JP2004526440A - 真菌における分泌タンパク質の産生のための改良法 - Google Patents

真菌における分泌タンパク質の産生のための改良法 Download PDF

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Abstract

本発明は、改良されたタンパク質産生のためのプロモーターおよび真菌宿主に関する。本発明では、分泌ストレスの下で分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与する機構に対する応答に関してプロモーターを改変した。また、本発明は、真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌における分泌タンパク質の産生のための最適化された方法に関する。特に、本発明は、本方法で使用されるDNA配列、プロモーターおよび真菌宿主に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の真菌、特にトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)およびアスペルギルス・ニガーは、タンパク質生産のためにバイオテクノロジー産業で広く使用されている。通常、組換えタンパク質は、それが異種タンパク質であれ同種タンパク質であれ、真菌において分泌タンパク質をコードし大量に発現している遺伝子のプロモーター、例えばトリコデルマ・リーセイのプロモーターであるcbh1およびアスペルギルス・ニガーのプロモーターであるglaなどの制御の下で産生される。トリコデルマ・リーセイおよびアスペルギルス・ニガーは、同種加水分解酵素を培地中に極めて効率的に産生するが、生産される異種タンパク質の収量は、同種タンパク質の収量に比べて通常かなり低い。特に、遠い種、例えば哺乳動物を起源とするタンパク質の産生は極めて低レベルである(ArcherおよびPeberdy、1997、Penttila、1998)。低収率の理由としては、ポリペプチドの翻訳および分泌経路への移行が非効率なこと、タンパク質のフォールディングおよび輸送の妨害、ならびにmRNAが不安定で異種遺伝子の転写レベルが低いことなどが示唆されている(MacKenzie他1993、Gouka他1997)。
【0003】
タンパク質フォールディングと輸送の障害は、異種タンパク質の産生中に起こりやすく、細胞中でストレス反応を誘導することが知られている。近年、細胞がタンパク質フォールディングおよびプロセシングのために特化された環境であるERの内腔の状態を感知して正常の機能の動揺に対応することができる2つのフィードバック機構が報告されている。これらの機構はアンフォールドタンパク質応答(Unfolded Protein Response)(UPR)を構成し、この応答は、1つはERの内腔におけるアンフォールドタンパク質の存在に反応してシャペロンおよびフォールディング触媒をコードする遺伝子の転写活性(Shamu他、1994)の増加であり、もう1つは真核生物の開始因子2αのリン酸化の増加でこれは細胞において翻訳活性をダウンレギュレートする(Harding他、1999)。酵母および哺乳類細胞の小胞体におけるアンフォールドタンパク質に対する細胞応答が最近Moriによって概説されている(2000)。
【0004】
しかしながら、これらのストレス条件において内因性分泌タンパク質をコードする遺伝子の転写制御についてはほとんど知られていない。特に、細胞のタンパク質をフォールディングし輸送する能力の限界に応じた分泌タンパク質をコードする遺伝子のフィードバック制御に関するデータは一切報告されていない。場合によっては、異種遺伝子が同時に発現された場合、内因性細胞外タンパク質をコードする遺伝子の転写物レベルは対照菌株における発現に比べて低いことが観察されている(Margolles−Clark他1996)。遺伝子の効率的な発現に必要な転写/制御因子の量が異種遺伝子の複数のコピーの発現中に不足するからではないかと説明されている。
【0005】
分泌タンパク質をコードする遺伝子の様々な炭素源および窒素源における制御については糸状菌で詳細に検討されており、トリコデルマ・リーセイにおけるセルラーゼおよびヘミセルラーゼの発現がその好例である。トリコデルマ・リーセイでは、セルラーゼおよびヘミセルラーゼの発現は、環境要件および栄養素の利用可能性によく適応している。複雑な植物材料を含む培地では、(ヘミ)セルラーゼ遺伝子群は協調的に誘導されるが、特異的誘導機構も知られている(Margolles−Clark他1997)。セルロースおよびラクトースまたはソホロースなどのある種のオリゴ糖は、遺伝子の効率的インデューサーであることが知られている。グルコースの存在下では、セルラーゼおよびヘミセルラーゼの発現は異化代謝産物抑制(カタボライト・リプレッション)機構によって厳重に抑制されている。セルラーゼ遺伝子発現の制御に関与するいくつかの制御因子が単離されており、これにはグルコース・リプレッサー遺伝子cre1およびセルラーゼ遺伝子活性化因子として機能すると仮定されてきた遺伝子(ace1およびace2)が含まれる(Saloheimo他2000)。
【0006】
具体的に、ソホロースによって誘導されグルコースの存在によって抑制されない、タンパク質コード領域の上流にあるトリコデルマ・リーセイcbh1プロモーターのヌクレオチド配列からなる改変トリコデルマ・プロモーターが米国特許第6,001,595号に記載されている。この公報は、−184から−1、−161から−1、−140から−1および−161から−133の領域について述べている。この公報は端を切り落としたcbh1の領域について記載しているが、それらをストレス条件下での分泌タンパク質の産生に使用することは提案していない。このプロモーターは、グルコースまたはソホロースの存在下でタンパク質を産生するように設計されている。国際特許出願WO98/23642はセルラーゼ制御因子ace1およびace2について記載し、タンパク質産生の活性化因子として使用することについて記載し、因子の過剰発現によるヘミ(セルラーゼ)発現の改良を示唆している。グルコース抑制解除をもたらす改変体は、WO94/04673に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、糸状菌における分泌タンパク質をコードする遺伝子の発現レベルが、タンパク質合成、フォールディングまたは輸送が障害されると低下するという新規知見に基づいている。この制御機構は、タンパク質合成、フォールディングまたは輸送を妨害する化学薬品(それぞれDTT、Ca2+イオノフォアA23187、ブレフェルジンA)で処理した培養中、または機能的に不完全なタンパク質フォールディング系を有する菌株(遺伝子pdiAに対してアンチセンス転写物を発現する菌株)中で働いていることが立証されている。さらに、tPA(組織プラスミノゲン活性化因子)などの異種タンパク質を産生する菌株では、UPRが活性化されかつ分泌タンパク質をコードする内因性遺伝子の発現レベルが低くなることが示された。発明者は、糸状菌における分泌タンパク質の産生中にこのタイプのフィードバック制御が起きることを初めて見いだした。
【0008】
分泌タンパク質をコードする遺伝子のダウンレギュレーションまたはフィードバック制御と呼ばれるこの現象が、分泌タンパク質をコードする遺伝子またはそれらのプロモーターを選択的に制御し選ばれたタンパク質の産生を増強するために、本発明で利用される。このことは、分泌タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター配列を遺伝子改変し、転写ダウンレギュレーションに対する反応性を変化させることによって達成される。あるいは、ダウンレギュレーションに関与する制御因子、または対応するシグナル伝達経路における因子をコードする遺伝子を、ダウンレギュレーションをなくすかあるいは増強するように改変することができる。通常は分泌ストレス下でダウンレギュレーションを受けるプロモーターの制御下で対象タンパク質の産生が行われる場合には、ダウンレギュレーション機構の不活性化が有益である。例えば、対象タンパク質の発現がダウンレギュレーションを受けないプロモーターの下で行われる場合には、ダウンレギュレーションの増強を利用して他のタンパク質の産生を抑制することができる。
【0009】
本発明では、分泌可能なタンパク質のプロモーター中に位置する特異的な制御領域すなわちDNA配列が転写のダウンレギュレーションに関与することを見いだした。
より具体的には、真菌において分泌可能なタンパク質のプロモーター中に位置するDNA配列の特徴は主に、請求項1の特徴部分に記載されている。
【0010】
分泌ストレス下で分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与するプロモーター中のDNA配列を変異、不活性化または除去して、遺伝子のダウンレギュレーションをなくすか低下させることができる、あるいはプロモーター配列の改変により、例えばダウンレギュレーションを受ける反応性プロモーター要素を増幅することにより遺伝子のダウンレギュレーションを増強することができる。
より具体的には、分泌可能なタンパク質のプロモーターの特徴は主に、請求項6の特徴部分に記載されている。
【0011】
真菌宿主における改良されたタンパク質産生のためのプロモーターを作製する方法は、請求項10の特徴部分に記載されている。
本発明を用い、タンパク質産生に用いられるプロモーターの効率を向上することおよび/または分泌タンパク質の制御システムを操作することによりタンパク質産生に優れた菌株を設計することができる。
より具体的には、最適化されたタンパク質産生のための真菌宿主菌株は主に、請求項12の特徴部分に記載されている。
【0012】
改良されたタンパク質産生のための真菌宿主を産生する方法は主に、請求項26および27の特徴部分に記載されている。
本発明は、遺伝子の発現が非改変プロモーターの場合と同じようにはダウンレギュレーションを受けないように、同種であれ異種であれ、あるタンパク質の産生に使用される同種または異種プロモーターを改変するのに用いることができる。特に、本発明は、異種タンパク質を産生するのに有用であるが、同種タンパク質の産生にも応用することができる。
【0013】
さらに、本発明は、プロモーターのダウンレギュレーションに関与する制御因子の不活性化または活性もしくは発現を低下させるのに使用して、そのプロモーター、プロモーターに結合する制御因子あるいは反応に関与する制御因子の下でのタンパク質産生を改良することができる。
真菌において分泌可能なタンパク質の生産を最適化する方法の特徴は主に、請求項28および30の特徴部分に記載されている。
【0014】
本発明を用いる1つの可能性は、ダウンレギュレーションを受けないプロモーターの下で同種または異種タンパク質を発現させているときに他の同種分泌タンパク質の産生を低下させるために制御因子を過剰発現させることである。このような場合、異種タンパク質は、例えばトリコデルマgpdなどのプロモーターの下で発現かつ分泌され、ストレス条件において影響を受けない。同種分泌タンパク質は、ダウンレギュレートされたプロモーターの下で発現される。ダウンレギュレーションに関与するタンパク質をコードする遺伝子は過剰発現される。
【0015】
また真菌における最適化された分泌可能なタンパク質の生産方法の特徴は主に、請求項31の特徴部分に記載されている。
本発明に従って調製されたDNA配列、プロモーターまたは真菌宿主の使用法の特徴は、請求項31に記載されている。
本発明の他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書では、用語「内因性タンパク質」は、微生物宿主の本体の産物であるタンパク質を意味する。
本明細書では、「組換えタンパク質」は、微生物の本来の産物ではないタンパク質を意味する。所望の同種または異種タンパク質をコードするDNA配列は、適切な方法によって宿主に伝達することができる。「同種タンパク質」は、同一微生物種によって産生されるタンパク質を意味する。「異種タンパク質」は、別の微生物種によって産生されるタンパク質を意味する。
【0017】
本明細書では、「分泌可能なタンパク質」または「分泌タンパク質」は、宿主細胞の外側、培地中に分泌されるタンパク質を意味する。
「改良されたタンパク質産生」は、タンパク質の産生が、ダウンレギュレーションを変えるための遺伝子組換えしていない真菌宿主菌株を用いた場合に比べ、少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%多いことを意味する。
【0018】
本明細書では、「分泌ストレス」または「分泌ストレス条件」は宿主の分泌能力が抑制されている、あるいは分泌経路に負担がかかり過ぎていることを意味する。この抑制は、例えば異種タンパク質の産生または同種タンパク質量の増加によって引き起こされる。あるいはタンパク質の合成やフォールディング、輸送等を妨害する毒素(例えば、イオノフォア、DTTまたはブレフェルジンA(=BFA))によることもある。また、この抑制は、遺伝的手段によりフォールディングまたは分泌経路を変更すること、例えばタンパク質のフォールディングまたは輸送に必要な成分の活性を増強または不活性化することによって引き起こされることもある。しかしながら、UPRと同様に、この分泌タンパク質遺伝子の転写ダウンレギュレーションの機構は、生物体が分泌タンパク質の合成とフォールディングおよび分泌能力のバランスをとるための自然の機構と考えられ、分泌同種タンパク質の合成が誘導された場合などの多くのタンパク質産生条件でも(部分的に)起こることがある。
【0019】
本明細書では、「ダウンレギュレーション」、「転写ダウンレギュレーション」または「フィードバック制御」とは、タンパク質に対応するmRNAレベルが前述の細胞性応答が原因で低下することを意味する。このダウンレギュレーション効果は、分泌タンパク質をコードするmRNAレベルの遺伝子を測定することによって示された。
【0020】
本発明によれば、分泌タンパク質をコードする遺伝子のダウンレギュレーションに関与するDNA配列は、分泌可能なタンパク質をコードする遺伝子のプロモーター中に見いだすことができる。このことは、制御因子などの細胞機構の作用に対する応答の1つとして、遺伝子産物をダウンレギュレートすることができる領域をプロモーターが含んでいることを意味する。
【0021】
前述のように、分泌ストレスの下で遺伝子のダウンレギュレーションを分析するには様々な条件を用いることができる。それらの条件には、例えば、分泌タンパク質(異種または内因性タンパク質)を過剰生産させる、DTT、BFAもしくはCaイノフォアのような毒素を用いる、または遺伝的手段によりフォールディングまたは分泌経路を改変する(例えばタンパク質のフォールディングまたは輸送に必要な成分の活性を増強または不活性化する)ことなどがある。本発明では、培養をDTT、CaイオノフォアA23187、BFAなどで処理すること、異種分泌タンパク質(組織プラスミノゲン活性化因子)を発現させること、あるいは遺伝子操作(アンチセンス技法)によってフォールディング機構を低下させることによって分泌ストレスを模倣した。
【0022】
本発明の目的上、あるプロモーターを含む宿主を(前述のような)分泌ストレス条件の下で培養した場合、そのプロモーターの支配下にあるmRNA量が宿主を非分泌ストレス条件で培養した場合に得られるmRNA量に比べ少なければ、そのプロモーターは転写ダウンレギュレーション(すなわちダウンレギュレーション)に関与するDNA配列を含んでいると規定される。
【0023】
同様に、本発明の目的上、ある宿主を(前述のような)分泌ストレス条件で培養した場合に得られる1つまたは複数の分泌タンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子のmRNA量が、その宿主を非分泌ストレス条件の下で培養した場合に少なくなれば、その宿主は転写ダウンレギュレーションすなわちダウンレギュレーションに関与する制御因子などの機構を備えていると規定される。
【0024】
このダウンレギュレーション効果は、前述のように分泌ストレスの下で遺伝子のmRNAレベルを測定することによって判明する。本発明の目的上、1つまたは複数の分泌タンパク質をコードする遺伝子のmRNAレベルに測定可能な変化を示すことができれば、転写ダウンレギュレーションに関与する機構に対する応答についてプロモーターまたは宿主を遺伝子改変する。言い換えれば、選択された分泌可能なタンパク質の発現(mRNA量)を増加または低下させる。この変化は、非改変プロモーターまたは非改変宿主に比べ、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらにより好ましくは30%以上、最も好ましくは50%以上の増加または減少である。
【0025】
本発明の目的上、「リポーター・タンパク質」は、その発現または量を分析することができるすべての遺伝子またはタンパク質である。前述のように転写ダウンレギュレーションに関与するプロモーターまたは宿主の能力を試験する場合には、リポーター・タンパク質のmRNAレベルを分析することができる。
【0026】
分泌タンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNA配列または領域は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、ハイドロフォビン、プロテアーゼ、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、スウォレニン(swollenin)、およびペクチナーゼなどのタンパク質をコードする様々な遺伝子のプロモーター中に位置する。
DNA配列は、cbh1、cbh2、egl1、egl2、hfb1、hfb2、xyn1、swo、gla、amy、およびpepAのプロモーターを含む群から選択されるプロモーター中に位置していることが好ましい。
【0027】
本発明は、トリコデルマおよびアスペルギルスにより分泌されるタンパク質をコードする多くの遺伝子が転写ダウンレギュレーション機構に支配されることを示している。本発明による分泌可能なタンパク質のプロモーターは、トリコデルマ属の効率的に分泌される加水分解酵素のプロモーターであることが好ましい。プロモーターは、トリコデルマのセルラーゼまたはヘミセルラーゼのプロモーターであることがより好ましい。プロモーターは、トリコデルマのcbh1であることが最も好ましい。また、分泌可能なタンパク質のプロモーターは、アスペルギルス属の効率的に分泌される加水分解酵素のプロモーターであってもよい。プロモーターは、アスペルギルスのプロテアーゼまたはデンプン分解酵素遺伝子のプロモーターであることが好ましい。プロモーターは、gla、amyまたはpepAであることがより好ましい。
【0028】
本発明に例示するように、分泌可能なタンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNA配列は、トリコデルマcbh1プロモーターの−162位の上流(配列番号5)に見いだすことができる。あるいは、−188位の上流(配列番号2)、−211位の上流(配列番号3)、−341位の上流(配列番号4)、−391位の上流(配列番号1)、−501位の上流(配列番号8)、−741位の上流(配列番号9)、−881位の上流(配列番号10)に見いだすことができる。しかしながら、それらは−1031位の下流(配列番号11)、−1201位の下流(配列番号7)、または−1281位の下流(配列番号6)に位置しているようである。したがって、cbh1プロモーター中の分泌可能なタンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNA配列は、ヌクレオチド−1031と−162の間に位置しているようである。最も重要な領域はヌクレオチド−211と−341の間および−501と−1031の間である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、分泌可能なタンパク質のプロモーターは、ダウンレギュレートされないように、またはダウンレギュレーションが軽減されるように遺伝子改変される。
【0030】
本発明に従って改変されたプロモーターでは、分泌タンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNAの効果は様々な変異方法によって減少し、または配列が不活性化もしくは除去されることがある。例えば、分泌可能なタンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNA配列が除去されたプロモーターは、トリコデルマcbh1プロモーターの−501の上流、−188の上流、−211の上流、−341の上流、−391の上流、−162の上流、−881の上流および−741の上流のヌクレオチドを欠くプロモーターで、それぞれ(配列番号16)(配列番号17)(配列番号18)(配列番号119)(配列番号20)(配列番号21)(配列番号22)(配列番号23)にあたる。
【0031】
本発明に従って改変された別のプロモーターでは、標準的な分子生物学の方法を用い、ダウンレギュレーションに関与することを担う配列を増幅することによって分泌タンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNAの効果を増すことができる。
分泌可能なタンパク質の最適化された産生のため、分泌タンパク質をコードする遺伝子の分泌ストレスの下での転写をダウンレギュレートする機構を遺伝子改変した真菌宿主菌株を構築することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、本発明の真菌宿主菌株は、分泌タンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNAの効果が減少もしくは除去されたプロモーター、または分泌タンパク質のダウンレギュレーションに関与するDNAの効果が増加したプロモーターを有することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、真菌宿主中での転写ダウンレギュレーションに関与する制御因子の発現を遺伝子改変することができる。所望ならば、制御因子の発現を軽減もしくはなくすこともできるし、制御因子の発現を増加させることもできる。
【0034】
本発明は、細胞外分泌タンパク質をコードする多くの遺伝子が、この制御機構を明らかにするために用いられた条件下では、転写的にダウンレギュレートされていること、分泌タンパク質をコードする遺伝子は、ほとんど全部ではないとしても多くがこの転写ダウンレギュレーションの下にあることを示している。制御機構の下にある遺伝子、プロモーターおよびタンパク質は、セルラーゼ(セロビオース加水分解酵素、エンドグルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼなど)、ヘミセルラーゼ(キシラナーゼ、マンナーゼ)、β−キシロシダーゼなど、およびアラビノシダーゼ、グルクロニダーゼ、アセチル・キシラン・エステラーゼなどの側鎖切断酵素)、デンプン分解酵素(α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、シクロデキストリナーゼなど)ハイドロフォビン、プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、アスペルギロペプシン)、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、様々なペクチナーゼ(エンドおよびエキソポリガラクツロナーゼ、ペクチン・エステラーゼ、ペクチンリアーゼおよびペクチン酸性リアーゼ)およびリグニナーゼ(リグニン・ペルオキシダーゼ、Mnペルオキシダーゼ、ラッカーゼなど)を含む群から選択することができる。
【0035】
制御機構は、遺伝子cbh1、cbh2、egl1、egl2、hfb1、hfb2、xyn1、swo、gla、amy、およびpepAによってコードされるタンパク質を含む群から選択されるタンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与している。
例えば制御因子はace1遺伝子によってコードされているものであるが、ace1以外の因子もこのダウンレギュレーションに関与している。このことは、実施例の、ace1がすべての培養条件で制御(の主要部)を担ってはいないという事実によって示される。
【0036】
制御機構は、トリコデルマ属の加水分解酵素を制御するものであることが好ましい。トリコデルマのセルラーゼまたはヘミセルラーゼを制御していることがより好ましい。制御因子は、アスペルギルス属の加水分解酵素を制御するものでもよい。アスペルギルスのプロテアーゼまたはデンプン分解酵素を制御していることが好ましい。
【0037】
本明細書では、「真菌産生宿主」は、所望の産物を効率的に産生するために選択または遺伝子改変されたいかなる真菌宿主菌株も意味し、例えば分析的、医学的または工業的用途のタンパク質産生に有用である。宿主菌株は、目的産物を効率的に産生するために遺伝子工学的手段によって改変された組換え菌株であることが好ましい。
【0038】
本発明はここではトリコデルマおよびアスペルギルスの2つの真菌で例示し、転写のダウンレギュレーション機構の一般的性質を示す。他の真菌でもこの機構の改変はタンパク質産生の改良に有用なはずである。
【0039】
本発明の真菌宿主菌株は、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ニューロスポラ属、フザリウム属、ペニシリウム属、フミコラ属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、シュワニオマイセス(Schwanniomyces)属、アルクスラ(Arxula)属、トリコスポロン属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、ピキア属、ハンゼヌラ属、カンジダ属、ヤロウィア(Yarrowia)属、スキゾサッカロミセス属およびサッカロミセス属を含む群から選択することができる。宿主は、トリコデルマまたはアスペルギルス属、例えばトリコデルマ・ハルジアナム(T. harziamun)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(T. longibrachiatum)、トリコデルマ・ビリデ(T. viride)、トリコデルマ・コニンギー(T. koningii)、アスペルギルス・ニデュランス(A. nidulance)、アスペルギルス・テレウス(A. terreus)、アスペルギルス・フィクム(T. ficum)、アスペルギルス・オリザエ(A. oryze)およびアスペルギルス・アワモリ(A. awamori)に属していることが好ましい。宿主は、トリコデルマ・リーセイ(ヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina))またはアスペルギルス・ニガーに属していることが最も好ましい。
【0040】
真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法は、
−分泌可能なタンパク質をコードする遺伝子を選択する工程、
−分泌ストレスの下で分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与する機構に応じて遺伝子のプロモーターを遺伝子改変する工程、
−真菌宿主においてプロモーターの制御の下で所望の分泌可能なタンパク質を産生する工程、および
−宿主の培地からタンパク質産物を回収する工程を含む。
【0041】
本発明によれば、真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法は、
−適切な培地中で上記で定義した真菌宿主を培養する工程、および
−培地からタンパク質産物を回収する工程を含む。
【0042】
タンパク質産物は、細菌または高等もしくは下等真核生物に由来するいかなる産物であってもよく、タンパク質産物は、真菌または哺乳類起源に由来してもよい。タンパク質産物は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、ハイドロフォビン、プロテアーゼ、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、ペクチナーゼなどの加水分解酵素であってもよく、または免疫グロブリンまたはtPAなどのいかなる哺乳類タンパク質であってもよい。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、タンパク質産物を転写ダウンレギュレーションを受けにくいプロモーターから発現させ、その他の望ましくないタンパク質は、ダウンレギュレーションによって制御されるプロモーターから発現させることができる。ダウンレギュレーションを増強することにより、生産を転写ダウンレギュレーションを受けにくいプロモーターから発現されるタンパク質産物にふりむけることができる。このようなプロモーターはgpdなどの構成性プロモーターであってもよい。
【0044】
真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法は、
−分泌可能なタンパク質をコードする遺伝子を選択する工程、
−転写ダウンレギュレーションの機構によって制御不可能なプロモーター中に、選択された分泌可能なタンパク質のコード領域を動作可能に連結する工程、
−適切な培養条件の下で真菌宿主を培養し、真菌宿主においてダウンレギュレーションに関与するタンパク質を過剰産生する工程、および
−宿主の培地から選択された分泌可能なタンパク質を回収する工程を含む。
【0045】
選択された分泌可能なタンパク質は異種タンパク質で、望ましくない分泌可能なタンパク質は同種タンパク質であることができる。
本明細書では、「プロモーターを遺伝子改変してダウンレギュレーションによって制御可能または制御不可能にすること」とは、当技術分野でよく知られている適切な従来型または分子生物学の方法、すなわち部位特異的突然変異誘発または欠失などのDNA技法やは化学薬品もしくは放射線を用いる従来の突然変異誘発などによりプロモーターを改変し、非改変プロモーターと違ってダウンレギュレーションによって制御される、または制御されないようにし、続いて転写ダウンレギュレーション機構が改変された細胞をスクリーニングまたは選択することを意味する。本発明では、トリコデルマcbh1プロモーターの部分を欠失させることによってダウンレギュレーションによって制御されないようにする遺伝子組換えを例示した。
【0046】
本明細書では、「分泌ストレス下でのダウンレギュレーションに関与するタンパク質をコードする遺伝子を遺伝子改変すること」とは、遺伝子を当技術分野でよく知られている適切な従来型または分子生物学の方法により改変して、遺伝子の過剰発現または不活性化、あるいは発現の活性を変化させることを意味する。改変は、部位特異的突然変異誘発または欠失などの組換えDNA技法により行われることが好ましいが、望ましい特性を持つ細胞との交雑または融合などの遺伝子改変のその他の方法を使用することも可能であり、または化学薬品もしくは放射線を用いる従来の突然変異誘発によりおこない、続いて転写ダウンレギュレーション機構が組み換えられた細胞をスクリーニングまたは選択する。
【0047】
我々は、糸状菌に分泌ストレスに反応して分泌タンパク質をコードする遺伝子のダウンレギュレーション機構が存在することを立証した。真菌のトリコデルマ・リーセイおよびアスペルギルス・ニガーでの例を示す。タンパク質合成、フォールディングまたは輸送を妨害する化学薬品で処理した真菌培養を分析することにより、またはフォルダーゼ・レベルの低下を示す真菌株を分析することにより、新規な制御機構の証拠が得られた(実施例1、2、3、4および5を参照)。さらに、異種タンパク質を産生する菌株では、内因性分泌タンパク質をコードする遺伝子はそれらの親菌株に比べて低レベルで発現される(実施例6を参照)。真核生物系では、近年、ERの内腔の状態を感知し、分泌ストレスに応答して攪乱を軽減できる2つのフィードバック機構が報告されている。それらはUPR経路(Shamu他、1994)および翻訳開始の減衰(アテニュエーション)(Harding他、1999)である。我々の新規な知見には、分泌ストレスの下で機能する3番目のタイプのフィードバック制御機構が含まれ、それが特定の遺伝子のプロモーター配列によって仲介されることがcbh1プロモーター配列の下でのlacZ発現からなるリポーター遺伝子系を用いて示される(実施例7および8)。
【0048】
得られた結果に基づき、トリコデルマにおいて分泌タンパク質をコードする遺伝子のダウンレギュレーションに関与するプロモーター領域の性質を明らかにすることができる。関与するプロモーター領域は、例えば様々な程度の欠失のあるcbh1プロモーターの下で細胞外タンパク質をコードする遺伝子のmRNAレベルがダウンレギュレートされる条件、例えばDTTによる処理を用い、lacZリポーター遺伝子発現を検討することによって見つけだすことができる。この分析に基づき選択されたプロモーター領域を、ストレス下および非ストレス下(例えば、DTT処理および非処理)にある培養からの細胞抽出物と一緒に用いてゲル・シフト法を行い、さらに詳細に特異的領域を特定し、制御因子にとって可能な結合部位の特徴を明らかにすることができる。プロモーター配列を比較することにより、ストレス条件に影響を受ける他のプロモーター中でダウンレギュレーションに関与している配列を特定することができる。本明細書に記載の方法または当技術分野で知られている方法を用い、どのような生物体、どのようなプロモーターでも、分泌タンパク質をコードする遺伝子からこの転写ダウンレギュレーションに応答する領域を特定することが可能である。
【0049】
フィードバック制御に関与しプロモーター配列に結合する制御タンパク質のクローニングおよび性質解明は、cbh1プロモーター中(およびダウンレギュレーションを示す他の関連遺伝子中)で特徴の明らかになったプロモーター要素を利用し、例えば酵母ワンハイブリッド(yeast−one hybrid)系を用いて行うことができる。DNA結合タンパク質のクローニングに適用できるシステムは市販されている(例えば、ClontechのMatchmaker(商標))ものや報告されている(例えば、Saloheimo他2000)ものがある。
【0050】
遺伝子のダウンレギュレーションに関与していることが判明したプロモーター配列は、ストレス条件におけるダウンレギュレーションが消滅または軽減されるように改変することができる。これらの手段により、そうでなければダウンレギュレートされると思われる条件下で遺伝子の産生レベルを増加させることが可能であり、改変プロモーター(ダウンレギュレートする配列が改変された)の下での同種あるいは異種遺伝子産物の産生を改良することができる。さらに、ダウンレギュレーションに関与する制御因子を完全または部分的に不活性化し、タンパク質産生を改良することができる。分泌タンパク質をコードする遺伝子のダウンレギュレーションを有することが知られているいかなる生物体、例えば他の種類の真菌、好ましくは他の種類の糸状菌について同様の手法を利用することができる。
【0051】
異種タンパク質の産生は、例えば、化学薬品DTT、BFAまたはA23187による処理と類似したタイプのストレス反応を引き起こすことがある。例えば、ヒト組織プラスミノゲン活性化因子を産生するトリコデルマ・リーセイはtPAの産生中には培養の内因性セルラーゼ転写物のレベルが低いことが観察され(実施例6)、egl1およびcbh1をコードする遺伝子のダウンレギュレーションを示す。内因性細胞外タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターが、ストレス反応を惹き起こす異種産物の発現または同種産物の過剰発現のために使用される場合には、その内因性細胞外タンパク質の発現は、産生中に転写ダウンレギュレーションに関与するフィードバック制御の対象になることがある。プロモーターエレメント、またはプロモーターに結合するか制御シグナルに関与する制御因子を改変することは、ダウンレギュレーション・プロセスを消滅させることによってタンパク質産生を増加させるための手段である。
【0052】
場合によっては、分泌ストレス中にダウンレギュレーションを増強して一部の内因性タンパク質の産生を減少させたり、分泌ストレス中にダウンレギュレートしないプロモーターの下で対象タンパク質を産生することが有益なことがある。このことは、ダウンレギュレーションに関与する制御因子を過剰発現させることおよび/または抑制性制御因子の結合を増すためにプロモーターを改変すること、例えば因子の結合部位数を増やすことによって達成することができる。本発明は、分泌タンパク質遺伝子の発現がダウンレギュレートされるときに、プロモーターがダウンレギュレートされない遺伝子を特定することができる一方法について、トリコデルマ・リーセイgpdプロモーターを例にあげて記載している。
【0053】
これらの手段により、分泌タンパク質をコードする遺伝子を選択的に制御し、産生プロモーターのダウンレギュレーションを減少または不活性化することにより選択されたタンパク質の産生を増強し、またはダウンレギュレーションを増強して他の分泌タンパク質の発現を選択的に抑制することが可能である。本発明はタンパク質生産に利用できるばかりでなく、本明細書に記載の転写ダウンレギュレーションの機構は他の目的で真菌株を改変して宿主において特定の望ましくないまたは望ましいタンパク質の発現を選択的に制御するための手段を提供することを言っておく必要がある。
【実施例1】
【0054】
トリコデルマ・リーセイRut−C30培養におけるCa2+イオノフォアA23187、ジチオスレイトール(DTT)およびブレフェルジンA(BFA)の効果
<RNAおよびタンパク質のサンプリング、代謝標識および分析に使用するトリコデルマ菌株、培養条件および方法>
トリコデルマ菌株および培養条件は基本的に別の場所に記載されている(Pakula他2000;Ilmen他1996)。トリコデルマ・リーセイRut−C30株(Montenecourt & Eveleigh、1979)は、炭素源としてラクトース20gl−1を含有する最少培地((NHSO7.6gl−1、KHPO15.0gl−1、MgSO・7HO0.5gl−1、CaCl・HO0.2gl−1、CoCl3.7mgl−1、FeSO・7HO5mgl−1、ZnSO・7HO1.4mgl−1、MnSO・7HO1.6mgl−1、KOHでpHを5.2に調整)で培養した。2×10個の胞子を含む胞子懸濁液(20%グリセロール中−80℃で保存)を培地200mlに接種し、210rpmで振盪しながら28℃において振盪フラスコ中で培養した。4日間の培養後、培養を新鮮な培地で10倍希釈し、さらに24時間培養し、10mMジチオスレイトール(DTT)、50μg/mlブレフェルジンA(BFA)または5μM Ca2+イオノフォアA23187で処理した。無処理対照培養には保存原液の溶媒を同じ量だけ加えた(A23187およびBFA処理についてはそれぞれ対照培養に0.2%および0.5%DMSO、およびDTT処理については対照に2回(2段)蒸留水を使用)。様々な時点でタンパク質の代謝標識およびRNA単離のために培養を分割した。
【0055】
(Pakula他2000)に記載の方法を用い、35S−メチオニンでタンパク質を代謝標識した。サンプルの調製および標識タンパク質の分析は、基本的に(Pakula他2000)にあるように行った。標識実験は、DTTまたはA23187の添加後10分、またはBFA添加後15分に開始した。[35S]−メチオニン(Amersham SJ1015、in vivo細胞標識等級、1000Cimmol−1、10μCiμl−1)1mCiを、培養を50ml取り分けたものに加えた。無処理培養は並行して同様に標識した。経時的にサンプル2mlを採取した。細胞抽出物および培養上清中の総標識タンパク質は、サンプル中のTCA不溶物のシンチレーション計数によって測定し、標識された特定のタンパク質(例えば、CBHI)は、2Dゲル電気泳動を用いて分析し、タンパク質をPhosphorImager(Molecular Dynamics)を用いて定量した。タンパク質合成および分泌の速度、ならびに平均合成時間および最小分泌時間は、Pakula他2000に記載のように決定した。
【0056】
ノーザン分析については、DTT、BFAまたはA23187で処理した培養および無処理対照培養から処理後0、15、30、60、90、120、240および360分に菌糸体サンプルを採取した。一番目のサンプル(時点0)は、DTT、BFAまたはA23187の添加直後に採取した。菌糸体を濾過し、等容積の0.7%NaClで洗浄し、液体窒素中で直ちに凍結し、−80℃で保存した。総RNAは、基本的に製造者の使用説明書に従いTrizol(商標)(Gibco BRL)を用いて単離した。ノーザン・ブロッティングおよびハイブリッド形成は、標準的手順(Sambrook他)に従って行った。プローブとして遺伝子の完全長cDNAを用いた。
【0057】
<トリコデルマ・リーセイにおけるタンパク質合成および輸送に対するA23187、DTTおよびBFAの効果>
分泌タンパク質をコードする遺伝子のフィードバック制御を、他の生物体においてタンパク質合成、フォールディングまたは輸送を妨害することが知られている薬剤で処理した培養で検討した。Ca2+イオノフォアA23187は、哺乳類細胞においてタンパク質合成を低下させるばかりでなく、ERのCa2+貯蔵を空にすることによってタンパク質のフォールディングおよび輸送を阻害することが報告されている(Bronstrom他1989、LodishおよびKong、1990、Lodish他1992)。ジチオスレイトールは、酵母および哺乳類においてジスルフィド架橋の形成およびタンパク質のフォールディングを阻害する還元剤である(Jamsa他1994、Alberini他1990、Braakman他1992)。BFAによる細胞の処理は、例えば哺乳類ではゴルジ構造を崩壊し、ERからゴルジへのタンパク質の輸送を阻害することが知られているが、その作用は、生物体および特定の細胞タイプによって異なる(Pelham、1991、ShahおよびKlausner、1993)。
【0058】
タンパク質の代謝標識を用い、トリコデルマ・リーセイ培養におけるタンパク質合成および分泌に対するA23187、DTTおよびBFAの効果について特徴を明らかにした(用いた方法についてはPakula他2000を参照)。
標識メチオニンの添加前に、5μM A23187もしくは10mM DTTで10分間または50μg/ml BFAで15分間、培養を処理した。標識総タンパク質ならびに標識された特定のタンパク質を、標識実験の様々な時点で細胞抽出物および培養上清で分析した。
【0059】
総タンパク質合成の速度および総タンパク質分泌の速度は、細胞抽出物および培養上清において時間単位当たりにTCA不溶物中に取り込まれた放射能の量として測定した(図1、TCA不溶物中の放射能はバイオマス乾燥重量1mg当たりで示し、時点0分は、標識メチオニンの添加に当たる)。速度は、処理の初めの15〜45分間に測定された値から推定した。DTTまたはBFAの存在下では、総タンパク質合成の速度は影響を受けなかったが、イオノフォアによる処理は、対照細胞の速度の51%までタンパク質合成速度を低下させた。細胞外標識タンパク質の産生は、DTTまたはBFAで処理した培養中でかなり効率的に阻害された。これらの培養では、総標識タンパク質の培地中への分泌速度は、対照細胞の速度の5%に過ぎなかった。さらに、BFA処理培養では、細胞外タンパク質の産生は、対照培養に比べて顕著に遅くなった。イオノフォアA23187で処理した培養では、標識タンパク質の培地への産生速度は、無処理培養における速度の23%まで低下した。タンパク質合成および分泌の速度を表1に要約して示す(表1では、速度の値は、無処理対照培養における値のパーセントとして示す)。この結果は、DTTおよびBFAはタンパク質合成を妨害しないが細胞からのタンパク質輸送を遮断し、一方A23187はタンパク質合成に対する阻害効果も有していることを示唆している。
【0060】
細胞外タンパク質の合成、具体的にはタンパク質の輸送に対する処理の効果を、モデルタンパク質として真菌類によって産生される主要なセルラーゼであるセロビオヒドロラーゼI(CBHI)を用いて検討した。タンパク質の合成および分泌ならびに輸送中のタンパク質のpIパターン変化は、2Dゲル電気泳動を用いてモニターした(Pakula他2000に記載のように;図2は、各パネルの左から右へ約3.5〜4.5のpH範囲において2Dゲルで分析した標識実験の様々な時点における標識CBHIを示す)。DTTまたはBFAで処理した培養から調製した細胞抽出物では、まさに最初の新生pI型のみが検出でき、タンパク質が生合成経路内では完全には翻訳後修飾されないことを示している。DTT処理培養では、培地中への標識CBHIの産生は一切検出されず、BFA処理培養では、標識実験の末期に微量のCBHIが分泌されたに過ぎなかった(産生速度は、対照培養で測定された速度の4%であった)。この結果は、これらの条件では、不均一なpIをもたらす修飾が行われるコンパートメントにタンパク質が到達する前に、タンパク質の輸送が遮断されることを示唆している。しかしながら、BFA処理培養の培地中で検出された微量のCBHIは完全なpIパターンを獲得しており、タンパク質のごく一部は修飾され輸送されるが、完全に処理された形のタンパク質の量があまりに少ないために細胞抽出物中に検出されないことを示している。タンパク質輸送に対するイオノフォアA23187による処理の効果は明確ではなかった。CBHIのpI型の全パターンの形成は、対照細胞に比べて15〜20分遅くなり、pI型パターンが全部揃ったCBHIは培地中に分泌されたが遅延していた。
【0061】
標識実験の様々な時点における細胞抽出物および培養上清のサンプルからの標識CBHIを2Dゲル中で分析し、PhosphorImager(Molecular Dynamics)を用いて定量した。CBHIの合成および分泌速度(時間単位当たりに産生した標識タンパク質の量)ならびにCBHIの平均合成時間および最小分泌時間などのパラメータを決定した(方法についてはPakula他2000を参照)。図3には標識実験中の標識CBHIの定量結果を示し、これらの条件におけるCBHIの合成および分泌をあらわす推定パラメータを表1に要約して示す。DTTおよびBFA処理培養では完全長CBHIの平均合成時間は影響を受けず、これはこれらの処理によって総タンパク質合成が影響を受けないという結果(上記参照)と合致している。BFA処理培養で測定された分子の最小分泌時間は11分から69分に増加し、DTT処理培養ではこの条件下で産生された細胞外タンパク質は極めて少量であるためにパラメータを決定できなかった。イオノフォアA23187で処理した培養では、CBHI合成ならびにタンパク質の輸送が影響を受けた。対照培養に比べA23187で処理した培養中でのCBHIの最小分泌時間は10分増加し、CBHIの合成時間は対照培養中よりも3〜4分長かった。
【0062】
驚いたことに、DTTまたはBFAによる処理は、総タンパク質合成の速度を低下させるかCBHI分子の合成に必要な時間を延ばすことはなかったが、DTTまたはBFA処理培養中ではCBHI合成の速度(時間単位当たりに合成された標識CBHIの量)が低下することが見いだされた(表1では、速度は、対照培養で測定された値のパーセントとして示す)。CBHI合成速度は、DTT処理培養では対照培養中で測定された速度の4〜24%であり、BFA処理培養中では52%であった。合成されたCBHIの大部分は細胞内に残る。培地中へのCBHI産生の速度はDTT処理培養中では測定できず、BFA処理培養では対照培養中で測定された速度の4%であった。イオノフォアA23187で処理した培養では、CBHI合成の速度は、総タンパク質合成速度より大きな影響を受けた。CBHI合成の速度は、対照細胞中で測定された速度の26%であり、総タンパク質合成速度は51%であった。培地中へのタンパク質分泌速度は、CBHIの合成速度と同程度に低下した(対照培養中で測定された速度の27%)。
【0063】
この結果は、BFAまたはDTTによる処理はトリコデルマにおけるタンパク質輸送を明らかに妨害し恐らくERからのタンパク質輸送を妨げるが、A23187による処理はタンパク質輸送にわずかな遅れを引き起こすに過ぎないことを示している。DTTまたはBFAで処理した培養では、総タンパク質合成活性は影響を受けないが、分泌モデルタンパク質のCBHIの合成速度は、タンパク質輸送の障害と同時に特異的に低下した。A23187処理培養では、総タンパク質合成速度の明らかな低下が測定されたが、CBHIの合成速度は、総タンパク質合成に対する効果に比べてより大きな影響を受けた。
【0064】
【表1】
Figure 2004526440
【0065】
<Ca2+イオノフォアA23187、DTTまたはBFAで処理したトリコデルマ・リーセイにおけるUPR反応に関与するフォルダーゼPDII、シャペロンBIPI、および転写因子HACIをコードする遺伝子の転写物レベル>
A23187、DTTまたはBFAによる処理中に採取したサンプルのノーザン分析を行い、転写レベルにおける処理の効果について検討した。また、DTTまたはBFAで処理した培養中のタンパク質輸送およびフォールディングにおける妨害は、pdi1およびbip1遺伝子の誘導(図4、pdi1についての結果はすでに報告されている;Saloheimo他1999)および、活発に翻訳されてUPR反応に関与する短形のhac1転写物の発現(図5は、各時点における全hac1シグナルで正規化した短形および長形の転写物のシグナルを示す)が示すように、アンフォールド反応(UPR)経路の活性化として現れた。A23187処理培養では、タンパク質輸送はわずかに影響を受けたに過ぎず、合成されたタンパク質の総量は減少した。これらの条件では、pdi1およびbip1の誘導は観察されなかった(図4)。しかしながら、短形のhac1mRNAの一過性かつ弱い発現がA23187処理細胞で観察され、UPR経路に対する若干の効果を示している(図5)。
【0066】
Ca2+イオノフォアA23187、DTTまたはBFAで処理したトリコデルマ・リーセイ培養における内因性分泌タンパク質をコードする遺伝子の転写物レベル
DTTまたはBFA処理培養では、無処理対照細胞に比べてCBHI合成速度は低下したが、これらの条件下では総タンパク質合成は影響を受けなかった。A23187処理培養では、CBHIの合成は、処理培養中の総タンパク質合成に比べて大きく妨げられた。薬物で処理した培養から調製したサンプルのノーザン分析は、cbh1のmRNAレベルが処理中に顕著に低下したことを示した(図6、処理の様々な時点でgpdのシグナルで正規化したcbh1シグナル)。mRNAレベルの低下は、標識実験におけるタンパク質の合成速度の低下を少なくとも部分的には説明するように見える。DTTおよびA23187処理培養では、遺伝子のmRNAレベルの低下の動態はRNAの測定半減期に対応した。BFA処理培養では、低下は若干少なめであった。同様の低下は、処理中のegl1mRNAレベルで観察された(図6、処理の様々な時点でgpdのシグナルで規格化したシグナル)。さらに、DTT処理培養のサンプルについて、より広範囲な遺伝子についてノーザン分析を行った。細胞外タンパク質をコードする様々な他の遺伝子、例えばxyn1およびhfb2の転写物レベルが低下し(図7)、細胞外タンパク質をコードする多くの遺伝子が、タンパク質の合成、フォールディング、または輸送に制限がある時にはフィードバック制御の下にあることを示している。
【0067】
また、ダウンレギュレーションは、真菌類によって発現されるすべての遺伝子に影響を及ぼすわけではないが、細胞外タンパク質をコードする遺伝子の群には共通していることは明らかである。UPRの制御下にアップレギュレートされる遺伝子に加え、ダウンレギュレートされない遺伝子がいくつか見いだされた(図8)。興味深いことに、細胞内β−グルコシダーゼをコードするbgl1は真菌類が利用できる炭素源に応じてセルラーゼと同様な制御を受けるにもかかわらず、これらの条件下ではbgl2のmRNAレベルは低下しない。小胞輸送で機能するタンパク質をコードする遺伝子、例えばsar1(Veldhuisen他1997)およびypt1の発現レベルは、DTTによる処理によって影響を受けなかった(Saloheimo他投稿中)。その発現がDTT処理によって明らかには影響を受けないその他の遺伝子は、例えばcDNA1およびgpd(グリセルアルデヒド−6−P−デヒドロゲナーゼ)である。このgpdシグナルをノーザン分析でのシグナルの正規化に用いた。
【実施例2】
【0068】
DTTで処理したアスペルギルス・ニガーの培養における内因性分泌タンパク質をコードする遺伝子の転写物レベル
<アスペルギルス・ニガー菌株、培養条件およびRNAのサンプリングおよび分析に使用する方法>
実験で使用するアスペルギルス・ニガー菌株は、AB4.1(van Hartingsveldt他、1987)およびAS1.1(Ngiam他、2000)とした。0.1%Tween20(Sigma、UK)に再懸濁した胞子を、最終密度が培地1ml当たり1×10個となるよう液体培地に接種した。菌株はポテト・デキストロース寒天斜面(Difco、USA)上で維持した。アスペルギルス・ニガーAB4.1の場合には、10mMウリジンを培地に追加した。胞子を形成するまで30℃で斜面培養し、実験毎に更新した。液体培養に関するすべての実験にはACMS/N/P培地(Archer他、1990)を使用した。アスペルギルス・ニガーAB4.1培養にはやはり10mMウリジンを追加した。培養は、50ml三角フラスコ中の培地100ml中、25℃、150rpmで培養した。DTTストレス実験では、AB4.1培養を44時間培養してから2MのDTT1mlを加え、最終濃度20mMとした。対照AB4.1培養には等容積の水を加えた。培地交換実験では、培養はACMS/N/P中で25℃および150rpm44時間行った。Miracloth(CalBiochem、USA)により菌糸体を収集し、25℃に温めておいた炭素源を含まない培地100mlで2回洗浄した。次いで、あらかじめ温めておいた、必要に応じて添加物を加えたACMX/N/P100mlを入れたフラスコに菌糸体を移し、前と同じ条件でインキュベーションを続けた。ACMX/N/Pは、1リットル当たり可溶性デンプン10gの代わりに1リットル当たりキシロース10gを含有するという点でACMS/N/Pとは異なる。
【0069】
2層のMiraclothにより菌糸体を収集し、液体窒素中で瞬間冷凍した。次いで、液体窒素中で菌糸体を粉砕して細かい粉末とし、Edwards Modulyo凍結乾燥器中で2日間凍結乾燥した。凍結乾燥器中で乾燥すること2日後、次いでさらに1日後に菌糸体の重量を測定して乾燥重量を決定した。この期間に重量の減少が一切観察されない場合には、培養物は完全に乾燥していると見なした。
【0070】
総RNAは、製造者の使用説明書に従ってRNeasy Plant Mini Kit(Qiagen、UK)を用い、凍結乾燥し粉砕した菌糸体100mgから抽出した。Uvikon 850分光光度計(Kontron Instruments、UK)で230、260および280nmにおける吸光度を読み取ることによってRNAを定量した。260nm:280nmの読み取り値の比が2.0を超えれば良質のRNAを示していると見なした。また、7%ホルムアルデヒド・ゲル(Sambrook他、1989)上でサンプルを泳動することによってRNAの品質を評価した。ノーザン・ブロッティングの場合には、1レーン当たりRNA10μgを7%ホルムアルデヒド・ゲル上で電気泳動した(Life Technologies Horizon 11−14サブマリン・ゲル電気泳動タンク、25V、6時間、MOPS泳動バッファー(Sambrook他、1989))。サンプルは、Sigma RNAローディング・ダイ(Cat.# R4268)を用いて調製した。電気泳動後、DEPC処理水(Sambrook他、1989)で20分間づつ5回、ゲルを洗浄し、次いで50mM NaOH中に10分間浸漬した。Hybond XLナイロン膜(Amersham Intl.UK)への転写は、製造者の使用説明書に従って転写用バッファーとして10×SSC(Sambrook他、1989)を用い、Appligeneバキューム・ブロッターを用いて行った。転写時間は2.5時間とした。転写後、ブロットを50mM NaOH中に5分間浸漬し、次いで2×SSC中で30秒間洗浄してから一夜空気乾燥した。
【0071】
ノーザン・ブロットのためのプローブは、製造者の使用説明書に従ってMegaprime標識キットおよびα−32P dATP(どちらもAmersham Intl.、UK)を用いて標識した。glaAプローブは、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ遺伝子(Boel他、1984)の配列中の座標+1059から+1696に対応する637bp断片とした。アクチン・プローブは、アスペルギルス・ニデュランスのγ−アクチン遺伝子(Fidel他、1988)中の座標+889から+1654に対応する765bp断片とした。pdiAプローブは、アスペルギルス・ニガーのpdiA遺伝子(Ngiam他、1997)の配列中の座標+63から+365に対応する303bp断片とした。pepAプローブは、アスペルギルス・アワモリのアスペルギロペプシン遺伝子(Berka他、1990)中の座標+1186から+1631に対応する445bpフラグメントとした。bipAプローブは、アスペルギルス・ニガーのbipA遺伝子(van Gemeren他、1997)の座標+712から+1156に対応する445bpフラグメントとした。すべてのプローブは、アスペルギルス・ニガーのゲノムDNAからPCRによって増幅し、Qiaquickゲル抽出キット(Qiagen、UK)を用いてアガロース−TAEゲルから精製した。
【0072】
プローブDNAを加える前に、Hyb9ハイブリダイゼーション溶液(Puregene、USA)中30分間、65℃においてブロットを予備交雑した。次いで、65℃において一夜、ハイブリダイゼーションを行った。ブロットは、2×SSC、0.1%SDS中(65℃,15分間)2回、次いで0.1×SSC、0.1%SDS中(65℃,30分間)で1回洗浄した。ブロットを可視化し、FujiFilm BAS1500バイオイメージングアナライザー(phosphorimaging system)を用いてバンド強度を定量した。RNA負荷量は、γ−アクチン・プローブを用いて正規化した。グラフに示す図は、標的mRNAシグナルとγ−アクチンのシグナルとの比を表している。シグナルは、各リン光イメージ・プレート上のブロットに対する曝露時間に左右される。様々なグラフ上の値は転写物の絶対レベルを表していないため、直接比較することはできない。
【0073】
<アスペルギルス・ニガー培養における遺伝子glaA、pepA、pdiAおよびbipAの転写物レベルに対するDTTの効果>
図9は、DTTの時間経過実験(ストレス試剤の添加から10時間、3回測定の平均シグナル)から得られた結果を示している。パート(A)は、この期間のglaA遺伝子の定常状態RNAレベルに対する効果を示している。明らかに分かるように、DTT処理培養では、mRNAの量が経時的に着実に減少し、半減期は約70分であった。このことは、glaA mRNA合成の非存在下でのglaA mRNAのT1/2が約70分であることを示す本研究室で行った培地交換試験のデータとよく相関している(図10)。したがって、図9Aにおける結果は、DTT処理がglaAの転写を阻害し、glaA mRNAのレベルの減少は生体内の正常な分解によることを示唆している。図9Bは、別の分泌タンパク質アスペロギロペプシン(pepA)に対するDTTストレスの効果を示している。この遺伝子は、培地のpHが酸性に傾いた場合にのみ誘導されるため、時間経過の後期まで転写は起こらない。データは、対照培養中ではpepA mRNAのレベルの増加が認められるが、DTT処理培養では有意な増加が認められないことを示している。図9CおよびDは、アンフォールドタンパク質反応に関与する遺伝子に対するDTTの効果を示している。示したpdiAおよびbipAのどちらの遺伝子も、ストレス試剤の添加に迅速な反応を示す。この反応は一過性のようには見えず、逆にいうと長続きするようである。このことがDTT添加後の長時間にわたるメッセンジャーRNAの産生によるものか当該mRNAの長い半減期によるものかは不明である。
【実施例3】
【0074】
グルコアミラーゼ・プロモーターの制御下にpdiAアンチセンス転写物を発現するアスペルギルス・ニガーの培養における遺伝子glaAおよびpepAの転写物レベル
pdiAアンチセンス構築体を発現するアスペルギルス・ニガー菌株およびその親菌株におけるglaAおよびpepAの発現を比較した。菌株の培養およびRNA分析の方法は実施例2に記載した。
【0075】
図11は、グルコアミラーゼ・プロモーターの制御下にpdiAアンチセンス配列の複数のコピーを含むアスペルギルス・ニガーAS1.1と、親菌株のアスペルギルス・ニガーAB4.1を比較し、炭素源としてデンプンを含有する培地上で培養した場合に得られたデータを示している。パネル(a)は、glaA遺伝子のmRNAレベルに対する効果を示している。最初の時点(24時間目)からAS1.1菌株におけるglaA mRNAのレベルは漸減を示すが、AB4.1では増加することが分かる。このことおよび図1におけるパネル(a)から分かるように、親菌株(AB4.1)におけるglaA mRNAのレベルは、正規化に用いたγ−アクチンのレベルに対しても実際に増加している。これは一部にはglaA mRNAの長い半減期に起因している可能性がある。すなわちmRNAの分解の速度が、合成の速度よりも有意に低くその結果このmRNAの集団が増えつづけるのであろう。パネル(b)にはpepA遺伝子の転写に対する効果を示す。やはり、AS1.1におけるmRNAのレベルは親のAB4.1に比べて著しく低かった。パネル(c)は、この実験における乾燥重量測定値を示しており、アンチセンス構築物が発現した場合に真菌の生育に対する有意な効果はないことを示している。
【実施例4】
【0076】
gpdAプロモーターの制御下にpdiAアンチセンス転写物を構成的に発現するアスペルギルス・ニガーの培養における遺伝子glaAの転写物レベルおよび分泌グルコアミラーゼのレベル
gpdAプロモーターの制御下にpdiAアンチセンスcDNAを構成的に発現するアスペルギルス・ニガー菌株(ASG67株)およびその親菌株におけるglaAの発現を比較した。菌株の培養およびRNA分析の方法は実施例2に記載した。分泌されたグルコアミラーゼ・タンパク質レベルの分析については、各フラスコから培養濾液のサンプル7mlを採取し、必要となるまで−20℃で保存した。グルコアミラーゼの測定に用いた方法は、MacKenzie他(1994)の方法とした。
【0077】
図12は、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ・プロモーターの制御下にpdiAアンチセンス配列の複数のコピーを含むアスペルギルス・ニガーASG67と親菌株のAB4.1を、炭素源としてデンプンを含有する培地上で培養し比較して得られたデータを示している。パネル(a)は、分泌グルコアミラーゼのレベルに対する効果を示している。これから分かるように、分泌グルコアミラーゼのレベルは経時的に両菌株中で増加するものの、アンチセンス菌株でのレベルは、特に真菌の生育後期には親菌株(AB4.1)でのレベルよりも低い。パネル(b)では、glaA遺伝子の転写物レベルに対する効果を見ることができる。36時間目で同一の転写物レベルに達した後、親菌株(AB4.1)では転写物レベルが漸増しているが、pdiAアンチセンス菌株(ASG67)ではそうではない。パネル(c)は、実験における乾燥重量測定値を示しており、アンチセンス構築体が発現した場合も真菌の生育に対して有意な効果は認められないことを示している。
【実施例5】
【0078】
pdiAアンチセンス転写物を構成的に発現するアスペルギルス・ニガーにおけるhacA転写物のスプライシング
pdiAアンチセンス配列を構成的に発現するアスペルギルス・ニガー菌株およびその親菌株において、アンフォールドタンパク質反応に対してプラスに作用する制御因子をコードするhacA転写物のスプライシングを分析した。菌株の培養およびRNA分析の方法は実施例2に記載した。実験で使用するhacAプローブは、VTTにおいて単離されたhacA cDNAとした。同じ培養物が、実施例4におけるデータが得らるのに使用された。
【0079】
図13は、経時的なhacAのノーザン・ブロットを示している。アンフォールドタンパク質反応(UPR)の誘導があった場合には、ゲル上にあるmRNAよりもわずかに低い第二のmRNA分子種が現れるであろう。存在するmRNAはスプライシングされていないhacAと正確に同じサイズである。これらのデータは、UPRの誘導が存在しないことを示唆し、転写ダウンレギュレーション機構はUPRとは区別され、異なったやり方で制御されていることを意味している。
【実施例6】
【0080】
異種タンパク質を産生するトリコデルマ・リーセイ菌株における内因性分泌タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル
<培養物の分析に使用する菌株、培養条件および方法>
ヒト組織プラスミノゲン活性化因子(tPA、Verheijen他、1986)を産生するトリコデルマ・リーセイRut−C30株は、Penttila他、1987に記載の方法を用い、図14Aに示す発現カセットで親菌株を形質転換することによって構築した。
【0081】
tPA産生菌株および親菌株Rut−C30は、並行してバイオリアクター中で培養した。使用する培地は、VTT Biotechnologyにおいて用いられるラクトースをベースにした緩衝化培地(ラクトース40g/l、ペプトン4g/l、酵母エキス1g/l、KHPO4g/l、(NHSO2.8g/l、MgSO×7HO0.6g/l、CaCl×2HO0.8g/l、微量元素を追加)とした。バイオマスの乾燥重量は、実施例7に記載のように測定した。培地中のラクトース濃度は、Boehringer Mannheimから購入したキットを用いて決定し、培地中の総タンパク質は、BioRadから購入したProtein Assayを用いて測定し、HEC活性は、(BaileyおよびNevalainen、1981;IUPAC、1987)に記載のように測定し、tPA濃度は、TNO(オランダ)より提供されたEIAキットを用いて測定した。RNA単離およびノーザン分析は、実施例1、7、8、および9に記載のように行った。
【0082】
<tPA産生菌株およびその親菌株における内因性細胞外タンパク質の発現>
トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA(ヒト組織プラスミノゲン活性化因子)を産生する形質転換体で、内因性分泌タンパク質の産生および対応する遺伝子の発現について検討した。tPAは、真菌によって極めて少量産生され、宿主における様々なストレス反応を誘導することが期待される異種タンパク質の一例である。この形質転換体は、約5個の発現カセットのコピーを持つと推定され、cbh1プロモーターの下でCBHI融合タンパク質としてtPAが産生される。
【0083】
2つの菌株においてタンパク質産生および対応する遺伝子の発現を比較するため、バイオリアクター中で並行培養を行った。バイオマスの生成および炭素源ラクトースの消費を培養中に測定し、生育をモニターした(図14B)。培地中に産生した総タンパク質およびセルラーゼ活性(基質HECに対する活性で主にエンドグルカナーゼ活性を測定する)を培養の始めから終わりまで測定した(図14C)。ノーザン分析を行い、培養物におけるegl1(図14D)、cbh1(図14E)およびbip1(図14F)の発現を分析した。ノーザンにおけるシグナルの正規化にはアクチンのシグナルを用いた。
【0084】
2つの菌株は、培養中にどちらかと言えば同様に生育したが、tPA産生菌株が培地中に産生した総タンパク質およびセルラーゼ活性は、親菌株に比べてかなり低かったことは明らかである。形質転換体によって産生されたtPAは、産生された総タンパク質のわずかな部分に過ぎず、得られた最高収量は25mg/lであった。tPA産生培養菌における低いタンパク質産生と合致するように、細胞外エンドグルカナーゼIをコードするegl1およびセロビオヒドロラーゼIをコードするcbh1の発現レベルも、tPAを産生する培養菌の方が低かった。tPA産生培養中でシャペロン遺伝子bip1の発現が誘導され、異種タンパク質の産生によるUPRなどのストレス反応の活性化を示している。このように、形質転換体における分泌タンパク質をコードする内因性遺伝子の低い発現レベルは、分泌ストレス中に働くダウンレギュレーション機構のためと考えられる。
【実施例7】
【0085】
トリコデルマ・リーセイのDTT処理培養における完全長cbh1プロモーターおよび最小cbh1プロモーターの下でのリポーター遺伝子lacZの発現−ダウンレギュレーションにおけるプロモーター配列の役割
<RNAサンプルの分析に使用する培養条件、および方法>
QM9414株(Mandels他、1971)ならびにそれに由来しcbh1プロモーターの下で大腸菌lacZを発現するpMI34およびpMLO16(Ilmen他、1996)を、0.05%プロテオース・ペプトンおよび20g/lソルビトールまたはグリセロールを含有する最小培地上で培養した。8×10個の胞子を生育培地200mlに接種し、三角フラスコ中で210rpmで振盪しながら28℃で培養した。培養開始23時間後および32時間後にα−ソホロース(1mM)を加え、ソルビトール培地上でセルラーゼ遺伝子発現を誘導した。培養開始40時間後に10mM DTTによる培養物の処理を開始した。RNA単離のため菌糸体サンプルを採取し、実施例1に記載のようにノーザン分析にかけた。ソホロース誘導およびDTTの処理の前後には、菌糸体サンプルを濾過し恒量になるまで105℃において乾燥する(24時間)ことにより、培養物の乾燥重量を測定した。培養物の乾燥重量は、DTTによる処理の開始時には1.1〜1.4g/lであった。
【0086】
<DTT処理中のcbh1プロモーターの下でのリポーター遺伝子活性>
mRNAレベルのフィードバック制御が、その遺伝子のプロモーター配列によって仲介されるか否かを検討するため、リポーター遺伝子系を用いた。リポーター遺伝子発現カセットの概略図を図15Aに示す。大腸菌lacZ遺伝子を、トリコデルマ・リーセイ菌株のcbh1プロモーター、すなわち2.2kbの完全長cbh1プロモーターあるいは161bpの最小プロモーターの下で発現させ、菌株をDTT処理している間の発現レベルを検討した。gpd1のシグナルで正規化したlacZシグナルの定量を図15Bに示す。lacZ転写物レベルは、完全長cbh1プロモーターの下で発現する場合にのみDTT処理中にダウンレギュレートされた。しかしながら、推定上のTATAボックスおよび転写開始部位を含む最小のcbh1プロモーターをlacZ発現に用いた場合には、その短いプロモーターは機能しかつソホロースによる誘導もできるにもかかわらず、ダウンレギュレーションは観察されなかった。ダウンレギュレーション機構がこれらの条件下でこれらの菌株で機能することを確認するために、egl1の転写物レベルを両菌株で分析した。この結果は、cbh1プロモーター中の配列エレメントがダウンレギュレーションには必要であり、mRNAの不安定性以外の機構がこのプロセスに関与していることを示している。
【実施例8】
【0087】
トリコデルマ・リーセイのDTT処理培養における切り詰めcbh1プロモーターの下でのリポーター遺伝子lacZの発現−分泌ストレス条件下にプロモーターのダウンレギュレーションに関与するプロモーター領域の同定方法
切り詰めcbh1プロモーターの下に大腸菌lacZ遺伝子を持つトリコデルマ・リーセイ菌株を培養し、実施例7に記載のようにDTTで処理し、lacZ遺伝子の発現を分析した(実施例7と同様)。図16Aは、様々な菌株におけるlacZ発現に使用したcbh1プロモーター構築物の概略図を示している。DTTで処理した培養および無処理培養におけるlacZ、egl1およびgpd1 mRNAレベルのノーザン分析を図16B、CおよびDに示す。分泌ストレス条件(例えば、DTT処理培養)の下でダウンレギュレーションを受けやすい内因性遺伝子の例としてegl1のmRNAレベルを分析し、サンプル負荷の対照としてgpd1のシグナルを用いた。lacZおよびeg1l mRNAのシグナルを定量しgpd1のシグナルで正規化し、処理の様々な時点におけるDTT処理サンプルのシグナルと対照サンプル中のシグナルの比をグラフとして示す。cbh1プロモーターの長さが1029bp以上である構築物を持つ菌株では(図16Bに示す)、DTTによる処理中に2.2kbの完全長cbh1プロモーターの下で遺伝子を発現する菌株と同じ程度にlacZの発現が減少した。長さが339bpから499bpのcbh1プロモーターの下でlacZ遺伝子を発現する菌株では(図16Cに示す)、DTTによる処理中にlacZ mRNAのレベルが明らかに減少したが、完全長cbh1プロモーターの下での発現とは同程度ではなく、この菌株におけるダウンレギュレーションの内部対照として用いたegl1のmRNAレベルと同程度でもなかった。長さが161bpから209bpの切り詰めプロモーターの下でlacZ遺伝子を発現する菌株では(図16Dに示す)、DTTによる処理中にlacZの強い発現(無処理培養中のシグナルに比較して)が検出された。これらの結果は、cbh1プロモーターの場合には、DTT処理中の発現レベルの減少に関与する領域は、翻訳開始コドンの上流1029bp領域内に位置し、開始コドンの上流の領域500〜1029bpおよび209〜339bpに最も重要な領域が位置していることを示唆している。
【実施例9】
【0088】
トリコデルマ・リーセイQM9414および遺伝子ace1に欠失を有するその誘導体のDTT処理培養におけるcbh1の発現
分泌ストレス条件下のセルラーゼプロモーターのダウンレギュレーションにおけるセルラーゼ制御因子ace1が果たしている役割を検討するため、トリコデルマ・リーセイQM9414および遺伝子ace1が欠失しているその誘導体(Saloheimo他、2000)をDTTで処理し、セルラーゼ発現について分析した。菌株をソルビトール含有培地上で培養し、ソホロースで誘導し、実施例7に記載したように10mM DTTで処理した。RNA分析のための菌糸体のサンプリングならびにノーザン分析は、実施例1および7に記載した通りである。処理中にcbh1の転写物レベルを定量し、シグナルはgpd1のシグナルで正規化した(図17)。
【0089】
トリコデルマ・リーセイRut−C30株の場合と同様(実施例1)、QM9414の培養物をDTT処理するとcbh1はダウンレギュレーションを受ける。しかしながら、ソルビトール含有培地で培養したace1が欠失したQM9414株の培養では、DTTによる処理中もcbh1が構成的に発現される。これらの特異的条件では、cbh1プロモーターのダウンレギュレーションにとってace1活性が必要であるように見える。しかしながら、発明者他は、他の培養条件(例えば、グリセロール含有培地上)では、ace1活性が必要でないという証拠をつかんでおり、この制御機構にはまだ知られていない他の要因が関与していることを示した。
【実施例10】
【0090】
分泌ストレス条件下で遺伝子の転写ダウンレギュレーションの機構を欠く真菌変異株の単離
完全長cbh1プロモーターの下で大腸菌lacZリポーター遺伝子を発現するトリコデルマ・リーセイpMLO16株にUV照射を用いて突然変異を起こさせ、BFAの存在という分泌ストレス条件下でlacZを発現することができる突然変異体を呈色反応に基づいてスクリーニングした。
【0091】
1ml当たり10個の胞子を含有する胞子懸濁液に対し、胞子生存率が15〜46%となるようUV照射を行った。変異処理した胞子は、マイクロタイター・プレート上、ウェル当たりおよそ3個の胞子を用い、炭素源としてソルビトールを含有する最小培地で培養した(実施例7と同じだが、ただしこの場合にはpH7.0とした)。7日間培養した後、ソホロースおよびブレフェルジンAを加えてlacZ発現を誘導すると同時に分泌ストレス条件を作り出した。BFA存在下のlacZ産生の誘導は、培養中にX−galを添加することによる呈色反応によって検出した。lacZを発現する培養物をPDプレート上で純化し、BFA存在下にcbh1プロモーターを誘導する(lacZ発現を制御する)突然変異体の能力を確認した。図18Aは、ダウンレギュレーションを受ける完全長cbh1プロモーターの下でのlacZを発現するpMLO16の対照培養、cbh1の最小プロモーター(分泌条件においてダウンレギュレートされない、実施例8も参照)の下でlacZを発現するpMI33株、およびlacZ陰性菌株QM9414、それぞれにおけるlacZ活性を示している。呈色反応によって示されるように、ソホロース添加後、BFAの存在下ではlacZ産生が認められないか、BFAの非存在下ではlacZが産生される。図18Bは、マイクロタイター・プレート培養における突然変異体のスクリーニングの一例を示している。分泌ストレス条件下でlacZを発現する突然変異体を呈色反応に基づいて単離することができる。対照として、pMLO16の非突然変異誘発胞子をBFAの存在下および非存在下にプレート上で培養した(四角で囲んだウェルを参照;BFAの非存在下のlacZ産生を示す陽性呈色反応、およびBFAの存在下で陰性呈色反応)。
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【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】A23187、DTTおよびBFAで処理した培養における総タンパク質合成および分泌。 A)5μM A23187で処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)から調製した細胞抽出液中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。 B)5μM A23187で処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の培養上清中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。 C)10mM DTTで処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)から調製した細胞抽出液中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。 D)10mM DTTで処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の培養上清中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。 E)50μg/ml BFAで処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)から調製した細胞抽出液中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。 F)50μg/ml BFAで処理した培養(菱形、◇)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の培養上清中のTCA不溶画分に取り込まれた放射能の量。
【図2】時間を変えて5μM A23187、50μg/ml BFAあるいは10mM DTTで処理し35S−メチオニンで標識した培養からのCBHIの2D(2次元)ゲル分析。 A)無処理対照培養、およびA23187、DTTまたはBFAで処理した培養から標識実験中の様々な時点で調製された細胞抽出液中の標識CBHI(時点は、標識メチオニン添加後の時間(分)として各パネル上に示す)。 B)A23187またはBFAで処理した培養および無処理培養の標識180分後の培養上清からの標識CBHI。
【図3】CBHIの合成および分泌。 A)5μM A23187で処理した培養(白丸、○)中、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の、標識実験の様々な時点における細胞抽出液中の標識CBHIの量 B)5μM A23187で処理した培養(白丸、○)中、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の、標識実験の様々な時点における培養上清中の標識CBHIの量 C)10mM DTTで処理した培養(白丸、○)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の標識実験の様々な時点における細胞抽出液中の標識CBHIの量 D)10mM DTTで処理した培養(白丸、○)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の標識実験の様々な時点における培養上清中の標識CBHIの量 E)50μg/ml BFAで処理した培養(白丸、○)、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の、標識実験の様々な時点における細胞抽出液中の標識CBHIの量 F)50μg/ml BFAで処理した培養物(白丸、○)中、および無処理対照培養(黒い菱形、◆)の、標識実験の様々な時点における培養上清中の標識CBHIの量
【図4】A23187、DTTまたはBFAで処理した培養におけるpdi1およびbip1発現のノーザン分析。 A)様々な時点におけるA23187による処理培養、および無処理対照培養中のbip1およびpdi1の定常状態mRNAレベル(gpdのシグナルで規格化したシグナル)(処理培養は黒い棒、対照培養は白い棒)。 B)様々な時点におけるDTTによる処理培養、および無処理対照培養中のbip1およびpdi1の定常状態mRNAレベル(gpdのシグナルで規格化したシグナル)(処理培養は黒い棒、対照培養は白い棒)。 C)様々な時点における、BFAによる処理培養および無処理対照培養中のbip1およびpdi1の定常状態mRNAレベル(gpdのシグナルで規格化したシグナル)(処理培養は黒い棒、対照培養は白い棒)。
【図5】BFAおよびA23187で処理した培養(黒い棒)および無処理対照培養(白い棒)中のhac1 mRNAのノーザン分析。
【図6】様々な時間A23187、DTTまたはBFAで処理した培養(黒い棒)中および無処理対照培養(白い棒)中のcbh1およびegl1のノーザン分析。
【図7】DTT処理中の、トリコデルマ・リーセイにおけるxyn1およびhfb2タンパク質のノーザン分析(gpdのシグナルで規格化したシグナル)。
【図8】DTTによる処理中にダウンレギュレートされない転写物のノーザン分析:分泌経路の成分をコードするypt1およびsar1、未知の機能のcDNA1、および細胞内β−グルコシダーゼをコードするbgl2のシグナル(シグナルは、gpdのシグナルで規格化した)。
【図9A】アスペルギルス・ニガーからの遺伝子の転写に対するDTTの効果:グルコアミラーゼ遺伝子、glaA(3回測定の平均シグナル)(実線はDTT処理培養を示し、破線は水処理対照を示す)
【図9B】アスペルギルス・ニガーからの遺伝子の転写に対するDTTの効果:酸性プロテアーゼであるアスペルギロペプシン遺伝子(pepA)(3回測定の平均シグナル)(実線はDTT処理培養を示し、破線は水処理対照を示す)
【図9C】アスペルギルス・ニガーからの遺伝子の転写に対するDTTの効果:ER中の常在フォルダーゼ(foldase)であるタンパク質ジスルフィド異性化酵素(pdiA)(3回測定の平均シグナル)(実線はDTT処理培養を示し、破線は水処理対照を示す)
【図9D】アスペルギルス・ニガーからの遺伝子の転写に対するDTTの効果:ER−常在シャペロンであるbipA(3回測定の平均シグナル)(実線はDTT処理培養を示し、破線は水処理対照を示す)
【図10】炭素源としてデンプンを含有する培地を炭素源としてキシロースを含有する培地に交換することがアスペルギルス・ニガーAB4.1におけるglaAの転写に与える効果(交換はT=0で行い、結果は2回の測定の平均を示す)
【図11A】グルコアミラーゼ遺伝子の転写に対するアンチセンスpdiAの効果(glaA、2つの異なる実験からの6個のフラスコの平均シグナル)(菌株AB4.1は実線で示し、菌株AS1.1は破線で示す。)
【図11B】アスペルギロペプシン遺伝子の転写に対するアンチセンスpdiAの効果(pepA、2つの異なる実験からの6個のフラスコの平均シグナル)(菌株AB4.1は実線で示し、菌株AS1.1は破線で示す。)
【図11C】培養の乾燥重量測定(2つの異なる実験からの6個のフラスコの平均シグナル)
【図12A】gpdAプロモーターの制御下にアンチセンスpdiAを発現するアスペルギルス・ニガーの分泌グルコアミラーゼ・タンパク質のレベル。(データは各時点の3回測定の平均であり、菌株AB4.1は黒い棒で示し、菌株ASG67は灰色の棒で示す)。
【図12B】gpdAプロモーターの制御下にアンチセンスpdiAを発現するアスペルギルス・ニガーにおけるglaA mRNAの定常状態レベル。(菌株AB4.1は実線で示し、菌株ASG67は破線で示す)。
【図12C】培養の乾燥重量測定(菌株AB4.1は実線で示し、菌株ASG67は破線で示す)。
【図13】hacAをプローブとした、アスペルギルス・ニガーAB4.1およびASG67のノーザン・ブロット分析。レーン1〜7は、24、36、48、60、72、84および96時間におけるアスペルギルス・ニガーAB4.1のサンプルを示し、レーン8〜14は、同じ時点におけるアスペルギルス・ニガーASG67(アンチセンスpdiA菌株)について示す。
【図14A】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:トリコデルマ・リーセイRut−C30においてtPAを産生するための発現カセット
【図14B】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:増殖をモニターするため培養中に測定されたバイオマス乾燥重量およびラクトース濃度。
【図14C】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:培地中で産生される総タンパク質およびHEC活性(セルラーゼ、特にエンドグルカナーゼ、活性を測定する)。
【図14D】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:分泌タンパク質をコードする遺伝子の例として分析されたegl1の転写物レベル(アクチン遺伝子のシグナルで規格化)。
【図14E】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:cbh1およびcbh1−tPA融合物の転写物レベル(アクチン遺伝子のシグナルで規格化)
【図14F】トリコデルマ・リーセイRut−C30およびtPA産生形質転換体306/36のバイオリアクター培養:培養中のbip1の転写物レベル(アクチン遺伝子のシグナルで規格化)
【図15】cbh1プロモーターの下でのlacZリポーター遺伝子の発現 A)10mM DTT存在下の発現試験に用いたlacZ発現カセットの概略図:菌株pMLO16中では完全長cbh1プロモーターの下で、菌株pMI34中では切り詰めプロモーターの下でのlacZ発現。 B)菌株pMLO16中(左のグラフ)および菌株pMI34中(右のグラフ)において10mM DTT処理培養(黒い棒)および無処理対照培養(白い棒)中のlacZおよびegl1のmRNAレベル(gpdシグナルで規格化)。
【図16A】様々な程度に欠失させたcbh1プロモーターの下でのlacZリポーター遺伝子の発現:分泌ストレス条件の下でプロモーターの活性を検討するためトリコデルマ・リーセイにおける大腸菌lacZ発現のために使用したcbh1プロモーターの欠失シリーズの略図
【図16B】様々な程度に欠失させたcbh1プロモーターの下でのlacZリポーター遺伝子の発現:菌株pMLO16、pMLO16S、del1(1)Sおよびdel0(2)SのDTT処理培養および同一菌株の無処理培養におけるlacZ、egl1およびgpd1の発現のノーザン分析。処理の時点は、処理の開始からの時間(分)として各レーンの上部に示す。各時点におけるDTT処理培養中の相対mRNAレベル(無処理対照培養中のmRNAレベルを1と設定した)は、右のグラフに示す(lacZシグナル、白丸;egl1シグナル、黒い菱形)
【図16C】様々な程度に欠失させたcbh1プロモーターの下でのlacZリポーター遺伝子の発現:B)と同様な、菌株del23、del5(11)S、del5(11)およびdel6(14)のノーザン分析
【図16D】様々な程度に欠失させたcbh1プロモーターの下でのlacZリポーター遺伝子の発現:B)と同様な、菌株del7(5)S、pMI33およびpMI34のノーザン分析
【図17】トリコデルマ・リーセイQM9414およびace1遺伝子が欠失したQM9414の培養におけるDTT処理中のcbh1 mRNAレベル
【図18A】分泌ストレス条件の下で遺伝子のダウンレギュレーションの機構を欠いた真菌変異体のスクリーニング:菌株pMLO16、pMI33およびQM9414のマイクロタイター平板培養をBFAおよびソホロースの存在下および非存在下でlacZ産生を試験した。lacZ産生は暗色反応として検出した
【図18B】分泌ストレス条件の下で遺伝子のダウンレギュレーションの機構を欠いた真菌変異体のスクリーニング:マイクロタイター平板培養における、BFA存在下でのソホロース誘導後のlacZの発現についての変異体のスクリーニング。lacZ産生変異体は、X−gal基質の添加後に暗色反応に基づいて検出した。変異誘発されていないpMLO16の培養は、BFAの存在下および非存在下ソホロース誘導後にlacZ産生についてアッセイした(四角で囲んだウェル)

Claims (33)

  1. 分泌可能なタンパク質のプロモーター中に位置し、分泌ストレスの下で分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与することを特徴とするDNA配列。
  2. 前記DNA配列が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、ハイドロフォビン、プロテアーゼ、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、スウォレニン、リグニン分解酵素およびペクチナーゼのプロモーターからなる群から選択されるプロモーター中に位置することを特徴とする請求項1に記載のDNA配列。
  3. プロモーターが、cbh1、cbh2、egl1、egl2、hfb1、hfb2、xyn1、swo、gla、amy、およびpepAプロモーターを含む群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のDNA配列。
  4. 分泌可能なタンパク質のプロモーター中に位置するDNA配列が、ストレス条件下で測定した場合に非ストレス条件に比べて低下した分泌可能なタンパク質のmRNAレベルの原因であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のDNA配列。
  5. DNA配列がトリコデルマcbh1プロモーターの−162位上流に位置することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDNA配列。
  6. 分泌ストレスの下での分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与する機構に対する応答が改変されていることを特徴とする、改良されたタンパク質産生のための、分泌可能なタンパク質のプロモーター。
  7. 転写ダウンレギュレーションに関与するDNA配列が変異、不活性化、除去または増幅されていることを特徴とする請求項6に記載のプロモーター。
  8. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDNA配列が変異、不活性化、除去または増幅されていることを特徴とする請求項6または7に記載のプロモーター。
  9. 請求項6乃至8のいずれか1項に記載のプロモーターであって、遺伝子改変の結果として、分泌可能なタンパク質が分泌ストレス条件において改変プロモーターの下で発現される場合に、請求項6乃至8のいずれか1項に記載のプロモーターの改変されていないものの下での分泌可能なタンパク質の発現に比べて分泌可能なタンパク質の発現が増加または減少することを特徴とするプロモーター。
  10. 真菌宿主における改良されたタンパク質産生のためのプロモーターを製造する方法であって、
    −分泌可能なタンパク質のプロモーターを選択する工程、
    −プロモーターを遺伝子改変する工程、
    −プロモーターをリポーター・タンパク質のコード領域に動作可能に連結する工程、
    −分泌ストレスにある適切な培養条件下に真菌宿主の改変プロモーターの制御下で選択されたリポーター・タンパク質を発現する工程、
    −非改変プロモーターで得られる発現に比べ、選択されたリポーター・タンパク質のタンパク質発現の増加または減少を示す細胞をスクリーニングまたは選択する工程、を含むことを特徴とする方法。
  11. 選択されたリポーター・タンパク質のコード領域が分泌可能なタンパク質のコード領域であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 分泌ストレスの下で分泌タンパク質をコードする遺伝子の転写をダウンレギュレートする宿主機構が複数、遺伝子改変されていることを特徴とする真菌宿主菌株。
  13. 宿主が、請求項6乃至9のいずれか1項に記載のプロモーターを備えていることを特徴とする、請求項12に記載の真菌宿主菌株。
  14. 真菌宿主が遺伝子改変されたプロモーターを備え、改変の結果、タンパク質が分泌ストレス条件において改変プロモーターの下で発現される場合に、非改変プロモーターの下でのタンパク質の発現に比べてタンパク質の発現が増加または減少することを特徴とする請求項12または13に記載の真菌宿主菌株。
  15. 転写ダウンレギュレーションに関与する制御因子の発現または活性が宿主中で遺伝子改変されていることを特徴とする、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株。
  16. 制御因子の発現または活性が低下または消滅していることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株。
  17. 制御因子の発現または活性が増幅または増加していることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株。
  18. 請求項12乃至17のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、転写ダウンレギュレーションに関与する制御因子の発現または活性が真菌宿主中で遺伝子改変され、その結果として、分泌可能なタンパク質が分泌ストレス条件において真菌宿主で発現される場合に、非改変宿主における分泌可能なタンパク質の発現に比べて、分泌可能なタンパク質の発現が増加または減少することを特徴とする真菌宿主菌株。
  19. 請求項12乃至18のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、前記複数の制御機構が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、ハイドロフォビン、スウォレニン、プロテアーゼ、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、リグニン分解酵素およびペクチナーゼを含む群から選択されるタンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与していることを特徴とする真菌宿主菌株。
  20. 請求項12乃至19のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、前記複数の制御機構が、遺伝子cbh1、cbh2、egl1、egl2、hfb1、hfb2、xyn1、swo、gla、amy、およびpepAによってコードされるタンパク質を含む群から選択されるタンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与していることを特徴とする真菌宿主菌株。
  21. 請求項12乃至20のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、制御因子がace1遺伝子によってコードされていることを特徴とする真菌宿主菌株。
  22. 請求項12乃至21のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、タンパク質産物が、転写ダウンレギュレーションを受けないプロモーターから発現されることを特徴とする真菌宿主菌株。
  23. 請求項12乃至22のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株であって、菌株が、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ニューロスポラ属、フザリウム属、ペニシリウム属、フミコラ属、トリポクラジウム・ジオデス(Tolypocladium geodes)、クルイベロマイセス属、ピキア属、ハンゼヌラ属、カンジダ属、ヤロウィア属、スキゾサッカロミセス属、サッカロミセス属を含む群から選択されることを特徴とする真菌宿主菌株。
  24. 菌株がアスペルギルス属またはトリコデルマ属に属していることを特徴とする請求項12乃至23のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株。
  25. 菌株がアスペルギルス・ニガーまたはトリコデルマ・リーセイに属していることを特徴とする請求項12乃至24のいずれか1項に記載の真菌宿主菌株。
  26. 改良されたタンパク質産生のための真菌宿主を製造する方法であって、
    −分泌可能なタンパク質のプロモーターを選択する工程、
    −プロモーターを遺伝子改変する工程、
    −プロモーターを選択された分泌可能なタンパク質のコード領域に動作可能に連結する工程、
    −分泌ストレスにある適切な培養条件下に真菌宿主の改変プロモーターの制御下で選択された分泌可能なタンパク質を発現する工程、
    −非改変プロモーターの下での分泌可能なタンパク質の発現に比べ、選択された分泌可能なタンパク質のタンパク質発現の増加または減少を示す細胞をスクリーニングまたは選択する工程、および
    −転写ダウンレギュレーション機構が改変されたプロモーターを備える真菌宿主を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  27. 改良されたタンパク質産生のための真菌宿主を製造する方法であって、
    −真菌宿主において転写ダウンレギュレーションに関与する制御因子の発現または活性を遺伝子改変する工程、
    −分泌ストレス条件において改変真菌宿主で選択された分泌可能なタンパク質を発現する工程、
    −非改変宿主における分泌可能なタンパク質の発現に比べ、選択された分泌可能なタンパク質のタンパク質発現の増加または減少を示す細胞をスクリーニングまたは選択する工程、および
    −真菌細胞を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  28. 真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法であって、
    −適切な培地において請求項11乃至25のいずれか1項に記載の宿主または請求項26または27に記載の方法によって得られる宿主を培養する工程、および
    −培地からタンパク質産物を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  29. 請求項28に記載の方法であって、タンパク質産物が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、ハイドロフォビン、プロテアーゼ、インベルターゼ、フィターゼ、ホスファターゼ、リグニン分解酵素、ペクチナーゼ、免疫グロブリンまたはtPAなどの細菌または下等もしくは高等真核生物または真菌もしくは哺乳類に由来するタンパク質を含む群から選択されるものである ことを特徴とする方法。
  30. 真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法であって、
    −分泌可能なタンパク質をコードする遺伝子を選択する工程、
    −分泌ストレスの下で分泌タンパク質の転写ダウンレギュレーションに関与する機構にに対する応答に関して遺伝子のプロモーターを遺伝子改変する工程、
    −真菌宿主においてプロモーターの制御下に所望の分泌可能なタンパク質を産生する工程、および
    −宿主の培地からタンパク質産物を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  31. 真菌における分泌可能なタンパク質の最適化されたタンパク質産生のための方法であって、
    −分泌可能なタンパク質の遺伝子を選択する工程、
    −転写ダウンレギュレーションによって制御されないプロモーター中に、選択された分泌可能なタンパク質のコード領域を動作可能に連結する工程、
    −適切な培養条件の下で真菌宿主を培養し、真菌宿主においてダウンレギュレーションに関与するタンパク質を過剰産生する工程、および
    −宿主の培地から選択された分泌可能なタンパク質を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  32. 請求項31に記載の方法であって、選択された分泌可能なタンパク質が異種タンパク質であることを特徴とする方法。
  33. タンパク質産生を最適化するための請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA配列、または請求項6乃至11のいずれか1項に記載のプロモーター、または請求項12乃至25のいずれか1項に記載の真菌宿主、または請求項26または27に記載の方法によって得られる真菌宿主の使用。
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