JP2004353067A - マグネシウム基合金成形体の製造方法 - Google Patents

マグネシウム基合金成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マグネシウム基合金からなる塑性加工成形体を生産性よく製造することができるマグネシウム基合金成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を加工温度250℃未満で成形体に塑性加工する。引抜き加工により、合金組織が微細化されることから、塑性加工において加工温度が250℃未満であっても塑性加工性を向上させることができる。塑性加工としては、鍛造加工、スウェージング加工、曲げ加工が挙げられる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塑性加工によりマグネシウム基合金からなる成形体を製造するための方法に関するものである。特に、塑性加工を行う際の加工温度をより低くして生産性がよいマグネシウム基合金成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム基合金は、アルミニウムよりも軽く、比強度、比剛性が鋼やアルミニウムよりも優れており、航空機部品、自動車部品などの他、各種電気製品のボディなどにも広く利用されている。
【0003】
しかし、Mg及びその合金は、最密六方格子(hcp)構造であるため、延性に乏しく、塑性加工性が極めて悪いが、マグネシウム基合金は、加工の際、温度を上げることで加工性が良好となることが広く知られている。例えば、特許文献1、2には、マグネシウム基合金材を超塑性現象が発現する温度状態にしてネジ加工する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−283134号公報
【特許文献2】特開2000−343178号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マグネシウム基合金材を塑性加工する場合、上記超塑性現象が生じる温度が250℃以上という高温であるため、従来の方法では、塑性加工による成形体を生産性よく製造することができないという問題がある。
【0006】
従来、マグネシウム基合金からなる成形体を得るべく塑性加工のような強加工を行う場合、加工度にもよるが概ね、被加工材であるマグネシウム基合金の押出材や圧延材を250℃以上に加熱して加工することが必要とされる。そのため、250℃以上といった高温用の加熱設備を必要とするだけでなく、塑性加工に用いられる金型、ロールなどの加工材も高温に曝されることで寿命が短くなって、コスト高をも招く。従って、250℃以上の加熱は、工業的生産において決して好ましくはない。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、マグネシウム基合金からなる塑性加工成形体を生産性よく製造することができるマグネシウム基合金成形体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、通常、塑性加工といった強加工が困難とされるマグネシウム基合金において、種々検討した結果、予め特定の引抜き加工を施したマグネシウム基合金材を用いることで、250℃未満の温度であっても、塑性加工が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明マグネシウム基合金成形体の製造方法は、引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を加工温度250℃未満で成形体に塑性加工することを特徴とする。
【0010】
従来、マグネシウム基合金材を塑性加工して成形体を得る場合、被加工材として、押出材や圧延材が用いられていた。しかし、押出材や圧延材では、塑性加工を行う際、250℃以上に加熱しなければならず、加工温度の低下が強く望まれていた。そこで、本発明は、押出材や圧延材ではなく、引抜き加工により得られた線条体を用いることで、加工温度の低下、即ち、250℃未満、特に200℃以下での塑性加工を実現する。このように本発明では、引抜き加工された線条体を用いることで、塑性加工を行う際の加工温度を250℃未満とすることができ、従来のような高温用の加熱手段が不要であり、塑性加工に用いられる金型やロールなどの加工材の寿命も長くすることができ、生産性を向上することができる。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0011】
本発明において、マグネシウム基合金からなる線条体としては、ワイヤ(線状体)、棒状体、パイプなどが挙げられる。断面は、円形状でもよいし、矩形や楕円状などの非円形状、即ち異形でもよい。
【0012】
本発明において引抜き加工は、例えば、ワイヤや棒状体を得る場合、加工温度への昇温速度:1℃/sec〜100℃/sec、加工温度:50℃以上200℃以下(より好ましくは150℃以下)、加工度:引抜き加工1回(1パス)に対して10%以上、線速:1m/sec以上で押出材又は圧延材を引き抜くことが挙げられる。例えば、パイプを得る場合、引抜き温度:50℃以上300℃以下(より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上150℃以下)、加工度:引抜き加工1回に対して5%以上(より好ましくは10%以上、特に好ましくは20%以上)、引抜き温度への昇温速度:1℃/sec〜100℃/sec、引抜速度:1m/sec以上で押出材又は圧延材を引き抜くことが挙げられる。このような特定の引抜き加工を行うことで、合金組織を微細化、具体的には、平均結晶粒径10μm以下とすることができる。そして、本発明は、上記合金塑性の微細化により、加熱温度を250℃未満としても塑性加工性を向上させることができ、所望の成形体を得ることが可能である。また、引抜き加工後、得られた線条体に100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上300℃以下の温度に加熱してもよい。この加熱焼鈍は、引抜き加工で導入された歪みの回復、及び再結晶の促進による結晶粒の更なる微細化に有効である。この加熱温度の保持時間は5〜20分程度が好ましい。
【0013】
本発明において塑性加工としては、例えば、鍛造加工、スウェージング加工、曲げ加工などが挙げられる。塑性加工として鍛造加工を行う場合、次の温度条件が適する。即ち、圧下率をr%、加工温度をT℃とするとき、Tが、3r+150>T≧3r+10(但し、20%≦r<80%、T<250℃)を満たすものとする。例えば、圧下率r=20(%)の場合、加熱温度T(℃)は、250℃未満、特に70℃以上210℃未満とすることができる。引抜き加工を施していない押出材や圧延材に圧下率20%の鍛造加工を行う場合、210℃以上の高温に加熱しなければ、割れなどが生じて鍛造加工を行うことができず、その反面、上記のような高温にすると金型やロールなどの加工材の寿命が短くなる。これに対し、本発明は、引抜き材を用いることで、合金組織の微細効果により、圧下率20%の鍛造加工を行う際の加熱温度を210℃未満とすることができ、金型やロールなどの加工材の寿命をより長くすることができる。圧下率rが33%超の加工を行う場合、加熱温度の下限は、上記3r+10で求められる値とし、加熱温度の上限は、金型やロールなどの寿命を考慮して、250℃未満とする。従って、本発明では、工業的に有効な加工である圧下率が40%を超える塑性加工を行う場合において、加工温度が250℃未満であっても、十分に鍛造加工を行うことができる。圧下率が80%以上の強加工では、250℃以上の加熱が望まれる。
【0014】
塑性加工としてスウェージング加工を行う場合、次の温度条件が適する。即ち、断面減少率をr%、加工温度をT℃とするとき、Tが、3r+150>T≧3r−30(但し、20%≦r≦80%、T<250℃)を満たすものとする。例えば、断面減少率r=20%の場合、加熱温度T(℃)は、250℃未満、特に30℃以上210℃未満とすることができる。従って、断面減少率を20%とする場合、引抜き加工を施していない押出材や圧延材を用い、210℃以上の加熱が必要とされる従来の方法と比較して、合金組織が微細である引抜き材を用いる本発明は、金型などの加工材の寿命をより延長することができる。断面減少率rを33%超とする場合、加熱温度の下限は、上記3r−30で求められる値とし、加熱温度の上限は、金型などの寿命を考慮して、250℃未満とする。合金組織が微細である引抜き材を用いる本発明では、工業的に有効な加工とされる断面減少率40%超の加工において、250℃未満の加工温度でスウェージング加工が可能である。断面減少率が80%を超えるような強加工では、250℃以上の加熱が望まれる。
【0015】
塑性加工として、曲げ加工を行う場合、次の温度条件が適する。即ち、曲げる際の線条体の厚みをt mm、曲げ半径をR mm、加工温度をT℃とするとき、Tが、(1)0.1≦R/t≦1.0のとき、250>T≧250−250R/t、(2)1.0<R/t≦1.9のとき、500−250R/t≧T>0、(3)1.9<R/t≦2.0のとき、25≧T>0を満たすものとする。例えば、曲げ半径Rと線条体の厚みtとの比R/tが1.0〜1.9の場合、加熱温度T(℃)は、250℃未満、特に、上限を500−250R/t以下とすることができる。即ち、後述する試験結果からわかるように100℃未満、更に室温程度(例えば、20℃)とすることができる。また、R/tが1.9〜2.0の場合、加熱温度T(℃)を25℃以下とすることができる。引抜き加工が施されていない押出材や圧延材を用いる従来の方法では、R/tが1.0〜2.0の曲げ加工、特に、1.5〜1.0程度の曲げ加工を行う場合、加熱が必要である。これに対し、本発明は、引抜き材を用いることで微細な結晶粒の効果により、R/tが1.0〜2.0の曲げ加工において、加熱を行わなくても十分に曲げ加工を行うことができ、加熱用設備を不要とすることもできる。また、加熱を行わないことにより、金型などの加工材の寿命の延命化を図ることができる。一方、R/tが1.0未満の強加工の場合、加熱温度の下限は、上記250−250R/tで求められる値とし、加熱温度の上限は、金型などの寿命を考慮して、250℃未満とする。押出材を用いた従来の方法では、R/tが1.2以下の強加工では、200℃以上の加熱が必要であり、特に、R/tが1.0以下の強加工では、250℃以上の加熱が必要である。これに対し、本発明では、合金組織が微細である引抜き材を用いることで、R/tが0.1〜1.0といった強加工であっても、加工温度が250℃未満で十分に曲げ加工を行うことができる。
【0016】
上記線条体の厚みは、例えば、線条体がワイヤ(線状体)や、棒状体で断面形状が円形状である場合:直径、線条体がワイヤや、棒状体で断面形状が矩形状の場合:厚さ、線条体がパイプの場合:外径と内径との差が挙げられる。
【0017】
なお、R/tが2.0超では、曲げ加工の程度が低く、押出材や圧延材でも常温で加工を行うことができるため、本発明では規定していない。また、R/tが0.1未満の強加工では、225℃超の加熱が望まれるため、金型などの加工材の寿命を考慮して、本発明では規定しない。
【0018】
本発明は、基合金組成によらず、室温程度(例えば、20℃)での加工性に乏しいhcp構造を有するマグネシウム基合金において有効である。例えば、鋳造用マグネシウム基合金や展伸用マグネシウム基合金を利用することができる。具体的には、Alを0.1重量%以上12重量%以下含有するものや、Zn:0.1重量%以上10重量%以下及びZr:0.1重量%以上2.0重量%を含有するものが挙げられる。Alを含有する場合、更に、Mn:0.1重量%以上2.0重量%以下、Zn:0.1重量%以上5.0重量%以下、Si:0.1重量%以上5.0重量%以下より選択された1種以上を含有するものが挙げられる。上記合金組成として代表的なASTM記号におけるAZ系、AS系、AM系、ZK系などが利用できる。Alの含有量として、重量%で0.1〜2.0%未満のものと、2.0超〜12.0%のものとを区別してもよい。上記化学成分の他にはMg及び不純物が含まれる合金として利用されることが一般的である。不純物には、Fe、Si、Cu、Ni、Caなどが挙げられる。
【0019】
AZ系においてAlの含有量が2.0〜12.0重量%となるものとして、例えば、AZ31、AZ61、AZ91などが挙げられる。AZ31は、例えば、重量%でAl:2.5〜3.5%、Zn:0.5〜1.5%、Mn:0.15〜0.5%、Cu:0.05%以下、Si:0.1%以下、Ca:0.04%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ61は、例えば、重量%でAl:5.5〜7.2%、Zn:0.4〜1.5%、Mn:0.15〜0.35%、Ni:0.05%以下、Si:0.1%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ91は例えば、重量%でAl:8.1〜9.7%、Zn:0.35〜1.0%、Mn:0.13%以上、Cu:0.1%以下、Ni:0.03%以下、Si:0.5%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ系においてAlの含有量が0.1〜2.0重量%未満となるものとして、例えば、AZ10、AZ21などが挙げられる。AZ10は、例えば、重量%でAl:1.0〜1.5%、Zn:0.2〜0.6%、Mn:0.2%以上、Cu:0.1%以下、Si:0.1%以下、Ca:0.4%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ21は、例えば、重量%でAl:1.4〜2.6%、Zn:0.5〜1.5%、Mn:0.15〜0.35%、Ni:0.03%以下、Si:0.1%以下を含有するマグネシウム基合金である。
【0020】
AS系においてAlの含有量が2.0〜12.0重量%となるものとして、例えば、AS41などが挙げられる。AS41は、例えば、重量%でAl:3.7〜4.8%、Zn:0.1%以下、Cu:0.15%以下、Mn:0.35〜0.60%、Ni:0.001%以下、Si:0.6〜1.4%を含有するマグネシウム基合金である。AS系においてAlの含有量が0.1〜2.0重量%未満となるものとしてAS21などが挙げられる。AS21は、例えば、重量%でAl:1.4〜2.6%、Zn:0.1%以下、Cu:0.15%以下、Mn:0.35〜0.60%、Ni:0.001%、Si:0.6〜1.4%を含有するマグネシウム基合金である。
【0021】
AM系では、例えば、AM60、AM100などが挙げられる。AM60は、例えば、重量%でAl:5.5〜6.5%、Zn:0.22%以下、Cu:0.35%以下、Mn:0.13%以上、Ni:0.03%以下、Si:0.5%以下を含有するマグネシウム基合金である。AM100は、例えば、重量%でAl:9.3〜10.7%、Zn:0.3%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.1〜0.35%、Ni:0.01%以下、Si:0.3%以下を含有するマグネシウム基合金である。
【0022】
ZK系では、例えば、ZK40、ZK60などが挙げられる。ZK40は、例えば、重量%でZn:3.5〜4.5%、Zr:0.45%以上を含有するマグネシウム基合金である。ZK60は、例えば、重量%でZn:4.8〜6.2%、Zr:0.45%以上を含有するマグネシウム基合金である。
【0023】
マグネシウム単体では十分な強度を得ることが難しいが、上記の化学成分を含むことで好ましい強度が得られる。
【0024】
本発明は、線条体を塑性加工することにより得られる成形体、例えば、眼鏡フレームや携帯電子機器などの補強用のフレーム、またネジなどの製造に適用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(実施例1)
重量%で、Al:3.0%、Zn:1.0%、Mn:0.15%を含み、残部がMg及び不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AZ31相当材)の押出材(φ4.0mm、φ3.0mm)を準備した。φ4.0mmの押出材は、約160℃の温度、及び1パス当りの断面減少率:20%以下の加工度でφ3.0mmまで引抜き加工を施した(160℃への昇温速度:約10℃/sec、線速:16m/sec)。また、引抜き加工後350℃×15minの熱処理を施し、引抜き加工時の歪み除去、再結晶による組織の均一微細化を行った。
【0027】
得られたφ3.0mm引抜き材、及び引抜き加工を行っていないφ3.0mmの押出材を長さ3mmに切断し、試験片とした。これら試験片に種々の圧下率にて線軸方向に鍛造加工を施した。このとき、100℃〜250℃の範囲で種々の温度に各試験片を加熱して鍛造加工を行った。そして、鍛造加工が可能であるかを調べた。その結果を図1に示す。図1において、○は鍛造加工が可能であったもの、×は割れなどが生じて鍛造加工ができなかったもの、△は鍛造加工が可能であったが加熱温度が高く、金型の寿命の点で問題があるものを示す。また、図1において数式(1)はT=3r+150、数式(2)はT=3r+10を示す。数式(1)、(2)において、Tは加熱温度、rは圧下率である。
【0028】
図1(a)に示すように引抜き材に鍛造加工を行う場合は、圧下率r(%)に対し、T≧3r+10を満たす温度T℃に加熱することで鍛造加工が可能であった。即ち、引抜き材を用いた場合、250℃未満の加熱であっても、十分に鍛造加工を行うことができることがわかる。特に、圧下率が20〜30%程度のものは、T<3r+150を満たす温度においても十分に鍛造加工を行うことができた。なお、250℃に加熱した場合は、20〜80%のいずれの圧下率においても鍛造加工を行うことができたが、金型の寿命を考慮すると、250℃未満の加熱による加工が望まれる。
【0029】
これに対し、図1(b)に示すように引抜き加工を行っていない押出材に鍛造加工を行う場合は、圧下率r(%)に対し、T≧3r+150を満たす加熱を行わなければ、加工することができなかった。特に、工業的に有効な加工である圧下率40%超の鍛造加工の場合、250℃以上の加熱を行わなければならないことがわかる。
【0030】
組成の異なるマグネシウム基合金において同様の試験を行った。即ち、押出材に上記引抜き加工を施した後、熱処理を行った引抜き材に、種々の圧下率で、かつ100〜250℃の範囲の種々の温度で線軸方向に鍛造加工を行った。以下に、試験を行ったマグネシウム基合金の組成を示す。
【0031】
重量%でAl:1.2%、Zn:0.4%、Mn:0.3%を含み、残部がMgおよび不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AZ10相当材)
重量%でAl:6.4%、Zn:1.0%、Mn:0.28%を含み、残部がMgおよび不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AZ61相当材)
重量%でAl:9.0%、Zn:0.7%、Mn:0.1%を含み、残部がMgおよび不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AZ91相当材)
重量%でAl:1.9%、Mn:0.45%、Si:1.0%を含み、残部がMgと不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AS21相当材)
重量%でAl:4.2%、Mn:0.50%、Si:1.1%を含み、残部がMgと不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AS41相当材)
重量%でAl:6.1%、Mn:0.44%を含み、残部がMgと不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号AM60相当材)
重量%でZn:5.5%、Zr:0.45%を含み、残部がMgおよび不純物からなるマグネシウム基合金(ASTM記号ZK60相当材)
【0032】
すると、いずれの試料も、圧下率r(%)に対し、T≧3r+10を満たす温度T℃に加熱することで鍛造加工を行うことができ、250℃未満の加熱であっても、十分に加工することができた。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の引抜き条件にて作製したφ3.0mmの引抜き材(ASTM記号AZ31相当材)、及び引抜き加工を行っていないφ3.0mmの押出材(ASTM記号AZ31相当材)に対して、スウェージング加工を行った。スウェージング加工は、100℃〜250℃の範囲で種々の温度に各試験材を加熱し、φ2.7mm(断面減少率19%)、φ2.4mm(同36%)、φ2.3mm(同41.2%)、φ2.1mm(同51%)、φ1.9mm(同59.9%)、φ1.6mm(同71.6%)、φ1.4mm(同78.2%)の7種の径となるように断面減少率を変化させて行った。そして、スウェージング加工が可能であるかを調べた。その結果を図2に示す。図2において、○はスウェージング加工が可能であったもの、×は割れなどが生じてスウェージング加工できなかったもの、△はスウェージング加工が可能であったが加熱温度が高く、金型の寿命の点で問題があるものを示す。また、図2において数式(3)はT=3r+150、数式(4)はT=3r−30を示す。数式(3)、(4)において、Tは加熱温度、rは断面減少率である。
【0034】
図2(a)に示すように引抜き材にスウェージング加工を行う場合は、断面減少率r(%)に対し、T≧3r−30を満たす温度T℃に加熱することでスウェージング加工が可能であった。即ち、引抜き材を用いた場合、250℃未満の加熱であっても、十分にスウェージング加工を行うことができることがわかる。特に断面減少率が20〜30%程度のものは、T<3r+150を満たす温度においても十分に加工することができた。なお、250℃に加熱した場合は、20〜80%のいずれの断面減少率においてもスウェージング加工を行うことができたが、金型の寿命を考慮すると、250℃未満の加熱による加工が望まれる。
【0035】
これに対し、図2(b)に示すように引抜き加工を行っていない押出材にスウェージング加工を行う場合は、断面減少率rが20〜30%程度であっても、T≧3r+150を満たす温度T℃に加熱しなければ、加工することができなかった。特に、断面減少率40%以上では、250℃以上の加熱を行わなければスウェージング加工を行うことができなかった。
【0036】
組成の異なるマグネシウム基合金において同様の試験を行った。即ち、押出材に実施例1と同様の引抜き加工を施した後、熱処理を行った引抜き材に、上記7種の径となるように種々の断面減少率で、かつ100〜250℃の範囲の種々の温度でスウェージング加工を行った。マグネシウム基合金は、上記に示す成分と同様のAZ10相当材、AZ61相当材、AZ91相当材、AS21相当材、AS41相当材、AM60相当材、ZK60相当材を用いた。
【0037】
試験の結果、いずれの試料も、断面減少率r(%)に対し、T≧3r−30を満たす温度T℃に加熱することでスウェージング加工を行うことができ、250℃未満の加熱であっても、十分に加工することができた。
【0038】
(実施例3)
実施例1と同様の引抜き条件にて作製したφ3.0mmの引抜き材(ASTM記号AZ31相当材)に更に引抜き加工を行い(温度160℃、1パス当りの断面減少率:約15〜18%、160℃への昇温速度:約10℃/sec、線速:20m/sec)、断面形状が矩形(厚さt 1mm×幅3mm)の線材を得た。この線材に350℃×15minの熱処理を施し、試験片を得た。また、実施例1で用いたものと同様の成分(ASTM記号AZ31相当材)で厚さt 1mmの圧延材を用意し、幅3mmに切り出して試験片とした。
【0039】
得られた厚さt 1mm×幅3mmの引抜き材、及び厚さt 1mm×幅3mmの圧延材の各試験片に種々の曲げ半径Rで曲げ加工を行った。曲げ加工は、20〜250℃の範囲で種々の温度に各試験片を加熱して行った。そして、曲げ加工が可能であるかを調べた。その結果を図3に示す。図3において、○は曲げ加工が可能であったもの、×は割れなどが生じて曲げ加工できなかったもの、△は曲げ加工が可能であったが加熱温度が高く、金型の寿命の点で問題があるものを示す。また、図3において、数式(5)はT=−250R/t+250、数式(6)はT=−250R/t+500を示す。数式(5)、(6)においてTは加熱温度、Rは曲げ半径、tは試験片の厚さである。
【0040】
図3(a)に示すように引抜き材に曲げ加工を行う場合は、曲げ半径R(mm)と試験片の厚さt(mm)との比R/tが0.1≦R/t≦1.0を満たすとき、T≧−250R/t+250を満たす温度T℃に加熱することで曲げ加工が可能であった。特にR/tが1.0超2.0未満の場合、T<−250R/t+500の温度、具体的には、室温程度である20℃であっても、十分に曲げ加工を行うことができた。また、R/tが2.0のときも20℃において十分に曲げ加工を行うことができた。即ち、引抜き材を用いた場合、250℃未満の加熱であっても、十分に曲げ加工を行うことができることがわかる。なお、250℃に加熱した場合は、0.1〜2.0のいずれのR/tにおいても曲げ加工を行うことができたが、金型の寿命を考慮すると、250℃未満の加熱による加工が望まれる。
【0041】
これに対し、図3(b)に示すように引抜き加工を行っていない圧延材に曲げ加工を行う場合は、R/tが1.0以上であっても、T≧−250R/t+500を満たす温度T℃に加熱しなければ、加工することができなかった。また、R/tが0.5以下の強加工では、250℃の加熱を行っても曲げ加工を行うことができなかった。
【0042】
組成の異なるマグネシウム基合金において同様の試験を行った。即ち、押出材に実施例1と同様の引抜き加工を施し、更に断面矩形状に引抜き加工してから熱処理を行った引抜き材に、0.1〜2.0の種々の曲げ半径で、かつ20〜250℃の範囲の種々の温度で曲げ加工を行った。マグネシウム基合金は、上記に示す成分と同様のAZ10相当材、AZ61相当材、AZ91相当材、AS21相当材、AS41相当材、AM60相当材、ZK60相当材を用いた。
【0043】
試験の結果、いずれの試料も、0.1≦R/t≦1.0のとき、T≧−250R/t+250を満たす温度T℃に加熱することで十分に曲げ加工を行うことができた。また、1.0<R/t≦1.9のときには、温度T(℃)が−250R/t+500よりも小さい温度、R/tが1.0以上のときには室温程度である20℃であっても、十分に曲げ加工を行うことができた。このようにいずれの試料も、250℃未満の加熱であっても、十分に曲げ加工することができた。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明マグネシウム基合金成形体の製造方法によれば、引抜き加工により得られた線条体を用いることで、250℃未満の加工温度で塑性加工することができるという優れた効果を奏し得る。従って、本発明は、押出材や圧延材にそのまま塑性加工を行う従来のように、塑性加工の際、250℃以上といった高温にする必要が無いので、金型やロールなどの加工材の寿命を長くすることができ、マグネシウム基合金の成形体を生産性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の温度において、圧下率を変化させて鍛造加工を行った際に鍛造加工が可能であるかを示すグラフであり、(a)は引抜き材、(b)は押出材を示す。
【図2】種々の温度において、断面減少率を変化させてスウェージング加工を行った際にスウェージング加工が可能であるかを示すグラフであり、(a)は引抜き材、(b)は押出材を示す。
【図3】種々の温度において、曲げ半径Rと被加工材の厚さtとの比R/tを変化させて曲げ加工を行った際に曲げ加工が可能であるかを示すグラフであり、(a)は引抜き材、(b)は圧延材を示す。

Claims (7)

  1. 引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を加工温度250℃未満で成形体に塑性加工することを特徴とするマグネシウム基合金成形体の製造方法。
  2. 引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を以下の条件を満たす加工温度T℃で成形体に鍛造加工することを特徴とするマグネシウム基合金成形体の製造方法。
    圧下率をr%、加工温度をT℃とするとき、Tは、
    3r+150>T≧3r+10
    但し、20%≦r<80%、T<250℃
    を満たす。
  3. 引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を以下の条件を満たす加工温度T℃で成形体にスウェージング加工することを特徴とするマグネシウム基合金成形体の製造方法。
    断面減少率をr%、加工温度をT℃としたとき、Tは、
    3r+150>T≧3r−30
    但し、20%≦r≦80%、T<250℃
    を満たす。
  4. 引抜き加工により得られたマグネシウム基合金からなる線条体を以下の条件を満たす加工温度T℃で成形体に曲げ加工することを特徴とするマグネシウム基合金成形体の製造方法。
    曲げる際の線条体の厚みをt mm、曲げ半径をR mm、加工温度をT℃としたとき、Tは、
    0.1≦R/t≦1.0のとき、250>T≧250−250R/t
    1.0<R/t≦1.9のとき、500−250R/t≧T>0
    1.9<R/t≦2.0のとき、25≧T>0
    を満たす。
  5. マグネシウム基合金は、Alを0.1〜12重量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマグネシウム基合金成形体の製造方法。
  6. 更に、重量%でMn:0.1〜2.0%、Zn:0.1〜5.0%、Si:0.1〜5.0%より選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項5記載のマグネシウム基合金成形体の製造方法。
  7. マグネシウム基合金は、重量%でZn:0.1〜10%、Zr:0.1〜2.0%を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマグネシウム基合金成形体の製造方法。
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