JP2004359804A - フッ素オイル組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合単位(1)、又は重合単位(1)と(3)を有するフッ素系ポリマー、及びフッ素オイルを含有するフッ素オイル組成物、それを含有する化粧料、並びにこのフッ素系ポリマーからなる、フッ素オイルのゲル化剤及びレオロジー制御剤。
【化1】
【化2】
(R1はC1−20のパーフルオロアルキル基等、kは1〜6の数、R2はH、ハロゲン原子、OH、C1−22の炭化水素基、C1−26の酸素原子含有アルキル基、酸素原子含有フルオロアルキル基、酸素原子含有パーフルオロアルキル基、ケイ素数1〜150のシロキシシリル基等を示す。)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧料に有用なフッ素オイル組成物、特にゲル状又はレオロジー制御された組成物、それを含有する化粧料、並びにその組成物中に含まれるフッ素系ポリマーからなるフッ素オイルのゲル化剤及びレオロジー制御剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素化合物は、フッ素に由来する撥水・撥油性、非粘着性、すべり(潤滑)性、低屈折率、クリーン性等を始めとした特徴を有するため、化粧料を始めとして、洗浄剤、潤滑剤等の油剤として活用されている。またフッ素化合物は、化学的、生物学的に極めて不活性で、酸素を始めとした気体類を溶解できるため、様々な生物医学的応用もなされている。各種用途において、高機能、多機能を素材や組成物へ付与する場合、炭化水素系化合物からシリコーン化合物へ、そしてフッ素化合物への移行が、化合物の特徴を反映して観られる。かかる用途例には、粉体表面処理、オイル、溶剤等が挙げられる。
【0003】
しかしながらフッ素化合物の親和性の低さのため、フッ素化合物、特にフッ素オイルを用いた製剤化、レオロジー制御、ゲル化は困難で、活用に制限があった。
【0004】
従来、フッ素オイルのゲル化法として、特許文献1には、フッ素オイルにシリカ粉末やアルミナ粉末を混合する方法が開示されているが、この方法では、粉末を用いるため感触上好ましくない。特許文献2及び特許文献3には、フッ素オイルに含フッ素エーテル又はエステル化合物を混合する方法が開示されているが、この方法では、フッ素オイルの長期の安定なゲル化が困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−221829号公報
【特許文献2】
特開平10−175901号公報
【特許文献3】
特開平11−323308号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、フッ素オイルに相溶、又は安定分散するフッ素系ポリマーを含有するフッ素オイル組成物、更にそれを含有する化粧料、及びフッ素オイルのゲル化剤又はレオロジー制御剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式(1)で表される重合単位(以下重合単位(1)という)を有するフッ素系ポリマー、及びフッ素オイルを含有するフッ素オイル組成物、並びに重合単位(1)及び下記一般式(3)で表される重合単位(以下重合単位(3)という)を有するフッ素系ポリマー、及びフッ素オイルを含有するフッ素オイル組成物、そのフッ素オイル組成物を含有する化粧料を提供する。
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R1は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数6〜22のパーフルオロアリール基を示し、kは1〜6の整数を示す。)
【0010】
【化6】
【0011】
(式中、R2は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基、総炭素数1〜26の酸素原子含有アルキル基、酸素原子含有フルオロアルキル基、酸素原子含有パーフルオロアルキル基若しくは酸素原子含有パーフルオロアリール基、又はケイ素数1〜150のシロキシシリル基を示す。)
また、本発明者は、上記フッ素系ポリマーからなる、フッ素オイルのゲル化剤、及びレオロジー制御剤を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
[フッ素系ポリマー]
重合単位(1)中、kは1〜6を示すが、1〜3が好ましく、1が更に好ましい。R1は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数4〜11の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数6〜22のパーフルオロアリール基であり、分岐鎖のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0013】
R1として、例えば、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロ−5−メチルヘキシル基、パーフルオロ−7−メチルオクチル基、パーフルオロ−9−メチルデシル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。1つのポリマーの複数の重合単位(1)中のR1及びkは同一でも異なっていてもよい。
【0014】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーとして、更に、重合単位(1)と重合単位(3)を有するものも好ましい。
【0015】
重合単位(3)中、R2は前記の意味を示すが、ハロゲン原子として、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられる。置換基を有していてもよい、炭素数1〜22の炭化水素基として、好ましくは炭素数1〜22、更に好ましくは炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基あるいは炭素数6〜22のアリール基が挙げられる。ここでアリール基は、アルキルアリール基、アリールアルキル基等であってもよい。置換基としては、水酸基、エーテル基、エステル基、アシル基、アルコキシ基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基等が、アリール基としては、フェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
【0016】
R2で示される総炭素数1〜26の酸素原子含有アルキル基、酸素原子含有フルオロアルキル基、酸素原子含有パーフルオロアルキル基若しくは酸素原子含有パーフルオロアリール基は、下記一般式(5)で表される基であることが好ましい。
【0017】
−(CH2)i−O−(CH2)j−R3 (5)
(式中、R3は直鎖もしくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基、末端に水素原子を有するフルオロアルキル基、又はパーフルオロアリール基を示す。i及びjは同一又は異なって、0〜6の整数を示す)
R3として、好ましくは上記R1と同様、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数4〜11の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数6〜22のパーフルオロアリール基、末端に水素原子を有する、好ましくは炭素数1〜22、更に好ましくは炭素数4〜11の直鎖若しくは分岐鎖のフルオロアルキル基が挙げられる。R3の特に好ましい例として、4H−オクタフルオロブチル基、5H−デカフルオロペンチル基、6H−ドデカフルオロヘキシル基、8H−ヘキサデカフルオロオクチル基、10H−イコサフルオロデシル基等のフルオロアルキル基、炭素数4〜11のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。iは、好ましくは1〜2、特に1であり、jは好ましくは1〜3である。
【0018】
R2で示されるケイ素数1〜150のシロキシシリル基は、下記一般式(6)で表される基であることが好ましい。
【0019】
【化7】
【0020】
(式中、R4及びR5は同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基、R6はトリメチルシリル基又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。f及びgは同一又は異なって0〜3の整数、hは1〜150の整数を示す。また、h個のR4、h個のR5はそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
R4及びR5はメチル基が好ましい。fは1が好ましく、gは3が好ましい。hは9〜150が好ましい。
【0021】
また本発明におけるフッ素系ポリマーは、架橋剤により架橋された架橋体であってもよい。架橋剤は、主鎖中にその構造の一部を共有して架橋するもの、又は重合単位(3)を含む場合、R2にて架橋するもののいずれであってもよい。重合単位(1)と、重合単位(3)(複数種であってもよい)との配列様式は、ブロック、交互、周期、統計(ランダムを含む)、グラフト型の何れであってもよい。重合単位(1)と、重合単位(3)の質量比は、(1)/(3)=80/20〜100/0が好ましく、50/50〜100/0が更に好ましい。
【0022】
本発明のフッ素系ポリマーは、FOMBLIN HC/04(アウジモント社製)に溶解させた25℃における1重量%フッ素系ポリマー溶液の粘度が、0.01〜10000Pa・sが好ましく、0.1〜1000Pa・sが更に好ましい。
【0023】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、下記一般式(2)で表される化合物を重合するか、又は下記一般式(2)で表される化合物及び下記一般式(4)で表される化合物を重合することにより得ることができる。
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、R1及びkは前記の意味を示す。)
【0026】
【化9】
【0027】
(式中、R2は前記の意味を示す。)
一般式(2)中のR1及びkとして、前記のものが好ましく挙げられる。一般式(2)で表される化合物として、具体的には、3―パーフルオロヘキシル―1,2−エポキシプロパン、3―パーフルオロオクチル―1,2−エポキシプロパン、3―パーフルオロデシル―1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−9−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロフェニル)−1,2−エポキシプロパン等が挙げられる。
【0028】
一般式(4)中のR2として、前記のものが好ましく挙げられ、具体的には、水素原子;水酸基;塩素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基等のアルキル基;フェニル基、ノニルフェニル基等のアリール基;前記一般式(5)で表される基で、R3が4H−オクタフルオロブチル基、5H−デカフルオロペンチル基、6H−ドデカフルオロヘキシル基、8H−ヘキサデカフルオロオクチル基、10H−イコサフルオロデシル基等のフルオロアルキル基、炭素数1〜20、特に炭素数4〜11のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの重合方法は、配位重合、アニオン重合、又はカチオン重合により、特公昭48−7718、USP3,396,125、WO99/42513等に記載されている重合触媒を用いて重合することが出来る。好ましくは、特公昭48−7718、WO99/42513に記載されている触媒を用い、60〜130℃、約24時間重合させることにより得ることができる。
【0030】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、架橋構造を有する場合、上記一般式(2)で表される化合物、及び場合により上記一般式(4)で表される化合物と共に、多官能性エポキシドを重合することにより得ることができる。
【0031】
多官能性エポキシドとして、例えば、デナコールEX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−800シリーズ、EX−900シリーズ(長瀬産業(株)製)等の二官能性エポキシド等が挙げられる。
【0032】
多官能性エポキシドの使用量は、上記一般式(2)で表される化合物、及び場合により上記一般式(4)で表される化合物を用いる際にはその合計量に対して、好ましくは、0.0001〜50質量%、更に好ましくは0.001〜20質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%である。
【0033】
また、前記一般式(4)で表される化合物として、R2がハロゲン原子である化合物を用いた場合、重合後に水酸基を有するフルオロアルカン、又は水酸基を有するパーフルオロアルカンと反応させることで、重合単位(3)において、R2が、酸素原子含有フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基であるポリマーを得ることも出来る。特にアルキル鎖長が長い時に、好ましい。
【0034】
[フッ素オイル]
本発明で用いられるフッ素オイルは、好ましくは室温(20℃)で液体のフッ素原子を有するオイルであれば特に限定されない。フッ素オイルは、撥水性及び撥油性を有するものが好ましい。
【0035】
高分子量の液体フッ素オイルとして容易に入手可能なものとしては、下記一般式(7)で表されるパーフルオロポリエーテルが好ましい。
【0036】
【化10】
【0037】
(式中、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なって、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はオキシパーフルオロアルキル基を示す。x、y及びzは、好ましくは数平均分子量500〜100,000を与える0以上の整数を示す。ただし、x=y=z=0となることはない。)
R7、R8、R9、R10及びR11が、パーフルオロアルキル基又はオキシパーフルオロアルキル基の場合、炭素数1〜3が好ましく、トリフルオロメチル基が更に好ましい。x、y及びzは、同一又は異なって、0〜300が好ましい。
【0038】
これらの中では、例えば次の一般式(8)で表されるFOMBLIN HC/01、同HC/02、同HC/03、同HC/04、HC/25、及び同HC/R(アウジモント社製)が挙げられる。
【0039】
【化11】
【0040】
(式中、a及びbは、好ましくは数平均分子量500〜7,000を与える数を示し、a/bは0.2〜2である)
a及びbは、同一又は異なって、0〜300が好ましく、a,b共に0となることはない。
【0041】
また、下記一般式(9)で表されるデムナム(DEMNUM)S−20、同S−65、同S−100、及び同S−200(ダイキン化学工業(株)製)が挙げられる。
【0042】
【化12】
【0043】
(式中、cは4〜500の数を示す。)
さらに、下記一般式(10)で表されるクライトックス(KRYTOX)GPL−100、同GPL−101、同GPL−102、同GPL−103、同GPL−104、同GPL−105、同GPL−106、及び同GPL−107、クライトックス143AB、及び同143AC(デュポン社製)等が挙げられる。
【0044】
【化13】
【0045】
(式中、dは7〜60の数を示す。)
これらのフッ素オイルの中でも、数平均分子量が500以上、7,000以下のパーフルオロポリエーテルが、本発明に用いられるフッ素系ポリマーとの相溶性がよく、本発明のフッ素系ポリマーを含有するフッ素オイル組成物のレオロジー制御やゲル化が容易となるので好ましい。
【0046】
また低分子量の液体フッ素オイルとして容易に入手可能なものとしては、直鎖又は分岐鎖の、フッ素原子以外のハロゲンにより置換されていてもよい、好ましくは炭素数6〜12のフルオロアルカン類、具体的にはパーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、1−ブロモヘプタデカフルオロオクタン、パーフルオロオクタデカン、パーフルオロ−2,7−ジメチルオクタン等や、下記一般式(11)で表されるハイドロフルオロエーテル類が挙げられる。
【0047】
R12(CH2)m−O−R13 (11)
(式中、R12は直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基、R13は直鎖又は分岐鎖の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を示し、mは0〜5の数を示す。)
具体的には、R12は例えば、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロ−5−メチルヘキシル基、パーフルオロ−7−メチルオクチル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数4〜11のパーフルオロアルキル基が挙げられる。R13は例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0048】
[フッ素オイル組成物]
本発明のフッ素オイル組成物中、フッ素系ポリマーの含有量は特に制限はないが、0.001〜90質量%が好ましく、0.01〜60質量%が更に好ましく、0.1〜30質量%が特に好ましく、0.5〜15質量%が最も好ましい。
【0049】
本発明のフッ素オイル組成物中のフッ素オイルは、その組成物の目的に応じて適宜選択することができるため特に制限はないが、組成物の性能を著しく阻害しない使用量が好ましい。本発明のフッ素オイル組成物中、フッ素オイルの含有量は、0.0001〜95質量%が好ましく、0.001〜90質量%が更に好ましく、0.05〜80質量%が特に好ましく、0.1〜70質量%が最も好ましい。
【0050】
フッ素オイルに対するフッ素系ポリマーの使用量は、レオロジー性能、又はゲル性能を著しく阻害しない使用量が好ましく、フッ素オイル100質量部に対して0.001〜90質量部が好ましく、0.01〜70質量部が更に好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましく、0.5〜30質量部が最も好ましい。
【0051】
本発明のフッ素オイル組成物は、フッ素系ポリマーをフッ素オイルに添加し、加熱溶融させた後、冷却することで得ることが出来る、添加順序、溶融温度に特に制限はなく、一般的と考えられる範囲において適応可能である。
【0052】
本発明のフッ素オイル組成物は多くの用途に有用であるが、特に、後述する化粧品や香粧品;皮膚健常化剤、薬傷剤、治療剤等の医薬品;撥水剤、撥油剤、コーティング剤、潤滑剤、インク用添加剤等の工業品;柔軟剤、風合い剤、仕上げ剤等の衣料用ハウスホールド品、その他生物学的な用途にも有用である。
【0053】
[ゲル化剤]
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、フッ素オイルのゲル化剤として好適に用いることができる。「ゲル」とは、半固体〜固体状で、一定の弾性を示すものをいう。本発明の組成物は、ゲル状であることが好ましく、より具体的には、降伏値を有するものが好ましい。フッ素系ポリマーの側鎖が直鎖であるか分岐鎖であるかにより、ゲルの物性は異なり、直鎖の場合はより固体状に近くなる。ゲル化剤としては、側鎖が分岐鎖であることが好ましい。
【0054】
フッ素系ポリマーにより、ゲル化したフッ素オイル組成物の粘弾性は、粘度として、0.01〜1,000,000[Pa・s](30℃)(シェアレート:0.01[1/s])であることが好ましく、弾性として、0.01[Pa]以上、より好ましくは0.05[Pa]以上の降伏応力をもつことが好ましい。本発明の具体的な例を図3に示す。
【0055】
[レオロジー制御剤]
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、フッ素オイルのレオロジー制御剤として好適に用いることができる。「レオロジー制御」とは、負荷応力に応じた粘度挙動を示すものを意味する。具体的には高シェア負荷状態では低粘度であり、低シェア負荷状態では高粘度となるような挙動を示すものを意味する。
【0056】
レオロジー制御剤として、高シェア負荷状態、及び低シェア負荷状態での粘度は、組成物の目的に応じて適宜選択することができるため特に制限はないが、レオロジー制御されたフッ素オイルの性能を著しく阻害しない粘度が好ましい。具体的には、高シェア状態(シェアレート:500[1/s])の粘度が0.001〜10[Pa・s]、低シェア状態(シェアレート:0.01[1/s])の粘度が1〜10000[Pa・s]、更に高シェア状態(シェアレート:500[1/s])の粘度が0.001〜5[Pa・s]、低シェア状態(シェアレート:0.01[1/s])の粘度が5〜5000[Pa・s]となるような粘度挙動を示すものがより好ましい。
【0057】
レオロジー制御剤として、フッ素系ポリマーの側鎖が分岐鎖であることが好ましい。本発明のフッ素オイル組成物は、チキソトロピー性を示すことがより好ましい。
【0058】
本発明のレオロジー制御剤は、多くの用途に有用であるが、特に塗布時と塗布後の状態変化に対応する化粧品、香粧品、皮膚健常化剤、薬傷剤、治療剤等の医薬品、撥水剤、撥油剤、コーティング剤、潤滑剤、各種工業品、ハウスホールド品、その他生物化学的用途に有効である。
【0059】
[化粧料]
本発明のフッ素オイル組成物は、化粧料として用いることが好ましい。化粧料中のフッ素オイル及びフッ素系ポリマーの好ましい含有量は、前述のフッ素オイル組成物と同じである。
【0060】
本発明の化粧料の形態は特に限定されず、油中水型もしくは水中油型の乳化形態、スティック形態、シート形態、ジェル形態、ゲル形態、液状形態、スプレー形態、固形形態等が挙げられる。
【0061】
また化粧料の種類も特に限定されず、例えばパック、ファンデーション、口紅、ローション、コールドクリーム、ハンドクリーム、リンス、コンディショナー、制汗剤、デオドラント剤、UV化粧料、感触改善剤、保湿剤等の化粧料として用いることが好ましい。
【0062】
本発明の化粧料は、油性成分を含有することも好ましい。フッ素系ポリマーにより、油性成分をフッ素オイル中、分散安定化することができる。油性成分として、固体状又は液状のパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、オゾケライト、モンタンろう等の炭化水素類;オリーブ、地ろう、カルナウバろう、ラノリン、鯨ろう等の植物性油脂、動物性油脂又はろう;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルミリスチン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、、イソプロピルイソステアリン酸エステル、ブチルステアリン酸エステル、ネオペンチルグリコールジカプリン酸エステル等の脂肪酸又はそのエステル類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ヘキシルドデシルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられる。
【0063】
油性成分は、フッ素系ポリマーとフッ素オイルの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜80質量部、更に好ましくは0.1〜50質量部であることが好ましい。
【0064】
その他体質顔料、無機顔料、色素等の着色剤、紫外線防御剤、防腐剤、香料等を含有していてもよい。
【0065】
【実施例】
以下の例において、レオロジー制御(粘度変化)は、レオメトリックス社製 ARES粘弾性測定装置を用いて行った。
なお、以下の例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」である。
【0066】
合成例1
乾燥させたトルエン溶媒中に、窒素雰囲気下でトリイソブチルアルミニウム0.02mol、オルソリン酸0.005mol、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン0.002molを加えた。室温で20分攪拌した後、窒素雰囲気下で3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン1molを加え、脱気後に反応容器内を負圧にし、100℃で24時間重合した。重合溶液にエタノール性塩酸を加えて反応を停止した後、大量のアルコール中に再沈殿させた。得られたポリマーを濾取し、加熱下に減圧乾燥させ、表1に示す重合単位を有するフッ素系ポリマー1を収率85%で得た。
【0067】
合成例2〜4
合成例1と同様の方法で、表1に示す重合単位を有するフッ素系ポリマー2〜4を合成した。
【0068】
合成例5
乾燥させたトルエン溶媒中に、窒素雰囲気下でトリイソブチルアルミニウム0.02mol、オルソリン酸0.005mol、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン0.002molを加えた。室温で20分攪拌した後、窒素雰囲気下で3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−1,2−エポキシプロパン0.8mol及び1,2−エポキシブタン0.2molを一括で加え、脱気後に反応容器内を負圧にし、100℃で24時間重合した。重合溶液にエタノール性塩酸を加えて反応を停止した後、大量のアルコール中に再沈殿させた。得られたポリマーを濾取し、加熱下に減圧乾燥させ、表1に示す重合単位を有するフッ素系ポリマー5を収率92%で得た。
【0069】
合成例6〜15
合成例5と同様の方法で、共重合するモノマーを添加して、表1に示す重合単位を有するフッ素系ポリマー6〜15を合成した。
【0070】
比較合成例1
乾燥させたトルエン溶媒中に、窒素雰囲気下でサマリウムトリス(テトラメチルヘプタンジオネート)0.01molを加えて溶解させた後、窒素雰囲気下でメチルアルモキサン0.06molを加えて室温で30分攪拌した。窒素雰囲気下で3−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルオキシ)−1,2−エポキシプロパン1molを加え、脱気後に反応容器内を負圧にし、100℃で24時間重合した。重合溶液にエタノール性塩酸を加えて反応を停止した後、大量のアルコール中に再沈殿させた。得られたポリマーを濾取し、加熱下に減圧乾燥させ、表1に示す重合単位を有する比較ポリマー1を収率98%で得た。
【0071】
比較合成例2〜4
比較合成例1と同様の方法で、表1に示す重合単位を有する比較ポリマー2〜4を合成した。
【0072】
比較合成例5
窒素雰囲気下中においた耐圧容器内にt−ブトキシカリウム0.05mol、乾燥させたジメトキシエタン溶媒を加えて溶解させた後、ヘキサフルオロエポキシプロパン1molを導入した。耐圧容器を液体窒素で冷却した後、脱気して反応容器内を負圧にし、25℃で24時間重合した。重合溶液にエタノール性塩酸を加えて反応を停止した後、大量のn−ヘキサン中に再沈殿させた。得られたポリマーを濾取し、加熱下に減圧乾燥させ、表1に示す重合単位を有する比較ポリマー5を収率98%で得た。
【0073】
【表1】
【0074】
*1:この重合単位(3−1)は、サイラプレーンFM−0621(チッソ(株)製、平均分子量5000のエポキシマクロマー)から誘導される重合単位で、n=63
実施例1
下記に示すフッ素オイルA〜H100部に対して、本発明のフッ素系ポリマー1〜15及び比較ポリマー1〜5を5部混合し、フッ素オイル組成物を調製した。得られたフッ素オイル組成物のゲル形成能を下記基準で評価した。結果を表2に示す。
【0075】
<フッ素オイル>
フッ素オイルA:FOMBLIN HC/03
フッ素オイルB:FOMBLIN HC/04
フッ素オイルC:FOMBLIN HC/25
フッ素オイルD:デムナムS−20
フッ素オイルE:クライトックスGPL−102
フッ素オイルF:クライトックスGPL−104
フッ素オイルG:パーフルオロオクタン
フッ素オイルH:2,4−ジメチルブチル−2−パーフルオロヘキシルエチルエーテル
<ゲル形成能の評価基準>
◎:ゲル化、強いゲルを形成
○:ゲル化、やや弱いゲルを形成
△:増粘(粘度上昇 大)
▲:流動〜増粘
×:非相溶
【0076】
【表2】
【0077】
表2から明らかなように、本発明のフッ素系ポリマー1〜15は、フッ素オイルに相溶してゲル化が可能であった。一方、比較ポリマー1〜5は、フッ素オイルと相溶せず、ゲル化しなかった。
【0078】
なお、本発明品1〜15のゲル化物はサンプル瓶(ガラス製、50mL)中、室温(25℃)/150日間放置しても、フッ素オイルの染み出し(分離)がなかった。
【0079】
また、フッ素オイルB100部に対して、フッ素系ポリマー5〜15を0.5〜10部混合したところ、いずれの組成物もゲル化した。
【0080】
実施例2
フッ素系ポリマー4を、窒素雰囲気下、100℃にて密封容器を使用して、FOMBLIN HC/04、FOMBLIN HC/K[HC/03とHC/04の混合フッ素オイル(20/80質量比)、以下同じ]に溶解させ、サンプル1〜3を調製した。サンプル1はFOMBLIN HC/Kにフッ素系ポリマー4を2%の割合で溶解させたもの、サンプル2はFOMBLIN HC/Kにフッ素系ポリマー4を1%の割合で溶解させたもの、サンプル3はFOMBLINHC/04にフッ素系ポリマー4を1%の割合で溶解させたものである。
【0081】
粘弾性測定装置を使用し、サンプル1〜3を高シェア負荷状態(シェアレート:500[1/s])から低シェア負荷状態(シェアレート:0.01[1/s])に一気に変化させ、その時の粘度回復挙動を25℃で測定した。結果を図1に示す。
【0082】
図1から、本発明のフッ素系ポリマーは、フッ素オイルのレオロジー制御が可能なことが判明した。
【0083】
実施例3
フッ素系ポリマー4を、窒素雰囲気下、100℃にて密封容器を使用してFOMBLIN HC/Kに溶解させ、ポリマー濃度0.5〜5%の本発明のフッ素オイル組成物を調製した。粘弾性測定装置を使用し、これらの組成物を低シェア負荷状態(シェアレート:0.01[1/s])から高シェア負荷状態(シェアレート:500[1/s])に順次変化させ、その時の粘度回復挙動を30℃で各組成物について測定した。また、比較のために、FOMBLIN HC/Kや同HC/Rそれぞれ単独のものについても同様に粘度回復挙動を測定した。これらの結果を図2に示す。また、同様のフッ素オイル組成物について、シェアレートと応力との関係を図3に示す。
【0084】
図2及び図3から、本発明のフッ素オイル組成物は、FOMBLIN HC/Kや同HC/Rと異なり、チキソトロピー性を有し、レオロジー制御が可能なことが判明した。
【0085】
実施例4
フッ素系ポリマー4を、窒素雰囲気下、100℃にて密封容器を使用してFOMBLIN HC/Kに溶解させ、ポリマー濃度1%の本発明のフッ素オイル組成物を調製した。粘弾性測定装置を使用し、この組成物を低シェア負荷状態(シェアレート:0.01[1/s])から高シェア負荷状態(シェアレート:500[1/s])に順次変化させ、その時の粘度回復挙動を10〜60℃で測定した。結果を図4に示す。
【0086】
図4から、本発明のフッ素オイル組成物は、10〜60℃の温度範囲内において、安定で、ほぼ同様のチキソトロピー性を有し、レオロジー制御可能なことが判明した。
【0087】
実施例5
フッ素系ポリマー4を、窒素雰囲気下、100℃にて密封容器を使用してFOMBLIN HC/04に溶解させ、ポリマー2%濃度の本発明のフッ素オイル組成物を調製した。この組成物を、間隙12.5μmのアプリケーターを使用して人工皮革上に塗布した。比較として、FOMBLIN HC/03とHC/04も、同様に塗布した。6時間後、人工皮革上の状態を観察したところ、本発明の組成物のみ、FOMBLIN HC/04を、ゲル化物としてバイオスキン上で目視確認でき、皮膚上での移行性、浸透性が低く、ゲル状組成物によりFOMBLINを塗布位置に長時間持続可能であることがわかった。
【0088】
実施例6
重合単位(1)において、k=1、R1=パーフルオロ−3−メチルブチル基である重合単位を有するフッ素系ポリマー(以下フッ素系ポリマー16という)を、窒素雰囲気下、100℃にて密封容器を使用してFOMBLIN HC/04、又はHC/25に溶解させ、ポリマー濃度1%のサンプルを調製した。これらサンプル(F相)を、表3に示す各種油性成分(O相)と、ディスパー(〜5,000r/min、室温)を用いて、表3に示す割合で攪拌混合し、本発明の乳化組成物1〜7を調製した。得られた乳化組成物について、下記の基準で乳化能を評価した。結果を表3に示す。また、乳化組成物3の光学顕微鏡写真を図5に示す。
【0089】
<乳化能の評価基準>
◎:乳化可能、乳化物の安定性も良好
○:乳化可能、乳化物は短時間ならば安定
△:一時的になら乳化するが、すぐに相分離
×:相分離
【0090】
【表3】
【0091】
表3から明らかなように、本発明の乳化組成物は、界面活性剤を使用しなくとも、フッ素オイル中、油性成分が安定した乳化物(クリーム化粧料)であった。
【0092】
実施例7
実施例6で調製した乳化組成物2(本発明品)と、比較品として、フッ素系ポリマー16を用いないことを除いては、同様の乳化組成物を作成し、それぞれの乳化組成物を5名のパネラーの上腕部に塗布した(3×3cm、1g)。3時間後、乳化組成物をふき取り、当該部の評価を行ったところ、本発明品はしっとりしており、スベスベしていた。一方、比較品はしっとり感やスベスベ感が弱かった。本発明の乳化組成物は、保持性、持続性に優れるため、実効感が強く認知されることがわかった。
【0093】
以下に本発明のフッ素オイル組成物の処方例を示す。これらの処方例では、フッ素系ポリマー4を、FOMBLIN HC/04に溶解させたゲルを用い、ポリマー濃度とともに、例えば「5%フッ素オイルゲル」と表記する。
【0094】
処方例1(エモリエント又はモイスチャライジングクリーム)
軽質流動パラフィン 10.0%
ネオペンチルグリコールジカプリン酸エステル 25.0
2%フッ素オイルゲル 60.0
防腐剤・酸化防止剤 適量
香料 適量
以上計 100.0%。
【0095】
処方例2(皮膚保護剤、改善剤)
3%フッ素オイルゲル 98.5%
防腐剤・酸化防止剤 適量
香料 適量
以上計 100.0%。
【0096】
処方例3(乳化型パック)
流動パラフィン 15.0%
高融点パラフィン 5.0
マイクロクリスタリンワックス 15.0
3%フッ素オイルゲル 60.0
ジメチルステアリルアンモニウムベントナイト 1.4
防腐剤・酸化防止剤 適量
香料 適量
以上計 100.0%。
【0097】
処方例4(ファンデーション)
酸化チタン 15.0%
タルク 15.0
カオリン 6.0
無機顔料 4.0
軽質流動パラフィン 10.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 8.0
マイクロクリスタリンワックス 10.0
酢酸ラノリン 4.0
セレシン 7.0
ステアリン酸モノエタノールアミド 2.0
2%フッ素オイルゲル 15.0
防腐剤・酸化防止剤・殺菌剤 適量
香料 適量
以上計 100.0.%
【0098】
【発明の効果】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、フッ素オイルのゲル化剤あるいはチキソトロピー制御剤として有用であり、本発明のフッ素オイル組成物は、化粧料等に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で行った粘度回復挙動の測定結果を示す図である。
【図2】実施例3で行った粘度回復挙動の測定結果を示す図である。
【図3】実施例3の各組成物のシェアレートと応力との関係を示す図である。
【図4】実施例4で行った粘度回復挙動の測定結果を示す図である。
【図5】実施例6で得た乳化組成物3の光学顕微鏡写真である。
Claims (7)
- 請求項1〜4いずれかの項記載のフッ素オイル組成物を含有する化粧料。
- 請求項1〜4いずれかの項記載のフッ素系ポリマーからなる、フッ素オイルのゲル化剤。
- 請求項1〜4いずれかの項記載のフッ素系ポリマーからなる、フッ素オイルのレオロジー制御剤。
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