JP2004505986A - 免疫エフェクター化合物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、環式アミノアルキル(アグリコン)基にグリコシド結合した2−デオキシ−2−アミノ−β−D−グルコピラノース(グルコサミン)を含む化合物を提供する。本発明は、さらに、抗原の存在下または非存在下で本発明の化合物を使用する免疫応答の誘導方法を提供する。さらに、抗原を含むか、または含まない本発明の化合物での疾患の治療法も本発明により提供される。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、免疫エフェクター化合物、薬学的組成物中でのその使用、およびその生成法、ならびに予防および/または治療ワクチン接種での使用に関する。より詳細には、本発明は、環式アミノアルキル(アグリコン)基にグリコシド結合した2−デオキシ−2−アミノ−β−D−グルコピラノース(グルコサミン)を含むアジュバント系に関する。
【0002】
発明の背景
体液性免疫および細胞性免疫は、哺乳動物免疫応答の2つの主要な枝である。体液性免疫は、外来抗原に対する抗体の産生に関与する。抗体は、Bリンパ球によって産生される。細胞性免疫は、外来抗原を含む細胞の感染時に作用するか、または細胞感染時に作用するように他の細胞を刺激するTリンパ球の活性化に関与する。哺乳動物免疫応答系の両枝は、疾患との闘いに重要である。体液性免疫は、細菌病原体に対する主要な防御ラインである。ウイルス疾患の場合、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導は、防御免疫に重要である。したがって、有効なワクチンにより両免疫系の枝が疾患から保護するように刺激されることが好ましい。
【0003】
ワクチンは、宿主が保護免疫応答を惹起することができるように宿主に疾患発症因子由来の外来抗原を提供する。しばしば、ワクチン抗原は、疾患を引き起こす微生物の死滅または弱毒化形態である。これらの死滅または弱毒化ワクチン中の不可欠ではない成分の存在により、化学的および組換え技術を使用して十分に定義された合成抗原の開発を含むワクチン成分を精製する手間が多くなる。しかし、微生物ワクチンの精製および簡素化に付随して有効性が低下していた。低分子量の合成抗原は潜在的に有害な夾雑物を含まないにもかかわらず、この抗原自体では十分に免疫原性を示さない。これらの所見から、研究者らは、アジュバントとして既知の免疫系刺激物質をワクチン組成物に添加して、ワクチン成分の活性を高めている。
【0004】
免疫アジュバントは、個体に投与するかインビトロで試験した場合、抗原が投与された被験体の抗原に対する免疫応答が増加するか、免疫系由来の細胞の一定の活性を増大させる化合物である。種々の程度のアジュバント活性を示す多数の化合物が調製および試験されている(例えば、Shimizuら、1985;Bulusuら、1992;Ikedaら、1993;Shimizuら、1994;Shimizuら、1995;Miyajimaら、1996を参照のこと)。しかし、これらおよび他の先行技術のアジュバント系は、しばしば毒性を示し、不安定であり、および/または免疫刺激効果が許容できないほど低い。
【0005】
現在、米国でヒト用に許可されている唯一のアジュバントは、ワクチン抗原が処方されるアルミニウム塩の群(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アンモニウム)であるミョウバン(alum)である。ミョウバンなどの特定の担体により、マクロファージによる可溶性抗原の取り込み、プロセシング、および提示が促進されると報告されている。しかし、ミョウバンは、副作用がないが、不運なことに体液性(抗体)免疫のみに限られる。
【0006】
有効なアジュバント系の発見および開発は、既存および未来のワクチンの有効性および安全性の改善に不可欠である。したがって、新規の改良アジュバント系(特に、免疫系の両方のエフェクターアームを駆動し、次世代の合成ワクチンの開発をより良好に容易にするアジュバント)が必要とされている。本発明は、これらおよび他の必要性を満たしている。
【0007】
発明の概要
本発明の化合物は、ワクチン抗原に対する体液性および細胞性免疫応答を増強する免疫エフェクター分子である。この化合物は、環式アミノアルキル(アグリコン)基にグリコシド結合した2−デオキシ−2−アミノ−β−D−グルコピラノース(グルコサミン)を含む。化合物は、グルコサミン環の4位または6位でリン酸化されており、アグリコン窒素ならびにグルコサミン環の2位および3位でアルカノイルオキシテトラデカノイル残基でアシル化されている。本発明の化合物は、一般に、下記式(I):
【化6】
Figure 2004505986
(式中、Xは−O−および−NH−であり;Yは−O−または−S−であり;R、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシル基(飽和、不飽和、および分枝したアシル基を含む)であり;Rは、−Hまたは−POであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルであり;Rは、−H、−CH、または−PO10であって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルから選択され;Rは、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;「 」および「**」は、キメラ中心を示し、pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である)で記載される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0008】
いくつかの態様では、本発明の化合物は、XおよびYに−O−を含み、RはPOであり、RおよびRはHであり、下付き文字n、m、p、およびqは0から3の整数である。より好ましい態様では、RおよびRは−Hである。さらにより好ましい態様では、下付き文字nは1であり、下付き文字mは2であり、且つ下付き文字pおよびqは0である。なおさらに好ましい態様では、R、R、およびRはテトラデカノイル残基である。さらにより好ましい態様では、 はR配置であり、Yは赤道面位置で存在し、且つ**はS配置である(N−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ホスホノ−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−β−D−グルコピラノシドおよびその薬学的に許容される塩;RC−553;式II)。
【化7】
Figure 2004505986
【0009】
本発明はまた、上記の一般式の化合物を含む薬学的組成物として使用することができる化合物を提供する。薬学的組成物を、当業者に既知の種々の抗原および種々の製剤と組み合わせることができる。
【0010】
本発明の化合物はまた、被験体の免疫応答の誘導法に有用である。この方法は、治療有効量の薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む組成物の投与が必要である。
【0011】
本発明はまた、病原性感染症、癌、または自己免疫障害に罹患しているか、またはこれらに感受性を示す哺乳動物の治療法を含む。この方法は、治療有効量の薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む組成物を哺乳動物へ投与することが必要である。
【0012】
さらに、本発明は、被験体の一酸化窒素生成によって改善される疾患または状態の治療法を含む。この方法は、有効量の本発明の化合物を被験体に接触させる工程が必要である。いくつかの態様では、本発明の化合物を、虚血の48時間前、虚血直前、および虚血中に投与することができる。
【0013】
発明の詳細な説明
定義
「アシル」という用語は、酸の水酸基部分の除去によって有機酸から誘導された基をいう。したがって、アシルは、例えば、アセチル、プロピニル、ブチリル、デカノイル、ピバロイル、ベンゾイルなどを含むことを意味する。
【0014】
「(C〜C24)アシル」は、2個から24個の炭素を有するアシル基である。
【0015】
「アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、特記しない限り、直鎖もしくは分枝鎖、または環式の炭化水素ラジカル、またはその組み合わせであり、完全に飽和していても、単不飽和でも、または多価不飽和であってよく、記載の炭素原子数を有する二価および多価ラジカルを含み得る(すなわち、C〜C10は、1個から10個の炭素)。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)エチル、シクロプロピルメチル、その相同体および異性体(例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル)などの基が含まれる。不飽和アルキル基は、1つまたは複数の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1および3−プロピニル、3−ブチニル、および高級な相同体および異性体が含まれる。炭化水素基に制限されるアルキル基を、「ホモアルキル」と呼ぶ。
【0016】
「(C〜C)アルキル」は、1個から4個の炭素を有するアルキル基である。
【0017】
「アルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、アルカンから誘導される二価のラジカル(例えば、−CHCHCHCH−)を意味し、「ヘテロアルキレン」として既知の基をさらに含む。
【0018】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」という用語は、酸素、窒素、または硫黄原子を介して分子の残存物に結合したアルキル基をいう。
【0019】
「(C〜C)アルコキシ」という用語は、1個から4個の炭素を有するアルコキシ基である。
【0020】
上記の各用語(例えば、「アルキル」、「アシル」)は、表示のラジカルの置換形態および非置換形態の両方を含むことを意味する。各ラジカル型についての好ましい置換基を以下に示す。
【0021】
アルキルおよびアシルラジカルの置換基は、0〜(2m’+1)(m’はこのようなラジカル中の全炭素原子数)の範囲の数の−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NH−C(NH)=NH、−NR’C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−CN、および−NOから選択される種々の基であり得、R’、R’’、およびR’’’は、それぞれ独立して水素および非置換(C〜C)アルキルをいう。R’およびR’’が同一の窒素原子に結合する場合、これらは窒素原子と組み合わされて、5、6、または7員環を形成する。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。上記の置換基の考察から、当業者は、「アルキル」という用語は、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)などの基を含むことを意味すると理解する。
【0022】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書中に記載の化合物で見出される特定の置換基に依存する、比較的無毒の酸および塩基で調製した活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、中性形態のこのような化合物と十分な量の所望の塩基(原液または適切な不活性溶媒中のいずれか)との接触によって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩もしくはマグネシウム塩か、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、このような化合物の中性形態の十分な量の所望の酸(原液または適切な不活性溶媒中のいずれか)との接触によって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、またはリン酸亜リン酸など)由来の塩および比較的無毒の有機酸(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)由来の塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩、グルクロン酸またはガラクツロン酸などの塩もまた含まれる(例えば、Berge, S.M.ら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」、Journal of Pharmaceutical Science、1977、66、1〜19を参照のこと)。本発明の特定の特異的化合物は、化合物を塩基または酸付加塩に変換可能な塩基性および酸性官能基を含む。
【0023】
従来の様式で塩と塩基または酸とを接触する工程および親化合物を単離する工程によって、化合物の中性形態を再生することができる。化合物の親形態は、種々の塩形態と特定の物理的性質(極性溶媒中での溶解性など)が異なるが、塩は本発明の目的では化合物の親形態と等価である。
【0024】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書中に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化して本発明の化合物が得られる化合物である。さらに、エクスビボ環境下での化学的方法または生化学的方法によってプロドラッグを本発明の化合物に変換させることができる。例えば、適切な酵素または化学試薬を含む経皮パッチリザーバを使用する場合、プロドラッグをゆっくりと本発明の化合物に変換することができる。
【0025】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態を含む)で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲に含まれることが意図される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶または無定形で存在し得る。一般に、全ての物理形態は、本発明で意図される使用では等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0026】
本発明の特定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を有し、ラセミ酸塩、ジアステレオマー、幾何学異性体、および各異性体の全てが本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0027】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する1つまたは複数の原子の原子同位体を非天然の比率で含み得る。例えば、化合物を、放射性同位体(例えば、トリチウム(H)、ヨウ素125(125I)、または炭素14(14C)など)で放射性標識することができる。本発明の化合物の全ての同位体変形形態は、放射性にかかわらず本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0028】
導入
ワクチンの安全性を改善するための努力において、製造者は、完全な細胞死滅ワクチンを避け、組換えまたはサブユニットワクチンを産生している。これらの安全なワクチンの調製では、外来の細菌またはウイルス生物を除去する一方で、保護免疫に必要と考えられる最小の構造またはエピトープを残す。これらのワクチンの安全性は、有毒および発熱性を示す外来細菌またはウイルス成分の除去によって改善される。しかし、この有毒な成分により、完全細胞のワクチンを非常に有効にする非特異的免疫刺激が得られる。さらなる免疫刺激を行わないと、組換えおよびサブユニットワクチンを含む最小構造およびエピトープは、免疫原性が不十分である場合がある。
【0029】
サルモネラ属(Salmonella)ミネソタ(minnesota)R595のLPS由来の二糖類分子(MPL(登録商標)免疫刺激物質(Corixa Corp.))は免疫刺激性を示す。MPL(登録商標)免疫刺激物質であるモノホスホリル脂質Aは、脂質A(またはLPS)の構造誘導体であり、脂質Aと比較して治療指標が改善している(モノホスホリル脂質Aの構造については米国特許第4,987,237号、モノホスホリル脂質Aの調製の説明については米国特許第4,436,727号および同第4,436,728号を参照のこと)。他の有用な免疫刺激物質には、米国特許第4,912,094号に記載の3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)が含まれる。少なくとも20μg/kgまでの用量で化合物をヒトに安全に投与することができるにもかかわらず、10μg/kg以上の用量レベルでは、患者によっては体温が上昇してインフルエンザのような症状があらわれ、心拍数が上昇し、血圧が少し減少する。細胞培養および動物での評価により、より高い投与レベルでさえも発熱性を示し、TNFおよびIL−8などの炎症誘発性サイトカインを誘導する能力を保持するという点で、MPL(登録商標)免疫刺激物質は親LPSの免疫刺激活性をいくらか保持していることが確認されている。したがって、有効なワクチンアジュバントの必要性が十分に認識されている。理想的には、これらのアジュバントは、望ましくない毒性および発熱性を誘導することなく保護免疫応答を増強する。
【0030】
発熱性の低い免疫刺激物質を得るための努力において、MPL(登録商標)免疫刺激物質と類似の構造の合成分子が調製されている(2001年3月16日出願の米国特許出願第09/810,915号および本発明を参照のこと)。集合的にリン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGP)と呼ばれるこれらの新規の分子は、アシル化アミノアルキル基に結合したアシル化グルコース部分を含む(Johnsonら、1999、Bioorg.Med.Chem.Lett.、9、2273〜2278;国際公開公報第98/50399号、およびその中の参考文献)。各分子は、ピークアジュバント活性に最適な数と考えられる6つの脂肪酸尾部を有する。安定性および溶解性が最適になるようにAGPのアミノアルキル基内での異なる化学部分の置換を設計した。したがって、AGPを、そのアルキル基構造を基本としたいくつかのファミリーに広範に分離することができる。最初の生物学的評価の後、アミノアルキルモチーフはAGPの発熱性に対して劇的に影響を与えることができることが明らかとなった(米国特許出願第09/810915(2001年3月16日出願)、同第09/439,839号、同第09/074,720号、および米国特許第6,113,918号(米国特許出願第08/853,826号より発行)を参照のこと)。合成アジュバント化合物の最初のスクリーニング法の一部として、ウサギの発熱データを測定した。10μg/kgの用量でi.v.投与した場合、いくつかの化合物が発熱応答を惹起しないことに留意した。一般に、これらの化合物は、ヒト末梢血単核細胞に対するエクスビボサイトカイン誘導アッセイ法において炎症性サイトカインTNF−αまたはIL−1βを検出可能なレベルに誘導できなかった。本発明者らは、本明細書に、ウサギ発熱性試験およびエクスビボサイトカインアッセイ法において動物活性を誘導するAGPクラスのアジュバント特性の研究を報告する。
【0031】
化合物および組成物
本発明は、一般に、下記式(I):
【化8】
Figure 2004505986
(式中、Xは−O−および−NH−であり;Yは−O−または−S−であり;R、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシル基(飽和、不飽和、および分枝したアシル基を含む)であり;Rは、−Hまたは−POであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルであり;Rは、−H、−CH、または−PO10であって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルから選択され;Rは、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;「 」および「**」は、キメラ中心を示し、pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である)の化合物およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0032】
式Iのヘキソピラノシドが糖配置で示されるにもかかわらず、他のグリコシドは本発明の範囲内である。例えば、他のヘキソピラノシド(例えば、アロ、アルトロ、マンノ、グロ、イド、ガラクト、タロ)を含むグリコピラノシドは本発明の範囲内である。
【0033】
上記の一般式では、正常な脂肪アシル残基が結合している3’不斉中心を、「 」、「 」、および「 」と呼び、RまたはS配置であるが、R配置が好ましい。Rおよびグルコサミン単位が結合する環式アグリコン単位の炭素原子の絶対立体化学は、直接または間接的に(「**」と示す)RまたはSであり得る。上記の一般式では、Yは赤道面または軸の位置に存在することができるが、好ましくは赤道面位置である。立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、およびその混合物の全ては、本発明の範囲内とみなす。
【0034】
本発明の好ましい態様では、XおよびYは−O−であり、Rはホスホノであり、RおよびRはHであり、下付き文字n、m、p、およびqは0から3の整数、より好ましくは0から2である。最も好ましくは、整数nは1であり、整数mは2であり、整数pおよびqは0である。この好ましい態様では、本発明の化合物は、一般式(III):
【化9】
Figure 2004505986
を有する2−ピロリジノメチル−β−D−グルコサミニド−4−リン酸である。
【0035】
本発明の最も好ましい態様では、式(III)のR、R、およびRはテトラデカノイル残基であり、結合する3’不斉中心(「 」)の配置はRであり、Yが赤道面位置で存在し、ピロリジン立体中心(「**」)の絶対立体化学はSである。特に、最も好ましい態様の化合物は、N−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ホスホノ−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−β−D−グルコピラノシドおよびその薬学的に許容される塩である。この最も好ましい態様はまた、RC−553として既知であり、下記式II:
【化10】
Figure 2004505986
で示される。
【0036】
化合物の調製
本発明の化合物を、Johnsonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、9、2273〜2278、1999および国際公開公報第98/50399号およびその中の参考文献で概説されている方法を使用して調製することができる。一般に、上記参考文献に記載の合成法は、異なるアシル基および置換基を有する化合物の調製に広範に適用可能である。当業者は、本明細書中に記載の収束法を別のアシル化剤が使用されるように改変するか、または結合する適切なアシル基を有する市販の物質を使用して開始することができると認識すると思われる。
【0037】
化合物の評価
本明細書により提供された化合物を、種々のアッセイ形態で評価して、適切な薬物恐怖プロフィールを有する化合物を選択することができる。例えば、米国特許第6,013,640号は、本明細書中に記載の化合物の心臓保護効果の評価に適切な動物モデルを記載している。以下の例はまた、本発明の化合物の発熱性を評価するアッセイ法および化合物の炎症効果を評価するさらなるアッセイ法を提供する。
【0038】
本発明はまた、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合した本明細書により提供された化合物を含む薬学的組成物を提供する。適切な担体は、投与経路と共に治療条件に依存すると考えられる。したがって、以下に使用法と併せて担体を考察する。
【0039】
薬学的組成物およびその使用
1つの態様では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。化合物は治療有効量で存在し、この量は、疾患、状態の治療または生体発生に関して所望の効果を達成するために必要である。薬学的組成物は、抗原と同時投与する場合、アジュバントとして作用しうる。
【0040】
したがって、本発明のアジュバント系は、疾患を治療または予防するためのワクチンおよび他の免疫刺激組成物の作製および使用、哺乳動物(好ましくは、ヒト)の抗原に対する活性免疫の誘導に特に有利である。ワクチン調製は当技術分野において十分に開発されており、ワクチン調製および製剤化における一般的なガイダンスは、任意の種々の供給源から容易に利用可能である。1つのこのような例は、Vollerら、パークプレス大学、Baltimore、Md、U.S.A.、1978が編集した「ワクチンの新しい傾向と開発(New Trends and Developments in Vaccines)」である。
【0041】
1つの例示的な態様では、本発明のワクチン組成物中の抗原は、ペプチド、ポリペプチド、またはその免疫原性部分である。本明細書中で使用される、「免疫原性部分」は、B細胞および/またはT細胞表面抗原受容体によって認識される(すなわち、特異的に結合する)タンパク質部分である。このような免疫原性部分は、一般に、抗原タンパク質またはその変異体の少なくとも5個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基を含む。
【0042】
抗原ポリペプチドの免疫原性部分を、一般に、既知の技術(Paul、「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」、第3版、243〜247(Raven Press、1993)およびその引用文献によってまとめられている)を使用して同定することができる。このような技術には、抗原特異的抗体、抗血清、および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力についてのポリペプチドのスクリーニングが含まれる。本明細書で使用される、抗血清および抗体は、これらが抗原に特異的に結合する場合(すなわち、ELISAまたは他の免疫アッセイ法でタンパク質と反応するか、無関係のタンパク質と検出可能に反応しない)、「抗原特異的」である。このような抗血清および抗体を、本明細書中に記載のように既知の技術を使用して調製することができる。タンパク質の免疫原性部分は、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイ法で)実質的に全長ポリペプチドの反応性よりも低くないレベルでこのような抗血清および/またはT細胞と反応する部分である。このような免疫原性部分は、全長ポリペプチドの反応性と類似のレベルまたはそれ以上のレベルでこのようなアッセイ内で反応し得る。このようなスクリーニングを、一般に、当業者に既知の方法(HarlowおよびLane、「抗体:実験マニュアル(Antibodies: Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)を使用して行うことができる。例えば、ポリペプチドを固体支持体上に固定して患者の血清と接触させて、固定ポリペプチドに血清内の抗体を結合させることができる。次いで、非結合血清を除去し、結合抗体を、例えば、125I標識プロテインAを使用して検出した。
【0043】
ペプチドおよびポリペプチド抗原を、任意の種々の既知の技術を使用して調製する。DNA配列によってコードされる組換えポリペプチドを、当業者に既知の任意の種々の発現ベクターを使用して、単離DNA配列から容易に調製することができる。組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質転換されているか、またはトランスフェクトされている任意の適切な宿主細胞で発現させることができる。適切な宿主細胞には、原核生物、酵母、高等真核細胞(哺乳動物細胞および植物細胞など)が含まれる。好ましくは、使用した宿主細胞は、大腸菌、酵母、または哺乳動物細胞株(COSまたはCHOなど)である。
【0044】
約100個未満のアミノ酸、一般に約50個未満のアミノ酸を有するタンパク質抗原の一部および他の変異体を、当業者に既知の技術を使用した合成手段によって作製することもできる。例えば、このようなポリペプチドを、任意の市販の固相技術(アミノ酸鎖の成長のためにアミノ酸を連続的に添加するメリフィールド固相合成法など)を使用して合成することができる。Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85、2149〜2146、1963を参照のこと。ポリペプチド自動合成装置は、Perkin Elmer/Applied Biosystems Division(Foster City、CA)などの販売者から市販されており、製造者の指示にしたがって操作することができる。
【0045】
ある特異的な態様においては、本発明のワクチン組成物に使用するポリペプチドは、2つまたはそれ以上の明白なポリペプチドを含む、融合タンパク質であり得る。例えば、融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープの獲得を補助するか、または天然の組換えタンパク質よりも高収量のタンパク質発現を補助し得る(発現エンハンサー)。特定の好ましい融合パートナーは、免疫学的および発現増強融合パートナーである。他の融合パートナーを、タンパク質の溶解性を増大させるか、またはタンパク質が所望の細胞内区画に標的化することができるように選択することができる。なおさらなる融合パートナーには、タンパク質の精製を容易にするアフィニティータグが含まれる。
【0046】
一般に、化学結合を含む標準的な技術を使用して融合タンパク質を調製することができる。好ましくは、融合タンパク質は組換えタンパク質として発現し、発現系で非融合タンパク質と比較して産生レベル増加する。簡単に述べれば、ポリペプチド成分をコードするDNA配列を個別に構築し、適切な発現ベクターにライゲートすることができる。1つのポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端を、ペプチドリンカーを用いるかまたは用いずに、配列の読み取り枠が一致するように第2のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端にライゲートする。これにより、両方の成分ポリペプチドの生物活性が保持された1つの融合タンパク質に翻訳される。
【0047】
ペプチドリンカー配列を使用して、各ポリペプチドが二次構造および三次構造に確実に折りたたまれるための十分な距離によって第1および第2のポリペプチド成分を分離することができる。このようなペプチドリンカー配列を、当技術分野で既知の標準的技術を使用して融合タンパク質に組み込む。適切なペプチドリンカー配列を、以下の因子に基づいて選択することができる:(1)可撓性に伸長した高次構造を利用する能力、(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用することができる二次構造を利用できないこと、および(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応する疎水性または荷電残基の欠如。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、Asn、およびSer残基を含む。他の隣接中性アミノ酸(ThrおよびAlaなど)をリンカー配列に使用することができる。リンカーとして有用に使用することができるアミノ酸配列には、Marateaら、Gene、40:39〜46、1985;Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83、8258〜8262、1986;米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示のものが含まれる。リンカー配列は、一般に、1から約50アミノ酸の長さであり得る。第1および第2のポリペプチドが機能的ドメインの分離および立体障害の防止に使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要ない。
【0048】
好ましい態様では、免疫学的融合パートナーはタンパク質D(グラム陰性細菌であるヘモフィルス−インフルエンゼ(Haemophilus influenza)Bの表面タンパク質)に由来する(国際公開公報第91/18926号)。好ましくは、タンパク質D誘導体は、約1/3のタンパク質(例えば、第1のN末端100から110アミノ酸)を含み、タンパク質D誘導体を脂質化することができる。特定の好ましい態様では、リポタンパク質D融合パートナーの第1の109残基はN末端に含まれており、これによりさらなる外因性T細胞エピトープを有するポリペプチドが得られ、大腸菌での発現レベルが増加する(したがって、発現エンハンサーとして機能する)。脂質尾部により、抗原提示細胞への至適抗原提示が確実となる。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質、NS1(血球凝集素)が含まれる。典型的には、N末端の81個のアミノ酸を使用するが、Tヘルパーエピトープを含む異なる断片を使用することができる。
【0049】
別の態様では、免疫融合パートナーは、LYTAとして既知のタンパク質またはその一部(好ましくは、C末端部分)である。LYTAは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来であり、アミダーゼLYTA(LytA遺伝子にコードされる、Gene、43、265〜292、1986)として既知のN−アセチル−L−アラニンアミダーゼを合成する。LYTAは、ペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己溶解素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEAEなどのいくつかのコリンアナログに対する親和性を担う。この性質は、融合タンパク質発現に有用な大腸菌C−LYTA発現プラスミドの開発に利用されている。アミノ末端にC−LYTA断片を含むハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology、10、795〜798、1992を参照のこと)。好ましい態様では、LYTAの反復部分を、融合タンパク質に組み込むことができる。反復部分は、178位の残基から始まるC末端領域で認められる。特に好ましい反復部分は、188〜305位の残基に組み込まれている。
【0050】
本発明の別の態様では、本明細書中に記載のアジュバント系を、DNAを基にしたワクチン組成物の調製に使用する。この型の例示的なワクチンは、抗原がインサイチューで産生されるように1つまたは複数のポリペプチド抗原をコードするDNAを含む。DNAは、当業者に既知の任意の種々の送達系(核酸発現系、細菌およびウイルス発現系を含む)内に存在し得る。多数の遺伝子送達技術(Rolland、Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Systems、15、143〜198、1998およびその参考文献)が当技術分野で既知である。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列(適切なプロモーターおよび終結シグナルなど)を含む。細菌送達系は、その細胞表面上のポリペプチドの免疫原性部分を発現するか、またはそのようなエピトープを分泌する細菌(バチルス−カルメット−ゲリン(Bacillus−Calmette−Guerrin)など)の投与を含む。1つの好ましい態様では、典型的には、非病原性(欠失)複製コンピテントウイルスの使用を含むウイルス発現系(例えば、ワクシニアもしくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を使用してDNAを移入する。系の例は、例えば、Fisher−Hochら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、317〜321、1989;Flexnerら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、569、86〜103、1989;Flexnerら、Vaccine、8、17〜21、1990;米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、および同第5,017,487号;国際公開公報第89/01973号;米国特許第4,777,127号、英国特許第2,200,651号;欧州特許第0,345,242号、国際公開公報第91/02805号;Berkner、Biotechniques、6、616〜627、1988;Rosenfeldら、Science、252、431〜434、1991;Kollsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91、215〜219、1994;Kass−Eislerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、11498〜11498〜11502、1993;Guzmanら、Circulation、88、2838〜2848、1993;Guzmanら、Cir.Res.、73、1202〜1207、1993に開示されている。このような発現系へのDNAの組み込み技術は当業者に既知である。
【0051】
あるいは、例えば、Ulmerら、Science、259、1745〜1749、1993に記載され、Cohen、Science、259、1691〜1692、1993で概説されているように、DNAは「裸」であり得る。細胞に効率よく輸送される生分解性ビーズにDNAをコーティングすることにより、裸のDNA取り込みを増加させることができる。ワクチンは、所望ならばポリヌクレオチドおよびポリペプチド成分の両方を含むことができることが明らかである。
【0052】
さらに、ワクチンは、所望のポリヌクレオチド、ポリペプチド、および/または炭水化物抗原の薬学的に許容される塩を含むことができることが明らかである。例えば、このような塩を、有機ビーズ(例えば、第一級、第二級、および第三級アミンならびに塩基性アミノ酸の塩)および無機ビーズ(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウム塩)を含む薬学的に許容される無毒の塩基を調製することができる。
【0053】
本発明のアジュバント系は、広範な投薬量および広範な比で投与した場合に強力なアジュバント効果を示す。
【0054】
各ワクチン用量中の抗原の量を、一般に、典型的なワクチンで有意な副作用を起こすことなく免疫保護応答を誘導する量として選択する。このような量は、使用する特異的免疫原およびどのようにして投与されるかによって変化する。一般に、各用量は約1から1000μgのタンパク質、最も典型的には約2から100μg、好ましくは約5から50μgを含むと予想される。勿論、投与した用量は、年齢、体重、現在の治療の種類、もしあれば投与した抗原の性質に依存し得る。
【0055】
所与の量の本発明のワクチン組成物の免疫原性活性を、例えば、ワクチン組成物で使用した抗原に対する抗体の力価の増加をモニタリングすることによって容易に同定することができる(Dalsgaad, K.、Acta Veterinia Scandinavica、69、1〜40、1978)。別の一般的方法は、CD−1マウスへの種々の量のワクチン組成物の注射、その後のマウス由来の血清の採取、および抗免疫原性抗体の試験(例えば、ELISAによる)を含む。これらおよび他の類似の方法は、当業者に明らかである。
【0056】
抗原を、所与のワクチン組成物で治療すべき感染症、自己免疫疾患、状態、癌、病原体、または疾患に依存する、本質的に任意の所望の供給源に由来し、および/またはこれから単離することができる。例として、抗原は、インフルエンザウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ヒトHIV−1、HIV−2、単純ヘルペスウイルス2型、ヒトサイトメガロウイルス、A型、B型、C型、またはE型肝炎、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、または口蹄疫ウイルスなどのウイルス供給源由来であり得る。例示的抗原はまた、細菌起源(炭疽、ジフテリア、ライム病、マラリア、結核、リーシュマニア症、T.クルージ(T. Cruzi)、エールリヒア属、カンジダ属など)など、またはバベオシス−ボビス(Babeosis bovis)またはプラスモジウム属の原生生物に由来し得る。抗原は、典型的には、天然または合成アミノ酸(例えば、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の形態)から構成されるか、多糖類から構成されるか、その混合物であり得る。例示的抗原を、天然の供給源から単離するか、固相合成によって合成するか、または組換えDNA技術によって得ることができる。
【0057】
別の態様では、癌の予防および/または治療のための本発明のワクチン組成物において腫瘍抗原を使用する。癌細胞は、しばしばその表面上に特徴的な抗原(治療用癌ワクチンの候補である切断型上皮成長因子、葉酸結合タンパク質、上皮ムチン、マラノフェリン、癌胎児抗原、前立腺特異的膜抗原、HER2−neuなど)を有する。腫瘍抗原が正常であるか身体の正常な成分に関連するので、免疫系はしばしば腫瘍細胞を破壊するための抗原に対して有効な免疫応答を増強できない。このような応答を達成するために、本明細書中に記載のアジュバント系を使用することができる。結果として、外因性タンパク質は、内因性抗原のプロセシング経路に入り、細胞溶解性または細胞傷害性T細胞(CTL)を産生する。このアジュバント効果は、免疫化に使用した腫瘍抗原をその表面上に保有する腫瘍細胞を調査および破壊する抗原特異的CTLの産生を容易にする。この方法を使用することができる例示的な癌型には、前立腺、結腸、乳房、卵巣、膵臓、脳、頭頸部、黒色腫、白血病、またはリンパ腫などが含まれる。
【0058】
本発明の別の態様では、特に免疫無防備状態の患者における慢性感染症の治療のために免疫系を増強するために、本発明のアジュバント系を単独(すなわち、同時投与抗原を含まない)で投与することができる。治療または予防的治療にこの方法を使用することができる感染症の例を、米国特許第5,508,310号に見出すことができる。この方法での免疫系の増強はまた、院内感染および/または手術後感染リスクを制限するための予防基準として有用であり得る。
【0059】
別の態様では、ワクチン組成物中に存在する抗原は、外来抗原ではなく、むしろ自己抗原であり、例えば、ワクチン組成物は自己免疫疾患(1型糖尿病、従来の器官特異的自己免疫疾患、神経疾患、リウマチ病、乾癬、結合組織疾患、自己免疫性血球減少症、および他の自己免疫疾患に指向する。このような従来の器官特異的自己免疫は、甲状腺炎(グレーブス病+橋本病)、胃炎、副腎炎(アディソン病)、卵巣炎、原発性胆汁性肝硬変、重症性筋無力症、性腺不全、副甲状腺機能低下症、脱毛症、吸収不良症候群、悪性貧血、肝炎、抗受容体抗体疾患、および白斑を含み得る。このような神経疾患には、精神分裂病、アルツハイマー病、うつ病、下垂体機能低下症、尿崩症、乾燥症候群、および多発性硬化症を含み得る。このようなリウマチ病/結合組織疾患には、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、または狼瘡、強皮症、多発〔性〕筋炎、炎症性腸疾患、皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、脈管炎、乾癬性関節炎、剥脱性皮膚炎、尋常(性)天疱瘡、シェーグレン症候群を含み得る。他の自己免疫関連疾患は、自己免疫性ウボ網膜炎(autoimmune uvoretinitis)、糸球体腎炎、心筋梗塞後症候群、肺ヘモジデリン沈着症、アミロイドーシス、サルコイドーシス、アフタ性口内炎、および本明細書に記載され且つ関連分野で既知の他の免疫関連疾患を含み得る。
【0060】
当業者に既知の、任意の適切な担体を本発明のワクチン組成物で使用することができる一方で、担体型は典型的には所望の投与様式によって変化する。本発明の組成物を、任意の適切な投与様式(例えば、局所、経口、鼻腔内、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮内、皮下、または筋肉内投与)で処方することができる。非経口投与(皮下注射など)のには、担体はしばしば水、食塩水、アルコール、脂肪、ワックス、または緩衝液を含む。経口投与には、上記担体を使用するか、または固体担体(マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウムなど)も使用することができる。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸)を本発明の組成物の担体として使用することもできる。適切な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号、同第5,075,109号、同第5,928,647号、同第5,811,128号、同第5,820,883号、同第5,853,763号、同第5,814,344号、および同第5,942,252号(その開示全体が参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。改変B型肝炎コアタンパク質担体系もまた適切である(参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第9940934号およびその引用文献)。宿主においてクラスI制限細胞傷害性Tリンパ球を誘導することができる米国特許第5,928,647号(その開示全体が参照として本明細書に組み入れられる)などに記載の特定のタンパク質複合体を含む担体もまた使用することができる。
【0061】
1つの例示的態様では、ワクチン製剤を、免疫応答の惹起のために粘膜、特に口腔、好ましくは舌下に投与することができる。非侵襲性投与技術による容易さおよび便利さのために、伝統的な非経口送達の多くの例において口腔投与が好ましい。さらに、この方法は、伝統的な非経口送達では続行がしばしば困難であり、空気伝搬病原体および/またはアレルゲンから保護することができる粘膜免疫を惹起するための手段を提供する。口腔投与のさらなる利点は、特に小児用または伝統的に長期にわたる複数回の注射を必要とする適用(アレルギー脱感作治療など)に舌下ワクチン送達を使用して患者のコンプライアンスを改善することができるという点である。
【0062】
ワクチン組成物はまた、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、またはリン酸緩衝液 w/o生理食塩水)、炭水化物(グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(グリシンなど)、抗酸化剤、静菌薬、キレート剤(EDTAなど)、グルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液と共に等張、低張、少し高張にする溶質、懸濁剤、濃厚剤、および/または防腐剤を含み得る。あるいは、本発明の組成物を、凍結乾燥物として処方することができる。組成物を、既知の技術を用いてリポソーム内にカプセル化することもできる。
【0063】
したがって、1つの態様において、ワクチン組成物は、1つまたは複数の有効量の界面活性剤を含む水性製剤を含む。例えば、組成物は、少なくとも1つの適切な界面活性剤(例えば、リン脂質界面活性剤)を含むミセル分散形態であり得る。リン脂質の例には、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DPMG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)などのジアシルホスファチジルグリセロール;ジミリストイルホスファチジルコリン(DPMC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのジアシルホスファチジルコリン;ジミリストイルホスファチジン酸(DPMA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、およびジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などのジアシルホスファチジン酸;ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DPME)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などのジアシルホスファチジルエタノールアミンが含まれる。
【0064】
典型的には、水性製剤における界面活性剤:アジュバントのモル比は、約10:1から約1:10、より典型的には約5:1から約1:5であるが、対象となる特定の目的を最良に適応させるために任意の有効量の界面活性剤を水性製剤中で使用することができる。
【0065】
別の態様では、組成物は、水−油乳濁液または油−水乳濁液などの乳濁液である。このような乳濁液は一般に当業者によく知られている。
【0066】
本発明のアジュバント系を、唯一のアジュバント系として使用するか、または他のアジュバントもしくは免疫エフェクターと共に投与することができる。例として、このようなアジュバントには、油を基にしたアジュバント(例えば、フロイント完全および不完全)、リポソーム、金属塩(例えば、AlK(SO、AlNa(SO、AlNH(SO)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)、Ca(PO、カオリン、およびカーボン)、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、ポリマー(例えば、非イオン性ブロックポリマー、ポリホスファゼン、シアノアシレート、ポリメラーゼ−(DL−ラクチド−co−グリコシド))、特に、特定の天然基質(例えば、脂質Aおよびその誘導体、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、ならびにコリネバクテリウム−パルブム(Corynebacterium parvum)、ボルデテラ−ペルツッシス(Bordetella pertussis)、およびブルセラ属のメンバーに見出される物質)、ウシ血清アルブミン、ジフテリア毒素、破傷風、エデスチン、キーホールリンペットヘモシアニン、シュードモナストキシンA、コレラゲノイド、コレラ毒、百日咳毒、ウイルスタンパク質、および真核生物タンパク質(インターフェロンなど)、インターロイキン、または腫瘍壊死因子を含み得る。当業者に既知の方法により、天然または組換え供給源からこのようなタンパク質を得ることができる。組換え供給源から得られた場合、アジュバントは、分子の少なくとも免疫刺激部分を含むタンパク質断片を含み得る。本発明の実施で使用することができる他の既知の免疫刺激高分子には、多糖類、tRNA、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、4’,4−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸および4−ニトロ−2−アミノ安息香酸(Sela, M.、Science、166、1365〜1374、1969を参照のこと)もしくは糖脂質、脂質、または炭水化物の混合ポリ縮合物(比較高分子量)などの非代謝性合成ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
1つの態様では、Th1型の免疫応答を主に誘導するようにアジュバント系を設計することが好ましい。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα、IL−2、およびIL−12)は、投与した抗原に対する細胞媒介免疫応答の誘導を好む傾向がある。それに対して、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10)は、体液性免疫応答を誘導する傾向がある。本明細書により得られたワクチンの適用後、患者は、Th1およびTh2型応答を誘導する免疫応答を支持すると思われる。応答が主にTh1型である好ましい態様では、Th1型サイトカインレベルはTh2型サイトカインレベルよりも広い範囲で増加する。これらのサイトカインレベルを、標準的アッセイ法を使用して容易にアッセイすることができる。サイトカインファミリーの概説については、MosmannおよびCoffman、Ann.Rev.Immunol.、7、145〜173、1989を参照のこと。
【0068】
例えば、主にTh1型応答の惹起のためのさらなるアジュバントには、例えば、モノホスホリル脂質A(3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)など)とアンモニウム塩との組み合わせが含まれる。MPLアジュバントは、Corixa Corporation(Seattle、WA;米国特許第4,436,727号、同第4,877,611号、同第4,866,034号、および同第4,912,094号を参照のこと)から市販されている。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)もまた主にTh1応答を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドは既知であり、例えば、国際公開公報第96/02555号、国際公開公報第99/33488号、および米国特許第6,008,200号、および同第5,856,462号に記載されている。免疫刺激性DNA配列もまた、例えば、Satoら、Science、273、352、1996に記載されている。ワクチン組成物中で使用することができる他の例示的なアジュバントには、モンタニドISA 720(Seppic、フランス)、SAF(Chiron、California、合衆国)、ISCOMS(CSL)、MF−59(Chiron)、Detox(商標)アジュバント(Corixa、Hamioton、MT)が含まれる。
【0069】
本明細書に記載の組成物を、徐放性製剤(すなわち、投与後に化合物をゆっくりと放出させるカプセル、スポンジ、ゲル(例えば、多糖類から構成される)などの製剤)の一部として投与することができる。一般に、このような製剤を、既知の技術(例えば、Coombesら、Vaccine、14、1429〜1438、1996を参照のこと)を使用して調製し、例えば、経口、直腸、または皮下移植または所望の標的部位での移植によって投与することができる。徐放性製剤は、担体基質に分散させ、および/または速度調節膜に囲まれたリザーバ中に含まれるポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を含み得る。このような製剤内で使用する担体は生体適合性であり、且つ生分解性でもあってよく、製剤は比較的一定レベルの有効成分を放出することが好ましい。このような担体には、ポリ(ラクチド−co−グリコシド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロース、デキストランなどの微粒子が含まれる。他の徐放性担体には、非液体親水性コアを含む超分子バイオベクター(例えば、架橋多糖類またはオリゴ糖)および任意で、両親媒性化合物(例えば、リン脂質)を含む外膜が含まれる(例えば、米国特許第5,151,254号、および国際公開公報第94/20078号、国際公開公報第/94/23701号、および国際公開公報第96/06638号を参照のこと)。徐放性製剤中に含まれる活性化合物の量は、移植部位、放出速度、予想される放出の持続、および治療または予防する状態の性質によって変化する。
【0070】
任意の種々の既知の送達体を薬学的組成物およびワクチン内で使用して、細胞を標的する抗原特異的免疫応答の発生を容易にすることができる。送達体には、抗原提示細胞(APC)(樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、およびAPCを有効にするように操作することができる他の細胞など)が含まれる。このような細胞は、抗原提示能力を増大させ、活性化を改良し、および/またはT細胞応答を維持し、それ自体が抗標的効果を有し、および/またはレシーバーと免疫学的に適合する(すなわち、HLAハプロタイプの適合)ように遺伝子改変することができるが、その必要はない。一般に、APCを、任意の種々の生体流体および器官(腫瘍および腫瘍周囲組織を含む)から単離することができ、これは自己細胞、同種異形細胞、同系細胞、または異種細胞であり得る。
【0071】
本発明の特定の好ましい態様は、抗原提示細胞として樹状細胞またはその前駆細胞を使用する。樹状細胞は非常に強力なAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature、392、245〜251、1998)、予防または治療抗腫瘍免疫を惹起するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann.Rev.Med.、50、507〜529、1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞をその典型的な形状(インサイチューで星状、インビトロで視覚可能な顕著な細胞質プロセス(樹状))、取り込み能力、高親和性での抗原のプロセシングおよび提示、ならびにナイーブT細胞応答を活性化する能力に基づいて同定することができる。勿論、樹状細胞を、インビボまたはエクスビボで樹状細胞上で一般には認められない特異的細胞表面受容体またはリガンドを発現するように操作することができ、このような改変樹状細胞は本発明で意図される。樹状細胞の代わりとして、分泌小胞抗原負荷樹状細胞(エキソソームと呼ぶ)をワクチン中で使用することができる(Zitvogelら、Nature Med.、4、594〜600、1998を参照のこと)。
【0072】
末梢血、骨髄、腫瘍侵襲細胞、腫瘍周囲組織侵襲細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、または任意の他の適切な組織もしくは流体から樹状細胞および前駆物質を得ることができる。例えば、サイトカイン(GM−CSF、IL−4、IL−13、および/またはTNFαなど)の組み合わせを末梢血から採取した単球培養物に添加することによって、樹状細胞をエクスビボで分化させることができる。あるいは、末梢血、臍帯血、または骨髄から採取したCD34陽性細胞を、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンド、ならびに/または樹状細胞の分化、成熟、および増殖を誘導する化合物の培養培地組み合わせの添加によって樹状細胞に分化させることができる。
【0073】
樹状細胞は、十分に特徴付けられた2つの表現型の間の簡単な識別法によって「未熟」細胞および「成熟」細胞に分類される。しかし、この名称は、全ての可能な中間の分化段階を排除すると解釈すべきではない。未熟樹状細胞は、Fcγ受容体およびマンノース受容体の高発現に対応する抗原取り込みおよびプロセシング能力が高いAPCと特徴付けられる。成熟表現型は、典型的には、これらのマーカーの発現は低いが、T細胞活性を担う細胞表面分子(クラスIおよびクラスII MHC、接着分子(例えば、CD45およびCD11)、および刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86、および4−1BB)など)の発現が高いことによって特徴付けられる。
【0074】
一般に、APCを、抗原ポリペプチドまたはその免疫原性部分が細胞表面上で発現するように抗原ポリペプチド(またはその一部もしくは他の変異体)をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトすることができる。このようなトランスフェクションはエクスビボで起こり、本明細書中に記載のこのようなトランスフェクション細胞およびアジュバントを含む組成物またはワクチンを治療に使用することができる。あるいは、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的する遺伝子送達体を患者に投与し、インビボでトランスフェクトすることができる。例えば、樹状細胞のインビボおよびエクスビボトランスフェクションを、国際公開公報第97/2447号に記載のような当技術分野で既知の任意の方法またはMahviら、Imunology and cell Biology、75、456〜460、1997に記載の遺伝子銃の方法を使用して行うことができる。樹状細胞または前駆細胞と、抗原ポリペプチド、DNA(裸またはプラスミドベクターに含まれる)もしくはRNA、または抗原発現組換え細菌もくしくはウイルス(例えば、ワクシニア、トリポックスウイルス、アデノウイルス、またはレンチウイルスベクター)とのインキュベーションによって樹状細胞の抗原負荷を行うことができる。負荷前に、ポリペプチドを、T細胞ヘルプが得られる免疫パートナー(例えば、担体分子)に共有結合することができる。あるいは、樹状細胞を、個別またはポリペプチドの存在下で非結合免疫パートナーでパルスすることができる。
【0075】
一酸化窒素関連障害の治療
1つの局面では、本発明は、一酸化窒素よって緩和させる疾患または状態(特に、虚血および再灌流損傷)の治療法を提供する。この方法は、有効量の本発明の化合物をこのような治療を必要とする被験体に投与する工程を含む。一般に、iNOS遺伝子転写およびタンパク質合成の誘導は炎症性を示すので、動物およびヒトでいくらか「有毒」であるか耐性が不十分であることが認められている。エンドトキシン(LPS)および炎症性サイトカイン(IL−1、TNFα、およびIFN−γなど)はiNOSの既知の誘発因子である。本来全て有毒であり、動物に投与した場合、全身性炎症応答、成人呼吸促進症候、多器官不全、および心血管虚脱を誘導し得る。
【0076】
MPL(登録商標)免疫刺激物質の心保護(cardioprotective)活性の調査により、一酸化窒素シンターゼの誘導(iNOS)は化合物の心保護効果の遅延に重要であることが証明された。さらに、NOSの構成プールによると考えられる一酸化窒素(NO)シグナル伝達は、化合物の急速な心保護効果に重要である。MPL(登録商標)免疫刺激物質の残りのエンドトキシン様活性に照らして、化合物が一酸化窒素シグナル伝達を誘導することができることは驚くべきことではない。なおさらに、一酸化窒素シグナル伝達は、虚血の前兆が心保護を惹起する経路である可能性を有すると示唆されている。一酸化窒素ドナーが心保護であるという事実と組み合わせると、この所見はMPL(登録商標)免疫刺激心保護経路としてNOS/NO経路をさらに支持する。
【0077】
RC−553を含む本発明の化合物は、一酸化窒素よって緩和させる疾患または状態(特に、虚血および再灌流損傷)の治療法に有用である(リン酸アミノアルキルグルコサミニドの心保護性および心保護性のアッセイ法の説明については、2001年3月14日出願の米国特許出願09/808669を参照のこと)。
【0078】
実施例
以下の実施例は、例示ために提供されるものであって、特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものではない。
【0079】
実施例 RC−553 の調製
N−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ホスホノ−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−β−D−グルコピラノシドのトリエチルアンモニウム塩(式(I)R=R=R=C1327CO、X=Y=O、n=1、m=2、p=q=0、R=R=H、R=PO;式(II)R=R=R=C1327CO);RC−553の調製。
【0080】
(1)2−デオキシ−4−O−ジフェニルホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−6−O−(2,2,2−トリクロロ−1,1−ジメチルエトキシカルボニル)−2−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルアミノ)−β−D−グルコピラノシルブロミド(1.05g、0.81mmol)の乾燥1,2−ジクロロエタン(10ml)溶液を、4Å分子篩(0.5g)CaSO無水物(2.2g、16mmol)、およびN−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメタノール(0.40g、0.75mmol)に添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、Hg(CN)(1.02g、4.05mmol)で処理し、暗所で16時間加熱還流した。冷却した反応混合物をCHClで希釈し、濾過した。濾過物を1NのKI水溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出、15→20%EtOAc/ヘキサン)により、無定形固体として0.605g(43%)のN−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ジフェニルホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−6−O−(2,2,2−トリクロロ−1,1−ジメチルエトキシカルボニル)−2−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルアミノ)−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0081】
(2)上記(1)で調製した化合物(0.50g、0.29mmol)の60℃のAcOH(10mL)溶液を、3つの等量の亜鉛粉(0.98g、15mmol)で1時間処理した。冷却した反応混合物を超音波処理し、セライトパットで濾過し、濃縮した。得られた残渣をCHClおよび飽和NaHCO水溶液で分割し、層と分離した。有機相を乾燥し(NaSO)、濃縮した。粗アミノアルコール溶液が得られ、(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカン酸(0.155g、0.34mmol)のCHCl(3.5mL)溶液を、粉末4Å分子篩(0.25g)と0.5時間撹拌し、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(0.11g、0.44mmol)で処理した。得られた混合物を室温で8時間撹拌し、セライドで濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、無色のシロップとして0.355g(68%)のN−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ジフェニルホスホノ−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0082】
(3)上記(2)で調製した化合物(0.300g、0.166mmol)のAcOH(1mL)とテトラヒドロフラン(9ml)との混合物を含む溶液を、室温の70psigで18時間PtO(0.15g)の存在下で水素化した。反応混合物を、2:1 CHCl−MeOH(50mL)で希釈し、短時間超音波処理した。触媒を回収し、2:1 CHCl−MeOHで洗浄し、濾過物を合わせ、洗浄し、濃縮した。CHCl−MeOH−HO−EtN(90:10:0.5:0.5)を使用したシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより部分精製し、生成物を氷冷2:1 CHCl−MeOH(30mL)に溶解し、氷冷0.1N HCl水溶液(12mL)で洗浄した。有機相を濾過し、2%EtN水溶液(5mL、発熱物質を含まない)で凍結乾燥して、無色粉末として0.228g(79%)のN−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−(S)−2−ピロリジノメチル−2−デオキシ−4−O−ホスホノ−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−β−D−グルコピラノシドのトリエチルアンモニウム塩を得た:融点、67〜70℃;
Figure 2004505986
【0083】
実施例 から
実施例2から6の主な目的は、ワクチン抗原と処方された場合にRC−553が最小の発熱性を促進し、アジュバント活性を媒介することができるかどうかを同定することであった。
【0084】
実施例 HBsAg 型肝炎表面抗原)に対するアジュバント活性
6から8週齢のBALB/cマウス群(Jackson Laboratories Bar Harbor、Maine)に、2μgのHBsAg(Laboratorio Palbo Cassara)±20μgのアジュバント(MPL(登録商標)免疫刺激物質またはRC−553)を0日目および21日目にs.c.で注射した。アジュバントを含むTEoA(トリエタノールアミン)製剤と組換えHBsAgとの混合によってワクチンを調製した。2回目のワクチン接種から21日後に回収した血清プール(5マウス/群)由来のELISAによってHBsAgの力価を同定した。非免疫対照にはワクチン接種しなかった。
【0085】
RC−553を投与されたマウス由来の血清力価は、抗原のみを投与した対照血清よりも有意に高い抗HBsAg応答を示した(表1)。IgG2aおよびIgG2bイソ型の力価の増加が特に顕著であった。これらの力価は、MPL(登録商標)免疫刺激物質を投与した対照群で示された力価と等価であった。
【0086】
【表1】低発熱アジュバントのHBsAgとの比較
Figure 2004505986
a.発熱性データは、10μg/kgの用量のi.v.投与後の3匹のウサギの全温度上昇(℃)を示す。発熱物質アッセイ法では、化合物を10%EtOH/WFI(注射用USP水)中に100μg/mlで溶解し、5%デキストロース水で希釈した。N.T.は、化合物を試験していないことを意味する。
【0087】
実施例 FluZone インフルエンザワクチン中の血球凝集素に対するアジュバント活性
6から8週齢のBALB/cマウス群(Jackson Laboratories Bar Harbor、Maine)に、0.2μgの血球凝集素タンパク質のFluZoneインフルエンザワクチン(Connaught Laboratories、Swiftwater、PA)±20μgのアジュバント(MPL(登録商標)免疫刺激物質またはRC−553)を0日目および14日目に皮下注射した。2回目のワクチン接種から14日後に回収した5匹のマウスの血清プール由来のFluZone ELISAによってFluZoneの力価を同定した(表2)。非免疫対照はワクチン接種しなかった。試験群由来の血清に対して使用した最初の希釈は、1:1600であった。
【0088】
結果は先の実施例のものと類似していた。RC−553も、抗原のみを投与した対照血清よりも有意に高い力価を示した(表2)。力価の増加は、IgG2aおよびIgG2b応答の増強にも影響を与えた。これらの力価は、MPL(登録商標)免疫刺激物質を投与した対照群で示された力価と等価であった。
【0089】
【表2】低発熱アジュバントのインフルエンザワクチンとの比較
Figure 2004505986
a.発熱性データは、10μg/kgの用量のi.v.投与後の3匹のウサギの全温度上昇(℃)を示す。発熱物質アッセイ法では、化合物を10%EtOH/WFI(注射用USP水)中に100μg/mlで溶解し、5%デキストロース水で希釈した。N.T.は、化合物を試験していないことを意味する。
【0090】
実施例 HBsAg に対するアジュバント活性
BALB/cマウス群に、0.2μgのHBsAg(Rhein Americana & Rhein Biotech)±25μgのアジュバント(MPL(登録商標)免疫刺激物質またはRC−553)を0日目および21日目に皮下注射した。IgG2aおよびIgG2bイソ型のHBsAgに対する力価を、2回目のワクチン接種から21日後に回収した血清プール由来のELISAによって同定した(表3)。非免疫対照はワクチン接種しなかった。この実験では、対照群と比較して、抗原のPBS溶液を投与した血清で、RC−553が力価の増加を媒介した。RC−553で刺激された力価は、陽性対照であるMPL(登録商標)免疫刺激物質と等価であった。
【0091】
【表3】低発熱アジュバントのHBsAgとの比較
Figure 2004505986
a.発熱性データは、10μg/kgの用量のi.v.投与後の3匹のウサギの全温度上昇(℃)を示す。発熱物質アッセイ法では、化合物を10%EtOH/WFI(注射用USP水)中に100μg/mlで溶解し、5%デキストロース水で希釈した。N.T.は、化合物を試験していないことを意味する。
【0092】
実施例 HBsAg 免疫化マウスの CTL 活性は、 RC−553 で増加した
実施例4の各群由来の数匹のマウスを、CTL活性を評価するための脾臓細胞ドナーとしても使用した。標準的な4時間の51Cr放出アッセイ法(Mooreら、1988、Cell、55、777〜785)にてHBsAg指向性特異的溶解を評価した。ワクチン接種から9日後のマウスの脾臓から1つの細胞懸濁液を調製した。脾臓細胞を、トリス緩衝化NHClで処理して赤血球を回収し、5mM HEPES、4mM L−グルタミン、0.05mM 2−メルカプトエタノール、および抗生物質を補足したRPMI/10%FCS中に7.5×10/mlの濃度で再懸濁した。既知のMHCクラスIを提示する合成ペプチドL制限CTLエピトープ(IPQSLDSWWTSL)を、75nMの最終濃度で細胞に添加した。4日間のインキュベーション後、細胞を回収し、CTL活性について評価した。L制限エピトープを発現する51Cr標識トランスフェクションP815S細胞について、特異的死滅を測定した。標的細胞を、L制限CTLエピトープを発現するP815細胞株(P815S)でトランスフェクトした。P815標的に対する非特異的溶解は、50:1のE:Tで10%未満であった。抗体応答と対照的に、RC−553は、対照のみの抗原と比較して、CTL活性レベルの上昇を有意に刺激した(表4)。
【0093】
【表4】低発熱アジュバントのHBsAgとの比較
Figure 2004505986
a.発熱性データは、10μg/kgの用量のi.v.投与後の3匹のウサギの全温度上昇(℃)を示す。発熱物質アッセイ法では、化合物を10%EtOH/WFI(注射用USP水)中に100μg/mlで溶解し、5%デキストロース水で希釈した。N.T.は、化合物を試験していないことを意味する。
【0094】
実施例 RC−553 によるエクスビボサイトカイン誘導
TNF−αおよびIL−1βのエレクトロポレーションに対するRC−553の効果を、エクスビボ条件下でヒト末梢血単球細胞について測定した。MPL(登録商標)免疫刺激物質およびRC−553を、0.2%TEoA/WFI水溶液中に処方した。
【0095】
ヒト全血を使用して、糖脂質(AGP)の炎症性サイトカインを誘導する能力を評価した。ヒト全血をヘパリン処理チューブに採取し、0.45mlの全血を糖脂質(すなわち、試験化合物)を含む0.05mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)と混合した。チューブを、震盪装置にて37℃で4時間インキュベートした。次いで、試料を1.5mlの滅菌PBSで希釈し、遠心分離した。上清を除去し、ヒトTNFαおよびIL−1β用のR&D Systems Quantikine免疫アッセイキットを使用したサンドイッチELISAによって細胞に会合したTNFαおよびIL−1βを分析した。
【0096】
アッセイ法において、1、5、および10μg/mlでは、RC−553はアッセイ条件下で検出可能レベルのTNFαを産生しなかった。対照的に、陽性対照LPSは、1ng/mLで細胞由来のTNFα分泌の有効な刺激物質であった。MPL(登録商標)免疫刺激物質は、100から10,000ng/mLの濃度範囲でのTNFαの誘導に有効であった。
【0097】
同様に、RC−553(1、5、および10μg/ml)は、検出可能なレベルのIL−1βを産生しなかった。RC−553の効果を比較するために、MPL(登録商標)免疫刺激物質で誘導したIL−1βレベルを、1体積に割り当て、RC−553の相対サイトカイン誘導は、0.05以下であった。
【0098】
実施例2から6の考察
これらの研究データにより、RC−553はワクチン抗原に対する免疫を増強することができることが示される。RC−553は、2つの異なるワクチン抗原(インフルエンザおよび肝炎表面抗原)に対して血清力価を増強した。MPL(登録商標)免疫刺激物質と同様に、RC−553は、高レベルのIgG2a抗体に応答するIgG1イソ型が支配する応答由来の抗体プロフィールの変化を媒介した。抗体応答の増強に加えて、RC−553はCTL活性の誘導に対して良好なアジュバントである。
【0099】
本研究の結果の注目すべき特徴は、RC−553が検出可能なレベルの炎症性サイトカインTNFαまたはIL−1βを誘導することなく応答に影響を与えるようであるという点である。これらのサイトカインは共に脂質Aを誘導する細菌細胞壁産物に応答して本来の免疫系の細胞によって産生される。RC−553は脂質Aと構造が類似しているので、TNFαおよびIL−1βを刺激し、実際にAGP分子を刺激すると考えられる。炎症性サイトカインTNFαおよびIL−1βは、食細胞の活性化および特異的免疫の固定を担う他のサイトカイン媒介物質のカスケードの放出を刺激する。IL−1は、熱応答を誘導するので、最初に内因性発熱物質と呼ばれた。したがって、RC−553の投与後に検出可能なIL−1の欠如は、ウサギ発熱物質試験での見かけ上の熱の欠如と一致する。
【0100】
これらの研究でのRC−553は、特異的免疫の活性化の媒介に十分に高いレベルでTNFαおよびIL−1βの分泌を促進することが可能であるが、エクスビボサイトカインアッセイ法では低すぎで検出できない。別の選択肢は、これらの化合物がTNFαおよびIL−1α以外のサイトカイン媒介物質を刺激して、同時に投与したワクチン抗原に対する特異的免疫応答が得られる。IFNγが産生された可能性があるように思われる。このサイトカインは、イソ型のIgG2aサブクラスの抗体への変化の誘導を担い、TH−1駆動CTL応答のプロモーターであると考えられる。したがって、IgG2a力価の増加および活性CTL集団はいずれもIFNγの産生を反映している。
【0101】
実施例 RC−553 によって刺激された誘導性一酸化窒素シンターゼ( iNOS )刺激
本実施例は、J774マウスマクロファージにおけるiNOS誘導に対する種々の糖脂質の効果を示す。マウスマクロファージ細胞J774株を、インビトロでIFN−γによって感作することができ、これは標準的なGreiss試薬ELISAアッセイ法による測定によればiNOS上方制御のその後のLPS刺激に非常に反応性を示す。アッセイ法には、30mL/フラスコに1×10/mLで播種し、16時間から24時間100単位/mLでIFN−γを添加したJ774細胞を使用する。次いで、細胞を回収し、洗浄し、96ウェルプレート中に2×10/ウェルを再懸濁し、接着させた。糖脂質化合物を試験群についてウェル中で連続希釈し、得られた培養物をさらに36から40時間インキュベートし、培養上清を亜硝酸塩放出のGreiss試薬分析から回収する(Greenら、1982、Anal. Biochem.、126、131〜138)。亜硝酸塩含有量は、iNOS機能と密接に対応している。
【0102】
亜硝酸塩の最大誘導の1/2(ED50)を誘導することができる培養物中の糖脂質の濃度(ng/mL)として効力を同定した。ED50が低いほど、iNOS誘導効力が高い。ED50を、Johnsonら、1999、J. Med. Chem.、42、4640〜4649に記載の方法にしたがって計算した。
【0103】
MPL(登録商標)免疫刺激物質は、高レベルの亜硝酸塩合成が行われている約2ng/mLのED50を有することが見出される一方で、RC−553は約3000(ng/mL)以上の正常なED50を示した。
【0104】
RC−533を用いて認められた非常に低い最大iNOS活性により、この系ではiNOS誘導に関して本質的に不活性であることが示唆される。
【0105】
本明細書中に記載の実施例および態様は例示のみを目的とし、これらを照らして種々の修正形態および変更形態が当業者によって示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内であることが理解される。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照として本明細書に組み入れられる。

Claims (60)

  1. 下記式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩:
    Figure 2004505986
    式中、
    Xは−O−および−NH−からなる群より選択されるメンバーであり;
    Yは−O−および−S−からなる群より選択されるメンバーであり;
    、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−Hおよび−POからなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−H、−CH、および−PO10からなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
    」、「 」、「 」、および「**」は、キメラ中心を示し、
    pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である。
  2. XおよびYが−O−であり、RがPOであり、RおよびRがHであり、且つ下付き文字n、m、p、およびqが0から3の整数である、請求項1に記載の化合物。
  3. およびRが−Hである、請求項2に記載の化合物。
  4. 下付き文字n、m、p、およびqが0から2である、請求項3に記載の化合物。
  5. 下付き文字nが1であり、下付き文字mが2であり、且つ下付き文字pおよびqが0である、請求項3に記載の化合物。
  6. 、R、およびRがテトラデカノイル残基である、請求項5に記載の化合物。
  7. 、および がR配置である、請求項5に記載の化合物。
  8. Yが赤道面位置で存在する、請求項5に記載の化合物。
  9. **がS配置である、請求項5に記載の化合物。
  10. 、および がR配置であり、Yが赤道面位置で存在し、且つ**がS配置である、請求項5に記載の化合物。
  11. 薬学的に許容される担体および下記式を有する化合物を含む治療有効量の組成物を含む、薬学的組成物:
    Figure 2004505986
    式中、
    Xは−O−および−NH−からなる群より選択されるメンバーであり;
    Yは−O−および−S−からなる群より選択されるメンバーであり;
    、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−Hおよび−POからなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−H、−CH、および−PO10からなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
    」、「 」、「 」、および「**」は、キメラ中心を示し、
    pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である。
  12. XおよびYが−O−であり、RがPOであり、RおよびRがHであり、且つ下付き文字n、m、p、およびqが0から3の整数である、請求項11に記載の薬学的組成物。
  13. およびRが−Hである、請求項12に記載の薬学的組成物。
  14. 下付き文字n、m、p、およびqが0から2である、請求項13に記載の薬学的組成物。
  15. 下付き文字nが1であり、下付き文字mが2であり、且つ下付き文字pおよびqが0である、請求項13に記載の薬学的組成物。
  16. 、R、およびRがテトラデカノイル残基である、請求項15に記載の薬学的組成物。
  17. 、および がR配置である、請求項15に記載の化合物。
  18. Yが赤道面位置で存在する、請求項15に記載の化合物。
  19. **がS配置である、請求項15に記載の化合物。
  20. 、および がR配置であり、Yが赤道面位置で存在し、且つ**がS配置である、請求項15に記載の化合物。
  21. 薬学的組成物が少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項11に記載の薬学的組成物。
  22. 抗原が、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、ヒトサイトメガロウイルス、HIV、A型、B型、C型、またはE型肝炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、インフルエンザウイルス、結核菌、リーシュマニア症、T.クルージ(T.Cruzi)、エールリヒア属、カンジダ属、サルモネラ属、ネイセリア属、ボレリア属、クラミジア属、ボルデテラ属、プラスモジウム属、およびトキソプラズマ属からなる群に由来する、請求項21に記載の薬学的組成物。
  23. 抗原がヒト腫瘍抗原である、請求項21に記載の薬学的組成物。
  24. 腫瘍抗原が、前立腺、結腸、乳房、卵巣、膵臓、脳、頭頸部、黒色腫、白血病、またはリンパ腫に由来する、請求項23に記載の薬学的組成物。
  25. 抗原が自己抗原である、請求項21に記載の薬学的組成物。
  26. 自己抗原が自己免疫疾患に関連する抗原である、請求項25に記載の薬学的組成物。
  27. 自己免疫疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、または乾癬である、請求項26に記載の薬学的組成物。
  28. 水性製剤である、請求項11に記載の薬学的組成物。
  29. 水性製剤が1つまたは複数の界面活性剤を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
  30. 水性製剤が1つまたは複数のリン脂質界面活性剤を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
  31. 界面活性剤が、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジン酸、およびジアシルホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
  32. 界面活性剤が、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DPMG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DPMC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジン酸(DPMA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DPME)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)からなる群より選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
  33. 乳濁製剤である、請求項11に記載の薬学的組成物。
  34. 治療有効量の薬学的に許容される担体、ならびに下記式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩を含む組成物を投与する工程を含む、被験体の免疫応答を誘導する方法:
    Figure 2004505986
    式中、
    Xは−O−および−NH−からなる群より選択されるメンバーであり;
    Yは−O−および−S−からなる群より選択されるメンバーであり;
    、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−Hおよび−POからなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−H、−CH、および−PO10からなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
    」、「 」、「 」、および「**」は、キメラ中心を示し、
    pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である。
  35. XおよびYが−O−であり、RがPOであり、RおよびRがHであり、且つ下付き文字n、m、p、およびqが0から3の整数である、請求項34に記載の方法。
  36. およびRが−Hである、請求項35に記載の方法。
  37. 下付き文字n、m、p、およびqが0から2である、請求項36に記載の方法。
  38. 下付き文字nが1であり、下付き文字mが2であり、且つ下付き文字pおよびqが0である、請求項36に記載の方法。
  39. 、R、およびRがテトラデカノイル残基である、請求項38に記載の方法。
  40. 、および がR配置である、請求項38に記載の化合物。
  41. Yが赤道面位置で存在する、請求項38に記載の化合物。
  42. **がS配置である、請求項38に記載の化合物。
  43. 、および がR配置であり、Yが赤道面位置で存在し、且つ**がS配置である、請求項38に記載の化合物。
  44. 組成物が少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項34に記載の方法。
  45. 治療有効量の薬学的に許容される担体、ならびに下記式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、病原性感染症、癌、または自己免疫障害に罹患しているか、またはこれらに感受性を示す哺乳動物の治療法:
    Figure 2004505986
    式中、
    Xは−O−および−NH−からなる群より選択されるメンバーであり;
    Yは−O−および−S−からなる群より選択されるメンバーであり;
    、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−Hおよび−POからなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−H、−CH、および−PO10からなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
    」、「 」、「 」、および「**」は、キメラ中心を示し、
    pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である。
  46. XおよびYが−O−であり、RがPOであり、RおよびRがHであり、且つ下付き文字n、m、p、およびqが0から3の整数である、請求項45に記載の方法。
  47. およびRが−Hである、請求項46に記載の方法。
  48. 下付き文字n、m、p、およびqが0から2である、請求項47に記載の方法。
  49. 下付き文字nが1であり、下付き文字mが2であり、且つ下付き文字pおよびqが0である、請求項47に記載の方法。
  50. 、R、およびRがテトラデカノイル残基である、請求項49に記載の方法。
  51. 、および がR配置である、請求項49に記載の方法。
  52. Yが赤道面位置で存在する、請求項49に記載の方法。
  53. **がS配置である、請求項49に記載の方法。
  54. 、および がR配置であり、Yが赤道面位置で存在し、且つ**がS配置である、請求項49に記載の方法。
  55. 組成物が少なくとも1つの抗原をさらに含む、請求項45に記載の方法。
  56. 治療有効量の下記式の化合物およびその薬学的に許容される塩を被験体に接触させる工程を含む、被験体の一酸化窒素生成によって改善される疾患または状態の治療法:
    Figure 2004505986
    式中、
    Xは−O−および−NH−からなる群より選択されるメンバーであり;
    Yは−O−および−S−からなる群より選択されるメンバーであり;
    、R、およびRはそれぞれ独立して(C〜C24)アシルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−Hおよび−POからなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびRは、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、−H、−CH、および−PO10からなる群より選択されるメンバーであって、但し、RおよびR10は、それぞれ独立して−Hおよび(C〜C)アルキルからなる群より選択されるメンバーであり;
    は、H、OH、(C〜C)アルコキシ、−PO1112、−OPO1112、−SO11、−OSO11、−NR1112、−SR11、−CN、−NO、−CHO、−CO11、および−CONR1112から選択され、但し、Rが−POであり、Rが−PO10以外である場合、R11およびR12は、それぞれ独立してHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
    」、「 」、「 」、および「**」は、キメラ中心を示し、
    pとmの合計が0から6である場合、下付き文字n、m、p、およびqは、それぞれ独立して0から6の整数である。
  57. 化合物を虚血発症の約48時間前から虚血の発症時までの間に動物に投与する、請求項56に記載の方法。
  58. 化合物を虚血発症直前から虚血までに動物に投与する、請求項56に記載の方法。
  59. 化合物を虚血発症直前から再灌流までに動物に投与する、請求項56に記載の方法。
  60. XおよびYが−O−であり、RがPOであり、RおよびRがHであり、RおよびRが−Hであり、下付き文字nが1であり、下付き文字mが2であり、且つ下付き文字pおよびqが0であり、R、R、およびRがテトラデカノイル残基であり、 、および がR配置であり、Yが赤道面位置で存在し、且つ**がS配置である、請求項56に記載の方法。
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