JP4160922B2 - マグネシウムワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、高強度のマグネシウムワイヤ及びその製造方法に関するものである。
マグネシウムは、比重(密度g/cm3、20℃)が1.74であり、構造用に利用される金属の中で最も軽い金属である。また、マグネシウムは、導電率や振動吸収性などの特性に優れるため、軽量材料として期待されている。
特許文献1には、マグネシウムを主成分とするマグネシウム基合金ワイヤ及びその製造方法が開示されている。
特開2003-293069号公報
しかし、マグネシウムは、最密六方格子(hcp)構造であるため、延性に乏しく、室温での塑性加工性が極めて悪い。従って、現在利用されているマグネシウム材料は、熱間加工により得られた材料、具体的には鋳造材を熱間圧延したり熱間押し出ししたりすることで得られる短尺な棒材であった。そのため、線径がより小さく長尺なワイヤの開発が望まれている。
また、熱間圧延や熱間押出により得られた棒材は、強度が小さく、例えば、構造用材としても、用途が限定されていた。これに対し、特許文献1に記載されるマグネシウム基合金ワイヤは、AlやZnなどの元素を添加して合金化することで、素材強度の向上を図っている。しかし、元素の添加による合金化は、導電率の低下や振動吸収性の低下などを招き、マグネシウムが有する軽量性以外の特性を有効に利用することが難しい。また、リサイクル性を考慮すると、合金化を行わない方が好ましい。従って、軽量性以外の導電性、振動吸収性といった特性を利用することができるように、合金化することなく、マグネシウム材料を高強度化することが望まれている。
そこで、本発明の主目的は、合金化することなく、優れた強度を有する長尺なマグネシウムワイヤを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記強度に優れるマグネシウムワイヤの製造方法を提供することにある。
本発明は、高純度のマグネシウムの原料母材に引き抜き加工を施すことで、上記目的を達成する。
即ち、本発明マグネシウムワイヤは、99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなり、引張強度が250MPa以上であることを特徴とする(但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする)。このような高強度のマグネシウムワイヤは、以下の製造方法により製造することが好適である。即ち、本発明マグネシウムワイヤの製造方法は、99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなるマグネシウムの原料母材を用意する工程と、引き抜き加工温度100℃未満で前記原料母材に引き抜き加工を施し、引張強度が250MPa以上のワイヤを製造する工程とを具えることを特徴とする(但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする)。
また、本発明者らが検討した結果、上記高強度のワイヤに適切な熱処理を施したり、或いはマグネシウムの原料母材を適切な温度で引き抜くことで高強度かつ高靭性のマグネシウムワイヤを得ることができるとの知見を得た。この知見に基づき、以下を規定する。
即ち、本発明マグネシウムワイヤは、99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなり、引張強度が200MPa以上、絞りが10%以上、伸びが8%以上であることを特徴とする(但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする)。このようなマグネシウムワイヤは、以下のいずれかの製造方法により製造することが好適である。
1. 上記引き抜き加工温度室温以上100℃未満での引き抜き加工により得られたワイヤ(以下、第一ワイヤと呼ぶ)に100℃以上300℃以下の温度で熱処理を施す。
2. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなるマグネシウムの原料母材を用意し、この原料母材に引き抜き加工温度を100℃以上200℃以下で引き抜き加工を施す(但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする)。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、高純度のマグネシウムを対象とする。具体的には、質量%で、Mg:99.8%以上を含み、残部が不純物からなるものとする。不純物には、不可避的なものも含む。不純物の具体的な元素としては、例えば、Al、Si、Mn、Fe、Zn、Cu、Niなどが挙げられ、含有量は、質量%で、Al:0.1%未満、特に、Al:0.05%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.1%以下、Fe:0.05%以下、Zn:0.05%以下、Cu:0.02%以下、Ni:0.001%以下が挙げられる。これらMg以外の元素としFe、Ni、Cuが含まれる場合、耐食性を大きく損ねる恐れがあり、Al、Si、Mn、Znが含まれる場合、導電率の低下を招き易くなるため、不純物は、含まれていなくてもよい。JIS H 2150で規定されるマグネシウム地金を利用してもよい。
上記高純度のマグネシウムからなる原料母材を用意し、この母材を引き抜いて、強度や靭性に優れるマグネシウムワイヤを得る。原料母材としては、鋳造材や鋳造材を押し出した押出材などが挙げられる。
引き抜き加工は、孔ダイスやローラダイスなどの伸線用ダイスを用いて行うとよい。公知の伸線用ダイスを利用してもよい。
本発明者らが検討した結果、引き抜き加工を行ってマグネシウムの結晶粒を引き抜き方向に引き伸ばすことで、引張強度の向上を図ることができるとの知見を得た。特に、引張強度250MPa以上のマグネシウムワイヤを得るには、引き抜き加工温度を室温以上100℃未満として引き抜き加工を行うことが好ましいことがわかった。そこで、引張強度250MPa以上のマグネシウムワイヤを得るべく、本発明では、引き抜き温度を室温以上100℃未満と規定する。上記温度での引き抜き加工数(パス数)は、1回以上であればよく、複数回施してもよい。このとき、1パスの加工度(断面減少率)は6%以上、総加工度は6%以上が好ましいことがわかった。1パスの加工度は高いほど引張強度を向上させる効果があり、特に10%以上が好ましい。総加工度は高いほどより細径のワイヤを得ることができ、6%以上、特に10%以上とすることが好ましいが、高過ぎると、靭性が低下して引き抜き中に断線する恐れがある。従って、複数パスに亘る引き抜き加工を行う場合、引き抜き後に後述する熱処理を施すと、熱処理により引き抜き時の歪を緩和して、引き抜き加工温度が室温以上100℃未満であっても、連続的な引き抜きを行うことができる。特に、繰り返し複数パス(特に、4パス以上)の引き抜き加工を施すことができる。熱処理を施すタイミングとしては、引き抜き加工2、3パスごとが挙げられる。
また、本発明者らは、引き抜き加工と再結晶化のための熱処理とを別プロセスとした静的な再結晶工程、又は特定温度の引き抜き加工を施すことで、引き抜き加工と再結晶化とを同時プロセスとした動的な再結晶工程のいずれかを具えることで、強度及び靭性の双方に優れるマグネシウムワイヤが得られることがわかった。
(静的な再結晶工程)
具体的には、上記引き抜き温度室温以上100℃未満で引き抜いた引張強度250MPa以上のマグネシウムワイヤ(以下、第一ワイヤと呼ぶ)に適切な熱処理を施すと、高強度でかつ靭性に優れるマグネシウムワイヤが得られることがわかった。本発明者らが調べたところ、上記引き抜き加工により、結晶粒が引き抜き方向に引き伸ばされ、この引き伸ばされた結晶が熱処理により等軸の結晶粒を有する再結晶組織となる、即ち、再結晶化することで、引張強度が200MPa以上、かつ絞りが10%以上、伸びが8%以上といった高強度高靭性のマグネシウムワイヤが得られることがわかった。特に、再結晶化により結晶粒を微細化することが靭性の向上に効果的であることがわかった。このような熱処理の温度としては、100℃以上300℃以下が好ましいことがわかった。再結晶した結晶粒は熱処理時の温度が高いほど成長し易く、かつ温度が低過ぎると再結晶化が得られにくい。具体的には、100℃未満では、引き伸ばされた結晶がほぼそのままの状態で維持され、300℃超では、粗大化した結晶粒が引き抜きの際に断線などの起点となり易い。そこで、上記高強度高靭性のマグネシウムワイヤを得るべく本発明では、第一ワイヤに100℃以上300℃以下の温度に加熱する熱処理を施すことを規定する。特に好ましくは、150℃以上250℃以下である。また、再結晶化をより得易くするために第一ワイヤは、一パスにおける加工度を6%以上、総加工度を6%以上の引き抜き加工により得られたものが好ましい。一パスにおける加工度が6%未満の場合、引き抜き方向に引き伸ばされる度合いが小さいため、引き抜き後上記熱処理を施しても、再結晶化による結晶粒の微細化効果が得られにくい。
(動的な再結晶工程)
更に、本発明者らは、適切な温度、具体的には100℃以上200℃以下の温度で引き抜いた場合でも、上記と同様に引張強度が200MPa以上、かつ絞りが10%以上、伸びが8%以上といった高強度高靭性のマグネシウムワイヤが得られることがわかった。引き抜き温度を100℃以上とすることで、引き抜きの際、再結晶化することができる。しかし、200℃超とすると、結晶粒が成長して粗大化した結晶粒が生じ易い。そこで、本発明では、引き抜き加工温度を100℃以上200℃以下と規定する。引き抜き加工温度への加熱は、伸線用ダイスを加熱してもよいし、マグネシウムの原料母材を加熱してもよい。原料母材を加熱する場合、伸線用ダイスの入口側に加熱手段を配置することが挙げられる。加熱手段は、例えば、雰囲気加熱炉などが挙げられる。伸線用ダイスを加熱する場合、ダイスにヒータなどを具えるとよい。いずれの場合も、原料母材の表面温度が200℃以下となるように加熱手段を調整するとよい。また、ワイヤの強度を高めるためには、加工度(断面減少率)を高くすることも効果的である。具体的には、一パスの引き抜き加工における加工度(断面減少率)を6%以上、特に10%以上とすることが好ましく、総加工度を10%以上、特に20%以上とすることが好ましい。このような引き抜き加工条件にて引き抜きを少なくとも1パス行うことで、再結晶化による結晶粒の微細化効果により、高強度高靭性のマグネシウムワイヤを得ることができる。また、引き抜き温度を100〜200℃とする場合、微細組織のため塑性加工性が向上され、複数パス(特に、4パス以上)の引き抜き加工を実質的に制限なく連続的に施すことができる。従って、引き抜き後上記100℃以上300℃以下の熱処理を施すことなく、より細径のワイヤを得ることができる。なお、100℃以上200℃以下の温度で引き抜いた場合でも、引き抜き後、上記熱処理を施してもよい。
なお、引き抜き加工の際、塑性加工性を高めるべく、適宜潤滑剤を利用してもよい。また、上記引き抜き加工における加工温度への昇温速度は、1℃/sec以上とすることが好ましい。引き抜き加工の線速は1m/min以上とすると量産性に優れて好ましい。更に、引き抜き加工後は、冷却を行い、結晶粒の成長を抑制してもよい。冷却速度は0.1℃/sec以上が好ましい。この下限値を下回ると結晶粒の成長を促進してしまう。冷却手段には衝風などが挙げられ、速度の調整は風速、風量などにより行うことができる。
上記製造方法により、得られた本発明マグネシウムワイヤは、引張強度:200MPa以上、絞り:10%以上、伸び:8%以上であり、従来の熱間圧延や熱間押し出しにて製造されたマグネシウム材料と比較して、高強度かつ高靭性である。また、降伏点が120MPa以上、YP比が0.6以上といった機械的特性に優れるマグネシウムワイヤが得られる。本発明において降伏点は、応力-歪線図から測定したものを利用しており、降伏点が不明確な場合、0.2%耐力を降伏点とする。伸びは、評点間距離を100mmとして特定した破断伸びとする。YP比は、降伏点(或いは0.2%耐力)/引張強度とする。
また、引き抜き加工条件を限定することにより、引張強度:220MPa以上、絞り:10%以上、伸び:10%以上、降伏点:150MPa以上、YP比:0.7以上といったより優れた機械的特性を有するマグネシウムワイヤを得ることができる。具体的な加工条件としては、引き抜き加工温度を100℃未満とする場合、引き抜き後、100〜250℃の熱処理を施すことが挙げられる。また、引き抜き加工温度を100〜200℃として引き抜くことが挙げられる。いずれの場合も、一パスにおける加工度を6%以上、特に10%以上、総加工度を6%以上、特に10%以上とすることが好ましい。
更に、引き抜き加工により得られた本発明マグネシウムワイヤは、表面が平滑である。具体的には、ワイヤ表面の表面粗さがRz(十点平均粗さ;JIS B 0601)で5μm以下とすることができる。表面粗さは、引き抜き速度や潤滑剤の選定などの伸線条件によって制御することができる。
本発明マグネシウムワイヤは、横断面形状が円形状だけでなく、楕円や多角形、矩形などの非円形形状とすることができる。ワイヤの最も一般的な横断面形状は円形であるが、靭性にも優れる本発明ワイヤでは円形に限らず、横断面が楕円や多角形、矩形などの異形ワイヤとすることも容易にできる。ワイヤの横断面形状を非円形にするには、ダイスの孔形状を変えることで容易に対応できる。
本発明マグネシウムワイヤは、引き抜きを行うことにより、細径で、かつ寸法精度にも優れるワイヤである。具体的には、横断面形状が円形状のワイヤにおいて、外径:0.05mm以上10mm以下、ワイヤの偏径差:0.05mm以下とすることができる。偏径差は、ワイヤの同一断面における径の最大値と最小値との差である。特に、引き抜き加工温度を100℃〜200℃として、複数パス引き抜いたワイヤは、偏径差を0.01mm以下とすることができる。そのため、本発明マグネシウムワイヤは、例えば、ばねや溶接線といった高精度の品位が求められる材料として利用することができる。
本発明製造方法に規定するように適切な引き抜き加工や熱処理を施すことで、合金化することなく強度や靭性に優れ、長尺な本発明マグネシウムワイヤを得ることができる。具体的には、従来得られていた押出棒材では、引張強度:160〜180MPa程度、降伏点(0.2%耐力):80〜90MPa程度、YP比(降伏点/引張強度):0.4〜0.5程度であったのに対し、本発明マグネシウムワイヤでは、引張強度:200MPa以上、降伏点:120MPa以上、YP比:0.6以上といった優れた機械的特性を有する。
また、本発明マグネシウムワイヤは、合金化していないことで導電率の低下や振動吸収性の低下を招くことがない。そのため、本発明マグネシウムワイヤは、軽量性といった特性だけでなく、これらの特性をも有するマグネシウム材料を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
高純度のマグネシウムの押出材(φ3.2mm)を用いて、種々の条件で孔ダイスによる引き抜き加工を行い、横断面形状が円形状であるワイヤを作製した。X線回折により用いたマグネシウムの組成を調べたところ、Mgの含有量は99.8質量%以上であり、質量%でAl:0.003%、Mn:0.003%、Fe:0.003%、Zn:0.007%、Cu:0.001%以下、Ni:0.002%であった。引き抜き加工は、内径の異なる孔ダイスを複数用意し、マグネシウム素材が連続的に複数の孔ダイスを通過できるように、これらのダイスを配置した。また、各ダイスの直前にはそれぞれ、雰囲気加熱炉を配置し、ダイスに挿入される前のマグネシウム素材を加熱できるようにした。引き抜き加工温度は、加熱炉とダイス間のマグネシウム素材の表面温度とし、加熱炉の設定温度を変化させることで変化させた。加工温度への昇温速度は1〜10℃/secとした。室温で引き抜いた試料は、加熱炉による加熱を行わなかった。引き抜き加工の線速は2m/minとした。マグネシウム素材の線径、1パスにおける加工度、総加工度、加工温度、伸線状態を表1に示す。表1において○は、問題なく伸線加工を行うことができ、ワイヤ表面にクラックなどの発生がなかったことを示し、×は伸線加工を行うことができたがワイヤ表面にクラックなどが生じていたこと、或いは断線により伸線加工を行うことができなかったことを示す。
Figure 0004160922
表1に示すように、引き抜き加工温度を室温以上200℃以下とした場合、連続的に引き抜き加工が可能であったが、250℃以上の加熱では、断線により引き抜き加工を行うことができなかった。これは、高温により結晶粒径が増大したり、引張強さが低減したためであると考えられる。室温及び50℃の加熱では2〜3パス程度の引き抜き加工が可能であったが、100℃以上200℃以下では4パス以上の引き抜き加工が可能であった。
得られたワイヤの特性を調べてみた。押出材、加工温度を室温として2パス引き抜いたワイヤ(線径φ2.70mm)、加工温度50℃で3パス引き抜いたワイヤ(線径φ2.45mm)、加工温度100℃、150℃、200℃で14パス引き抜いた各ワイヤ(いずれも線径φ0.90mm)を用意し、これらワイヤについて、引張強度(TS、MPa)、降伏点(YP、MPa)、YP比(降伏点/引張強度)、絞り(RA、%)、伸び(EL、%)、十点表面粗さRz(μm)、偏径差(mm)を測定してみた。また、室温で引き抜いたワイヤ、50℃で引き抜いたワイヤにおいて、引き抜き加工後、種々の温度で熱処理を施したものを用意し、これら熱処理を施したワイヤについても引張強度、降伏点、YP比、絞り、伸び、十点表面粗さ、偏径差を測定してみた。表2にその結果を示す。なお、熱処理は、表2に示す温度でいずれも15分間行った。降伏点は、応力-歪線図から測定し、降伏点が不明確な場合は、0.2%耐力を降伏点とした。
Figure 0004160922
表2に示すように引き抜きにより得られたワイヤ(試料No.2〜16)は、いずれも優れた強度を有することがわかる。また、これらのワイヤ(試料No.2〜16)は、いずれも降伏点が120MPa以上、YP比が0.6以上であり、機械的特性に優れていることがわかる。更に、これらのワイヤ(試料No.2〜16)は、表面粗さが5μm以下と平滑な表面であり、表面粗さは、引き抜き加工温度が高いほど、小さい傾向にあることがわかる。加えて、これらのワイヤ(試料No.2〜16)は、偏径差が0.05mm以下と小さく、寸法精度に優れることがわかる。
特に、引き抜き加工温度を室温又は50℃としたワイヤ(試料No.2、8)では、引張強度が250MPa以上、降伏点が230MPa以上、YP比が0.9以上であった。引き抜き加工温度を100〜200℃としたワイヤ(試料No.14〜16)は、いずれも、引張強度200MPa以上、絞り10%以上、伸び8%以上であり、強度と靭性との双方に優れていることがわかる。また、引き抜き加工温度を100〜200℃としたワイヤ(試料No.14〜16)は、他のワイヤよりも偏径差が小さく0.01μm以下であった。
引き抜き加工温度を室温又は50℃としたワイヤ(試料No.3〜7、9〜13)であっても、適切な熱処理を施すことで、引張強度200MPa以上、絞り10%以上、伸び8%以上の強度及び靭性に優れたワイヤとすることができる。特に、熱処理の際の加熱温度を100〜250℃としたワイヤ(試料No.3〜6、9〜12)は、引張強度220MPa以上、降伏点150MPa以上、YP比0.7以上であった。
(試験例2)
引き抜き加工温度を室温又は50℃とし、試験例1と同様に引き抜き加工を行った。引き抜き加工温度を室温とする場合、2パスごとに150℃×15分間の熱処理を施して引き抜き加工を行った。引き抜き加工温度を50℃とする場合、3パスごとに150℃×15分間の熱処理を施して引き抜き加工を行った。その他の条件は、試験例1と同様にした。表3に伸線状態を示す。
Figure 0004160922
表3に示すように引き抜き加工温度を100℃未満としても、適切な熱処理を適宜施すことで、引き抜き加工温度を100℃〜200℃とした場合と同様に連続的に引き抜き加工が可能であることがわかる。加工温度:室温又は50℃で14パス引き抜いた各ワイヤ(いずれも線径φ0.90mm)について、引張強度、降伏点、YP比、絞り、伸び、測定したところ、いずれのワイヤも引張強度200MPa以上、降伏点120MPa以上、絞り10%以上、伸び8%以上であり、強度と靭性とに優れたワイヤであることが確認された。また、十点表面粗さ、偏径差を調べたところ、いずれのワイヤもRzで5μm以下、偏径差0.05mm以下であり、平滑な表面を有し、優れた寸法精度のワイヤであった。
(試験例3)
引き抜き加工温度を150℃として、表2に示す試料No.15のワイヤに更に引き抜き加工を行ってみた。すると、クラックや断線など生じることなく、線径φ0.05mmのワイヤを得ることができた。このことから、線径φ100μm以下の極細線であっても、適切な加工温度で引き抜くことで、問題なく引き抜き加工が行えることが確認された。
(試験例4)
試験例1で用いた孔ダイスに対して、孔形状が異なる異形孔ダイスを用いて、横断面形状が矩形状のワイヤを作製した。引き抜き加工条件は、試験例1と同様とした。その結果、得られた異形ワイヤは、試験例1と同様にいずれも優れた強度を有しており、降伏点が120MPa以上、YP比が0.6以上であった。特に、加工温度を室温又は50℃としたワイヤは、引張強度が250MPa以上、降伏点が230MPa以上、YP比が0.9以上であり、加工温度を100〜200℃としたワイヤは、引張強度200MPa以上、絞り10%以上、伸び8%以上といった高強度及び高靭性のワイヤであった。
本発明マグネシウムワイヤは、優れた導電性や振動吸収性などを有することから、このような特性が求められるもの、具体的には、電線の導体やフィルタなどに利用することが適する。また、表面が平滑であり、寸法精度に優れることから、溶接線やばね材などにも利用することができる。特に、本発明マグネシウムワイヤは、構造用金属の中で最も軽量であるため、上記用途材料として利用したとき、軽量化を図ることができる。

Claims (13)

  1. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなり、
    引張強度が200MPa以上、
    絞りが10%以上、
    伸びが8%以上であることを特徴とするマグネシウムワイヤ。
    但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする。
  2. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなり、
    引張強度が250MPa以上であることを特徴とするマグネシウムワイヤ。
    但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする。
  3. 不純物は、質量%でAl:0.05%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.1%以下、Fe:0.05%以下、Zn:0.05%以下、Cu:0.02%以下、Ni:0.001%以下から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウムワイヤ。
  4. 降伏点が120MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウムワイヤ。
  5. YP比が0.6以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウムワイヤ。
  6. ワイヤ表面の表面粗さがRzで5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマグネシウムワイヤ。
  7. ワイヤ外径が0.05mm以上10mm以下であり、ワイヤの偏径差が0.05mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマグネシウムワイヤ。
  8. ワイヤの横断面形状が、非円形断面であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマグネシウムワイヤ。
  9. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなるマグネシウムの原料母材を用意する工程と、
    引き抜き加工温度室温以上100℃未満で前記原料母材に引き抜き加工を施し、引張強度が250MPa以上の第一ワイヤを製造する工程と、
    引き抜き加工を施した後、得られた第一ワイヤを100℃以上300℃以下の温度に加熱する熱処理を施し、引張強度が200MPa以上、絞りが10%以上、伸びが8%以上である第二ワイヤを製造する工程を具えることを特徴とするマグネシウムワイヤの製造方法。
    但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする。
  10. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなるマグネシウムの原料母材を用意する工程と、
    引き抜き加工温度100℃以上200℃以下で前記原料母材に引き抜き加工を施し、引張強度が200MPa以上、絞りが10%以上、伸びが8%以上であるワイヤを製造する工程とを具えることを特徴とするマグネシウムワイヤの製造方法。
    但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする。
  11. 99.8質量%以上のMgと残部が不純物とからなるマグネシウムの原料母材を用意する工程と、
    引き抜き加工温度室温以上100℃未満で前記原料母材に引き抜き加工を施し、引張強度が250MPa以上のワイヤを製造する工程とを具えることを特徴とするマグネシウムワイヤの製造方法。
    但し、不純物にAlを含む場合、Al:0.1質量%未満とする。
  12. 不純物は、質量%でAl:0.05%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.1%以下、Fe:0.05%以下、Zn:0.05%以下、Cu:0.02%以下、Ni:0.001%以下から選択される1種以上であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のマグネシウムワイヤの製造方法。
  13. 引き抜き加工において、一パスにおける加工度を6%以上、総加工度を6%以上とすることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のマグネシウムワイヤの製造方法。
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