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々のフィブリン血塊形成速度または程度と比較して高められる状況を包含することを意味する。フィブリン血塊形成は上述のようにアッセイしうる。
【0128】
「凝固時間の短縮」とは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む試験サンプルについて測定した血塊形成時間(凝固時間)が、同じ凝固アッセイで試験した際の第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドのいずれかしか含まない対照サンプル各々の凝固時間と比較して増大される状況を包含することを意味する。凝固時間は当業者には公知の標準PTまたはaPTTアッセイによってアッセイしうる。
【0129】
「血小板数または活性の低下」とは、被験体の血漿に存在する小板(血小板)数およびかかる血小板の生物学的凝固関連活性をいう。数の減少は、例えば、血小板破壊の増大、血小板生成の減少、および脾臓における血小板の正常値を超える割合での貯留によって起こりうる。血小板減少症は、例えば、血小板数、マイクロリットル当たり150,000未満の血小板として定義される。一般に、正常な血小板数の上限はマイクロリットル当たり350,000〜450,000間の血小板であると考えられる。血小板数は自動血小板計数装置により測定されうる。これは当業者には周知の方法である。血小板数の減少が原因の症候群としては、限定されるものではないが、血小板減少症、凝固障害が挙げられる。「活性」としては、限定されるものではないが、血小板の凝集、接着、および凝固剤活性が挙げられる。活性の低下は、例えば、糖タンパク質異常、異常な膜細胞骨格相互作用、血小板顆粒の異常、血小板凝固剤活性の異常、シグナル伝達および分泌の異常によって起こりうる。凝集、接着、および凝固剤活性をはじめとする血小板活性は当業者に公知の標準方法によって測定される、例えば、Platelets. A Practical Approach, Ed. S. P. Watson & K. S. Authi: Clinical Aspects of Platelet Disorders (K. J. Clemetson) 15: 299-318,1996, Oxford University Press; Williams Hematology, Sixth Edition, Eds. Beutler, Lichtman, Coller, Kipps & Seligsohn, 2001, McGraw-Hillを参照。血小板活性の低下が原因の症候群としては、限定されるものではないが、グランツマン血小板無力症、バーナード・スーリエ症候群、抗凝固剤治療および血栓溶解治療が挙げられる。「低下した」とは、試験血漿サンプルの数または活性について、同じアッセイで測定した際のプールされた正常血漿のサンプルの数または活性と比較していう。
【0130】
本明細書において「出血性疾患」とは、出血症状を呈する、細胞または分子起源の先天性、後天性または誘発性の障害を意味する。出血性疾患の例としては、限定されるものではないが、凝固因子欠損症(例えば、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIの欠損症)、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が挙げられる。
【0131】
出血とは、循環系の構成要素からの血液溢出をいう。「出血症状」とは、外科処置、外傷、または他の組織損傷形態に関連する、不所望の、制御されない、多くの場合において過度の出血、ならびに出血性疾患を有する被験体における不所望の出血を含むことを意味する。出血症状は基本的には正常な凝固系を有しているが、(一過性)凝固障害を引き起こしている被験体、ならびに先天性もしくは後天性凝固または出血性疾患を有する被験体において起こりうる。血小板機能障害を有する被験体において、出血が血友病によって生じる出血に例えられるのは、止血系が、血友病の場合のように欠損しているか、または異常な必須凝固「化合物」(例えば、血小板またはフォン・ヴィレブランド因子タンパク質)を有しているためである。例えば、外科処置または大きな外傷に関連する広範な組織損傷を起こしている被験体では、正常な止血機構が迅速な止血の要求に圧倒されることがあり、基本的には(外傷前または外科処置前の)正常な止血機構に関係なく、過度の出血を引き起こすことがある。さらに多くの場合には大量の輸血を受けたかかる被験体は出血および/または輸血の結果として(一過性)凝固障害(すなわち、出血および/または輸血に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少)を引き起こす。出血は脳、内耳領域および眼などの器官でも起こりうるが、これらは外科的な止血の可能性に限定される部位であるため、満足の行く止血の達成には問題である。同様の問題は種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)の生検を行う過程において、ならびに腹腔鏡による手術および恥骨後式前立腺全摘出術において起こることがある。これら全ての状況にとって共通することは外科的な技術(縫合、クリップ等)によって止血を提供することが困難であることであり、これは出血が拡散する場合(例えば、出血性胃炎および大量の子宮出血)にも同様である。出血は、その治療によって止血障害が誘導される抗凝固治療を受けている被験体においても起こることがある。これらの出血は多くの場合、急性でかつ大量である。抗凝固治療は血栓塞栓症を防ぐためにしばしば与えられる。かかる治療は、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリンまたは他の形態のビタミンKアンタゴニスト、ならびにアスピリンおよび、例えば、抗体またはGP IIb/IIa活性の他の阻害剤などの他の血小板凝集阻害剤を含むことがある。また、出血が抗血小板薬(例えば、アセチルサリチル酸)、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)、およびフィブリン溶解剤(例えば、組織プラスミノゲンアクチベーター、tPA)との併用治療を含む、いわゆる血栓溶解療法が原因であることがある。また、出血症状とは、限定されるものではないが、急性関節血症(関節における出血)、慢性血友病性関節症、血腫(例えば、筋肉、腹膜後、舌下および咽頭後)を有する被験体における外科処置または外傷、その他の組織における出血、血尿(腎管からの出血)、脳出血、外科処置(例えば、肝切除術)、抜歯、および消化管出血(例えば、UGI 出血)に伴う、制御されないかつ過度の出血を含むことも意味する。出血症状は第VIII因子に対するインヒビター、血友病A 、インヒビターによる血友病A 、血友病B、第VII因子の欠損症、第XI因子の欠損症、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド因子の欠損症(フォン・ヴィレブランド病)、重度な組織損傷、重度な外傷、外科処置、腹腔鏡による手術、出血性胃炎、生検の実施、抗凝固治療、上部消化管出血(UGI)、または幹細胞移植に関連していることがある。出血症状が大量な子宮出血であることがあるし、機械的な止血の可能性に限定される器官、脳、内耳領域、または眼で起こることもある。「出血症状」および「出血」は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0132】
本明細書において「処置」とは、出血を阻害し、または最小化するための、例えば、外科処置において予測される出血の防止、および、例えば外傷において既に起こっている出血の制御の両方を含むことを意味する。前記の「予測される出血」は特定の組織または器官で起こると予測される出血であることも、または、詳細不明の出血であることもある。第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の予防的投与も、従って「処置」に含まれる。
【0133】
本明細書において「被験体」とは、動物、特にヒトなどの哺乳類を意味することを意図し、適当であれば「患者」と互換的に用いてもよい。
【0134】
本明細書において定義するように、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは同時または逐次投与されうる。それらの因子は両方の凝固因子を含む単一剤形で、または第1の単位剤形として第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を、さらに第2の単位剤形として第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなるキット形式で供給されうる。第1または第2または第3単位剤形等が本明細書を通じて言及される場合、このことは好ましい投与順序を示すものではなく、単に便宜上の言及である。
【0135】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の「同時」投与とは、単一剤形での凝固因子タンパク質の投与、または第1の凝固因子タンパク質の投与に続いて、15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分以内での第2の凝固因子タンパク質の投与を意味する。いずれの因子を最初に投与してもよい。
【0136】
「逐次」投与とは、第1の凝固因子タンパク質の投与に続いて、最大2時間、好ましくは1〜2時間、より好ましくは最大1時間、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは最大30分、より好ましくは15〜30分の間隔をおいての第2の凝固因子タンパク質の投与を意味する。2つの単位剤形、または凝固因子タンパク質のうちいずれを最初に投与してもよい。好ましくは、両製剤を同じ静脈内経路により注射する。
【0137】
「第XI因子のレベル」または「第XI因子レベル」とは、健康な被験体におけるレベルと比較した患者の凝固第XI因子の活性レベルを意味する。このレベルは正常なレベルに対する割合として表される。これらの用語は、適当であれば互換的に用いてもよい。
【0138】
「第XI因子のレベルの低下」または「第XI因子レベルの低下」とは、凝固第XI因子欠損または凝固第XI因子に対するインヒビターを有していない被験体集団の平均第XI因子レベルと比較した血流中の第XI因子の存在または活性の低下を意味する。循環している第XI因子のレベルは凝固剤または免疫学的アッセイのいずれかによって測定できる。第XI因子の凝血原活性は患者の血漿の第XI因子欠損血漿の凝固時間を補正する能力によって調べられる(例えば、APTTアッセイ、下記を参照;本明細書の「アッセイの部分」も参照)。
【0139】
1単位の第XI因子は正常な(プールされた)ヒト血漿(第XI因子レベル100%に相当する)の1ミリリットル中に存在する第XI因子の量と定義されている。
【0140】
1単位の第VII因子は正常な血漿の1ml中に存在する第VII因子の量と定義され、約0.5μgタンパク質に相当する。活性化後の50単位は約1μgタンパク質に相当する。
【0141】
「欠損症」とは、正常な健康個体のものと比較した、例えば、血漿中の第XI因子の存在または活性を意味する。これらの用語は、適当であれば「第XI因子レベルの低下」と互換的に用いてもよい。
【0142】
「APTT」または「aPTT」とは、活性部分トロンボプラスチン時間を意味する(例えば、Proctor RR, Rapaport SI: The partial thromboplastin time with kaolin; a simple screening test for first-stage plasma clotting factor deficiencies. Am J Clin Pathol 36: 212, 1961により記載される)。
【0143】
「第XI因子反応性症候群」とは、それを必要とする被験体に投与される外因性第XI因子によって、症候群を原因とした、予測される、または存在する徴候、症状または疾病が予防、治療または緩和されうる症候群を意味する。限定されるものではないが、第XI因子のレベルの低下によって起こる症候群、例えば、第XI因子のインヒビターが原因の出血性疾患が含まれる。また、第XI因子反応性症候群は 本発明の組成物でも治療されうる。
【0144】
「第VII因子反応性症候群」とは、それを必要とする被験体に投与される外因性第VII因子、好ましくは第VIIa因子によって、症候群を原因とした、予測される、または存在する徴候、症状または疾病が予防、治療または緩和されうる症候群を意味する。限定されるものではないが、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIのレベルの低下、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が原因の症候群が含まれる。
【0145】
「半減期」とは、第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドの血漿濃度が特定の値からその値の半分まで低下するのに必要な時間をいう。
【0146】
「一次止血」とは、FXaおよびTF:第VIIa因子によるトロンビンの初期生成、その後の血小板の活性化、さらにフィブリン、最終的には架橋フィブリンによってまだ安定化されていない、活性化し、付着した血小板の初期のゆるい塞栓の形成を意味する。止血プロセスの第2段階で形成されるフィブリンによって安定化されない(止血が維持されない)場合には、その塞栓はフィブリン溶解系によって容易に溶解される。
【0147】
「二次止血」または「止血の維持」とは、活性化した血小板の表面上で起こる、第VIIIa因子および第VIIIa因子が触媒する二次的な、十分な、大量のトロンビンの群発または生成、その後のフィブリンの形成、さらに初期の血小板血栓の安定化を意味する。フィブリンによる塞栓の安定化によって十分な止血がもたらされる。
【0148】
「十分な止血」とは、効果的に出血を停止し、かつフィブリン溶解系によって容易に溶解されない損傷部位での安定でかつ固体のフィブリン血塊または血栓の形成を意味する。
【0149】
本明細書において「止血」とは、上述するような十分な止血を表すのに用いられる。
【0150】
調製物中の全タンパク質量は一般的に知られる方法、例えば、光学濃度の測定によって測定されうる。第XI因子凝固または第VII因子タンパク質(「抗原」)の量は標準ELISA免疫学的検定などの一般的に知られる方法によって測定されうる。一般的にいえば、かかるアッセイは、例えば、第XI因子タンパク質含有調製物の溶液をELISA用プレート上に固定化した抗FXI抗体と接触させ、続いて、固定化抗体-第XI因子複合体を二次抗FXI抗体担持マーカーと接触させ、その量を第3工程で測定することによって行われる。各凝固因子の量は好適な抗体を用いて同様に測定されうる。調製物中に存在する全凝固因子タンパク質量は各凝固因子タンパク質の量を合計することによって求められる。1つの実施形態では、調製物が単離された凝固因子を含んでなる。もう1つの実施形態では、調製物が凝固因子IIおよび凝固因子IIa(プロトロンビンおよびトロンビン)ならびに/または第X因子もしくは第Xa因子を含まない。
【0151】
本明細書において「単離された」とは、凝固因子、例えば、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが、それらが合成された細胞またはそれらが天然において見られる培地(例えば、血漿または血液)から分離されることをいう。ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。ポリペプチドのそれらが天然に存在する培地からの分離は、限定されるものではないが、例えば、抗第VII因子または抗第XI因子抗体カラム各々などでのアフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。
【0152】
「TFPI阻害剤」とは、TFPI(組織因子系インヒビター)の抗凝固活性を阻害する化合物を意味する。この用語は欧州特許第558 529号、WO96/28153およびUS5,622,988に開示されたもののような化合物を含む。「TFPI」および「EPI」(外因系インヒビター)も互換的に用いてもよい。
【0153】
本発明において、第VII因子ポリペプチドおよび第XI因子ポリペプチドの「有効量」は、出血または失血を予防し、または減少させて、前記疾患およびその合併症を治療し、緩和し、または部分的に抑えるのに十分な、第VII因子ポリペプチド、例えば、FVIIaおよび第XI因子ポリペプチドの量として定義される。
【0154】
「第VIIa因子の活性」または「第VIIa因子活性」としては、トロンビンを生成する能力を含み、さらにこの用語は組織因子の不在下での活性化した血小板表面上でトロンビンを生成する能力も含む。
【0155】
本発明の組成物はTFPIインヒビターをさらに含んでなってもよい。本発明の組成物は第VIII因子をさらに含んでなってもよい。かかる組成物は、好ましくは第VIII因子に対するインヒビターを有さない被験体に投与されるべきである。
【0156】
略語
TF 組織因子
FVII 一本鎖の不活性型第VII因子
FVIIa 活性型第VII因子
rFVIIa 活性型組換え第VII因子
FXI チモーゲンの不活性型第XI因子
FXIa 活性型第XI因子
rFXI 組換えFXI
rFXIa 組換えFXIa
FVIII チモーゲンの不活性型第VIII因子
rFVIII 組換えFVIII
FVIIIa 活性型第VIII因子
rFVIIIa 組換えFVIIIa
TFPI 組織因子系インヒビター。
【0157】
化合物の調製:
本発明における使用に好適なヒト精製第VIIa因子は、好ましくはDNA組換え技術によって、例えばHagen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 2412-2416, 1986に記載のように、または欧州特許第200.421号(ZymoGenetics, Inc.)に記載のように作製される。
【0158】
第VII因子はさらに、Broze and Majerus, J. Biol. Chem. 255 (4): 1242-1247, 1980およびHedner and Kisiel, J.Clin. lnvest. 71: 1836-1841, 1983に記載されている方法によっても作製されうる。これらの方法では検出可能な量の他の血液凝固因子なしに第VII因子が得られる。またさらに精製した第VII因子調製物は、最終的な精製段階としてさらなるゲル濾過を含めることによって得ることができる。次に、第VII因子は周知の手段により、例えばいくつかの異なる血漿タンパク質、例えば第XIIa因子、第IXa因子または第Xa因子により活性型第VIIa因子に変換される。あるいは、Bjoern et al.(Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)により記載されるように、第VII因子は、それをイオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)等に通すことにより活性化することができる。
【0159】
第VII因子関連ポリペプチドは野生型第VII因子の修飾によってまたは組換え技術によって作製されうる。野生型第VII因子に対してアミノ酸配列が変化している第VII因子関連ポリペプチドは、野生型第VII因子をコードする核酸配列を修飾することによって、周知の手段による、例えば、部位特異的突然変異誘発による、天然第VII因子をコードする核酸におけるアミノ酸コドンの変化またはアミノ酸コドンのいくつかの除去によって作製されうる。
【0160】
置換は第VIIa因子または第XI因子分子の機能にとって極めて重要な領域外で起こすことができ、それでもなお結果として活性ポリペプチドをもたらすことは当業者には分かるであろう。第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドの活性に必須であり、それゆえに、好ましくは置換の対象とはならないアミノ酸残基は、当技術分野で知られている手順、例えば、部位指定突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発(例えば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照)に従って同定されうる。後者の技術において、突然変異は分子内の正荷電残基ごとに導入され、生じた変異体分子は分子の活性に必須のアミノ酸残基を同定するために、凝固剤、各々の架橋活性について試験される。基質−酵素の相互作用部位も、核磁気共鳴解析、結晶学または光親和性標識のような技術による三次元構造の解析によって決定されうる(例えば、de Vos et al., 1992, Science 255: 306-312; Smith et al., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver et al., 1992, FEBS Letters 309:59-64を参照)。
【0161】
あるヌクレオチドを別のヌクレオチドと交換するための、核酸配列内への変異の導入は、当技術分野で知られている方法のいずれかを用いる部位指定突然変異誘発によって達成されうる。特に有用なのは、目的のインサートを有するスーパーコイル二本鎖DNAベクターおよび所望の変異を含む2つの合成プライマーを利用する手順である。当該ベクターの反対の鎖にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼによる温度サイクリングの間伸長する。当該プライマーの取り込み時に、ねじれ型のニックを含む変異プラスミドが産生する。温度サイクリングの後、当該産物は、親のDNA鋳型を消化し、変異含有合成DNAを選択するために、メチル化DNAおよびヘミメチル化DNAに特異的なDpnIで処理される。変異体を生成し、同定し、そして単離するための当技術分野で知られている他の手順、例えば遺伝子シャッフリングまたはファージディスプレイ技術なども使用されることがある。
【0162】
ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。
【0163】
所望により、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドはさらに精製してもよい。精製は、限定されるものではないが、例えば、抗第VII因子抗体カラムなどでのアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261: 11097, 1986;およびThim et al., Biochem. 27: 7785, 1988を参照) 、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。一般的には、Scopes, Protein Purfication, Springer-Verlag, New York, 1982;およびProtein Purification, J. C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照。精製後、調製物は宿主細胞由来の非第VII因子または非第VII因子関連ポリペプチドを好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満含有する。
【0164】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドは、第XIIa因子または、例えば、第IXa因子、カリレイン(kallirein)、第Xa因子、およびトロンビンなどのトリプシン様の特異性を有する他のプロテアーゼを用いるタンパク質分解性開裂によって活性化することができる。例えば、Osterud et al., Biochem. 11: 2853 (1972);Thomas, 米国特許第4,456,591号;およびHedner et al., J. Clin. Invest. 71: 1836 (1983)を参照。あるいは、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドはそれをイオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)等に通すことによっても活性化することができる。得られた活性型の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその後、下記のように調製され、投与されうる。
【0165】
本発明において使用する第XI因子は、引用することにより本明細書の一部とされる、Koide et al.(Biochemistry 16: 2279-2286, 1977)およびBouma et al.(J. Biol. Chem. 252: 6432-6437, 1977)により開示されたもののような周知の方法により血漿から作製することができる。しかしながら、疾病伝播の危険性を抱えている血液または組織由来の製剤の使用を回避するためには組換え第XI因子を使用することが好ましい。組換え第XI因子の作製方法は当技術分野では知られている。例えば、全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Kemball-Cook et al.(Gene 139 (2): 275-279, 1994)、Fujikawa et al.(Biochemistry 25: 2417-2424, 1986)、Meijers et al.(Blood 79 (6): 1435-1440, 1992)を参照。
【0166】
第XI因子関連ポリペプチドは野生型第XI因子の修飾によってまたは組換え技術によって作製されうる。野生型第XI因子に対してアミノ酸配列が変化している第XI因子関連ポリペプチドは上文でより詳細に記載しているように、野生型第XI因子をコードする核酸配列を修飾することによって、周知の手段による、例えば、部位特異的突然変異誘発による、天然第XI因子をコードする核酸におけるアミノ酸コドンの変化またはアミノ酸コドンのいくつかの除去によって作製されうる。ポリペプチドのそれらの細胞起源からの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養物の所望の産物を含有する細胞培養培地の抽出、非接着細胞を除去するための遠心分離または濾過等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。所望により、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドはさらに精製してもよい。精製は上文でより詳細に記載しているように、限定されるものではないが、例えば、抗第XI因子抗体カラムなどでのアフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動法(IEF))、溶解度差による分画(例えば、硫安分画)、または抽出等をはじめとする当技術分野で公知の方法によって達成されうる。精製後、調製物は宿主細胞由来の非第XI因子または非第XI因子関連ポリペプチドを好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満含有する。得られた活性型の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドがその後、下記のように調製され、投与されうる。
【0167】
免疫応答を誘導する危険性を軽減するために、被験体と同系の第XI因子および第VIIa因子タンパク質を使用することが好ましいことは当業者ならば分かるであろう。非ヒト第XI因子の調製物および特性決定については、例えば、Gailani(Blood 90 (3): 1055-1064, 1997)によって開示されている。本発明はまた、獣医学的な手順におけるかかる第XI因子および第VIIa因子タンパク質の使用を包含する。
【0168】
医薬組成物および使用方法
本発明の調製物は、例えば、限定されるものではないが、凝固因子VIII、IX、XIまたはVIIのレベルの低下、凝固因子インヒビター、血小板機能障害(例えば、グランツマン血小板無力症およびバーナード・スーリエ症候群)、血小板減少症、フォン・ヴィレブランド病、ならびに出血および/または輸血(例えば、外科処置または外傷を受けた大量の輸血をした被験体の場合)に起因する凝固タンパク質の希釈、フィブリン溶解の増大および血小板数の減少が原因のものなどの凝固障害が原因の症候群をはじめとする出血性疾患などの第VII因子反応性症候群の治療に用いられうる。
【0169】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる本発明の医薬組成物は、本来、予防的および/または治療的処置のための非経口投与用のものである。好ましくは、医薬組成物は非経口的に、すなわち、静脈内、皮下、または筋肉内から投与され、最も好ましくは静脈内からである。これらはまた、持続または脈動注入によっても投与されうる。
【0170】
本発明の医薬組成物または製剤は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを、一単位剤形か、またはキット形式のいずれかとして調製し、好ましくは医薬上許容される担体、好ましくは水性担体または希釈剤に溶解して含んでなる。要するに、本発明に従う使用に好適な医薬組成物は、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子、または第XI因子、またはVIIa因子を、好ましくは精製形態で、好適なアジュバントおよび好適な担体または希釈剤と混合することにより作製される。種々の水性担体が使用されることがあり、例えば水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等である。本発明の調製物はまた、非水性担体を用いて、例えば、ゲル形態にまたは損傷の部位への送達または標的化のためのリポソーム調製物としてなど、製造されうる。リポソーム調製物は一般的に、例えば、米国特許第4,837,028号、同第4,501,728号、および同第4,975,282号に記載される。組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されうる。生じた水溶液は、使用のためにパッケージングし、または無菌条件下で濾過し、さらに凍結乾燥してもよく、この凍結乾燥した調製物を投与前に滅菌水溶液と合わせる。
【0171】
組成物は、限定されるものではないが、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等などのpH調整剤および緩衝剤ならびに/または張度調整剤をはじめとする医薬上許容される補助物質またはアジュバントを含んでもよい。
【0172】
製剤は、さらに1つ以上の希釈剤、乳化剤、保存剤、バッファー、賦形剤等を含んでもよく、液体、粉末、エマルション、放出制御などの形態で提供されることもある。当業者は、本発明の組成物を適切な方法で、かつ慣習、例えば、Remington's Pharmaceutical Science,Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に開示されているものに従って製造しうる。従って、静脈内注入のための典型的な医薬組成物は、250mlの滅菌リンガー溶液および10mgの調製物を含むように製造されうる。
【0173】
本発明の調製物を含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与されうる。治療的な適用において、組成物は上述のような疾病を既に患っている被験体に対し、当該疾病およびその合併症の臨床症状を治療し、緩和し、または部分的に抑えるのに十分な量で投与される。これを達成するのに適当な量は、「治療上有効な量」として定義される。各々の目的に有効な量は、疾病または損傷の重篤度、ならびに患者の体重および全身状態に依存する。好適な量の決定は、評価のマトリックスを作製し、そのマトリックスの異なる効果を調べることによる通常の試験を用いて達成されうることが分かるであろう。
【0174】
本発明の調製物の局所送達、例えば、局所適用などは、例えば、噴霧、潅流、二重バルーンカテーテル、血管移植片またはステント中に組込まれるステント、バルーンカテーテルをコーティングするために使用されるヒドロゲル、または他の十分に確立された方法により実施されうる。いずれにせよ、医薬組成物は、症状を効果的に処置するのに十分な量の調製物を提供するべきである。
【0175】
これらの製剤中での第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチド、第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチド、または第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチドと組み合わせた第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドの濃度は、非常に広範に、すなわち、約0.5重量%未満、通常約1重量%または少なくとも約1 重量%から、15または20重量%程度にまで及ぶことがあり、選択した特定の投与形態に従い、主に、液量、粘度等によって選択される。注射または注入、特に注射による投与が好ましい。従って、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、静脈内投与に好適な形態、例えば、1つの剤形中の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの両方を含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤、または1つの剤形中の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドを含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤ともう1つの剤形中の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含む溶解された凍結乾燥粉末もしくは液体製剤のいずれかである調製物に調製される。
【0176】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量がともに、出血症状を処置するための凝集に有効な量を含むことは分かるであろう。
【0177】
本発明の材料が、一般的に、重度の疾病または損傷状態、すなわち、生命にかかわるまたは生命にかかわる可能性のある状況において使用されうることに留意しなければならない。そのような場合、異物の最少化およびヒトにおける第VIIa因子および第XI因子の免疫性の一般的な欠損の観点においては、実質的に過剰量のこれらの組成物を投与することが可能であり、さらにそのことが治療者に望ましく感じられると思われる。
【0178】
予防的適用において、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む組成物は、患者自身の凝固能力を増強するために、病状または損傷に影響を受けやすい、あるいはその危険性のある被験体に投与される。かかる量は、「予防的有効用量」であると定義される。第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量がともに、出血症状を予防するための凝集に有効な量を含むことは分かるであろう。
【0179】
当該組成物の1回または複数回の投与は、処置する医師によって選択される投与量のレベルおよびパターンで実施されうる。当該組成物は1日または1週間当たり1回以上投与されうる。かかる医薬組成物の有効量は出血症状に対して臨床的に有意な効果を提供する量である。かかる量は、被験体の処置される症状、年齢、体重、および全身の健康、ならびに当業者にとって明らかな他の要因にある程度依存する。
【0180】
本発明の組成物は、予測される出血の前、または出血開始時に、1回の単回投与量で通常投与される。しかしながら、繰り返し(複数回投与量で)、好ましくは施与される投与量および被験体の症状によって、2-4-6-12時間の間隔で施与してもよい。
【0181】
計画的な介入に関連した処置では、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、一般に介入を実施する前の約24時間以内に投与され、その後、7日間以上投与される。凝固剤としての投与は、本明細書に記載のような種々の経路によって実施されうる。
【0182】
当該組成物は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物の両方を好適な濃度で含んでなる単一の調製物の形態(単一剤形)であってもよい。当該組成物は、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる第1の単位剤形および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含んでなる第2の単位剤形からなるキット形式であってもよい。この場合、第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドは、順次、好ましくは互いに約15分以内に、例えば互いに10分以内に、または好ましくは5分以内に、またはより好ましくは互いに2分以内に投与されるべきである。2つの単位剤形のうちいずれかが最初に投与される。
【0183】
当該キットは、少なくとも2つの異なる医薬組成物を含む。当該キットは、異なる組成物を収容するための容器手段、例えば分かれたボトルまたは分かれたホイルパケットを含む。一般に、当該キットは、異なる成分の投与のための説明書を含む。当該キットの形態は、異なる成分が好ましくは異なる剤形で投与され、さらに異なる投与間隔で投与される場合に、または前記組合せのうちの個々の成分の力価が処方する医師によって所望とされる場合に、特に有利である。
【0184】
本発明に従って投与される第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの量および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの量は、約1:100〜約100:1(w/w)間の比率で変化しうる。従って、第VII因子の第XI因子に対する比率は、例えば、約1:100、または1:90、または1:80、または1:70、または1:60、または1:50、または1:40、または1:30、または1:20、または1:10、または1:5、または1:2、または1:1、または2:1、または5:1、または10:1、または20:1、または30.1、または40:1、または50:1、または60:1、または70:1、または80:1、または90:1、または100:1、あるいは約1:90〜約1:1の間、または約1:80〜約1:2の間、または約1:70〜約1:5の間、または約1:60〜約1:10の間、または約1:50〜約1:25の間、または約1:40〜約1:30の間、または約90:1〜約1:1の間、または約80:1〜約2:1の間、または約70:1〜約5:1の間、または約60:1〜約10:1の間、または約50:1〜約25:1の間、または約40:1〜約30:1の間でありうる。
【0185】
第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの投与量は、被験体の体重、症状および症状の重篤度によって、70kgの患者の場合、負荷量および維持量として、野生型第VII因子の約0.05mg〜約500mg/日に相当する量、例えば、約1mg〜約200mg/日、または例えば、約5mg〜約175mg/日に及ぶ。
【0186】
第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの投与量は、被験体の体重、症状および症状の重篤度によって、70kgの患者の場合、負荷量および維持量として、野生型第XI因子の約0.05mg〜約500mg/日に相当する量、例えば、約1mg〜約200mg/日、または例えば、約1mg〜約175mg/日に及ぶ。
【0187】
第VIIa因子と第XI因子との組合せは、in vitroにおける血塊堅固性およびフィブリン溶解時間アッセイにおいて相乗効果を示す。さらに、第VIIa因子と第XI因子との組合せは、安定したフィブリン血塊の形成、血塊溶解による半減時間の延長、凝固力の増強およびフィブリン溶解に対する耐性の増強において相乗効果を示す。
【0188】
当該組成物は、第VIIa因子および第XI因子の両方を好適な濃度で含んでなる単一の調製物の形態であってもよい。当該組成物は、第VIIa因子を含んでなる第1の単位剤形および第XI因子を含んでなる第2の単位剤形、ならびに、所望により、第VIII因子および/またはTFPI阻害剤を含んでなる1つ以上のさらなる単位剤形からなるキット形式であってもよい。この場合、第VIIa因子および第XI因子は、逐次的に、好ましくは互いに約1〜2時間以内に、例えば互いに30分以内に、または好ましくは10分以内に、またはより好ましくは互いに5分以内に投与されるべきである。2つの単位剤形のうちいずれかが最初に投与される。
【0189】
本発明は、別々に投与されうる活性成分の組合せを用いる処置での出血症状の予防または処置、あるいは凝固処置に関するものであるので、本発明はまた、キット形式で異なる医薬組成物を組み合わせることに関する。当該キットは、少なくとも2つの異なる医薬組成物を含む。当該キットは、異なる組成物を収容するための容器手段、例えば分かれたボトルまたは分かれたホイルパケットを含む。一般に、当該キットは、異なる成分の投与のための説明書を含む。当該キットの形態は、異なる成分が好ましくは異なる剤形で投与され、さらに異なる投与間隔で投与される場合に、または前記組合せのうちの個々の成分の力価が処方する医師によって所望とされる場合に、特に有利である。
【0190】
アッセイ:
第 VIIa 因子活性についての試験:
第VIIa因子活性について試験し、それによって好適な第VIIa因子変異体を選択するのに好適なアッセイが単純な予備的in vitro試験として実施しうる。
【0191】
in vitro における加水分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、ともに「第VIIa因子」という)は比活性についてアッセイしうる。また、それらをアッセイし、同時にそれらの比活性を直接比較してもよい。当該アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施する。発色基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)を最終濃度1mMで、0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、50mM Hepes、pH7.4中の第VIIa因子(最終濃度100nM)に添加する。405nmでの吸光度をSpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。20分のインキュベーションの間に現れた吸光度は、酵素を含まないブランクウェルの吸光度を引いた後、変異体と野生型第VIIa因子との活性の比率の算出に使用する。
【0192】
比率=(第VIIa因子変異体のA405nm)/(第VIIa因子の野生型のA405nm)
この結果より、天然第VIIa因子と同等以上の活性を有する第VIIa因子変異体、例えば、変異体の活性と天然第VII因子(野生型FVII)の活性との比率が約1.0超の比率である変異体などが同定されうる。
【0193】
また、第VIIa因子または第VIIa因子変異体の活性は、生理学的な基質、例えば第X因子を用いても、好適には100〜1000nMの濃度で測定しうる(この際、産生した第Xa因子は好適な発色基質(例えば、S-2765)の添加後に測定される)。なお、当該活性アッセイは生理学的温度で実施されうる。
【0194】
in vitro における タンパク質分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、ともに「第VIIa因子」という)をアッセイし、同時にそれらの比活性を直接比較する。当該アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施する。0.1M NaCl、5mM CaCl2および1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、100μlの50mM Hepes、pH7.4中の第VIIa因子(10nM)および第X因子(0.8μM) を15分間インキュベートする。次いで、0.1M NaCl、20mM EDTAおよび1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する、50μlの50mM Hepes、pH7.4の添加により第X因子開裂を停止させる。産生した第Xa因子の量を、発色基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Sweden)を最終濃度0.5mMで添加することにより測定する。405nmでの吸光度をSpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。10分間に現れた吸光度は、FVIIaを含まないブランクウェルの吸光度を引いた後、変異体と野生型第VIIa因子とのタンパク質分解活性の比率の算出に使用する。
【0195】
比率=(第VIIa因子変異体のA405nm)/(第VIIa因子の野生型のA405nm)
この結果より、天然第VIIa因子と同等以上の活性を有する第VIIa因子変異体、例えば、変異体の活性と天然第VII因子(野生型FVII)の活性との比率が約1.0超の比率である変異体などが同定されうる。
【0196】
トロンビン生成アッセイ:
第VII因子もしくは第VII因子関連ポリペプチドまたは第XI因子もしくは第XI因子関連ポリペプチド(例えば、変異体)のトロンビンを生成する能力も、生理学的濃度の全ての関連する凝固因子およびインヒビター、ならびに活性化した血小板を含んでなるアッセイにおいて測定しうる(引用することにより本明細書の一部とされる、Monroe et al.(1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547のP.543に記載される)。
【0197】
第 XI 因子活性についての試験:
第XI因子アミド分解活性について試験し、それによって好適な第XI因子変異体を選択するのに好適なアッセイが、例えば、Gailani et al.(Blood 97 (10): 3117-3122, 2001)に記載されるような、発色基質を用いた単純なin vitro試験として実施しうる(「FXI発色アッセイ」)。
【0198】
また、第XI因子生物活性は、例えば、Gailani et al.(Blood 97 (10): 3117-3122, 2001)に記載されるような、第IX因子〜第IXa因子の活性化を測定する単純なin vitro試験としても実施しうる。
【0199】
第 VIII 因子についての試験:
第VIII 因子活性について試験し、それによって本発明において使用する好適な第VIII 因子変異体を選択するための手段を提供する好適なアッセイは、例えば、Kirkwood TBL, Rizza CR, Snape TJ, Rhymes IL, Austen DEG. Identification of sources of interlaboratory variation in factor VIII assay. B J Haematol 1981; 37; 559-68;またはKessels et al., British Journal of Haematology, Vol. 76(Suppl. 1) pp.16 (1990))に記載されるような、単純なin vitro試験として実施しうる。また、第VIII因子活性は産生したFXaのアミド分解活性に基づく二段階発色アッセイ(Wagenvoord et al, 1989, Haemostasis, 19 (4):196-204)によっても測定しうる。
【0200】
また、第VIII因子生物活性は、例えば、Nilsson et al., 1959.(Nilsson IM, Blombaeck M, Thilen A, von Francken I., Carriers of haemophilia A-A laboratory study, Acta Med Scan 1959; 165: 357)に記載されるように、調製物の第VIII 因子欠損血漿の凝固時間を補正する能力を測定することによって定量することもできる。このアッセイでは、生物活性が単位/ml 血漿(1単位は正常なプールされた血漿に存在するFVIIIの量に相当する)として示される。
【0201】
本発明の態様:
態様1:第VII因子または第VII因子関連ポリペプチド、および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる医薬組成物。
【0202】
実施形態2:第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである、態様1に記載の組成物。
【0203】
実施形態3:第VIIa因子がヒト第VIIa因子である、態様1に記載の組成物。
【0204】
実施形態4:第VIIa因子および第XI因子が組換えヒト第VIIa因子および組換えヒト第XI因子である、態様1または態様3に記載の組成物。
【0205】
実施形態5:第XI因子が血小板第XI因子である、態様1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【0206】
実施形態6:第XI因子が活性型第XI因子である、態様1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【0207】
実施形態7:TFPI阻害剤をさらに含む、態様1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【0208】
実施形態8:第VIII因子をさらに含む、態様1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【0209】
態様2:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、ならびに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0210】
実施形態10:
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、
c)第3の単位剤形中に、有効量のTFPI阻害剤および医薬上許容される担体、ならびに
d)前記第1、第2および第3の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、態様2に記載の組成物。
【0211】
態様3:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子およびTFPI阻害剤、ならびに医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子および医薬上許容される担体、さらに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0212】
態様4:出血症状の処置を含むキットであって、
a)第1の単位剤形中に、有効量の第VIIa因子および医薬上許容される担体、
b)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子およびTFPI阻害剤、ならびに医薬上許容される担体、さらに
c)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
【0213】
実施形態9:第VIII因子を、別個の単位剤形に調製するか、または第VIIa因子、第XI因子またはTFPI阻害剤のリストから選択される1つ以上の化合物も含む一単位剤形内に含めてさらに含む、実施形態2〜4のいずれか1つに記載のキット。
【0214】
態様6:被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0215】
態様7:被験体における凝固時間を短縮させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0216】
態様8:正常な哺乳類の血漿の血塊溶解時間を延長するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0217】
態様9:正常な哺乳類の血漿の凝固力を増強するための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0218】
態様10:正常なヒト血漿のフィブリン血塊形成を増進させるための薬剤の製造のための、第XI因子と組み合わせた第VIIa因子の使用。
【0219】
態様11:被験体におけるフィブリン血塊形成を増進させるための方法であって、被験体に有効量の第VIIa因子を有効量の第XI因子と組み合わせて投与することを含んでなる、方法。
【0220】
態様12:被験体における出血症状を処置するための方法であって、被験体に有効量の第VIIa因子を有効量の第XI因子と組み合わせて投与することを含んでなる、方法。
【0221】
実施形態10:第VIIa因子および第XI因子が単一剤形で投与される、態様19または20に記載の方法。
【0222】
実施形態11:第VIIa因子および第XI因子が逐次投与される、態様19または20に記載の方法。
【0223】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、これらは保護の範囲を限定するものではない。前述の説明および後述の実施例に開示される特徴は、個々に、かつそれらの任意の組合せで、それらの異なる形態で本発明を実現するための材料でありうる。
【実施例】
【0224】
実施例1
凝固因子 VIIa および XI を組み合わせることによる止血作用のある血塊の安定性の向上
方法:
血塊溶解アッセイ:インノビン(Dade Behring, 2000倍希釈したもの)、rFVIIa( (Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark;各種濃度)およびt-PA(American Diagnostics、8nM)を含むバッファー(20mM HEPES、150mM NaCl、5mM CaCl、pH7.4)で10倍希釈した正常なヒト血漿を96ウェルELISAプレートに添加し、時間を置いて650nmでの濁度を室温で測定した。示されている場合には、精製ヒトFXI(Haematologic Technologies、各種濃度)も含めた。
【0225】
ローテーショナルトロンボエラストグラフィー(roTEG):測定は5 nM t-PAを添加した正常ヒトクエン酸加血漿で実施し、1nM FVIIa単独でまたは30nM FXI(Haematologic Technologies)と組み合わせての添加の効果を分析した。インノビン(最終濃度 2000倍希釈、Dade Behring # 526945)および20mM HEPES、150mM NaCl、pH 7.4バッファー中のカルシウム(最終濃度 15 mM)の添加により凝固を開始させた。
【0226】
結果:
血塊溶解アッセイ:FVIIaの添加が血塊溶解時間の用量依存的な延長をもたらす(図1)。この効果は10nM FVIIaにおいて至適であった。10nM FVIIaの存在下では、FXIの添加が血塊溶解時間のさらなる延長をもたらした(図2)。この効果は用量依存的であり、30nM FXIにおいて至適であった。
【0227】
トロンボエラストグラフィー:roTEG測定により、FVIIaおよびFXIの最大血塊堅固度(Maximal Clot Firmness)(MCF)、ならびにt-PAによる溶解に対する血塊の耐性に及ぼす影響を分析した。FVIIa/FXIの添加前、MCFは25mmであり、血塊溶解による半減に要する時間は12.3分であった(図3)。FXI (30nM)の添加ではMCFは変わらなかったが、血塊溶解による半減時間は16.1分に延長された(図3)。同様に、FVIIa(1nM)の添加でもMCF への影響はなかったが、t-PAによるフィブリン溶解からの血塊の防御がなされた(血塊溶解による半減時間;16.7分)(図3)。しかしながら、FVIIa (1nM)をFXI (30nM)と一緒に添加すると血塊溶解による半減時間(24.2分、図3)だけでなくMCF(29mm)も増大する。
【0228】
結論:
これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果により血塊の機械的強度およびt-PAによるフィブリン溶解に対する耐性を向上させることを示す。
【0229】
実施例2
凝固因子 VIIa および XI を組み合わせることによる正常なヒト血漿における凝固時間の短縮
方法:
凝固アッセイ:アリコート(55μl)の、50mM Pipes、100mM NaCl、2mM EDTA、1%BSA、pH7.2中のrFVIIa(1μg/ml)単独、FXI(25nM)単独、またはrFVIIaおよびFXIを、同じバッファー中の100μM PC/PSベシクルおよび50mM CaCl2を含有する55μlアリコートとともに5分間インキュベートした。次いで、55μlアリコートの正常ヒト血漿(NHP)を添加し、その後、標準APTTプログラムを用いるACL凝固装置で凝固を400秒間行った。
【0230】
結果:
凝固アッセイ:rFVIIaまたはFXIの添加前では、NHPは400秒の監視時間内では凝固しなかった。FXI(25nM)の添加後でも、凝固時間はなお400秒よりも長かった。FVIIa(1μg/ml) の添加では凝固時間が159.4±1.4秒に短縮された(図4)。FVIIa (1μg/ml)とFXI(25nM)との両方を添加すると凝固時間が95.0±1.4秒に短縮された(図4)。
【0231】
結論:
これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果によりNHPの凝固時間を短縮したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】FVIIaの添加が血塊溶解時間の用量依存的な延長をもたらすことを示す。この効果は10nM FVIIaにおいて至適であった。
【図2】10nM FVIIaの存在下では、FXIの添加が血塊溶解時間のさらなる延長をもたらしたことを示す。この効果は用量依存的であり、30nM FXIにおいて至適であった。
【図3】トロンボエラストグラフィー(roTEG)測定による、FVIIaおよびFXIの最大血塊堅固度(MCF)、ならびにt-PAによる溶解に対する血塊の耐性に及ぼす影響の分析を示す。
【図4】これらの結果はFVIIaおよびFXIの血漿への添加が相乗効果によりNHPの凝固時間を短縮したことを示す。
Claims (53)
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチド、および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
- 第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子アミノ酸配列変異体である、請求項2に記載の組成物。
- 本明細書に記載の「in vitroにおける加水分解アッセイ」において試験した際に第VII因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25である、請求項2または請求項3に記載の組成物。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子である、請求項1に記載の組成物。
- 第VII因子がヒト第VII因子である、請求項5に記載の組成物。
- 第VII因子が組換えヒト第VII因子である、請求項6に記載の組成物。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその活性型である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
- 第VII因子が組換えヒト第VIIa因子である、請求項8に記載の組成物。
- 第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子関連ポリペプチドである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- 第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子アミノ酸配列変異体である、請求項10に記載の組成物。
- 本明細書に記載の「FXI発色アッセイ」において試験した際に第XI因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト血漿第XI因子(野生型FXI)の活性との比率が少なくとも約1.25である、請求項10または請求項11に記載の組成物。
- 第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子ポリペプチドである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- 第XI因子がヒト第XI因子である、請求項13に記載の組成物。
- 第XI因子が組換え血漿ヒト第XI因子である、請求項14に記載の組成物。
- 第XI因子が組換え血小板ヒト第XI因子である、請求項14に記載の組成物。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
- 注射または注入、特に注射に好適な医薬上許容される賦形剤をさらに含んでなる、請求項1ないし17のいずれか一項に記載の組成物。
- 出血症状の処置を含むキット形式であって、
f)第1の単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、
g)第2の単位剤形中に、有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物および医薬上許容される担体、ならびに
h)前記第1および第2の剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット形式。 - 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチドである、請求項19に記載のキット。
- 第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子アミノ酸配列変異体である、請求項20に記載のキット。
- 本明細書に記載の「in vitroにおける加水分解アッセイ」において試験した際に第VII因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率が少なくとも約1.25である、請求項20または請求項21に記載のキット。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドが第VII因子である、請求項19に記載のキット。
- 第VII因子がヒト第VII因子である、請求項23に記載のキット。
- 第VII因子ポリペプチドが組換えヒト第VII因子である、請求項24に記載のキット。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドがその活性型である、請求項19〜25のいずれか一項に記載のキット。
- 第VII因子が組換えヒト第VIIa因子である、請求項26に記載のキット。
- 第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子関連ポリペプチドである、請求項19〜27のいずれか一項に記載のキット。
- 第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子アミノ酸配列変異体である、請求項28に記載のキット。
- 本明細書に記載の「FXI発色アッセイ」において試験した際に第XI因子関連ポリペプチドの活性と天然ヒト血漿第XI因子(野生型FXI)の活性との比率が少なくとも約1.25である、請求項28または請求項29に記載のキット。
- 第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第XI因子である、請求項19〜27のいずれか一項に記載のキット。
- 第XI因子がヒト第XI因子である、請求項31に記載のキット。
- 第XI因子が組換え血漿ヒト第XI因子である、請求項32に記載のキット。
- 第XI因子が組換え血小板ヒト第XI因子である、請求項32に記載のキット。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが約100:1〜約1:100(w/w 第VII因子:第XI因子)間の質量比で存在する、請求項19〜34のいずれか一項に記載のキット。
- 被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドと組み合わせた第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの使用。
- 被験体における出血症状を処置するための薬剤の製造のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
- 薬剤が凝固時間を短縮させるためのものである、請求項36または請求項37に記載の使用。
- 薬剤が血塊溶解時間を延長するためのものである、請求項36または請求項37に記載の使用。
- 薬剤が凝固力を増強するためのものである、請求項36または請求項37に記載の使用。
- 薬剤が注射または注入、特に注射用に製造される、請求項36〜40のいずれか一項に記載の使用。
- 出血症状が外傷、または外科処置、あるいは血小板の数もしくは活性の低下によるものである、請求項36〜41のいずれか一項に記載の使用。
- 薬剤が単一剤形である、請求項36〜42のいずれか一項に記載の使用。
- 薬剤が第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の単位剤形および第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の単位剤形として製造される、請求項36〜42のいずれか一項に記載の使用。
- 被験体における出血症状を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも出血を処置するのに有効である)、方法。
- 被験体における凝固時間を短縮させるための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固時間を短縮させるのに有効である)、方法。
- 被験体における止血を促進するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも止血を促進するのに有効である)、方法。
- 被験体における血塊溶解時間を延長するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも血塊溶解時間を延長するのに有効である)、方法。
- 被験体における凝固力を増強するための方法であって、それを必要とする被験体に第1の量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物および第2の量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を投与することを含んでなる(なおここで、第1および第2の量はいずれも凝固力を増強するのに有効である)、方法。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが単一剤形で投与される、請求項45〜49のいずれか一項に記載の方法。
- 第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドが第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドの調製物を含む第1の剤形と第XI因子または第XI因子関連ポリペプチドの調製物を含む第2の剤形として投与される、請求項45〜49のいずれか一項に記載の方法。
- 第1の剤形および第2の剤形が15分以内に投与される、請求項51に記載の方法。
- 出血症状の処置を含むキットであって、
a)一単位剤形中に、有効量の第VII因子または第VII因子関連ポリペプチドおよび有効量の第XI因子または第XI因子関連ポリペプチド、ならびに医薬上許容される担体、さらに
b)前記一単位剤形を収容するための容器手段
を含んでなる、キット。
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