JP2004524438A - 連結境界部及び交換可能なインサートを有するイオンビーム蒸着用のターゲット - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
本発明は、広くは薄膜スパッタ蒸着用ターゲットに関し、より具体的には連結境界部及び交換可能な内側中央部インサートを有するイオンビーム蒸着用ターゲットに関する。
【0002】
従来技術の説明
イオンビームターゲットを使用するスパッタ・プロセスは、さまざまな用途が見出される。スパッタは、基材上に薄膜を適用又は蒸着するためのいくつかのよく知られている技術のうちの1つである。イオンビーム衝撃スパッタでは、高エネルギー源のイオンをターゲットに向ける。イオンの衝撃力がターゲットの原子に十分なエネルギーを与えて、エネルギーを与えられた原子がターゲットから離れ、粒子束を形成し、基材上に薄膜を蒸着させるようにする。イオンビーム・スパッタ蒸着を用いる利点には、基材を強力な電子衝撃から隔離できること、及びターゲットに打ち込むイオンエネルギーと電流密度とを独立に制御できることがある。イオンビーム・スパッタ蒸着の基本技術は当業界でよく知られている。
【0003】
一般に、真空チャンバ中に物理的に配置することが可能な任意のターゲット材料を、イオンビーム蒸着でスパッタすることができる。これには、単一化学元素、合金、複合体、及び化合物からなる材料が含まれる。ターゲットを蒸着材料の主要な供給源として利用する所定化学組成物の薄膜の蒸着においては、そのターゲットは真空、不活性、又は開放雰囲気中での融解によって調製することができる。この材料は誘導、抵抗、電気アーク、又は同様な溶融法によって融解される。この材料は続いて、周知の材料加工法により適切な形状に成形される。別法ではこの材料を、プレス成形及び焼結、熱間静水圧圧縮成形、単軸熱間圧縮成形、又は同様のよく知られている技術などいくつかの粉末圧密法によって成形することもできる。これらの方法は、高純度且つ構造完全性を有する材料を製造するように設計できる。蒸着用ターゲットは一般に、真空チャンバ中に正確に配置するために、結合層によってバッキングホルダ又は裏当て板に取り付けられる。結合層は通常はんだを含む。Eilers他の米国特許第4,430,190号は、バッキングホルダ又は裏当て板に結合された蒸着用ターゲットの例について開示する。
【0004】
蒸着用ターゲットの侵食の速度及び程度に影響する可能性のあるその他の要因には、スパッタリング・プロセスに用いられるイオンビームの強度、方向、及びサイズがある。しかしながらイオンビームの直径は一般に、使用する蒸着用ターゲットの直径よりも小さいので、イオンビームが直接衝突するターゲット領域(一般に中心の領域)では過度の侵食が起き、一方イオンビームが衝突しないターゲット領域(一般に外側の領域)の侵食は全くないといってよいくらいである。従って侵食領域は一般に、イオンビーム衝突領域の寸法に対応することになる。
【0005】
発明の概要
タンタル及び貴金属など多くの蒸着材料が非常に高コストであること等のために、コストが著しく低いイオンビーム蒸着用ターゲットを創り出す目下の必要性がある。本発明者等は、イオンビームによって侵食される領域に対応するように中央部に配置された交換可能なインサートを有するイオンビーム蒸着用ターゲットを創り出すことによって、この問題及び関係する問題を解決した。交換可能なインサートを有する蒸着用ターゲットの開発によって、イオンビームにより侵食されないターゲットの領域は、ターゲットを支えるホルダ又はフレームに取り付けられたまま所定の位置に留めることができる。イオンビームによって侵食された蒸着用ターゲットのインサート部分のみを取り外して交換できることは、時間を節約し、またターゲットを製造するために用いられる材料に関連するコストを低減し、ターゲットの処理及び機械加工に関連するコストを低減し、また現在行われているようにターゲット全体を交換するのではなく、侵食されないターゲットの残部の再利用を可能にするなどの経済的利益を有する。
【0006】
本発明では、交換可能な中央内側のインサートが侵食されたときに、これを真空チャンバから取り出し、交換することができ、他方でターゲットの外側の侵食されない部分を、バッキングホルダ又は裏当て板に取り付けたままで残すことが可能である。あるいはターゲットと裏当て板の全体を集中処理センターに戻す場合には、検査のためにインサートと外側部分の両方を結合層の溶解又は溶融によって裏当て板から取り外し、さきの外側部分と新しい中央部インサートとを新たな結合層によって裏当て板に取り付けることができる。
【0007】
従って本発明の主要な目的は、侵食されたとき取り外して交換することができる中央に配置された内側インサートを有するイオンビーム蒸着用ターゲットを提供することである。ここでイオンビームによって侵食されないターゲットの外側領域は、イオンビーム蒸着(IBD)装置に設置された裏当て板に取り付けたままで所定の場所に残すか、又はより効率的なリサイクルのためにターゲットを取り外すのであれば、新しい中央部インサートと共に再使用することができる。本発明の蒸着用ターゲットは、外側領域で完全に囲まれて中央に配置される取り外し可能な内側インサートを少なくとも備えている。内側インサート及び外側領域は、結合層由来の原子、また粒子束中で形成される原子などの汚染物質を防ぐために、連結境界部によって互いにつなぎ合わされて蒸着用ターゲットを形成する。蒸着用ターゲットは、IBD装置に設置された従来の裏当て板に、結合層によって取り付けられる。好ましくは結合層ははんだを含む。
【0008】
本発明の別の目的は、これには限定されないが、円形、長方形、又は楕円形などの幾何学形状を有するイオンビーム蒸着用ターゲットを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、再利用可能なイオンビーム蒸着用ターゲットを提供することであり、ここではイオンビームによって侵食されないターゲットの外側領域は、侵食された内側インサートと一緒に交換するのではなく、IBD装置上の裏当て板に取り付けられたまま残し、及び/又は再使用することができる。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、ターゲット全体ではなく侵食された内側インサートのみを交換することによって、より少ない交換用材料を必要とするイオンビーム蒸着用ターゲットを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、ターゲット全体ではなく侵食された内側インサートのみを交換することによって、交換用ターゲットの処理及び機械加工に関連するコストと時間を低減するイオンビーム蒸着用ターゲットを提供することである。
【0012】
本発明のこれらの目的及びその他の目的は、下記の明細書及び図面をさらに検討することにより容易に明らかになるはずである。
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1〜7を参照する。図1は、中央に配置された内側インサート22、連結境界部24、及び内側インサート22を完全に取り囲む外側領域26を備えた楕円形の本発明の蒸着用ターゲット20を示す。連結境界部24は、内側インサート22及び外側領域26の対面する接合面上に配置される機械的連結縁又は溝構造によって、内側インサート22と外側領域26とをつないでいる。境界部24の機械的連結縁又は溝構造を図2及び4〜7に示す。
【0014】
図2及び4〜7は、境界部24を構成する機械的連結縁又は溝構造の様々な実施形態を示すが、境界部24の実際の構造は変えることができ、図示した構造又は形状には限定されないことに留意すべきである。境界部24のためにたとえどのような形状又は構造を選択しようと、内側インサート22と外側領域26の対面する接合面の機械的連結を可能にしなければならず、それによって合体した蒸着用ターゲット20を形成する。
【0015】
機械的連結の特徴を備えていることに加えて、図2及び4〜7に示した境界部24はまた、蒸着用ターゲット20を裏当て板30に取り付けるために用いられる溶融したはんだ又は他の溶融した接合材料を、縁又は溝構造内に閉じ込め又は収容することを可能にし、溶融したはんだ又は他の結合用材料が蒸着用ターゲット20の前面をうっかり汚染しないようにする。
【0016】
図3及び4は、結合層40によってIBD装置(図示されない)の裏当て板30に取り付けられた蒸着用ターゲット20を示す。結合層40は好ましくははんだであり、蒸着用ターゲット20は、結合層40を構成する溶融したはんだ又は結合用材料が凝固すると裏当て板30と接合し、ターゲットの裏側すなわち背側が裏当て板30に接着される。内側インサート22が十分侵食され、それによって交換が必要になると、結合層40を構成するはんだを融解するのに十分な温度まで裏当て板30を加熱することによって、侵食された内側インサート22を裏当て板30から取り外すことが可能である。侵食された内側インサート22を取り外した後で、内側インサート22の新しい交換品と外側領域26との対面する接合面上の連結縁構造を係合させることによって、内側インサートの交換品を残っている外側領域26とつなぎ、それによって境界部24を形成することができる。次いで新しい侵食されていない内側インサート22を、裏当て板30にはんだ付けする。あるいはターゲット/裏当て板全体のアセンブリを、リサイクルのために処理センターに送る場合、内側インサート22と外側領域26の両方を、外側領域26及び裏当て板30の検査とクリーニングのために取り外し、その後で新しいインサート22を用いて外側領域26を裏当て板30に再度取り付けることもできる。
【0017】
ターゲット20が楕円形を有するものとして図1〜4に示すが、ターゲット20は、さまざまな形状及びサイズに作製することができ、また限定するわけではないが、金属又は金属合金、複合体、セラミック化合物、及びその他の化学組成物などさまざまな材料で構成されてもよい。好ましい実施形態において、イオンビーム蒸着用ターゲット20は、限定するわけではないが、直径約10インチ〜約16インチ(約25cm〜41cm)の円形、寸法約9インチ×12インチ(約23cm×30cm)の楕円形、及び寸法約10インチ×14インチ(約25cm×36cm)の長方形などの、形状及び寸法を有する。
【0018】
本発明を好ましい実施形態に関して述べたが、さまざまな変更を行うことができ、また本発明の範囲から逸脱することなくその要素を等価物に代えることができることは当業者には理解されるはずである。加えて材料の特定の状況が本発明の教示に適合するように本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。従って本発明は本発明の実行のために考えられる最良の様式として開示された上記の特定の実施形態には限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲と精神に包含されるすべての実施形態を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明によるイオンビーム蒸着用ターゲットの構成の上面図である。
【図2】
図2は、図1の線2−2に沿って取った連結境界部の横断面図である。
【図3】
図3は、裏当て板に取り付けられた本発明による蒸着用ターゲットの上面図である。
【図4】
図4は、図3の線4−4に沿って取った横断面図である。
【図5】
図5は、図4の分解横断面図である。
【図6】
図6は、本発明による別の連結境界部の実施形態の横断面図である。
【図7】
図7は、本発明によるもう一つの別の連結境界部の実施形態の横断面図である。
Claims (10)
- 少なくとも1つの接合面を有する内側インサートと;少なくとも実質的に前記内側インサートを囲み、且つ前記内側インサートの接合面に着脱可能に接合する面を有する、別個の外側領域と;蒸着用ターゲットを形成し、且つイオン蒸着後の交換のために内側インサートを取り外しを可能にする、前記内側インサートと前記外側領域の接合面によって形成される連結境界部とを備えている、基材上に材料をイオン蒸着するための蒸着用ターゲット。
- 汚染物質が前記内側インサートと外側領域の接合面の間を通過しないように、前記連結境界部が機械的連結縁構造を備えている、請求項1に記載のターゲット。
- 前記機械的連結縁構造がほぼ図1〜4に示すように形成される、請求項2に記載のターゲット。
- 前記機械的連結縁構造がほぼ図5に示すように形成される、請求項3に記載のターゲット。
- 前記機械的連結縁構造がほぼ図6に示すように形成される、請求項3に記載のターゲット。
- 前記内側インサート及び前記外側領域がそれぞれ背面を有し、さらに前記内側インサート及び外側領域の前記背面に固定された裏当て板を備えている、請求項1に記載のターゲット。
- 裏当て板を固定するためのはんだの結合層を更に備えている、請求項1に記載のターゲット。
- ターゲットからの材料のイオン蒸着に使用した後の侵食されたターゲットを再利用する方法であって、
(a)同一の蒸着材料で作られたターゲットを少なくとも2つの部分を有するようにして成形すること、ここでこのこのターゲットは、蒸着させる材料を放出させるのに用いるインサートと、汚染物質がそれら部分の間を通過しないように前記インサートを境界部によって少なくとも実質的に取り囲む外側部分とを備えている、
(b)実質的にインサートから放出される材料を基材上に蒸着するためのイオンビーム蒸着装置中に挿入するために、裏当て板に前記両方の部分を固定し、それによって前記インサートを侵食すること、そして
(c)蒸着後にイオンビーム蒸着装置から少なくとも前記インサートを取り出し、新しい侵食されていないインサートを用いた更なる蒸着のために、イオンビーム蒸着装置中でそれを前記新しい侵食されていないインサートと交換すること、
を含む、ターゲットからの材料のイオン蒸着に使用した後の侵食されたターゲットを再利用する方法。 - 前記ターゲットの両方の部分を裏当て板に固定してアセンブリを形成し、また蒸着後に前記アセンブリを取り外し、裏当て板から少なくとも侵食されたインサートを取り外し、新しい侵食されていないインサートを前記裏当て板に固定することによって前記侵食されたインサートを交換し、イオンビーム蒸着装置中での更なる蒸着のために、外側部分と新しい侵食されていないインサートを再利用することを含む、請求項8に記載の方法。
- 前記ターゲットの両方の部分をはんだの層によって裏当て板に固定し、侵食されたインサートを、前記はんだ層の加熱によって取り外す、請求項9に記載の方法。
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