JP2004503455A - 元素状燐から燐オキシ酸を製造する方法および装置 - Google Patents
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Abstract
水との反応による燐の酸化を促進するのに有効な触媒の存在下において、元素状燐を水に接触させることを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。中度攪拌および低厳密条件における、Pdのような貴金属触媒の使用が、P(III)オキシ酸を高選択性において製造するのに有効である。他の白金金属、ならびに、白金金属、IB族金属、およびVIII族金属の、酸化物、塩、燐化物、および配位化合物も、触媒として使用することができる。燐酸および亜燐酸を製造する種々の装置および方法も開示される。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、燐オキシ酸の製造、特に、水と元素状燐の触媒反応によるオキシ酸の新規製造方法に関する
【0002】
(背景技術)
燐のオキシ酸は、例えば、除草剤、殺虫剤、化学肥料、難燃剤、および可塑剤のような種々の用途を有する他の燐種の合成に重要な前駆物質である。
【0003】
化学肥料の製造に使用される燐酸は一般に、燐灰土を硫酸によって酸性化(acidulation)することによって製造され、その結果、副生成物または廃棄物質として処理しなければならない副生成物石膏または硫酸カルシウム半水化物の顕著な発生を生じる。燐灰土に含有されるフッ化物の酸性化によるHFの発生による環境問題および腐蝕問題も生じる。
【0004】
高純度燐酸は、元素状燐の五酸化燐への酸化、および稀燐酸中における五酸化燐の吸収によって製造される。この方法は、3500°Fより高い温度において燐を燃焼させて五酸化燐にする燃焼炉を必要し、大規模な燐酸の製造だけに使用される方法である。
【0005】
亜燐酸は一般に、三塩化燐のような燐のハロゲン誘導体を加水分解することによって製造される。ハロゲン誘導体は元素状燐から製造される故に、元素状燐から直接に燐酸を製造することによって経済的利益が得られる。直接的製造は、ハロゲン含有燐出発物質の使用およびハロゲン含有副生成物の発生を避けることによって、環境的利益も得ることができる。
【0006】
Engelによって「Oxidation of Hypophosphorous Acid by Hydorgenated Palladium in the Absence of Oxygen」、Compt. Rend. Acad. Sci., 1890, pp.786−787に記載されているように、パラジウム触媒の存在下において次亜燐酸を水で酸化することによっても、燐酸を製造することができる。しかし、ホスフィンまたは他の好ましくない副生成物を生成せずに、次亜燐酸出発物質を低コストで製造する工業的方法は容易に得られない。
【0007】
Christomanos(Z. Anorg. Chem., 41, 305−14, 1904)は、亜燐酸およびCuホスフィドへの金属誘導不均化による、有機溶液における元素状燐の分析的測定方法を記載している:
P4+CuSO4+6H2O→Cu3P2+3H2SO4+2H3PO3
元素状燐とCu2NO3との比較し得る反応も記載されている。化学量論的反応が記載されているに過ぎない。空気中の酸素が、酸化作用を有することが記載されている。4時間後、Cuホスフィドが消失し、溶液はCuホスフェートだけを含有する。
【0008】
白燐、黄燐または四燐(P4)としても既知の元素状燐同素体は、種々の燐種の合成の潜在的出発物質(a potential starting point)である。 白燐の四面体構造は、6個の燐−燐結合を有し、燐反応における中間体として存在する多くの反応性種を与えることができる。理解されるように、四燐は燐酸の主要な工業的製造方法の1つにおける原料である。中間ハロゲン化を行わない他の燐オキシ酸の製造の出発物質として、四燐を使用することができれば、特に反応を比較的緩慢な条件において行うことができる場合に、かなりのコスト的利益が得られる。しかし、燐と酸素の発熱反応において、P(V)オキシド、即ち燐酸の無水物の生成が不足している反応を制御するのは困難である。
【0009】
Ipatievの米国特許第1848295号および第1895329号は、高い温度および圧力における、水を使用する液体燐の触媒酸化による燐酸の製造方法を開示している。触媒は、銅およびニッケルの塩を包含し、銅またはニッケルホスフィドが反応において生成される。Ipatievは、特に反応の初期において、酸化反応の好ましくない副生成物として亜燐酸が生成されることを記載しているが、反応混合物中に存在する亜燐酸の部分、または反応のある時点において存在する燐および燐酸の相対的割合を記載していない。Ipatievは、反応を300℃またはそれより高い温度で行うのが好ましいことを記載しているが、前記米国特許第1895329号は、副生成物燐化銅が、反応の終わりに燐相に見い出される200℃における例を記載している。
【0010】
多くの文献が、600℃より高い温度、一般に1000℃より高い温度における、水を使用する燐の触媒蒸気相酸化による燐酸の製造を記載している。これらの反応に使用される種々の触媒が報告されており、銅、銀、および他の種々の金属、特にIB族およびVIII族金属、いくつかのVI族金属(例えば、Cr、Mo、W、およびU)、いくつかのVII金属(例えば、Mn)、および/またはそれらの酸化物、塩および/または燐化物を包含する。反応帯域からの触媒の浸出を防止するために、例えば、TiまたはZrのピロホスフェートを包含する、活性触媒の種々の担体の使用が提案されている。例えば、Liljenrothの米国特許第1605960号は、反応の触媒として、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、またはPtのような貴金属も記載している。
【0011】
(発明の概要)
本発明の目的は、燐のオキシ酸の向上した製造方法を提供し;燐の低級オキシ酸、特に亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;高選択性において、亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;高収量において、亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;穏当に高い濃度で、亜燐酸を生成するように操作することができるそのような方法を提供し;環境への排出を最少限にして、操作することができるそのような方法を提供し;ハロゲン含有原料を使用しないか、またはハロゲン化副生成物を生成しないそのような方法を提供することである。
【0012】
従って、簡単に言えば、本発明は、200℃より低い温度における、水を使用する触媒反応によって、元素状燐を酸化することを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、低級燐酸化生成物を含んで成る酸化反応混合物を製造するのに有効な条件における水との反応によって、元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成る亜燐酸の製造方法であって、該反応混合物におけるP(V)種の濃度に対するP(I)およびP(III)種の合計濃度の比率が少なくとも約5である、製造方法にも関する。
【0014】
本発明は、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、約20気圧未満の圧力において、凝縮相(condensed phase)元素状燐を水に接触させることを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。元素状燐が、水との反応によって触媒的に酸化される。
【0015】
本発明は、触媒反応帯域における水との触媒反応によって元素状燐を酸化して、該反応帯域の単位容量(m3)当たり少なくとも0.01kg/時の速度で低級燐酸化生成物を生成することを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。
【0016】
本発明は、連続触媒反応帯域において元素状燐を触媒的に酸化して、少なくとも1×10−7kg/時−g触媒の速度で低級燐酸化生成物を生じることを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。
【0017】
本発明はさらに、水を使用して元素状燐を触媒的に酸化し、それによって、少なくとも5重量%の低級燐酸化生成物を含んで成る水性反応混合物を製造することを含んで成る亜燐酸の製造方法であって、燐と水の反応が、水相および元素状燐を含有する凝縮相を含んで成る不均一反応系において行われ、該凝縮相が反応のための触媒を含有する、製造方法にも関する。
【0018】
本発明は、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法であって、触媒の活性部位が、触媒酸化反応の間に、水性相に優先して燐を含んで成る凝縮相に接触するように維持される製造方法にも関する。
【0019】
本発明はさらに、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法であって、触媒酸化反応が、該元素状燐相において優先的に起こる製造方法にも関する。
【0020】
本発明はさらに、元素状燐を、燐のオキシ酸へ酸化する装置にも関する。該装置は、水性相試薬を、四燐を含んで成る実質的に水不混和性の凝縮相に接触させる液体/液体接触帯域;および、水不混和性凝縮相を、水との反応による元素状燐の酸化のための触媒に接触させる触媒反応帯域;を有して成る。
【0021】
本発明は特に、元素状燐を含有する実質的に水不混和性の液体の溜め(reservoir)、および元素状燐を含有する該液体の表面を流れるように、水性液体を該溜めに導入する手段を有して成る装置に関する。水性相が水不混和性液体の表面を流れる際に、水が水性相から元素状燐を含んで成る相に移動し、燐酸化生成物が、元素状燐を含んで成る相から水性相に移動する。溜めは、反応に充分な、液相間の界面接触領域を与えるようになっている。触媒床は、界面から離れた水不混和性液体と接触する。触媒床は、水との反応による元素状燐の酸化のための触媒を含んで成る。
【0022】
本発明は特に、水性相および元素状燐を含んで成る分離相のための反応物溜めを有して成る装置に関する。溜め内の手段は、水性相と元素状燐を含んで成る相の間の物質移動を促進する。溜めから離れている固定触媒床は、反応のための触媒を含んで成る。該装置はさらに、元素状燐を含んで成る相を、溜めと触媒床の間に循環させる手段を有して成る。
【0023】
本発明はさらに、元素状燐および水との反応による燐の酸化のための触媒の混合物の触媒スラリータンク、ならびに向流液体/液体接触帯域を含んで成る不均一液相反応器、を有して成る、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための装置にも関する。液相反応器は、水性液体の入口、燐オキシ酸の水溶液の出口、燐相の入口、および燐相の出口を有する。該装置はさらに、液相反応器の燐相出口、触媒スラリータンク、および反応器の燐相入口の間に、燐相を循環させる手段も有して成る。
【0024】
本発明はさらに、燐のオキシ酸の製造に使用するのに有効な組成物にも関する。該組成物は、元素状燐および水との反応による元素状燐の酸化のための触媒を含有する混合物を含んで成る。
【0025】
本発明は、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための触媒を含んで成る固定触媒床がその中に配置される反応器を有して成る、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための装置にも関する。触媒床、ならびに反応器の中および触媒床の外のリフトレッグを、反応器内に配置して、触媒床の底部から循環される燐相によるリフトレッグの底部へのアクセスを与える。該装置はさらに、反応器中の燐相より上の水性相からの水性液体を、リフトレッグの上端と液体流動伝達する反応器のための出口と、燐相内の該リフトレッグの下端と液体流動伝達する反応器への戻り管(return)との間に、循環させる手段を有して成り、それによって、リフトレッグを通る水性液体の循環が、相間の液体/液体接触を与え、触媒床を通る燐相の循環を生じさせるのに有効である。
【0026】
本発明はさらに、その温度において、P(V)種の生成率に対するP(I)およびP(III)種の合計生成率の比率が、回分反応システムにおいて元素状燐の25%転化において3.0に低下する閾値温度より低い温度における、水を使用する触媒反応によって、元素状燐を酸化することを含んで成る燐オキシ酸の製造方法にも関する。
【0027】
本発明は、水、元素状燐を含有する相、および反応のための触媒を含んで成る触媒反応帯域における、水との反応によって元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法にも関する。音波および/またはマイクロ波エネルギーが、反応の間に反応帯域に導入される。
【0028】
他の目的および特徴は、一部が明らかであり、一部が下記に記載にされる。
【0029】
(図面の説明の概略)
図1は、本発明の装置、および本発明の方法の工程の概略図を示す。
図2〜図10は、本発明の装置の選択的実施態様、および方法の工程の概略図を示す。
図11は、水性相、四燐相、およびPd触媒を含んで成る不均一反応系における、反応混合物の累積選択性のプロットであり、P4の枯渇前および後の反応の進行を示す。
【0030】
図12は、触媒が燐相に組み込まれている、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系における、温度およびPd触媒添加量の種々の組み合わせに関する、反応時間に対する、四燐からのPOxの収率のプロットを示す。
図13は、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系において、密閉オートクレーブ中、90℃の反応温度、および燐原子に基づき2モル%のPd触媒添加量における、時間に対する攪拌速度のプロット、および、時間に対する反応器圧および転化のプロットを示す。
【0031】
図14は、燐原子に基づき1.4モル%Cuの触媒添加量において、炭素触媒上22.5%Cu/1.8%Pdを使用する90℃における四燐の水での触媒酸化における、時間に対する、選択性および収率のプロットを示す。
図15は、図14の時間に対する選択性のデータを、炭素担体上15%Cu/3%Ptを含んで成る触媒を使用する以外は図14と同じ条件において行われる反応における時間に対する選択性のデータと比較する、2つのプロットを示す。
【0032】
図16は、四燐によって系中で還元されるCuCl2水化物触媒を使用する、90℃における四燐の水での触媒酸化に関する、時間に対する累積選択性および収量のプロットを示す。
図17は、燐原子に基づき1.8モル%Cuの触媒添加量において炭素上22.5%Cu/1.8%Pdを使用して、生産性および選択性における温度の効果を評価するために行われた実験に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットを示す。
【0033】
図18は、図17に示される反応に関する、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(転化速度)のプロットを示す。
図19は、図17に示される反応に関する、時間に対する補正反応圧(corrected reaction pressure)のプロットを示し、図19における挿入図は、開始温度からの増加の1/10に対する対数(r1/r2)のプロットを示し、r1は、開始温度におけるP4の酸化速度であり、r2は、横座標に示される温度増加値から求められる温度における酸化速度である。
【0034】
図20は、Pdを触媒として使用する水での触媒水性相酸化による、次亜燐酸の亜燐酸への転化の最後の反応における、時間に対する、累積選択性およびポイント−ワイズ(point−wise)のプロットを示す。
図21は、初期の非攪拌条件および次の攪拌条件における、水との触媒反応による、四燐の酸化における、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性のプロットを示す。
図22は、2種類の反応条件における、時間に対するP(I)+P(III)選択性のプロットを示し、1つの条件は、P4の存在下に90℃において燐化銅(I)と水の混合物を攪拌することによって得られ、もう1つ条件は、P4の不在下に同様の条件において得られる。
【0035】
図23は、反応において燐化銅の代わりに隣化ニッケルを使用して、実質的に図22と同様の方法によって得られるプロットを示す。
図24は、固定床に含有されるのではなく燐相に分散される触媒を使用する、図8と同様の工程図を示す。
図25は、例41の音波処理反応系における、時間に対する、次亜燐酸、亜燐酸、および燐酸濃度のプロットを示す。
【0036】
図26は、例41の反応系における、時間に対する逆算燐転化のプロットを示す。
図27は、例41の反応系における、時間に対する選択性のプロットを示す。
図28は、例41の反応系における、時間に対する反応速度のプロットを示す。
【0037】
図29/29A〜図32/32Aは、それぞれ例115〜118の実験に関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットを示す。
図33は、例115〜117の反応に関する、時間に対する、点から点の見掛反応速度(apparent point to point reaction rates)のプロットを示す。
一致する符号は、いくつかの図面において一致する部分を示す。
【0038】
(好ましい実施態様の説明)
本発明によれば、元素状燐、特に四燐を、反応の触媒の存在下において水と反応させて、選択的にP(III)およびP(I)燐オキシ酸を生成し得ることが見い出された。次亜燐酸(P(I))から亜燐酸(P(III))への触媒酸化は当分野において既知であるが、元素状燐が、触媒の存在における水での酸化による次亜燐酸および/または亜燐酸の製造において、主要基質として作用することが見い出された。本発明の反応、および亜燐酸から燐酸へのさらなる転化が、下記式によって示される:
【0039】
【化1】
【0040】
反応は、本質的に順に進行すると考えられる、即ち:
【化2】
【0041】
その反応において、いくらかのホスフィンも生成され、不均化段階が反応機構に含まれることを示す、即ち:
【化3】
【0042】
次に、ホスフィンの有意部分のP(I)酸への触媒酸化が行われると考えられる:
【化4】
【0043】
正確な機構がどのようなものであるにしても、下記のような好ましい条件において反応が行われる場合に、ホスフィン残基は、触媒を使用しないアルカリ性の系において得られる既知の不均化によって得られるホスフィンと比較して、少なくすることができる。
【0044】
本発明の方法によれば、元素状燐、好ましくは四燐を、反応のための触媒の存在下において水と接触させる。P(III)オキシ酸、P(I)オキシ酸、またはそれらの混合物の製造に選択的な条件において、反応を行うのが好ましい。
【0045】
本明細書において使用される「P(I)種」という用語は、+1の酸化状態において燐を含んで成る燐化合物、イオン、または残基を意味し、「P(III)種」という用語は、+3の酸化状態において燐を含んで成る化合物、イオン、または他の成分を意味する。本発明の触媒反応において生成されるP(I)およびP(III)種は、亜燐酸、次亜燐酸、および/またはそれらの共役塩基、即ち、それぞれH2PO3 −1およびH2PO2 −1、および/またはこれらのアニオンの他の種々の共役体、例えば、HPO3 −2、PO3 −3、およびHPO2 −2を包含する。反応混合物の全組成物および反応条件に依存して、他のP(I)および/またはP(III)種が存在する場合もある。本発明の開示において、P(I)およびP(III)オキシ酸および共役塩基、それらの他の共役体、およびP(I)とP(III)オキシ酸の混合物、および/または種々の共役体が、個々に、または集合的に、「低級燐酸化生成物」と称される。
【0046】
元素状燐、好ましくは四燐を含んで成る凝縮相が分離水性液相に接触する、不均一凝縮相反応系において、反応を行うのが好ましい。不均一反応系は、亜燐酸(H3PO3)、H2PO3 −1、HPO3 −2、PO3 −3、次亜燐酸(H3PO2)、H2PO2 −1、および/またはHPO2 −2を主として含んで成る反応生成物混合物の製造に特に好ましい。不均一反応系において、実質的に水不混和性溶媒、好ましくはベンゼンまたはトルエンのような有機溶媒に、元素状燐を溶解させる。四燐を、溶融または分散固体形態において、正味で(neat)装填するのが有利である。あるいは、元素状燐に関して水溶性溶媒を含んで成る均質系において、反応を行うこともできる。好適な水相溶性溶媒は、低級アルコール(C1〜C5)およびイオン液体、即ち、反応温度において液体の塩を包含する。
【0047】
反応系における水/四燐の比率は、そのような反応に関して一般に限定的でないが、所望の選択性の維持に一致する所望の濃度において燐オキシ酸を生成するのに充分な燐を供給するように、制御する必要がある。不均一反応系において、水性相および四燐を含んで成る相の間に充分な界面領域を与え、それによって、反応速度が、物質移動速度によって制限されないようにし、選択性を維持するのに充分な速度において燐相からオキシ酸が取り出されるようにするのが望ましい。便宜上、後者の相を以下に「燐相」と呼ぶ場合もあり、この用語は、正味元素状燐、または実質的に水不混和性溶媒中の元素状燐の溶液を意味すると理解されるものとする。水性相と燐相の間の充分な界面領域は、管理攪拌、および/または下記のような種々の器具配置によって得られる。四燐の酸化は、四燐と、水性相から燐相へ移動する水との反応によって、実質的に燐相(該相からの水素の放出によって示される)において起こると考えられる。燐オキシ酸反応生成物は、界面を通って水性相に戻される。
【0048】
種々の触媒が、本発明の酸化反応に有効である。好ましい触媒は一般に、例えば、白金金属、AgおよびAuのようなIB族金属、VIII族金属、白金金属の酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII属金属の塩、IB族金属の燐化物、およびVIII属金属の燐化物を包含する。本発明のある実施態様においては、触媒が貴金属触媒または貴金属触媒の混合物であるのが好ましい。例えば、パラジム、より好ましくはパラジム黒を含んで成る触媒を使用して、P(V)種に優先してP(I)およびP(III)に酸化する選択性に有効な温度において、高選択性が得られた。特に高い選択性は、銅、燐化銅、酸化銅、銅塩、例えば、塩化銅、硫酸銅、次亜燐酸銅、亜燐酸銅、燐酸銅、または硝酸銅を含んで成る活性相を有する触媒を使用することによって得られる。他の特に好ましい触媒は、ルテニウムおよびロジウムの塩または配位化合物を含んで成る。
【0049】
活性金属の有効表面積を広げ、従って活性部位の有効性(availability)を広げる担体で、活性触媒を任意に担持することができる。種々の従来の触媒担体を使用することによって、一般に広い担体表面積に付着される、触媒の有効活性相表面積を広くすることができ、ある場合には、凝集による表面積の減少を防止することもできる。いくつかの分散貴金属触媒は、反応の間に凝集するのが観察され、その結果、有効活性表面積が減少し、触媒生産性が減少する。不活性担体はさらに、水性生成物相における触媒の浸出および活性触媒の損失を防止する働きもするが、貴金属触媒が下記のような好ましい反応条件において使用される場合は、触媒の損失は重大な問題ではない。担持触媒(supported catalyst)の例は、炭素上Pd触媒である。一般的な1%Pd/C、3%Pd/C、または5%Pd/C触媒が好適である。他の好適な担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライト、多孔質珪藻土などを包含する。Pd触媒はP(III)オキシ酸に高選択性であるが、他の貴金属触媒、特に他の白金金属触媒、例えば、Pt、RuまたはRhも使用することができる。例えば、一般的なPt/C触媒が反応に有効である。
【0050】
IB族およびVIII族の触媒の場合に、不活性担体は、活性触媒相の有効表面積を広げ、および触媒を安定化して反応生成物による触媒の浸出を防止するのにも有効である。IB族およびVIII族触媒は、白金金属触媒に関して前記に記載した担体上に適用することができる。銅または他のIB族の金属の炭素担体への付着を強化するために、初めにPtまたはPdのような貴金属を担体に適用し、次にPtまたはPd層の上にCuまたはAgを適用するのが好ましい。あるいは、IB族触媒を、ピロ燐酸塩、好ましくはチタン、ハフニウム、またはジルコニウムのピロ燐酸塩のような好適な担体において使用することができる。
【0051】
担体によって得られる機能にもかかわらず、特に好ましい触媒は、非担持銅化合物、最も好ましくはハロゲン化銅のような銅塩または鉱酸または他の低分子量酸の他の塩を含んで成ることが見い出された。水性相および元素状燐を含んで成る水不混和性相を含んで成る不均一液体反応系において、元素状燐のP(I)およびP(III)種への所望の酸化が、主として燐を含んで成る相において起こると一般に考えられる。それにもかかわらず、触媒がCuCl2・H2Oのような水溶性銅化合物を含んで成る場合に、第二銅イオンが燐相に組み込まれることが見い出された。
【0052】
燐相において、第二銅イオンが元素状燐と反応して、触媒作用を与える1つまたはそれ以上の燐化銅が生成される。第二銅イオンの酸化状態が、工程において第一銅に還元され、元素Cuさえ形成される場合がある。いずれにしても、銅塩が元素状燐と結合し、燐相が最終的に、ブラックサンド(black sand)の外観を有する粒状、濾過性形態において分散される。反応混合物への銅触媒の導入において、初めに銅塩を、最少量の水、即ち塩の本質的に飽和した溶液を作るのに有効な量の水に溶解し、次に、元素状燐に加え、燐相と反応水との混合前に充分に該元素状燐と混合する。次に、銅触媒を含有する燐相を、攪拌しながら、反応水を含んで成る水性相と混合し、その結果、水性相の下に触媒を含有する元素状燐の銀白色(反射性)ブラックプール(black pool)が反応器中に形成される。ある反応時間後に、銀白色ブラックプールが破壊し(break up)、触媒および燐相が、前記の濾過性ブラックサンドの形態において分散する。
【0053】
特定の理論に縛られるものではないが、このブラックサンドに存在する還元形態の銅は、第一銅塩、燐化銅、銅金属、またはこれらの2つまたは全部の組み合わせを含んで成ると考えられる。下記に記載されるように、分散触媒粒子または液体粒子が、元素状燐の薄膜で被覆されていると考えられるが、ある場合には、銅触媒が燐液体粒子に分散され、反応の終了までに、粒子が燐化銅に転化されることもある。所定温度において、Cu触媒を含んで成る不均一な水/燐反応物系における反応速度は、ブラックサンドの形成後より、形成前において、顕著に速いのが観察される。特定の理論に縛られるものではないが、ブラックサンドへの転化は、燐相の凝固に関係し、水性相と燐相の間の物質移動に対する抵抗を実質的に増加させると考えられる。しかし、ブラックサンドに転化された系または転化されなかった系に関して、銅塩の導入によって得られるそのような銅触媒が、Arrhenius方程式から予測される増加より実質的に大きい、経時における反応速度増加を示すことが意外にも見い出された。
【0054】
本発明によれば、不均一反応物系において反応を行い、過度の反応温度を避けることによって、P(III)酸に高選択性にし、特に、P(V)酸の生成を最少限にするように、反応を制御し得ることが見い出された。特に、ある種の触媒、例えば、パラジウムのような貴金属触媒が、水性相に対して、四燐を含んで成る相に高選択的親和性を有することが見い出された。銅、酸化銅、および燐化銅のようなIB族触媒も、燐相に親和性を有する。前記のように、水溶性銅塩でさえ明らかに燐相に優先的に分配され、系中で急速に銅の形態に転化される。本発明によれば、触媒は主として四燐を含んで成る相に分配され、事実上、実質的にその中に含有される。従って、そのような触媒の活性部位が、燐相に選択的に接触し、反応が選択的に燐相において起こると考えられる。
【0055】
実際上、比較的高い反応温度、例えば、90℃より高い温度において、P(III)からP(V)酸への転化に活性な触媒部位と水性相の接触を、最少限にするのが好ましい。偶然にも、多くの好ましい触媒が燐相に可溶性であり、燐相に高選択的親和性を有し、実質的にその中の均質触媒として作用すると考えられる。付加的にまたは選択的に、いくつかの触媒は、燐相においてそれらが有する形態と非常に異なる形態または配置を水性相において有し、それによって、P(III)からP(V)への酸化に関して認識される活性を示さないに過ぎないと考えられる。従って、触媒が燐相に充分な親和性を有することを条件として、選択性の維持は、水性相との接触を防止する特別な工程を必要としない。一方、生産性のためには、反応のための水を供給する水性相に、燐相を接触させる前に、触媒を燐相に充分に組み込むことが好ましい。
【0056】
不均一系触媒、例えば、担持触媒またはPd黒のような粒子触媒は、選択的に高親燐性(phosphilic)であり、それによって、それらも主として燐相に分配される。少なくとも数種の不均一系触媒において、下記の攪拌の強さのような工程パラメーターを制御して、活性触媒部位と水性相の接触を制限するのが好ましい。
【0057】
理解されるように、Pd黒は、燐相に高親和性を有し、該反応に有効な触媒であることが明らかである。Pd黒が、微粒金属として燐相に分配され、ホスフェート相に金属溶質として融合する(amalgamate)か、または燐と反応してPd燐化物を形成するかは分からない。それが未反応および未溶解を維持する限度までは、Pd触媒は、元素状燐と水の反応を促進するのに充分に有効でないと考えられる。
【0058】
Cu燐化物の明らかな生成、または少なくとも燐相におけるCuの原子分配が、CuCl2・H2Oから誘導されるCu触媒を、反応に特に有利な触媒にすると考えられる。水/元素状燐不均一系に関して、CuCl2・H2Oから誘導されるCuが、事実上、均質触媒を燐相に形成し、該相において、所望の反応が行われると考えられる。塩化第二銅が、非常に水溶性であるという事実は、触媒としてのそれの有効性、またはP(V)オキシ酸に対するP(I)およびP(III)への選択性によって、損なわれない。
【0059】
触媒が、無機カウンターイオンを有する金属塩を含んで成る場合に、カウンターイオンは一般に、水性相と燐相の間の金属の分配においてそれが有する効果の他には、触媒の作用において役割を果たさないと考えられる。しかし、酸素原子移動剤として作用するモリブデートまたはペルマンガネートのようなカウンターイオンは、触媒反応を実質的に加速するのに有利な効果を有する。触媒の不存在下において、そのような物質は実質的な効果を有さない。例えば、Naモリブデートの存在は、200℃より低い温度において、水と燐の反応を促進しない。しかし、Cuモリブデート触媒は、CuCl2またはCuSO4と比較して、反応速度の顕著な初期増加を与えることが観察されている。Cuモリブデートの存在における燐の触媒酸化の間に、水性相が徐々に青色に変わり、MoO4 −2の部分還元から生じるオキシドおよびヒドロキシド官能価を有する種のタイプと一致する。例えば、Cu燐化物が、水との反応によって酸化され、元素状燐との反応によって還元されて、POx種を生成する活性酸化還元触媒であるとすれば、モリブデートはCu燐化物の推定される遅い酸化還元を補助する移動剤として作用することができる。他の酸素移動剤は、ジメチルジオキシラン、エチレンオキシド、ヨードシルベンゼンオキシド、オキソニウム塩、ポルフィリン、フェリシニウム塩、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩、およびタングステート塩を包含する。
【0060】
電子移動剤も、本発明の触媒酸化反応を促進するのに有効であると考えられる。有用な電子移動剤の例は、ピリジン、メチルビロゲン、4,4’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン、キノリン、ジ第四級塩(diquaternary salt)、例えば1,1’−エチレン−2,2’−ジピリジニウムブロミドである。Fieldsの米国特許第5072033号を参照。
【0061】
反応に好ましい触媒は、種々の有機金属配位触媒を包含する。例えば、Pd、Ru、Rhような白金金属、Ni、Cr、CoおよびMnのような他の遷移金属、ならびにAgおよびAuのようなIB族貴金属の配位化合物が、本発明の反応を触媒するのに有効であることが分かった。それらは全て、P(I)+P(III)オキシ酸への穏当な選択性を与える。Niは、約85〜90%の選択性を与えるにすぎないが、これは、元素状燐の廃棄物源(waste sources)の転化のような適用に関して、非常に満足できるものである。これと比較して、RuおよびRhの配位化合物は、一貫して92〜98%のP(I)+P(III)への選択性を与える。興味深いことに、Ni触媒の存在下に行われる酸化において、非常に少ないP(I)酸が生成される。これらの全ての金属に関して、元素状燐が消失するまで反応し、触媒が水性相に分散された後でさえ、選択性が維持される。かなりの燐相が存在している酸化反応の間でさえ、RuCl2(2,2’−ビピリジル)2およびRuCl2(ジメチルスルホキシド)4のような配位化合物は、透明赤色に変わる水性層によって立証される水溶性種を生じるのが観察される。しかし、この現象は、P(V)種の生成の有意な増加に関係がない。
【0062】
NiCl2・xH2Oのような無機Ni塩は、元素状燐相において易溶解性ではなく、従って、酸化触媒として有効ではない。Niおよび他の配位化合物の親油性配位子は、燐相における溶解性を増加させ、水性相に優先して燐相に金属を分配するのに有効である。従って、配位触媒の選択において、高親油性配位子が一般に好ましい。例えば、NiCl2(Φ3P)3、ビス(シクロペンタジエニル)Niおよびビス(シクロオクタジエニル)Niは、燐相において非常に溶解性であり、有効な酸化触媒として作用する。これらは全て、四面体配置によって、例えば、シクロオレフィンのオレフィン二重結合によって、金属に配位される。配位子は、有効であるためには、初期混合の間だけでなく、反応条件下の燐相において金属中心を支持することができなければならないことに注意すべきである。例えば、NiCl2(1,2−ジメトキシエタン)は、450℃の混合温度において、四燐において非常に溶解性であるが、90℃の反応温度において、NiCl2(1,2−ジメトキシエタン)/P4混合物は、黄色から黒色に変化し、次に、Ni金属が反応器の側面にプレートアウトし始める。従って、1,2−ジメトキシエタン配位子は反応条件において金属錯体を支持することができず、従って、分解する。
【0063】
他の規準も、配位子の組の好ましい選択に影響を与える。容易に解離しない強結合配位子は、金属における配位結合部位への四燐のアクセスを阻止することによって触媒活性を阻止し得る。例えば、NiCl2(Φ3P)2の一歯(monodentate)トリフェニルホスフィン配位子は、容易に解離して、金属錯体における反応部位を開く。しかし、NiCl2ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンの二歯(bidentate)1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン配位子は、配位結合部位を開く傾向が非常に弱く、この触媒による酸化反応は非常に遅い。2個のシクロペンタジエニル環を有するNi触媒に関して、1つのシクロペンタジエニル環が、金属錯体から容易に解離することが既知である。この特徴と一致して、ビス(シクロペンタジエニル)Niが、元素状燐からP(III)オキシ酸への比較的有利な速度の酸化を触媒することが示されている。高不安定性配位子の存在が、Arrhenius方程式によって予測される一般的な増加よりかなり大きい、温度による反応性の増加を生じることも観察された。例えば、RhCl(Φ3P)3の場合に、元素状燐からP(III)オキシ酸への酸化の動速度定数(kinetic rate constant)は、一般に予測される4倍ではなく、90℃〜110℃において10倍で増加する。
【0064】
酸化的付加を遅延させる電子吸引配位子も触媒反応を遅くする。例えば、Rhの場合、Wilkinson’s触媒、RhCl(φ3P)3は、電子吸引CO配位子がトリフェニルホスフィン配位子の1つに代わって置換されている、その他は同じ触媒のトランスRhCl(CO(φH3)2よりかなり速い転化速度を与える。
【0065】
触媒は、P(I)反応生成物に対するP(III)反応生成物への選択性において変化する。しかし、下記に詳細に記載するように、触媒、特に元素状燐の酸化に使用される触媒と同様の性質を有する触媒の存在下の水性相と水との反応によって、次亜燐酸、H2PO2 −1およびHPO2 ー2イオンのようなP(I)種が、亜燐酸、H2PO3 −1、HPO3 ー2およびPO3 −3のようなP(III)種に容易に転化される。従って、本発明の主な目的は、元素状燐を選択的に酸化して、P(V)種に優先して低級亜燐酸酸化生成物を生成することによって達成される。P(I)およびP(III)種間の酸化反応生成物の分布に関係なく、元素状燐の酸化によって生成される反応混合物におけるP(I)およびP(III)の合計濃度/P(V)濃度のモル比を最大にするように、触媒および他の条件を選択するのが好ましい。例えば、[P(III)+P(I)]/P(V)の高比率を有する初期反応混合物を生成するのに有効なある種の触媒が、P(III)/P(I)の比較的低い比率を生じることが見い出されたが、所望されるように、P(I)種は容易におよび選択的にP(III)種に転化されて、高濃度の亜燐酸および高比率のP(III)/P(V)を有する最終反応生成物を生成する。従って、5より大きい、好ましくは8より大きい、より好ましくは19より大きいP(III)/P(V)の最終比率が、工程において得られる。
【0066】
高温、例えば約100℃より高い温度、より好ましくは、反応定数の超Arrhenius温度応答が特に高い生産性を与える約105℃〜約180℃を含む広い範囲の温度および攪拌条件において、好ましい銅塩触媒は、P(I)+P(III)オキシ酸への高選択性を与えることが立証されている。
【0067】
燐酸化反応の不均一系触媒が、少なくとも約5m2/g、一般に約5m2/g〜70m2/gの活性相B.E.T.表面積を与えるのが一般に好ましい。好ましくは、Pd黒のような白金金属触媒は、約30〜約50m2/gのB.E.T表面積を有し、一方、銅金属触媒は、約10〜約60m2/gのB.E.T.表面積を与える。高活性相表面積は、活性相のための担体を使用することによって効果的に得られる。酸化工程は、固定触媒床において、流動層において、または凝縮相反応系に懸濁された触媒を使用して、行うことができる。好ましい活性相表面積を有する触媒を使用して、少なくとも1×10−7kg/時−g触媒の速度において亜燐酸を生成するように、反応温度および攪拌条件を選択することができる。
【0068】
スラリー系において、特に触媒がPd黒のような金属形態において添加される場合に、貴金属または他の触媒の添加量は一般に、反応系に存在するP原子に基づいて、約0.5モル%〜約50モル%貴金属、好ましくは約1モル%〜約15モル%、より好ましくは約1.5モル%〜約12モル%である。担体の使用によって触媒が拡張される(extended)場合に、より少ない添加量が可能である。大部分の有効添加量は、触媒の種類および形態によって変化する故に、最適な工業触媒添加量を日常試験によって決めなければならない。
【0069】
固定床または流動層反応系において、触媒塊(catalyst mass)が触媒反応帯域を規定し、その領域において、m3で示される反応帯域の単位容量に対して、少なくとも0.01kg/時、好ましくは少なくとも約10kg/時、より好ましくは少なくとも約50kg/時の速度において低級燐酸化生成物を生成するのに充分な活性層表面積であるのが好ましい。連続固定床または流動層反応器において、少なくとも約1×10−7kg/時−g触媒、好ましくは少なくとも約1×10−4kg/時−g触媒、より好ましくは少なくとも約1×10−3−kg/時−g触媒の合計生産性において、P(I)およびP(III)種を生成するように、活性触媒表面積および反応温度が選択される。
【0070】
反応は、広い範囲の温度、例えば約10℃〜約200℃において行うことができる。しかし、液相間の穏当な物質移動速度において、反応は不均一反応系においてさえ制限される動態(kinetics)であることが明らかにされており;さらに、Cu塩または配位化合物以外の大部分の触媒に関して、温度が、動的速度定数において予期される指数効果を有することも分かっている。理解されるように、ある種の塩および配位化合物が使用される場合に、温度が、超Arrhenius効果を有することが観察されている。従って、適切な選択性と一致する最大温度において、反応を行うのが一般に好ましい。P(V)酸に対するP(I)+P(III)への選択性は、約100℃より高い温度によって適度に低下することが観察されるが、200℃より有意に高い温度において、低下が累進的である。200℃より低い温度において、選択性が、触媒の種類に依存して変化し、少なくともある種の触媒に関しては、活性触媒部位と水性相の接触の程度に依存する。
【0071】
触媒および他の条件の選択に依存して、最適温度が変化する。生産性を最大にするために、閾値温度に近いバルク液体温度(bulk fluid temperature)、好ましくは0.5℃〜20℃、より好ましくは2℃〜10℃、P(V)に対する[P(I)+P(III)]への選択性が急激に低下し始める閾値温度より低い温度において、反応を行うのが一般に好ましい。この閾値温度は、触媒の性質および他の反応パラメーターによって変化する一方、P[P(I)+P(III)]生成/P(V)生成の限界比率[d(i+iii)/dv]が、回分反応系において3.0未満に減少する温度として一般に規定される。触媒の性質に依存して、選択性低下閾値温度は、例えば、195℃、185℃、175℃、または150℃である。
【0072】
生産性と選択性の最適トレードオフ(trade off)は、生成物オキシ酸が使用される目的に依存して変化し得る。四燐の凝固点(freezing point)は約45℃である故に、その温度より低い温度で行われる反応は、四燐の溶媒の存在下に行わなければならない。
不活性または還元雰囲気において、反応が最も効率的に行われる。例えば、アルゴンまたは窒素雰囲気において、反応が行われる。反応の前に、溶解酸素を除去するために、不均一反応系の水性相、または均質反応系の全添加溶液を、窒素、アルゴン、または他の不活性ガスでパージするのが好ましい。
【0073】
タービン攪拌器103のような攪拌手段を有するタンク反応器101が図1に示されている。液体四燐105、ならびに燐相より上にある燐相と界面接触する水性液体107のプールが、タンク内に含有されている。本発明によれば、Pd黒のような貴金属触媒が反応器に添加され、反応器の含有物が中度攪拌(moderate agitation)される場合に、Pd黒は漸進的に四燐相に移動する。この効果は、目視によって観察することができる。初めにPd黒がタンク中の水および四燐装填材料に装填された際に、全装填混合物が黒色および不透明になる。しかし、中度攪拌を行った際に、水性相は徐々に透明になり、最終的に無色透明になり、一方、四燐相は、黒または銀黒色のままである。四燐が液体状態を維持する温度において、四燐の酸化が進み、水性相に実質的部分の触媒が存在する限り、酸化生成物は実質的成分の燐酸を含有し;事実上、(P(V))酸が主要生成物である。しかし、触媒が主として四燐相に分配された後に、亜燐酸への高選択性において反応が継続する。Pd黒またはIB族金属または化合物の四燐相への分配は、酸化反応よりかなり速く進むことができる故に、初めに装填され、前記のように操作される回分反応器において全体的な高選択性が得られる。
【0074】
亜燐酸への全体的選択性は、連続または半連続ベース、または半回分において、攪拌タンク反応器を操作することによってさらに向上させることができる。連続操作において、水を連続的にまたは断続的に水入口109から供給し、生成物オキシ酸溶液を生成物出口111から採収し、四燐を連続的または断続的に燐入口113から供給する。図示されるように燐入口は相界面より下に位置するが、燐は反応器のどの位置からも導入することができ、四燐を含んで成る相に分布する。半連続操作において、水性相が連続的にまたは断続的に反応帯域全体に流れるが、燐は、回分ベースで装填されるかまたは補充される。半回分操作において、初めに、単一回分に必要である量より過剰の四燐の装填量が、反応に充分な濃度の触媒と一緒に反応器に導入され、および、連続のオキシ酸バッチが反応器への水の連続装填によって生成される。連続または半連続操作の滞留時間、または回分または半回分操作のサイクルを制御することによって、所望濃度のオキシ酸が生成される。あるいは、出口111から採収される稀酸が、蒸発器115において濃縮される。
【0075】
次亜燐酸および亜燐酸の燐酸への転化を最少限にするために、相間の物質移動を促進するのに充分な強さにおいて攪拌の種類および程度が管理されるが、活性触媒部位と水性相の過剰な接触を防止するのに充分な弱さであるのが好ましい。中度限界攪拌レベルより低いレベルにおいて、反応速度が、反応のための水の水性相から燐相へ物質移動、および燐相から水性相への燐オキシ酸生成物の物質移動によって、反応速度が制限される。しかし、該限界攪拌レベルより高いレベルにおいて、反応速度は物質移動に依存せず、反応の動態(kinetics)によって制限される。動態制限条件に到達した後は、攪拌をさらに増加することは意味がないと考えられ、少なくともある種の不均一系触媒に関しては、過剰攪拌が、水性相を活性相触媒部位に接触させる可能性があり、その結果、亜燐酸への選択性が減少することが予期される。
【0076】
しかし、許容される攪拌強度の範囲は、非常に広いと考えられる。従って、Pd黒触媒の場合に、燐相が微細分散された場合でさえ、選択性は顕著に減少することはなく、個々のPd触媒粒子が、燐相エンベロープに封入された状態に維持されることを示すと考えられる。いずれにせよ、限界レベルより高い比較的広い攪拌範囲において、反応速度および選択性が攪拌によって実質的に影響を受けない。この範囲において、反応速度は零オーダーまたは疑似ゼロオーダー挙動を示し、水飽和燐相における反応を示すと考えられるが、本質的に一般的な仕方で温度および触媒添加量に応答する。比較的広い範囲の攪拌強度において、亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約0.4であり、5〜約19のモル比が容易に得られる反応生成物が生成されることが見い出された。従って、亜燐酸が5重量%より高い濃度、好ましくは約20重量%〜約70重量%の濃度で生成され、一方、少なくとも約8のP(III)/P(V)の比においてPオキシ酸を生成するのに充分な選択性を維持し、燐酸含有量は約15重量%以下である。
【0077】
銅触媒が使用される場合に、水相溶性物質の粒子または液体粒子を水性相に分散させるのに充分な攪拌の強さである場合でさえ、P(I)およびP(III)酸への選択性が高レベルに維持される。液体粒子は外観において黒であり、元素状燐の皮膜または液体粒子中に封入されるかまたは分散される活性触媒部位を含んで成ると考えられる。ある場合には、銅を、燐化銅または燐/燐化銅アマルガムとして、水性相に分散させることができる。反応が進む際に、それらは、前記のような「ブラックサンド」に転化される。いずれにしても、触媒の反応部位は、元素状燐または他の水相溶性物質の皮膜によって水性相から分離され、それによって、燐酸への転化が阻止されると考えられる。さらに、銅または他のIB族触媒が使用される場合に、P(I)およびP(III)酸への選択性は一般に90%より大きく、より一般的には95%より大きく、ほとんどの場合に98%より大きい。
【0078】
さらに、本発明によれば、水性相、元素状燐を含んで成る相、および反応のための触媒を含む反応帯域に、音波エネルギーを伝達することによって、触媒酸化反応速度を実質的に向上し得ることも見い出された。約10kHz〜約1MHzの周波数および約0.1〜15ワット/cm3の強度における音波処理は一般に、それ以外は同じ水性相組成、燐相組成、触媒活性、および温度条件における反応速度と比較して、少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5の係数で反応速度を増加させることが見い出された。例えば、音波処理反応混合物中での60℃における反応速度は、非音波処理混合物中での90℃における反応速度に相当することが見い出された。触媒が燐相に含有されるかまたは、少なくとも活性触媒部位が、燐原子を含んで成る相の皮膜によって水性相から分離している本発明の好ましい実施態様において、音波処理の効果が特に有利である。比較的中度の(modest)攪拌レベルに到達した後は、バルク攪拌(bulk agitation)が反応速度に有意な影響を与えないが、音波処理は、燐相への水の適切な供給および燐酸化生成物のそこからの除去に充分な本質的にどのようなバルク攪拌強度においても、反応速度を顕著に増加させることが見い出された。
【0079】
本発明を特定の理論に限定するわけではないが、触媒と燐相の界面における音波の衝突が、反応部位への水の拡散率、および反応部位からの燐酸化生成物の拡散率を増加させ、および/または、燐相と活性部位の物質移動に関する皮膜係数(film coefficient)が、他の何らかの方法によって、おそらくは触媒界面における皮膜中の微腔(microcavities)の発生による前記界面におけるエネルギーの導入によって促進されると考えられる。音波処理は、反応混合物の外観を変化させるのが観察され、反応混合物を「ミルクセーキ」の外観を有する不透明液状塊に変化させるが、これが、親燐性(phosphophilic)触媒の活性触媒部位を被覆する元素状燐の皮膜を壊すとは考えられない。
【0080】
音波処理は、局部高温を作り、遊離基を発生させ、あるいは触媒の活性を増加させることによって、触媒部位における反応性を顕著に増加させることもできる。従って、界面においてある形態のエネルギーを導入することによって、顕著な速度増加が得られると考えられ、この現象は、実質的に散逸せずに水性相および燐相に伝達し得るが、界面において吸収されて、水および反応生成物の交換を増加させ、および/または触媒部位における反応性を増加させるある形態のエネルギーを、反応帯域へ導入することによって得られる現象である。従って、例えば、音波エネルギーよりむしろ(または音波エネルギーに付加して)マイクロ波エネルギーを反応帯域へ導入することによって、速度増加が得られる。
【0081】
反応混合物の音波処理またはマイクロ波伝達は、実質的瞬間エネルギー消費を含むが、波をパルスにすることによって、より少ないエネルギー消費で反応速度の実施的増加を得ることができる。実質的周波数におけるパルシングは、触媒/燐界面における所望の効果、または反応性における他の有利な効果を維持することができるが、反応サイクルの少ない正味部分(a modest net fraction)の間だけエネルギーを導入するに過ぎない。
【0082】
P(I)のP(III)酸への転化速度より、元素状燐のP(I)酸への転化の速度定数に関して、音波処理がより大きい効果を有することが観察された。従って、亜燐酸が目的とする最終生成物である場合に、例えば図3に示されるタイプの方法において、初期反応帯域において音波処理を使用するのが好ましい。
【0083】
大部分の触媒に関して、選択性が、温度増加によって適度に(moderately)低下するが、前記の反応温度範囲において一般に有利に維持される。不均一系触媒、例えば担持触媒またはPd黒のような粒子触媒の場合に、水性相における触媒の実質的同伴なしに得ることができる物質移動の最大速度を与える速度において、攪拌を管理することができる。例えば、溶融四燐または四燐を含有する水より重い他の液相のプールを、タンク反応器の下部に維持し、一方、燐相の小滴(globules)を液体プールから連続的に分離する攪拌レベルによって、燐相への水の充分な移動、および水性相への燐オキシ酸反応生成物の充分な移動が得られる。他の小滴が分離する際に、形成された小滴が連続的に液体プールと再併合する(remerge)。
【0084】
不均一系触媒に関しては、燐相における酸化速度(単位時間に対する、反応生成物のモルとして示される)が、水性相における燐オキシ酸の酸化速度の少なくとも10倍になるように、活性触媒部位と水性相の接触を制限するのが好ましい。例えば、Pd黒触媒の場合は、水性相の貴金属含有量を、約1重量%以下、より好ましくは約200ppm以下、最も好ましくは約0.1ppm以下の濃度に減少させ、その濃度において維持する。Pd黒は燐相への高い選択的親和性を有するのが観察される故に、中度から強度の攪拌によって、200ppmより充分に低い濃度を容易に得ることができる。中温、および活性触媒部位と水性相の制限接触の好ましい条件において、酸化反応生成物の燐オキシ酸部分は、1モルの燐酸(P(V))に対して少なくとも5モルの亜燐酸(P(III))を含有する。P(I)酸の初期高部分を生成する触媒および温度のある組み合わせにおいて、P(III)/P(V)の比は5より小さいが、P(V)酸の濃度に対する、P(I)酸およびP(III)酸の合計濃度のモル比は、5より高い数値に制御され、これは、本明細書の他の部分に記載されるように、P(I)酸のP(III)酸への触媒転化後に、P(III)への同等の最終選択性を与える。約8より大きい、事実上約9のP(III)/P(V)のモル比(または[P(I)+P(III)]/P(V)モル比)は、非常にたやすく得ることができる。
【0085】
反応の初めだけ比較的高い比率のP(I)および/またはP(III)副生成物を生じる燐酸製造の既知の水酸化法と対照的に、本発明の方法は、実質的に有意な転化において、即ち、亜燐酸高含有量の生成物の工業経路を与えるのに充分な転化において、例えば、2%より大きい、好ましくは5%より大きい、より好ましくは15%または25%より大きい燐転化において、亜燐酸、または亜燐酸および次亜燐酸への高選択性を維持する。実際、ここで述べた好ましい条件下では、上記のP(III)またはP(I)+P(III)酸への選択性はほぼ100%の転化率で達成できる。前記のような半回分系において、転化は、燐相に形成される燐オキシ酸溶液の各バッチにおける燐プールの比例的消費と考えられる。一般的回分または連続式の操作に適用される場合に、転化という用語は、それの一般的意味を有する。
【0086】
種々の方法を使用して、水性相から四燐を含んで成る相への触媒の移動を促進し、触媒が主として燐相に分配する水/燐不均一反応物系を得る。前記のように、四燐の融点より高く、再分配操作の間に亜燐酸の燐酸への有意な酸化を防止するのに充分に低い温度において、溶融四燐、水、および触媒の装填混合物を攪拌することによって、所望の再分配を行うことができる。一般に、約90℃までの温度において充分な再分配を行うことができる。所望の再分配の確立は、比較的長時間、例えば、24時間またはそれ以上を必要とする。触媒再分配の間の装填混合物のプログラムされた加熱は、亜燐酸収率を有意に減少させずに所要時間を短縮することができる。正確なスケジュールがどのようなものであるにしても、再分配段階の間に、温度を、約75℃より低い温度、より好ましくは約60℃より低い温度に維持するのが好ましい。
【0087】
再分配が行われた後、四燐を定期的にまたは連続的に補充し、触媒の次の再分布のために中断せずに、反復回分反応または連続反応が行われる。回分系において、溶融燐がなくなる前、および活性触媒部位が水性相に暴露されるレベルまで燐残留量が減少する前に、補充を行わなければならない。触媒交換または添加が必要になる程度まで触媒活性が減少したときだけ、触媒分配のために次の操作を中断する必要がある。
【0088】
本発明の他の好ましい実施態様において、触媒および溶融四燐、または実質的に水不混和性溶媒中の四燐の溶液を混合することによって、予備混合物を製造することができる。次に、予備混合物を水性液体に接触させて、酸化反応を行う。予備混合物は、図1に示されるタイプの攪拌タンク反応器において、好ましくは不活性雰囲気中で簡単に製造することができる。触媒が溶融燐(または、有機溶媒中の四燐の溶液)によって実質的に吸収された後に、水が添加され、前記のような中度攪拌において反応が行われる。ある種の触媒、例えばCuCl2・2H2Oに関して、燐相を水性反応物に接触させる前に、触媒および燐相を予備混合するのが重要であることが見い出された。塩の濃縮溶液を触媒と混合し、燐相によって同化し(assimilated)、水性相が本質的に消失する。触媒が初めにバルク水性反応物相に溶解される場合に、再分配はあまり有効ではなく、少なくとも初期において反応速度が非常に遅い。予備混合物を、不活性雰囲気中で、四燐の融点〜約150℃の温度に加熱するのが好ましい。
【0089】
四燐、および水との反応による四燐の触媒酸化に有効な触媒を含んで成る混合物は、有用な組成物である。該組成物は一般に、P4における燐原子に基づいて、約0.5モル%〜約50モル%の触媒を含んで成る。触媒は、好ましくはIB族または貴金属触媒、より好ましくはCu、Ag、Pd、Pt、またはRh、最も好ましくはCuまたはPdである。混合物は、基本的に触媒および四燐の混合物から成るのが好ましいが、四燐の溶媒を任意に含んで成ることもできる。下記に記載されるように、触媒は、還元状態であってもよい。
【0090】
本発明の他の実施態様において、水相交換洗浄操作を行って、四燐相に接触する水性相から残留固相触媒をパージすることができる。この実施態様において、水、触媒、および四燐を含んで成る相、を含んで成る初期前駆物質混合物が製造される。前駆物質混合物を攪拌することができる。次に、初期前駆物質混合物の液相を分離し、それによって、水性相に分配されている貴金属または他の固相触媒を除去する。次に、水不混和性液相(燐相)を追加容量の水に接触させて、選択的酸化反応がその中で行われる不均一反応系を得る。任意に、水交換洗浄操作が2つまたはそれ以上の連続工程で行われる。触媒を含有する水性洗浄混合物の第一分離後に、水不混和性燐相を新しい水性液と混合して、短時間の攪拌にかけるのが好ましい第二前駆物質混合物を得、次に、第二前駆物質混合物の液相を、該相に分配された触媒のさらなる除去のために分離する。
【0091】
図2に示されるように、触媒除去は、一連のパージング工程217、219、221、および223において行うことができ、それぞれが洗浄器/ミキサー217a、219a、221a、および223a、および分離器217b、219b、221b、および223bを有する。一連の前駆物質混合物を製造し、それぞれをパージング工程のミキサーから採収し、該パージング工程の分離器に導入する。各分離器において、液相を分離して、水性相に分配される触媒を除去する。各パージング工程217、219、および221からの液体四燐相を、次の継続パージング工程のミキサーに導入し、即ち、工程223からの液体四燐を、反応器201に導入し、該反応器において追加容量の水と混合して、P4からP(III)オキシ酸への選択的酸化のための不均一反応混合物を得る。この洗浄法によって、最終酸化反応生成物におけるP(III)酸/P(V)酸のモル比が少なくとも約5、より一般的には少なくとも約8、可能には少なくとも約9であるようにするのに充分に低いレベルに、水性相に接触する触媒の濃度を減少させることができる。
【0092】
最大収率のP(III)酸を得ることを目的とする場合に、図3に示されるように、該方法を2つの反応工程で行うのが好ましい。第一工程301aにおいて、P4の酸化に有効な条件において反応を行うが、P(I)酸の高級酸への転化は制限される。反応器301aから採収される粗反応生成物は、例えば、合計オキシ酸含有量に基づいて少なくとも約1モル%、より一般的には約10〜約30モル%の、有意部分の次亜燐酸を含有する。該粗反応生成物を、最終反応器301b中で、30℃〜約120℃の温度において、P(III)酸からP(V)酸への有意な転化を伴わないP(I)からP(III)酸への転化に有効な触媒に接触させる。Pd、PtまたはRhのような貴金属、Ni、CoまたはCuのような他の金属触媒、あるいはグラファイトのような炭素質触媒を包含する種々の触媒が、この反応に有効である。必要であれば、濾過器302において触媒を最終反応生成物から除去し、反応器301aまたは301bに循環させることができる。あるいは、反応器301bにおける触媒が、固定触媒床または他の固定形態であってもよく、その場合は、分離濾過工程は必要でない。反応器301bにおいて使用される触媒は、反応器301aにおいて使用される触媒と同じであってもよいが、必ずしもその必要はない。
【0093】
反応器301aにおける転化を制限することによって、亜燐酸含有量および次亜燐酸含有量の合計/燐酸含有量のモル比が、少なくとも約5、より一般的には約8〜約50の粗反応生成物が得られる。最終反応器301bにおける次亜燐酸から亜燐酸への転化によって、亜燐酸/燐酸の比が少なくとも約5(約8〜約50の比は容易に得ることができる)の最終反応生成物を得る。最終反応生成物における次亜燐酸/亜燐酸のモル比は、約0.2以下である。P(I)/P(III)の比は約5未満であるのが好ましく、0.01〜約0.02の比は容易に得ることができる。
【0094】
貴金属または他の触媒を、酸化反応の前に、任意に還元することができる。一般に、貴金属触媒は金属酸化物を含んで成る。炭素のような担体を酸化することもできる。任意に、そのような触媒を、水素との接触によって還元することができる。均質接触が得られる場合には、還元が中温および中圧において行われる。例えば、メタノールまたは水素の水溶液との接触によって、触媒を還元することができる。
【0095】
P4をオキシ酸に転化する反応において、水素が発生する故に、触媒の系中還元は本質的に、反応が進む際に行われる。あるいは、P4の実質的酸化が起こる前に、触媒を還元することもできる。触媒が燐相と予備混合される好ましい実施態様においては、好ましくは少なくとも四燐の融点の温度において、少なくとも約1分間でP4へ暴露することによって、触媒が還元される。前記のように、CuCl2のような水溶性触媒が使用される場合に、初めに触媒を最少量の水に溶解して、実質的に飽和した触媒の水溶液を製造し、次に、この溶液を溶融四燐と混合することによって、より均質な混合および効果的な還元が行われる。
【0096】
本発明のある実施態様においては、燐オキシ酸の生成において発生される水素との接触によって、触媒を還元する。図4に示されるように、一般に図3の301aおよび301bに関して前記に記載したように操作される、401aおよび401bで示される連続に配置される2つまたはそれ以上の酸化反応器において、P4の酸化を行い、および、次亜燐酸を含有する反応器401aからの水性相部分を、前処理反応帯域を有する触媒状態調節タンク425に循環させる。循環された水性相を含んで成る水性媒体に、触媒を分散させることができる。触媒と循環次亜燐酸との接触は、結果的に次亜燐酸を亜燐酸へ酸化的に転化し、触媒の還元に有効な方法で触媒表面において水素を発生させる。反応器401aにおいて製造される水溶液の限定部分だけを、前処理帯域における触媒の還元のための状態調節タンク425に循環させる必要があり、前処理温度を約85℃未満に制御することによって、循環次亜燐酸の有意部分の燐酸への転化が防止される。例えば、P4の融点〜約120℃の温度における反応によって、燐の燐酸への実質的転化を防止する条件において、P4の不存在下に、反応器401b中で、次亜燐酸の亜燐酸へのさらなる触媒酸化が行われる。
【0097】
さらに本発明によれば、水性相および四燐を含んで成る相の界面から離れた燐相に触媒が配置され、それによって、触媒と水性相との接触が積極的に防止される、種々の不均一反応法が見い出された。図6は、反応器の下部分に位置する容器(container vessel)627において反応のための貴金属または他の触媒の層を有する反応器601を有して成る装置を示す。反応器が装填された際に、燐相と水性相の界面より下に位置する四燐を含んで成る液体中に容器627が配置される。該容器は、触媒がそこから出るのを防止するのに有効であるが、燐相には透過性の壁を有して成る。液体/液体界面の周辺の反応器内の領域は、水性相から燐相への水の移動、および燐相から水性相へのオキシ酸反応生成物の移動のために、燐相が水性相と接触する領域を有して成る。反応系システムを攪拌して、液相間の物質移動、および、燐相に移動した水と、酸化反応がその中で行われる容器627中の触媒との接触を、促進させる。燐相が、低密度水不混和性溶媒中の四燐の溶液を含んで成る場合に、触媒容器627は、液体/液体接触帯域より下ではなく、それより上に位置することができる。
【0098】
図7は、四燐を含んで成る相が水性液体と接触する液体/液体接触帯域を有する溜め729を有して成る装置を示す。液相間の物質移動が、溜め内の攪拌手段によって促進される。反応のための貴金属または他の触媒を含んで成る触媒床731が、溜めから離れて配置される。溜めと触媒床の間に燐相を循環させる手段は、ポンプ733および循環ライン735を有して成る。液体/液体接触帯域における攪拌は、中度であり、相の分離、および最少の同伴水性相を有する燐相の循環を可能にし、燐相からの燐オキシ酸の採収、および反応のための水の燐相への移動を促進するのに充分である。図8に示されるような図7のシステムの改質形において、溜め829の液体/液体接触帯域において強い攪拌を行って、液体/液体均質混合物または分散物を製造し、これを、水性相および燐相がその中で分離される領域を有して成る容器839に移動させる。沈降燐相を、循環ポンプ833によって離れた触媒床831に循環させる。分離器835からの水性相も、溜め829に循環させる。充分な転化が得られた際に、分離器中の水性相は、燐オキシ酸反応生成物を含んで成り、これを前方へ移動させることができる(または、連続システムにおいて、所望の定常状態条件に到達した後に、分離器から出る水性流の一部を生成物として取り出すことができる)。P(I)からP(III)への比較的低い転化において図示されるシステムを操作し、該転化を図3に示される分離最終反応器において終了するのが有利である。
【0099】
触媒が、固定床に保持されるのではなく燐層に分散される、図8の選択的実施態様が図24に示されている。比較的強い攪拌、ミキサー2529において燐相を水性相中に実質的に分散させるのに充分な攪拌においてさえ、白金金属または他の触媒の元素状燐への親和性が、触媒を燐相に維持するのに充分であることが見い出された。この実施態様において、固定触媒床を通る間だけでなく、ミキサー/沈降タンク(settler)反応システムを通る一次滞留の間に、触媒が、燐相との均質接触に維持され、それによって、該方法の生産性に顕著に寄与する。
【0100】
図9は、四燐を含有する実質的に水不混和性液体の本体(body)またはプール905のための溜め929を有して成る、本発明の装置を示す。水性液体を、入口909から溜めに導入し、水性液体生成物を出口911から採収する。溜め929の底壁のの触媒相931が、燐相に接し、燐/水性相界面から離れ、該触媒床は、水との反応による四燐の酸化のための貴金属または他の触媒を含んで成る。燐プールの表面に水性液体を流す手段は、入口909および出口911、ならびに流れを促進し導く他の一般的手段を有して成る。水性相907が燐プール905の上を流れる際に、水が水性相から燐相に移動し、燐酸化生成物が燐相から水性相に移動する。溜め929は、物質移動を促進するために、液相間の実質的界面接触領域を与えるようになっている。
【0101】
図9の装置の操作において、溜め929が、液体/液体界面領域(interfacial area)と燐相プールの容量の比率が少なくとも50ft−1であるような比較的浅いトラフ(trough)の形態であるのが好ましい。燐酸への酸化を最少限にするために、反応器から出る溶液中の全てのオキシ酸のモル濃度の合計が、約80%以下であるのが好ましい。濃亜燐酸の製造におけるエネルギーコストを最少限にするために、Pオキシ酸のモル濃度の合計は少なくとも約2.4である。
【0102】
図1〜4および図6〜9の装置のいずれも、回分、半回分、半連続、または連続ベースで本発明の方法を行うために操作することができる。連続操作において、水性相が、連続的または断続的に混合タンクまたは溜めに導入され、図8以外の各システムにおいて、生成物溶液が連続的または断続的に溜めから除去される。図8のシステムにおける該方法の実施において、水性相および燐相の均質混合物を、連続的または断続的に、ミキサーから除去し、生成物溶液を連続的または断続的に、分離器839から採収する。多くの触媒に関して、触媒酸化反応が、P(V)酸生成における認め得る増加なしに、高転化においてさえ見掛ゼロオーダー(apparent zero order)であることが立証されている故に、水性相が高濃度の、例えば50〜90重量%のP(I)+P(III)オキシ酸を含有する連続反応システムを操作することが可能であり有利である。生成物組成の管理のために、水性相の流動を実質的に一定な、連続定常状態速度において安定させ維持するのが好ましい。しかし、連続操作は、溜めまたはミキサーへの、溶融四燐または四燐溶液の連続導入を必要としない。四燐の実質的装填量が初めに導入され、次に、連続的、定期的、または必要に応じて不定期に、補充される。
【0103】
前記のように、貴金属触媒のような不均一系触媒が、充分に湿り、燐相に封入されるのにかなりの始動時間(startup time)が必要である。従って、P4の酸化の回分または連続系において、四燐を充分な頻度および容量で、供給し、補充して、封入を維持し、活性触媒部位の水性相への不要な暴露を防止しなければならない。触媒が水性相に直接に接触するにもかかわらず、P(III)からP(V)へのさらなる酸化に緩慢すぎる温度条件において、水性相において、充分な速度で、P(I)からP(III)酸への触媒酸化が行われることが見い出された。これは、触媒が水性相と実質的に接触するとしても、P(III)からP(V)へのさらなる酸化を助長することができる時間/温度の組み合わせにおいてだけ、充分な転化速度が得られるP4の触媒酸化と対比される。
【0104】
図5は、本発明の他の装置および工程図を示す。溶融P4および貴金属または他の触媒の混合物を含んで成る燐相を、触媒スラリーおよび前処理タンク525において製造する。工程の始動前にスラリーに導入される水素で処理することによって、触媒を還元することができる。工程の操作において、ポンプ533およびライン535を有して成る循環手段によって、P4および触媒を含んで成る燐相を、タンクを有して成る燐相溜め525と不均一液相反応器501aの間に循環させる。反応器501aは、それの内壁に沿って縦方向に間隔を開けている一連の環状バフル(baffles)543を有する鉛直カラム541を有して成る。攪拌器503は、該カラムの中心線に軸561を有して成る。軸543は、一連の羽根車(impellers)545を有し、各羽根車は、一対の連続するバフルの間に位置し、そのような各バフルの対の間の攪拌領域が、多段階の液体/液体接触帯域の接触段階を規定する。P4/触媒混合物を含んで成る燐相が、入口513から反応器501aの上部に導入され、上向きに流れる水性相に向流して、カラムを下向きに流れる。水および他の水性液体を、入口509からカラムの底部近くに導入する。液体/液体接触帯域において、水が燐相に移動し、P4と反応して、燐オキシ酸を生成し、これを燐相から水性相に移動させる。水性相への触媒の有意な同伴なしに、相間の物質移動を促進する速度において、攪拌器503を回転させるのが好ましく、それによって、反応生成物が主としてP(III)酸およびP(I)酸であるようにされる。反応器501aにおける温度を、約50℃〜約200℃に維持するのが好ましい。
【0105】
水で飽和された燐相を、カラムの底部の出口547によって反応器501aから出し、タンク525に戻す。カラム541における反応によって生成される水素を、減圧または制御バルブ551によって放出させる。循環燐相において反応を継続し、戻しラインおよびタンク525において生成される水素を、タンクから排出する。補充触媒を、必要に応じて、口(port)549からライン535に導入する。触媒部分を連続的にまたは定期的に口563によって工程から洗浄し、触媒回収操作565に移動させる。
【0106】
燐オキシ酸溶液を、カラムの上部に近い出口511から除去し、水性相に同伴する残留燐相の分離のために分離器(デカンター)553に流す。分離器553の下部から取り出される燐相を、循環口555から反応器501aの上部分に戻す。一般に2〜80重量%のH3PO3および実質的部分のH3PO2を含んで成る水性相を、分離器から注ぎ移し、ポンプ557、移動のための重力または他の手段によって、最終反応器501bに送る。反応器501bは、反応器シェル(reactor shell)559に含有される固定触媒床531を含んで成る最終反応帯域を有して成る。反応を、反応器501bにおいて、約30℃〜約160℃の温度で行うのが好ましい。反応器501bから出る水性反応溶液は一般に、少なくとも約2重量%、好ましくは約20〜約80重量%の亜燐酸濃度、約15重量%以下の燐酸濃度、約60重量%以下の次亜燐酸濃度、少なくとも約5の亜燐酸/燐酸のモル比、少なくとも約0.2の亜燐酸/次亜燐酸のモル比、および少なくとも約5の[P(III)+P(I)]酸/P(V)酸のモル比を有する。
【0107】
反応器501bを通る向流は、物質移動のための有意な伝動力(driving force)、およびカラム全体のP4酸化を維持する。タンク525における連続反応は、入口513においてカラム541に戻る燐相において、燐オキシ酸/水の高比率を生じ、一方、入口509から入る水相は、実質的に燐オキシ酸を含まない。向流は、液体/液体全接触帯域にわたって、燐相オキシ酸/水比率操作ラインを、水性相オキシ酸/水比率操作ラインより有意に上に維持し、カラムから出る水性相の増加を促進し、および燐相へ反応物水が移動するのを促進する。
【0108】
反応器501bから出る燐オキシ酸溶液は直接、他の工程に使用することができ、または、蒸発システム515においてさらに濃縮するのが好ましい。蒸発システム515は、二重または三重効果真空蒸発器(a double or triple effect vacuum evaporator)を有して成るのが好ましい。反応器501bから出る酸溶液の濃度および温度に依存して、蒸発器のフラッシュタンク上流において水の一部を除去することができる。溶液の予熱器として蒸発器を補助する間接熱交換器において、真空噴流(a vacuum jet)からの蒸気を凝縮することができる。
【0109】
図5の方法の特に好ましい実施態様において、元素状燐の酸化に有効な比較的高い温度、例えば110℃〜150℃において、加圧下に、反応器501aを操作し、次に、減圧バルブによって下げて(let down through a pressure reducing valve)、真空下に維持されるのが好ましい反応器501bにおいて水蒸気を蒸発分離(flash off)する。この方法は、水性相において燐オキシ酸を濃縮し、水性相の温度を、反応器501bにおけるP(I)酸からP(III)酸への酸化に適した温度、例えば、50℃〜90℃、好ましくは50℃〜70℃に減少させる。反応器501aが、P(I)+P(III)酸の高定常状態濃度、例えば、50〜70重量%において操作される場合に、さらに濃縮されたP(III)の溶液が反応器501bにおいて製造される。この方法は、連続反応システムにおいて特に有利であるが、回分ベースで操作されるか連続ベースで操作されるかにかかわらず、例えば図3のような最終反応器を有して成るどのようなシステムにおいても使用することができる。
【0110】
図10は、燐の触媒酸化がリフト反応器(lift reactor)において行われる、本発明の他の好ましい実施態様を示す。反応器1001中に、酸化反応のための貴金属または他の触媒を含有する固定触媒床1027を有して成る触媒反応帯域が存在する。固定触媒床1027は、壁またはバフル1028によって反応器内の他の部分から仕切られている。燐相と水性相1007の界面より下の燐相プール1005に触媒床1027が浸漬するように、燐相、好ましくは溶融燐、および水性液体を反応器に装填する。機械攪拌器は必ずしも取り付ける必要はないが、水性相を、出口ノズル1067によって反応器の上部分から連続的に取り出し、水性相循環ポンプ1071によって戻しノズル1069から反応器1001の下部に戻す。両方のノズルが、反応器の内壁および触媒床1027の反対側のバフル1028の側面によって規定される反応器の帯域1073に直接に連絡している。戻しノズル1067は、帯域1073の下方末端に位置し、出口ノズル1067は、P4/水性相界面より上の水性相に位置する下方末端を有する浸漬レッグ(dig leg)1075を有する。
【0111】
任意に、戻しラインが、帯域1073の中にいくらかの垂直距離でノズル1069から上向きに延在することができ、および、戻り水性相を分散させるためにそれの末端にフリット(frit)または他のデバイスを有することができ、それによって、戻り水性相とその中に導入される燐相の界面領域を増加させることができる。いずれにしても、領域1073は、触媒床とレッグの間に燐を循環させる液体リフトレッグを有して成るように配置され、リフトレッグの上部末端は、触媒床の上部と液体流動連絡し、該レッグの下部末端は、触媒床の下部と液体流動連絡している。該レッグは、触媒床の下部の燐相が該レッグの下部分にアクセスするような寸法および形態にされ、その中に上昇する水性相の速度は、該層の下部から燐相を引き上げ、それをレッグの上部から該層の上部分に循環させるのに充分な速度であり、液相間の液体/液体接触および該層中の燐相の循環を促進する。リフトレッグは、帯域1073の輪郭によって規定することができ、または該帯域中にドラフトチューブまたは仕切縦通路(baffled vertical passage)を有して成ることができる。ポンプ1071は、相間の物質移動、および触媒床における燐相の循環を促進するような大きさにされ、操作されるが、ポンピング速度は、相の保全性(integrity)を維持し、触媒床への水性相の引き込み防止するのに充分に低い速度に維持される。
【0112】
触媒の還元処理は一般に、水性相への触媒の親和性を制限するのに好ましく、それによって、P(I)およびP(III)オキシ酸への選択性に寄与するが、いくつかの触媒は、燐酸化反応に使用する前に還元処理にかけずに、燐相への選択的親和性を有する。例えば、CuCl2のようなある種の触媒は、還元剤による前処理を行わずに、P4の酸化の高い生産性を与えることが分かっているが、ある場合においては、例えば、触媒的に活性な燐化銅の生成において、元素状燐の存在が、反応の間に触媒を還元するのに有効であり得る。前記の方法の種々の実施態様において、好ましくは触媒が燐相に同化される前に触媒が水性相に接触するのを最少限にするような方法で、新しい、または非還元親燐性(phosphophilic)触媒を連続的に導入して、燐相に接触させるのが好ましい。このようにして反応帯域へ触媒を「ブリーディング(bleeding)」することによって、選択性を顕著に損なうことなく、反応の生産性を向上させることができる。
【0113】
本発明の方法は、燐オキシ酸の非常に高い収率を得るように操作することができる。銅のようなある種の触媒を使用する反応の特に初期において、ホスフィン副生成物の僅かな生成が観察されるが、目的とする生成物が燐酸である場合に、100%に近い収率を容易に得ることができる。目的生成物が亜燐酸である場合に、収率が選択性によって制限されるが、非常に高い選択性を前記のように得ることができる。亜燐酸への選択性が、P4の存在における高転化において減少するにもかかわらず、図3または図5に示される方法を使用することによって、有利な選択性および収率が維持される。元素状燐の高転化が第一反応器において得られる図3および図5の方法も有効であるが、第一反応器から出る水性生成物のかなりの部分がP(III)酸ではなくP(I)酸である。
【0114】
本発明の方法の工業的操作において、高濃度のP(I)+P(III)酸が、元素状燐と水の初期反応において得られるのが特に好ましい。従って、図24の連続工程において、選択性を考慮した上で容認される、最終生成物におけるP(III)酸(またはP(I)+P(III)酸)の目標濃度に近い、第一水性反応生成物におけるP(I)+P(III)オキシ酸の濃度を与えるのに充分な相対速度において、反応物を第一反応システムに供給するのが好ましい。
【0115】
必要とされる選択性の維持と一致して、第一反応生成物は、最終生成物におけるP(I)+P(III)の濃度の好ましくは少なくとも0.15倍、より好ましくは少なくとも約0.45倍、最も好ましくは少なくとも0.60倍のP(I)+P(III)の濃度を有する。初期水性反応生成物におけるP(I)+P(III)酸の高濃度は、反応生成物を濃縮する蒸発器(または他の装置)の費用または操作コストを最少限にするだけでなく、元素状燐のP(I)+P(III)酸への転化のための第一反応システム、および粗反応生成物中のP(I)酸のP(III)への転化のための最終反応システムの両方に必要とされる規模(size)およびコストも最少限にする。例えば、85重量%亜燐酸の最終的製造に関して、少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも約50重量%のP(I)+P(III)酸の濃度を有する反応生成物を得るように、第一反応システムを操作するのが好ましい。第一反応システムから出る最適酸濃度は、約60〜約85重量%である。理解されるように、この範囲の濃度は、連続バック混合反応帯域においてさえ、または特にその帯域において、実際に得られる。
【0116】
1パスについての転化は一般に、高容量操作において濃度ほど限定的ではないが、図24に示すようなタイプの連続反応システムにおいて、1パスについての最適転化は3〜6%の低さであることができる。本発明の方法の実施において、どのような反応システムを使用する場合でも、反応条件下に水/燐/触媒混合物に接触する反応器ならびに他のパイプおよび器具が、該混合物中に微量金属を放出しない材料でできているのが好ましい。水性相における10〜50ppmまたはそれよりさらに低い濃度の鉄(Fe)およびニッケル(Ni)のような金属、および他の微量金属は、P(III)オキシ酸のP(V)への転化を触媒することが観察される。従って、酸化反応器がガラス内張りされているのが特に好ましい。これと一致して、P(I)+P(III)への高選択性がガラス反応器において立証されている。
【0117】
本発明の方法は特に、亜燐酸の製造においてハロゲン化燐基質を必要としない点で、特に有利である。本発明の方法は、塩素分子または他のハロゲン原料の使用に関係する費用を必要としないだけでなく、高毒性のハロゲンおよび燐ハロゲン化物の取扱い、ハロゲン化副生成物による亜燐酸生成物の汚染、亜燐酸からハロゲン化副生成物を分離する操作の必要性、および一般に販売できないそのような副生成物の処理に関係する問題を除くことができる。
【0118】
本発明の方法は特に、ホスホノメチル化反応、特にN−ホスホノメチルグリシン(「グリホセート」)の製造において行われるホスホノメチル化に使用される亜燐酸の製造に適している。グリホセートは、それの非N−置換グリシン(例えば、イミノジ酢酸)塩(例えば、米国特許第5,292,936号、第5,367,112号、第5,627,125号、および第5,689,000号)を、亜燐酸およびホルムアルデヒドと反応させて、N−置換グリホセート(例えば、N−ホスホノメチルイミノジ酢酸)を生成し、該N−置換グルホセートを酸化して、元のN−置換基を開裂してグリホセートを生成する種々の方法によって製造される。グリホセートの製造に使用される亜燐酸は一般に、PCl3の加水分解によって製造されるが、その方法は、該目的に有効であるが、クロリドイオンで汚染されている亜燐酸中間体を生じる。亜燐酸中間体またはN−置換グリホセート中間体またはグリホセート生成物から、一般にNaClの形態のクロリドイオンを除去するのに、面倒な高コストの工程が必要である。本発明の方法は、クロリドを全く含まない亜燐酸の源を与え、それによって、グルホセートの製造におけるこの中間体の使用は、下流工程における塩の除去を必要としない。
【0119】
本発明によって製造される燐酸は、当分野において既知の種々のホスホノメチル化法に使用することができる。好ましいホスホノメチル化法が、例えば、1998年2月12日出願の米国特許出願第09/022,967号(MTC 6450)、米国特許第5292936号、第5,367,112号、第5,627,125号、および第5,689,000号に開示されており、それらに記載の内容は本発明の開示の一部を構成するものとする。
【0120】
(実施例)
下記の例は、本発明を例示するものである。
【0121】
例1
水(50mL、アルゴンで30分間パージした)、四燐(1.626g、0.013モル)、およびパラジウム黒(0.111g、0.001モル、燐原子に対して2モル%)を、装填前に窒素でパージした100mLの3口丸底フラスコに入れた。そのフラスコを、窒素ガスシール下に75℃の油浴に68時間にわたって入れ、次に、温度を90℃に上げ、その温度において8時間維持した。窒素雰囲気を、反応時間にわたって維持した。次に、水性相の試料を採取し、イオン交換クロマトグラフィー(IC)によって分析して、POx種の下記収率:0.86% H3PO2;13.1% H3PO3;0.23% H3PO4を有することが確認され、それによって、98%のP(I)+P(III)の選択性を得た。反応時間中、水素の発生が観察された。
【0122】
例2
水(150mL、アルゴンで30分間パージした)、四燐(1.05g、0.0085モル)、およびパラジウム黒(0.54g、0.00507モル、燐原子に対して15モル%)を、300mLのHastelloy Cオートクレーブに装填した。オートクレーブを密閉し、酸素をパージした。次に、反応器を150℃に加熱し、2時間維持した。密閉反応器中の圧力がこの間に徐々に増加し、主として水素発生による圧力増加が見られた。150℃で2時間後、液体試料を採取し、ICによって燐オキシ酸に関する分析を行った。燐酸が確認され、その濃度は、反応器に初めに装填された四燐の約80%であった。生成物試料中に、亜燐酸または次亜燐酸が確認されなかった。
【0123】
例3
アルゴンでパージした300mLのオートクレーブに、水(160mL)を、装填した。水の装填後に、白燐(1.501g、0.01212モル)、およびパラジウム黒粉末(2.511g、0.02360モル、燐原子に基づいて49%)を順にオートクレーブに導入した。次に、反応器を密閉し、酸素をパージした。オートクレーブを75℃に加熱し、1,100rpmにおいて7.5時間で攪拌した。反応が進み、その間に、圧力が約130psig(即ち、約998kPa)に増加した。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析し、収率が20.9% H3PO3および66.1% H3PO4であった。燐オキシ酸への転化は、約87%であった。P(III)の選択性は24%であった。
【0124】
例4
パラジウム黒粉末(0.140g、0.00132モル、燐原子に基づいて2%)を、真空下に2日間で100℃に加熱し、次に、試験管中50℃における溶融白燐(1.939g、0.01565モル)を少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の小さい閃光(a small flash)、および燐蒸気と考えられる少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジウム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、水(100mL)を前もって装填した200mLの3口フラスコに入れた。得られる反応混合物を、中度攪拌において3日間で90℃に加熱した。攪拌の強さは、燐相を、反応器の下部において水性相より下にプールとして維持するのに充分に穏やかであるが、燐相を約1mmの直径の小球に連続的に砕くのに充分な強さであり、該小球は、新しい小球が形成される際に、燐相によって連続的に再吸収される。反応が続いている間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.44% H3PO2、21.4% H3PO3、および2.2% H3PO4が確認され、それによって、91%のP(I)+P(III)選択性を得た。転化データが図12にグラフで示されている。
【0125】
例5
パラジウム黒粉末(0.140g、0.00132モル、燐原子に基づいて2モル%)を、例4に記載のように真空下において加熱し、次に、試験管中50℃における溶融白燐(2.069g、0.0167モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および燐蒸気と考えられる少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジウム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、水(100mL)を前もって装填した200mLの3口フラスコに入れた。得られる反応混合物を、例4に記載のような中度攪拌において6日間で90℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.7% H3PO2、65.1% H3PO3、および5.6% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は94%であった。転化データが図12にグラフで示されている。
【0126】
例6
水(50mL)、白燐(1.612g、0.0130モル)、およびパラジウム黒粉末(0.109g、0.00104モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mLの3口フラスコに装填した。この装填混合物を50℃において20時間で加熱し、温度を93時間で75℃に上げ、次に、反応温度を7時間で90℃に上げた。反応温度の漸増は、低温における燐相へのPdの導入を可能にするためであり、それによって、導入の間のP(III)からP(I)酸への酸化が最少限にされる。その反応混合物を、例4に記載のような中度攪拌にかけた。反応時間中、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率3.1% H3PO2、13.0% H3PO3、および2.0% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は89%であった。
【0127】
例7
水(50mL)、白燐(1.853g、0.1496モル)、およびパラジウム黒(0.128g、0.00120モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mL3口フラスコに装填した。燐相を反応器の下部にプールとして維持するが、燐相からの燐小球を連続的に砕き、それをプールに再吸収させる中度攪拌において、この反応混合物を75℃で18時間30分にわたって加熱した。18時間30分後、溶融燐/パラジウムプールを覆う水を全て除去した。除去された水相が、初めに装填されたパラジウムの大部分を含有することが確認された。次に、燐/パラジウムプールを水(30mL)で洗浄し、約5分30秒にわたって攪拌した。残留懸濁パラジウムを除去するために、使用した洗浄水を除去した。燐/パラジウムプールの表面が、水で覆われていない場合に、銀白色金属外観を有するのが観察された。次に、水の新しいアリコート(50mL)を反応器に加え、温度を90℃に上げた。78時間後、試料を採取し、ICによって分析して、収率0.19% H3PO2、1.6% H3PO3、および0.29% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は86%であった。
【0128】
例8
水(50mL)、50%次亜燐酸(8.55g、0.0648モル)、およびパラジウム黒粉末(0.142g、0.00133モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mLの3口フラスコに装填した。この反応混合物を、75℃において30分間加熱し、装填材料中の次亜燐酸を実質的に亜燐酸に酸化した。次に、四燐(1.932g、0.01560モル)をその混合物に加え、パラジウム/燐の2モル%比を再定着させた。その反応混合物を、75℃において66時間で中度攪拌において攪拌し、その際に、パラジウム装填材料が全て燐相に吸収された。温度を90℃に上げ、その反応混合物を例4に記載のように中度攪拌し、元素状燐の転化を監視した。約8日後、試料を採取し、ICによって分析し、初期燐装填材料の燐オキシ酸への転化が57%であることが確認された。この例の顕著な特徴は、元素状燐の添加後に、燐酸の生成が、2程度の大きさ(two order of magnitude)で劇的に減少したことである。
【0129】
例9(比較例)
水(50mL)、白燐(2.075g、0.01675モル)を、100mLの3口フラスコに入れ、得られる混合物を約2日間で90℃に加熱した。その反応混合物から試料を採取し、ICによって分析し、収率0.019% H3PO2、0.070% H3PO3、および0.082% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は52%であった。この例は、反応の触媒の不存在における四燐と水との実質的非反応性、および起こる反応全てにおける低い選択性を示す。
【0130】
例10
次亜燐酸(濃度50%、123.97g、0.939モル)およびパラジウム黒(1.70g、0.160モル、1.73モル%)を、窒素パージ、撹拌棒、および還流冷却器を備えた、500mLの3口丸底フラスコに装填した。そのフラスコを75℃において2時間にわたって油浴に入れ、水素発生がおさまった。次に、その反応混合物を冷却し、濾過した。その反応フラスコおよび触媒を、少量の脱イオン水で2回(約15mL)で洗浄した。その洗浄水を濾液に加え、分析した。
【0131】
フィルター中のパラジウム黒を、次亜燐酸(濃度50重量%、119.88g、0.908モル)を前もって装填した丸底フラスコに戻した。次に、このフラスコを75℃において2時間にわたって油浴に入れ、水素発生がおさまった。その反応混合物を冷却し、濾過した。その反応フラスコおよび触媒を少量の脱イオン水で2回(約15mL)で洗浄した。その洗浄水を濾液に加え、分析した。
分析の結果を下記表1に示す。
【0132】
【表1】
表1: H3PO3への選択性
31 P NMR IC マスバランス
サイクル1 99.2% 99.9% 99%
サイクル2 99.5% 99.9% 101%
【0133】
例11
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.32g、0.00301モル、P原子に基づき6モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(1.58g、0.0129モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、70mLの水を前もって装填した100mLの3口フラスコに入れた。次に、その反応混合物を2日間で90℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料をその反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.59% H3PO2、52.9% H3PO3、および5.61% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は91%であった。
【0134】
例12
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.24g、0.00226モル、P原子に基づき6モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(1.16g、0.00936モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、49.1mLの水を前もって装填した100mLの3口フラスコに入れた。次に、その反応混合物を1日間で100℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料をその反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.54% H3PO2、43.2% H3PO3、および5.29% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は89%であった。
【0135】
前記条件において、Pd触媒の存在下に、全ての四燐が使用されるまで(反応が開始してから約23時間)、四燐を水と反応させた。燐が全て使用されてからさらに12時間にわたって、反応を継続させた。その反応混合物から試料を採取し、反応の進行を監視した。累積選択性が図11にプロットされている。全てのP4が使用され、Pdが水性相に再分散されるまで、反応がP(III)オキシ酸に高選択性であり、その後、P(III)酸が累進的におよび全体的にP(V)酸に転化されるのが分かった。
【0136】
例13
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.29g、0.00273モル、P原子に基づき2モル%)を、試験管中50℃における溶融白(4.249g、0.0343モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、圧力計および玉弁(ball valve)を取り付けたクレイセンヘッドアダプター(a claisen head adapter)を有する300mLのAce Glass水素化瓶に入れた。その瓶に99.48mLの水を装填した。次に、その反応混合物を8時間で110℃に加熱した。反応の間に、圧力が50psigに増加した。その反応混合物から試料を採取し、ICによって分析して、収率0.1% H3PO2、8.7% H3PO3、および1.18% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は88%であった。
【0137】
例11〜13の反応条件の概要を下記に記載する。
例 触媒添加量 温度
13 Pに対して2モル% 110℃
11 Pに対して6モル% 90℃
12 Pに対して6モル% 100℃
条件の各組合せにおける反応の進行を、1〜3日間にわたって監視した。時間に対する全POxの収率を図12に示す。下記のように、P(III)への選択性が、条件の厳しさと共に、中程度に減少した。
例 PO x 間の相対選択性
13 PO2:1%; PO3:87%; PO4:12%
11 PO2:1%; PO3:89%; PO4:10%
12 PO2:1%; PO3:88%; PO4:11%
図12に示すように、反応速度は、触媒濃度に関して線状に、および一般的な10℃ルール(rule)による温度に関して指数関数的に、増加する傾向を有する。従って、これらの例の実験に関して、反応速度が、相間の物質移動ではなく、反応動態によって制限されることが明らかであった。
【0138】
例14
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。Pd黒粉末(2.80g、0.00263モル、P原子に基づき2モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(3.936g、0.03177モル)に少量ずつ加えた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、厳密に脱泡した水(rigorously degassed water)(156mL)を前もって装填した300mLのHastelloy−Cオートクレーブに入れた。次に、その反応混合物を10日間で90℃に加熱した。ポンピング羽根車(pumping impeller)を攪拌に使用し、羽根車の攪拌速度を500〜1000rpmに変化させたが、反応速度に顕著な効果は観察されなかった。反応の進行を、オートクレーブ中の圧力増加、および反応混合物の水性相の試料採取によって、監視した。圧力増加および転化の両方が、零オーダーの挙動を示した。反応の終わり頃に、反応混合物から試料を採取し、ICによって分析した。P4からPOxへの転化は実質的に量的であり、H3PO3およびH3PO4の収率はそれぞれ、81.8%および11.2%であった。P(III)への選択性は88%であった。反応サイクルの間に採取した試料は、選択性における圧力の有意な効果を示さなかった。全部の四燐が使用される反応の終わりに、選択性が減少した。時間に対する、攪拌速度、合計反応圧、P(I)+P(III)オキシ酸への転化および選択性のプロットが、図13に示されている。
【0139】
前記例に使用されたパラジウム黒を分析し、約48μの平均粒度、約41.5μの中央粒度、および約72.5μの最頻粒度を有することが分かった。触媒の約2.4重量%が1μ未満の粒度の粒子であり、7.3%が2μ未満、11.0%が5μ未満、14.0%が7μ未満、54.3%が60μ未満であった。
【0140】
例15〜34
下記の一般手順は、表2に示される触媒のリストに関する(例15〜34)。不活性雰囲気中、適切な触媒を、50℃において、白燐と混合する。燐/触媒混合物を、冷却し、攪拌棒、窒素ガスシールを取り付けた丸底フラスコに入れ、前もって約30分間にわたってアルゴンで脱泡した水を加えた。次に、その反応混合物を90℃に加熱した。各例において、溶融燐のプール上に水性相を有して成る不均一反応系を維持した。水性相と燐相の間の、水および燐オキシ酸反応生成物の物質移動を促進するのに充分な中度攪拌を行った。POx種、P(I)+P(III)の収率、選択性、および装填された触媒のモル%を記載する。
【0141】
【表2】
【0142】
好ましい炭素担体は、例25に使用されるSA−30担体である。SA−30の製造は、本明細書の開示の一部を構成する米国特許第5,689,000号の例1に記載されている。
【0143】
例31を行う場合に、塩化銅の飽和溶液を製造し、65℃において溶融四燐と混合し、燐相への銅の実質的導入によって銅塩の初期還元が起こった。1時間後、水相が実質的に消失し、その結果、黒く見える物質の塊を含有する黒/緑色液体塊が形成された。次に、触媒/燐混合物を前記のように処理した。反応の初期段階の間に、燐+触媒の銀白色プールが、反応器の下部における中度の攪拌によって形成された。長時間が経過した後、このプールが、黒色粉末または砂(sand)のように見えるものに砕いた。図16は、時間に対する、POx種の選択性および転化のプロットを示す。表2に示されるデータは、約7.86日後に採取した試料に基づく。
【0144】
例32の反応は、反応温度が107℃である以外は例31と同様に行った。触媒/燐混合物は例31に関して前記に記載したのと実質的に同じように変化したが、例31の反応において、例32の反応におけるよりかなり早く、「黒い砂(ブラックサンド)」段階に到達した。例32に関して表2に示される分析データは、反応から504分後に採取した試料に基づく。従って、例32の反応は、高生産速度で行われた。
【0145】
例33は、初めにパラジウム黒を燐相と混合し、次に、塩化銅水和物の飽和溶液を添加して、例31と同様に行われた。
【0146】
例35
他の例において、22.5%Cu/1.8%Pd炭素を含んで成る触媒1.4モル%(P4に基づく)の存在下に、90℃において、P4を水との反応によって酸化した。この例の反応に関する反応温度、反応器圧、瞬間(instantaneous)選択性、および累積選択性を、図14に示す。P(I)+P(III)への持続選択性が得られ、反応生成物において次亜燐酸が特に高い比率であった。
【0147】
例36
2種類の担持銅触媒を、四燐の触媒酸化における有効性に関して、液体の水と比較した。試験した触媒は、炭素上の22.5%Cu/3%Pt、および炭素SA−30上の15%Cu/3%Ptであった。2モル%Cuの触媒添加量および90℃の温度において、実質的に例4のプロトコールによって反応を行った。各触媒は2700分後に約11%の転化を生じた。2種類の触媒に関して、時間に対する選択性を比較するプロットが図15に示されている。図に示されるように、炭素上22%Cu/3%Pt触媒は、安定した98%[P(I)+P(III)]選択性を示し、P(I)およびP(III)に関する特異的選択性が時間の対して一定に維持された。SA−30担持触媒は、97%の一定の[P(I)+(III)]選択性を示したが、時間に対するP(III)種への選択性は増加し、P(I)への選択性は減少した。P(I)選択性の減少は、SA−30担持触媒実験における燐プールの高粘性から生じる、P4相から水性相へのP(I)酸の移動のバリヤーの結果であると考えられる。この触媒は低いCu含有量を有する故に、同じモル濃度のCuを与えるために高重量部分の触媒が必要であった。触媒は燐相で濃縮される故に、高固形物濃度が、高燐相粘度を与え、従って物質移動のバリヤーを与える。
【0148】
例37
水との触媒反応による燐の酸化における、温度の効果を調べる試験を行った。300ccのオートクレーブ中で1000rpmの定攪拌速度において反応を行った。使用した触媒は、炭素担体上の22.5%Cu/1.8%Pdであった。触媒添加量は1.8モル%であった。反応温度は20℃増分において、90℃の初期温度から150℃の最終温度に規則的に増加させた。反応圧を連続的に監視し、各温度段階の終わりに、液体試料を採取した。図17は、この例の反応に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットである。温度試験の終わりに生成されるPOx種から、82%の転化が求められた。反応の間の反応器圧の累進的増加によって示されるように、反応の大部分において、酸化が予期された零オーダーの挙動を示した。しかし、150℃段階の初期に、速度が急激に増加し、反応がより多くの第一オーダー輪郭に変化したのが分かる。この現象は、触媒が再分散し、それによって、触媒の活性部位が水性相と有意に接触したためであると考えられる。実際に、触媒は、担体から剥がれ始めていた。あるいは、選択性の減少が、150℃より高い温度におけるオートクレーブの壁および内部(攪拌器、コイル等)の触媒活性から生じたと考えられる。150℃より高い温度において、反応器中にホスフィンの存在も確認された。いずれにしても、約150℃における増加した反応速度に伴って、選択性が有意に減少した。
【0149】
P4の使用に関する速度定数を、いくつかの温度において算定した。図18は、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(P4転化速度)のプロットである。初めの3つのデータポイントは、見掛零オーダー速度定数の穏当に一致した対数プロットを示し、このプロットの傾斜は、90℃〜130℃の範囲において、15kcalの活性化エネルギーを生じる。しかし、活性化エネルギーの急激な増加が、約150℃において現れる。
【0150】
図19は、温度変化過渡(temperature change transients)を除去し、試料採取による頂部空間容量増加を調整した後の、時間に対する、反応器内の圧力増加速度のプロットである。150℃領域の初期部分だけが図19に現れている。圧力増加は、顕著に零オーダーを維持するが、圧力増加の見掛速度において、予期されない指数関数的増加が見られる。図19の挿入図は、△T×10−1に対するr1/2の比の底10対数によって表される、時間に対する反応速度の増加を示す[r1=開始温度における燐酸化反応速度、△T=開始温度からの温度増加、およびr2=開始温度+△Tに対応する温度における燐酸化速度]。
【0151】
例38
四燐酸化反応を、実質的に例25に記載の方法によって行った。シリンジを使用して、有意な割合の次亜燐酸を含有するこの反応混合物からの水性相を、反応器から採取し、移した水性相における次亜燐酸基質に基づき約4モル%の割合のPd黒を装填した別のフラスコに移した。得られた混合物を65℃に加熱し、適切な時間間隔で、含有物をイオンクロマトグラフィーによって分析した。図20に示されるように、40分以内におけるH3PO2からH3PO3への充分な転化、および、全てのP(I)酸が使用された後でさえ、3時間より長い時間にわたる97+%のP(I)+P(III)酸への持続選択性をデータが示している。図20からさらに分かるように、亜燐酸への次亜燐酸の酸化の間に、P(V)酸の濃度は実質的に未変化のままであった。反応混合物が65℃において19時間より長い時間にわたって維持されるまで、選択性は低下し始めなかった。
【0152】
例39
上清水性相に接触する燐プールを含んで成る不均一反応系における、攪拌の効果を調べるために、初めに静止条件において反応を行い、中度攪拌条件において反応を継続した。四燐(3.91g)およびPd黒(燐原子に基づき6モル%)を、長い筒状の、約1インチの直径のSchlenckフラスコに、約50mLの水と一緒に装填した。そのフラスコに窒素ブランケットおよび撹拌棒を取り付けた。フラスコの上部の外壁に磁石も取り付け、それによって、実験の間にフラスコの上部に内部撹拌棒がつり下げられるようにした。実験の非攪拌部分に関しては、水相から試料を採取する前に、撹拌棒を燐プールに降ろし、2分間攪拌して、燐相の効果的な抜き取りを確実にし、それによって、典型的試料を得ることができた。4000分の初期反応時間において、本質的静止条件において、即ち連続攪拌を行わずに、反応を行った。4000分経過時に、撹拌棒を作動させ、残りの反応時間において反応混合物を中度攪拌にかけた。攪拌は、燐相と水性相の間の物質移動を促進するのに充分であったが、1つの相が他の相に分散するか、または触媒が燐相から水性相に移動するのに充分な強さではなかった。この例の反応に関する、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性が、図21にプロットされている。中度攪拌を行うことによって、静止条件における反応の約3倍で反応速度が増加したことが分かる。攪拌を行った際に、P(I)+P(III)オキシ酸への選択性における、即時の有意な増加も観察された。この例の結果は、反応生成物が触媒に接触している燐相から、中度攪拌条件において活性触媒部位に実質的に接触していない水性相への、燐オキシ酸反応生成物の適切な速度の物質移動に、最大選択性の達成が部分的に依存することを示唆している。
【0153】
例40
Tollen試薬を使用して銀メッキしたガラススリーブを、ディスペラマックス羽根車(disperamax impeller)を有し、Hastelloy Cインターナル(internals)を取り付けた300mLのHastelloy Cオートクレーブに入れた。次に、そのオートクレーブに、水(85.2g)および燐(28.13g、0.91モルP原子)を装填し、得られた混合物を勢いよく攪拌しながら200℃に加熱した。1.7時間後、水相をICによって分析し、0.0%H3PO2、11.1%H3PO3、および6.5%H3PO4を含有することが分かった。P(I)+P(III)に対する選択性は63%であった。
【0154】
例41
四燐(1.094g、0.0353モルP原子)を、グローブボックス中の試験管において溶融させた。SA−30上の17.5%Cu/3%Pdを含んで成る炭素担持触媒(0.14g)を加え、溶融燐中に混合した(P原子に対して1モル%Cu)。その混合物を冷却し、凝固し、次に、脱泡水(47.4g)を含有するフラスコに移した。次に、このフラスコを音波処理水浴(Bransonic Model 5210、47MHz)に浸漬し、61℃に加熱した。P4相が溶融したら直ぐに、音波処理を開始し、75分間維持した。音波処理の間に、この反応混合物の初期清澄水性相が徐々に濁ったが、溶融P4/触媒相は、フラスコの下部に維持された。この間に、反応の試料採取を2回行った。初めの75分間の音波処理の終わりに採取した第二試料の分析は、燐の0.12%転化、およびP(I)+P(III)への100%選択性を示した。見掛P4転化速度は1.6×10−5分−1であったが、これは、音波処理を行わない90℃における前のランにおける同じ触媒および触媒濃度に関して観測された速度と同じであった(例25、表2参照)。次に、加熱水浴において、音波処理を行わずに、反応器を撹拌棒で120分間にわたってゆっくり攪拌した。この「サイレント」反応時間の終わりに採取した試料は、追加のP4転化を示さなかった。次に、音波処理を再開し、120分間継続した。この第二音波処理の終わりに反応器から採取した試料は、0.4%の最終P4転化を示し、再びP(I)+P(III)の100%収率であった。第二音波処理の間の転化速度は、第一音波処理において観測された転化速度と同様であった。
【0155】
この例における実験条件およびサンプル分析を表3に示す。累積選択性、勾配(slope)選択性、見掛P4転化、零オーダー速度、および標準速度(Normed Rate)を表4に示す。実験時間に対する、試料濃度、転化、反応速度、および選択性のプロットが、それぞれ図25、26、27、および28に示されている。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
例42〜44
例15〜34の方法を使用して、水との触媒反応によって四燐を酸化する一連の反応を行った。これらの反応の結果を表5に示す。
【0159】
例45
燐およびCuMoO4触媒の混合物を、実質的に例15〜34に記載の方法によって製造した。磁気撹拌棒を有し、内部熱電対、圧力計、ブロック弁(block valve)(パージおよび圧力開放のため)、および、反応器から試料を採取し、反応の進行を監視するために使用される試料ライン/弁アセンブリにつながれた内部フリット(internal frit)を取り付けた、300mLのAce Glass反応器に、この混合物を移した。130℃に維持される温度において反応を行った。この例の反応に関して、水性相は、実験時間中、青/黒色を維持した。この着色は、濾過後でさえ維持された。紺青色種は、オキシドおよびヒドロキシド官能価を有する、部分的に還元されたモリブデンオキシド種であると考えられる。反応混合物の分析を表5に示す。
【0160】
例46〜50
一連の触媒/燐混合物を、例15〜34に記載した方法によって製造した。この混合物を例45に記載の装置に装填し、燐酸化反応を、該例に記載の方法で行った。反応混合物の分析を表5に示す。
【0161】
例51
触媒/燐混合物を、例15〜34に記載の方法によって製造した。触媒は、3%Pd/SA−30担体上の17.5%Cuであった。反応は一般に例15〜34に記載の方法によって行ったが、内部反応温度は130℃に維持された。反応混合物の分析を表5に示す。
【0162】
例52
触媒/燐混合物を、例51に記載の方法によって製造した。例45に記載の装置を使用して、水との触媒反応による四燐の酸化を、一般に該例に記載の方法によって行ったが、内部反応温度は150℃に維持された。
【0163】
【表5】
【0164】
例53〜114
配位触媒の存在下における水との反応による四燐の触媒酸化において、2つの一般的方法を使用した。
【0165】
方法Aにおいて、10gの四燐インゴットから四燐の一部(1g)を水中で切り取り、水を充填した風袋計量広口瓶に移した。風袋計量広口瓶に入れてP4を計量し、Ar充填グローブボックスに移した。グローブボックスにおいて、P4試料を広口瓶から採取し、18×150mmの試験管に入れ、温度管理油浴によって加熱して溶融させた。充分に混合しながら、固体触媒を少量ずつ溶融P4に加えた。触媒添加が終了した際に、P4/触媒混合物を、固体になるまで冷却し、試験管に蓋をし、グローブボックスから取り出した。次に、P4/触媒混合物を、水中で試験管から出し、脱イオン水(50mL)を装填したテフロン撹拌棒を取り付けた50mLの丸底フラスコに移した。窒素噴水装置に取り付けた、ゴム隔膜を取り付けたインライン隔膜入口アダプターを、フラスコに取り付けた。水/触媒/P4装填混合物を、攪拌し、温度管理油浴を使用して一般に90℃の反応温度に加熱した。0.2μmのナイロンフィルターを有するArパージ使い捨てシリンジを使用して、反応混合物の水性相から定期的に試料を採取した。EM Science, Gibbstown, New Jersey 08027から入手されるcolorpHast(R)pH0〜14のpH指示ストリップを使用して、水性反応生成物の試料のpHを検査し、イオンクロマトグラフィーによって燐オキシ酸の濃度を検査した。
【0166】
方法Bは、実質的に方法Aと同じであるが、P4試料は、グローブボックス中の風袋計量広口瓶から採取し、50mLの丸底フラスコに直接入れ、温度管理浴において加熱して溶融させた。次に、充分に混ぜながら、固体触媒を少量ずつ、50mLのフラスコ中の溶融P4に加えた。触媒添加が終了した際に、P4/触媒混合物を、固体になるまで冷却し、次に、Arでパージした水(50mL)をフラスコに加え、フラスコにゴム隔膜で蓋をし、グローブボックスから取り出した。次に、反応試料の分析を、方法Aに記載のように行った。
【0167】
例53〜114の実験反応の結果を表6に示す。
【0168】
この例の実験に使用した配位触媒の配位子の記号を下記に記載する。
acac=アセチルアセトネート、[CH3C(O)CHC(O)CH3]
PPh3=トリフェニルホスフィン、P(C6H5)3
PEt3=トリエチルホスフィン、P(C2H5)3
dppe=1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、
(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2
Cp=シクロペンタジエニル、[C5H5]
nbd=ノルボルナジエン
cod=シス、シス−1,5−シクロオクタジエン
bipy=2,2’−ビピリジル
DMSO=ジメチルスルホキシド
【0169】
【表6−1】
【0170】
【表6−2】
【0171】
【表6−3】
【0172】
【表6−4】
【0173】
【表6−5】
【0174】
例115〜118
例116〜118の酸化実験において、テフロン被覆撹拌棒を、300ccのオートクレーブのガラスライナーに入れ、そのライナーを、Ar雰囲気に維持したグローブボックス中の65℃の油浴に入れた。四燐の塊を、ライナーに入れ、ゆっくり攪拌しながら溶融させた。所定装填量のCuCl2・2H2O(乾燥粉末)の重さを計り、標準試験管に入れた。蒸留し、脱泡した水(50μL)を、試験管中のCuCl2に加え、得られた溶液を、CuCl2の溶解を補助するグローブボックス中の65℃の油浴において、5分間にわたって温めた。希釈の程度は約90%であった。得られた濃緑色触媒溶液を、ガラスライナー中の溶融P4に、ゆっくり攪拌しながらピペットで加えた。残留CuCl2および少量の未溶解CuCl2を含有する試験管を、蒸留脱泡水(400μL)で洗浄し、この洗浄溶液を、溶融燐を含有するガラスライナーに移した。
【0175】
P4/CuCl2/H2Oの混合物を約5分間攪拌し、この間に、溶融P4塊が触媒溶液に徐々に混合され、次に、固体塊になるまで徐々に濃縮した。この転移(transition)に伴って種々の色の変化があった。初めに、明瞭な緑色水性相および黄色P4相が存在した。次に、褐色水性相および銀白色燐相が存在した。固体の混合P4/触媒相が得られるまでに、非常に少ない水性相が観察された。固体の触媒/P4塊が形成された後、この混合物を含有するガラスライナーを油浴において25分間静置し、次に、油浴から取り出し、約5分間冷却した。
【0176】
次に、所定量の蒸留脱泡水(約125mL)をライナーに入れ、ライナーを大きいゴムストッパーで密封した。固体P4/触媒相は、水性相との明らかな相溶性を示さなかった。水およびP4/触媒装填混合物を含有するライナーを、Arパージにおいて維持したオートクレーブに移した。反応器における配置、および反応器ヘッドの固定(securing)の直前に、ゴムストッパーをガラスライナーから除去した。ヘッドを固定し、漏れを試験し、適切な熱電対および液体試料採取連接物(liquid sampling connections)を取り付けた後、反応器に加熱テープを巻き付け、絶縁した。反応温度に加熱する直前の反応器の最終状態は、室温および0psigのArであった。Ar連接物(Ar connection)は、液体レベルより上であった。
【0177】
反応器本体およびヘッド加熱器を作動させ、装填混合物における110℃のラン温度に徐々に上げた。加熱段階の大部分において、反応器ヘッドを、反応器より約10℃高い温度に維持した。110℃に到達するのに要した合計時間は、約50分であった。これらの例の種々のランにおいて、加熱時間が、各ランに関して、できる限り同じ温度になるように維持された。一般に、約20分間にわたって持続する3〜5℃の少しの行き過ぎ温度(a minor temperature overshoot)が存在した。反応器含有物が最初に110℃に到達したときに、ラン時計(run clock)を開始させた。各ランの持続時間にわたって、反応器液体含有物から定期的に試料を採取した。ランの終わりに、反応器を冷まし、反応器を換気する前に、頂部空間ガスの試料を採取した。
【0178】
蒸留水を装填する前に、反応器にライナーを入れ、および反応器ライナーにおいてではなく試験管においてP4/触媒装填材料を初めに製造する点において、例115の手順は、前記の手順と少し異なる。このランの直前に、試験管を水中(反応器の外)でこわし、固体P4/触媒塊を取り出し、水(125℃)をライナーに加えた後に、反応器に手で素早く直接移した。
【0179】
例118は、110℃において2時間後に、反応器を冷却し、換気し、頂部空間をパージし、反応器を再加熱して、前記の方法によって行う特殊なランであった。この手順の目的は、「中断された」反応が、中断の直前と同じ速度で再開されるかを調べることであった。
【0180】
この例の各反応に添加されたP4/CuCl2・2H2Oおよび水の概要が、表7に示されている。
【0181】
【表7】
これらの例のランに関する、温度、反応器圧、試料分析、累積選択性、勾配選択性、見掛P4転化、零オーダー速度、および標準化速度が、表8〜11Aに示されている。例115のランに関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットが、図29/29Aに示されている。例116〜118に関する同様のプロットが、それぞれ、図30/30A〜図32/32Aに示されている。
【0182】
図33は、それぞれ例115〜117の3種類の触媒添加に関する、時間に対する、点と点の間の見掛瞬間速度(平均速度)を示す。
【0183】
【表8】
【0184】
【表8A】
【0185】
【表9】
【0186】
【表9A】
【0187】
【表10】
【0188】
【表10A】
【0189】
【表11】
【0190】
【表11A】
【0191】
「見掛」または「逆算」P4転化は、反応器頂部空間におけるホスフィンガスの存在により、約10%で明らかに低い(液体試料分析においては確認されない)。PH3の大部分が、初期の「速い」反応部分の間に形成されると考えられる。各ランは、反応速度における分岐点(a break)を示した。観測された反応器圧増加と、化学量論的、気体の法則の計算から求められる反応器圧増加との開きは、反応の初期の速い部分の間に生じたと考えられ、その後、実際の圧力曲線と算定圧力曲線が平行になった。これは、ランの初期部分の間の不均化反応によるPOxおよびPH3の発生を示すものであると考えられる。
【0192】
例118のランにおいて、初期触媒添加量は10モル%Cuであった。2時間の反応時間後、前記のようにバッチを中断し、換気し、冷却した。110℃に再加熱した際に、反応が高初期速度においてさらに17時間にわたって進み、次に加熱を再除去した。第二反応時間後の反応器頂部空間の分析は検出できるPH3を示さず、これは、PH3の認識できる発生なしにP4の急速な触媒酸化を示す故に、注目すべき結果である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置、および本発明の方法の工程の概略図を示す。
【図2〜図10】本発明の装置の選択的実施態様、および方法の工程の概略図を示す。
【図11】水性相、四燐相、およびPd触媒を含んで成る不均一反応系における、反応混合物の累積選択性のプロットである。
【図12】触媒が燐相に組み込まれている、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系における、四燐からのPOxの収率のプロットを示す。
【図13】水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系において、密閉オートクレーブ中、90℃の反応温度、および燐原子に基づき2モル%のPd触媒添加量における、時間に対する攪拌速度のプロット、および、時間に対する反応器圧および転化のプロットを示す。
【図14】燐原子に基づき1.4モル%Cuの触媒添加量において、炭素触媒上22.5%Cu/1.8%Pdを使用する90℃における四燐の水での触媒酸化における、時間に対する、選択性および収率のプロットを示す。
【図15】図14の時間に対する選択性のデータを、炭素担体上15%Cu/3%Ptを含んで成る触媒を使用する以外は図14と同じ条件において行われる反応における時間に対する選択性のデータと比較する、2つのプロットを示す。
【図16】四燐によって系中で還元されるCuCl2水化物触媒を使用する、90℃における四燐の水での触媒酸化に関する、時間に対する累積選択性および収量のプロットを示す。
【図17】燐原子に基づき1.8モル%Cuの触媒添加量において炭素上22.5%Cu/1.8%Pdを使用して、生産性および選択性における温度の効果を評価するために行われた実験に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットを示す。
【図18】図17に示される反応に関する、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(転化速度)のプロットを示す。
【図19】図17に示される反応に関する、時間に対する補正反応圧(corrected reaction pressure)のプロットを示し、図19における挿入図は、開始温度からの増加の1/10に対する対数(r1/r2)のプロットを示す。
【図20】Pdを触媒として使用する水での触媒水性相酸化による、次亜燐酸の亜燐酸への転化の最後の反応における、時間に対する、累積選択性およびポイント−ワイズのプロットを示す。
【図21】初期の非攪拌条件および次の攪拌条件における、水との触媒反応による、四燐の酸化における、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性のプロットを示す。
【図22】2種類の反応条件における、時間に対するP(I)+P(III)選択性のプロットを示し、1つの条件は、P4の存在下に90℃において燐化銅(I)と水の混合物を攪拌することによって得られ、もう1つ条件は、P4の不在下に同様の条件において得られる。
【図23】反応において燐化銅の代わりに隣化ニッケルを使用して、実質的に図22と同様の方法によって得られるプロットを示す。
【図24】固定床に含有されるのではなく燐相に分散される触媒を使用する、図8と同様の工程図を示す。
【図25】例41の音波処理反応系における、時間に対する、次亜燐酸、亜燐酸、および燐酸濃度のプロットを示す。
【図26】例41の反応系における、時間に対する逆算燐転化のプロットを示す。
【図27】例41の反応系における、時間に対する選択性のプロットを示す。
【図28】例41の反応系における、時間に対する反応速度のプロットを示す。
【図29/29A〜図32/32A】それぞれ例115〜118の実験に関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットを示す。
【図33】例115〜117の反応に関する、時間に対する、点から点の見掛反応速度(apparent point to point reaction rates)のプロットを示す。
(技術分野)
本発明は、燐オキシ酸の製造、特に、水と元素状燐の触媒反応によるオキシ酸の新規製造方法に関する
【0002】
(背景技術)
燐のオキシ酸は、例えば、除草剤、殺虫剤、化学肥料、難燃剤、および可塑剤のような種々の用途を有する他の燐種の合成に重要な前駆物質である。
【0003】
化学肥料の製造に使用される燐酸は一般に、燐灰土を硫酸によって酸性化(acidulation)することによって製造され、その結果、副生成物または廃棄物質として処理しなければならない副生成物石膏または硫酸カルシウム半水化物の顕著な発生を生じる。燐灰土に含有されるフッ化物の酸性化によるHFの発生による環境問題および腐蝕問題も生じる。
【0004】
高純度燐酸は、元素状燐の五酸化燐への酸化、および稀燐酸中における五酸化燐の吸収によって製造される。この方法は、3500°Fより高い温度において燐を燃焼させて五酸化燐にする燃焼炉を必要し、大規模な燐酸の製造だけに使用される方法である。
【0005】
亜燐酸は一般に、三塩化燐のような燐のハロゲン誘導体を加水分解することによって製造される。ハロゲン誘導体は元素状燐から製造される故に、元素状燐から直接に燐酸を製造することによって経済的利益が得られる。直接的製造は、ハロゲン含有燐出発物質の使用およびハロゲン含有副生成物の発生を避けることによって、環境的利益も得ることができる。
【0006】
Engelによって「Oxidation of Hypophosphorous Acid by Hydorgenated Palladium in the Absence of Oxygen」、Compt. Rend. Acad. Sci., 1890, pp.786−787に記載されているように、パラジウム触媒の存在下において次亜燐酸を水で酸化することによっても、燐酸を製造することができる。しかし、ホスフィンまたは他の好ましくない副生成物を生成せずに、次亜燐酸出発物質を低コストで製造する工業的方法は容易に得られない。
【0007】
Christomanos(Z. Anorg. Chem., 41, 305−14, 1904)は、亜燐酸およびCuホスフィドへの金属誘導不均化による、有機溶液における元素状燐の分析的測定方法を記載している:
P4+CuSO4+6H2O→Cu3P2+3H2SO4+2H3PO3
元素状燐とCu2NO3との比較し得る反応も記載されている。化学量論的反応が記載されているに過ぎない。空気中の酸素が、酸化作用を有することが記載されている。4時間後、Cuホスフィドが消失し、溶液はCuホスフェートだけを含有する。
【0008】
白燐、黄燐または四燐(P4)としても既知の元素状燐同素体は、種々の燐種の合成の潜在的出発物質(a potential starting point)である。 白燐の四面体構造は、6個の燐−燐結合を有し、燐反応における中間体として存在する多くの反応性種を与えることができる。理解されるように、四燐は燐酸の主要な工業的製造方法の1つにおける原料である。中間ハロゲン化を行わない他の燐オキシ酸の製造の出発物質として、四燐を使用することができれば、特に反応を比較的緩慢な条件において行うことができる場合に、かなりのコスト的利益が得られる。しかし、燐と酸素の発熱反応において、P(V)オキシド、即ち燐酸の無水物の生成が不足している反応を制御するのは困難である。
【0009】
Ipatievの米国特許第1848295号および第1895329号は、高い温度および圧力における、水を使用する液体燐の触媒酸化による燐酸の製造方法を開示している。触媒は、銅およびニッケルの塩を包含し、銅またはニッケルホスフィドが反応において生成される。Ipatievは、特に反応の初期において、酸化反応の好ましくない副生成物として亜燐酸が生成されることを記載しているが、反応混合物中に存在する亜燐酸の部分、または反応のある時点において存在する燐および燐酸の相対的割合を記載していない。Ipatievは、反応を300℃またはそれより高い温度で行うのが好ましいことを記載しているが、前記米国特許第1895329号は、副生成物燐化銅が、反応の終わりに燐相に見い出される200℃における例を記載している。
【0010】
多くの文献が、600℃より高い温度、一般に1000℃より高い温度における、水を使用する燐の触媒蒸気相酸化による燐酸の製造を記載している。これらの反応に使用される種々の触媒が報告されており、銅、銀、および他の種々の金属、特にIB族およびVIII族金属、いくつかのVI族金属(例えば、Cr、Mo、W、およびU)、いくつかのVII金属(例えば、Mn)、および/またはそれらの酸化物、塩および/または燐化物を包含する。反応帯域からの触媒の浸出を防止するために、例えば、TiまたはZrのピロホスフェートを包含する、活性触媒の種々の担体の使用が提案されている。例えば、Liljenrothの米国特許第1605960号は、反応の触媒として、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、またはPtのような貴金属も記載している。
【0011】
(発明の概要)
本発明の目的は、燐のオキシ酸の向上した製造方法を提供し;燐の低級オキシ酸、特に亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;高選択性において、亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;高収量において、亜燐酸を生成するように制御することができるそのような方法を提供し;穏当に高い濃度で、亜燐酸を生成するように操作することができるそのような方法を提供し;環境への排出を最少限にして、操作することができるそのような方法を提供し;ハロゲン含有原料を使用しないか、またはハロゲン化副生成物を生成しないそのような方法を提供することである。
【0012】
従って、簡単に言えば、本発明は、200℃より低い温度における、水を使用する触媒反応によって、元素状燐を酸化することを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、低級燐酸化生成物を含んで成る酸化反応混合物を製造するのに有効な条件における水との反応によって、元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成る亜燐酸の製造方法であって、該反応混合物におけるP(V)種の濃度に対するP(I)およびP(III)種の合計濃度の比率が少なくとも約5である、製造方法にも関する。
【0014】
本発明は、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、約20気圧未満の圧力において、凝縮相(condensed phase)元素状燐を水に接触させることを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。元素状燐が、水との反応によって触媒的に酸化される。
【0015】
本発明は、触媒反応帯域における水との触媒反応によって元素状燐を酸化して、該反応帯域の単位容量(m3)当たり少なくとも0.01kg/時の速度で低級燐酸化生成物を生成することを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。
【0016】
本発明は、連続触媒反応帯域において元素状燐を触媒的に酸化して、少なくとも1×10−7kg/時−g触媒の速度で低級燐酸化生成物を生じることを含んで成る、燐のオキシ酸の製造方法にも関する。
【0017】
本発明はさらに、水を使用して元素状燐を触媒的に酸化し、それによって、少なくとも5重量%の低級燐酸化生成物を含んで成る水性反応混合物を製造することを含んで成る亜燐酸の製造方法であって、燐と水の反応が、水相および元素状燐を含有する凝縮相を含んで成る不均一反応系において行われ、該凝縮相が反応のための触媒を含有する、製造方法にも関する。
【0018】
本発明は、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法であって、触媒の活性部位が、触媒酸化反応の間に、水性相に優先して燐を含んで成る凝縮相に接触するように維持される製造方法にも関する。
【0019】
本発明はさらに、水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下に、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成る燐のオキシ酸の製造方法であって、触媒酸化反応が、該元素状燐相において優先的に起こる製造方法にも関する。
【0020】
本発明はさらに、元素状燐を、燐のオキシ酸へ酸化する装置にも関する。該装置は、水性相試薬を、四燐を含んで成る実質的に水不混和性の凝縮相に接触させる液体/液体接触帯域;および、水不混和性凝縮相を、水との反応による元素状燐の酸化のための触媒に接触させる触媒反応帯域;を有して成る。
【0021】
本発明は特に、元素状燐を含有する実質的に水不混和性の液体の溜め(reservoir)、および元素状燐を含有する該液体の表面を流れるように、水性液体を該溜めに導入する手段を有して成る装置に関する。水性相が水不混和性液体の表面を流れる際に、水が水性相から元素状燐を含んで成る相に移動し、燐酸化生成物が、元素状燐を含んで成る相から水性相に移動する。溜めは、反応に充分な、液相間の界面接触領域を与えるようになっている。触媒床は、界面から離れた水不混和性液体と接触する。触媒床は、水との反応による元素状燐の酸化のための触媒を含んで成る。
【0022】
本発明は特に、水性相および元素状燐を含んで成る分離相のための反応物溜めを有して成る装置に関する。溜め内の手段は、水性相と元素状燐を含んで成る相の間の物質移動を促進する。溜めから離れている固定触媒床は、反応のための触媒を含んで成る。該装置はさらに、元素状燐を含んで成る相を、溜めと触媒床の間に循環させる手段を有して成る。
【0023】
本発明はさらに、元素状燐および水との反応による燐の酸化のための触媒の混合物の触媒スラリータンク、ならびに向流液体/液体接触帯域を含んで成る不均一液相反応器、を有して成る、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための装置にも関する。液相反応器は、水性液体の入口、燐オキシ酸の水溶液の出口、燐相の入口、および燐相の出口を有する。該装置はさらに、液相反応器の燐相出口、触媒スラリータンク、および反応器の燐相入口の間に、燐相を循環させる手段も有して成る。
【0024】
本発明はさらに、燐のオキシ酸の製造に使用するのに有効な組成物にも関する。該組成物は、元素状燐および水との反応による元素状燐の酸化のための触媒を含有する混合物を含んで成る。
【0025】
本発明は、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための触媒を含んで成る固定触媒床がその中に配置される反応器を有して成る、元素状燐の燐オキシ酸への酸化のための装置にも関する。触媒床、ならびに反応器の中および触媒床の外のリフトレッグを、反応器内に配置して、触媒床の底部から循環される燐相によるリフトレッグの底部へのアクセスを与える。該装置はさらに、反応器中の燐相より上の水性相からの水性液体を、リフトレッグの上端と液体流動伝達する反応器のための出口と、燐相内の該リフトレッグの下端と液体流動伝達する反応器への戻り管(return)との間に、循環させる手段を有して成り、それによって、リフトレッグを通る水性液体の循環が、相間の液体/液体接触を与え、触媒床を通る燐相の循環を生じさせるのに有効である。
【0026】
本発明はさらに、その温度において、P(V)種の生成率に対するP(I)およびP(III)種の合計生成率の比率が、回分反応システムにおいて元素状燐の25%転化において3.0に低下する閾値温度より低い温度における、水を使用する触媒反応によって、元素状燐を酸化することを含んで成る燐オキシ酸の製造方法にも関する。
【0027】
本発明は、水、元素状燐を含有する相、および反応のための触媒を含んで成る触媒反応帯域における、水との反応によって元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法にも関する。音波および/またはマイクロ波エネルギーが、反応の間に反応帯域に導入される。
【0028】
他の目的および特徴は、一部が明らかであり、一部が下記に記載にされる。
【0029】
(図面の説明の概略)
図1は、本発明の装置、および本発明の方法の工程の概略図を示す。
図2〜図10は、本発明の装置の選択的実施態様、および方法の工程の概略図を示す。
図11は、水性相、四燐相、およびPd触媒を含んで成る不均一反応系における、反応混合物の累積選択性のプロットであり、P4の枯渇前および後の反応の進行を示す。
【0030】
図12は、触媒が燐相に組み込まれている、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系における、温度およびPd触媒添加量の種々の組み合わせに関する、反応時間に対する、四燐からのPOxの収率のプロットを示す。
図13は、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系において、密閉オートクレーブ中、90℃の反応温度、および燐原子に基づき2モル%のPd触媒添加量における、時間に対する攪拌速度のプロット、および、時間に対する反応器圧および転化のプロットを示す。
【0031】
図14は、燐原子に基づき1.4モル%Cuの触媒添加量において、炭素触媒上22.5%Cu/1.8%Pdを使用する90℃における四燐の水での触媒酸化における、時間に対する、選択性および収率のプロットを示す。
図15は、図14の時間に対する選択性のデータを、炭素担体上15%Cu/3%Ptを含んで成る触媒を使用する以外は図14と同じ条件において行われる反応における時間に対する選択性のデータと比較する、2つのプロットを示す。
【0032】
図16は、四燐によって系中で還元されるCuCl2水化物触媒を使用する、90℃における四燐の水での触媒酸化に関する、時間に対する累積選択性および収量のプロットを示す。
図17は、燐原子に基づき1.8モル%Cuの触媒添加量において炭素上22.5%Cu/1.8%Pdを使用して、生産性および選択性における温度の効果を評価するために行われた実験に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットを示す。
【0033】
図18は、図17に示される反応に関する、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(転化速度)のプロットを示す。
図19は、図17に示される反応に関する、時間に対する補正反応圧(corrected reaction pressure)のプロットを示し、図19における挿入図は、開始温度からの増加の1/10に対する対数(r1/r2)のプロットを示し、r1は、開始温度におけるP4の酸化速度であり、r2は、横座標に示される温度増加値から求められる温度における酸化速度である。
【0034】
図20は、Pdを触媒として使用する水での触媒水性相酸化による、次亜燐酸の亜燐酸への転化の最後の反応における、時間に対する、累積選択性およびポイント−ワイズ(point−wise)のプロットを示す。
図21は、初期の非攪拌条件および次の攪拌条件における、水との触媒反応による、四燐の酸化における、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性のプロットを示す。
図22は、2種類の反応条件における、時間に対するP(I)+P(III)選択性のプロットを示し、1つの条件は、P4の存在下に90℃において燐化銅(I)と水の混合物を攪拌することによって得られ、もう1つ条件は、P4の不在下に同様の条件において得られる。
【0035】
図23は、反応において燐化銅の代わりに隣化ニッケルを使用して、実質的に図22と同様の方法によって得られるプロットを示す。
図24は、固定床に含有されるのではなく燐相に分散される触媒を使用する、図8と同様の工程図を示す。
図25は、例41の音波処理反応系における、時間に対する、次亜燐酸、亜燐酸、および燐酸濃度のプロットを示す。
【0036】
図26は、例41の反応系における、時間に対する逆算燐転化のプロットを示す。
図27は、例41の反応系における、時間に対する選択性のプロットを示す。
図28は、例41の反応系における、時間に対する反応速度のプロットを示す。
【0037】
図29/29A〜図32/32Aは、それぞれ例115〜118の実験に関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットを示す。
図33は、例115〜117の反応に関する、時間に対する、点から点の見掛反応速度(apparent point to point reaction rates)のプロットを示す。
一致する符号は、いくつかの図面において一致する部分を示す。
【0038】
(好ましい実施態様の説明)
本発明によれば、元素状燐、特に四燐を、反応の触媒の存在下において水と反応させて、選択的にP(III)およびP(I)燐オキシ酸を生成し得ることが見い出された。次亜燐酸(P(I))から亜燐酸(P(III))への触媒酸化は当分野において既知であるが、元素状燐が、触媒の存在における水での酸化による次亜燐酸および/または亜燐酸の製造において、主要基質として作用することが見い出された。本発明の反応、および亜燐酸から燐酸へのさらなる転化が、下記式によって示される:
【0039】
【化1】
【0040】
反応は、本質的に順に進行すると考えられる、即ち:
【化2】
【0041】
その反応において、いくらかのホスフィンも生成され、不均化段階が反応機構に含まれることを示す、即ち:
【化3】
【0042】
次に、ホスフィンの有意部分のP(I)酸への触媒酸化が行われると考えられる:
【化4】
【0043】
正確な機構がどのようなものであるにしても、下記のような好ましい条件において反応が行われる場合に、ホスフィン残基は、触媒を使用しないアルカリ性の系において得られる既知の不均化によって得られるホスフィンと比較して、少なくすることができる。
【0044】
本発明の方法によれば、元素状燐、好ましくは四燐を、反応のための触媒の存在下において水と接触させる。P(III)オキシ酸、P(I)オキシ酸、またはそれらの混合物の製造に選択的な条件において、反応を行うのが好ましい。
【0045】
本明細書において使用される「P(I)種」という用語は、+1の酸化状態において燐を含んで成る燐化合物、イオン、または残基を意味し、「P(III)種」という用語は、+3の酸化状態において燐を含んで成る化合物、イオン、または他の成分を意味する。本発明の触媒反応において生成されるP(I)およびP(III)種は、亜燐酸、次亜燐酸、および/またはそれらの共役塩基、即ち、それぞれH2PO3 −1およびH2PO2 −1、および/またはこれらのアニオンの他の種々の共役体、例えば、HPO3 −2、PO3 −3、およびHPO2 −2を包含する。反応混合物の全組成物および反応条件に依存して、他のP(I)および/またはP(III)種が存在する場合もある。本発明の開示において、P(I)およびP(III)オキシ酸および共役塩基、それらの他の共役体、およびP(I)とP(III)オキシ酸の混合物、および/または種々の共役体が、個々に、または集合的に、「低級燐酸化生成物」と称される。
【0046】
元素状燐、好ましくは四燐を含んで成る凝縮相が分離水性液相に接触する、不均一凝縮相反応系において、反応を行うのが好ましい。不均一反応系は、亜燐酸(H3PO3)、H2PO3 −1、HPO3 −2、PO3 −3、次亜燐酸(H3PO2)、H2PO2 −1、および/またはHPO2 −2を主として含んで成る反応生成物混合物の製造に特に好ましい。不均一反応系において、実質的に水不混和性溶媒、好ましくはベンゼンまたはトルエンのような有機溶媒に、元素状燐を溶解させる。四燐を、溶融または分散固体形態において、正味で(neat)装填するのが有利である。あるいは、元素状燐に関して水溶性溶媒を含んで成る均質系において、反応を行うこともできる。好適な水相溶性溶媒は、低級アルコール(C1〜C5)およびイオン液体、即ち、反応温度において液体の塩を包含する。
【0047】
反応系における水/四燐の比率は、そのような反応に関して一般に限定的でないが、所望の選択性の維持に一致する所望の濃度において燐オキシ酸を生成するのに充分な燐を供給するように、制御する必要がある。不均一反応系において、水性相および四燐を含んで成る相の間に充分な界面領域を与え、それによって、反応速度が、物質移動速度によって制限されないようにし、選択性を維持するのに充分な速度において燐相からオキシ酸が取り出されるようにするのが望ましい。便宜上、後者の相を以下に「燐相」と呼ぶ場合もあり、この用語は、正味元素状燐、または実質的に水不混和性溶媒中の元素状燐の溶液を意味すると理解されるものとする。水性相と燐相の間の充分な界面領域は、管理攪拌、および/または下記のような種々の器具配置によって得られる。四燐の酸化は、四燐と、水性相から燐相へ移動する水との反応によって、実質的に燐相(該相からの水素の放出によって示される)において起こると考えられる。燐オキシ酸反応生成物は、界面を通って水性相に戻される。
【0048】
種々の触媒が、本発明の酸化反応に有効である。好ましい触媒は一般に、例えば、白金金属、AgおよびAuのようなIB族金属、VIII族金属、白金金属の酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII属金属の塩、IB族金属の燐化物、およびVIII属金属の燐化物を包含する。本発明のある実施態様においては、触媒が貴金属触媒または貴金属触媒の混合物であるのが好ましい。例えば、パラジム、より好ましくはパラジム黒を含んで成る触媒を使用して、P(V)種に優先してP(I)およびP(III)に酸化する選択性に有効な温度において、高選択性が得られた。特に高い選択性は、銅、燐化銅、酸化銅、銅塩、例えば、塩化銅、硫酸銅、次亜燐酸銅、亜燐酸銅、燐酸銅、または硝酸銅を含んで成る活性相を有する触媒を使用することによって得られる。他の特に好ましい触媒は、ルテニウムおよびロジウムの塩または配位化合物を含んで成る。
【0049】
活性金属の有効表面積を広げ、従って活性部位の有効性(availability)を広げる担体で、活性触媒を任意に担持することができる。種々の従来の触媒担体を使用することによって、一般に広い担体表面積に付着される、触媒の有効活性相表面積を広くすることができ、ある場合には、凝集による表面積の減少を防止することもできる。いくつかの分散貴金属触媒は、反応の間に凝集するのが観察され、その結果、有効活性表面積が減少し、触媒生産性が減少する。不活性担体はさらに、水性生成物相における触媒の浸出および活性触媒の損失を防止する働きもするが、貴金属触媒が下記のような好ましい反応条件において使用される場合は、触媒の損失は重大な問題ではない。担持触媒(supported catalyst)の例は、炭素上Pd触媒である。一般的な1%Pd/C、3%Pd/C、または5%Pd/C触媒が好適である。他の好適な担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライト、多孔質珪藻土などを包含する。Pd触媒はP(III)オキシ酸に高選択性であるが、他の貴金属触媒、特に他の白金金属触媒、例えば、Pt、RuまたはRhも使用することができる。例えば、一般的なPt/C触媒が反応に有効である。
【0050】
IB族およびVIII族の触媒の場合に、不活性担体は、活性触媒相の有効表面積を広げ、および触媒を安定化して反応生成物による触媒の浸出を防止するのにも有効である。IB族およびVIII族触媒は、白金金属触媒に関して前記に記載した担体上に適用することができる。銅または他のIB族の金属の炭素担体への付着を強化するために、初めにPtまたはPdのような貴金属を担体に適用し、次にPtまたはPd層の上にCuまたはAgを適用するのが好ましい。あるいは、IB族触媒を、ピロ燐酸塩、好ましくはチタン、ハフニウム、またはジルコニウムのピロ燐酸塩のような好適な担体において使用することができる。
【0051】
担体によって得られる機能にもかかわらず、特に好ましい触媒は、非担持銅化合物、最も好ましくはハロゲン化銅のような銅塩または鉱酸または他の低分子量酸の他の塩を含んで成ることが見い出された。水性相および元素状燐を含んで成る水不混和性相を含んで成る不均一液体反応系において、元素状燐のP(I)およびP(III)種への所望の酸化が、主として燐を含んで成る相において起こると一般に考えられる。それにもかかわらず、触媒がCuCl2・H2Oのような水溶性銅化合物を含んで成る場合に、第二銅イオンが燐相に組み込まれることが見い出された。
【0052】
燐相において、第二銅イオンが元素状燐と反応して、触媒作用を与える1つまたはそれ以上の燐化銅が生成される。第二銅イオンの酸化状態が、工程において第一銅に還元され、元素Cuさえ形成される場合がある。いずれにしても、銅塩が元素状燐と結合し、燐相が最終的に、ブラックサンド(black sand)の外観を有する粒状、濾過性形態において分散される。反応混合物への銅触媒の導入において、初めに銅塩を、最少量の水、即ち塩の本質的に飽和した溶液を作るのに有効な量の水に溶解し、次に、元素状燐に加え、燐相と反応水との混合前に充分に該元素状燐と混合する。次に、銅触媒を含有する燐相を、攪拌しながら、反応水を含んで成る水性相と混合し、その結果、水性相の下に触媒を含有する元素状燐の銀白色(反射性)ブラックプール(black pool)が反応器中に形成される。ある反応時間後に、銀白色ブラックプールが破壊し(break up)、触媒および燐相が、前記の濾過性ブラックサンドの形態において分散する。
【0053】
特定の理論に縛られるものではないが、このブラックサンドに存在する還元形態の銅は、第一銅塩、燐化銅、銅金属、またはこれらの2つまたは全部の組み合わせを含んで成ると考えられる。下記に記載されるように、分散触媒粒子または液体粒子が、元素状燐の薄膜で被覆されていると考えられるが、ある場合には、銅触媒が燐液体粒子に分散され、反応の終了までに、粒子が燐化銅に転化されることもある。所定温度において、Cu触媒を含んで成る不均一な水/燐反応物系における反応速度は、ブラックサンドの形成後より、形成前において、顕著に速いのが観察される。特定の理論に縛られるものではないが、ブラックサンドへの転化は、燐相の凝固に関係し、水性相と燐相の間の物質移動に対する抵抗を実質的に増加させると考えられる。しかし、ブラックサンドに転化された系または転化されなかった系に関して、銅塩の導入によって得られるそのような銅触媒が、Arrhenius方程式から予測される増加より実質的に大きい、経時における反応速度増加を示すことが意外にも見い出された。
【0054】
本発明によれば、不均一反応物系において反応を行い、過度の反応温度を避けることによって、P(III)酸に高選択性にし、特に、P(V)酸の生成を最少限にするように、反応を制御し得ることが見い出された。特に、ある種の触媒、例えば、パラジウムのような貴金属触媒が、水性相に対して、四燐を含んで成る相に高選択的親和性を有することが見い出された。銅、酸化銅、および燐化銅のようなIB族触媒も、燐相に親和性を有する。前記のように、水溶性銅塩でさえ明らかに燐相に優先的に分配され、系中で急速に銅の形態に転化される。本発明によれば、触媒は主として四燐を含んで成る相に分配され、事実上、実質的にその中に含有される。従って、そのような触媒の活性部位が、燐相に選択的に接触し、反応が選択的に燐相において起こると考えられる。
【0055】
実際上、比較的高い反応温度、例えば、90℃より高い温度において、P(III)からP(V)酸への転化に活性な触媒部位と水性相の接触を、最少限にするのが好ましい。偶然にも、多くの好ましい触媒が燐相に可溶性であり、燐相に高選択的親和性を有し、実質的にその中の均質触媒として作用すると考えられる。付加的にまたは選択的に、いくつかの触媒は、燐相においてそれらが有する形態と非常に異なる形態または配置を水性相において有し、それによって、P(III)からP(V)への酸化に関して認識される活性を示さないに過ぎないと考えられる。従って、触媒が燐相に充分な親和性を有することを条件として、選択性の維持は、水性相との接触を防止する特別な工程を必要としない。一方、生産性のためには、反応のための水を供給する水性相に、燐相を接触させる前に、触媒を燐相に充分に組み込むことが好ましい。
【0056】
不均一系触媒、例えば、担持触媒またはPd黒のような粒子触媒は、選択的に高親燐性(phosphilic)であり、それによって、それらも主として燐相に分配される。少なくとも数種の不均一系触媒において、下記の攪拌の強さのような工程パラメーターを制御して、活性触媒部位と水性相の接触を制限するのが好ましい。
【0057】
理解されるように、Pd黒は、燐相に高親和性を有し、該反応に有効な触媒であることが明らかである。Pd黒が、微粒金属として燐相に分配され、ホスフェート相に金属溶質として融合する(amalgamate)か、または燐と反応してPd燐化物を形成するかは分からない。それが未反応および未溶解を維持する限度までは、Pd触媒は、元素状燐と水の反応を促進するのに充分に有効でないと考えられる。
【0058】
Cu燐化物の明らかな生成、または少なくとも燐相におけるCuの原子分配が、CuCl2・H2Oから誘導されるCu触媒を、反応に特に有利な触媒にすると考えられる。水/元素状燐不均一系に関して、CuCl2・H2Oから誘導されるCuが、事実上、均質触媒を燐相に形成し、該相において、所望の反応が行われると考えられる。塩化第二銅が、非常に水溶性であるという事実は、触媒としてのそれの有効性、またはP(V)オキシ酸に対するP(I)およびP(III)への選択性によって、損なわれない。
【0059】
触媒が、無機カウンターイオンを有する金属塩を含んで成る場合に、カウンターイオンは一般に、水性相と燐相の間の金属の分配においてそれが有する効果の他には、触媒の作用において役割を果たさないと考えられる。しかし、酸素原子移動剤として作用するモリブデートまたはペルマンガネートのようなカウンターイオンは、触媒反応を実質的に加速するのに有利な効果を有する。触媒の不存在下において、そのような物質は実質的な効果を有さない。例えば、Naモリブデートの存在は、200℃より低い温度において、水と燐の反応を促進しない。しかし、Cuモリブデート触媒は、CuCl2またはCuSO4と比較して、反応速度の顕著な初期増加を与えることが観察されている。Cuモリブデートの存在における燐の触媒酸化の間に、水性相が徐々に青色に変わり、MoO4 −2の部分還元から生じるオキシドおよびヒドロキシド官能価を有する種のタイプと一致する。例えば、Cu燐化物が、水との反応によって酸化され、元素状燐との反応によって還元されて、POx種を生成する活性酸化還元触媒であるとすれば、モリブデートはCu燐化物の推定される遅い酸化還元を補助する移動剤として作用することができる。他の酸素移動剤は、ジメチルジオキシラン、エチレンオキシド、ヨードシルベンゼンオキシド、オキソニウム塩、ポルフィリン、フェリシニウム塩、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩、およびタングステート塩を包含する。
【0060】
電子移動剤も、本発明の触媒酸化反応を促進するのに有効であると考えられる。有用な電子移動剤の例は、ピリジン、メチルビロゲン、4,4’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン、キノリン、ジ第四級塩(diquaternary salt)、例えば1,1’−エチレン−2,2’−ジピリジニウムブロミドである。Fieldsの米国特許第5072033号を参照。
【0061】
反応に好ましい触媒は、種々の有機金属配位触媒を包含する。例えば、Pd、Ru、Rhような白金金属、Ni、Cr、CoおよびMnのような他の遷移金属、ならびにAgおよびAuのようなIB族貴金属の配位化合物が、本発明の反応を触媒するのに有効であることが分かった。それらは全て、P(I)+P(III)オキシ酸への穏当な選択性を与える。Niは、約85〜90%の選択性を与えるにすぎないが、これは、元素状燐の廃棄物源(waste sources)の転化のような適用に関して、非常に満足できるものである。これと比較して、RuおよびRhの配位化合物は、一貫して92〜98%のP(I)+P(III)への選択性を与える。興味深いことに、Ni触媒の存在下に行われる酸化において、非常に少ないP(I)酸が生成される。これらの全ての金属に関して、元素状燐が消失するまで反応し、触媒が水性相に分散された後でさえ、選択性が維持される。かなりの燐相が存在している酸化反応の間でさえ、RuCl2(2,2’−ビピリジル)2およびRuCl2(ジメチルスルホキシド)4のような配位化合物は、透明赤色に変わる水性層によって立証される水溶性種を生じるのが観察される。しかし、この現象は、P(V)種の生成の有意な増加に関係がない。
【0062】
NiCl2・xH2Oのような無機Ni塩は、元素状燐相において易溶解性ではなく、従って、酸化触媒として有効ではない。Niおよび他の配位化合物の親油性配位子は、燐相における溶解性を増加させ、水性相に優先して燐相に金属を分配するのに有効である。従って、配位触媒の選択において、高親油性配位子が一般に好ましい。例えば、NiCl2(Φ3P)3、ビス(シクロペンタジエニル)Niおよびビス(シクロオクタジエニル)Niは、燐相において非常に溶解性であり、有効な酸化触媒として作用する。これらは全て、四面体配置によって、例えば、シクロオレフィンのオレフィン二重結合によって、金属に配位される。配位子は、有効であるためには、初期混合の間だけでなく、反応条件下の燐相において金属中心を支持することができなければならないことに注意すべきである。例えば、NiCl2(1,2−ジメトキシエタン)は、450℃の混合温度において、四燐において非常に溶解性であるが、90℃の反応温度において、NiCl2(1,2−ジメトキシエタン)/P4混合物は、黄色から黒色に変化し、次に、Ni金属が反応器の側面にプレートアウトし始める。従って、1,2−ジメトキシエタン配位子は反応条件において金属錯体を支持することができず、従って、分解する。
【0063】
他の規準も、配位子の組の好ましい選択に影響を与える。容易に解離しない強結合配位子は、金属における配位結合部位への四燐のアクセスを阻止することによって触媒活性を阻止し得る。例えば、NiCl2(Φ3P)2の一歯(monodentate)トリフェニルホスフィン配位子は、容易に解離して、金属錯体における反応部位を開く。しかし、NiCl2ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンの二歯(bidentate)1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン配位子は、配位結合部位を開く傾向が非常に弱く、この触媒による酸化反応は非常に遅い。2個のシクロペンタジエニル環を有するNi触媒に関して、1つのシクロペンタジエニル環が、金属錯体から容易に解離することが既知である。この特徴と一致して、ビス(シクロペンタジエニル)Niが、元素状燐からP(III)オキシ酸への比較的有利な速度の酸化を触媒することが示されている。高不安定性配位子の存在が、Arrhenius方程式によって予測される一般的な増加よりかなり大きい、温度による反応性の増加を生じることも観察された。例えば、RhCl(Φ3P)3の場合に、元素状燐からP(III)オキシ酸への酸化の動速度定数(kinetic rate constant)は、一般に予測される4倍ではなく、90℃〜110℃において10倍で増加する。
【0064】
酸化的付加を遅延させる電子吸引配位子も触媒反応を遅くする。例えば、Rhの場合、Wilkinson’s触媒、RhCl(φ3P)3は、電子吸引CO配位子がトリフェニルホスフィン配位子の1つに代わって置換されている、その他は同じ触媒のトランスRhCl(CO(φH3)2よりかなり速い転化速度を与える。
【0065】
触媒は、P(I)反応生成物に対するP(III)反応生成物への選択性において変化する。しかし、下記に詳細に記載するように、触媒、特に元素状燐の酸化に使用される触媒と同様の性質を有する触媒の存在下の水性相と水との反応によって、次亜燐酸、H2PO2 −1およびHPO2 ー2イオンのようなP(I)種が、亜燐酸、H2PO3 −1、HPO3 ー2およびPO3 −3のようなP(III)種に容易に転化される。従って、本発明の主な目的は、元素状燐を選択的に酸化して、P(V)種に優先して低級亜燐酸酸化生成物を生成することによって達成される。P(I)およびP(III)種間の酸化反応生成物の分布に関係なく、元素状燐の酸化によって生成される反応混合物におけるP(I)およびP(III)の合計濃度/P(V)濃度のモル比を最大にするように、触媒および他の条件を選択するのが好ましい。例えば、[P(III)+P(I)]/P(V)の高比率を有する初期反応混合物を生成するのに有効なある種の触媒が、P(III)/P(I)の比較的低い比率を生じることが見い出されたが、所望されるように、P(I)種は容易におよび選択的にP(III)種に転化されて、高濃度の亜燐酸および高比率のP(III)/P(V)を有する最終反応生成物を生成する。従って、5より大きい、好ましくは8より大きい、より好ましくは19より大きいP(III)/P(V)の最終比率が、工程において得られる。
【0066】
高温、例えば約100℃より高い温度、より好ましくは、反応定数の超Arrhenius温度応答が特に高い生産性を与える約105℃〜約180℃を含む広い範囲の温度および攪拌条件において、好ましい銅塩触媒は、P(I)+P(III)オキシ酸への高選択性を与えることが立証されている。
【0067】
燐酸化反応の不均一系触媒が、少なくとも約5m2/g、一般に約5m2/g〜70m2/gの活性相B.E.T.表面積を与えるのが一般に好ましい。好ましくは、Pd黒のような白金金属触媒は、約30〜約50m2/gのB.E.T表面積を有し、一方、銅金属触媒は、約10〜約60m2/gのB.E.T.表面積を与える。高活性相表面積は、活性相のための担体を使用することによって効果的に得られる。酸化工程は、固定触媒床において、流動層において、または凝縮相反応系に懸濁された触媒を使用して、行うことができる。好ましい活性相表面積を有する触媒を使用して、少なくとも1×10−7kg/時−g触媒の速度において亜燐酸を生成するように、反応温度および攪拌条件を選択することができる。
【0068】
スラリー系において、特に触媒がPd黒のような金属形態において添加される場合に、貴金属または他の触媒の添加量は一般に、反応系に存在するP原子に基づいて、約0.5モル%〜約50モル%貴金属、好ましくは約1モル%〜約15モル%、より好ましくは約1.5モル%〜約12モル%である。担体の使用によって触媒が拡張される(extended)場合に、より少ない添加量が可能である。大部分の有効添加量は、触媒の種類および形態によって変化する故に、最適な工業触媒添加量を日常試験によって決めなければならない。
【0069】
固定床または流動層反応系において、触媒塊(catalyst mass)が触媒反応帯域を規定し、その領域において、m3で示される反応帯域の単位容量に対して、少なくとも0.01kg/時、好ましくは少なくとも約10kg/時、より好ましくは少なくとも約50kg/時の速度において低級燐酸化生成物を生成するのに充分な活性層表面積であるのが好ましい。連続固定床または流動層反応器において、少なくとも約1×10−7kg/時−g触媒、好ましくは少なくとも約1×10−4kg/時−g触媒、より好ましくは少なくとも約1×10−3−kg/時−g触媒の合計生産性において、P(I)およびP(III)種を生成するように、活性触媒表面積および反応温度が選択される。
【0070】
反応は、広い範囲の温度、例えば約10℃〜約200℃において行うことができる。しかし、液相間の穏当な物質移動速度において、反応は不均一反応系においてさえ制限される動態(kinetics)であることが明らかにされており;さらに、Cu塩または配位化合物以外の大部分の触媒に関して、温度が、動的速度定数において予期される指数効果を有することも分かっている。理解されるように、ある種の塩および配位化合物が使用される場合に、温度が、超Arrhenius効果を有することが観察されている。従って、適切な選択性と一致する最大温度において、反応を行うのが一般に好ましい。P(V)酸に対するP(I)+P(III)への選択性は、約100℃より高い温度によって適度に低下することが観察されるが、200℃より有意に高い温度において、低下が累進的である。200℃より低い温度において、選択性が、触媒の種類に依存して変化し、少なくともある種の触媒に関しては、活性触媒部位と水性相の接触の程度に依存する。
【0071】
触媒および他の条件の選択に依存して、最適温度が変化する。生産性を最大にするために、閾値温度に近いバルク液体温度(bulk fluid temperature)、好ましくは0.5℃〜20℃、より好ましくは2℃〜10℃、P(V)に対する[P(I)+P(III)]への選択性が急激に低下し始める閾値温度より低い温度において、反応を行うのが一般に好ましい。この閾値温度は、触媒の性質および他の反応パラメーターによって変化する一方、P[P(I)+P(III)]生成/P(V)生成の限界比率[d(i+iii)/dv]が、回分反応系において3.0未満に減少する温度として一般に規定される。触媒の性質に依存して、選択性低下閾値温度は、例えば、195℃、185℃、175℃、または150℃である。
【0072】
生産性と選択性の最適トレードオフ(trade off)は、生成物オキシ酸が使用される目的に依存して変化し得る。四燐の凝固点(freezing point)は約45℃である故に、その温度より低い温度で行われる反応は、四燐の溶媒の存在下に行わなければならない。
不活性または還元雰囲気において、反応が最も効率的に行われる。例えば、アルゴンまたは窒素雰囲気において、反応が行われる。反応の前に、溶解酸素を除去するために、不均一反応系の水性相、または均質反応系の全添加溶液を、窒素、アルゴン、または他の不活性ガスでパージするのが好ましい。
【0073】
タービン攪拌器103のような攪拌手段を有するタンク反応器101が図1に示されている。液体四燐105、ならびに燐相より上にある燐相と界面接触する水性液体107のプールが、タンク内に含有されている。本発明によれば、Pd黒のような貴金属触媒が反応器に添加され、反応器の含有物が中度攪拌(moderate agitation)される場合に、Pd黒は漸進的に四燐相に移動する。この効果は、目視によって観察することができる。初めにPd黒がタンク中の水および四燐装填材料に装填された際に、全装填混合物が黒色および不透明になる。しかし、中度攪拌を行った際に、水性相は徐々に透明になり、最終的に無色透明になり、一方、四燐相は、黒または銀黒色のままである。四燐が液体状態を維持する温度において、四燐の酸化が進み、水性相に実質的部分の触媒が存在する限り、酸化生成物は実質的成分の燐酸を含有し;事実上、(P(V))酸が主要生成物である。しかし、触媒が主として四燐相に分配された後に、亜燐酸への高選択性において反応が継続する。Pd黒またはIB族金属または化合物の四燐相への分配は、酸化反応よりかなり速く進むことができる故に、初めに装填され、前記のように操作される回分反応器において全体的な高選択性が得られる。
【0074】
亜燐酸への全体的選択性は、連続または半連続ベース、または半回分において、攪拌タンク反応器を操作することによってさらに向上させることができる。連続操作において、水を連続的にまたは断続的に水入口109から供給し、生成物オキシ酸溶液を生成物出口111から採収し、四燐を連続的または断続的に燐入口113から供給する。図示されるように燐入口は相界面より下に位置するが、燐は反応器のどの位置からも導入することができ、四燐を含んで成る相に分布する。半連続操作において、水性相が連続的にまたは断続的に反応帯域全体に流れるが、燐は、回分ベースで装填されるかまたは補充される。半回分操作において、初めに、単一回分に必要である量より過剰の四燐の装填量が、反応に充分な濃度の触媒と一緒に反応器に導入され、および、連続のオキシ酸バッチが反応器への水の連続装填によって生成される。連続または半連続操作の滞留時間、または回分または半回分操作のサイクルを制御することによって、所望濃度のオキシ酸が生成される。あるいは、出口111から採収される稀酸が、蒸発器115において濃縮される。
【0075】
次亜燐酸および亜燐酸の燐酸への転化を最少限にするために、相間の物質移動を促進するのに充分な強さにおいて攪拌の種類および程度が管理されるが、活性触媒部位と水性相の過剰な接触を防止するのに充分な弱さであるのが好ましい。中度限界攪拌レベルより低いレベルにおいて、反応速度が、反応のための水の水性相から燐相へ物質移動、および燐相から水性相への燐オキシ酸生成物の物質移動によって、反応速度が制限される。しかし、該限界攪拌レベルより高いレベルにおいて、反応速度は物質移動に依存せず、反応の動態(kinetics)によって制限される。動態制限条件に到達した後は、攪拌をさらに増加することは意味がないと考えられ、少なくともある種の不均一系触媒に関しては、過剰攪拌が、水性相を活性相触媒部位に接触させる可能性があり、その結果、亜燐酸への選択性が減少することが予期される。
【0076】
しかし、許容される攪拌強度の範囲は、非常に広いと考えられる。従って、Pd黒触媒の場合に、燐相が微細分散された場合でさえ、選択性は顕著に減少することはなく、個々のPd触媒粒子が、燐相エンベロープに封入された状態に維持されることを示すと考えられる。いずれにせよ、限界レベルより高い比較的広い攪拌範囲において、反応速度および選択性が攪拌によって実質的に影響を受けない。この範囲において、反応速度は零オーダーまたは疑似ゼロオーダー挙動を示し、水飽和燐相における反応を示すと考えられるが、本質的に一般的な仕方で温度および触媒添加量に応答する。比較的広い範囲の攪拌強度において、亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約0.4であり、5〜約19のモル比が容易に得られる反応生成物が生成されることが見い出された。従って、亜燐酸が5重量%より高い濃度、好ましくは約20重量%〜約70重量%の濃度で生成され、一方、少なくとも約8のP(III)/P(V)の比においてPオキシ酸を生成するのに充分な選択性を維持し、燐酸含有量は約15重量%以下である。
【0077】
銅触媒が使用される場合に、水相溶性物質の粒子または液体粒子を水性相に分散させるのに充分な攪拌の強さである場合でさえ、P(I)およびP(III)酸への選択性が高レベルに維持される。液体粒子は外観において黒であり、元素状燐の皮膜または液体粒子中に封入されるかまたは分散される活性触媒部位を含んで成ると考えられる。ある場合には、銅を、燐化銅または燐/燐化銅アマルガムとして、水性相に分散させることができる。反応が進む際に、それらは、前記のような「ブラックサンド」に転化される。いずれにしても、触媒の反応部位は、元素状燐または他の水相溶性物質の皮膜によって水性相から分離され、それによって、燐酸への転化が阻止されると考えられる。さらに、銅または他のIB族触媒が使用される場合に、P(I)およびP(III)酸への選択性は一般に90%より大きく、より一般的には95%より大きく、ほとんどの場合に98%より大きい。
【0078】
さらに、本発明によれば、水性相、元素状燐を含んで成る相、および反応のための触媒を含む反応帯域に、音波エネルギーを伝達することによって、触媒酸化反応速度を実質的に向上し得ることも見い出された。約10kHz〜約1MHzの周波数および約0.1〜15ワット/cm3の強度における音波処理は一般に、それ以外は同じ水性相組成、燐相組成、触媒活性、および温度条件における反応速度と比較して、少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5の係数で反応速度を増加させることが見い出された。例えば、音波処理反応混合物中での60℃における反応速度は、非音波処理混合物中での90℃における反応速度に相当することが見い出された。触媒が燐相に含有されるかまたは、少なくとも活性触媒部位が、燐原子を含んで成る相の皮膜によって水性相から分離している本発明の好ましい実施態様において、音波処理の効果が特に有利である。比較的中度の(modest)攪拌レベルに到達した後は、バルク攪拌(bulk agitation)が反応速度に有意な影響を与えないが、音波処理は、燐相への水の適切な供給および燐酸化生成物のそこからの除去に充分な本質的にどのようなバルク攪拌強度においても、反応速度を顕著に増加させることが見い出された。
【0079】
本発明を特定の理論に限定するわけではないが、触媒と燐相の界面における音波の衝突が、反応部位への水の拡散率、および反応部位からの燐酸化生成物の拡散率を増加させ、および/または、燐相と活性部位の物質移動に関する皮膜係数(film coefficient)が、他の何らかの方法によって、おそらくは触媒界面における皮膜中の微腔(microcavities)の発生による前記界面におけるエネルギーの導入によって促進されると考えられる。音波処理は、反応混合物の外観を変化させるのが観察され、反応混合物を「ミルクセーキ」の外観を有する不透明液状塊に変化させるが、これが、親燐性(phosphophilic)触媒の活性触媒部位を被覆する元素状燐の皮膜を壊すとは考えられない。
【0080】
音波処理は、局部高温を作り、遊離基を発生させ、あるいは触媒の活性を増加させることによって、触媒部位における反応性を顕著に増加させることもできる。従って、界面においてある形態のエネルギーを導入することによって、顕著な速度増加が得られると考えられ、この現象は、実質的に散逸せずに水性相および燐相に伝達し得るが、界面において吸収されて、水および反応生成物の交換を増加させ、および/または触媒部位における反応性を増加させるある形態のエネルギーを、反応帯域へ導入することによって得られる現象である。従って、例えば、音波エネルギーよりむしろ(または音波エネルギーに付加して)マイクロ波エネルギーを反応帯域へ導入することによって、速度増加が得られる。
【0081】
反応混合物の音波処理またはマイクロ波伝達は、実質的瞬間エネルギー消費を含むが、波をパルスにすることによって、より少ないエネルギー消費で反応速度の実施的増加を得ることができる。実質的周波数におけるパルシングは、触媒/燐界面における所望の効果、または反応性における他の有利な効果を維持することができるが、反応サイクルの少ない正味部分(a modest net fraction)の間だけエネルギーを導入するに過ぎない。
【0082】
P(I)のP(III)酸への転化速度より、元素状燐のP(I)酸への転化の速度定数に関して、音波処理がより大きい効果を有することが観察された。従って、亜燐酸が目的とする最終生成物である場合に、例えば図3に示されるタイプの方法において、初期反応帯域において音波処理を使用するのが好ましい。
【0083】
大部分の触媒に関して、選択性が、温度増加によって適度に(moderately)低下するが、前記の反応温度範囲において一般に有利に維持される。不均一系触媒、例えば担持触媒またはPd黒のような粒子触媒の場合に、水性相における触媒の実質的同伴なしに得ることができる物質移動の最大速度を与える速度において、攪拌を管理することができる。例えば、溶融四燐または四燐を含有する水より重い他の液相のプールを、タンク反応器の下部に維持し、一方、燐相の小滴(globules)を液体プールから連続的に分離する攪拌レベルによって、燐相への水の充分な移動、および水性相への燐オキシ酸反応生成物の充分な移動が得られる。他の小滴が分離する際に、形成された小滴が連続的に液体プールと再併合する(remerge)。
【0084】
不均一系触媒に関しては、燐相における酸化速度(単位時間に対する、反応生成物のモルとして示される)が、水性相における燐オキシ酸の酸化速度の少なくとも10倍になるように、活性触媒部位と水性相の接触を制限するのが好ましい。例えば、Pd黒触媒の場合は、水性相の貴金属含有量を、約1重量%以下、より好ましくは約200ppm以下、最も好ましくは約0.1ppm以下の濃度に減少させ、その濃度において維持する。Pd黒は燐相への高い選択的親和性を有するのが観察される故に、中度から強度の攪拌によって、200ppmより充分に低い濃度を容易に得ることができる。中温、および活性触媒部位と水性相の制限接触の好ましい条件において、酸化反応生成物の燐オキシ酸部分は、1モルの燐酸(P(V))に対して少なくとも5モルの亜燐酸(P(III))を含有する。P(I)酸の初期高部分を生成する触媒および温度のある組み合わせにおいて、P(III)/P(V)の比は5より小さいが、P(V)酸の濃度に対する、P(I)酸およびP(III)酸の合計濃度のモル比は、5より高い数値に制御され、これは、本明細書の他の部分に記載されるように、P(I)酸のP(III)酸への触媒転化後に、P(III)への同等の最終選択性を与える。約8より大きい、事実上約9のP(III)/P(V)のモル比(または[P(I)+P(III)]/P(V)モル比)は、非常にたやすく得ることができる。
【0085】
反応の初めだけ比較的高い比率のP(I)および/またはP(III)副生成物を生じる燐酸製造の既知の水酸化法と対照的に、本発明の方法は、実質的に有意な転化において、即ち、亜燐酸高含有量の生成物の工業経路を与えるのに充分な転化において、例えば、2%より大きい、好ましくは5%より大きい、より好ましくは15%または25%より大きい燐転化において、亜燐酸、または亜燐酸および次亜燐酸への高選択性を維持する。実際、ここで述べた好ましい条件下では、上記のP(III)またはP(I)+P(III)酸への選択性はほぼ100%の転化率で達成できる。前記のような半回分系において、転化は、燐相に形成される燐オキシ酸溶液の各バッチにおける燐プールの比例的消費と考えられる。一般的回分または連続式の操作に適用される場合に、転化という用語は、それの一般的意味を有する。
【0086】
種々の方法を使用して、水性相から四燐を含んで成る相への触媒の移動を促進し、触媒が主として燐相に分配する水/燐不均一反応物系を得る。前記のように、四燐の融点より高く、再分配操作の間に亜燐酸の燐酸への有意な酸化を防止するのに充分に低い温度において、溶融四燐、水、および触媒の装填混合物を攪拌することによって、所望の再分配を行うことができる。一般に、約90℃までの温度において充分な再分配を行うことができる。所望の再分配の確立は、比較的長時間、例えば、24時間またはそれ以上を必要とする。触媒再分配の間の装填混合物のプログラムされた加熱は、亜燐酸収率を有意に減少させずに所要時間を短縮することができる。正確なスケジュールがどのようなものであるにしても、再分配段階の間に、温度を、約75℃より低い温度、より好ましくは約60℃より低い温度に維持するのが好ましい。
【0087】
再分配が行われた後、四燐を定期的にまたは連続的に補充し、触媒の次の再分布のために中断せずに、反復回分反応または連続反応が行われる。回分系において、溶融燐がなくなる前、および活性触媒部位が水性相に暴露されるレベルまで燐残留量が減少する前に、補充を行わなければならない。触媒交換または添加が必要になる程度まで触媒活性が減少したときだけ、触媒分配のために次の操作を中断する必要がある。
【0088】
本発明の他の好ましい実施態様において、触媒および溶融四燐、または実質的に水不混和性溶媒中の四燐の溶液を混合することによって、予備混合物を製造することができる。次に、予備混合物を水性液体に接触させて、酸化反応を行う。予備混合物は、図1に示されるタイプの攪拌タンク反応器において、好ましくは不活性雰囲気中で簡単に製造することができる。触媒が溶融燐(または、有機溶媒中の四燐の溶液)によって実質的に吸収された後に、水が添加され、前記のような中度攪拌において反応が行われる。ある種の触媒、例えばCuCl2・2H2Oに関して、燐相を水性反応物に接触させる前に、触媒および燐相を予備混合するのが重要であることが見い出された。塩の濃縮溶液を触媒と混合し、燐相によって同化し(assimilated)、水性相が本質的に消失する。触媒が初めにバルク水性反応物相に溶解される場合に、再分配はあまり有効ではなく、少なくとも初期において反応速度が非常に遅い。予備混合物を、不活性雰囲気中で、四燐の融点〜約150℃の温度に加熱するのが好ましい。
【0089】
四燐、および水との反応による四燐の触媒酸化に有効な触媒を含んで成る混合物は、有用な組成物である。該組成物は一般に、P4における燐原子に基づいて、約0.5モル%〜約50モル%の触媒を含んで成る。触媒は、好ましくはIB族または貴金属触媒、より好ましくはCu、Ag、Pd、Pt、またはRh、最も好ましくはCuまたはPdである。混合物は、基本的に触媒および四燐の混合物から成るのが好ましいが、四燐の溶媒を任意に含んで成ることもできる。下記に記載されるように、触媒は、還元状態であってもよい。
【0090】
本発明の他の実施態様において、水相交換洗浄操作を行って、四燐相に接触する水性相から残留固相触媒をパージすることができる。この実施態様において、水、触媒、および四燐を含んで成る相、を含んで成る初期前駆物質混合物が製造される。前駆物質混合物を攪拌することができる。次に、初期前駆物質混合物の液相を分離し、それによって、水性相に分配されている貴金属または他の固相触媒を除去する。次に、水不混和性液相(燐相)を追加容量の水に接触させて、選択的酸化反応がその中で行われる不均一反応系を得る。任意に、水交換洗浄操作が2つまたはそれ以上の連続工程で行われる。触媒を含有する水性洗浄混合物の第一分離後に、水不混和性燐相を新しい水性液と混合して、短時間の攪拌にかけるのが好ましい第二前駆物質混合物を得、次に、第二前駆物質混合物の液相を、該相に分配された触媒のさらなる除去のために分離する。
【0091】
図2に示されるように、触媒除去は、一連のパージング工程217、219、221、および223において行うことができ、それぞれが洗浄器/ミキサー217a、219a、221a、および223a、および分離器217b、219b、221b、および223bを有する。一連の前駆物質混合物を製造し、それぞれをパージング工程のミキサーから採収し、該パージング工程の分離器に導入する。各分離器において、液相を分離して、水性相に分配される触媒を除去する。各パージング工程217、219、および221からの液体四燐相を、次の継続パージング工程のミキサーに導入し、即ち、工程223からの液体四燐を、反応器201に導入し、該反応器において追加容量の水と混合して、P4からP(III)オキシ酸への選択的酸化のための不均一反応混合物を得る。この洗浄法によって、最終酸化反応生成物におけるP(III)酸/P(V)酸のモル比が少なくとも約5、より一般的には少なくとも約8、可能には少なくとも約9であるようにするのに充分に低いレベルに、水性相に接触する触媒の濃度を減少させることができる。
【0092】
最大収率のP(III)酸を得ることを目的とする場合に、図3に示されるように、該方法を2つの反応工程で行うのが好ましい。第一工程301aにおいて、P4の酸化に有効な条件において反応を行うが、P(I)酸の高級酸への転化は制限される。反応器301aから採収される粗反応生成物は、例えば、合計オキシ酸含有量に基づいて少なくとも約1モル%、より一般的には約10〜約30モル%の、有意部分の次亜燐酸を含有する。該粗反応生成物を、最終反応器301b中で、30℃〜約120℃の温度において、P(III)酸からP(V)酸への有意な転化を伴わないP(I)からP(III)酸への転化に有効な触媒に接触させる。Pd、PtまたはRhのような貴金属、Ni、CoまたはCuのような他の金属触媒、あるいはグラファイトのような炭素質触媒を包含する種々の触媒が、この反応に有効である。必要であれば、濾過器302において触媒を最終反応生成物から除去し、反応器301aまたは301bに循環させることができる。あるいは、反応器301bにおける触媒が、固定触媒床または他の固定形態であってもよく、その場合は、分離濾過工程は必要でない。反応器301bにおいて使用される触媒は、反応器301aにおいて使用される触媒と同じであってもよいが、必ずしもその必要はない。
【0093】
反応器301aにおける転化を制限することによって、亜燐酸含有量および次亜燐酸含有量の合計/燐酸含有量のモル比が、少なくとも約5、より一般的には約8〜約50の粗反応生成物が得られる。最終反応器301bにおける次亜燐酸から亜燐酸への転化によって、亜燐酸/燐酸の比が少なくとも約5(約8〜約50の比は容易に得ることができる)の最終反応生成物を得る。最終反応生成物における次亜燐酸/亜燐酸のモル比は、約0.2以下である。P(I)/P(III)の比は約5未満であるのが好ましく、0.01〜約0.02の比は容易に得ることができる。
【0094】
貴金属または他の触媒を、酸化反応の前に、任意に還元することができる。一般に、貴金属触媒は金属酸化物を含んで成る。炭素のような担体を酸化することもできる。任意に、そのような触媒を、水素との接触によって還元することができる。均質接触が得られる場合には、還元が中温および中圧において行われる。例えば、メタノールまたは水素の水溶液との接触によって、触媒を還元することができる。
【0095】
P4をオキシ酸に転化する反応において、水素が発生する故に、触媒の系中還元は本質的に、反応が進む際に行われる。あるいは、P4の実質的酸化が起こる前に、触媒を還元することもできる。触媒が燐相と予備混合される好ましい実施態様においては、好ましくは少なくとも四燐の融点の温度において、少なくとも約1分間でP4へ暴露することによって、触媒が還元される。前記のように、CuCl2のような水溶性触媒が使用される場合に、初めに触媒を最少量の水に溶解して、実質的に飽和した触媒の水溶液を製造し、次に、この溶液を溶融四燐と混合することによって、より均質な混合および効果的な還元が行われる。
【0096】
本発明のある実施態様においては、燐オキシ酸の生成において発生される水素との接触によって、触媒を還元する。図4に示されるように、一般に図3の301aおよび301bに関して前記に記載したように操作される、401aおよび401bで示される連続に配置される2つまたはそれ以上の酸化反応器において、P4の酸化を行い、および、次亜燐酸を含有する反応器401aからの水性相部分を、前処理反応帯域を有する触媒状態調節タンク425に循環させる。循環された水性相を含んで成る水性媒体に、触媒を分散させることができる。触媒と循環次亜燐酸との接触は、結果的に次亜燐酸を亜燐酸へ酸化的に転化し、触媒の還元に有効な方法で触媒表面において水素を発生させる。反応器401aにおいて製造される水溶液の限定部分だけを、前処理帯域における触媒の還元のための状態調節タンク425に循環させる必要があり、前処理温度を約85℃未満に制御することによって、循環次亜燐酸の有意部分の燐酸への転化が防止される。例えば、P4の融点〜約120℃の温度における反応によって、燐の燐酸への実質的転化を防止する条件において、P4の不存在下に、反応器401b中で、次亜燐酸の亜燐酸へのさらなる触媒酸化が行われる。
【0097】
さらに本発明によれば、水性相および四燐を含んで成る相の界面から離れた燐相に触媒が配置され、それによって、触媒と水性相との接触が積極的に防止される、種々の不均一反応法が見い出された。図6は、反応器の下部分に位置する容器(container vessel)627において反応のための貴金属または他の触媒の層を有する反応器601を有して成る装置を示す。反応器が装填された際に、燐相と水性相の界面より下に位置する四燐を含んで成る液体中に容器627が配置される。該容器は、触媒がそこから出るのを防止するのに有効であるが、燐相には透過性の壁を有して成る。液体/液体界面の周辺の反応器内の領域は、水性相から燐相への水の移動、および燐相から水性相へのオキシ酸反応生成物の移動のために、燐相が水性相と接触する領域を有して成る。反応系システムを攪拌して、液相間の物質移動、および、燐相に移動した水と、酸化反応がその中で行われる容器627中の触媒との接触を、促進させる。燐相が、低密度水不混和性溶媒中の四燐の溶液を含んで成る場合に、触媒容器627は、液体/液体接触帯域より下ではなく、それより上に位置することができる。
【0098】
図7は、四燐を含んで成る相が水性液体と接触する液体/液体接触帯域を有する溜め729を有して成る装置を示す。液相間の物質移動が、溜め内の攪拌手段によって促進される。反応のための貴金属または他の触媒を含んで成る触媒床731が、溜めから離れて配置される。溜めと触媒床の間に燐相を循環させる手段は、ポンプ733および循環ライン735を有して成る。液体/液体接触帯域における攪拌は、中度であり、相の分離、および最少の同伴水性相を有する燐相の循環を可能にし、燐相からの燐オキシ酸の採収、および反応のための水の燐相への移動を促進するのに充分である。図8に示されるような図7のシステムの改質形において、溜め829の液体/液体接触帯域において強い攪拌を行って、液体/液体均質混合物または分散物を製造し、これを、水性相および燐相がその中で分離される領域を有して成る容器839に移動させる。沈降燐相を、循環ポンプ833によって離れた触媒床831に循環させる。分離器835からの水性相も、溜め829に循環させる。充分な転化が得られた際に、分離器中の水性相は、燐オキシ酸反応生成物を含んで成り、これを前方へ移動させることができる(または、連続システムにおいて、所望の定常状態条件に到達した後に、分離器から出る水性流の一部を生成物として取り出すことができる)。P(I)からP(III)への比較的低い転化において図示されるシステムを操作し、該転化を図3に示される分離最終反応器において終了するのが有利である。
【0099】
触媒が、固定床に保持されるのではなく燐層に分散される、図8の選択的実施態様が図24に示されている。比較的強い攪拌、ミキサー2529において燐相を水性相中に実質的に分散させるのに充分な攪拌においてさえ、白金金属または他の触媒の元素状燐への親和性が、触媒を燐相に維持するのに充分であることが見い出された。この実施態様において、固定触媒床を通る間だけでなく、ミキサー/沈降タンク(settler)反応システムを通る一次滞留の間に、触媒が、燐相との均質接触に維持され、それによって、該方法の生産性に顕著に寄与する。
【0100】
図9は、四燐を含有する実質的に水不混和性液体の本体(body)またはプール905のための溜め929を有して成る、本発明の装置を示す。水性液体を、入口909から溜めに導入し、水性液体生成物を出口911から採収する。溜め929の底壁のの触媒相931が、燐相に接し、燐/水性相界面から離れ、該触媒床は、水との反応による四燐の酸化のための貴金属または他の触媒を含んで成る。燐プールの表面に水性液体を流す手段は、入口909および出口911、ならびに流れを促進し導く他の一般的手段を有して成る。水性相907が燐プール905の上を流れる際に、水が水性相から燐相に移動し、燐酸化生成物が燐相から水性相に移動する。溜め929は、物質移動を促進するために、液相間の実質的界面接触領域を与えるようになっている。
【0101】
図9の装置の操作において、溜め929が、液体/液体界面領域(interfacial area)と燐相プールの容量の比率が少なくとも50ft−1であるような比較的浅いトラフ(trough)の形態であるのが好ましい。燐酸への酸化を最少限にするために、反応器から出る溶液中の全てのオキシ酸のモル濃度の合計が、約80%以下であるのが好ましい。濃亜燐酸の製造におけるエネルギーコストを最少限にするために、Pオキシ酸のモル濃度の合計は少なくとも約2.4である。
【0102】
図1〜4および図6〜9の装置のいずれも、回分、半回分、半連続、または連続ベースで本発明の方法を行うために操作することができる。連続操作において、水性相が、連続的または断続的に混合タンクまたは溜めに導入され、図8以外の各システムにおいて、生成物溶液が連続的または断続的に溜めから除去される。図8のシステムにおける該方法の実施において、水性相および燐相の均質混合物を、連続的または断続的に、ミキサーから除去し、生成物溶液を連続的または断続的に、分離器839から採収する。多くの触媒に関して、触媒酸化反応が、P(V)酸生成における認め得る増加なしに、高転化においてさえ見掛ゼロオーダー(apparent zero order)であることが立証されている故に、水性相が高濃度の、例えば50〜90重量%のP(I)+P(III)オキシ酸を含有する連続反応システムを操作することが可能であり有利である。生成物組成の管理のために、水性相の流動を実質的に一定な、連続定常状態速度において安定させ維持するのが好ましい。しかし、連続操作は、溜めまたはミキサーへの、溶融四燐または四燐溶液の連続導入を必要としない。四燐の実質的装填量が初めに導入され、次に、連続的、定期的、または必要に応じて不定期に、補充される。
【0103】
前記のように、貴金属触媒のような不均一系触媒が、充分に湿り、燐相に封入されるのにかなりの始動時間(startup time)が必要である。従って、P4の酸化の回分または連続系において、四燐を充分な頻度および容量で、供給し、補充して、封入を維持し、活性触媒部位の水性相への不要な暴露を防止しなければならない。触媒が水性相に直接に接触するにもかかわらず、P(III)からP(V)へのさらなる酸化に緩慢すぎる温度条件において、水性相において、充分な速度で、P(I)からP(III)酸への触媒酸化が行われることが見い出された。これは、触媒が水性相と実質的に接触するとしても、P(III)からP(V)へのさらなる酸化を助長することができる時間/温度の組み合わせにおいてだけ、充分な転化速度が得られるP4の触媒酸化と対比される。
【0104】
図5は、本発明の他の装置および工程図を示す。溶融P4および貴金属または他の触媒の混合物を含んで成る燐相を、触媒スラリーおよび前処理タンク525において製造する。工程の始動前にスラリーに導入される水素で処理することによって、触媒を還元することができる。工程の操作において、ポンプ533およびライン535を有して成る循環手段によって、P4および触媒を含んで成る燐相を、タンクを有して成る燐相溜め525と不均一液相反応器501aの間に循環させる。反応器501aは、それの内壁に沿って縦方向に間隔を開けている一連の環状バフル(baffles)543を有する鉛直カラム541を有して成る。攪拌器503は、該カラムの中心線に軸561を有して成る。軸543は、一連の羽根車(impellers)545を有し、各羽根車は、一対の連続するバフルの間に位置し、そのような各バフルの対の間の攪拌領域が、多段階の液体/液体接触帯域の接触段階を規定する。P4/触媒混合物を含んで成る燐相が、入口513から反応器501aの上部に導入され、上向きに流れる水性相に向流して、カラムを下向きに流れる。水および他の水性液体を、入口509からカラムの底部近くに導入する。液体/液体接触帯域において、水が燐相に移動し、P4と反応して、燐オキシ酸を生成し、これを燐相から水性相に移動させる。水性相への触媒の有意な同伴なしに、相間の物質移動を促進する速度において、攪拌器503を回転させるのが好ましく、それによって、反応生成物が主としてP(III)酸およびP(I)酸であるようにされる。反応器501aにおける温度を、約50℃〜約200℃に維持するのが好ましい。
【0105】
水で飽和された燐相を、カラムの底部の出口547によって反応器501aから出し、タンク525に戻す。カラム541における反応によって生成される水素を、減圧または制御バルブ551によって放出させる。循環燐相において反応を継続し、戻しラインおよびタンク525において生成される水素を、タンクから排出する。補充触媒を、必要に応じて、口(port)549からライン535に導入する。触媒部分を連続的にまたは定期的に口563によって工程から洗浄し、触媒回収操作565に移動させる。
【0106】
燐オキシ酸溶液を、カラムの上部に近い出口511から除去し、水性相に同伴する残留燐相の分離のために分離器(デカンター)553に流す。分離器553の下部から取り出される燐相を、循環口555から反応器501aの上部分に戻す。一般に2〜80重量%のH3PO3および実質的部分のH3PO2を含んで成る水性相を、分離器から注ぎ移し、ポンプ557、移動のための重力または他の手段によって、最終反応器501bに送る。反応器501bは、反応器シェル(reactor shell)559に含有される固定触媒床531を含んで成る最終反応帯域を有して成る。反応を、反応器501bにおいて、約30℃〜約160℃の温度で行うのが好ましい。反応器501bから出る水性反応溶液は一般に、少なくとも約2重量%、好ましくは約20〜約80重量%の亜燐酸濃度、約15重量%以下の燐酸濃度、約60重量%以下の次亜燐酸濃度、少なくとも約5の亜燐酸/燐酸のモル比、少なくとも約0.2の亜燐酸/次亜燐酸のモル比、および少なくとも約5の[P(III)+P(I)]酸/P(V)酸のモル比を有する。
【0107】
反応器501bを通る向流は、物質移動のための有意な伝動力(driving force)、およびカラム全体のP4酸化を維持する。タンク525における連続反応は、入口513においてカラム541に戻る燐相において、燐オキシ酸/水の高比率を生じ、一方、入口509から入る水相は、実質的に燐オキシ酸を含まない。向流は、液体/液体全接触帯域にわたって、燐相オキシ酸/水比率操作ラインを、水性相オキシ酸/水比率操作ラインより有意に上に維持し、カラムから出る水性相の増加を促進し、および燐相へ反応物水が移動するのを促進する。
【0108】
反応器501bから出る燐オキシ酸溶液は直接、他の工程に使用することができ、または、蒸発システム515においてさらに濃縮するのが好ましい。蒸発システム515は、二重または三重効果真空蒸発器(a double or triple effect vacuum evaporator)を有して成るのが好ましい。反応器501bから出る酸溶液の濃度および温度に依存して、蒸発器のフラッシュタンク上流において水の一部を除去することができる。溶液の予熱器として蒸発器を補助する間接熱交換器において、真空噴流(a vacuum jet)からの蒸気を凝縮することができる。
【0109】
図5の方法の特に好ましい実施態様において、元素状燐の酸化に有効な比較的高い温度、例えば110℃〜150℃において、加圧下に、反応器501aを操作し、次に、減圧バルブによって下げて(let down through a pressure reducing valve)、真空下に維持されるのが好ましい反応器501bにおいて水蒸気を蒸発分離(flash off)する。この方法は、水性相において燐オキシ酸を濃縮し、水性相の温度を、反応器501bにおけるP(I)酸からP(III)酸への酸化に適した温度、例えば、50℃〜90℃、好ましくは50℃〜70℃に減少させる。反応器501aが、P(I)+P(III)酸の高定常状態濃度、例えば、50〜70重量%において操作される場合に、さらに濃縮されたP(III)の溶液が反応器501bにおいて製造される。この方法は、連続反応システムにおいて特に有利であるが、回分ベースで操作されるか連続ベースで操作されるかにかかわらず、例えば図3のような最終反応器を有して成るどのようなシステムにおいても使用することができる。
【0110】
図10は、燐の触媒酸化がリフト反応器(lift reactor)において行われる、本発明の他の好ましい実施態様を示す。反応器1001中に、酸化反応のための貴金属または他の触媒を含有する固定触媒床1027を有して成る触媒反応帯域が存在する。固定触媒床1027は、壁またはバフル1028によって反応器内の他の部分から仕切られている。燐相と水性相1007の界面より下の燐相プール1005に触媒床1027が浸漬するように、燐相、好ましくは溶融燐、および水性液体を反応器に装填する。機械攪拌器は必ずしも取り付ける必要はないが、水性相を、出口ノズル1067によって反応器の上部分から連続的に取り出し、水性相循環ポンプ1071によって戻しノズル1069から反応器1001の下部に戻す。両方のノズルが、反応器の内壁および触媒床1027の反対側のバフル1028の側面によって規定される反応器の帯域1073に直接に連絡している。戻しノズル1067は、帯域1073の下方末端に位置し、出口ノズル1067は、P4/水性相界面より上の水性相に位置する下方末端を有する浸漬レッグ(dig leg)1075を有する。
【0111】
任意に、戻しラインが、帯域1073の中にいくらかの垂直距離でノズル1069から上向きに延在することができ、および、戻り水性相を分散させるためにそれの末端にフリット(frit)または他のデバイスを有することができ、それによって、戻り水性相とその中に導入される燐相の界面領域を増加させることができる。いずれにしても、領域1073は、触媒床とレッグの間に燐を循環させる液体リフトレッグを有して成るように配置され、リフトレッグの上部末端は、触媒床の上部と液体流動連絡し、該レッグの下部末端は、触媒床の下部と液体流動連絡している。該レッグは、触媒床の下部の燐相が該レッグの下部分にアクセスするような寸法および形態にされ、その中に上昇する水性相の速度は、該層の下部から燐相を引き上げ、それをレッグの上部から該層の上部分に循環させるのに充分な速度であり、液相間の液体/液体接触および該層中の燐相の循環を促進する。リフトレッグは、帯域1073の輪郭によって規定することができ、または該帯域中にドラフトチューブまたは仕切縦通路(baffled vertical passage)を有して成ることができる。ポンプ1071は、相間の物質移動、および触媒床における燐相の循環を促進するような大きさにされ、操作されるが、ポンピング速度は、相の保全性(integrity)を維持し、触媒床への水性相の引き込み防止するのに充分に低い速度に維持される。
【0112】
触媒の還元処理は一般に、水性相への触媒の親和性を制限するのに好ましく、それによって、P(I)およびP(III)オキシ酸への選択性に寄与するが、いくつかの触媒は、燐酸化反応に使用する前に還元処理にかけずに、燐相への選択的親和性を有する。例えば、CuCl2のようなある種の触媒は、還元剤による前処理を行わずに、P4の酸化の高い生産性を与えることが分かっているが、ある場合においては、例えば、触媒的に活性な燐化銅の生成において、元素状燐の存在が、反応の間に触媒を還元するのに有効であり得る。前記の方法の種々の実施態様において、好ましくは触媒が燐相に同化される前に触媒が水性相に接触するのを最少限にするような方法で、新しい、または非還元親燐性(phosphophilic)触媒を連続的に導入して、燐相に接触させるのが好ましい。このようにして反応帯域へ触媒を「ブリーディング(bleeding)」することによって、選択性を顕著に損なうことなく、反応の生産性を向上させることができる。
【0113】
本発明の方法は、燐オキシ酸の非常に高い収率を得るように操作することができる。銅のようなある種の触媒を使用する反応の特に初期において、ホスフィン副生成物の僅かな生成が観察されるが、目的とする生成物が燐酸である場合に、100%に近い収率を容易に得ることができる。目的生成物が亜燐酸である場合に、収率が選択性によって制限されるが、非常に高い選択性を前記のように得ることができる。亜燐酸への選択性が、P4の存在における高転化において減少するにもかかわらず、図3または図5に示される方法を使用することによって、有利な選択性および収率が維持される。元素状燐の高転化が第一反応器において得られる図3および図5の方法も有効であるが、第一反応器から出る水性生成物のかなりの部分がP(III)酸ではなくP(I)酸である。
【0114】
本発明の方法の工業的操作において、高濃度のP(I)+P(III)酸が、元素状燐と水の初期反応において得られるのが特に好ましい。従って、図24の連続工程において、選択性を考慮した上で容認される、最終生成物におけるP(III)酸(またはP(I)+P(III)酸)の目標濃度に近い、第一水性反応生成物におけるP(I)+P(III)オキシ酸の濃度を与えるのに充分な相対速度において、反応物を第一反応システムに供給するのが好ましい。
【0115】
必要とされる選択性の維持と一致して、第一反応生成物は、最終生成物におけるP(I)+P(III)の濃度の好ましくは少なくとも0.15倍、より好ましくは少なくとも約0.45倍、最も好ましくは少なくとも0.60倍のP(I)+P(III)の濃度を有する。初期水性反応生成物におけるP(I)+P(III)酸の高濃度は、反応生成物を濃縮する蒸発器(または他の装置)の費用または操作コストを最少限にするだけでなく、元素状燐のP(I)+P(III)酸への転化のための第一反応システム、および粗反応生成物中のP(I)酸のP(III)への転化のための最終反応システムの両方に必要とされる規模(size)およびコストも最少限にする。例えば、85重量%亜燐酸の最終的製造に関して、少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも約50重量%のP(I)+P(III)酸の濃度を有する反応生成物を得るように、第一反応システムを操作するのが好ましい。第一反応システムから出る最適酸濃度は、約60〜約85重量%である。理解されるように、この範囲の濃度は、連続バック混合反応帯域においてさえ、または特にその帯域において、実際に得られる。
【0116】
1パスについての転化は一般に、高容量操作において濃度ほど限定的ではないが、図24に示すようなタイプの連続反応システムにおいて、1パスについての最適転化は3〜6%の低さであることができる。本発明の方法の実施において、どのような反応システムを使用する場合でも、反応条件下に水/燐/触媒混合物に接触する反応器ならびに他のパイプおよび器具が、該混合物中に微量金属を放出しない材料でできているのが好ましい。水性相における10〜50ppmまたはそれよりさらに低い濃度の鉄(Fe)およびニッケル(Ni)のような金属、および他の微量金属は、P(III)オキシ酸のP(V)への転化を触媒することが観察される。従って、酸化反応器がガラス内張りされているのが特に好ましい。これと一致して、P(I)+P(III)への高選択性がガラス反応器において立証されている。
【0117】
本発明の方法は特に、亜燐酸の製造においてハロゲン化燐基質を必要としない点で、特に有利である。本発明の方法は、塩素分子または他のハロゲン原料の使用に関係する費用を必要としないだけでなく、高毒性のハロゲンおよび燐ハロゲン化物の取扱い、ハロゲン化副生成物による亜燐酸生成物の汚染、亜燐酸からハロゲン化副生成物を分離する操作の必要性、および一般に販売できないそのような副生成物の処理に関係する問題を除くことができる。
【0118】
本発明の方法は特に、ホスホノメチル化反応、特にN−ホスホノメチルグリシン(「グリホセート」)の製造において行われるホスホノメチル化に使用される亜燐酸の製造に適している。グリホセートは、それの非N−置換グリシン(例えば、イミノジ酢酸)塩(例えば、米国特許第5,292,936号、第5,367,112号、第5,627,125号、および第5,689,000号)を、亜燐酸およびホルムアルデヒドと反応させて、N−置換グリホセート(例えば、N−ホスホノメチルイミノジ酢酸)を生成し、該N−置換グルホセートを酸化して、元のN−置換基を開裂してグリホセートを生成する種々の方法によって製造される。グリホセートの製造に使用される亜燐酸は一般に、PCl3の加水分解によって製造されるが、その方法は、該目的に有効であるが、クロリドイオンで汚染されている亜燐酸中間体を生じる。亜燐酸中間体またはN−置換グリホセート中間体またはグリホセート生成物から、一般にNaClの形態のクロリドイオンを除去するのに、面倒な高コストの工程が必要である。本発明の方法は、クロリドを全く含まない亜燐酸の源を与え、それによって、グルホセートの製造におけるこの中間体の使用は、下流工程における塩の除去を必要としない。
【0119】
本発明によって製造される燐酸は、当分野において既知の種々のホスホノメチル化法に使用することができる。好ましいホスホノメチル化法が、例えば、1998年2月12日出願の米国特許出願第09/022,967号(MTC 6450)、米国特許第5292936号、第5,367,112号、第5,627,125号、および第5,689,000号に開示されており、それらに記載の内容は本発明の開示の一部を構成するものとする。
【0120】
(実施例)
下記の例は、本発明を例示するものである。
【0121】
例1
水(50mL、アルゴンで30分間パージした)、四燐(1.626g、0.013モル)、およびパラジウム黒(0.111g、0.001モル、燐原子に対して2モル%)を、装填前に窒素でパージした100mLの3口丸底フラスコに入れた。そのフラスコを、窒素ガスシール下に75℃の油浴に68時間にわたって入れ、次に、温度を90℃に上げ、その温度において8時間維持した。窒素雰囲気を、反応時間にわたって維持した。次に、水性相の試料を採取し、イオン交換クロマトグラフィー(IC)によって分析して、POx種の下記収率:0.86% H3PO2;13.1% H3PO3;0.23% H3PO4を有することが確認され、それによって、98%のP(I)+P(III)の選択性を得た。反応時間中、水素の発生が観察された。
【0122】
例2
水(150mL、アルゴンで30分間パージした)、四燐(1.05g、0.0085モル)、およびパラジウム黒(0.54g、0.00507モル、燐原子に対して15モル%)を、300mLのHastelloy Cオートクレーブに装填した。オートクレーブを密閉し、酸素をパージした。次に、反応器を150℃に加熱し、2時間維持した。密閉反応器中の圧力がこの間に徐々に増加し、主として水素発生による圧力増加が見られた。150℃で2時間後、液体試料を採取し、ICによって燐オキシ酸に関する分析を行った。燐酸が確認され、その濃度は、反応器に初めに装填された四燐の約80%であった。生成物試料中に、亜燐酸または次亜燐酸が確認されなかった。
【0123】
例3
アルゴンでパージした300mLのオートクレーブに、水(160mL)を、装填した。水の装填後に、白燐(1.501g、0.01212モル)、およびパラジウム黒粉末(2.511g、0.02360モル、燐原子に基づいて49%)を順にオートクレーブに導入した。次に、反応器を密閉し、酸素をパージした。オートクレーブを75℃に加熱し、1,100rpmにおいて7.5時間で攪拌した。反応が進み、その間に、圧力が約130psig(即ち、約998kPa)に増加した。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析し、収率が20.9% H3PO3および66.1% H3PO4であった。燐オキシ酸への転化は、約87%であった。P(III)の選択性は24%であった。
【0124】
例4
パラジウム黒粉末(0.140g、0.00132モル、燐原子に基づいて2%)を、真空下に2日間で100℃に加熱し、次に、試験管中50℃における溶融白燐(1.939g、0.01565モル)を少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の小さい閃光(a small flash)、および燐蒸気と考えられる少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジウム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、水(100mL)を前もって装填した200mLの3口フラスコに入れた。得られる反応混合物を、中度攪拌において3日間で90℃に加熱した。攪拌の強さは、燐相を、反応器の下部において水性相より下にプールとして維持するのに充分に穏やかであるが、燐相を約1mmの直径の小球に連続的に砕くのに充分な強さであり、該小球は、新しい小球が形成される際に、燐相によって連続的に再吸収される。反応が続いている間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.44% H3PO2、21.4% H3PO3、および2.2% H3PO4が確認され、それによって、91%のP(I)+P(III)選択性を得た。転化データが図12にグラフで示されている。
【0125】
例5
パラジウム黒粉末(0.140g、0.00132モル、燐原子に基づいて2モル%)を、例4に記載のように真空下において加熱し、次に、試験管中50℃における溶融白燐(2.069g、0.0167モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および燐蒸気と考えられる少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジウム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、水(100mL)を前もって装填した200mLの3口フラスコに入れた。得られる反応混合物を、例4に記載のような中度攪拌において6日間で90℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.7% H3PO2、65.1% H3PO3、および5.6% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は94%であった。転化データが図12にグラフで示されている。
【0126】
例6
水(50mL)、白燐(1.612g、0.0130モル)、およびパラジウム黒粉末(0.109g、0.00104モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mLの3口フラスコに装填した。この装填混合物を50℃において20時間で加熱し、温度を93時間で75℃に上げ、次に、反応温度を7時間で90℃に上げた。反応温度の漸増は、低温における燐相へのPdの導入を可能にするためであり、それによって、導入の間のP(III)からP(I)酸への酸化が最少限にされる。その反応混合物を、例4に記載のような中度攪拌にかけた。反応時間中、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料を反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率3.1% H3PO2、13.0% H3PO3、および2.0% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は89%であった。
【0127】
例7
水(50mL)、白燐(1.853g、0.1496モル)、およびパラジウム黒(0.128g、0.00120モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mL3口フラスコに装填した。燐相を反応器の下部にプールとして維持するが、燐相からの燐小球を連続的に砕き、それをプールに再吸収させる中度攪拌において、この反応混合物を75℃で18時間30分にわたって加熱した。18時間30分後、溶融燐/パラジウムプールを覆う水を全て除去した。除去された水相が、初めに装填されたパラジウムの大部分を含有することが確認された。次に、燐/パラジウムプールを水(30mL)で洗浄し、約5分30秒にわたって攪拌した。残留懸濁パラジウムを除去するために、使用した洗浄水を除去した。燐/パラジウムプールの表面が、水で覆われていない場合に、銀白色金属外観を有するのが観察された。次に、水の新しいアリコート(50mL)を反応器に加え、温度を90℃に上げた。78時間後、試料を採取し、ICによって分析して、収率0.19% H3PO2、1.6% H3PO3、および0.29% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は86%であった。
【0128】
例8
水(50mL)、50%次亜燐酸(8.55g、0.0648モル)、およびパラジウム黒粉末(0.142g、0.00133モル、燐原子に基づいて2モル%)を、100mLの3口フラスコに装填した。この反応混合物を、75℃において30分間加熱し、装填材料中の次亜燐酸を実質的に亜燐酸に酸化した。次に、四燐(1.932g、0.01560モル)をその混合物に加え、パラジウム/燐の2モル%比を再定着させた。その反応混合物を、75℃において66時間で中度攪拌において攪拌し、その際に、パラジウム装填材料が全て燐相に吸収された。温度を90℃に上げ、その反応混合物を例4に記載のように中度攪拌し、元素状燐の転化を監視した。約8日後、試料を採取し、ICによって分析し、初期燐装填材料の燐オキシ酸への転化が57%であることが確認された。この例の顕著な特徴は、元素状燐の添加後に、燐酸の生成が、2程度の大きさ(two order of magnitude)で劇的に減少したことである。
【0129】
例9(比較例)
水(50mL)、白燐(2.075g、0.01675モル)を、100mLの3口フラスコに入れ、得られる混合物を約2日間で90℃に加熱した。その反応混合物から試料を採取し、ICによって分析し、収率0.019% H3PO2、0.070% H3PO3、および0.082% H3PO4が確認された。P(I)+P(III)の選択性は52%であった。この例は、反応の触媒の不存在における四燐と水との実質的非反応性、および起こる反応全てにおける低い選択性を示す。
【0130】
例10
次亜燐酸(濃度50%、123.97g、0.939モル)およびパラジウム黒(1.70g、0.160モル、1.73モル%)を、窒素パージ、撹拌棒、および還流冷却器を備えた、500mLの3口丸底フラスコに装填した。そのフラスコを75℃において2時間にわたって油浴に入れ、水素発生がおさまった。次に、その反応混合物を冷却し、濾過した。その反応フラスコおよび触媒を、少量の脱イオン水で2回(約15mL)で洗浄した。その洗浄水を濾液に加え、分析した。
【0131】
フィルター中のパラジウム黒を、次亜燐酸(濃度50重量%、119.88g、0.908モル)を前もって装填した丸底フラスコに戻した。次に、このフラスコを75℃において2時間にわたって油浴に入れ、水素発生がおさまった。その反応混合物を冷却し、濾過した。その反応フラスコおよび触媒を少量の脱イオン水で2回(約15mL)で洗浄した。その洗浄水を濾液に加え、分析した。
分析の結果を下記表1に示す。
【0132】
【表1】
表1: H3PO3への選択性
31 P NMR IC マスバランス
サイクル1 99.2% 99.9% 99%
サイクル2 99.5% 99.9% 101%
【0133】
例11
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.32g、0.00301モル、P原子に基づき6モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(1.58g、0.0129モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、70mLの水を前もって装填した100mLの3口フラスコに入れた。次に、その反応混合物を2日間で90℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料をその反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.59% H3PO2、52.9% H3PO3、および5.61% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は91%であった。
【0134】
例12
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.24g、0.00226モル、P原子に基づき6モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(1.16g、0.00936モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、49.1mLの水を前もって装填した100mLの3口フラスコに入れた。次に、その反応混合物を1日間で100℃に加熱した。反応の間に、頂部空間ガス中に水素が確認された。試料をその反応混合物から採取し、ICによって分析して、収率0.54% H3PO2、43.2% H3PO3、および5.29% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は89%であった。
【0135】
前記条件において、Pd触媒の存在下に、全ての四燐が使用されるまで(反応が開始してから約23時間)、四燐を水と反応させた。燐が全て使用されてからさらに12時間にわたって、反応を継続させた。その反応混合物から試料を採取し、反応の進行を監視した。累積選択性が図11にプロットされている。全てのP4が使用され、Pdが水性相に再分散されるまで、反応がP(III)オキシ酸に高選択性であり、その後、P(III)酸が累進的におよび全体的にP(V)酸に転化されるのが分かった。
【0136】
例13
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。パラジウム(黒)粉末(0.29g、0.00273モル、P原子に基づき2モル%)を、試験管中50℃における溶融白(4.249g、0.0343モル)に少量ずつ加えた。パラジウムの各添加後に、黄色光の閃光、および少量の白色ガスの発生が見られた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、圧力計および玉弁(ball valve)を取り付けたクレイセンヘッドアダプター(a claisen head adapter)を有する300mLのAce Glass水素化瓶に入れた。その瓶に99.48mLの水を装填した。次に、その反応混合物を8時間で110℃に加熱した。反応の間に、圧力が50psigに増加した。その反応混合物から試料を採取し、ICによって分析して、収率0.1% H3PO2、8.7% H3PO3、および1.18% H3PO4が確認され、P(I)+P(III)の選択性は88%であった。
【0137】
例11〜13の反応条件の概要を下記に記載する。
例 触媒添加量 温度
13 Pに対して2モル% 110℃
11 Pに対して6モル% 90℃
12 Pに対して6モル% 100℃
条件の各組合せにおける反応の進行を、1〜3日間にわたって監視した。時間に対する全POxの収率を図12に示す。下記のように、P(III)への選択性が、条件の厳しさと共に、中程度に減少した。
例 PO x 間の相対選択性
13 PO2:1%; PO3:87%; PO4:12%
11 PO2:1%; PO3:89%; PO4:10%
12 PO2:1%; PO3:88%; PO4:11%
図12に示すように、反応速度は、触媒濃度に関して線状に、および一般的な10℃ルール(rule)による温度に関して指数関数的に、増加する傾向を有する。従って、これらの例の実験に関して、反応速度が、相間の物質移動ではなく、反応動態によって制限されることが明らかであった。
【0138】
例14
この例に使用されるパラジウム黒を、真空下において2日間で100℃に加熱した。Pd黒粉末(2.80g、0.00263モル、P原子に基づき2モル%)を、試験管中50℃における溶融白燐(3.936g、0.03177モル)に少量ずつ加えた。燐/パラジム混合物を、凝固するまで冷却し、次に、厳密に脱泡した水(rigorously degassed water)(156mL)を前もって装填した300mLのHastelloy−Cオートクレーブに入れた。次に、その反応混合物を10日間で90℃に加熱した。ポンピング羽根車(pumping impeller)を攪拌に使用し、羽根車の攪拌速度を500〜1000rpmに変化させたが、反応速度に顕著な効果は観察されなかった。反応の進行を、オートクレーブ中の圧力増加、および反応混合物の水性相の試料採取によって、監視した。圧力増加および転化の両方が、零オーダーの挙動を示した。反応の終わり頃に、反応混合物から試料を採取し、ICによって分析した。P4からPOxへの転化は実質的に量的であり、H3PO3およびH3PO4の収率はそれぞれ、81.8%および11.2%であった。P(III)への選択性は88%であった。反応サイクルの間に採取した試料は、選択性における圧力の有意な効果を示さなかった。全部の四燐が使用される反応の終わりに、選択性が減少した。時間に対する、攪拌速度、合計反応圧、P(I)+P(III)オキシ酸への転化および選択性のプロットが、図13に示されている。
【0139】
前記例に使用されたパラジウム黒を分析し、約48μの平均粒度、約41.5μの中央粒度、および約72.5μの最頻粒度を有することが分かった。触媒の約2.4重量%が1μ未満の粒度の粒子であり、7.3%が2μ未満、11.0%が5μ未満、14.0%が7μ未満、54.3%が60μ未満であった。
【0140】
例15〜34
下記の一般手順は、表2に示される触媒のリストに関する(例15〜34)。不活性雰囲気中、適切な触媒を、50℃において、白燐と混合する。燐/触媒混合物を、冷却し、攪拌棒、窒素ガスシールを取り付けた丸底フラスコに入れ、前もって約30分間にわたってアルゴンで脱泡した水を加えた。次に、その反応混合物を90℃に加熱した。各例において、溶融燐のプール上に水性相を有して成る不均一反応系を維持した。水性相と燐相の間の、水および燐オキシ酸反応生成物の物質移動を促進するのに充分な中度攪拌を行った。POx種、P(I)+P(III)の収率、選択性、および装填された触媒のモル%を記載する。
【0141】
【表2】
【0142】
好ましい炭素担体は、例25に使用されるSA−30担体である。SA−30の製造は、本明細書の開示の一部を構成する米国特許第5,689,000号の例1に記載されている。
【0143】
例31を行う場合に、塩化銅の飽和溶液を製造し、65℃において溶融四燐と混合し、燐相への銅の実質的導入によって銅塩の初期還元が起こった。1時間後、水相が実質的に消失し、その結果、黒く見える物質の塊を含有する黒/緑色液体塊が形成された。次に、触媒/燐混合物を前記のように処理した。反応の初期段階の間に、燐+触媒の銀白色プールが、反応器の下部における中度の攪拌によって形成された。長時間が経過した後、このプールが、黒色粉末または砂(sand)のように見えるものに砕いた。図16は、時間に対する、POx種の選択性および転化のプロットを示す。表2に示されるデータは、約7.86日後に採取した試料に基づく。
【0144】
例32の反応は、反応温度が107℃である以外は例31と同様に行った。触媒/燐混合物は例31に関して前記に記載したのと実質的に同じように変化したが、例31の反応において、例32の反応におけるよりかなり早く、「黒い砂(ブラックサンド)」段階に到達した。例32に関して表2に示される分析データは、反応から504分後に採取した試料に基づく。従って、例32の反応は、高生産速度で行われた。
【0145】
例33は、初めにパラジウム黒を燐相と混合し、次に、塩化銅水和物の飽和溶液を添加して、例31と同様に行われた。
【0146】
例35
他の例において、22.5%Cu/1.8%Pd炭素を含んで成る触媒1.4モル%(P4に基づく)の存在下に、90℃において、P4を水との反応によって酸化した。この例の反応に関する反応温度、反応器圧、瞬間(instantaneous)選択性、および累積選択性を、図14に示す。P(I)+P(III)への持続選択性が得られ、反応生成物において次亜燐酸が特に高い比率であった。
【0147】
例36
2種類の担持銅触媒を、四燐の触媒酸化における有効性に関して、液体の水と比較した。試験した触媒は、炭素上の22.5%Cu/3%Pt、および炭素SA−30上の15%Cu/3%Ptであった。2モル%Cuの触媒添加量および90℃の温度において、実質的に例4のプロトコールによって反応を行った。各触媒は2700分後に約11%の転化を生じた。2種類の触媒に関して、時間に対する選択性を比較するプロットが図15に示されている。図に示されるように、炭素上22%Cu/3%Pt触媒は、安定した98%[P(I)+P(III)]選択性を示し、P(I)およびP(III)に関する特異的選択性が時間の対して一定に維持された。SA−30担持触媒は、97%の一定の[P(I)+(III)]選択性を示したが、時間に対するP(III)種への選択性は増加し、P(I)への選択性は減少した。P(I)選択性の減少は、SA−30担持触媒実験における燐プールの高粘性から生じる、P4相から水性相へのP(I)酸の移動のバリヤーの結果であると考えられる。この触媒は低いCu含有量を有する故に、同じモル濃度のCuを与えるために高重量部分の触媒が必要であった。触媒は燐相で濃縮される故に、高固形物濃度が、高燐相粘度を与え、従って物質移動のバリヤーを与える。
【0148】
例37
水との触媒反応による燐の酸化における、温度の効果を調べる試験を行った。300ccのオートクレーブ中で1000rpmの定攪拌速度において反応を行った。使用した触媒は、炭素担体上の22.5%Cu/1.8%Pdであった。触媒添加量は1.8モル%であった。反応温度は20℃増分において、90℃の初期温度から150℃の最終温度に規則的に増加させた。反応圧を連続的に監視し、各温度段階の終わりに、液体試料を採取した。図17は、この例の反応に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットである。温度試験の終わりに生成されるPOx種から、82%の転化が求められた。反応の間の反応器圧の累進的増加によって示されるように、反応の大部分において、酸化が予期された零オーダーの挙動を示した。しかし、150℃段階の初期に、速度が急激に増加し、反応がより多くの第一オーダー輪郭に変化したのが分かる。この現象は、触媒が再分散し、それによって、触媒の活性部位が水性相と有意に接触したためであると考えられる。実際に、触媒は、担体から剥がれ始めていた。あるいは、選択性の減少が、150℃より高い温度におけるオートクレーブの壁および内部(攪拌器、コイル等)の触媒活性から生じたと考えられる。150℃より高い温度において、反応器中にホスフィンの存在も確認された。いずれにしても、約150℃における増加した反応速度に伴って、選択性が有意に減少した。
【0149】
P4の使用に関する速度定数を、いくつかの温度において算定した。図18は、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(P4転化速度)のプロットである。初めの3つのデータポイントは、見掛零オーダー速度定数の穏当に一致した対数プロットを示し、このプロットの傾斜は、90℃〜130℃の範囲において、15kcalの活性化エネルギーを生じる。しかし、活性化エネルギーの急激な増加が、約150℃において現れる。
【0150】
図19は、温度変化過渡(temperature change transients)を除去し、試料採取による頂部空間容量増加を調整した後の、時間に対する、反応器内の圧力増加速度のプロットである。150℃領域の初期部分だけが図19に現れている。圧力増加は、顕著に零オーダーを維持するが、圧力増加の見掛速度において、予期されない指数関数的増加が見られる。図19の挿入図は、△T×10−1に対するr1/2の比の底10対数によって表される、時間に対する反応速度の増加を示す[r1=開始温度における燐酸化反応速度、△T=開始温度からの温度増加、およびr2=開始温度+△Tに対応する温度における燐酸化速度]。
【0151】
例38
四燐酸化反応を、実質的に例25に記載の方法によって行った。シリンジを使用して、有意な割合の次亜燐酸を含有するこの反応混合物からの水性相を、反応器から採取し、移した水性相における次亜燐酸基質に基づき約4モル%の割合のPd黒を装填した別のフラスコに移した。得られた混合物を65℃に加熱し、適切な時間間隔で、含有物をイオンクロマトグラフィーによって分析した。図20に示されるように、40分以内におけるH3PO2からH3PO3への充分な転化、および、全てのP(I)酸が使用された後でさえ、3時間より長い時間にわたる97+%のP(I)+P(III)酸への持続選択性をデータが示している。図20からさらに分かるように、亜燐酸への次亜燐酸の酸化の間に、P(V)酸の濃度は実質的に未変化のままであった。反応混合物が65℃において19時間より長い時間にわたって維持されるまで、選択性は低下し始めなかった。
【0152】
例39
上清水性相に接触する燐プールを含んで成る不均一反応系における、攪拌の効果を調べるために、初めに静止条件において反応を行い、中度攪拌条件において反応を継続した。四燐(3.91g)およびPd黒(燐原子に基づき6モル%)を、長い筒状の、約1インチの直径のSchlenckフラスコに、約50mLの水と一緒に装填した。そのフラスコに窒素ブランケットおよび撹拌棒を取り付けた。フラスコの上部の外壁に磁石も取り付け、それによって、実験の間にフラスコの上部に内部撹拌棒がつり下げられるようにした。実験の非攪拌部分に関しては、水相から試料を採取する前に、撹拌棒を燐プールに降ろし、2分間攪拌して、燐相の効果的な抜き取りを確実にし、それによって、典型的試料を得ることができた。4000分の初期反応時間において、本質的静止条件において、即ち連続攪拌を行わずに、反応を行った。4000分経過時に、撹拌棒を作動させ、残りの反応時間において反応混合物を中度攪拌にかけた。攪拌は、燐相と水性相の間の物質移動を促進するのに充分であったが、1つの相が他の相に分散するか、または触媒が燐相から水性相に移動するのに充分な強さではなかった。この例の反応に関する、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性が、図21にプロットされている。中度攪拌を行うことによって、静止条件における反応の約3倍で反応速度が増加したことが分かる。攪拌を行った際に、P(I)+P(III)オキシ酸への選択性における、即時の有意な増加も観察された。この例の結果は、反応生成物が触媒に接触している燐相から、中度攪拌条件において活性触媒部位に実質的に接触していない水性相への、燐オキシ酸反応生成物の適切な速度の物質移動に、最大選択性の達成が部分的に依存することを示唆している。
【0153】
例40
Tollen試薬を使用して銀メッキしたガラススリーブを、ディスペラマックス羽根車(disperamax impeller)を有し、Hastelloy Cインターナル(internals)を取り付けた300mLのHastelloy Cオートクレーブに入れた。次に、そのオートクレーブに、水(85.2g)および燐(28.13g、0.91モルP原子)を装填し、得られた混合物を勢いよく攪拌しながら200℃に加熱した。1.7時間後、水相をICによって分析し、0.0%H3PO2、11.1%H3PO3、および6.5%H3PO4を含有することが分かった。P(I)+P(III)に対する選択性は63%であった。
【0154】
例41
四燐(1.094g、0.0353モルP原子)を、グローブボックス中の試験管において溶融させた。SA−30上の17.5%Cu/3%Pdを含んで成る炭素担持触媒(0.14g)を加え、溶融燐中に混合した(P原子に対して1モル%Cu)。その混合物を冷却し、凝固し、次に、脱泡水(47.4g)を含有するフラスコに移した。次に、このフラスコを音波処理水浴(Bransonic Model 5210、47MHz)に浸漬し、61℃に加熱した。P4相が溶融したら直ぐに、音波処理を開始し、75分間維持した。音波処理の間に、この反応混合物の初期清澄水性相が徐々に濁ったが、溶融P4/触媒相は、フラスコの下部に維持された。この間に、反応の試料採取を2回行った。初めの75分間の音波処理の終わりに採取した第二試料の分析は、燐の0.12%転化、およびP(I)+P(III)への100%選択性を示した。見掛P4転化速度は1.6×10−5分−1であったが、これは、音波処理を行わない90℃における前のランにおける同じ触媒および触媒濃度に関して観測された速度と同じであった(例25、表2参照)。次に、加熱水浴において、音波処理を行わずに、反応器を撹拌棒で120分間にわたってゆっくり攪拌した。この「サイレント」反応時間の終わりに採取した試料は、追加のP4転化を示さなかった。次に、音波処理を再開し、120分間継続した。この第二音波処理の終わりに反応器から採取した試料は、0.4%の最終P4転化を示し、再びP(I)+P(III)の100%収率であった。第二音波処理の間の転化速度は、第一音波処理において観測された転化速度と同様であった。
【0155】
この例における実験条件およびサンプル分析を表3に示す。累積選択性、勾配(slope)選択性、見掛P4転化、零オーダー速度、および標準速度(Normed Rate)を表4に示す。実験時間に対する、試料濃度、転化、反応速度、および選択性のプロットが、それぞれ図25、26、27、および28に示されている。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
例42〜44
例15〜34の方法を使用して、水との触媒反応によって四燐を酸化する一連の反応を行った。これらの反応の結果を表5に示す。
【0159】
例45
燐およびCuMoO4触媒の混合物を、実質的に例15〜34に記載の方法によって製造した。磁気撹拌棒を有し、内部熱電対、圧力計、ブロック弁(block valve)(パージおよび圧力開放のため)、および、反応器から試料を採取し、反応の進行を監視するために使用される試料ライン/弁アセンブリにつながれた内部フリット(internal frit)を取り付けた、300mLのAce Glass反応器に、この混合物を移した。130℃に維持される温度において反応を行った。この例の反応に関して、水性相は、実験時間中、青/黒色を維持した。この着色は、濾過後でさえ維持された。紺青色種は、オキシドおよびヒドロキシド官能価を有する、部分的に還元されたモリブデンオキシド種であると考えられる。反応混合物の分析を表5に示す。
【0160】
例46〜50
一連の触媒/燐混合物を、例15〜34に記載した方法によって製造した。この混合物を例45に記載の装置に装填し、燐酸化反応を、該例に記載の方法で行った。反応混合物の分析を表5に示す。
【0161】
例51
触媒/燐混合物を、例15〜34に記載の方法によって製造した。触媒は、3%Pd/SA−30担体上の17.5%Cuであった。反応は一般に例15〜34に記載の方法によって行ったが、内部反応温度は130℃に維持された。反応混合物の分析を表5に示す。
【0162】
例52
触媒/燐混合物を、例51に記載の方法によって製造した。例45に記載の装置を使用して、水との触媒反応による四燐の酸化を、一般に該例に記載の方法によって行ったが、内部反応温度は150℃に維持された。
【0163】
【表5】
【0164】
例53〜114
配位触媒の存在下における水との反応による四燐の触媒酸化において、2つの一般的方法を使用した。
【0165】
方法Aにおいて、10gの四燐インゴットから四燐の一部(1g)を水中で切り取り、水を充填した風袋計量広口瓶に移した。風袋計量広口瓶に入れてP4を計量し、Ar充填グローブボックスに移した。グローブボックスにおいて、P4試料を広口瓶から採取し、18×150mmの試験管に入れ、温度管理油浴によって加熱して溶融させた。充分に混合しながら、固体触媒を少量ずつ溶融P4に加えた。触媒添加が終了した際に、P4/触媒混合物を、固体になるまで冷却し、試験管に蓋をし、グローブボックスから取り出した。次に、P4/触媒混合物を、水中で試験管から出し、脱イオン水(50mL)を装填したテフロン撹拌棒を取り付けた50mLの丸底フラスコに移した。窒素噴水装置に取り付けた、ゴム隔膜を取り付けたインライン隔膜入口アダプターを、フラスコに取り付けた。水/触媒/P4装填混合物を、攪拌し、温度管理油浴を使用して一般に90℃の反応温度に加熱した。0.2μmのナイロンフィルターを有するArパージ使い捨てシリンジを使用して、反応混合物の水性相から定期的に試料を採取した。EM Science, Gibbstown, New Jersey 08027から入手されるcolorpHast(R)pH0〜14のpH指示ストリップを使用して、水性反応生成物の試料のpHを検査し、イオンクロマトグラフィーによって燐オキシ酸の濃度を検査した。
【0166】
方法Bは、実質的に方法Aと同じであるが、P4試料は、グローブボックス中の風袋計量広口瓶から採取し、50mLの丸底フラスコに直接入れ、温度管理浴において加熱して溶融させた。次に、充分に混ぜながら、固体触媒を少量ずつ、50mLのフラスコ中の溶融P4に加えた。触媒添加が終了した際に、P4/触媒混合物を、固体になるまで冷却し、次に、Arでパージした水(50mL)をフラスコに加え、フラスコにゴム隔膜で蓋をし、グローブボックスから取り出した。次に、反応試料の分析を、方法Aに記載のように行った。
【0167】
例53〜114の実験反応の結果を表6に示す。
【0168】
この例の実験に使用した配位触媒の配位子の記号を下記に記載する。
acac=アセチルアセトネート、[CH3C(O)CHC(O)CH3]
PPh3=トリフェニルホスフィン、P(C6H5)3
PEt3=トリエチルホスフィン、P(C2H5)3
dppe=1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、
(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2
Cp=シクロペンタジエニル、[C5H5]
nbd=ノルボルナジエン
cod=シス、シス−1,5−シクロオクタジエン
bipy=2,2’−ビピリジル
DMSO=ジメチルスルホキシド
【0169】
【表6−1】
【0170】
【表6−2】
【0171】
【表6−3】
【0172】
【表6−4】
【0173】
【表6−5】
【0174】
例115〜118
例116〜118の酸化実験において、テフロン被覆撹拌棒を、300ccのオートクレーブのガラスライナーに入れ、そのライナーを、Ar雰囲気に維持したグローブボックス中の65℃の油浴に入れた。四燐の塊を、ライナーに入れ、ゆっくり攪拌しながら溶融させた。所定装填量のCuCl2・2H2O(乾燥粉末)の重さを計り、標準試験管に入れた。蒸留し、脱泡した水(50μL)を、試験管中のCuCl2に加え、得られた溶液を、CuCl2の溶解を補助するグローブボックス中の65℃の油浴において、5分間にわたって温めた。希釈の程度は約90%であった。得られた濃緑色触媒溶液を、ガラスライナー中の溶融P4に、ゆっくり攪拌しながらピペットで加えた。残留CuCl2および少量の未溶解CuCl2を含有する試験管を、蒸留脱泡水(400μL)で洗浄し、この洗浄溶液を、溶融燐を含有するガラスライナーに移した。
【0175】
P4/CuCl2/H2Oの混合物を約5分間攪拌し、この間に、溶融P4塊が触媒溶液に徐々に混合され、次に、固体塊になるまで徐々に濃縮した。この転移(transition)に伴って種々の色の変化があった。初めに、明瞭な緑色水性相および黄色P4相が存在した。次に、褐色水性相および銀白色燐相が存在した。固体の混合P4/触媒相が得られるまでに、非常に少ない水性相が観察された。固体の触媒/P4塊が形成された後、この混合物を含有するガラスライナーを油浴において25分間静置し、次に、油浴から取り出し、約5分間冷却した。
【0176】
次に、所定量の蒸留脱泡水(約125mL)をライナーに入れ、ライナーを大きいゴムストッパーで密封した。固体P4/触媒相は、水性相との明らかな相溶性を示さなかった。水およびP4/触媒装填混合物を含有するライナーを、Arパージにおいて維持したオートクレーブに移した。反応器における配置、および反応器ヘッドの固定(securing)の直前に、ゴムストッパーをガラスライナーから除去した。ヘッドを固定し、漏れを試験し、適切な熱電対および液体試料採取連接物(liquid sampling connections)を取り付けた後、反応器に加熱テープを巻き付け、絶縁した。反応温度に加熱する直前の反応器の最終状態は、室温および0psigのArであった。Ar連接物(Ar connection)は、液体レベルより上であった。
【0177】
反応器本体およびヘッド加熱器を作動させ、装填混合物における110℃のラン温度に徐々に上げた。加熱段階の大部分において、反応器ヘッドを、反応器より約10℃高い温度に維持した。110℃に到達するのに要した合計時間は、約50分であった。これらの例の種々のランにおいて、加熱時間が、各ランに関して、できる限り同じ温度になるように維持された。一般に、約20分間にわたって持続する3〜5℃の少しの行き過ぎ温度(a minor temperature overshoot)が存在した。反応器含有物が最初に110℃に到達したときに、ラン時計(run clock)を開始させた。各ランの持続時間にわたって、反応器液体含有物から定期的に試料を採取した。ランの終わりに、反応器を冷まし、反応器を換気する前に、頂部空間ガスの試料を採取した。
【0178】
蒸留水を装填する前に、反応器にライナーを入れ、および反応器ライナーにおいてではなく試験管においてP4/触媒装填材料を初めに製造する点において、例115の手順は、前記の手順と少し異なる。このランの直前に、試験管を水中(反応器の外)でこわし、固体P4/触媒塊を取り出し、水(125℃)をライナーに加えた後に、反応器に手で素早く直接移した。
【0179】
例118は、110℃において2時間後に、反応器を冷却し、換気し、頂部空間をパージし、反応器を再加熱して、前記の方法によって行う特殊なランであった。この手順の目的は、「中断された」反応が、中断の直前と同じ速度で再開されるかを調べることであった。
【0180】
この例の各反応に添加されたP4/CuCl2・2H2Oおよび水の概要が、表7に示されている。
【0181】
【表7】
これらの例のランに関する、温度、反応器圧、試料分析、累積選択性、勾配選択性、見掛P4転化、零オーダー速度、および標準化速度が、表8〜11Aに示されている。例115のランに関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットが、図29/29Aに示されている。例116〜118に関する同様のプロットが、それぞれ、図30/30A〜図32/32Aに示されている。
【0182】
図33は、それぞれ例115〜117の3種類の触媒添加に関する、時間に対する、点と点の間の見掛瞬間速度(平均速度)を示す。
【0183】
【表8】
【0184】
【表8A】
【0185】
【表9】
【0186】
【表9A】
【0187】
【表10】
【0188】
【表10A】
【0189】
【表11】
【0190】
【表11A】
【0191】
「見掛」または「逆算」P4転化は、反応器頂部空間におけるホスフィンガスの存在により、約10%で明らかに低い(液体試料分析においては確認されない)。PH3の大部分が、初期の「速い」反応部分の間に形成されると考えられる。各ランは、反応速度における分岐点(a break)を示した。観測された反応器圧増加と、化学量論的、気体の法則の計算から求められる反応器圧増加との開きは、反応の初期の速い部分の間に生じたと考えられ、その後、実際の圧力曲線と算定圧力曲線が平行になった。これは、ランの初期部分の間の不均化反応によるPOxおよびPH3の発生を示すものであると考えられる。
【0192】
例118のランにおいて、初期触媒添加量は10モル%Cuであった。2時間の反応時間後、前記のようにバッチを中断し、換気し、冷却した。110℃に再加熱した際に、反応が高初期速度においてさらに17時間にわたって進み、次に加熱を再除去した。第二反応時間後の反応器頂部空間の分析は検出できるPH3を示さず、これは、PH3の認識できる発生なしにP4の急速な触媒酸化を示す故に、注目すべき結果である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置、および本発明の方法の工程の概略図を示す。
【図2〜図10】本発明の装置の選択的実施態様、および方法の工程の概略図を示す。
【図11】水性相、四燐相、およびPd触媒を含んで成る不均一反応系における、反応混合物の累積選択性のプロットである。
【図12】触媒が燐相に組み込まれている、水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系における、四燐からのPOxの収率のプロットを示す。
【図13】水性相および四燐相を含んで成る不均一反応系において、密閉オートクレーブ中、90℃の反応温度、および燐原子に基づき2モル%のPd触媒添加量における、時間に対する攪拌速度のプロット、および、時間に対する反応器圧および転化のプロットを示す。
【図14】燐原子に基づき1.4モル%Cuの触媒添加量において、炭素触媒上22.5%Cu/1.8%Pdを使用する90℃における四燐の水での触媒酸化における、時間に対する、選択性および収率のプロットを示す。
【図15】図14の時間に対する選択性のデータを、炭素担体上15%Cu/3%Ptを含んで成る触媒を使用する以外は図14と同じ条件において行われる反応における時間に対する選択性のデータと比較する、2つのプロットを示す。
【図16】四燐によって系中で還元されるCuCl2水化物触媒を使用する、90℃における四燐の水での触媒酸化に関する、時間に対する累積選択性および収量のプロットを示す。
【図17】燐原子に基づき1.8モル%Cuの触媒添加量において炭素上22.5%Cu/1.8%Pdを使用して、生産性および選択性における温度の効果を評価するために行われた実験に関する、時間に対する、温度、P4転化速度、および選択性のプロットを示す。
【図18】図17に示される反応に関する、逆温度(reciprocal temperature)に対するln(転化速度)のプロットを示す。
【図19】図17に示される反応に関する、時間に対する補正反応圧(corrected reaction pressure)のプロットを示し、図19における挿入図は、開始温度からの増加の1/10に対する対数(r1/r2)のプロットを示す。
【図20】Pdを触媒として使用する水での触媒水性相酸化による、次亜燐酸の亜燐酸への転化の最後の反応における、時間に対する、累積選択性およびポイント−ワイズのプロットを示す。
【図21】初期の非攪拌条件および次の攪拌条件における、水との触媒反応による、四燐の酸化における、P4転化、水性相におけるP(I)、P(III)およびP(V)種の累積濃度、および累積選択性のプロットを示す。
【図22】2種類の反応条件における、時間に対するP(I)+P(III)選択性のプロットを示し、1つの条件は、P4の存在下に90℃において燐化銅(I)と水の混合物を攪拌することによって得られ、もう1つ条件は、P4の不在下に同様の条件において得られる。
【図23】反応において燐化銅の代わりに隣化ニッケルを使用して、実質的に図22と同様の方法によって得られるプロットを示す。
【図24】固定床に含有されるのではなく燐相に分散される触媒を使用する、図8と同様の工程図を示す。
【図25】例41の音波処理反応系における、時間に対する、次亜燐酸、亜燐酸、および燐酸濃度のプロットを示す。
【図26】例41の反応系における、時間に対する逆算燐転化のプロットを示す。
【図27】例41の反応系における、時間に対する選択性のプロットを示す。
【図28】例41の反応系における、時間に対する反応速度のプロットを示す。
【図29/29A〜図32/32A】それぞれ例115〜118の実験に関する、時間に対する、試料濃度、逆算燐転化、選択性、および速度のプロットを示す。
【図33】例115〜117の反応に関する、時間に対する、点から点の見掛反応速度(apparent point to point reaction rates)のプロットを示す。
Claims (163)
- 200℃未満の温度における水との反応によって元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成る燐オキシ酸の製造方法。
- 該反応を、金属触媒の存在下において行う請求項1に記載の方法。
- 該反応を、貴金属触媒の存在下において行う請求項2に記載の方法。
- IB族金属、VIII族金属、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、IB族金属の塩、VIII族金属の塩、IB族金属の燐化物、VIII族金属の燐化物、IB族金属の配位化合物、およびVIII族金属の配位化合物から成る群から選択される物質を含んで成る触媒の存在下において、該反応を行う請求項1に記載の方法。
- 該反応を、有機金属化合物を含んで成る触媒の存在下において行う請求項1に記載の方法。
- 四燐を、四燐含有相を分離水性相に接触させる不均一反応系において水と反応させる;
請求項1に記載の方法。 - 該触媒が主として、四燐を含んで成る相に分配される請求項6に記載の方法。
- 該触媒が貴金属触媒を含んで成る請求項7に記載の方法。
- 該触媒が、四燐を含んで成る該相に実質的に含有される請求項7に記載の方法。
- 反応を、四燐の融点〜約200℃の温度において行う請求項9に記載の方法。
- 反応生成物が、水性相中の亜燐酸および燐酸の溶液を含んで成り、該反応生成物における亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約5である請求項10に記載の方法。
- 反応生成物の亜燐酸および次亜燐酸の合計含有量/反応生成物の燐酸含有量の比が、少なくとも約8である;
請求項11に記載の方法。 - 該触媒が、白金金属、IB族金属、VIII族金属、白金金属の酸酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII族金属の塩、IB族金属の燐化物、VIII族金属の燐化物、白金金属の配位化合物、IB族金属の配位化合物、およびVIII族金属の配位化合物から成る群から選択される物質を含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が白金金属を含んで成る請求項13に記載の方法。
- 該触媒がパラジウムを含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が、IB族金属、それらの酸化物、塩、および燐化物から成る群から選択されたものである請求項11に記載の方法。
- 該触媒が、銅金属、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、酸化銅、燐化銅、またはそれらの混合物を含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が、貴金属、Cu、Co、およびNiから成る群から選択される金属を含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が、配位遷移金属を含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が、該燐相に均質な配位金属を含んで成る請求項11に記載の方法。
- 該触媒が不均一系触媒を含んで成り;および
水性相および四燐を含んで成る相の間の物質移動を促進するのに充分であるが、該反応生成物における亜燐酸/燐酸のモル比を約5未満にする程度まで、水性相における該不均一系触媒の同伴を生じるのに不充分な速度で、該反応系を攪拌する;
請求項7に記載の方法。 - 四燐を含んで成る相が、該水性相の少なくとも一部より下に位置する液体プールを含んで成り、攪拌が、該液体プールから該四燐相の小球を連続的に砕くのに充分な攪拌である請求項21に記載の方法。
- 反応生成物の亜燐酸および次亜燐酸の合計含有量/反応生成物の燐酸含有量の比が、少なくとも約8である請求項21に記載の方法。
- 該水性相のPd含有量が、水による四燐の酸化の実質的に全時間にわたって、約200ppm未満である請求項21に記載の方法。
- 四燐を含んで成る該相に接触する活性触媒部位の有効濃度、該水性相に接触する触媒部位の有効濃度、および該系の温度の組合せが、1モルの燐酸当たり少なくとも5モルの亜燐酸を含有する反応生成物を製造するのに有効である請求項7に記載の方法。
- 1モルの燐酸に対して少なくとも5モルの亜燐酸を含有する反応生成物を製造するように、該反応系における触媒分布、温度、該系の攪拌の組合せを制御する請求項7に記載の方法。
- 該反応生成物における、亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約8である請求項26に記載の方法。
- 該反応生成物における、亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約9である請求項27に記載の方法。
- 反応生成物の亜燐酸および次亜燐酸の合計含有量/反応生成物の燐酸含有量の比が、少なくとも約8である請求項26に記載の方法。
- 四燐を含んで成る該相が、有機溶媒中の四燐の溶液を含んで成る請求項6に記載の方法。
- 該触媒がパラジウムを含んで成る請求項6に記載の方法。
- パラジウム活性部位が、主として、四燐を含んで成る相に分配される請求項31に記載の方法。
- 水性相、四燐を含んで成る実質的に水不混和性の液相、および貴金属触媒、を含んで成る前駆物質混合物を準備し;および
該前駆物質混合物を攪拌して、貴金属触媒が、四燐を含んで成る相に実質的に分配されるようにし、次に、水による四燐の触媒酸化によって四燐が亜燐酸に選択的に酸化される;
請求項6に記載の方法。 - 該前駆物質混合物の攪拌が、該水性相に初めに含有される貴金属触媒を、四燐を含んで成る該相に移動させる請求項33に記載の方法。
- 該前駆物質混合物の攪拌が、四燐の触媒酸化が亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約5の反応生成物を製造するのに充分な程度に、貴金属触媒を四燐を含んで成る相に分配させるのに有効である請求項34に記載の方法。
- 予備混合物を、溶融四燐を含んで成る液体と該触媒とを混合することによって準備し、次に、該予備混合物を水性液体に接触させて、該不均一反応系を得る請求項6に記載の方法。
- 該触媒が貴金属触媒を含んで成る請求項36に記載の方法。
- 該予備混合物の準備および次の該予備混合物と該水性液体との接触が、四燐の触媒酸化によって亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約5の反応生成物を製造するのに充分な程度に、触媒を四燐を含んで成る相に分配させるのに有効である請求項36に記載の方法。
- 該予備混合物と該水性液体との接触前に、該予備混合物の液相を凝固させる請求項38に記載の方法。
- 該予備混合物を不活性雰囲気において準備する請求項36に記載の方法。
- 該予備混合物を、その中に含有される触媒の還元のために、水素に接触させる請求項36に記載の方法。
- 水性相、四燐を含んで成る実質的に水不混和性の液相、および貴金属触媒、を含んで成る初期前駆物質混合物を準備し;
該初期前駆物質混合物の液相を分離し、それによって、水性相に分配されている貴金属触媒を除去し;および
実質的に水不混和性の液相をさらに水性液体に接触させて、該不均一反応系を得る;
請求項6に記載方法。 - 該初期前駆物質混合物の液相の分離後に、該水不混和性液相を水性液体に接触させて第二前駆物質混合物を準備し、および、該水不混和性相を水性液体に接触させる前に該第二前駆物質混合物の液相を分離して、該不均一反応系を得る請求項42に記載の方法。
- 水性相に分配される触媒の一連のパージング段階において、該水不混和性液相を水性液体に接触させ、それによって一連の前駆物質混合物を準備し、該一連のパージング段階のある連続段階において水不混和性液相を水性液体に接触させる前に、各前駆物質混合物の液相を分離し、該パージング段階の最後の段階からの水不混和性液相を、水性液体と混合して、該不均一反応系を得る請求項42に記載の方法。
- 該不均一反応系の水性相と接触する活性触媒部位の濃度が、四燐の触媒酸化によって亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約5の反応生成物を生じるように充分に低い濃度である請求項42に記載の方法。
- 該貴金属触媒が、水との反応による四燐の触媒酸化の間に、実質的還元状態にある請求項6に記載の方法。
- 該触媒を、該不均一反応系に導入する前に還元する請求項46に記載の方法。
- 該触媒を、水素との接触によって還元する請求項47に記載の方法。
- 該触媒を、メタノールまたは水媒体中で水素に接触させることによって還元する請求項48に記載の方法。
- 該触媒の還元が、触媒の存在下において次亜燐酸を水と反応させることを含んで成る請求項48に記載の方法。
- 次亜燐酸の亜燐酸への転化による水素の生成に有効な温度において、次亜燐酸の水溶液を該触媒に接触させ、それによって、水素との反応によって該触媒を還元する工程;および
四燐含有相を、還元触媒および水性液体と混合して、四燐が燐のオキシ酸に酸化される該不均一反応系を得る工程;
を含んで成る請求項50に記載の方法。 - 水性液体が、該触媒の還元において生成される燐オキシ酸の溶液を含んで成る請求項51に記載の方法。
- 反応生成物が、水性相中の亜燐酸の溶液を含んで成り、該方法が、触媒を該不均一反応系に導入する前に、予備処理帯域において触媒を水素に接触させることをさらに含んで成り、該不均一反応帯域における次亜燐酸の燐酸への酸化において発生する水素を、その中で該触媒を還元する該予備処理帯域に循環させる請求項48に記載の方法。
- 反応生成物が、亜燐酸/燐酸のモル比が少なくとも約5の燐オキシ酸の水溶液を含んで成る請求項46に記載の方法。
- 水性相から四燐を含んで成る相への貴金属触媒の移動を促進するのに有効な温度において、不均一反応系を攪拌する請求項6に記載の方法。
- 燐酸化反応生成物が、次亜燐酸をさらに含有する粗水性生成物相を含んで成り、該方法が、該粗水性相に接触する触媒の存在下における水との反応によって次亜燐酸を酸化して、次亜燐酸/亜燐酸のモル比が約0.2以下の亜燐酸の水溶液を含んで成る水性酸化反応生成物を製造することをさらに含んで成る請求項1に記載の方法。
- 次亜燐酸/亜燐酸の該モル比が約0.05以下である請求項56に記載の方法。
- 次亜燐酸/亜燐酸の該モル比が約0.01〜約0.02である請求項57に記載の方法。
- 貴金属、Cu、Co、およびNiから成る群から選択される触媒の存在下において反応を行う請求項56に記載の方法。
- 該触媒が、Pd、Pt、およびRhから成る群から選択される請求項59に記載の方法。
- 四燐を不活性雰囲気において水に接触させる請求項1に記載の方法。
- 四燐の燐オキシ酸へ触媒酸化の前に、該四燐が接触する水を、不活性ガスに接触させる請求項61に記載の方法。
- 四燐を含んでなる相を分離水性相に接触させる不均一反応系において、四燐を水と反応させる請求項61に記載の方法。
- 該触媒がパラジウムを含んで成る請求項1に記載の方法。
- 該触媒がパラジウム黒を含んで成る請求項64に記載の方法。
- 四燐を含んで成る実質的に水不混和性供給組成物を含んで成る燐相を、相の界面における燐相への水の移動のために、液体/液体接触帯域において、水性相に接触させ;および
水性相から移動する水を含有する燐相を、燐相に含有される水との反応によって四燐を酸化する触媒に接触させる;
請求項1に記載の方法。 - 該水含有燐相を、該界面から離れている触媒反応帯域において、貴金属触媒に接触させることを含んで成る請求項66に記載の方法。
- 該触媒反応帯域が、固定または流動触媒床を有して成る請求項67に記載の方法。
- 該燐相を、該液体/液体接触帯域と該触媒反応帯域の間に循環させる請求項68に記載の方法。
- 燐オキシ酸を含んで成る生成物溶液を、連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域から取り出し、および、水を連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域に導入する請求項69に記載の方法。
- 四燐を、連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域に導入する請求項70に記載の方法。
- 液体/液体接触帯域において該液体/液体界面において該燐相の表面を該水相が横切って流れ、該燐相の他の表面が該触媒に接触する請求項66に記載の方法。
- 燐オキシ酸を含んで成る生成物溶液を、連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域から取り出し、および、水を連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域に導入する請求項72に記載の方法。
- 四燐を連続的または断続的に、該液体/液体接触帯域に導入する請求項73に記載の方法。
- 反応を、該液体/液体接触帯域および該触媒反応帯域を有して成る容器において行い、該反応帯域を、該燐相中に、または燐相が接触する反応器の壁に、配置する請求項72に記載の方法。
- 該触媒を該燐相中に配置する請求項72に記載の方法。
- 該触媒を該燐相においてスラリーにする請求項76に記載の方法。
- 該触媒を該燐相に溶解する請求項76に記載の方法。
- 該触媒を、該燐相中に配置した固定床に含有させる請求項76に記載の方法。
- 該供給組成物が、有機溶媒に溶解された四燐を含んで成る請求項66に記載の方法。
- 貴金属触媒を含有する燐相を、向流液体/液体接触帯域において、水性相に接触させる請求項1に記載の方法。
- 該燐相を、該向流液体/液体接触帯域と該燐相の溜めの間に循環させる請求項81に記載の方法。
- 燐オキシ酸を含んで成る水性相反応生成物を、該液体/液体接触帯域から取り出し、貴金属触媒を含有する最終反応帯域に導入する請求項81に記載の方法。
- 該最終反応帯域が、該貴金属触媒を含んで成る固定触媒床を含んで成る請求項83に記載の方法。
- 該最終反応帯域から出る仕上げ燐オキシ酸溶液を、水を蒸発させることによって濃縮する請求項83に記載の方法。
- 燐オキシ酸を含んで成る水性相反応生成物を、該液体/液体接触帯域から取り出し、炭素触媒を含有する最終反応帯域に導入する請求項81に記載の方法。
- 該液体/液体接触帯域から取り出される燐オキシ酸を含んで成る水性相反応生成物を、該水性相反応生成物に同伴する燐相を分離するための液体/液体分離器に導入する請求項81に記載の方法。
- 該水性相反応生成物から分離された燐相を、該液体/液体接触帯域に循環させる請求項87に記載の方法。
- 燐酸化反応生成物が亜燐酸を含んで成り、該反応において生成される亜燐酸をさらに、強酸の存在下においてホルムアルデヒドおよび置換または非置換グリシンと反応させて、置換または非置換N−ホスホノメチルグリシンを生成する請求項1に記載の方法。
- 燐酸化反応生成物が、亜燐酸を含有する水性生成物相を含んで成り、該水性生成物相を含んで成る亜燐酸溶液を、ホルムアルデヒドおよび置換または非置換グリシンと反応させて、該置換または非置換N−ホスホノメチルグリシンを生成する請求項89に記載の方法。
- 燐酸化反応生成物が、次亜燐酸をさらに含有する粗水性生成物相を含んで成り、該方法が、該粗水性相に接触する貴金属触媒の存在における水との反応によって次亜燐酸を酸化して、仕上げ水性酸化反応生成物を製造し、該仕上げ水性酸化反応生成物を、ホルムアルデヒドおよびN−置換または非置換グリシンに接触させて、該置換または非置換N−ホスホノメチルグリシンを生成することをさらに含んで成る請求項89に記載の方法。
- 酸化反応を約195℃未満の温度で行う請求項91に記載の方法。
- 酸化反応を約185℃未満の温度で行う請求項92に記載の方法。
- 酸化反応を約175℃未満の温度で行う請求項93に記載の方法。
- 酸化反応を約150℃未満の温度で行う請求項94に記載の方法。
- P(V)種に対する[P(III)+P(I)]種の生成の選択性が急激に低下する閾値温度より約2℃〜約10℃低い温度において反応を行う請求項1に記載の方法。
- 該反応を、水性相、元素状燐を含んで成る相、および反応の触媒、を含んで成る触媒反応帯域において行い、反応の間に、音波および/またはマイクロ波エネルギーを反応帯域に導入する請求項1に記載の方法。
- 該反応を、水性相および燐を含んで成る相を含んで成る反応系において行い、該水性相が約10〜約50ppm以下の金属を含有する請求項1に記載の方法。
- 水性相試薬を、四燐を含んで成る実質的に水不混和性凝縮相に接触させる、液体/液体接触帯域;および
該水不混和性凝縮相を、水との反応による元素状燐の酸化の触媒に接触させる、触媒反応帯域;
を有して成る、元素状燐を燐のオキシ酸に酸化する装置。 - 元素状燐を含んで成る実質的に水不混和性の液体の本体のための溜め;
該実質的に水不混和性の液体の本体の表面を横切って流すために、水性液体を該溜めに導入する手段であって、該手段によって、水が、該水性相から元素状燐を含んで成る該相に移動し、および、燐酸化生成物が、元素状燐を含んで成る該相から該水性相に移動し、該溜めが反応に充分な該液相間の界面接触領域を与えるようになっている、手段;および
該水不混和性液体に接触し、該界面から離れている触媒床であって、該触媒床が、水との反応による元素状燐の酸化の触媒を含んで成る触媒床;
を有して成る、元素状燐を燐オキシ酸に酸化する装置。 - 該界面領域および該液体本体の容量の比率が、少なくとも約50ft−1である請求項100に記載の装置。
- 該触媒床が、該溜めの壁に沿って配置される請求項100に記載の装置。
- 該触媒床が、該液体本体中に配置される容器に存在し、該容器が、そこから触媒が出ていくのを防止するのに有効であるが、該元素状燐を含んで成る液体に透過性の壁を有する請求項100に記載の装置。
- 水性相および元素状燐を含んで成る分離相の、反応物溜め;
該水性相および元素状燐を含んで成る該相間の物質移動を促進する、該溜め内の手段;および
該溜めから離れている触媒床であって、該触媒床が、水との反応による燐の酸化の触媒を含んで成る触媒床;および
該溜めおよび該触媒床間に、元素状燐を含んで成る該相を循環させる手段;
を有して成る、元素状燐を燐オキシ酸に酸化する装置。 - 該触媒が、白金金属、IB族金属、VIII族金属、白金金属の酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII族金属の塩、IB族金属の燐化物、VIII族金属の燐化物、白金金属の配位化合物、IB族金属の配位化合物およびVIII族金属の配位化合物から成る群から選択される請求項104に記載の装置。
- 該触媒が白金金属を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、IB族金属、ならびに、それの酸化物、塩、および燐化物から成る群から選択される請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、銅金属、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、酸化銅、燐化銅、またはそれらの混合物を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、貴金属、Cu、Co、およびNiから成る群から選択される請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、貴金属触媒を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、遷移金属、白金群金属、IB族金属から成る群から選択された配位金属を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、該燐相に均質な配位金属を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 該触媒が、有機金属化合物を含んで成る請求項104に記載の装置。
- 元素状燐と貴金属触媒の混合物のための、触媒スラリータンク;
向流液体/液体接触帯域を有して成り、水性液体の入口、燐オキシ酸の水溶液の出口、燐相の入口、および燐相の出口を有する、不均一液相反応器;および
該燐相出口、該触媒スラリータンク、および該燐相入口の間に、燐相を循環させる手段;
を有して成る、元素状燐を燐オキシ酸に酸化する装置。 - 最終反応器、および燐オキシ酸溶液を該不均一液相反応器から該最終反応器に移動させる手段をさらに含んで成る請求項114に記載の装置。
- 該最終反応器が、白金金属、IB族金属、VIII族金属、白金金属の酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII族金属の塩、IB族金属の燐化物、VIII族金属の燐化物、グラファイトおよび非晶質炭素から成る群から選択される触媒を含んで成る固定床を含んで成る請求項115に記載の装置。
- 該最終反応器から出ていく燐オキシ酸溶液を濃縮する蒸発器をさらに有して成る請求項116に記載の装置。
- 該最終反応器と該不均一液相反応器の該燐オキシ酸出口との間の液体/液体分離器、および該分離器から該不均一液相反応器に燐相を循環させる手段、をさらに有して成る請求項115に記載の装置。
- 該反応器において製造される燐オキシ酸溶液を濃縮する蒸発器をさらに有して成る請求項114に記載の装置。
- 燐オキシ酸の製造に使用するのに有効な組成物であって、該組成物が、元素状燐、および水との反応による元素状燐の酸化を促進するのに有効な触媒を含有する混合物、を含んで成る組成物。
- 該触媒が、白金金属、IB族金属、VIII族金属、白金金属の酸化物、IB族金属の酸化物、VIII族金属の酸化物、白金金属の塩、IB族金属の塩、VIII族金属の塩、IB族金属の燐化物、VIII族金属の燐化物、白金金属の配位化合物、IB族金属の配位化合物、およびVIII族金属の配位化合物から成る群から選択される物質を含んで成る請求項120に記載の組成物。
- 該触媒が貴金属を含んで成る請求項121に記載の組成物。
- 該触媒がパラジウムを含んで成る請求項122に記載の組成物。
- 該触媒が、組成物中に、燐原子に基づいて約0.5モル%〜約50モル%の割合で存在する請求項122に記載の組成物。
- 該触媒が、組成物中に、燐原子に基づいて約1モル%〜約20モル%の割合で存在する請求項124に記載の組成物。
- 元素状燐が少なくとも約10モル%の割合で存在する請求項124に記載の組成物。
- 本質的に元素状燐および貴金属触媒から成る請求項120に記載の組成物。
- 該触媒が、少なくとも約60m2/gのB.E.T.表面積を有する活性相を含んで成る請求項120に記載の組成物。
- 約10モル%未満の燐含有量を有し、組成物中の燐原子に基づいて約50モル%未満の触媒を含有する請求項120に記載の組成物。
- 組成物の燐含有量が約10モル%より低い場合は常に、組成物が、硫酸銅、硝酸銅、銅の燐化物、Cu3P2またはCu6P2以外の触媒を含んで成ることを条件とする請求項120に記載の組成物。
- 固定触媒床がその中に配置される反応器であって、該触媒床が、元素状燐を燐オキシ酸に酸化する触媒を含んで成る、反応器;および
該反応器の中、および該触媒床の外の、リフトレッグであって、該触媒床および該リフトレッグが該反応器中に配置されて、該触媒床の下部から循環される燐相による、該リフトレッグの下部へのアクセスを与える、リフトレッグ;および
水性液体を、該反応器中の燐相より上の水性相から、該水性相中の該リフトレッグと液体流動連絡する反応器の出口と、該燐相中の該リフトレッグの下部末端と液体流動連絡する該反応器への戻しとの間に、循環させる手段であって、それによって、該リフトレッグを通る該水性液体の循環が、該相間に液体/液体接触を与えるのに有効であり、該触媒床を通って該燐相を循環させる手段;
を有して成る、元素状燐を燐オキシ酸へ酸化する装置。 - 低級燐酸化生成物を含んで成る酸化反応混合物を製造するのに有効な条件において、水との触媒反応によって元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成り、該反応混合物におけるP(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5である、亜燐酸を製造する方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が、少なくとも約2%である請求項132に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が、少なくとも約5%である請求項133に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が、少なくとも約15%である請求項133に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が、少なくとも約25%である請求項133に記載の方法。
- 該比が少なくとも約8である請求項132に記載の方法。
- 水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下において、約20atm未満の圧力において、凝縮相元素状燐を水に接触させることを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。
- 水との反応による燐の酸化のための固相触媒の存在下において、元素状燐を水に接触させることを含んで成る方法であって、該触媒が、少なくとも約60m2/gのB.E.T.表面積を有する活性相を含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。
- 触媒反応帯域において、水との触媒反応によって元素状燐を触媒的に酸化して、m3で表される該反応帯域の単位容量に対して少なくとも0.01kg/時の速度で、低級燐酸化生成物を製造することを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。
- P(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5の酸化反応混合物を製造する請求項140に記載の方法。
- 触媒反応帯域において、元素状燐を触媒的に酸化して、少なくとも1×10−7kg/時−g触媒の速度において、低級燐酸化生成物を製造することを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。
- P(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5の酸化反応混合物を製造する請求項142に記載の方法。
- 水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下において元素状燐を水に接触させることを含んでなる亜燐酸の製造方法であって、それによって、少なくとも約2重量%の低級燐酸化生成物を含有する水性反応混合物を製造することを含んで成る方法であって、燐と水の反応を、水相および元素状燐を含んで成る凝縮相を有して成り、該凝縮相が該触媒を含有する亜リン酸の製造方法。
- 該触媒が、元素状燐を含んで成る該凝縮相に主として分配される請求項144に記載の方法。
- 触媒の分配が、反応温度において、P(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5の反応混合物を準備するのに有効である請求項145に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が少なくと2%である請求項146に記載の方法。
- 元素状燐および該触媒を含んで成る凝縮相混合物を準備する工程;および
該凝縮相混合物を水に接触させる工程;
を含んで成る請求項144に記載の方法。 - 水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下において、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成り、触媒酸化反応の間に、触媒の活性部位が、該水性相に優先して燐を含んで成る凝縮相に接触するように維持される、燐オキシ酸の製造方法。
- 該活性部位を、水性相に実質的に接触しないように維持する請求項149に記載の方法。
- 該水性相および該燐相にそれぞれ接触する活性触媒部位の相対濃度が、反応温度において、P(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5の酸化反応混合物を製造するのに有効である請求項149に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が少なくとも約2%である請求項151に記載の方法。
- 水との反応による燐の酸化のための触媒の存在下において、元素状燐を含んで成る凝縮相を水性相に接触させることを含んで成る燐オキシ酸の製造方法であって、触媒酸化反応が該元素状燐相において優先的に生じる燐オキシ酸の製造方法。
- 不均一系触媒の存在下において、反応を行い、および
元素状燐が該触媒の表面においてその活性部位で優先的に吸収される請求項153に記載の方法。 - 反応温度において、P(I)およびP(III)種の合計濃度/P(V)種の濃度のモル比が少なくとも約5の反応混合物を製造するのに有効な程度に、元素状燐が、水に優先して、該触媒の表面で吸収される請求項153に記載の方法。
- 燐オキシ酸への燐の転化が、少なくとも約2%である請求項155に記載の方法。
- P(I)+P(III)種の生成率/P(V)の生成率の比率が、元素状燐の25%転化における回分反応系において3.0に低下する閾値温度より低い温度において、水との触媒反応によって、元素状燐を酸化することを含んで成る、燐オキシ酸の製造方法。
- 反応を、該閾値温度より約0.5〜約20℃低い温度において行う請求項157に記載の方法。
- 反応を、該閾値温度より約2℃〜約10℃低い温度において行う請求項157に記載の方法。
- 反応を回分法において行う請求項157に記載の方法。
- 反応を連続バック混合法によって行う請求項157に記載の方法。
- 反応を、反応系の水性相に関して、連続プラグ流動法によって行う請求項157に記載の方法。
- 水、元素状燐を含有する相、および反応の触媒を含んで成る触媒反応帯域において、水との反応によって元素状燐を触媒的に酸化することを含んで成り、反応の間に、音波および/またはマイクロ波エネルギーを該反応帯域に導入することを含んでなる、燐オキシ酸の製造方法。
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