JP2004354637A - 電子写真感光体、電子写真画像形成方法および電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真画像形成方法および電子写真装置 Download PDF

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一也 石田
Akihiro Kondo
晃弘 近藤
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Abstract

【課題】低温低湿環境下においても高い応答性を示し、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化を両立させることのできる電子写真感光体の提供。
【解決手段】電子写真感光体1の感光層14に、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンを電荷発生物質12として含有させ、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質13として含有させる。このことによって低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体1が実現される。
Figure 2004354637

【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置に関し、より詳細には、特定の電荷発生物質と特定の電荷輸送物質とを含有する感光層を有する電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタまたはファクシミリ装置などには、電子写真画像形成方法を用いて画像を形成する画像形成装置(以下、単に「電子写真装置」とも称する)が多用されている。電子写真装置では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、装置に備わる電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)の表面を所定の電位に一様に帯電させる。帯電された感光体の表面に対して画像情報に応じた露光を施し、静電潜像を形成する。形成された静電潜像を、トナーなどを含む現像剤で現像し、可視像であるトナー画像を形成する。形成されたトナー画像を感光体の表面から紙などの記録媒体上に転写し、転写されたトナー画像を定着させることによって画像を形成する。
【0003】
電子写真感光体は、導電性材料から成る導電性支持体と、導電性支持体上に設けられる感光層とを含んで構成される。感光体の感光層を構成する材料としては、従来から、セレン、硫化カドミウムまたは酸化亜鉛などの無機光導電性材料が知られている。これらの無機光導電性材料を用いた無機系感光体は、暗所で適当な電位に帯電できること、暗所での電荷の逸散が少ないこと、光照射によって速やかに電荷を逸散できることなどの数多くの利点を有する反面、種々の欠点も有する。たとえば、セレンを用いたセレン系感光体は、製造する条件が難しく、製造原価が高い。また熱や機械的な衝撃に弱いので、取扱いに注意を要する。硫化カドミウムを用いた硫化カドミウム系感光体および酸化亜鉛を用いた酸化亜鉛系感光体は、湿度の高い環境下では安定した感度を得ることができず、また増感剤として色素を添加した場合には、色素が感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって劣化したり、露光によって光退色したりするので、長期に渡って安定した特性を提供することができない。
【0004】
このように無機系感光体は多くの欠点を有することから、無機系感光体に代わる感光体として、有機光導電性材料を用いた有機系感光体が提案されている。たとえば、ポリビニルカルバゾールを始めとする各種有機光導電性ポリマーを用いた感光体がある。しかしながら、これらのポリマーを用いた感光体は、前述の無機光導電性材料を用いた無機系感光体に比べ、感光層の成膜性および軽量性などの点では優れるけれども、感度、耐久性および環境の変化に対する安定性などの点では劣るという欠点を有する。
【0005】
これらの欠点を解消するために種々の研究開発が行われ、これらの有機系感光体では有機光導電性ポリマーが担っていた光導電性機能である電荷発生機能および電荷輸送機能を、別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体が提案されている。機能分離型感光体には積層型と単層型とがあり、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る積層型の感光層が設けられる。また単層型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。
【0006】
このような機能分離型感光体では、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、帯電特性、感度、残留電位特性、繰返し特性および耐刷性などの電子写真特性が最良になるように材料を組合せることによって、高性能の感光体を提供することができる。また、感光層を塗工によって形成することができるので、極めて生産性が高く、安価な感光体を提供することができる。
【0007】
また機能分離型感光体では、感光体に照射された光を電荷発生物質が吸収して電荷を発生させ、この電荷が電荷輸送物質に注入されて感光体表面に輸送されることによって、光が照射された部分の感光体の表面電荷が消去される。このように、感光体に照射された光は電荷発生物質に吸収されるので、電荷発生物質を適当に選択することによって、感光体の感光波長域を自在に制御することができる。
【0008】
近年、より高画質な画像を得るためや、入力される画像情報を記憶したり自由に編集したりするために、画像情報のデジタル化が急速に進行している。これまで、デジタル化された画像情報を用いて画像を形成する電子写真装置は、ワードプロセッサやパーソナルコンピュータなどの出力機器であるレーザプリンタおよびLED(Light Emitting Diode)プリンタ、ならびに一部のカラーレーザ複写機などに限られていたけれども、従来はアナログの画像情報を用いた画像形成が主流であった普通の複写機の分野においてもデジタル化が進行している。
【0009】
デジタル化された電子写真装置では、感光体表面に対する露光は、以下のようにして行われる。たとえば、コンピュータで作成されたデジタル画像情報を直接使用して画像を形成する場合には、コンピュータから出力される画像情報であるデジタル電気信号を光信号に変換し、この光信号に対応する光を感光体表面に照射することによって、感光体表面に対して画像情報に応じた露光を施す。また複写機のように、原稿画像から読取られた画像情報を使用して画像を形成する場合には、原稿画像の画像情報を光信号として読取り、デジタル電気信号に変換した後、再度光信号に変換し、この光信号に対応する光を感光体表面に照射することによって、感光体表面に対して画像情報に応じた露光を施す。
【0010】
デジタルの電子写真装置において、デジタル画像情報である光信号に対応する光として感光体表面に照射される光には、主としてレーザ光やLED光が用いられている。そのうち、最もよく使用されている光は、波長780nmの近赤外光や波長660nmの赤色光などの長波長域の光である。したがって、デジタルの電子写真装置に使用される感光体に第一に要求されることは、これらの長波長域の光に対して感度を有することである。
【0011】
感光体の感光波長域は、前述のように電荷発生物質を適当に選択することによって自在に制御することができる。前述の近赤外光や赤色光などの長波長域の光に感度を示す電荷発生物質としては、これまでに多種多様な材料が検討されている。その中でもフタロシアニン化合物は、合成が比較的容易であり、また長波長光に感度を示すものが多いことから、幅広く検討され、実用に供されている。
【0012】
たとえば、オキソチタニウムフタロシアニンを用いた感光体(たとえば、特許文献1参照)、β型インジウムフタロシアニンを用いた感光体(たとえば、特許文献2参照)およびオキソバナジウムフタロシアニンを用いた感光体(たとえば、特許文献3参照)などが提案されている。またX型無金属フタロシアニンを用いた感光体も提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0013】
また最近では、二種以上のフタロシアニン化合物を用いた感光体が提案されている。たとえば、オキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとを含有し、かつCuKα特性X線(波長:1.541Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.0゜、9.0゜、14.1゜、18.0゜、23.7゜および27.3゜に回折ピークを有するフタロシアニン組成物を用いた感光体(特許文献5参照)、オキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはハロゲン化インジウムフタロシアニンとから成るフタロシアニン混合結晶を用いた感光体(特許文献6参照)などがある。
【0014】
一方、電子写真装置には、小型化および画像形成速度の高速化も要求されるようになっている。複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などの電子写真装置では、円筒状または円柱状の感光体が一般に用いられており、電子写真装置の小型化のためには、感光体の小径化が必要である。しかしながら、径の小さい感光体では、露光位置から現像位置までの距離が短いので、画像形成速度を高速化するために高速で電子写真プロセスを行うと、露光から現像までの時間が短くなり、以下のような問題が生じる。たとえば、応答性の低い感光体、すなわち露光後の表面電位の減衰速度が遅い感光体を用いると、露光によって消去されるべき部分の表面電位が充分に減衰していない状態で現像されることになるので、正規現像の場合には、画像の白地となるべき部分にトナーが付着する地汚れと呼ばれる現象が発生し、反転現像の場合には、画像濃度が低下する。したがって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させるためには、応答性の高い感光体が求められる。
【0015】
【特許文献1】
特公平5−55860号公報
【特許文献2】
特開昭59−155851号公報
【特許文献3】
特開昭61−28557号公報
【特許文献4】
特開平2−233769号公報
【特許文献5】
特開2000−313819号公報
【特許文献6】
特開平4−372663号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特許文献1〜6に記載の感光体に用いられているフタロシアニン化合物は、高い電荷発生能力と高い電荷注入効率とを有するので、特許文献1〜6に記載の感光体は、ある程度の応答性を有する。しかしながら、これらの感光体では、電荷発生物質であるフタロシアニン化合物と電荷輸送物質との組合せが適切でないので、充分な応答性は得られていない。特に、温度が低くかつ湿度の低い環境(以下、このような環境を「低温低湿環境」と称する)下では、充分な応答性を得ることができず、これらの感光体を小径化し、高速の電子写真プロセスで用いた場合には、地汚れや画像濃度の低下が発生する。したがって、これらの感光体を小径化して用いる場合には、電子写真プロセスの速度を抑える必要があり、電子写真装置の画像形成速度を高速化することはできない。すなわち、これらの感光体を用いた場合、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることはできない。
【0017】
本発明の目的は、特定の電荷発生物質と特定の電荷輸送物質とを組合せることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示し、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることのできる電子写真感光体、ならびにこれを用いる電子写真画像形成方法および電子写真装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性材料から成る導電性支持体と、
前記導電性支持体上に設けられ、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンおよび下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0019】
【化3】
Figure 2004354637
【0020】
(式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
【0021】
本発明に従えば、電子写真感光体は導電性支持体と感光層とを有し、感光層には、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニン、すなわちオキソチタニウムフタロシアニンおよびオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンが電荷発生物質として含有され、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が電荷輸送物質として含有される。このことによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。
【0022】
本発明の電子写真感光体が低温低湿環境下においても高い応答性を示すのは、電荷発生物質として含有されるオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンと、電荷輸送物質として含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物との組合せが好適であることによると推察される。すなわち、オキソチタニウムフタロシアニンを含む金属フタロシアニンは、高い電荷発生能力と高い電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生させた電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入する。また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質であるので、光吸収によってオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンで発生する電荷は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に効率的に注入され、感光層表面に円滑に輸送される。したがって、前述のように、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンと、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを組合せて感光層に含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。
【0023】
このように、本発明の電子写真感光体は、低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。すなわち、本発明の電子写真感光体を小型化して用いる場合には、電子写真プロセスの速度を抑える必要はないので、電子写真装置の画像形成速度を高速化することができる。したがって、本発明の電子写真感光体を用いることによって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることができ、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0024】
また、前述のように、本発明の電子写真感光体に設けられる感光層には、電荷発生物質として、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとが含有される。したがって、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、電子写真感光体の感光波長域を容易に変化させることができるので、所望の感光波長域を有する電子写真感光体を容易に得ることができる。
【0025】
また本発明は、前記金属フタロシアニンは、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶であることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶が含有される。オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンを混晶の形態にすることによって、結晶型の安定性を向上させることができるので、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる電子写真感光体を得ることができる。また、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンを混晶の形態にすることによって、分散性も向上させることができるので、塗工によって感光層を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、電子写真感光体の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0027】
また本発明は、前記混晶は、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶であることを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶が含有される。オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶は、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0029】
また本発明は、前記混晶は、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶であることを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶が含有される。オキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶は、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0031】
また本発明は、導電性材料から成る導電性支持体と、
前記導電性支持体上に設けられ、無金属フタロシアニンおよび前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0032】
本発明に従えば、電子写真感光体は導電性支持体と感光層とを有し、感光層には、無金属フタロシアニンが電荷発生物質として含有され、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が電荷輸送物質として含有される。このことによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。
【0033】
本発明の電子写真感光体が低温低湿環境下においても高い応答性を示すのは、電荷発生物質として含有される無金属フタロシアニンと、電荷輸送物質として含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物との組合せが好適であることによると推察される。すなわち、無金属フタロシアニンは、高い電荷発生能力と高い電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生させた電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入する。また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質であるので、光吸収によって無金属フタロシアニンで発生する電荷は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に効率的に注入され、感光層表面に円滑に輸送される。したがって、前述のように無金属フタロシアニンと前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを組合せて感光層に含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。
【0034】
このように、本発明の電子写真感光体は、低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。すなわち、本発明の電子写真感光体を小型化して用いる場合には、電子写真プロセスの速度を抑える必要はないので、電子写真装置の画像形成速度を高速化することができる。したがって、本発明の電子写真感光体を用いることによって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることができ、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0035】
また本発明は、前記無金属フタロシアニンは、X型無金属フタロシアニンであることを特徴とする。
【0036】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、X型無金属フタロシアニンが含有される。X型無金属フタロシアニンは、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0037】
また本発明は、前記感光層は、さらに金属フタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0038】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとが含有される。したがって、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、電子写真感光体の感光波長域を容易に変化させることができるので、所望の感光波長域を有する電子写真感光体を容易に得ることができる。
【0039】
また本発明は、前記無金属フタロシアニンおよび前記金属フタロシアニンは、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶であることを特徴とする。
【0040】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶が含有される。無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとを混晶の形態にすることによって、結晶型の安定性を向上させることができるので、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる電子写真感光体を得ることができる。また、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとを混晶の形態にすることによって、分散性も向上させることができるので、塗工によって感光層を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、電子写真感光体の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0041】
また本発明は、前記金属フタロシアニンは、オキソチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする。
【0042】
本発明に従えば、感光層には、電荷発生物質として、無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとが含有される。オキソチタニウムフタロシアニンは、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0043】
また本発明は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする。
【0044】
【化4】
Figure 2004354637
【0045】
(式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0046】
本発明に従えば、感光層には、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、特に高い電荷輸送能力を有する前記一般式(2)で示されるエナミン化合物が含有されるので、さらに高い応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。このような電子写真感光体を用いることによって、電子写真装置の画像形成速度をさらに高速化することができる。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、合成が比較的容易で収率が高く、安価に製造することができるので、前述のように高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体を低い製造原価で製造することができる。
【0047】
また本発明は、電子写真感光体の表面を帯電させる工程と、帯電された前記表面に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像を現像する工程とを含む電子写真画像形成方法であって、
前記電子写真感光体には、前記本発明の電子写真感光体が用いられることを特徴とする電子写真画像形成方法である。
【0048】
本発明に従えば、電子写真画像は、前記本発明の電子写真感光体の表面を帯電し、帯電された電子写真感光体の表面に対して露光を施して静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像することによって形成される。前記本発明の電子写真感光体は、前述のように低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、本発明の電子写真画像形成方法では、電子写真感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を短くした場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。
【0049】
また本発明は、前記電子写真感光体の表面に対する露光の開始から前記静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下であることを特徴とする。
【0050】
本発明に従えば、電子写真感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下と短いので、高速で画像を形成することが可能である。このように電子写真感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合、低温低湿環境下において、電子写真感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがあるけれども、本発明の電子写真画像形成方法では、前述のように低温低湿環境下においても高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体が用いられるので、電子写真感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。
【0051】
また本発明は、前記本発明の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記表面に対して露光を施す露光手段と、
露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする電子写真装置である。
【0052】
本発明に従えば、電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段とを備える。前記本発明の電子写真感光体は、前述のように低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、本発明の電子写真装置では、露光手段による電子写真感光体の表面に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間を短くした場合、たとえば電子写真感光体を小型化し、高速で電子写真プロセスを行った場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。したがって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0053】
また本発明は、前記本発明の電子写真感光体であって装置本体に回転自在に支持される電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる感光体駆動手段と、
前記電子写真感光体の外周面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記外周面に対して露光を施す露光手段と、
露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、
前記露光手段による露光位置から前記現像手段による現像位置までの前記電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを前記回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、前記感光体駆動手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電子写真装置である。
【0054】
本発明に従えば、電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体と、感光体駆動手段と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、制御手段とを備える。感光体駆動手段は、電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる。この感光体駆動手段の動作は、露光手段による露光位置から現像手段による現像位置までの電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、制御手段によって制御される。前記値dは、露光手段による電子写真感光体の外周面に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間に略一致する。したがって、露光手段による電子写真感光体の外周面に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間は短い。すなわち、本発明の電子写真装置では、電子写真プロセスを高速で行うことが可能であるので、画像形成速度の速い電子写真装置を実現することができる。
【0055】
露光手段による電子写真感光体の外周面に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合、たとえば前記距離Lの短い小型の電子写真感光体を用いて前記回転周速Vpを大きくし、高速で電子写真プロセスを行った場合、低温低湿環境下において、電子写真感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがある。
【0056】
しかしながら、本発明の電子写真装置は、前述のように低温低湿環境下においても高い応答性を示す前記本発明の電子写真感光体を備えるので、露光手段による電子写真感光体の外周面に対する露光の開始から現像手段による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。したがって、前述のように、前記本発明の電子写真感光体を備え、感光体駆動手段の動作を前記値dが90msec以下になるように制御することによって、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0057】
また本発明は、前記電子写真感光体は、円筒状または円柱状の形状を有し、
前記電子写真感光体の直径は、24mm以上40mm以下であることを特徴とする。
【0058】
本発明に従えば、電子写真装置に備わる電子写真感光体は、円筒状または円柱状の形状を有し、直径が24mm以上40mm以下であって小型であるので、電子写真装置を小型化することができる。したがって、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を得ることができる。
【0059】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1(以下、単に「感光体」とも称する)は、導電性材料から成る円筒状の導電性支持体11と、導電性支持体11の外周面上に設けられる感光層14とを含んで構成される。感光層14は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷発生物質12で発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質13を含有する電荷輸送層16とが、導電性支持体11の外周面上にこの順序で積層されて成る積層型の感光層である。すなわち、感光体1は、積層型感光体である。
【0060】
感光層14は、電荷発生物質12として、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンを含有し、電荷輸送物質13として、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する。
【0061】
【化5】
Figure 2004354637
【0062】
前記一般式(1)において、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。
【0063】
このように、感光層14に、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンを電荷発生物質12として含有させ、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質13として含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体1を得ることができる。これは、電荷発生物質12として含有されるオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、電荷輸送物質13として含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物との組合せが好適なことによると推察される。
【0064】
すなわち、オキソチタニウムフタロシアニンを含む金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、高い電荷発生能力と高い電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生させた電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入する。また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質であるので、光吸収によってオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンで発生する電荷は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に効率的に注入され、感光層14表面に円滑に輸送される。したがって、前述のように、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを組合せて感光層14に含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体1を得ることができる。
【0065】
電子写真感光体1は、このように、低温低湿環境下においても高い応答性を示すので、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。すなわち、感光体1を小型化して用いる場合には、電子写真プロセスの速度を抑える必要はないので、電子写真装置の画像形成速度を高速化することができる。したがって、感光体1を用いることによって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることができ、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0066】
なお、本実施形態で用いられるオキソチタニウムフタロシアニンを含む金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、フタロシアニン基に含まれるベンゼン環の水素原子が、クロロもしくはフルオロなどのハロゲン基、ニトロ基、シアノ基またはスルホン酸基などの置換基で置換されていてもよい。また金属フタロシアニンは、中心金属に配位子を有していてもよい。
【0067】
電荷発生物質12に用いられるオキソチタニウムフタロシアニンは、結晶性であることが好ましい。結晶性のオキソチタニウムフタロシアニンとしては、特定の結晶型を有するものが好ましく、具体例としては、たとえばY型オキソチタニウムフタロシアニンおよびI型オキソチタニウムフタロシアニンなどを挙げることができる。特定の結晶型を有するオキソチタニウムフタロシアニンのうち、特に好ましいものとしては、X線回折スペクトルにおいて、
(A−1)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.3゜、9.4゜、9.6゜、11.6゜、13.3゜、17.9゜、24.1゜および27.2゜に主要な回折ピークを示し、前記回折ピークのうち、9.4゜の回折ピークと9.6゜の回折ピークとが重なった回折ピーク束が最大強度を示し、かつ27.2゜の回折ピークが2番目に高い強度を示すもの、
(A−2)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)9.5゜、9.7゜、11.7゜、15.0゜、23.5゜、24.1゜および27.3゜に主要な回折ピークを示すもの、
(A−3)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)9.0゜、14.2゜、23.9゜および27.1゜に主要な回折ピークを示すもの、ならびに
(A−4)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを示し、7.4°、9.7°および24.2°に回折ピークを示すもの、
などを挙げることができる。なお、本明細書において、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線との成す角度のことであり、いわゆる回折角を表す。これらのオキソチタニウムフタロシアニンは、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0068】
オキソチタニウムフタロシアニンと共に電荷発生物質12に用いられる金属フタロシアニンの具体例としては、たとえばインジウムフタロシアニン類、ガリウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、銅フタロシアニン類、アルミニウムフタロシアニン類、ゲルマニウムフタロシアニン類、リチウムフタロシアニン類、ナトリウムフタロシアニン類、カリウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類、ハフニウムフタロシアニン類、マグネシウムフタロシアニン類、錫フタロシアニン類、亜鉛フタロシアニン類、コバルトフタロシアニン類、ニッケルフタロシアニン類、バリウムフタロシアニン類、ベリリウムフタロシアニン類、カドミウムフタロシアニン類、コバルトフタロシアニン類、鉄フタロシアニン類、シリコンフタロシアニン類、鉛フタロシアニン類、銀フタロシアニン類、金フタロシアニン類、白金フタロシアニン類、ルテニウムフタロシアニン類およびパラジウムフタロシアニン類などを挙げることができる。
【0069】
これらの金属フタロシアニンから選ばれる1種または2種以上の金属フタロシアニンが、オキソチタニウムフタロシアニンと共に用いられる。前述の金属フタロシアニンの中でも、オキソバナジウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロゲルマニウムフタロシアニン、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニンおよびジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンなどが好適に用いられる。
【0070】
このように、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニン、すなわちオキソチタニウムフタロシアニンと前述のオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを用いた場合、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、感光体1の感光波長域を容易に変化させることができる。したがって、所望の感光波長域を有する感光体1を容易に得ることができる。
【0071】
オキソチタニウムフタロシアニンと前述のオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとは、種々の形態で用いることができ、たとえば
(I)特開平9−73182号公報に開示の無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混合物と同様に、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとが単に物理的に混合された混合物、
(II)特開平2−84661号公報および特開平2−170166号公報に開示の中心物質の異なるフタロシアニン化合物の混晶のようなオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶、または
(III)特開平10−90926号公報に開示のX型無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混合凝集体と同様のオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混合凝集体、などとして用いることができる。
【0072】
なお、本明細書において、混晶とは、二種以上の化合物が分子レベルで混合されたもののことであり、前述のオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶は、
(II−a)特開平4−372663号公報に開示のオキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはハロゲン化インジウムフタロシアニンとからなるフタロシアニン混合結晶、特開平4−351673号公報に開示のオキソチタニウムフタロシアニンとヒドロキシメタルフタロシアニンとからなるフタロシアニン混合結晶などの混合結晶、
(II−b)特開2002−23396号公報、特開2002−244321号、公報特開2003−107763号公報、特開2000−313819号公報、特開平2−272067号公報、特開平1−142658号公報および特開平1−142659号公報に開示のフタロシアニン組成物と同様に、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを含有する組成物のいずれをも含む。
【0073】
前述のように、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとは、種々の形態で用いることができるけれども、混晶の形態で用いられることが好ましい。オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを混晶の形態で用いることによって、結晶型の安定性を向上させることができるので、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる感光体1を得ることができる。また、分散性も向上させることができるので、塗工によって感光層14を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、感光体1の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0074】
オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶の具体例としては、たとえばオキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化ガリウムフタロシアニンとの混晶、およびオキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化インジウムフタロシアニンとの混晶などを挙げることができる。
【0075】
オキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化ガリウムフタロシアニンとの混晶のうち、好ましいものとしては、X線回折スペクトルにおいて、
(B−1)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に最も強い回折ピークを示すもの、
(B−2)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)8.9°および27.0°に強い回折ピークを示すもの、
(B−3)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)9.3°、10.6°、13.3°、15.1°および26.3°に強い回折ピークを示すもの、
(B−4)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.4°、11.1°、17.9°、20.1°、26.6°および29.2°に強い回折ピークを示すもの、
(B−5)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.5°、16.7°、22.1°、24.7°、25.6°および28.6°に強い回折ピークを示すもの、ならびに
(B−6)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.6°、16.7°、22.5°、24.2°、25.3°および28.6°に強い回折ピークを示すものなどを挙げることができる。
【0076】
また、オキソチタニウムフタロシアニンとハロゲン化インジウムフタロシアニンとの混晶のうち、好ましいものとしては、X線回折スペクトルにおいて、
(C−1)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.6°、16.4°、22.4°、25.5°および28.6°に強い回折ピークを示すもの、
(C−2)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.6°、10.6°、15.2°、26.3°および28.7°に強い回折ピークを示すもの、
(C−3)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.5°、11.1°、18.1°、20.3°、26.7°および29.2°に強い回折ピークを示すもの、
(C−4)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)9.4°、15.2°、26.4°および27.4°に強い回折ピークを示すもの、
(C−5)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.3°および28.2°に強い回折ピークを示すもの、ならびに
(C−6)ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.3°、16.7°、25.3°および27.8°に強い回折ピークを示すものなどを挙げることができる。
【0077】
これらの混晶の中でも、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶またはオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶が好適に用いられる。オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶、およびオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶は、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、これらの混晶を電荷発生物質12に用いることによって、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する感光体1を得ることができる。
【0078】
電荷発生物質12に用いられる無金属フタロシアニンは、結晶性であることが好ましい。結晶性の無金属フタロシアニンとしては、特定の結晶型を有するものが好ましく、具体例としては、たとえばX型、α型、β型、γ型、τ型、π型、τ′型、η型またはη′型の無金属フタロシアニンなどを挙げることができる。これらの無金属フタロシアニンは、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0079】
前述の無金属フタロシアニンの中でも、X型無金属フタロシアニンが好適に用いられる。X型無金属フタロシアニンは、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、X型無金属フタロシアニンを電荷発生物質12に用いることによって、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する感光体1を得ることができる。
【0080】
X型無金属フタロシアニンのうち、好ましいものとしては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.4°、9.0°、16.5°、17.2°、22.1°、23.8°、27.0°および28.4°に主要な回折ピークを示すものなどを挙げることができる。
【0081】
無金属フタロシアニンは、金属フタロシアニンと共に電荷発生物質12に用いられることが好ましい。このように、電荷発生物質12に無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとを用いた場合、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、感光体1の感光波長域を容易に変化させることができる。したがって、所望の感光波長域を有する感光体1を容易に得ることができる。
【0082】
無金属フタロシアニンと共に用いられる金属フタロシアニンとしては、オキソチタニウムフタロシアニンおよび前述のオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンなどを挙げることができる。これらの中でも、オキソチタニウムフタロシアニンが好適に用いられる。オキソチタニウムフタロシアニンは、近赤外光や赤色光などの長波長域の光に対して特に高い感度を示すので、無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとを電荷発生物質12に用いることによって、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する感光体1を得ることができる。
【0083】
無金属フタロシアニンが金属フタロシアニンと共に用いられる場合、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとは、前述のオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンと同様に、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとが単に物理的に混合された混合物、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶、または無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混合凝集体などの種々の形態で用いることができる。
【0084】
また、前述の無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶は、特開2002−244321号公報および特開2003−107763号公報に開示の無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとを含有する結晶性フタロシアニン組成物、特開2002−23396号公報および特開2000−313819号公報に開示の無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとを含有するフタロシアニン組成物、特開平2−272067号公報に開示のX型無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとからなるX形無金属フタロシアニン組成物、ならびに特開平1−142658号公報および特開平1−142659号公報に開示の無金属フタロシアニンとα型チタニルフタロシアニンとを含有するα型チタニルフタロシアニン組成物などの組成物をも含む。
【0085】
前述のように、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとは、種々の形態で用いることができるけれども、混晶の形態で用いられることが好ましい。無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとを混晶の形態で用いることによって、前述のオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを混晶の形態で用いた場合と同様に、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる感光体1を得ることができる。また塗工によって感光層14を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、感光体1の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0086】
無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶の中でも、無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混晶が好適に用いられる。無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混晶のうち、好ましいものとしては、
(D−1)無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混晶であって、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.0゜、9.0゜、14.1゜、18.0゜、23.7゜および27.3゜に回折ピークを示すもの、ならびに
(D−2)X型無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混晶であって、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.5°、9.1°、16.7°および17.3°に強い回折ピークを示すものなどを挙げることができる。
【0087】
前述の金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、モーザ(Moser)およびトーマス(Thomas)の「フタロシアニン化合物(Phthalocyanine
Compounds)」に記載されている方法などの従来公知の製造方法によって製造することができる。たとえば、オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを加熱融解するか、または適当な溶剤中で加熱反応させてジクロロチタニウムフタロシアニンを合成した後、加水分解することによって製造することができる。またイソインドリンとチタニウムテトラアルコキシドとを適当な溶剤中で加熱反応させることによって製造することもできる。
【0088】
特定の結晶型を有する金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、以上のようにして得られる金属フタロシアニンもしくは無金属フタロシアニンを適当な溶剤中で撹拌するか、またはミリング処理することによって製造することができる。たとえば、前述の特定の結晶型を有するオキソチタニウムフタロシアニンのうち、(A−1)のものは、特開2000−129155号公報に開示の製造方法などで製造することができ、(A−2)のものは、特許第2700859号公報に開示の製造方法などで製造することができ、(A−3)のものは、特開平3−128973号公報に開示の製造方法などで製造することができ、(A−4)のものは、特公平7−91486号公報に開示の製造方法などで製造することができる。また、無金属フタロシアニンのうち、前述のX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.4°、9.0°、16.5°、17.2°、22.1°、23.8°、27.0°および28.4°に主要な回折ピークを示すX型無金属フタロシアニンは、たとえば特開平2−233769号公報に開示の製造方法などで製造することができる。
【0089】
前述のオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶は、たとえば、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを適当な比率で混合して非晶化するか、もしくはオキソチタニウムフタロシアニンおよびオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンをそれぞれ非晶化してから適当な比率で混合した後、適当な溶剤で撹拌するか、またはミリング処理することによって製造することができる。非晶化の方法としては、機械的摩砕法またはアシッドペースティング法などが用いられる。機械的摩砕法は、ボールミル、自動乳鉢またはペイントコンディショナなどを用いて、明確なX線回折ピークを示さなくなるまで粉砕する方法である。アシッドペースティング法は、硫酸などの強酸に溶解させ、得られた溶液を水などの貧溶媒に注ぎ込み、粒子化する方法である。たとえば、オキソチタニウムフタロシアニンと、ハロゲン化ガリウムフタロシアニンまたはハロゲン化インジウムフタロシアニンとの混晶は、特開平4−372663号公報に開示の製造方法などで製造することができる。
【0090】
前述の無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶は、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶と同様の方法で製造することができる。たとえば、前述のオキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶のうち、(D−1)のものは、特開2000−313819号公報に開示の製造方法などで製造することができ、(D−2)のものは、特開平2−272067号公報に開示の製造方法などで製造することができる。
【0091】
また、前述のオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混合凝集体は、たとえばオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとを硫酸などに溶解させ、析出した固形物を精製するという、通常の湿式法によって製造される。また、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混合凝集体も同様にして製造することができる。たとえば、X型無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとの混合凝集体は、特開平10−90926号公報に開示の製造方法などで製造することができる。
【0092】
前述のオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、他の電荷発生物質と混合されて使用されてもよい。オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと混合されて使用される他の電荷発生物質としては、クロロダイアンブルーなどのビスアゾ系化合物、ジブロモアンサンスロンなどの多環キノン系化合物、ペリレン系化合物、キナクリドン系化合物およびアズレニウム塩系化合物などを挙げることができる。このように、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、他の電荷発生物質とを混合して用いる場合、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンが主成分として含有される混合物を電荷発生物質12に用いることが好ましい。
【0093】
電荷発生層15の形成方法としては、電荷発生物質12を導電性支持体11の外周面上に真空蒸着することによって形成する方法、または結着性樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させて得られる結着性樹脂溶液中に、電荷発生物質12を混合し、分散させて電荷発生層用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体11の外周面上に塗布して成膜する方法などが用いられる。これらの中でも、後者の方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
【0094】
電荷発生層15に用いられる結着性樹脂の具体例としては、たとえばメラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂およびポリビニルブチラール樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。結着性樹脂は、これらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂を結着性樹脂として使用することができる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0095】
電荷発生層用塗工液の溶剤としては、たとえば塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、ならびにN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0096】
電荷発生物質12と結着性樹脂との配合比率は、電荷発生物質12の割合が10重量%〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質12の割合が10重量%未満であると、感度が低下する。電荷発生物質12の割合が99重量%を越えると、電荷発生層15の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質12の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。したがって、10重量%〜99重量%とした。
【0097】
電荷発生物質12を結着性樹脂溶液中に混合して分散させる方法としては、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、コロイドミルまたは超音波分散機などを用いる一般的な方法を適用することができる。電荷発生層用塗工液の塗布方法としては、浸漬塗布法、スプレイ法、ビード法またはノズル法などの一般的な方法を適用することができる。
【0098】
電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。電荷発生層15の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層15の膜厚が5.0μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。したがって、0.05μm以上5.0μm以下とした。
【0099】
電荷発生層15の外周面上に設けられる電荷輸送層16は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質13が結着性樹脂17に結着された形で形成される。
【0100】
前記一般式(1)において、Ar,Ar,Ar,Ar,Ar,a,R,RまたはRの示すアリール基の具体例としては、たとえばフェニル、ナフチル、ピレニルおよびアントリルなどを挙げることができる。これらのアリール基が有することのできる置換基としては、たとえばメチル、エチル、プロピルおよびトリフルオロメチルなどのアルキル基、2−プロペニルおよびスチリルなどのアルケニル基、メトキシ、エトキシおよびプロポキシなどのアルコキシ基、メチルアミノおよびジメチルアミノなどのアミノ基、フルオロ、クロロおよびブロモなどのハロゲン基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、フェノキシなどのアリールオキシ基、ならびにチオフェノキシなどのアリールチオ基などを挙げることができる。このような置換基を有するアリール基の具体例としては、たとえばトリル、メトキシフェニル、ビフェニリル、テルフェニル、フェノキシフェニル、p−(フェニルチオ)フェニルおよびp−スチリルフェニルなどを挙げることができる。
【0101】
前記一般式(1)において、Ar,Ar,Ar,Ar,Ar,R,RまたはRの示す複素環基の具体例としては、たとえばフリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリルおよびベンゾオキサゾリルなどを挙げることができる。これらの複素環基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有する複素環基の具体例としては、たとえばN−メチルインドリルおよびN−エチルカルバゾリルなどを挙げることができる。
【0102】
前記一般式(1)において、Ar,Ar,Ar,R,RまたはRの示すアラルキル基の具体例としては、たとえばベンジルおよび1−ナフチルメチルなどを挙げることができる。これらのアラルキル基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアラルキル基の具体例としては、たとえばp−メトキシベンジルなどを挙げることができる。
【0103】
前記一般式(1)において、Ar,Ar,Ar,a,R,R,RまたはRの示すアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、具体例としては、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルなどの鎖状アルキル基、ならびにシクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのシクロアルキル基などを挙げることができる。これらのアルキル基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアルキル基の具体例としては、たとえばトリフルオロメチルおよびフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、1−メトキシエチルなどのアルコキシアルキル基、ならびに2−チエニルメチルなどの複素環基で置換されたアルキル基などを挙げることができる。
【0104】
前記一般式(1)において、aの示すアルコキシ基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどを挙げることができる。これらのアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0105】
前記一般式(1)において、aの示すジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミノ基が好ましく、具体例としては、たとえばジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどを挙げることができる。これらのジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0106】
前記一般式(1)において、aまたはRの示すハロゲン原子の具体例としては、たとえばフッ素原子および塩素原子などを挙げることができる。
【0107】
前記一般式(1)において、ArとArとを結合する原子の具体例としては、たとえば酸素原子、硫黄原子および窒素原子などを挙げることができる。窒素原子は、たとえばイミノ基またはN−アルキルイミノ基などの2価基としてArとArとを結合することができる。ArとArとを結合する原子団の具体例としては、たとえばメチレン、エチレンおよびメチルメチレンなどのアルキレン基、ビニレンおよびプロペニレンなどのアルケニレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基、ならびにチオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含むアルケニレン基などの2価基などを挙げることができる。
【0108】
電荷輸送物質13には、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物が好適に用いられる。
【0109】
【化6】
Figure 2004354637
【0110】
前記一般式(2)において、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。
【0111】
前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、具体例としては、たとえばメチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルなどの鎖状アルキル基、ならびにシクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのシクロアルキル基などを挙げることができる。これらのアルキル基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアルキル基の具体例としては、たとえばトリフルオロメチルおよびフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、1−メトキシエチルなどのアルコキシアルキル基、ならびに2−チエニルメチルなどの複素環基で置換されたアルキル基などを挙げることができる。
【0112】
前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアルコキシ基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、具体例としては、たとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどを挙げることができる。これらのアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0113】
前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミノ基が好ましく、具体例としては、たとえばジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどを挙げることができる。これらのジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0114】
前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアリール基の具体例としては、たとえばフェニルおよびナフチルなどを挙げることができる。これらのアリール基が有することのできる置換基としては、前述のArなどの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアリール基の具体例としては、たとえばトリルおよびメトキシフェニルなどを挙げることができる。
【0115】
前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すハロゲン原子の具体例としては、たとえばフッ素原子および塩素原子などを挙げることができる。
【0116】
前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、特に高い電荷輸送能力を有するので、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質13に用いることによって、さらに高い応答性を示す電子写真感光体1を得ることができる。このような電子写真感光体1を用いることによって、電子写真装置の画像形成速度をさらに高速化することができる。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、合成が比較的容易で収率が高く、安価に製造することができるので、前述のように高い応答性を示す電子写真感光体1を低い製造原価で製造することができる。
【0117】
また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、ArおよびArが共にフェニル基であるものを挙げることができる。その中でも、ArおよびArが共にフェニル基であり、Arがフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはチエニル基であり、ArおよびArのうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R,R,RおよびRが共に水素原子であり、nが1であるものが特に好ましい。
【0118】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表32に示す例示化合物を挙げることができるけれども、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、これらに限定されるものではない。なお、表1〜表32では、各例示化合物を前記一般式(1)の各基に対応する基で表している。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物である。ただし、表1〜表32において、ArおよびArが互いに結合し環構造を形成するものを例示する場合には、Arの欄からArの欄に渡って、ArおよびArの結合する炭素−炭素二重結合と、その炭素−炭素二重結合の炭素原子と共にArおよびArが形成する環構造とを合わせて示す。
【0119】
【化7】
Figure 2004354637
【0120】
【表1】
Figure 2004354637
【0121】
【表2】
Figure 2004354637
【0122】
【表3】
Figure 2004354637
【0123】
【表4】
Figure 2004354637
【0124】
【表5】
Figure 2004354637
【0125】
【表6】
Figure 2004354637
【0126】
【表7】
Figure 2004354637
【0127】
【表8】
Figure 2004354637
【0128】
【表9】
Figure 2004354637
【0129】
【表10】
Figure 2004354637
【0130】
【表11】
Figure 2004354637
【0131】
【表12】
Figure 2004354637
【0132】
【表13】
Figure 2004354637
【0133】
【表14】
Figure 2004354637
【0134】
【表15】
Figure 2004354637
【0135】
【表16】
Figure 2004354637
【0136】
【表17】
Figure 2004354637
【0137】
【表18】
Figure 2004354637
【0138】
【表19】
Figure 2004354637
【0139】
【表20】
Figure 2004354637
【0140】
【表21】
Figure 2004354637
【0141】
【表22】
Figure 2004354637
【0142】
【表23】
Figure 2004354637
【0143】
【表24】
Figure 2004354637
【0144】
【表25】
Figure 2004354637
【0145】
【表26】
Figure 2004354637
【0146】
【表27】
Figure 2004354637
【0147】
【表28】
Figure 2004354637
【0148】
【表29】
Figure 2004354637
【0149】
【表30】
Figure 2004354637
【0150】
【表31】
Figure 2004354637
【0151】
【表32】
Figure 2004354637
【0152】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0153】
まず、下記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(4)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(5)で示されるエナミン中間体を製造する。
【0154】
【化8】
Figure 2004354637
【0155】
(式中、Ar,ArおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0156】
【化9】
Figure 2004354637
【0157】
(式中、Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0158】
【化10】
Figure 2004354637
【0159】
(式中、Ar,Ar,Ar,R,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0160】
この脱水縮合反応は、たとえば以下のように行う。前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、これと略等モル量の前記一般式(4)で示される2級アミン化合物とを、芳香族系溶剤、アルコール類またはエーテル類などの溶剤に溶解させ、溶液を調製する。用いる溶剤の具体例としては、たとえばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。調製した溶液中に、触媒、たとえばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、加熱下で反応させる。触媒の添加量は、前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、10分の1(1/10)〜1000分の1(1/1000)モル当量であることが好ましく、より好ましくは25分の1(1/25)〜500分の1(1/500)モル当量であり、50分の1(1/50)〜200分の1(1/200)モル当量が最適である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶剤と共沸させ系外に取除く。これによって、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。
【0161】
次に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化またはフリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うことによって、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を製造することができる。
【0162】
【化11】
Figure 2004354637
【0163】
(式中、Rは、前記一般式(1)において、nが0のときRを示し、nが1,2または3のときRを示す。Ar,Ar,Ar,R,R,R,a,mおよびnは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0164】
ビルスマイヤー反応は、たとえば以下のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide;略称:DMF)または1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド、またはオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬1.0当量〜1.3当量に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
【0165】
また、フリーデル−クラフト反応は、たとえば以下のように行う。1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、塩化アルミニウムと酸塩化物とによって調製した試薬1.0当量〜1.3当量と、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。
【0166】
最後に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体と下記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させるWittig−Horner反応を行うことによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を製造することができる。このとき、下記一般式(7−1)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが0であるものを得ることができ、下記一般式(7−2)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが1,2または3であるものを得ることができる。
【0167】
【化12】
Figure 2004354637
【0168】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。ArおよびArは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0169】
【化13】
Figure 2004354637
【0170】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。nは1〜3の整数を示す。Ar,Ar,R,RおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0171】
このWittig−Horner反応は、たとえば以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶剤中に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体1.0当量と、前記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬1.0〜1.20当量と、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイドまたはナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基1.0〜1.5当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。
【0172】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば前述の表1〜表32に示す例示化合物からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
【0173】
また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されてもよい。前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と混合されて使用される他の電荷輸送物質としては、たとえば前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に類似のエナミン化合物、その他のエナミン化合物、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、芳香族アミン化合物、スチリル系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物およびスチルベン系化合物、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有する重合体などの電子供与性物質などを挙げることができる。このように前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と他の電荷輸送物質とを混合して用いる場合、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が主成分として含有される混合物を電荷輸送物質13に用いることが好ましい。
【0174】
電荷輸送層16の結着性樹脂17には、前述の電荷発生層15に用いられる結着性樹脂と同様の樹脂を用いることができる。これらの中でも、電荷輸送物質13との相溶性に優れるものが好適に使用される。たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂もしくはこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂またはフェノール樹脂などを用いることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。前述の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、好適に用いられる。
【0175】
電荷輸送層16における電荷輸送物質13の重量Aと結着性樹脂17の重量Bとの比率A/Bは、感光層14の耐刷性の観点から、重量比で3分の2(2/3)以下であることが好ましい。前記比率A/Bが2/3を超え、結着性樹脂17の比率が低くなると、結着性樹脂17の比率が高いときに比べて、感光層14の耐刷性が低下する。
【0176】
また前記比率A/Bは、浸漬塗布法で電荷輸送層16を形成する場合には、3分の1(1/3)以上であることが好ましい。前記比率A/Bが1/3未満となり、結着性樹脂17の比率が高くなると、塗工液の粘度が増大するので、塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなる。また塗工液の粘度の増大を抑えるために塗工液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層16に白濁が発生する。
【0177】
電荷輸送層16は、たとえば、結着性樹脂17を前述の電荷発生層用塗工液に用いられる溶剤と同様の溶剤に溶解または分散させて得られる結着性樹脂溶液中に、電荷輸送物質13を溶解させて電荷輸送層用塗工液を調製し、この塗工液を前述の電荷発生層用塗工液の塗布方法と同様の方法を用いて電荷発生層15の外周面上に塗布することによって成膜される。
【0178】
電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層16の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。電荷輸送層16の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
【0179】
前述のように、感光層14は、以上のようにして形成される電荷発生層15と電荷輸送層16とが積層されて成る積層型の感光層である。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層を構成する材料に、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、繰返し使用における特性安定性に特に優れる電子写真感光体1を得ることができる。
【0180】
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルもしくはチタンなどの金属、またはアルミニウム合金もしくはステンレス鋼などの合金などの金属材料を用いることができる。また前述の金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子材料、ガラスまたは硬質紙などの表面に、導電処理を施したもの、たとえば金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性物質を適当な結着性樹脂と共に塗布したものなどを用いることもできる。これらの導電性材料は所定の形状に加工されて使用される。導電性支持体11の形状は、本実施形態では円筒状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、シート状または無端ベルト状などであってもよい。
【0181】
以上に述べたように、本実施形態では、感光層14は、電荷発生層15と電荷輸送層16とが、この順序で導電性支持体11の外周面上に積層された構成であるけれども、これに限定されることなく、電荷輸送層16および電荷発生層15の順に導電性支持体11の外表面上に積層された構成であってもよい。
【0182】
図2は、本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0183】
電子写真感光体2において注目すべきは、導電性支持体11と感光層14との間に下引き層18が設けられていることである。
【0184】
このことによって、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止し、電荷ブロッキング性を向上させることができるので、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の部分における表面電荷の減少を抑え、形成される画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。また感光層14の導電性支持体11からの剥離を抑え、導電性支持体11と感光層14との接着性を向上させることができる。
【0185】
下引き層18には、樹脂を主成分とする層が多用されている。下引き層18の外周面上に設けられる感光層14は、前述のように溶剤を用いて形成されるので、下引き層18を構成する樹脂は、感光層14を形成する際に一般に用いられる有機溶剤に対して溶解しにくい樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼインおよびポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロンおよびメトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ならびにアクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂などの三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などを挙げることができる。
【0186】
下引き層18には、たとえば酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズまたは酸化インジウムなどの金属酸化物の微粉末顔料を添加してもよい。これらの金属酸化物を添加することによって、下引き層18への電荷の蓄積を防ぎ、繰返し使用されることによる感光体の残留電位の上昇を低減することができる。また、形成される画像にモアレと呼ばれる干渉縞が発生することを防ぐことができる。
【0187】
下引き層18は、たとえば、前述の樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させて下引き層用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体11の外周面上に塗布することによって形成される。下引き層18に前述の金属酸化物の微粉末顔料などを添加する場合には、前述の樹脂および金属酸化物の微粉末顔料などを適当な溶剤に溶解または分散させて下引き層用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体11の外周面上に塗布することによって下引き層18を形成することができる。
【0188】
下引き層用塗工液の溶剤には、前述の電荷発生層用塗工液に用いられる溶剤と同様の溶剤を用いることができる。
【0189】
前述の樹脂や金属酸化物の微粉末顔料などを溶剤中に溶解または分散させる方法としては、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、コロイドミルまたは超音波分散機などを用いる一般的な方法を適用することができる。下引き層用塗工液の塗布方法としては、浸漬塗布法、スプレイ法、ビード法またはノズル法などの一般的な方法を適用することができる。
【0190】
下引き層18の膜厚は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上5μm以下である。下引き層18の膜厚が0.1μmよりも薄いと、実質的に下引き層18として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層14の帯電性の低下が生じる。下引き層18の膜厚を20μmよりも厚くすることは、下引き層18を浸漬塗布法によって形成する場合に、下引き層18を均一に形成することが困難になり、形成された下引き層18の機械的強度が低下するとともに、感度が低下するので好ましくない。
【0191】
図3は、本発明の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す概略断面図である。本実施形態の電子写真感光体3は、実施の第2形態の電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0192】
電子写真感光体3において注目すべきは、感光層140が、電荷発生物質12と電荷輸送物質13とを含有する単一の層から成る単層型の感光層であることである。すなわち、電子写真感光体3が単層型感光体であることである。
【0193】
本実施形態では、前述の実施の第1形態および第2形態と同様に、感光層140には、前述のオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンが電荷発生物質12として含有され、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が電荷輸送物質13として含有される。したがって、実施の第1形態および第2形態と同様に、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体3を得ることができる。また電子写真感光体3を用いることによって、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることができ、小型で画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することができる。
【0194】
感光層140は、電荷発生物質12および電荷輸送物質13が結着性樹脂17に結着された形で形成される。感光層140は、たとえば、前述のオキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンや無金属フタロシアニンを含む電荷発生物質12、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質13および結着性樹脂17を、前述の電荷発生層用塗工液に用いられる溶剤と同様の適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗工液を調製し、この塗工液を前述の電荷発生層用塗工液の塗布方法と同様の方法を用いて下引き層18の外周面上に塗布することによって形成することができる。
【0195】
感光層140における電荷輸送物質13の重量A’と結着性樹脂17の重量B’との比率A’/B’は、実施の第1形態の電荷輸送層16における電荷輸送物質13の重量Aと結着性樹脂17の重量Bとの比率A/Bと同様に、2/3以下であることが好ましい。また、浸漬塗布法で感光層140を形成する場合には、前記比率A/Bは1/3以上であることが好ましい。
【0196】
感光層140の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。感光層140の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。感光層140の膜厚が50μmを超えると、生産性が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
【0197】
以上に述べた実施の第1〜第3形態の電子写真感光体1,2,3に設けられる感光層14,140の外周面上には、感光層14,140の表面を保護するために、表面保護層を設けてもよい。表面保護層には、たとえば熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂などから成る層が用いられる。表面保護層は、紫外線防止剤、酸化防止剤、金属酸化物などの無機材料、有機金属化合物または電子受容性物質などを含有してもよい。
【0198】
また感光層14,140および表面保護層には、必要に応じて、フタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステルまたは塩素化パラフィンなどの可塑剤を添加してもよい。これによって、加工性を向上させることができる。また感光層14,140または表面保護層に可撓性を付与し、機械的特性を改良することができる。
【0199】
また感光層14,140および表面保護層には、シリコーン樹脂などのレベリング剤を添加してもよい。これによって、表面平滑性を向上させることができる。
【0200】
本発明による電子写真感光体は、感光層が、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを含有するものであれば、以上に述べた実施の第1〜第3形態の電子写真感光体1,2,3の構成に限定されることなく、種々の層構成を採ることができる。
【0201】
本発明の実施の第4の形態である電子写真装置として、以下では前述の実施の第1形態の電子写真感光体1(感光体1)を備える電子写真装置100を例示する。図4は、電子写真装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
【0202】
電子写真装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる感光体駆動手段37と、感光体駆動手段37の動作を制御する制御手段38とを備える。感光体駆動手段37は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体1を回転周速Vpで回転駆動させる。
【0203】
感光体1の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電器と共に設けられる。
【0204】
帯電器32は、感光体1の外周面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、たとえばローラ帯電方式などの接触式の帯電手段である。
【0205】
露光手段30は、たとえば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光31を帯電器32と現像器33との間に位置する感光体1の外周面43に照射することによって、帯電された感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光を施す。
【0206】
現像器33は、露光によって感光体1の外周面43に形成される静電潜像を、現像剤によって現像する現像手段であり、感光体1に対向して設けられ感光体1の外周面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0207】
転写器34は、現像によって感光体1の外周面43に形成される可視像であるトナー画像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写器34は、たとえば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を転写紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
【0208】
クリーナ36は、転写器34による転写動作後に感光体1の外周面43に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面43に残留するトナーを前記外周面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
【0209】
また、感光体1と転写器34との間を通過した後の転写紙51が搬送される方向には、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
【0210】
感光体1の直径は、24mm以上40mm以下であることが好ましい。これによって、電子写真装置100を小型化することができる。
【0211】
本発明の実施の一形態である電子写真画像形成方法は、電子写真感光体の表面を帯電させる工程と、帯電された電子写真感光体の表面に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、形成された静電潜像を現像する工程とを含み、前記電子写真感光体には、本発明による電子写真感光体が用いられることを特徴とする。この電子写真画像形成方法は、本実施形態の電子写真装置100によって実行される。
【0212】
電子写真装置100の動作について説明する。まず、感光体1が感光体駆動手段37によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の外周面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。
【0213】
次いで、露光手段30から、感光体1の外周面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、主走査方向である感光体1の長手方向に繰返し走査される。感光体1を回転駆動させ、光源からの光31を繰返し走査することによって、感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光が施される。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が消去され、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体1の外周面43に静電潜像が形成される。
【0214】
次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体1の外周面43にトナーが供給されることによって、静電潜像が現像され、感光体1の外周面43にトナー画像が形成される。
【0215】
また、感光体1への露光と同期して、転写紙51が、搬送手段によって感光体1と転写器34との間に矢符42方向から供給される。感光体1と転写器34との間に転写紙51が供給されると、転写器34はトナーと逆極性の電荷を転写紙51に与える。これによって、感光体1の外周面43に形成されたトナー画像が、転写紙51上に転写される。
【0216】
トナー画像が転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、転写紙51上のトナー画像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって電子写真装置100の外部へ排紙される。
【0217】
一方、転写器34による転写動作後に感光体1の外周面43上に残留するトナーは、クリーナ36のクリーニングブレード36aによって感光体1の外周面43から剥離され、回収用ケーシング36b内に回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の外周面43の電荷は、除電器によって除去され、感光体1の外周面43上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
【0218】
このとき、感光体駆動手段37の動作は、光31の結像点に相当する露光手段30による露光位置45から現像器33による現像位置46までの感光体1の外周面43に沿った距離Lを回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、制御手段38によって制御される。たとえば、前述のように直径が24mm以上40mm以下であるような前記距離Lの短い小型の感光体1を用いる場合には、回転周速Vpが大きくなるように制御される。
【0219】
前記値dは、露光手段30による感光体1の外周面43に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間に略一致する。したがって、露光手段30による感光体1の外周面43に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間は、90msec以下と短い。すなわち、本実施形態では、電子写真プロセスは高速で行われるので、画像形成速度の速い電子写真装置100を得ることができる。
【0220】
このように露光手段30による感光体1の外周面43に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合、低温低湿環境下において、感光体の応答性が低下し、画像品質の低下することがある。
【0221】
しかしながら、本実施形態の電子写真装置100は、前述のように、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを含有する感光層14を有し、低温低湿環境下においても高い応答性を示す感光体1を備えるので、露光手段30による感光体1の外周面43に対する露光の開始から現像器33による静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。したがって、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置100を得ることができる。
【0222】
以上に述べたように、本実施形態の電子写真装置100は、実施の第1形態の電子写真感光体1を備えるけれども、これに限定されることなく、実施の第2形態の電子写真感光体2または実施の第3形態の電子写真感光体3などを備えてもよい。
【0223】
また帯電器32は、接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、コロナ帯電方式などの非接触式の帯電手段であってもよい。
【0224】
また転写器34は、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を転写紙51上に転写させる非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、たとえばローラを備え、ローラを用いて転写紙51と感光体1とを圧接させることによってトナー画像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段であってもよい。
【0225】
また感光体1の周囲には、帯電器32、露光手段30および現像器33がそれぞれ1つずつ設けられるけれども、これに限定されることなく、現像器33と転写器34との間に、さらに第2の帯電手段、第2の露光手段および第2の現像手段を設けてもよい。これによって、帯電器32、露光手段30および現像器33によって一色目のトナー画像を形成し、現像器33と転写器34との間に設けられる第2の帯電手段、第2の露光手段および第2の現像手段によって一色目と異なる色のトナー画像を形成することが可能であるので、転写紙51上に多色画像を形成することのできる電子写真装置を実現することができる。
【0226】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明はこれに限定されるものではない。
【0227】
[製造例]
(製造例1)例示化合物No.1の製造
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mLに、下記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)と、下記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取除きながら、6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌されているヘキサン100mL中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノールで洗浄することによって、淡黄色粉末状化合物36.2gを得た。
【0228】
【化14】
Figure 2004354637
【0229】
【化15】
Figure 2004354637
【0230】
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法(Liquid
Chromatography−Mass Spectrometry;略称:LC−MS)で分析した結果、下記構造式(10)で示されるエナミン中間体(分子量の計算値:411.20)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが412.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(10)で示されるエナミン中間体であることが判った(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン中間体の純度は99.5%であることが判った。
【0231】
【化16】
Figure 2004354637
【0232】
以上のように、2級アミン化合物である前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミンと、アルデヒド化合物である前記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒドとの脱水縮合反応を行うことによって、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体を得ることができた。
【0233】
(製造例1−2)エナミン−アルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、製造例1−1で得られた前記構造式(10)で示されるエナミン中間体20.6g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)−水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物20.4gを得た。
【0234】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:439.19)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが440.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体であることが判った(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン−アルデヒド中間体の純度は99.7%であることが判った。
【0235】
【化17】
Figure 2004354637
【0236】
以上のように、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うことによって、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができた。
【0237】
(製造例1−3)例示化合物No.1の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体8.8g(1.0当量)と、下記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネート6.1g(1.2当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶10.1gを得た。
【0238】
【化18】
Figure 2004354637
【0239】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物(分子量の計算値:539.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが540.5に観測された。
【0240】
また、得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl)中における核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;略称:NMR)スペクトルを測定したところ、例示化合物No.1のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図5は、製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルを示す図であり、図6は、図5に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図7は、製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図8は、図7に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図9は、製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図10は、図9に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図5〜図10において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図5および図6において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図5の参照符500で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。
【0241】
LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた結晶は、例示化合物No.1のエナミン化合物であることが判った(収率:94%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。
【0242】
以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と、Wittig試薬である前記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネートとのWittig−Horner反応を行うことによって、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物を得ることができた。
【0243】
(製造例2)例示化合物No.61の製造
前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(p−メトキシフェニル)−α−ナフチルアミン4.9g(1.0当量)を用いる以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応によるエナミン中間体の製造(収率:94%)およびビルスマイヤー反応によるエナミン−アルデヒド中間体の製造(収率:85%)を行い、さらにWittig−Horner反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.9gを得た。なお、各反応において使用した試薬と基質との当量関係は、製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同様である。
【0244】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物(分子量の計算値:555.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが556.7に観測された。
【0245】
また、得られた化合物の重クロロホルム(CDCl)中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.61のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図11は、製造例2の生成物のH−NMRスペクトルを示す図であり、図12は、図11に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図13は、製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図14は、図13に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図15は、製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図16は、図15に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図11〜図16において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図11および図12において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図11の参照符501で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。
【0246】
LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物は、例示化合物No.61のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.61のエナミン化合物の純度は99.0%であることが判った。
【0247】
以上のように、脱水縮合反応、ビルスマイヤー反応およびWittig−Horner反応の3段階の反応を行うことによって、3段階収率73.5%で、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を得ることができた。
【0248】
(製造例3)例示化合物No.46の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)と、下記構造式(13)で示されるWittig試薬1.53g(1.2当量)とを、無水DMF15mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.71g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.37gを得た。
【0249】
【化19】
Figure 2004354637
【0250】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物(分子量の計算値:565.28)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが566.4に観測されたことから、得られた結晶は、例示化合物No.46のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。
【0251】
以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と前記構造式(13)で示されるWittig試薬とのWittig−Horner反応を行うことによって、表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。
【0252】
(比較製造例1)下記構造式(14)で示される化合物の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)を無水THF15mLに溶解させ、その溶液中に、アリルブロマイドと金属マグネシウムとから調製したグリニヤール試薬であるアリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(モル濃度:1.0mol/L)5.23mL(1.15当量)を0℃で徐々に加えた。0℃で0.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーによって反応の進行状況を確認したところ、明確な反応生成物は確認できず、複数の生成物が確認された。常法により、後処理、抽出、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、反応混合物の分離、精製を行った。
【0253】
しかしながら、目的とする下記構造式(14)で示される化合物を得ることはできなかった。
【0254】
【化20】
Figure 2004354637
【0255】
[実施例]
以下の実施例および比較例で用いた金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニン、ならびにこれらの混晶のX線回折スペクトルの測定は、CuKα特性X線(波長:1.54050Å)をX線源とし、θ/2θスキャン法で行った。
【0256】
(実施例1)
表33に示す材料をペイントシェーカで10時間分散し、下引き層用塗工液を調製した。得られた下引き層用塗工液を、直径30mm、長さ335mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体11の外周面上に膜厚を調製しながら浸漬塗布し、膜厚が0.2μmの下引き層18を形成した。なお、塗工後には、熱処理を行わなかった。
【0257】
【表33】
Figure 2004354637
【0258】
次に、表34に示す材料をペイントシェーカで2時間分散し、電荷発生層用塗工液を調製した。得られた電荷発生層用塗工液を、先に形成した下引き層18の外周面上に浸漬塗布した後、120℃で10分間乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層15を形成した。
【0259】
【表34】
Figure 2004354637
【0260】
なお、電荷発生物質12として用いた表34に示すオキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶は、特開平4−372663号公報に記載の実施例3に従い、オキソチタニウムフタロシアニン9重量部に対してクロロガリウムフタロシアニン1重量部を混合し、明確なX線回折ピークを示さなくなるまで粉砕した後、ジクロロメタン中で直径1mmのガラスビーズと共にミリング処理することによって製造した。得られたオキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶は、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)9.3°、10.6°、13.3°、15.1°および26.3°に強い回折ピークを示した。
【0261】
次に、表35に示す材料を撹拌して溶解させ、電荷輸送層用塗工液を調製した。なお、電荷輸送物質13には、前述の表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を用いた。得られた電荷輸送層用塗工液を、先に形成した電荷発生層15の外周面上に浸漬塗布した後、110℃で60分間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層16を形成した。
【0262】
【表35】
Figure 2004354637
【0263】
以上のようにして、本発明の要件を満足する図2に示す構成の電子写真感光体を作製した。
【0264】
(実施例2)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0265】
なお、本実施例で用いたオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶は、特開平4−372663号公報に記載の実施例19に従い、オキソチタニウムフタロシアニン9重量部に対してクロロインジウムフタロシアニン1重量部を混合し、明確なX線回折ピークを示さなくなるまで粉砕した後、ジクロロメタン中で直径1mmのガラスビーズと共にミリング処理することによって製造した。得られたオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶は、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.6°、16.4°、22.4°、25.5°および28.6°に強い回折ピークを示した。
【0266】
(実施例3)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、オキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0267】
なお、本実施例で用いたオキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶は、特開2000−313819号公報に記載の合成例5に従い、オキソチタニウムフタロシアニン7重量部に対して無金属フタロシアニン3重量部を混合し、アシッドペースティング法で非晶化した後、水中でナフタレンと共に加熱撹拌することによって製造した。得られたオキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶は、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.0゜、9.0゜、14.1゜、18.0゜、23.7゜および27.3゜に回折ピークを示した。
【0268】
(実施例4)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、オキソチタニウムフタロシアニン1重量部およびX型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)1重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0269】
なお、本実施例で用いたオキソチタニウムフタロシアニンは、特開2000−129155号公報に記載の製造例1に従い、ジクロロチタニウムフタロシアニンを加水分解して得られるY型オキソチタニウムフタロシアニン粗結晶を、メチルエチルケトン中で直径2mmのガラスビーズと共にミリング処理し、メタノールで洗浄した後、乾燥することによって製造した。得られたオキソチタニウムフタロシアニンは、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.3゜、9.4゜、9.6゜、11.6゜、13.3゜、17.9゜、24.1゜および27.2゜に主要な回折ピークを示し、前記回折ピークのうち、9.4゜の回折ピークと9.6゜の回折ピークとが重なった回折ピーク束が最大強度を示し、かつ27.2゜の回折ピークが2番目に高い強度を示した。
【0270】
(実施例5)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、X型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0271】
(実施例6)
実施例1において、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、前述の表1に示す例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0272】
(実施例7)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例2で用いたオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0273】
(実施例8)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例3で用いたオキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0274】
(実施例9)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例4で用いたオキソチタニウムフタロシアニン1重量部およびX型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)1重量部を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0275】
(実施例10)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、X型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。
【0276】
(比較例1)
実施例1において、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、下記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0277】
【化21】
Figure 2004354637
【0278】
(比較例2)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例2で用いたオキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0279】
(比較例3)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例3で用いたオキソチタニウムフタロシアニンと無金属フタロシアニンとの混晶を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0280】
(比較例4)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、実施例4で用いたオキソチタニウムフタロシアニン1重量部およびX型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)1重量部を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0281】
(比較例5)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、X型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業株式会社製:Fastogen Blue 8120BS)を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、前記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0282】
(比較例6)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)7.5゜、12.3゜、16.3゜、25.3゜および28.7゜に回折ピークを示す、いわゆるα型オキソチタニウムフタロシアニンを用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0283】
(比較例7)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、比較例6で用いたα型オキソチタニウムフタロシアニンを用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0284】
(比較例8)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、下記構造式(16)で示されるトリスアゾ顔料を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0285】
【化22】
Figure 2004354637
【0286】
(比較例9)
実施例1において、電荷発生物質12に、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶に代えて、前記構造式(16)で示されるトリスアゾ顔料を用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.61に代えて、例示化合物No.1を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。
【0287】
<評価1>
実施例1〜10および比較例1〜9で作製した各電子写真感光体を、現像器が取外され、代わりに現像部位に表面電位計(ジェンテック社製:CATE751)が設けられたデジタル複写機(シャープ株式会社製:AR−M450)にそれぞれ搭載した。複写機に、感光体表面の一部には露光を施し、他の部分には露光を施さないデータを入力し、現像部位において、未露光部の感光体の表面電位を暗部電位Vo(−V)として測定し、露光部の感光体の表面電位を明部電位VL(−V)として測定した。これらの測定結果を初期の測定結果とした。なお、評価に用いたデジタル複写機では、露光光源として、発振波長780nmのレーザを用いている。
【0288】
次に、デジタル複写機から表面電位計を取出し、代わりに現像器を搭載し、所定のパターンの試験用画像を3万枚複写させた。その後、再び現像器を取出して現像部位に前述の表面電位計を設け、初期と同様にして、暗部電位Voおよび明部電位VLを測定した。これらの測定結果を繰返し使用後の測定結果とした。
【0289】
<評価2>
実施例1〜10および比較例1〜9で作製した各電子写真感光体を、市販のレーザビームプリンタ(シャープ株式会社製:DM4501)を正規現像ができるように、また露光光源の光量と感光体の回転周速とを変化させることができるように改造して得られた装置にそれぞれ搭載した。なお、このレーザビームプリンタでは、露光光源として、発振波長780nmのレーザを用いている。
【0290】
感光体の回転周速を変化させることによって、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を50ミリ秒(50msec)、90ミリ秒(msec)または130ミリ秒(msec)に設定し、各設定時間で記録紙上に画像を形成した。得られた画像を目視観察し、画像の品質を評価した。ただし、画像に地汚れの発生が認められた場合には、地汚れが発生しなくなるか、または地汚れの程度が改善されなくなるまで、露光光源の光量を増加させて繰返し画像を形成し、最終的に得られた画像を評価に用いた。なお、以上の評価は、温度25℃、相対湿度(Relative Humidity)55%(55%RH)の常温常湿環境下と、温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温低湿環境下とにおいて行った。
以上の評価1および評価2の評価結果を表36に示す。
【0291】
【表36】
Figure 2004354637
【0292】
表36から、電荷発生物質にオキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いた実施例1〜10の感光体が搭載された装置では、低温低湿環境下において、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を90msec以下に設定して高速で電子写真プロセスを行った場合であっても、高品質の画像が得られることが判った。また実施例1〜10の感光体は、初期の明部電位VLと繰返し使用後の明部電位VLとの差が小さく、繰返し使用による応答性の低下が小さいことが判った。
【0293】
一方、電荷輸送物質に、前記一般式(1)に含まれない前記構造式(15)で示されるエナミン化合物を用いた比較例1〜5の感光体が搭載された装置では、低温低湿環境下において、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を90msec以下に設定して画像を形成すると、画像に地汚れが発生することが判った。
【0294】
また、電荷発生物質にα型オキソチタニウムフタロシアニンのみを用いた比較例6,7の感光体が搭載された装置では、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を90msec以下に設定して画像を形成すると、常温常湿環境下および低温低湿環境下のいずれにおいても、画像に地汚れが発生することが判った。特に、低温低湿環境下では、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を130msecに設定した場合であっても、画像に地汚れが発生した。表面電位については、比較例6,7の感光体は、初期の明部電位VLと繰返し使用後の明部電位VLとの差が大きく、繰返し使用による応答性の低下が大きいことが判った。
【0295】
また、電荷発生物質に前記構造式(16)で示されるトリスアゾ顔料を用いた比較例8,9の感光体が搭載された装置では、低温低湿環境下において、感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間を50msecに設定して画像を形成すると、画像に地汚れが発生することが判った。表面電位については、比較例8,9の感光体は、比較例6,7の感光体と同様に、初期の明部電位VLと繰返し使用後の明部電位VLとの差が大きく、繰返し使用による応答性の低下が大きいことが判った。
【0296】
以上のように、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンと、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とを組合せて感光層に含有させることによって、低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる電子写真感光体を得ることができた。
【0297】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、感光層には、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンと、特定の構造を有する電荷輸送能力の高いエナミン化合物とが含有されるので、低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができ、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることのできる電子写真感光体を得ることができる。またオキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、所望の感光波長域を有する電子写真感光体を容易に得ることができる。
【0298】
また本発明によれば、感光層には、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶が含有されるので、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる電子写真感光体を得ることができるとともに、塗工によって感光層を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、電子写真感光体の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0299】
また本発明によれば、感光層には、オキソチタニウムフタロシアニンと特定の金属フタロシアニンとの混晶が含有されるので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0300】
また本発明によれば、感光層には、無金属フタロシアニンと、特定の構造を有する電荷輸送能力の高いエナミン化合物とが含有されるので、低温低湿環境下においても高い応答性を示し、小型化され、高速の電子写真プロセスで用いられた場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができ、電子写真装置の小型化と画像形成速度の高速化とを両立させることのできる電子写真感光体を得ることができる。
【0301】
また本発明によれば、感光層には、X型無金属フタロシアニンが含有されるので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0302】
また本発明によれば、感光層には、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとが含有されるので、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの比率を変化させることによって、所望の感光波長域を有する電子写真感光体を容易に得ることができる。
【0303】
また本発明によれば、感光層には、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶が含有されるので、繰返し使用された場合の応答性の低下を抑え、繰返し使用における特性安定性に優れる電子写真感光体を得ることができるとともに、塗工によって感光層を形成する際に、塗工液の経時安定性を向上させ、電子写真感光体の品質安定性および生産性を向上させることができる。
【0304】
また本発明によれば、感光層には、無金属フタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニンとが含有されるので、半導体レーザまたは発光ダイオードなどから出射される長波長域の光を露光に用いるデジタルの電子写真装置に好適な感光波長域を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0305】
また本発明によれば、感光層には、特に高い電荷輸送能力を有し、かつ合成が比較的容易で収率が高く、安価に製造することのできる特定の構造のエナミン化合物が含有されるので、さらに高い応答性を有する電子写真感光体を低い製造原価で製造することができる。
【0306】
また本発明によれば、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体が用いられるので、電子写真感光体の表面に対する露光の開始から静電潜像の現像の終了までの時間が短い場合であっても、低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することができる。
【0307】
また本発明によれば、低温低湿環境下においても高い応答性を示す電子写真感光体を備えるので、画像形成速度が速く、かつ低温低湿環境下などの各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真装置を実現することが可能である。
【0308】
また本発明によれば、円筒状または円柱状の電子写真感光体の直径が好適な範囲に選択されるので、電子写真装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【図4】電子写真装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
【図5】製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】図5に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図7】製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図8】図7に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図9】製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図10】図9に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図11】製造例2の生成物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図12】図11に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図13】製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図14】図13に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図15】製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図16】図15に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【符号の説明】
1,2,3 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14,140 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 結着性樹脂
18 下引き層
30 露光手段
32 帯電器
33 現像器
34 転写器
35 定着器
36 クリーナ
37 感光体駆動手段
38 制御手段
51 転写紙
100 電子写真装置

Claims (15)

  1. 導電性材料から成る導電性支持体と、
    前記導電性支持体上に設けられ、オキソチタニウムフタロシアニンを含む二種以上の金属フタロシアニンおよび下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 2004354637
    (式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  2. 前記金属フタロシアニンは、オキソチタニウムフタロシアニンとオキソチタニウムフタロシアニン以外の金属フタロシアニンとの混晶であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 前記混晶は、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混晶であることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
  4. 前記混晶は、オキソチタニウムフタロシアニンとクロロインジウムフタロシアニンとの混晶であることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
  5. 導電性材料から成る導電性支持体と、
    前記導電性支持体上に設けられ、無金属フタロシアニンおよび前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体。
  6. 前記無金属フタロシアニンは、X型無金属フタロシアニンであることを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
  7. 前記感光層は、さらに金属フタロシアニンを含有することを特徴とする請求項5または6記載の電子写真感光体。
  8. 前記無金属フタロシアニンおよび前記金属フタロシアニンは、無金属フタロシアニンと金属フタロシアニンとの混晶であることを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体。
  9. 前記金属フタロシアニンは、オキソチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする請求項7または8記載の電子写真感光体。
  10. 前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
    Figure 2004354637
    (式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
  11. 電子写真感光体の表面を帯電させる工程と、帯電された前記表面に対して露光を施し、静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像を現像する工程とを含む電子写真画像形成方法であって、
    前記電子写真感光体には、請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体が用いられることを特徴とする電子写真画像形成方法。
  12. 前記電子写真感光体の表面に対する露光の開始から前記静電潜像の現像の終了までの時間は、90ミリ秒(90msec)以下であることを特徴とする請求項11記載の電子写真画像形成方法。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記表面に対して露光を施す露光手段と、
    露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする電子写真装置。
  14. 請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体であって装置本体に回転自在に支持される電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を回転周速Vpで回転駆動させる感光体駆動手段と、
    前記電子写真感光体の外周面を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記外周面に対して露光を施す露光手段と、
    露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、
    前記露光手段による露光位置から前記現像手段による現像位置までの前記電子写真感光体の外周面に沿った距離Lを前記回転周速Vpで除した値d(=L/Vp)が90ミリ秒(90msec)以下になるように、前記感光体駆動手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電子写真装置。
  15. 前記電子写真感光体は、円筒状または円柱状の形状を有し、前記電子写真感光体の直径は、24mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項14記載の電子写真装置。
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JP2015114351A (ja) * 2013-12-09 2015-06-22 シャープ株式会社 電子写真感光体およびそれを用いた画像形成装置

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