JP2004351995A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】乗り心地性、リム組性、及びビード耐久性の維持を図りながら操縦安定性を向上させる。
【解決手段】ビードエーペックスゴム8のタイヤ軸方向外側に、補強コードをタイヤ周方向に対して10〜60度で配列した補強プライ9Aからなり、かつ高さHaをフランジ高さHfの2.5〜3.0倍としたビード補強層9を具える。ビードエーペックスゴム8は、フランジ高さHfの1.8〜3.0倍の高さHpの断面三角形状のエーペックス本体部8Aと、薄板状の翼部8Bとからなる。翼部8Bの厚さtはカーカスコード直径Dの1.0〜2.0倍、ビードエーペックスゴム8の全高さHbは、前記フランジ高さHfの3.5倍以上とした。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビード耐久性を維持しながら操縦安定性を向上した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば図3に示すように、補強コードを所定の角度で配列したビード補強層aを、カーカスbのプライ折返し部b1に沿って形成し、これによってタイヤの縦剛性の増加を抑えながら周方向剛性を高め、乗り心地性等を維持しながら操縦安定性を向上させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−72104号公報
【0004】
しかし、このようなビード補強層aによる操縦安定性への向上にも限界があり、近年のより高い操縦安定性への改善要求を満足させるために、ビードエーペックスゴムcの高さを増加させることが望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ビードエーペックスゴムcの高さを増加させた場合には、その外端部がビード補強層aの外端部に近づくため、この部分で剛性差が大きくなって曲げ変形が局部的に発生し、カーカスのコード破断やビード補強層aの剥離等を招くなどビード耐久性を低下させるという問題がある。なお前記剛性差を減じるために、ビード補強層aの外端部を越えてビードエーペックスゴムcをより高く形成した場合には、ビード耐久性の低下は抑制されるものの、サイドウォール部の曲げ剛性が過大となるため、優れた乗り心地性を確保することが困難となり、かつリム組性を損ねる結果を招く。
【0006】
そこで本発明は、ビードエーペックスゴムを断面三角形状のエーペックス本体部とその外端からのびる薄板状の翼部とで形成し、かつビードベースラインからのエーペックス本体の高さ、翼部の高さ、及びビード補強層の高さ等を適正化することを基本として、優れた乗り心地性やリム組性を確保でき、かつビード耐久性の低下を招くことなく操縦安定性を向上しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に、前記ビードコアの廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けた少なくとも1枚のカーカスプライを含むカーカスと、前記ビードコアから前記プライ本体部とプライ折返し部との間で半径方向外方にのびるビードエーペックスゴムと、このビードエーペックスゴムのタイヤ軸方向外側で半径方向にのびるビード補強層とを具え、
前記ビード補強層は、補強コードをタイヤ周方向に対して10〜60度で配列した補強プライからなり、かつそのビードベースラインからの高さHaを、ビードベースラインからのリムのフランジ高さHfの2.5〜3.0倍とするとともに、
前記ビードエーペックスゴムは、前記ビードコアから半径方向外方に、前記フランジ高さHfの1.8〜3.0倍の高さHpの点Pまでのびる断面三角形状のエーペックス本体部と、このエーペックス本体部から半径方向外方にのびる薄板状の翼部とからなり、
かつこの翼部の厚さtを、前記カーカスプライのカーカスコードの直径Dの1.0〜2.0倍とし、
しかも前記ビードエーペックスゴムのビードベースラインからの全高さHbは、前記フランジ高さHfの3.5倍以上としたことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記点Pの高さHpと、前記ビード補強層の高さHaとの差|Hp−Ha|は、前記フランジ高さHfの0.7倍以下であることを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記ビード補強層は、前記ビードコアの半径方向外面よりも半径方向内方を起点として前記プライ折返し部の外側面に沿って半径方向外方にのびるとともに、前記プライ折返し部のビードベースラインからの高さHcは、ビードエーペックスゴムの前記全高さHbよりも大であることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記ビード補強層の補強コードは、有機繊維コードであることを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明では、タイヤ断面高さTとタイヤ断面巾Wとの比W/Tである偏平率は75%以下、かつ前記リムが5゜テーパリムであることを特徴としている。
【0012】
なお本明細書において、前記高さHa、Hb、Hc、Hpを含むタイヤの各種寸法は、特に断りがない限り、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧状態における値とする。
【0013】
又前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim” 、或いはETRTOであれば ”Measuring Rim”を意味する。また前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”INFLATION PRESSURE” であるが、乗用車用タイヤである場合には180KPaとする
【0014】
又前記「ビードベースライン」とは、前記規格で定められるリム径位置を通るタイヤ軸方向線を意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの正規内圧状態を示す線断面、図2はそのビード部を拡大して示す断面図である。
【0016】
図1において、空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の外側に配されるベルト層7とを具える。
【0017】
前記ベルト層7は、高弾性のベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜70°の角度で配列した2枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから構成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがプライ間相互で交差することによりベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強する。ベルトコードとしては、スチールコード或いは、これに匹敵する例えば芳香族ポリアミド繊維等のハイモジュラスの有機繊維コードが好適に使用できる。
【0018】
なおベルト層7のさらに外側には、ナイロン等の有機繊維コードをタイヤ周方向に対して5度以下の角度で例えば螺旋巻きしたバンド層10を形成し、高速走行にともなうトレッド部2のリフティングを防止することが望ましい。
【0019】
又前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば75〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aからなり、カーカスコードとして、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどの有機繊維コードが好適に使用される。
【0020】
又前記カーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部6bを一連に具える。
【0021】
そして、前記ビード部4には、このプライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間を通って前記ビードコアから半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム8と、このビードエーペックスゴム8のタイヤ軸方向外側で半径方向にのびるビード補強層9とを設けている。
【0022】
前記ビード補強層9は、例えばナイロンなどの有機繊維コードからなる補強コードをタイヤ周方向に対して10〜60度で配列した1又は2枚、本例では1枚の補強プライ9Aから形成される。又ビード補強層9は、図2に拡大して示すように、前記ビードコア5の半径方向外面よりも半径方向内方を起点Qとして前記プライ折返し部6bの外側面に沿って半径方向外方に延在する。
【0023】
このようなビード補強層9は、有機繊維の補強コードが前記角度範囲で配列しているため、タイヤの縦剛性の増加を抑えながら周方向剛性を高めることができ、優れた乗り心地性を確保しつつ操縦安定性を向上させることができる。なお補強コードの前記角度が60度を超えると、縦剛性の増加が顕著となって乗り心地性の低下を招き、逆に10度未満ではタイヤを製造することが難しくなる。従って、前記配列角度は15〜55度の範囲がより好ましい。
【0024】
又前記ビード補強層9では、そのビードベースラインBLからの半径方向高さHaを、ビードベースラインBLからのリムRのフランジ高さHfの2.5〜3.0倍とすることが必要である。前記高さHaがフランジ高さHfの2.5倍未満では、補強範囲が過小となって操縦安定性の向上効果が期待できなくなり、逆に3.0倍より大では、補強コードが前記角度範囲である場合にも、縦剛性が増加し、乗り心地性を低下するという結果を招く。
【0025】
又空気入りタイヤ1では、このビード補強層9による優れた乗り心地性を維持し、かつビード耐久性を損ねることなく操縦安定性をさらに高めるために、前記ビードエーペックスゴム8を以下の如く構成している。
【0026】
即ち、ビードエーペックスゴム8は、前記ビードコア5から半径方向外方に先細状にのびる断面三角形状のエーペックス本体部8Aと、その外端である点Pから実質的に一定の厚さtを有して半径方向外方にのびる薄板状の翼部8Bとから形成される。なお「実質的に一定の厚さ」とは、タイヤ成形時の加硫圧力等に伴う厚さバラツキ、及び先端部での先細りなどを許容しうることを意味する。
【0027】
このビードエーペックスゴム8では、前記点PのビードベースラインBLからの高さHp、即ち前記エーペックス本体部8Aの高さHpを、前記フランジ高さHfの1.8〜3.0倍とし、かつビードエーペックスゴム8全体のビードベースラインBLからの全高さHbを、前記フランジ高さHfの3.5倍以上とし、しかも翼部8Bの前記厚さtを、前記カーカスコードの直径Dの1.0〜2.0倍の範囲としている。
【0028】
このように、ゴムボリュームが大なエーペックス本体部8Aの高さHpを、1.8×Hf〜3.0×Hfまで高めているため、操縦安定性をさらに向上させることができる。又前記翼部8Bをエーペックス本体部8Aの外端Pから延長させているため、該外端Pがビード補強層9の外端に近づくことによる剛性段差の発生、即ち局部的な曲げ変形の発生を抑えることができ、カーカスのコード破断やビード補強層9外端での剥離を防止しうるなどビード耐久性の低下を抑制できる。又前記翼部8Bは、その厚さtが1.0×D〜2.0×Dと薄いため、曲げ剛性が上昇せず、従って、優れた乗り心地性やリム組性を維持することが可能となる。
【0029】
ここで前記高さHpが1.8×Hf未満では、操縦安定性のさらなる向上が見込めなくなる。逆に高さHpが3.0×Hfより大、及び前記厚さtが2.0×Dより大では、剛性が上昇傾向となって、乗り心地性やリム組性の低下を招く。又前記厚さtが1.0×D未満、及び全高さHbが3.5×Hf未満では、剛性段差が充分に緩和されず、ビード耐久性の低下を抑制できなくなる。
【0030】
本例では、エーペックス本体部8Aの前記高さHpと、ビード補強層9の高さHaとの差|Hp−Ha|が、前記フランジ高さHfの0.7倍以下とした場合を例示しているが、かかる場合にもビード耐久性の低下を抑制することができる。なおビードエーペックスゴム8は、ゴム硬度(デュロメータA硬さ)が75〜95°の硬質ゴムからなり、かつ前記エーペックス本体部8Aと翼部8Bとは同一の材料で形成される。
【0031】
又前記カーカス6のプライ折返し部6bは、ビードベースラインBLからの高さhbがビードエーペックスゴム8の前記全高さHbよりも大であり、ビードエーペックスゴム8の外端を越えた後は、前記プライ本体部6aに沿って延在している。
【0032】
なお本発明は、タイヤ断面高さTとタイヤ断面巾Wとの比W/Tである偏平率が75%以下であり、かつ5゜テーパリムに装着される、例えば乗用車用、軽トラック用、小型トラック用のタイヤ、特に高い負荷荷重の下で使用される小型トラック用タイヤに好適に採用できる。
【0033】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0034】
【実施例】
図1の構造をなすタイヤサイズが205/70R15のタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの、操縦安定性、乗り心地性、ビード耐久性、リム組性をテストし比較した。なお表1の仕様以外は同一仕様とした。
【0035】
(1) 操縦安定性、乗り心地性;
試供タイヤを、リム(5.5K×15)、内圧(350kPa)にて車両(1Box)の4輪に装着し、ドライアスファルト路面のタイヤテストコースを走行したときの操縦安定性(剛性感およびハンドル応答性)、及び乗り心地性を、ドライバーの官能評価により従来例を6点とする10点法で評価した。値の大きい方が良好である。
【0036】
(2) ビード耐久性;
試供タイヤを、リム(5.5K×15)、内圧(JATMA規定の最高空気圧;600kPa)、荷重(JATMAの最大負荷荷重の200%;18.63kN)、速度(20km/h)の条件にて、ドラム上を400時間走行させ、その後タイヤを解体して剥離損傷の有無を調査した。
【0037】
(3) リム組性;
試供タイヤを、JATMA標準リムにレバーのみを用いた手組みによりリム組みし、作業者の官能により従来例を6点とする10点法で評価した。値の大きい方が良好である。
【0038】
【表1】
Figure 2004351995
【0039】
表の如く、実施例のタイヤは、乗り心地性、リム組性、及びビード耐久性の維持を図りながら操縦安定性を向上しうるのが確認できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明は叙上の如く構成しているため、優れた乗り心地性やリム組性を確保でき、かつビード耐久性の低下を招くことなく操縦安定性を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【図2】そのビード部を拡大して示す断面図である。
【図3】従来技術を説明するタイヤの断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a プライ本体部
6b プライ折返し部
8 ビードエーペックスゴム
8A エーペックス本体部
8B 翼部
9 ビード補強層
9A 補強プライ

Claims (5)

  1. トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に、前記ビードコアの廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けた少なくとも1枚のカーカスプライを含むカーカスと、前記ビードコアから前記プライ本体部とプライ折返し部との間で半径方向外方にのびるビードエーペックスゴムと、このビードエーペックスゴムのタイヤ軸方向外側で半径方向にのびるビード補強層とを具え、
    前記ビード補強層は、補強コードをタイヤ周方向に対して10〜60度で配列した補強プライからなり、かつそのビードベースラインからの高さHaを、ビードベースラインからのリムのフランジ高さHfの2.5〜3.0倍とするとともに、
    前記ビードエーペックスゴムは、前記ビードコアから半径方向外方に、前記フランジ高さHfの1.8〜3.0倍の高さHpの点Pまでのびる断面三角形状のエーペックス本体部と、このエーペックス本体部から半径方向外方にのびる薄板状の翼部とからなり、
    かつこの翼部の厚さtを、前記カーカスプライのカーカスコードの直径Dの1.0〜2.0倍とし、
    しかも前記ビードエーペックスゴムのビードベースラインからの全高さHbは、前記フランジ高さHfの3.5倍以上としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記点Pの高さHpと、前記ビード補強層の高さHaとの差|Hp−Ha|は、前記フランジ高さHfの0.7倍以下であることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ビード補強層は、前記ビードコアの半径方向外面よりも半径方向内方を起点として前記プライ折返し部の外側面に沿って半径方向外方にのびるとともに、前記プライ折返し部のビードベースラインからの高さHcは、ビードエーペックスゴムの前記全高さHbよりも大であることを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ビード補強層の補強コードは、有機繊維コードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. タイヤ断面高さTとタイヤ断面巾Wとの比W/Tである偏平率は75%以下、かつ前記リムが5゜テーパリムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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CN112930271A (zh) * 2018-10-31 2021-06-08 株式会社普利司通 轮胎

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