JP2004534137A - ケラチン系製品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、家禽の羽のようなケラチン含有出発材料からケラチンを可溶化させるための方法に関する。ケラチンは、アルカリ性条件の下で硫化物を用いて可溶化され得る。プロセスの中で、可溶化されたケラチンのシステイン残基は、例えばアルキル化により部分的に修飾される。可溶化と部分的修飾の条件は、ケラチンがさらに、部分的に加水分解されるように選択される。部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンは、例えば、流延によるフィルムと塗膜の製造のために安定な分散液として用いられ得る。
Description
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ケラチンから誘導される新規な製品に関する。特に本発明は、家禽の羽のような天然起源のケラチンおよびケラチン繊維から誘導される製品に関する。本発明はまた、そのようなケラチン誘導製品の調製のための方法およびそのようなケラチン誘導製品の使用にも関する。
【発明の背景】
【0002】
羽は、養鶏業の重要な廃材であり、年間に世界中で約400万トンが生産されている。その少量は、例えば、被服、断熱および寝具に用途が見出され、より多くの量が動物の飼料の製造のための羽毛粉の製造に用途が見出されているけれども、そのような多量の羽のための(経済的に意味のある)十分な用途は、現在のところ存在しない。環境上の理由のために、羽を燃やしたり埋めたりすることは常に実際的な代替策ではない。その廃物の羽の量は、養鶏業のような産業にとって困難な処分上の問題を提起する。
【0003】
従って、廃物の羽のある程度経済的に実現可能な用途を提供すること並びに廃物の羽がそのような用途に用いられ得る方法を提供することが本発明の一般的目的である。
【0004】
羽は主に、ケラチンと呼ばれる繊維性たんぱく質材料から成り立っている。ケラチンは、ほぼ10kDaの分子量を有する水に不溶性で耐プロテアーゼ性のタンパク質である。図1で示されるように、それぞれのケラチン分子−図1で(A)として示される−は、結晶性β−シートを形成する中央部分(β)およびそれぞれ(N)および(C)として示される2つのランダムな形態の鎖末端からなる。羽の中で、多数のケラチンの中央部分(β)は、直径約30オングストロームのいわゆるミクロフィブリル(B)を形成するように結合する。鎖末端(C)および(N)は、ジスルフィド結合した二量体アミノ酸(シスチン)の形態で鎖間および鎖内架橋(C)を含み、ミクロフィブリルが埋め込まれている非晶質のマトリックスを形成する。羽の中のタンパク質のジスルフィド結合(C)および分子組織は、不溶性とほとんどのタンパク質分解酵素に対する耐性を与える。
【0005】
ケラチン、ケラチン加水分解物、およびケラチンに由来する製品ならびにその調製と利用に関連する先行技術はすでに膨大な量で存在する。特に、化粧品産業と繊維産業は、毛髪の整髪と羊毛の改変のためのケラチン誘導体製品に関心を持っている。加水分解されたケラチンを有するシャンプーおよびネイルポリッシュは、ケラチンを利用する先行技術の製剤の適当な例である。たとえ、それらの用途が多数でも、それらは、基本的には、成分の1つとしてほとんど加水分解されたケラチンを用いる製剤製品である。そのような製品は小さな付加価値しか有さず、有用性も限られている。
【0006】
ケラチンがフィルムまたは塗膜中でポリマーとして用いられる先行技術は、本発明者の一人の学位論文(非特許文献1)中のこの技術の概論部から明らかであるようにはるかに不十分である。一般的には、その参考文献中に記載されている方法によれば、不溶性ケラチンはその天然源から抽出され、例えば、水性媒体中で可溶化される。通常、そのような抽出/可溶化は少なくともジスルフィド結合(C)の分裂を伴い、このことはミクロフィブリル(B)を分裂させて分離したケラチン分子(A)を提供する。用いられる条件に依存して、抽出/可溶化もまたケラチン分子(A)それ自体の加水分解/分解、すなわち、ケラチン分子(A)を形成するアミノ酸間のペプチド結合の開裂を伴い得る。報告されているところでは、ジスルフィド結合の分裂は、スルホン酸基を形成するための有機過酸によるジスルフィド結合の酸化により、S−スルホネート基を形成するためのジスルフィド結合のスルフィト分解により、または2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)またはジチオエリスリトールのようなチオール化合物によるジスルフィド結合の還元により、または硫化ナトリウム溶液のようなアルカリ金属硫化物による処理により達成されてきた。一般的に、先行技術の方法の目的は、例えば、ケラチンの溶液またはケラチン加水分解物のような水性媒体中に可溶性であるケラチン誘導体生成物を提供することである。この目的のために、先行技術は、結合の再生(reformation)および/またはアルカリ金属水酸化物、尿素、塩酸グアニジン、2−メルカプトエタノールまたはチオグリコレートのようなケラチンを溶液中に維持するかまたはケラチン溶液を安定化させるための特定の添加剤の使用を回避するように、分裂したジスルフィド結合の修飾を記述する。
【0007】
例えば、特許文献1は、Na2 S溶液のようなアルカリ金属硫化物溶液を用いてケラチンを羽から抽出する方法を記述する。このようにして得られたケラチン溶液は、ついで、Na2 SO3 のようなアルカリ金属亜硫酸塩により処理され、その後、タンパク質は酸沈殿される。沈殿したケラチンは、次いでアルカリ水溶液中で可溶化され、次いで、例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムまたは過酢酸もしくは過ギ酸のような有機過酸のような水溶性酸化剤を用いて酸化される。このことはシスチン/システイン残基をシステイン酸基に酸化するものと思われる。しかしながら、そのようにして得られたケラチンは本質的に完全に修飾される。すなわち、全ての遊離のシスチン/システイン残基は、システイン酸基に酸化される。結果として、完全に修飾されたケラチンは、一般的に水に可溶性であり、それゆえ、例えば、塗膜における用途および以後本明細書で言及される他の用途のために水に不溶性のフィルムを提供するのにはあまり適していない。また、特許文献2は、例えば、ケラチンの少なくとも70%の遊離の−SH基の本質的に完全な修飾を記述する。
【0008】
対照的に、特許文献3は、シスチン/システイン基が本質的に修飾されないで残る硫化ナトリウムを用いるケラチンの可溶化のための方法を記述する。ケラチンは、アルカリ金属硫化物溶液を用いて再び抽出され、アルカリ金属亜硫酸塩溶液により処理され、次いで、酸沈殿される。得られるタンパク質生成物は、水−アルコール混合物中に分散するものとして記載され、フィルムおよび塗膜を調製するために用いられ得る。特許文献3は、また、メルカプトエタノール−アルコール−水混合物による処理、またはアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ性メルカプトエタノール−アルコール−水混合物による処理を含む、羽ケラチンを抽出し、可溶化させるための代替方法も記載している。しかしながら、特許文献3によれば、シスチン/システイン基は、本質的に修飾されないままである。本質的に修飾されていないシスチン/システインを有する過ヨウ化されたケラチンの主たる欠点は、それが所望の機械的特性を有するケラチン系製品、特にフィルムと塗膜を製造することを可能としないという点にある。特に、そのようなフィルムの欠点はもろさである。
【0009】
今まで言及された技術のほとんどは、1960年代後期から1970年代初期にさかのぼる。にもかかわらず、30年前には、それらの参考文献は、そこに開示されているケラチン由来の製品の広範な使用をもたらさなかった。これはおそらく、記載された製品と方法が、−彼らが廃物の羽を出発材料として用いていると言う事実にもかかわらず、−経済的に実用的でないためであり、および/または得られたケラチン製品が実際の(例えば、商業的な)使用にとって必要とされる特性を示さないためである。
【0010】
それらの問題の一部は、本発明者の一人の学位論文(非特許文献1)で対処されている。その論文は、濃縮された尿素水溶液中で、かつ2−メルカプトエタノールの存在下で、モノヨードアセトアミド、モノヨード酢酸またはモノブロモコハク酸を用いての無傷形の羽ケラチンの部分的修飾(すなわちアルキル化)により得られるケラチン由来の製品を記載する。ケラチンは、残留遊離−SH基の量に基づいて計算して25ないし87%に渡る修飾度まで修飾された。この部分的な修飾は、本質的に無傷形で(すなわち、加水分解されていない)部分的に修飾されたケラチンの安定な分散液を提供し、そのケラチンは、所望の熱特性と機械的特性を有する強力なフィルムに流延するために用いることができた。しかしながら、部分的修飾のための本質的に無傷形のケラチンの抽出と可溶化は、尿素および2−メルカプトエタノールのような化学物質の高濃度の使用を要求する。実験室規模でのそれらの化学物質の使用は許容し得る。しかしながら、その大規模な使用は経済的に実現不可能である。と言うのは、それらの化学物質の使用は高価であり、また、環境上の観点でも、それらの化学物質の使用に伴う使用上の危険の観点でも、費用のかかる予防措置が必要だからである。
【特許文献1】
US−A−3,464,825
【特許文献2】
FR2522657
【特許文献3】
US−A−3,642,498
【非特許文献1】
P.Schrooyen:「羽のケラチン:改変とフィルム形成」,1999,トウェンテ大学院大学(Thesis University of Twente)、エンスケーデ、オランダ したがって、羽のようなケラチン含有(廃棄)材料の加工処理のための経済的に実行可能な方法についての必要性がいまだ存在する。その方法は、実際の/商業的用途にとって許容可能な特性を有するある範囲のケラチン系製品、特にフィルムと塗膜を提供するために用いられ得る。
【発明の説明】
【0011】
このたび、よりすぐれたケラチン系製品が、ケラチン分子の、通常には加水分解による部分的分解(partial degradation)と遊離−SH基、すなわち、ジスルフィド結合(C)の開裂により生じる遊離の−SH基の部分的修飾の組み合わせを含む方法により獲得され得ることが見出された。特に、本発明は、限定されないが、以下で検討される事柄を含む、水に分散性であり、広範な用途で用いられ得る、そのような部分的に分解され、部分的に修飾された製品を提供する。そのような水に分散性で、部分的に分解され、部分的に修飾されたケラチン系製品は、当該技術ではこれまで記述されてこなかった。
【0012】
すなわち、第1の側面において、本発明は、部分的に修飾され、部分的に分解されたケラチンを製造するための方法に関する。その方法は、(a)アルカリ性pHで還元剤を用いて水溶液中でケラチン繊維含有出発材料からケラチンを可溶化させる工程および(b)可溶化されたケラチンの−SH基を部分的に修飾する工程を含む。好ましくは、工程(a)および/または(b)の条件は、可溶化されたケラチンがさらに以下で特定される程度まで部分的に加水分解され、または部分的に分解するような条件である。任意に、更なる工程(c)を、所望の程度までケラチンを加水分解するために用いることができる。
【0013】
ケラチン繊維含有出発材料については、ケラチン繊維のいずれの適切な供給源も用いることができる。特に、例えば、毛髪、羽、ひづめ、爪、角などのようなケラチン繊維の天然の供給源を用いることができる。好ましくは、少なくともβ−ケラチンを含むケラチン繊維の供給源が用いられる。羽、特に、例えば養鶏業からの廃棄物として得られるようなニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウまたは他の家禽の羽は、特に好ましい出発材料である。ケラチン繊維のそれらの供給源は、例えば、通常(乾燥した羽に基づいて)全重量の5%未満の量の少量の他のタンパク質および/または脂肪もしくは血液のような他の成分を含み得る。一般的にはその存在は許容され得るし、さもなければ、それらの非ケラチン成分の一部または全部を工程(a)の可溶化の前に除去することができる。ケラチン繊維含有出発材料は、好ましくは、例えば、清浄化、洗浄、分級、脱脂、切断、粉砕、破砕、乾燥、またはそれらのいずれかの組み合わせのような1以上の予備処理を受ける。そのような予備処理は出発材料の操作を容易にし得るし、そのことはケラチンの可溶化のような更なる加工処理工程の効率を向上させ得るし、および/または最終的なケラチン系製品の品質を向上させ得る。代わりに、羽毛粉ならびにすでに単離されたケラチンまたはケラチン繊維(しかしながら、それらは経済的理由のために通常あまり好ましくないであろう)のようなすでに予備加工されたケラチン含有出発材料を用いることもできる。いずれの更なる予備処理無しでも可溶化工程a)で直接ケラチンまたはケラチン繊維の天然の供給源、例えば羽を用いることもまた本発明の範囲に包含される。
【0014】
アルカリ性pHでの可溶化のための還元剤は、硫化物、チオール、ボリックハイドライド(boric hydride)およびホスフィン、またはそれらの組み合わせから選択することができる。好ましい硫化物は、硫化ナトリウムのようなアルカリ金属硫化物である。より低いアルカリ性pHでは、例えば、10、9.5または9.0未満のpHでは、硫化アンモニウムもまた、可溶化のための還元剤として用いることができ、その使用は、最終製品中の塩の残留を回避させる。好ましいチオールは、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノールおよびチオグリコレートであり、好ましいホスフィンは、トリ−n−ブチルホスフィンである。
【0015】
可溶化の条件、すなわち、ケラチン繊維含有出発材料、還元剤および緩衝剤の濃度、並びにpH、温度および可溶化の続行時間は、好ましくは、満足な収率の可溶化されたケラチンが得られる、好ましくは、ケラチン繊維含有出発材料中のケラチンの少なくとも10、20、30、40、50または60%が可溶化されるように選択される。さらに好ましくは、可溶化の条件は、可溶化されたケラチンが以下でさらに特定される程度まで部分的に加水分解するかまたは部分的に分解するように選択される。
【0016】
好ましくは、(水性)可溶化媒体1リットル当り少なくとも10gのケラチン繊維含有出発材料が可溶化され、好ましくは(水性)可溶化媒体1リットル当り100g以下のケラチン繊維含有出発材料が可溶化される。通常、(水性)可溶化媒体1リットル当り20ないし60gのケラチン繊維含有出発材料が可溶化される。
【0017】
(水性)可溶化媒体中の還元剤、例えば、アルカリ金属硫化物または硫化アンモニウムの濃度は、好ましくは、0.05Mないし1.0Mである。代わりに、2−メルカプトエタノールと水酸化ナトリウムの組み合わせを用いると、2−メルカプトエタノールは、0.1ないし1.0Nの水酸化ナトリウムと組み合わせて0.1Mないし1.5Mの濃度で用いられる。
【0018】
ケラチンが可溶化されるpHは、アルカリ性である、すなわち、pH7.0より大きい。しかしながら好ましくは、可溶化は、少なくともpH8.0、8.5、9.0、9.5であるアルカリ性pHで実施され、しかしながらより好ましくは、pHは、少なくともpH10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、または12.5以上である。というのは、少なくともpH10.0以上のpHでは、硫化物の解離平衡は、S2-に向かって移行し、S2-は、HS- より強力な還元剤であるからである。好ましくは、pHは、pH13.5以下である。
【0019】
ケラチンが可溶化される温度は、好ましくは、少なくとも20℃である。しかしながら、好ましくは、少なくとも30、40、50、60、70または80℃のような高温が可溶化のために用いられるが、しかし、好ましくは100℃である。
【0020】
ケラチン可溶化工程の続行時間は、主として、可溶化されたケラチンの所望の程度の加水分解が、そのときの可溶化条件の下で達成されるように選択される。典型的には、可溶化は、10分ないし24時間かかるだろう。ケラチンの可溶化の続行時間は、可溶化の収率のためにさらに最適化され得る。従って当業者は、少なくとも所望の程度のケラチンの加水分解および好ましくは可溶化されたケラチンの最高収率を獲得するために、ケラチン可溶化のための条件の設定を経験的に最適化し得る。
【0021】
ケラチンの可溶化に加えて、本発明の方法はさらに、ケラチン中に存在する−SH基を部分的に修飾する工程を含む。一般的には、それらの−SH基は、ケラチン繊維含有出発材料からのケラチンの還元条件の下での可溶化の間に発生し得るケラチン分子中の分子内および分子間ジスルフィド結合(C)の開裂により生じる遊離の−SH基であろう。従って、通常は、遊離の−SH基は、システイン残基であろう。遊離の−SH基の部分的修飾は、一般的に、−SH基の他の官能基への、例えば、限定されないが以下に言及される1以上の官能基を含む官能基への化学的変換を伴う。修飾の1つの目的は、そのことが、修飾された−SH基が可溶化されたケラチン分子での分子内および分子間ジスルフィド結合を(再)生成させることを排除し、それにより不溶性のケラチン凝集物の生成を回避または少なくとも減少させることである。他方、−SH基の部分的修飾は、残りの遊離システイン残基が、例えば架橋のためのおよび/または重合のためのジスルフィド結合の(再)生成のような更なる反応のために有用であることを意味し、それらの反応は、機械的強度および/または化学的または物理的影響に対する抵抗のような、最終生成物に所望の特性を付与するために用いることができる。本質的に完全な修飾と比較しての部分的修飾のいくつかの更なる利点には、そのように得られたケラチンは、例えば、被覆物としての用途のためのおよび以下言及される他の用途のための水に不溶性のフィルムを提供するのにより適していることが含まれる。比較により、上記US−A−3,464,825に記載されたもののような完全に修飾されたケラチンは、一般的に水溶性である。可溶化されたケラチンの遊離の−SH基の部分的修飾は、主として用いられる官能基に依存するそれ自体公知の多数の方式で達成され得る。非限定的な例により、遊離の−SH基を部分的に変換するためのいくつかの適切な官能基ならびに条件が、以下に言及されている。
【0022】
本発明の方法では、可溶化されたケラチンの部分的修飾は、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、そして最も好ましくは40%が修飾されるものであり、同時に、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の70%未満、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下および最も好ましくは57%以下が修飾されるものである。最終的には、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の修飾の程度は、約50%、すなわち、44ないし56%が好ましい。ケラチン中の残りの−SH基は、修飾されず、したがって、得られた部分的に修飾された生成物中にそのまま、または再生成したジスルフィド結合(これは、例えば以下に記載の修飾の程度を計算する目的のためには、2つの遊離の−SH基に等価とみなされ得る)として存在する。
【0023】
修飾の程度は、限定されないが、用いられる官能化剤、反応時間、温度、pH、用いられる溶媒、それぞれの反応物質の濃度、およびケラチン材料の濃度を含む修飾反応の条件を適切に選択することにより制御され得る。所望の修飾度を有する最終製品をもたらし得る特定の条件の選択は、何度かの予備実験および/または何回かの試行錯誤を必要とするかもしれないと考えられる。しかしながら、本明細書の開示に基づき、このことは当業者の容易に到達できる範囲にあり、それゆえ、本発明の範囲に包含されるとみなされるべきである。
【0024】
修飾は、−SH基を修飾するために用いられる基に依存してそれ自体公知の方式で実施され、この修飾は、例えば可溶化のようないずれか更なる加工処理工程と組み合わせられる。適切な条件は、0.01Mないし1Mの官能化剤の濃度で、7.0ないし10.0のpHで、4℃ないし20℃の温度で、10分ないし24時間の時間で、100mlの水性加水分解媒体あたり2gないし10gの可溶化されたケラチンの濃度での水または水性媒体の使用を含み得る。約50%の修飾度でのモノクロロ酢酸による修飾のための好ましい条件は、例えば、0.5〜5gのモノクロロ酢酸を有する1リットルの体積中の10〜30gの可溶化されたケラチンについて、30〜90分間、8.5ないし9.5のpHで、10〜20℃の温度でのインキュベーションである。
【0025】
修飾度は、修飾後に残留する遊離の−SH基(存在するジスルフィド結合の量を含む)の量を修飾前の遊離の−SH基(ジスルフィド結合を含む)の量と比較することにより定量され得、その場合、ケラチン調製における遊離の−SH基/ジスルフィド結合の量は、シュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているDTNB/NTSBアッセイのような適切な検定法を用いて定量され得る。代わりに、修飾後に残る遊離の−SH基および/ジスルフィド結合の量はまた、ケラチン中の−SH基/ジスルフィド結合の量についての理論値に比較され得る。(存在するシスチン/システイン残基の量に基づいて)生の(native)ケラチン中の−SH基/ジスルフィド結合の理論量は、700μmolシステイン基/gケラチンである(ちなみにシスチン基の量はその量の半分である)。
【0026】
−SH基は、−SH基の官能化にとっておよび/またはケラチンの官能化にとって適したいずれか所望の官能基により、または2以上のそのような基の適切な組み合わせにより修飾され得る。選択される特定の官能基およびそのそれぞれの量は通常、最終生成物の所望される特性に依存するであろう。
【0027】
従って、本発明のケラチンは、1以上の負に荷電した官能基、1以上の正に荷電した官能基、および/または1以上の中性の官能基、またはそれらの適切な組み合わせを備え得る。この点で、「正に」および/または「負に」荷電した基が、適切な対イオン、すなわち、アニオン(性基)またはカチオン(性基)のそれぞれと結合し得ることは当業者に明らかであろう。本明細書で記載される「正に」または「負に」荷電する官能基により担持される実際の電荷はまた、pH、溶媒、その他のようなケラチンが存在する/維持される条件にもまた依存し得ることもまた明らかであろう。しかしながら一般的に、6.0から8.0の範囲のpHでは、「正に」荷電した基は正味の正の電荷を有し、「負に」荷電した基は、正味の負の電荷を有し、そして、「中性の」基は、本質的にゼロの正味の電荷を有する。
【0028】
好ましくは、既述の官能基は、少なくとも有機化合物を−SH基と反応させる基または残基を含む1以上の飽和または不飽和有機化合物を用いて導入され得る。それらには、限定されないが、ハロゲン(クロロ−、ブロモまたはヨード−)、エポキシド−またはグリシジル−基のような適切な脱離基(leaving group)または(メタ)アクリル、ビニルのような不飽和基が含まれ得るものであり、他の適切な基は当業者に明らかであろう。遊離の−SH基と反応し得る基の他に、それらの有機化合物はまた、−COOH基のような負の電荷を備え得るかまたは限定されないがアルキル化アミン基を含む第4級アミン基のような正の電荷を備え得る1以上の更なる基も含み得る。従って、例えば、ケラチンは、負に荷電する基、例えば、
−クロロ酢酸、ヨード酢酸およびブロモ酢酸のようなハロゲン化酸、
−スルホネート基を生成させる過酸化水素または限定されないが過ギ酸または過酢酸を含む過酸化有機物のような過酸化物、
−COOH基を含むビニル化合物のような負に荷電した基を含む不飽和有機化合物、
−グリシジル化合物、
またはそれらのいずれか適切な組み合わせを用いて導入され得るものにより修飾され得る。
【0029】
通常、そのような負に荷電した基を有する部分的に加水分解されたケラチンを部分的に修飾することは、ケラチンの分散性を高め得る。
【0030】
正に荷電した官能基は、例えば、
−ハロゲン化アルキルアミンのようなハロゲン化有機アミン
−グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドのようなアミン基を有するグリシジル化合物
またはそれらの適切な組み合わせを用いて導入され得る。
【0031】
中性の官能基は、例えば、
−ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化エーテル、エステルまたはアミドのようなハロゲン化有機化合物、
−アルキルグリシジル化合物のようなグリシジル化合物、
−アルキルビニル化合物のようなビニル化合物
またはそれらの適切な組み合わせを用いて導入され得る。
【0032】
他の適切な官能化化合物は、例えば、FR2522657に記載されている。ケラチンはまた、例えば、S−スルホネート基を生成させるための亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩を用いて、または他の無機化合物を用いても修飾され得る。
【0033】
例えば可溶化混合物に官能化剤を加えることにより修飾工程を可溶化工程と組み合わせることは簡便であろう。可溶化および修飾後、ケラチン誘導生成物は、その意図される最終用途にとってすでに適切であろうし、従って、例えば、それ自体最終使用者に販売または提供され得る。
【0034】
本発明の方法において、可溶化および/または修飾の条件は、好ましくは可溶化されたケラチンが部分的に加水分解または分解されることである。部分的加水分解−また、部分的「分解」とも称される−は、一般的に、ケラチン分子を形成するアミノ酸間のペプチド結合の(一部の)開裂を含む。部分的加水分解は、可溶化および/または修飾の間に達成され得る。しかしながら、もし可溶化および/または修飾が可溶化されたケラチンの所望の程度の部分的加水分解を創出しない場合には、更なる加水分解または分解を、例えば、化学的加水分解、物理的加水分解および/または酵素的加水分解を含む当該技術でそれ自体公知のいずれかの方式により達成し得る。
【0035】
可溶化されたケラチンの加水分解の程度は、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたケラチン系製品が必要とされる物理的および化学的特性を有するほどである。例えば、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたフィルムまたは塗膜は、好ましくは15MPa、より好ましくは16、17、18または20MPaを超える引っ張り強度を有する。フィルムは、好ましくはまた、少なくとも100MPaの、より好ましくは150、200、250または300MPaを超える弾性率も有する。フィルムはまた、少なくとも10%の、より好ましくは20、30、40または50%を超える破断点伸びも有する。そのような物理化学的特性を有するケラチン系製品を製造することを可能とする可溶化されたケラチンの加水分解の程度は、本発明の方法で得られた可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンの分子量の分布により定義され得る。従って、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンの分子量の分布は、以下のとおり規定され得る。
【0036】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、本質的に1ないし10.4kDa、特に3ないし10.4kDaの分子量を有し、その場合、本質的には、部分的に加水分解されたケラチン画分中に存在する全ケラチン分子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%が上記範囲の分子量を有することを意味すると理解される。
【0037】
−好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも1%は10kDa未満の分子量を有する。加えて、好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも50%は5kDaを超える分子量を有する。より好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも3、5、7、10または15%は10kDa未満の分子量を有し、その場合、可溶化されたケラチンの少なくとも60、70、80、90または95%は、5kDaを超える分子量を有する。および/または
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、40グラムの清浄化された乾燥した家禽の羽をpH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間1リットルの0.05〜0.5M硫化ナトリウムの水溶液中で可溶化させたときに得られる可溶化されたケラチンの分子量の分布に本質的に等しい分子量分布を有する。次いで、可溶化されたケラチンは、好ましくは、ろ過により溶解していない出発材料から分離される。より好ましくは、分子量分布は、40グラムの清浄化され、乾燥された家禽の羽をpH11.0ないしpH13.0のpHで、55ないし65℃の温度で、45〜75分間1リットルの0.075〜0.15M硫化ナトリウム水溶液中で可溶化させたとき得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい。最も好ましくは、分子量分布は、40グラムの清浄化され、乾燥された家禽の羽がpH12.5で、60℃の温度で、45〜75分間1リットルの0.1M硫化ナトリウムの水溶液中に可溶化されるとき得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい。
【0038】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、25℃で可溶化されたケラチンの1%(w/v)溶液が1mPa.sないし100mPa.s、好ましくは1mPa.sないし20mPa.sの粘度を有する程度の分子量分布を有する。粘度は、例えば、ウッベローデ(Ubbelohde)粘度計で測定され得る。
【0039】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、可溶化されたケラチンが1%ないし50%、好ましくは10%ないし30%の水中分散性を有する分子量分布を有する。ケラチンの分散性とは、ここでは、ケラチンが調製後24時間以内にほとんど或いはまったく沈殿物を示さない安定な分散液を形成することが可能であると言うように定義される。
【0040】
加水分解の程度は、限定されないが、用いられる反応物質(例えば、化学的分解のための)、用いられる力/装置(例えば、物理的分解のための)、用いられる酵素(例えば酵素分解のための)、加水分解の時間、温度、pH、用いられる溶媒、それぞれの反応物質の濃度、ケラチン材料の濃度、ケラチン材料が提供される方式(例えば、本明細書で以下記載される適切な予備処理後)、用いられるいずれかの攪拌または振動および/または可溶化、修飾の間および/またはそれぞれ別々の間加水分解がなされるかどうかを含む加水分解反応の条件を適切に選択することにより制御され得る。所望の程度の加水分解を提供し得る、−それにより部分的修飾およびいずれか更なる加工処理と結びついて例えば下記の所望の特性を有する最終製品をもたらす−特定の条件の選択は、どれほどかの予備実験および/またはある程度の試行錯誤を必要とし得ることが考えられる。しかしながら、本明細書の開示に基づけば、このことは当業者の容易に到達し得ることであり、それゆえ、本発明の範囲に包含されるとみなされる。
【0041】
加えて−または代わりに−加水分解の程度は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、調製物の粘度の定量、調製物の分散性の定量、タンパク質末端基の量の定量、またはそれらのおよび他の適切な技術のいずれかの組み合わせにより加水分解された断片の分子量またはその分布の分析を含むいくつかの方法で定量され得る。
【0042】
用いられる条件に依存して、本質的に上記範囲内にある分子量を有する部分的に加水分解されたケラチンの画分または調製物は、部分的加水分解の結果として直接獲得され得る。しかしながら、そのような画分または調製物を提供するために、ある程度の量の−本質的には全部まで−高分子量成分がいまだ存在し、(例えば、いずれか残留し、溶解していない出発材料)および/またはある程度の量の−本質的には全部まで−加水分解反応の間に生成した低分子量分解生成物が、例えば、加水分解および/または修飾後のいずれか更なる加工処理の一部として加水分解された画分または調製物から除去され得ることもまた本発明の範囲内にある。
【0043】
また、本発明によれば、可溶化されたケラチンは、例えば、上記範囲を超える分子量を有する凝集物を形成し得る。それらの凝集物を形成するケラチン由来の分子が本質的に上記範囲にある分子量を有する限り、そのような凝集並びに得られる凝集物は本発明の範囲内にある。
【0044】
さらに、上記範囲を超える分子量を有する生成物がやはり形成され得るケラチン誘導生成物のある程度の重合が起こる(例えば、部分的加水分解、部分的修飾および/または更なる加工処理の後)こともまた可能である。やはり、ポリマー構造を形成するために組み合わさるケラチン由来の分子が本質的に上記範囲内にある分子量を有するならば、そのような重合ならびに得られるポリマー生成物もまた本発明の範囲内にある。
【0045】
先行技術の本質的に無傷形のケラチンと比較して、本発明の部分的に加水分解され/修飾されたケラチンは、有利には、より疎水性の特性および/または低い表面張力を有するケラチンが要求される用途で特に用いられ得る。このことは、本発明の部分的に加水分解されたケラチンがフィルムまたは塗膜として応用されるとき有益であろう。本発明の部分的に加水分解されたケラチンはまた、本質的に無傷形のケラチンと比較してより優れた接着特性も有する。それらの接着特性は、例えば、(ビール)壜上にラベルを固定する際に用いるときガラスに紙を粘着させる上で有利に適用され得る。先行技術の本質的に無傷形のケラチンに比較して、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、該部分的に加水分解されたケラチンがより両親媒性であるので、よりすぐれた乳化特性(emulgating properties)を有する。部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチンを用いることの更なる利点は、部分的に加水分解されたタンパク質の潜在的に向上した抗微生物効果に存在する。このことは、乳清タンパク質ラクトフェリンの加水分解生成物であるラクトフェリシンについて立証されている。部分的修飾により、向上した抗微生物効果を有するケラチンペプチドはさらにジスルフィド結合形成により良好な機械的強度を有するフィルムに組み込まれ得るものであり、新世代の抗微生物塗膜をもたらす。
【0046】
本発明の更なる任意の側面において、可溶化され、部分的に修飾されたケラチンは、更なる加工処理工程に供され得る。それは例えば、以下を含む。
【0047】
−例えば、得られたケラチン生成物から望ましからぬ成分および/または物質を除去するための更なる精製。それらは例えば、残留ケラチン出発材料、高分子量ケラチン成分、低分子量ケラチン成分、反応物質、および/または加工処理工程のいずれかからの副生成物、および/または他の不純物または望ましからぬ成分を含み得る。そのような成分または物質を除去するための適切な技術には、例えば、洗浄、沈殿、透析、ろ過および遠心分離が含まれる。
【0048】
−ケラチン由来の生成物、および/またはいずれか特定の部分もしくはその画分の単離。これは、例えば、沈殿、膜分離、クロマトグラフィー技術、および溶媒抽出のような技術を用いて達成され得る。
【0049】
−例えば凍結乾燥、スプレー乾燥、多段階乾燥およびロールを用いる乾燥を含む乾燥。
【0050】
−所望の溶媒または溶媒の混合物中での分散。
【0051】
−凝集またはさらに重合。またはそれらのいずれか適切な組み合わせ。
【0052】
また、意図される用途に応じて、ケラチン製品は、1以上の更なる物質、添加剤、成分などと組み合わせまたは混合され得る。そのいくつかの非限定的な例には、顔料、塩、抗微生物剤、洗剤および可塑化剤が含まれる。
【0053】
いずれかそのような更なる加工処理および/またはさらなる成分の添加はまた、最終使用者によっても実施され得ることは明らかである。そしてこのこともまた本発明の範囲に包含される。
【0054】
本発明のさらなる側面は、上記本発明による方法により入手されたか入手可能なケラチンを含む組成物に関する。それらの組成物中のケラチンは、(a)その−SH基が部分的に修飾されており、好ましくはケラチンの−SH基の少なくとも10%かつ70%以下が修飾されており、(b)組成物中のケラチンが本明細書で上記特定された分子量分布を有するように部分的に加水分解されていることを特徴とする。
【0055】
別の側面において、本発明は、ケラチンを含む組成物を開示し、その組成物は、少なくとも(a)pH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間、0.05〜0.5Mの硫化ナトリウムの水溶液中にケラチン繊維含有出発物質からケラチンを可溶化させる工程、および(b)好ましくはアルキル化により可溶化されたケラチンの−SH基の10ないし70%を修飾する工程を含む方法で入手可能である(入手される)。
【0056】
一般的に、本発明の生成物は、部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチン分子が、例えば、製品、調製物または組成物中の全成分の少なくとも50wt.%、好ましくは少なくとも80、90、95または99wt.%として主成分を形成するケラチン性(例えば、ケラチン系またはケラチンから誘導された)製品または調製物または組成物として記述され得る。好ましくは、部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチン分子については、製品、調製物または組成物中の全タンパク質の少なくとも50wt.%、好ましくは少なくとも80、90、95または99wt.%を形成する。従って、本発明のタンパク質性製品については、他のタンパク質またはタンパク質構成成分(例えば、加水分解されたかおよび/または修飾されたタンパク質)、加水分解されていないケラチン、低分子量加水分解生成物並びに界面活性剤、塩のような非タンパク質成分および/または汚れのような不純物のようなある種の他の成分を含み得ることを排除しない。しかしながらそれらは、例えば50wt.%未満、好ましくは20wt.%未満、より好ましくは10wt.%未満、さらにより好ましくは5wt.%未満の少量でしか存在しないであろう。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物中のケラチン分子の少なくとも50、60、70、80、または90%は、さらに以下に記載されるように、少なくとも1つの疎水性部分または領域および少なくとも1つ、好ましくは2つの親水性部分または領域を含む。例えば、それらのケラチン分子は、全部で10ないし100アミノ酸残基、好ましくは30ないし100アミノ酸残基を含み得るものであり、その中で、疎水性部分または領域は20ないし40アミノ酸残基を含み、残りのアミノ酸残基は親水性部分または領域を構成する。本発明の好ましい側面において、組成物中のケラチンは、得られる部分的に加水分解されたケラチン分子が(いまだ)、例えば、元のケラチン分子の元からの中央部分(β)から誘導される少なくとも1つの疎水性部分または領域および例えば、元の鎖末端(C)および/または(N)の一方から誘導される少なくとも1つの親水性部分または領域を含むような程度まで加水分解される。そのような部分的に加水分解されたケラチン分子は、模式的構造“A−B”を有すると考えられ得るものであり、その“A−B”において、Aは、一般的に5ないし30アミノ酸残基の親水性部分または領域を表し、Bは、一般的に5ないし40アミノ酸残基の疎水性部分または領域を表す。さらにより好ましくは、本発明においては、ケラチンは、得られる部分的に加水分解されたケラチン分子が(いまだ)、例えば元の鎖末端(C)に由来するものおよび元の鎖末端(N)に由来するもののような親水性部分または領域により両末端に配置される、例えば、元のケラチン分子の元の中央部分(β)に由来する少なくとも疎水性の部分または領域を含むような程度まで加水分解される。この好ましい側面において、部分的に加水分解されたケラチン分子は、模式的構造“A−B−A”を有すると考えられ得るものであり、その“A−B−A”においては、両方のAは、親水性部分または領域(例えば上記定義のような)を表し、Bは、疎水性部分または領域(やはり上記定義のような)を表す。
【0058】
この好ましい構造A−Bまたはさらにより好ましい構造A−B−Aのために、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、分散液、エマルジョン、ゲル、ミセル、ミクロスフェアならびに層もしくは層状構造(限定されないが、単層または二重層を含む)のような多相系を調製もしくは提供するのに有利に用いられ得る。また、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、安定化剤、乳化剤またはより一般的には水性系もしくは有機系であり得るそのような多相系のための配合剤として用いられ得る。限定されないが、(より)完全に加水分解された調製物を含む当該技術で記述された水溶性ケラチンまたはケラチン調製物は、一般的に、そのような用途にとって適していないであろうことは当業者に明らかであろう。
【0059】
本発明による組成物は、しばしば、部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンの水溶液または分散液の形態で存在し得る。そのような溶液または分散液は、好ましくは、リットル当り少なくとも10、20、または40gのケラチンおよび好ましくは、リットル当り60、75または90g以下のケラチンを含むであろう。一般的に、そのような溶液または分散液は、リットル当り約50gのケラチンを含むであろう。好ましくは、それらの溶液または分散液は、化学的および物理的意味の両方で安定である。従って、化学的な意味では、感知し得る、すなわち、好ましくは10、5、1%以上の、ケラチンの(さらなる)分解、修飾および/または酸化が、好ましくは少なくとも1日、1週または一ヶ月の期間にわたって起こらない。物理的な意味では、感知し得る、すなわち、好ましくは10、5、1%以上のケラチンの沈降または沈殿は、好ましくは少なくとも1日、1週または1ヶ月の期間にわたって起こらない。本発明の溶液または分散液を安定化させるために、それ自体当該技術で公知の添加剤が適用され得る。長期の保存またはより簡便な輸送のために、本発明の組成物は、固体状で、好ましくは分散性の非ダスチング(non−dusting)粉末または顆粒の形態で存在し得る。固体形態での配合を補助する添加剤の使用を含む乾燥および/または顆粒化のための通常の技術が適用され得る。
【0060】
本発明のさらなる側面は、ケラチンの供給源としての本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンを用いるケラチン系製品を製造するための方法に関する。本発明の好ましいケラチン系製品は、本発明のケラチンの溶液または分散液を流延することにより製造される。
【0061】
本発明の別の側面は、本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたケラチン系製品に関する。好ましい態様において、ケラチン系製品は、本発明のケラチンの溶液または分散液から流延されたフィルムまたは塗膜である。好ましくは、フィルムまたは塗膜は、15MPaを超える引っ張り強度を有する。フィルムまたは塗膜は、好ましくは、100MPaを超える弾性率および好ましくは10%を超える破断点伸びを有する。
【0062】
本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンは、例えば、本明細書で上記された先行技術で言及された用途を含む当該技術で公知のケラチン系製品のためのいずれの用途でも用いられ得る。一般的に、それらの用途において、本発明のケラチン由来の製品は、限定されないが、機械的安定性のような優れた機械的特性、優れた物理的および化学的安定性、水についての低い溶解性および良好なフィルム形成特性を含む好ましい特性を提供し得る。加えて、本発明のケラチン由来の製品は、水溶性の代わりに水に分散性であるので、例えば、分散液、エマルジョン、ミセル、ゲル、ミクロスフェアまたは他の多相水性系(の調製)においてもまた用いられ得る。従って、本発明のケラチンのいくつかの非限定的な使用には、
−フィルム、塗膜などとしてのもしくはそれらにおける、またはその調製における使用、
−(生分解性)包装材料としてのもしくはそれらにおける、またはその製造における使用、
−例えば、医薬、除草剤、殺虫剤もしくは他の殺生物剤のような農薬、芳香剤、香料などのような活性物質のための徐放系(controlled release system)のような配合物としてのもしくはそれらにおける使用、
−エマルジョン、分散液または他の多相水性系の製剤としてのもしくはそれらにおける使用、
−フィラー、ゲル化剤、バインダー、増量剤(bulking agent)、顆粒化剤、放出剤、母材材料、乳化剤、安定化剤もしくは他の配合剤としての、もしくはそれらにおける使用、
−アンチオキシダントとしての使用、
−抗微生物剤としての使用
が含まれる。
【0063】
それ自体、本発明のケラチンは、例えば、食品で、または一般的に食品工学の分野で、医薬および動物医薬(veterinary product)で、化粧品で、農薬の分野で、接着剤として、塗料または他の被覆物で、包装材料として、洗剤のような洗浄剤として、農業において、用途を見出し得る。考えられる本発明のケラチンのいくつかの具体的な用途には、限定されないが、
−粉末洗剤または他の洗剤のような顆粒、粉末などのための塗膜またはバインダーとしての使用、
−工業用ならびに家庭用の両方のための汎用接着剤としての使用、
−木材、紙、板紙または成型された繊維のためのバインダーまたは接着剤としての使用、
−限定されないが、工業用ならびに家庭用の用途の両方の使用のための水性塗料系および/またはインク/インク系を含む被覆物中のバインダーとしての使用、
−アンチオキシダントとしての使用、
−封入および/または被覆技術における使用、
−例えば、動物の飼料および化粧品における抗微生物剤としての使用
が含まれる。
【実施例】
【0064】
例1:部分的分解をされるかされていない部分的に修飾された分散性ケラチンの調製
1つの比較実験において、シュローイェンらにより記載された手順(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)を用いる。家禽の羽を水と洗剤を用いて洗浄した。洗浄し、乾燥した羽(40g)を、1リットルのトリスバッファー(0.2M、pH9.0)中の2−メルカプトエタノール(125mM)、尿素(8M)およびEDTA(3mM)の水溶液と混合し、1時間攪拌した。溶解していない羽を、チーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。ろ過後、2グラムのモノクロロ酢酸をろ液に加え、pHを9.0で一定に維持した。1時間後、水溶液を透析し、凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて45%であった。この生成物は、修飾されたケラチン−方法1と称される。
【0065】
第2の実験においては、修正された方法、方法2を用いた。方法1と比較すると、方法2は、以下の側面で異なる。
【0066】
1)尿素は用いられない。
【0067】
2)pHはよりアルカリ性である(9.0の代わりに12.5)。
【0068】
3)より高温を用いる(20℃の代わりに60℃)。
【0069】
それらの条件は、加水分解によりケラチンタンパク質の部分的分解をもたらす。洗浄され、乾燥された羽(40g)を1リットルの加熱されたNa2 S水溶液(0.1M、pH12.5、60℃)と混合し、1時間攪拌した。溶解しなかった羽をチーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。20℃への冷却後、2グラムのモノクロロ酢酸をろ液に加え、pHを9.0に設定した(実質的に50%のSH−修飾の収率を得た、50%−修飾されたケラチンと称する)。1時間後、塩酸(2N)を用いてpHを4.2に設定することによりケラチンを沈殿させた。沈殿物を、30分間20,000×gでサーボール(Sorvall)遠心分離機中で遠心分離することにより単離した。試料を上清から採取し、さらなる分析のために凍結乾燥した(さらに修飾されたケラチン上清−方法2と称される)。ケラチンのペレットを酢酸(0.1N、pH4.2)により洗浄し、続いて、水に再懸濁させた。再懸濁されたペレットのpHをNaOH(1N)を用いて7.0に設定し、それらの混合物を凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて40%であった。この生成物は、修飾されたケラチン−方法2と称される。
【0070】
修飾の程度。修飾の程度をシュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているようにDTNB/NTSBアッセイを用いて測定した。修飾されたケラチン−方法1については、54%のシステイン残基が修飾されており、修飾されたケラチン−方法2については、57%のシステイン残基が修飾されていた。
【0071】
図2において、モル質量対溶出体積のプロット(TSK G3000+TSK ガード PWH カラム+UV検出器)を、修飾されたケラチン−方法1、修飾されたケラチン上清−方法2および修飾されたケラチン−方法2について示す。溶出液は、尿素(8M)およびジチオスレイトール(15mM)の水溶液であった。流量は、0.7ml/分であった。それらの溶出条件の下で、全ての残留ジスルフィド結合は還元され、ケラチン(略10,400g/mol)または分解生成物(10,400g/mol未満)のみが観察される。修飾されたケラチン−方法1および修飾されたケラチン−方法2の両方は同様のモル質量分布を有するが、しかしながら、修飾されたケラチン−方法2は、修飾されたケラチン方法1よりもより多くの高いモル質量生成物および低いモル質量生成物を含むことが観察され得る。高いモル質量生成物は、可能的には、例えば、ランチオニン生成により高いpHで起こり得る架橋反応の生成物である。低いモル質量生成物は、分解の結果である。このことは、修飾されたケラチン上清−方法2においてさらによりよく観察され得るものであり、その修飾されたケラチン上清−方法2は、主として3,000ないし10,000g/molの多量の低いモル質量生成物を含む。
【0072】
方法1で用いられたpHは決して9.0より高くならないので、SEC−MALLS分析を用いて確認されたように、ポリペプチド鎖の分解は起こりにくい。方法2においては、高い温度および強力なアルカリ性pHは、ケラチンの部分的分解を引き起こす。
【0073】
例2:様々の修飾度を有する部分的に分解されたケラチンの調製
家禽の羽を水と洗剤を用いて洗浄した。洗浄し、乾燥した羽(60g)を1.5リットルの加熱された(NH4 )2 S水溶液(0.1M、pH12.5、60℃)と混合し、1時間攪拌した。溶解していない羽をチーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。ろ液中のケラチン収率は、100%ケラチン出発材料(羽)に基づいて59.5%であった。20℃への冷却後、ろ液をそれぞれ500mlの3部分に分割した。1つの部分にはモノクロロ酢酸を添加せず、pHを9.0に設定し(本質的に修飾されていないケラチンを獲得した、修飾されていないケラチンと称する)、第2の部分には1グラムのモノクロロ酢酸を加え、pHを9.0に設定し(本質的に50%のSH−修飾を獲得した、50%−修飾されたケラチンと称する)、第3の部分には5グラムのモノクロロ酢酸を加え、pHを9.0に設定した(本質的に90%のSH−修飾を獲得した、90%−修飾されたケラチンと称する)。1時間後、ケラチンを、塩酸(2N)を用いてpHを4.2に設定することにより沈殿させた。沈殿物を30分間20,000×gでサーボール遠心分離機中で遠心分離することにより単離した。試料を、分析のために上清から採取した。ケラチンペレットを酢酸(0.1N、pH4.2)により洗浄し、次いで、水に再懸濁した。再懸濁されたペレットのpHをNaOH(1N)を用いて7.0に設定し、それらの混合物を凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて修飾されていないケラチンについて46.5%、50%−修飾されたケラチンについて48.9%、および90%−修飾されたケラチンについて20.8%であった。
【0074】
修飾の程度。修飾の程度をシュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているようにDTNB/NTSB−アッセイを用いて測定した。修飾されていないケラチンについては、1.0%のシステイン残基が修飾されており、50%修飾されたケラチンについては、53%のシステイン残基が修飾されており、90%−修飾されたケラチンについては、89%のシステイン残基が修飾されていた。
【0075】
溶解性
凍結乾燥したケラチン生成物を室温で4種類のバッファー中で懸濁した(5%)。
【0076】
1.水。
【0077】
2.トリス緩衝水溶液(50mM)−pH8.0:アルカリ性のpHはケラチンを懸濁する働きをする。
【0078】
3.尿素(8M)−pH8.5:尿素を、共有結合していないケラチンの凝集を防止するために加える。
【0079】
4.尿素(8M)+2.5g/リットル ジチオスレイトール(DTT)−pH8.5:DTTをジスルフィド結合を還元するために加える。
【0080】
修飾されていないケラチンは、バッファー4中で完全に溶解する(図3)。それは、他のバッファーの中では白色のゲルを形成する。50%−修飾されたケラチンは、バッファー3および4について可溶性である(図4)。それは、他のバッファーの中では白色のゲルを形成する。バッファー2を40℃に加熱すると濁った分散液を得る。90%−修飾されたケラチンは、全てのバッファーで可溶性または分散性である。バッファー1および2はいくらか濁ったままである(図5)。
【0081】
フィルム形成
溶液流延によりフィルムを製造するために、水による良好な分散液または溶液が必要である。修飾されていないケラチンからフィルムを製造することは不可能であった。50%修飾されたケラチンからは、5%−分散液をグリセロール(0.30g/gケラチン)と混合し、ペトリ皿の中で流延した。乾燥後、強力なフィルム(引っ張り強度15MPa)を獲得し、そのフィルムは室温で水には溶解しなかった。90%−修飾されたケラチンからは、同様のフィルムを調製した。このフィルムは低劣な機械的特性(引っ張り強度<5MPa)を有し、水に可溶性であった。
【0082】
接着特性
50%−修飾されたケラチンは、良好な接着特性を有し、紙をガラスに粘着させるのに特に適しており、これは、しばしばビール瓶のために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(A)ケラチン分子、(B)重合したケラチンユニットからなるミクロフィブリル(微小繊維)および(C)ミクロフィブリル内の分子間および分子内ジスルフィド結合の模式的表現。
【図2】サイズ排除カラムについての3種の異なる修飾されたケラチン調製物のモル質量対溶出体積のプロット。
【図3】様々の溶液中での修飾されていないケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
【図4】様々の溶液中での50%修飾されたケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
【図5】様々の溶液中での90%修飾されたケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
【0001】
本発明は、ケラチンから誘導される新規な製品に関する。特に本発明は、家禽の羽のような天然起源のケラチンおよびケラチン繊維から誘導される製品に関する。本発明はまた、そのようなケラチン誘導製品の調製のための方法およびそのようなケラチン誘導製品の使用にも関する。
【発明の背景】
【0002】
羽は、養鶏業の重要な廃材であり、年間に世界中で約400万トンが生産されている。その少量は、例えば、被服、断熱および寝具に用途が見出され、より多くの量が動物の飼料の製造のための羽毛粉の製造に用途が見出されているけれども、そのような多量の羽のための(経済的に意味のある)十分な用途は、現在のところ存在しない。環境上の理由のために、羽を燃やしたり埋めたりすることは常に実際的な代替策ではない。その廃物の羽の量は、養鶏業のような産業にとって困難な処分上の問題を提起する。
【0003】
従って、廃物の羽のある程度経済的に実現可能な用途を提供すること並びに廃物の羽がそのような用途に用いられ得る方法を提供することが本発明の一般的目的である。
【0004】
羽は主に、ケラチンと呼ばれる繊維性たんぱく質材料から成り立っている。ケラチンは、ほぼ10kDaの分子量を有する水に不溶性で耐プロテアーゼ性のタンパク質である。図1で示されるように、それぞれのケラチン分子−図1で(A)として示される−は、結晶性β−シートを形成する中央部分(β)およびそれぞれ(N)および(C)として示される2つのランダムな形態の鎖末端からなる。羽の中で、多数のケラチンの中央部分(β)は、直径約30オングストロームのいわゆるミクロフィブリル(B)を形成するように結合する。鎖末端(C)および(N)は、ジスルフィド結合した二量体アミノ酸(シスチン)の形態で鎖間および鎖内架橋(C)を含み、ミクロフィブリルが埋め込まれている非晶質のマトリックスを形成する。羽の中のタンパク質のジスルフィド結合(C)および分子組織は、不溶性とほとんどのタンパク質分解酵素に対する耐性を与える。
【0005】
ケラチン、ケラチン加水分解物、およびケラチンに由来する製品ならびにその調製と利用に関連する先行技術はすでに膨大な量で存在する。特に、化粧品産業と繊維産業は、毛髪の整髪と羊毛の改変のためのケラチン誘導体製品に関心を持っている。加水分解されたケラチンを有するシャンプーおよびネイルポリッシュは、ケラチンを利用する先行技術の製剤の適当な例である。たとえ、それらの用途が多数でも、それらは、基本的には、成分の1つとしてほとんど加水分解されたケラチンを用いる製剤製品である。そのような製品は小さな付加価値しか有さず、有用性も限られている。
【0006】
ケラチンがフィルムまたは塗膜中でポリマーとして用いられる先行技術は、本発明者の一人の学位論文(非特許文献1)中のこの技術の概論部から明らかであるようにはるかに不十分である。一般的には、その参考文献中に記載されている方法によれば、不溶性ケラチンはその天然源から抽出され、例えば、水性媒体中で可溶化される。通常、そのような抽出/可溶化は少なくともジスルフィド結合(C)の分裂を伴い、このことはミクロフィブリル(B)を分裂させて分離したケラチン分子(A)を提供する。用いられる条件に依存して、抽出/可溶化もまたケラチン分子(A)それ自体の加水分解/分解、すなわち、ケラチン分子(A)を形成するアミノ酸間のペプチド結合の開裂を伴い得る。報告されているところでは、ジスルフィド結合の分裂は、スルホン酸基を形成するための有機過酸によるジスルフィド結合の酸化により、S−スルホネート基を形成するためのジスルフィド結合のスルフィト分解により、または2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)またはジチオエリスリトールのようなチオール化合物によるジスルフィド結合の還元により、または硫化ナトリウム溶液のようなアルカリ金属硫化物による処理により達成されてきた。一般的に、先行技術の方法の目的は、例えば、ケラチンの溶液またはケラチン加水分解物のような水性媒体中に可溶性であるケラチン誘導体生成物を提供することである。この目的のために、先行技術は、結合の再生(reformation)および/またはアルカリ金属水酸化物、尿素、塩酸グアニジン、2−メルカプトエタノールまたはチオグリコレートのようなケラチンを溶液中に維持するかまたはケラチン溶液を安定化させるための特定の添加剤の使用を回避するように、分裂したジスルフィド結合の修飾を記述する。
【0007】
例えば、特許文献1は、Na2 S溶液のようなアルカリ金属硫化物溶液を用いてケラチンを羽から抽出する方法を記述する。このようにして得られたケラチン溶液は、ついで、Na2 SO3 のようなアルカリ金属亜硫酸塩により処理され、その後、タンパク質は酸沈殿される。沈殿したケラチンは、次いでアルカリ水溶液中で可溶化され、次いで、例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムまたは過酢酸もしくは過ギ酸のような有機過酸のような水溶性酸化剤を用いて酸化される。このことはシスチン/システイン残基をシステイン酸基に酸化するものと思われる。しかしながら、そのようにして得られたケラチンは本質的に完全に修飾される。すなわち、全ての遊離のシスチン/システイン残基は、システイン酸基に酸化される。結果として、完全に修飾されたケラチンは、一般的に水に可溶性であり、それゆえ、例えば、塗膜における用途および以後本明細書で言及される他の用途のために水に不溶性のフィルムを提供するのにはあまり適していない。また、特許文献2は、例えば、ケラチンの少なくとも70%の遊離の−SH基の本質的に完全な修飾を記述する。
【0008】
対照的に、特許文献3は、シスチン/システイン基が本質的に修飾されないで残る硫化ナトリウムを用いるケラチンの可溶化のための方法を記述する。ケラチンは、アルカリ金属硫化物溶液を用いて再び抽出され、アルカリ金属亜硫酸塩溶液により処理され、次いで、酸沈殿される。得られるタンパク質生成物は、水−アルコール混合物中に分散するものとして記載され、フィルムおよび塗膜を調製するために用いられ得る。特許文献3は、また、メルカプトエタノール−アルコール−水混合物による処理、またはアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ性メルカプトエタノール−アルコール−水混合物による処理を含む、羽ケラチンを抽出し、可溶化させるための代替方法も記載している。しかしながら、特許文献3によれば、シスチン/システイン基は、本質的に修飾されないままである。本質的に修飾されていないシスチン/システインを有する過ヨウ化されたケラチンの主たる欠点は、それが所望の機械的特性を有するケラチン系製品、特にフィルムと塗膜を製造することを可能としないという点にある。特に、そのようなフィルムの欠点はもろさである。
【0009】
今まで言及された技術のほとんどは、1960年代後期から1970年代初期にさかのぼる。にもかかわらず、30年前には、それらの参考文献は、そこに開示されているケラチン由来の製品の広範な使用をもたらさなかった。これはおそらく、記載された製品と方法が、−彼らが廃物の羽を出発材料として用いていると言う事実にもかかわらず、−経済的に実用的でないためであり、および/または得られたケラチン製品が実際の(例えば、商業的な)使用にとって必要とされる特性を示さないためである。
【0010】
それらの問題の一部は、本発明者の一人の学位論文(非特許文献1)で対処されている。その論文は、濃縮された尿素水溶液中で、かつ2−メルカプトエタノールの存在下で、モノヨードアセトアミド、モノヨード酢酸またはモノブロモコハク酸を用いての無傷形の羽ケラチンの部分的修飾(すなわちアルキル化)により得られるケラチン由来の製品を記載する。ケラチンは、残留遊離−SH基の量に基づいて計算して25ないし87%に渡る修飾度まで修飾された。この部分的な修飾は、本質的に無傷形で(すなわち、加水分解されていない)部分的に修飾されたケラチンの安定な分散液を提供し、そのケラチンは、所望の熱特性と機械的特性を有する強力なフィルムに流延するために用いることができた。しかしながら、部分的修飾のための本質的に無傷形のケラチンの抽出と可溶化は、尿素および2−メルカプトエタノールのような化学物質の高濃度の使用を要求する。実験室規模でのそれらの化学物質の使用は許容し得る。しかしながら、その大規模な使用は経済的に実現不可能である。と言うのは、それらの化学物質の使用は高価であり、また、環境上の観点でも、それらの化学物質の使用に伴う使用上の危険の観点でも、費用のかかる予防措置が必要だからである。
【特許文献1】
US−A−3,464,825
【特許文献2】
FR2522657
【特許文献3】
US−A−3,642,498
【非特許文献1】
P.Schrooyen:「羽のケラチン:改変とフィルム形成」,1999,トウェンテ大学院大学(Thesis University of Twente)、エンスケーデ、オランダ したがって、羽のようなケラチン含有(廃棄)材料の加工処理のための経済的に実行可能な方法についての必要性がいまだ存在する。その方法は、実際の/商業的用途にとって許容可能な特性を有するある範囲のケラチン系製品、特にフィルムと塗膜を提供するために用いられ得る。
【発明の説明】
【0011】
このたび、よりすぐれたケラチン系製品が、ケラチン分子の、通常には加水分解による部分的分解(partial degradation)と遊離−SH基、すなわち、ジスルフィド結合(C)の開裂により生じる遊離の−SH基の部分的修飾の組み合わせを含む方法により獲得され得ることが見出された。特に、本発明は、限定されないが、以下で検討される事柄を含む、水に分散性であり、広範な用途で用いられ得る、そのような部分的に分解され、部分的に修飾された製品を提供する。そのような水に分散性で、部分的に分解され、部分的に修飾されたケラチン系製品は、当該技術ではこれまで記述されてこなかった。
【0012】
すなわち、第1の側面において、本発明は、部分的に修飾され、部分的に分解されたケラチンを製造するための方法に関する。その方法は、(a)アルカリ性pHで還元剤を用いて水溶液中でケラチン繊維含有出発材料からケラチンを可溶化させる工程および(b)可溶化されたケラチンの−SH基を部分的に修飾する工程を含む。好ましくは、工程(a)および/または(b)の条件は、可溶化されたケラチンがさらに以下で特定される程度まで部分的に加水分解され、または部分的に分解するような条件である。任意に、更なる工程(c)を、所望の程度までケラチンを加水分解するために用いることができる。
【0013】
ケラチン繊維含有出発材料については、ケラチン繊維のいずれの適切な供給源も用いることができる。特に、例えば、毛髪、羽、ひづめ、爪、角などのようなケラチン繊維の天然の供給源を用いることができる。好ましくは、少なくともβ−ケラチンを含むケラチン繊維の供給源が用いられる。羽、特に、例えば養鶏業からの廃棄物として得られるようなニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウまたは他の家禽の羽は、特に好ましい出発材料である。ケラチン繊維のそれらの供給源は、例えば、通常(乾燥した羽に基づいて)全重量の5%未満の量の少量の他のタンパク質および/または脂肪もしくは血液のような他の成分を含み得る。一般的にはその存在は許容され得るし、さもなければ、それらの非ケラチン成分の一部または全部を工程(a)の可溶化の前に除去することができる。ケラチン繊維含有出発材料は、好ましくは、例えば、清浄化、洗浄、分級、脱脂、切断、粉砕、破砕、乾燥、またはそれらのいずれかの組み合わせのような1以上の予備処理を受ける。そのような予備処理は出発材料の操作を容易にし得るし、そのことはケラチンの可溶化のような更なる加工処理工程の効率を向上させ得るし、および/または最終的なケラチン系製品の品質を向上させ得る。代わりに、羽毛粉ならびにすでに単離されたケラチンまたはケラチン繊維(しかしながら、それらは経済的理由のために通常あまり好ましくないであろう)のようなすでに予備加工されたケラチン含有出発材料を用いることもできる。いずれの更なる予備処理無しでも可溶化工程a)で直接ケラチンまたはケラチン繊維の天然の供給源、例えば羽を用いることもまた本発明の範囲に包含される。
【0014】
アルカリ性pHでの可溶化のための還元剤は、硫化物、チオール、ボリックハイドライド(boric hydride)およびホスフィン、またはそれらの組み合わせから選択することができる。好ましい硫化物は、硫化ナトリウムのようなアルカリ金属硫化物である。より低いアルカリ性pHでは、例えば、10、9.5または9.0未満のpHでは、硫化アンモニウムもまた、可溶化のための還元剤として用いることができ、その使用は、最終製品中の塩の残留を回避させる。好ましいチオールは、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノールおよびチオグリコレートであり、好ましいホスフィンは、トリ−n−ブチルホスフィンである。
【0015】
可溶化の条件、すなわち、ケラチン繊維含有出発材料、還元剤および緩衝剤の濃度、並びにpH、温度および可溶化の続行時間は、好ましくは、満足な収率の可溶化されたケラチンが得られる、好ましくは、ケラチン繊維含有出発材料中のケラチンの少なくとも10、20、30、40、50または60%が可溶化されるように選択される。さらに好ましくは、可溶化の条件は、可溶化されたケラチンが以下でさらに特定される程度まで部分的に加水分解するかまたは部分的に分解するように選択される。
【0016】
好ましくは、(水性)可溶化媒体1リットル当り少なくとも10gのケラチン繊維含有出発材料が可溶化され、好ましくは(水性)可溶化媒体1リットル当り100g以下のケラチン繊維含有出発材料が可溶化される。通常、(水性)可溶化媒体1リットル当り20ないし60gのケラチン繊維含有出発材料が可溶化される。
【0017】
(水性)可溶化媒体中の還元剤、例えば、アルカリ金属硫化物または硫化アンモニウムの濃度は、好ましくは、0.05Mないし1.0Mである。代わりに、2−メルカプトエタノールと水酸化ナトリウムの組み合わせを用いると、2−メルカプトエタノールは、0.1ないし1.0Nの水酸化ナトリウムと組み合わせて0.1Mないし1.5Mの濃度で用いられる。
【0018】
ケラチンが可溶化されるpHは、アルカリ性である、すなわち、pH7.0より大きい。しかしながら好ましくは、可溶化は、少なくともpH8.0、8.5、9.0、9.5であるアルカリ性pHで実施され、しかしながらより好ましくは、pHは、少なくともpH10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、または12.5以上である。というのは、少なくともpH10.0以上のpHでは、硫化物の解離平衡は、S2-に向かって移行し、S2-は、HS- より強力な還元剤であるからである。好ましくは、pHは、pH13.5以下である。
【0019】
ケラチンが可溶化される温度は、好ましくは、少なくとも20℃である。しかしながら、好ましくは、少なくとも30、40、50、60、70または80℃のような高温が可溶化のために用いられるが、しかし、好ましくは100℃である。
【0020】
ケラチン可溶化工程の続行時間は、主として、可溶化されたケラチンの所望の程度の加水分解が、そのときの可溶化条件の下で達成されるように選択される。典型的には、可溶化は、10分ないし24時間かかるだろう。ケラチンの可溶化の続行時間は、可溶化の収率のためにさらに最適化され得る。従って当業者は、少なくとも所望の程度のケラチンの加水分解および好ましくは可溶化されたケラチンの最高収率を獲得するために、ケラチン可溶化のための条件の設定を経験的に最適化し得る。
【0021】
ケラチンの可溶化に加えて、本発明の方法はさらに、ケラチン中に存在する−SH基を部分的に修飾する工程を含む。一般的には、それらの−SH基は、ケラチン繊維含有出発材料からのケラチンの還元条件の下での可溶化の間に発生し得るケラチン分子中の分子内および分子間ジスルフィド結合(C)の開裂により生じる遊離の−SH基であろう。従って、通常は、遊離の−SH基は、システイン残基であろう。遊離の−SH基の部分的修飾は、一般的に、−SH基の他の官能基への、例えば、限定されないが以下に言及される1以上の官能基を含む官能基への化学的変換を伴う。修飾の1つの目的は、そのことが、修飾された−SH基が可溶化されたケラチン分子での分子内および分子間ジスルフィド結合を(再)生成させることを排除し、それにより不溶性のケラチン凝集物の生成を回避または少なくとも減少させることである。他方、−SH基の部分的修飾は、残りの遊離システイン残基が、例えば架橋のためのおよび/または重合のためのジスルフィド結合の(再)生成のような更なる反応のために有用であることを意味し、それらの反応は、機械的強度および/または化学的または物理的影響に対する抵抗のような、最終生成物に所望の特性を付与するために用いることができる。本質的に完全な修飾と比較しての部分的修飾のいくつかの更なる利点には、そのように得られたケラチンは、例えば、被覆物としての用途のためのおよび以下言及される他の用途のための水に不溶性のフィルムを提供するのにより適していることが含まれる。比較により、上記US−A−3,464,825に記載されたもののような完全に修飾されたケラチンは、一般的に水溶性である。可溶化されたケラチンの遊離の−SH基の部分的修飾は、主として用いられる官能基に依存するそれ自体公知の多数の方式で達成され得る。非限定的な例により、遊離の−SH基を部分的に変換するためのいくつかの適切な官能基ならびに条件が、以下に言及されている。
【0022】
本発明の方法では、可溶化されたケラチンの部分的修飾は、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、そして最も好ましくは40%が修飾されるものであり、同時に、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の70%未満、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下および最も好ましくは57%以下が修飾されるものである。最終的には、可溶化されたケラチン中の全ての遊離の−SH基の修飾の程度は、約50%、すなわち、44ないし56%が好ましい。ケラチン中の残りの−SH基は、修飾されず、したがって、得られた部分的に修飾された生成物中にそのまま、または再生成したジスルフィド結合(これは、例えば以下に記載の修飾の程度を計算する目的のためには、2つの遊離の−SH基に等価とみなされ得る)として存在する。
【0023】
修飾の程度は、限定されないが、用いられる官能化剤、反応時間、温度、pH、用いられる溶媒、それぞれの反応物質の濃度、およびケラチン材料の濃度を含む修飾反応の条件を適切に選択することにより制御され得る。所望の修飾度を有する最終製品をもたらし得る特定の条件の選択は、何度かの予備実験および/または何回かの試行錯誤を必要とするかもしれないと考えられる。しかしながら、本明細書の開示に基づき、このことは当業者の容易に到達できる範囲にあり、それゆえ、本発明の範囲に包含されるとみなされるべきである。
【0024】
修飾は、−SH基を修飾するために用いられる基に依存してそれ自体公知の方式で実施され、この修飾は、例えば可溶化のようないずれか更なる加工処理工程と組み合わせられる。適切な条件は、0.01Mないし1Mの官能化剤の濃度で、7.0ないし10.0のpHで、4℃ないし20℃の温度で、10分ないし24時間の時間で、100mlの水性加水分解媒体あたり2gないし10gの可溶化されたケラチンの濃度での水または水性媒体の使用を含み得る。約50%の修飾度でのモノクロロ酢酸による修飾のための好ましい条件は、例えば、0.5〜5gのモノクロロ酢酸を有する1リットルの体積中の10〜30gの可溶化されたケラチンについて、30〜90分間、8.5ないし9.5のpHで、10〜20℃の温度でのインキュベーションである。
【0025】
修飾度は、修飾後に残留する遊離の−SH基(存在するジスルフィド結合の量を含む)の量を修飾前の遊離の−SH基(ジスルフィド結合を含む)の量と比較することにより定量され得、その場合、ケラチン調製における遊離の−SH基/ジスルフィド結合の量は、シュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているDTNB/NTSBアッセイのような適切な検定法を用いて定量され得る。代わりに、修飾後に残る遊離の−SH基および/ジスルフィド結合の量はまた、ケラチン中の−SH基/ジスルフィド結合の量についての理論値に比較され得る。(存在するシスチン/システイン残基の量に基づいて)生の(native)ケラチン中の−SH基/ジスルフィド結合の理論量は、700μmolシステイン基/gケラチンである(ちなみにシスチン基の量はその量の半分である)。
【0026】
−SH基は、−SH基の官能化にとっておよび/またはケラチンの官能化にとって適したいずれか所望の官能基により、または2以上のそのような基の適切な組み合わせにより修飾され得る。選択される特定の官能基およびそのそれぞれの量は通常、最終生成物の所望される特性に依存するであろう。
【0027】
従って、本発明のケラチンは、1以上の負に荷電した官能基、1以上の正に荷電した官能基、および/または1以上の中性の官能基、またはそれらの適切な組み合わせを備え得る。この点で、「正に」および/または「負に」荷電した基が、適切な対イオン、すなわち、アニオン(性基)またはカチオン(性基)のそれぞれと結合し得ることは当業者に明らかであろう。本明細書で記載される「正に」または「負に」荷電する官能基により担持される実際の電荷はまた、pH、溶媒、その他のようなケラチンが存在する/維持される条件にもまた依存し得ることもまた明らかであろう。しかしながら一般的に、6.0から8.0の範囲のpHでは、「正に」荷電した基は正味の正の電荷を有し、「負に」荷電した基は、正味の負の電荷を有し、そして、「中性の」基は、本質的にゼロの正味の電荷を有する。
【0028】
好ましくは、既述の官能基は、少なくとも有機化合物を−SH基と反応させる基または残基を含む1以上の飽和または不飽和有機化合物を用いて導入され得る。それらには、限定されないが、ハロゲン(クロロ−、ブロモまたはヨード−)、エポキシド−またはグリシジル−基のような適切な脱離基(leaving group)または(メタ)アクリル、ビニルのような不飽和基が含まれ得るものであり、他の適切な基は当業者に明らかであろう。遊離の−SH基と反応し得る基の他に、それらの有機化合物はまた、−COOH基のような負の電荷を備え得るかまたは限定されないがアルキル化アミン基を含む第4級アミン基のような正の電荷を備え得る1以上の更なる基も含み得る。従って、例えば、ケラチンは、負に荷電する基、例えば、
−クロロ酢酸、ヨード酢酸およびブロモ酢酸のようなハロゲン化酸、
−スルホネート基を生成させる過酸化水素または限定されないが過ギ酸または過酢酸を含む過酸化有機物のような過酸化物、
−COOH基を含むビニル化合物のような負に荷電した基を含む不飽和有機化合物、
−グリシジル化合物、
またはそれらのいずれか適切な組み合わせを用いて導入され得るものにより修飾され得る。
【0029】
通常、そのような負に荷電した基を有する部分的に加水分解されたケラチンを部分的に修飾することは、ケラチンの分散性を高め得る。
【0030】
正に荷電した官能基は、例えば、
−ハロゲン化アルキルアミンのようなハロゲン化有機アミン
−グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドのようなアミン基を有するグリシジル化合物
またはそれらの適切な組み合わせを用いて導入され得る。
【0031】
中性の官能基は、例えば、
−ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化エーテル、エステルまたはアミドのようなハロゲン化有機化合物、
−アルキルグリシジル化合物のようなグリシジル化合物、
−アルキルビニル化合物のようなビニル化合物
またはそれらの適切な組み合わせを用いて導入され得る。
【0032】
他の適切な官能化化合物は、例えば、FR2522657に記載されている。ケラチンはまた、例えば、S−スルホネート基を生成させるための亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩を用いて、または他の無機化合物を用いても修飾され得る。
【0033】
例えば可溶化混合物に官能化剤を加えることにより修飾工程を可溶化工程と組み合わせることは簡便であろう。可溶化および修飾後、ケラチン誘導生成物は、その意図される最終用途にとってすでに適切であろうし、従って、例えば、それ自体最終使用者に販売または提供され得る。
【0034】
本発明の方法において、可溶化および/または修飾の条件は、好ましくは可溶化されたケラチンが部分的に加水分解または分解されることである。部分的加水分解−また、部分的「分解」とも称される−は、一般的に、ケラチン分子を形成するアミノ酸間のペプチド結合の(一部の)開裂を含む。部分的加水分解は、可溶化および/または修飾の間に達成され得る。しかしながら、もし可溶化および/または修飾が可溶化されたケラチンの所望の程度の部分的加水分解を創出しない場合には、更なる加水分解または分解を、例えば、化学的加水分解、物理的加水分解および/または酵素的加水分解を含む当該技術でそれ自体公知のいずれかの方式により達成し得る。
【0035】
可溶化されたケラチンの加水分解の程度は、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたケラチン系製品が必要とされる物理的および化学的特性を有するほどである。例えば、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたフィルムまたは塗膜は、好ましくは15MPa、より好ましくは16、17、18または20MPaを超える引っ張り強度を有する。フィルムは、好ましくはまた、少なくとも100MPaの、より好ましくは150、200、250または300MPaを超える弾性率も有する。フィルムはまた、少なくとも10%の、より好ましくは20、30、40または50%を超える破断点伸びも有する。そのような物理化学的特性を有するケラチン系製品を製造することを可能とする可溶化されたケラチンの加水分解の程度は、本発明の方法で得られた可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンの分子量の分布により定義され得る。従って、可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンの分子量の分布は、以下のとおり規定され得る。
【0036】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、本質的に1ないし10.4kDa、特に3ないし10.4kDaの分子量を有し、その場合、本質的には、部分的に加水分解されたケラチン画分中に存在する全ケラチン分子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%が上記範囲の分子量を有することを意味すると理解される。
【0037】
−好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも1%は10kDa未満の分子量を有する。加えて、好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも50%は5kDaを超える分子量を有する。より好ましくは、可溶化されたケラチンの少なくとも3、5、7、10または15%は10kDa未満の分子量を有し、その場合、可溶化されたケラチンの少なくとも60、70、80、90または95%は、5kDaを超える分子量を有する。および/または
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、40グラムの清浄化された乾燥した家禽の羽をpH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間1リットルの0.05〜0.5M硫化ナトリウムの水溶液中で可溶化させたときに得られる可溶化されたケラチンの分子量の分布に本質的に等しい分子量分布を有する。次いで、可溶化されたケラチンは、好ましくは、ろ過により溶解していない出発材料から分離される。より好ましくは、分子量分布は、40グラムの清浄化され、乾燥された家禽の羽をpH11.0ないしpH13.0のpHで、55ないし65℃の温度で、45〜75分間1リットルの0.075〜0.15M硫化ナトリウム水溶液中で可溶化させたとき得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい。最も好ましくは、分子量分布は、40グラムの清浄化され、乾燥された家禽の羽がpH12.5で、60℃の温度で、45〜75分間1リットルの0.1M硫化ナトリウムの水溶液中に可溶化されるとき得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい。
【0038】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、25℃で可溶化されたケラチンの1%(w/v)溶液が1mPa.sないし100mPa.s、好ましくは1mPa.sないし20mPa.sの粘度を有する程度の分子量分布を有する。粘度は、例えば、ウッベローデ(Ubbelohde)粘度計で測定され得る。
【0039】
−可溶化され、部分的に加水分解されたケラチンは、好ましくは、可溶化されたケラチンが1%ないし50%、好ましくは10%ないし30%の水中分散性を有する分子量分布を有する。ケラチンの分散性とは、ここでは、ケラチンが調製後24時間以内にほとんど或いはまったく沈殿物を示さない安定な分散液を形成することが可能であると言うように定義される。
【0040】
加水分解の程度は、限定されないが、用いられる反応物質(例えば、化学的分解のための)、用いられる力/装置(例えば、物理的分解のための)、用いられる酵素(例えば酵素分解のための)、加水分解の時間、温度、pH、用いられる溶媒、それぞれの反応物質の濃度、ケラチン材料の濃度、ケラチン材料が提供される方式(例えば、本明細書で以下記載される適切な予備処理後)、用いられるいずれかの攪拌または振動および/または可溶化、修飾の間および/またはそれぞれ別々の間加水分解がなされるかどうかを含む加水分解反応の条件を適切に選択することにより制御され得る。所望の程度の加水分解を提供し得る、−それにより部分的修飾およびいずれか更なる加工処理と結びついて例えば下記の所望の特性を有する最終製品をもたらす−特定の条件の選択は、どれほどかの予備実験および/またはある程度の試行錯誤を必要とし得ることが考えられる。しかしながら、本明細書の開示に基づけば、このことは当業者の容易に到達し得ることであり、それゆえ、本発明の範囲に包含されるとみなされる。
【0041】
加えて−または代わりに−加水分解の程度は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、調製物の粘度の定量、調製物の分散性の定量、タンパク質末端基の量の定量、またはそれらのおよび他の適切な技術のいずれかの組み合わせにより加水分解された断片の分子量またはその分布の分析を含むいくつかの方法で定量され得る。
【0042】
用いられる条件に依存して、本質的に上記範囲内にある分子量を有する部分的に加水分解されたケラチンの画分または調製物は、部分的加水分解の結果として直接獲得され得る。しかしながら、そのような画分または調製物を提供するために、ある程度の量の−本質的には全部まで−高分子量成分がいまだ存在し、(例えば、いずれか残留し、溶解していない出発材料)および/またはある程度の量の−本質的には全部まで−加水分解反応の間に生成した低分子量分解生成物が、例えば、加水分解および/または修飾後のいずれか更なる加工処理の一部として加水分解された画分または調製物から除去され得ることもまた本発明の範囲内にある。
【0043】
また、本発明によれば、可溶化されたケラチンは、例えば、上記範囲を超える分子量を有する凝集物を形成し得る。それらの凝集物を形成するケラチン由来の分子が本質的に上記範囲にある分子量を有する限り、そのような凝集並びに得られる凝集物は本発明の範囲内にある。
【0044】
さらに、上記範囲を超える分子量を有する生成物がやはり形成され得るケラチン誘導生成物のある程度の重合が起こる(例えば、部分的加水分解、部分的修飾および/または更なる加工処理の後)こともまた可能である。やはり、ポリマー構造を形成するために組み合わさるケラチン由来の分子が本質的に上記範囲内にある分子量を有するならば、そのような重合ならびに得られるポリマー生成物もまた本発明の範囲内にある。
【0045】
先行技術の本質的に無傷形のケラチンと比較して、本発明の部分的に加水分解され/修飾されたケラチンは、有利には、より疎水性の特性および/または低い表面張力を有するケラチンが要求される用途で特に用いられ得る。このことは、本発明の部分的に加水分解されたケラチンがフィルムまたは塗膜として応用されるとき有益であろう。本発明の部分的に加水分解されたケラチンはまた、本質的に無傷形のケラチンと比較してより優れた接着特性も有する。それらの接着特性は、例えば、(ビール)壜上にラベルを固定する際に用いるときガラスに紙を粘着させる上で有利に適用され得る。先行技術の本質的に無傷形のケラチンに比較して、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、該部分的に加水分解されたケラチンがより両親媒性であるので、よりすぐれた乳化特性(emulgating properties)を有する。部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチンを用いることの更なる利点は、部分的に加水分解されたタンパク質の潜在的に向上した抗微生物効果に存在する。このことは、乳清タンパク質ラクトフェリンの加水分解生成物であるラクトフェリシンについて立証されている。部分的修飾により、向上した抗微生物効果を有するケラチンペプチドはさらにジスルフィド結合形成により良好な機械的強度を有するフィルムに組み込まれ得るものであり、新世代の抗微生物塗膜をもたらす。
【0046】
本発明の更なる任意の側面において、可溶化され、部分的に修飾されたケラチンは、更なる加工処理工程に供され得る。それは例えば、以下を含む。
【0047】
−例えば、得られたケラチン生成物から望ましからぬ成分および/または物質を除去するための更なる精製。それらは例えば、残留ケラチン出発材料、高分子量ケラチン成分、低分子量ケラチン成分、反応物質、および/または加工処理工程のいずれかからの副生成物、および/または他の不純物または望ましからぬ成分を含み得る。そのような成分または物質を除去するための適切な技術には、例えば、洗浄、沈殿、透析、ろ過および遠心分離が含まれる。
【0048】
−ケラチン由来の生成物、および/またはいずれか特定の部分もしくはその画分の単離。これは、例えば、沈殿、膜分離、クロマトグラフィー技術、および溶媒抽出のような技術を用いて達成され得る。
【0049】
−例えば凍結乾燥、スプレー乾燥、多段階乾燥およびロールを用いる乾燥を含む乾燥。
【0050】
−所望の溶媒または溶媒の混合物中での分散。
【0051】
−凝集またはさらに重合。またはそれらのいずれか適切な組み合わせ。
【0052】
また、意図される用途に応じて、ケラチン製品は、1以上の更なる物質、添加剤、成分などと組み合わせまたは混合され得る。そのいくつかの非限定的な例には、顔料、塩、抗微生物剤、洗剤および可塑化剤が含まれる。
【0053】
いずれかそのような更なる加工処理および/またはさらなる成分の添加はまた、最終使用者によっても実施され得ることは明らかである。そしてこのこともまた本発明の範囲に包含される。
【0054】
本発明のさらなる側面は、上記本発明による方法により入手されたか入手可能なケラチンを含む組成物に関する。それらの組成物中のケラチンは、(a)その−SH基が部分的に修飾されており、好ましくはケラチンの−SH基の少なくとも10%かつ70%以下が修飾されており、(b)組成物中のケラチンが本明細書で上記特定された分子量分布を有するように部分的に加水分解されていることを特徴とする。
【0055】
別の側面において、本発明は、ケラチンを含む組成物を開示し、その組成物は、少なくとも(a)pH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間、0.05〜0.5Mの硫化ナトリウムの水溶液中にケラチン繊維含有出発物質からケラチンを可溶化させる工程、および(b)好ましくはアルキル化により可溶化されたケラチンの−SH基の10ないし70%を修飾する工程を含む方法で入手可能である(入手される)。
【0056】
一般的に、本発明の生成物は、部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチン分子が、例えば、製品、調製物または組成物中の全成分の少なくとも50wt.%、好ましくは少なくとも80、90、95または99wt.%として主成分を形成するケラチン性(例えば、ケラチン系またはケラチンから誘導された)製品または調製物または組成物として記述され得る。好ましくは、部分的に加水分解され、部分的に修飾されたケラチン分子については、製品、調製物または組成物中の全タンパク質の少なくとも50wt.%、好ましくは少なくとも80、90、95または99wt.%を形成する。従って、本発明のタンパク質性製品については、他のタンパク質またはタンパク質構成成分(例えば、加水分解されたかおよび/または修飾されたタンパク質)、加水分解されていないケラチン、低分子量加水分解生成物並びに界面活性剤、塩のような非タンパク質成分および/または汚れのような不純物のようなある種の他の成分を含み得ることを排除しない。しかしながらそれらは、例えば50wt.%未満、好ましくは20wt.%未満、より好ましくは10wt.%未満、さらにより好ましくは5wt.%未満の少量でしか存在しないであろう。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物中のケラチン分子の少なくとも50、60、70、80、または90%は、さらに以下に記載されるように、少なくとも1つの疎水性部分または領域および少なくとも1つ、好ましくは2つの親水性部分または領域を含む。例えば、それらのケラチン分子は、全部で10ないし100アミノ酸残基、好ましくは30ないし100アミノ酸残基を含み得るものであり、その中で、疎水性部分または領域は20ないし40アミノ酸残基を含み、残りのアミノ酸残基は親水性部分または領域を構成する。本発明の好ましい側面において、組成物中のケラチンは、得られる部分的に加水分解されたケラチン分子が(いまだ)、例えば、元のケラチン分子の元からの中央部分(β)から誘導される少なくとも1つの疎水性部分または領域および例えば、元の鎖末端(C)および/または(N)の一方から誘導される少なくとも1つの親水性部分または領域を含むような程度まで加水分解される。そのような部分的に加水分解されたケラチン分子は、模式的構造“A−B”を有すると考えられ得るものであり、その“A−B”において、Aは、一般的に5ないし30アミノ酸残基の親水性部分または領域を表し、Bは、一般的に5ないし40アミノ酸残基の疎水性部分または領域を表す。さらにより好ましくは、本発明においては、ケラチンは、得られる部分的に加水分解されたケラチン分子が(いまだ)、例えば元の鎖末端(C)に由来するものおよび元の鎖末端(N)に由来するもののような親水性部分または領域により両末端に配置される、例えば、元のケラチン分子の元の中央部分(β)に由来する少なくとも疎水性の部分または領域を含むような程度まで加水分解される。この好ましい側面において、部分的に加水分解されたケラチン分子は、模式的構造“A−B−A”を有すると考えられ得るものであり、その“A−B−A”においては、両方のAは、親水性部分または領域(例えば上記定義のような)を表し、Bは、疎水性部分または領域(やはり上記定義のような)を表す。
【0058】
この好ましい構造A−Bまたはさらにより好ましい構造A−B−Aのために、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、分散液、エマルジョン、ゲル、ミセル、ミクロスフェアならびに層もしくは層状構造(限定されないが、単層または二重層を含む)のような多相系を調製もしくは提供するのに有利に用いられ得る。また、本発明の部分的に加水分解されたケラチンは、安定化剤、乳化剤またはより一般的には水性系もしくは有機系であり得るそのような多相系のための配合剤として用いられ得る。限定されないが、(より)完全に加水分解された調製物を含む当該技術で記述された水溶性ケラチンまたはケラチン調製物は、一般的に、そのような用途にとって適していないであろうことは当業者に明らかであろう。
【0059】
本発明による組成物は、しばしば、部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンの水溶液または分散液の形態で存在し得る。そのような溶液または分散液は、好ましくは、リットル当り少なくとも10、20、または40gのケラチンおよび好ましくは、リットル当り60、75または90g以下のケラチンを含むであろう。一般的に、そのような溶液または分散液は、リットル当り約50gのケラチンを含むであろう。好ましくは、それらの溶液または分散液は、化学的および物理的意味の両方で安定である。従って、化学的な意味では、感知し得る、すなわち、好ましくは10、5、1%以上の、ケラチンの(さらなる)分解、修飾および/または酸化が、好ましくは少なくとも1日、1週または一ヶ月の期間にわたって起こらない。物理的な意味では、感知し得る、すなわち、好ましくは10、5、1%以上のケラチンの沈降または沈殿は、好ましくは少なくとも1日、1週または1ヶ月の期間にわたって起こらない。本発明の溶液または分散液を安定化させるために、それ自体当該技術で公知の添加剤が適用され得る。長期の保存またはより簡便な輸送のために、本発明の組成物は、固体状で、好ましくは分散性の非ダスチング(non−dusting)粉末または顆粒の形態で存在し得る。固体形態での配合を補助する添加剤の使用を含む乾燥および/または顆粒化のための通常の技術が適用され得る。
【0060】
本発明のさらなる側面は、ケラチンの供給源としての本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンを用いるケラチン系製品を製造するための方法に関する。本発明の好ましいケラチン系製品は、本発明のケラチンの溶液または分散液を流延することにより製造される。
【0061】
本発明の別の側面は、本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンから製造されたケラチン系製品に関する。好ましい態様において、ケラチン系製品は、本発明のケラチンの溶液または分散液から流延されたフィルムまたは塗膜である。好ましくは、フィルムまたは塗膜は、15MPaを超える引っ張り強度を有する。フィルムまたは塗膜は、好ましくは、100MPaを超える弾性率および好ましくは10%を超える破断点伸びを有する。
【0062】
本発明の部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンは、例えば、本明細書で上記された先行技術で言及された用途を含む当該技術で公知のケラチン系製品のためのいずれの用途でも用いられ得る。一般的に、それらの用途において、本発明のケラチン由来の製品は、限定されないが、機械的安定性のような優れた機械的特性、優れた物理的および化学的安定性、水についての低い溶解性および良好なフィルム形成特性を含む好ましい特性を提供し得る。加えて、本発明のケラチン由来の製品は、水溶性の代わりに水に分散性であるので、例えば、分散液、エマルジョン、ミセル、ゲル、ミクロスフェアまたは他の多相水性系(の調製)においてもまた用いられ得る。従って、本発明のケラチンのいくつかの非限定的な使用には、
−フィルム、塗膜などとしてのもしくはそれらにおける、またはその調製における使用、
−(生分解性)包装材料としてのもしくはそれらにおける、またはその製造における使用、
−例えば、医薬、除草剤、殺虫剤もしくは他の殺生物剤のような農薬、芳香剤、香料などのような活性物質のための徐放系(controlled release system)のような配合物としてのもしくはそれらにおける使用、
−エマルジョン、分散液または他の多相水性系の製剤としてのもしくはそれらにおける使用、
−フィラー、ゲル化剤、バインダー、増量剤(bulking agent)、顆粒化剤、放出剤、母材材料、乳化剤、安定化剤もしくは他の配合剤としての、もしくはそれらにおける使用、
−アンチオキシダントとしての使用、
−抗微生物剤としての使用
が含まれる。
【0063】
それ自体、本発明のケラチンは、例えば、食品で、または一般的に食品工学の分野で、医薬および動物医薬(veterinary product)で、化粧品で、農薬の分野で、接着剤として、塗料または他の被覆物で、包装材料として、洗剤のような洗浄剤として、農業において、用途を見出し得る。考えられる本発明のケラチンのいくつかの具体的な用途には、限定されないが、
−粉末洗剤または他の洗剤のような顆粒、粉末などのための塗膜またはバインダーとしての使用、
−工業用ならびに家庭用の両方のための汎用接着剤としての使用、
−木材、紙、板紙または成型された繊維のためのバインダーまたは接着剤としての使用、
−限定されないが、工業用ならびに家庭用の用途の両方の使用のための水性塗料系および/またはインク/インク系を含む被覆物中のバインダーとしての使用、
−アンチオキシダントとしての使用、
−封入および/または被覆技術における使用、
−例えば、動物の飼料および化粧品における抗微生物剤としての使用
が含まれる。
【実施例】
【0064】
例1:部分的分解をされるかされていない部分的に修飾された分散性ケラチンの調製
1つの比較実験において、シュローイェンらにより記載された手順(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)を用いる。家禽の羽を水と洗剤を用いて洗浄した。洗浄し、乾燥した羽(40g)を、1リットルのトリスバッファー(0.2M、pH9.0)中の2−メルカプトエタノール(125mM)、尿素(8M)およびEDTA(3mM)の水溶液と混合し、1時間攪拌した。溶解していない羽を、チーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。ろ過後、2グラムのモノクロロ酢酸をろ液に加え、pHを9.0で一定に維持した。1時間後、水溶液を透析し、凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて45%であった。この生成物は、修飾されたケラチン−方法1と称される。
【0065】
第2の実験においては、修正された方法、方法2を用いた。方法1と比較すると、方法2は、以下の側面で異なる。
【0066】
1)尿素は用いられない。
【0067】
2)pHはよりアルカリ性である(9.0の代わりに12.5)。
【0068】
3)より高温を用いる(20℃の代わりに60℃)。
【0069】
それらの条件は、加水分解によりケラチンタンパク質の部分的分解をもたらす。洗浄され、乾燥された羽(40g)を1リットルの加熱されたNa2 S水溶液(0.1M、pH12.5、60℃)と混合し、1時間攪拌した。溶解しなかった羽をチーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。20℃への冷却後、2グラムのモノクロロ酢酸をろ液に加え、pHを9.0に設定した(実質的に50%のSH−修飾の収率を得た、50%−修飾されたケラチンと称する)。1時間後、塩酸(2N)を用いてpHを4.2に設定することによりケラチンを沈殿させた。沈殿物を、30分間20,000×gでサーボール(Sorvall)遠心分離機中で遠心分離することにより単離した。試料を上清から採取し、さらなる分析のために凍結乾燥した(さらに修飾されたケラチン上清−方法2と称される)。ケラチンのペレットを酢酸(0.1N、pH4.2)により洗浄し、続いて、水に再懸濁させた。再懸濁されたペレットのpHをNaOH(1N)を用いて7.0に設定し、それらの混合物を凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて40%であった。この生成物は、修飾されたケラチン−方法2と称される。
【0070】
修飾の程度。修飾の程度をシュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているようにDTNB/NTSBアッセイを用いて測定した。修飾されたケラチン−方法1については、54%のシステイン残基が修飾されており、修飾されたケラチン−方法2については、57%のシステイン残基が修飾されていた。
【0071】
図2において、モル質量対溶出体積のプロット(TSK G3000+TSK ガード PWH カラム+UV検出器)を、修飾されたケラチン−方法1、修飾されたケラチン上清−方法2および修飾されたケラチン−方法2について示す。溶出液は、尿素(8M)およびジチオスレイトール(15mM)の水溶液であった。流量は、0.7ml/分であった。それらの溶出条件の下で、全ての残留ジスルフィド結合は還元され、ケラチン(略10,400g/mol)または分解生成物(10,400g/mol未満)のみが観察される。修飾されたケラチン−方法1および修飾されたケラチン−方法2の両方は同様のモル質量分布を有するが、しかしながら、修飾されたケラチン−方法2は、修飾されたケラチン方法1よりもより多くの高いモル質量生成物および低いモル質量生成物を含むことが観察され得る。高いモル質量生成物は、可能的には、例えば、ランチオニン生成により高いpHで起こり得る架橋反応の生成物である。低いモル質量生成物は、分解の結果である。このことは、修飾されたケラチン上清−方法2においてさらによりよく観察され得るものであり、その修飾されたケラチン上清−方法2は、主として3,000ないし10,000g/molの多量の低いモル質量生成物を含む。
【0072】
方法1で用いられたpHは決して9.0より高くならないので、SEC−MALLS分析を用いて確認されたように、ポリペプチド鎖の分解は起こりにくい。方法2においては、高い温度および強力なアルカリ性pHは、ケラチンの部分的分解を引き起こす。
【0073】
例2:様々の修飾度を有する部分的に分解されたケラチンの調製
家禽の羽を水と洗剤を用いて洗浄した。洗浄し、乾燥した羽(60g)を1.5リットルの加熱された(NH4 )2 S水溶液(0.1M、pH12.5、60℃)と混合し、1時間攪拌した。溶解していない羽をチーズクロスとホワットマン54フィルター(10μm細孔サイズ)を用いて溶解したケラチンから分離した。ろ液中のケラチン収率は、100%ケラチン出発材料(羽)に基づいて59.5%であった。20℃への冷却後、ろ液をそれぞれ500mlの3部分に分割した。1つの部分にはモノクロロ酢酸を添加せず、pHを9.0に設定し(本質的に修飾されていないケラチンを獲得した、修飾されていないケラチンと称する)、第2の部分には1グラムのモノクロロ酢酸を加え、pHを9.0に設定し(本質的に50%のSH−修飾を獲得した、50%−修飾されたケラチンと称する)、第3の部分には5グラムのモノクロロ酢酸を加え、pHを9.0に設定した(本質的に90%のSH−修飾を獲得した、90%−修飾されたケラチンと称する)。1時間後、ケラチンを、塩酸(2N)を用いてpHを4.2に設定することにより沈殿させた。沈殿物を30分間20,000×gでサーボール遠心分離機中で遠心分離することにより単離した。試料を、分析のために上清から採取した。ケラチンペレットを酢酸(0.1N、pH4.2)により洗浄し、次いで、水に再懸濁した。再懸濁されたペレットのpHをNaOH(1N)を用いて7.0に設定し、それらの混合物を凍結乾燥した。乾燥ケラチン生成物の収率は、100%ケラチン出発材料(羽の重量)に基づいて修飾されていないケラチンについて46.5%、50%−修飾されたケラチンについて48.9%、および90%−修飾されたケラチンについて20.8%であった。
【0074】
修飾の程度。修飾の程度をシュローイェンら(Journal of Agricultural and Food Chemistry;2000;48(9);4326〜4334)により記載されているようにDTNB/NTSB−アッセイを用いて測定した。修飾されていないケラチンについては、1.0%のシステイン残基が修飾されており、50%修飾されたケラチンについては、53%のシステイン残基が修飾されており、90%−修飾されたケラチンについては、89%のシステイン残基が修飾されていた。
【0075】
溶解性
凍結乾燥したケラチン生成物を室温で4種類のバッファー中で懸濁した(5%)。
【0076】
1.水。
【0077】
2.トリス緩衝水溶液(50mM)−pH8.0:アルカリ性のpHはケラチンを懸濁する働きをする。
【0078】
3.尿素(8M)−pH8.5:尿素を、共有結合していないケラチンの凝集を防止するために加える。
【0079】
4.尿素(8M)+2.5g/リットル ジチオスレイトール(DTT)−pH8.5:DTTをジスルフィド結合を還元するために加える。
【0080】
修飾されていないケラチンは、バッファー4中で完全に溶解する(図3)。それは、他のバッファーの中では白色のゲルを形成する。50%−修飾されたケラチンは、バッファー3および4について可溶性である(図4)。それは、他のバッファーの中では白色のゲルを形成する。バッファー2を40℃に加熱すると濁った分散液を得る。90%−修飾されたケラチンは、全てのバッファーで可溶性または分散性である。バッファー1および2はいくらか濁ったままである(図5)。
【0081】
フィルム形成
溶液流延によりフィルムを製造するために、水による良好な分散液または溶液が必要である。修飾されていないケラチンからフィルムを製造することは不可能であった。50%修飾されたケラチンからは、5%−分散液をグリセロール(0.30g/gケラチン)と混合し、ペトリ皿の中で流延した。乾燥後、強力なフィルム(引っ張り強度15MPa)を獲得し、そのフィルムは室温で水には溶解しなかった。90%−修飾されたケラチンからは、同様のフィルムを調製した。このフィルムは低劣な機械的特性(引っ張り強度<5MPa)を有し、水に可溶性であった。
【0082】
接着特性
50%−修飾されたケラチンは、良好な接着特性を有し、紙をガラスに粘着させるのに特に適しており、これは、しばしばビール瓶のために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(A)ケラチン分子、(B)重合したケラチンユニットからなるミクロフィブリル(微小繊維)および(C)ミクロフィブリル内の分子間および分子内ジスルフィド結合の模式的表現。
【図2】サイズ排除カラムについての3種の異なる修飾されたケラチン調製物のモル質量対溶出体積のプロット。
【図3】様々の溶液中での修飾されていないケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
【図4】様々の溶液中での50%修飾されたケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
【図5】様々の溶液中での90%修飾されたケラチンの溶解性。(1)水中、(2)50mMトリス・バッファーpH8.0中、(3)pH8.5での8M尿素中、(4)リットル当り2.5gのジチオスレイトール(DTT)を補足されたpH8.5の8M尿素中。
Claims (18)
- (a)アルカリ性pHで還元剤を用いて水溶液中でケラチン繊維含有出発材料からケラチンを可溶化させる工程および(b)可溶化されたケラチンの−SH基を部分的に修飾する工程を含む、部分的に修飾され、部分的に加水分解されたケラチンを製造するための方法であって、前記可溶化されたケラチンが工程(a)および(b)および任意のさらなる加水分解工程(c)の条件の結果として部分的に加水分解され、それにより前記可溶化されたケラチンが、可溶化されたケラチン分子の少なくとも50%が1kDaを超え、10.4kDa未満の分子量を有するように部分的に加水分解されることを特徴とする方法。
- 前記可溶化されたケラチンが、前記可溶化されたケラチンの少なくとも1%が10kDa未満の分子量を有し、前記可溶化されたケラチンの少なくとも50%が5kDaを超える分子量を有するように部分的に加水分解されている請求項1記載の方法。
- 前記可溶化されたケラチンが、40グラムの清浄化された乾燥した家禽の羽をpH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間1リットルの0.05〜0.5M硫化ナトリウムの水溶液中で可溶化させたときに得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい分子量分布を有する請求項1記載の方法。
- 前記可溶化されたケラチンの−SH基の少なくとも10%ないし70%以下が修飾される請求項1ないし3のいずれか1項記載の方法。
- 前記−SH基の修飾が−SH基のアルキル化を含む請求項5記載の方法。
- 前記還元剤が、硫化物、好ましくはアルカリ金属硫化物または硫化アンモニウムを含む請求項1ないし5のいずれか1項記載の方法。
- ケラチンが、
a)ケラチンの−SH基の少なくとも10%かつ70%以下が修飾されており、
b)少なくとも50%可溶化されたケラチンが1ないし11kDaの分子量を有する
ことを特徴とする、ケラチンを含む組成物。 - 前記ケラチンの少なくとも1%が10kDa未満の分子量を有し、前記ケラチンの少なくとも50%が5kDaを超える分子量を有する請求項7記載の組成物。
- 前記ケラチンが、40グラムの清浄化された乾燥した家禽の羽をpH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間1リットルの0.05〜0.5M硫化ナトリウムの水溶液中で可溶化させたときに得られるケラチンの分子量の分布に本質的に等しい分子量分布を有する請求項8記載の組成物。
- 前記−SH基の修飾が−SH基のアルキル化を含む請求項7ないし9のいずれか1項記載の組成物。
- a)pH10.0ないしpH13.5のpHで、40ないし80℃の温度で、30〜90分間0.05〜0.5M硫化ナトリウムの水溶液中でケラチン繊維含有出発材料からケラチンを可溶化させる工程、
b)好ましくはアルキル化により可溶化されたケラチンの−SH基の10ないし70%を修飾する工程
を備える方法で獲得し得る、ケラチンを含む組成物。 - 前記組成物が水溶液または分散液の形態にある請求項7ないし11のいずれか1項記載の組成物。
- 前記組成物が固体状、好ましくは分散性の非ダスチング粉末または顆粒の形態で存在する請求項7ないし11のいずれか1項記載の組成物。
- ケラチン系製品を製造するための方法であって、ケラチンの供給源として、請求項7ないし13のいずれか1項記載のケラチン含有組成物を用いることを特徴とする方法。
- 前記ケラチン系製品が、請求項7ないし13のいずれか1項記載のケラチンの溶液または分散液を流延することにより製造される請求項14記載の方法。
- 前記ケラチン系製品がフィルムまたは被覆物である請求項15記載の方法。
- 請求項7ないし13のいずれか1項記載のケラチン含有組成物から製造されたケラチン系製品であって、
a)15MPaを超える引っ張り強度、
b)100MPaを超える弾性率、および
c)10%を超える破断点伸び
を有するフィルムまたは被覆物であるケラチン系製品。 - −フィルムまたは被覆物の調製における、
−生分解性包装材料の調製における、
−活性物質のための徐放系としての配合物における、
−エマルジョン、分散液または多相水性系の製剤における、
−フィラー、ゲル化剤、バインダー、増量剤、顆粒化剤、放出剤、母材材料、乳化剤または安定化剤としてのもしくはそれらにおける、
−アンチオキシダントとしての、または
−抗微生物剤としての
請求項7〜13のいずれか1項記載のケラチンの使用。
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