(発明の要旨)
本発明の一つの局面に従い、少なくとも一つのアミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)および少なくとも一つのサポニン化合物を含む、免疫刺激性組成物が、提供される。
本発明の組成物中で使用されるAGP化合物は、単糖類化合物または二糖類化合物であり得る。従って、本発明は、以下の式:
を有する一つ以上のAGP化合物および薬学的に受容可能な塩およびそれらの誘導体を含む免疫刺激性組成物を提供し、ここで、Yは、−O−または−NH−であり;R
1およびR
2は、各々独立して、飽和(C
2−C
24)脂肪族アシル基および不飽和(C
2−C
24)脂肪族アシル基から選択され;R
8は、−Hまたは−PO
3R
11R
12であり、ここで、R
11およびR
12は、各々独立して、−Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基であり;R
9は、−H、−CH
3または−PO
3R
13R
14であり、ここで、R
13およびR
14は、各々独立して、−Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から選択され;そしてここで、R
8およびR
9の少なくとも一つは、リン含有基であるが、R
8およびR
9の両方ともが、リン含有基ではない;そしてXは、以下の式:
から選択される基であり、ここで、下付き文字n,m,p,q,n’、m’,p’およびq’は、各々独立して、0〜6の整数であり、但しp’およびm’の合計が、0〜6の整数であり;R
3、R
11およびR
12は、独立して、飽和または不飽和の必要に応じて置換された脂肪族(C
2−C
24)アシル基であり、但しXが式(Ia)である場合、R
1、R
2およびR
3の一つは、必要に応じて水素であり;R
4およびR
5は、独立してHおよびメチルから選択され;R
6およびR
7は、独立して、H、OH、(C
1−C
4)オキシ脂肪族基、−PO
3H
2、−OPO
3H
2、−SO
3H、−OSO
3H、−NR
15R
16、−SR
15、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R
15、−CONR
15R
16、−PO
3R
15R
16、−OPO
3R
15R
16、−SO
3R
15および−OSO
3R
15から選択され、ここで、R
15およびR
16は、各々独立して、Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から選択され;R
10は、H、CH
3、−PO
3H
2、ω−ホスホノオキシ(C
2−C
24)アルキル、およびω−カルボキシ(C
1−C
24)アルキルから選択され;R
13は、独立して、H、OH、(C
1−C
4)オキシ脂肪族基、−PO
3R
17R
18、−OPO
3R
17R
18、−SO
3R
17、−OSO
3R
17、−NR
17R
18、−SR
17、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R
17、および−CONR
17R
18から選択され、ここで、R
17およびR
18は、各々独立して、Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から選択され;そしてZは、−O−または−S−である。
本発明の特定の実施形態において、免疫刺激性組成物中で使用されるAGP化合物は、例えば、米国特許番号第6,113,918号(これは、本明細書中で援用されている)に開示されたものであり、そして一般的に、以下の構造:
およびそれらの薬学的に受容可能な塩、誘導体および生物学的に活性なフラグメントに従い、ここで、Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、Yは、酸素原子またはNH基を表し、「n」、「m」、「p」および「q」は、独立して、0〜6から選択される整数であり、R
1、R
2およびR
3は、飽和、不飽和、および枝分かれアシル基を含み、7〜16個の炭素原子を有する、脂肪アシル残基を表し、R
4およびR
5は、独立して、水素およびメチルから選択され、R
6およびR
7は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホキシ(sulfooxy)、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミルまたはカルボキシならびにそれらのエステルおよびアミドから選択され;R
8およびR
9は、独立して、ホスホノまたは水素から選択され、ここで、R
8およびR
9の少なくとも一つは、ホスホノである。
本発明の他の組成物は、米国特許第6,303,347号(本明細書によって本明細書中に援用されている)に開示され、そして一般に、以下の構造:
に従うAGP化合物、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩、誘導体、および生物学的に活性なフラグメントを使用し、ここで構造式中、Xは、軸位置または赤道位置のいずれかでの酸素原子または硫黄原子を表し;Yは、酸素原子またはNH基を表し;「n」、「m」、「p」および「q」は、独立して、0〜6から選択される整数であり;R
1、R
2、およびR
3は、1〜20炭素原子を有する脂肪酸残基(飽和アシル基および不飽和アシル基、ならびに分枝アシル基を含む)を表し、ここでR
1、R
2またはR
3の1つが、必要に応じて、水素であり;R
4およびR
5は、独立して、水素またはメチルから選択され;R
6およびR
7は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホキシ(sulphooxy)、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミルまたはカルボキシ、ならびにそれらのエステルおよびアミドから選択され;R
8およびR
9は、独立して、ホスホノまたは水素から選択され、ここでR
8およびR
9の少なくとも1つは、ホスホノである。
本発明のなおさらなる例示の実施形態は、PCT/US01/24284(2001年8月3日出願、この出願は、本明細書中に参考として援用されている)において開示され、そして一般に、以下の構造:
に従うAGP化合物、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩を使用する免疫刺激組成物を提供し、ここで構造式中、Xは、−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;Yは、−O−および−S−からなる群から選択されるメンバーであり;R
1、R
2およびR
3は、各々が独立して、(C
2−C
24)アシルからなる群から選択されるメンバーであり;R
4は、−Hおよび−PO
3R
7R
8からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR
7およびR
8は、各々が独立して、−Hおよび(C
1−C
4)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;R
5は、−H、−CH
3および−PO
3R
9R
10からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR
9およびR
10は、各々が独立して、−Hおよび(C
1−C
4)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;R
6は、H、OH、(C
1−C
4)アルコキシ、−PO
3R
11R
12、−OPO
3R
11R
12、−SO
3R
11、−OSO
3R
11、−NR
11R
12、−SR
11、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R
11、およびCONR
11R
12から選択され、ここでR
11およびR
12は、各々が独立してHおよび(C
1−C
4)アルキルから選択され、但し、R
4およびR
5の1つがリン含有基であり、そしてR
4が−PO
3R
7R
8である場合、R
5は−PO
3R
9R
10以外であり;ここで「
*1」、「
*2」、「
*3」および「
**」は、キラル中心を表し;ここで添え字n、m、pおよびqは、各々が独立して0〜6の整数であり、但し、pおよびmの合計が0〜6である。特定の実施形態においては、R
1、R
2およびR
3は、各々が独立して、(C
9−C
16)アシルからなる群から、または(C
10−C
14)アシルからなる群から、または(C
10−C
12)アシルからなる群から選択されるメンバーである。
本発明の別の実施形態に従って、本発明の組成物におけるAGPは、モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標)、Corixa Corporation)である。MPL(登録商標)は、米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,866,034号および同第4,912,094号;同第4,987,237号;Johnsonら、J Med Chem 42:4640−4649(1999);UlrichおよびMyers、「Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach;PowellおよびNewman編;Plenum:New York、495−524,1995;これらの開示内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される、において記載されている。
本発明の組成物において使用され得るサポニンとしては、サポニン(天然または合成により得られた)、サポニン結合体、サポニン誘導体、およびサポニン模倣物が挙げられ、これらの全ては、本明細書中に記載されるとおりである。
本発明の一つの局面に従って、免疫刺激組成物において使用されるサポニンは、Quillajaサポニン(例えば、QuilAおよび/またはQS−21(Aquila Biopharmaceuticals,Worcester,MA))を含む。本発明のこの局面の1つの好ましい実施形態において、Quillajaサポニンは、QS−7、QS−17、QS−18および/またはQS−21を含む。
本発明の別の局面に従って、免疫刺激組成物において使用されるサポニンは、トリテルペンサポニン親油性結合体を含み、この結合体は、3−グルクロン酸残基を含む非アシル化または脱アシル化(desacylated)のトリテルペンサポニン;および親油性部分を含み;ここで当該サポニンおよび当該親油性部分は、直接またはリンカー基を介してのいずれかで、互いに共有結合されており、そしてここで当該直接結合または当該リンカーへの結合は、当該3−グルクロン酸残基のカルボキシル炭素と、親油性残基またはリンカー基上の適切な官能基との間の共有結合を通して生じる。本発明において有用ないくつかのサポニン−親油性結合体(GPI−0100(quilajaサポニン−親油性結合体)を含む)は、米国特許第5,977,081号および同第6,080,725号(それらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)において開示されている。他のサポニン−親油性結合体は、米国特許第6,262,019号(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)において開示されている。
トリテルペンサポニンは、トリテルペンアグリコンコア構造を有し得、この構造は、3位および28位に分枝糖鎖が結合され、そしてアルデヒド基が4位に連結または結合されており;そしてこのサポニンは、もともとアシル化されていないか、またはトリテルペンアグリコンの28位の糖に結合されているアシル基またはアシロイル基の除去を必要とするかのいずれかである。トリテルペンサポニンは、キラヤ酸(quillaic acid)またはジプソゲニン(gypsogenin)コア構造を有し得る。
脱アシルサポニン(desacylsaponin)または非アシル化サポニンは、Quillaja脱アシルサポニン、S.jenisseensis脱アシルサポニン,Gypsophilaサポニン、Saponariaサポニン、Acanthophyllumサポニン、およびルシオシド(lucyoside)Pサポニンからなる群から選択され得る。
親油性部分は、脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、脂肪酸のモノ−もしくはポリ−C2−C4アルキレンオキシ誘導体、脂肪アルコールのモノ−もしくはポリ−C2−C4アルキレンオキシ誘導体、グリコシル脂肪酸、糖脂質、リン脂質、またはモノ−またはジ−アシルグリセロールの1つ以上の残基を含み得る。
本発明の別の局面では、免疫刺激組成物において使用されるサポニンは、サポニン/抗原共有結合結合体組成物を含む。
本発明の別の局面では、免疫刺激組成物において使用されるサポニンは、式:
により表されるサポニン模倣化合物を含み、ここで、記号Rは、水素または−C(O)Hを表す。記号R
1は、水素、必要に応じて置換されたC
1−C
20脂肪族基、サッカリル基(saccharyl group)、および式−C(O)−[C(R
3)(R
4)]
k−COOHまたは−[C(R
3)(R
4)]
k−COOHにより表される基(ここで各R
3およびR
4は、独立して、水素または必要に応じて置換されたC
1−10脂肪族基から選択されたメンバーである)から選択されるメンバーを表す。記号「k」は、1〜5の整数を表す。記号R
2は、水素、必要に応じて置換されたC
1−C
20脂肪族基、および式−(CH
2)
rCH(OH)(CH
2)
tOR
5(ここで、rおよびtは、独立して1または2であり、そしてR
5は、C
2−20アシル基、または式
(ここでjは、1〜5の整数であり、そしてR
6およびR
7は、独立して、水素および必要に応じて置換されたC
1−20脂肪族基から選択される)によって表される基)から選択されるメンバーを表す;またはそれらの薬理学的に受容可能な塩である。本発明の別の局面では、上記の免疫刺激組成物は、少なくとも1つの抗原をさらに含む。
このタイプのサポニン模倣物は、米国特許出願09/810,915(2001年3月16日出願、David A.Johnsonによる、発明の名称「Novel Amphipathic Aldehydes and their Uses as Adjuvants and Immunoeffectors」)およびPCT出願(公開番号)WO01/70663(これらは共に、本発明明細書によって、その全体が本明細書中に援用される)において開示されている。
本発明の別の局面に従って、本発明の免疫刺激組成物は、固形処方物、安定乳化処方物または水性処方物中に処方される。
本発明の別の局面に従って、病原感染、癌、または自己免疫障害を罹患する哺乳動物またはその疑いのある哺乳動物を処置する方法が提供され、この方法は、当該哺乳動物に、本発明の免疫刺激組成物の有効量を投与する工程を包含する。
本発明の別の局面に従って、動物において免疫応答を増強する方法が提供され、この方法は、当該動物に、本発明の免疫刺激組成物を投与する工程を包含する。
本発明の別の局面に従って、抗原に対して、動物において免疫応答を増強する方法が提供され、この方法は、当該動物に、本発明の免疫刺激組成物を抗原と組み合わせて投与する工程を包含する。
(定義)
用語「アシル」とは、脂肪族有機酸から、この酸のヒドロキシ部分の除去によって誘導される基をいう。従って、アシルは、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、デカノイル、ピバロイルなどを包含することが意図される。従って、「C1−C20アシル基」は、1〜20個の炭素を有するアシル基である。
用語「脂肪族」は、他に述べられない限り、非芳香族の直鎖状または分枝の鎖、または環式の炭化水素部分を意味し、飽和またはモノ−もしくはポリ−不飽和であり、示した数の炭素原子を有する(すなわち、C1−C10は、1〜10個の炭素を有することを意味する)、環状(cyclical)エレメントおよび鎖エレメントの両方を含むような部分を含む。飽和炭化水素ラジカル(radicals)のタイプとしては、アルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはシクロアルキル−アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、メチレン、エチレン、n−ブチレン、シクロプロピル、およびシクロプロピルメチル)が挙げられる。
不飽和脂肪族基は、1つ以上の二重および/または三重結合を有する基である。不飽和脂肪族の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、シクロヘキシニル、およびシクロヘキサジエニルが挙げられる。
「C1−C20脂肪族基」は、1〜20個の炭素を有する、置換されたまたは置換されていない脂肪族基である。同様に、「C11脂肪族基」は、11個の炭素を有する置換されたまたは置換されていない脂肪族基である。
用語「オキシ脂肪族(oxyaliphatic)」とは、その分子の残りの部分に酸素原子を介して結合された脂肪族基をいう。
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、単独にまたは別の置換基の一部として、他に述べられない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。ハロゲン置換基を有する化合物において、ハロゲンは、同じであってもまたは異なっていてもよい。
脂肪族基の置換基は、以下から選択される種々の基であり得る:−OR’、=O、=S、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NRR’R”)=NR’’’、−NR’C(NR’R’’)=NR’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’,−S(O)R’,−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2(0から(2m’+1)の範囲の数で、ここでm’は、このようなラジカル中の炭素原子の総数であり、そしてR’、R”およびR”’は、各々独立して、水素または(C1−C4)脂肪族基をいう。本発明の化合物が1つより多くのR基を含む場合、例えば、これらR基の各々は、独立して選択され、1つより多くのR’基、R”基およびR”’基が存在する場合も、これらの各々の基は同様にされる。R’およびR”が同じ窒素原子に結合されている場合、これらは、窒素原子と、および必要に応じてさらなるヘテロ原子と合わされて、5員環、6員環、または7員環を形成し得る。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことが意図される。置換基の上記説明から、当業者は、用語「脂肪族」が、ハロ脂肪族のような基(例えば、−CF3、CClF2、および−CH2CF3)を包含することが意図されることを理解する。
用語「サッカリル(saccharyl)」とは、糖(sugar)、糖質(carbohydrate)、糖類(saccharide)、二糖類(disaccharide)およびオリゴ糖類(oligosaccharide)、または多糖類(polysaccharide)分子から、水素またはヒドロキシル基の除去によって誘導される基をいう。従って、サッカリル基(例えば、グルコシル、マンノシルなど)は、以下を含む(しかし、これらに限定されない)分子から誘導され得る:グルクロン酸、ラクトース、スクロース、マルトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、トレオース、エリスロース、β−D−N−アセチルガラクトサミン、β−D−N−アセチルグルコサミン、フコース、シアル酸など。「C6−C20サッカリル基」は、6〜20個の炭素を有する置換された(例えば、アシル化サッカリル、アルキル化サッカリル、アリール化サッカリルなど)または置換されていないサッカリル基である。サッカリル基の例は、式:
によって表されるグルクロン酸のC1位のヒドロキシルの除去によって形成されるラジカルである。波線結合は、グルクロニドラジカル(すなわち、グルクロン酸基)が別の置換基(例えば、アグリコン単位)に結合される箇所を示す。従って、サッカリル基は、C1位のヒドロキシルが除去されている糖分子を含む。
用語「薬学的に受容可能な塩」は、本明細書中に記載される化合物において見出される特定の置換基に依存して、相対的に非毒性の酸または塩基を用いて調製された、問題の化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が相対的に酸性の官能基を含む場合、塩は、ニートまたは適切な不活性な溶媒のいずれかで、所望の塩基の添加によって得られ得る。薬学的に受容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、またはマグネシウム塩などが挙げられる。本発明の化合物が相対的に塩基性の官能基を含む場合、塩は、ニートまたは適切な不活性な溶媒のいずれかで、所望の酸の添加によって得られ得る。薬学的に受容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素リン酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導される塩基、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸に由来する塩が挙げられる。アルギン酸などのようなアミノ酸の塩、グルクロン酸またはガラクルロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩もまた含まれる(例えば、Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、Jornal of Pharmaceutical Science、1977、66、1−19を参照のこと)。本発明のある特定の化合物は、化合物が、塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変化され得る、塩基性官能基および酸性官能基の両方を含む。
化合物の天然の形態は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させて、そして本発明の化合物を従来の様式で単離することによって再生される。化合物の親形態は、特定の物理特性(例えば、極性溶媒における溶解性)において種々の塩形態とは異なるが、それ以外、塩は、本発明の目的について化合物の親形態に等価である。
塩形態に加えて、サポニンまたはアミノアルキルグルコサミニドホスフェートのプロドラック形態である化合物は、本発明の組成物に含まれ得る。本明細書中に記載される化合物のプロドラッグは、生理学的状態下で化学的変化を容易に受けて、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボ環境において、化学的方法または生化学方法によって、本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適切な酵素または化学試薬とともに経皮パッチレザバに配置される場合、本発明の化合物にゆっくり変換され得る。
本発明の組成物において使用可能な特定の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態を含む)で存在し得る。一般的に、溶媒和形態は、非溶媒和形態であり、そして本発明の範囲内に含まれる。本発明の組成物において使用可能な特定の化合物は、複数の結晶形態または無定型形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は、本発明によって意図される使用に等価であり、そして本発明の範囲内であることが意図される。
本発明の組成物において使用可能な特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
本発明の組成物の化合物は、(+)形態および(−)形態、ならびにラセミ形態で存在し得る。ラセミ形態は、公知の方法および技術によって、光学的鏡像体(antipode)に分割され得る。ラセミ形態を分離する一つの方法は、ラセミ化合物を、光学的に活性な酸のジアステレオマー塩へ変換することによる、ラセミアミンの分離によって例示される。ジアステレオマー塩は、一つ以上の当該分野で認識される方法を使用して分割される。光学的に活性なアミンは、続いて、塩基を用いて分割されるアミンを処理することによって遊離される。ラセミ混合物を光学的鏡像体に分割するための別の方法は、光学的に活性なマトリクスのクロマトグラフィーに基づく。従って、本発明の組成物において使用されるラセミ化合物は、例えば、d−またはl−の酒石酸、−マンデル酸、または−ショウノウスルホン酸の塩の分別結晶によって、それらの光学的鏡像体に分割され得る。
このような化合物はまた、光学的に活性なカルボン酸(例えば、(+)または(−)フェニルアラニン、(+)または(−)フェニルグリシン、(+)または(−)カンファン酸などに由来するもの)との反応によって、ジアステレオマーアミドの形成によって分割され得る。あるいは、これらは、化合物と光学的に活性なクロロホルメートなどとの反応によって、ジアステレオマーカルバメートの形成によって分割され得る。
光学的異性体を分割するためのさらなる方法は、当該分野において公知である。このような方法としては、ColletおよびWilen,ENATIOMERS,RACEMATES,AND RESOLUTION,John Wiley and Sons,New York(1981)によって記載されるもの挙げられる。
さらに、本発明の組成物において使用可能な化合物のいくつかは、二重結合の周りの置換基の配置に依存して、syn−形態およびanti−形態(Z−形態およびE−形態)に存在し得る。従って、本発明の組成物の化合物は、syn−形態またはanti−形態(Z−形態およびE−形態)であり得るか、またはその混合物であり得る。
これらの組成物において使用可能な化合物はまた、このような化合物を構成する一つ以上の原子において、原子同位体の非自然な特性を含み得る。例えば、化合物は、放射性同位体(例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C))で放射標識され得る。このような化合物の全ての同位体バリエーションは、放射性であるかないかに関わらず、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
「有効免疫強化量」は、一つ以上の抗原に対する免疫応答を増強するのに有効である化合物または組成物の量である。免疫応答は、制限しないが、抗原(例えば、HBsAgなど)に対する抗体力価を測定することによって、疾患または抗原チャレンジなどに対して応答して宿主を免疫する、本発明の化合物を含むワクチンの能力を評価することによって測定され得る。好ましくは、被験体に対する化合物または組成物の「有効免疫強化量」を投与することは、非免疫コントロールよりも10%以上、さらにより好ましくは、非免疫コントロールよりも20%以上、そしてなおより好ましくは、非免疫コントロールよりも30%以上、そして最も好ましくは、非免疫コントロールよりも100%以上、一つ以上の抗体力価(例えば、IgG1a、IgG1b、IgG2a、IgG2bなど)を増加する。
(発明の詳細な説明)
(I.導入)
本発明は、少なくとも1つのアミノアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)および少なくとも1つのサポニン化合物(本明細書中で両方とも定義される)を含む組成物に関する。これらの化合物は、被験体に投与される場合、免疫刺激薬(immunostimulant)として有用である。特定の実施形態において、これらの免疫刺激薬は、ワクチンとともに投与される。
(II.アミノアルキルグルコサミニドリン酸(AGP))
アミノアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)化合物は、一般的に、アミノアルキル(アグリコン)基を有するグルコシド結合中に2−デオキシ−2−アミノ−α−D−グルコピラノース(グルコサミニド)を含む。適切なAGP化合物およびそれらの合成および使用のための方法は、一般的に以下に記載される:米国特許第6,113,918号および同第6,303,347号、WO 98/50399、米国特許出願番号09/074,720(1998年5月7日に出願された)、国際特許出願番号PCT/US01/24284およびJohnsonら(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2273−2278(これらの開示は、それらの全体において、本明細書中に参考として援用される)。
本発明の組成物に使用されるAGP化合物は、単糖化合物または二糖化合物であり得る。従って、本発明は、以下:
の式を有する1つ以上のAGP化合物を含む免疫刺激組成物ならびにその薬学的に受容可能な塩および誘導体を提供し、ここで、Yは、−O−または−NH−であり;R
1およびR
2は、飽和または不飽和の(C
2−C
24)の脂肪族アシル基から各々独立して選択され;R
8は、−Hまたは−PO
3R
11R
12であり、ここで、R
11およびR
12は、各々独立して−Hまたは(C
1−C
4)脂肪族基であり;R
9は、−H、−CH
3または−PO
3R
13R
14であり、ここでR
13およびR
14は、−Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から各々独立して選択され;そしてここで少なくとも1つのR
8およびR
9は、リン含有基であるが、R
8およびR
9の両方ともが、リン含有基ではなく;そしてXは、以下:
の式から選択され;
ここで、添え字のn、m、p、q、n’、m’、p’およびq’は、各々独立して0〜6の整数であるが、但し、p’およびm’の合計は、0〜6の整数であり;R
3、R
11およびR
12は、独立して飽和または不飽和の必要応じて置換された脂肪族(C
2−C
24)アシル基であるが、但し、Xが式(Ia)である場合、R
1、R
2およびR
3のうちの1つは、必要に応じて水素であり;R
4およびR
5は、Hおよびメチルから独立して選択され;R
6およびR
7は、以下:H、OH、(C
1−C
4)オキシ脂肪族(オキシaliphatic)基、−PO
3H
2、−OPO
3H
2、−SO
3H、−OSO
3H、−NR
15R
16、−SR
15、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R
15、−CONR
15R
16、−PO
3R
15R
16、−OPO
3R
15R
16、−SO
3R
15および−OSO
3R
15から独立して選択され、ここで、R
15およびR
16は、Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から独立して選択され;R
10は、以下:H、CH
3、−PO
3H
2、ω−ホスホノオキシ(C
2−C
24)アルキルおよびω−カルボキシ(C
1−C
24)アルキルから選択され;R
13は、以下:H、OH、(C
1−C
4)オキシ脂肪族基、−PO
3R
17R
18、−OPO
3R
17R
18、−SO
3R
17、−OSO
3R
17、−NR
17R
18、−SR
17、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R
17および−CONR
17R
18から各独立して選択され、ここで、R
17およびR
18は、Hおよび(C
1−C
4)脂肪族基から各々独立して選択され;そしてZは、−O−または−S−である。
本発明のAGP化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩、誘導体および生物学的に活性なフラグメントの1つの型は、以下:
の構造によって一般的に記載され得、ここで、Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、Yは、酸素原子またはNH基を表し、「n」、「m」、「p」および「q」は、0〜6から独立して選択される整数であり;R
1、R
2およびR
3は、脂肪アシル残基(7〜16の炭素原子を有する飽和、不飽和および分枝のアシル基を含む)を表し、;R
4およびR
5は、水素およびメチルから独立して選択され;R
6およびR
7は、以下:水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホオキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミルまたはカルボキシならびにそのエステルおよびアミドから独立して選択され;R
8およびR
9は、ホスホノまたは水素から独立して選択され、ここでR
8およびR
9の少なくとも1つは、ホスホノである。直鎖状脂肪アシル残基が結合される3’不斉炭素中心の立体配置は、RまたはSであるが、Rが好ましい。R
4またはR
5が結合される炭素原子の立体化学は、RまたはSであり得る。全ての立体異性体(エナンチオマーまたはジアステレオマーの両方およびそれらの混合物)は、本発明の範囲内であることが考慮される。米国特許第6,113,918号を参照のこと。
あるいは、免疫刺激組成物に使用されるAGP化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩、誘導体および生物学的に活性なフラグメントは、一般に以下:
の構造に従い得、ここで、Xは、軸位置またはエクアトリアルな位置での酸素原子または硫黄原子を表し;Yは、酸素原子またはNH基を表し;「n」、「m」、「p」および「q」は、0〜6から独立して選択される整数であり;R
1、R
2およびR
3は、脂肪アシル残基(1〜20の炭素原子を有する飽和、不飽和および分枝のアシル基を含む)を表し、そしてR
1、R
2およびR
3のうちの1つは、必要に応じて水素であり;R
4およびR
5は、水素およびメチルから独立して選択され;R
6およびR
7は、以下:水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ホスホノ、ホスホノオキシ、スルホ、スルホオキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ホルミルまたはカルボキシならびにそのエステルおよびアミドから独立して選択され;R
8およびR
9は、ホスホノまたは水素から独立して選択され、ここでR
8およびR
9の少なくとも1つは、ホスホノである。米国特許第6,303,347を参照のこと。
なおさらなるAGP化合物およびその薬学的に受容可能な塩は、一般的に以下:
の構造に従い、ここで、Xは、−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;Yは、−O−および−S−からなる群から選択されるメンバーであり;R
1、R
2およびR
3は、各々、(C
2−C
24)アシルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;R
4は、−Hおよび−PO
3R
7R
8からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR
7およびR
8は、各々、−Hおよび(C
1−C
4)アルキルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;R
5は、−H、−CH
3および−PO
3R
9R
10からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR
9およびR
10は、各々、−Hおよび(C
1−C
4)アルキルからなる群から独立して選択されるメンバーであり;R
6は、以下:H、OH、(C
1−C
4)アルコキシ、−PO
3R
11R
12、−OP
3R
11R
12、−SO
3R
11、−OSO
3R
11、−NR
11R
12、−SR
11、−CN、−NO
2、−CHO、−CO
2R11,および−CONR
11R
12から選択され、ここで、R
11およびR
12は、各々、Hおよび(C
1−C
4)アルキルから独立して選択されるが、但し、R
4およびR
5のうちの1つは、リン含有基であり、そしてR
4が−PO
3R
7R
8である場合、R
5は、−PO
3R
9R
10以外であり;ここで、「
*1」、「
*2」、「
*3」および「
**」は、キラル中心を表し;ここで添え字のn、m、pおよびqは、各々独立して0〜6の整数であるが、但し、pおよびmの合計は、0〜6である。PCT/US01/24284(2001年8月3日に出願)を参照のこと。特定の実施形態において、R
1、R
2およびR
3は、各々、(C
9−C
16)アシルからなる群から、または(C
10−C
14)アシルからなる群から、または(C
10−C
12)アシルからなる群から独立して選択されるメンバーである。AGP化合物のヘテロ原子XおよびYは、示されるような、酸素または硫黄あるいは−NHであり得る。好ましい実施形態において、Xは、酸素であり、そして典型的にエクアトリアルな位置に存在する。分子の安定性はXでの置換によって影響されるが、これらの置換を有する分子の免疫調節活性は、変更を予測されない。
ヘテロ原子Xとアグリコン窒素原子との間の炭素原子の数は、可変値「n」および「m」によって決定される。可変値「n」および「m」は、0〜6の整数であり得る。好ましい実施形態において、ヘテロ原子Xとアグリコン窒素原子との間の炭素原子の数は、約2〜約6であり、最も好ましくは約2〜約4である。
AGPは、例えば、グルコサミニド環上の4位または6位(式IaのR8またはR9)でリン酸化される。例えば、式(Ia)の1つの例示的なAGPにおいて、R8は、ホスホノであり、そしてR9は水素である。1つの実施形態において、AGPは、ヘキサアシル化される(すなわち、これらは全部で6つの脂肪酸残基を含む)。アミノアルキルグルコサミニド部分は、グルコサミニド単位の2−アミノ基および3−ヒドロキシル基で、および3−ヒドロキシアルカノイル残基を有するアグリコン単位のアミノ基でアシル化される。式(Ia)において、3つの位置は、3−ヒドロキテトラデカノイル部分を用いてアシル化される。3−ヒドロキテトラデカノイル残基は、次いで、直鎖状脂肪酸(R1−R3)で置換され、全てで、3つの3−n−アルカノイルオキシテトラデカノイル残基または6つの脂肪酸基を提供する。
別の実施形態において、AGP化合物は、ペンタアシル化される(すなわち、これらは全部で5つの脂肪酸残基を含む)。より詳細に、式(Iaの)3−ヒドロキシテトラデカノイル残基は、R1位、R2位およびR3位の3つうちの2つで直鎖状脂肪酸で置換され、R1位、R2位およびR3位の3つが水素である。言い換えると、−OR1、−OR2および−OR3の少なくとも1つが、ヒドロキシルである。
AGPにおける直鎖状脂肪酸R1〜R3の鎖長は、2〜約24の炭素であり得、そして典型的に、約7〜約16の炭素である。好ましくは、R1〜R3は、約9〜約14の炭素である。これらの直鎖状脂肪酸の鎖長は、同じかまたは異なり得る。直鎖状脂肪酸のみが記載されるが、本発明の化合物のR1〜R3で置換された不飽和脂肪酸(すなわち、脂肪酸部分が、二重結合または三重結合を有する)が、生物学的に活性な分子を提供することが予測される。さらに、3−ヒドロキシアルカノイル残基の鎖長におけるわずかな改変は、劇的に効果な生物学的活性を予測されない。
本発明の好ましい実施形態は、上記AGP化合物を含む組成物およびこのような組成物の使用方法を含み、以下の一つ以上を有する:
R1、R2、R3、R11およびR12は、好ましくは、(C7〜C16)脂肪族アシル基、より好ましくは、(C8〜C14)脂肪族アシル基、さらにより好ましくは、(C9〜C14)脂肪族アシル基、なおより好ましくは、(C10〜C14)脂肪族アシル基、最も好ましくは、(C10〜C14)飽和脂肪族アシル基である;
Xは、式(Ia)であり、そしてR1、R2、およびR3は、全てアシル基である(すなわち、化合物は、ヘキサ−アシル化される);
Xは、式(Ia)であり、R1、R2およびR3のうちの1つは、水素である(すなわち、化合物は、ペンタ−アシル化される);
Zは、酸素である;
R8またはR9は、リン含有基である場合、このような基は、好ましくは、非置換ホスホロ基である(R11およびR12、またはR13およびR14は、それぞれ、両方水素である);より好ましくは、R8は、リン含有基であり、そしてR9は、水素である;
n+mの合計は、0〜4の整数であり、最も好ましくは、0、1または2である;
pおよびqは、独立して、0、1または2である;
n’、m’、p’、およびq’は、好ましくは、独立して、0〜3の整数であり;より好ましくは、0、1、または2であり;そして最も好ましくは、n’は、1であり、m’は、2であり、そしてp’およびq’は、両方とも0である[すなわち、このタイプの化合物(Yは、式(Ic)である)は、2−ピロリジニルメチル構成を有する]。
本発明の組成物で使用可能な別のタイプのAGPは、モノホスホリル脂質A(MPL(登録商標))である。MPL(登録商標)は、米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,866,034号および同第4,912,094号;同第4,987,237号;Johnsonら、J Med Chem 42:4640−4649(1999);UlrichおよびMyers、Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach;Powell およびNewman編;Plenum:New York,495−524,1995(これらの開示は、本明細書中において、それらの全体が、参考として援用される)に記載される。MPLは、しばしば、ジサッカリドの混合物を含む化合物の混合物の形態であり、このいくつは、式(Ib)であり、そしてそのいくつかは、式(Ib)に類似の構造を有するが、より少ない程度のアシル化を有する。
以下は、式(Ia)のAGP化合物の例示的なサブタイプである。
このようなAGPの1つの例示的なクラスにおいて、R6は、カルボキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;n、m、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状(normal)脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心(stereogenic center)に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、カルボキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;n、m、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、カルボキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;n、m、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、R配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、カルボキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;n、m、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、8個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、Hであり、Xは、Oである;Yは、Oである;nは、2である;m、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、14個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;そしてR1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、Hであり、Xは、Oである;Yは、Oである;nは、1である;mおよびpは、0である;qは、1である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4およびR5は、Hである;R7は、カルボキシである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;そしてR1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、Hであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、n、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、14個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;そしてR1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、Hであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、n、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;そしてR1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、Hであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、pおよびqは、0である;nは、1である;R1、R2およびR3は、14個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;そしてR1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、1である;R1、R2およびR3は、12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4およびR5は、Hである;R7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;mおよびqは、0である;nおよびpは、1である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、2である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、1である;R1、R2およびR3は、14個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、R配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、1である;R1、R2およびR3は、14個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、1である;R1、R2およびR3は、11個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、R6は、ヒドロキシであり、Xは、Oである;Yは、Oである;m、nおよびqは、0である;pは、1である;R1、R2およびR3は、10個の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4、R5およびR7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
このようなAGPの別の例示的なクラスにおいて、Xは、Oである;Yは、Oである;m、n、pおよびqは、0である;R1、R2およびR3は、10の炭素原子を有する直鎖状脂肪アシル残基である;R4およびR5は、Hである;R6は、アミノカルボニルである;R7は、Hである;R8は、ホスホノである;R9は、Hである;R1、R2およびR3は、R配置を有するステレオジエン中心に各々結合される;そしてR5は、S配置を有するステレオジエン中心に結合される。
本発明の1つの特定の好ましい実施形態において、AGPは、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−β−D−グルコピラノシドトリエチルアンモニウム塩である。これは、式(Ia)に記載される構造を有する化合物に対応し、ここで、R1=R2=R3=n−C13H27CO、X=Y=O、n=m=p=q=0、R4=R5=R6=R7=R9=H、そしてR8=PO3H2であり、そして以下の「実施例」の節において、化合物B19と呼ばれる。
本発明のさらなる実施形態において、式(Ia)の好ましいAGP化合物は、以下を含む:
示される全ての化合物に関し:X=Y=O;R
4=R
5=H;m=0;R
8=ホスホノ;R
9=H。
*R
5が結合される炭素原子の立体化学は、Sである。
**R
5が結合される炭素原子の立体化学は、Rである。
なお別の実施形態において、式(Ia)のAGPは:
(III.サポニン)
「サポニン」は、その用語が本明細書中で使用される場合、天然および合成のグリコシドトリテルペノイド化合物および薬学的に受容可能な塩、誘導体、模倣物(例えば、イソツカレゾール(isotucaresol)およびその誘導体)および/または免疫アジュバント活性を有する、それらの生物学的に活性なフラグメントを含む。
1つの例示的な実施形態において、本発明のワクチン組成物に使用されるサポニンは、米国特許第5,057,540号(その開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、Quillaja saponaria Molina樹皮より精製され得る。
サポニンのアジュバント性質は、1930年代に、フランスで最初に認識された(Bomfordら、Vaccine 1992、10:572〜577を参照のこと)。20年後、Quillaja saponaria Molina tree樹皮に由来するサポニンは、獣医学における幅広い適用を見出されたが、これらの粗製調製物の可変性および毒性は、ヒトワクチンにおけるそれらの使用を妨げた(Kensilら、In Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach;Powell,M.F.,Newman,J.J.編;Plenum Press:New York,1995 525〜541頁を参照のこと)。
1970年代において、部分的に精製されたサポニン画分(Quil Aとして公知)は、減少した局所反応および増加した潜在力を与えることが示された(Kensilら、1995を参照のこと)。さらに、Quil A画分(HPLCにより少なくとも24個の化合物からなる)は、4つの最も一般的なサポニン(QS−7、QS−17、QS−18およびQS−21)は、強力なアジュバントであることを示した(Kensil,C.R.Crit Rev.Ther.Drug Carrier Syst.1996,13,1〜55;Kensilら,1995を参照のこと)。QS−21およびQS−7は、それらのうち最も低い毒性であった。部分的に、その減少した毒性、非常に精製された状態(4つ以上の化合物の混合物をなお介して)(Soltysik,S.;Bedore,D.A.;Kensil,C.R.Ann.N.Y.Acad.Sci.1993,690:392〜395を参照のこと)およびより完全な構造の特徴づけのため、QS−21(3)は、ヒト臨床試験に入るために選択された最初のサポニンであった(Kensil,1996;Kensilら,1995を参照のこと)。
QS−21および他のQuillajaサポニンは、可溶性T依存薬剤およびT非依存薬剤の両方に対する特異的な免疫応答を増加し、主にIgG1またはIgMからIgG2aおよびIgG2bサブクラスへの、B細胞におけるIgサブクラススイッチを促進する(Kensilら、1995)。IgG2aおよびIgG2bイソタイプは、抗体依存細胞の細胞毒性および補体結合に関与すると考えられる(SnapperおよびFinkelman,In Fundamental Immunology,第4版;Paul,W.E.編:Lippincott−Raven:Philadelphia,PA.,1999,831〜861頁)。これらの抗体イソタイプはまた、Th−1型応答ならびにCTL分化および成熟において役割を果たす、IL−2およびIFN−γ−サイトカインと関連する(ConstantおよびBottomly,Annu.Rev.Immunology 1997,15:297〜322)。結果として、QS−21および他のQuillajaサポニンは、クラスI MHC制限CD8+ CTLサブユニット抗原の強力なインデューサーである(Kensil,1996;Kensilら,1995)。
本発明の局面に従って、免疫賦活薬組成物に使用されるサポニンは、Quillajaサポニンを含む。本発明のこの局面の1つの好ましい実施形態において、Quillajaサポニンは、QS−7、QS−17、QS−18および/またはQS−21を含む。
本発明の別の局面に従って、免疫賦活薬組成物に使用されるサポニンは、トリテルペンサポニン親油性結合体を含み、このトリテルペンサポニン親油性結合体は、3−グルクロン酸残基;および親油性部分を含む、非アシル化トリテルペンサポニンまたは脱アシル化トリテルペンサポニンを含む。ここで、前記サポニンおよび前記親油性部分は、お互いに、直接にかまたはリンカー基を介して共有結合し、そしてここで、前記直接結合または前記リンカーへの結合は、前記3−グルクロン酸残基のカルボキシル炭素と親油性残基またはリンカー基上の適切な官能基との間の共有結合を介して生じる。
トリテルペンサポニンは、3位および28位に結合する分枝糖鎖、および4位に連結するか、または結合するアルデヒド基を有するトリテルペンアグリコンコア構造を有し得;元々非アシル化であるか、またはトリテルペンアグリコンの28位の糖類に結合するアシル基またはアシロイル基の除去を必要とするかのいずれかである。トリテルペンサポニンは、キラヤ酸(quillaic acid)またはジプソゲニン(gypsogenin)コア構造を有し得る。本発明において有用な、いくつかのサポニン親油性結合体(GPI−0100、quilajaサポニン親油性結合体を含む)は、米国特許第5,977,081号および同第6,080,725号(これらは、その全体が参考として本明細書中に援用される)において開示される。デスアシルサポニンまたは非アシル化サポニンは、Quillajaデスアシルサポニン、S.jenisseensisデスアシルサポニン、Gypsophilaサポニン、Saponariaサポニン、Acanthophyllumサポニンおよびルシオシドサポニンからなる群より選択され得る。
親油性部分は、脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪酸の脂肪族メルカプトモノC2−C4アルキレンオキシ誘導体、脂肪酸の脂肪族メルカプトポリC2−C4アルキレンオキシ誘導体、脂肪アルコールのモノC2−C4アルキレンオキシ誘導体、脂肪アルコールのポリC2−C4アルキレンオキシ誘導体、グリコシル脂肪酸、糖脂質、リン脂質またはモノアシルグリセロールあるいはジアシルグリセロールの1つ以上の残基を含み得る。
本発明の別の局面において、免疫賦活薬組成物に使用されるサポニンは、サポニン/抗原共有結合結合体組成物を含む。
QS−21および他のQuillajaサポニンは、標準的な生化学的方法を用いて、Quillaja sponariaより精製され得る。簡潔に、Quillaja saponaria Molina樹皮の水性抽出物は、水に対して透析される。透析抽出物は、凍結乾燥されて乾燥し、メタノールで抽出され、そしてこのメタノール可溶抽出物をさらにシリカゲルクロマトグラフィー上および逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により分画する。次いで各々のサポニンは、逆相HPLCにより分離される。少なくとも22個のピーク(QA−1〜QA−22と称される、本明細書中でQS−1〜QS−21とも言われる)は、本アプローチを用いて分離可能であり、各ピークは、炭水化物のピークと一致し、そして逆相薄層クロマトグラフィー上で単一のバンドを示す。各々の化合物は、例えば、C4 HPLCカラム上のそれらの保持時間により特別に同定され得る。
好ましくは、本発明のこの実施形態に従って使用されるQuillajaサポニンは、米国特許第5,057,540号に記載されるように、ピークQS−7、QS−17、QS−18、および/またはQ−21に一致する。本発明の特定の実施形態において、QS−21サポニンが、本開示に従って、使用される。
実質的に純粋なQS−7サポニンは、免疫アジュバント活性を有し、そして(アントロンによってアッセイされる場合に)乾燥重量あたり約35%の炭水化物を含有すると特徴付けられる。QS−7は、205〜210nmのUV吸収極大、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムにおいて、330オングストロームの細孔、メタノール/水(58/42;v/v)中40mMの酢酸の溶媒中で、4.6mmID×25cmL、1ml/分の流速で、RP−HPLCの約9〜10分の保持時間を有し、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムから、330オングストロームの細孔、50〜80%のメタノールの勾配溶出で40mM酢酸の溶媒中で、10mm ID×25cmLで52〜53%のメタノールで溶出し、水中約0.06%およびリン酸緩衝化生理食塩水中0.07%の臨界ミセル濃度を有し、200μg/ml以下の濃度でヒツジ赤血球の検出可能な溶血を引き起こさず、そして単糖類残渣末端ラムノース、末端キシロース、末端グルコース、末端ガラクトース、3−キシロース、3,4−ラムノース、2,3−フコース、および2,3−グルクロン酸、ならびに脂肪を含む。
実質的に純粋なQS−17サポニンは、アジュバント活性を有し、そして(アントロンによってアッセイされる場合に)乾燥重量あたり約29%の炭水化物を含有すると特徴付けられる。QS−17は、205〜210nmのUV吸収極大、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムにおいて、330オングストロームの細孔、メタノール−水(58/42;v/v)中40mMの酢酸の溶媒中で、4.6mmID×25cmL、1ml/分の流速で、RP−HPLCの約35分の保持時間を有し、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムから、330オングストロームの細孔、50〜80%のメタノールの勾配溶出で40mM酢酸の溶媒中で、10mm ID×25cmLで63〜64%のメタノールで溶出し、水中0.06%(w/v)およびリン酸緩衝化生理食塩水中0.03%(w/v)の臨界ミセル濃度を有し、25μg/ml以上でヒツジ赤血球の溶血を引き起こし、そして単糖類残渣末端ラムノース、末端キシロース、2−フコース、3−キシロース、3,4−ラムノース、2,3−グルクロン酸、末端グルコース、2−アラビノース、末端ガラクトースおよび脂肪を含む。
実質的に純粋なQS−18サポニンは、免疫アジュバント活性を有し、そして(アントロンによってアッセイされる場合に)乾燥重量あたり約25〜26%の炭水化物を含有すると特徴付けられる。QS−18は、205〜210nmのUV吸収極大、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムにおいて、330オングストロームの細孔、メタノール/水(58/42;v/v)中40mMの酢酸の溶媒中で、4.6mmID×25cmL、1ml/分の流速で、RP−HPLCの約38分の保持時間を有し、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムから、330オングストロームの細孔、50〜80%のメタノールの勾配溶出で40mM酢酸の溶媒中で、10mm ID×25cmLで64〜65%のメタノールで溶出し、水中0.04%(w/v)およびリン酸緩衝化生理食塩水中0.02%(w/v)の臨界ミセル濃度を有し、25μg/ml以上の濃度でヒツジ赤血球の溶血を引き起こし、そして単糖類残渣末端ラムノース、末端アラビノース、末端脂肪、末端キシロース、末端グルコース、末端ガラクトース、2−フコース、3−キシロース、3,4−ラムノース、および2,3−グルクロン酸を含む。
実質的に純粋なQS−21サポニンは、免疫アジュバント活性を有し、そして(アントロンによってアッセイされる場合に)乾燥重量あたり約22%の炭水化物を含有すると特徴付けられる。QS−21は、205〜210nmのUV吸収極大、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムにおいて、330オングストロームの細孔、メタノール/水(58/42;v/v)中40mMの酢酸の溶媒中で、4.6mmID×25cmL、1ml/分の流速で、RP−HPLCの約51分の保持時間を有し、5μmの粒子サイズを有するVydac C4カラムから、330オングストロームの細孔、50〜80%のメタノールの勾配溶出で40mM酢酸の溶媒中で、10mm ID×25cmLで69〜70%のメタノールで溶出し、水中約0.03%(w/v)およびリン酸緩衝化生理食塩水中0.02%(w/v)の臨界ミセル濃度を有し、25μg/ml以上の濃度でヒツジ赤血球の溶血を引き起こし、そして単糖類残渣末端ラムノース、末端アラビノース、末端脂肪、末端キシロース、4−ラムノース、末端グルコース、末端ガラクトース、2−フコース、3−キシロース、3,4−ラムノース、および2,3−グルクロン酸を含む。
本発明の別の実施形態において、サポニンは、米国特許第5,583,112号(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、サポニン/抗原結合体の形態であり得る。このアプローチにおいて、1つ以上のサポニンが抗原に連結され、その結果、この連結は、この結合体が投与される動物において、サポニンが免疫応答を刺激する能力を実質的に妨害しない。
本発明の別の実施形態において、サポニンは、例えば、米国特許第5,273,965号、同第5,443,829号、および同第5,650,398号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、粘膜を横切るそれらの取り込みを増加させるように改変され得る。
なお別の実施形態において、本発明のワクチン組成物において使用されるサポニンは、米国特許第5,977,081号および同第6,080,725号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、サポニン−脂質親和体結合体を含有する。このサポニン−脂質親和体結合体は一般に、以下を含有する:(1)3−O−グルクロン酸残基を有する非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニンであって:(2)親油性部分(例えば、1つ以上の脂肪酸、脂肪アミン、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、テルペンまたはポリエチレングリコール)に結合した、トリテルペンサポニン。ここで、(2)は、トリテルペンサポニンの3−O−グルクロン酸残基上に存在するカルボキシル炭素原子を介して、直接的にかまたは適切な連結基を介してかのいずれかで、(1)に結合している。
サポニン(例えば、Quillaja脱アシルサポニン、Silene jenisseenis、Willd’s脱アシルサポニン、ルシオシド(lucyoside)P、およびGypsophila SaponariaおよびAcanthophyllum squarrosum’sサポニン)の3−O−グルクロン酸への、親油性部分の結合は、体液性免疫および細胞媒介性免疫に対するそれらのアジュバント効果を増強すると報告されている。さらに、非アシル化サポニンまたは脱アシル化サポニンの3−O−グルクロン酸残基への、親油性部分の結合は、精製がより容易であり、毒性が低く、そして/または化学的により安定であるサポニンアナログを生じ得、そしてこれらは、元のサポニン以上に良好なアジュバント特性を有し得る。
従って、この実施形態によるサポニンは、広範に、改変されたサポニンを包含し、ここで、この改変されたサポニンは、(a)分枝糖鎖が位置3および位置28に結合しており、そしてアルデヒド基が位置4に連結または結合している、トリテルペンアグリコンコア構造(例えば、キラヤ(quillaic)酸、ジプソゲニン(gypsogenin)など)を有し;(b)もともと非アシル化であるか、またはトリテルペンアグリコンの28位置において糖に結合するアシル基もしくはアシロイル基の除去を必要とするかのいずれかであり;そして(c)直接的にかまたはリンカー部分を介してのいずれかで、グルクロン酸のカルボン酸に、トリテルペンアグリコンの3位で共有結合した親油性部分を有する。このようなサポニンの例は、QS−21(3)である:
語句「親油性部分」および「親油性分子の残基」とは、本明細書中で使用される場合、非極性であるかまたは非極性ドメインを有する1つ以上の化合物の適切な官能基の、サポニンの3−O−glcA残基との共有結合相互作用によって結合した部分をいう。親油性部分は、両親媒性化合物の一部であり得る。両親媒性化合物とは、分子が極性ドメインと非極性ドメインとの両方を含む化合物である。界面活性剤は、両親媒性化合物の例である。界面活性剤は代表的に、しばしばアルキル構造、アリール構造、またはテルペン構造である、非極性部分を有する。さらに、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両親媒性または非イオン性であり得る、極性部分を有する。アニオン性基の例は、カルボキシレート、ホスフェート、スルホネート、およびスルフェートである。カチオン性ドメインの例は、アミン塩および第四級アンモニウム塩である。両親媒性界面活性剤は、アニオン性ドメインとカチオン性ドメインとの両方を有する。非イオン性ドメインは、代表的に、脂肪酸カルボキシ基の誘導体であり、そして糖類およびポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。
親油性部分はまた、非極性ドメインを有する2つ以上の化合物を含有し得、これらの化合物の各々は、連結基に完全に結合しており、この連結基は、次に、3−O−グルクロン酸に共有結合している。
いくつかの脂質親和体含有化合物(例えば、脂肪族アミンおよび脂肪族アルコール、脂肪酸、ポリエチレングリコールおよびテルペン)が、脱アシルサポニンの3−O−glcA残基および非アシル化サポニンの3−O−glcA残基に付加され得る。この脂質親和体は、飽和または不飽和であり得る、脂肪族構造または環状構造であり得る。例として、脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、グリコシル−脂肪酸、糖脂質、リン脂質、ならびにモノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールが、非アシル化サポニンまたは脱アシルサポニンに共有結合され得る。結合は、3−グルクロン酸部分の酸部分またはこの位置の活性化酸官能基のいずれかと共有結合的に反応する、親油性部分上の官能基を介し得る。あるいは、二官能性リンカーが、脂質親和体をサポニンの3−O−glcA残基に結合体化させるために使用され得る。
代表的な脂肪酸としては、C6〜C24脂肪酸、好ましくは、C7〜C18脂肪酸が挙げられる。有用な脂肪酸の例としては、飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸);ならびに不飽和脂肪酸(例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸)が挙げられる。
代表的な脂肪族アミン、脂肪族アルコールおよび脂肪族メルカプタンとしては、直鎖または分枝鎖の、飽和または不飽和の、約6〜約24個の炭素原子、好ましくは、6〜20個の炭素原子、より好ましくは、6〜16個の炭素原子、そして最も好ましくは、8〜12個の炭素原子を有する、脂肪族基を有する、アミンおよびアルコールおよびメルカプタン(RSH)が挙げられる。有用な脂肪族アミンの例としては、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、スフィンゴシンおよびフィトスフィンゴシンが挙げられる。有用な脂肪族アルコールの例としては、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、チミル(chimyl)アルコールおよびセラチル(selachyl)アルコールが挙げられる。
代表的なテルペノイドとしては、レチノール、レチナール、ビスアボロール(bisabolol)、シトラール、シトロネラール、シトロネロールおよびリナロールが挙げられる。
代表的なモノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールとしては、アシル基が8〜20個の炭素原子、好ましくは8〜16個の炭素原子を含む、モノエステル化グリセロールおよびジエステル化グリセロールが挙げられる。
代表的なポリエチレングリコールは、式H−(O−CH2−CH2)n−OHを有し、ここで、n(エチレンオキシド単位の数)は、4〜14である。有用なポリエチレングリコールの例としては、PEG200(n=4)、PEG400(n=8〜9)、およびPEG600(n=12〜14)が挙げられる。
代表的なポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテルは、エチレンオキシド単位(n)が1〜8の間であり、そしてアルキル基がC6〜C18である。
両親媒性特徴(すなわち、親水性機および疎水性基の非対称的分布)を有する側鎖は、(a)ミセルおよび抗原との会合の形成、ならびに(b)トリテルペンアルデヒドの、細胞レセプターへのアクセス可能性を容易にする。このような側鎖における、負に荷電したカルボキシル基の存在が、トリテルペン基の反発に寄与し得、これによって、これらにより大きい回転の自由度を許容することもまた、可能である。この最後の要因は、イミン形成カルボニル基に対する細胞レセプターの接近可能性を増加させる。
脱アシル化サポニンおよび非アシルサポニンは、親油性部分に直接連結され得るか、または連結基を介して連結され得る。用語「連結基」とは、脱アシルサポニン、非アシル化サポニンまたはこれらの混合物を、親油性分子に共有結合させるために使用され得る、1つ以上の二官能性分子を意図する。リンカー基は、トリテルペンコア構造上の3−O−グルクロン酸部分のカルボン酸基、および親油性分子上に存在する適切な官能基に共有結合する。
サポニンおよび親油性分子を連結させるために使用され得る、リンカー基の代表的な例は、アルキレンジアミン(NH2−(CH2)n−NH2)(ここで、nは、2〜12である);アミノアルコール(HO−(CH2)r−NH2)(ここで、rは、2〜12である);および必要に応じてカルボキシ保護されたアミノ酸;エチレングリコールおよびポリエチレングリコール(H−(O−CH2−CH2)n−OH)(ここで、nは1〜4である)、アミノメルカプタンおよびメルカプトカルボン酸である。
本発明のなお別の実施形態において、本発明の組成物において使用されるサポニンとしては、以下の式(II)によって表されるサポニン模倣物が挙げられる:
ここで、記号Rは、水素または−C(O)Hを表す。記号R
1は、水素、必要に応じて置換されたC
1〜20脂肪族基、サッカリル基、および式−C(O)−[C(R
3)(R
4)]
k−COOHまたは−[C(R
3)(R
4)]
k−COOH(ここで、各R
3およびR
4は、独立して、水素、置換C
1〜10脂肪族基、または非置換C
1〜10脂肪族基から選択されるメンバーである)によって表される基から選択されるメンバーを表す。記号kは、1〜5の整数を表す。記号R
2は、水素、必要に応じて置換されたC
1〜20脂肪族基、および式−(CH
2)
rCH(OH)(CH
2)
tOR
5(ここで、rおよびtは、独立して、1または2であり、そしてR
5は、C
2〜20アシル基、または式
(ここで、jは、1〜5の整数であり、そしてR
6およびR
7は、独立して、水素、必要に応じて置換されたC
1〜20脂肪族基から選択される)によって表される基;またはその薬理学的に受容可能な塩である)によって表される基から選択されるメンバーを表す。
好ましい実施形態において、R2は、1〜10個の炭素原子、より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する、置換または非置換の脂肪族基である。
別の好ましい実施形態において、R2は、式−(CH2)rCH(OH)(CH2)tOR5(ここで、rおよびtは、独立して、1または2である)によって表される基である。記号R5は、好ましくは、アシル基であり、2〜10個の炭素原子、好ましくは、10〜20個の炭素原子を有する。
別の好ましい実施形態において、R5は、式(III)(ここで、jは、1、2、または3である)によって表される基である。R6およびR7は、独立して、水素、および必要に応じて置換されたC1〜20脂肪族基の群より選択される。
R6およびR7は、分枝鎖または直鎖の、飽和または不飽和の、実質的に任意の長さの脂肪族基であり得るが、好ましい実施形態において、R6およびR7は、各々独立して、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族基である。さらに好ましい実施形態において、R6およびR7は、各々独立して、10〜20個の炭素原子を有する脂肪族基である。特に好ましい実施形態において、R6またはR7のうちの少なくとも1つは、置換または非置換のC1〜11脂肪族基である。上に提供される化合物に加えて、本発明は、式(II)による化合物の薬理学的に受容可能な塩を包含する。
R1がサッカリル基である式(II)の化合物の実施形態について、種々の単糖類、二糖類または多糖類が、有用である。1つの好ましい実施形態において、好ましい実施形態において、このサッカリル基は、単糖類グルクロン酸から誘導され、そしてこのサッカリル基のα形態またはβ形態のいずれかから選択される。以下に示されるように、分子の残りの部分へのサッカリル基の結合部位は、波線によって示されるように、サッカリル基の還元末端(すなわち、C1位)においてであり得る。
いくつかの実施形態において、サッカリル基は、C
6〜50サッカリル基、より好ましくは、C
6〜30サッカリル基、そしてなおより好ましくは、C
6〜20サッカリル基、そしてなおさらにより好ましくは、C
6〜10サッカリル基であることが好ましい。
上記一般的記載において、式(II)の化合物の多数の実施形態が、特に好ましい。1つの好ましい実施形態において、R、R1およびR2は、全て水素であり、そしてこの化合物は、式(IV)によって表されるイソツカレソール(isotucaresol)である:
別の好ましい実施形態において、Rは、水素であり、R
1は、β−D−グルクロン酸基であり、R
2は、水素であり、そしてこの化合物は、式(V)によって表される:
1つの実施形態において、Rは、水素であり、R
1は、スクシノイル基である(すなわち、R
1=−C(O)−[C(R
3)(R
4)]
k−COOHであり、ここで、R
3およびR
4は、水素であり;kは、2であり、そしてR
2は、水素である)。この化合物は、式(VI)によって表される:
式(VI)の化合物の1つの実施形態において、Rは水素であり、R
1はβ−D−グルクロン酸基であり、そしてR
2は、1−O−アシル−sn−グリセリル基(sn=立体特異的に数えられる;Carb.Res.1998,312,167を参照のこと)であり、そしてこの化合物は、式(VII):
1実施形態において、1−O−アシル−sn−グリセリル部分のアシル基は、アセチルであり(例えば、式VII中のR8は、メチルである;化合物6a)、別の実施形態においてはオクタノイルであり(R8はヘプチルである;化合物6b)、そして1実施形態においてはテトラデカノイル(R8はトリデシルである;化合物6c)。
サポニン模倣物としての両親媒性アルデヒド(IV)〜(VI)は、親油性ドメインおよび/または親水性ドメインで置換されるキラヤ酸(quillaic acid)(1)の開放鎖アナログとして、イソツカレゾール(isotucaresol)(IV)を有する(これに基づく?)。1のファルマコフォアとしてのイソツカレゾールの設計は、サポニンが、最適なアジュバント効果に必要なものよりも構造的に複雑であるという仮定に基づく。ステロイドのように、キラヤ酸のABC環接合点は全てトランスであり、この分子を比較的剛性かつ平坦にしており、従って、芳香族seco誘導体による分子模倣を受けやすくする。イソツカレゾールは、キラヤ酸の芳香族「triseco」誘導体であり、ここで、トリテルペンの3つの環(B、C、E)の元素は除去されているが、重要な官能基の空間的関係は維持されている。
イソツカレゾールのA環上の2つの反応性アルデヒド部分を有することの重要性は、Tリンパ球上に存在するCD2細胞表面糖タンパク質にクラスター化した、複数のリジルE−アミノ基を有するイミン形態(Wyssら、Science 1995,269:1273−1278を参照のこと)で、両方のホルミル基の同時結合の可能性を提供する。CD2は、T細胞のシッフ塩基媒介性の同時刺激についての主なレセプターであると考えられている(Rhodes、1996)。多価リガンド−レセプター相互作用は、生物学的系において一般的であり、そしてT細胞活性化に関して、MAA付加ペプチドの免疫原性だけでなく、ホルミル化ムチンを使用する最近の癌ワクチンストラテジー(Apostolopoulosら、Proc.Natl.Acad.Sci.、U.S.A.1995,92:10128−10132を参照のこと)の成功をも説明することを補助し得る。
別の局面において、本発明は、式II(a):
によって示される化合物を含み、R
2およびR
10は、独立して選択され、そして記号R
10は、R
2について上記されたようなメンバーを示す。式II(a)の化合物は、式(Ia)〜(Ic)の化合物について上記されたように、アジュバントおよび免疫エフェクターとして有用である。
別の局面において、本発明は、式II(b):
式II(b)の化合物は、式(Ia)〜(1c)の化合物について上記されたように、アジュバントおよび免疫エフェクターとして有用である。
外因性アジュバント(免疫調節因子)(例えば、式(II、IIaまたはIIb)の化合物)に対する抗原の共有結合によって、2つの成分(すなわち、抗原および式(II、IIaまたはIIb)の化合物)の混合物中のように、このような共有結合の非存在下で達成可能なアジュバント効果よりも大きい、抗原に対して驚くほどに予測できない増強されたアジュバント効果を示す別個の分子が生成される。さらに増強されたアジュバント効果は、このような化合物と共に無機塩アジュバントを取り込むことによって、このような共有結合した抗原について達成され得る。無機塩アジュバントは、好ましくは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムを含むが、他の公知の無機塩アジュバント(例えば、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛または水酸化カルシウム)が使用され得る。
水溶性は、アジュバント活性化サポニンの所望の特徴であり、そしてワクチンの処方および効力に役立つ(Kensil,1996)。抗原を変性し得、そして保護効果を防止し得る、油ベースのエマルジョンおよび無機塩アジュバントとは異なり、サポニンは、その高い水溶性に起因して、非変性アジュバントである。サポニンの高い水溶性はまた、エマルジョン型アジュバントに必要な大規模な均質化手順を排除し、免疫前の、水性のアジュバントおよび抗原の溶液の単純な混合を可能にする。サポニンは、キラヤ酸アグリコン単位のC−3およびC−28に結合したグリコシドにおける大きな構造的可変性を示すが、アジュバント活性(および水溶性)についての最小の炭水化物要件は、単独かまたは(ISCOM、ミョウバンなどとの)処方物中のいずれかで、C−3にてグリコシド結合したD−グルクロン酸(β−D−GlcA)部分であるようである(Bomfordら、Vaccine 1992,10:572−577;Soら、1997を参照のこと)。従って、イソツカレゾールのフェノール基にグリコシド結合したD−グルクロン酸部分(それ自体は、生理学的pHでやや溶けにくい)は、部分的に、第二のイオン化可能なカルボキシル基によって、水溶性およびアジュバント活性の両方を増強する。単純なヒドロキシベンズアルデヒドの水溶性O−グリコシド(例えば、ヘリシン(helicin)(31))は、天然には存在しないが、安定なシッフ塩基誘導体も容易に形成する(The Merck Index、第12版;Merck&Co.,Inc.:Whitehouse Station,NJ,1996を参照のこと)。コハク酸は、グルクロン酸部分についての単純な4−炭素アイソスターを構成し、そして水溶性を有するトリテルペンを与えるために使用されてきたので(GottfriedおよびBaxendale、米国特許第3,070,623号、1962を参照のこと)、合成的により単純なスクシネート(VI)もまた、有用である。
QS−21のグルクロン酸のカルボキシルの化学的改変は、アジュバント活性を有意に変更しない(Soltysikら、1995)ことに留意することが重要である。従って、カルボキシル基は、親油性脂肪酸ドメインまたは免疫原性の乏しいペプチドの結合についての独自の部位を提供する。実際、脱アシル化Quillajaサポニンまたは脂肪酸ドメインを欠くサポニンのグルクロン酸への、単純な親油性部分の結合は、体液性免疫および細胞媒介性免疫を増強することが最近示された(Marciani、WO 98/52573、1998;および米国特許第6,080,725号を参照のこと)。式Vの化合物(または化合物6a〜6cに従うより親油性の誘導体)のグルクロン酸のカルボキシルに結合したペプチド決定基はまた、好都合な可溶性特徴を付与し、そして内蔵された(built in)アジュバント活性を有する合成ワクチンを提供する可能性がある。増大した免疫原性は、グルクロン酸のカルボキシルを介してペプチド抗原に共有結合した親油性Quillajaサポニンについて観察された(Kensilら、Vaccines 92;Brown,F.、Chanock,R.M.、Ginsberg,H.S.、Lener,R.A.編;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Plainview,NY,1992;pp.35−40を参照のこと)。
脂肪酸アシル基を欠く親水性シッフ塩基形成化合物(すなわち、式Vおよび式VIに従う化合物)をアジュバントおよび免疫エフェクターとして使用することについて、理論にも原理にも束縛されることを望まないが、これらの化合物の使用は、さらなる解説を受けるに値する。QS−21の場合、QS−17およびQS−18にも共通する脂肪酸ドメインは、重要な役割を果たす:脱アシル(desacyl)サポニン(3中の部位Aにて切断可能)またはキラヤ酸誘導体(部位Bにて切断可能)のいずれかを生じる、制御されたアルカリ加水分解は、これら2つの加水分解産物のいずれも、インタクトな脂肪酸ドメインも、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に処方された場合、オボアルブミンに対する抗体力価も抗原特異的CTLも増強しない(Kensilら、1996;Kensilら、1992を参照のこと)。この証拠および他の証拠は、疎水性相互作用を介した抗原結合は、脂肪酸ドメインが存在しない場合、減少または除去されることを示唆する。しかし、非改変粗製Quillaja抽出物から単離したQS−21の「Bフラグメント」を用いた最近の研究は、このサポニン(QS−L1と称される、QS−21の部分的構造を参照のこと)が、ミョウバン沈殿抗原の存在下で投与される場合、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)に対する体液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答をブーストしたことを示した。実際、QS−L1は、マウスにおいて、ミョウバン沈殿HBsAgに対する、QS−21よりも大きい総IgG応答を誘導した(Soら、1997)。これらの結果は、ミョウバンとアニオン性アジュバントとペプチド抗原との間の、電荷相互作用の重要性を示唆する。
サポニンのアジュバント活性に対する脂肪酸ドメインの重要性は、親水性サポニンQS−7の最近の構造解明によって、さらに不明瞭にされている(Kensilら、1998)。QS−7は、QS−21のキラヤ酸と類似のキラヤ酸のC−3およびC−28において、分枝した糖単位を有するビスデスモシン性(bisdesmosidic)サポニンであるが、対照的に、フコース環上に大きい脂質ドメインの代わりにアセチル基を有する。QS−21と同様に、QS−7は、種々の抗原に対する細胞媒介性応答および体液性応答の強力な誘導因子であるが、赤血球に対するサポニンの特徴的な溶血活性を欠く(Kensil、1996;Kensilら、1998)。溶血活性(細胞膜に介在し、そしてコレステロール複合体化サポニン分子を含む細孔の六角配置を形成する、サポニンの能力に起因すると考えられる)は、アジュバント活性と相関しない。しかし、QS−7は非溶血性であり、一方で、ジギトニン(アジュバント不活化ステロイド性サポニン)は、高度に溶血性である(Kensil、1996;Kensilら、1998;Kensilら、J.Immunol.1991,146:431−437を参照のこと)。従って、外因性可溶性抗原によるCTL誘導は、サポニン誘導性細孔形成または複雑な親油性ドメインの存在のいずれとも密接に関連しないようである。
QS−21および他の親油性サポニンのより大きい毒性に寄与することに加えて、2つの3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−オクタン酸(DHMO)残基を含む複雑な脂肪酸ドメインは、親油性サポニンにかなりの不安定性を付与する。例えば、DHMOドメインの迅速な可逆的移動は、QS−21中のフコースの3−ヒドロキシル基と4−ヒドロキシル基との間で生じ、精製および純度分析、ならびに構造/機能評価を困難にする(Clelandら、J.Pharm.Sci.1996、85:22−28を参照のこと)。
この分子内エステル転移反応は、(例えば、3中の隣接ヒドロキシルによる求核攻撃に対する)β−ヒドロキシエステルの既知の不安定性が原因であり得る(Sadevokら、Russ.Chem.Rev.(英訳)1970、39:179−195を参照のこと)。同じ理由のために、塩基触媒脱アシル化は、水溶液中のQS−21についての有意な分解プロセスであり、従って、QS−21が使用され得る処方物および保存条件を制限する(Kensilら、1995;Cleland、1996)。
従って、親油性誘導体(化合物6a〜6c)(ここで、sn−グリセロール単位(D−フコースと同じC−2相対立体化学)は、フコース環の解放鎖アナログとして選択され、そして単純な脂肪酸残基は、QS−21の複雑なDHMO残基についての安定な置換基として選択されている);酢酸塩(化合物6a)は、より親水性かつより非毒性のQS−7のアナログである。化合物6aに従う化合物とQS−21との間の構造的関連性は、3において太字で示される。
(AGPおよびサポニンの組み合わせ)
本明細書中に記載されるサポニンの全ての型および種は、本発明の組成物および方法において使用するために、本明細書中に記載されるサポニンの全ての型および種と組み合わせられ得る。好ましい組み合わせとしては、型(Ia)、(Ib)および(Ic)のAGP(例えば、以前に言及された化合物B3、B9、B14、B15、B19、B22およびB25)ならびにMPLの、Quillajaサポニン(例えば、Quil AおよびQS−7、QS−17、QS−18またはQS−21)との、サポニン−脂質親和体結合体(GPI−0100を含む)との、そしてツカレゾールおよび式(II)の他のサポニン模倣物ならびにそれらの誘導体との組み合わせが挙げられる。
式V〜VIIに従う化合物の合成は、スケールアップおよびアナログ調製の両方を受けやすいイソツカレゾール骨格への、効率的な経路を必要とする。ツカレゾールのKneen多工程合成(Kneen、EP054924、1986;および米国特許第4,535,183号を参照のこと)に基づく、式IVの化合物への元のアプローチは、ベンゾフラン出発物質およびオゾン分解工程を含んだ。以下に考察されるように、合成のための他の代替経路が存在する。
(化合物の合成)
レトロ合成図(スキームI)から、親油性イソツカレゾール化合物は、以下の3つの主要なサブユニットへと分割され得る:グルクロン酸サッカリル単位、イソツカレゾール核、および3−O−アシル化−sn−グリセロール単位。式Vに従う化合物および化合物6a〜cは、グルクロン酸部分を共通して有するので、これら3つのサブユニットを組み立てる論理的方法は、イソツカレゾールt−ブチルエステル7の、8を生じる最初のグリコシル化(または式VIに従う化合物の場合にはスクシニル化)、およびその後の先進中間体9の第一級ヒドロキシル基の選択的アシル化による。このアプローチは、最初の側鎖導入を含む分散型ストラテジー(化合物6a〜c)と比較して、式V〜VIIの化合物を調製するために必要な工程の全体の数を減らし、そして他の親油性誘導体の合成のための、先進中間体9の潜在的な適用を可能にする。さらに、この経路は、合成の後期の、キラルシントン10の組み込みを可能にする。この合成ストラテジーはまた、ペプチドを、親油性側鎖の存在ありまたはなしで、グルクロン酸のカルボキシルに結合体化するのに適切である。
スキームIに概説されるようなストラテジーは、好ましくは、芳香族および糖カルボキシル基の直交性の保護、ならびにt−ブチルエステル脱保護および10によるエステル化の前の、8の糖ヒドロキシル基の保護を利用する。t−ブチルエステルは、特定のo−ホルミル化方法(すなわち、12→7)の塩基性条件に対するその安定性、およびグルクロニドのアリルベースの保護基の存在下での容易な酸性切断に起因して、ベンゾエート保護のために好ましい。アリルオキシカルボニル(AOC)基は、糖に容易に導入され、そしてパラジウム(0)触媒を用いた中性条件下で、アリルエステル基と共に除去され得る(Haradaら、J.Carbohydr.Chem.1995、14、165−170を参照のこと;Guibe、Tetrahedron 1998、54:2967−3042を参照のこと)。ミツノブ反応は、種々のフェノールおよび糖(アリルグルクロネート11を含む)からの、アリール(RoushおよびLin,J.Am.Chem.Soc.1995、117:2236−2250を参照のこと)および他の(Smithら、Tetrahedron Lett.1986、27:5813を参照のこと)β−グリコシドの立体選択的合成のために使用されてきたので(Juteauら、Tetrahedron Lett.1997、38:1481−1484を参照のこと)、化合物8(R=H)は、ミツノブプロトコルを使用して、7および11から直接構築され得る。イソツカレゾール環系7はまた、14によるベンジル化およびo−ホルミル化を介してヒドロキノン(13)から誘導され得るか、あるいはベンゾフラン誘導体15および16から、Kneenのイソツカレゾール合成22と類似の経路を介して誘導され得る。
イソツカレゾールの要の構築への代替のアプローチ(これは、スキームIと類似の経路を介して(V)〜(VII)への、または分散型経路を介して化合物6a〜cへのいずれかの、容易な接近を可能にする)である、o−メチル化ストラテジー(以下を参照のこと)はまた、ホルミル基を導入するのに有用である。既にo−ホルミル基を含む出発物質もまた、本発明の化合物を調製するために有用である。
(スキームI.レトロ合成)
(イソツカレゾールt−ブチルエステル(7)の合成)
(ヒドロキノン経路)
フェノール12のo−ホルミル化(スキームII)を含む、多数の経路が、t−ブチルエステル7を構築するために利用可能である。12の合成は、CHCl
3−MeOHまたはMeOH中の炭酸カリウムの存在下での、臭化物14でのヒドロキノン(13)のモノベンジル化(SchmidhammerおよびBrossi,J.Org.Chem.1983、48:1469−1471を参照のこと)によって、またはジメチルホルムアミド(DMF)中のCs
2CO
3を使用する、最近報告されたモノベンジル化方法(Zacharieら、J.Chem.Soc.、Perkin Trans.1 1997、19:2925−2930を参照のこと)によって、容易に達成され得る(ヒドロキノンのモノベンジル化はまた、標準的な条件(K
2CO
3/MeOH、室温;60%)下で、遊離酸17を用いても達成され得る)。公知のt−ブチルエステル14は、市販の17から、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)およびt−BuOHを用いるZacharieの方法(Zacharieら、J.Org.Chem.1995、60:7072−7074を参照のこと)に従って、またはt−ブチルエステル形成のための他の一般方法(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド/ジメチルアミノピリジン(DCC/DMAP)エステル化(NeisesおよびSteglich,Org.Synth.1984、63:183−187;GreenおよびWuts(1991)Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと))の1つによって、調製され得る。
ライマー−ティーマン反応はまた、o−ホルミレートフェノール保有p−置換基に対しても使用され得る(JungおよびLazarova,J.Org.Chem.1997,62:1553−1555ならびにそこに引用される参考文献を参照のこと)。従って、還流下での12の固体水酸化ナトリウムおよび2当量のクロロホルム中の水での処理は、直接、イソツカレゾールt−ブチルエステル7を提供する。
第2の方法はまた、o−ホルミル基をフェノール12に導入するために利用可能である(スキームIII)。最近、Yamaguchi(Yamaguchiら,J Org.Chem.1998,63:7298−7305を参照のこと)は、官能化フェノールが、SnCl
4−Bu
3N試薬の存在下で、アセチレンによりオルト位で効率的にビニル化され得ることを報告した。アリールオレフィン基は、種々の試薬(例えば、OsO
4/NaIO
4、RuO
2/NaIO
4)により高収率でベンズアルデヒドへと酸化的に開裂され得るので(SinghおよびSamanta,B.Synth.Commun.1997,27:4235−4244を参照のこと;Hudlicky,M.Oxidations in Organic Chemistry;Monograph Series 186;American Chemical Society:Washington,DC,1990;pp.77−81を参照のこと)−遊離のフェノールヒドロキシル基の存在下ですら(SinghおよびSamanta,1997)、フェノール12は、12がスタニルアセチレン媒介によりビニル化されて、18を得て、引き続いて水性ジオキサン中のOsO
4/NaIO
4により酸化されることを含む2工程のプロセスを介して、サリチルアルデヒド(salicaldehyde)誘導体7へと転換され得る。あるいは、粗製18は、ワークアップの間にアセチル化され得(ビニルフェノール安定性を改善することが公知の方策)、そして酸化後に脱アセチル化(K
2CO
3/MeOH,rt)され得る。
アセチレンでのo−ビニル化反応はまた、2,6−ジビニルフェノールを調製するために、Yamaguchiの改変反応条件を使用して(Yamaguchiら,1998)、12のジビニル化/酸化を介して、対応するジカルボキシアルデヒド19および本発明の関連するジホルミル誘導体に容易に接近するはずである。19および置換誘導体のアジュバント活性は、本明細書中に記載される方法を使用して評価され得る。
(7に対する指向性金属化アプローチ)
7のo−ヒドロキシベンズアルデヒド部分に対する代替的アプローチは、メトキシメチル(MOM)保護フェノール20のo−金属化(スキームIV)である。MOM基の強力なオルト指向性能力は、その容易な酸性開裂および塩基安定性と関連して、MOM−エーテルを、芳香族化合物を官能化するために特に有用にする(Zacharieら,1997を参照のこと;RonaldおよびWinkle,Tetrahedron 1983,39:2031−2042を参照のこと)。従って、ヒドロキノン13は、Cs2CO3の存在下でアセトン中のクロロメチルメチルエーテル、またはテトラヒドロフラン(THF)中のNaHで生成したフェノキシドを介して、選択的にモノ保護化されて(Zacharieら,1997;Cruz−Almanzaら,Heterocycles 1994,37:759−774を参照のこと)、公知の(Cruz−Almanzaら,1994)MOM保護化フェノール21を得る。次いで、K2CO3の存在下での、21の酸17でのベンジル化により、20を得る。20の、添加されたテトラメチルエチレンジアミンありまたはなしの、−78℃のTHF中、2当量のn−ブチルリチウムまたはs−ブチルリチウム(RLi)での処理は、ジリシオ種が生じ、これは、DMFでの低温でのクエンチングの際に、水性NH4Clワークアップ後に、MOM保護化イソツカレゾール22を生じる。低温で、カルボキシル基の存在下での指向性金属化は、求核攻撃(RLiによる)なしで、カルボキシレート上で生じる(JohnsonおよびGribble,Tetrahedron Lett.1987,28:5259−5262を参照のこと)。スキームIVに示されるプロトコルに従って、直列MOM保護指向性金属化反応によって、ヒドロキシ酸23を、22へ直接転換することもまた可能である。同様に、23のジリシオ塩の選択的メトキシメチル化は、MOM−エーテル20の代替的調製を提供する。
化合物7および22は、正反対に保護されるので、親油性側鎖をまず結合するには、22が好ましい。親油性ドメインおよび親水性ドメインの両方を含む化合物は、このようにして、わずか6工程ほど(アジュバント候補の大規模の化学合成に関して、潜在的に重要な考慮事項)で22から構築され得る。
化合物22は、t−ブチル以外の基を用いたカルボキシル官能基の保護を可能にする。なぜなら、塩基安定性(フェノールo−ホルミル化に対する)が、回避されるからである。t−ブチルエステルの存在下での、B−ブロモカテコールボランまたはMgBr2のような試薬を用いたMOM基の選択的脱保護が可能であり、ここでその除去は、隣接するカルボニルとのキレート化によって容易にされる(HaraldssonおよびBaldwin,Tetrahedron.1997,53:215−224を参照のこと)。あるいは、インサイチュ生成イソブチレンを使用した、MOM基の最初の脱保護および選択的t−ブチルエステル形成(Wrightら,Tetrahedron Lett.1997,38:7345−7348を参照のこと)が使用されて、中間体7が提供され得る。従って、22は、これら2つのプロトコルのうちの1つによって7に転換され得るか、代わりにカルボジイミドエステル化、およびTFAなどでのMOM除去によって2,2,2−トリクロロエチル(TCE)エステル24に転換され得る。TCEエステルは、t−ブチルエステルよりグリコシル化条件のより大きな範囲に対して安定であるが、類似のt−ブチル基は、アリルベースの糖保護に対してオルト(orthogonal)である(GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Synthesis;第2版:John Wiley & Sons,Inc.:New York,1991;pp.240−241を参照のこと)。
(2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドからの(25)化合物7の合成)
以下のベンゾフラン経路のように、完全に官能化されたA環で開始するヒドロキノンストラテジーに対する1つの変形は、より求核性の5−ヒドロキシル基に対する2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(25)の選択的ベンジル化である。従って、2,5−ジヒドロキシ系においてカルボニル基に対してメタのヒドロキシルを選択的にアルキル化することが既知の条件下での、市販の25のブロミド14での処理(Sadekovら,1970を参照のこと;VyasおよびShah,Org.Synth.,Coll.Vol.4 1963,pp.836−839を参照のこと)を使用して、中間体7をたった2工程で(スキームV)で提供し得る。同様に、25の酸17でのアルキル化により、一工程でイソツカレゾール(IV)が得られる。
(化合物7または(IV)を得るための芳香族カルボニル基に対してオルトの選択的ベンジル化)
7またはIVの式に従う化合物は、選択的脱ベンジル化によって作成され得る。例えば、スキームVにおいて、7(またはIV)の調製における副生成物として形成されるジベンジル化生成物は、ホルミル基に対してオルト位において、MgBr
2を用いて、選択的に開裂され得る(HaraldssonおよびBaldwin,1997を参照のこと)。あるいは、25の、14または17、あるいは他の適切な誘導体での定量的ジベンジル化、その後の選択的o−脱ベンジル化はまた、(IV)およびその誘導体(例えば、化合物40)への効率的な経路を提供する。これらの方法の扱いやすさは、ヒドロキノン13と比較して、出発物質25のより高い費用の埋め合わせになる。
一般に、この反応スキームは、ルイス酸の存在下で行われて、スキームVIにおけるような選択的脱ベンジル化生成物を形成する:
R
2およびR
8は、同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態において、R
2およびR
8は、カルボン酸保護基のような当該分野で公知の部分から選択される。本発明の範囲内の化合物は、R
2およびR
8が、水素、置換されたC
1〜20アルキル基、置換されていないC
1〜20アルキル基、および式−(CH
2)
rCH(OH)(CH
2)
tOR
5(ここでrおよびtは、独立して1または2である)を有する基から独立して選択され、R
5は、置換されたC
2〜20アシル基または以下の式:
記号jは、1〜5の整数を示す。置換基R6およびR7は、独立して、水素、置換されたC1〜20アルキル基、または置換されていないC1〜20アルキル基を示し得る。
このo−脱ベンジル化は、式MXnを有するルイス酸によって達成され得る。Mは、Al3+、As3+、B3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、Mg2+、Sb3+、Sb5+、Sn2+、Sn4+、Ti2+、Ti3+、Ti4+、およびZn2+を含む群から選択される。Xは、Cl、I、F、およびBrからなる群より選択されるハライドである。当業者は、Mの価電子状態に依存して、nが2〜5の整数であることを認識する。いくつかの実施形態において、オルト−脱ベンジル化を達成するために使用され得るそのルイス酸としては、以下があげれらるが、これらに限定されない:AlCl3、AlI3、AlF3、AlBr3、Et2AlCl2、EtAlCl2、AsCl3、AsI3、AsF3、AsBr3、BCl3、BBr3、BI3、BF3、BCl3・SMe2、BI3・SMe2、BF3・SMe2、BBr3・SMe2、FeCl3、FeBr3、FeI3、FeF3、FeCl2、FeBr2、FeI2、FeF2、GaCl3、GaI3、GaF3、GaBr3、MgCl2、MgI2、MgF2、MgBr2、MgCl2−OEt2、MgI2−OEt2、MgF2−OEt2、MgBr2−OEt2、SbCl3、SbI3、SbF3、SbBr3、SbCl5、SbI5、SbF5、SbBr5、SnCl2、SnI2、SnF2、SnBr2、SnCl4、SnI4、SnF4、SnBr4、TiBr4、TiCl2、TiCl3、TiCl4、TiF3、TiF4、TiI4、ZnCl2、ZnI2、ZnF2、およびZnBr2。さらに、o−脱ベンジル化は、ルイス酸(例えば、Et2AlCl、EtAlCl2、モノアルキルホウ素ハライド、ジアルキルホウ素ハライド、およびモノアリールホウ素ハライド、ジアリールホウ酸ハライド)により達成され得る。Xは、Cl、I、F、およびBrであり得るが、これらに限定されない。その反応は、オルト脱ベンジル化生成物を形成するために十分な条件下で行われる。これらの条件は、反応パラメーターを最適化することによって、当業者により決定され得る。オルト脱ベンジル化反応において最適化され得る反応パラメーターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:反応インキュベーションの長さ、温度、圧力、溶媒、溶媒 対 出発物質の比など。本発明の反応を最適化する方法は、有機化学の当業者の十分に技術範囲内である。
いずれの特定の理論に束縛されることなく、これらのルイス酸とジベンジル化出発物質との反応は、多環式環(例えば、六員環)キレート化環中間体を形成すると考えられる。この多環式環キレート化環中間体は、次いで、(例えば、塩基、酸、HClなどでの)加水分解に供されて、オルト−脱ベンジル化生成物を得る。塩基または酸の反応混合物への添加は、所望のオルト−脱ベンジル化生成物を形成するに十分な条件の部分を考慮し得る。
いくつかの実施形態において、o−脱ベンジル化は、条件A、条件B、または条件C下で化合物39を反応させて、メチル4−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェノキシメチル)安息香酸(イソツカレゾールメチルエステル;40)を得ることによって行われる:
(ベンゾフラン経路)
イソツカレゾール(IV)の1つの合成において、市販の5−メトキシベンゾフラン(16)を、三臭化ホウ素で脱メチル化して(WilliardおよびFryhle,Tetrahedron Lett.1980,21:3731−3734を参照のこと)26を得、次いで、これを、4−(ブロモメチル)安息香酸メチルでベンジル化する。t−ブチルエステル14での26の類似のベンジル化およびベンゾフラン中間体15のオゾン分解(Kneen,EP054924,1986;および米国特許第4,535,183号)は、化合物7を提供する(スキームVII)。
(スキームVII)
(ヘミスクシネート(V)の合成)
フェノールおよびアルコールの、それらの対応するヘミスクシネート(その遊離酸またはアルカリ金属塩として単離される)への変換は、ステロイドおよび他の親油性薬物の水溶性を増強するための一般的な方策であり、結果として、一般的な方法が、スクシノイル化のために利用可能である(GottfriedおよびBaxendale,1962を参照のこと)。t−ブチルエステル7のピリジン中の無水コハク酸での処理、続いて、t−ブチルエステルのトリフルオロ酢酸(TFA)での脱保護により、化合物(V)が得られる(スキームVIII)。四級カルボン酸基は、通常は、この反応を妨害しないので、イソツカレゾール(IV)の直接のスクシノイル化もまた、可能である。
(グルクロニド4の合成)
アリールβ−グリコシドおよびアシルβ−グルクロニドの高度に立体選択的な合成は、Mitsunobu反応を介して達成されてきた(RoushおよびLin,1995を参照のこと;Smithら,1986を参照のこと)。実際に、アリルグルクロネート11は、アノマーヒドロキシル基のより高い反応性を利用することによって、50%までの収率において、糖ヒドロキシル基を保護せずにMitsunobu反応において使用されてきた(Juteauら,1997を参照のこと)。Mitsunobuプロトコルの完全に保護された糖への適用によって、アリールβ−グルコシドのさらに高い収率(70〜95%)が得られる(RoushおよびLin,1995を参照のこと)。
従って、D−グルクロン酸およびアリルブロミド(1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)/DMF,rt)から75%収率で調製される公知の(Juteauら,1997)アリルエステル11は、0℃のTHF中のトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)の存在下で、フェノール7または関連する誘導体と選択的にカップリングされて、スキームIXに示されるように、アリールβ−グリコシド28(すなわち、8R=H)が得られる。適切なアリルスカベンジャーの存在下でのエステル保護基のTFAおよびPd(0)での連続的脱保護(Haradaら,1995を参照のこと;Guibe,1998を参照のこと)は、次いで、化合物(V)を与える。
フェノールのグリコシル化に使用されていた代替的な方法は、銀塩の存在下でのピラノシルブロミドのKoenigs Knorr反応である(RoushおよびLin、1995を参照のこと;RobertsonおよびWaters,R.B.J.Chem.Soc.1930,2729−2733を参照のこと)。AOC基は、ピリジン中のAOC−Clを使用して(Haradaら,1995を参照のこと)、グルクロニドの2位、3位、4位に高収率で導入されたので、11を同様に保護し、次いで、酢酸中のHBrで処理して、ブロミド29を得る。銀により媒介される29と7のカップリングは、次いで、アリール−グリコシド30(すなわち、8R=AOC)を優先的に生じる。類似のグリコシル化が、酸化銀の存在下で、サリチルアルデヒドおよびO−テトラアセチル−4−D−グルコピラノシルブロミドから天然生成物ヘリチン(31)を調製するために使用されてきた(RobertsonおよびWaters,1930を参照のこと)。グリコシル供与体29はまた、銀媒介性加水分解によって、ラクトール32への接近を提供する(RoushおよびLin,1995を参照のこと)。完全に保護された32と7とのMitsunobu反応はまた、30を与えるはずである。次いで、これは、28についての脱保護と同じ2工程の脱保護によって、4へと脱保護され得る。
(グルクロニド6a〜6cの合成)
アリールグリコシド30(上で議論されるようにして、29または32から直接調製したか、あるいは28のAOC保護によって調製した)を、以下の順序によって、より進んだ(advanced)中間体9に変換する:(1)tブチルエステルの加水分解、(2)10でのエステル化、および(3)以下のスキームXに示されるようなアセトニドの切断。最近、オーレオル酸(aureolic acid)抗生物質に対するアプローチにおいて、芳香族アグリコン上の電子吸引性置換基を有するアリールグリコシドが、ケタールおよび他の保護基の酸性脱保護に対して安定であることが示された(RoushおよびLin,1995;Roushら、J.Am.Chem.Soc.1999,121:1990−1991)。実際、アグリコン単位中のカルボニル基を有する特定のフェニルグリコシドは、酸性加水分解に対して著しい安定性を示した(Barら,Wiss.Technol.1990,23:371−376を参照のこと)。それにも関わらず、グリコシド結合がケタールおよび/またはt−ブチルエステルの切断に対して感受性である場合、TCEエステル24(22から調製、または7のエステル交換により調製)は、グルクロン化(glucuronidation)のために使用され得、続いて緩衝化THF水溶液中の亜鉛を用いて、中性条件下で脱保護され得る(JustおよびGrozinger,SYNTHESIS 1976,457−458を参照のこと)。グルクロニドの安定なアイソスター(偽糖(pseudosugar)、C−グリコシド)が調製され得る。
化合物9を、無水酢酸および適切な酸クロリドを用いて、標準的な条件下で、1級ヒドロキシル基上で選択的にアシル化して、33a〜cを得る。アセチルクロリドを用いるアセチル化は、他の酸クロリドを用いる場合ほど選択的ではないが、CHCl3中のAc2Oを用いて、ピリジンの存在下でアセチルを導入することは、反応を0℃未満で実施した場合、1級アルコールに対する良好な選択性を提供する(Storkら、J.Am.Chem.Soc.1978,100:8272−8273を参照のこと)。グリセロール誘導体の選択的アシル化に特異的に適用されている1つの方法は、0℃でのインサイチュで生成されるスタノキサン(stannoxane)(共沸脱水によりトルエン中のBu2SnOを用いて調製される)と酸クロリドとの反応である(Aragozziniら、Synthesis 1989,225−227を参照のこと)。これらの方法の1つにより調製されるアリルベースの保護基33a〜cの脱保護が行われる(6a〜c)
(スキームX)
(6a〜cの分枝(divergent)合成)
上で議論されたように、MOMエーテル23は、理想的には、アシル化グリセロール単位をフェノール性ヒドロキシル基のグルクロン化の前に合成するのに適している。従って、10を用いる23のエステル化、続くアセトニドの加水分解および上記のようなアシル化は、34a〜cを生じるはずである(スキームXI)。次いで、MOMの脱保護、および得られた35a〜cと11とのMitsunobuカップリングは、グルクロニド36a〜cを提供し、これをPd(0)で脱保護して、6a〜cを得ることができる。
(スキームXI)
最終生成物(IV〜VI)を、標準的な分光法(IR、
1H NMRおよび
13C NMR)および物理(元素およびHRMS)データによって分析する。純度を、インタクトな分子または適切な誘導体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基のフェナシルエステル)の逆相HPLC分析によって評価する。
(IV.化合物の評価)
AGP化合物およびサポニンを含む組成物の、体液性応答および細胞媒介性応答に対するアジュバント効果を、2つの異なるマウスモデルにおいて、非働化インフルエンザウイルス(例えば、FluZoneインフルエンザワクチン(Connaught Laboratories,Swifwater,PA)中の血球凝集素タンパク質)であるrHBsAg(組換えB型肝炎表面抗原)を抗原として使用して、決定し得る(以下の実施例の節もまた参照のこと)。rHBsAGの場合、この化合物を、ミョウバン吸着抗原および可溶性抗原の両方を用いて処方し、ミョウバン吸着抗原コントロールと比較し得る。rHBsAgに対する抗体力価(例えば、IgG、IgG1、IgG2a、IgG2bなど)を、ワクチン接種前の血清およびワクチン接種後の血清からのELISAによって決定し得る。
血清および粘膜のCTLおよびIgAの応答が、ワクチンが鼻腔内(i.n.)投与された場合にしばしば増大される場合(VanCottら、J.Immunol.1998,160:2000−2012;Imaokaら,J.Immunol.1998,161:5952−5958を参照のこと)、マウスのi.n.免疫および皮下(s.c.)免疫の両方を、上記の処方物を用いて実施する。これらの化合物を、BALB/cマウスにおいてrHBsAg特異的抗体およびインフルエンザ血球凝集素特異的抗体を誘発し、P815S−HBsAg標的細胞に対するCTLを増大する能力について評価する(例えば、Mooreら(1988)Cell 55:777−785を参照のこと。P815S細胞株は、MHC−I複合体においてHBsAg CTLs28−39エピトープを発現するP815トランスフェクト体であり、CTL応答が病原体クリアランスに重要であると考えられるB型肝炎ウイルス(HBV)に対するヒト免疫応答との関連性を示す(Schirmbeckら、J.Immunol.1994,152:1110−1119を参照のこと;Schirmbeckら,J.Virol.1994,68:1418−1425を参照のこと)。
(V.薬学的組成物)
(処方物)
AGP(例えば、式Ia、IbまたはIcの化合物)とサポニン(例えば式II、IIa、IIb、QS−21などの化合物)との組合せは、被験体への投与のための薬学的に受容可能なキャリアと共に処方され得る。当業者に公知の任意の適切なキャリアが、本発明の薬学的組成物に用いられ得るが、キャリアのタイプは、投与様式に依存して変わる。この薬学的組成物は、代表的に、AGPおよびサポニンが、併用有効免疫増強量または治療有効量(すなわち、疾患または状態の処置、または生物学的発症の点で所望の効果を達成するのに必要な化合物の量)で存在するように、処方される。本発明の一実施形態において、AGPおよびサポニンの各々は、治療的効果を個々に提供する量で存在し、組合せの全効果が相乗効果を個々に提供する、すなわち、任意の予測される付加的な効果を超える組合せ効果を提供する。しかし、本発明の組成物は、組合せ相乗効果を有するものを含むので、この組成物は、AGPおよびサポニンの一方または両方でさえ、個別に、治療効果を提供するのに必要な量より少ない量で提供される組成物および方法を包含する。しかし、この組合せは、驚くべきことに、治療的に有効である。
一実施形態において、AGPおよびサポニンの有効量は、0.0001〜約1.0mg/kg被験体哺乳動物の体重、より好ましくは0.001〜約0.1mg/kg哺乳動物の体重の範囲である。一実施形態において、AGPおよびサポニンは、6ヶ月までの期間にわたって、1週間に1回〜1ヶ月に1回、より好ましくは、約2〜3ヶ月の期間にわたって、1ヶ月に1回、投与される。1つの局面において、本発明は、哺乳動物における疾患を処置または予防する方法を提供し、この方法は、この哺乳動物に、抗原および有効免疫増強量のAGPおよびサポニンを含むワクチン組成物を投与する工程を包含する。この疾患としては、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび感染症(例えば、細菌感染およびウイルス感染)が挙げられる。
本発明の薬学的組成物において使用されるAGPおよびサポニンは、広範な活性を有する。いくつかのAGPは、他のものよりはるかに活性が大きく、そして同様に、いくつかのサポニンは、他のものよりはるかに活性が大きい。所定の状況において使用するための特定のAGPおよび特定のサポニンの選択は、一般に、多数の要因に基づき、薬学的活性はそのうちの1つに過ぎない。所定の場合において、比較的高い活性を有するAGPと比較的中程度のレベルの活性しか有さないサポニンとの組合せを使用することが望ましくあり得る。従って、それぞれ、異なるAGPおよび/またはサポニンの組合せを含む組成物は、異なる量のこれら2つの物質を含む可能性が高い。患者への直接投与のための液体組成物(すなわち、単回投薬処方物)は、一般に、約100μg/mL〜約10mg/mLを含む。患者に投与されるAGPの量は、約1ng/kg体重〜約1mg/kg体重、好ましくは約10ng/kg体重〜約100μg/kg体重の範囲である。患者に投与されるサポニンの量は、一般に、約100ng/kg体重〜約10mg/kg体重、好ましくは約1μg/kg体重〜約5mg/kg体重の範囲である。AGPとサポニンの乾燥処方物またはより濃縮された液体処方物は、希釈された場合、またはそうでなければ調整された場合、上記の投薬量を提供する量の物質を含む。
同様に、比較的異なるレベルの活性のAGPおよびサポニンの組合せは、所定の組成物または処方物において一緒に使用され得るので、本発明の組成物中のサポニンに対するAGPの重量比は、広範に変化し得る。一般に、これら2つの成分は、約1:1000〜約1000:1、好ましくは約100:1〜約1:100のAGP 対 サポニンの重量比で、この組成物中に存在する組成物である。好ましくは、これらは、AGPとサポニンの組合せの使用の予想外の効果または相乗効果が達成される様な重量比である。
従って、好ましい組成物は、AGPおよびサポニンが、相乗的に有効な量、すなわち、この組成物が被験体に投与された場合、個々のAPおよびサポニン単独の使用と比較して、相乗効果または他の予想外の効果を有する量で存在する。同様に、この組成物の使用方法は、好ましくは、この組成物がAGPまたはサポニン単独の投与と比較して相乗効果または他の予想外の効果を提供するように、AGPおよびサポニンを含む組成物を投与する工程を包含する。
本明細書中で記載される組成物および投与方法は、1種のAGPおよび1種のサポニンを含むという点において記載されるが、この用語は単に簡便性のために使用されるにすぎないことに注意するべきである。実際、本発明に従う組成物および使用方法は、所定の処置のために適切であり得るように、1種以上のAGPおよび/または1種以上のサポニンを含み得る。本明細書中で提供されるAGPおよびサポニンの量および割合とは、成分のそれぞれのカテゴリーの全含有量または割合をいう。
薬学的組成物の調製について、薬学的に受容可能なキャリアは、固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散可能顆粒剤が挙げられる。固体キャリアは、1種以上の物質を含み得、この物質はまた、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料として働き得る。
散剤において、キャリアは細かく分割された固体であり、これは、細かく分割された活性成分との混合物中に存在する。錠剤において、活性成分は、必要な結合特性を有するキャリアと、適切な割合で混合され、そして所望の形状および大きさに圧縮される。
固体形態の組成物が、例えば、活性アジュバント(例えば、塩の形態にある)の水性処方物の噴霧乾燥によって、またはこれらを凍結乾燥し、そして賦形剤と共に製粉することによって、調製され得る。
本発明の固体組成物に適切なキャリアとしては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが挙げられる。用語「調製物」は、カプセルを提供するキャリアとしてのカプセル化材料と、活性化合物との処方物を含むことを意図し、ここで、他のキャリアを含むかまたは含まない活性成分は、キャリアによって取り囲まれ、従って、このキャリアと会合している。同様に、カシェ剤およびロゼンジが含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジは、経口投与に適切な固体投薬形態として使用され得る。
坐剤の調製に付いて、低融点ワックス(例えば、脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物が、最初に融解され、そして活性成分が、撹拌によって、この中に均一に分散される。この融解された均一な混合物は、次いで、都合良い大きさの鋳型に注ぎ入れられ、冷却され、それにより固化される。
液体形態調製物としては、溶液、懸濁液およびエマルジョン(例えば、水または水/プロピレングリコール溶液)が挙げられる。非経口注射について、液体調製物が、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液中で処方され得る。特定の実施形態において、この薬学的組成物は、安定なエマルジョン処方物(例えば、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョン)中で、または好ましくは1種以上の界面活性剤を含む水性処方物中で処方される。当業者に周知の適切な界面活性剤が、このようなエマルジョンで使用され得る。一実施形態において、AGPおよびサポニンを含む組成物は、少なくとも1種の適切な界面活性剤を含むミセル分散物の形態である。このようなミセル分散物において有用な界面活性剤としては、リン脂質が挙げられる。リン脂質の例としては、以下が挙げられる:ジアシルホスファチジルグリセロール(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DPMG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG));ジアシルホスファチジルコリン(例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DPMC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC));ジアシルホスファチジル酸(例えば、ジミリストイルホスファチジル酸(DPMA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、およびジステアロイルホスファチジル酸(DSPA));ならびにジアシルホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DPME)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE))。他の例としては、エタノールアミンの誘導体(例えば、上記のホスファチジルエタノールアミンまたはセファリン)、セリン(例えば、ホスファチジルセリン)、および3’−O−リジルグリセロール(例えば、3’−O−リジル−ホスファチジルグリセロール)が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的に、水性処方物中の界面活性剤:アジュバントのモル比は、約10:1〜約1:10、より代表的には約5:1〜約1:5であるが、任意の有効量の界面活性剤が、目的の特定の目的に最も適するように、水性処方物において使用され得る。
経口用途に適切な水溶液は、活性成分を水に溶解し、そして適切な着色剤、香味剤、安定剤および増粘剤を必要に応じて添加することによって調製され得る。経口用途に適切な水性懸濁液は、細かく分割された活性成分を、粘性材料(例えば、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロール、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁剤)と共に水中に分散させることによって作製され得る。
使用直前に、経口投与のための液体形態調製物に変換することを意図された固体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味料および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
薬学的調製物は、好ましくは、単位投薬形態である。このような形態では、この調製物は、適切な量の活性成分を含む単位用量に細分される。単位投薬形態は、パッケージングされた調製物であり得、このパッケージは別個の量の調製物を含む(例えば、バイアルまたはアンプル中にパッケージングされた錠剤、カプセル剤および散剤)また、単位投薬形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤またはロゼンジ自体であり得るか、またはこの単位投薬形態は、適切な数の任意のこれらのパッケージング形態のいずれかであり得る。
この薬学的組成物は、抗原の非存在下で、免疫増強組成物として投与され得る。このような組成物は、病原体感染、癌または自己免疫障害に罹患しているか、またはこれらに対して感受性である被験体(例えば、哺乳動物)を処置するために使用され得る。他の実施形態において、この組成物は、動物における免疫応答を増大するために投与され得る。
(抗原およびワクチン処方物)
他の実施形態において、動物(例えば、ヒト)の免疫応答は、抗原と組み合わせて組成物を投与することによって増強され得る;本発明のアジュバント系は、同時投与される抗原なしに投与され得、特に、易免疫性患者において、慢性感染性疾患の処置のための免疫系を増強する。このアプローチが治療処置または予防処置のために使用され得る感染性疾患の例は、米国特許第5,508,310号に見出され得る。この場合における免疫系の増強はまた、予防措置として有用であり、院内感染および/または外科手術後感染の危険性を制限し得る。
薬学的組成物は、抗原と同時投与される場合、アジュバントとして作用し得る。式I(a−c)、II、III、IV、IVa、およびIVbの化合物ならびに本明細書中に示される他のサポニンおよびAGPは、外因性アジュバントとして考えられ得る。アジュバントは、抗原の免疫原性を増強する免疫刺激剤であるが、免疫原性そのものには必ずしも必要とされない。内因性アジュバント(例えば、リポポリサッカリド)は、通常は、ワクチンとして使用される殺傷されたまたは減弱された細菌の成分である。外因性アジュバントは、免疫調節因子であり、代表的には、抗原に非共有結合され、宿主の免疫応答を増強するように処方される。1つの実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原(腫瘍特異的抗原)である。
1つの実施形態において、本発明は、抗原ならびにサポニンおよびAGPを含有するワクチン組成物を提供する。適切な抗原としては、微生物病原、細菌、ウイルス、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ペプチド、糖ペプチド、リポペプチド、毒素、炭水化物、および腫瘍特異的抗原が挙げられる。2つ以上の抗原の混合物が、使用され得る。
従って、本発明のアジュバント系は、哺乳動物(特に、ヒト)の抗原に対する活性な免疫性を誘導するような、疾患を処置または予防するためのワクチンおよび他の免疫刺激組成物を作製および使用することにおいて、特に有利である。ワクチン調製物は、良好に開発された分野であり、調製における一般的指針およびワクチンの処方物は、任意の種々の供給源から容易に入手可能である。このような例の1つは、Vollerらによって編集された、New Trends and Developments in Vaccines, University Park Press,Baltimore,Md.,U.S.A.1978である。
本発明のワクチン組成物はまた、他の化合物を含み得、これは、生物学的に活性であっても不活性であっても良い。例えば、他の腫瘍抗原の1つ以上の免疫原性部分が、ワクチン組成物内に存在し得、これは、融合ポリペプチドに組込まれるか、または別々の化合物として存在する。ポリペプチドはまた、例えば、米国特許第4,372,945号および同第4,474,757号に記載されるように、他の高分子に結合体化され得るが、その必要はない。ワクチン組成物は、一般的に、予防目的および治療目的のために使用され得る。
1つの例示的な実施形態において、本発明のワクチン組成物内の抗原は、ペプチド、ポリペプチド、またはその免疫原性部分である。本明細書中で使用される場合、「免疫原性部分」は、B細胞および/またはT細胞表面抗原レセプターによって認識される(すなわち、特異的に結合される)タンパク質の部分である。これらの免疫原性部分は、一般的に、少なくとも5アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも10アミノ酸残基、そしてさらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基の、抗原性タンパク質またはその改変体を含む。
抗原ポリペプチドの免疫原性部分は、一般的に、周知の技術(例えば、Paul,Fundamental Immunology,第3版、243−247(Raven Press,1993)およびその中に引用される参考文献に概説される技術)を使用して同定され得る。このような技術としては、抗原特異的抗体、抗原特異的抗血清および/または抗原特異的T細胞株もしくはクローンと反応する能力に対するポリペプチドのスクリーニングが挙げられる。本明細書中で使用される場合、抗血清および抗体は、これらが、特異的に抗原に結合する場合(すなわち、これらが、ELISAまたは他の免疫アッセイにおいてタンパク質と反応し、そして、関係のないタンパク質と検出可能に反応しない)、「抗原−特異的」である。このような抗血清および抗体は、本明細書中に記載されるように、そして周知の技術を使用して、調製され得る。タンパク質の免疫原性部分は、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイにおいて)全長ポリペプチドの反応性よりも実質的に低くはないレベルで、このような抗血清および/またはT細胞と反応する部分である。このような免疫原性部分は、全長ポリペプチドの反応性と同程度かまたはより高いレベルでこのようなアッセイにおいて反応し得る。このようなスクリーンは、一般的に、当業者に周知の方法(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988に記載されるような方法)を使用して実施され得る。例えば、ポリペプチドは、固体支持体上に固定化され得、患者の血清と接触され、血清内の抗体の固定化されたポリペプチドへの結合を可能にする。次いで、結合されない血清は、除去され得、そして、結合抗体を、例えば、125I−標識プロテインAを使用して検出し得る。
ペプチドおよびポリペプチド抗原を、任意の種々の周知の技術を使用して調製する。DNA配列によってコードされる組換えポリペプチドは、当業者に公知の任意の種々の発現ベクターを使用して、単離されたDNA配列から容易に調製され得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質転換されるかまたはトランスフェクトされた、任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞としては、原核生物細胞、酵母、および高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞および植物細胞)が挙げられる。好ましくは、使用される宿主細胞は、E.coli細胞株、酵母細胞株または哺乳動物細胞株(例えば、COSまたはCHO)である。
約100アミノ酸未満、そして一般的には約50アミノ酸未満を有するタンパク質抗原の部分および他の改変体はまた、当業者に周知の技術を使用する、合成手段によって生成され得る。例えば、このようなポリペプチドは、任意の市販の固相技術(例えば、伸長するアミノ酸鎖に実質的に付加されるMerrifield固相合成法)を使用して合成され得る。Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2146,1963を参照のこと。ポリペプチドの自動化合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City,CA)のような供給元から市販され、製造業者の指示書に従って操作され得る。
特定の特異的実施形態において、本発明のワクチン組成物において使用されるポリペプチド抗原は、2つ以上の異なるポリペプチドを含む融合タンパク質であり得る。融合パートナーは、例えば、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトによって認識されるTヘルパーエピトープを提供するのを補助し得るか、またはネイティブな組換えタンパク質より高い収率でタンパク質(発現エンハンサー)を発現するのを補助し得る。特定の好ましい融合パートナーは、免疫学的融合パートナーおよび発現増強融合パートナーの両方である。他の融合パートナーは、タンパク質の可溶性を増大するように選択され得るか、またはタンパク質を所望の細胞内区画に標的化されるのを可能にする。なおさらなる融合パートナーとしては、アフィニティータグが挙げられ、タンパク質の精製を容易にする。
融合タンパク質は、一般的に、標準的技術(化学的結合が挙げられる)を使用して調製され得る。好ましくは、融合タンパク質は、組換えタンパク質として発現され、発現系において非融合タンパク質に比べて、増大したレベルの産生を可能にする。簡単には、ポリペプチド成分をコードするDNA配列は、別々にアセンブルされ得、そして適切な発現ベクターに連結され得る。ペプチドリンカーを有するかまたは有さない、1つのポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端は、第2のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端に連結され、その結果、配列のリーディングフレームが、インフェイズ(in phase)になる。これは、両方のポリペプチド成分の生物学的活性を維持する単一の融合タンパク質に翻訳される。
ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドが、その二次構造および三次構造に折りたたむことを保証するのに十分な距離まで、第1および第2のポリペプチド成分を分離するために使用され得る。このようなペプチドリンカー配列は、当業者に周知の標準的技術を使用して、融合タンパク質に組込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づいて選択され得る:(1)可撓性の伸長したコンフォメーションを採用不能;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用し得る二次構造を採用する能力;ならびに(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電性残基の欠損。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基およびSer残基を含む。他のよく似た中性アミノ酸(例えば、ThrおよびAla)はまた、リンカー配列中に使用され得る。リンカーとして通常使用されるアミノ酸配列としては、Marateaら、Gene 40:39−46,1985;Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262,1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されるようなリンカーが挙げられる。リンカー配列は、一般的に、1〜約50アミノ酸長であり得る。第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体的障害を防止するために使用され得る非必須N−末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は、必要とされない。
好ましい実施形態において、免疫学的融合パートナーは、グラム陰性細菌Haemophilus influenza Bの表面タンパク質である、プロテインDに由来する(例えば、WO91/18926,米国特許第6,139,846号、同第6,025,484号、同第5,989,828号、同第5,888,517号、および同第5,858,677号を参照のこと)。好ましくは、プロテインD誘導体は、タンパク質のほぼ1/3(例えば、第1のN−末端100〜110アミノ酸)を含み、プロテインD誘導体は、脂質化され得る。特定の好ましい実施形態において、リポタンパク質D融合パートナーの第1の109残基は、N−末端に含まれ、さらなる外因性T細胞エピトープを有するポリペプチドを提供し、そしてE.coli中での発現レベルを増大する(従って、発現エンハンサーとして機能する)。脂質テイルは、抗原提示細胞に対する抗原の最適な提示を保証する。他の融合パートナーは、インフルエンザウイルス(NS1(赤血球凝集素))由来の非構造タンパク質を含む。代表的には、N−末端81アミノ酸が使用されるが、T−ヘルパーエピトープを含む異なるフラグメントが、使用され得る。
別の実施形態において、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして公知のタンパク質またはその部分(好ましくはC−末端部分)である。LYTAは、Streptococcus pneumoniaeに由来し、これは、アミダーゼLYTAとして公知のN−アセチル−L−アラニンアミダーゼを合成する(LytA遺伝子によってコードされる;Gene 43:265−292,1986)。LYTAは、ペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己溶解素である。LYTAタンパク質のC−末端ドメインは、コリンまたは何らかのコリンアナログ(例えば、DEAE)に対する親和性を担う。この特性は、融合タンパク質の発現について有用なE.coli C−LYTA発現プラスミドの開発のために活用されてきた。アミノ末端にC−LYTAフラグメントを含むハイブリッドタンパク質の精製が、記載された(Biotechnology 10:795−798,1992を参照のこと)。好ましい実施形態において、LYTAの反復部分は、融合タンパク質に組込まれ得る。反復部分は、残基178で開始するC−末端領域において見出される。特に好ましい反復部分は、残基188〜305に組込まれる。
本発明の別の実施形態において、本明細書中に記載されるアジュバント系は、DNA−ベースのワクチン組成物の調製に使用される。この型の例示的ワクチンは、1つ以上のポリペプチド抗原をコードするDNAを含み、その結果、抗原は、インサイチュで生成される。DNAは、当業者に公知の種々の送達系のいずれかに存在し得、この送達系としては、核酸発現系、細菌発現系およびウイルス発現系が挙げられる。種々の遺伝子送達技術(例えば、Rolland,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Systems 15:143−198,1998およびその中に引用される参考文献に記載される技術)が当該分野で公知である。適切な核酸発現系は、患者における発現のために必要なDNA配列(例えば、適切なプロモーターおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、その細胞表面上にポリペプチドの免疫原性部分を発現するか、またはそのようなエピトープを分泌するかする細菌(例えば、Bacillus−Calmette−Guerrin)の投与を含む。1つの好ましい実施形態において、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアもしくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を使用して導入され、これは、代表的に、非病原性(欠損)複製能のあるウイルスの使用を含む。例示的な系は、例えば、Fisher−Hochら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:317−321,1989;Flexnerら、Ann.N.Y.Acad.Sci.569:86−103,1989;Flexnerら、Vaccine 8:17−21,1990;米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、同第および5,017,487号;WO89/01973;米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;欧州特許第0,345,242号;WO91/02805;Berkner,Biotechniques 6:616−627,1988;Rosenfeldら、Science 252:431−434,1991;Kollsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:215−219,1994;Kass−Eislerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11498−11502,1993;Guzmanら、Circulation 88:2838−2848,1993;ならびにGuzmanら、Cir.Res.73:1202−1207,1993に開示される。このような発現系にDNAを組込むための技術は、当業者に周知である。
あるいは、DNAは、例えば、Ulmerら、Science 259:1745−1749,1993およびCohenによって概説される,Science 259:1691−1692,1993において記載されるように「裸の」DNAであり得る。裸のDNAの取り込みは、細胞に効率的に輸送される生体分解性ビーズ上にDNAをコーティングすることによって増大され得る。ワクチンが、所望される場合、ポリヌクレオチド成分およびポリペプチド成分の両方を含み得ることは明らかである。
さらに、ワクチンが、所望のポリヌクレオチド抗原、ポリペプチド抗原および/または炭水化物抗原の薬学的に受容可能な塩を含み得ることは明らかである。例えば、このような塩は、薬学的に受容可能な非毒性塩基から調製され得、この非毒性塩基は、有機塩基(例えば、1級アミンの塩、2級アミンの塩、および3級アミンの塩、ならびに塩基性アミノ酸)および無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩)を含む。
本発明のアジュバント系は、投与される場合、広い範囲の投薬量および広い範囲の割合にわたって強いアジュバント効果を示す。
各ワクチン用量における抗原の量は、代表的なワクチンにおける、有意な有害な副作用のない、免疫保護応答を誘導する量として、一般的に選択される。このような量は、どのような特異的抗原が使用されるか、そして抗原がどのように提示されるかに依存して、変化する。一般的に、各用量は、約1〜1000μgのタンパク質、最も代表的には約2〜100μgのタンパク質、好ましく約5〜50μgのタンパク質を含むことが予想される。もちろん、投与される投薬量は、年齢、体重、現在の処置の種類、および、もしあれば、投与される抗原の性質に依存し得る。
本発明の所定の量のワクチン組成物の免疫原性活性は、例えば、ワクチン組成物を使用して、抗原に対する抗体の力価の増加をモニタリングすることによって、容易に決定され得る(Dalsgaard,K.Acta Veterinia Scandinavica 69:1−40(1978))。別の共通の方法は、種々の量のワクチン組成物を皮内的にCD−1マウスに注射する工程、後にマウスから血清を回収する工程、および、例えばELISAによって抗免疫原抗体に対して試験する工程を包含する。これらおよび他の類似のアプローチは、当業者に明らかである。
抗原は、感染症、自己免疫疾患、状態、癌、病原、または所定のワクチン組成物で処置されるべき疾患に依存して、本質的に任意の所望の供給源に由来し、そして/または単離され得る。例として、抗原は、ウイルス供給源(例えば、インフルエンザウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ヒトHIV−1、HIV−2、2型単純ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、もしくはE型肝炎ウイルス、RSウイルス、ヒトパピローマウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、または口蹄疫ウイルス)に由来し得る。例示的な抗原はまた、細菌供給源(例えば、炭疽、ジフテリア、ライム病、マラリア、結核、Leishmaniasis、T.cruzi、Ehrlichia、Candidaなど)または原生動物(例えば、Babeosis bovisまたはPlasmodium)に由来し得る。抗原は、代表的に、天然アミノ酸または合成アミノ酸(例えば、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質の形態)からなるか、ポリサッカリドからなり得るか、あるいはこれらの混合物からなり得る。例示的な抗原は、天然供給源から単離され得るか、固相合成の方法によって合成されるか、または組換えDNA技術の方法によって得られ得る。
別の実施形態において、腫瘍抗原は、癌の予防および/または治療のために、本発明のワクチン組成物中で使用される。腫瘍抗原は、非腫瘍組織に比べて、腫瘍細胞において差示的に発現される表面分子である。腫瘍抗原は、正常細胞と免疫学的に異なる腫瘍細胞を作製し、ヒト癌に対する診断標的および治療標的を提供する。腫瘍抗原は、膜タンパク質または細胞表面上の糖タンパク質もしくは糖脂質の変更された炭水化物分子のいずれかとして、特徴付けられる。癌細胞は、しばしば、これらの表面上に特徴的な腫瘍抗原(例えば、短縮型上皮増殖因子、葉酸結合タンパク質、上皮ムチン、メラノフェリン、癌胎児抗原、前立腺特異的膜抗原、HER2−neu)を有し、これらは、治療的癌ワクチンにおける使用のための候補である。腫瘍抗原が正常であるかまたは体の正常な成分に関連するので、免疫系は、しばしば、これらの抗原に対する有効な免疫応答を増やし、腫瘍細胞を破壊するのを失敗する。これらの応答を達成するために、本明細書中に記載されるアジュバント系が、使用され得る。結果として、外因性タンパク質は、内因性抗原をプロセスするための経路に入り得、細胞分解性T細胞または細胞傷害性T細胞(CTL)の産生を導く。このアジュバント効果は、抗原特異的CTLの産生を容易にする。この抗原特異的CTLは、免疫のために使用される腫瘍抗原を表面上に保持する腫瘍細胞を探し、そして破壊する。このアプローチが使用され得る例示的な癌の型としては、前立腺、結腸、胸部、卵巣、膵臓、脳、頭頚部、黒色腫、白血病、リンパ腫などが挙げられる。
1つの実施形態において、ワクチン組成物中に存在する抗原は、異種抗原ではなく自己抗原である(すなわち、このワクチン組成物は、自己免疫疾患に指向される)。自己免疫疾患の例としては、1型糖尿病、従来の器官特異的自己免疫、神経疾患、リウマチ疾患/結合組織疾患、自己免疫性血球減少、および関連自己免疫疾患が挙げられる。このような従来の器官特異的自己免疫としては、甲状腺炎(グレーヴズ病および橋本甲状腺炎)、胃炎、副腎炎(アジソン病)、卵巣炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、性腺機能不全、上皮小体機能低下症、脱毛症、吸収不良症候群、悪性貧血、肝炎、抗レセプタ抗体疾患(anti−receptor antibody disease)および白斑が挙げられる。このような神経疾患としては、精神分裂病、アルツハイマー病、うつ病、下垂体機能低下症、尿崩症、乾燥症候群、および多発性硬化症が挙げられ得る。このようなリウマチ疾患/結合組織疾患としては、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)もしくは狼瘡、強皮症、多発性筋炎、炎症性腸疾患、皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、脈管炎、乾癬性関節炎、剥脱性乾癬性皮膚炎、尋常性天疱瘡、サムター症候群が挙げられ得る。他の自己免疫性関連疾患としては、自己免疫性ぶどう膜網膜炎(autoimmune uvoretinitis)、糸球体腎炎、心筋梗塞心臓切開後症候群(post myocardial infarction cardiotomy syndrome)、肺ヘモジデリン沈着症、アミロイドーシス、サルコイドーシス、アフタ性口内炎、および他の免疫関連疾患(本明細書中に示され、そして関連分野において公知であるような疾患)が挙げられ得る。
1つの実施形態において、この抗原は、アジュバント(例えば、式Iの化合物)と共有結合して分離した分子を生成し、この分子は、抗原に対して意外にも予想外に増強されたアジュバント効果を示し、このアジュバント効果は、成分(すなわち、抗原、AGP、およびサポニン)の混合物の場合のような、共有結合の非存在下において達成可能なアジュバント効果よりも大きい。共有結合は、官能基を介する反応によって(例えば、式Iの化合物の場合、カルボン酸基、ヒドロキシル基またはアルデヒド官能性を介して)、達成され得る。このような化合物とともに鉱物塩アジュバントを組み込むことによって、このように共有結合した抗原について、さらに増強されたアジュバント効果が達成され得る。この鉱物塩アジュバントは、好ましくは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムを含むが、他の公知の鉱物塩アジュバント(例えば、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛または水酸化カルシウム)が使用され得る。
このアジュバントは、他のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含み得る。ワクチンが、本明細書中に提供されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドの薬学的に受容可能な塩を含み得ることは、明白である。このような塩は、有機塩基(例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミンの塩および塩基性アミノ酸)ならびに無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩)を含む、薬学的に受容可能な無毒性塩基から調製され得る。
本発明のワクチン組成物は、任意の適切な投与の方法で処方され得、従って、例えば、局所投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、膣内投与、皮膚上(epicutaneous)投与、舌下投与、頭蓋内投与、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋内投与、または吸入を介する方法を包含して投与され得る。非経口的投与(例えば、皮下注射)のために、このキャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与のために、任意の上記のキャリアまたは固体キャリア(例えば、マンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、セルロース、グルコース、ショ糖、および炭酸マグネシウム)が使用され得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリラクテートポリグリコレート(polylactate polyglycolate))はまた、本発明の薬学的組成物のためのキャリアとして使用され得る。適切な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号;同第5,075,109号;同第5,928,647号;同第5,811,128号;同第5,820,883号;同第5,853,763号;同第5,814,344号および同第5,942,252号に開示され、これらの開示内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。改変B型肝炎コアタンパク質キャリア系(modefied hepatitis B core protein carrier system)もまた適切であり、例えばWO99/40934に記載され、そしてその中に示される引用文献は、全てが本明細書中に参考として援用される。米国特許第5,928,647号(この開示内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、粒子−タンパク質複合体を含むキャリアもまた使用され得、これらのキャリアは、宿主における第I級−制限細胞毒性Tリンパ球応答を誘導可能である。
1つの例示的な実施形態において、免疫応答を誘発するために、これらのワクチン処方物を、粘膜(特に口腔、そして好ましくは舌下部位)に投与する。多くの場合、口腔投与は、非侵襲性投与技術によって提供される容易性および利便性に起因して、従来の非経口的送達よりも好まれ得る。さらに、このアプローチは、粘膜免疫(これは、しばしば伝統的な非経口的送達による達成が困難であり得る)を誘発するための手段をさらに提供し、そして、空気伝搬性の病原体および/またはアレルゲンからの保護を提供し得る。口腔投与のさらなる利点は、特に小児の適用のために、またはアレルギー脱感作療法のような長期にわたって多数の注射を従来的に必要とする適用のために、舌下ワクチン送達を用いて患者のコンプライアンスが改善され得ることである。
ワクチン組成物はまた、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化薬、静菌薬、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、処方物を、レシピエントの血液と、等張性、低張性もしくは弱い高張性にする溶質、懸濁剤、濃化剤および/または保存薬を含有し得る。あるいは、本発明のワクチン組成物は、凍結乾燥剤(lyophilisate)として処方され得る。化合物はまた、周知の技術を使用して、リポソーム内にカプセル化され得る。
本発明のワクチン組成物はまた、他のアジュバントまたは免疫エフェクター(immunoeffector)を含有し得る。適切なアジュバントは、例えば、以下として市販されている:フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);Merck Adjuvant 65(Merck and Company、Inc.、Rahway、NJ);AS−2(SmithKline Beecham);鉱塩(例えば、アルミニウム、シリカ、カオリンおよび炭素);アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウムゲル(alum)、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、およびAl(OH)3);カルシウム塩(例えば、Ca3(PO4)2)、鉄および亜鉛;アシル化チロシンの不溶性懸濁物;アシル化糖;カチオン性またはアニオン性の誘導体化多糖類;ポリヌクレオチド(例えば、ポリIC酸およびポリAU酸);ポリホスファジン(polyphosphazene);シアノアクリレート;ポリメラーゼ−(DL−ラクチド−co−グリコシド);生分解性ミクロスフェア;リポソーム;リピドAおよびその誘導体;モノホスホリルリピドA;ヒト型結核菌由来のワックスD、ならびに挫瘡プロピオンバクテリウム、百日咳菌、およびブルセラ属のメンバーにおいて見出される物質);ウシ血清アルブミン;ジフテリアトキソイド;テタヌストキソイド;エデスチン;キーホールリンペットヘモシアニン;Pseudomonal Toxin A;コレラゲノイド(choleragenoid);コレラ毒素;百日咳毒素;ウイルスタンパク質;ならびにQuil A。アミノアルキルグリコサミンホスフェート化合物もまた、使用され得る(例えば、WO 98/50399、米国特許第6,113,918号(これは、USSN08/853,826から発行された)、およびUSSN09/074,720を参照のこと)。さらに、サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはインターロイキン−2、インターロイキン−7もしくはインターロイキン−12)、インターフェロン、または腫瘍壊死因子のようなアジュバントもまた、アジュバントとして使用され得る。タンパク質およびポリペプチドのアジュバントは、当業者に周知の方法に従って、天然の供給源から得られ得るか、または組換え供給源から得られ得る。組換え供給源から得られる場合、このアジュバントは、その分子の少なくとも免疫刺激性部分を含むタンパク質フラグメントを含み得る。本発明の実施において使用され得る他の公知の免疫刺激性高分子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:多糖類、tRNA、非代謝性合成ポリマー(例えば、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、4’,4−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸と4−ニトロ−2−アミノ安息香酸との混合重縮合物(mixed polycondensate)(相対的に高い分子量を有する)(Sela、M.、Science 166:1365−1374(1969)を参照のこと)、または糖脂質、脂質もしくは糖類。
本明細書中で提供されるワクチン組成物において、アジュバント組成物は、好ましくは、Th1型に優性な免疫応答を誘導するように設計される。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNF−α、IL−2およびIL−12)は、投与される抗原に対する細胞媒介性免疫応答の誘導を支持する傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10)は、体液性免疫応答の誘導を支持する傾向がある。本明細書中で提供されるようなワクチンの適用後、患者は、Th1型応答およびTh2型応答を誘導する免疫応答を支持する。応答が優性にはTh1型である、好ましい実施形態において、Th1型サイトカインのレベルは、Th2型サイトカインのレベルよりも高い程度まで増加する。これらのサイトカインのレベルは、標準的なアッセイを使用して容易に評価され得る。サイトカインのファミリーの総説については、MosmannおよびCoffman、Ann.Rev.Immunol.1989,7:145−173を参照のこと。
本明細書中に記載される組成物は、徐放性処方物(すなわち、投与後に、化合物の遅い放出をもたらす、カプセル、スポンジまたはゲル(例えば、多糖類から構成される))の一部として投与され得る。このような処方物は、一般に、周知の技術を使用して調製され得(例えば、Coombesら、Vaccine 14:1429−1438,1996)、そして例えば、経口投与、直腸投与もしくは皮下移植投与され得るか、または所望の標的部位での移植によって投与され得る。徐放性処方物は、キャリアマトリクス中に分散され、そして/または速度制御膜によって囲まれたレザバ内に含まれる、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を含有し得る。このような処方物内で使用するためのキャリアは、生体適合性であり、そしてまた、生分解性でもあり得る。好ましくは、この処方物は、相対的に一定レベルの活性成分の放出を提供する。このようなキャリアとしては、以下が挙げられる:ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロース、デキストランなどの高分子。他の遅滞放出性キャリアとしては、以下が挙げられる:超分子バイオベクター(supramolecular biovector)(これは、非液体親水性コア(例えば、架橋多糖類または架橋オリゴ糖)、および必要に応じて、両親媒性化合物(例えば、リン脂質)を含む外側層を含む)(例えば、米国特許第5,151、254号およびPCT出願WO 94/20078、WO/94/23701およびWO96/06638を参照のこと)。徐放性処方物内に含まれる活性化合物の量は、移植部位、放出速度および放出の予測持続時間、ならびに処置または防止されるべき状態の性質に依存して、変更される。
任意の種々の公知の送達ビヒクルが、薬学的組成物およびワクチン内で用いられ、細胞を標的化する抗原特異的免疫応答の生成を促進し得る。送達ビヒクルとしては、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球および効率的なAPCとなるように操作され得る他の細胞)が挙げられる。このような細胞は、抗原を掲示する能力を増加するように遺伝学的に改変され、T細胞応答の活性化および/もしくは維持を改善し、それ自体が抗標的効果を有し、そして/またはレシーバ(すなわち、一致したHLAハプロタイプ)と免疫学的に適合性であり得るが、そのような必要はない。APCは、一般に、種々の生物学的流体および器官(腫瘍および腫瘍周囲組織を含む)のいずれかから単離され得、これらは、自己細胞、同種異系細胞、同系細胞または異種細胞であり得る。
本発明の特定の好ましい実施形態は、抗原提示細胞として、樹状細胞またはその前駆体を使用する。樹状細胞は、かなり強力なAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature 392:245−251,1998)、予防的または治療的な抗腫瘍免疫を誘発するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann.Rev.Med.50:507−529,1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞は、それらの代表的な形状(インサイチュにおいて星状であり:インビトロで可視の、顕著な細胞質プロセス(樹状突起))、高効率で抗原を取り込み、プロセスし、そして提示するそれらの能力、ならびに未処置のT細胞応答を活性化させるそれらの能力に基づいて同定され得る。もちろん、樹状細胞は、インビボにおいてもエキソビボにおいても樹状細胞について通常見出されない、特異的な細胞表面レセプターまたはリガンドを発現するように遺伝子操作され得、このように改変された樹状細胞は、本発明によて企図されている。樹状細胞の代替として、分泌されたビヒクルである抗原充填樹状細胞(エキソソーム(exosome)と呼ばれる)が、ワクチン内で使用され得る(例えば、Zitvogelら、Nature Med.4:594−600,1998を参照のこと)。
樹状細胞および前駆体は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤性細胞、腫瘍周囲(peritumoral)組織浸潤性細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または任意の他の適切な組織もしくは流体から得られ得る。例えば、樹状細胞は、サイトカイン(例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFα)の組み合わせを、末梢血から収集された単球の培地に加えることによって、エキソビボで分化され得る。あるいは、末梢血、臍帯血または骨髄から収集されたCD34ポジティブ細胞は、GM−CSF、IL−3,TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドならびに/または樹状細胞の分化、成熟および増殖を誘導する他の化合物を培養培地に加えることによって、樹状細胞に分化され得る。
樹状細胞は、「未熟」細胞および「成熟」細胞として便宜的に分類され、これにより、2つの十分に特徴づけられた表現型の間を簡便に区別できる。しかし、この命名が、分化のあらゆる考えられる中間段階を除外するとみなされるべきではない。未熟樹状細胞は、抗原取り込みおよびプロセシングについて高い能力を有するAPCとして特徴付けられ、これは、Fcγレセプターおよびマンノースレセプターの高い発現と相関する。成熟表現型は、代表的には、これらのマーカーの発現がより低いが、T細胞活性化を担う細胞表面分子(例えば、クラスIおよびクラスII MHC接着分子(例えば、CD54およびCD11)ならびに共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86および4−1BB))の発現が高いことによって特徴付けられる。
APCは、一般に、抗原ポリペプチド(またはそれらの部分もしくは他の改変体)をコードするポリヌクレオチド)で、その抗原ポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分が細胞表面上に発現されるようにトランスフェクトされ得る。このようなトランスフェクションは、エクスビボで生じ得、そしてこのようなトランスフェクトした細胞を含む組成物またはワクチン、および本明細書中に記載のアジュバントは、次いで、治療目的で使用され得る。あるいは、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的化する遺伝子送達ビヒクルが、患者に投与されて、インビボで生じるトランスフェクションを生じ得る。樹状細胞のインビボおよびエクスビボのトランスフェクションは、例えば、当該分野で公知の任意の方法(例えば、WO97/24447に記載の方法、またはMahviら、Immunology,and cell Biology 75:456−460,1997によって記載の遺伝子銃アプローチ)を用いて一般に実施され得る。樹状細胞の抗原ローディングは、樹状細胞または前駆細胞を、抗原ポリペプチド、DNA(裸のDNAもしくはプラスミドベクター内のDNA)またはRNAと;または抗原発現組換え細菌またはウイルス(例えば、ワクシニアベクター、鶏痘ベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)とインキュベートすることによって達成され得る。ローディング前に、ポリペプチドは、T細胞ヘルプ(例えば、キャリア分子)を提供する免疫学的パートナーに共有結合され得る。あるいは、樹状細胞は、別個にまたはこのポリペプチドの存在下で、非共有結合免疫学的パートナーでパルスされ得る。
1つの実施形態では、このワクチン組成物は、式Iの化合物を含むリポソーム小胞を含む。リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から生成される。リポソームの調製のための手順は、当業者に周知である。式Iの化合物を含む小胞を形成し得る任意の脂質が使用され得る。臨床的適用のために、脂質は、非毒性であり、生理学的に受容可能であり、そして代謝可能であることが望ましい。臨床可能性を有する一般の二重層形成脂質は、リン脂質、脂肪酸、スフィンゴ脂質、糖スフィンゴ脂質、およびステロイドである。グリセロール含有リン脂質は、臨床有用性を有するリポソーム処方物の最も一般的に用いられる成分である。1つ一般的に用いられる例は、ホスファチジルコリンまたはレシチンである。ステロイドコレステロールおよびその誘導体は、しばしば、リポソーム膜の成分として含まれる。リポソームが凝集および融合する傾向は、処方物中に少量の酸性または塩基性の脂質を含有させることにより制御され得る。リン脂質を含有するリポソームの特性は、リン脂質の化学性によって決定される。重要な考慮条件は、炭化水素鎖長、炭化水素鎖の不飽和度、炭化水素鎖の分枝の程度、およびシステムの温度である。
多重層リポソームは、減圧下でのエバポレーションによって脂質の混合物を薄層として堆積し、続いて有機溶媒を有するかまたは有さない抗原を含有する過剰容量の水性緩衝液を用いて分散させることによって作製され得る。別の方法は、小さな単層リポソームと抗原を含有する水相とを混合し、続いて凍結乾燥することである。多重層リポソームは、凍結乾燥生成物が、通常、少量の蒸留水で、再水和される場合に、形成される。このプロセスにおいて用いられるべき小さな単層リポソームは、水性媒体中で脂質を分散させ、続いて機械的分散手段(例えば、音波処理、高圧デバイスの使用、または溶媒注入法)を行うことによって生成される。大きなサイズおよび中間サイズの単層リポソームもまた、従来の技術(界面活性剤透析、高圧下で小さな孔サイズの膜を通した抽出、凍結融解およびその後の緩慢な膨潤、脱水およびその後の再水和および希釈、またはカオトロピックイオンの存在下での脂質の透析を含む)によって生成され得る。リポソームのサイズは、分画手順(例えば、遠心分離またはサイズ排除クロマトグラフィー)、ホモジナイゼーション、またはキャピラリー孔膜抽出によってより均一にされ得る。
これらのワクチンは、哺乳動物における抗原の免疫原性を誘導または増強する方法において使用され得る。このような方法は、抗原ならびにAGP(例えば、式Iの化合物)およびサポニン(例えば、QS−21、式II、式IIa、または式IIbなどの化合物)を含有する有効量のワクチンアジュバント組成物を含むワクチン組成物を哺乳動物に投与する工程を包含する。この関係で使用される場合、「ワクチンアジュバント組成物」は、外因性抗原に対する免疫応答を増強する式Iの化合物を含む任意の組成物を含む。このような「ワクチンアジュバント組成物」としては、生物分解性のマイクロスフィア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)およびリポソームが挙げられる。例えば、Fullerton、米国特許第4,235,877号を参照のこと。ワクチン調製物は、一般的に、例えば、M.F.PowellおよびM.J.Newman編,「Vaccine Design(the subunit and adjuvant approach)」,Plenum Press(NY,1995)に記載されている。ワクチンは、抗体免疫および/または細胞免疫を生成するために設計され得る。