JP2004188052A - 敷布類 - Google Patents
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Abstract
【課題】水分吸収量に優れ、使用時の逆漏れ感も少なく、再利用性に優れた敷布類を提供すること。
【解決手段】構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層は、厚さ方向において主たる構成繊維の繊度が異なるとともに前記吸水保水層と接している面の方が相対的に細い繊維で構成されており、該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることを特徴とする敷布類。
【選択図】図1
【解決手段】構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層は、厚さ方向において主たる構成繊維の繊度が異なるとともに前記吸水保水層と接している面の方が相対的に細い繊維で構成されており、該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることを特徴とする敷布類。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、敷布類に関し、さらに詳しくは、病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に使用されるシーツや失禁対応用の部分的なシーツ、キッチンやふろ上がりの足拭きマット、さらには体の不自由な方がふろ上がりなどに体を拭く間に横たわせることのできる吸水マットなどの敷布類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より寝具に用いるシーツは家庭用のみならず病院や介護施設などでも木綿や木綿とポリエステルの混紡品などの布帛状のものが主流を占めている。
【0003】
しかし、病院などで患者がベッドマットなどの寝具上で夜間などに失禁した場合、下着や寝衣を透して寝具上に漏れさらにマット自体に浸透しさらにはベッド自体から床へしたたり落ちるといったトラブルが発生する場合がある。
【0004】
そのような際は、ベッドそのものに尿などの体液が浸透することを防止するため通常のシーツの代わりにフィルムや防水布など不浸透性のシートをシーツとして用いたり、放尿する付近のみに敷いたりして対処している。
【0005】
ただし、そうすると尿が不浸透性のシート上に残るため尿は逆に寝衣や掛け布団に吸収され、汚れを増大させるのみならず、患者自体が不快感きわまりない状態となる。
【0006】
このような課題を解消するため、快適な吸水性能を有する吸水シーツが提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかしながら、該特許文献1に記載されている吸水シーツは透水性の表層シートの表面側に起毛処理することにより起毛された繊維が使用者の体重圧によって起毛が押しつけられることにより、液体が表層シートの生地面を透過して速やかに吸水層である中間シートに吸水されることを期待しているが、体重圧がかからない部分では尿などの液体は逆に吸収されにくく起毛面を拡散することとなるため、その間に掛け布団などに吸収されやすくなり、その汚れた掛け布団から濡れ感が伝わってきて患者の不快感を軽減させるに到っていないのが現状である。
【0008】
また、シーツは睡眠という安らぎが得られることが重要であり、使い捨ての紙のような素材ではその上で横になるとかさかさとした音が発生したり不快な感触があって好ましくない。さらに吸水剤としてアクリル系高分子吸収体を用いたりすると使用後の廃棄などで大きな社会問題等となる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−204609号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来の問題を解決し、水分吸収量に優れ、使用時の逆漏れ感も少なく、ベッドマットを汚すことなく快適に使用でき、かつ洗濯による再利用性にも優れた新規な敷布類を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層の吸水速度が5秒以下であり、該透水層を構成する主たる繊維の平均繊度が該吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太く、かつ該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることを特徴とする敷布類である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる敷布類は、構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層の吸水速度が5秒以下のものである。そして、該透水層を構成する主たる繊維の平均繊度が該吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太く、かつ該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることが重要である。
【0014】
本発明において、「布帛状の透水層と吸水保水層」の「布帛状」とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、透水層、吸水保水層のいずれもこれら形態を呈するものであれば使用できる。
【0015】
中でも、吸水保水層としては、不織布状のものが、厚さ、空隙量などを適宜に変更できる上、価格的にも有利であるので好ましい。
【0016】
本発明の敷布の技術思想は、尿などの液体が敷布表面にこぼれたとき、該液体を素早く吸収しかつ吸収した液体を保持し、かつ体重圧などがかかっても逆戻りしにくい機能を付与することにあり、そのためには本発明の透水層は吸水速度が5秒以下である必要がある。吸水速度が5秒を超える場合は、実用上水分の吸収が遅すぎるため敷布上に水分が多量に存在するため、掛け布団などを激しく汚すこととなり問題となる。好ましくは2秒以下であり、失禁した使用者は下着は濡らすもののシーツに漏れた水分から逆に汚す程度が減少し、不快感を大幅に軽減できる。
【0017】
また、本発明の透水層を構成する主たる繊維の平均繊度は、吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太い必要がある。吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太くすることにより透水層は付着した水分を吸水保水層に素早く移動せしめ、吸水保水層表面に達した水分はその吸水保水層内に吸水かつ保水せしめかつ吸水保水層内で周囲に素早く拡散する機能を有することとなる。すなわち、透水層と吸水保水層は、繊維と空隙により構成されるが、表層から内部に向い構成する繊維の太さに勾配を持たせることにより、毛細管現象を利用し水分を移動させやすくするためと考えられる。
【0018】
特に、吸水保水層を構成する主たる繊維は、平均繊度が0.01〜2dtexである必要がある。吸水性能と保水性能を向上させるために単繊維の繊度を細くして構成本数を上げると繊維の表面積を多くなりかつ繊維間に生じる空間が小さくする必要があるためである。ただし、0.01dtex未満の場合は、水分の保持性が良くなりすぎ洗濯後の乾燥性能が悪くなりやすい。2dtexを超えた場合は、太すぎるため繊維相互に生じる空間が大きくなり、水分の保持性が悪くなると同時に使用中水分の移動が起こりやすくなり、水分のしみ出しが生じやすくなる。
【0019】
本発明にかかる透水層と吸水保水層は、主として該層を構成する繊維は合成繊維である必要がある。天然繊維の場合は繊維自身が吸水するため繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また、繰り返し使用する際に洗濯による劣化、特に高温でかつ汚れを効率的に落とすために用いるアルカリ性の強い洗剤に対する劣化が早いためである。ここで、「主として該層を構成する」とは、該層中、少なくとも60重量%を成すものであることを言い、「主として該層を構成する繊維は合成繊維である」とは、該層を構成する繊維の60重量%以上が合成繊維であることを意味するものである。
【0020】
合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのいずれも使用することができるが、高温での工業洗濯およびその後に行われる乾燥など過酷な条件下での洗濯に対する耐久性を考慮するとポリエステル繊維やナイロン繊維が好ましい。
【0021】
本発明の敷布類は透水層と吸水保水層の間あるいは吸水保水層の一部に流水層を有することが好ましい。
【0022】
本発明において流水層とは、主に透水層から厚さ方向に透過されてきた液体を、その厚さ方向だけでなく周囲へ、すなわち平面方向に拡散させる機能を有する層をいう。このような流水層が存在することにより透水層から透過されてきた液体あるいは吸水保水層内に吸収されていた液体が流水層で周囲に拡散しやすくなり、使用者の体重圧などの外圧を受けた際、流水層を介して水分が周囲に逃げ透水層から表面に逆戻りしにくくなるという優れた機能を発揮することができるようになる。
【0023】
流水層の構造は、上述の機能を付与することができる構造で有れば、織物、編み物、不織布などどのような構造であってもよく、たとえばダブルラッセル構造に編まれたいわゆる段ボールニットなどでもよいが、コスト面などから不織布であることが好ましい。
【0024】
流水層を構成する主な繊維の平均繊度は2dtex以上であることが好ましい。好ましくは4dtex以上でこれらの効果をより発揮する。
【0025】
本発明の敷布類の流水層の厚さがトータルで0.5mmから10mmであることが好ましい。流水層としての効果を得るためには0.5mm以上であることが好ましく、10mmを超えると水分の周囲への拡散性が落ちる傾向にあるからである。
【0026】
本発明の敷布類において吸水保水層が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じて積層層数の調整ができるので、容易に所望とする吸水量への対応ができるために好ましい。また流水層も複数層で構成されていると同様に所望の流水性能を設計することができるので好ましい。また吸水保水層や流水層を複数層を重ね合わせることにより、屈曲変形に対し層間でのずれが起こるためか一般に曲げやすくなり、吸水保水層あるいは流水層として柔らかくなるという効果が期待できる。積層される層数は、特に限定されるものではないが、細かく対応できるように2層から20層などが好ましい。また、これら複数層で構成された吸水材は、その一部が、縫製されていてもニードルパンチなどで接合されていてもよい。
【0027】
図1は、本発明に係る敷布類に用いられる好ましい一例構造を示す概略モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものである。透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3が構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されて構成されていることを示す。
【0028】
さらに好ましくは、少なくとも吸水保水層が2層あり、その間に流水層が積層されていることでこのような構成にすることにより流水層を流れる水分が外部に漏れにくくなる。
【0029】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層は、その面積が100cm2 あたりの空隙量が5cc以上を有するものであることが好ましい。空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示される。すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど良い。
【0030】
100cm2 あたりの空隙量が5cc未満の場合、水分を吸水し保水する繊維空隙量が少なく十分な吸水性能が得られず、透水層を介して尿が逆戻りしやすく使用者は濡れ感などを感じやすく不都合である。
【0031】
単位面積当たりの保水量は多い方がよいが、尿は吸水保水層で広がることから通常は、最大空隙量は500ccまであれば効果としては十分である。上限は特に限定されるものではないが、これ以上になれば、空間が多すぎて毛細管現象がなくなり、また押さえたときに圧縮量が大きいため含んだ水分を押し出すこととなり好ましくない場合がある。
【0032】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層の厚さはトータルで0.5mmから20mmであることが好ましい。吸水保水層の厚さは、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよく、トータルで0.5mm未満では空隙量が少なく従って吸水量が少なく使用することはできないことがある。また20mmを越えるものでは空隙量は大きく吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。最も好ましいのは1から10mmである。
【0033】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層は、その圧縮率が30%以下のものであることが好ましい。30%を超える場合では吸水保水層が水分を含んだときに指などで押さえると凹んで空隙量が少なくなり、その分、水分がしみ出ることとなり、シーツの使用目的にそぐわないものとなる場合がある。また、全く圧縮しないものは硬すぎて使用上問題となる場合があり、好ましくは圧縮率2%以上のものである。
【0034】
上記の如くに吸水保水層の圧縮率を2〜30%とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で不織布構造をとった場合、密度を100〜300kg/m3 にすることにより達成することができる。
【0035】
本発明の敷布類の吸水保水層の構造は、不織布状、織物状、編物状等のいずれでもよいが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でも良い。
【0036】
吸水保水層で用いる繊維のうちで、1dtex以下の細い繊度の繊維を得る手段としては通常の紡糸の他、メルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液で溶出して得られる繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得られる繊維などいずれのものでも使用できる。
【0037】
好ましくは非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維の短繊維ウエブ状にし、高圧水流により分割する手段で不織布を製造する方法によるものであり、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は加工上、特にカード機の通過性に問題が出やすいので好ましくないことがある。
【0038】
また、長繊維不織布であるメルトブローは細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンは複雑な技術が必要となり、また洗濯耐久性の点で好ましくないことがある。さらに海島複合繊維による海溶出方式は細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくないことがある。かかる水流分割複合繊維はできるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、通常は50kg/cm2 以上は必要であり、50kg/cm2 未満では低水圧で分割することができる繊維が必要となるが、そのような繊維では繊維をカード機で開繊シート状にする際などの原綿作成時の延伸工程等で分割が起こり、製品と成すことはできないことがあるので注意が必要である。最大250kg/cm2 程度で、これ以上は布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0039】
本発明者らの知見によれば、本発明において、吸水保水層を構成する主たる繊維が、複合繊維を出発原料とするものであって、該複合繊維の少なくとも一部が分割されているものであることが好ましく、特に、吸水保水層を構成する繊維のうち、分割された繊維が30%以上(本数比)であるものが、より吸水保水性能を向上させる点およびよりソフトな風合いになる点で好ましい。
【0040】
ここで、本発明に用いられるのに好ましい非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維について説明する。
【0041】
非相溶の2種のポリマとは、水流など外的刺激により分割できるポリマの組み合わせであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエステル系とナイロン系、ポリエステル系とポリオレフィン系、ポリエステル系とポリスチレン系など一般的に分割型複合繊維として用いられているポリマを使用することができる。
【0042】
当然、ポリエステル系のポリマであれば、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類とアルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのジオール化合物から合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルであり、これらの共重合ポリエステルはパラオキシ安息香酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ポリアルキルグリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが添加されていてもよい。
【0043】
また、ナイロン系のポリマであれば、ナイロン−4、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12やポリメタキシレンアジパミド(MXD−6)、ポリアラキシレンデカンアミド(PXD−12)、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)またはこれらのモノマーを構成単位とする共重合ポリアミドでもよい。
【0044】
ポリオレフィン系のポリマであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどでもよい。
【0045】
これらのポリマの中で、より好ましくはポリエステル系ポリマとして5−ナトリウムスルフォイスフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかを用い、ナイロン系ポリマとしてナイロン−6を用いた組み合わせの分割型複合繊維で両ポリマの界面で適度な接着性を有するためか、短繊維状でカードなどでは剥離せずにその後のウオータージェットパンチで剥離するという性能を付与することができる。さらに、ポリエステル系ポリマとポリプロピレンやポリエチレンなどを組み合わせた分割型複合繊維も好ましい。
【0046】
図4、図5、図6は、本発明に係る吸水材に用いられる複合繊維の断面例を示す概略モデル図であり、分割型複合繊維が相溶性のない2種のポリマ1とポリマ2とが配されてなることを示す。なお、複合繊維の形状についてはこれらに限定されるものではなく、適宜のタイプのものを使用可能である。
【0047】
本発明の敷布類は、構成する複合繊維の一部が分割されていることが好ましく、より好ましくは吸水保水層を構成する繊維のうち、分割させた繊維が30%以上(本数比)であることである。このように分割されたことにより構成する合成繊維の繊度が0.01〜2dtexとなり、より吸水性能を向上させるのである。
【0048】
本発明の敷布類の流水層の構造においても、不織布状、織物状、編物状等のいずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でもよい。
【0049】
本発明の敷布類の吸水保水層を構成する繊維の表面には吸水剤が付着していてバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。吸水剤(親水性加工剤)は、吸水性を付与することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは洗濯などに対する耐久性が優れたものである。具体的には、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、あるいはウレタン系などの吸水剤、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの吸水剤、低分子系、高分子系などの吸水剤などであって、たとえば特殊非イオン系のラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)やポリエステル樹脂系のTO−SR−1(高松油脂株式会社製)の吸水剤を繊維表面に付与する。吸水性(バイレック法)は50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0050】
上記の如くに吸水性を50mm以上とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、本発明者らの知見によれば、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で密度が200kg/m3 の不織布構造である場合、構成する繊維に、ポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%以上付着させることにより達成することができる。
【0051】
また、本発明の敷布類の吸水保水層は、工業洗濯10回後のバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。このような敷布はリネン業者などでの洗濯を行うことが多く、吸水性を維持することが肝要であるからである。
【0052】
上記のごとく洗濯後の吸水性を維持する手段としても先に述べたように使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、本発明者らの知見によれば、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で密度が200kg/m3 の不織布構造をとった場合、構成する繊維に、ポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%以上付着させ100度以上で乾燥固着させることにより達成することができる。
【0053】
また、本発明に用いられる吸水保水層は、吸水量(吸水率)が100%以上であることが好ましく、100%未満の場合、十分な吸水性能があるとは言えず好ましくない場合がある。さらに好ましくは250%以上であり、吸水性の優れたシーツとなる。
【0054】
上記の如くに吸水保水層の吸水量(吸水率)を100%以上とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で不織布構造をとった場合、吸水保水層の密度を150kg/m3 で、かつポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1を0.5重量%以上付着せしめることにより達成することができ、更に、吸水量(吸水率)を200%以上とするには、吸水保水層の密度を200kg/m3 で、かつポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を2.0重量%以上を付着せしめることにより達成することができる。
【0055】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層の目付は、100g/m2 以上であることが好ましい。100g/m2 未満の場合、特に排尿量が多い大人用のシーツなどの吸水材として用いる場合、期待する水分保持量を得ることができない場合があり、夜間など長時間着用し使用する際に問題が生じる場合がある。
【0056】
本発明の敷布類に用いられる透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層は、工業洗濯10回後のタテあるいはヨコの収縮率が6%以下であることが好ましい。工業洗濯10回後のタテおよびヨコの収縮率が6%を超える場合には、透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層が大きく変形し繰り返し使用することができなくなるからである。すなわちこの収縮により敷布類で、同時に縫製した各部材の収縮率差により、パッカリングが生じ商品価値を損ねてしまうと同時に漏れ、水分の逆流など実用に耐えない状態となりやすい。
【0057】
上記の如くに工業洗濯10回後のタテあるいはヨコの収縮率を6%以下とするには、例えば、あらかじめ透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層を構成する繊維あるいは透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層そのものの収縮を抑える加工を行っておくことにより達成することができる。すなわち、工業洗濯のような過酷な洗濯条件に耐え、変形することなく、かかる安定した形状を得る手段としては、繊維よりなる透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層をあらかじめ工業洗濯時に与えられる熱履歴より高い温度で収縮させておくことが好ましいものである。
【0058】
本発明の敷布類に用いる透水層の吸水速度は、工業洗濯10回後において5秒以下であることが好ましい。このような敷布類はリネン業者などでの洗濯を行うことが多く、これらの洗濯に対し透水層の吸水性を維持することが肝要であり、商品価値の維持が可能となる。
【0059】
具体的には、吸水層および吸水保水層を布帛形成後、縫製のため所定の形状に裁断後あるいは製品形状とした後のいずれかの段階で工業洗濯時に加わる熱履歴以上の温度を乾熱、湿熱あるいは温水のいずれかの方法で熱処理し収縮させることがある。通常洗濯は、温水中で行うため、この熱処理手段も80℃以上の温水を用いることがもっとも好ましい。処理時間は処理温度差が大きければ洗濯時の高温洗濯時間以下でもよいが、好ましくは同時間以上でより効果がある。
【0060】
かかる処理時の吸水保水層あるいは流水層の状態は、収縮さえすればいかなる状態でもよく、連続的に処理する方法、バッチで処理する方法のいずれでもよい。連続的に処理する場合には、幅方向の収縮を一定の割合以上に入らないように制限状態で熱処理しても、自由に入るように幅方向には拘束をあたえず無張力で処理してもよい。好ましくは収縮率をできるだけ低下させるため無張力で処理する方がよい。さらに好ましくは、タテ、ヨコとも自由に収縮させることが好ましくタテ、ヨコとも6%以下の収縮率にさせやすい。
【0061】
具体的な熱処理設備としては、温水処理では液流染色機、乾熱処理ではサンフォライズ防縮装置など染色で用いる装置を使用することができるが、より無張力の状態で熱処理を行うことができるというメリットからワッシャー型温水処理機やタンブラー型乾熱処理機などが好ましく使用できる。
【0062】
本発明の吸水保水層の密度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.07〜0.5g/cm3 の範囲である。0.07g/cm3 未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない場合がある。また、0.5g/cm3 以上は逆に繊維占有空間が多く、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない場合がある。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/cm3 である。
【0063】
本発明の敷布類に用いる繊維の断面は、中実、中空、T型、扁平、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型などいかなる断面のでも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなるものが好ましく、T型、H型、π型、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など複雑な断面は水分の保持が良く特に好ましい。図3は、それら繊維の断面形状の1例を示した概略モデル図である。
【0064】
本発明の敷布類を構成する繊維には、抗菌性能が付与されていることが好ましい。たとえば、大腸菌とか黄色ぶどう球菌の繁殖を押さえるため、有機物、無機物などの抗菌性能のあるものはいかなるものを用いることができ、銀ゼオライト系、銅など金属系、ピグアナイト、第4アンモニウム塩、カーバリニド、両性界面活性剤、アルコール、エステル、スルファミド、カルボン酸、ピリジン、ニトリル、ポリマー、フェノール、金属塩、アミノ酸などの有機のものも有効である。かかる抗菌剤を付与する手段としては、特に限定されるものではないが、合成繊維への練り込み、後加工時にバインダーとともに繊維表面に付着させる方法が好ましい。抗菌性能を評価する方法としては、繊維製品新機能評価協議会で定められている統一試験方法がある。
【0065】
なお、本発明の敷布類に用いる合成繊維のポリマーには、本発明の効果が損なわれない範囲で、つや消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、あるいは親水剤などの適宜の添加剤が添加されてもよい。
【0066】
本発明の透水層に用いる素材は、特に限定されるものではなく、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの化学繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維などいずれでもよいが、好ましくは天然繊維やレーヨンのような繊維は繊維自体に吸水性があるため洗濯後の乾燥に時間がかかり、また濡れ感も残りやすいため、ポリエステルやポリプロピレンのような合成繊維の方がよい。
【0067】
本発明に用いる透水層は吸水速度が5秒以下である必要があるが、これを達成するためには、布帛の設計すなわち布帛の構造、通気量、耐久性のある布帛を用いることや使用する繊維のポリマ種、繊度、断面形状を特定化し、これらを組み合わせることにより、効果を高めることができる。さらに透水層の吸収速度をより早くするために、吸水剤を付与することが好ましい。吸水剤を付与し吸水速度を向上させることにより、より一層布帛表面にドライ感を付与することができるのである。
【0068】
吸水剤は、水の表面張力を少なくすることができるものであればいずれでもよく、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系などが挙げられる。一般的に表面布帛と同系統の吸水剤を用いるとより効果がでると言われている。付着量は固形分で0.1%以上付与すると効果がある。
【0069】
特に、透水層の吸水速度を5秒以下とするには、たとえばポリエステルフィラメント2.3dtex使いのニットの素材でポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%付与することにより達成できる。
【0070】
本発明に用いられる透水層は、通気量が多い方がよく、好ましくは100cc/cm2 /sec以上である。100cc/cm2 /sec未満の場合、水分の透過を阻害したり、じめじめして肌を荒れさせる場合がある。通気量は多い方が良いが、あまりに多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れ不快感となるので、5000cc/cm2 /sec程度までがよい。上記の如くに、通気量を100cc/cm2 /sec以上とするには、独立した布帛Aの組織、目付などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、トリコット組織の場合、目付を200g/m2 以下にすることにより達成することができる。
【0071】
また、本発明の透水層は、濡れ不快感をさらに少なくするため、皮膚に接触する表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることが好ましい。たとえば表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われるからである。
【0072】
透水層の性能を向上させる手段としては、以上使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには透水層の組織や表面処理剤の種類、処理条件などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、55dtexで12フィラメントと55dtexで46フィラメントの丸断面のポリエステル繊維で表面に後者、裏面に後者がくるようにトリコット組織の編物を作成した場合、高松油脂(株)製のポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1を2重量%前後付着させることなどにより達成することができる。
【0073】
また、本発明の敷布類に用いる透水層は表面が起毛されていてもよい。起毛されることにより、ソフトな風合いとなりよりサラッと感が出るからである。
【0074】
また、本発明の敷布類に用いる透水層の吸水性能は、前述した工業洗濯を10回行った後においても維持をしているのが好ましい。このためは洗濯耐久性の優れた吸水剤を用いることが肝要である。
【0075】
なお、透水層は吸水保水層の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていてもよい。
【0076】
本発明の敷布類の裏面層側には、防水を目的として液不透過性のある独立した布帛が位置して付設されていることが好ましい。
【0077】
この液不透過性のある独立した布帛は、織物、編み物、不織布、フィルム等のうちいずれの形態でも使用でき、かつこれらの積層体であってもよい。すなわち、織物、編み物、不織布だけでは、液不透過性能を満足することが困難な場合があるため、これらの素材にゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系のフイルム状の素材を張り合わせたり、あるいはゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系の樹脂、好ましくは発泡樹脂をコーティングしたりすることにより達成できる。また、これらの構成にすることにより撥水性も付与することができる。
【0078】
その際、排尿を受け止めることによる蒸れを改善するため、独立した布帛の透湿度が4000g/m2 ・24hr以上であることが好ましい。
【0079】
さらにその際、膜としての耐久性が必要となり、独立した布帛の耐水圧は5.0kPa以上であることが好ましい。5.0kPa未満のときには漏れを生ずる場合がある。
【0080】
これらの特性を達成する技術としては、具体的には、上述したとおりであるが、織物、編み物、不織布などの基布に、たとえば「エントラント」(東レ(株)、登録商標)に代表される多孔質ポリウレタンをコーティングしたり「ゴアテックス」(ゴアテックス社商標)に代表される多孔質フッ素フィルムなどを接着させたりすることを用いることができるものである。
【0081】
図2は、本発明に係る敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略断面図であり、透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3と流水層5が構成されていることを示す。
【0082】
本発明の敷布類において、透水層と吸水保水層さらに液不透過性のある独立した布帛は部分的に結合されていることが好ましく、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0083】
その際、吸水保水層は寝具の上で全面に配置されていても、使用者が失禁する周辺のみ配した形状であってもよい。
【0084】
かかる縫製を行う際の縫い糸も水分を吸収しやすいものであれば、パラフィン系、シリコーン系やフッ素系など撥水剤で撥水加工されていることが好ましい。
【0085】
本発明の敷布類は病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に使用されるシーツや失禁対応用の部分的なシーツとして用いることができる。
【0086】
また、本発明の敷布類はキッチンやふろ上がりの足拭きマットに用いることができる。特に公衆浴場や温泉場など多くの人が足拭きマットとして使用する場合、水分が内部に吸収され表面はサラッとしているため気分良く足を拭くことができよい。
【0087】
さらには体の不自由な方がふろ上がりに介護者がバスタオルなどで体を拭く間に横たわらせておく吸水マットに用いるとビニール布などの防水布上で拭く場合と異なりひやっとした感じのもなく体に付着した水分を速やかにふき取ることができる。
【0088】
さらに犬や猫などペット用の防水マットなどとして用いることもできる。
【0089】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0090】
なお、本発明に用いる評価方法について説明する。ここで説明しない評価方法については基本的にJISで定められている方法に準ずる。
(1)通気量:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法による。
(2)透湿度:
JIS−Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」による。
(3)分割後の単繊維の繊度:
繊維の断面のSEM写真を撮影し断面面積から算出した。
(4)吸水性:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法(バイレック法)による。
(5)透湿度:
JIS−L−1099「繊維製品の透湿度試験方法」のA−1法による。
(6)耐水圧:
JIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」による。
(7)吸水保水層の空隙量:
吸水保水層の布帛100cm2 あたり空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0091】
布帛100cm2 あたりの空隙量=(布帛100cm2 あたりの容積)−(100cm2 の布帛を構成する繊維の容積)
布帛100cm2 あたりの容積布帛は、吸水保水層に用いる布帛を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、初めに皺などの余分な空隙を除くため、10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0092】
なお、吸水材が、複数層重ね合わされていて構成されて一つの吸水材を構成している場合でも、その一つの吸水材として測定に供するものである。すなわち、その場合には、その一つの吸水材を一つの単位として、それらを重ねて上述の厚さ5cm以上として上述の測定をするものである。
【0093】
また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
(8)吸水保水層の圧縮率:
吸水保水層の圧縮率の測定は、吸水保水層に用いる布帛を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0094】
すなわち、この圧縮率という概念は、該布帛が本来持つ、圧縮されることが可能な量を表しているものである。
【0095】
圧縮率(%)=(T1−T2)×100/T1
(9)吸水保水層の厚さ:
JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法による。
(10)工業洗濯収縮率:
JIS−L−1042「織物の収縮率試験方法」のF−2法(中間ワッシャ法)に準じて、水温80℃(一定)とし、水1000ccに対し、洗剤2g、過炭酸ナトリウム1.5g、過酸化水素水3ccを入れ、その中にサンプルを入れ30分間処理した。その後、40℃の温水により、すすぎを10分間実施した後、遠心脱水(遠心脱水機として家庭用洗濯機の遠心脱水機を使用し、1分間)を行い、130〜150℃のフラットベットプレス上で乾燥させた。これを10回繰り返した。
【0096】
予めサンプルのタテとヨコそれぞれ3カ所に300mmの長さの印を付け、工業洗濯後の長さlを測定し、
収縮率(%)=(300−l)/300×100
でタテとヨコをそれぞれ算出した。
【0097】
本発明では、洗濯処理後付けた印がにじんでいる場合、中心を肉眼で判断して、収縮後の(工業洗濯後の)長さを測定した。
(11)布帛の吸水速度:
JIS−L−1907「繊維製品の吸水性試験方法」の滴下法による。
【0098】
なお、工業洗濯10回後の布帛の吸水速度は、(10)で述べた洗濯/乾燥を実施した後の布帛を用いて評価した吸水速度である。
(12)布帛の分割度合い:
対象となる布帛断面のSEM写真(×500〜800)をとり、その中で1つの繊維の切断面において少なくとも1つ剥離している繊維Aの本数と完全に剥離していない繊維Bの本数を測定し、
分割割合(%)=繊維Aの本数/(繊維Aの本数+繊維Bの本数)×100
で算出する。
実施例1
ポリブチレンテレフタレートとナイロン6のポリマからなり、図5に示すような断面を有する複合繊維でポリマ6はポリブチレンタレフタレートであり、ポリマ7はナイロン6でポリマ7の部分は6領域に分割されて配している。この複合繊維は、複合状態で1.8dtexで平均繊維長は38mmであった。
【0099】
この複合繊維をカード機にかけ開繊してウエブを作成し、かかるウエブを複数枚積層した上で、ウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表・裏・表の計3回水流を通過させ不織布を作成した。
【0100】
この不織布に特殊非イオン系親水性加工剤であるラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)とポリエステル樹脂系親水性加工剤であるTO−SR−1(高松油脂株式会社製)を含む水溶液で乾燥時の付着量が不織布に対してそれぞれ2重量%になるように付着させた。
【0101】
その後、連続乾燥機で乾熱100℃で5分間乾燥した。
【0102】
この不織布は目付が200g/m2、厚さが0.7mmでこの不織布の断面をSEM写真で観察したところ、複合繊維がポリブチレンテレフタテートとナイロン6の界面から分割されていた。分割割合は62%で分割後の単繊維の繊度はナイロン6部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.6dtexであった。この不織布の100cm2あたりの空隙量は5.4ccで、吸水量は300%、圧縮率は8%バイレック法による吸水性は127mmであった。この不織布を2枚重ねて幅90cm、長さ90cmに裁断し吸水保水層用として用いた。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は10.8ccであった。
【0103】
透水層用の布帛として、ポリエステル糸55dtex、12フィラメント糸と55dtex、46フィラメント糸の2種類の糸を使い、トリコット編み機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編み立てを行った編み物を用意した。この編み物にはポリエステル系の吸水材を重量比にして0.5%になるように付与した。この編物の通気量を測定したところ670cc/cm2 /secで、初期の吸水速度は1sec以下であった。工業洗濯10回後の吸水速度は、2secであった。
【0104】
液不透過性の独立した布帛として、厚さ10μmのポリウレタンフィルムをポリエステル糸を用いた天竺の生地に接着させた防水布帛を用意した。
【0105】
透水層用の布帛と液不透過性の独立した布帛を幅は120cm、長さ90cmに裁断して、この間に吸水保水用の不織布を積層し、まず透水層と不織布をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手に、フッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って縫製しさらに透水層と液不透過性の独立した布帛を先に用いた縫い糸を用いて四周辺を縫製し一体化して本発明のシーツを作成した。その際、透水層は肌に触れる側(表面)に繊度の太い繊維の層がくるようにした。
【0106】
該シーツをベッドマットの上に、患者が失禁した場合尿がたれる付近に不織布が当たるように敷いたところ、患者が失禁したとき、尿がシーツに吸収されマットからしたたり落ちることなく、かつパンツは交換したもののシーツ自体の表面はサラッとしており、安眠することができた。
比較例1
木綿の布帛でできたシーツを用いて実施例1と同様の使用を行った。失禁した場合、尿がベッドマットそのものに吸収されてしまった。
比較例2
吸水材として実施例1で用いた防水布をシーツと用いた。
【0107】
その上に寝たところ詰めたい感じがし、さらに失禁した場合、ベッド自体に尿が付着することはなかったが、シーツに上に尿が溜まるため寝衣を汚すにとどまらず、掛け布団も汚れ不快きわまる状態となった。
実施例2
繊度が1.5dtex、繊維長が38mmで断面形状がH型をしたポリエチレンテレフタレート繊維をカード機により開繊してシートを作成し、かかるシートを複数枚積層した上でウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表裏表の計3回水流を通過させウオータージェットパンチ不織布を作成した。
【0108】
かかる不織布にポリエステル樹脂系親水加工剤メイカフィニッシュSRM−65(明成化学製)を含む水溶液で乾燥時の付着量が不織布に対して2重量%になるように付着させた後、実施例1と同様に熱処理した。
【0109】
この不織布の目付は100g/m2 、厚さは0.4mmで100cm2 あたりの空隙量は3.2ccで、吸水量は280%で、圧縮率は8%、バイレック法による吸水性は150cm以上であった。この不織布を3枚重ねて幅150cm、長さ250cmに裁断して吸水保水層として用いた。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は9.6ccであった。
【0110】
透水層と液不透過性の独立した布帛として、実施例1で用いたトリコット編み地と防水布帛を用い、いずれも幅150cm、長さ250cmに裁断して縫製して本発明のシーツを作成した。
【0111】
実施例1と同様に患者が失禁した場合尿がたれる付近に不織布が当たるように敷いたところ、患者が失禁したとき、尿がシーツに吸収されマットからしたたり落ちることなく、かつパンツは交換したもののシーツ自体の表面はサラッとしており、安眠することができた。
実施例3
実施例1で作成した不織布を5枚重ね合わせて吸水保水層とした。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は9.6ccであった。
【0112】
透水層用の布帛として、ポリエステル糸110dtexで24フィラメント、84dtexで24フィラメント、84dtexで36フィラメントの3種類の糸を使い、丸編み機にて主に前者が裏面、中者が中層、後者が表面に来るよう編み立てを行いかつ表面を起毛した編物を用意した。この編み物にはポリエステル樹脂系の吸水剤TO−SR−1(高松油脂株式会社製)を重量比にして0.5%になるように付与した。この編物の初期の吸水速度は1sec以下、工業洗濯10回後の吸水速度は1.0秒であった。
【0113】
この布帛と実施例1で用いた不織布5枚を布帛の起毛面が表面になるように重ねて、横60cm、長さ100cmに裁断/縫製して足拭きマットを作成した。
【0114】
この足拭きマットを風呂上がりに使用したところ、足を介してしたたり落ちる水滴を素早く吸収し、マット表面に水分が残っておらずかつ荷重がかかっても逆戻りがしないため、次に風呂から上がってきた人も足裏に水分を感じずサラッと感のあり心地よく使用することができた。
【0115】
【発明の効果】
請求項1にかかる本発明の敷布類によれば、優れた吸収性を示し、かつ使用時の濡れ感も少ない敷布類を得ることができる。また洗濯においても寸法安定性に優れているため繰り返し使用の可能な経済的な敷布類が提供される。
【0116】
さらに本発明の敷布類を病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に用いる失禁シーツに用いれば失禁しても快適なベッドライフを送ることができる。
【0117】
また本発明の敷布類はキッチンやふろ上がりの足拭きマット、特に公衆浴場や温泉場など多くの人が足拭きマットとして使用する場合、水分が内部に吸収され表面はサラッとしているため気分良く足を拭くことができる。
【0118】
さらには体の不自由な方がふろ上がりに介護者がバスタオルなどで体を拭く間に横たわせて置く吸水マットに用いるとビニール布などの防水布上で拭く場合と異なりひやっとした感じもなく、体に付着した水分を速やかにふき取ることができる。
【0119】
そのほか、家庭内の水回りやインテリア、寝装寝具などにおいても使用することができる。さらに犬や猫などペット用の防水マットなどとして用いることもできる。
【0120】
また、請求項2にかかる本発明の敷布類によれば、特に、透水層から透過されてきた液体あるいは吸水保水層内に吸収されていた液体が流水層で周囲に拡散しやすくなり、使用者の体重圧などの外圧を受けた際、流水層を介して水分が周囲に逃げ透水層から表面に逆戻りしにくくなるという優れた機能を発揮することができるようになる。
【0121】
また、請求項3にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能の点で優れたものが実現できる。
【0122】
また、請求項4にかかる本発明の敷布類によれば、特に指などで押さえたとしても水分がしみ出ることのない点で優れた敷布類が実現できる。
【0123】
また、請求項5にかかる本発明の敷布類によれば、特に複合繊維を出発原料としてその一部が少なくとも分割されているために、極細繊維による繊維空間を形成することが可能となり吸水保水層の吸水保水性能の向上の点で優れたものが実現できる。
【0124】
また、請求項6にかかる本発明の敷布類によれば、特に上記請求項5の効果において、特に分割された極細繊維の比率が増えるため、吸水保水性能の向上も当然のことながらソフトな風合いを付与できる点でより優れたものが実現できる。
【0125】
また、請求項7にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能を有する敷布類を実現できる。
【0126】
また、請求項8にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも吸水性能を維持できるという点で優れたものが実現できる。
【0127】
また、請求項9にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能を有する敷布類を実現できる。
【0128】
また、請求項10にかかる本発明の敷布類によれば、特にシーツとして使用した場合吸水保水量が大きいというの点で夜間など長時間使用する際に優れたものが実現できる。
【0129】
また、請求項11にかかる本発明の敷布類によれば、特に吸収した水分を素早く周囲に拡散させる点で優れたものが実現できる。
【0130】
また、請求項12にかかる本発明の敷布類によれば、さらに吸収した水分を効率よく拡散させる機能を付与する点で優れた敷布類が実現できる。
【0131】
また、請求項13にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも形態安定性に優れるという点で優れたものが実現できる。
【0132】
また、請求項14にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも吸水性能が維持でき繰り返し使用できる点で優れたものが実現できる。
【0133】
また、請求項15にかかる本発明の敷布類によれば、特に水分がベッドに漏れることがなくなるという点で優れたものが実現できる。
【0134】
また、請求項16にかかる本発明の敷布類によれば、特に高耐久性のある耐蒸れ効果のある点で優れたものが実現できる。
【0135】
また、請求項17にかかる本発明の敷布類によれば、特に排尿を受け止めても蒸れることの少ない点で優れた敷布類が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものである。透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3が構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されていることを示す。
【図2】図2は、本発明に係わる敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略断面図であり、透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3と流水層5が構成されていることを示す。
【図3】図3は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図4】図4は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図5】図5は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図6】図6は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層に用いることのできる繊維の断面形状の1例を示す概略モデル図である。
【符号の説明】
1:透水層
2:液不透過性の独立した布帛
3:吸水保水層
4:縫い糸
5:流水層
6:ポリマ
7:ポリマ
【発明の属する技術分野】
本発明は、敷布類に関し、さらに詳しくは、病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に使用されるシーツや失禁対応用の部分的なシーツ、キッチンやふろ上がりの足拭きマット、さらには体の不自由な方がふろ上がりなどに体を拭く間に横たわせることのできる吸水マットなどの敷布類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より寝具に用いるシーツは家庭用のみならず病院や介護施設などでも木綿や木綿とポリエステルの混紡品などの布帛状のものが主流を占めている。
【0003】
しかし、病院などで患者がベッドマットなどの寝具上で夜間などに失禁した場合、下着や寝衣を透して寝具上に漏れさらにマット自体に浸透しさらにはベッド自体から床へしたたり落ちるといったトラブルが発生する場合がある。
【0004】
そのような際は、ベッドそのものに尿などの体液が浸透することを防止するため通常のシーツの代わりにフィルムや防水布など不浸透性のシートをシーツとして用いたり、放尿する付近のみに敷いたりして対処している。
【0005】
ただし、そうすると尿が不浸透性のシート上に残るため尿は逆に寝衣や掛け布団に吸収され、汚れを増大させるのみならず、患者自体が不快感きわまりない状態となる。
【0006】
このような課題を解消するため、快適な吸水性能を有する吸水シーツが提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかしながら、該特許文献1に記載されている吸水シーツは透水性の表層シートの表面側に起毛処理することにより起毛された繊維が使用者の体重圧によって起毛が押しつけられることにより、液体が表層シートの生地面を透過して速やかに吸水層である中間シートに吸水されることを期待しているが、体重圧がかからない部分では尿などの液体は逆に吸収されにくく起毛面を拡散することとなるため、その間に掛け布団などに吸収されやすくなり、その汚れた掛け布団から濡れ感が伝わってきて患者の不快感を軽減させるに到っていないのが現状である。
【0008】
また、シーツは睡眠という安らぎが得られることが重要であり、使い捨ての紙のような素材ではその上で横になるとかさかさとした音が発生したり不快な感触があって好ましくない。さらに吸水剤としてアクリル系高分子吸収体を用いたりすると使用後の廃棄などで大きな社会問題等となる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−204609号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来の問題を解決し、水分吸収量に優れ、使用時の逆漏れ感も少なく、ベッドマットを汚すことなく快適に使用でき、かつ洗濯による再利用性にも優れた新規な敷布類を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層の吸水速度が5秒以下であり、該透水層を構成する主たる繊維の平均繊度が該吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太く、かつ該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることを特徴とする敷布類である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる敷布類は、構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層の吸水速度が5秒以下のものである。そして、該透水層を構成する主たる繊維の平均繊度が該吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太く、かつ該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることが重要である。
【0014】
本発明において、「布帛状の透水層と吸水保水層」の「布帛状」とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、透水層、吸水保水層のいずれもこれら形態を呈するものであれば使用できる。
【0015】
中でも、吸水保水層としては、不織布状のものが、厚さ、空隙量などを適宜に変更できる上、価格的にも有利であるので好ましい。
【0016】
本発明の敷布の技術思想は、尿などの液体が敷布表面にこぼれたとき、該液体を素早く吸収しかつ吸収した液体を保持し、かつ体重圧などがかかっても逆戻りしにくい機能を付与することにあり、そのためには本発明の透水層は吸水速度が5秒以下である必要がある。吸水速度が5秒を超える場合は、実用上水分の吸収が遅すぎるため敷布上に水分が多量に存在するため、掛け布団などを激しく汚すこととなり問題となる。好ましくは2秒以下であり、失禁した使用者は下着は濡らすもののシーツに漏れた水分から逆に汚す程度が減少し、不快感を大幅に軽減できる。
【0017】
また、本発明の透水層を構成する主たる繊維の平均繊度は、吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太い必要がある。吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太くすることにより透水層は付着した水分を吸水保水層に素早く移動せしめ、吸水保水層表面に達した水分はその吸水保水層内に吸水かつ保水せしめかつ吸水保水層内で周囲に素早く拡散する機能を有することとなる。すなわち、透水層と吸水保水層は、繊維と空隙により構成されるが、表層から内部に向い構成する繊維の太さに勾配を持たせることにより、毛細管現象を利用し水分を移動させやすくするためと考えられる。
【0018】
特に、吸水保水層を構成する主たる繊維は、平均繊度が0.01〜2dtexである必要がある。吸水性能と保水性能を向上させるために単繊維の繊度を細くして構成本数を上げると繊維の表面積を多くなりかつ繊維間に生じる空間が小さくする必要があるためである。ただし、0.01dtex未満の場合は、水分の保持性が良くなりすぎ洗濯後の乾燥性能が悪くなりやすい。2dtexを超えた場合は、太すぎるため繊維相互に生じる空間が大きくなり、水分の保持性が悪くなると同時に使用中水分の移動が起こりやすくなり、水分のしみ出しが生じやすくなる。
【0019】
本発明にかかる透水層と吸水保水層は、主として該層を構成する繊維は合成繊維である必要がある。天然繊維の場合は繊維自身が吸水するため繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また、繰り返し使用する際に洗濯による劣化、特に高温でかつ汚れを効率的に落とすために用いるアルカリ性の強い洗剤に対する劣化が早いためである。ここで、「主として該層を構成する」とは、該層中、少なくとも60重量%を成すものであることを言い、「主として該層を構成する繊維は合成繊維である」とは、該層を構成する繊維の60重量%以上が合成繊維であることを意味するものである。
【0020】
合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのいずれも使用することができるが、高温での工業洗濯およびその後に行われる乾燥など過酷な条件下での洗濯に対する耐久性を考慮するとポリエステル繊維やナイロン繊維が好ましい。
【0021】
本発明の敷布類は透水層と吸水保水層の間あるいは吸水保水層の一部に流水層を有することが好ましい。
【0022】
本発明において流水層とは、主に透水層から厚さ方向に透過されてきた液体を、その厚さ方向だけでなく周囲へ、すなわち平面方向に拡散させる機能を有する層をいう。このような流水層が存在することにより透水層から透過されてきた液体あるいは吸水保水層内に吸収されていた液体が流水層で周囲に拡散しやすくなり、使用者の体重圧などの外圧を受けた際、流水層を介して水分が周囲に逃げ透水層から表面に逆戻りしにくくなるという優れた機能を発揮することができるようになる。
【0023】
流水層の構造は、上述の機能を付与することができる構造で有れば、織物、編み物、不織布などどのような構造であってもよく、たとえばダブルラッセル構造に編まれたいわゆる段ボールニットなどでもよいが、コスト面などから不織布であることが好ましい。
【0024】
流水層を構成する主な繊維の平均繊度は2dtex以上であることが好ましい。好ましくは4dtex以上でこれらの効果をより発揮する。
【0025】
本発明の敷布類の流水層の厚さがトータルで0.5mmから10mmであることが好ましい。流水層としての効果を得るためには0.5mm以上であることが好ましく、10mmを超えると水分の周囲への拡散性が落ちる傾向にあるからである。
【0026】
本発明の敷布類において吸水保水層が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じて積層層数の調整ができるので、容易に所望とする吸水量への対応ができるために好ましい。また流水層も複数層で構成されていると同様に所望の流水性能を設計することができるので好ましい。また吸水保水層や流水層を複数層を重ね合わせることにより、屈曲変形に対し層間でのずれが起こるためか一般に曲げやすくなり、吸水保水層あるいは流水層として柔らかくなるという効果が期待できる。積層される層数は、特に限定されるものではないが、細かく対応できるように2層から20層などが好ましい。また、これら複数層で構成された吸水材は、その一部が、縫製されていてもニードルパンチなどで接合されていてもよい。
【0027】
図1は、本発明に係る敷布類に用いられる好ましい一例構造を示す概略モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものである。透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3が構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されて構成されていることを示す。
【0028】
さらに好ましくは、少なくとも吸水保水層が2層あり、その間に流水層が積層されていることでこのような構成にすることにより流水層を流れる水分が外部に漏れにくくなる。
【0029】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層は、その面積が100cm2 あたりの空隙量が5cc以上を有するものであることが好ましい。空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示される。すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど良い。
【0030】
100cm2 あたりの空隙量が5cc未満の場合、水分を吸水し保水する繊維空隙量が少なく十分な吸水性能が得られず、透水層を介して尿が逆戻りしやすく使用者は濡れ感などを感じやすく不都合である。
【0031】
単位面積当たりの保水量は多い方がよいが、尿は吸水保水層で広がることから通常は、最大空隙量は500ccまであれば効果としては十分である。上限は特に限定されるものではないが、これ以上になれば、空間が多すぎて毛細管現象がなくなり、また押さえたときに圧縮量が大きいため含んだ水分を押し出すこととなり好ましくない場合がある。
【0032】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層の厚さはトータルで0.5mmから20mmであることが好ましい。吸水保水層の厚さは、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよく、トータルで0.5mm未満では空隙量が少なく従って吸水量が少なく使用することはできないことがある。また20mmを越えるものでは空隙量は大きく吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。最も好ましいのは1から10mmである。
【0033】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層は、その圧縮率が30%以下のものであることが好ましい。30%を超える場合では吸水保水層が水分を含んだときに指などで押さえると凹んで空隙量が少なくなり、その分、水分がしみ出ることとなり、シーツの使用目的にそぐわないものとなる場合がある。また、全く圧縮しないものは硬すぎて使用上問題となる場合があり、好ましくは圧縮率2%以上のものである。
【0034】
上記の如くに吸水保水層の圧縮率を2〜30%とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で不織布構造をとった場合、密度を100〜300kg/m3 にすることにより達成することができる。
【0035】
本発明の敷布類の吸水保水層の構造は、不織布状、織物状、編物状等のいずれでもよいが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でも良い。
【0036】
吸水保水層で用いる繊維のうちで、1dtex以下の細い繊度の繊維を得る手段としては通常の紡糸の他、メルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液で溶出して得られる繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得られる繊維などいずれのものでも使用できる。
【0037】
好ましくは非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維の短繊維ウエブ状にし、高圧水流により分割する手段で不織布を製造する方法によるものであり、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は加工上、特にカード機の通過性に問題が出やすいので好ましくないことがある。
【0038】
また、長繊維不織布であるメルトブローは細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンは複雑な技術が必要となり、また洗濯耐久性の点で好ましくないことがある。さらに海島複合繊維による海溶出方式は細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくないことがある。かかる水流分割複合繊維はできるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、通常は50kg/cm2 以上は必要であり、50kg/cm2 未満では低水圧で分割することができる繊維が必要となるが、そのような繊維では繊維をカード機で開繊シート状にする際などの原綿作成時の延伸工程等で分割が起こり、製品と成すことはできないことがあるので注意が必要である。最大250kg/cm2 程度で、これ以上は布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0039】
本発明者らの知見によれば、本発明において、吸水保水層を構成する主たる繊維が、複合繊維を出発原料とするものであって、該複合繊維の少なくとも一部が分割されているものであることが好ましく、特に、吸水保水層を構成する繊維のうち、分割された繊維が30%以上(本数比)であるものが、より吸水保水性能を向上させる点およびよりソフトな風合いになる点で好ましい。
【0040】
ここで、本発明に用いられるのに好ましい非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維について説明する。
【0041】
非相溶の2種のポリマとは、水流など外的刺激により分割できるポリマの組み合わせであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエステル系とナイロン系、ポリエステル系とポリオレフィン系、ポリエステル系とポリスチレン系など一般的に分割型複合繊維として用いられているポリマを使用することができる。
【0042】
当然、ポリエステル系のポリマであれば、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類とアルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのジオール化合物から合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルであり、これらの共重合ポリエステルはパラオキシ安息香酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ポリアルキルグリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが添加されていてもよい。
【0043】
また、ナイロン系のポリマであれば、ナイロン−4、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12やポリメタキシレンアジパミド(MXD−6)、ポリアラキシレンデカンアミド(PXD−12)、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)またはこれらのモノマーを構成単位とする共重合ポリアミドでもよい。
【0044】
ポリオレフィン系のポリマであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどでもよい。
【0045】
これらのポリマの中で、より好ましくはポリエステル系ポリマとして5−ナトリウムスルフォイスフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかを用い、ナイロン系ポリマとしてナイロン−6を用いた組み合わせの分割型複合繊維で両ポリマの界面で適度な接着性を有するためか、短繊維状でカードなどでは剥離せずにその後のウオータージェットパンチで剥離するという性能を付与することができる。さらに、ポリエステル系ポリマとポリプロピレンやポリエチレンなどを組み合わせた分割型複合繊維も好ましい。
【0046】
図4、図5、図6は、本発明に係る吸水材に用いられる複合繊維の断面例を示す概略モデル図であり、分割型複合繊維が相溶性のない2種のポリマ1とポリマ2とが配されてなることを示す。なお、複合繊維の形状についてはこれらに限定されるものではなく、適宜のタイプのものを使用可能である。
【0047】
本発明の敷布類は、構成する複合繊維の一部が分割されていることが好ましく、より好ましくは吸水保水層を構成する繊維のうち、分割させた繊維が30%以上(本数比)であることである。このように分割されたことにより構成する合成繊維の繊度が0.01〜2dtexとなり、より吸水性能を向上させるのである。
【0048】
本発明の敷布類の流水層の構造においても、不織布状、織物状、編物状等のいずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには不織布状のものが好ましい。不織布状として得るための繊維の結合はニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの方法でもよい。
【0049】
本発明の敷布類の吸水保水層を構成する繊維の表面には吸水剤が付着していてバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。吸水剤(親水性加工剤)は、吸水性を付与することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは洗濯などに対する耐久性が優れたものである。具体的には、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、あるいはウレタン系などの吸水剤、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの吸水剤、低分子系、高分子系などの吸水剤などであって、たとえば特殊非イオン系のラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)やポリエステル樹脂系のTO−SR−1(高松油脂株式会社製)の吸水剤を繊維表面に付与する。吸水性(バイレック法)は50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0050】
上記の如くに吸水性を50mm以上とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、本発明者らの知見によれば、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で密度が200kg/m3 の不織布構造である場合、構成する繊維に、ポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%以上付着させることにより達成することができる。
【0051】
また、本発明の敷布類の吸水保水層は、工業洗濯10回後のバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。このような敷布はリネン業者などでの洗濯を行うことが多く、吸水性を維持することが肝要であるからである。
【0052】
上記のごとく洗濯後の吸水性を維持する手段としても先に述べたように使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、本発明者らの知見によれば、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で密度が200kg/m3 の不織布構造をとった場合、構成する繊維に、ポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%以上付着させ100度以上で乾燥固着させることにより達成することができる。
【0053】
また、本発明に用いられる吸水保水層は、吸水量(吸水率)が100%以上であることが好ましく、100%未満の場合、十分な吸水性能があるとは言えず好ましくない場合がある。さらに好ましくは250%以上であり、吸水性の優れたシーツとなる。
【0054】
上記の如くに吸水保水層の吸水量(吸水率)を100%以上とするには、使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには吸水保水層の構造、密度などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、1dtexで丸断面のポリエステル繊維で不織布構造をとった場合、吸水保水層の密度を150kg/m3 で、かつポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1を0.5重量%以上付着せしめることにより達成することができ、更に、吸水量(吸水率)を200%以上とするには、吸水保水層の密度を200kg/m3 で、かつポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を2.0重量%以上を付着せしめることにより達成することができる。
【0055】
本発明の敷布類に用いる吸水保水層の目付は、100g/m2 以上であることが好ましい。100g/m2 未満の場合、特に排尿量が多い大人用のシーツなどの吸水材として用いる場合、期待する水分保持量を得ることができない場合があり、夜間など長時間着用し使用する際に問題が生じる場合がある。
【0056】
本発明の敷布類に用いられる透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層は、工業洗濯10回後のタテあるいはヨコの収縮率が6%以下であることが好ましい。工業洗濯10回後のタテおよびヨコの収縮率が6%を超える場合には、透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層が大きく変形し繰り返し使用することができなくなるからである。すなわちこの収縮により敷布類で、同時に縫製した各部材の収縮率差により、パッカリングが生じ商品価値を損ねてしまうと同時に漏れ、水分の逆流など実用に耐えない状態となりやすい。
【0057】
上記の如くに工業洗濯10回後のタテあるいはヨコの収縮率を6%以下とするには、例えば、あらかじめ透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層を構成する繊維あるいは透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層そのものの収縮を抑える加工を行っておくことにより達成することができる。すなわち、工業洗濯のような過酷な洗濯条件に耐え、変形することなく、かかる安定した形状を得る手段としては、繊維よりなる透水層あるいは吸水保水層あるいは流水層をあらかじめ工業洗濯時に与えられる熱履歴より高い温度で収縮させておくことが好ましいものである。
【0058】
本発明の敷布類に用いる透水層の吸水速度は、工業洗濯10回後において5秒以下であることが好ましい。このような敷布類はリネン業者などでの洗濯を行うことが多く、これらの洗濯に対し透水層の吸水性を維持することが肝要であり、商品価値の維持が可能となる。
【0059】
具体的には、吸水層および吸水保水層を布帛形成後、縫製のため所定の形状に裁断後あるいは製品形状とした後のいずれかの段階で工業洗濯時に加わる熱履歴以上の温度を乾熱、湿熱あるいは温水のいずれかの方法で熱処理し収縮させることがある。通常洗濯は、温水中で行うため、この熱処理手段も80℃以上の温水を用いることがもっとも好ましい。処理時間は処理温度差が大きければ洗濯時の高温洗濯時間以下でもよいが、好ましくは同時間以上でより効果がある。
【0060】
かかる処理時の吸水保水層あるいは流水層の状態は、収縮さえすればいかなる状態でもよく、連続的に処理する方法、バッチで処理する方法のいずれでもよい。連続的に処理する場合には、幅方向の収縮を一定の割合以上に入らないように制限状態で熱処理しても、自由に入るように幅方向には拘束をあたえず無張力で処理してもよい。好ましくは収縮率をできるだけ低下させるため無張力で処理する方がよい。さらに好ましくは、タテ、ヨコとも自由に収縮させることが好ましくタテ、ヨコとも6%以下の収縮率にさせやすい。
【0061】
具体的な熱処理設備としては、温水処理では液流染色機、乾熱処理ではサンフォライズ防縮装置など染色で用いる装置を使用することができるが、より無張力の状態で熱処理を行うことができるというメリットからワッシャー型温水処理機やタンブラー型乾熱処理機などが好ましく使用できる。
【0062】
本発明の吸水保水層の密度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.07〜0.5g/cm3 の範囲である。0.07g/cm3 未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない場合がある。また、0.5g/cm3 以上は逆に繊維占有空間が多く、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない場合がある。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/cm3 である。
【0063】
本発明の敷布類に用いる繊維の断面は、中実、中空、T型、扁平、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型などいかなる断面のでも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなるものが好ましく、T型、H型、π型、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など複雑な断面は水分の保持が良く特に好ましい。図3は、それら繊維の断面形状の1例を示した概略モデル図である。
【0064】
本発明の敷布類を構成する繊維には、抗菌性能が付与されていることが好ましい。たとえば、大腸菌とか黄色ぶどう球菌の繁殖を押さえるため、有機物、無機物などの抗菌性能のあるものはいかなるものを用いることができ、銀ゼオライト系、銅など金属系、ピグアナイト、第4アンモニウム塩、カーバリニド、両性界面活性剤、アルコール、エステル、スルファミド、カルボン酸、ピリジン、ニトリル、ポリマー、フェノール、金属塩、アミノ酸などの有機のものも有効である。かかる抗菌剤を付与する手段としては、特に限定されるものではないが、合成繊維への練り込み、後加工時にバインダーとともに繊維表面に付着させる方法が好ましい。抗菌性能を評価する方法としては、繊維製品新機能評価協議会で定められている統一試験方法がある。
【0065】
なお、本発明の敷布類に用いる合成繊維のポリマーには、本発明の効果が損なわれない範囲で、つや消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、あるいは親水剤などの適宜の添加剤が添加されてもよい。
【0066】
本発明の透水層に用いる素材は、特に限定されるものではなく、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの化学繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維などいずれでもよいが、好ましくは天然繊維やレーヨンのような繊維は繊維自体に吸水性があるため洗濯後の乾燥に時間がかかり、また濡れ感も残りやすいため、ポリエステルやポリプロピレンのような合成繊維の方がよい。
【0067】
本発明に用いる透水層は吸水速度が5秒以下である必要があるが、これを達成するためには、布帛の設計すなわち布帛の構造、通気量、耐久性のある布帛を用いることや使用する繊維のポリマ種、繊度、断面形状を特定化し、これらを組み合わせることにより、効果を高めることができる。さらに透水層の吸収速度をより早くするために、吸水剤を付与することが好ましい。吸水剤を付与し吸水速度を向上させることにより、より一層布帛表面にドライ感を付与することができるのである。
【0068】
吸水剤は、水の表面張力を少なくすることができるものであればいずれでもよく、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系などが挙げられる。一般的に表面布帛と同系統の吸水剤を用いるとより効果がでると言われている。付着量は固形分で0.1%以上付与すると効果がある。
【0069】
特に、透水層の吸水速度を5秒以下とするには、たとえばポリエステルフィラメント2.3dtex使いのニットの素材でポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1(高松樹脂株式会社製)を0.5重量%付与することにより達成できる。
【0070】
本発明に用いられる透水層は、通気量が多い方がよく、好ましくは100cc/cm2 /sec以上である。100cc/cm2 /sec未満の場合、水分の透過を阻害したり、じめじめして肌を荒れさせる場合がある。通気量は多い方が良いが、あまりに多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れ不快感となるので、5000cc/cm2 /sec程度までがよい。上記の如くに、通気量を100cc/cm2 /sec以上とするには、独立した布帛Aの組織、目付などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、トリコット組織の場合、目付を200g/m2 以下にすることにより達成することができる。
【0071】
また、本発明の透水層は、濡れ不快感をさらに少なくするため、皮膚に接触する表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることが好ましい。たとえば表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われるからである。
【0072】
透水層の性能を向上させる手段としては、以上使用する繊維の素材種や繊度、断面形状さらには透水層の組織や表面処理剤の種類、処理条件などの組合せ等に応じても変わり、一概に言うことは難しい点もあるが、例えば、55dtexで12フィラメントと55dtexで46フィラメントの丸断面のポリエステル繊維で表面に後者、裏面に後者がくるようにトリコット組織の編物を作成した場合、高松油脂(株)製のポリエステル樹脂系吸水剤TO−SR−1を2重量%前後付着させることなどにより達成することができる。
【0073】
また、本発明の敷布類に用いる透水層は表面が起毛されていてもよい。起毛されることにより、ソフトな風合いとなりよりサラッと感が出るからである。
【0074】
また、本発明の敷布類に用いる透水層の吸水性能は、前述した工業洗濯を10回行った後においても維持をしているのが好ましい。このためは洗濯耐久性の優れた吸水剤を用いることが肝要である。
【0075】
なお、透水層は吸水保水層の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていてもよい。
【0076】
本発明の敷布類の裏面層側には、防水を目的として液不透過性のある独立した布帛が位置して付設されていることが好ましい。
【0077】
この液不透過性のある独立した布帛は、織物、編み物、不織布、フィルム等のうちいずれの形態でも使用でき、かつこれらの積層体であってもよい。すなわち、織物、編み物、不織布だけでは、液不透過性能を満足することが困難な場合があるため、これらの素材にゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系のフイルム状の素材を張り合わせたり、あるいはゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系の樹脂、好ましくは発泡樹脂をコーティングしたりすることにより達成できる。また、これらの構成にすることにより撥水性も付与することができる。
【0078】
その際、排尿を受け止めることによる蒸れを改善するため、独立した布帛の透湿度が4000g/m2 ・24hr以上であることが好ましい。
【0079】
さらにその際、膜としての耐久性が必要となり、独立した布帛の耐水圧は5.0kPa以上であることが好ましい。5.0kPa未満のときには漏れを生ずる場合がある。
【0080】
これらの特性を達成する技術としては、具体的には、上述したとおりであるが、織物、編み物、不織布などの基布に、たとえば「エントラント」(東レ(株)、登録商標)に代表される多孔質ポリウレタンをコーティングしたり「ゴアテックス」(ゴアテックス社商標)に代表される多孔質フッ素フィルムなどを接着させたりすることを用いることができるものである。
【0081】
図2は、本発明に係る敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略断面図であり、透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3と流水層5が構成されていることを示す。
【0082】
本発明の敷布類において、透水層と吸水保水層さらに液不透過性のある独立した布帛は部分的に結合されていることが好ましく、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0083】
その際、吸水保水層は寝具の上で全面に配置されていても、使用者が失禁する周辺のみ配した形状であってもよい。
【0084】
かかる縫製を行う際の縫い糸も水分を吸収しやすいものであれば、パラフィン系、シリコーン系やフッ素系など撥水剤で撥水加工されていることが好ましい。
【0085】
本発明の敷布類は病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に使用されるシーツや失禁対応用の部分的なシーツとして用いることができる。
【0086】
また、本発明の敷布類はキッチンやふろ上がりの足拭きマットに用いることができる。特に公衆浴場や温泉場など多くの人が足拭きマットとして使用する場合、水分が内部に吸収され表面はサラッとしているため気分良く足を拭くことができよい。
【0087】
さらには体の不自由な方がふろ上がりに介護者がバスタオルなどで体を拭く間に横たわらせておく吸水マットに用いるとビニール布などの防水布上で拭く場合と異なりひやっとした感じのもなく体に付着した水分を速やかにふき取ることができる。
【0088】
さらに犬や猫などペット用の防水マットなどとして用いることもできる。
【0089】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0090】
なお、本発明に用いる評価方法について説明する。ここで説明しない評価方法については基本的にJISで定められている方法に準ずる。
(1)通気量:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法による。
(2)透湿度:
JIS−Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」による。
(3)分割後の単繊維の繊度:
繊維の断面のSEM写真を撮影し断面面積から算出した。
(4)吸水性:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法(バイレック法)による。
(5)透湿度:
JIS−L−1099「繊維製品の透湿度試験方法」のA−1法による。
(6)耐水圧:
JIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」による。
(7)吸水保水層の空隙量:
吸水保水層の布帛100cm2 あたり空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0091】
布帛100cm2 あたりの空隙量=(布帛100cm2 あたりの容積)−(100cm2 の布帛を構成する繊維の容積)
布帛100cm2 あたりの容積布帛は、吸水保水層に用いる布帛を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、初めに皺などの余分な空隙を除くため、10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0092】
なお、吸水材が、複数層重ね合わされていて構成されて一つの吸水材を構成している場合でも、その一つの吸水材として測定に供するものである。すなわち、その場合には、その一つの吸水材を一つの単位として、それらを重ねて上述の厚さ5cm以上として上述の測定をするものである。
【0093】
また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
(8)吸水保水層の圧縮率:
吸水保水層の圧縮率の測定は、吸水保水層に用いる布帛を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0094】
すなわち、この圧縮率という概念は、該布帛が本来持つ、圧縮されることが可能な量を表しているものである。
【0095】
圧縮率(%)=(T1−T2)×100/T1
(9)吸水保水層の厚さ:
JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法による。
(10)工業洗濯収縮率:
JIS−L−1042「織物の収縮率試験方法」のF−2法(中間ワッシャ法)に準じて、水温80℃(一定)とし、水1000ccに対し、洗剤2g、過炭酸ナトリウム1.5g、過酸化水素水3ccを入れ、その中にサンプルを入れ30分間処理した。その後、40℃の温水により、すすぎを10分間実施した後、遠心脱水(遠心脱水機として家庭用洗濯機の遠心脱水機を使用し、1分間)を行い、130〜150℃のフラットベットプレス上で乾燥させた。これを10回繰り返した。
【0096】
予めサンプルのタテとヨコそれぞれ3カ所に300mmの長さの印を付け、工業洗濯後の長さlを測定し、
収縮率(%)=(300−l)/300×100
でタテとヨコをそれぞれ算出した。
【0097】
本発明では、洗濯処理後付けた印がにじんでいる場合、中心を肉眼で判断して、収縮後の(工業洗濯後の)長さを測定した。
(11)布帛の吸水速度:
JIS−L−1907「繊維製品の吸水性試験方法」の滴下法による。
【0098】
なお、工業洗濯10回後の布帛の吸水速度は、(10)で述べた洗濯/乾燥を実施した後の布帛を用いて評価した吸水速度である。
(12)布帛の分割度合い:
対象となる布帛断面のSEM写真(×500〜800)をとり、その中で1つの繊維の切断面において少なくとも1つ剥離している繊維Aの本数と完全に剥離していない繊維Bの本数を測定し、
分割割合(%)=繊維Aの本数/(繊維Aの本数+繊維Bの本数)×100
で算出する。
実施例1
ポリブチレンテレフタレートとナイロン6のポリマからなり、図5に示すような断面を有する複合繊維でポリマ6はポリブチレンタレフタレートであり、ポリマ7はナイロン6でポリマ7の部分は6領域に分割されて配している。この複合繊維は、複合状態で1.8dtexで平均繊維長は38mmであった。
【0099】
この複合繊維をカード機にかけ開繊してウエブを作成し、かかるウエブを複数枚積層した上で、ウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表・裏・表の計3回水流を通過させ不織布を作成した。
【0100】
この不織布に特殊非イオン系親水性加工剤であるラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)とポリエステル樹脂系親水性加工剤であるTO−SR−1(高松油脂株式会社製)を含む水溶液で乾燥時の付着量が不織布に対してそれぞれ2重量%になるように付着させた。
【0101】
その後、連続乾燥機で乾熱100℃で5分間乾燥した。
【0102】
この不織布は目付が200g/m2、厚さが0.7mmでこの不織布の断面をSEM写真で観察したところ、複合繊維がポリブチレンテレフタテートとナイロン6の界面から分割されていた。分割割合は62%で分割後の単繊維の繊度はナイロン6部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.6dtexであった。この不織布の100cm2あたりの空隙量は5.4ccで、吸水量は300%、圧縮率は8%バイレック法による吸水性は127mmであった。この不織布を2枚重ねて幅90cm、長さ90cmに裁断し吸水保水層用として用いた。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は10.8ccであった。
【0103】
透水層用の布帛として、ポリエステル糸55dtex、12フィラメント糸と55dtex、46フィラメント糸の2種類の糸を使い、トリコット編み機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編み立てを行った編み物を用意した。この編み物にはポリエステル系の吸水材を重量比にして0.5%になるように付与した。この編物の通気量を測定したところ670cc/cm2 /secで、初期の吸水速度は1sec以下であった。工業洗濯10回後の吸水速度は、2secであった。
【0104】
液不透過性の独立した布帛として、厚さ10μmのポリウレタンフィルムをポリエステル糸を用いた天竺の生地に接着させた防水布帛を用意した。
【0105】
透水層用の布帛と液不透過性の独立した布帛を幅は120cm、長さ90cmに裁断して、この間に吸水保水用の不織布を積層し、まず透水層と不織布をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手に、フッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って縫製しさらに透水層と液不透過性の独立した布帛を先に用いた縫い糸を用いて四周辺を縫製し一体化して本発明のシーツを作成した。その際、透水層は肌に触れる側(表面)に繊度の太い繊維の層がくるようにした。
【0106】
該シーツをベッドマットの上に、患者が失禁した場合尿がたれる付近に不織布が当たるように敷いたところ、患者が失禁したとき、尿がシーツに吸収されマットからしたたり落ちることなく、かつパンツは交換したもののシーツ自体の表面はサラッとしており、安眠することができた。
比較例1
木綿の布帛でできたシーツを用いて実施例1と同様の使用を行った。失禁した場合、尿がベッドマットそのものに吸収されてしまった。
比較例2
吸水材として実施例1で用いた防水布をシーツと用いた。
【0107】
その上に寝たところ詰めたい感じがし、さらに失禁した場合、ベッド自体に尿が付着することはなかったが、シーツに上に尿が溜まるため寝衣を汚すにとどまらず、掛け布団も汚れ不快きわまる状態となった。
実施例2
繊度が1.5dtex、繊維長が38mmで断面形状がH型をしたポリエチレンテレフタレート繊維をカード機により開繊してシートを作成し、かかるシートを複数枚積層した上でウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表裏表の計3回水流を通過させウオータージェットパンチ不織布を作成した。
【0108】
かかる不織布にポリエステル樹脂系親水加工剤メイカフィニッシュSRM−65(明成化学製)を含む水溶液で乾燥時の付着量が不織布に対して2重量%になるように付着させた後、実施例1と同様に熱処理した。
【0109】
この不織布の目付は100g/m2 、厚さは0.4mmで100cm2 あたりの空隙量は3.2ccで、吸水量は280%で、圧縮率は8%、バイレック法による吸水性は150cm以上であった。この不織布を3枚重ねて幅150cm、長さ250cmに裁断して吸水保水層として用いた。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は9.6ccであった。
【0110】
透水層と液不透過性の独立した布帛として、実施例1で用いたトリコット編み地と防水布帛を用い、いずれも幅150cm、長さ250cmに裁断して縫製して本発明のシーツを作成した。
【0111】
実施例1と同様に患者が失禁した場合尿がたれる付近に不織布が当たるように敷いたところ、患者が失禁したとき、尿がシーツに吸収されマットからしたたり落ちることなく、かつパンツは交換したもののシーツ自体の表面はサラッとしており、安眠することができた。
実施例3
実施例1で作成した不織布を5枚重ね合わせて吸水保水層とした。吸水保水層の100cm2あたりの空隙量は9.6ccであった。
【0112】
透水層用の布帛として、ポリエステル糸110dtexで24フィラメント、84dtexで24フィラメント、84dtexで36フィラメントの3種類の糸を使い、丸編み機にて主に前者が裏面、中者が中層、後者が表面に来るよう編み立てを行いかつ表面を起毛した編物を用意した。この編み物にはポリエステル樹脂系の吸水剤TO−SR−1(高松油脂株式会社製)を重量比にして0.5%になるように付与した。この編物の初期の吸水速度は1sec以下、工業洗濯10回後の吸水速度は1.0秒であった。
【0113】
この布帛と実施例1で用いた不織布5枚を布帛の起毛面が表面になるように重ねて、横60cm、長さ100cmに裁断/縫製して足拭きマットを作成した。
【0114】
この足拭きマットを風呂上がりに使用したところ、足を介してしたたり落ちる水滴を素早く吸収し、マット表面に水分が残っておらずかつ荷重がかかっても逆戻りがしないため、次に風呂から上がってきた人も足裏に水分を感じずサラッと感のあり心地よく使用することができた。
【0115】
【発明の効果】
請求項1にかかる本発明の敷布類によれば、優れた吸収性を示し、かつ使用時の濡れ感も少ない敷布類を得ることができる。また洗濯においても寸法安定性に優れているため繰り返し使用の可能な経済的な敷布類が提供される。
【0116】
さらに本発明の敷布類を病院や介護施設あるいは家庭などで寝具に用いる失禁シーツに用いれば失禁しても快適なベッドライフを送ることができる。
【0117】
また本発明の敷布類はキッチンやふろ上がりの足拭きマット、特に公衆浴場や温泉場など多くの人が足拭きマットとして使用する場合、水分が内部に吸収され表面はサラッとしているため気分良く足を拭くことができる。
【0118】
さらには体の不自由な方がふろ上がりに介護者がバスタオルなどで体を拭く間に横たわせて置く吸水マットに用いるとビニール布などの防水布上で拭く場合と異なりひやっとした感じもなく、体に付着した水分を速やかにふき取ることができる。
【0119】
そのほか、家庭内の水回りやインテリア、寝装寝具などにおいても使用することができる。さらに犬や猫などペット用の防水マットなどとして用いることもできる。
【0120】
また、請求項2にかかる本発明の敷布類によれば、特に、透水層から透過されてきた液体あるいは吸水保水層内に吸収されていた液体が流水層で周囲に拡散しやすくなり、使用者の体重圧などの外圧を受けた際、流水層を介して水分が周囲に逃げ透水層から表面に逆戻りしにくくなるという優れた機能を発揮することができるようになる。
【0121】
また、請求項3にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能の点で優れたものが実現できる。
【0122】
また、請求項4にかかる本発明の敷布類によれば、特に指などで押さえたとしても水分がしみ出ることのない点で優れた敷布類が実現できる。
【0123】
また、請求項5にかかる本発明の敷布類によれば、特に複合繊維を出発原料としてその一部が少なくとも分割されているために、極細繊維による繊維空間を形成することが可能となり吸水保水層の吸水保水性能の向上の点で優れたものが実現できる。
【0124】
また、請求項6にかかる本発明の敷布類によれば、特に上記請求項5の効果において、特に分割された極細繊維の比率が増えるため、吸水保水性能の向上も当然のことながらソフトな風合いを付与できる点でより優れたものが実現できる。
【0125】
また、請求項7にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能を有する敷布類を実現できる。
【0126】
また、請求項8にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも吸水性能を維持できるという点で優れたものが実現できる。
【0127】
また、請求項9にかかる本発明の敷布類によれば、特に高い吸水性能を有する敷布類を実現できる。
【0128】
また、請求項10にかかる本発明の敷布類によれば、特にシーツとして使用した場合吸水保水量が大きいというの点で夜間など長時間使用する際に優れたものが実現できる。
【0129】
また、請求項11にかかる本発明の敷布類によれば、特に吸収した水分を素早く周囲に拡散させる点で優れたものが実現できる。
【0130】
また、請求項12にかかる本発明の敷布類によれば、さらに吸収した水分を効率よく拡散させる機能を付与する点で優れた敷布類が実現できる。
【0131】
また、請求項13にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも形態安定性に優れるという点で優れたものが実現できる。
【0132】
また、請求項14にかかる本発明の敷布類によれば、特にリネン業者などで実施している過酷な洗濯にも吸水性能が維持でき繰り返し使用できる点で優れたものが実現できる。
【0133】
また、請求項15にかかる本発明の敷布類によれば、特に水分がベッドに漏れることがなくなるという点で優れたものが実現できる。
【0134】
また、請求項16にかかる本発明の敷布類によれば、特に高耐久性のある耐蒸れ効果のある点で優れたものが実現できる。
【0135】
また、請求項17にかかる本発明の敷布類によれば、特に排尿を受け止めても蒸れることの少ない点で優れた敷布類が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものである。透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3が構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されていることを示す。
【図2】図2は、本発明に係わる敷布類に用いられ得る好ましい一例構造を示す概略断面図であり、透水層1と液不透過性の独立した布帛2の間に吸水保水層3と流水層5が構成されていることを示す。
【図3】図3は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図4】図4は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図5】図5は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層を製造する際に用いることのできる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の1例を示す概略モデル図である。
【図6】図6は、本発明に係る敷布類に用いることのできる吸水保水層に用いることのできる繊維の断面形状の1例を示す概略モデル図である。
【符号の説明】
1:透水層
2:液不透過性の独立した布帛
3:吸水保水層
4:縫い糸
5:流水層
6:ポリマ
7:ポリマ
Claims (17)
- 構成素材として繊維からなる布帛状の透水層と吸水保水層を有する敷布類であって、該透水層の吸水速度が5秒以下であり、該透水層を構成する主たる繊維の平均繊度が該吸水保水層を構成する主たる繊維の平均繊度より太く、かつ該吸水保水層を構成する主たる繊維は平均繊度が0.01〜2dtexである合成繊維であることを特徴とする敷布類。
- 透水層と吸水保水層の間あるいは吸水保水層の層間に流水層を有することを特徴とする請求項1に記載の敷布類。
- 吸水保水層の100cm2 あたりの空隙量が5cc以上であり、該吸水保水層の厚さがトータルで0.5mmから20mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の敷布類。
- 吸水保水層が、圧縮率30%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の敷布類。
- 吸水保水層を構成する主たる繊維が、複合繊維を出発原料とするものであり、前記複合繊維の少なくとも一部が分割されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の敷布類。
- 吸水保水層を構成する繊維のうち、分割された繊維が30%以上であることを特徴とする特許請求項5に記載の敷布類。
- 吸水保水層を構成する繊維の表面に吸水剤が付着されてなるものであり、該吸水保水層のバイレック法による吸水性が50mm以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の敷布類。
- 工業洗濯10回後の吸水保水層のバイレック法による吸水性が、50mm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の敷布類。
- 吸水保水層の吸水率が、100%以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の敷布類。
- 吸水保水層の目付が、100g/m2 以上であることを特徴とする特許請求の範囲1から9のいずれかに記載の敷布類。
- 透水層と吸水保水層の間あるいは吸水保水層の一部に平均繊度が2dtex以上の繊維からなる流水層を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の敷布類。
- 流水層の厚さがトータルで0.5mmから10mmであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の敷布類。
- 透水層および/または吸水保水層あるいは流水層が工業洗濯10回後のタテあるいはヨコの収縮率が6%以下であることを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載の敷布類。
- 透水層の吸水速度が、工業洗濯10回後において5秒以下であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の敷布類。
- 吸水保水層の裏面層に、液不透過性を有する独立した布帛が位置していていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の敷布類。
- 液不透過性の独立した布帛の耐水圧が5.0kPa以上であることを特徴とする請求項15に記載の敷布類。
- 液不透過性の独立した布帛の透湿度が、4000g/m2 ・24hr以上であることを特徴とする請求項15または16のいずれかに記載の敷布類。
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