JP2004357847A - 導入針、導入針組立体および導入針の製造方法 - Google Patents

導入針、導入針組立体および導入針の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不用となった際に、カテーテル等からの分割抜去が容易な、導入針および導入針組立体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】長尺の医療器具を体内に導入するための導入針1であって、異なる2種以上の樹脂成分を含む材料で構成された管状体2を備え、管状体の長手方向に沿って、引き裂き強度が他の部分より小さい脆弱部を有し、かつ、管状体の内周面上および/または外周面上に、管状体の長手方向に沿って、溝部22が設けられていることを特徴とする。管状体は、押出成形により製造されたものであり、脆弱部は、押出成形時のウエルドラインで構成されたものである。脆弱部は、溝部と重なっているか、または近傍にある。管状体の横断面において、脆弱部が複数設けられている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺の医療器具を体内に導入するための導入針、導入針組立体、導入針の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、中心静脈療法(IVH)を実施する際などは、分割カニューラ(導入針)を血管に穿刺し、これを介してIVHカテーテルや、ガイドワイヤを血管内に導入する。
【0003】
このような分割カニューラは、分割が可能な中空の外針と、外針の基端に固着された分割が可能な外針ハブとで構成されている。
【0004】
この分割カニューラを患者の血管に穿刺する際には、内針を外針内に挿入し、内針の針先を外針の先端から突出させ、更には内針ハブ後端にシリンジを結合した組み立て状態で穿刺操作を行う。このような内針は、先端に鋭利な針先を有する内針と、内針の基端に固着された内針ハブとで構成されている。
【0005】
内針の針先が体表面よりも体内側に入ったところでシリンジの押し子を引き、シリンジ内腔を陰圧状態とする。内針の針先が血管内に到達すると、針先の開口より流入した血液は、内針の内腔を通り、内針ハブ内腔、更にはその後端側に結合されているシリンジ内に血液が流入する(フラッシュバック)。これにより内針が血管を確保したことが確認(視認)できる。
【0006】
このフラッシュバックを確認したら、外針を血管内に挿入し、内針を外針から抜き取る。そして、外針ハブ内にIVHカテーテルを挿入し、確実に目的部位に到達させた後、外針を血管から抜去し、分割してIVHカテーテルから取り除き、IVHカテーテルを介して高カロリー輸液剤を投与する。
【0007】
このようにして用いられる分割カニューラは、取り扱い性や易分割性等の観点から、構成材料および形状について様々な検討がなされ、各種の分割カニューラが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
特許文献1に記載の分割カニューラは、図13に示すように、その長手方向に、基材のプラスチック100とは異質のプラスチックで1対の線条帯200を有し、不用となった分割カニューラをこの線条帯200の個所で引き裂くことにより2つに分割するものである。
【0009】
しかし、このような分割カニューラは、保管時において、外力が加わった際に、その線条帯に比較的割れやかけ等が生じ易いという問題があった。また、使用時においても、分割して抜き取る時以外での外力により、不本意に割れやかけ等が生じる不都合があった。また、このような分割カニューラは、その製造工程が煩雑になるという問題点も有していた。
【0010】
【特許文献1】
特公平2−7670号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、例えば、不用となった際に、カテーテル等からの分割抜去が容易な導入針および導入針組立体を提供すること、このような導入針を製造することができる製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(17)の本発明により達成される。
【0013】
(1) 長尺の医療器具を体内に導入するための導入針であって、
異なる2種以上の樹脂成分を含む材料で構成された管状体を備え、
前記管状体の長手方向に沿って、引き裂き強度が他の部分より小さい脆弱部を有し、かつ、
前記管状体の内周面上および/または外周面上に、前記管状体の長手方向に沿って、溝部が設けられていることを特徴とする導入針。
【0014】
(2) 前記管状体は、押出成形により製造されたものであり、
前記脆弱部は、押出成形時のウエルドラインで構成されたものである上記(1)に記載の導入針。
【0015】
(3) 前記脆弱部は、前記溝部と重なっているか、またはその近傍にある上記(1)または(2)に記載の導入針。
【0016】
(4) 前記管状体の横断面において、前記脆弱部が複数設けられており、
一つの脆弱部と、他の脆弱部とは、前記管状体の中心軸を中心にほぼ対向するように設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の導入針。
【0017】
(5) 前記管状体の横断面において、前記溝部が複数設けられており、
一つの溝部と、他の溝部とは、前記管状体の中心軸を中心にほぼ対向するように設けられている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の導入針。
【0018】
(6) 前記溝部のある部分の管壁の最小厚さdが、0.04〜0.15mmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の導入針。
【0019】
(7) 前記溝部の幅Wが、0.05〜0.5mmである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の導入針。
【0020】
(8) 前記管状体の横断面において、前記脆弱部と前記溝部とのずれの中心角θが、15°以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の導入針。
【0021】
(9) 前記材料中の異なる2種以上の前記樹脂成分は、それぞれ互いに相溶性の低いものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の導入針。
【0022】
(10) 前記材料は、主として、ポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の導入針。
【0023】
(11) 前記ポリプロピレンと前記ポリエチレンとの配合比が、80:20〜20:80である上記(10)に記載の導入針。
【0024】
(12) 導入針は、さらに前記管状体の基端側に分割可能なハブを備える上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の導入針。
【0025】
(13) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の導入針と、前記導入針に挿入される内針とを備えることを特徴とする導入針組立体。
【0026】
(14) 主として、押出成形法を用いて導入針を製造する導入針の製造方法であって、
異なる2種以上の樹脂成分を含む材料を、少なくとも2つの流路で搬送し、
その後、前記流路を合流させつつ、中空の管体を形成し、
前記管体の内周面上および/または外周面上に、搬送方向に対して略平行の方向に溝部を形成することを特徴とする導入針の製造方法。
【0027】
(15) 前記溝部は、前記管体の、前記材料が合流する際の界面に相当する部分またはその近傍に形成される上記(14)に記載の導入針の製造方法。
【0028】
(16) 導入針を製造するための製造装置であって、
異なる2種以上の樹脂成分を含む材料を独立に搬送する少なくとも2つの流路を有し、
少なくとも2つの前記流路が合流する合流部と、
前記合流部で合流した前記材料を、中空の管体として成形する成形部と、
前記管体の内周面上および/または外周面上に、搬送方向に対して略平行の方向に溝部を形成する溝部形成部とを有することを特徴とする導入針の製造装置。
【0029】
(17) 前記溝部形成部は、前記管状体の、前記合流において合流する前記材料の界面に相当する部分またはその近傍に、前記溝部を形成するように設けられている上記(16)に記載の導入針の製造装置。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の導入針および導入針組立体を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明の導入針について説明する。
図1は、本発明の導入針の側面図、図2は、図1に示す導入針の外針の横断面図、図3は、図1に示す導入針を備えた導入針組立体の側面図である。なお、以下の説明では、図1および図3中の右側を「基端」、左側(針先側)を「先端」と言う。
【0032】
図1に示す導入針1は、外針(管状体)2と、外針2の基端側に外針ハブ3とを有しており、例えば、ダイレクトパンクチャー方式で、IVHカテーテルを上大静脈(例えば、鎖骨下静脈等)に導入する際に使用されるシースとして用いられる。
【0033】
外針2は、中空部21を有する管形状を有しており、また、図2に示すように、その横断面が略円形状をなすものである。
【0034】
また、外針2は、溝部22と、脆弱部(ウエルドライン)23とを有している。
【0035】
このように導入針1は、外針2が、溝部22と脆弱部23との両方を合わせ持つものである。溝部22と脆弱部23との両方を合わせ持つことによる後述するような相乗効果で、本発明の導入針は、例えば、IVHカテーテルから、より容易に分割抜去することができるものとなる。
【0036】
溝部22は、外針2の外周面上に、外針2の長手方向に沿って形成されている。図示の構成では、一対の溝部22がほぼ対向するように形成されている。すなわち、一対の溝部22が、外針2の中心軸Oを中心にほぼ対向するように形成されている。これにより、例えば、IVHカテーテル等から、より容易に導入針1を分割抜去することができる。なお、このような溝部22は、例えば、後に詳述するような方法で形成することができる。
【0037】
溝部22の外針2の周面(外周面)における幅(最大幅)、すなわち、図2中、Wで表される溝部22の幅は、0.05〜0.5mmであるのが好ましく、0.1〜0.3mmであるのがより好ましい。これにより、外針2を引き裂く(分割する)際の、引き裂き強度を適度なものとすることができる。これに対し、溝部22の幅が前記下限値未満であると、前述の効果が十分に得られない場合がある。一方、溝部22の幅が前記上限値を超えると、外針2の不本意な割れ等を十分に防止することができない可能性がある。
【0038】
また、溝部22がある部分の管壁の最小厚さ(図2中dで表される厚さ)は、0.04〜0.15mmであるのが好ましく、0.05〜0.12mmであるのがより好ましい。これにより、より小さい力で、確実に外針2を分割することができる。また、これにより、分割した際に、外針2の分割面をよりきれいなものとすることができる。これに対し、厚さdが前記下限値未満であると、外針2の形状を十分に保持するのが困難となる場合がある。一方、厚さdが前記上限値を超えると、外針2が所望の位置で分割されない可能性がある。
【0039】
なお、図示の構成では、溝部22の横断面が、略V字形状をなすものであるが、これに限定されず、例えば、略U字形状をなすものであってもよいし、他の形状をなすものであってもよい。
【0040】
脆弱部23は、引き裂き強度が他の部分より小さい部位で、例えば、後に詳述するような方法で外針2を製造する際に形成されるウエルドラインで構成されたものである。
このような脆弱部23は、外針2の長手方向に沿って形成されている。
【0041】
本実施形態では、図2に示すように、一対の脆弱部23が、外針2の中心軸Oを中心にほぼ対向するように形成されている。これにより、例えば、IVHカテーテル等から、より容易に、かつ、より確実に導入針1を分割抜去することができる。
【0042】
また、脆弱部23は、前記溝部22と重なっているか、図示の構成のように、その近傍にあるのが好ましい。これにより、より小さい力で、確実に外針2を分割することができ、かつ、所望の位置で分割することができる。
【0043】
また、外針2の横断面における、脆弱部23と溝部22とのずれの中心角(図2中、θで表される角度)は、15°以下であるのが好ましく、12°以下であるのがより好ましい。これにより、より小さい力で、確実に外針2を分割することができ、かつ、所望の位置で分割することができる。また、これにより、分割した際に、外針2の分割面をよりきれいなものとすることができる。これに対し、角度θが前記上限値を超えると、前述したような効果が十分に得られない場合がある。
【0044】
上述したように、本発明の導入針は、溝部と脆弱部との両方を合わせ持つことを特徴とするものである。このように溝部と脆弱部との両方を有することによって、容易、かつ、確実に分割できるものとすることができる。また、保管時や分割抜去する以外の使用時等においては、形状を十分保持することができ、不本意に割れてしまうといった不都合を効果的に防止することができる。特に本実施形態では、溝部と脆弱部とが近くに存在するため、前述の効果がより顕著なものとなる。
【0045】
このような効果は、溝部と脆弱部のいずれか一方のみを有する場合には得られない。例えば、溝部だけを有する場合には、容易に分割するのが困難になる。溝部だけで管状体(外針)が容易に分割できるようにするために、溝部における管壁の最小厚さを小さくしなければならないが、そのようにすると、形状を十分に維持することができなくなり、また、保管時や分割抜去する以外の使用時等において、不本意に割れてしまうといった不都合が生じ易くなる。また同様に、脆弱部だけを有する場合には、容易に分割するのが困難になる。特に、脆弱部だけの場合、製造条件を制御することによって、割れ易さ(易分割性)を制御するのは非常に難しい。また、材料などを選択することによって、割れ易くすることも考えられるが、導入針(外針)の形状を十分に維持するのが困難となり、また、不本意に割れてしまうといった不都合が生じ易くなる。
【0046】
また、外針2は、その先端側に、先端部24を有している。
先端部24は、その外径が先端方向に向かって漸減するテーパ状をなしており、外針2の先端付近において、さらにテーパ角度(傾斜角度)が、基端側より大きくなっている。このような構成により、後述する内針4と外針2の先端との境界部に形成される段差をより小さくすることができ、外針2の刺通抵抗をより低減させることができる。
【0047】
なお、外針2の先端部24は、例えば、外針2の内径が後述する内針4の外径より大きく設定されている場合等には、その外径および内径の双方が先端方向に向かって漸減するような構成であってもよい。
【0048】
また、溝部22が形成されている部分以外の外針2の管壁の厚さは、0.15〜0.3mmであるのが好ましく、0.18〜0.27mmであるのがより好ましい。これにより、外針2の形状を好適に保持することができる。
【0049】
また、外針2の引き裂き強度は、その外径によって異なるが、例えば、14Gサイズの外針2の場合には、150〜500gfであるのが好ましく、200〜400gfであるのがより好ましい。引き裂き強度が前記下限値未満であると、分割して抜き取る時以外での外力により、不本意に割れ等が生じる可能性がある。一方、引き裂き強度が前記上限値を超えると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。なお、外針2を基端側の端部より、分割速度500mm/minで、互いに180℃の異なる方向に引っ張って分割する際に、引っ張り方向にかかる最大荷重を、引き裂き強度とした。
【0050】
外針ハブ3は、中空部31を有しており、外針2の基端側に液密に固着(固定)され、外針2の内腔と外針ハブ3の内部とが連通している。
【0051】
また、外針ハブ3には、外針2の2本の溝部22とほぼ同軸上に、V字状の溝部32が各々設けられている。これにより、IVHカテーテルを挿入した後に、外針2と外針ハブ3を左右に引き裂いて、分割することにより、IVHカテーテルから取り除くことができる。
【0052】
上述したような外針2は、異なる2種以上の樹脂成分を含む材料で構成されている。
【0053】
樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体やPTFE、ETFE、PFA等のフッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうち2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
外針2を構成する材料は、上述した樹脂成分の中でも、相溶性の低い2種以上の樹脂成分を含むものであるのが好ましく、構成するモノマー成分の炭素数が互いに異なる2種以上のポリオレフィンを含むものであるのがより好ましく、ポリプロピレンとポリエチレンとを含むものであるのがさらに好ましい。これにより、外針2の不本意な割れ等を十分に防止しつつ、より容易に外針2を分割することができる。
【0055】
材料中におけるポリプロピレンとポリエチレンとの配合比は、80:20〜20:80であるのが好ましく、70:30〜30:70であるのがより好ましく、60:40〜40:60であるのがさらに好ましい。これにより、導入針1全体としての強度を維持しつつ、より容易に導入針1を分割することができる。
【0056】
なお、前述したような材料中に、他の成分として、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸ビスマス、タングステン酸のようなX線造影剤を配合し、造影機能を持たせることもできる。
【0057】
外針ハブ3の構成材料は、特に限定されないが、外針2の構成材料と同じものであるのが好ましい。これにより、外針ハブ3と外針2とをより強固に固着することができる。
【0058】
次に、前述したような導入針1を備えた導入針組立体について説明する。
図3に示す導入針組立体10は、前述した導入針1と、導入針1の内側に挿入された内針4と、内針4の基端側に内針ハブ5と、内針ハブ5の基端側の開口にシリンジ6とを有している。
【0059】
内針4は、中空針であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成されている。内針4の先端には、鋭利な針先41が形成されている。
【0060】
さらに、この針先41の先端面411には、その少なくとも一部に刃面412が形成されている。これにより、内針4の血管等への刺通抵抗をより低減させることができる。
【0061】
この内針4は、導入針1の内腔に挿入され、さらに、内針ハブ5を外針ハブ3に嵌合させた状態(図示せず)で使用される。以下、この状態を「組み立て状態」と言う。
【0062】
また、内針4の外径は、外針2の内径とほぼ等しいか、若干小さく設定されている。
【0063】
内針4の基端部は、内針ハブ5の先端部と固着(固定)され、内針4の内腔は、内針ハブ5の内部と連通している。内針ハブ5は、ほぼ円筒状の中空部材で構成されている。
【0064】
内針4の内針ハブ5に対する固定方法は、例えば、嵌合、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法、あるいはこれらを併用した方法が挙げられる。
【0065】
この内針ハブ5は、好ましくは透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内部の視認性が確保されている。これにより、内針4の針先41が血管を確保した際、内針4を介して流入する血液のフラッシュバックを目視で確認することができる。
【0066】
なお、外針ハブ3の内腔には、所定長の溝が形成されていて、また、内針ハブ5の先端付近には、突部が形成されており、導入針組立体10の組み立て状態では、突部が溝部内に挿入され、係合するような構成であってもよい。これにより、外針ハブ3(外針2)が内針ハブ5(内針4)に対して相対的に回転することが防止される。
【0067】
次に、導入針1の使用方法の一例について、詳細に説明する。
[1] 導入針1を組み立て状態とし、内針ハブ5等を手で把持しつつ、導入針1の先端部を、患者に押し当てるようにして、血管(静脈)に向かって、表皮を穿刺する。
【0068】
[2] 内針4の針先41が表皮よりも体内側に入ったところでシリンジ6の押し子を引き、シリンジ6内腔を陰圧状態とする。内針4の針先41が血管内に到達すると、針先41の開口より流入した血液は、内針4の内腔を通り、内針ハブ5の内腔、更にはその後端側に結合されているシリンジ6内に血液が流入する(フラッシュバック)。これにより内針4の針先41が血管を確保したことを知ることができる。
【0069】
[3] さらに内針4および外針2を微小距離先端方向へ進めると、外針2の先端部24が血管内に挿入される。これにより、外針2が血管を確保する。
【0070】
[4] 次に、血管に留置されている外針2を手で押さえつつ、他方の手で内針ハブ5を把持し、基端方向へ引っ張る。これにより、内針4が導入針1から抜き取られる。
【0071】
[5] 内針4が抜き取られた外針ハブ3から、外針2を通して、IVHカテーテル(図示せず)が血管内に挿入される。IVHカテーテルを所定の位置まで挿入した後に、定法に従い、高カロリー輸液セット(図示せず)を用いて、輸液剤の投与を開始する。
【0072】
この際に、導入針1は、不要となるため、血管内から抜き出して、外針ハブ3のほぼ中央から軸方向に外針2の先端まで分割して、IVHカテーテルから導入針1を取り除いて、廃棄処分される。
【0073】
なお、本発明の導入針は、例えば、以下に説明するような製造装置を用いて、押出成形により製造される。
【0074】
以下、本発明の導入針の製造装置および製造方法を添付図面の好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0075】
図4は、導入針(外針)の製造装置の主要部の縦断面側面図、図5は、図4のX−X’における縦断面図、図6は、図4のA−A’における横断面図、図7は、図4のB−B’における横断面図、図8は、押出口の正面図である。なお、以下の説明では、図4および5中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0076】
図4に示す導入針の製造装置11(以下、単に装置11ともいう。)は、ハウジング12と、ハウジング12内に設置されたインダイ13と、ハウジング12の先端側に設置されたアウトダイ14と、インダイ13をハウジング12内に取り付けるための一対のスパイダー15とを有している。
【0077】
また、装置11は、ハウジング12とインダイ13とにより形成される空間(搬送路)16を有しており、この搬送路16は、装置11の基端側よりハウジング12内に投入された前述したような2種以上の樹脂成分を含む材料が搬送されるものである。
【0078】
搬送路16は、前述した一対のスパイダー15により、図5、6に示すように、2つの流路161と162とに分割される。このように、スパイダー15は、インダイ13をハウジング12内に取り付ける役割の他に、材料の流路を複数に分割する隔壁としての役割も有している。なお、一対のスパイダー15は、インダイ13の中心軸を中心にほぼ対向するように設置されている。
【0079】
また、スパイダー15の先端部は、図示の構成のように、前述した2つの流路161と162とが合流する合流部17を形成している。すなわち、流路161と162とで独立して搬送された材料は、合流部17において合流する。このような構成とすることにより、最終的に得られる導入針1(外針2)は、それぞれ搬送された材料が合流する際の界面に相当する部分において、ウエルドライン(脆弱部23)が形成されたものとなる。
【0080】
また、装置11は、図示の構成のように、インダイ13とアウトダイ14とで形成される空間に、合流部17で合流した材料を中空の管体8として成形する成形部18と、管体8を装置11の外部に押し出す押出口19とを有している。
【0081】
ここで、管状体8は、成形部18に搬送された溶融状態の材料を指し、スパイダー15によって成形されたウエルドラインを有する。
【0082】
また、装置11(アウトダイ14)は、図4および図8に示すように、管体8の外周面上に、搬送方向(押し出す方向)に対して略平行の方向に溝部を形成するための突起部(溝部形成部)20を有している。
【0083】
このような突起部20は、図4に示すように、押出口19の開口部分より基端側に向かって、所定の長さで設けられている。これにより、管体8に形成された溝部の形状をより確実に制御することができる。
【0084】
また、突起部20は、図8に示すように、一対設けられており、押出口19の中心点を中心にほぼ対向するように設けられている。
【0085】
また、図示の構成では、突起部20は、先端側より平面視した際、前述のスパイダー15との位置にほぼ対応した位置に設けられている。すなわち、突起部20は、管体8の、前述の合流部17で合流する材料の界面に相当する部分(ウエルドライン)にまたはその近傍に、溝部を形成するように設けられている。このような構成とすることにより、得られる導入針1は、特に優れた易分割性を発揮する。
【0086】
また、装置11は、押出口19において、押し出される管体8の内部に、気体を流す気体吹き出し口30を有している。本実施形態では、図示しないガス供給源から装置11内に導入された気体は、気体流路40を通り、インダイ13の先端側の端部に設けられている気体吹き出し口30より、管体8の内部に吹き出される。このような構成とすることにより、押出口19より押し出される管体8の形状をより確実に維持することができ、その結果、このような管体8を用いて製造される導入針1の形状をより確実に制御することができる。また、このような構成とした場合、気体の温度や流量を制御することにより、管体8を適度な速度で冷却することもできる。
【0087】
押出口19の突起部20を除いた外径(図8中Dで表される外径)は、特に限定されないが、前述したような外針2の外径に対して1〜3倍程度であるのが好ましい。
【0088】
また、押出口19の内径(図8中Dで表される内径)は、特に限定されないが、前述したような外針2の内径に対して1〜3倍程度であるのが好ましい。
【0089】
気体吹き出し口30の径は、1〜2mmであるのが好ましく、1.2〜1.8mmであるのがより好ましい。これにより、押出口19より押し出される管体8の形状をより効果的に維持することができ、その結果、このような管体8を用いて製造される導入針1の形状をより確実に制御することができる。
【0090】
上述したような導入針の製造装置11に供される材料は、前述した各樹脂成分等が予め十分均一に分散されたものであるのが好ましい。
【0091】
このような材料を用いて前述のような押出成形により製造された場合、導入針1(外針2)は、材料に含まれる樹脂成分が、押出方向(外針2の長手方向)に、配向したようなものとなる。これにより、より顕著な易分割性を発揮するものとなる。
【0092】
また、材料は、装置11に供給する前に、予め加温され、軟化・溶融しているものである。供給される際の材料の温度は、材料を構成する成分にもよるが、150〜250℃であるのが好ましく、180〜220℃であるのがより好ましい。材料の温度が前記下限値未満であると、合流部17で、独立して搬送された材料同士が融着せず、管体8を成形するのが困難となる場合がある。また、装置11が目詰まりを起こす可能性がある。一方、材料の温度が前記上限値を超えると、ウエルドライン(脆弱部23)が良好に形成されない可能性がある。
【0093】
上述したような装置11を用いた導入針の製造方法をまとめると、以下のような手順となる。
【0094】
1.適度に軟化・溶融した材料は、上述したような装置11に投入され、スパイダー15により、流路161と162とに分割される。
2.流路161と162とを搬送された材料は、合流部17で合流する。
3.合流した材料は、成形部において管体8として成形される。
4.成形された管体8は、押出口19付近まで搬送され、押出口19付近に設けられた突起部(溝部形成部)により溝部が形成される。
5.溝部が形成された管体8を、押出口19より押し出しつつ、気体吹き出し口30よりその内部に気体を流すことにより、管形状を維持した状態で固化させる。
6.このように固化した管体8を所定の長さに切断し、先端部等を先型加熱加工等の方法により所望の形状に成形し、外針2が得られる。
7.別途、射出成形等により成形した外針ハブ3を、外針2の基端側に、例えば、カシメ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法により固着し、導入針1が得られる。
【0095】
以上、本発明の導入針、導入針本体、導入針の製造方法および製造装置について、図示の構成に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、導入針、導入針本体、導入針の製造方法および製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0096】
前述した実施形態では、外針2の長手方向に沿って、溝部22が連続して形成されたものについて説明したが、これに限定されず、例えば、溝部22が断続的に形成されたものであってもよい。
【0097】
また、前述した実施形態では、溝部22が、外針2の外周面上に形成された構成について説明したが、これに限定されず、このような溝部22は、外針2の内周面上に形成されたものであってもよく(図9参照)、また、外針2の内周面上および外周面上の両方に形成されたものであってもよい(図10参照)。
【0098】
また、前述した実施形態では、外針2が、一対の溝部22が形成されたものについて説明したが、これに限定されず、1つの溝部22が形成されたものであってもよいし、3つの溝部22が形成されたものであってもよし、4つ以上の溝部22が形成されたものであってもよい(図11参照)。
【0099】
また、前述した実施形態では、外針2が、一対の脆弱部23が形成されたものについて説明したが、これに限定されず、1つの脆弱部23が形成されたものであってもよいし、3つ以上の脆弱部23が形成されたものであってもよい。
【0100】
なお、本発明の導入針は、例えば、IVHカテーテル等のカテーテルや、ガイドワイヤ等の様々な医療用具を、その内部に挿入させて用いることができる。
【0101】
また、本発明の導入針および導入針組立体は、10〜26Gの各種サイズのものに適用することができることは言うまでもない。
【0102】
また、本発明の導入針および導入針組立体は、血管内に挿入して使用されるものに限定されず、例えば、腹腔内、胸腔内、リンパ管内、脊柱管内等に挿入して使用されるものに適用することもできる。
【0103】
また、前述した実施形態では、装置11が材料の流路が2つある構成について説明したが、これに限定されず、例えば、3つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0104】
また、前述した実施形態では、装置11が突起部20を2つ有する構成について説明したが、これに限定されず、例えば、3つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0105】
また、前述した実施形態では、突起部20がアウトダイ14に設けられた構成について説明したが、突起部20は、インダイ13に設けられた構成(図12参照)であってもよいし、インダイ13とアウトダイ14の両方に設けられた構成であってもよい。
【0106】
また、前述した実施形態では、管体8の中空に気体を流す構成について説明したが、これに限定されず、気体は流さなくてもよい。
【0107】
【実施例】
以下、本発明の導入針の具体的実施例について説明する。
【0108】
(実施例1)
材料として、ポリエチレンとポリプロピレンを用い、ポリエチレンとポリプロピレンとの配合比が、50:50となるように二軸混練機にて混練し、ペレットを作製した。
【0109】
次いで、このように作製したペレットを、図4に示すような製造装置11を用いて押出成形して管状体を作製し、前記管状体の基端側に、前記管状体と同じ材料で射出成形により成形したハブを固着させ、導入針を製造した。
【0110】
(実施例2)
実施例1で用いた製造装置11に、アウトダイ14の突起部20の長さ(押出口19の中心方向への長さ)が異なるアウトダイを用いた以外は、実施例1と同様に導入針を製造した。
【0111】
(実施例3〜5)
ポリエチレンとポリプロピレンとの配合比を、表1に示したようにした以外は、実施例1と同様にして導入針を製造した。
【0112】
(比較例1)
押出成形(2色成形)により、図13に示すような導入針を製造した。なお、線条帯200の材質がポリプロピレン:70%と硫酸バリウム:30%との混合物で、それ以外の部分の材質がポリプロピレン:50%と硫酸バリウム:50%との混合物となるように製造した。製造された導入針の線条帯の幅は、0.3mmであった。
【0113】
(比較例2)
線条帯200の材質がポリプロピレン:50%と硫酸バリウム:50%との混合物で、それ以外の部分の材質がポリプロピレンとなるようにした以外は、前記比較例1と同様に導入針を製造した。なお、線条帯の幅は、0.2mmであった。
【0114】
(比較例3)
材料として、ポリエチレンのみを用いて製造した以外は、実施例1と同様にして導入針を製造した。
【0115】
(比較例4)
図4に示す製造装置11のアウトダイ14を、突起部20が無いアウトダイに変更した以外は、実施例1と同様にして導入針を製造した。これにより、溝部のない導入針が得られた。
【0116】
各実施例および各比較例で製造した導入針の、材料組成、外径、内径、溝部を除く管壁の厚さおよび溝部での管壁の最小厚さを表1に示す。
【0117】
[評価]
各実施例および各比較例で製造した導入針を、それぞれ、次のようにして評価した。
【0118】
導入針の基端側より、分割速度500mm/minで、互いに180℃の異なる方向に引っ張って分割する際に、引っ張り方向にかかる最大荷重を、引き裂き強度として求めた。
この結果を表1にあわせて示す。
【0119】
【表1】
Figure 2004357847
【0120】
表1に示すように、各実施例で製造した導入針は、いずれも、最大荷重が小さいもの、すなわち、引き裂き強度が低いものであった。
【0121】
これに対し、各比較例で製造した導入針は、いずれも、最大荷重が大きいもの、すなわち、引き裂き強度が高いものであった。
【0122】
特に、比較例2の導入針は、引き裂きの挙動が一定の強度にならず、その最大値と最小値の差が約100gfとなり、不安定なものであった。
【0123】
また、実施例で製造した導入針は、分割しようとする時以外では、十分な形状安定性を有していた。
【0124】
また、上記のように製造した導入針で導入針組立体を作製し、導入針組立体を用いてダミー人形内にIVHカテーテルを導入した後、導入針を分割して取り除いたところ、本発明の導入針では、容易に分割抜去することができた。
【0125】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の導入針は、より容易に、かつ、より確実に分割できるものとすることができ、また、保管時や分割抜去する以外の使用時等では、形状を十分保持することができ、不本意に割れてしまうといった不都合を効果的に防止することができる。
また、このような導入針は、簡便な方法で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導入針の側面図である。
【図2】図1に示す導入針の外針の横断面図である。
【図3】図1に示す導入針を備えた導入針組立体の側面図である。
【図4】本発明の導入針の製造装置の主要部の縦断面側面図である。
【図5】図4のX−X’における縦断面図である。
【図6】図4のA−A’における横断面図である。
【図7】図4のB−B’における横断面図である。
【図8】押出口の正面図である。
【図9】本発明の導入針の外針の横断面図である。
【図10】本発明の導入針の外針の横断面図である。
【図11】本発明の導入針の外針の横断面図である。
【図12】押出口の正面図である。
【図13】従来のカニューラの側面図である。
【符号の説明】
1 導入針
2 外針(管状体)
21 中空部
22 溝部
23 脆弱部
24 先端部
3 外針ハブ
31 中空部
32 溝部
4 内針
41 針先
411 先端面
412 刃面
5 内針ハブ
6 シリンジ
8 管体
10 導入針組立体
11 製造装置
12 ハウジング
13 インダイ
14 アウトダイ
15 スパイダー
16 空間(搬送路)
161、162 流路
17 合流部
18 成形部
19 押出口
20 突起部
30 気体吹き出し口
40 気体流路
100 基材のプラスチック
200 線条帯

Claims (10)

  1. 長尺の医療器具を体内に導入するための導入針であって、
    異なる2種以上の樹脂成分を含む材料で構成された管状体を備え、
    前記管状体の長手方向に沿って、引き裂き強度が他の部分より小さい脆弱部を有し、かつ、
    前記管状体の内周面上および/または外周面上に、前記管状体の長手方向に沿って、溝部が設けられていることを特徴とする導入針。
  2. 前記管状体は、押出成形により製造されたものであり、
    前記脆弱部は、押出成形時のウエルドラインで構成されたものである請求項1に記載の導入針。
  3. 前記脆弱部は、前記溝部と重なっているか、またはその近傍にある請求項1または2に記載の導入針。
  4. 前記管状体の横断面において、前記脆弱部が複数設けられており、
    一つの脆弱部と、他の脆弱部とは、前記管状体の中心軸を中心にほぼ対向するように設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の導入針。
  5. 前記管状体の横断面において、前記溝部が複数設けられており、
    一つの溝部と、他の溝部とは、前記管状体の中心軸を中心にほぼ対向するように設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の導入針。
  6. 前記材料中の異なる2種以上の前記樹脂成分は、それぞれ互いに相溶性の低いものである請求項1ないし5のいずれかに記載の導入針。
  7. 導入針は、さらに前記管状体の基端側に分割可能なハブを備える請求項1ないし6のいずれかに記載の導入針。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の導入針と、前記導入針に挿入される内針とを備えることを特徴とする導入針組立体。
  9. 主として、押出成形法を用いて導入針を製造する導入針の製造方法であって、
    異なる2種以上の樹脂成分を含む材料を、少なくとも2つの流路で搬送し、
    その後、前記流路を合流させつつ、中空の管体を形成し、
    前記管体の内周面上および/または外周面上に、搬送方向に対して略平行の方向に溝部を形成することを特徴とする導入針の製造方法。
  10. 前記溝部は、前記管体の、前記材料が合流する際の界面に相当する部分またはその近傍に形成される請求項9に記載の導入針の製造方法。
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