JP2004353155A - 吸水保水性編物及び積層シート - Google Patents

吸水保水性編物及び積層シート Download PDF

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Abstract


【課題】 従来にない吸水性、水分保持性、ドライ感を有する吸水保水性編物を提供する。
【解決手段】 編物において、表面には疎水性繊維からなる凸部1が形成され、裏面は編物全体の質量の30%以上を占める親水性繊維を用いて構成されており、本明細書に記載の方法により測定される逆戻り水分率(GS)が30%以下であることを特徴とする吸水保水性編物。好ましくは、表面編地2と、これに対向する裏面編地3と、両編地間を連結する連結糸4とからなる立体構造編物であって、連結糸が疎水性繊維からなる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、吸水性及び保水性に優れた吸水保水性編物並びに積層シートに関するものであり、詳しくは、おむつ、トイレトレーニングパンツ、失禁用パンツや失禁用シーツ等の育児もしくは介護用品資材、又はカーペット、バスマット等の産業用資材として好適な、表面に快適なドライ感をもたらすことのできる吸水保水性編物並びに積層シートに関するものである。
従来、幼児向けもしくは成人向けのおむつや失禁用パンツについては、主として綿を素材とした織物や編物を用いたもの(以下、布おむつ等)が数多く提案されてきた。しかし、洗濯・乾燥性に難がある点や、吸水量の低い点などから、近年では布おむつ等に代わって、高吸水性ポリマーに不織布等を組み合わせた、使い捨ておむつ等が主流になっているのが現状である。
ところが、最近になって、ごみ焼却時のダイオキシン発生等の環境問題がクローズアップされるようになり、上記のような使い捨ておむつ等についても例外ではない。ごみ焼却時のダイオキシンの発生を防ぐために、各自治体においては焼却炉の改善等を行っており、その結果として利用者の負担が増すことが予想されている。したがって、使い捨ておむつ等についても、今後消費者や病院施設、介護施設による焼却料金負担の増加が懸念されていることから、洗濯して繰り返し使用する布おむつ等の利点が見直されてきている。
そこで、布おむつ等の欠点である吸水量の少なさや、肌面が湿った感じでドライ感(サラッとした感じ)に劣るという感じを解決するための技術も提案されている。そのような技術としては、肌面に接する側の面が主として非異形断面繊維で構成され、反対側の面が主として異形断面繊維で構成された二層構造布帛に、吸湿性を有する繊維からなる織編物や不織布の吸水性繊維シートを介在させて、防水シートを積層させた積層布帛がある(例えば、特許文献1参照。)。
あるいは、主としてポリエステル繊維からなる嵩高い二重織編物において、肌面に接する側の面を太繊度で構成し、反対側の面を細繊度で構成することにより、吸水した水分を肌面と反対側に移動させる機能を持つおしめ用吸水性布帛がある(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−148876号公報 特開2002−272778号公報
上記した従来技術のうち、前者の積層布帛では、二重構造布帛の作用によりドライ感は得られるとしても、別に吸水性を担う吸水シートを必要とするものであり、1枚の布帛でドライ感と吸水保水性を満足させるものではない。
一方、後者のおしめ用布帛においては、一枚の布帛でドライ感と吸水保水性をある程度は具現できるものであろうが、それらの特性は必ずしも十分とはいえず、さらに高性能のものが求められるところである。
本発明は、このような現状に鑑みて行われたもので、従来にない吸水性、水分保持性及び表面ドライ感を兼備した吸水保水性編物並びに積層シートを提供することを課題とするものである。
本発明は、上記課題を達成するために、編物において、表面には疎水性繊維からなる凸部が形成され、裏面は親水性繊維を用いて構成されていることを特徴とする吸水保水性編物を要旨とするものである。また、上記吸水保水性編物の裏面側に防水層が積層されてなることを特徴とする吸水保水性積層シートを要旨とするものである。
本発明の吸水保水性編物は、従来にない優れた吸水保水性と表面ドライ感を有した編物であり、吸水保水性の要求される育児用品、介護用品、衣料品その他の産業資材用途に好適に使用できる。特に、使い捨てでなく洗濯して反復使用できるおむつや失禁用パンツ、失禁用シーツ等の素材として最適であり、快適な使用感を得ることができる。また、人体からの発汗を吸収、保持できることから、帽子、ヘルメットの内側に用いて、汗が滴り落ちるのを防ぐことができ、着脱時にべとつく感じもない頭皮に快適な帽子、ヘルメットとすることができる。さらに、本発明の積層シートは、上記した本発明の吸水保水性編物の効果に加え、裏面側から外部への移水を防止することができ、上記した本発明の編物同様に育児用品、介護用品、衣料品、帽子及びヘルメット用材料、その他の産業資材用途に用いることができ、失禁用パンツ、失禁用シーツ、バスマット等に特に好適である。
本発明の吸水保水性編物(以下、単に「本発明の編物」ということがある)は、表面において疎水性繊維からなる凸部が形成されていることが必要であり、これにより本発明の編物の表面は凹凸状の構造を有することになる。
本発明の編物は、表面の凹凸状の構造(以下、表面凹凸構造ということがある)を有することにより、ひとつには、外部から編地表面にもたらされた液体状の水分が、速やかに編物の内部に侵入し、裏面側への移動が促進されるという作用効果を奏することができる。また、それに加えて、この表面側を手肌に触れる側の面として使用されたときに、表面凹凸構造のために編物表面と手肌との実質的な接触面積が少なくなるので、水分によるベトツキ感を軽減し、編物表面における面方向の通気性も大きいので、ドライ感を向上させるという作用効果も奏することができる。
表面の凸部は、良好なドライ感を得るために、疎水性繊維を用いて形成されるものである。疎水性繊維としては、一般に疎水性繊維として知られている合成繊維を好ましく用いることができる。本発明に用いられる疎水性繊維を例示すれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、及びこれらのポリエステルにイソフタル酸、スルホイソフタル酸成分、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのような第3グリコール成分を共重合した共重合ポリエステルからなるポリエステル系繊維が挙げられる。また、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等からなるポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるポリオレフィン系繊維及びアクリル系繊維が挙げられる。さらには、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル化合物等からなる生分解性合成繊維が挙げられ、このような生分解性合成繊維を用いた場合には、土壌中や水中に長時間放置されて、あるいはコンポストで処理されて、微生物等の作用により分解させることができるので、用済み後廃棄時の環境負荷がより低減される。
なお、合成繊維のラスターに関しては、特に限定されるものではなく、ブライト、セミダル、フルダルのいずれでもよい。
表面の凸部の形態としては、特に限定されるものではない。例えば図1に示すようにドット状で略均一に分布していてもよい。また、図2に示すようなストライプ状、あるいは図3に示すような格子状の凸部であってもよい。用途にもよるが、ドット状で略均一に分布した凸部が好ましい。
したがって、凸部を形成するための表面の編地組織としても、特に限定されるものではなく、例えばパイル、ツイル、ストライプ、カノコ、リップル、ジャガード組織等を採用することができる。中でも好ましいのはパイル組織であり、表面凸部はパイルにより形成されていることが好ましく、パイルとしてはループパイルが特に好ましい。
なお、上記において言及した図1〜図3は、表面凸部の分布形態を例示した、あくまでも模式的な図であり、実際の外観を必ずしも忠実に表したものではない。すなわち、上記したドット状、ストライプ状及び格子状とは、表面を上方から眺めたときに、凸部がそのような模様を呈しているように見えるということである。したがって、例えばパイルによるドット状の凸部が形成されているという場合、その凸部が幾何学的に厳密な意味で点であることを要するわけではなく、例えばパイルのひとつひとつがそれぞれ独立した凸部を形成していればよい。また、当業者であれば、図1中にドットとして表された凸部1のひとつひとつがパイルにより形成されているような外観をイメージできるはずである。
表面の凸部がパイルで形成されている場合、そのパイル密度すなわち単位面積あたりのパイルの個数としては、20個/cm2以上が好ましく、さらには30〜100個/cm2程度が好ましく、それによりドライ感の特に良好な表面とすることができる。
また、表面において凸部が占める見かけの面積比としては、概ね10〜90%が好ましく、30〜70%がより好ましい。この見かけの面積比は、表面の平面拡大写真を撮影して、その写真から編物の一区画に存在する凸部に対応する面積を求め、当該一区画に対応する平面の面積で除することにより算出することができる。
表面の凸部を形成する際には、上記した疎水性繊維からなる糸条を用いて、凸部を有する編地組織を編成するのであるが、このときの糸条としては、吸水性、ソフト感、ドライ感を向上させる観点から繊維間に空隙を有する糸条が好ましい。そのような糸条を例示すれば、2種類以上の異なる熱収縮性を有するマルチフィラメント糸からなる異収縮混繊糸条や、自己捲縮糸条、仮撚加工糸条、ニットデニット等の捲縮糸条、短繊維からなる紡績糸等が挙げられる。特に好ましく用いられるのは、適度な伸縮性を有し、保温効果のある仮撚捲縮加工糸条である。
一方、本発明の編物の裏面においては、親水性繊維を用いて編地が構成されている。表面側から移動してきた水分を親水性繊維により吸水し保持するためである。親水性繊維としては、一般に親水性繊維として知られている木綿、ウール等の天然繊維や、レーヨン等の半合成繊維を用いることができる。裏面の編地を構成する際には、親水性繊維のみからなる糸条を用いてもよいが、親水性繊維と親水性でない繊維との混紡糸、合撚糸、インタレース混繊糸、カバーリング糸等の複合糸条を用いても差し支えない。
本発明の編物において、裏面の編地を構成するのに用いられる親水性繊維の質量としては、本発明の編物の質量、すなわち本発明の編物を構成するのに使用されている全繊維の質量のうち30%以上を占めることが好ましく、用途にもよるが、40%以上、さらには50%以上を占めることがより好ましい。親水性繊維の占める割合が30%未満では、本発明の編物の吸水性、保水性が不足する傾向にあるので好ましくない。おむつ等の用途には特に高いレベルの吸水性、保水性が求められるので、50%以上が特に好ましく採用される。ただし、親水性繊維の比率が高すぎても、ベトツキを感じるという問題を生じる場合があるので、その上限は80%程度にとどめることが好ましい。
本発明の編物は、上記したような表面と裏面を有して構成されていればよく、その他の構成については特に限定されるものではないが、好ましい態様としては、図4に示すように、表面編地2とこれに対向する裏面編地3と、この両者を連結する連結糸4からなる連結部とを有する立体構造編物である。立体構造編物の組織としては、ダブルニット、トリコット、ダブルラッセル等を採用することができる。特にリバーシブルダブルニットが好ましく、例えば、編物編成時に表地の一部に水溶性ビニロン繊維を使用してパイル状編物を編成し、染色工程等を利用して熱水により水溶性ビニロン繊維を溶解除去することにより、リバーシブルダブルニット組織を有する本発明の吸水保水性編物を得ることができる。
そのような立体構造編物とすることにより、外部から編物表面にもたらされた液体の水分は、連結部の繊維間空隙を利用して、好ましくは毛細管現象により拡散され、親水性繊維を含む裏面編地への移動・吸収を速やかならしめる効果が大となる。また、表裏編地間に連結部が存在することにより、裏面編地に吸水保持された水分が、編地表面に加えられた圧力等によって表面側に逆戻りすることを抑制する効果が大となる。ここで、立体構造編地の連結部を構成する繊維としては、表面のドライ感を向上させる点で、表面編地と同様に疎水性繊維を用いるの好ましい。
さらに、上記したような立体構造編物においては、表面から見て、凸部が存在しない部分においては連結部が露出していることが好ましい。これは、連結部が表面編地によって覆われている場合に比べて、編物内部への水分の拡散が容易になるためである。
また、本発明の編物の表面部や、好ましい態様である立体構造編物における表面編地及び/又は連結部において、毛細管現象により水分の拡散移動を促進するという観点から、それらの部分はマルチフィラメント糸条により編成されていることが好ましく、異繊度のマルチフィラメント糸条により編成されていることがより好ましい。また、同様の観点から、それらの部分に用いる繊維の断面としては異形断面の繊維が好ましい。特に好ましくは、異形異繊度異断面マルチフィラメント糸条を用いることである。
また、毛細管現象により水分の移動拡散を促進するためには、単糸繊度の小さい繊維を用いることも好ましく、具体的には単糸繊度5デシテックス以下の繊維を用いることが好ましい。編物の表面においては、肌触りのソフト感、フィット感の点からも単糸繊度5デシテックス以下を用いることが好ましい。また、連結部に用いる繊維の単糸繊度を、表面部に用いる繊維の単糸繊度以下にして構成すれば、相対的に連結部の方が毛細管現象の効果が大きいという構成を具現でき、これにより表面部から連結部への水分移動をさらに促進できるという利点がある。
したがって、本発明の編物が立体構造編物の場合、表面編地において凸部を形成する疎水性繊維の単糸繊度(FA)と、連結部を構成する疎水性繊維の単糸繊度(FB)とが、下記式(1)を満足して構成されていることが特に好ましい。
Figure 2004353155
本発明の編物の厚さとしては、特に限定されるものではなく、用途において適宜設定すればよいが、表面のドライ感を良好に保つという観点から、表面の凸部の高さは0.5mm以上あることが好ましく、吸水性繊維を含む裏面の層の厚さは編物全体の厚さの50%未満にとどめることが好ましい。また、立体構造編物の場合は、表面編地と連結部の厚さの合計が編物全体の厚さの50%以上を占めるように構成することが好ましい。
本発明にいう吸水保水性編物とは、単に水分を吸収するという吸水性だけでなく、吸収した水分を保持することのできる編物という意味である。すなわち、本発明の編物は、単に多くの水分を吸収するという吸水性だけでなく、一旦編物に浸透して裏面側に吸収された水分が、容易には表面に滲み出してこないという保水性に優れている編物である。従来の通常の編物においては、たとえ吸水性に優れていて多量の水分を吸収しても、その水分を保持する保水性が劣っていれば、編地に身体等による圧力がかかると水分が編物の表面に逆戻りしてしまい、表面が濡れてドライ感が損なわれてしまうという問題があった。しかし、本発明の編物は、そのような問題を克服できる吸水保水性を有する編物である。 この吸水保水性は、次のような方法で評価できる。
(吸水保水性の評価方法)
編物からタテ25cm×ヨコ20cmの大きさに裁断したものを試料として準備する。試料の質量(m1)を測定する。別途、濾紙(東洋濾紙株式会社製、ADVANTEC No.2)を試料と同じ大きさに裁断したもの2枚を用意し、その2枚の合計質量(M2)を測定する。編物表面を上にしてステンレス製バット上においた試料の中央部に、保水率100%に相当する、試料と同じ質量(m)の蒸留水をシリンジより滴下する。5分間放置後、上記した2枚の濾紙を試料の上に覆うように重ねて置き、その上から試料全体に1.96kPaの圧力がかかるように圧縮荷重を3秒間加えることにより、加圧により編物表面に逆戻りした水分を濾紙に吸水させ、吸水した濾紙2枚の合計質量(m3)を測定する。以上のようにして測定された値m1、m2、m3から、下記式(2)により逆戻り水分率(GS)を求め、これを吸水保水性の指標とする。
Figure 2004353155
本発明者らの知見によれば、好ましい逆戻り水分率(GS)は30%以下、より好ましくは20%以下であり、これにより実用上十分な吸水保水性能が具現される。
本発明の編物を使用する際において、特に裏面側から外部への水分の移動を防ぐ必要がある場合には、裏面側に防水層として遮水性のフィルムやシートを積層したり、別途、主として疎水性繊維で構成された織編物を積層してもよい。また、本発明の編物を2枚用意して、裏面同士を合わせて積層してもよい。そこで、本発明の編物の裏面側に防水層が積層されてなる本発明の吸水保水性積層シートについて次に述べる。
本発明の吸水保水性積層シート(以下、単に「本発明の積層シート」ということがある)は、上記したような本発明の編物の裏面側に防水層が積層されてなるものであり、本発明の編物の表面が人体の肌面に触れる側の面となるような態様で使用される。本発明の積層シートは、このような構成により、上記した本発明の編物の有する優れた吸水保水性、快適なドライ感に加えて、編物表面から吸水され裏面側に保水された水分が本発明の積層シートの外部に漏れ出すことが防水層により防がれる。したがって、本発明の積層シートがおむつ、トイレトレーニングパンツ、失禁用パンツや失禁用シーツ等に使用された場合には、他の衣料や寝具が濡れることや、バスマットに使用された場合に床が濡れることが防止される。
防水層としては、公知の樹脂フィルムや樹脂皮膜を用いればよく、それらを本発明の編物の裏面側にラミネート又はコーティングすることにより積層することができる。防水層を形成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の樹脂から目的に応じて適宜選択すればよいが、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等が好ましく採用される。
防水層の厚さとしては、3〜60μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。また、防水層の目付けとしては、3〜100g/m2が好ましく、5〜30g/m2がより好ましい。なお、防水層としては、本発明の編物の裏面に直接積層すればよいが、必要に応じて本発明の編物と防水層との間に他の布帛やシート類を介在させても差し支えない。また、本発明の積層シートの外観や手触りの向上、あるいは防水層の保護を目的として、防水層の外側にさらに他の布帛やフィルム、シート類が積層されていてもよい。
本発明の積層シートがおむつ、トイレトレーニングパンツ、失禁用パンツや失禁用シーツ等に使用される場合において、防水層としては、ムレを防止するために透湿性樹脂フィルムや透湿性樹脂皮膜等からなる防水透湿層が好ましい。また、リネン用の製品に使用される場合において、防水層としては、80℃以上の工業洗濯に耐えうる耐熱性の樹脂フィルムや樹脂皮膜からなるものが好ましい。耐熱性の樹脂フィルムや樹脂皮膜としては、耐熱性ウレタン系樹脂からなるものが好ましく、例えばポリカーボネート系ウレタン樹脂からなるフィルムや皮膜が挙げられる。
また、防水層の耐水圧としては、本発明の積層シートに人体の体重等による負荷がかかったときに圧迫された水が外部に漏れ出さない程度の耐水圧を備えていることが好ましく、具体的には20kPa以上が好ましい。
本発明の積層シートの吸水保水性としては、次のような方法で評価できる。
(積層シートの吸水保水性の評価方法)
積層シートからタテ25cm×ヨコ20cmの大きさに裁断したものを試料として準備する。試料の質量(M1)を測定する。別途、濾紙(東洋濾紙株式会社製、ADVANTEC No.2)を試料と同じ大きさに裁断したもの2枚を用意し、その2枚の合計質量(M2)を測定する。編物表面を上にしてステンレス製バット上に置いた試料の中央部に、試料の質量(M)に相当する質量の蒸留水をシリンジより滴下する。5分間放置後、上記した2枚の濾紙を試料の上に覆うように重ねて置き、その上から試料全体に1.96kPaの圧力がかかるように圧縮荷重を3秒間加えることにより、加圧により編物表面に逆戻りした水分を濾紙に吸水させ、吸水した濾紙2枚の合計質量(M3)を測定する。以上のようにして測定された値M1、M2、M3から、下記式(3)により逆戻り水分率(GS)を求め、これを吸水保水性の指標とする。
Figure 2004353155
本発明者らの知見によれば、本発明の積層シートに実用上十分な吸水保水性能が具現される好ましい逆戻り水分率(GS)は30%以下、より好ましくは20%以下である。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例に記載の編物及び積層シートの特性は、次にように評価したものである。
1.逆戻り水分率(GS)
上記した吸水保水性の評価方法により求めたものであるが、1つの編物もしくは積層シートあたり3点の試料について行ない、その平均値を採用した。また、圧縮荷重を加える際には、空気圧駆動式のプレス試験機(大阪アサヒ社製、盤面サイズ30×30cm、ストローク長13.5cm)を使用して常温にて行なった。
2.ドライ感
編物もしくは積層シートからタテ25cm×ヨコ20cmの大きさに裁断したものを試料として準備した。編物表面を上にして机上に置いた試料の中央部に、試料中の編物の質量に相当する量の蒸留水をシリンジより滴下した。5分間放置後、滴下した箇所を中心に手のひらでやや強めに押さえてみて、濡れを感じるかどうかという官能試験により評価した。試験は10人のパネラーにより行ない、下記の基準で評価して、最も人数の多かった評価結果を採用した。
(評価基準)
◎:濡れを感じず、水分が手に全くつかない。
○:濡れは感じないが、水分が僅かに手につくのが目視できる。
△:濡れを感じ、かなりの水分が手につくのが目視できる。
×:軽く触れるだけで手に水分がつき、押さえるとベトベトする。
実施例1
立体構造編物を得るため、表面編地にはポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、330デシテックス/96フィラメント)と水溶性ビニロン繊維(株式会社ニチビ製、30デシテックス/9フィラメント)を、連結部には異繊度異形断面ポリエステル加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、「ルミエース(商標名)」、73デシテックス/44フィラメント)を、編地裏面には綿コーマ糸30番手を使用した。これらの糸を用いて、33”*22Gの丸編機(福原精機製、LPJ-H型)により、図5に示す編成組織にて、表面編地、裏面編地及び連結部からなる立体構造編物を製編した。この編物に対し、サーキュラー染色試験機(日阪製作所製、CUT-T-S型)にて、界面活性剤(日華化学株式会社製、サンモールFL)を1g/リットルの濃度で使用して、浴比1:25で80℃、30分間のリラックス精練を行った。この段階で水溶性ビニロン繊維は溶解除去されていた。次いで、上記と同じサーキュラー染色試験機にて、苛性ソーダと過酸化水素水(35%)とをそれぞれ1g/リットル及び5g/リットルの割合で使用して、浴比1:25で80℃、30分間のサラシ処理を行った。さらに、上記と同じサーキュラー染色試験機にて、表面編地及び連結部のポリエステル繊維の熱収縮を完全に行う目的で130℃、30分間の熱水処理を行った後、仕上げセットを行い、本発明の吸水保水性編物を得た。この吸水保水性編物は、表面にドット状で略均一に分布した凸部としてのパイルを36個/cm2の密度で有しており、親水性繊維(綿)の含有率は編物全体の75.6質量%であった。また、表面のパイル高さは2.3mmであった。
実施例2
編物表面組織にはポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、330デシテックス/96フィラメント)を、編物裏面組織には綿コーマ糸30番手を使用し、30”*20Gの丸編機(福原精機製、XL−PL2型、)を用いて、図6に示すパイル編成組織にて編物を製編した。この編物に対し、実施例1と同様にしてリラックス精練、サラシ処理、熱水処理及び仕上げセットを行い、本発明の吸水保水性編物を得た。この吸水保水性編物は、表面にドット状で略均一に分布した凸部としてのパイルを22個/cm2の密度で有しており、親水性繊維(綿)の含有率は編物全体の34.2%であった。また、表面のパイル高さは1.1mmであった。
比較例1
実施例1とは異なる33”*14Gの丸編機(福原精機製、V−8E型、)を用いる他は、実施例1と同様にして比較用の編物を得た。この編物においては、表面のパイル密度は18個/cm2、パイル高さは1.7mmであり、親水性繊維(綿)の含有率は36.8%であった。
比較例2
裏面編地を編成するために給糸する糸の半分を、綿コーマ糸30番手からポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、165デシテックス/48フィラメント)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の編物を得た。この編物においては、表面のパイル密度は38個/cm2、パイル高さは2.3mmであり、親水性繊維(綿)の含有率は17.3%であった。
以上の実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた編物について、特性を評価した結果を下記表1に示す。
Figure 2004353155
表1から分かるように、実施例1及び2の本発明の編物は、逆戻り水分率が低く吸水保水性に優れており、表面の快適なドライ感を実現するものであった。これに対して比較例1については、実施例1のものに比して凸部の個数を少なくした結果、逆戻り水分率が30%を超え、表面のドライ感に劣るものであった。また、比較例2については、親水性繊維の含有率が低かったために、保水性に劣るものとなり、逆戻り水分率が30%を超え、表面のドライ感に劣るものであった。
実施例3
編物表面組織にはポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、167デシテックス/48フィラメント)を、編物裏面組織には綿コーマ糸30番手を使用し、30”*24Gの丸編機(福原精機製、FL−2型)を用いて、図6に示すパイル編成組織にて編物を製編した。この編物に対し、サーキュラー染色試験機(日阪製作所製、CUT-T-S型)にて、界面活性剤(日華化学株式会社製、サンモールFL)を1g/リットルの濃度で使用して、浴比1:25で80℃、30分間のリラックス精練を行った。次に、上記と同じサーキュラー染色試験機にて、苛性ソーダを1g/リットルの割合で、過酸化水素水(35%)を5g/リットルの割合でそれぞれ使用して、浴比1:25で80℃、30分間のサラシ処理を行った。さらに、上記と同じサーキュラー染色試験機にて、表面編地及び連結部のポリエステル繊維の熱収縮を完全に行う目的で130℃、30分間の熱水処理を行った後、仕上げセットを施して、本発明の編物を得た。
別途、離型紙(リンテック株式会社製、EV130TPO)の離型面に、コンマコータを用いて、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(セイコー化成株式会社製、「ラックスキン(商品名)U−390」、固形分20%)を、塗布量50g/m2で塗布した後、100℃で2分間乾燥させることにより、透湿防水性樹脂被膜を離型紙上に形成した。さらに、上記の樹脂皮膜上に、25メッシュ、深度250μmのドット状(ドットの幅0.7mm、ドット間隔0.35mmの塗布パターンを有するグラビアロールを用いて、下記表2に示す組成のポリウレタン系接着剤組成物(固形分36%)をドット状に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。
このようにして接着剤を付与した樹脂皮膜上に上記で得られた本発明の編物を重ねて30kPaの圧力を印加した後に巻取った。そして、40℃で3日間エージングした後に、離型紙を剥離させることにより、編物と樹脂皮膜とを積層させた本発明の積層シートを得た。この積層シートは、編物の表面にドット状で略均一に分布した凸部としてのパイル(高さ1.2mm)を88個/cm2の密度で有しており、編物に占める親水性繊維(綿)の含有率は36.8質量%であった。
Figure 2004353155
実施例4
上記実施例1で得られた本発明の編物の裏面に、実施例3と同様にして樹脂皮膜を積層させることにより、実施例4の積層シートを得た。この積層シートは、編物の表面にドット状で略均一に分布した凸部としてのパイル(高さ2.3mm)を36個/cm2の密度で有しており、編物に占める親水性繊維(綿)の割合は75.6質量%であった。
比較例3
編物表面組織にはポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、167デシテックス/48フィラメント)を、編物裏面組織には綿コーマ糸30番手を使用し、33”*22Gの丸編機(福原精機製、LPJ-H型)を用いて、図7に示す編成組織にて編物を製編した。それ以降の工程は実施例3と同様にして、比較例3の積層シートを得た。なお、比較例3で用いた編物は表面が平坦で凸部を有しない編物であり、編物に占める親水性繊維(綿)の割合は61.6質量%であった。
比較例4
編物表面組織においてポリエステル仮撚加工糸に代えて綿コーマ糸30番手を使用し、編物裏面組織において綿コーマ糸30番手の代わりにポリエステル仮撚加工糸(ユニチカファイバー株式会社製、167デシテックス/48フィラメント)を使用する以外は、実施例3と同様にして、比較例4の積層シートを得た。この積層シートでは、編物の表面にドット状で略均一に分布した凸部としてのパイル(高さ2.1mm)を74個/cm2の密度で有しており、編物に占める親水性繊維(綿)の割合は60.2質量%であった。
実施例3〜4及び比較例3〜4で得られた積層シートの評価結果を下記表3に示す。
Figure 2004353155
表3の結果からわかるように、実施例3及び4で得られた本発明の積層シートについては、吸水保水性に優れており、表面の快適なドライ感を実現するものであった。また、裏面側には樹脂皮膜が積層されているので、水分が漏れ出て机上を濡らすこともなかった。これに対して比較例3については編物表面に凸部を有していなかったために、表面に濡れを感じる快適性に劣るものとなった。また、比較例4については、親水性繊維の含有率は高いものの、編物表面の凸部が親水性繊維からなるものであったため、吸水された水分が編表面に保持されて、表面に濡れを感じる快適性に劣るものとなった。
本発明の編物について、表面部の構造の一例を模式的に表わした平面図である。 本発明の編物について、表面部の構造の一例を模式的に表わした平面図である。 本発明の編物について、表面部の構造の一例を模式的に表わした平面図である。 本発明の編物の好ましい断面構造の例を模式的に表わした断面図である。 編物の編成組織を例示する組織図である。 編物の編成組織を例示する組織図である。 編物の編成組織を例示する組織図である。 本発明の積層シートの好ましい断面構造の例を模式的に表わした断面図である。
符号の説明
1 表面凸部
2 表面編地
3 裏面編地
4 連結糸
5 防水層
CY シリンダー針
DY ダイヤル針
a 表面組織に用いるポリエステル糸条
b 連結部に用いる糸条
c 裏面組織に用いる糸条
d 表面編地を編成する際に用いる水溶性ビニロン糸条
e 表面組織に用いる糸条

Claims (8)

  1. 編物において、表面には疎水性繊維からなる凸部が形成され、裏面は親水性繊維を用いて構成されていることを特徴とする吸水保水性編物。
  2. 裏面を構成する親水性繊維の質量が、編物全体の質量の30%以上を占めることを特徴とする吸水保水性編物。
  3. 本願明細書に記載の方法により測定される逆戻り水分率(GS)が30%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水保水性編物。
  4. 表面の凸部がパイルにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水保水性編物。
  5. 表面のパイル密度が20個/cm2以上であることを特徴とする請求項4に記載の吸水保水性編物。
  6. 表面編地と、これに対向する裏面編地と、両編地間を連結する連結部とからなる立体構造編物であって、連結部が疎水性繊維からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水保水性編物。
  7. 表面編地において凸部を形成する疎水性繊維の単糸繊度(FA)と、連結部を構成する疎水性繊維の単糸繊度(FB)とが、下記式(1)を満足して構成されていることを特徴とする請求項6に記載の吸水保水性編物。
    Figure 2004353155
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の吸水保水性編物の裏面側に、防水層が積層されてなることを特徴とする吸水保水性積層シート。
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