JP2004507437A - 塩化カルシウムを含有する溶液からカルシウムを沈殿させる方法 - Google Patents

塩化カルシウムを含有する溶液からカルシウムを沈殿させる方法 Download PDF

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Abstract

炭酸カルシウムの沈殿物を形成する反応条件下で、塩化カルシウムを炭酸マグネシウム水和物と反応させることを含む方法によって、カルシウムを塩化カルシウム含有溶液から沈殿させる。

Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、塩化カルシウムを含有する溶液からカルシウムを沈殿させる方法に関する。
(背景技術)
実質上純粋な金属マグネシウムは電解により塩化マグネシウムから塩素ガスを放出して製造することができる。しかし、水和した塩化マグネシウムを電解セルのフィードに用いる場合、マグネシウムの酸化物が形成して電極を腐食し、スラッジを生成してセルから定期的に取り除く必要があり、短時間でセルの効率が大きく低下する。したがって、金属マグネシウムの電解による製造に適した、実質上純粋な無水塩化マグネシウムを製造することが望ましい。
【0002】
電解セルへの塩化マグネシウムフィードは、マグネサイト、塩化マグネシウムに富むブライン、海水、およびアスベスト廃石を含む多くの天然資源から得ることができる。全てではないが大部分の塩化カルシウム源は少量のカルシウムを含んでいる。マグネシウム電解セルのフィード中にカルシウムが大部分を占めるならば、それはセル内に蓄積し、除去しなければ金属マグネシウム製造のエネルギー効率を大きく低下させてしまう。さらに、セルの電解液中の塩化カルシウム濃度が増加すると、電解密度が最適な運転範囲から外れる。また、セルフィード中のカルシウムは部分的に酸化カルシウムなどの酸素含有化合物として存在することがあり、セル中のスラッジ形成量が増加する。このスラッジはセルのエネルギー効率に不利な影響を及ぼす濃度まで蓄積し、セルからスラッジを除去する調整が必要になる。
【0003】
無水塩化マグネシウムを製造する一方法はカーボクロリネーション(carbochlorination)と呼ばれ、酸化マグネシウムを炭素および塩素と共に加熱することに係わり、存在するすべてのカルシウムは塩化カルシウムに変換される。得られた混合物が電解セル中に給送されると、塩化マグネシウムはマグネシウムと塩素に電気分解されるが、塩化カルシウムはセルの電解液中に蓄積する。塩化カルシウムはセルのエネルギー効率に影響を及ぼす程度まで蓄積し、セル中のスラッジ蓄積が増加する。これらの影響を最小にするため、電解液を一部廃棄することによって塩化カルシウムが除去される。これは結果として塩化マグネシウムおよび他の電解液成分の損失を招き、後で補充しなければならない。廃棄する電解液とスラッジは環境に安全に廃棄するために引き続き多くのプロセスを必要とし、あるいは環境に安全な容器に保管する必要がある。
【0004】
無水塩化マグネシウムを製造する別の方法は、塩化マグネシウム水和物に乾燥した熱塩化水素ガスを通すことによって塩化マグネシウム水和物を脱水することに係わる。塩化マグネシウム水和物中のカルシウムは塩化カルシウムとして残り、続く電気分解では、カーボクロリネーションによって製造する無水塩化マグネシウムで経験したことと同じ問題を経験することになる。
【0005】
無水塩化マグネシウムを製造する他の方法は、有機溶媒中で塩化マグネシウムをアンモニア処理して塩化マグネシウム六アンモニア和物を形成し、続いて塩化マグネシウム六アンモニア和物を暇焼することに係わる。得られる無水塩化マグネシウムが含むカルシウムは、塩化マグネシウムのアンモニア化の間にカルシウム塩の沈殿がほとんどないので、電解による金属マグネシウム製造にとって許容できる程度である。したがって、無水塩化マグネシウムを製造するアンモニア化プロセスは、この観点から好ましい。しかし、塩化マグネシウム六アンモニア和物を経済的に製造するには種々のプロセス化学薬品を再使用することが必要なので、カルシウムの濃度が段階的に増加し、アンモニア化プロセスの効率が結局悪くなる。したがって、無水塩化マグネシウムを形成するためには、アンモニア化プロセスで使用した有機溶媒から定期的に、あるいは連続的にカルシウムを除去することが望ましい。
【0006】
米国特許第3433604号明細書は、有機抽出剤、すなわち置換カテコールおよび脂肪族ビシナルジオールを使用する、カルシウム及びボロンの除去方法を開示している。
米国特許第4364909号明細書は、合成結晶ゼオライトでイオン交換することに係わるカルシウム除去方法を開示している。また、米国特許第4364909号明細書は、カルシウムイオンの溶解性を抑制する過剰の硫酸塩イオンで処理する、カルシウム除去方法を開示している。硫酸カルシウムは、ほんのわずか水に溶け、一方、硫酸マグネシウムは溶解性が高い。
【0007】
オーストラリア特許第665722号明細書は、カルシウム除去の2つの方法を開示している。1つの方法は蒸気ストリッピングカラムを使用して塩化カルシウムの濃縮溶液を形成することに係わる。第2の方法は、二炭酸マグネシウムの溶液を、塩化カルシウムを含む溶液と混合し、混合物を加熱して炭酸カルシウムを沈殿させることに係わる。第2の方法は塩化カルシウムの効率的な除去を提供するが、大きな欠点、すなわち、二炭酸マグネシウムの安定性という欠点をもつ。二炭酸マグネシウムは準安定性であって長い間に固相に転化し、約18℃以下で貯蔵する必要がある。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、塩化カルシウムを含有する溶液からカルシウムを沈殿させる方法を提供し、その方法は、炭酸カルシウムの沈殿物を形成する反応条件下で、塩化カルシウムを炭酸マグネシウム水和物と反応させるステップを含んでいる。
炭酸マグネシウム水和物は、炭酸マグネシウム三水和物または炭酸マグネシウム五水和物であることが好ましい。炭酸マグネシウム水和物は炭酸マグネシウム水和物の混合物であってもよい。炭酸マグネシウム水和物は炭酸マグネシウム三水和物であることがさらに好ましい。炭酸マグネシウム水和物はスラリーの形をとることが好ましい。炭酸マグネシウム水和物のスラリーはマグネシアスラリーを二酸化炭素源で処理することによって製造することが好ましい。マグネシアスラリーは消和マグネシアであることが好ましい。スラリーはガス状の二酸化炭素、または二酸化炭素を含むガス状混合物、例えば二酸化炭素/空気の混合物をスパージングすることによって二酸化炭素で処理することが好ましい。別法としてスラリーは液体二酸化炭素で処理することもできる。
【0009】
二炭酸マグネシウムを塩化カルシウム含有溶液と混合する従来技術と比べて、少なくとも本発明の好ましい実施形態は、炭酸マグネシウム水和物が二炭酸マグネシウムよりも安定しており、より濃縮した炭酸マグネシウム水和物のスラリーを形成することができ、これによって資本と運転費用の引き下げが容易となり、温度制御が重要ではないという点で有利である。
【0010】
本発明は特に、しかし限定的ではなく、無水塩化マグネシウムを形成するアンモニア化プロセスにおけるカルシウム不純物の除去に応用される。
(実施例)
比較例−二炭酸マグネシウムを用いる再利用グリコールからのカルシウム除去 磁気攪拌棒、温度計、凝縮器、およびいくらかの塩化マグネシウムを装填した2リットルの3首丸底フラスコに、塩化カルシウムといくらかの塩化マグネシウムを含有するエチレングリコール900gを入れた。フラスコを真空ポンプで50mmHgまで真空にし、エチレングリコールを150℃で5時間混合物から蒸発させた。蒸発の完了時に100gの溶液が残ったが、これをEDTA滴定で分析し、エチレングリコール中に171g/kgの塩化カルシウム、および46g/kgの塩化マグネシウムを見出した。この溶液を100℃に維持した。
【0011】
別の1リットルの平底培養フラスコに、3首の蓋、および二酸化炭素スパージング管に加えてステンレス鋼製インペラーを有するオーバーヘッド攪拌機を装着した。この装置を冷却水浴に置き、500gの脱イオン水をフラスコに加えて15℃に冷やした。次いで水を二酸化炭素でスパージングし2時間かけて細かな酸化マグネシウムの粉15.8gを水と二酸化炭素混合物に加えた。二酸化炭素は実際に必要とするよりも過剰になるように250ミリリットル/分の量を加えた。酸化マグネシウムの添加中、液体の温度を注意深く15℃に保った。得られた液体を分析し、マグネシウム14.3g/kg(二炭酸マグネシウムとして)を含むことが判った。
【0012】
90gの濃縮した塩化カルシウム塩化マグネシウムエチレングリコール溶液に253gの二炭酸マグネシウム溶液を30分間かけて加えた。二炭酸マグネシウムを加えると直ちに沈殿物が形成された。混合物は二炭酸マグネシウムの添加の間および添加完了後さらに15分間100℃に維持した。
固体の炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、エチレングリコールおよび水の混合物の溶液であるフラスコの内容物を、濾紙を装着したブフナー漏斗に入れた。固体を直ちに濾過し、次いでこれを50gの水で洗った。
【0013】
濾過した液体の原子吸光分析法による分析で、塩化カルシウム塩化マグネシウムエチレングリコール濃縮溶液中のカルシウム91%が沈殿したことを示した。
実施例1−グリコール、塩化マグネシウム、塩化カルシウム溶液からの連続的なカルシウム除去
2リットルのガラス容器(容器A)に6.8%w/wのマグネシアを含有するスラリーを蠕動ポンプで1.1kgh−1の速度で加えた。容器Aには、先に製造した、室温でpH7.4の炭酸マグネシウム三水和物スラリーを充填しておいた。容器AにpHプローブを装着し、40mmのインペラーで1600rpmの速度で連続的に攪拌した。大気の条件下で、25容量%に加湿した空気と二酸化炭素のガス状混合物を容器Aの内容物を通してマグネシアを炭酸マグネシウムに変換するのに必要な化学量論の1.1倍をスパージングした。容器AのpHは約7.5に維持された。一貫して測定した温度は容器Aの内容物が52℃〜55℃の範囲であることを示した。容器Aの内容物を、やはりpHプローブと二酸化炭素/空気のスパージャーを装着した1リットルの攪拌した容器(容器B)へオーバーフローさせた。容器Bは1000rpmで攪拌した。容器BのpHは二酸化炭素/空気をスパージングしながら約7.1に維持され、温度は41℃〜48℃に変化した。スラリーのサンプルを容器Bから取り出し、固体X線回折解析で分析した。結果は主要な化学種が炭酸マグネシウム三水和物であることを示した。
【0014】
容器Bの内容物を他の攪拌した2リットルガラス容器(容器C)にオーバーフローさせた。また、容器Cへ5.1%w/wの塩化カルシウム、5.95%w/wの塩化マグネシウム、水、およびグリコールを含有する溶液を2.4kgh−1の速度で加えた。再び、容器Cの内容物を他の攪拌した容器(容器D)にオーバーフローさせた。容器Dの内容物のサンプルを原子放出分光計による分析のために取り出した。分析の結果は、容器Cに加えたグリコール、水、塩化カルシウム、塩化マグネシウム溶液中のカルシウムの90%が炭酸カルシウムとして溶液から沈殿したことを示していた。
【0015】
実施例2−水性溶液からのカルシウムの連続的な除去
総計0.4mの作業容積をもつゴムライニング容器(容器1)に、水中の暇焼マグネシア含有17〜37%(w/w)のスラリーを25〜53kgh−1の速度で連続的に加えた。容器1からの過剰物は、総計0.2mの作業容積をもつ第2のゴムライニング容器(容器2)にオーバーフローさせた。容器1および2には可変スピードのモータを備える攪拌機、pHプローブ、および二酸化炭素で内容物をスパージングするための槍(lance)を装着した。飲用水も容器1に20〜86リットル/時の速度で加えた。容器の内容物を大気の条件下でガス状の二酸化炭素と空気の混合物で連続的にスパージングした。二酸化炭素/空気の混合物を大気温度および125kPaで12〜54kgh−1の速度で加え、化学量論的な必要量よりも過剰となるようにした。容器のpHは6.8〜7.8に維持され、温度は35℃〜56℃に変化した。スラリーのサンプルを容器2から取り出し、固体をX線回折で解析した。解析の結果は、固体が100%の炭酸マグネシウム三水和物であることを示した。容器2から取り出したスラリーは固体が11%w/w〜24%w/wで変化した。
【0016】
容器2の炭酸マグネシウム三水和物スラリーを、オーバーヘッド攪拌機を装着した第3の容器(容器3)にオーバーフローさせた。14〜15%(w/w)の塩化カルシウムを含有する水性溶液もこの容器に44〜107kgh−1の速度で加えた。容器3の内容物を第4の攪拌した容器(容器4)にオーバーフローさせた。容器4の内容物をフィルタープレスで濾過する前に貯蔵容器(容器5)にポンプ輸送した。容器5の内容物を直ちに濾過した。濾過したサンプルを原子吸光分析法によってカルシウムの分析を行い、水性塩化カルシウム溶液中に存在するカルシウムの94〜99.9%、平均99.6%が炭酸カルシウム沈殿物として除去されたことを示した。
【0017】
実施例3−溶液からのカルシウムの連続的な除去
総計0.4mの作業容積をもつゴムライニング容器(容器1)に、水中の暇焼マグネシア含有8〜27%(w/w)のスラリーを43〜96kgh−1の速度で連続的に加えた。容器1からの過剰物は、総計0.2mの作業容積をもつ第2のゴムライニング容器(容器2)にオーバーフローさせた。容器1および2にはそれぞれ可変スピードモータを備える攪拌機、pHプローブ、および二酸化炭素で内容物をスパージングするための槍(lance)を装着した。飲用水も容器1に40リットル/時〜100リットル/時の速度で加えた。容器の内容物を大気の条件下でガス状の二酸化炭素と空気の混合物で連続的にスパージングした。二酸化炭素/空気の混合物を大気温度および125kPaで30m−1の速度で加え、化学量論的な必要量よりも過剰となるようにした。容器の温度は35℃〜50℃に変化した。容器のpHは7.0〜7.9に維持され、スラリーの容器内の滞留時間は1〜3.6時間であった。得られたスラリーは20%(w/w)の固体を含有する水和した炭酸マグネシウムスラリーであり、全てのマグネシアが炭酸マグネシウム三水和物に変換していた。
【0018】
総計1.2mの作業容積をもつゴムライニングした攪拌容器(容器3)に、大気温度で約240kgh−1の速度で、6.15%w/wの塩化カルシウム、8.47%w/wの塩化マグネシウム、41.7%w/wのグリコール、41.4%w/wの水、および他の塩化物塩を含有する溶液を加えた。容器2からの水和した炭酸マグネシウムスラリーも、150kgh−1の速度で容器3に加えたが、これは実際の必要量よりも過剰な供給となる。容器3の内容物を、総計1.2mの作業容積をもつ他のゴムライニングした攪拌容器(容器4)にオーバーフローさせ、炭酸マグネシウム三水和物スラリーとグリコール、水、塩化カルシウム、塩化マグネシウム溶液との間に3.5〜5.0時間の総接触時間を与えた。容器の温度は30℃〜35℃の範囲であった。容器3および4は固体4〜5%(w/w)のスラリーを含有していた。スラリーは、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グリコール、および水の溶液中の炭酸カルシウムと炭酸マグネシウム三水和物の混合物であった。スラリーはプレスフィルターでろ過する前に貯蔵容器(容器5)にポンプ輸送した。
【0019】
容器3および4の内容物を直ちに濾過した。濾過したサンプルを原子吸光分析法によってカルシウムの分析を行い、容器3に加えた元の溶液中に存在するカルシウムの78〜96%、平均81%が、炭酸カルシウム沈殿物として除去されたことを示した。

Claims (11)

  1. 塩化カルシウムを含有する溶液からカルシウムを沈殿させる方法であって、炭酸カルシウムの沈殿物を形成する反応条件下で塩化カルシウムを炭酸マグネシウム水和物と反応させるステップを含むことを特徴とする方法。
  2. 前記炭酸マグネシウム水和物が、炭酸マグネシウム水和物の混合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記炭酸マグネシウム水和物が、炭酸マグネシウム三水和物、炭酸マグネシウム五水和物、またはその混合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記炭酸マグネシウム水和物が、炭酸マグネシウム三水和物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記炭酸マグネシウム水和物が、スラリーの形をしていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記炭酸マグネシウム水和物が、マグネシアスラリーを二酸化炭素源で処理することによって形成されるスラリーの形をしていることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 前記マグネシアスラリーが、消和マグネシアのスラリーであることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 前記炭酸マグネシウム水和物が、マグネシアスラリーをガス状の二酸化炭素または二酸化炭素を含有するガス状混合物でスパージングすることによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  9. 前記炭酸マグネシウム水和物が、マグネシアスラリーをガス状の二酸化炭素/空気の混合物でスパージングすることによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  10. 前記炭酸マグネシウム水和物が、マグネシアスラリーを液体二酸化炭素で処理することによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  11. 前記塩化カルシウムを含有する前記溶液が、塩化マグネシウムのアンモニア化による無水塩化マグネシウム製造からのプロセス流であることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の方法。
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