JP2004357378A - ステッピングモータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マグネット7と、第1及び第2のコイル3,5と、第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、第2のコイル5により励磁される第2の外側磁極部と、第1の内側磁極部と、第2の内側磁極部とを有し、第1の内側磁極部を、第1のコイルの内径部に挿入された状態で第1の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第1軸受け11a,11bと、マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第1ロータ軸8a,8bとにより構成し、第2の内側磁極部を、第2の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第2軸受け12a,12bと、マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第2ロータ軸9a,9bとにより構成する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒形状のステッピングモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本願出願人は回転軸を中心とする直径を小さくし、かつ出力を高めたステッピングモータを提案(特許文献1:従来例1)している。以下、図9及び図10を用いてこの特許文献1について簡単に説明する。
【0003】
図9はモータの分解斜視図、図10に該モータの側面の断面図であり、これらの図において、201は円周方向に4分割して異なる極に交互に着磁された永久磁石からなるロータ、202はロータ201の軸方向に隣り合って配置された第1のコイル、203はロータ201の軸方向に隣り合って配置された第2のコイル、204は第1のコイル202により励磁され軟磁性材料からなる第1のステータ、205は第2のコイル203により励磁され軟磁性材料からなる第2のステータである。第1のステータ204はロータ201の外周面に隙間をあけて対向する第1の外側磁極部204A,204Bとロータ201の内周面に隙間をあけて対向する第1の内側磁極部204C,204Dを備え、第2のステータ205はロータ201の外周面に隙間をあけて対向する第2の外側磁極部205A,205Bとロータ201の内周面に隙間をあけて対向する第2の内側磁極部205C,205Dを備えている。206は出力軸であり、これにロータ201が固着され、第1のステータ204の軸受け部204Eと第2のステータ205の軸受け部205Eに回転可能に保持されている。207は非磁性材料からなる連結リングであり、第1のステータ204と第2のステータ205とを所定の間隔で保持するものである。
【0004】
第1のコイル202、第2のコイル203への通電方向を切り換えて、第1の外側磁極部204A,204B、第1の内側磁極部204C,204D、第2の外側磁極部205A,205B、第2の内側磁極部205C,205Dの各極性を切り換えることでロータを回転させていくものである。
【0005】
このモータは、コイルに通電することにより発生した磁束が外側磁極部から対向する内側磁極部へ、あるいは、内側磁極部から対向する外側磁極部へと流れ、外側磁極部と内側磁極部の間に位置するマグネットに効率的に作用する。また、外側磁極部と内側磁極部との距離を円筒形状のマグネットの厚さ程度とすることができるため、外側磁極部と内側磁極部とで構成される磁気回路の抵抗を小さくすることができる。このように磁気回路の抵抗が小さいほど、少ない電流で多くの磁束を発生させることができ、出力が向上する。
【0006】
また、本願出願人は上記モータを更に改良したものとして、内側磁極部を円筒形状で構成し、その内側磁極部の内径部に挿入されている出力軸を軟磁性材料で構成し、更にはステータに取り付けられ該出力軸を回転可能に保持する軸受けを非磁性材料で構成したものを提案(特許文献2:従来例2)している。この提案によれば、出力軸も磁気回路として利用できるため、モータの出力が上がる。また、その際のステータと出力軸の磁気による吸着は軸受けを非磁性材料で構成することで防いでいる。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−331666号公報
【特許文献2】
特開平10−229670号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例2にて提案されたものは、第1のコイルへの通電により発生する磁束が軟磁性材料の出力軸を介して第2のコイル及び第2の外側磁極部、第2の内側磁極部に影響を及ぼし、第2のコイルへの通電により発生する磁束が軟磁性材料の出力軸を介して第1のコイル及び第1の外側磁極部、第1の内側磁極部に影響を及ぼして、回転を不安定なものにしてしまう。
【0009】
また、上記従来例1および従来例2にて提案されているものは共にマグネットの内径とそれに対向する内側磁極部との間には所定の間隔が必要であり、それを製造時に管理することはコストアップを招く。また、ステータの形状としても円筒形状の内側磁極部と外側磁極部が必要であり、それらを一体的に構成するのは部品製造上難しい。さらに、それらを別体で製造し、後で一体的に組み立てる場合は部品点数が多くなり、コストアップを招いてしまう。
【0010】
(発明の目的)
本発明の目的は、小型化を損なうことなく、よりコストの安い高出力のステッピングモータを提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、周方向に分割して異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネットと、前記マグネットと同心かつ前記マグネットをそれぞれ軸方向の両端から挟む位置に配置される第1のコイル及び第2のコイルと、前記マグネットの外周面に対向し前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットの外周面に対向し前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記マグネットを挟んで前記第1の外側磁極部に対向して配置される第1の内側磁極部と、前記マグネットを挟んで前記第2の外側磁極部に対向して配置される第2の内側磁極部とを有し、前記第1の内側磁極部は、前記第1のコイルの内径部に挿入された状態で前記第1の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第1の軸受けと、前記第1の軸受けと回転可能に嵌合し、かつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第1のロータ軸とにより構成され、前記第2の内側磁極部は、前記第2のコイルの内径部に挿入された状態で前記第2の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第2の軸受けと、前記第2の軸受けと回転可能に嵌合し、かつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第2のロータ軸とにより構成されるステッピングモータとするものである。
【0012】
上記構成において、マグネットの内周面に固定された第1のロータ軸の第1の外側磁極部と対向する一部分を第1の内側磁極部と呼ぶとすると、第1のコイルにより発生する磁束はマグネットの外周面に対向する第1の外側磁極部とマグネットの内周面に固定された第1のロータ軸からなる第1の内側磁極部との間を通過するので、効果的にマグネットに作用する。その際、第1の内側磁極部はマグネットの内周面との間に空隙を設ける必要がない。同様に、マグネットの内周面に固定された第2のロータ軸の第2の外側磁極部と対向する一部分を第2の内側磁極部と呼ぶとすると、第2のコイルにより発生する磁束はマグネットの外周面に対向する第2の外側磁極部とマグネットの内周面に固定された第2のロータ軸からなる第2の内側磁極部との間を通過するので、効果的にマグネットに作用する。その際、第2の内側磁極部はマグネットの内周面との間に空隙を設ける必要がない。したがって、上記従来例(特開平10−229670号公報あるいは特開平9−331666号公報で提案されているもの)に比べて外側磁極部と内側磁極部の距離を小さく構成することが可能となり、これにより磁気抵抗を減少させ出力を高めることができる。
【0013】
また、上記従来例(特開平10−229670号公報あるいは特開平9−331666号公報で提案されているもの)に比べて内側磁極部を軸方向に長く構成できるので、外側磁極部とマグネットを有効に利用することができ、出力を高められる。
【0014】
さらに、第1のコイルの内径部に挿入された状態で第1の外側磁極部に固定される第1の軸受けを軟磁性材料で形成することにより、第1のロータ軸と共に第1の内側磁極部として作用し、第2のコイルの内径部に挿入された状態で第2の外側磁極部に固定される第2の軸受けを軟磁性材料で形成することにより、第2のロータ軸と共に第2の内側磁極部として作用するため、第1のコイル及び第2のコイルにより発生する磁束が流れやすくなり、よりいっそう出力を高めることが可能となる。
【0015】
第1の内側磁極部は第1のロータ軸及び第1の軸受けで構成し、第2の内側磁極部は第2のロータ軸及び第2の軸受けで構成してあるので、上記従来例(特開平10−229670号公報或いは特開平9−331666号公報)にて提案されている外側磁極部と内側磁極部を接続或いは一体的に製造する場合に比べて容易に製造でき、コストが安くなる。
【0016】
また、マグネットの外径部のみの隙間を管理するだけでよいので、組み立てが容易になり、不良率も少なくなる。
【0017】
また、マグネットは内径部に第1のロータ軸及び第2のロータ軸が固定されるので、強度的に優れる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施の第1の形態)
図1〜図6は本発明の実施の第1の形態に係る図であり、詳しくは、図1はステッピングモータの分解斜視図、図2は図1のステッピングモータの組立て後の軸方向の断面図、図3〜図6は図1のステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を各動作段階毎に示す断面図である。
【0020】
図1〜図6において、1は軟磁性材料からなる第1ステータであり、外筒及び中央に穴部1gの開いたドーナツ状の天板1fで構成されている。この第1ステータ1の外筒はその先端部に軸方向に延出する櫛歯形状の外側磁極部1a,1b,1c,1d,1eが形成され、後述のマグネット7の着磁分割数をNとすると(本実施形態ではN=10)、これらは円周方向に360/(N/2)度、すなわち72度間隔で所定の歯幅で形成されている。2は軟磁性材料からなる第2ステータであり、外筒及び中央に穴部2gの開いたドーナツ状の天板2fで構成されている。この第2ステータ2の外筒はその先端部に軸方向に延出する櫛歯形状の外側磁極部2a,2b,2c,2d,2eが形成され、これらは円周方向に360/(N/2)度、すなわち72度間隔で所定の歯幅で形成されている。
【0021】
3は円筒形状の第1のコイルであり、第1ボビン4に巻き付けられている。この第1のコイル3及び第1ボビン4はその外径が後述のマグネット7の外径とほぼ同じ寸法となっている。5は円筒形状の第2のコイルであり、第2ボビン6に巻き付けられている。この第2のコイル4及び第2ボビン6はその外径が後述のマグネット7の外径とほぼ同じ寸法となっている。
【0022】
7は円筒形状のマグネットであり、図3〜図6に示すように、その外周表面及び内周表面を円周方向にN分割して(本実施形態ではN=10分割して)S極及びN極が交互に着磁された着磁部を有する。8は第1ロータ軸であり、図2に示すようにマグネット7に接着固定される。この第1ロータ軸8は円柱部8aと軸部8bとで構成される。軸部8bは後述の第1軸受けによって回転可能に支持される。9は第2ロータ軸であり、同じくマグネット7に接着固定される。第2ロータ軸9は円柱部9aと軸部9bとで構成される。軸部9bは後述の第2軸受けによって回転可能に支持される。第1ロータ軸8の軸部8bは第2ロータ軸9の軸部9bよりも軸方向の長さが長く、出力軸として機能する。すなわち、軸部8bの先端に不図示のギアやレバー、スクリューねじ等を固定することで、ここより回転出力を得ることができる。
【0023】
10は非磁性材料からなるスペーサーであり、第1ロータ軸8及び第2ロータ軸9がマグネット7に固定される際に、その中間に配置される。第1ロータ軸8の円柱部8aとスペーサー10と第2ロータ軸9の円柱部9aとは図2に示すように軸方向に密着した状態でその軸方向に並置されるが、この軸方向の長さは、マグネット7の軸方向長さと略同一となる。
【0024】
上記のマグネット7と第1ロータ軸8と第2ロータ軸9とスペーサー10とにより、ロータが構成される。
【0025】
11は軟磁性材料からなる第1軸受けであり、第1円筒部11aとこの第1円筒部11aよりも外径の大きな第2円筒部11bで構成される。第1軸受け11は第1ステータ1の穴部1gにその第1円筒部11aが挿入された状態で第2円筒部11bが天板1fに密着するように固定され、第1ロータ軸8の軸部8bを回転可能に支持する。また、第1のコイル3及び第1ボビン4は第1ステータ1の内側に固定され、その状態で第1軸受け11の第1円筒部11aが第1ボビン4の内径部に嵌合している。すなわち、第1のコイル3の内径部には軟磁性材料からなる第1軸受け11の第1円筒部11aと、同じく軟磁性材料からなる第1ロータ軸8の軸部8bとが挿入された状態となる。
【0026】
12は軟磁性材料からなる第2軸受けであり、第1円筒部12aとこの第1円筒部12aよりも外径の大きな第2円筒部12bで構成される。第2軸受け12は第2ステータ2の穴部2gにその第1円筒部12aが挿入された状態で第2円筒部12bが天板2fに密着するように固定され、第2ロータ軸9の軸部9bを回転可能に支持する。また、第2のコイル5及び第2ボビン6は第2ステータ2の内側に固定され、その状態で第2軸受け12の第1円筒部12aが第2ボビン6の内径部に嵌合している。すなわち、第2のコイル5の内径部には軟磁性材料からなる第2軸受け12の第1円筒部12aと、同じく軟磁性材料からなる第2ロータ軸9の軸部9bとが挿入された状態となる。そして、第1軸受け11の第1円筒部11aの先端が第1ロータ軸8の円柱部8aを受け、第2軸受け12の第1円筒部12aの先端が第2ロータ軸9の円柱部9aを受ける形で、前記ロータの軸方向の移動を所定量に規制する。第1のコイル3及び第1ボビン4と第2のコイル5及び第2ボビン6は、マグネット7をそれぞれ軸方向両端から挟む位置に所定の隙間を持って配置される。
【0027】
13は円筒形状の連結リングであり、この連結リング13に第1ステータ1と第2ステータ2を固定することで、第1ステータ1と第2ステータ2を所望の位置、位相で配置することができる。第1ステータ1と第2ステータ2は同一形状であって、外側磁極部1a〜1eと外側磁極部2a〜2eとが向かい合うように配置される。その際、図3〜図6に示すように、マグネット7の着磁位相と第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとの関係は、マグネット7の着磁位相と第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとの関係に対して180/N度、すなわち18度ずれて配置される。また、連結リング13は非磁性材料で形成されており、第1ステータ1と第2ステータ2との間の磁気回路を分断してお互いの磁極の影響が出にくい構成となっている。
【0028】
上記構成において、第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eはマグネット7の外周面に所定の隙間をもって対向しており、第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eはマグネット7の外周面に所定の隙間をもって対向している。
【0029】
第1ステータ1は第1のコイル3によって励磁され、第2ステータ2は第2のコイル5によって励磁される。第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eと対向してマグネット7を挟む位置に第1ロータ軸8の円柱部8aが配置される。第1のコイル3の内径部に配置される第1ロータ軸8及び第1軸受け11は第1のコイル3によって第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとは反対の極に励磁され、第1の内側磁極部として機能する。また、第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eと対向してマグネット7を挟む位置に第2ロータ軸9の円柱部9aが配置される。第2のコイル5の内径部に配置される第2ロータ軸9及び第2軸受け12は第2のコイル5によって第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとは反対の極に励磁され、第2の内側磁極部として機能する。
【0030】
第1のコイル3により発生する磁束は、マグネット7の外周面に対向する第1ステータ1の外側磁極部とマグネット7の内周面に固定され第1の内側磁極部を構成する第1ロータ軸8の円柱部8aとの間を通過するので、効果的にマグネットに作用する。その際、第1の内側磁極部を構成する円柱部8aはマグネット7の内周面との間に空隙を設ける必要がない。同様に、第2のコイル5により発生する磁束は、マグネット7の外周面に対向する第2ステータ2の外側磁極部とマグネット7の内周面に固定され第2の内側磁極部を構成する第2ロータ軸9の円柱部9aとの間を通過するので、効果的に該マグネット7に作用する。その際、第2の内側磁極部を構成する円柱部9aはマグネット7の内周面との間に空隙を設ける必要がない。したがって、上記従来例1,2に比べて、外側磁極部と内側磁極部の距離を小さく構成することが可能となり、これにより磁気抵抗を減少させ、出力を高めることができる。
【0031】
また、第1軸受け11を軟磁性材料で形成することにより、第1ロータ軸8と共に第1の内側磁極部として作用し、同じく第2軸受け12を軟磁性材料で形成することにより、第2ロータ軸9と共に第2の内側磁極部として作用するので、第1のコイル3及び第2のコイル5により発生する磁束が流れやすくなり、よりいっそう出力を高めることが可能となる。
【0032】
ここで、第1軸受け11とマグネット7が固定される第1ロータ軸8との間、及び、第2軸受け12とマグネット7が固定される第2ロータ軸9との間には吸着力が発生し、摩擦力によるトルク損失が生じたり、摺動面の耐久性を損なう可能性はあるが、マグネット7を薄くて小径の円筒形状で構成することでその吸着力は極わずかしか発生せず、磁気回路の磁気抵抗が減少することによる効率アップの方がより有効に働き、発生するトルク自体は大きくなる。また、第1軸受け11、第1ロータ軸8、第2軸受け12、第2ロータ軸9の表面に潤滑材の塗布、潤滑塗装(フッ素系潤滑塗装・グラファイト系潤滑塗装・二流化モリブデン系潤滑塗装)、潤滑メッキ(例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を含有した無電解ニッケルメッキやテフロン(登録商標)潤滑無電解ニッケルメッキなど)等を施すことにより、摺動面の摩擦によるトルク損失を抑制したり、摺動面の耐久性を損なうことを防いで出力トルクをアップさせることも可能である。
【0033】
上記従来例2では、出力軸が軟磁性材料で構成され、軸受けは非磁性材料で構成されているが、この構成ではコイルの内径部には出力軸のみが配置されることになり、例えば出力軸の外径を大きくすることで磁束が流れやすくなるものの、コイルとの接触を避けるため、コイルと出力軸との間に所定の隙間を持たせる必要があり、その分コイルの内径に対する出力軸の外径、すなわち内側磁極部径は小さくなる。しかも実際にはコイルとステータが不用意に導通しないようにコイルはボビンに巻き回す必要があり、出力軸はボビンとの接触を避けるためにボビン内径と所定の隙間を持たせる必要があった。これに対し、本実施の第1の形態では、コイルの内径部に軟磁性材料の軸受けと軟磁性材料のロータ軸を配置しており、軸受けはボビン内径部と嵌合しており、ロータ軸と軸受けも回転嵌合してしているため、コイルの内径に対する内側磁極部の割合を増やすことが可能となり、これにより磁気回路の磁気抵抗が減少して発生トルクがアップする。或いは内側磁極部を小径化してその分コイルの占有率を増すことで、発生トルクをアップさせることも可能である。
【0034】
第1ロータ軸8の円柱部8aの端面と第2ロータ軸9の円柱部9aの端面とは向き合って配置されているが、間にスペーサー10が配置されるため、直接接触しない。また、第1ロータ軸8と第2ロータ軸9とはマグネット7を介して固定されているが、マグネット7は軟磁性材料ではないため、第1のコイル3により第1ロータ軸8を励磁したとしても、それにより第2ロータ軸9が励磁されることはない。同様に、第2のコイル5により第2ロータ軸9を励磁したとしても、それにより第1ロータ軸8が励磁されることはない。すなわち、第1ロータ軸8と第2ロータ軸9との間に磁束の行き来がないように構成されている。
【0035】
第1ロータ軸8と第2ロータ軸9にはお互いに向き合う円柱部8aと円柱部9aの端面にそれぞれ凹部18c,19c(図2参照)が形成され、第1ロータ軸8と第2ロータ軸9との間の磁気抵抗を大きくするような形状になっている。しかもこの場合でも、第1ロータ軸8の円柱部8aと第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとの対向面積は小さくならず、第1ロータ軸8の円柱部8aと第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。同様に、第2ロータ軸9の円柱部9aと第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとの対向面積は小さくならず、第2ロータ軸9の円柱部9aと第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。上記凹部18c,19cの形状は前述の磁気抵抗の条件を確保するためには円錐形状が望ましく、本実施形態では円錐形状としている。また、円錐形状とすることで、凹部8c,9cに接着剤を注入してマグネット7と第1ロータ軸8と第2ロータ軸9とスペーサー10を固定する方法をとることで、接着剤の量も十分に使用でき、接着強度が高まるし、接着剤の流れ出しによる不良等を防ぐこともでき、組み立てが容易になる。
【0036】
また、マグネット7の内径部は第1ロータ軸8と第2ロータ軸9及びスペーサー10によって埋められているので、従来例1,2に示されるものに比べ、マグネットの機械的強度が大きいものとなる。
【0037】
また、本実施の第1の形態では第1の内側磁極部を第1ロータ軸8と第1軸受け11で構成し、第2の内側磁極部を第2ロータ軸9と第2軸受け12で構成して、第1ステータ1と第2ステータ2はカップ形状で外筒部分に切り欠きを設けたという単純な形状で構成されることから製造が容易であり、コストが安くなる。すなわち、ロータ軸と軸受けが内側磁極部を兼ねていることで、コストを安くしている。従来例1,2に示される構造の場合、第1のステータ及び第2のステータはそれぞれ内側磁極部を外側磁極部と一体的に構成しなければならないが、内側磁極部を外側磁極部と同一部品で構成することは製造上難しい。例えばメタルインジェクションモールドにより成型することは可能であるがコスト高となり、プレスにより一体的に製造することは外側磁極部のみを構成する部品を製造する場合と比較して部品が小さくなればなるほど困難になる。また、内側磁極部と外側磁極部とを別々に製造してからカシメや溶接或いは接着等により一体的に固着する場合もコストが高くなる。
【0038】
また、従来例1,2に示されるものは、マグネットの外径部と外側磁極部との隙間を精度良く保って組み立てる必要のほかに、マグネットの内径部に対向する位置にある内側磁極部もマグネットに対し所定の隙間を設けて配置する必要があり、部品精度のばらつきや組み立て精度が悪い場合にこの隙間を確保出来ず、内側磁極部がマグネットに接触してしまう等の不良が生じてしまうが、本実施形態ではマグネットの外径部のみの隙間を管理するだけで良いので、組み立てが容易になる。
【0039】
さらに、上記従来例1,2では内側磁極部はマグネットと出力軸をつなぐ部分に接触しないように構成しなければならず、これにより内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さ(図10のL1)を十分に長く出来ないのに対し、本実施形態では図2のL2で示すように、内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さを長く確保でき、これにより外側磁極部とマグネットを有効に利用することができ、モータの出力が高まる。
【0040】
また、本実施の第1の形態においても従来例1,2に示されるものと同様にコイルの通電により発生する磁束を直接マグネットに作用させ、モータを高出力なものにするとともに、非常に小型化可能なものとしている。つまり、このステッピングモータの外径はマグネットの外径にステータの磁極を対向させるだけの大きさがあればよく、また、ステッピングモータの長さはマグネットの長さに第1のコイルと第2のコイルの長さを加えた程度の長さがあれば良いことになる。このため、ステッピングモータの大きさはマグネットおよびコイルの外径と長さによって決まるもので、マグネット及びコイルの外径と長さをそれぞれ非常に小さくすればステッピングモータを超小型にすることができるものである。その際、マグネット及びコイルの外径と長さをそれぞれ非常に小さくすると、ステッピングモータとしての精度を維持することが難しくなるが、これはマグネットを円筒形状に形成し、この円筒形状に形成されたマグネットの外周面及び内周面に第1、第2のステータの外側磁極部及び内側磁極部を対向させるという単純な構造により、ステッピングモータの精度の問題を解決している。また、上記の説明で述べたように、さらに低コストで高出力なものになる。
【0041】
図3〜図6はそれぞれ(a)が図2のA−A断面図、(b)が図2のB−B断面図であり、以下にこれらを用いてモータの回転駆動方法を説明する。
【0042】
図3の状態は、第1のコイル3に対して正通電することにより、第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eをN極とし、第1ロータ軸8の円柱部8aをS極とし、同時に第2のコイル5に対して逆通電することにより、第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eをS極とし、第2ロータ軸9の第2の円柱部9aをN極とした場合を示す。これにより、マグネット7の外周表面のS極に着磁された着磁部が第1ステータ1の外側磁極部の中心に向かう回転力(図3(a)の時計方向)が発生するとともに、マグネット7の外周表面のN極に着磁された着磁部が第2ステータ2の外側磁極部の中心に向かう回転力(図3(b)の反時計方向)が発生し、図3の状態でバランスを保って静止する。
【0043】
次に、図3の状態から、第1のコイル3への正通電を維持しながら、すなわち第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eをN極とし、第1ロータ軸8の円柱部8aをS極としながら、第2のコイル5への通電を正通電に切り換えると、第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eはN極に励磁され、第2ロータ軸9の円柱部9aはS極に励磁され、マグネット7は外周表面のS極に着磁された着磁部が第2ステータ2の外側磁極部の中心に向かう回転力が発生し、図中時計方向に回転を始める。そして、図4に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図3の状態からマグネット7が時計方向に18.0度回転した状態である。
【0044】
次に、図4の状態から、第2のコイル5への正通電を維持しながら、すなわち第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eをN極とし、第2ロータ軸9の円柱部9aをS極としながら、第1のコイル3への通電を逆通電に切り換えると、第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eはS極に励磁され、第1ロータ軸8の円柱部8aはN極に励磁され、マグネット7は外周表面のN極に着磁された着磁部が第1ステータ1の外側磁極部の中心に向かう回転力が発生し、図中時計方向に回転を始める。そして、図5に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図4の状態からマグネット7が時計方向に18.0度回転した状態である。
【0045】
次に、図5の状態から、第1のコイル3への逆通電を維持しながら、すなわち第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eをS極とし、第1ロータ軸8の円柱部8aをN極としながら、第2のコイル5への通電を逆通電に切り換えると、第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eはS極に励磁され、第2ロータ軸9の円柱部9aはN極に励磁され、マグネット7は外周表面のN極に着磁された着磁部が第2ステータ2の外側磁極部の中心に向かう回転力が発生し、図中時計方向に回転を始める。そして、図6に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は図5の状態から前記マグネット7が時計方向に18.0度回転した状態である。
【0046】
上記のように第1のコイル3及び第2のコイル5への通電方向を順次切り換えていくことにより、ロータの構成要素であるマグネット7は通電位相に応じた位置へと順次回転することになる。
【0047】
ここで、マグネット7の外周面を周方向に分割してなる着磁層を軸方向に2つ設け、第1ステータ1と対向する一方の着磁層と、第2ステータ2と対向する他方の着磁層の位相を互いに180/N度ずらし、第1ステータ1と第2ステータ2の位相を同じものとしてもよい。
【0048】
(実施の第2の形態)
図7〜図8は本発明の実施の第2の形態に係るステッピングモータを示す図であり、図7はステッピングモータの分解斜視図、図8は図7のステッピングモータの組立て後の軸方向の断面図である。ここで、上記実施の第1の形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
図7〜図8において、21は第1ロータ軸であり、マグネット7に接着固定される。この第1ロータ軸21は第1円柱部21aと第2円柱部21bと軸部21cとで構成される。第1円筒部21aはマグネット7の内径部に固定され、第2円筒部21bは第1のコイル3の内径部に挿入され、軸部21cは後述の第1軸受けによって回転可能に支持される。軸部21cは後述の軸部22cよりも軸方向の長さが長く、出力軸として機能する。すなわち軸部21cの先端に不図示のギアやレバー、スクリューねじ等を固定することで、回転出力を得ることができる。22は第2ロータ軸であり、マグネット7に接着固定される。この第2ロータ軸22は第1円柱部22aと第2円柱部22bと軸部22cとで構成される。第2円筒部22aはマグネット7の内径部に固定され、第2円筒部22bは第2のコイル5の内径部に挿入され、軸部22cは後述の第2軸受けによって回転可能に支持される。
【0050】
第1ロータ軸21及び第2ロータ軸22は間にスペーサー10を挟んでマグネット7に固定される。第1ロータ軸21の第1円柱部21aとスペーサー10と第2ロータ軸22の第1円柱部22aとが軸方向に密着した状態で軸方向に並置されるが、この軸方向の長さはマグネット7の軸方向の長さと略同一となる。
【0051】
上記のマグネット7と第1ロータ軸21と第2ロータ軸22とスペーサー10とでロータが構成される。
【0052】
第1ロータ軸21の円柱部21aの端面と第2ロータ軸22の円柱部22aの端面とは向き合って配置されているが、間にスペーサー10が配置されるため、直接接触しない。また、第1ロータ軸21と第2ロータ軸22とはマグネット7を介して固定されているが、マグネット7は軟磁性材料ではないため、第1のコイル3により第1ロータ軸21を励磁したとしても、それにより第2ロータ軸22が励磁されることはない。同様に、第2のコイル5により第2ロータ軸22を励磁したとしても、それにより第1ロータ軸21が励磁されることはない。すなわち、第1ロータ軸21と第2ロータ軸22との間に磁束の行き来がないように構成されている。
【0053】
第1ロータ軸21と第2ロータ軸22にはお互いに向き合う円柱部21aと円柱部22aの端面にそれぞれ凹部21d,22dが形成され、第1ロータ軸21と第2ロータ軸22との間の磁気抵抗を大きくするような形状になっている。しかもこの場合でも、第1ロータ軸21の円柱部21aと第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとの対向面積は小さくならず、第1ロータ軸21の円柱部21aと第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。同様に、第2ロータ軸22の円柱部22aと第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとの対向面積は小さくならず、第2ロータ軸22の円柱部22aと第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。上記凹部21d,22dの形状は前述の磁気抵抗の条件を確保するためには円錐形状が望ましく、本実施形態では円錐形状としている。円錐形状とすることで凹部21d,22dに接着剤を注入してマグネット7と第1ロータ軸21と第2ロータ軸22とスペーサー10を固定する方法をとることで、接着剤の量も十分に使用でき、接着強度が高まるし、接着剤の流れ出しによる不良等を防ぐこともでき、組み立てが容易になる。
【0054】
23は軟磁性材料からなる第1軸受けであり、第1円筒部23aとこの第1円筒部23aよりも外径の大きな第2円筒部23bで構成される。第1軸受け23は第1ステータ1の穴部1gにその第1円筒部23aが挿入された状態で第2円筒部23bが天板1fに密着するように固定され、第1ロータ軸21の軸部21cを回転可能に支持する。また、第1のコイル3及び第1ボビン4は第1ステータ1の内側に固定され、その状態で第1軸受け23の第1円筒部23aは第1ボビン4の内径部に嵌合している。すなわち、第1のコイル3の内径部には軟磁性材料からなる第1軸受け23の第1円筒部23aと、同じく軟磁性材料からなる第1ロータ軸21の第2円筒部21b及び軸部21cとが挿入された状態となる。24は軟磁性材料からなる第2軸受けであり、第2軸受け24は第1円筒部24aとこの第1円筒部24aよりも外径の大きな第2円筒部24bで構成される。第2軸受け24は第2ステータ2の穴部2gにその第1円筒部24aが挿入された状態で第2円筒部24bが天板2fに密着するように固定され、第2ロータ軸22の軸部22cを回転可能に支持する。また、第2のコイル5及び第2ボビン6は第2ステータ2の内側に固定され、その状態で第2軸受け24の第1円筒部24aは第2ボビン6の内径部に嵌合している。すなわち、第2のコイル5の内径部には軟磁性材料からなる第2軸受け24の第1円筒部24aと、同じく軟磁性材料からなる第2ロータ軸22の第2円筒部22b及び軸部22cとが挿入された状態となる。第1軸受け23の第1円筒部23aの先端が第1ロータ軸21の第2円柱部21bを受け、第2軸受け24の第1円筒部24aの先端が第2ロータ軸22の第2円柱部22bを受ける形で、ロータの軸方向の移動を所定量に規制する。
【0055】
第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eと対向してマグネット7を挟む位置に第1ロータ軸21の第1円柱部21aが配置される。第1のコイル3の内径部に配置される第1ロータ軸21及び第1軸受け23は第1のコイル3によって第1ステータ1の外側磁極部1a〜1eとは反対の極に励磁され、第1の内側磁極部として機能する。第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eと対向してマグネット7を挟む位置に第2ロータ軸22の第1円柱部22aが配置される。第2のコイル5の内径部に配置される第2ロータ軸22及び第2軸受け24は第2のコイル5によって第2ステータ2の外側磁極部2a〜2eとは反対の極に励磁され、第2の内側磁極部として機能する。
【0056】
第1のコイル3により発生する磁束は、マグネット7の外周面に対向する第1ステータ1の外側磁極部とマグネット7の内周面に固定され第1の内側磁極部を構成する第1ロータ軸21の第1円柱部21aとの間を通過するので、効果的にマグネットに作用する。その際、第1の内側磁極部を構成する第1円柱部21aはマグネット7の内周面との間に空隙を設ける必要がない。同様に、第2のコイル5により発生する磁束は、マグネット7の外周面に対向する第2ステータ2の外側磁極部とマグネット7の内周面に固定され第2の内側磁極部を構成する第2ロータ軸22の第1円柱部22aとの間を通過するので、効果的にマグネット7に作用する。その際、第2の内側磁極部を構成する第1円柱部22aはマグネット7の内周面との間に空隙を設ける必要がない。したがって、上記従来例1,2に比べて外側磁極部と内側磁極部の距離を小さく構成することが可能となり、これにより磁気抵抗を減少させ、出力を高めることができる。
【0057】
また、第1のコイル2の内径部に挿入された状態で第1の外側磁極部に固定される第1軸受け23を軟磁性材料で形成することにより、第1ロータ軸21と共に第1の内側磁極部として作用し、第2のコイル5の内径部に挿入された状態で第2の外側磁極部に固定される第2軸受け24を軟磁性材料で形成することにより、第2ロータ軸22と共に第2の内側磁極部として作用するので、第1のコイル3及び第2のコイル5により発生する磁束が流れやすくなり、よりいっそう出力を高めることが可能となる。
【0058】
ここで、第1軸受け23とマグネット7が固定される第1ロータ軸21との間、及び第2軸受け24とマグネット7が固定される第2ロータ軸22との間には吸着力が発生して摩擦力によるトルク損失が生じたり、摺動面の耐久性を損なう可能性はあるが、第1ロータ軸21の第1軸受け23との軸方向受け部を第1のコイル3の内径部に挿入される第2円筒部21bの先端とし、第2ロータ軸22の第1軸受け24との軸方向受け部を第2のコイル5の内径部に挿入される第2円筒部22bの先端とすることで、上記実施の第1の形態のものよりも軸方向受け部のマグネット7からの距離を離して吸着力を低減させている。これにより実施の第1の形態のものよりもマグネット7の外径や円筒部厚みを増やすことで磁力をアップさせても吸着力はさほど大きくならず、マグネット7の磁力アップ及び磁気回路の磁気抵抗が減少することによる効率アップの方がより有効に働き、発生するトルク自体は大きくなる。また、第1軸受け23、第1ロータ軸21、第2軸受け24、第2ロータ軸22の表面に潤滑材の塗布、潤滑塗装(フッ素系潤滑塗装・グラファイト系潤滑塗装・二流化モリブデン系潤滑塗装)、潤滑メッキ(例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を含有した無電解ニッケルメッキやテフロン(登録商標)潤滑無電解ニッケルメッキなど)等を施すことにより、摺動面の摩擦によるトルク損失を抑制したり、摺動面の耐久性を損なうことを防いで出力トルクをアップさせることも可能である。
【0059】
モータの回転駆動方法に関しては上記の実施の第1の形態と同様のため、その説明は省略する。
【0060】
最後に、上記実施の各形態における効果についてまとめて以下に説明する。
【0061】
第1のコイル2の内径部に挿入された状態で第1の外側磁極部に固定される第1軸受け11,23を軟磁性材料で形成することにより、第1ロータ軸8,21と共に第1の内側磁極部として作用し、第2のコイル5の内径部に挿入された状態で第2の外側磁極部に固定される第2軸受け12,24を軟磁性材料で形成することにより、第2ロータ軸9,22と共に第2の内側磁極部として作用するので、第1のコイル3及び第2のコイル4により発生する磁束が流れやすくなり、軸受けを非軟磁性材料で形成するものに比べて、よりいっそう出力を高めることが可能となる。
【0062】
また、第1の内側磁極部を第1ロータ軸8,21と第1軸受け11,23で構成し、第2の内側磁極部を第2ロータ軸9,22と第2軸受け12,24で構成しているので、従来にように外側磁極部と内側磁極部とを接続或いは一体的に製造する場合に比べて容易に製造でき、コストが安くなる。
【0063】
また、本実施の各形態におけるステッピングモータの外径はマグネット7の外径にステータ1,2の磁極を対向させるだけの大きさがあればよく、軸方向の長さはマグネット7の長さに第1のコイル3と第2のコイル4の長さを加えた程度の長さがあれば良い。このため、ステッピングモータの大きさはマグネット及びコイルの径と長さによって決まるもので、マグネット及びコイルの外径と長さをそれぞれ非常に小さくすればステッピングモータを超小型にすることができる。また、従来に比べて内側磁極部を軸方向に長く構成できるので、外側磁極部とマグネットを有効に利用することができ、ステッピングモータの出力を高められる。
【0064】
また、第1の内側磁極部の一部をなす第1ロータ軸8,21及び第2の内側磁極部の一部をなす第2ロータ軸9,22はマグネット7の内周面に接着固定されるので、これらの間に空隙を設ける必要がない。
【0065】
したがって、外側磁極部と内側磁極部との距離を小さく構成することが可能となり、これにより磁気抵抗を減少させ出力を高めることができる。また、このことによりマグネット7の外径部のみの隙間を管理するだけでよいので、組み立てが容易になり、不良率も少なくなる。さらに、マグネット7は内径部に第1のロータ軸及び第2のロータ軸が固定されるので、強度的に優れたものとなる。
【0066】
(発明と実施の形態の対応)
上記実施の各形態において、マグネット7が本発明の円筒形状のマグネットに、第1のコイル3及び第2のコイル5が本発明の第1のコイル及び第2のコイルに、外側磁極部1a〜1eが本発明の第1の外側磁極部に、外側磁極部2a〜2eが本発明の第2の外側磁極部に、第1軸受け11,23が本発明の第1の軸受けに、第2軸受け12,24が本発明の第2の軸受けに、第1ロータ軸8,21が本発明の第1のロータ軸に、第2ロータ軸9,22が本発明の第2のロータ軸に、それぞれ相当する。そして、前記第1軸受け11,23と前記第1ロータ軸8,21が本発明の第1の内側磁極部を構成し、前記第2軸受け12,24と前記第2ロータ軸9,22が本発明の第2の内側磁極部を構成する。
【0067】
以上が実施の各形態の各構成と本発明の各構成の対応関係であるが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、請求項で示した機能、又は実施の形態がもつ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても良いことは言うまでもない。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、小型化を損なうことなく、よりコストの安い高出力のステッピングモータを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係るステッピングモータの分解斜視図である。
【図2】図1に示すステッピングモータの組み立て完成状態の断面図である。
【図3】図2に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図であり、(a)は図2のA−A断面、(b)は図2のB−B断面である。
【図4】図3の状態からコイル通電を切り換えてマグネットを18.0度回転させた状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに18.0度回転させた状態を示す断面図である。
【図6】図5の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに18.0度回転させた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の第2の形態に係るステッピングモータの分解斜視図である。
【図8】図7に示すステッピングモータの組み立て完成状態の断面図である。
【図9】従来のステッピングモータの分解斜視図である。
【図10】従来のステッピングモータの断面図である。
【符号の説明】
1 第1ステータ
2 第2ステータ
3 第1のコイル
5 第2のコイル
7 マグネット
8 第1ロータ軸
9 第2ロータ軸
11 第1軸受け
12 第2軸受け
21 第1ロータ軸
22 第2ロータ軸
23 第1軸受け
24 第2軸受け
Claims (2)
- 周方向に分割して異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネットと、該マグネットと同心かつ該マグネットをそれぞれ軸方向の両端から挟む位置に配置される第1のコイル及び第2のコイルと、前記マグネットの外周面に対向し前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットの外周面に対向し前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記マグネットを挟んで前記第1の外側磁極部に対向して配置される第1の内側磁極部と、前記マグネットを挟んで前記第2の外側磁極部に対向して配置される第2の内側磁極部とを有し、
前記第1の内側磁極部は、前記第1のコイルの内径部に挿入された状態で前記第1の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第1の軸受けと、該第1の軸受けと回転可能に嵌合し、かつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第1のロータ軸とにより構成され、前記第2の内側磁極部は、前記第2のコイルの内径部に挿入された状態で前記第2の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第2の軸受けと、該第2の軸受けと回転可能に嵌合し、かつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第2のロータ軸とにより構成されることを特徴とするステッピングモータ。 - 前記第1のロータ軸或いは前記第1の軸受け、或いは、前記第2のロータ軸或いは前記第2の軸受けの少なくともいずれかの摺動面に潤滑塗装或いは潤滑メッキがなされていることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
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