JP2004510317A - 燃料電池とその動作及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

公知のポリマー電解質膜(PEM)燃料電池を動作する際に、特にリン酸が高温時に直接燃料電池の金属製のバイポーラ板と接触するのを阻止しなければならない。本発明では、燃料電池の膜電極ユニット(1)とバイポーラ板(3)との間に十分に電気伝導性の中間層(10、20)を挿入することによりこれを阻止する。こうして膜電極ユニット(1)から出ていく可能性のあるリン酸もしくはリン酸/水混合物がバイポーラ板に達することは阻止される。そのためこの燃料電池を製造する際、バイポーラ板(3)に近づくにつれて疎水性及び気孔率を増す、少なくとも2重の層構造(10、20)を中間層として挿入する。

Description

【0001】
本発明は、燃料電池の動作方法と該方法により動作するポリマー電解質膜燃料電池、特に高温ポリマー電解質膜燃料電池に関する。更に本発明は、この種のポリマー電解質膜(PEM)燃料電池を、特に高温範囲で使用するのに、腐食を低減して動作させることができる、このような燃料電池の製造方法に関する。
【0002】
一般にPEM(olymer lectrolyte embrane又はroton xchange embrane)燃料電池と呼ばれるポリマー電解質膜燃料電池を動作させる際、現在のところ65〜80℃の動作温度を、100℃以上、特に150〜200℃に高めることにより、著しい利点を達成できる。即ちそれら電極の比較的高いCO許容度の故に、このような高温ポリマー電解質膜(HT−PEM)燃料電池の場合、改質動作時に、出費を要する高価なCO浄化を省略できる。高温の使用には、例えば電解質として、水でぬらさなくても優れたイオン導電性を示す、リン酸を含浸させた膜が適している。これら膜とその電極から構成される単位は、一般にMEA(embrane lectrode ssembly)と呼ばれている。
【0003】
しかしながら、燃料電池積層体(専門分野では「スタック」とも呼ばれる)の高温時の機能状態に対する特別な動作コンセプト及び/又は設計を選択せねばならない。この設計には、特に耐食性の適切な材料が必要になる。
【0004】
種々に濃縮されたリン酸(20〜85%)を150℃迄の温度で0〜1.1Vのポテンシャル範囲で腐食実験した際、車輌の可動用途に要求される約4000時間のPEMの寿命又は定置用途の約50000時間の寿命を保証するには、金属材料は10−6A/cm以下の低い腐食電流密度を示さないことが判った。化学産業において、通常リン酸を使用する場合、電気化学ポテンシャルなしに使用すると、鉄及びニッケルベース合金は、10−4A/cmの電流密度を示す。ガラス状炭素のみは、これに条件付きで適合できるが、勿論その場合も約1V程のポテンシャルにおいてこの腐食電流密度は高過ぎる。
【0005】
この最後に挙げた問題は、PAFC(hosphoric cid uel ell、リン酸燃料電池)のバイポーラ板の炭素材料に関してその詳細は周知である。その際、この腐食電流密度は無負荷及び低負荷時、即ち約1V程のセル電圧の場合、同様に高過ぎる。PAFCの場合、水及び/又はリン酸が気孔内に達し、そこで炭素を腐食するのを阻止すべく、表面の多孔性の炭素材料を疎水化する。
【0006】
従って本発明の課題は、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池の動作時の腐食を確実に防げるPEM燃料電池の構成と製造方法を提供することにある。
【0007】
この課題は、本発明では燃料電池の動作方法に関しては請求項1により解決され、その燃料電池については請求項4に記載されている。このように製造された燃料電池の場合、その腐食を低減して動作を可能にする燃料電池の製造方法は、請求項13の対象である。その動作方法、PEM燃料電池及びその製造方法の改善はそれぞれの従属請求項に記載してある。
【0008】
本発明の動作方法により、この燃料電池を高温で動作させる場合に、腐食性の液体を直接バイポーラ板と接触させないことが保証される。このことは特にHT−PEM燃料電池におけるリン酸の使用に該当する。
【0009】
本発明の燃料電池では、膜電極ユニット(MEA)とバイポーラ板の間に、MEAから流出するリン酸又はリン酸/水混合物がバイポーラ板に達するのを阻止する、十分に電気伝導性の中間層を挿入する。バイポーラ板に近づくにつれ疎水性と同時に細孔度を増す少なくとも二重の層構造を選択するとよい。
【0010】
本発明による製造方法では、そのため膜電極ユニット(MEA)とバイポーラ板との間に中間層を挿入する。この中間層は、十分な電気伝導率を有し、リン酸又はリン酸/水混合物がバイポーラ板に達しないよう形成せねばならない。中間層としては、疎水化したカーボン紙から成る多重の層を入れてもよい。或いはまたカーボン紙を、例えばそれ自体公知のスクリーン印刷法により炭素/テフロン(登録商標)混合物で被覆してもよい。
【0011】
他の詳細及び利点を、後述する特許請求項と関連する実施例から図面に基づき明らかにする。図中同一の構成単位には同じ符号を付けてある。それらの図に関して、以下に一部共通して記載してある。
【0012】
図中1は公知のポリマー電解質膜(PEM)燃料電池の膜電極ユニット(MEA)、3はバイポーラ板を示す。バイポーラ板の領域に、冷却剤が流通可能な個別の冷却流路21、21′、21″・・・を持つ冷却システム2が存在する。
【0013】
図1による、膜電極ユニット1とバイポーラ板3を有する配置は、他の構成単位と共に、個々の燃料電池単位を形成する。多数の燃料電池単位が1つの燃料電池積層体(専門分野では燃料電池スタック又は単に「スタック」とも呼ばれる)を構成する。HT−PEM燃料電池のスタック内では、バイポーラ板の腐食電流密度を最大でも10−6A/cm−2以下、特に10−6A/cm以下に保持する必要がある。そのため、価格的に有利な金属材料を使用できるように、リン酸が高温時に直接金属製のバイポーラ板2と接触するのを阻止する必要がある。
【0014】
このため図1では、膜電極ユニット1とバイポーラ板3の間に、膜電極ユニット1から流出する可能性のあるリン酸やリン酸/水混合物がバイポーラ板に達するのを阻止する、導電性の十分な電気伝導性の中間層を挿入している。
【0015】
図1及び2中には、中間層として、多重の層構造10(特に図1では分離された5層のカーボン紙11〜15から成る)が存在する。カーボン紙の個々の層は、バイポーラ板3に近づくにつれて疎水性及び気孔率を増す。こうしてリン酸もしくはリン酸/水混合物はバイポーラ板3と遠ざけられる。
【0016】
これを確実に達成すべく、中間層を少なくとも2重の層構造として実現する。特に図2には、所定の気孔率を有する炭素層22と疎水化された箔23から成る層構造20を示す。図2による炭素層22及び疎水化箔23とは異なり、カーボン紙を炭素/テフロン(登録商標)混合物で被覆することで同等の効果を実現できる。かかる層構造は、例えば公知のスクリーン印刷法により製造できる。
【0017】
即ち上記被覆により、膜電極ユニット(MEA)から流出する親水性のリン酸もしくはリン酸/水混合物が、MEAに近い層内のみに侵入し、バイポーラ板へと疎水性を増す層構造により、この酸がバイポーラ板を腐食できないうちに、これを阻止することができる。この場合HT−PEMの約160℃の動作温度で生じる反応水は、蒸気状でその気孔を通って出ていく。
【0018】
疎水化された箔23により、図2では、そのMEA1とバイポーラ板3との電気的接触が低下される可能性がある。これを、バイポーラ板3に「こぶ」もしくはスパイクを備え、それらを疎水性箔23に押し込み、こうして点状的に電気的接触を改善して阻止することもできる。これは図3にバイポーラ板3上のスパイク35により明確化してある。
【0019】
他の変形法では、電気伝導性で、疎水性かつ酸拒否性の薄い層を直接バイポーラ板上に施す。これは、可溶性の非晶質テフロン(登録商標)もしくはテフロン(登録商標)分散媒及び導電性の炭素粉末(例えばVulcan XC 72)から成る混合物の噴霧により行うことができる。噴霧された層は場合によっては乾燥後、焼戻す必要がある。
【0020】
上述してきた種々の製造方法の場合、個別にその場に存在する資源によるところが多い。カーボン紙は通常50〜100μmの気孔率を有する。しかし図 1の層構造の場合、バイポーラ板に向かい気孔率は10μm以下に、特にナノ範 囲になる必要がある。このような気孔率を有するカーボン紙が存在しない場合は、スクリーン印刷法が好適と思われる。
【0021】
この層構造の場合、全ての例で少なくとも0.5S×cmの導電率を達成できる。導電率は高ければ高い程よく、図1と2の層構造が求める寸法では、R<20mΩ×cm−2のシート抵抗が生じる。この電気的限界条件下に、腐食は効果的に阻止され、水は蒸気状で流出し、リン酸はそれとは逆に保持される。
【0022】
上記の動作方法を使用した場合、HT−PEMでは黒鉛からなるバイポーラ板の他に、価格的に有利で、加工の容易な金属材料から成るバイポーラ板も使用できる。通常これらの材料は、HT−PEMの動作条件、即ち電気化学ポテンシャル及び約160℃の動作温度が加わった状態で、膜から出ていく可能性のあるリン酸により腐食されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料電池の一実施例を示す概略断面図。
【図2】炭素層がバイポーラ板の手前の疎水化箔上に施されている配置の概略断面図。
【図3】所謂スパイクを明確化するための図2のIIIの部分図。
【符号の説明】
1 膜電極ユニット、2 冷却システム、3 バイポーラ板、10、20 中間層、11〜19 疎水化されたカーボン紙、21、21′、21″・・・ 冷却流路、22 炭素層、23 疎水化箔、35 スパイク

Claims (20)

  1. 電解質として液体を含浸させた膜を使用し、バイポーラ板を有する膜電極ユニットが存在する燃料電池、特にポリマー電解質膜燃料電池において、この燃料電池を高温で動作させる際、腐食性の液体を直接バイポーラ板と接触させないことを特徴とする燃料電池の動作方法。
  2. リン酸を含浸した膜を使用する際に、リン酸又はリン酸/水混合物がバイポーラ板に達するのを阻止することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の動作方法。
  3. 前記燃料電池の動作時に、高温、特に約160℃の動作温度で生じる反応水を、蒸気状で気孔を介して排出可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 膜電極ユニット(MEA)とバイポーラ板を有する、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池、特に高温(HT−PEM)燃料電池において、膜電極ユニット(1)とバイポーラ板(3)との間に、導電性の十分な中間層(10、20)が存在することを特徴とする燃料電池。
  5. 前記中間層(10、20)が、少なくとも0.5S×cmの導電率を有することを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
  6. 中間層(10)が、異なる気孔率を有する疎水化された複数枚のカーボン紙(11〜19)から形成されたことを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
  7. 前記疎水化された複数枚のカーボン紙(11〜15)が、少なくとも2層構造の中間層(10)を形成することを特徴とする請求項6記載の燃料電池。
  8. 複数枚のカーボン紙(11〜15)から成る中間層(10)が、バイポーラ板(3)に近づくにつれて疎水性及び気孔率を増すことを特徴とする請求項6又は7記載の燃料電池。
  9. 中間層が、炭素/テフロン(登録商標)混合物を含むカーボン紙の被覆であることを特徴とする請求項4又は5記載の燃料電池。
  10. 中間層が、炭素/テフロン(登録商標)混合物を含むバイポーラ板 (3)の被覆であることを特徴とする請求項4又は5記載の燃料電池。
  11. 中間層(20)が、所定の気孔率の炭素(層)22を有する疎水化された箔(23)の被覆であることを特徴とする請求項4又は5記載の燃料電池。
  12. バイポーラ板(3)上に、疎水化箔(23)中に押込むことができるこぶ及び/又はスパイク(35)が存在することを特徴とする請求項11記載の燃料電池。
  13. 膜電極ユニット(MEA)とバイポーラ板との間に、十分な電気伝導率を有する中間層を挿入し、それにより膜電極ユニット(MEA)から流出するリン酸又はリン酸/水混合物がバイポーラ板に達するのを阻止することを特徴とする、請求項1乃至3の1つに記載の動作方法の実現に好適な燃料電池であり、個々の燃料電池単位がバイポーラ板を有する膜電極ユニット(MEA)から成る請求項4又は5乃至12の1つに記載の燃料電池の製造方法。
  14. 中間層の形成に、疎水化したカーボン紙を使用することを特徴とする請求項13記載の製造方法。
  15. 中間層を、炭素で被覆し、疎水化した箔で形成することを特徴とする請求項13記載の製造方法。
  16. 中間層を、炭素/テフロン(登録商標)混合物で被覆したカーボン紙で形成することを特徴とする請求項12記載の製造方法。
  17. 中間層を、炭素/テフロン(登録商標)混合物で被覆したバイポーラ板で形成することを特徴とする請求項13記載の製造方法。
  18. スクリーン印刷法を使用することを特徴とする請求項16又は17記載の製造方法。
  19. 中間層を、可溶性の非晶質テフロン(登録商標)、又はテフロン(登録商標)分散媒と導電性の炭素粉末とから成る混合物の噴霧により形成することを特徴とする請求項13乃至16の1つ又は17記載の製造方法。
  20. 噴霧した層を乾燥後、焼戻すことを特徴とする請求項19記載の製造方法。
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