JP2004530945A - フォトクロミック光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子の着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を提供する。
【解決手段】本発明は、フォトクロミック材料を含む透明コーティング(2)を設けた基板(1)を具えた光学素子に関するものであり、この光学素子の可視波長範囲における透過率が、透明コーティング(2)上に局所的に入射する光の変化に応答して変化する。光学素子の迅速な着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を得るために、フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度を有する有機ポリマーで包囲する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、フォトクロミック材料を含む透明コーティング(2)を設けた基板(1)を具えた光学素子に関するものであり、この光学素子の可視波長範囲における透過率が、透明コーティング(2)上に局所的に入射する光の変化に応答して変化する。光学素子の迅速な着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を得るために、フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度を有する有機ポリマーで包囲する。
【選択図】図1
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、及びこの光学素子を設けた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】
国際特許出願WO 98/30923 WO 98/30923は、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えた光学素子を記載しており、この透明コーティングの可視波長範囲における光透過率が、この透明コーティングに局所的に入射する光の強度に依存する。この選択的に透明なコーティングの透過率は、入射する放射の強度が増加すると共に自動的に低下する。
【0003】
この透明コーティングが、シリコン酸化物の無機網目と有機ポリマーから成り、この有機ポリマーはSi-C結合を介して前記無機網目に化学的に結合されている。フォトクロミック材料を具えたこうした光学素子は一般に、ウェットケミカル(湿潤化学的)ゾル−ゲル手順として知られているプロセスによって製造する。ゾル−ゲルプロセスは、アルコキシレンのアルコール溶液に水を被制御で追加して、(均質の)加水分解、(重)縮合を順次行うことによって、これにより、シリコン酸化物または二酸化物の(多孔性の)無機網目を形成するプロセスである。シリコン酸化物の形成が完了したものに熱処理を施せば、高密度の無機網目が出来上がる。
【0004】
好適例では、透明コーティングを表示デバイスの表示窓上に設けている。あるいはまた、透明コーティングをサングラス上に用いることもできる。
【0005】
こうしたフォトクロミックコーティングは、切換(スイッチング)挙動とスクラッチ抵抗との間の妥協点を提供する。こうした従来技術の光学素子の欠点は、これらの光学素子が、透明コーティングに使用するフォトクロミック材料の迅速な着色/脱色について最適化されていない、ということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、とりわけ、光学素子の着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の第1の要点は、フォトクロミック材料が少なくとも部分的に有機ポリマーによって包囲され、この有機ポリマーが摂氏40度以下のガラス遷移温度Tgを有することを特徴とする光学素子を提供する。本発明の第2の要点は、こうした光学素子を具えた画像表示装置を提供する。従属請求項では好適例を規定する。
【0008】
WO 98/30923に記載されているように、既知の光学素子中のポリマー材料は、(純粋な)有機網目中に取り込まれ、WO 98/30923では、光学素子中のフォトクロミック材料は、シリコン酸化物とポリマーから成るハイブリッド(混成)網目である。
【0009】
特別なポリマーのガラス、即ち摂氏40度以下のTgを有する有機ポリマーは、このポリマーを少なくとも部分的にフォトクロミック材料で包囲すれば、非常に優れた切換挙動を示すことが判明している。
【0010】
本発明の最重要点は、フォトクロミック材料が十分な移動性をもつ直接的な環境におかれて、これにより、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色が保証される、ということである。フォトクロミック材料が移動性をもつこうした直接的な環境を得る方法は、前段落に記述した。なお、フォトクロミック材料は、分子レベルに分散させたフォトクロミック染料として、このフォトクロミック染料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のTgを有する有機ポリマーで包囲することができる。さらに、この有機ポリマーを、(純粋な)有機網目の一部とするか、あるいは、WO 98/30923に記載のハイブリッド網目の一部とすることができる。
【0011】
ガラス遷移温度Tgは、有機ポリマーのガラス状態とゴム状態との間の遷移が行われる温度である。Tg以下では、ポリマー連鎖の平均エネルギーが、ポリマーバックボーンの合理的なエネルギー障壁を超えるためには小さすぎるので、このためポリマー連鎖の運動が存在せず、ポリマー連鎖は本質的に凍結して、ガラス状態として知られている固体状態になる。しかし、ポリマーを加熱すれば、ポリマー連鎖の平均エネルギーが増加して、ポリマー・バックボーンの合理的なエネルギー障壁を超えるのに十分になり、ポリマーが自由に運動を行い、ガラス状態からゴム状態への遷移が生じる。ゴム状態の始まりは、分子運動の増加によって生じる著しい体積の増加によって示される。このことが発生する温度は、ガラス遷移温度と称する。Tg以上では、ポリマーがゴム状態であり、ポリマーの自由な運動が、フォトクロミック材料に十分な移動性のある環境をもたらして、このフォトクロミック材料はゴム状態のポリマー中に分子レベルで分散して、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を可能にする。
【0012】
前記有機ポリマーは、摂氏10度以下のガラス遷移温度を有することが好ましい。この値は、有機ポリマーが室温でゴム状態であることを保証する。有機ポリマー連鎖のTg以上での自由な運動は、フォトクロミック材料に大きな移動性を生じさせて、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を促進する。
【0013】
請求項3に規定する好適例では、前記有機ポリマーが、アクリレート(メタクリレート)、ジアクリレート(ジメタクリレート)、スチレン誘導体、ビニルエーテル、ウレタン、及びエポキシドの群から形成したポリマーである。最終的なフォトクロミック・コーティングの、Tgのような特性は、ポリマー・バックボーン及び/または側鎖の化学的組成によって変化させることができる。
【0014】
【非特許文献1】
D. J. Williams, "Polymer Science and Engineering" (Prentice-Hall Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1971) 請求項4に規定する好適例では、前記透明コーティングがコア(核)−シェル(殻)粒子を具えて、このコア−シェル粒子は、有機ポリマー及びフォトクロミック材料から成るコアと、このコアを保護する架橋(橋架け、クロスリンク)ポリマーのシェルから成る。このコアは、摂氏40度以下、好適には摂氏10度以下のガラス遷移温度Tgを有する有機ポリマーを用いることによって、フォトクロミック材料の移動性を改善すべく最適化されている。このシェルの主たる機能は、粒子の保全性を維持して、特に透明コーティングの処理中に、透明コーティング中に発生し得る反応性の種類のものに対してフォトクロミック材料を保護して、これらの粒子を透明コーティングと調和させることである。このシェルは、高いTgを有するポリマーで構成することが好ましい。コア−シェル・ラテックスを用いることが好ましい。コア−シェルの形態は、文献:D. J. Williams, "Polymer Science and Engineering" (Prentice-Hall Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1971)に記載されている。
【0015】
この好適例の最重要点は、剛性のあるマトリクス(例えば、摂氏50度以上のTgを有するポリマー)中に、フォトクロミック材料用の微小環境を作ることにあり、これらの微小環境は十分な移動性を有して、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を保証する。これらの微小環境は、上述したコア−シェル粒子を用いて提供することができ、これらの粒子は剛性のマトリクス中に分散させる。
【0016】
前記透明コーティングは、紫外(UV)及び可視(VIS)の波長範囲の光に対して非拡散性でなければならない。従って、これらの粒子は、小径(約300nm以下、好適には100nm以下)であるか、あるいは、透明コーティングの他の材料に近い屈折率を有する(粒子の屈折率と透明コーティングの他の材料の屈折率との差が0.1未満、好適には0.01未満)かのいずれかであるべきである。
【0017】
さらに、前記粒子は、透明コーティングの他の材料と調和させるべきであり、このことは、ゾル−ゲル系を用いて透明コーティングを製造する際には、粒子の表面をかなり強い極性にして、アクリレートまたはメタクリレートのような反応性の有機モノマーを用いて透明コーティングを製造する際には、粒子の表面をかなり弱い極性にすべきである、ということを意味する。
【0018】
【非特許文献2】
J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 18 November 1994 フォトクロミック材料の、他の剛性のマトリクス中での局所的な移動性を保証する他の方法は、フォトクロミック材料をモノマー混合物と混合させて、これに続いて、請求項5に規定する好適例のような重合を行う前に、デンドリマーまたは超分岐(ハイパーブランチ)ポリマーのキャビティ(空洞)内にフォトクロミック材料を入れることである。デンドリマー及び超分岐ポリマーの分岐は、摂氏約−10度以上の実用的な温度で、自由に運動を行い、従って、デンドリマー及び超分岐ポリマーは可撓性(フレキシブル)であり、この状況は、ゴム状態のポリマーと調和する。このことは、文献:J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 18 November 1994に記載されている。結果的な(できれば剛性のある)ポリマー・マトリクス中では、フォトクロミック材料がフレキシブルなデンドリマーまたは超分岐ポリマー中に封じ込めることによって、フォトクロミック材料は微小環境中で移動性がある。
【0019】
請求項6に規定する光学素子は、基板と保護層との間に透明コーティングを配置し、この保護層は、透明コーティングを摩滅から保護する。透明コーティングが、例えば吸収、引っかき、削れのような環境的な影響を受けるような、一部の光学素子の用途については、本発明の透明コーティングを保護しなければならない。特に、透明コーティングのほとんどの部分が有機ポリマーから成る際には、透明コーティングが、硬さ、耐磨耗性、引っかき耐性に関して、貧弱な機械的強度となり得る。前記保護層は、シリコン酸化物のコーティング、あるいはガラス板(プレート)で構成することが好ましい。
【0020】
あるいはまた、請求項8に規定する光学素子のように、前記透明コーティングがさらに、シリコン酸化物の無機網目を具えている。本発明の有機ポリマーによって少なくとも部分的に包囲されているフォトクロミック材料は、この無機網目内の透明コーティング中に入れる。あるいはまた、前記シリコン酸化物の無機網目は、WO 98/30923に記載の有機ポリマーと組み合わせた無機/有機の組合せ網目を形成することができる。これにより、良好な切換挙動を示し、かつ研磨及び引っかきに対する耐性のある透明コーティングを有する光学素子ができる。
【0021】
請求項9に規定する画像表示装置は、請求項1に規定する光学素子を用い、この光学素子の透過率は、入射する放射が増加するとともに低下してこれにより、生成される画像のコントラストを改善する。本発明の光学素子は、反射した周辺光、及び画像表示装置の内部光源から発生する光に共に影響を与えて、内部光源から発生する光は例えば、陰極線管(CRT)の蛍光体からの光、プラズマ表示パネル(PDP)におけるプラズマ放電からの光、あるいは有機LED表示パネルのようなLED表示パネル内のエレクトロルミネセンス材料からの光である。入射する周辺光は、この光学素子を通過して、例えばCRTの蛍光体またはカラーフィルタで反射して、その後に、反射光は再びこの光学素子を通過する。光学素子の透過率をTとすれば、反射した周辺光の強度は係数T2だけ低下する。しかし、内部光源から発生する光は、光学素子を1回しか横切らないので、この光の強度は係数Tだけしか低下しない。これらの効果の組合せにより、係数T-1だけのコントラストの増加が生じる。
【0022】
【特許文献2】
PCT/IB00/11385 上述した画像表示装置は、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載された積層(ラミネーション)プロセスによって製造することができ、このプロセスは、表示窓(ウィンドウ)、及びこの表示窓の前面に補助的な透明板(好適にはガラス板)を生産し、この表示窓と補助プレートとは、修復可能な材料によって互いどうしを取り付ける。フォトクロミック特性は、フォトクロミック材料を、積層プロセスに必要な樹脂と混合することによって得ることができる。積層プロセスにおける樹脂は、摂氏40度以下、好適には摂氏10度以下のTgを有する有機ポリマーであることが好ましい。あるいはまた、例えば、上述したコア−シェル粒子、デンドリマー、超分岐ポリマーを用いることによって、積層プロセスにおける樹脂が、微小環境を有する剛性のマトリクスを形成して、この微小環境は、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を保証するのに十分な移動性をフォトクロミック材料に持たせる。前記補助板によって、表示窓が非常に良好な引っかき耐性を有する。表示装置が陰極線管(CRT)である際には、積層プロセスを用いれば、内破(内部への破裂)に対して本質敵に安全なCRTが得られる。
【0023】
請求項10に規定する画像表示装置は光学素子を有し、この光学素子は、透過率が、表示パネルが放射する波長範囲外の入射放射に依存する。結果として、この光学素子の透過率は、画像表示装置そのものが透過させる光に影響されない。
本発明のこれら及び他の要点は、以下に説明する実施例より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。特に、明確にするために、一部の寸法は大きく誇張してある。図では可能な限り、同一構成要素は同一参照番号で参照する。
【0025】
光の透過率を変化させる光学素子は、例えばランプ、バックミラー、自動車のサンルーフ、あるいは建物の窓("スマート・ウィンドウ")、眼鏡のレンズにおいて、(可視)光の透過、及び/または反射に影響を与えるために使用する。
【0026】
この光学素子は、陰極線管(CRT)、プラズマ表示パネル(PDP)、有機LEDのようねエレクトロルミネセンス表示パネル、及び液晶表示デバイス(LCD、LC-TV、またはプラズマアドレスLCD)のような(平面型)表示デバイスの観察側にも使用し、再生画像のコントラストを改善する。
【0027】
図1に、本発明による透明コーティング2を設けた基板1を具えた光学素子を示し、この光学素子は、表示パネルの観察側に設けることができる。表示デバイスの周囲から発生する光スポット3が、この光学素子の一部に入射する。光スポット3を発生させる放射LSは、例えば、直接、あるいは1枚以上の窓ガラスまたは他のものを通して間接的に入る太陽光から発生し得るものであり、この放射が光学素子の一部に入射する。光スポット3は、光学素子の付近にある例えばランプのような他の放射源からも発生し得る。図1には、円形の光スポット3を示す。しかし、光スポット3は任意の形状を有することができ、そして、光学素子の一部または全体に入射し得る。光スポット3は多数の光スポットから成ることもあり得る。特に、光学素子上の異なる位置で、光スポット3の強度が異なることがあり得る。
【0028】
表示パネルの観察側に設けた光学素子の場合には、表示デバイスの表示窓上に再生される画像のコントラストは、光スポット3の強度によって、光スポット3の位置で大幅に低下する。透明コーティング2の1つの特性は、光スポット3の光の強度が増加すると、光スポット3の位置でコーティングの透過率が自動的に低下する、というものであり、これにより、光スポット3の位置で表示デバイスのコントラストが増加する。透明コーティング2の他の特性は、光スポット3の光の強度が(再び)低下するか、あるいは、表示窓上の光スポットが消失すると、光スポット3の位置でコーティングの透過率が(再び)増加する、というものである。一般に、透明コーティングは、コーティング上に入射する(周辺)光の光強度の変化とは逆に反応する。
【0029】
こうした光学素子を表示パネルの観察側で使用するために、光学素子の動的なガラス透過率の範囲は、好適には、日光の照射量に応じて、30%〜70%であるべきである。一般に、表示パネルは、この光学素子におよそ均一な照射が行われる環境に設置するので、光学素子全体の着色/脱色が生じて、高品質の画像が生成される。
【0030】
10分未満の切換時間が好適である。フォトクロミック材料は、好適には、320nm〜400nmの波長を有する光のみに応答すべきである。これらの境界は、320nm以下では前面ガラスパネルが不透明であるということ、及び、この光学素子は、表示パネルが放出する青色光によって放出される光(>400nm)には応答すべきでない、ということによって課せられたものである。感度の点では、この光学素子は、好適には、300ルクス以上の照射レベルを有する日光に応答すべきである。この光学素子は、好適には、中性色、好ましくはグレーになるべきである、というのは、グレーのフィルムは、表示パネルが放出する光の色を変化させないからである。さらに、この光学素子は長寿命であるべきである。動作寿命は、好適には、室内照明の条件では5年を超えるべきである。
【0031】
この光学素子の色は、表示パネル上の画像の色に影響するので、非常に重要である。この光学素子の色は2つの座標x及びyで表現することができ、C.I.E.色度図中の色点と称する。光源が与えられれば、色点は、光学素子の透過スペクトルから計算することができる。表示パネルの明るい部分で観測される色については、表示パネルにおける光源、例えばCRTにおける蛍光体から放出される光が、光学素子を1回だけ通過しているはずである。「ブラック(黒色)」の部分で観測される色については、光源は周辺光であり、光学素子を2回通過しているはずである。従って、明るい部分の色については、光学素子の1回の通過についての色点が重要であり、ブラック部分の色については、2回の通過についての色点が重要である。表示パネルの観察側で光学素子を使用するためには、望ましい光学素子の色はほぼグレーであり、即ち、光学素子は、380nm〜780nmの光をおよそ均等に吸収する。こうしたグレーの光学素子の色点は、x及びyについては0.30〜0.37であり、白色E光に関しては、x及びyについては0.31〜0.35であることが好ましく、これらの値は1回透過及び2回透過についてのものである。こうした色点を有するコーティングは、表示パネル上に表示される画像の色に対して少ししか影響しない。
【0032】
フォトクロミック材料は、照射時に、区別可能な異なる吸収スペクトルと共に、1つの状態から他の状態に(逆方向に)変化することのできる化合物である。フォトクロミック材料の初期状態は、光学製品よりも短い波長を吸収する、という決まりごとが存在する。UV-VIS領域には、誘導放射、並びに吸収スペクトルの変化がよくあるので、フォト化合物の色が変化しても、フォトクロミズム(光互換)は通常可視である。本願では、無色から有色状態に変化するフォトクロミック材料を扱う。このため、順反応(着色)は、光によって誘発されるものと定義し、逆反応(脱色)は、光または熱、あるいは両者の組合せによって誘発され得る。
【0033】
非常に多数のフォトクロミック材料が文献から知られており、これらの材料はいくつかのクラスに分類することができる。特に、表示デバイス用では、光学素子が、スピロピラン、スピロ−オキサジン、フルギド(fulgide)、またはナフトピランのクラスからの材料を具えることができる。スピロピランのクラスからのフォトクロミック材料の例は、6-ニトロメトキシ-1',3',3'-トリメチル-スピロ[2H-1]ベンゾピラン-2,2'-インドリンである。スピロ−オキサジンのクラスからのフォトクロミック材料の例は、1,3,3-トリメチルスピロ[インドリン-2,3'3-トリメチルスピロ[インドリン-2,3'-[3H]ナプト(napth)[2,1-b][1,4]オキサジン]である。ナフトピランのクラスからのフォトクロミック材料の例は、2,2-ジフェニル-2H-ベンゾ[h]クロメンであり、図2に示すものである。スピロ−オキサジン及びナフトピランは、スピロピランよりも高い光学的安定性により、フォトクロミック・コーティングのような実用的な用途には、スピロピランよりも適している。
【0034】
溶液中のこうしたナフトピラン分子によるUV光の吸収は、図に示す炭素−酸素結合の開裂をもたらす。この開形では、事前に分離している2つのπ系の間の共役が可能である。このことは、(UV領域内の吸収帯に加えて、)可視領域内の広い吸収帯の出現、及びこれに伴う分子の色変化をもたらす。いわゆる開形(OF)の構造は、メロシアニンの構造と同様であり、従って、開形はフォトメロシアニンと称される。開形は2つのメソメリー形で表わすことができ、即ち局在電荷を有する双極の双性イオン形と、より弱い極性のポリエン形またはキノン形である。従って、ナフソピランの開形が非常に溶媒和発色性であり、即ち、その吸収スペクトルが溶媒の極性に依存することは驚くに値しない。閉形は開形よりも熱力学的により安定なので、閉環反応は熱活性化プロセスであり、自然発生する。図3に、開形の時間分解吸収スペクトルの例、及び着色/脱色プロセスの説明用のモデルを示す。ナフトピランの閉形(CF)はUV光によって励起されて(CF*)、このことは、炭素−酸素結合の開裂を誘発して開形を生じさせるか、あるいは、基底状態(CF)に戻る競争的な失活プロセスかのいずれかを行う。自然発生的な逆反応により、特定時間後に、無色の閉形と有色の開形との平衡に達して、この平衡のことを光学的平衡状態と称する。この平衡状態では、開環速度が閉環速度に等しくなる。再び照射を停止すると、フォトメロシアニンが脱色を開始する。OFは、異なる配座及び配置の異性体中に存在し得る。開形に異なる異性体が存在することは、開形の比較的広い吸収帯に起因するものであると考えられている。
【0035】
本発明の光学素子を得るためには、透明コーティングを付加する間に、フォトクロミック材料の物理光学特性を保存しなければならない。フォトクロミック材料は、少なくとも部分的に有機ポリマーで包囲することが好ましい。特定の実施例では、有機ポリマーが透明コーティングの主成分である。有機ポリマーのTgが上昇すると共に、従って有機ポリマーの剛性が増加すると共に、フォトクロミック材料の着色及び脱色反応がより低速になる。従って、フォトクロミック材料を包囲する有機ポリマーの物理特性、特にTgは、フォトクロミック材料の物理光学特性の保存にとって重要である。
【0036】
例えば、摂氏123度のTgを有する、ポリ(ポリ(エチレングリーコル)ジメタクリレート)330(モノマーPEGDMA330の平均分子量は330g/molである)中のフォトゾル7-114の脱色時間の半分は、10分以上である。これとは対照的に、摂氏13度のTgを有する、ポリ(ポリ(エチレングリーコル)ジメタクリレート)550(モノマーPEGDMA550の平均分子量は550g/molである)中のフォトゾル7-114の脱色時間の半分は、2分未満である。図4に、モノマーPEGDMAの構造式を示す。図4に示すように、PEGDMA330とPEGDMA550の相違は、モノマーの連鎖長であり、PEGDMA330はnが平均4であり、PEGDMA550はnが平均9である。
【0037】
本明細書では、Tgを、例えばレオメーター科学DTMA装置を用いた動力学的熱解析(DMTA:Dynamical Mechanical Thermal Analysis)測定によって得られる力学的最大損失(tanδmax)の温度として定義する。この測定は、周波数1Hz、2℃/分の加熱率での3点ひずみモードで行うことが好ましい。ここでは、試料の寸法を40×40×1mmとした。
【0038】
前記有機ポリマーは、ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、ポリジクリレートまたはポリジメタクリレート、ポリスチレン誘導体、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリエポキシドのような、光学的に清明なポリマー材料であることが好ましい。重合反応は、ラジカル(遊離基)重合プロセスによって実行することができ、ラジカル重合プロセスでは、光化学的に、熱的に、あるいはe−ビームによってラジカル種を形成する
【0039】
光重合は、高速かつ多用途の方法であるので、好適である。フォトクロミック染料の存在下で光重合を行うためには、ポリマー系及び重合条件が染料と調和しなければならず、さもなければフォトクロミック特性が(部分的に)失われる。PPG Industry社が提供する、ナフトピラン・フォトゾル7-114の存在下でのアクリレートの光重合がその例である。一般に、アクリレートの光重合条件は、ナフトピラン・フォトゾル7-114と調和せず、重合プロセスにおいて生成されるアクリレート・ラジカルは移動性が非常に高く、従って反応性が過大であり、重合中にフォトクロミック材料を破壊する、ということが判明している。さらに、フォトゾル7-114は、開形状態では閉形状態よりもずっと、ラジカルの作用に影響されやすい、ということが判明している。380nm未満の波長を有するUV光を用いてラジカルの生成を誘発すれば、損失が生じることが多い。従って、400nm以上の波長で消滅係数を有する光開始物質を使用すべきである。メタクリレートの光重合により、そして、フォトクロミック材料を(より安定な)閉形のままにする照射波長を用いた際に、ずっと良好な結果、即ちフォトクロミック作用の損失が少ない結果が得られた。例えば、フォトゾル7-114については、この波長は405nm以上である。
【0040】
前述したように、高速の切換時間のためには、中程度または低いTgを有するポリマー系が必要である。しかし、光重合時には、一般に、低いTg系の方が、より高いTg系よりも、フォトクロミック作用が失われる、ということが判明している。このことは、低いTg系において生成されたラジカルは、より高いTg系において生成されたラジカルに比べて、移動度がより高い、ということによって生じたものである。
【0041】
重合プロセスの前に、フォトクロミック染料を、デンドリマーまたは超分岐ポリマー、あるいはコア−シェル粒子中に入れることによって、重合プロセス中に発生するラジカル種からフォトクロミック染料を遮蔽して、これにより、フォトクロミック特性の保存が行われる。
【0042】
あるいはまた、少なくとも部分的に有機ポリマーで包囲したフォトクロミック材料を、ポリマー粒子の形態の透明コーティング中に導入することができる。大きさ、粘度、及び化学的組成のような特性を微調整可能なポリマー粒子には、フォトクロミック材料のような機能特性を有する1つ以上の材料、(色、屈折率、ルミネセンスのような特性を微調整ための)オプションの材料、及び光安定剤を載せることができる。こうして得られる材料は、ポリマー粒子を機能材料用の担体として利用することによって、透明コーティング中に導入することができる。これらの混合物の環境は、透明コーティングの特性に対する影響を最小にして、最適化することができる。従って、"ハード(硬)"ゾル−ゲルにもとづくコーティングのように良好な引っかき耐性を有するコーティング中でも、動的プロセスを実現することが可能になり得る。さらに、機能材料の安定性は、例えば、重合反応中に存在するラジカルのような反応種、及び光学プロセス及び熱プロセスによって発生するラジカルのような反応種から機能材料を保護することによって改善することができ、フォトクロミック材料を反応性モノマーの混合物中に導入する際には、このことが必要になる。本発明の好適な実施例では、透明コーティングが、有機ポリマー及びフォトクロミック材料のコアと、このコアを保護する架橋ポリマーのシェルから成るコア−シェル粒子を具えている(図5参照)。より詳細には、フォトクロミック材料をドーパントとして、コア−シェル・ラテックスのコア中に加える。
【0043】
例えば、ポリ(2-エチルヘキシル アクリレート)(PEHA)のコアを、PS-ESOのような非イオン性の界面活性剤で調製する。このラテックスを濾過し透析して、凝集(アグリゲート)したラテックス粒子及び過剰な界面活性剤をすべて除去する。これに続いて、膨潤手順によって、このコア中にフォトクロミック材料を入れる。こうするために、フォトクロミック材料を適切な有機溶剤中に(界面活性剤と共に、あるいは界面活性剤なしで)溶解させて、次に、この溶液をラテックスに加える。でき上がった混合物を2、3日間攪拌する。これに続いて、このラテックスを濾過し透析して、再び濾過して、沈殿したフォトクロミック材料、凝集したラテックス粒子、及び過剰な界面活性剤をすべて除去する。フォトクロミック材料をコア中に入れた後に、架橋ポリスチレン(PS)を適切なpHに調製して、界面活性剤は特に追加しない。こうして調製した、フォトクロミック材料を含むコア−シェル粒子を再び濾過し、そして凍結乾燥(フリーズドライ)させる。凍結乾燥後のコア−シェル粒子をオーブンで加熱し、この過熱は摂氏50度で、減圧して行う。これらのコア−シェル粒子は、非イオン性の界面活性剤をコア−シェルラテックスに加えて適切なpH調整をすれば、有機溶剤中、あるいは液状アクリル(メタクリル)モノマー中に容易に再分散させることができる。
【0044】
他の例では、PEHAのコアを、PS-EPOブロック−コポリマーのような非イオン性の界面活性剤で調製する。コア−ラテックスを濾過し透析して、凝集したラテックス粒子及び過剰な界面活性剤を除去する。これに続いて、架橋PSのシェルを適切なpHに調製して、界面活性剤は追加しない。そしてコア−シェル・ラテックスを濾過する。その後に、膨潤手順によって、フォトクロミック材料をコア−シェル・ラテックス中に入れる。こうするために、フォトクロミック材料を適切な有機溶剤中に、界面活性剤と共に、あるいは界面活性剤なしで溶解させて、この溶液をコア−シェル・ラテックスに加える。でき上がった混合物を2、3日間攪拌する。こうして調製した、フォトクロミック材料を含むコア−シェル粒子を再び濾過し、そして凍結乾燥させる。凍結乾燥後のコア−シェル粒子をオーブンで加熱し、この過熱は摂氏50度で、減圧して行う。ここでも、これらのコア−シェル粒子は、非イオン性の界面活性剤をコア−シェルラテックスに加えて適切なpH調整をすれば、有機溶剤中、あるいは液状アクリル(メタクリル)モノマー中に容易に再分散させることができる。
【0045】
【非特許文献3】
"Blends of amphiphilic, hyperbranched polyesters and different polyolefins", Macromolecules, Vol. 32, 1999 フォトクロミック材料を有機ポリマーで包囲する他の代替法は、フォトクロミック染料を、柔軟性のあるデンドリマーまたは超分岐ポリマー中に封じ込めて、染料の局所的な移動性を保証することである。図6に、デンドリマーの例を示す。染料をデンドリマー中に入れる例は、文献:J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 1994年11月18日の1226〜1229ページに記載されている。染料を超分岐ポリマー中に入れる例は、文献:"Blends of amphiphilic, hyperbranched polyesters and different polyolefins", Macromolecules, Vol. 32, 1999の6333〜6339ページに記載されている。
【0046】
本発明の光学素子を製造する方法は、例えば、アクリレートまたはメタクリレート樹脂、スチレン誘導体、ビニルエーテル、及びフォトクロミック材料(これは、フォトクロミック材料そのもの、あるいはコア−シェル粒子中または超分岐ポリマー中に入れたもの)のような、2つ以上の機能性を有するモノマーから成る反応性の混合物を使用することである。この混合物を、(厚さ2、3ミクロンの)薄膜層として、例えばガラスパネルのような基板上に付加して、その後に、光化学プロセス、熱プロセスを用いることによって、あるいはe−ビームによって、重合反応を実行することができる。
【0047】
あるいはまた、例えば膨潤手順を用いることによって、フォトクロミック材料をポリマー箔(フォイル)中に入れる。ポリマー箔に適した材料の例は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、あるいはポリビニルブチラールである。これに続いて、感圧接着剤、UV硬化樹脂、あるいは熱硬化樹脂を用いて、この箔を基板の表面上に付加する。
【0048】
【特許文献3】
米国特許出願2001-0006732-A1 例えば、を用いて、ポリビニルブチラール(PVB)箔を膨潤させる。これに続いて、この箔を空気中で乾燥させる。フォトクロミック材料を具えたポリマー箔を、米国特許出願2001-0006732-A1に記載の方法を用いて、基板上に積層させる。あるいはまた、この箔を、ガラス基板1とガラス保護層4との間に配置する。これに続いて、この積層(図7参照)を1バール(105Pa)、摂氏60度で1時間加圧する。
【0049】
表示パネルの観察側に光学素子を用いる場合には、この光学素子を独立したパネルに形成して、図8に示すように、このパネルを光路中の、表示スクリーンの外側に配置することができる。あるいはまた、この光学素子を表示パネル上に積層させるか、あるいは、図9に示すように、表示パネル自体を、光学素子の基板として用いることができる。
【0050】
特定の実施例では、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、ガラス板を表示スクリーン上に積層させる。こうするために、ガラス板4を、表示スクリーン1から特定距離の所に位置決めして、表示スクリーン1とガラス板4との間の容積に、硬化材料(重合または架橋によって硬化する)を充填して、この硬化材料の硬化後に、透明コーティング2ができる。
【0051】
こうして、前段落のガラス板に、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けるか、あるいは、フォトクロミック材料(それ自体、あるいはコア−シェル粒子または超分岐ポリマー中に入れたもの)を、積層プロセスに使用する樹脂中に入れることができる。アクリレートまたはメタクリレート、スチレン誘導体、あるいはビニルエーテルのような樹脂は本来、例えばラジカル重合を用いることによって重合することができる。
【0052】
フォトクロミック材料を含むポリマー層または透明コーティングと、前面ガラスパネルとを積層させたCRTについては、CRTのスクリーンが非平面であることによって、ポリマー層の厚さが一定ではないことがあり得る(図10参照)。フォトクロミック材料が着色状態である際には、こうしたポリマー層の厚さの変化が吸収の変化を生じさせ得るが(層が厚いほど吸収が大きくなる)、このことは許容されない。この問題に対する解決法は、こうした大量のフォトクロミック材料を、波長320nm〜400nmのUV光の透過深度がポリマー層の厚さ未満である(即ち、90%のUV光がフォトクロミック分子によって吸収される深度)ポリマー層中に入れることである。適切な量の染料を入れることによって、UV光の90%が、例えばポリマー層の表面から0.5mm以内の部分に吸収されるが、ポリマー層の厚さは、例えば1mm〜3mmある。このようにして、この表層である「活性(アクティブ)」層内の分子のみが、UV照射時に着色して、均一に着色したフォトクロミック積層品(ラミネート)ができる。
【0053】
例:フォトゾル7-114及びポリ(EHMA)にもとづくフォトクロミック積層品。
図11に、厚さ1mmのガラス板2枚、及び0.11重量%のフォトゾル7-114を含む1mmのポリ(EHMA)層から成るフォトクロミック積層品の吸収スペクトルを示す。0.11重量%のフォトクロミック材料フォトゾル7-114をポリ(EHMA)層中に入れることによって、360nmの波長を有する光の90%が、ポリマー層の表面から0.5mm以内の部分に吸収されて、400nmの波長を有する光の90%が、ポリマー層の表面から1mm以内の部分に吸収される(染料の吸収スペクトルが不均一であることによって、この吸収は波長依存性である)。換言すれば、波長320mm〜400nmのUV光の、ポリマー層内への透過深度は0.5mm〜1mmである。CRT上のフォトクロミック積層品については、積層品中のポリマー層が厚さ1mm以上であれば、この特定濃度の染料で十分である。
【0054】
入手可能なフォトクロミック材料の範囲が広いことから、大方、適切な色を有するフォトクロミック材料を選択することができる。しかし、フォトクロミック材料を本発明の有機ポリマー中に入れると、着色して低透過率状態のフォトクロミック材料の色は、必ずしも十分満足のいくものではない。有機ポリマーの極性を変化させれば、光学素子の色点を微調整することができる、ということが判明している。例えば、紫色の透明コーティングを青色/灰色がかった色の透明コーティングに変化させることができる。さらに、より極性の強い環境を用いることによって、フォトクロミック材料の寿命を増加させることができる。極性の変化は、次の2つの方法のうちの1つによって達成することができる。
A. 有機ポリマーのモノマーを、異なる極性を有する他のモノマーと共重合する。こうした方法の例は、(有機ポリマーを形成する)2-エチルヘキシル-メタクリレートとメタクリル酸の共重合である。
B. 有機ポリマーのモノマーに、このモノマーと異なる極性を有する、可溶性、不揮発性、低分子量、非反応性の化合物を加える。例えば、ビスフェノール-Aを2-エチルヘキシル・メタクリレートに加える。
【0055】
方法Aの例は次の通りである。
重量比80の2-エチルヘキシル・メタクリレート(EHMA)、重量費20のメタクリル酸(MAA)と、重量費0.5のLTPOと、重量比0.1のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板との間の容積に注入する。これに続いて、この混合物を、436nmの波長を有する光で、10mW/cm2の照射強度を用いて80分間照射することによって硬化させる。
【0056】
光重合プロセスの後に、高速の切換時間(5分以内の着色/脱色)を有するフォトクロミック積層品が得られる。こうした透明積層品が0.75mmの厚さを有すれば、UV光の照射時に、照明強度及び温度に応じて、波長570nmで5%という低い透過率を有する。UV光の照射なしでは、この透明積層品は、温度とは無関係に、波長570nmで約96%の透過率を有する。単なるEHMA製の透明積層品と比べれば、この透明積層品の色は変化している(図12参照)。図12中の曲線Iは、100%のポリ(EHMA)中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示し、図12中の曲線IIは、20重量%のMAAと80重量%のEHMAから成るコポリマー中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す。MAAによる吸収スペクトルの移動は明らかであり、そして光学素子の色点の移動を生じさせる。
【0057】
このような、MAAのない比較的透明な積層品は、次の通りに作製することができる。
重量比100のEHMAと、重量比0.5のLTPOと、重量比0.1のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板との間の容積に注入する。
【0058】
方法Bの例は次の通りである。
重量比90のEHMAと、重量比10のビスフェノール-Aと、重量費0.5のルシリン(Lucirine)2,4,6-トリメチルベンゾール酸化ジフェニルホスフィン(BASF社が供給する光開始物質)と、0.1重量%のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板の間の容積に注入する。これに続いて、この混合物を、436nmの波長を有する光で、10mW/cm2の照射強度を用いて80分間照射することによって硬化させる。光重合プロセスの後に、高速の切換時間(着色/脱色が5分未満)を有するフォトクロミック積層品が得られる。こうした透明積層品が0.75mmの厚さを有すれば、UV光の照射時に、照明強度及び温度に応じて、波長570nmで5%という低い透過率を有する。UV光の照射なしでは、この透明積層品は、温度とは無関係に、波長570nmで約96%の透過率を有する。
【0059】
ビスフェノール-Aを用いずに作製した透明積層品と比べれば、この積層品の色は変化している。図13に、100%のEHMAマトリクス中(A)、及びEHMA/ビスフェノール(90/10)マトリクス中(B)の、着色状態のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す。ビスフェノールAがなければ、フォトゾル7-114の着色状態は、波長435nm及び565nmに吸収の最大値を有する。重量比10のビスフェノール-Aを加えることによって、吸収の最大値がそれぞれ、440nm及び575nmに移動する。図13より明らかなように、重量比10のビスフェノール-AをEHMAに加えることによって、吸収の最大値の移動が生じて、これにより、フォトクロミック積層品の色点の移動が生じる。
【0060】
当業者にとって、本発明の範囲内で種々の変形が可能なことは明らかである。
例えば、フォトクロミック層に、反射防止または防眩(眩しさ防止)効果を有する層を加えるか、あるいは、効果を有する層を加えることができる。フォトクロミック材料を包囲する有機ポリマーに安定性を加えて、ラジカルまたは他の反応種に対するフォトクロミック材料の耐性を改善することができる。さらに、フォトクロミック材料の所望の混合物を加えて、例えば、光学素子の色純度あるいは切換速度のような、光学素子の光学特性を微調整することができる。
【0061】
本発明は一般に、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えた光学素子に関するものであり、この光学素子の可視波長範囲における透過率が、この透明コーティング上に局所的に入射する光の変化に応答して変化する。光学素子の迅速な着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を得るために、フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度を有する有機ポリマーで包囲する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による透明コーティングを設けた光学素子を、表示パネルの観察側から見た図である。
【図2】2,2-ジフェニル-2H-ベンゾ[h]クロメンの閉形(CF)と開形(OF)との間の相互変換を示す図であり、開形は2つのメソメリー構造、即ち局在電荷を有する双極の双性イオン形と、より極性の小さいポリエン形またはキノン形で表わすことができる
【図3】切換のオン、オフ時の、ナフトピランの開形の時間分解吸収スペクトルを示す図である。
【図4】ポリエチレングリコール・ジメタクリレートの構造式である。
【図5】コア−シエル粒子を示す図である。
【図6】第5世代のポリ(ポリイミン)・デンドリマーを示す図である。
【図7】透明コーティングに保護層を設けた、本発明の実施例を示す図である。
【図8】本発明の光学素子を光路中に独立して設けた、表示デバイス(CRT)を示す図である。
【図9】本発明の光学素子を表示パネル上に貼り合わせた表示デバイス(CRT)を示す図である。
【図10】貼り合わせを行ったCRTスクリーンを図式的に示す図であり、CRTスクリーンの非平面性により、ポリマー層の厚さは一定でない。
【図11】厚さ1mmのガラス板2枚と、0.11重量%のフォトゾル7-114を含む厚さ1mmのポリ(2-エチルヘキシル・メタクリレート)(ポリ(EHMA))層から成る積層の吸収スペクトルを示す図である。
【図12】100%のEHMAマトリクス(I)中のフォトゾル7-114、及び20重量%のMAAと80重量%のEHMAから成るコポリマー・マトリクス(II)中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す図である。
【図13】100%のEHMAマトリクス(A)中の着色形のフォトゾル7-114、及びEHMA/ビスフェノールA(90/10)マトリクス(B)中の着色形のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 透明コーティング
3 光スポット
4 保護層
【0001】
本発明は、光学素子、及びこの光学素子を設けた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】
国際特許出願WO 98/30923 WO 98/30923は、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えた光学素子を記載しており、この透明コーティングの可視波長範囲における光透過率が、この透明コーティングに局所的に入射する光の強度に依存する。この選択的に透明なコーティングの透過率は、入射する放射の強度が増加すると共に自動的に低下する。
【0003】
この透明コーティングが、シリコン酸化物の無機網目と有機ポリマーから成り、この有機ポリマーはSi-C結合を介して前記無機網目に化学的に結合されている。フォトクロミック材料を具えたこうした光学素子は一般に、ウェットケミカル(湿潤化学的)ゾル−ゲル手順として知られているプロセスによって製造する。ゾル−ゲルプロセスは、アルコキシレンのアルコール溶液に水を被制御で追加して、(均質の)加水分解、(重)縮合を順次行うことによって、これにより、シリコン酸化物または二酸化物の(多孔性の)無機網目を形成するプロセスである。シリコン酸化物の形成が完了したものに熱処理を施せば、高密度の無機網目が出来上がる。
【0004】
好適例では、透明コーティングを表示デバイスの表示窓上に設けている。あるいはまた、透明コーティングをサングラス上に用いることもできる。
【0005】
こうしたフォトクロミックコーティングは、切換(スイッチング)挙動とスクラッチ抵抗との間の妥協点を提供する。こうした従来技術の光学素子の欠点は、これらの光学素子が、透明コーティングに使用するフォトクロミック材料の迅速な着色/脱色について最適化されていない、ということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、とりわけ、光学素子の着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の第1の要点は、フォトクロミック材料が少なくとも部分的に有機ポリマーによって包囲され、この有機ポリマーが摂氏40度以下のガラス遷移温度Tgを有することを特徴とする光学素子を提供する。本発明の第2の要点は、こうした光学素子を具えた画像表示装置を提供する。従属請求項では好適例を規定する。
【0008】
WO 98/30923に記載されているように、既知の光学素子中のポリマー材料は、(純粋な)有機網目中に取り込まれ、WO 98/30923では、光学素子中のフォトクロミック材料は、シリコン酸化物とポリマーから成るハイブリッド(混成)網目である。
【0009】
特別なポリマーのガラス、即ち摂氏40度以下のTgを有する有機ポリマーは、このポリマーを少なくとも部分的にフォトクロミック材料で包囲すれば、非常に優れた切換挙動を示すことが判明している。
【0010】
本発明の最重要点は、フォトクロミック材料が十分な移動性をもつ直接的な環境におかれて、これにより、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色が保証される、ということである。フォトクロミック材料が移動性をもつこうした直接的な環境を得る方法は、前段落に記述した。なお、フォトクロミック材料は、分子レベルに分散させたフォトクロミック染料として、このフォトクロミック染料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のTgを有する有機ポリマーで包囲することができる。さらに、この有機ポリマーを、(純粋な)有機網目の一部とするか、あるいは、WO 98/30923に記載のハイブリッド網目の一部とすることができる。
【0011】
ガラス遷移温度Tgは、有機ポリマーのガラス状態とゴム状態との間の遷移が行われる温度である。Tg以下では、ポリマー連鎖の平均エネルギーが、ポリマーバックボーンの合理的なエネルギー障壁を超えるためには小さすぎるので、このためポリマー連鎖の運動が存在せず、ポリマー連鎖は本質的に凍結して、ガラス状態として知られている固体状態になる。しかし、ポリマーを加熱すれば、ポリマー連鎖の平均エネルギーが増加して、ポリマー・バックボーンの合理的なエネルギー障壁を超えるのに十分になり、ポリマーが自由に運動を行い、ガラス状態からゴム状態への遷移が生じる。ゴム状態の始まりは、分子運動の増加によって生じる著しい体積の増加によって示される。このことが発生する温度は、ガラス遷移温度と称する。Tg以上では、ポリマーがゴム状態であり、ポリマーの自由な運動が、フォトクロミック材料に十分な移動性のある環境をもたらして、このフォトクロミック材料はゴム状態のポリマー中に分子レベルで分散して、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を可能にする。
【0012】
前記有機ポリマーは、摂氏10度以下のガラス遷移温度を有することが好ましい。この値は、有機ポリマーが室温でゴム状態であることを保証する。有機ポリマー連鎖のTg以上での自由な運動は、フォトクロミック材料に大きな移動性を生じさせて、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を促進する。
【0013】
請求項3に規定する好適例では、前記有機ポリマーが、アクリレート(メタクリレート)、ジアクリレート(ジメタクリレート)、スチレン誘導体、ビニルエーテル、ウレタン、及びエポキシドの群から形成したポリマーである。最終的なフォトクロミック・コーティングの、Tgのような特性は、ポリマー・バックボーン及び/または側鎖の化学的組成によって変化させることができる。
【0014】
【非特許文献1】
D. J. Williams, "Polymer Science and Engineering" (Prentice-Hall Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1971) 請求項4に規定する好適例では、前記透明コーティングがコア(核)−シェル(殻)粒子を具えて、このコア−シェル粒子は、有機ポリマー及びフォトクロミック材料から成るコアと、このコアを保護する架橋(橋架け、クロスリンク)ポリマーのシェルから成る。このコアは、摂氏40度以下、好適には摂氏10度以下のガラス遷移温度Tgを有する有機ポリマーを用いることによって、フォトクロミック材料の移動性を改善すべく最適化されている。このシェルの主たる機能は、粒子の保全性を維持して、特に透明コーティングの処理中に、透明コーティング中に発生し得る反応性の種類のものに対してフォトクロミック材料を保護して、これらの粒子を透明コーティングと調和させることである。このシェルは、高いTgを有するポリマーで構成することが好ましい。コア−シェル・ラテックスを用いることが好ましい。コア−シェルの形態は、文献:D. J. Williams, "Polymer Science and Engineering" (Prentice-Hall Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1971)に記載されている。
【0015】
この好適例の最重要点は、剛性のあるマトリクス(例えば、摂氏50度以上のTgを有するポリマー)中に、フォトクロミック材料用の微小環境を作ることにあり、これらの微小環境は十分な移動性を有して、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を保証する。これらの微小環境は、上述したコア−シェル粒子を用いて提供することができ、これらの粒子は剛性のマトリクス中に分散させる。
【0016】
前記透明コーティングは、紫外(UV)及び可視(VIS)の波長範囲の光に対して非拡散性でなければならない。従って、これらの粒子は、小径(約300nm以下、好適には100nm以下)であるか、あるいは、透明コーティングの他の材料に近い屈折率を有する(粒子の屈折率と透明コーティングの他の材料の屈折率との差が0.1未満、好適には0.01未満)かのいずれかであるべきである。
【0017】
さらに、前記粒子は、透明コーティングの他の材料と調和させるべきであり、このことは、ゾル−ゲル系を用いて透明コーティングを製造する際には、粒子の表面をかなり強い極性にして、アクリレートまたはメタクリレートのような反応性の有機モノマーを用いて透明コーティングを製造する際には、粒子の表面をかなり弱い極性にすべきである、ということを意味する。
【0018】
【非特許文献2】
J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 18 November 1994 フォトクロミック材料の、他の剛性のマトリクス中での局所的な移動性を保証する他の方法は、フォトクロミック材料をモノマー混合物と混合させて、これに続いて、請求項5に規定する好適例のような重合を行う前に、デンドリマーまたは超分岐(ハイパーブランチ)ポリマーのキャビティ(空洞)内にフォトクロミック材料を入れることである。デンドリマー及び超分岐ポリマーの分岐は、摂氏約−10度以上の実用的な温度で、自由に運動を行い、従って、デンドリマー及び超分岐ポリマーは可撓性(フレキシブル)であり、この状況は、ゴム状態のポリマーと調和する。このことは、文献:J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 18 November 1994に記載されている。結果的な(できれば剛性のある)ポリマー・マトリクス中では、フォトクロミック材料がフレキシブルなデンドリマーまたは超分岐ポリマー中に封じ込めることによって、フォトクロミック材料は微小環境中で移動性がある。
【0019】
請求項6に規定する光学素子は、基板と保護層との間に透明コーティングを配置し、この保護層は、透明コーティングを摩滅から保護する。透明コーティングが、例えば吸収、引っかき、削れのような環境的な影響を受けるような、一部の光学素子の用途については、本発明の透明コーティングを保護しなければならない。特に、透明コーティングのほとんどの部分が有機ポリマーから成る際には、透明コーティングが、硬さ、耐磨耗性、引っかき耐性に関して、貧弱な機械的強度となり得る。前記保護層は、シリコン酸化物のコーティング、あるいはガラス板(プレート)で構成することが好ましい。
【0020】
あるいはまた、請求項8に規定する光学素子のように、前記透明コーティングがさらに、シリコン酸化物の無機網目を具えている。本発明の有機ポリマーによって少なくとも部分的に包囲されているフォトクロミック材料は、この無機網目内の透明コーティング中に入れる。あるいはまた、前記シリコン酸化物の無機網目は、WO 98/30923に記載の有機ポリマーと組み合わせた無機/有機の組合せ網目を形成することができる。これにより、良好な切換挙動を示し、かつ研磨及び引っかきに対する耐性のある透明コーティングを有する光学素子ができる。
【0021】
請求項9に規定する画像表示装置は、請求項1に規定する光学素子を用い、この光学素子の透過率は、入射する放射が増加するとともに低下してこれにより、生成される画像のコントラストを改善する。本発明の光学素子は、反射した周辺光、及び画像表示装置の内部光源から発生する光に共に影響を与えて、内部光源から発生する光は例えば、陰極線管(CRT)の蛍光体からの光、プラズマ表示パネル(PDP)におけるプラズマ放電からの光、あるいは有機LED表示パネルのようなLED表示パネル内のエレクトロルミネセンス材料からの光である。入射する周辺光は、この光学素子を通過して、例えばCRTの蛍光体またはカラーフィルタで反射して、その後に、反射光は再びこの光学素子を通過する。光学素子の透過率をTとすれば、反射した周辺光の強度は係数T2だけ低下する。しかし、内部光源から発生する光は、光学素子を1回しか横切らないので、この光の強度は係数Tだけしか低下しない。これらの効果の組合せにより、係数T-1だけのコントラストの増加が生じる。
【0022】
【特許文献2】
PCT/IB00/11385 上述した画像表示装置は、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載された積層(ラミネーション)プロセスによって製造することができ、このプロセスは、表示窓(ウィンドウ)、及びこの表示窓の前面に補助的な透明板(好適にはガラス板)を生産し、この表示窓と補助プレートとは、修復可能な材料によって互いどうしを取り付ける。フォトクロミック特性は、フォトクロミック材料を、積層プロセスに必要な樹脂と混合することによって得ることができる。積層プロセスにおける樹脂は、摂氏40度以下、好適には摂氏10度以下のTgを有する有機ポリマーであることが好ましい。あるいはまた、例えば、上述したコア−シェル粒子、デンドリマー、超分岐ポリマーを用いることによって、積層プロセスにおける樹脂が、微小環境を有する剛性のマトリクスを形成して、この微小環境は、フォトクロミック材料の迅速な着色/脱色を保証するのに十分な移動性をフォトクロミック材料に持たせる。前記補助板によって、表示窓が非常に良好な引っかき耐性を有する。表示装置が陰極線管(CRT)である際には、積層プロセスを用いれば、内破(内部への破裂)に対して本質敵に安全なCRTが得られる。
【0023】
請求項10に規定する画像表示装置は光学素子を有し、この光学素子は、透過率が、表示パネルが放射する波長範囲外の入射放射に依存する。結果として、この光学素子の透過率は、画像表示装置そのものが透過させる光に影響されない。
本発明のこれら及び他の要点は、以下に説明する実施例より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。特に、明確にするために、一部の寸法は大きく誇張してある。図では可能な限り、同一構成要素は同一参照番号で参照する。
【0025】
光の透過率を変化させる光学素子は、例えばランプ、バックミラー、自動車のサンルーフ、あるいは建物の窓("スマート・ウィンドウ")、眼鏡のレンズにおいて、(可視)光の透過、及び/または反射に影響を与えるために使用する。
【0026】
この光学素子は、陰極線管(CRT)、プラズマ表示パネル(PDP)、有機LEDのようねエレクトロルミネセンス表示パネル、及び液晶表示デバイス(LCD、LC-TV、またはプラズマアドレスLCD)のような(平面型)表示デバイスの観察側にも使用し、再生画像のコントラストを改善する。
【0027】
図1に、本発明による透明コーティング2を設けた基板1を具えた光学素子を示し、この光学素子は、表示パネルの観察側に設けることができる。表示デバイスの周囲から発生する光スポット3が、この光学素子の一部に入射する。光スポット3を発生させる放射LSは、例えば、直接、あるいは1枚以上の窓ガラスまたは他のものを通して間接的に入る太陽光から発生し得るものであり、この放射が光学素子の一部に入射する。光スポット3は、光学素子の付近にある例えばランプのような他の放射源からも発生し得る。図1には、円形の光スポット3を示す。しかし、光スポット3は任意の形状を有することができ、そして、光学素子の一部または全体に入射し得る。光スポット3は多数の光スポットから成ることもあり得る。特に、光学素子上の異なる位置で、光スポット3の強度が異なることがあり得る。
【0028】
表示パネルの観察側に設けた光学素子の場合には、表示デバイスの表示窓上に再生される画像のコントラストは、光スポット3の強度によって、光スポット3の位置で大幅に低下する。透明コーティング2の1つの特性は、光スポット3の光の強度が増加すると、光スポット3の位置でコーティングの透過率が自動的に低下する、というものであり、これにより、光スポット3の位置で表示デバイスのコントラストが増加する。透明コーティング2の他の特性は、光スポット3の光の強度が(再び)低下するか、あるいは、表示窓上の光スポットが消失すると、光スポット3の位置でコーティングの透過率が(再び)増加する、というものである。一般に、透明コーティングは、コーティング上に入射する(周辺)光の光強度の変化とは逆に反応する。
【0029】
こうした光学素子を表示パネルの観察側で使用するために、光学素子の動的なガラス透過率の範囲は、好適には、日光の照射量に応じて、30%〜70%であるべきである。一般に、表示パネルは、この光学素子におよそ均一な照射が行われる環境に設置するので、光学素子全体の着色/脱色が生じて、高品質の画像が生成される。
【0030】
10分未満の切換時間が好適である。フォトクロミック材料は、好適には、320nm〜400nmの波長を有する光のみに応答すべきである。これらの境界は、320nm以下では前面ガラスパネルが不透明であるということ、及び、この光学素子は、表示パネルが放出する青色光によって放出される光(>400nm)には応答すべきでない、ということによって課せられたものである。感度の点では、この光学素子は、好適には、300ルクス以上の照射レベルを有する日光に応答すべきである。この光学素子は、好適には、中性色、好ましくはグレーになるべきである、というのは、グレーのフィルムは、表示パネルが放出する光の色を変化させないからである。さらに、この光学素子は長寿命であるべきである。動作寿命は、好適には、室内照明の条件では5年を超えるべきである。
【0031】
この光学素子の色は、表示パネル上の画像の色に影響するので、非常に重要である。この光学素子の色は2つの座標x及びyで表現することができ、C.I.E.色度図中の色点と称する。光源が与えられれば、色点は、光学素子の透過スペクトルから計算することができる。表示パネルの明るい部分で観測される色については、表示パネルにおける光源、例えばCRTにおける蛍光体から放出される光が、光学素子を1回だけ通過しているはずである。「ブラック(黒色)」の部分で観測される色については、光源は周辺光であり、光学素子を2回通過しているはずである。従って、明るい部分の色については、光学素子の1回の通過についての色点が重要であり、ブラック部分の色については、2回の通過についての色点が重要である。表示パネルの観察側で光学素子を使用するためには、望ましい光学素子の色はほぼグレーであり、即ち、光学素子は、380nm〜780nmの光をおよそ均等に吸収する。こうしたグレーの光学素子の色点は、x及びyについては0.30〜0.37であり、白色E光に関しては、x及びyについては0.31〜0.35であることが好ましく、これらの値は1回透過及び2回透過についてのものである。こうした色点を有するコーティングは、表示パネル上に表示される画像の色に対して少ししか影響しない。
【0032】
フォトクロミック材料は、照射時に、区別可能な異なる吸収スペクトルと共に、1つの状態から他の状態に(逆方向に)変化することのできる化合物である。フォトクロミック材料の初期状態は、光学製品よりも短い波長を吸収する、という決まりごとが存在する。UV-VIS領域には、誘導放射、並びに吸収スペクトルの変化がよくあるので、フォト化合物の色が変化しても、フォトクロミズム(光互換)は通常可視である。本願では、無色から有色状態に変化するフォトクロミック材料を扱う。このため、順反応(着色)は、光によって誘発されるものと定義し、逆反応(脱色)は、光または熱、あるいは両者の組合せによって誘発され得る。
【0033】
非常に多数のフォトクロミック材料が文献から知られており、これらの材料はいくつかのクラスに分類することができる。特に、表示デバイス用では、光学素子が、スピロピラン、スピロ−オキサジン、フルギド(fulgide)、またはナフトピランのクラスからの材料を具えることができる。スピロピランのクラスからのフォトクロミック材料の例は、6-ニトロメトキシ-1',3',3'-トリメチル-スピロ[2H-1]ベンゾピラン-2,2'-インドリンである。スピロ−オキサジンのクラスからのフォトクロミック材料の例は、1,3,3-トリメチルスピロ[インドリン-2,3'3-トリメチルスピロ[インドリン-2,3'-[3H]ナプト(napth)[2,1-b][1,4]オキサジン]である。ナフトピランのクラスからのフォトクロミック材料の例は、2,2-ジフェニル-2H-ベンゾ[h]クロメンであり、図2に示すものである。スピロ−オキサジン及びナフトピランは、スピロピランよりも高い光学的安定性により、フォトクロミック・コーティングのような実用的な用途には、スピロピランよりも適している。
【0034】
溶液中のこうしたナフトピラン分子によるUV光の吸収は、図に示す炭素−酸素結合の開裂をもたらす。この開形では、事前に分離している2つのπ系の間の共役が可能である。このことは、(UV領域内の吸収帯に加えて、)可視領域内の広い吸収帯の出現、及びこれに伴う分子の色変化をもたらす。いわゆる開形(OF)の構造は、メロシアニンの構造と同様であり、従って、開形はフォトメロシアニンと称される。開形は2つのメソメリー形で表わすことができ、即ち局在電荷を有する双極の双性イオン形と、より弱い極性のポリエン形またはキノン形である。従って、ナフソピランの開形が非常に溶媒和発色性であり、即ち、その吸収スペクトルが溶媒の極性に依存することは驚くに値しない。閉形は開形よりも熱力学的により安定なので、閉環反応は熱活性化プロセスであり、自然発生する。図3に、開形の時間分解吸収スペクトルの例、及び着色/脱色プロセスの説明用のモデルを示す。ナフトピランの閉形(CF)はUV光によって励起されて(CF*)、このことは、炭素−酸素結合の開裂を誘発して開形を生じさせるか、あるいは、基底状態(CF)に戻る競争的な失活プロセスかのいずれかを行う。自然発生的な逆反応により、特定時間後に、無色の閉形と有色の開形との平衡に達して、この平衡のことを光学的平衡状態と称する。この平衡状態では、開環速度が閉環速度に等しくなる。再び照射を停止すると、フォトメロシアニンが脱色を開始する。OFは、異なる配座及び配置の異性体中に存在し得る。開形に異なる異性体が存在することは、開形の比較的広い吸収帯に起因するものであると考えられている。
【0035】
本発明の光学素子を得るためには、透明コーティングを付加する間に、フォトクロミック材料の物理光学特性を保存しなければならない。フォトクロミック材料は、少なくとも部分的に有機ポリマーで包囲することが好ましい。特定の実施例では、有機ポリマーが透明コーティングの主成分である。有機ポリマーのTgが上昇すると共に、従って有機ポリマーの剛性が増加すると共に、フォトクロミック材料の着色及び脱色反応がより低速になる。従って、フォトクロミック材料を包囲する有機ポリマーの物理特性、特にTgは、フォトクロミック材料の物理光学特性の保存にとって重要である。
【0036】
例えば、摂氏123度のTgを有する、ポリ(ポリ(エチレングリーコル)ジメタクリレート)330(モノマーPEGDMA330の平均分子量は330g/molである)中のフォトゾル7-114の脱色時間の半分は、10分以上である。これとは対照的に、摂氏13度のTgを有する、ポリ(ポリ(エチレングリーコル)ジメタクリレート)550(モノマーPEGDMA550の平均分子量は550g/molである)中のフォトゾル7-114の脱色時間の半分は、2分未満である。図4に、モノマーPEGDMAの構造式を示す。図4に示すように、PEGDMA330とPEGDMA550の相違は、モノマーの連鎖長であり、PEGDMA330はnが平均4であり、PEGDMA550はnが平均9である。
【0037】
本明細書では、Tgを、例えばレオメーター科学DTMA装置を用いた動力学的熱解析(DMTA:Dynamical Mechanical Thermal Analysis)測定によって得られる力学的最大損失(tanδmax)の温度として定義する。この測定は、周波数1Hz、2℃/分の加熱率での3点ひずみモードで行うことが好ましい。ここでは、試料の寸法を40×40×1mmとした。
【0038】
前記有機ポリマーは、ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、ポリジクリレートまたはポリジメタクリレート、ポリスチレン誘導体、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリエポキシドのような、光学的に清明なポリマー材料であることが好ましい。重合反応は、ラジカル(遊離基)重合プロセスによって実行することができ、ラジカル重合プロセスでは、光化学的に、熱的に、あるいはe−ビームによってラジカル種を形成する
【0039】
光重合は、高速かつ多用途の方法であるので、好適である。フォトクロミック染料の存在下で光重合を行うためには、ポリマー系及び重合条件が染料と調和しなければならず、さもなければフォトクロミック特性が(部分的に)失われる。PPG Industry社が提供する、ナフトピラン・フォトゾル7-114の存在下でのアクリレートの光重合がその例である。一般に、アクリレートの光重合条件は、ナフトピラン・フォトゾル7-114と調和せず、重合プロセスにおいて生成されるアクリレート・ラジカルは移動性が非常に高く、従って反応性が過大であり、重合中にフォトクロミック材料を破壊する、ということが判明している。さらに、フォトゾル7-114は、開形状態では閉形状態よりもずっと、ラジカルの作用に影響されやすい、ということが判明している。380nm未満の波長を有するUV光を用いてラジカルの生成を誘発すれば、損失が生じることが多い。従って、400nm以上の波長で消滅係数を有する光開始物質を使用すべきである。メタクリレートの光重合により、そして、フォトクロミック材料を(より安定な)閉形のままにする照射波長を用いた際に、ずっと良好な結果、即ちフォトクロミック作用の損失が少ない結果が得られた。例えば、フォトゾル7-114については、この波長は405nm以上である。
【0040】
前述したように、高速の切換時間のためには、中程度または低いTgを有するポリマー系が必要である。しかし、光重合時には、一般に、低いTg系の方が、より高いTg系よりも、フォトクロミック作用が失われる、ということが判明している。このことは、低いTg系において生成されたラジカルは、より高いTg系において生成されたラジカルに比べて、移動度がより高い、ということによって生じたものである。
【0041】
重合プロセスの前に、フォトクロミック染料を、デンドリマーまたは超分岐ポリマー、あるいはコア−シェル粒子中に入れることによって、重合プロセス中に発生するラジカル種からフォトクロミック染料を遮蔽して、これにより、フォトクロミック特性の保存が行われる。
【0042】
あるいはまた、少なくとも部分的に有機ポリマーで包囲したフォトクロミック材料を、ポリマー粒子の形態の透明コーティング中に導入することができる。大きさ、粘度、及び化学的組成のような特性を微調整可能なポリマー粒子には、フォトクロミック材料のような機能特性を有する1つ以上の材料、(色、屈折率、ルミネセンスのような特性を微調整ための)オプションの材料、及び光安定剤を載せることができる。こうして得られる材料は、ポリマー粒子を機能材料用の担体として利用することによって、透明コーティング中に導入することができる。これらの混合物の環境は、透明コーティングの特性に対する影響を最小にして、最適化することができる。従って、"ハード(硬)"ゾル−ゲルにもとづくコーティングのように良好な引っかき耐性を有するコーティング中でも、動的プロセスを実現することが可能になり得る。さらに、機能材料の安定性は、例えば、重合反応中に存在するラジカルのような反応種、及び光学プロセス及び熱プロセスによって発生するラジカルのような反応種から機能材料を保護することによって改善することができ、フォトクロミック材料を反応性モノマーの混合物中に導入する際には、このことが必要になる。本発明の好適な実施例では、透明コーティングが、有機ポリマー及びフォトクロミック材料のコアと、このコアを保護する架橋ポリマーのシェルから成るコア−シェル粒子を具えている(図5参照)。より詳細には、フォトクロミック材料をドーパントとして、コア−シェル・ラテックスのコア中に加える。
【0043】
例えば、ポリ(2-エチルヘキシル アクリレート)(PEHA)のコアを、PS-ESOのような非イオン性の界面活性剤で調製する。このラテックスを濾過し透析して、凝集(アグリゲート)したラテックス粒子及び過剰な界面活性剤をすべて除去する。これに続いて、膨潤手順によって、このコア中にフォトクロミック材料を入れる。こうするために、フォトクロミック材料を適切な有機溶剤中に(界面活性剤と共に、あるいは界面活性剤なしで)溶解させて、次に、この溶液をラテックスに加える。でき上がった混合物を2、3日間攪拌する。これに続いて、このラテックスを濾過し透析して、再び濾過して、沈殿したフォトクロミック材料、凝集したラテックス粒子、及び過剰な界面活性剤をすべて除去する。フォトクロミック材料をコア中に入れた後に、架橋ポリスチレン(PS)を適切なpHに調製して、界面活性剤は特に追加しない。こうして調製した、フォトクロミック材料を含むコア−シェル粒子を再び濾過し、そして凍結乾燥(フリーズドライ)させる。凍結乾燥後のコア−シェル粒子をオーブンで加熱し、この過熱は摂氏50度で、減圧して行う。これらのコア−シェル粒子は、非イオン性の界面活性剤をコア−シェルラテックスに加えて適切なpH調整をすれば、有機溶剤中、あるいは液状アクリル(メタクリル)モノマー中に容易に再分散させることができる。
【0044】
他の例では、PEHAのコアを、PS-EPOブロック−コポリマーのような非イオン性の界面活性剤で調製する。コア−ラテックスを濾過し透析して、凝集したラテックス粒子及び過剰な界面活性剤を除去する。これに続いて、架橋PSのシェルを適切なpHに調製して、界面活性剤は追加しない。そしてコア−シェル・ラテックスを濾過する。その後に、膨潤手順によって、フォトクロミック材料をコア−シェル・ラテックス中に入れる。こうするために、フォトクロミック材料を適切な有機溶剤中に、界面活性剤と共に、あるいは界面活性剤なしで溶解させて、この溶液をコア−シェル・ラテックスに加える。でき上がった混合物を2、3日間攪拌する。こうして調製した、フォトクロミック材料を含むコア−シェル粒子を再び濾過し、そして凍結乾燥させる。凍結乾燥後のコア−シェル粒子をオーブンで加熱し、この過熱は摂氏50度で、減圧して行う。ここでも、これらのコア−シェル粒子は、非イオン性の界面活性剤をコア−シェルラテックスに加えて適切なpH調整をすれば、有機溶剤中、あるいは液状アクリル(メタクリル)モノマー中に容易に再分散させることができる。
【0045】
【非特許文献3】
"Blends of amphiphilic, hyperbranched polyesters and different polyolefins", Macromolecules, Vol. 32, 1999 フォトクロミック材料を有機ポリマーで包囲する他の代替法は、フォトクロミック染料を、柔軟性のあるデンドリマーまたは超分岐ポリマー中に封じ込めて、染料の局所的な移動性を保証することである。図6に、デンドリマーの例を示す。染料をデンドリマー中に入れる例は、文献:J.F.G.A. Jansen, E.M.M. de Brabander-van den Berg, E.W. Meijer, "Encapsulation of Guest molecules into a Dendritic Box", Science, Vol. 266, 1994年11月18日の1226〜1229ページに記載されている。染料を超分岐ポリマー中に入れる例は、文献:"Blends of amphiphilic, hyperbranched polyesters and different polyolefins", Macromolecules, Vol. 32, 1999の6333〜6339ページに記載されている。
【0046】
本発明の光学素子を製造する方法は、例えば、アクリレートまたはメタクリレート樹脂、スチレン誘導体、ビニルエーテル、及びフォトクロミック材料(これは、フォトクロミック材料そのもの、あるいはコア−シェル粒子中または超分岐ポリマー中に入れたもの)のような、2つ以上の機能性を有するモノマーから成る反応性の混合物を使用することである。この混合物を、(厚さ2、3ミクロンの)薄膜層として、例えばガラスパネルのような基板上に付加して、その後に、光化学プロセス、熱プロセスを用いることによって、あるいはe−ビームによって、重合反応を実行することができる。
【0047】
あるいはまた、例えば膨潤手順を用いることによって、フォトクロミック材料をポリマー箔(フォイル)中に入れる。ポリマー箔に適した材料の例は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、あるいはポリビニルブチラールである。これに続いて、感圧接着剤、UV硬化樹脂、あるいは熱硬化樹脂を用いて、この箔を基板の表面上に付加する。
【0048】
【特許文献3】
米国特許出願2001-0006732-A1 例えば、を用いて、ポリビニルブチラール(PVB)箔を膨潤させる。これに続いて、この箔を空気中で乾燥させる。フォトクロミック材料を具えたポリマー箔を、米国特許出願2001-0006732-A1に記載の方法を用いて、基板上に積層させる。あるいはまた、この箔を、ガラス基板1とガラス保護層4との間に配置する。これに続いて、この積層(図7参照)を1バール(105Pa)、摂氏60度で1時間加圧する。
【0049】
表示パネルの観察側に光学素子を用いる場合には、この光学素子を独立したパネルに形成して、図8に示すように、このパネルを光路中の、表示スクリーンの外側に配置することができる。あるいはまた、この光学素子を表示パネル上に積層させるか、あるいは、図9に示すように、表示パネル自体を、光学素子の基板として用いることができる。
【0050】
特定の実施例では、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、ガラス板を表示スクリーン上に積層させる。こうするために、ガラス板4を、表示スクリーン1から特定距離の所に位置決めして、表示スクリーン1とガラス板4との間の容積に、硬化材料(重合または架橋によって硬化する)を充填して、この硬化材料の硬化後に、透明コーティング2ができる。
【0051】
こうして、前段落のガラス板に、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けるか、あるいは、フォトクロミック材料(それ自体、あるいはコア−シェル粒子または超分岐ポリマー中に入れたもの)を、積層プロセスに使用する樹脂中に入れることができる。アクリレートまたはメタクリレート、スチレン誘導体、あるいはビニルエーテルのような樹脂は本来、例えばラジカル重合を用いることによって重合することができる。
【0052】
フォトクロミック材料を含むポリマー層または透明コーティングと、前面ガラスパネルとを積層させたCRTについては、CRTのスクリーンが非平面であることによって、ポリマー層の厚さが一定ではないことがあり得る(図10参照)。フォトクロミック材料が着色状態である際には、こうしたポリマー層の厚さの変化が吸収の変化を生じさせ得るが(層が厚いほど吸収が大きくなる)、このことは許容されない。この問題に対する解決法は、こうした大量のフォトクロミック材料を、波長320nm〜400nmのUV光の透過深度がポリマー層の厚さ未満である(即ち、90%のUV光がフォトクロミック分子によって吸収される深度)ポリマー層中に入れることである。適切な量の染料を入れることによって、UV光の90%が、例えばポリマー層の表面から0.5mm以内の部分に吸収されるが、ポリマー層の厚さは、例えば1mm〜3mmある。このようにして、この表層である「活性(アクティブ)」層内の分子のみが、UV照射時に着色して、均一に着色したフォトクロミック積層品(ラミネート)ができる。
【0053】
例:フォトゾル7-114及びポリ(EHMA)にもとづくフォトクロミック積層品。
図11に、厚さ1mmのガラス板2枚、及び0.11重量%のフォトゾル7-114を含む1mmのポリ(EHMA)層から成るフォトクロミック積層品の吸収スペクトルを示す。0.11重量%のフォトクロミック材料フォトゾル7-114をポリ(EHMA)層中に入れることによって、360nmの波長を有する光の90%が、ポリマー層の表面から0.5mm以内の部分に吸収されて、400nmの波長を有する光の90%が、ポリマー層の表面から1mm以内の部分に吸収される(染料の吸収スペクトルが不均一であることによって、この吸収は波長依存性である)。換言すれば、波長320mm〜400nmのUV光の、ポリマー層内への透過深度は0.5mm〜1mmである。CRT上のフォトクロミック積層品については、積層品中のポリマー層が厚さ1mm以上であれば、この特定濃度の染料で十分である。
【0054】
入手可能なフォトクロミック材料の範囲が広いことから、大方、適切な色を有するフォトクロミック材料を選択することができる。しかし、フォトクロミック材料を本発明の有機ポリマー中に入れると、着色して低透過率状態のフォトクロミック材料の色は、必ずしも十分満足のいくものではない。有機ポリマーの極性を変化させれば、光学素子の色点を微調整することができる、ということが判明している。例えば、紫色の透明コーティングを青色/灰色がかった色の透明コーティングに変化させることができる。さらに、より極性の強い環境を用いることによって、フォトクロミック材料の寿命を増加させることができる。極性の変化は、次の2つの方法のうちの1つによって達成することができる。
A. 有機ポリマーのモノマーを、異なる極性を有する他のモノマーと共重合する。こうした方法の例は、(有機ポリマーを形成する)2-エチルヘキシル-メタクリレートとメタクリル酸の共重合である。
B. 有機ポリマーのモノマーに、このモノマーと異なる極性を有する、可溶性、不揮発性、低分子量、非反応性の化合物を加える。例えば、ビスフェノール-Aを2-エチルヘキシル・メタクリレートに加える。
【0055】
方法Aの例は次の通りである。
重量比80の2-エチルヘキシル・メタクリレート(EHMA)、重量費20のメタクリル酸(MAA)と、重量費0.5のLTPOと、重量比0.1のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板との間の容積に注入する。これに続いて、この混合物を、436nmの波長を有する光で、10mW/cm2の照射強度を用いて80分間照射することによって硬化させる。
【0056】
光重合プロセスの後に、高速の切換時間(5分以内の着色/脱色)を有するフォトクロミック積層品が得られる。こうした透明積層品が0.75mmの厚さを有すれば、UV光の照射時に、照明強度及び温度に応じて、波長570nmで5%という低い透過率を有する。UV光の照射なしでは、この透明積層品は、温度とは無関係に、波長570nmで約96%の透過率を有する。単なるEHMA製の透明積層品と比べれば、この透明積層品の色は変化している(図12参照)。図12中の曲線Iは、100%のポリ(EHMA)中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示し、図12中の曲線IIは、20重量%のMAAと80重量%のEHMAから成るコポリマー中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す。MAAによる吸収スペクトルの移動は明らかであり、そして光学素子の色点の移動を生じさせる。
【0057】
このような、MAAのない比較的透明な積層品は、次の通りに作製することができる。
重量比100のEHMAと、重量比0.5のLTPOと、重量比0.1のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板との間の容積に注入する。
【0058】
方法Bの例は次の通りである。
重量比90のEHMAと、重量比10のビスフェノール-Aと、重量費0.5のルシリン(Lucirine)2,4,6-トリメチルベンゾール酸化ジフェニルホスフィン(BASF社が供給する光開始物質)と、0.1重量%のフォトゾル7-114の混合物を、国際特許出願PCT/IB00/11385に記載のように、表示スクリーンとガラス板の間の容積に注入する。これに続いて、この混合物を、436nmの波長を有する光で、10mW/cm2の照射強度を用いて80分間照射することによって硬化させる。光重合プロセスの後に、高速の切換時間(着色/脱色が5分未満)を有するフォトクロミック積層品が得られる。こうした透明積層品が0.75mmの厚さを有すれば、UV光の照射時に、照明強度及び温度に応じて、波長570nmで5%という低い透過率を有する。UV光の照射なしでは、この透明積層品は、温度とは無関係に、波長570nmで約96%の透過率を有する。
【0059】
ビスフェノール-Aを用いずに作製した透明積層品と比べれば、この積層品の色は変化している。図13に、100%のEHMAマトリクス中(A)、及びEHMA/ビスフェノール(90/10)マトリクス中(B)の、着色状態のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す。ビスフェノールAがなければ、フォトゾル7-114の着色状態は、波長435nm及び565nmに吸収の最大値を有する。重量比10のビスフェノール-Aを加えることによって、吸収の最大値がそれぞれ、440nm及び575nmに移動する。図13より明らかなように、重量比10のビスフェノール-AをEHMAに加えることによって、吸収の最大値の移動が生じて、これにより、フォトクロミック積層品の色点の移動が生じる。
【0060】
当業者にとって、本発明の範囲内で種々の変形が可能なことは明らかである。
例えば、フォトクロミック層に、反射防止または防眩(眩しさ防止)効果を有する層を加えるか、あるいは、効果を有する層を加えることができる。フォトクロミック材料を包囲する有機ポリマーに安定性を加えて、ラジカルまたは他の反応種に対するフォトクロミック材料の耐性を改善することができる。さらに、フォトクロミック材料の所望の混合物を加えて、例えば、光学素子の色純度あるいは切換速度のような、光学素子の光学特性を微調整することができる。
【0061】
本発明は一般に、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えた光学素子に関するものであり、この光学素子の可視波長範囲における透過率が、この透明コーティング上に局所的に入射する光の変化に応答して変化する。光学素子の迅速な着色/脱色に関する性能を改善した光学素子を得るために、フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度を有する有機ポリマーで包囲する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による透明コーティングを設けた光学素子を、表示パネルの観察側から見た図である。
【図2】2,2-ジフェニル-2H-ベンゾ[h]クロメンの閉形(CF)と開形(OF)との間の相互変換を示す図であり、開形は2つのメソメリー構造、即ち局在電荷を有する双極の双性イオン形と、より極性の小さいポリエン形またはキノン形で表わすことができる
【図3】切換のオン、オフ時の、ナフトピランの開形の時間分解吸収スペクトルを示す図である。
【図4】ポリエチレングリコール・ジメタクリレートの構造式である。
【図5】コア−シエル粒子を示す図である。
【図6】第5世代のポリ(ポリイミン)・デンドリマーを示す図である。
【図7】透明コーティングに保護層を設けた、本発明の実施例を示す図である。
【図8】本発明の光学素子を光路中に独立して設けた、表示デバイス(CRT)を示す図である。
【図9】本発明の光学素子を表示パネル上に貼り合わせた表示デバイス(CRT)を示す図である。
【図10】貼り合わせを行ったCRTスクリーンを図式的に示す図であり、CRTスクリーンの非平面性により、ポリマー層の厚さは一定でない。
【図11】厚さ1mmのガラス板2枚と、0.11重量%のフォトゾル7-114を含む厚さ1mmのポリ(2-エチルヘキシル・メタクリレート)(ポリ(EHMA))層から成る積層の吸収スペクトルを示す図である。
【図12】100%のEHMAマトリクス(I)中のフォトゾル7-114、及び20重量%のMAAと80重量%のEHMAから成るコポリマー・マトリクス(II)中のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す図である。
【図13】100%のEHMAマトリクス(A)中の着色形のフォトゾル7-114、及びEHMA/ビスフェノールA(90/10)マトリクス(B)中の着色形のフォトゾル7-114の吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 透明コーティング
3 光スポット
4 保護層
Claims (13)
- フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えた光学素子であって、前記透明コーティングの可視波長範囲における光透過率が、前記透明コーティング上に局所的に入射する放射の強度に依存する光学素子において、
前記フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度Tgを有する有機ポリマーで包囲したことを特徴とする光学素子。 - 前記有機ポリマーが、摂氏10度以下のガラス遷移温度Tgを有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記有機ポリマーが、アクリレートまたはメタクリレート、ジアクリレートまたはジメタクリレート、スチレン誘導体、ビニルエーテル、ウレタン、及びエポキシドの群から形成したポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記透明コーティングが、有機ポリマー及びフォトクロミック材料のコアと、該コアを保護する架橋ポリマーのシェルを有するコア−シェル粒子を具えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記有機ポリマーが超分岐ポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記透明コーティングを、前記基板と、前記透明コーティングを摩滅から保護する保護層との間に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子。
- 前記保護層を、シリコン酸化物またはガラス板で構成したことを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
- 前記透明コーティングがさらに、シリコン酸化物の無機網目を具えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子。
- 前記有機ポリマーが、前記光学素子の色点が変化するように、前記有機ポリマーの極性を適応させる手段を具えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子。
- 前記有機ポリマーが、第1モノマー、及び該第1モノマーの極性とは異なる極性を有する第2ポリマーから成るコポリマーであることを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
- 前記有機ポリマーがさらに、前記有機ポリマーの極性とは異なる極性を有する、可溶性で、不揮発性で、低分子量で、非反応性の化合物を具えていることを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
- 画像を表示する有効部分を有する表示パネルを具えた画像表示装置であって、
前記画像表示装置が、前記表示パネルの前記有効部分の大きさに相当する大きさの光学素子を具えて、
該光学素子が、フォトクロミック材料を含む透明コーティングを設けた基板を具えて、
前記透明コーティング上に入射する放射の強度が増加すると共に、前記光学素子の透過率が低下するように、前記透明コーティングの可視波長範囲における光透過率が、前記入射する放射の強度に依存して、
前記フォトクロミック材料を、少なくとも部分的に、摂氏40度以下のガラス遷移温度Tgを有する有機ポリマーで包囲した
ことを特徴とする画像表示装置。 - 前記表示パネルが放射する光の波長範囲外において、前記光学素子の透過率が、前記コーティング上に入射する放射に依存することを特徴とする請求項12に記載の画像表示装置。
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